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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  G08B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G08B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G08B
管理番号 1353142
異議申立番号 異議2018-700072  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-26 
確定日 2019-06-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6169665号発明「避難誘導システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6169665号の明細書,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,2〕について訂正することを認める。 特許第6169665号の請求項1,2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許6169665号の請求項1及び2に係る特許についての出願は,平成25年7月23日を出願日とする出願を分割してなされた,平成27年10月14日を出願日とする出願であって,平成29年7月7日にその特許権の設定登録がされ,平成29年7月26日に特許掲載公報が発行された。その後,平成30年1月26日に特許異議申立人滝川水大より請求項1及び2に対して特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は,概ね次のとおりである。
平成30年 5月 8日付け 取消理由通知
平成30年 6月 6日付け 特許権者による意見書の提出
平成30年 7月20日付け 取消理由通知
平成30年 8月29日付け 特許権者による意見書の提出
平成30年10月25日付け 取消理由通知
平成30年12月11日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成31年 2月28日 特許異議申立人による意見書の提出

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が請求する訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は,以下のア,イのとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記通路を複数の単位通路に分割し,」と記載されているのを,「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し,」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
明細書の段落【0007】,【0009】,【0060】にそれぞれ「前記通路を複数の単位通路に分割し,」と記載されているのを,「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し,」に訂正する。
本件訂正請求は,一群の請求項〔1,2〕に対して請求されたものである。また,明細書に係る訂正は,一群の請求項〔1,2〕について請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正前の請求項1に記載されている「前記通路を複数の単位通路に分割し,」という記載のうちの「複数の」という記載は,訂正後には存在しないものとなっているが,以下のとおり,訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項1には,「該単位通路に対応して複数の発光装置をそれぞれ該単位通路に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置」と記載されているから,「単位通路」の個数は,「単位表示装置」の個数に対応する個数,すなわち「複数」であるといえる。
したがって,訂正後の請求項1に記載されている「単位通路」は複数存在しているから,「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し,」において,単位通路が「複数」であることが明記されていなくても,通路が複数の単位通路に分割されていることは明らかである。
なお,本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)を参照しても,段落【0016】の「この避難誘導システムにおいて,非常口20-1,20-2に繋がる通路は,複数の単位通路30-1?30-11に分割されており,」との記載及び図1によれば,「誘導エリア10」(段落【0014】)の全体の「通路」が,「複数の単位通路30-1?30-11に分割され」るものである。
したがって,訂正事項1は,訂正前の請求項1に記載されている「前記通路を複数の単位通路に分割」することについて,分割の態様を,各単位通路が,通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画であるように分割するという点で限定するものであるといえるから,特許請求の範囲の減縮を目的としている。

(イ)また,各単位通路が通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画であるように分割することに対応する内容として,図1には,誘導エリア10の通路全体が,それぞれ異常検知センサS1?S9のいずれか2個で挟まれた,複数の単位通路30-1?30-11に分割されていることが記載されているから,訂正事項1は,新規事項の追加に該当せず,本件特許明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

(ウ)そして,訂正事項1が,実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく,変更するものでもないことは明らかである。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は,訂正事項1による特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正であるから,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は平成31年2月28日に提出した意見書において,訂正前の請求項1には「1の通路に複数の単位通路が設けられた」態様のみが含まれていたものの,訂正後の請求項1には,上記態様のみならず,1の通路における所定の2地点にそれぞれ1個ずつの異常検知センサを配置して当該通路を分割することにより,1の通路に1の単位通路と当該単位通路以外の部分とが設けられたような態様も含まれることとなり,訂正事項1は実質上特許請求の範囲を拡張するものである旨,主張する。
しかしながら,上記(2)ア(ア)のとおり,訂正後の請求項1に記載されている「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し,」において,通路が複数の単位通路に分割されていることが明らかである一方,このような,通路を複数の単位通路に分割する態様以外に,分割後の単位通路の個数が1であるように分割する態様が含まれると理解することはできない。
よって,特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(5)訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって,明細書,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,2〕について訂正することを認める。

3.訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」のようにいう。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるものである。
(1)本件発明1
「避難口に繋がる通路の所定の箇所に分散配置され,該配置箇所における異常をそれぞれ検知する複数の異常検知センサと,
前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し,該単位通路に対応して複数の発光装置をそれぞれ該単位通路に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置と,
前記単位表示装置に対応して共通に設けられ,前記複数の異常検知センサの内の異常を検知した1または複数の異常検知センサに対応して,該異常を検知した異常個所から遠ざかる方向でかつ非常口に近づく方向を前記複数の単位表示装置のそれぞれの誘導方向として記憶する記憶装置と,
前記発光装置にそれぞれ対応して設けられ,前記単位通路の床面,側面,若しくは側面に取り付けられた手摺にライン状に配置される発光素子列と,
前記複数の単位表示装置に対応してそれぞれ設けられ,前記異常検知センサの異常検知に対応して前記記憶装置から取得した前記誘導方向に基づき該単位表示装置の複数の発光装置のそれぞれの発光素子列の発光素子を該誘導方向にしたがって順次繰り返し点灯するようにそれぞれ制御する複数の単位制御装置と,
を具備することを特徴とする避難誘導システム。」

(2)本件発明2
「前記異常検知センサは,温度検知センサ,煙検知センサのいずれか,若しくはその組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の避難誘導システム。」

4.取消理由通知に記載した取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して,当審が平成30年10月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は,次のとおりである。
(1)請求項1に「前記通路を複数の単位通路に分割し,該単位通路に対応して複数の発光装置をそれぞれ該単位通路に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置」との記載があるが,通路をどのように分割したものが「単位通路」であるのか不明であって,請求項1,2に係る発明は明確でなく,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないから,請求項1,2に係る特許は,当該規定に違反してされたものである。

(2)請求項1,2に係る発明は,本件特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明,及び,刊行物2?5のいずれかに示される周知技術に基いて,本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1,2に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
刊行物1:特開2011-253513号公報(異議申立人提出の甲第1号証)
刊行物2:特開平3-191500号公報
刊行物3:特開昭60-230293号公報
刊行物4:特開平10-188156号公報(異議申立人提出の甲第7号証)
刊行物5:実用新案登録第3181944号公報(異議申立人提出の甲第6号証)

5.取消理由通知に記載した取消理由についての当審の判断
(1)本件発明1,2の明確性(特許法第36条第6項第2号)について
本件発明1は,「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し,」という構成を含むものであって,この点は,上記2(3)ア(ア)のとおり,通路全体を複数の単位通路に分割することであって,各単位通路が,通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画として,分割されたものである,と理解することができる。
よって,本件発明1は明確である。
また,請求項1を引用する本件発明2も同様に明確である。

