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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 一部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1353155
異議申立番号 異議2018-700278  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-03 
確定日 2019-06-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6209056号発明「狭分子量分布ポリプロピレンおよびその調製方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6209056号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、20-29〕、〔8-19、30-46〕について訂正することを認める。 特許第6209056号の請求項1、2、5-7、20-29に係る特許を維持する。 特許第6209056号の請求項3、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6209056号の請求項1ないし40に係る特許についての出願は、平成25年10月30日(パリ条約による優先権主張 2012年(平成24年)10月30日、中国)に特許出願され、平成29年9月15日にその特許権の設定登録がされ、同年10月4日に特許公報が発行されたものである。
その後、平成30年4月3日に、本件特許の請求項1?7及び20?29に係る特許に対して、特許異議申立人である藤江桂子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
平成30年10月 2日 :取消理由通知書
同年12月28日 :意見書、訂正請求書(特許権者)
平成31年 1月29日 :通知書(訂正請求があった旨の通知)
同年 3月 1日 :意見書(申立人)

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
平成30年12月28日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?46について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5であり、分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きく、
PI_(HT)は、下記の式(1)にしたがって算出され、
PI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であることを特徴とする、ポリプロピレン。」とあるのを、
「分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5であり、分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きく、
PI_(HT)は、下記の式(1)にしたがって算出され、
PI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であり、プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がなく、結晶化温度Tcが113℃より高いことを特徴とする、ポリプロピレン。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8において、「請求項1?6の何れか1項に記載のポリプロピレンを調製する方法であって、」とあるのを、独立形式に改め、「分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5であり、分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きいポリプロピレンを調製する方法であって、
PI_(HT)は、下記の式(1)にしたがって算出され、
PI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であり、」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8において、請求項2を引用するものについて、「ポリプロピレンが、85%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有する、請求項8に記載の調製方法。」と記載し、新たに請求項41とする。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8において、請求項3を引用するものについて、「ポリプロピレンが、プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がない、請求項8または41に記載の調製方法。」と記載し、新たに請求項42とする。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8において、請求項4を引用するものについて、「ポリプロピレンが、結晶化温度Tcが113℃より高い、請求項8、41および42の何れか1項に記載の調製方法。」と記載し、新たに請求項43とする。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8において、請求項5を引用するものについて、「ポリプロピレンが、キシレン可溶分が4.4重量%未満である、請求項8、41、42および43の何れか1項に記載の調製方法。」と記載し、新たに請求項44とする。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8において、請求項6を引用するものについて、「ポリプロピレンが、メルトフローレートMFRが0.01?1000g/10分である、請求項8、41、42、43および44の何れか1項に記載の調製方法。」と記載し、新たに請求項45とする。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項20において、「スピニング、薄膜注入、もしくはキャスティングのプロセス、または透明材料の調製における、請求項1?7の何れか1項に記載のポリプロピレンまたは請求項8?19の何れか1項に記載の調製方法によって調製されるポリプロピレンの使用。」とあるのを、「スピニング、薄膜注入、もしくはキャスティングのプロセス、または透明材料の調製における、請求項1、2および5?7の何れか1項に記載のポリプロピレンの使用。」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項20において、「スピニング、薄膜注入、もしくはキャスティングのプロセス、または透明材料の調製における、請求項1?7の何れか1項に記載のポリプロピレンまたは請求項8?19の何れか1項に記載の調製方法によって調製されるポリプロピレンの使用。」とあるのを、「スピニング、薄膜注入、もしくはキャスティングのプロセス、または透明材料の調製における、請求項8?19の何れか1項に記載の調製方法によって調製されるポリプロピレンの使用。」と記載し、新たに請求項46とする。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項28において、「メルトフローレートMFRが1?1000g/10分であることを特徴とする、請求項6に記載のポリプロピレン。」とあるのを、「メルトフローレートMFRが10?100g/10分であることを特徴とする、請求項6に記載のポリプロピレン。」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項5において、「請求項1?4の何れか1項に記載の」とあるのを、「請求項1または2に記載の」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項6において、「請求項1?5の何れか1項に記載の」とあるのを、「請求項1、2および5の何れか1項に記載の」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項7において、「請求項1?6の何れか1項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、5および6の何れか1項に記載の」に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項25において、「請求項4に記載の」とあるのを、「請求項1に記載の」に訂正する。

2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に対して、「プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がなく、結晶化温度Tcが113℃より高い」との記載を追加するものである。
この訂正は、訂正前の請求項1における「ポリプロピレン」について、「プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がなく、結晶化温度Tcが113℃より高い」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項3及び4には、この訂正に該当する記載があるから、上記訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、5?7、20?29も同様に訂正されることになる。)
よって、訂正事項1は、特許法第120の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2及び3について
これらの訂正は、訂正前の請求項3及び4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項2及び3は、特許法第120の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項4について
この訂正は、引用形式を独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当し、訂正後の請求項8に係る発明は、何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(請求項8を直接又は間接的に引用する請求項9?19、30?40も同様に訂正されることになる。)
そして、訂正後の請求項8に係る発明は訂正前の請求項8に由来し、訂正前の請求項8に係る発明は特許異議の申立てがされていないが、上述のように、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、独立特許要件は課せられない。
(訂正前の請求項8を引用する請求項9?19、30?40についての訂正も同様である。)
よって、訂正事項4は、特許法第120の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項5?9及び11について
これらの訂正は、訂正後の請求項8を引用形式から独立形式に改めたことに伴い、訂正後の請求項8を直接又は間接的に引用するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当し、訂正後の請求項41?46に係る発明は、何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、訂正後の請求項41?46に係る発明は、訂正前の請求項8に由来し、訂正前の請求項8に係る発明は特許異議の申立てがされていないが、上述のように、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、独立特許要件は課せられない。
よって、訂正事項5?9及び11は、特許法第120の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項10について
この訂正は、削除された請求項3及び4を引用しないものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項10は、特許法第120の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項12について
この訂正は、訂正前の請求項28における「メルトフローレートMFR」に関して、その範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件特許の願書に添付した明細書には、「狭分子量分布に基づいた本発明のポリプロピレンは、メルトフローレート(MFR)が、0.01?1000g/10分、・・・特に好ましくは10?100g/10分である。」(段落【0010】)との記載があるから、上記訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項12は、特許法第120の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項13?15について
これらの訂正は、訂正前の請求項3及び4を削除する訂正事項2及び3に伴い、削除された請求項を引用しないものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項16について
この訂正は、訂正前の請求項3及び4を請求項1の特定事項とする訂正事項1、及び訂正前の請求項4の記載を削除する訂正事項4に伴い、引用する請求項を請求項4から請求項1に変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(9)一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて
訂正事項1?16による本件訂正は、訂正前の請求項1?40を訂正するものであり、訂正前の請求項2?40は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?40は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であって、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
そして、特許権者は、訂正後の請求項8?19及び30?46についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている(訂正請求書31頁6?9行)。訂正後の請求項8?19、30?46に係る訂正事項4?9及び11は、上記(4)?(9)及び(11)で述べたとおり認められるから、上記別の訂正単位とする求めを認め、訂正後の請求項8?19及び30?46を、訂正後の請求項2?7及び20?29とは別の訂正単位とすることを認める。

