• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23F
管理番号 1353137
異議申立番号 異議2018-700156  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-23 
確定日 2019-05-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6185121号発明「粉末茶組成物の製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6185121号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 特許第6185121号の請求項1?8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯の概略
特許第6185121号の請求項1?8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は,概ね,以下のとおりである。
平成28年 7月15日 特許出願
平成29年 8月 4日 設定登録
平成29年 8月23日 特許公報発行
平成30年 2月23日 特許異議申立書(特許異議申立人:阪井
文美(以下「申立人阪井」という。)
同日 特許異議申立書(特許異議申立人:佐藤
綾子(以下「申立人佐藤」という。)
同日 特許異議申立書(特許異議申立人:寺田
佳鬼(以下「申立人寺田」という。)
平成30年 6月12日付け 取消理由通知書
平成30年 8月 9日 意見書(特許権者),訂正請求書
平成30年 9月21日 意見書(申立人阪井)
同日 意見書(申立人佐藤)
平成30年 9月25日 意見書(申立人寺田)
平成30年11月 1日付け 取消理由通知書(決定の予告)
平成30年12月27日 意見書(特許権者),訂正請求書
平成31年 2月25日 意見書(申立人佐藤)
平成31年 2月28日 意見書(申立人阪井)
平成31年 3月 1日 意見書(申立人寺田)
以下,平成30年12月27日付けの訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。なお,平成平成30年8月9日付けの訂正請求書は,取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は,特許第6185121号の特許請求の範囲を,平成30年12月27日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?8について訂正することを求めるものであって,その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の請求項1における「造粒工程において,」との記載と「(A)熱風速度[℃]」との記載の間に,
「(A)熱風速度が74℃以上であり,カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量が0.09?0.15[L/kg]であって,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度が8.3?33.3[mL/分/kg]であり,」
との記載を付加する。
(2) 訂正事項2
本件訂正前の請求項1に「(A)熱風速度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]が,2.0?20[℃/mL/分/kg]であり」と記載されているのを,「(A)熱風速度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]が,2.2?10.8[℃/mL/分/kg]であり」に訂正する。
(3) 訂正事項3
本件訂正前の請求項1の「2.0?20[℃/mL/分/kg]であり,」との記載と,「水性媒体中の有機溶媒の濃度は45質量%以下であり,」との記載の間に,
「カテキン類含有原料のカテキン類源が,茶抽出乾燥物及び平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物から選択される少なくとも1種であり,
カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含み,糖の合計含有量が粉末茶組成物に対して30?65質量%であり,」
との記載を付加する。
(4) 訂正事項4
本件訂正前の請求項1に「全加熱時間が,カテキン類含有原料1kg当たり,0.01?9.5分/kgである」と記載されているのを,「全加熱時間が,カテキン類含有原料1kg当たり,0.14?2.8分/kgである」に訂正する。
(5) 訂正事項5
本件訂正前の請求項2に「水性媒体の全噴霧量が,カテキン類含有原料1kg当たり,0.075?0.35L/kgである,請求項1記載の粉末茶組成物の製造方法。」と記載されているのを,「茶抽出乾燥物の平均粒子径(d_(50))が,5?200μmである,請求項1記載の粉末茶組成物の製造方法。」に訂正する。
(6) 訂正事項6
本件訂正前の請求項3に「熱風温度が60℃以上である,請求項1又は2記載の粉末茶組成物の製造方法。」と記載されているのを,「粉末茶組成物の平均粒子径(d_(50))が,70?250μmである,請求項1又は2記載の粉末茶組成物の製造方法。」に訂正する。
(7) 訂正事項7
本件訂正前の請求項4に「カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含む,請求項1?3のいずれか1項に記載の粉末茶組成物の製造方法。」と記載されているのを,「流動状態にしたカテキン類含有原料に水性媒体を断続的に噴霧し,噴霧と噴霧中断とを1サイクルとして繰り返し行う造粒工程を含む,請求項1?3のいずれか1項に記載の粉末茶組成物の製造方法。」に訂正する。

2 本件訂正の適否について
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は,請求項1において,熱風温度,カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量,カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度について,具体的に特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件明細書に,熱風速度を74℃にした実施例10,12(【0061】,【0063】,【0065】【表4】)が開示されている。
また,本件明細書に,「カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量は,造粒効率及び粒子の均一性の観点から,…0.09L/kg以上がより更に好ましく,また造粒効率及び粒子の均一性の観点から,…0.15L/kg以下がより更に好ましい。かかる水性媒体の全噴霧量の範囲としては,カテキン類含有原料1kg当たり,…より更に好ましくは0.09?0.15L/kgである。」(【0025】)と記載されている。
さらに,本件明細書に,カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度を8.3mL/分/kgにした実施例18(【0073】【表6】)),33.3mL/分/kgにした実施例5?10,13?16(【0059】【表3】,【0065】【表4】,【0069】【表5】,【0073】【表6】)が開示されている。
よって,訂正事項1に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は,本件訂正前の請求項1における,(A)熱風速度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]の範囲をさらに限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件明細書に,「かかる比[(A)/(B)]としては,粒子の均一性の点から,…2.2℃/mL/分/kg以上が更に好ましく,…。」(【0024】)と記載され,本件明細書に,比[(A)/(B)]を2.2℃/mL/分/kgにした実施例10(【0065】【表4】),10.8℃/mL/分/kgにした実施例18(【0073】【表6】)が開示されているから,訂正事項2に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は,請求項1において,カテキン類含有原料のカテキン類源,カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含むこと及びその含有量を特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件明細書に,「カテキン類含有原料は,カテキン類源として,茶葉粉砕物若しくは茶抽出乾燥物,又はそれら両方を適宜選択して含有させることができる。」(【0011】),「茶葉粉砕物の平均粒子径(d_(50))は,…1μm以上がより好ましく,…30μm以下がより好ましい。茶葉粉砕物の平均粒子径(d_(50))の範囲としては,…更に好ましくは1?30μmである。」(【0012】)と記載されている。
また,本件訂正前の請求項4に,「カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含む」と記載されている
さらに,本件明細書に,「本発明においては,カテキン類含有原料及び水性媒体のうちのいずれか一方に糖が含まれていてもよく,…。」(【0018】),「カテキン類含有原料及び水性媒体中の糖の合計含有量は,緑茶風味との相性の観点から,本発明で製造される粉末茶組成物に対して,…30質量%以上が更に好ましく,…65質量%以下がより更に好ましく,…。」(【0019】)と記載されている。
よって,訂正事項3に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4は,本件訂正前の請求項1における全加熱時間の範囲をさらに限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件明細書に,「かかる全加熱時間の範囲としては,カテキン類含有原料1kg当たり,…より好ましくは0.05?2.8分/kg,…である。」(【0031】)と記載され,全加熱時間を0.14分/kgにした実施例17,18(【0073】【表6】),2.8分/kgにした実施例12(【0065】【表4】)が開示されているから,訂正事項4に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(5) 訂正事項5について
訂正事項5は,訂正事項1により本件訂正前の請求項2に係る発明特定事項が本件訂正後の請求項1に組み込まれたことに伴い,本件訂正前の請求項2の「水性媒体の全噴霧量が,カテキン類含有原料1kg当たり,0.075?0.35L/kgである」との事項を削除した上で,茶抽出乾燥物の平均粒子径(d_(50))を特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件明細書に,「茶抽出乾燥物の平均粒子径(d_(50))は適宜選択可能であるが,造粒効率,溶解性の観点から,5μm以上が好ましく,…そして200μm以下が好ましく,…。茶抽出乾燥物の平均粒子径(d_(50))の範囲としては,好ましくは5?200μm,…である。」(【0015】)と記載されているから,訂正事項5に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(6) 訂正事項6について
訂正事項6は,訂正事項1により本件訂正前の請求項3に係る発明特定事項が本件訂正後の請求項1に組み込まれたことに伴い,本件訂正前の請求項3の「熱風温度が60℃以上である」との事項を削除した上で,粉末茶組成物の平均粒子径(d_(50))を特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件明細書に,「(1)粉末茶組成物は,平均粒子径(d_(50))が,風味及び溶解性の観点から,70μm以上が好ましく,…そして250μm以下が好ましく,…。かかる平均粒子径(d_(50))の範囲としては,好ましくは70?250μm,…である。」(【0032】)と記載されているから,訂正事項6に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(7) 訂正事項7について
訂正事項7は,訂正事項3により本件訂正前の請求項4に係る発明特定事項が本件訂正後の請求項1に組み込まれたことに伴い,本件訂正前の請求項4の「カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含む」との事項を削除した上で,造粒工程について「流動状態にしたカテキン類含有原料に水性媒体を断続的に噴霧し,噴霧と噴霧中断とを1サイクルとして繰り返し行う」ことを特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件明細書に,「水性媒体は,流動状態のカテキン類含有原料に連続的に供給しても,断続的に供給してよい。中でも,造粒促進,溶解性の観点から,水性媒体を断続的に供給し,噴霧と乾燥とを1サイクルとして繰り返し行うことが好ましい。」(【0027】)と記載されているから,訂正事項7に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(8) さらに,本件訂正は訂正前の請求項〔1?8〕という一群の請求項ごとに請求されたものである。
(9) 以上のとおりであるから,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであって,同条4項,並びに同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから,本件特許の請求項1?8に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って,「本件発明1」などといい,総称して「本件発明」という。
【請求項1】
流動層造粒装置内に熱風を送り込み,流動状態にしたカテキン類含有原料に水性媒体を噴霧する造粒工程及び最終乾燥工程を含み,
造粒工程において,(A)熱風温度が74℃以上であり,カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量が0.09?0.15[L/kg]であって,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度が8.3?33.3[mL/分/kg]であり,(A)熱風温度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]が,2.2?10.8[℃/mL/分/kg]であり,
カテキン類含有原料のカテキン類源が,茶抽出乾燥物及び平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物から選択される少なくとも1種であり,
カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含み,糖の合計含有量が粉末茶組成物に対して30?65質量%であり,
水性媒体中の有機溶媒の濃度は45質量%以下であり,
全加熱時間が,カテキン類含有原料1kg当たり,0.14?2.8分/kgである,
粉末茶組成物の製造方法。
【請求項2】
茶抽出乾燥物の平均粒子径(d_(50))が,5?200μmである,請求項1記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項3】
粉末茶組成物の平均粒子径(d_(50))が,70?250μmである,請求項1又は2記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項4】
流動状態にしたカテキン類含有原料に水性媒体を断続的に噴霧し,噴霧と噴霧中断とを1サイクルとして繰り返し行う造粒工程を含む,請求項1?3のいずれか1項に記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項5】
カテキン類含有原料が糖を含み,カテキン類含有原料中の糖の含有量が30?80質量%である,請求項4記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項6】
水性媒体が水である,請求項1?5のいずれか1項に記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項7】
カテキン類含有原料が,カテキン類源として,茶抽出乾燥物を含む,請求項1?6のいずれか1項に記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項8】
カテキン類含有原料中の茶抽出乾燥物の含有量が15?60質量%である,請求項7記載の粉末茶組成物の製造方法。