(2)本件発明1,2の進歩性(特許法第29条第2項)について
ア 刊行物1(特開2011-253513号公報)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
本願発明は,災害発生時に被災者を安全に対象エリア外に誘導して避難させる避難誘導システムに関するものである。」
(イ) 「【0006】
そこで本願発明では,対象エリア内における災害のうち,災害の発生位置の特定が必要な災害と,災害の発生位置の特定を必要としない災害の何れにおいても被災者を安全な方向へ的確に誘導して避難させることができる避難誘導システムを提供することを目的としてなされたものである。」
(ウ) 「【0008】
本願の第1の発明では,対象エリア内に設置された複数の第1災害検知手段1Aと,上記対象エリア内に設置された災害検知手段であって上記第1災害検知手段1Aとは検知対象が異なる第2災害検知手段1Bと,上記対象エリア内に設けられた避難路上に設置されて避難方向を表示する複数の誘導表示手段2と,上記対象エリア内における上記第1災害検知手段1Aと上記誘導表示手段2の配置に関する情報6と上記避難路に関する情報7を記憶した記憶手段3と,上記第1災害検知手段1Aからの入力情報と上記第2災害検知手段1Bからの入力情報に基づいて上記対象エリア内における災害の発生の有無を監視し,且つ上記第1災害検知手段1Aからの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときはその災害の発生位置に関する第1災害情報を,上記第2災害検知手段1Bからの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときは災害の発生に関する第2災害情報を,それぞれ出力する災害監視手段4と,上記災害監視手段4からの第1災害情報と上記記憶手段3からの記憶情報に基づいて被災者を災害発生位置から遠ざけながら上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく,また上記災害監視手段4からの第2災害情報に基づいて被災者を上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく,それぞれ上記複数の誘導表示手段2に避難方向を表示させる制御手段5とを備えたことを特徴としている。
【0009】
本願の第2の発明では,上記第1の発明に係る避難誘導システムにおいて,上記誘導表示手段2を,上記対象エリア内に設置された手摺装置30に設けたことを特徴としている。
【0010】
本願の第3の発明では,上記第1の発明に係る避難誘導システムにおいて,上記誘導表示手段2を,上記対象エリア内の壁面Wに設けたことを特徴としている。
【0011】
本願の第4の発明では,上記第1の発明に係る避難誘導システムにおいて,上記誘導表示手段2を,上記対象エリア内の床面Fに設けたことを特徴としている。」
(エ) 「【0015】
(a)本願の第1の発明に係る避難誘導システムによれば,対象エリア内に設置された複数の第1災害検知手段1Aからの入力情報に基づいて災害,例えば,火災のように災害の発生位置を確認することが被災者を安全に避難誘導する上において必須となるような災害の発生が検認されたときは,上記災害監視手段4から出力される災害発生位置に関する第1災害情報を受けて,上記制御手段5では,上記第1災害情報と上記記憶手段3からの記憶情報に基づいて,被災者を災害発生位置から遠ざけながら上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく,上記複数の誘導表示手段2において避難方向が表示されるので,被災者は上記誘導表示手段2を視認しその表示方向を確認することで災害発生位置へ近づくことなく安全に避難することができる。」
(オ) 「【0018】
(b)本願の第2の発明に係る避難誘導システムによれば,上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち,・・・。
【0019】
・・・この手摺装置30に所定間隔で順次設けられた誘導表示手段2を順次確認しながら該手摺装置30に沿って移動することで,しかも状況が変化した際に体を預けて安全性を確保することができる手摺装置30とか壁面が近くに在るという安心感とも相俟って,被災者はより安全に且つ迅速に避難することができる。
【0020】
(c)本願の第3の発明に係る避難誘導システムによれば,上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち,この発明では,上記誘導表示手段2を上記対象エリア内の壁面Wに設けているので,避難路の壁面寄りを通って避難するであろうと考えられる被災者の心理状態からして,上記誘導表示手段2が避難行動中の被災者の目につき易く,ここに表示された避難方向を容易に確認することができることから,被災者はより安全に且つ迅速に避難することができる。
【0021】
(d)本願の第4の発明に係る避難誘導システムによれば,上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち,災害発生時には避難路の照明が切れる場合もあり,また足元を確認しながら移動しようとする被災者の心理もあって,避難行動中の被災者の視線は移動方向前方側よりも寧ろ避難路の床面側に指向すると考えられることからして,この発明のように,上記誘導表示手段2を上記対象エリア内の床面Fに設けることで,上記誘導表示手段2が避難行動中の被災者の目につき易く,ここに表示された避難方向を容易に確認することができることから,被災者はより安全に且つ迅速に避難することができる。」
(カ) 「【0027】
上記第1災害検知手段1Aは,災害発生位置の特定が必要とされる災害の発生を検知するものであって,この実施形態では対象となる災害として火災を想定していることから,上記第1災害検知手段1Aは火災の発生を検知する火災検知器で構成される。そして,この第1災害検知手段1Aは,図11に例示するように,建物(ここではホテルの一つのフロアを例示しており,フロアスペースが特許請求の範囲中の「対象エリア」となる)の各客室A1?A10,B1?B4,C1?C6,D1?D16,及びサービススペースS1?S3のそれぞれに設置されており,これらの各客室の何れか及び各サービススペースの何れかにおいて火災が発生しこれを検知したときには,その火災検知信号が次述の災害監視手段4に出力される。」
(キ) 「【0030】
ここで,図11を参照して,対象エリアにおける客室,サービススペース,避難路及び避難口の位置関係を説明する。この例における対象エリアは,全体として逆T形の平面形体をもち,その中央部分に設けられたロビーR1から左右に延びる避難路R2と避難路R3,及びこれら避難路R2,R3に直交するように延びる避難路R4が設けられており,これら各避難路R2?R4をそれぞれその路幅方向に挟んでその両側に多数の客室とかサービススペースが配置されている。さらに,上記各避難路R2?R4の先端位置には,それぞれ非常階段に通じる避難口E1?E3が設けられている。また,上記各避難路R2?R4には,所定間隔で後述する誘導表示手段2が所定間隔で配置されている。なお,上記各避難路R2?R4は,平常時には建物内通路として機能するものである。
【0031】
「制御部Y」
制御部Yは,上記情報入力部Xの上記第1災害検知手段1Aあるいは第2災害検知手段1Bから出力される災害発生信号を受けて,後述の情報出力部Zに対して被災者の避難誘導のための制御信号を出力するものであって,記憶手段3と災害監視手段4と制御手段5及び出力手段8を備えて構成される。
【0032】
上記記憶手段3は,配置情報6と避難路情報7を記憶保持しており,災害の発生時にはその記憶情報が制御手段5に入力される。
【0033】
ここで,上記配置情報6は,図11に示す対象エリアにおける客室及びサービススペースの配置とか,これら客室及びサービススペースと上記第1災害検知手段1Aとの位置的な対応関係,即ち,どの第1災害検知手段1Aがどの客室あるいはサービススペースに配置されているのか,等の予め確定された情報である。従って,例えば,特定の第1災害検知手段1Aによって火災発生が検知された場合,この特定の第1災害検知手段1Aは特定の客室に設置されたものであって,対象エリアのどの位置において火災が発生したかを容易に判定することができる。
【0034】
また,上記避難路情報7は,上記対象エリアにおける避難路に関する情報であって,ここには,対象エリアにおける各避難路R1?R4の位置とこれら相互の接続関係,及び各避難路R1?R4と客室及びサービススペースとの位置関係,さらには上記各避難口E1?E3の対象エリアにおける配置位置及びこれらと上記各避難路R1?R4との位置関係等の予め確定された情報である。」
(ク) 「【0036】
そして,上記災害監視手段4は,特定の第1災害検知手段1Aから火災発生信号が入力され,これによって火災の発生が検認されたときは,火災発生に関する情報と火災の発生位置に関する第1災害情報を次述の制御手段5に出力する。」
(ケ) 「【0038】
上記制御手段5は,上記災害監視手段4からの火災の発生及び発生位置に関する第1災害情報あるいは地震の発生に関する第2災害情報と,上記記憶手段3からの記憶情報を受けて,被災者の避難誘導に係る表示制御を行うものであって,火災発生時と地震発生時で異なった制御を行う。
【0039】
火災発生時,即ち,上記災害監視手段4から第1災害情報が入力された場合は,対象エリア内における火災の発生位置と避難路及び避難口の位置を勘案して,上記対象エリアの各位置に居る被災者の全てを,火災発生位置から遠ざけながら安全な避難口E1?E3の何れかに避難誘導するに最適な避難経路を作成し,且つこの避難経路における避難方向を各避難路R2?R4に配置された後述の各誘導表示手段2において表示させるために必要な表示制御形態を求め,これを制御信号として次述の出力手段8に出力する。」
(コ) 「【0043】
第1の実施例
図2は,上記誘導表示手段2を避難路の壁面に設置された手摺装置30に取付けた第1の実施例を示している。」
(サ) 「【0045】
上記誘導表示手段2は,図2及び図3に示すように,点灯表示される四つの表示部,即ち,第1表示部10Aと第1表示部10Bと第3表示部10C及び第4表示部10Dを備えて構成される。上記第1表示部10Aは,図中において向かって左側を指示する矢印の描画表示であり,上記第2表示部10Bは向かって左側へ走り出す人の体勢を表した描画表示である。また,上記第3表示部10Cは,図中において向かって右側を指示する矢印の描画表示であり,上記第4表示部10Dは向かって右側へ走り出す人の体勢を表した描画表示である。なお,図7及び図8では,上記照明ユニット12も点灯されることを示している。
【0046】
これら第1表示部10A?第4表示部10Dは,上記第1表示部10Aと第2表示部10Bは,図中において向かって左側方向を指示する一方の表示グループを構成する。また,上記第3表示部10Cと第4表示部10は,図中において向かって右側方向を指示する他方の表示グループを構成し,これら表示グループ毎に点灯あるいは消灯されることで,これら各表示部10A?10Dに接する被災者に対して避難方向を指示する。即ち,図7に示すように,上記一方の表示グループに属する上記第1表示部10Aと第2表示部10Bが点灯(斜線を付した描画表示)されたときは,被災者に対して左方向へ避難すべきことを示す。逆に,図8に示すように,上記他方の表示グループに属する上記第3表示部10Cと第4表示部10Dが点灯(斜線を付した描画表示)されたときは,被災者に対して右方向へ避難すべきことを示す。なお,図7及び図8では,上記照明ユニット12も点灯されることを示している。」
(シ) 「【0049】
ここで,図4を参照して,上記照明ユニット11の構成を説明すると,この照明ユニット11は,平形のLED発光素子46を帯状の基盤に所定間隔で複数個列設してなるLEDユニット45を,上記各表示部10A?10Dのそれぞれに対応するように縦方向に三列,横方向に四列に並置して構成される。この場合,左側二列の各LEDユニット45は,上記第1表示部10Aと第2表示部10Bに対応するものであって,第1のLEDグループG1を構成する。また,右側二列の各LEDユニット45は,上記第3表示部10Cと第4表示部10Dに対応するものであって,第2のLEDグループG2を構成しており,これら第1及び第2のLEDグループG1,G2にそれぞれ属するLEDユニット45は,グループ毎にON-OFF制御される。
【0050】
上記第1,第2のLEDグループG1,G2に属する各LEDユニット45は,図6に示すように,それぞれ照明コントローラ13に接続されている。また,この照明コントローラ13には,次述の照明ユニット12も接続されている。
【0051】
上記照明コントローラ13には,受信機14とバッテリー15が付設されており,上記制御部Yの出力手段8から送信された制御信号は上記受信機14によって受信され,上記照明コントローラ13に入力される。この照明コントローラ13では,上記制御信号に基づいて,上記各LEDグループG1,G2の何れのグループに属するLEDユニット45を点灯又は消灯させるのか,あるいは双方を消灯させるのかを判断し,その判断に基づいて上記各LEDユニット45のON-OFF制御を行う。なお,上記照明コントローラ13と受信機14及びバッテリー15は,上記誘導表示手段2の近傍に位置するようにして上記支持桟35の内部に収納配置される。」
(ス) 「【0054】
第2の実施例
図9には,上記誘導表示手段2を避難路の壁面Wに設置された手摺32より上方に位置するようにして,該壁面Wに直接取り付けた例を示している。」
(セ) 「【0057】
第3の実施例
図10には,上記誘導表示手段2を避難路の床面Fに設置した例を示している。この例の誘導表示手段2は,その基本構成は上記第1の実施例に係る誘導表示手段2と同様であるが,床面Fに設置するに適するようにその構成を変更している。」