3 まとめ
上記2のとおり、訂正事項1?16に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。

第3 本件発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、2、5?46に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1、2、5?46に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

「【請求項1】
分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5であり、分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きく、
PI_(HT)は、下記の式(1)にしたがって算出され、
PI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であり、プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がなく、結晶化温度Tcが113℃より高いことを特徴とする、ポリプロピレン。
【請求項2】
85%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
キシレン可溶分が4.4重量%未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリプロピレン。
【請求項6】
メルトフローレートMFRが0.01?1000g/10分であることを特徴とする、請求項1、2および5の何れか1項に記載のポリプロピレン。
【請求項7】
反応器における重合によって直接的に調製されることを特徴とする、請求項1、2、5および6の何れか1項に記載のポリプロピレン。
【請求項8】
分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5であり、分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きいポリプロピレンを調製する方法であって、
PI_(HT)は、下記の式(1)にしたがって算出され、
PI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であり、
以下のステップ:
(1)チーグラーナッタ触媒の存在下においてプロピレンを前重合するステップ、
(2)ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91?150℃の重合温度においてプロピレンを重合するステップ
を含み、
上記チーグラーナッタ触媒は、以下の成分:
(1)チタン含有固体触媒成分;
(2)アルキルアルミニウム化合物;
の反応生成物を含み、
上記成分(1)としての上記チタン含有固体触媒成分は、アルコキシマグネシウム化合物とチタン化合物と内部電子供与体化合物とを接触させた反応生成物であり、
上記チタン化合物は、式(I)で表される少なくとも1つの化合物から選ばれ、
【化4】
Ti(OR)_(4-n)X_(n) (I)
(式(I)において、
RはC_(1)-C_(14)脂肪族ヒドロカルボニルおよび芳香族ヒドロカルボニルから選ばれ;
Xはハロゲンであり;
nは0?4から選ばれる整数であり;
nが2と同じか2より小さい場合、R基は同じでも異なっていてもよい);
上記内部電子供与体化合物は、式(IV)で表される少なくとも1つのジエーテル化合物から選ばれる
【化5】

(式(IV)において、
R_(1)およびR_(2)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状、分枝状、および環式のC_(1)-C_(20)脂肪族基から選ばれ;
R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(8)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して水素、ハロゲン原子、ならびに直鎖状または分枝状のC_(1)-C_(20)アルキル、C_(3)-C_(20)シクロアルキル、C_(6)-C_(20)アリール、C_(7)-C_(20)アルキルアリール、およびC_(7)-C_(20)アリールアルキルから選ばれ、任意でR_(3)?R_(8)は互いに結合して環を形成することができる)
ことを特徴とする、調製方法。
【請求項9】
以下のステップ:
(1)気相または液相中、-10℃?50℃、かつ0.1?10.0MPaにおいて、上記チーグラーナッタ触媒の存在下でプロピレンを前重合し、プロピレンの前重合体を得るステップであって、前重合率は2?3000g重合体/g触媒に制御されているステップ;
(2)上記ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91?150℃、かつ1.0?6.0MPaにおいて、0.5?4.0時間の重合時間でプロピレンを単独重合し、上記プロピレンの重合体を得るステップ
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
上記ステップ(1)およびステップ(2)は、同一の反応器において非連続的に行われる、または、異なる反応器において連続的に行われることを特徴とする、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
上記ステップ(1)において、プロピレンの前重合温度は0?30℃に制御され;前重合圧力は1.0?6.0MPaであることを特徴とする、請求項8?10の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項12】
上記ステップ(1)は、0?30℃の温度におけるプロピレンの液相バルク前重合であり;上記ステップ(2)は、91?110℃の温度におけるプロピレンの気相単独重合であることを特徴とする、請求項8?11の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項13】
上記ステップ(2)におけるプロピレンの気相重合は、横型ミキサーシャフトを備え、10?150rpmの撹拌速度であり、かつTタイプ、矩形、傾きのあるパドル、ドアタイプ、V字形、およびそれらの任意の組み合わせから選ばれる混合羽根を備える、熱を除去するために急冷液を用いる横型反応器において行われることを特徴とする、請求項8?12の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項14】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、式Mg(OR^(1))_(2-m)(OR^(2))_(m)(当該式において、R^(1)およびR^(2)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ直鎖状および分枝状のC_(1)-C_(8)アルキル基の1つから選ばれ、0≦m≦2である)で表される少なくとも1つの化合物から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
【請求項15】
上記式において、R^(1)はエチルであり、R^(2)は(2-エチル)ヘキシルであり、0.001≦m≦0.5であることを特徴とする、請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、球体状の外観であり、平均粒径D50が10?150μmであり、粒径分布指数SPAN<1.1であり、SPANは下記式(III):
【数1】
SPAN=(D90-D10)/D50 (III)
(式(III)において、
D90は90%の累積重量分率に相当する粒径を表し;
D10は10%の累積重量分率に相当する粒径を表し;
D50は50%の累積重量分率に相当する粒径を表す)
によって算出されることを特徴とする、請求項8?15の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項17】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、以下の方法:不活性ガス雰囲気の保護下において、出発原料としてのアルコールおよびマグネシウム金属と混合ハロゲン化剤とを反応させ、球体状のジアルコキシマグネシウム微粒子を調製すること、によって調製され;上記アルコールとマグネシウムとの重量比は、4?50:1であり;上記アルコールは直鎖状または分枝状のモノアルコールまたは多価アルコールであり;上記ハロゲン化剤はハロゲン元素およびハロゲン化物の少なくとも1つから選ばれ、ハロゲン原子とマグネシウムとモル比が0.0002?0.2:1において用いられることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項18】
上記チーグラーナッタ触媒は、以下の成分:
(1)上記チタン含有固体触媒成分;
(2)上記アルキルアルミニウム化合物;
(3)外部電子供与体化合物;
の反応生成物を含むことを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
【請求項19】
上記外部電子供与体化合物は、式(VII)で表される有機ケイ素化合物である
【化6】
R^(1")_(m")R^(2")_(n")Si(OR^(3"))_(4-m"-n") (VII)
(式(VII)において、
R^(1)''およびR^(2)''は同じでも異なっていてもよく、それぞれハロゲン、水素原子、1?20の炭素原子を有するアルキル、3?20の炭素原子を有するシクロアルキル、6?20の炭素原子を有するアリール、および1?20の炭素原子を有するハロゲン化アルキルのうちの1つであり;
R^(3)''は、1?20の炭素原子を有するアルキル、3?20の炭素原子を有するシクロアルキル、6?20の炭素原子を有するアリール、および1?20の炭素原子を有するハロゲン化アルキルのうちの1つであり;
m''およびn''はそれぞれ0?3の整数であり、m''+n''<4である)
ことを特徴とする、請求項18に記載の調製方法。
【請求項20】
スピニング、薄膜注入、もしくはキャスティングのプロセス、または透明材料の調製における、請求項1、2および5?7の何れか1項に記載のポリプロピレンの使用。
【請求項21】
分子量分布指数Mw/Mnが3.0?4.9であることを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項22】
分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が2.1より大きいことを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項23】
90%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有することを特徴とする、請求項2に記載のポリプロピレン。
【請求項24】
93%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有することを特徴とする、請求項2に記載のポリプロピレン。
【請求項25】
結晶化温度Tcが115℃より高いことを特徴とする、請求項4に記載のポリプロピレン。
【請求項26】
キシレン可溶分が2.3重量%未満であることを特徴とする、請求項5に記載のポリプロピレン。
【請求項27】
キシレン可溶分が1.6重量%未満であることを特徴とする、請求項5に記載のポリプロピレン。
【請求項28】
メルトフローレートMFRが10?100g/10分であることを特徴とする、請求項6に記載のポリプロピレン。
【請求項29】
メルトフローレートMFRが1?399g/10分であることを特徴とする、請求項6に記載のポリプロピレン。
【請求項30】
以下のステップ:
(1)上記チーグラーナッタ触媒の存在下においてプロピレンを前重合するステップ、
(2)ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91?110℃の重合温度においてプロピレンを重合するステップを含む、請求項8に記載の調製方法。
【請求項31】
ステップ(1)において、前重合率は3?2000g重合体/g触媒に制御されていることを特徴とする、請求項9に記載の調製方法。
【請求項32】
ステップ(2)において、ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91?110℃、かつ1.0?6.0MPaにおいて、0.5?4.0時間の重合時間でプロピレンを単独重合し、上記プロピレンの重合体を得ることを特徴とする、請求項9に記載の調製方法。
【請求項33】
上記ステップ(1)において、プロピレンの前重合温度は10?25℃に制御されることを特徴とする、請求項11に記載の調製方法。
【請求項34】
上記ステップ(1)において、前重合圧力は1.5?5.5MPaであることを特徴とする、請求項11に記載の調製方法。
【請求項35】
上記式(IV)において、
R_(1)およびR_(2)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状または分枝状のC_(1)-C_(6)アルキルから選ばれ;R_(5)およびR_(6)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状または分枝状のC_(1)-C_(10)アルキルおよびC_(3)-C_(10)シクロアルキルから選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
【請求項36】
0.001≦m≦0.25であることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項37】
0.001≦m≦0.1であることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項38】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、平均粒径D50が15?100μmであることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項39】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、平均粒径D50が18?80μmであることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項40】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、粒径分布指数SPAN<1.05であることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項41】
ポリプロピレンが、85%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有する、請求項8に記載の調製方法。
【請求項42】
ポリプロピレンが、プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がない、請求項8または41に記載の調製方法。
【請求項43】
ポリプロピレンが、結晶化温度Tcが113℃より高い、請求項8、41および42の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項44】
ポリプロピレンが、キシレン可溶分が4.4重量%未満である、請求項8、41、42および43の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項45】
ポリプロピレンが、メルトフローレートMFRが0.01?1000g/10分である、請求項8、41、42、43および44の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項46】
スピニング、薄膜注入、もしくはキャスティングのプロセス、または透明材料の調製における、請求項8?19の何れか1項に記載の調製方法によって調製されるポリプロピレンの使用。」