第4 取消理由の概要
1 本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は,概ね,次のとおりである。
(1) 取消理由1
本件発明1?8は,引用例1?3(後記2)に記載された発明であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2) 取消理由2
本件発明1?8は,引用例1?3,5?9(後記2)に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3) 取消理由3
本件特許は,特許請求の範囲の記載が不備のため,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。
(4) 取消理由4
本件特許は,明細書の記載が不備のため,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。

2 引用例
引用例は以下のとおり。なお,対応する甲号証については,特許異議申立人,甲号証の番号に従い,「甲○(申立人○○)」などという。
引用例1:特開2005-224142号公報(甲1(申立人阪井),甲2(申立人佐藤),甲3(申立人寺田))
引用例2:国際公開第2005/092124号(甲1(申立人寺田))
引用例3:特開2006-180830号公報(甲2(申立人寺田))
引用例4:特開昭59-31649号公報(甲1(申立人佐藤))
引用例5:吉田照男,「食品造粒技術ハンドブック」,株式会社シーエムシー出版,2016年2月8日,p40-45,58-59(甲6(申立人阪井))
引用例6:特開2010-68741号公報(甲9(申立人阪井))
引用例7:田口敏行,「機能性食品素材を用いた製品開発戦略-茶関連の成分とその応用製品を中心に-」,静岡産業大学国際情報学部研究紀要,1999年3月31日,p167-190(甲4(申立人寺田))
引用例8:三井農林株式会社「ポリフェノン製品概要」のウェブページの印刷物,[2018年2月23日検索]
<URL:http://www.polyphenon.jp/jp/product/index.html>(甲5(申立人寺田))
引用例9:特開2007-43907号公報(甲6(申立人寺田))
引用例10:国際公開第2014/196587号(甲9(申立人寺田))
引用例11:武林敬,「造粒の基本の基」,日本油化学会誌,1999年,48巻,9号,p861-869(甲7(申立人寺田))
引用例12:フロイント産業株式会社「製品情報 FLOW COATER(フローコーター)」のウェブページの印刷物,[2018年2月23日検索]
<URL:http://www.freund.co.jp/machinery/granulator/flowcoater.html>(甲8(申立人寺田))
引用例13:「造粒ハンドブック」,株式会社オーム社,1991年3月10日,p323-325,336-337(甲11(申立人寺田))
引用例14:「造粒ハンドブック」,株式会社オーム社,1991年3月10日,p293-294(甲15(申立人寺田))