イ 上記ア(ア)?(セ)の摘記事項から,以下のことがいえる。
上記ア(カ)及び(キ)によれば,対象エリアは全体として逆T形の平面形体をもち,その中央部分に設けられたロビーR1から左右に延びる避難路R2と避難路R3,及びこれら避難路R2,R3に直交するように延びる避難路R4が設けられる。これら各避難路R2?R4をそれぞれその路幅方向に挟んでその両側に多数の客室とかサービススペースが配置されている。これらのことから,各客室,サービススペース及び各避難路はいずれも対象エリアに含まれているといえる。
上記ア(ウ),(コ),(ス)及び(セ)によれば,誘導表示手段2は,避難方向を表示するものであり,避難路の壁面に設置された手摺装置30,避難路の壁面W,若しくは,避難路の床面Fに設置される。上記ア(サ)によれば,誘導表示手段2の第1表示部10A?第4表示部10Dは,左側を指示する矢印の描画表示である第1表示部10Aと左側へ向かって走り出す人の体勢を指示する描画表示である第2の表示部10Bとからなる,向かって左方向を指示する一方の表示グループ,及び,右側を指示する矢印の描画表示である第3表示部10Cと右側へ向かって走り出す人の体勢を指示する描画表示である第4の表示部10Dとからなる,向かって右側を指示する他方の表示グループを構成する。上記ア(サ)及び(シ)によれば,誘導表示手段2には,上記各表示部10A?10Dのそれぞれに対応するように複数のLEDユニット45を並置して構成された照明ユニット11が設けられており,各LEDユニット45の帯状の基盤には,複数個列設されたLED発光素子46が設けられている。また,図4によれば,表示部10A?10Dの配列はライン状である。
これらのことから,避難方向を表示する誘導表示手段2には,それぞれ複数のLEDユニット45が並置された表示部10A?10Dがライン状に配列されているとともに,表示部10A?10Dの各表示部にそれぞれ対応して,避難路の床面F,壁面W,若しくは壁面に設置された手摺装置30に設置される誘導表示手段2の帯状の基盤に列設された複数個のLED発光素子46が設けられているといえる。
また,上記ア(シ)によれば,照明ユニット11の左側二列の各LEDユニット45は,表示部10Aと表示部10Bに対応するものであって,第1のLEDグループG1を構成し,右側二列の各LEDユニット45は,表示部10Cと表示部10Dに対応するものであって,第2のLEDグループG2を構成している。これら第1及び第2のLEDグループG1,G2にそれぞれ属するLEDユニット45は,グループ毎にON-OFF制御されるように構成される。照明コントローラ13は,受信した制御信号に基づいて,各LEDグループG1,G2の何れのグループに属するLEDユニット45を点灯又は消灯させるのか,あるいは双方を消灯させるのかを判断し,その判断に基づいて各LEDユニット45のON-OFF制御を行うものである。上記ア(キ)によれば,その制御信号は,記憶手段3,災害監視手段4,制御手段5及び出力手段8を備えて構成される全体で1つの制御部Yが,第1災害検知手段1Aから出力される災害発生信号を受けて被災者の避難誘導のために出力する。上記ア(ク)及び(ケ)によれば,制御部Yは,特定の第1災害検知手段1Aからの火災発生信号の入力によって火災の発生が検認されたときの火災発生に関する情報と火災の発生位置に関する第1災害情報と,記憶手段3からの記憶情報を受けて,火災発生時,即ち,上記災害監視手段4から第1災害情報が入力された場合は,対象エリア内における火災の発生位置と避難路及び避難口の位置を勘案して,上記対象エリアの各位置に居る被災者の全てを,火災発生位置から遠ざけながら安全な避難口E1?E3の何れかに避難誘導するに最適な避難経路を作成し,且つこの避難経路における避難方向を各避難路R2?R4に配置された各誘導表示手段2において表示させるために必要な表示制御形態を求めて制御信号として出力されるように構成されている。
これらのことから,照明コントローラ13は,第1災害検知手段1Aからの災害発生信号に対応して,火災発生に関する情報と火災の発生位置に関する第1災害情報と記憶手段3からの記憶情報とから作成された,対象エリアの各位置に居る被災者の全てを,火災発生位置から遠ざけながら安全な避難口E1?E3の何れかに避難誘導する制御部Yにより作成された最適な避難経路に対応する制御信号に基づき,表示部10Aと表示部10Bとで構成されるLEDグループG1,表示部10Cと表示部10Dとで構成されるLEDグループG2の何れのグループに属するLEDユニット45を点灯又は消灯させるのか,あるいは双方を消灯させるのかを判断し,その判断に基づいて各LEDユニット45のON-OFF制御を行っているといえる。
さらに,上記ア(キ)によれば,誘導表示手段2は各避難経路R2?R4に所定間隔で配置されているから,誘導表示手段2は複数存在しているといえ,上記ア(サ)及び(シ)によれば,照明コントローラ13は,複数の誘導表示手段2に対応してそれぞれ設けられているといえる。

ウ したがって,上記ア(ア)?(セ)の摘記事項を総合すると,刊行物1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「対象エリアに含まれるフロアスペースの各客室A1?A10,B1?B4,C1?C6,D1?D16,及びサービススペースS1?S3のそれぞれに設置された複数の第1災害検知手段1Aと,
対象エリアに含まれる各避難路R2?R4に複数所定間隔で設置され,それぞれ避難方向を表示し,複数のLEDユニット45がそれぞれ並置された表示部10A?10Dをライン状に配列した,複数の誘導表示手段2と,
前記複数の第1災害検知手段1A及び前記複数の誘導表示手段2に接続される制御部Yが備え,対象エリア内における第1災害検知手段1Aと誘導表示手段2の配置に関する情報6と避難路に関する情報7を記憶した記憶手段3と,
各表示部にそれぞれ対応して設けられ,避難路の床面F,壁面W,若しくは壁面に設置された手摺装置30に設置される誘導表示手段2の帯状の基盤に列設された複数個のLED発光素子46と,
複数の誘導表示手段2に対応してそれぞれ設けられている照明コントローラ13であって,第1災害検知手段1Aからの災害発生信号に対応して,火災発生に関する情報と火災の発生位置に関する第1災害情報と記憶手段3からの記憶情報とから制御部Yで作成された,対象エリアの各位置に居る被災者の全てを,火災発生位置から遠ざけながら安全な避難口E1?E3の何れかに避難誘導するに最適な避難経路に対応する制御信号に基づき,表示部10Aと表示部10Bとで構成されるLEDグループG1,表示部10Cと表示部10Dとで構成されるLEDグループG2の何れのグループに属するLEDユニット45を点灯又は消灯させるのか,あるいは双方を消灯させるのかを判断し,その判断に基づいて各LEDユニット45をON-OFF制御する複数の照明コントローラ13と,
を具備する避難誘導システム。」

エ 特許異議申立人が提出した参考資料について
平成31年2月28日に特許異議申立人が意見書に添付して提出した参考資料1?4の記載について,以下,検討する。

(ア)参考資料1(特開昭58-78289号公報)
a 参考資料1には,以下の事項が記載されている。
(a) 「上記誘導表示器11は第2図,第3図に示すように,その先端側が廊下などの通路14の側壁15又は床面に沿って配置されたオプチカルファイバー16と,このオプチカルファイバー16の他端側を配列状態で一括する集束部17と,この集束部17により保持されるオプチカルファイバー16の他端側に光を照射する光源18と,上記集束部17と光源18との間に位置された透過板19と,この透過板19を正逆両方向に回転するモータ20とから構成される。上記透過板19には放射方向に延長する着色パターン19a,19bが設けられ,また集束部17で保持されるオプチカルファイバー16の他端側は着色透過板19の回転方向に沿って配置されている。したがってモータ20により透過板19を正回転m方向に回転すると,オプチカルファイバー16の他端に導入される光は着色パターン19a,19bによって,その配列方向に順次遮られることから,光源18から上記透過板19を介してオプチカルファイバー16に供給され,その一端16a側より照射される光が矢印m’方向に沿って移動することになる。」(第2頁右上欄1行?左下欄1行)
(b) 「上記通路140の左右には煙感知部12,13が設置されており,煙感知部12,13からの信号は比較回路9に供給される。」(第2頁左下欄9?12行)
(c) 「次に通路14に侵入してくる煙が感知部13側がら感知部12側に流れるものとすれば感知部13の煙の感知量が多いので記憶回路9がこのことを判定し,判定信号9aを制御回路4に送出し,制御回路4ではこの判定信号に従って回転方向制御回路10を制御してモータ20の回転方向を設定し,モータ20を正回転させる。これによりオプチカルファイバー16から照射される光が矢印m’方向に流れるので,たとえ通路14に煙が充満した状態にあっても避難方向を報知することができる。」(第3頁左上欄13行?右上欄3行)

b 上記aの記載によれば,参考資料1には,
「通路14の2個の煙感知部12,13の間に配置した誘導表示器11において,煙感知部12,13の煙の感知量に対応した避難方向を報知すること。」
という技術的事項が記載されていると認められる。

(イ)参考資料2(特開昭60-230293号公報(刊行物3に同じ))
a 参考資料2には,以下の事項が記載されている。
(a) 「第2図は,各部屋の音声発生装置2及び避難通路の避難誘導装置3を制御するセンターの集合報知装置6の一例を示す図であり,この集合報知装置6は,マイクロコンピュータ等のCPU(Central processing Unit)61と,ROM及びRAMのメモリ62と,これら各装置に電源を供給するバッテリ63及び64とで成る。そして,この集合報知器装置6は各部屋,通路等に取付けられている火災検知器1から送られてきた検出信号により火災発生場所を認知し,各部屋及び避難通路の最も安全な避難方向を算出し,その情報を各部屋の音声発生装置2及び避難通路の誘導装置3に転送するようになっている。」(第2頁右上欄8?20行)

(b) 「火災発生時(ステップS1)において,103号室に設置された火災検知器1がこれを検知し(ステップS2),集合報知装置6に報知(ステップS3)すると共に,非常ベルによって報知を行なう(ステップS4)。通報を受けた集合報知装置6は,コンピュータ等のCPU61により各部屋及び避難通路の最も安全な避難方向を算出し(ステップS5),各部屋の音声発生装置2及び避難通路の誘導装置3に情報を送る。」(第3頁左上欄16行?右上欄4行)

(c) 「また,避難通路の誘導装置3A,33C,3Gはそれぞれ“矢印に示すように右の階段から逃げて下さい。”と繰返して音声誘導し,誘導装置3B,3D,3Hはそれぞれ“矢印に示すように左の階段から逃げて下さい。”と繰返して音声誘導する。また,誘導装置3Eは“矢印に示すようにまっすぐ逃げて下さい。”と放送し,誘導装置3Fは“ここから先に行かないで下さい。”等の音声誘導を繰返し放送する。これと同時に,避難すべき方向を表示灯の矢印等によって表示すようにする(ステップS7),これにより,宿泊客等を確実に正しい方向に避難させることができる(ステップS8)。
なお,ここでは1階の103号室から火災が発生した場合を説明したが,他の階や客室で火災が発生した場合も同様の処理を実行する。」(第3頁右上欄17行?左下欄12行)