第4 取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由
訂正前の本件発明1?7及び21?29は、下記のとおりの取消理由(申立理由1-1?2-2)があるから、本件特許の請求項1?7及び21?29に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記の甲第1号証?甲第6号証(以下、それぞれ「甲1」等という。)及び参考資料1を提出する。

(1)申立理由1-1(新規性):訂正前の本件発明1?7及び21?29は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)申立理由1-2(新規性):訂正前の本件発明1?7及び22?25、28は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(3)申立理由2-1(進歩性):訂正前の本件発明2?7及び23?29は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明、並びに甲1、甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(4)申立理由2-2(進歩性):訂正前の本件発明2?7及び20、23?25、28、29は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲2に記載された発明、並びに、甲2、甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

甲1:S.Abedi et al., “Effect of Polymerization Time on the Molecular Weight and Molecular Weight Distribution of Polypropylene”, Journal of Applied Polymer Science, 2006年,Vol.100, p.368-371
甲2:特開平7-2925号公報
甲3:Proceedings of the “Giulio Natta” celebration conference, 2003年
甲4:David Fischer et al., “The influence of regio- and stereoirregularities on the crystallization behaviour of isotactic poly(propylene)s prepared with homogeneous group IVa metallocene / methylaluminoxane Ziegler-Natta catalysts”, Macromolecular Chemistry and Physics, 1994, Vol.195, p.1433-1441
甲5:特願平6-93203号(甲第2号証に係る特許出願)の審査過程における平成15年12月16日提出の意見書
甲6:Daniela Held and Guenter Reinhold, “Tips & Tricks: GPC/SEC”, p.15-17, [online], 2007年10月, [2018年3月5日検索], インターネット
参考資料1:He-Xin Zhang et al., “Control of molecular Weight Distribution for Polypropylene Obtained by Commercial Ziegler-Natta Catalyst: Effect of Electron Donor ”, Macromolecular Research, 2011, Vol.19, No.6, p.622-628

2 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1:本件発明1、2、5、6、7、21?24、26?29は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)取消理由2:本件発明1、2、5、6、7、20?24、26?29は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第5 当審の判断
以下に述べるように,取消理由通知書に記載した取消理由1及び2、並びに、特許異議申立書に記載した申立理由1-1?2-2によっては、本件特許の請求項1?7、20?29に係る特許を取り消すことはできない。

1 取消理由通知書に記載した取消理由について
(1)取消理由1(新規性)
ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
(ア)「ABSTRACT:The influence of the polymerization time on the molecular weight (Mw, Mn, Mp, and Mz), molecular weight distribution (MWD) and relative MWD of polypropylene (PP) in the propylene polymerization with a Mg(OEt)_(2) /DIBP /TiCl_(4) /PTES /AlEt_(3) catalyst system in the slurry phase has been studied by using gel permeation chromatography (GPC), where Mg(OEt)_(2), DIBP(diisobutyl phthalate), TiCl_(4), PTES (phenyl triethoxy silane), and triethyl aluminum (TEA) are support, internal donor, catalyst, external donor, and cocatalyst, respectively. It has been found that the increase of the polymerization time increases the molecular weight and MWD of PP.」(368頁ABSTRACT)
(合議体訳:要約:スラリー相における Mg(OEt)_(2)/DIBP/TiCl_(4)/PTES/AlEt_(3)触媒系でのプロピレンの重合におけるポリプロピレンの分子量(Mw、Mn、Mp及びMz)、分子量分布(MWD)及び相対分子量分布に対する重合時間の影響を、Mg(OEt)_(2)、DIBP(フタル酸ジイソブチル)、TiCl_(4) 、PTES(フェニルトリエトキシシラン)、及びトリエチルアルミニウム(TEA)をそれぞれ担体、内部ドナー、触媒、外部ドナー、及び助触媒とし、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて研究した。重合時間が増加するにつれて、ポリプロピレンの分子量及び分子量分布も増加することが分かった。)

(イ)「EXPERIMENTAL
Materials
Propylene (polymer grade), nitrogen (>99.99%), and n-hexane (H_(2)O < 2ppm) were purchased from Arak Petrochemical Co. (Iran). TiCl_(4), TEA, PTES, and DIBP were purchased from Fluka Co. (Switzerland). Magnesium ethoxide and toluene (extra pure grade) were purchased from Merck Co. (Germany). n-Heptane (H_(2)O < 3ppm) was prepared from Shazand Refinery Co. (Iran).