第5 取消理由1(29条1項3号)及び取消理由2(29条2項)について
1 引用例について
(1) 引用例1
ア 引用例1には,以下の事項が記載されている。
・「【0001】
本発明は緑茶から有効成分を抽出して顆粒体としたものに関し,鮮明な緑色を有し,光や熱に対する耐退色性にも優れ,風味が良く,水やお湯に溶かしたときにも溶けが良くて泡立ちの少ない緑茶抽出顆粒体を得ようとするものである。」
・「【0005】
本発明は,緑茶特有の鮮やかな緑色を保っており,かつ風味豊かで保存性に優れていて,水や湯に容易に溶けて鮮明な緑色の茶湯が得られると共に,その溶解時に見られる泡立ちを低減することができ,また退色の少ない保存性に優れた緑茶抽出顆粒体を得ようとするものである。」
・「【実施例】
【0012】
抹茶80gに対して95%エタノール400gを加え,5?10分間,攪拌混合を行う。こうした混合物を濾紙(No.2)を使用して固液の分離濾過を行って,溶剤抽出液を得た。
【0013】
一方,煎茶を70℃の温水で抽出し,茶葉と液との固液分離を行い水性抽出液を得た。この水性抽出液の固形分重量比1に対して粉末デキストリン(DE8)3を加えて混合溶解した。この混合液を,熱風温度160?170℃,排気温度100?105℃の条件下で噴霧乾燥し,緑茶粉末体を得た。
【0014】
上記溶剤抽出液320gを上記緑茶粉末体4000gの結着剤として用い流動層造粒を行った。この流動層造粒は,フロイント製フローコーターFL-40により,噴霧圧力3kg/cm^(2),噴霧流量30ml/分,熱風入口温度70?80℃,排気温度40?60℃の条件にて上記溶剤抽出液を噴霧しながら行った。
出来た顆粒体の固形分中の水分が5%以下,好ましくは3%以下になるまで乾燥し,緑茶抽出顆粒体を得た。」
・「【0017】
(比較例)
抹茶80gと上記実施例における水抽出の緑茶粉末体4000gを使用し,流動層造粒を行なった。流動層造粒を行うときの結着剤には水を用いた。他は,上記実施例と同様にして比較例の緑茶抽出顆粒体を得た。」
イ 上記記載からすると,比較例に関し,次のことが分かる。
(ア) 比較例は,原料4080g(抹茶80g及び緑茶粉末体4000g)に対し,結着剤として水320g(320ml)を用い,フロイント製フローコーターFL-40(流動層造粒装置)により,噴霧流量30ml/分,熱風入口温度70?80℃の条件にて水を噴霧しながら,流動層造粒を行ったものである。
よって,比較例における,原料1kg当たりの水の噴霧流量は約7.35ml/分/kg(=30ml/分/4.08kg)で,熱風入口温度と原料1kg当たりの水の噴霧流量との比は約9.52?10.88℃/ml/分/kg(=[70?80℃]/約7.35ml/分/kg)である。
(イ) 比較例は,熱風入口温度70?80℃で,出来た顆粒体の固形分中の水分が5%以下,好ましくは3%以下になるまで乾燥したことがわかるが,乾燥時間は明らかでない。しかし,引用例3の実施例6において,7385gの原料に960mlのバインダー液を吹き付け,水分含量3%以下に乾燥するために,80℃で14分間乾燥させているところ(後記(3)),乾燥時間は,原料に吹き付けた水分量に応じた長さとなると考えられるから,引用例3の実施例6の製造条件に照らすと,引用例1の比較例において,乾燥時間は14分間以下となるものと解される。
そして,造粒工程の時間は約10.7分(=320ml/[30ml/分])であるから,造粒時間及び乾燥時間の合計は,原料1kg当たり,約2.62?6.05分/kg(=[約10.7?(約10.7+14)]分/4.08kg)である。
(ウ) 緑茶粉末体の製造条件からすると,比較例における原料は,約2.0質量%の抹茶(=80g/4080g×100),約24.51質量%の煎茶抽出物(=[4000g/[水性抽出液固形分1+粉末デキストリン3]/4080g×100),約73.53質量%のデキストリン(=[4000g×3/[水性抽出液固形分1+粉末デキストリン3]/4080g×100)からなることがわかる。
また,顆粒体の固形分中の水分が5%以下になるまで乾燥し,緑茶抽出顆粒体を得た場合に,デキストリンの合計含有量が緑茶抽出顆粒体に対して,約69.85質量%(=[4000g×3/[水性抽出液固形分1+粉末デキストリン3]/4080g×100×0.95)?約73.53質量%である。
(エ) 比較例における水の全噴霧量は,原料1kg当たり,約0.078L/kg(=320ml/4.08kg)である。
ウ そうすると,引用例1には,比較例1に関し,次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明1」という。)。
(引用発明1)
流動層造粒装置内に熱風を送り込み,流動状態にした原料に水を噴霧する造粒工程及び乾燥工程を含み,
造粒工程において,熱風入口温度が70?80℃であり,原料1kg当たりの水の全噴霧量が約0.078[L/kg]であって,原料1kg当たりの水の噴霧流量が約7.35[ml/分/kg]であり,熱風入口温度[℃]と,原料1kg当たりの水の噴霧流量[mL/分/kg]との比が,約9.52?10.88[℃/mL/分/kg]であり,
原料が約2.0質量%の抹茶,約24.51質量%の煎茶抽出物,約73.53質量%のデキストリンからなり,デキストリンの合計含有量が緑茶抽出顆粒体に対して,約69.85質量%?約73.53質量%であり,
造粒時間及び乾燥時間の合計が,原料1kg当たり,約2.62?6.05分/kgである,
緑茶抽出顆粒体の製造方法。」
(2) 引用例2
ア 引用例2には,以下の事項が記載されている。
・「[0006] 本発明は,取り扱いが容易で,消費者が水等に容易に溶解または分散させて摂取することが可能な,食物繊維を含有する顆粒または細粒状の健康食品,およびその製造方法を提供する。」
・「[0008] 本発明の方法は,結合剤の代替品として,キシロオリゴ糖を使用する。…」
・「[0011] …食品中のキシロオリゴ糖の含量は,各場合において造粒の様子を観察しながら適宜決定してよいが,目安としては全固形分に対して3?20重量%とする。キシロオリゴ糖の添加は,造粒工程前に食物繊維への混合により,または造粒工程中にキシロオリゴ糖を溶解した水を食物繊維に添加,噴霧,もしくは注加することにより行う。造粒は,流動層造粒法,押出造粒法を含む任意の方法で行うことができるが,分散性の良い造粒物の得られる流動層造粒法を好適に用いることができる。その場合は,1)キシロオリゴ糖を予め食品素材に混合しておいて水を噴霧して造粒しても,あるいは,2)水に溶解したキシロオリゴ糖を,造粒中に食品素材に噴霧して造粒してもよい。本発明においてはいずれの造粒方法によっても,望まれる造粒物が得られるが,作業が容易であることを考えると,1)の方法を好適に用いることができる。」
・「[0013] 本発明の方法によれば,キシロオリゴ糖以外の結合剤を使用することは可能であるが,そのような結合剤を使用しなくても,顆粒状または細粒状で,水に対する分散性が良好な食物繊維含有食品が製造できる。…」
・「[0017] …本発明の食物繊維含有食品が有する機能の例は,動脈硬化,貧血,胃炎,胃潰瘍,便秘といった症状の予防または改善,肝機能改善,有害物質の吸着抑制,腸内環境の改善,ダイエット効果,コレステロールの吸収抑制,食後血糖値の急上昇防止,スーパーオキシドディスムターゼの活性化,ビフィズス菌増殖活性を始めとする整腸作用,大腸癌予防,ミネラル吸収促進,または抗酸化作用に基づく機能である。」
・「[0037] 実施例4(製造例)
仕込み量100kgとして,表4に示す各成分について,20メッシュ篩過後,流動層造粒機(フローコーター200型,フロイント産業社製)に投入した。予備的な流動後,水を約500g?800g/分の速度で噴霧しながら約65分間造粒した(排気温度:約30℃,吸気温度:60℃)。同装置で約10分間乾燥後,造粒物を取り出して15号(1000μm)の篩で篩過して造粒物を得た。」
・「[0040][表4]