(d) 第7図


b 第7図(上記a(d))には,誘導装置3A及び3Bは隣接する2個の火災検知器1に挟まれた通路の領域に配置され,さらに,誘導装置3C及び3D,3E及び3F,並びに3G及び3Hが,それぞれ,異なる組の隣接する2個の火災検知器1で挟まれた通路の領域に配置されていることが記載されている。
また,上記a(c)によれば,共通の2個の火災検知器1で挟まれた領域に配置された誘導装置3Aと3Bとで音声誘導の音声の内容が異なり,独立した報知が行われていることから,両者では,表示灯の矢印により示される避難すべき方向の表示も誘導装置ごとに独立していると解される。この点は,他の誘導装置についても同様である。ここで,避難すべき方向は,火災検知器1の検知に基づいて算出されるものである(上記a(a),(b))。
なお,上記a(c)の記載中,「33C」は「3C」の誤記と認められる。

c 上記a,bによれば,参考資料2には,
「通路における,異なる組の隣接する2個の火災検知器1で挟まれた複数の領域に,それぞれ2個の誘導装置を配置し,火災検知器1の検知に基づいて,個々の誘導装置ごとに独立して避難すべき方向を表示すること。」
という技術的事項が記載されていると認められる。

(ウ)参考資料3(特開2013-109388号公報(異議申立人提出の甲第3号証に同じ))
a 参考資料3には,以下の事項が記載されている。
(a) 「【0077】
図11は受信機からの伝送回線に閃光装置付きの火災感知器と閃光装置を混在して接続した本発明による他の実施形態を示した説明図である。
【0078】
図11において,火災報知設備が設置された建物の一階の管理人室などには例えばR型の火災受信機14が設置され,受信機14から各階の系統毎に伝送回線15-1?15-nが引き出され,伝送回線15-1?15-nの各々に,感知器ベース62を介してアナログ火災感知器60が設けられており,本実施形態にあっては,アナログ火災感知器60に閃光灯として機能するフラッシュランプを設けている。感知器ベース62は監視区域の天井等に設置されて,アナログ火災感知器60を嵌合させることで,アナログ火災感知器を監視区域に設置する装置である。
【0079】
また火災受信機14には本発明による避難誘導システムにおける制御装置10aの機能が組み込まれており,これに対応して伝送回線15-1?15-nに複数の閃光装置16を接続している。
【0080】
受信機14から引き出された伝送回線15-1?15-nには例えば図5に示した建物のフロアの通路や部屋の天井面に設置される火災感知器が接続されるが,火災感知器の設置間隔は比較的大きいため,火災感知器に設けた閃光灯だけでは通路での避難誘導方向の表示は行いづらいことから,火災感知器の間に閃光装置16を配置し,避難誘導方向の表示が適切にできるようにする。」

(b) 「【0083】
図12において,火災受信機14にはプロセッサ66,伝送部68-1?68-n,操作部70,警報表示部72,音響警報部74,地区表示部76,移報出力部78及びメモリ80が設けられている。
【0084】
伝送部68-1?68-nには閃光装置16及び感知器ベース62を介してアナログ火災感知器60が接続され,所定の通信プロトコルに従って信号を送受信している。
【0085】
プロセッサ66にはプログラムの実行により実現される機能として,受信制御部82と避難誘導制御部84の機能を設けており,避難誘導制御部84が図11の火災受信機14に組み込んだ避難誘導システムの制御盤10aとして機能する。
【0086】
受信制御部82は,伝送回線15-1?15-nで決まる系統毎に,所定の周期のデータ検知タイミングで一括AD変換コマンド信号を送信する。これを受けてアナログ火災感知器60は煙や熱のアナログ検知信号をAD変換して煙または温度の検知データとして保持する。続いて受信制御部82は,アナログ火災感知器60のみのアドレスを順次指定したポーリングコマンド信号により,アナログ火災感知器60に保持している検知データを収集し,収集した検知データを予め設定した火災閾値と比較し,火災閾値を超えた場合に火災発報と判断し,表示部72に火災警報表示を行うと共に,音響警報部74から音響火災警報を出力させ,更に地区表示部76に火災発生地区を表示させる。
【0087】
避難誘導制御部84は,アナログ火災感知器14から収集した検知データに基づいて受信制御部82で火災発報を断定した場合,メモリ80に予め記憶された建物の避難誘導経路情報に基づき火災発生場所に対する安全な避難誘導経路とその方向を決定して避難誘導アドレスリストを生成し,当該アドレスリストに基づき避難誘導方向に向けて複数のアナログ火災感知器16に設けたフラッシュランプ64及び閃光装置16に設けたフラッシュランプを順番に閃光駆動する制御を繰り返して避難誘導表示を行わせる。
【0088】
ここで,火災受信部82による火災断定は,アナログ火災感知器60の検知データから1回目の火災発報を検知した場合(第1報目の検知),その両側に隣接配置した2台のアナログ火災感知器16の検知データを集中的に収集して2回目の火災発報の有無を監視し,いずれか一方のアナログ火災感知器16の検知データから2回目の火災発報を検知した場合(第2報目の検知)に火災を断定する。なお,受信制御部32は火災断定に対応して火災発報の第2報目の報知を行う。
【0089】
避難誘導制御部84が火災受信部82による火災断定を検知した場合の避難誘導方向の決定は,火災発生場所を起点に非常口へ向う方向の避難誘導経路を決定し,決定した避難誘導経路に沿って配置しているアナログ火災感知器60及び閃光装置16のアドレスを取得して避難誘導経路の基点から非常口に向けてアドレスを順番に並べた避難誘導アドレスリストを生成し,この避難誘導アドレスリストから順次読出して指定したアドレスをもつ閃光制御

信号をアナログ火災感知器60及び閃光装置16に送信する制御を繰り返し,アナログ火災感知器60に設けたフラッシュランプ64及び閃光装置16のフラッシュランプが避難誘導方向に向って順番に閃光することで,避難誘導表示を行う。」

(c) 図11


b 図11(上記a(c))には,異なる組の隣接する2個のアナログ火災感知器60で挟まれた複数の領域のそれぞれに,1又は複数の閃光装置16が配置されていることが記載されている。ここで,段落【0080】の記載によれば,各領域は通路における領域である。
また,段落【0078】,【0079】の記載によれば,それぞれ複数のアナログ火災感知器60及び閃光装置16の全体に対して共通の火災受信機14が設置されており,段落【0083】?【0089】(特に【0083】,【0085】,【0089】)の記載によれば,火災受信機14は,火災発生場所を起点に非常口へ向う方向の避難誘導経路を決定し,閃光制御信号をアナログ火災感知器60及び閃光装置16に送信して,アナログ火災感知器60に設けたフラッシュランプ64及び閃光装置16のフラッシュランプが避難誘導方向に向って順番に閃光することで避難誘導表示を行うものである。

c 上記a,bによれば,参考資料3には,
「通路における,異なる組の隣接する2個のアナログ火災感知器16に挟まれた複数の領域に,それぞれ1又は複数の閃光装置16を配置し,アナログ火災感知器60及び閃光装置16の全体に対して共通に設置された火災受信機14が,火災発生場所を起点に非常口へ向う方向の避難誘導経路を決定し,閃光制御信号をアナログ火災感知器60及び閃光装置16に送信して,アナログ火災感知器60に設けたフラッシュランプ64及び閃光装置16のフラッシュランプが避難誘導方向に向って順番に閃光することで,避難誘導表示を行うこと。」
という技術的事項が記載されていると認められる。

(エ)参考資料4(特開2011-8591号公報)
a 参考資料4には,以下の事項が記載されている。
(a) 「【0022】
次に,上記構成における動作を説明する。図3は,本発明の第1の実施形態に係る避難誘導システムが屋内空間に設置された例を示す模式図である。屋内空間における通路は,図3に示すように形成されており,エリア41?48に分割されている。また,エリア41には非常口51が設置され,エリア42には非常口52が設置され,エリア47には非常口53が設置され,エリア48には非常口54が設置されている。
【0023】
また,センサ10-1,10-2はエリア41に設置され,センサ10-3,10-4はエリア42に設置され,センサ10-5,10-6はエリア43に設置され,センサ10-7,10-8はエリア44に設置され,センサ10-9,10-10はエリア45に設置され,センサ10-11,10-12はエリア46に設置され,センサ10-13,10-14はエリア47に設置され,センサ10-15,10-16はエリア48に設置される。
【0024】
さらに,送信機30-1?30-8は,エリア41?48における予め設定された位置にそれぞれ1つ設置される。図4は,送信機30-1?30-8のカバーエリアの一例を示す図である。送信機30-1?30-8は,アンテナ32-1?32-8により矢印の方向に電波を送信するように指向性が設定されている。また,電波の送信出力は,隣接するエリアの電波と混信が発生しない程度の強度となっている。なお,制御装置20は,屋内空間に設置してもよいが,送信機30-1?30-nを制御可能な位置であれば,送信機30-1?30-nと同一の空間に設置する必要は必ずしもないため,図3には記載していない。」