Catalyst
Ten grams of Mg(OEt)_(2) and 20 mL of TiCl_(4) were added to 80 mL of toluene in a 1.0-L flat-bottom flask,


under vigorous stirring with a magnetic stirrer in room temperature. Then, the temperature of the mixture was increased to 115 ℃ in 1 h. Upon reaching 90 ℃, 2.7 mL of DIBP as the ID was added.
The temperature was maintained at 115 ℃ for 2 h, it was then left to decant and afterwards the hot liquid was siphoned off. The solid product was washed with 100 mL of toluene and then treated with 20 mL of TiCl_(4) for 2 h. Finally, it was left to settle and the liquid was siphoned off while hot; the residual solid washed 10 times with 100mL of hot n-hexane until no traces of titanium were detected in the washing liquid. The washed catalyst was stored in n-heptane in a glovebox, under nitrogen atmosphere.

Polymerization
Polymerization was carried out in a 1.6-L steel jacket Buchi autoclave reactor equipped with a mechanical seal stirrer (mixing speed was around 500 rpm, T form) in the slurry phase.
After running out of all moisture and air by nitrogen, 800 mL of n-heptane was added. After 10 min, 20 mL of TEA (2M in heptane), 2.5 mL of PTES (1M in heptane), and 50 mg of catalyst (dispersed in 2 mL of n-heptane) were added by using glass syringes, respectively.Before the catalyst addition, TEA and ED were precontacted for 5 min. The reactor was warmed up to 65-70 ℃ and then propylene was supplied continuously at 9 bar for the required time.
After the polymerization, the untreated gases were slowly released and the polymer was then filtered and dried in vacuo at 70 ℃ overnight to a constant weight.」(368頁右欄18行?369頁左欄31行)

(合議体訳:
実験
原材料
プロピレン(ポリマー等級)、窒素(>99.99%)及びn-ヘキサン(H_(2)O<2ppm)はArak Petrochemical Co. (イラン)から購入した。TiCl_(4)、TEA、PTES及びDIBPは、Fluka Co. (スイス)から購入した。マグネシウム・エトキシドとトルエン(高純度級)はMerck Co. (ドイツ)から購入した。n-ヘプタン(H_(2)O<3ppm)はShazand Refinery Co. (イラン)から購入した。

触媒
10gのMg(OEt)_(2)及び20mLのTiCl_(4)を、1Lの平底フラスコ中の80mLのトルエンに加え、

表I
重合時間がポリマーの分子量に与える影響
(表は省略)

室温下にマグネチック・スターラで激しく撹拌した。その際、混合物の温度を1時間かけて115℃に昇温した。90℃に達した時点で、2.7mLのDIBPを内部ドナーとして加えた。
115℃に2時間保持した後、デカンタに移され、その後、熱液を吸い上げた。固体の生成物は、100mLのトルエンで洗浄され、20mLのTiCl4で2時間処理した。最後に、静置され、高温のうちに液体が吸い上げられた。沈澱物は、洗浄液にチタンが検出されなくなるまで、100mLの高温のn-ヘキサンで10回洗浄した。洗浄された触媒は、窒素雰囲気下のグローブボックスでn-ヘキサン中に保管された。

重合
重合は、メカニカルシール撹拌機(撹拌速度は約500rpm、T形)を備えたBuchi社製の1.6L鉄製ジャケット圧力反応器を用いて、スラリー相内で行われた。
窒素ガスで水分と空気を除去した後、800mLのn-へプタンを加えた。10分後、20mLのTEA(ヘプタン中で2M)、2.5mLのPTES(ヘプタン中で1M)及び50mgの触媒(2mLのヘプタンに分散)を、それぞれガラス製スポイトを使って加えた。
触媒を加える前に、TEA及び外部ドナーを5分間、事前接触させておいた。反応器を65?70℃に加温した後、プロピレンを9バールで所定の時間、連続的に供給した。
重合後に、未処理ガスがゆっくり放出された後、ポリマーがろ過され、一晩かけて真空下70℃で、一定の重量になるまで乾燥した。)

(ウ)
「RESULTS AND DISCUSSION
The influence of the polymerization time on various parameters of molecular weight has been shown in Table I. According to Table I, Mw, Mn, Mp, Mz and MWD increase with increase in polymerization time.
With regard to the table, Mn, Mw, and MWD increase from 26,930, 99,960, and 3.71 in 1 h of the polymerization to 36,492, 153661, and 4.21 in that of 4 h, respectively.
The increase in MWD shows that the rate of the increase of Mw during a polymerization is slightly more than that of Mn. On the other hand, relative MWD also increases with increase in the polymerization time. According to Table II, when the polymerization time increases from 1 h to 2 h, the increase of the relative MWD is about 1.01, whereas with increase in the polymerization times from 2 h to 3 h and from 3 h to 4 h, the relative MWDs increase to 1.03 and 1.08, respectively. It shows that the increase of the rate growth of Mw slightly increases with increase in the polymerization time.
Also, Table I shows that Mp and Mz rise from 78,742, and 303539 after 1 h of polymerization to 122677 and 479469 after that of 4 h, respectively. Figure 1 shows GPC curves of the produced polymers in the different times. 」(369頁右欄18?43行)

(合議体訳:結果と考察
分子量の様々なパラメータに与える重合時間の影響を表Iに示す。表Iによると、Mw、Mn、Mp、Mz及びMWDは、重合時間が長くなるにつれて増加する。
表Iに関して、Mn、Mw及びMWDはそれぞれ、1時間の重合時間における26,930、99,960及び3.71から、4時間の重合時間における36,492、153661及び4.21に増加する。
MWDの増加から、重合中のMwの増加率がMnの増加率よりもわずかに大きいことを示している。表IIによると、重合時間が1時間から2時間に増えると、相対MWDの増加が1.01倍になり、一方、重合時間が2時間から3時間、3時間から4時間に増えると、相対MWDがそれぞれ1.03及び1.08に増加する。このことは、重合時間が長くなるにつれて、Mwの増加率が増加することを示している。
更に、表Iから、Mp及びMzは、重合1時間後の78,742及び303539から重合4時間後の122677及び479469に上昇することがわかる。図1は、異なる時間で製造されたポリマーのGPC曲線を示している。)

甲1の摘記ア(イ)の表1によると、1時間の重合時間の後に生成されたポリプロピレンとして、以下の発明が記載されている。
「Mg(OEt)_(2)/DIBP/TiCl_(4)/PTES/AlEt_(3)系の触媒を用いて重合され、Mwが99,960であり、Mnが26,930であり、Mpが78,742であり、Mzが303,539であり、MWD(分子量分布)が3.71であるポリプロピレン」(以下、「甲1発明1」)という。)

同様に、2時間、3時間及び4時間の各重合時間の後に生成されたポリプロピレンとして、それぞれ、以下の発明が記載されている。
「Mg(OEt)_(2)/DIBP/TiCl_(4)/PTES/AlEt_(3)系の触媒を用いて重合され、Mwが106,827であり、Mnが28,425であり、Mpが87,025であり、Mzが315,759であり、MWD(分子量分布)が3.76であるポリプロピレン」(以下、「甲1発明2」)という。)

「Mg(OEt)_(2)/DIBP/TiCl_(4)/PTES/AlEt_(3)系の触媒を用いて重合され、Mwが118,126であり、Mnが30,390であり、Mpが98,559であり、Mzが325,413であり、MWD(分子量分布)が3.89であるポリプロピレン」(以下、「甲1発明3」)という。)

「Mg(OEt)_(2)/DIBP/TiCl_(4)/PTES/AlEt_(3)系の触媒を用いて重合され、Mwが153,661であり、Mnが36,492であり、Mpが122,677であり、Mzが479,469であり、MWD(分子量分布)が4.21であるポリプロピレン」(以下、「甲1発明4」)という。)

イ 甲3に記載された事項
(ア)「These high-activity Ziegler-Natta catalysts comprise MgCl_(2), TiCl_(4) and an “internal” electron donor and are typically used in combination with an aluminum alkyl co-catalyst such as AlEt_(3) and an “external” electron donor added in polymerization.