・「[1] 食物繊維を含有する粉末状の食品素材を造粒するに際して,造粒工程前または造粒工程中に食品素材にキシロオリゴ糖を添加して造粒することを特徴とする,食物繊維含有食品の製造方法。」(請求の範囲)
イ 上記記載からすると,実施例4(試料番号17)に関し,次のことが分かる。
(ア) 実施例4(試料番号17)は,粉末抹茶10重量%,キシロオリゴ糖5重量%,デキストリン15重量%を含む原料100kgを,流動層造粒機に投入し,水を約500?800g/分の速度で噴霧しながら約65分間造粒し(排気温度:約30℃,吸気温度:60℃),約10分間乾燥して,造粒物を得たものである。
よって,実施例4(試料番号17)における,原料1kg当たりの水の噴霧速度は約5?8ml/分/kg(=約500?800g/分/100kg)で,吸気温度と原料1kg当たりの水の噴霧速度との比は約7.5?12℃/ml/分/kg(=60℃/約5?8ml/分/kg)である。
(イ) 実施例4(試料番号17)における造粒時間及び乾燥時間の合計は,原料1kg当たり,約0.75分/kg(=[約65分+約10分]/100kg)である。
(ウ) 実施例4(試料番号17)における水の全噴霧量は,原料1kg当たり,約0.325?0.52L/kg(=[約500?800ml×約65分/1000]/100kg)である。
ウ そうすると,引用例2には,実施例4(試料番号17)に関し,次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明2」という。)。
(引用発明2)
「流動層造粒機内に熱風を送り込み,流動状態にした原料に水を噴霧する造粒工程及び乾燥工程を含み,
造粒工程において,吸気温度が60℃であり,原料1kg当たりの水の全噴霧量が約0.325?0.52[L/kg]であって,原料1kg当たりの水の噴霧速度が約5?8[mL/分/kg]であり,吸気温度[℃]と,原料1kg当たりの水の噴霧速度[mL/分/kg]との比が,約7.5?12[℃/mL/分/kg]であり,
原料は,粉末抹茶10重量%,キシロオリゴ糖5重量%,デキストリン15重量%を含み,
造粒時間及び乾燥時間の合計が,原料1kg当たり,約0.75分/kgである,
造粒物の製造方法。」
(3) 引用例3
ア 引用例3には,以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
エンドウタンパクを含有する,茶の抽出液,懸濁液,造粒物,及び前記抽出物もしくは懸濁液の乾燥粉末から選ばれた一種からなることを特徴とする茶含有組成物。」
・「【0002】
茶にはカテキン類等様々な機能性成分が含まれている。なかでもカテキン類は強い抗酸化力や抗菌効果が認められており,加えて,人体への生理活性効果として,動脈硬化やアレルギーの防止効果等の作用についても研究が行われている。このため,近年,飲料や加工食品等の飲食品への茶抽出液等の添加が検討されている。
【0003】
しかし,特に緑茶から抽出されたカテキン類は,強い渋味,苦味を有していることから,飲食品に添加する場合に量的な制限があり,大量に添加することができないという問題がある。」
・「【0008】
したがって,本発明の目的は,茶のカテキン類に対する苦味,渋味の抑制効果が高く,飲食品に対して充分な量のカテキン類を添加しても飲食品自体の風味を損なわない茶含有組成物及び,該茶含有組成物を含有する飲食品及び該茶含有組成物の製造方法を提供することを目的とする。」
・「【0014】
本発明によれば,茶の風味を損なうことなく,また,茶含有組成物中のカテキン類に対する苦味,渋味の抑制効果が高い。したがって,飲食品本来の持つ風味を低下させることなく,飲食品への茶含有組成物の添加量を多くすることができる。」
・「【0056】
実施例6(茶の造粒物からなる茶含有組成物)
エンドウタンパク(商品名;「PP-CS」 オルガノ製)13.3質量部に対し,お湯を100質量部添加し,攪拌分散してバインダー液を調製した。
【0057】
平均粒子径20μmまでに粉砕した茶葉粉粒体100質量部に対し,上記バインダー液20質量部を用い,下記条件により流動層造粒装置(「WSG-5型」 大川原製作所製)を用いて茶の造粒物からなる茶含有組成物を得た。この造粒物は水分含量が3質量%以下であり,粒径は造粒物の80質量%以上が粒径1000μm以下の粒度範囲に属するものであった。この結果,この造粒物においては,効果的に苦味,渋味が抑制されることが,パネラー5名による官能検査により確認できた。
【0058】
<造粒条件>
バインダー噴霧空気圧:2.9×102kPa
バインダー噴霧量:13%(原材料の全質量に対して)
バインダー噴霧流速:120ml/min
造粒時間:8分
乾燥吸気温度:80℃
乾燥時間:14分
冷却吸気温度:25℃
冷却時間:10分」
イ 上記記載からすると,実施例6に関し,次のことが分かる。
(ア) 実施例6は,茶葉粉粒体100質量部に対し,エンドウタンパクにお湯を添加し攪拌分散して調整したバインダー液20質量部を用い,バインダー噴霧量:13%(原材料の全質量に対して),バインダー噴霧流速:120ml/min,造粒時間:8分,乾燥吸気温度:80℃,乾燥時間:14分の条件により流動層造粒装置を用いて茶の造粒物からなる茶含有組成物を得たものである。
バインダー液の全噴霧量は960ml(=120ml/分×8分)で,バインダー噴霧量が原料の13%であるから,原料量は約7385ml(g)(=960ml/0.13)である。
よって,実施例6における,原料1kg当たりのバインダー噴霧流速は約16.25ml/分/kg(=120ml/分/約7.385kg)で,乾燥吸気温度と原料1kg当たりのバインダー噴霧流速との比は約4.9℃/ml/分/kg(=80℃/約16.25ml/分/kg)である。
(イ) 実施例6における造粒時間及び乾燥時間の合計は,原料1kg当たり,約2.98分/kg(=[8分+14分]/約7.385kg)である。
(ウ) 実施例6におけるバインダー液の全噴霧量は,原料1kg当たり,約0.130L/kg(=960ml/1000/約7.385kg)である。
ウ そうすると,引用例3には,実施例6に関し,次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明3」という。)。
「流動層造粒装置内に熱風を送り込み,流動状態にした原料である茶葉粉粒体に,エンドウタンパクにお湯を添加し攪拌分散して調整したバインダー液を噴霧する造粒工程,及び乾燥工程を含み,
造粒工程において,乾燥吸気温度が80℃であり,原料1kg当たりのバインダー液の全噴霧量が約0.130[L/kg]であって,原料1kg当たりのバインダー噴霧流速が約16.25[ml/分/kg]であり,乾燥吸気温度[℃]と,原料1kg当たりのバインダー噴霧流速[mL/分/kg]との比が,約4.9[℃/mL/分/kg]であり,
原料が,平均粒子径20μmまでに粉砕した茶葉粉粒体であり,
造粒時間及び乾燥時間の合計が,原料1kg当たり,約2.98分/kgである,
茶含有組成物の製造方法。」
(4) 引用例7について
引用例7には,以下の事項が記載されている。
・「

」(175頁)
(5) 引用例8について
引用例8には,以下の事項が記載されている。
・「


(6) 引用例9について
引用例9には,以下の事項が記載されている。
・「【0002】
緑茶の効用成分として,緑茶に含まれるカテキン類(緑茶カテキン)の抗肥満効果が注目されている。主な「緑茶カテキン」には,エピガロカテキンガレート(EGCg),エピガロカテキン(EGC),エピカテキンガレート(ECg),エピカテキン(EC),カテキンガレート(Cg),カテキン(C),ガロカテキンガレート(GCg),ガロカテキン(GC)があるが,それぞれ機能性と滋味,特に渋味が異なる(以下,本明細書において各カテキン類を表す場合,括弧内の略語も用いる)。
【0003】
最近明らかになっていることとして次の文献を示す。血中コレステロールに関しては,特許文献1は,(-)エピカテキン(EC)に血中コレステロール量低下作用がある旨を開示し,特許文献2は,茶カテキンの中でも特に(-)エピガロカテキンガレート(EGCg)を有効成分とするコレステロール低下剤を開示し,特許文献3は,エピカテキンガレート(ECg)を有効成分とするコレステロール排泄促進剤を開示している。
【0004】
また,摂食後のインスリン分泌量が増大しているモデルでは,ガレートエステルを持つカテキン(EGCg,ECg,Cg,GCg)がグルコース輸送活性を抑制し,定常状態のモデルではインスリン非存在下において,ガレートエステルを持たないカテキン(EGC,EC,C,GC)がグルコース輸送活性を上昇させることが分かっている(非特許文献1)。」
・「【0033】
原料の茶抽出物としては,茶葉を温水等の溶剤で抽出することにより得られた茶抽出液,あるいは茶葉を温水等の溶剤で抽出し,その抽出液を賦形剤等と共にスプレードライ乾燥させた茶抽出乾燥物など,任意の茶抽出物を使用することができる。例えば市販のインスタントティーの抽出液,市販の茶抽出乾燥物,サンフェノン(太陽化学製)などを使用することができる。」