(b) 「【0027】
エリア43に火災が発生した場合,エリア43に設置されたセンサ10-5,10-6は煙等を感知し,火災が発生した旨を制御装置20へ通知する。
【0028】
制御装置20において,特定部21は,センサ10-1?10-16からの通知があるか否かを判断する(ステップ51)。特定部21は,センサ10-1?10-16からの通知を受けると(ステップ51のYes),メモリ23に記録されたセンサ10-1?10-16とエリア41?48との位置関係を参照して,どのエリアで災害が発生したのかを特定する(ステップ52)。本例では,特定部21は,センサ10-5,10-6からの通知を受け,メモリ23に記録された位置関係を参照して,火災がエリア43で発生したことを特定する。そして,特定部21は,エリア43で火災が発生した旨を作成部22へ通知する。特定部21は,センサ10-1?10-16からの通知が無い場合(ステップ51のNo),通知を受け取るまでステップ51の処理を繰り返す。
【0029】
作成部22は,特定部21により特定されたエリア43を避けて非常口へ非難するための避難誘導情報を,メモリ23に記録された避難経路の道順を参照して,エリア41?48毎に作成する(ステップ53)。作成部22は,作成した避難誘導情報を信号処理部24へ出力する。信号処理部24は,作成部22からの信号に信号処理を施し,エリア41
用の避難誘導情報を送信機30-1へ出力し,エリア42用の避難誘導情報を送信機30-2へ出力し,エリア43用の避難誘導情報を送信機30-3へ出力し,エリア44用の避難誘導情報を送信機30-4へ出力し,エリア45用の避難誘導情報を送信機30-5へ出力し,エリア46用の避難誘導情報を送信機30-6へ出力し,エリア47用の避難誘導情報を送信機30-7へ出力し,エリア48用の避難誘導情報を送信機30-8へ出力する(ステップ54)。送信機30-1?30-8は,制御装置20からの信号を設定された方向へ向けて送信する。
【0030】
各エリアに存在する者は,例えばワンセグ受信機能付きの携帯電話等の端末により,送信機30-1?30-8のうち存在するエリアに設置された送信機から送信された電波を受信する。各端末は,受信した避難誘導情報に基づいた誘導図を端末が備える液晶ディプレイ等の表示部に表示する。図6は,エリア45の端末が送信機30-5から送信された電波を受信し,受信した避難誘導情報に基づいて表示する誘導図を示す模式図である。エリア43において火災が発生したため,端末には,非常口51,52ではなく,非常口53,54までの避難経路が表示される。」

(c) 図3


b 上記aによれば,参考資料4には,
「通路をエリア41?48に分割して(段落【0022】),各エリアに2個のセンサを設置し(段落【0023】に,例えば「センサ10-1,10-2はエリア41に設置され」と記載されている。),送信機30-1?30-8をエリア41?48における予め設定された位置にそれぞれ1つ設置し(段落【0024】),あるエリアで火災が発生した場合にセンサが煙等を感知する(段落【0027】)ことに基づいて避難誘導情報を作成し(段落【0029】),携帯電話等の端末が,送信機30-1?30-8のうち存在するエリアに設置された送信機から送信された電波を受信して,受信した避難誘導情報に基づいた誘導図を表示部に表示する(段落【0030】)こと。」
という技術的事項が記載されていると認められる。

オ 対比
(ア)本件発明1と引用発明とを対比すると,
a 引用発明の「第1災害検知手段1A」は,「対象エリアに含まれるフロアスペースの各客室A1?A10,B1?B4,C1?C6,D1?D16,及びサービススペースS1?S3のそれぞれに設置され」ているから,所定の箇所に分散配置された複数のものであるといえ,又,災害検出手段であることから,配置箇所における異常を検知する異常検知センサであるといえる。このため,引用発明は,その分散配置される場所はさておき,「所定の箇所に分散配置され,該配置箇所における異常をそれぞれ検知する複数の異常検知センサ」を具備しているといえる。
b 本件発明1は,「記憶装置」において「単位表示装置のそれぞれの誘導方向」を「記憶する」ことが行われるものであるから,「単位表示装置」は,誘導方向が設定される最小単位の表示装置を意味するものと解される。また,本件特許明細書の段落【0019】に「図2において,この避難誘導システム100の記憶装置120には,図3に示すように,複数の異常検知センサS1?S9の内のどの異常検知センサで異常を検知したかに対応して,複数の単位表示装置40-1?40-11のそれぞれの誘導方向「1」,「2」を予め設定して記憶している。」と記載されていることからみて,誘導方向として,複数の方向のいずれかを設定することも含むといえる。
これに対し,引用発明の「複数の誘導表示手段2」では,それぞれに設けられている「照明コントローラ13」により,「LEDグループG1」,「LEDグループG2」の「何れのグループに属するLEDユニット45を点灯又は消灯させるのか,あるいは双方を消灯させるのかを判断し,その判断に基づいて各LEDユニット45をON-OFF制御する」することが行われるから,個々の誘導表示手段2は,他の誘導表示手段2と独立して避難方向を表示し得るものであって,2方向のいずれかの避難方向を表示する内容が設定される最小単位の表示装置であるといえる。
そうすると,引用発明の「誘導表示手段2」は本件発明1の「単位表示装置」に相当する。
また,このことから,引用発明の「誘導表示手段2」に配列した「表示部10A?10D」のそれぞれが,本件発明1の「発光装置」に相当する。
さらに,「表示部10A?10D」は避難路における「避難方向を表示」するものであるから,それらの「ライン状の配列」は避難路に沿っていることが明らかである。
c 本件発明1は,「該単位通路に対応して複数の発光装置をそれぞれ該単位通路に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置」を具備するものであり,上記2.(2)ア(ア)でも述べたように,「単位通路」の個数は,「単位表示装置」の個数に対応する「複数」であるから,本件発明1の「単位通路」と「単位表示装置」との具体的な対応関係は,分割された個々の「単位通路」にそれぞれ1個ずつ「単位表示装置」が存在する,というものであるといえる。そして,このように解することは,本件特許明細書の段落【0016】に,「分割された各単位通路30-1?30-11には,該単位通路30-1?30-11に沿ってそれぞれライン状に配列された複数の発光装置L11?L14,L21?L24,L31?L34,L41?L44,L51?L54,L61?L64,L71?L74,L81?L84,L91?L94,L101?L104,L111?L114からなる複数の単位表示装置40-1?40-11が設けられている。」と,「単位通路」と「単位表示装置」とが1対1に対応する関係にあることが記載され,また,段落【0057】に,「上記実施例では,各単位通路30-1?30-11内に設けられる各単位表示装置40-1?40-11内の発光装置の数を4個にして説明した」と記載されていることとも整合する。
一方,引用発明の「誘導表示手段2」は,「対象エリアに含まれる避難路R2?R4のそれぞれに複数所定間隔で設置され」ており,また,上記bのとおり,個々の「誘導表示手段2」は他の誘導表示手段2と独立して避難方向を表示し得るから,避難路R2?R4のそれぞれは,各誘導表示手段2が存在する区間,すなわち複数の所定間隔に分割され,その分割された通路の各区間のそれぞれに1個ずつ誘導表示手段2が設置されていると見ることができる。
したがって,本件発明1と引用発明とは,「前記通路を複数の区間に分割し,該区間に対応して複数の発光装置をそれぞれ該区間に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置」を具備する点で一致する。
d 引用発明の「記憶手段3」は,「複数の第1災害検知手段1A及び複数の誘導表示手段2に接続される制御部Y」が備えるものであるから,各避難路R2?R4に配置された複数の誘導表示手段2のそれぞれに対応して共通に設けられるものであり,このことから,引用発明は,「前記単位表示装置に対応して共通に設けられ」る「記憶装置」を具備しているといえる。そうすると,引用発明の記憶手段3は「前記複数の単位表示装置のそれぞれを制御するための情報を記憶する」といえる。
e 引用発明は,「各表示部にそれぞれ対応して設けられ,避難路の床面F,壁面W,若しくは壁面に設置された手摺装置30に設置される誘導表示手段2の帯状の基盤に列設された複数個のLED発光素子46」を具備するものであるから,引用発明は,「前記発光装置にそれぞれ対応して設けられ,前記区間の床面,側面,若しくは側面に取り付けられた手摺にライン状に配置される発光素子列」を具備しているといえる。
f 引用発明の「照明コントローラ13」は,「複数の誘導表示手段2に対応してそれぞれ設けられている」から,引用発明は,「前記複数の単位表示装置に対応してそれぞれ設けられ」る「複数の単位制御装置」を具備しているといえる。そして,引用発明の「誘導表示手段2」の「表示部10A?10D」には,「複数のLEDユニット45がそれぞれ並置され」るとともに,「各表示部にそれぞれ対応して」,「帯状の基盤に列設された複数個のLED発光素子46」が設けられ,さらに,引用発明の「照明コントローラ13」は,「避難経路に対応する制御信号に基づき,表示部10Aと表示部10Bとで構成されるLEDグループG1,表示部10Cと表示部10Dとで構成されるLEDグループG2の何れのグループに属するLEDユニット45を点灯又は消灯させるのか,あるいは双方を消灯させるのか」の判断に基づいて「各LEDユニット45をON-OFF制御する」から,「単位表示装置の複数の発光装置のそれぞれの発光素子列の発光素子を誘導方向にしたがってそれぞれ制御する」といえる。

(イ)してみると,本件発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違する。
a 一致点
所定の箇所に分散配置され,該配置箇所における異常をそれぞれ検知する複数の異常検知センサと,
前記通路を複数の区間に分割し,該区間に対応して複数の発光装置をそれぞれ該区間に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置と,
前記単位表示装置に対応して共通に設けられ,前記複数の単位表示装置のそれぞれを制御するための情報を記憶する記憶装置と,
前記発光装置にそれぞれ対応して設けられ,前記区間の床面,側面,若しくは側面に取り付けられた手摺にライン状に配置される発光素子列と,
前記複数の単位表示装置に対応してそれぞれ設けられ,該単位表示装置の複数の発光装置のそれぞれの発光素子列の発光素子を誘導方向にしたがってそれぞれ制御する複数の単位制御装置と,
を具備することを特徴とする避難誘導システム。

b 相違点1
一致点の「異常検知センサ」について,本件発明1では「避難口に繋がる通路」に配置されているのに対して,引用発明の「第1災害検知手段1A」は対象エリアに含まれるフロアスペースの各客室A1?A10,B1?B4,C1?C6,D1?D16,及びサービススペースS1?S3に配置されている点。

c 相違点2
一致点の「前記通路を複数の区間に分割」する態様が,本件発明1では,「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として」分割するものであるのに対し,引用発明では,分割された通路の各区間のそれぞれに1個ずつ誘導表示手段2が設置されるように分割するものであって,「第1災害検知手段1A」との関係で分割するものではない点。また,それに伴い,一致点の「区間」が,本件発明1では「単位通路」であるのに対し,引用発明では「単位通路」ではない点。

d 相違点3
一致点の「記憶装置」が記憶する「前記複数の単位表示装置のそれぞれを制御するための情報」が,本件発明1では「前記複数の異常検知センサの内の異常を検知した1または複数の異常検知センサに対応して,該異常を検出した異常箇所から遠ざかる方向でかつ非常口に近づく方向」であって「前記複数の単位表示装置のそれぞれの誘導方向として」の情報であるのに対して,引用発明では「対象エリア内における第1災害検知手段1Aと誘導表示手段2の配置に関する情報6と避難路に関する情報7」である点,それに伴い,一致点の「単位制御装置」が制御する「誘導方向」が,本件発明1では「前記異常検知センサの異常検知に対応して前記記憶装置から取得した前記誘導方向」であるのに対して,引用発明では「特定の第1災害検知手段1Aからの火災発生位置に関する第1災害情報と記憶手段3からの記憶情報とから,火災の発生位置と避難路及び避難口の位置を勘案し,上記対象エリアの各位置に居る被災者の全てを火災発生位置から遠ざけながら安全な避難口E1?E3の何れかに避難誘導するように作成された最適な避難経路」である点。

e 相違点4
一致点の「それぞれ制御する」のが,本件発明1では「順次繰り返し点灯するようにそれぞれ制御する」のに対して,引用発明では「何れのグループに属するLEDユニット45を点灯又は消灯させるのか,あるいは双方を消灯させるのかを判断し,その判断に基づいて」,「ON-OFF制御する」点。