Additional and impressive progress has been made over the years to understand the function of donors and their structure has been designed accordingly. As a result, catalyst performances have been largely improved, starting first from activity and stereoselectivity, by displacing the first generation of internal/external donors (ethylbenzoate/aromatic esters) with the couple diisobutyl phthalate/alkoxysilane and, more recently, with the introduction of diethers, typically a 2,2-disubstituted-1,3-dimethoxypropane, used without or in combination with an alkoxysilane. But in addition to activity and stereo-control, other catalyst attributes exist that need fine-tuning to drive product innovation and, in particular: hydrogen response and control of polymer molecular weight distribution (MWD). In this respect, phthalate-based catalysts are characterized by high isospecificity, medium hydrogen sensitivity and provide medium MWD PP, diether-based catalysts are characterised by very high activity, medium-high isospecificity, high hydrogen sensitivity and are able to provide narrow MWD polymers. And the progress is not at an end!
Quite recently, a very new catalyst system has been patented, based on a particular family of internal donors, namely succinates, which looks particularly interesting since it was found to provide both high polymer stereoregularity and broad polymer MWD.

Thus, as a function of donor structure (Fig.6), it is possible to modulate both catalyst performances and polymer structure. Actually three families of catalyst systems have been developed that are complementary to one another offering the best choices in terms of both production plant performances and final product property envelope finely tuned towards the most demanding commercial needs (Table 1).

」(甲3の12頁15行?13頁末行)
(合議体訳:このように高活性のチーグラー-ナッタ触媒は、MgCl_(2), TiCl_(4)及び内部電子供与体(内部ドナー)からなり、典型的には、重合時に添加されるAlEt_(3)のようなアルキルアルミニウム助触媒及び外部電子供与体(外部ドナー)との組み合わせで用いられる。

更なる目覚ましい進歩が数年にわたって行われてドナーの機能が理解され、それに伴いドナーの構造が設計されてきた。その結果、触媒の働きが大いに改良され、まず、触媒活性とその立体選択性から始まって、内部/外部ドナーの第一世代(安息香酸エチル/芳香族エステル)を、フタル酸ジイソブチル/アルコキシシランの組に置き換わり、近年では、アルコキシシランを使わないか、これと共用して、ジエーテル、典型的には2,2-二基置換-1,3ジメトキシプロパンの導入に置き換わった。しかしながら、触媒活性及び立体構造の制御に加え、生成物のイノベーション、特に水素応答性やポリマーのMWDの制御をもたらすのに細かな調整を要する他の触媒が存在する。この点で、フタル酸系触媒は、高いイソ特異性や中程度の水素感受性に特徴があり、中MWDのポリプロピレンを製造する。ジエーテル系触媒は、極めて高い活性、中?高程度のイソ特異性、及び高い水素感受性に特徴があり、狭MWDのポリマーを製造する。そして、その進化は終わらない。
昨今、最新の触媒系、特定の内部ドナー群、すなわちコハク酸に基づく新触媒が特許され、高い立体規則性と広いMWDをもたらすことが知られており、極めて興味深い。

図6(省略)

このように、ドナーの構造(図6)の機能として、触媒の働きと生成するポリマーの構造を調整することが可能である。実際、最も高い商業ニーズに向けて、微妙に調節される製造設備の生産性と最終製品の特性の限界に関して、最善の選択ができるように互いに補完し合う3つの触媒系が開発されている(表1)。

表1 異なる電子供与体(ドナー)のクラスによる一般的な性能
・・・
A フタル酸 シラン ・・・
B ジエーテル なし ・・・
C ジエーテル シラン ・・・
D コハク酸 シラン ・・・

I.D.=内部ドナー、E.D.=外部ドナー
数値範囲は、主に、使用された内部ドナー及び外部ドナーの構造の機能による。70℃、2時間での塊状重合、・・・、[H_(2)]=2dl/gの固有粘度を得るのに必要な濃度。)

ウ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1を対比すると、甲1発明1の「Mw」、「Mn」、「Mp」及び「Mz」は、摘記ア(イ)の稼働条件でゲル浸透クラマトグラフィー(GPC)により測定した分子量であり、それぞれ、本件発明1の「Mw」である「重量平均分子量」、「Mn」、「Mp」である「ピーク分子量」、及び「Mz」である「Z平均分子量」に相当する。また、甲1発明1の「MWD(分子量分布)」は、本件発明1の「分子量分布指数Mw/Mn」に相当し、甲1発明1のMWD(分子量分布)である3.71は、本件発明1の「分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5」を満たすといえる。
そして、本件発明1の「分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散指数」(本件明細書の段落0062によると、正しくは「分子量分布幅における高分子量テールの多分散指数PI_(HT)」であると解される。)に関して、本件発明1において定義されたPI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mwを用いて、甲1発明1のPI_(HT)を算出すると3.9となり、本件発明1の「分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散指数が1.9より大きく」を満たすといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、「分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5であり、分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きく、
PI_(HT)は、下記の式(1)にしたがって算出され、
PI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であ」る点で一致し次の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、「プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がな」いのに対して、甲1発明1は、上記位置不規則性が不明である点。

相違点2:本件発明1は、「結晶化温度Tcが113℃より高い」のに対して、甲1発明1は、ポリプロピレンの結晶化温度が不明である点。

(イ)判断
相違点1及び2について検討する。
まず、相違点2に関して、甲1には、甲1発明1におけるポリプロピレンの結晶化温度が113℃より高いことは記載も示唆もされていない。
また、甲1の記載から、甲1発明1におけるポリプロピレンの結晶化温度を特定することはできず、甲1発明1におけるポリプロピレンの結晶化温度が113℃より高いことが裏付られるともいえない。
また、本件発明1と甲1発明2?4を対比しても、相違点1及び2と同様の相違点を有し、甲1発明1について述べたのと同じ理由により、甲1発明2?4のいずれかにおけるポリプロピレンの結晶化温度が113℃より高いともいえない。
そうすると、相違点2は実質的な相違点であるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、請求項1に係る特許は取消理由1(新規性)によって取り消すことはできない。

エ 本件発明2、5?7、21?29
請求項2、5?7、21?29は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、請求項1に係る特許は、上記ウのとおり取消理由1(新規性)によっては取り消すことはできないから、請求項2、5?7、21?29に係る特許も取り消すことはできない。