2 引用例1に基づく検討
(1) 本件発明1について
ア 対比
(ア) 本件発明1と引用発明1とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明1の「流動層造粒装置内に熱風を送り込(む)」点,「造粒工程」,「乾燥工程」は,それぞれ,本件発明1の「流動層造粒装置内に熱風を送り込(む)」点,「造粒工程」,「最終乾燥工程」に相当する。
そして,引用発明1の「原料」は抹茶,煎茶抽出物を含み,カテキン類を含有するから,本件発明1の「カテキン類含有原料」に相当し,引用発明1の「水」は,本件発明1の「水性媒体」に相当する。
(イ) 引用発明1の造粒工程における「熱風入口温度」,「原料1kg当たりの水の噴霧流量」は,それぞれ,本件発明1の「(A)熱風温度」と,「(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度」に相当する。
そして,引用発明1は,「造粒工程において,熱風入口温度が70?80℃であり」,「熱風入口温度[℃]と,原料1kg当たりの水の噴霧流量[mL/分/kg]との比が,約9.52?10.88[℃/mL/分/kg]であ(る)」から,本件発明1の「(A)熱風温度」(74℃以上),「(A)熱風温度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]」(2.2?10.8[℃/mL/分/kg])と重複する部分がある。
(ウ) 引用発明1は「原料」に「煎茶抽出物」を含むから,本件発明1と同様に,「カテキン類含有原料のカテキン類源が,茶抽出乾燥物及び平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物から選択される少なくとも1種であ(る)」。
(エ) 引用発明1は「原料」に「デキストリン」を含むから,本件発明1と同様に,「カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含(む)」ものである。
(オ) 引用発明1は「水」を「水性媒体」とし,有機溶媒は含まないから,本件発明1と同様に,「水性媒体中の有機溶媒の濃度は45質量%以下であ(る)」。
(カ) 引用発明1の「造粒時間及び乾燥時間の合計」は,本件発明1の「全加熱時間」に相当し,引用発明1は「造粒時間及び乾燥時間の合計が,原料1kg当たり,約2.62?6.05分/kgであ(る)」から,本件発明1の「全加熱時間」(カテキン類含有原料1kg当たり,0.14?2.8分/kg)と重複する部分がある。
(キ) 引用発明1の「緑茶抽出顆粒体」は,本件発明1の「粉末茶組成物」に相当するから,引用発明1は,本件発明1と同様に,「粉末茶組成物の製造方法」である。
(ク) そうすると,本件発明1と引用発明1とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「流動層造粒装置内に熱風を送り込み,流動状態にしたカテキン類含有原料に水性媒体を噴霧する造粒工程及び最終乾燥工程を含み,
造粒工程において,(A)熱風温度が74℃以上であり,(A)熱風温度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]が,2.2?10.8[℃/mL/分/kg]であり,
カテキン類含有原料のカテキン類源が,茶抽出乾燥物及び平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物から選択される少なくとも1種であり,
カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含み,
水性媒体中の有機溶媒の濃度は45質量%以下であり,
全加熱時間が,カテキン類含有原料1kg当たり,0.14?2.8分/kgである,
粉末茶組成物の製造方法。」
(相違点1の1)
本件発明1は,「カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量」が「0.09?0.15[L/kg]」であって,「(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度」が「8.3?33.3[mL/分/kg]」であるのに対し,引用発明1は,「原料1kg当たりの水の全噴霧量」(本件発明1の「カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量」に相当する。)が「約0.078[L/kg]」であって,「原料1kg当たりの水の噴霧流量」が「約7.35[ml/分/kg]」である点。
(相違点1の2)
本件発明1は,「糖の合計含有量」が「粉末茶組成物に対して30?65%質量%」であるのに対し,引用発明1は,「デキストリンの合計含有量」が「緑茶抽出顆粒体に対して,約69.85質量%?約73.53質量%」である点。
イ 判断
(ア) このように,本件発明1と引用発明1とは,相違点1の1及び1の2に関し相違する。
そして,本件発明1は,相違点1の1及び1の2に係る構成を有することにより「風味と溶解性とをバランスよく両立可能で,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物の製造方法を提供することができる。かかる粉末茶組成物は,均質な商品生産を可能とし,また優れた消費者価値をもたらすものである。」(本件明細書【0008】)といった顕著な効果を奏するものであるから,この点は実質的な相違点である。
よって,本件発明1は,引用例1に記載された発明であるとは認められない。
(イ) 次に,相違点1の1及び1の2についてみる。
本件発明1は,「風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物を安定的に製造する方法を提供する」(本件明細書【0005】)との課題を解決するために,粉末茶組成物の製造方法における,加熱時間や,熱風温度と噴霧速度との比に着目してなされた発明であり(同【0006】),「カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量」は全加熱時間に,「(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度」は熱風温度と噴霧速度との比に,それぞれ関係する上,粒子の均一性に関係するものであり(同【0023】,【0025】),「糖の合計含有量」も粒子の均一性に関係するものと解されるから(同【0018】),これらは課題や効果に影響を及ぼすパラメータである。
これに対し,引用発明1は,風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物との関連で,「原料1kg当たりの水の全噴霧量」,「原料1kg当たりの水の噴霧流量」,「デキストリンの合計含有量」に着目していない。引用発明1が引用例1に開示された比較例であることも踏まえれば(【0017】),引用発明1において「原料1kg当たりの水の全噴霧量」,「原料1kg当たりの水の噴霧流量」,「デキストリンの合計含有量」を調整する動機付けは,特段認められない。この点は,他の引用例,証拠をみても,同様である。
そして,既に述べたとおり,本件発明1は,相違点1の1及び1の2に係る構成を有することにより顕著な効果を奏するものである。
そうすると,引用発明1において,相違点1の1及び1の2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
ウ 以上のとおりであるから,本件発明1は,引用例1に記載された発明であるとは認められず,引用発明1に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(2) 本件発明2?8について
本件発明2?8は,本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから,その余の事項を検討するまでもなく,本件発明2?8は,本件発明1と同様の理由により,引用例1に記載された発明であるとは認められず,引用発明1に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

3 引用例2に基づく検討
(1) 本件発明1について
ア 対比
(ア) 本件発明1と引用発明2とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明2の「流動層造粒機内に熱風を送り込(む)」点,「造粒工程」,「乾燥工程」は,それぞれ,本件発明1の「流動層造粒装置内に熱風を送り込(む)」点,「造粒工程」,「最終乾燥工程」に相当する。
そして,引用発明2の「原料」は抹茶を含み,カテキン類を含有するから,本件発明1の「カテキン類含有原料」に相当し,引用発明2の「水」は,本件発明1の「水性媒体」に相当する。
(イ) 引用発明2の造粒工程における「吸気温度」,「原料1kg当たりの水の噴霧速度」は,それぞれ,本件発明1の「(A)熱風温度」,「(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度」に相当する。
そして,引用発明2は,「造粒工程において」,「吸気温度[℃]と,原料1kg当たりの水の噴霧速度[mL/分/kg]との比が,約7.5?12[℃/mL/分/kg]であ(る)」から,本件発明1の「(A)熱風温度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]」(2.2?10.8[℃/mL/分/kg])と重複する部分がある。
(ウ) 引用発明2の「原料」中の「粉末抹茶」は,本件発明1の「茶葉粉砕物」に相当するから,引用発明2は本件発明1と,「カテキン類含有原料のカテキン類源」が,「茶抽出乾燥物」及び「茶葉粉砕物から選択される少なくとも1種であ(る)」限りにおいて共通する。
(エ) 引用発明2は「原料」に「キシロオリゴ糖」,「デキストリン」を含むから,本件発明1と同様に,「カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含(む)」ものである。
(オ) 引用発明2は「水」を「水性媒体」とし,有機溶媒は含まないから,本件発明1と同様に,「水性媒体中の有機溶媒の濃度は45質量%以下であ(る)」。
(カ) 引用発明2の「造粒時間及び乾燥時間の合計」は,本件発明1の「全加熱時間」に相当し,引用発明2は「造粒時間及び乾燥時間の合計が,原料1kg当たり,約0.75分/kgであ(る)」から,本件発明1と同様に,「全加熱時間が,カテキン類含有原料1kg当たり,0.14?2.8分/kgである」。
(キ) 引用発明2の「造粒物」は,本件発明1の「粉末茶組成物」に相当するから,引用発明2は,本件発明1と同様に,「粉末茶組成物の製造方法」である。
(ク) そうすると,本件発明1と引用発明2とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「流動層造粒装置内に熱風を送り込み,流動状態にしたカテキン類含有原料に水性媒体を噴霧する造粒工程及び最終乾燥工程を含み,
造粒工程において,(A)熱風温度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]が,2.2?10.8[℃/mL/分/kg]であり,
カテキン類含有原料のカテキン類源が,茶抽出乾燥物及び茶葉粉砕物から選択される少なくとも1種であり,
カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含み,
水性媒体中の有機溶媒の濃度は45質量%以下であり,
全加熱時間が,カテキン類含有原料1kg当たり,0.14?2.8分/kgである,
粉末茶組成物の製造方法。」
(相違点2の1)
本件発明1は,「造粒工程において,(A)熱風温度が74℃以上であ(る)」のに対し,引用発明2は,「造粒工程において,吸気温度が60℃であ(る)」点。
(相違点2の2),
本件発明1は,「カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量」が「0.09?0.15[L/kg]」であって,「(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度」が「8.3?33.3[mL/分/kg]」であるのに対し,引用発明2は,「原料1kg当たりの水の全噴霧量」(本件発明1の「カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量」に相当する。)が「約0.325?0.52[L/kg]」であって,「原料1kg当たりの水の噴霧速度」が「約5?8[mL/分/kg]」である点。
(相違点2の3)
本件発明1は,「カテキン類含有原料のカテキン類源」が,「茶抽出乾燥物」及び「平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物」から選択される少なくとも1種であるのに対し,引用発明2は,「原料」が「抹茶」を含むものの,平均粒子径が不明である点。
(相違点2の4)
本件発明1は,「糖の合計含有量」が「粉末茶組成物に対して30?65%質量%」であるのに対し,引用発明2は,「キシロオリゴ糖」及び「デキストリン」の合計含有量が原料に対して20重量%であって,「造粒物」に対する合計含有量は不明で,最大でも20重量%である点。
イ 判断
(ア) このように,本件発明1と引用発明2とは,相違点2の1?2の4に関し相違し,この点は実質的な相違点であるから,本件発明1は,引用例2に記載された発明であるとは認められない。
(イ) 次に,相違点2の1?2の4についてみる。
既に述べたとおり,本件発明1は,課題を解決するために,粉末茶組成物の製造方法における,加熱時間や,熱風温度と噴霧速度との比に着目してなされた発明であり,「カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量」,「(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度」,「糖の合計含有量」は,課題や効果に影響を及ぼすパラメータである(前記2(1)イ(イ))。
また,「熱風温度」も同様に,全加熱時間や熱風温度と噴霧速度の比に関係する上,粒子の均一性に関係し(本件明細書【0022】,【0059】【表3】),「茶葉粉砕物」の平均粒子径が溶解性に関係することも明らかであるから,これらも課題や効果に影響を及ぼすパラメータである。
これに対し,引用発明2は,風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物との関連で,「吸気温度」,「原料1kg当たりの水の全噴霧量」,「原料1kg当たりの水の噴霧流量」,「粉末抹茶」の「平均粒子径」,「キシロオリゴ糖」及び「デキストリン」の合計含有量に着目していない。
例えば,熱風温度を,引用発明1において70?80℃に,引用発明3において80℃に設定しているが,引用例2には「吸気温度」を調整することに関する記載は特にない。同様に,引用例2には「原料1kg当たりの水の全噴霧量」,「原料1kg当たりの水の噴霧流量」,「粉末抹茶」の「平均粒子径」を調整することに関する記載は特にない。
引用発明2が,賦形剤や結合剤などの成分の使用の低減を課題としていることも踏まえれば(引用例2[0007]),引用発明2において「吸気温度」,「原料1kg当たりの水の全噴霧量」,「原料1kg当たりの水の噴霧流量」,「粉末抹茶」の「平均粒子径」,「キシロオリゴ糖」及び「デキストリン」の合計含有量を調整する動機付けは,特段認められない。この点は,他の引用例,証拠をみても同様である。
そして,本件発明1は,相違点2の1?2の4に係る構成を有することにより,前記顕著な効果を奏するものであり(前記2(1)イ(ア)),熱風温度との関係でブロッキング防止の効果も認められる(本件明細書【0059】【表3】)。
そうすると,引用発明2において,相違点2の1?2の4に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
ウ 以上のとおりであるから,本件発明2は,引用例2に記載された発明であるとは認められず,引用発明2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(2) 本件発明2?8について
本件発明2?8は,本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから,その余の事項を検討するまでもなく,本件発明2?8は,本件発明1と同様の理由により,引用例2に記載された発明であるとは認められず,引用発明2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