カ 相違点の検討
(ア)事案に鑑み,まず相違点2について以下で検討する。
a 本件発明1は,「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し」た上で,上記オ(ア)cのとおり,分割された個々の「単位通路」にそれぞれ1個ずつ「単位表示装置」が存在するものである。

b また,本件発明1の「単位表示装置」は,上記オ(ア)bのとおり,誘導方向が設定される最小単位の表示装置を意味するものと解される。

c これに対し,参考資料1?4には,それぞれ上記エ(ア)?(エ)で検討した各技術的事項が記載されていると認められるが,以下の(a)?(d)から明らかなように,引用発明に各技術的事項のいずれかを適用することによって相違点2に係る構成とすることが,当業者にとって容易に想到し得た,ということはできない。
(a)参考資料1の技術的事項(上記エ(ア)b)は,「通路14」は複数の領域に分割されていないから,一致点の「前記通路を複数の単位通路に分割」することに相当するものではない。
したがって,引用発明において,「前記通路を複数の単位通路に分割」する態様に関して参考資料1の技術的事項を適用することの動機付けを見出すことはできない。

(b)参考資料2の技術的事項(上記エ(イ)c)は,個々の誘導装置ごとに独立して避難すべき方向を表示するものであるから,上記bに照らすと,個々の誘導装置は本件発明1の「単位表示装置」に相当するといえる。しかしながら,当該技術的事項では,異なる組の隣接する2個の火災検知器1で挟まれた複数の領域に2個の誘導装置が配置されるから,引用発明に上記技術的事項を適用しても,個々の「単位通路」にそれぞれ1個ずつ「単位表示装置」が存在する,本件発明1の上記aの構成には至らない。

(c)参考資料3の技術的事項(上記エ(ウ)c)は,通路における,異なる組の隣接する2個のアナログ火災感知器16に挟まれた複数の領域に,それぞれ1又は複数の閃光装置16を配置し,アナログ火災感知器60及び閃光装置16の全体に対して共通に設置された火災受信機14が,火災発生場所を起点に非常口へ向う方向の避難誘導経路を決定して,該決定された避難誘導経路により,アナログ火災感知器60に設けたフラッシュランプ64及び閃光装置16のフラッシュランプが避難誘導方向に向って順番に閃光することで,避難誘導表示を行うものである。しかしながら,2個のアナログ火災感知器60で挟まれた領域における,アナログ火災感知器60に設けたフラッシュランプ64及び1又は複数の閃光装置16のフラッシュランプからなる,複数のフラッシュランプにより行われる避難誘導表示は,火災受信機14で決定された避難誘導経路の一部であるとしても,それらの複数のフラッシュランプが誘導方向が設定される最小単位として設けられたものであることが,参考資料3に記載されているとまではいえない。
そうすると,当該技術的事項の2個のアナログ火災感知器60で挟まれた領域における上記の複数のフラッシュランプは,上記a,bの「単位表示装置」に相当するものではない。
したがって,引用発明に当該技術的事項を適用すると,引用発明の「単位表示装置」は存在しないものとなるから,「単位表示装置」が存在する本件発明1の構成には至らない。

(d)参考資料4の技術的事項(上記エ(エ)b)は,分割された各エリア41?48にそれぞれ2個のセンサが設置されたものであるが,各エリアは,2個のセンサで「挟まれた区画」であるとはいえない。また,当該技術的事項の「誘導図を表示部に表示する」ことが行われる「携帯電話等の端末」は,移動体端末であって,1つのエリアに存在する個数は1個とは限らない。
したがって,引用発明に当該技術的事項を適用しても,上記aの,「通路」を「2個の異常検知センサで挟まれた区画」に分割する構成に至らず,また,個々の「単位通路」にそれぞれ1個ずつ「単位表示装置」が存在する構成にも至らない。

d また,他に,引用発明において相違点2に係る構成とすることが当業者にとって容易に想到し得たとする根拠は見出せない。

e 特許異議申立人の主張について
(a)特許異議申立人は,平成31年2月28日に提出した意見書において,「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し,」については,参考資料1?4に記載されているとおり周知技術であり,本件特許の請求項1?2に係る発明は,刊行物1?5記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である旨,主張する。
しかしながら,参考資料1?4には,上記エ(ア)?(エ)で検討した各技術的事項が記載されていると認められるものの,上記cのとおり,引用発明に各技術的事項のいずれかを適用することによって相違点2に係る構成とすることが,当業者にとって容易に想到し得たということはできない。
また,刊行物1?5記載の発明に基づいて相違点2に係る構成とすることが,当業者にとって容易に想到し得たということもできない。
よって,特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(b)特許異議申立人は,「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し,」という構成は特段の技術的意義を有するものではないことからすれば,当該構成については当業者が適宜定め得る設計事項であるから,本件特許の請求項1?2に係る発明は,刊行物1?5記載の発明及び上記設計事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である旨,主張する。
しかしながら,本件発明1は,「前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割」された構成のみならず,当該分割された個々の「単位通路」にそれぞれ対応する「単位表示装置」が存在することにより,そのような「異常検知センサ」と「単位表示装置」の通路における配置の関係に基づき,各「単位表示装置」において適切な避難方向を表示することができるものであるから,上記構成は特段の技術的意義を有するものではない,とすることはできない。。
よって,特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(イ)よって,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明1は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また,請求項1を引用する本件発明2も同様に,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.先の取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は,特許異議申立書において,本件発明1の「前記単位表示装置に対応して共通に設けられ,」との記載から,本件発明1につき,「解釈A」,すなわち,避難誘導システムにおいて,「複数の単位表示装置」に対応する共通の「1つの記憶装置」が設けられ,異常検知センサの異常検知に対応して「複数の単位表示装置」が「1つの記憶装置」から「複数の単位表示装置の誘導方向」を取得する,との解釈が可能であるほか,「解釈B」及び「解釈C」の解釈も可能であるから,本件発明1及び2は明確でなく,請求項1及び2に係る特許は特許法第36条第6項第2号に違反してされたものである旨主張するとともに,その結果として,同法17条の2第3項にも同法第36条第6項第1項にも違反している旨,主張する。
しかしながら,本件特許明細書の例えば段落【0019】の「図2において,この避難誘導システム100の記憶装置120には,図3に示すように,複数の異常検知センサS1?S9の内のどの異常検知センサで異常を検知したかに対応して,複数の単位表示装置40-1?40-11のそれぞれの誘導方向「1」,「2」を予め設定して記憶している。」との記載は,「解釈A」に対応する内容である一方,「解釈B」及び「解釈C」に対応する内容は本件特許明細書等に記載も示唆もされていないから,本件発明1については「解釈A」のみが成り立つことが明らかである。
したがって,特許異議申立人の上記の各主張はいずれも理由がない。