オ まとめ
以上のとおり、本件発明1、2、5?7、21?29はいずれも、甲1に記載された発明であるとはいえない。
したがって、取消理由1(新規性)によっては、本件特許の請求項1、2、5?7、20?29に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2(進歩性)
ア 本件発明1
上記(1)で述べたとおり、本件発明1と甲1発明1とは相違点1及び2で相違し、相違点2に関して、甲1及び甲3には、甲1発明1のポリプロピレンにおける結晶化温度を113℃より高いものとすることを動機付ける記載も示唆も見当たらない。また、本件発明1と甲1発明2?4を対比しても、相違点1及び2と同様の相違点を有し、甲1及び甲3の記載に基いて、甲1発明2?4のポリプロピレンにおける結晶化温度を113℃より高いものとすることが動機付けられるとはいえない。
そして、本件発明1は、「本発明に係る狭分子量分布ポリプロピレンの調製は過酸化物を用いないため、コストを低減することができ、また、製品は異臭がせず、分解プロセスによって得た狭分子量分布ポリプロピレンと比べて結晶化温度が高い。これによって、生成物の結晶化速度はより高くなり、成形加工サイクルは短くなり、成形効率が上がりやすくなる。また、本発明によって提供されるような狭分子量分布ポリプロピレンは、比較的高い調節可能なアイソタクチシティ、比較的高い融点および結晶化温度、より良いコストパフォーマンス、および、より広い応用性を有する。」(段落0004)という格別顕著な効果を奏するものであり、この効果は本件明細書の実施例から理解することができる。
そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1?4、並びに、甲1及び甲3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、請求項1に係る特許は、取消理由2(進歩性)によって取り消すことはできない。

イ 本件発明2、5?7、20?29
請求項2、5?7、20?29は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、請求項1に係る特許が、上記アのとおり取消理由2(進歩性)によっては取り消すことはできないから、請求項2、5?7、20?29に係る特許も取り消すことはできない。

2 特許異議申立ての理由について
(1)申立理由1-1(新規性)
ア 甲4に記載された事項

(合議体訳:^(13)C NMRによる分光学的分析により決定されたポリプロピレンの微細構造(含有%)(1438頁)

(表は省略)

^(a))エリトロ頭-頭結合
^(b))トレオ頭-頭結合
^(c))1-3挿入
^(d))1%未満の立体-及び位置不規則性の低含有量)

イ 参考資料1に記載された事項
"The PDI of PP could be controlled and predicted while retaining high activity, high isospecificity and high molecular weight " (622頁のAbstract)
(合議体訳:ポリプロピレンの分子量分布(polydispersity index (PDI))は、高い活性、高い立体特異性及び高い分子量を維持したまま調整可能であり、予測可能である。)

ウ 本件発明1
上記1(1)で述べたとおり、本件発明1と甲1発明1は相違点1及び2で相違し、相違点2に関して、甲3、甲4及び参考資料1を見ても、甲1発明1におけるポリプロピレンの結晶化温度が113℃より高いことが裏付けられるとはいえない。
また、本件発明1と甲1発明2?4を対比しても、相違点1及び2と同様の相違点を有し、甲1発明1について述べたのと同じ理由により、甲1発明2?4のいずれかにおけるポリプロピレンの結晶化温度も113℃より高いとはいえない。
そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、請求項1に係る特許は、申立理由1-1(新規性)によっては取り消すことはできない。

エ 本件発明2、5?7、21?29
請求項2、5?7、21?29は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、請求項1に係る特許は、上記ウのとおり申立理由1-1(新規性)によっては取り消すことはできないから、請求項2、5?7、21?29に係る特許も取り消すことはできない。

(2)申立理由2-1(進歩性)
ア 本件発明2
請求項2は、請求項1を直接引用するものであり、上記1(1)で述べたように、本件発明1と甲1発明1とは相違点1及び2で相違するから、本件発明2と甲1発明1とは、相違点1及び2の他に、相違点3で相違する。

相違点3:本件発明2は、「85%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有する」のに対して、甲1発明1は、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列の含有量が不明である点。

相違点2に関して、甲3、甲4及び参考資料1には、甲1発明1において、ポリプロピレンの結晶化温度を113℃より高くすることを動機付ける記載も示唆も見当たらない。また、本件発明2と甲1発明2?4を対比しても、相違点1?3と同様の相違点を有し、甲1発明1について述べたのと同じ理由により、甲1発明2?4のポリプロピレンにおける結晶化温度を113℃より高いものとすることが動機付けられるとはいえない。
そして、本件発明2は、上記1(2)アで述べた格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明1?4、並びに、甲1、甲3、甲4及び参考資料1の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 本件発明5?7、23?29
請求項5?7、23?29は、請求項2を直接又は間接的に引用するものであり、請求項2に係る特許は、上記アのとおり申立理由2-1(進歩性)によっては取り消すことはできないから、請求項5?7、23?29に係る特許も取り消すことはできない。

(3)申立理由1-2(新規性)
ア 甲2に記載された事項
(ア)「【請求項1】 重合により製造された、15モル%までのエチレン及び/又はC_(4)?C_(8) α‐オレフィンを含む結晶質プロピレンホモポリマー及びコポリマーであって、P.I.値が3.7以下であり、MFR値が600乃至1000g/10分においては、Mw 値が100,000乃至60,000であり、MFR値が1000乃至2000g/10分においてはMz 値が140,000以上である結晶質ホモポリマー又はコポリマー。
【請求項2】 MFR値が800乃至1000g/10分において、Mw 値が100,000乃至70,000である請求項1記載の結晶質ホモポリマー又はコポリマー。
【請求項3】 アイソタクチック指数が95%以上であり、融点が150℃以上である請求項1記載の結晶質ホモポリマー又はコポリマー。」

(イ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、600乃至2000g/10分の溶融流量(MFR)(ASTM D 1238Lによる溶融流量)、及び3.7以下の多分散性指数(P.I.)値を有する結晶質プロピレンポリマーに関する。MFR値の高い、一般的には300乃至1500g/10分の結晶質プロピレンポリマーは、とりわけそれらが溶融状態で流動性が高く、機械的特性が良好であるため近年ある種の分野で不動の用途が見いだされた。前記分野の例は、エア‐レイド又はカーディング法のような、特に溶融インフレート又はスパン‐ボンデッド法により種々の不織ウェブを形成する方法により得られる不織布用のウェブ、又は木粉のような多孔質有機充填剤との組成物である。」