4 引用例3に基づく検討
(1) 本件発明1について
ア 対比
(ア) 本件発明1と引用発明3とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明3の「流動層造粒装置内に熱風を送り込(む)」点,「造粒工程」,「乾燥工程」は,それぞれ,本件発明1の「流動層造粒装置内に熱風を送り込(む)」点,「造粒工程」,「最終乾燥工程」に相当する。
そして,引用発明3の「茶葉粉粒体」はカテキン類を含有するから,本件発明1の「カテキン類含有原料」に相当し,引用発明3の「バインダー液」はエンドウタンパクにお湯を添加し攪拌分散して調整したものであるから,本件発明1の「水性媒体」に相当する。
(イ) 引用発明3の造粒工程における「乾燥吸気温度」,「原料1kg当たりのバインダー液の全噴霧量」,「原料1kg当たりのバインダー噴霧流速」は,それぞれ,本件発明1の「(A)熱風温度」,「カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量」,「(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度」に相当する。
そして,引用発明3は,「造粒工程において,乾燥吸気温度が80℃であり,原料1kg当たりのバインダー液の全噴霧量が約0.130[L/kg]であって,原料1kg当たりのバインダー噴霧流速が約16.25[ml/分/kg]であり,乾燥吸気温度[℃]と,原料1kg当たりのバインダー噴霧流速[mL/分/kg]との比が,約4.9[℃/mL/分/kg]であ(る)」から,本件発明1と同様に,「造粒工程において,(A)熱風温度が74℃以上であり,カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量が0.09?0.15[L/kg]であって,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度が8.3?33.3[mL/分/kg]であり,(A)熱風温度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]が,2.2?10.8[℃/mL/分/kg]であ(る)」。
(ウ) 引用発明3は,「原料が,平均粒子径20μmまでに粉砕した茶葉粉粒体であ(る)」から,本件発明1と同様に,「カテキン類含有原料のカテキン類源が,茶抽出乾燥物及び平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物から選択される少なくとも1種であ(る)」。
(エ) 引用発明3の「バインダー液」は,有機溶媒は含まないから,本件発明1と同様に,「水性媒体中の有機溶媒の濃度は45質量%以下であ(る)」。
(オ) 引用発明3の「茶含有組成物」は,本件発明1の「粉末茶組成物」に相当するから,引用発明3は,本件発明1と同様に,「粉末茶組成物の製造方法」である。
(カ) そうすると,本件発明1と引用発明3とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「流動層造粒装置内に熱風を送り込み,流動状態にしたカテキン類含有原料に水性媒体を噴霧する造粒工程及び最終乾燥工程を含み,
造粒工程において,(A)熱風温度が74℃以上であり,カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量が0.09?0.15[L/kg]であって,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度が8.3?33.3[mL/分/kg]であり,(A)熱風温度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]が,2.2?10.8[℃/mL/分/kg]であり,
カテキン類含有原料のカテキン類源が,茶抽出乾燥物及び平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物から選択される少なくとも1種であり,
水性媒体中の有機溶媒の濃度は45質量%以下である,
粉末茶組成物の製造方法。」
(相違点3の1)
本件発明1は,「カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含み,糖の合計含有量が粉末茶組成物に対して30?65%質量%であ(る)」のに対し,引用発明3は原料に糖を含まない点。
(相違点3の2)
本件発明1は,「全加熱時間」が,「カテキン類含有原料1kg当たり,0.14?2.8分/kg」であるのに対し,引用発明3は,「造粒時間及び乾燥時間の合計」(本件発明1の「全加熱時間」に相当する。)が,「原料1kg当たり,約2.98分/kg」である点。
イ 判断
(ア) このように,本件発明1と引用発明3とは,相違点3の1及び3の2に関し相違し,この点は実質的な相違点であるから,本件発明1は,引用例3に記載された発明であるとは認められない。
(イ) 次に,相違点3の1及び3の2についてみる。
既に述べたとおり,本件発明1は,課題を解決するために,粉末茶組成物の製造方法における,加熱時間や,熱風温度と噴霧速度との比に着目してなされた発明であり,「糖の合計含有量」も課題や効果に影響を及ぼすパラメータである(前記2(1)イ(イ))。「全加熱時間」も,課題や効果に影響を及ぼすパラメータである。
これに対し,引用発明3は,風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物との関連で,糖を含有させることや,「造粒時間及び乾燥時間の合計」に着目していない。
例えば,引用発明1はデキストリンを含有し,引用発明2は,キシロオリゴ糖,デキストリンを含有するが,引用例3には糖を含有させることに関する記載は特になく,同様に,引用例3には「造粒時間及び乾燥時間の合計」を調整することに関する記載は特にないから,引用発明3において,糖を含有させることや,「造粒時間及び乾燥時間の合計」を調整することの動機付けは,特段認められない。この点は,他の引用例,証拠をみても同様である。
そして,本件発明1は,相違点3の1及び3の2に係る構成を有することにより,前記顕著な効果を奏するものであり(前記2(1)イ(ア)),全加熱時間との関係で風味に関する効果も認められる(本件明細書【0052】【表2】)。
そうすると,引用発明3において,相違点3の1及び3の2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
ウ 以上のとおりであるから,本件発明1は,引用例3に記載された発明であるとは認められず,引用発明3及び引用例1,2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(2) 本件発明2?8について
本件発明2?8は,本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから,その余の事項を検討するまでもなく,本件発明2?8は,本件発明1と同様の理由により,引用例3に記載された発明であるとは認められず,引用発明3及び引用例1,2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