7.むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
避難誘導システム
【技術分野】
【0001】
この発明は、避難誘導システムに関し、特に、火災等の発生に際して被誘導者を最適な誘導路に沿って安全かつ迅速に誘導することができるようにした避難誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災等の発生時に被誘導者を安全に案内する案内システムとしては、特許文献1に開示されたもの等が知られている。
【0003】
この特許文献1には、建物の避難通路の避難口100迄の間に、所定の間隔で、誘導灯1,2,3,・・及びスピーカー11,12,13,・・を取付け、又火災が発生し自火報盤装置20の接点がオンすると、該接点にて、避難口100迄の間に取り付けた誘導灯1,2,3,・・を避難口100に向かって順次所定の時間点灯することを繰り返すと共に、避難口100迄の間に取り付けたスピーカー11,12,13,・・より避難口100に向かって順次所定の時間誘導音を送出させることを繰り返すようにした誘導灯点灯誘導音発生装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平5-135286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された誘導灯点灯誘導音発生装置においては、火災等が発生した箇所に対応して最適な避難誘導を行うことができず、また、誘導灯を増加すると、これに伴ってシステムの構成を変更する必要が有るため、拡張性に問題があり、かつ高価になるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明は、火災等の異常発生に際して、被誘導者を最適な誘導路に沿って安全かつ迅速に誘導することができる避難誘導システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の避難誘導システムは、避難口に繋がる通路の所定の箇所に分散配置され、該配置箇所における異常をそれぞれ検知する複数の異常検知センサと、前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し、該単位通路に対応して複数の発光装置をそれぞれ該単位通路に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置と、前記単位表示装置に対応して共通に設けられ、前記複数の異常検知センサの内の異常を検知した1または複数の異常検知センサに対応して、該異常を検知した異常個所から遠ざかる方向でかつ非常口に近づく方向を前記複数の単位表示装置のそれぞれの誘導方向として記憶する記憶装置と、前記発光装置にそれぞれ対応して設けられ、前記単位通路の床面、側面、若しくは側面に取り付けられた手摺にライン状に配置される発光素子列と、前記複数の単位表示装置に対応してそれぞれ設けられ、前記異常検知センサの異常検知に対応して前記記憶装置から取得した前記誘導方向に基づき該単位表示装置の複数の発光装置のそれぞれの発光素子列の発光素子を該誘導方向にしたがって順次繰り返し点灯するようにそれぞれ制御する複数の単位制御装置と、を具備することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記異常検知センサは、温度検知センサ、煙検知センサのいずれか、若しくはその組み合わせを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、避難口に繋がる通路の所定の箇所に分散配置され、該配置箇所における異常をそれぞれ検知する複数の異常検知センサと、前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し、該単位通路に対応して複数の発光装置をそれぞれ該単位通路に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置と、前記単位表示装置に対応して共通に設けられ、前記複数の異常検知センサの内の異常を検知した1または複数の異常検知センサに対応して、該異常を検知した異常個所から遠ざかる方向でかつ非常口に近づく方向を前記複数の単位表示装置のそれぞれの誘導方向として記憶する記憶装置と、前記発光装置にそれぞれ対応して設けられ、前記単位通路の床面、側面、若しくは側面に取り付けられた手摺にライン状に配置される発光素子列と、前記複数の単位表示装置に対応してそれぞれ設けられ、前記異常検知センサの異常検知に対応して前記記憶装置から取得した前記誘導方向に基づき該単位表示装置の複数の発光装置のそれぞれの発光素子列の発光素子を該誘導方向にしたがって順次繰り返し点灯するようにそれぞれ制御する複数の単位制御装置と、を具備して構成したので、火災発生等の異常発生に際して、被誘導者を最適な誘導路に沿って安全かつ迅速に誘導することができる避難誘導システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】
図1は、この発明が適用される避難誘導システムにおける避難誘導路の一例を示す図である。
【図2】
図2は、図1に示した避難誘導システムの一構成例を示すブロック図である。
【図3】
図3は、図2に示した避難誘導システムで採用される誘導方向を予め設定して記憶する記憶装置の記憶内容の一例を示す表である。
【図4】
図4は、図3に示した避難誘導システムにおける誘導例を示す図である。
【図5】
図5は、図3に示した避難誘導システムにおける他の誘導例を示す図である。
【図6】
図6は、図3に示した主制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図7】
図7は、図3に示した単位制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明に係わる避難誘導システムの実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、この発明が適用される避難誘導システムにおける避難誘導路の一例を示す図である。
【0013】
図1に示す避難誘導システムは、例えば、大規模店舗、病院、各種施設等に適用可能である。
【0014】
図1において、この避難誘導システムの誘導エリア10には、非常口(避難口)20-1、20-2が設けられており、この非常口20-1、20-2に繋がる通路の所定の箇所には、火災等の異常発生を検知する複数の異常検知センサS1?S9が配置されている。
【0015】
この異常検知センサS1?S9としては、温度検知センサ、煙検知センサのいずれか、若しくはその組み合わせを含むことで構成することができ、この異常検知センサS1?S9は、誘導エリア10内の複数の通路の天井等に配置される。
【0016】
また、この避難誘導システムにおいて、非常口20-1、20-2に繋がる通路は、複数の単位通路30-1?30-11に分割されており、分割された各単位通路30-1?30-11には、該単位通路30-1?30-11に沿ってそれぞれライン状に配列された複数の発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114からなる複数の単位表示装置40-1?40-11が設けられている。
【0017】
ここで、各発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114は、それぞれ各単位通路30-1?30-11に沿って配列された複数の発光素子列から構成することができる。この発光素子列は、単位通路30-1?30-11の床面、側面、若しくは側面に取り付けられた手摺等に配置される。
【0018】
図2は、図1に示した避難誘導システムの一構成例を示すブロック図で示したものであり、図3は、図2に示した避難誘導システムで採用される誘導方向を予め設定して記憶する記憶装置の記憶内容の一例を示す表である。
【0019】
図2において、この避難誘導システム100の記憶装置120には、図3に示すように、複数の異常検知センサS1?S9の内のどの異常検知センサで異常を検知したかに対応して、複数の単位表示装置40-1?40-11のそれぞれの誘導方向「1」、「2」を予め設定して記憶している。
【0020】
ここで、誘導方向「1」は、発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114を昇順、例えば、単位表示装置40-1の場合は、発光装置L11、L12、L13,L14の順で繰り返し順次点灯することを示し、誘導方向「2」は、発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114を降順、例えば、単位表示装置40-1の場合は、発光装置L14、L13、L12,L11の順で繰り返し順次点灯することを示している。
【0021】
図3に示す記憶装置120の記憶内容は、図1に示す誘導エリア10に対応するもので、この誘導エリア10が異なれば、その記憶内容もそれに対応して異なる。
【0022】
ここで、図3に示す記憶装置120に記憶される各単位表示装置40-1?40-11のそれぞれの誘導方向「1」、「2」は、
1)異常検知センサS1?S9による異常検知位置から遠ざかる方向
2)非常口20-1、20-2に近づく方向
の2つの条件を満たす方向に設定されている。
【0023】
なお、図3には、複数の異常検知センサS1?S9の1つの異常検知センサS1?S9に対応して、複数の単位表示装置40-1?40-11のそれぞれの誘導方向「1」、「2」を予め設定して記憶しているが、複数の異常検知センサS1?S9の2またはそれ以上の異常検知センサS1?S9に対応して、複数の単位表示装置40-1?40-11のそれぞれの誘導方向「1」、「2」を予め設定して記憶するように構成してもよい。
【0024】
さて、図2において、この避難誘導システム100は、複数の異常検知センサS1?S9の異常検知出力に基づき、複数の単位表示装置40-1?40-11のそれぞれの発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114を、記憶装置120に記憶した図3に示す誘導方向「1」または「2」に対応して順次点灯し、これを繰り返すことにより、被誘導者の避難誘導を行う。
【0025】
図3において、複数の異常検知センサS1?S9の検知出力は、主制御装置110に入力される。主制御装置110は、この入力された異常検知センサS1?S9の検知出力に基づき、記憶装置120にアクセスして、異常を検知した異常検知センサS1?S9に対応する各単位表示装置40-1?40-11のそれぞれの誘導方向「1」または「2」を記憶装置120から取得する。
【0026】
そして、主制御装置110は、この記憶装置120から取得した各単位表示装置40-1?40-11のそれぞれの誘導方向「1」または「2」を各単位表示装置40-1?40-11に対応する各単位制御装置130-1?130-11にそれぞれ通知する。
【0027】
各単位制御装置130-1?130-11は、主制御装置110から通知された誘導方向「1」または「2」に基づき、各単位表示装置40-1?40-11の各発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114を、通知された誘導方向「1」または「2」に順次繰り返し点灯するように制御する。
【0028】
これにより、誘導エリア10内の図示しない被誘導者は、この順次繰り返し点灯される各発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114を辿っていけば、最適な誘導路に沿って非常口20-1、20-2に到達することができる。
【0029】
図4は、図2に示した避難誘導システム100における被誘導者の誘導例を示す図である。
【0030】
図4においては、異常検知センサS1?S9の内の異常検知センサS3で異常を検知した場合を示している。
【0031】
図2に示す記憶装置120には、図3に示すように、異常検知センサS3に対応して、単位表示装置40-1の誘導方向は「2」、単位表示装置40-2の誘導方向は「2」、単位表示装置40-3の誘導方向は「2」、単位表示装置40-4の誘導方向は「2」、単位表示装置40-5の誘導方向は「1」、単位表示装置40-6の誘導方向は「2」、単位表示装置40-7の誘導方向は「1」、単位表示装置40-8の誘導方向は「2」、単位表示装置40-9の誘導方向は「1」、単位表示装置40-10の誘導方向は「1」、単位表示装置40-11の誘導方向は「1」が記憶されている。
【0032】
主制御装置110は、異常検知センサS3の異常検知に対応して、記憶装置120から異常検知センサS3に対応する上記各単位表示装置40-1?40-11の誘導方向「1」または「2」を取得する。そして、単位制御装置130-1に誘導方向「2」、単位制御装置130-2に誘導方向「2」、単位制御装置130-3に誘導方向「2」、単位制御装置130-4に誘導方向「2」、単位制御装置130-5に誘導方向「1」、単位制御装置130-6に誘導方向「2」、単位制御装置130-7に誘導方向「1」、単位制御装置130-8に誘導方向「2」、単位制御装置130-9に誘導方向「1」、単位制御装置130-10に誘導方向「1」、単位制御装置130-11誘導方向「1」を通知する。
【0033】