(ウ)「【0008】 従って、本発明は、15モル%まで、好ましくは10モル%までのエチレン及び/又はC_(4) ?C_(8) α‐オレフィンを含むプロピレンの結晶質ホモポリマー及びコポリマーであって、前記ホモポリマー及びコポリマーのP.I.値が3.7以下、好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.3以下であり、MFR値が600乃至1000g/10分、好ましくは800乃至1000g/10分の場合には、Mw 値が100,000乃至60,000、好ましくは100,000乃至70,000であり、MFR値が1000乃至2000g/10分の場合にはMz 値が140,000以上(一般的には140,000乃至220,000)、好ましくは150,000以上であるホモポリマー及びコポリマーを提供する。更に詳細に説明すると、P.I.(多分散性指数)はポリマーのMWDに関連する、レオロジー測定により得られるパラメータである。P.I.値が低いほどMWDが狭い。フタレート及びシランを基剤とする触媒により得られたMFR値の高いポリマーのP.I.値は3.8乃至4である。本発明のポリマーにおいて得られるP.I.値の最小値は約2.5である。従ってP.I.値は一般的には約2.5乃至3.7、好ましくは約2.5乃至3.5、更に好ましくは約2.5乃至3.3である。GPCにより測定されたMn 値は正確ではないことが見いだされているので、本発明においてはMw /Mn 比の値は言及しない。Mz /Mw 比に関しては、MFR値が600乃至2000g/10分の熱分解により得られたポリマーの値が2乃至2.4であり、フタレート及びシランを基剤とした触媒により得られたポリマーの値が3乃至4であるが、本発明のポリマーの最も好ましい値は2.5乃至2.8である。更に、本発明のホモポリマーの融点は典型的には150℃以上であり(DSCにより測定)、アイソタクチック指数(25℃におけるキシレン不溶部)は好ましくは95%以上であり、更に好ましくは97%以上である。公表された欧州特許願第480190号の実施例に示されるように、フタレート及びシランを基剤とする触媒を用いて作業すると、得られるアイソタクチック指数の値が1000g/10分以上(0.5dl/g以下の極限粘度に対応)のMFR値に比べてかなり低くなることを考慮すると、前述の全MFR範囲にわたって前記のアイソタクチック指数の値が得られるということは特に驚くべきことである。」

(エ)「【0026】
【実施例】以下の実施例は、本発明を限定するためではなく説明するために提供する。実施例に報告されているポリマーの特性は以下の方法に従って測定した。
特性 方法
-MFR ASTM D 1238 L
-極限粘度 テトラヒドロナフタレン中 135℃において測定
-Mw /Mz o-ジクロロベンゼン中 135℃においてGPCにより
測定
-融点 DSCにより測定。温度を 200℃に上昇させるこ
とにより試料を予め融解させ、前記温度に 5分間
保持した。次いで50℃に冷却し、その後完全に融
解する温度に再加熱した。加熱及び冷却中の作業温
度は、10℃/ 分の速度で変化させた。報告した融解
温度は、第二の融解中に得られたDSC曲線の最高
ピークである。
-キシレン不溶部 以下の注参照
-P.I. 以下の注参照

【0027】注:キシレン不溶部の百分率の決定
2.5gのポリマーを攪拌しながら135℃において250mlのキシレンに溶解させる。20分後溶液を攪拌しながら25℃に冷却させ、次いで30分間静止させる。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥させる。このようにして周囲温度におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算する。周囲温度におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%は、ポリマーのアイソタクチック指数と考えられる。このようにして得られた値は、沸騰n-ヘプタン中における抽出により決定される、定義によりポリプロピレンのアイソタクチック指数を構成するアイソタクチック指数と基本的に対応する。
多分散性指数(P.I.)の決定
調査中のポリマーの分子量分布と厳密に関連するこの特性は、溶融状態のポリマーのクリープ抵抗と逆比例する。低弾性率(low modulus) の値、例えば500Paにおける弾性率分離と呼ばれる前記抵抗は、0.1乃至100ラド/秒の振動周波数において作業する、レオメトリックス(RHEOMETRICS)(米国) より市販されている平行板レオメータモデルRMS- 800を用いることにより200℃において決定する。弾性率分離の値から、以下の式によりP.I.を誘導しうる。
P.I.=54.6* (弾性率分離)^(-1.76)
式中の弾性率分離は以下のように定義される。
弾性率分離=(G′=500Paにおける周波数)/(G″=500Paにおける周波数)
式中、G′は貯蔵弾性率(storage modulus) であり、G″は低弾性率(low modulus) である。
【0028】実施例1
固体触媒成分の調製
多孔性のバリヤーを完備する500mlの反応器に0℃において225mlのTiCl_(4) を導入する。攪拌しながら、以下のようにして得られる微小球状のMgCl_(2) ・2.1C_(2)H_(5)OH 10.3gを15分間で添加する。添加の終了時に温度を70℃とし、9ミリモルの2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシプロパンを添加し、内容物を100℃に加熱し、この温度で2時間反応させた後、TiCl_(4) を濾過して除去する。200mlのTiCl_(4) を添加し、内容物を120℃で1時間反応させた後、濾過して全ての塩素イオンが炉液に存在しなくなるまで60℃において無水ヘプタンで洗浄する。固体成分を分析すると、17.4重量%のMg、2.8重量%のTi、及び164重量%のジエーテルを含有することが示された。微小球状のMgCl_(2) ・2.1C_(2)H_(5)OH 付加物は以下のようにして調製する。48gのMgCl_(2) 、77gの無水C_(2)H_(5)OH、及び830gのケロシンを、不活性ガス雰囲気下周囲温度において、タービン攪拌器及び浸漬パイプを完備する2リットルのオートクレーブに導入する。内容物を攪拌しながら120℃に加熱すると、MgCl_(2) 及びアルコール間に付加物が形成され、それは融解し、分散剤と混合している。オートクレーブ内を15気圧の窒素圧に保持する。オートクレーブの浸漬パイプは加熱ジャケットにより外部から120℃に加熱する。加熱ジャケットの内径は1mmで、端から端までの長さは3mである。混合物を7m/秒の速度でパイプ中を循環させる。
【0029】分散液を攪拌しながら5リットルのフラスコに集める。前記フラスコは2.5リットルのケロシンを含み、-40℃の初期温度に保持されているジャケットにより外部から冷却する。乳濁液の最終温度は0℃である。乳濁液の分散相を構成する球状固体生成物を沈降及び濾過により分離し、次いでヘプタンで洗浄して乾燥させる。前記の作業は全て不活性雰囲気中で実施する。最大直径が50μ未満の固体球状粒子の形で130gのMgCl_(2)・2.1C_(2)H_(5)OH が得られる。次いで生成物から、アルコール含量がMgCl_(2) 1モル当たり2.1モルとなるまで窒素流中で50℃から100℃に徐々に温度を上昇させてアルコールを除去する。
【0030】プロピレンの重合
馬蹄形攪拌器を具備し、すでに70℃において1時間窒素流でパージした4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、7mgの固体触媒成分を含む80mlの無水n-ヘキサン、及び7ミリモルのAlEt_(3) をプロピレン流下30℃で導入する。オートクレーブを閉じ、19リットルの水素を導入する。攪拌器を動かし、1.2kgの液体プロピレンを供給する。温度を5分間70℃とし、内容物をこの温度で2時間重合させ、その後未反応プロピレンを除去し、ポリマーを回収し、窒素流下70℃のオーブン中で3時間乾燥させ、次いで特性決定した。588gのポリマー(84kg/g触媒の収率に匹敵)が得られる。前記ポリマーは以下の特性を有する。
MFR 900g/10分
極限粘度 0.5dl/g
Mw 72800
Mz 183000
融点 158℃
キシレン不溶部 96.3%
P.I. 3.2
Ti <1ppm
Cl 7ppm
・・・
【0032】実施例2
プロピレンの重合
第一の反応器から第二の反応器へ生成物を移送する手段を具備する、一連の2つの流動層反応器を用い、気相で連続的に重合を実施する。所望の濃度を一定に保持するために、気相において、水素及びモノマーを連続的に分析し、供給する。重合工程の前に、固体触媒成分(実施例1のようにして調製)をTEAL/Ti のモル比が68になるような量のトリエチルアルミニウム(TEAL) と、10℃に保持された反応器中で20分間接触させる。次いでこのようにして得られた触媒を過剰量の液体プロピレンを含む反応器に移し、20℃において10分間予備重合させる。次いでポリマーを第一の重合工程用の気相第一反応器に移し、その後重合を完了させるために得られたポリマーを第二の反応器に移す。重合中保持されたTEAL/Ti のモル比は68である。重合条件を表1に示す。収率は7kg/g触媒であり、ポリプロピレンは以下の特性を有する。
MFR 1500g/10分
極限粘度 0.35dl/g
Mw 57000
Mz 158000
融点 156℃
キシレン不溶部 97.2%
P.I. 3.0
Ti 4ppm
Cl 80ppm」