第6 取消理由3(36条6項1号)及び取消理由4(36条4項1号)について
1 本件発明は,「従来,溶解性を改善した粉末茶として,例えば,茶葉粉砕物を流動層造粒して,安息角を45度未満に調整した茶葉顆粒(特許文献1),緑茶から60?99質量%のエタノール水溶液で抽出した溶剤抽出液をバインダーとして用いて緑茶の水抽出粉末を流動層造粒した顆粒体(特許文献2)等が提案されている。…本発明者らの検討によれば,特許文献1の実施例(「本発明品」及び「比較品1」)に記載の条件によりカテキン類含有原料を造粒したところ,得られた粉末茶組成物は溶解性に優れるものの,風味に劣ることが判明した。また,特許文献1の実施例(「比較品2」)に記載の条件によりカテキン類含有原料を造粒したところ,得られた粉末茶組成物は,粒子の均一性に劣ることが判明した。さらに,特許文献2に記載されるように,高濃度のエタノール水溶液で抽出された溶剤抽出液をバインダーとして用い,カテキン類含有原料を造粒したところ,得られた粉末茶組成物は水への溶解性に劣ることが判明した。」(本件明細書【0003】?【0005】)ことを踏まえ,「風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物を安定的に製造する方法を提供すること」(同【0005】)を解決しようとする課題としてなされたものである。
そして,「本発明者らは,粉末茶組成物の風味と溶解性との関係について詳細に検討したところ,加熱時間を制御することにより風味を改善できることを新たに見出したものの,溶解性が低下しやすいことも同時に見出した。そして,流動層造粒において,加熱時間を特定範囲内に制御することにより,風味と溶解性とをバランスよく両立可能な粉末茶組成物が得られることを見出した。また,本発明者らは,加熱時間を特定範囲に制御の下,熱風温度と噴霧速度との比を制御することにより,粒子の均一性に優れる粉末茶組成物が安定的に得られることを見出した。さらに,バインダーが有機溶媒を含む場合には,有機溶媒濃度を低減することにより,粉末茶組成物の溶解性を改善できることを見出した。」(同【0006】)もので,請求項に記載された事項を採用することにより,「風味と溶解性とをバランスよく両立可能で,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物の製造方法を提供することができる。」(同【0008】)といった効果を奏するものである。

2 カテキン類含有原料1kg当たりの全加熱時間について(平成30年11月1日付け取消理由通知書(決定の予告))
(1) 本件特許の請求項1において,カテキン類含有原料1kg当たりの全加熱時間について0.14?2.8分/kgと規定されている。
この点に関し,本件明細書の発明の詳細な説明には,「全加熱時間は,カテキン類含有原料1kg当たり,…風味及び溶解性の観点から…,0.1分/kg以上が殊更に好ましく,…。かかる全加熱時間の範囲としては,カテキン類含有原料1kg当たり,…より好ましくは0.05?2.8分/kg,…である。」(本件明細書【0031】)と記載され,カテキン類含有原料1kg当たりの全加熱時間について当該範囲内とすることを裏付ける記載がある。
また,発明の詳細な説明には,全加熱時間を0.14分/kgとした実施例17(カテキン類含有原料95kg),実施例18(同190kg)(同【0071】,【0072】,【0073】【表6】),2.8分/kgとした実施例12(同3kg)(同【0063】,【0065】【表4】)が開示され,それぞれ結果が良好であった旨記載されている。
このように,発明の詳細な説明には,本件発明のカテキン類含有原料1kg当たりの全加熱時間が,0.14?2.8分/kgであることについて記載があるし,カテキン類含有原料の量の違いにより結果が異なることを裏付ける証拠もないから,カテキン類含有原料の量の違いによらず,カテキン類含有原料1kg当たりの全加熱時間が当該範囲内であれば課題を解決することができるものと認められる。
なお,発明の詳細な説明における実施例17,18に関する記載(同【0071】,【0072】)には,必ずしも明瞭でない点があるが,本件明細書の他の記載(特に,同【0073】【表6】)も併せて,総合的にみれば,実施例17,18に係る諸条件を理解することができないものでもなく,結果を信用することができないとまではいえない(例えば,実施例17,18は,実施例16(同【0070】)に比べ,原料の量が格段にスケールアップしているから,実施例16と同じ造粒機を用い,風量も同じ条件とすることが合理的でなく,流動層が形成されるような造粒機,風量とすべきであるから,適宜の造粒機(同【0010】)のうち原材料に見合った容量のものを用い,流動層が形成されるような風量で実験が行われたものと考えられる。流動層が形成されていれば,造粒機,風量の違いが本件発明の課題の解決に格別影響するとは認められないから,具体的に示されていないとしても,結果を理解する上で格別差し支えるものではない。また,実施例17,18に関する記載(同【0071】,【0072】)に基づき,実施例17では1583mLの水を60秒間,実施例18では3167mLの水を120秒間,噴霧したと解すると,当該記載中のその他の記載や表6(同【0073】)の記載内容と整合する。)。
よって,本件発明には,課題を解決することができないものが含まれているとは認められない。
(2) 同様の理由により,本件発明において,カテキン類含有原料1kg当たりの全加熱時間の全範囲において,風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物を製造することができないとは認められない。

3 熱風の風量について(同)
(1) 本件発明は,熱風の風量を特定していない。
この点に関し,発明の詳細な説明に,風量を2.5m^(3)/分に設定した実施例(実施例5?10,12?16)が開示され,誤記のため具体的な風量は明らかではないが,流動層が形成されるような所定の風量に設定されたと解される実施例(実施例17,18)が開示され(2.5m^(3)/分との記載が合理的でないことは前述のとおり。),いずれも,結果が良好であった旨記載されている(本件明細書【0053】?【0074】)。
熱風の風量(風速)は造粒物の特性を決定する上で重要な因子であると認められるが(引用例11,13),本件発明の熱風の風量が,流動層が形成されるような風量であることは明らかである。
そして,流動層が形成されていれば,風量の違いが本件発明の課題の解決に格別影響するとは認められず,流動層が形成されるような風量であれば,本件発明が,実施例と同様の効果が得られるものと解される。
よって,発明の詳細な説明に開示された内容を,本件発明の範囲まで一般化することはできないとはいえない。
(2) 同様の理由により,熱風の風量が変化した場合に実施例と同等の風味を有する粉末茶組成物が得られるものと解されるから,本件発明において,風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物を製造することができないとはいえない。

4 溶解性について(同)
(1) 本件発明のカテキン類含有原料は平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物を含み得るが,発明の詳細な説明には,平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物を使用した場合の製造について具体的な開示がない。
しかし,発明の詳細な説明に「茶葉粉砕物の平均粒子径(d_(50))は,…1μm以上がより好ましく,…30μm以下がより好ましい。茶葉粉砕物の平均粒子径(d_(50))の範囲としては,…更に好ましくは1?30μmである。」(本件明細書【0012】)と記載されているように,平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物は,平均粒子径が好適な範囲内にあるものであるから,カテキン類含有原料のカテキン類源として,平均粒子径が当該範囲内の茶葉粉砕物を選択した場合に,本件発明は,課題を解決することができることが窺える。
また,発明の詳細な説明には,溶解性の評価に関し,次のように記載されている。
「【0042】
(3)溶解性の評価
撹拌状態の20℃の水200mLに,準備工程で分取した篩下サンプル3gを投入し,1分間撹拌した状態を目視で下記の基準により評価した。
【0043】
溶解性の評価基準
A:清澄である
B:極僅かに不要物が残っている
C:少し不要物が残っている
D:不溶物が残っている
E:沈殿物があり,不溶物が残っている」
ここで,A?E評価のうち,課題を解決することができるとの判断基準は定かではないが,少なくとも,E評価(沈殿物があり,不溶物が残っている)とされた比較例1(同【0052】【表2】),比較例4(同【0065】【表4】)は課題を解決することができないとされていることからすると,溶解性に関し,D評価(不溶物が残っている)以上であれば足り,本件発明の課題を解決することができると判断しているものと認められる(なお,特許権者も同趣旨を主張している(平成30年8月9日付け意見書22?23頁,平成30年12月27日付け意見書22?23頁)。)。
そして,カテキン類含有原料のカテキン類源として,平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物を選択した場合に課題を解決することができる旨が発明の詳細な説明に記載されており,溶解性の評価がE評価となることを示す具体的な証拠はなく,少なくともD評価となるものと解されるから(乙1(平成30年8月3日付け実験成績証明書)),その意味において,本件発明の課題を解決することができるものと解される。
よって,本件発明は,カテキン類含有原料が平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物を含む場合について,課題を解決することができないとはいえない。
(2) 同様の理由により,本件発明において,カテキン類含有原料が平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物を含む場合,風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物を製造することができないとはいえない。