これにより、各単位制御装置130-1?130-11は、図4に矢印で示すように、単位表示装置40-1の発光装置L11?L14を降順に順次点灯し、単位表示装置40-2の発光装置L21?L24を降順に順次点灯し、単位表示装置40-3の発光装置L31?L34を降順に順次点灯し、単位表示装置40-4の発光装置L41?L44を降順に順次点灯し、単位表示装置40-5の発光装置L51?L54を昇順に順次点灯し、単位表示装置40-6の発光装置L61?L64を降順にに順次点灯し、単位表示装置40-7の発光装置L71?L74を昇順に順次点灯し、単位表示装置40-8の発光装置L81?L84を降順に順次点灯し、単位表示装置40-9の発光装置L91?L94を昇順に順次点灯し、単位表示装置40-10の発光装置L101?L104を昇順に順次点灯し、単位表示装置40-11の発光装置L111?L114を昇順に順次点灯し、これらの動作を繰り返す。
【0034】
このような異常検知センサS3で異常を検知した場合の各単位表示装置40-1?40-11の各発光装置L11?L114の順次点灯制御により、被誘導者を最適な通路に沿って案内誘導することが可能になる。
【0035】
図5は、図2に示した避難誘導システム100における他の誘導例を示す図である。
【0036】
図5においては、異常検知センサS1?S9の内の異常検知センサS8で異常を検知した場合を示している。
【0037】
図2に示す記憶装置120には、図3に示すように、異常検知センサS8に対応して、単位表示装置40-1の誘導方向は「2」、単位表示装置40-2の誘導方向は「2」、単位表示装置40-3の誘導方向は「2」、単位表示装置40-4の誘導方向は「2」、単位表示装置40-5の誘導方向は「1」、単位表示装置40-6の誘導方向は「2」、単位表示装置40-7の誘導方向は「1」、単位表示装置40-8の誘導方向は「2」、単位表示装置40-9の誘導方向は「1」、単位表示装置40-10の誘導方向は「2」、単位表示装置40-11の誘導方向は「1」が記憶されている。
【0038】
主制御装置110は、異常検知センサS8の異常検知に対応して、記憶装置120から異常検知センサS8に対応する上記各単位表示装置40-1?40-11の誘導方向「1」または「2」を取得する。そして、主制御装置110は、単位制御装置130-1に誘導方向「2」、単位制御装置130-2に誘導方向「2」、単位制御装置130-3に誘導方向「2」、単位制御装置130-4に誘導方向「2」、単位制御装置130-5に誘導方向「1」、単位制御装置130-6に誘導方向「2」、単位制御装置130-7に誘導方向「1」、単位制御装置130-8に誘導方向「2」、単位制御装置130-9に誘導方向「1」、単位制御装置130-10に誘導方向「2」、単位制御装置130-11誘導方向「1」を通知する。
【0039】
これにより、各単位制御装置130-1?130-11は、図5に矢印で示すように、単位表示装置40-1の発光装置L11?L14を降順に順次点灯し、単位表示装置40-2の発光装置L21?L24を降順に順次点灯し、単位表示装置40-3の発光装置L31?L34を降順に順次点灯し、単位表示装置40-4の発光装置L41?L44を降順に順次点灯し、単位表示装置40-5の発光装置L51?L54を昇順に順次点灯し、単位表示装置40-6の発光装置L61?L64を降順に順次点灯し、単位表示装置40-7の発光装置L71?L74を昇順に順次点灯し、単位表示装置40-8の発光装置L81?L84を降順に順次点灯し、単位表示装置40-9の発光装置L91?L94を昇順に順次点灯し、単位表示装置40-10の発光装置L101?L104を降順に順次点灯し、単位表示装置40-11の発光装置L111?L114を昇順に順次点灯し、これらの動作を繰り返すように制御する。
【0040】
このような異常検知センサS8で異常を検知した場合の各単位表示装置40-1?40-11の各発光装置L11?L114の順次点灯制御により、被誘導者を最適な通路に沿って案内誘導することが可能になる。
【0041】
なお、他の異常検知センサS1?S9で異常を検知した場合の動作も同様である。
【0042】
図6は、図2に示した主制御装置110の動作を説明するフローチャートである。
【0043】
図2に示した主制御装置110の制御が開始されると、まず、異常検知センサS1?S9のいずれかで異常が検知されたかを調べる(ステップ601)。ここで、異常検知センサS1?S9で異常が検知されていないと(ステップ601でNO)、ステップ601に戻って、異常検知センサS1?S9のいずれかで異常が検知されるのを待つ。
【0044】
ステップ601で、異常検知センサS1?S9のいずれかで異常が検知されるたと判断されると(ステップ601でYES)、避難誘導モードをセットし(ステップ602)、異常を検知した異常検知センサS1?S9に対応して記憶装置120に記憶されている各単位表示装置40-1?40-11に対応する誘導方向「1」または「2」を取得する(ステップ603)。
【0045】
そして、記憶装置120から取得した各単位表示装置40-1?40-11に対応する誘導方向「1」または「2」を各単位表示装置40-1?40-11に対応する各単位制御装置130-1?130-11に通知する(ステップ604)。
【0046】
これにより、次に図7で説明する各単位制御装置130-1?130-11の避難誘導制御が開始される。
【0047】
主制御装置110では、この状態で、次に、避難誘導モードが解除されたかを調べ(ステップ605)、避難誘導モードが解除されていない場合は(ステップ605でNO)、ステップ605に戻り、避難誘導モードが解除されるのを待つが、避難誘導モードが解除されたと判断されると(ステップ605でYES)、各単位制御装置130-1?130-11に対して発光停止を通知し(ステップ606)、この主制御装置110の制御を終了する。
【0048】
なお、避難誘導モードの解除は、例えば、異常状態が解消された後、管理者等に安全が確認された後、手動で行われる。
【0049】
図7は、図2に示した単位制御装置130-1?130-11の動作を説明するフローチャートである。
【0050】
図2に示した各単位制御装置130-1?130-11は、主制御装置110からの誘導方向通知に基づき対応する単位表示装置40-1?40-11の複数の発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114の順次点灯制御を行う。
【0051】
各単位制御装置130-1?130-11は、まず、主制御装置110からの誘導方向通知を受信したかを調べる(ステップ701)。ここで、主制御装置110からの誘導方向通知を受信していないと判断されると(ステップ701でNO)、ステップ701に戻り、主制御装置110からの誘導方向通知の受信を待つ。
【0052】
ステップ701で、主制御装置110からの誘導方向通知を受信したと判断すると(ステップ701でYES)、対応する単位表示装置40-1?40-11の複数の発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114を、主制御装置110から通知された誘導方向「1」または「2」に基づき順次繰り返し点灯する制御が行われる。
【0053】
これにより誘導エリア10内の図示しない被誘導者を単位通路30-1?30-11に沿って非常口20-1、20-2に案内することができる。
【0054】
この状態で、各単位制御装置130-1?130-11は、主制御装置110からの発光停止通知を受けたかを調べる(ステップ703)。ここで、主制御装置110からの発光停止通知を受けていない場合は(ステップ703でNO)、ステップ702に戻り、表示装置40-1?40-11の複数の発光装置L11?L14、L21?L24、L31?L34、L41?L44、L51?L54、L61?L64、L71?L74、L81?L84、L91?L94、L101?L104、L111?L114を、主制御装置110から通知された誘導方向に基づき順次繰り返し点灯する制御を続ける。
【0055】
そして、ステップ703で、主制御装置110からの発光停止通知を受けたと判断すると(ステップ703でYES)、対応する単位表示装置40-1?40-11の発光を停止してこの単位制御装置130-1?130-11による表示装置40-1?40-11の制御を終了する。
【0056】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内であれば、当業者の通常の創作能力によって多くの変形が可能である。
【0057】
例えば、上記実施例では、各単位通路30-1?30-11内に設けられる各単位表示装置40-1?40-11内の発光装置の数を4個にして説明したが、この数は5個以上でもよく、また、2個または3個でもよい。
【0058】
また、各単位表示装置40-1?40-11内の発光装置の数は、それぞれ同一の数としたが、それぞれ異なるように設定してもよい。
【0059】
また、上記実施例では、主制御装置110と複数の単位制御装置130-1?130-11を用いて構成したが、複数の単位制御装置130-1?130-11のそれぞれに記憶装置120を設けることにより、主制御装置110の機能を持たせることにより、主制御装置110を省略してもよい。この場合、記憶装置120はディップスイッチ群を用いて構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明は、大規模店舗内、病院内、空港内、各種展示会場内等で火災等の異常が発生した場合の避難誘導に利用可能である。この発明によれば、避難口に繋がる通路の所定の箇所に分散配置され、該配置箇所における異常をそれぞれ検知する複数の異常検知センサと、前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し、該単位通路に対応して複数の発光装置をそれぞれ該単位通路に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置と、前記単位表示装置に対応して共通に設けられ、前記複数の異常検知センサの内の異常を検知した1または複数の異常検知センサに対応して、該異常を検知した異常個所から遠ざかる方向でかつ非常口に近づく方向を前記複数の単位表示装置のそれぞれの誘導方向として記憶する記憶装置と、前記発光装置にそれぞれ対応して設けられ、前記単位通路の床面、側面、若しくは側面に取り付けられた手摺にライン状に配置される発光素子列と、前記複数の単位表示装置に対応してそれぞれ設けられ、前記異常検知センサの異常検知に対応して前記記憶装置から取得した前記誘導方向に基づき該単位表示装置の複数の発光装置のそれぞれの発光素子列の発光素子を該誘導方向にしたがって順次繰り返し点灯するようにそれぞれ制御する複数の単位制御装置と、を具備して構成したので、非常に安価な構成で被誘導者を安全かつ適切に避難誘導することが可能になる。
【符号の説明】
【0061】
10 誘導エリア
20-1、20-2 非常口(避難口)
30-1?30-11 単位通路
40-1?40-11 単位表示装置
100 避難誘導システム
110 主制御装置
120 記憶装置
130-1?130-11 単位制御装置
S1?S9 異常検知センサ
L11?L114 発光装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難口に繋がる通路の所定の箇所に分散配置され、該配置箇所における異常をそれぞれ検知する複数の異常検知センサと、
前記通路に配置された2個の異常検知センサで挟まれた区画を単位通路として分割し、該単位通路に対応して複数の発光装置をそれぞれ該単位通路に沿ってライン状に配列した複数の単位表示装置と、
前記単位表示装置に対応して共通に設けられ、前記複数の異常検知センサの内の異常を検知した1または複数の異常検知センサに対応して、該異常を検知した異常個所から遠ざかる方向でかつ非常口に近づく方向を前記複数の単位表示装置のそれぞれの誘導方向として記憶する記憶装置と、
前記発光装置にそれぞれ対応して設けられ、前記単位通路の床面、側面、若しくは側面に取り付けられた手摺にライン状に配置される発光素子列と、
前記複数の単位表示装置に対応してそれぞれ設けられ、前記異常検知センサの異常検知に対応して前記記憶装置から取得した前記誘導方向に基づき該単位表示装置の複数の発光装置のそれぞれの発光素子列の発光素子を該誘導方向にしたがって順次繰り返し点灯するようにそれぞれ制御する複数の単位制御装置と、
を具備することを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
前記異常検知センサは、温度検知センサ、煙検知センサのいずれか、若しくはその組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の避難誘導システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-23 
出願番号 特願2015-202600(P2015-202600)
審決分類 P 1 651・ 55- YAA (G08B)
P 1 651・ 537- YAA (G08B)
P 1 651・ 121- YAA (G08B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 倍司  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 吉田 隆之
富澤 哲生
登録日 2017-07-07 
登録番号 特許第6169665号(P6169665)
権利者 株式会社ティーエヌケー
発明の名称 避難誘導システム  

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