5 熱風温度について(同)
(1) 本件訂正により,本件発明は,造粒工程において,(A)熱風温度が74℃以上であることが特定された。
そして,比較例3(64℃)の結果と実施例5(76℃)の結果との関係(本件明細書【0059】【表3】)や実施例10,12(74℃)の結果(【0065】【表4】)からすると,(A)熱風温度が74℃以上であれば,ブロッキングが発生しないと認められる。
よって,本件発明の範囲の全体において,課題を解決することができないとはいえない。
(2) 同様の理由により,本件発明において,熱風温度の全範囲において,風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物を製造することができないとはいえない。

6 単位原料量当たりの水性媒体の噴霧液量について(同)
(1) 本件訂正により,本件発明は,カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量が0.09?0.15[L/kg]であることが特定された。
そして,実施例の結果を踏まえれば,カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量が0.09?0.15[L/kg]であれば,課題を解決することができるものと認められる。
よって,本件発明の範囲の全体において,課題を解決することができないとはいえない。
(2) 同様の理由により,本件発明において,風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物を製造することができないとはいえない。

7 風味について(平成30年6月12日付け取消理由通知書)
(1) 発明の詳細な説明に開示された実施例で使用されているカテキン類含有原料は香料が配合されているところ(本件明細書【0046】【表1】),風味に香料の影響があるとしても,香料について条件を統一した上で実験を行っているから,その結果から本件発明の効果を確認することができる。特に,実施例1?4の結果と比較例1の結果の関係から,全加熱時間が短いほど,風味の評価が向上する傾向が理解できる(同【0052】【表2】)。
一方,香料の有無やその種類の違いが当該傾向に影響を及ぼすことを示す具体的な証拠はない。
よって,香料が,課題を解決する上で必須のものとは認められない。
(2) 同様の理由により,本件発明の方法を用いて,風味と溶解性とをバランスよく両立し,かつ粒子の均一性に優れる粉末茶組成物を製造することが,当業者に過度な試行錯誤を要するとはいえない。

8 糖について(同)
本件訂正により,本件発明は,カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含み,糖の合計含有量が粉末茶組成物に対して30?65%質量%であることが特定された。
この点に関し,発明の詳細な説明には,カテキン類含有原料に糖が含まれた実施例が開示されており(本件明細書【0046】【表1】),本件発明における糖はバインダーとしても機能していることを踏まえれば(平成30年8月9日意見書(特許権者)26頁),カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方に糖が含まれていれば足りるものと認められる。
糖のバインダーとしての機能(結合力)等は糖の種類により異なるとしても,本件発明の課題に影響を及ぼすことを示す具体的な証拠はない。
また,発明の詳細な説明(【0018】)に例示された糖のすべてについて検討することが,当業者にとって過度な試行錯誤を要するものとも認められない。

第7 取消理由として採用しなかった異議申立理由について
1 引用例4に基づく,29条1項3号又は29条2項違反について
申立人佐藤は,引用例4に記載された発明(実施例3)を根拠に,本件発明1?8は,引用例4に記載された発明である,又は引用例4に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができた旨主張している(特許異議申立書3(4)(イ),(ウ),(オ))。
しかしながら,引用例4に記載された発明は,茶葉微粉末(200メッシュ以上96%)とデキストリンからなる原料に,濃縮抽出液(茶葉の可溶成分を溶解抽出した液を濃縮したもの)を噴霧するものであって,本件発明1?8における「カテキン類含有原料」とも見なすことができる当該濃縮抽出液が,本件発明1?8における「水性媒体」に相当するとは解されない。
また,茶葉微粉末及びデキストリン1kg当たりの当該濃縮抽出液の全噴霧量は0.9L/kg(=90l/[茶葉微粉末50kg+デキストリン50kg])であること,茶葉微粉末の平均粒子径も明らかでないことも踏まえれば,引用例4に記載された発明(実施例3)を根拠に,本件発明1?8は,引用例4に記載された発明であるとはいえない。
そして,引用例4に記載された発明において,本件発明1?8の構成とする動機付けは特段認められないから,本件発明1?8は,引用例4に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

2 36条6項1号違反について
(1) 官能評価について
申立人寺田は,発明の詳細な説明に記載された風味,溶解性の評価は,客観的に正確に評価したものと理解することができないから,実施例の結果から,本件発明が課題を解決することができたということができない旨主張している(特許異議申立書3(4)エ-5)。
しかしながら,発明の詳細な説明における風味,溶解性の評価に関する記載からすると(本件明細書【0038】?【0043】),実施例に係る評価は,官能評価に関し一般的に行われている手法で行われているものであると認められる。
そして,実施例の結果をみても,その評価結果について特に不合理な点は認められない。
よって,上記の主張を根拠に,本件発明が,課題を解決することができないものであるとは認められない。
(2) パラメータについて
申立人寺田は,発明の詳細な説明に開示された風味評価試験では,適切な測定方法に従って効果と数値範囲との関係が測定されていないから,(A)熱風温度[℃]と,(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)],カテキン類含有原料1kg当たりの全加熱時間,水性媒体中の有機溶媒の濃度に関し,本件発明で特定された数値範囲を満たせば,課題を解決することができると理解することができないと主張している(特許異議申立書3(4)エ-6)。
しかしながら,実施例1?4,比較例1の結果(本件明細書【0052】【表2】)から,加熱時間と風味の関係が,実施例5?8,比較例2,3の結果(同【0059】【表3】)から,比[(A)/(B)]と粒子の均一性の関係が,実施例9?12,比較例4の結果(同【0065】【表4】)から,水性媒体中の有機溶媒の濃度と溶解性の関係が,それぞれ理解できる。
よって,上記主張を根拠に,本件発明が,課題を解決することができないものであるとは認められない。

第8 むすび
以上のとおり,本件の請求項1?8に係る特許は,特許法29条1項3号,同条2項の規定に違反してされたものとは認められず,同法36条4項1号,同条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとは認められないから,前記取消理由及び前記特許異議申立ての理由により取り消すことはできない。
また,他に本件の請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層造粒装置内に熱風を送り込み、流動状態にしたカテキン類含有原料に水性媒体を噴霧する造粒工程及び最終乾燥工程を含み、
造粒工程において、(A)熱風温度が74℃以上であり、カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の全噴霧量が0.09?0.15[L/kg]であって、(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度が8.3?33.3[mL/分/kg]であり、(A)熱風温度[℃]と、(B)カテキン類含有原料1kg当たりの水性媒体の噴霧速度[mL/分/kg]との比[(A)/(B)]が、2.2?10.8[℃/mL/分/kg]であり、
カテキン類含有原料のカテキン類源が、茶抽出乾燥物及び平均粒子径が1?30μmである茶葉粉砕物から選択される少なくとも1種であり、
カテキン類含有原料及び水性媒体のうちの少なくとも一方が糖を含み、糖の合計含有量が粉末茶組成物に対して30?65質量%であり、
水性媒体中の有機溶媒の濃度は45質量%以下であり、
全加熱時間が、カテキン類含有原料1kg当たり、0.14?2.8分/kgである、粉末茶組成物の製造方法。
【請求項2】
茶抽出乾燥物の平均粒子径(d_(50))が、5?200μmである、請求項1記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項3】
粉末茶組成物の平均粒子径(d_(50))が、70?250μmである、請求項1又は2記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項4】
流動状態にしたカテキン類含有原料に水性媒体を断続的に噴霧し、噴霧と噴霧中断とを1サイクルとして繰り返し行う造粒工程を含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項5】
カテキン類含有原料が糖を含み、カテキン類含有原料中の糖の含有量が30?80質量%である、請求項4記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項6】
水性媒体が水である、請求項1?5のいずれか1項に記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項7】
カテキン類含有原料が、カテキン類源として、茶抽出乾燥物を含む、請求項1?6のいずれか1項に記載の粉末茶組成物の製造方法。
【請求項8】
カテキン類含有原料中の茶抽出乾燥物の含有量が15?60質量%である、請求項7記載の粉末茶組成物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-23 
出願番号 特願2016-139864(P2016-139864)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23F)
P 1 651・ 537- YAA (A23F)
P 1 651・ 536- YAA (A23F)
P 1 651・ 121- YAA (A23F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮岡 真衣  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 莊司 英史
窪田 治彦
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6185121号(P6185121)
権利者 花王株式会社
発明の名称 粉末茶組成物の製造方法  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