摘示(エ)の実施例2に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されているといえる。
「MFRが1500g/10分であり、極限粘度が0.35dl/gであり、Mwが57000であり、Mzが158000であり、融点が156℃であり、キシレン不溶部が97.2%であり、P.I.が3.0であり、Tiが4ppmであり、Cl が80ppmであるポリプロピレン」(以下、「甲2発明」という。)

イ 甲5に記載された事項


」(2頁18?下2行)

ウ 甲6に記載された事項

・・・

」(15頁右欄5?末行)
(合議体訳:図1はほとんど同じMwを持つ異なる2つの試料のMMD(molar mass distribution)についての外観を示している。一つの試料はその分子量分布(PDI)が1.1以下であることから、通常“狭い”又は”かなり狭い“といわれるMMDを有する試料である。もう一方の試料は2程度の高い分子量分布(PDI)を有する試料であり、通常、広いMMDを持つ試料であるとされる。
・・・
図1:広い(青色)及び狭い(緑色)モル質量分散を有する同等なMwの試料の比較
(図は省略))

エ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
上記摘記ア(エ)によると、甲2発明における多分散性指数(P.I.)は、P.I.=54.6*(弾性率分離)^(-1.76)の式により定義されるものであって、本件発明1における多分散性指数PI_(HT)とは算出式が異なり、本件発明1のPI_(HT)と甲2発明のP.I.とは、それらの数値のみで対比することはできないものである。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは「ポリプロピレン」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点4:本件発明1は、「分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5であ」るのに対して、甲2発明は、分子量分布指数が不明である点。

相違点5:本件発明1は、「分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きく」、「PI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であ」るのに対して、甲2発明は、上記PI_(HT)が不明である点。

相違点6:本件発明1は、「プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がな」いのに対して、甲2発明は、上記位置不規則性が不明である点。

相違点7:本件発明1は、「結晶化温度Tcが113℃より高い」のに対して、甲2発明は、結晶化温度が不明である点。

(イ)判断
まず、相違点4及び5について検討する。
甲2発明は、Mwが57000であり、Mzは158000であるが、甲2には、多分散性指数PI_(HT)の算出に必要なMn及びMpは記載されていないし、甲2の記載からMn及びMpを求め得ることが、本件特許の優先日時点の技術常識であるともいえない。
また、甲5及び甲6には、甲2発明のMw/Mnが2.5?5.5であること、及びPI_(HT)が1.9より大きいことを裏付ける記載も示唆も見当たらない。
そうすると、相違点4及び5は実質的な相違点であり、相違点6及び7について検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明とはいえず、請求項1に係る特許は、申立理由1-2(新規性)によっては取り消すことはできない。

オ 本件発明2?7及び22?25、28
請求項2?7及び22?25、28は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、上記エで述べたとおり、請求項1に係る特許が、申立理由1-2(新規性)によっては取り消すことはできないから、請求項2?7及び22?25、28に係る特許も取り消すことはできない。

(4)申立理由2-2(進歩性)
ア 本件発明2
請求項2は、請求項1を直接引用するものであり、上記エ(ア)で述べたように、本件発明1と甲2発明とは相違点4?7で相違するから、本件発明2と甲2発明とは、相違点4?7の他に、相違点8で相違する。

相違点8:本件発明2は、「85%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有する」のに対して、甲2発明は、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列の含有量が不明である点。

上記(3)エで述べたように、本件発明1と甲2発明とは、相違点4?7で相違し、相違点4及び5に関して、甲2?甲4には、甲2発明におけるMw/Mnを2.5?5.5とすること、及びPI_(HT)が1.9より大きくすることを動機付ける記載も示唆も見当たらない。
そして、本件発明は、「本発明に係る狭分子量分布ポリプロピレンの調製は過酸化物を用いないため、コストを低減することができ、また、製品は異臭がせず、分解プロセスによって得た狭分子量分布ポリプロピレンと比べて結晶化温度が高い。これによって、生成物の結晶化速度はより高くなり、成形加工サイクルは短くなり、成形効率が上がりやすくなる。また、本発明によって提供されるような狭分子量分布ポリプロピレンは、比較的高い調節可能なアイソタクチシティ、比較的高い融点および結晶化温度、より良いコストパフォーマンス、および、より広い応用性を有する。」(段落0004)という格別顕著な効果を奏するものであり、この効果は本件明細書の実施例から理解することができる。
そうすると、相違点6?8について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2に記載された発明、及び甲2?甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明2は、申立理由2-2(進歩性)によっては取り消すことはできない。

イ 本件発明5?7及び20、23?25、28、29
請求項5?7及び20、23?25、28、29は、請求項2を直接又は間接的に引用するものであり、上記アで述べたように、請求項2に係る特許は申立理由2-2(進歩性)によっては取り消すことはできないから、請求項5?7及び20、23?25、28、29に係る特許も取り消すことはできない。

(5)申立人の意見に対する反論
ア 申立人は、平成31年3月1日提出の意見書において、「ポリプロピレンの結晶化温度が結晶化挙動とも深く関係する分子構造の規則性に相関することはよく知られた技術的事項であって、結晶化温度は分子構造の規則性が高くなるほど高くなる傾向があることが知られているものである。そして、分子構造の規則性はアイソタクチックペンダト[mmmm]やキシレン可溶分などが例示されるものである」(意見書5?10行)と述べ、例示された特開2009-120798号公報(比較例1)、特開2008-274295号公報(実施例、比較例及び表1)、特表2006-527271号公報(実施例2、5及び比較例2、6)には、アイソタクチックペンタド分率が94%以上程度に高く、キシレン可溶分が3.6重量%以下程度に低く、結晶化温度が116℃以上程度に高いポリプロピレンの具体例が記載されていることを根拠とし、これらは甲1発明1?4におけるポリプロピレンの重合に用いられた触媒及び反応温度が概ね同じであるから、甲1発明1の結晶化温度は113℃よりも高い蓋然性が高い旨を主張する。
しかしながら、ポリプロピレンの結晶化温度がそのアイソタクチックペンタド[mmmm]の含有量やキシレン可溶分に影響される傾向があることは、本件特許の優先日時点の技術常識であるとしても、本件発明と同程度にアイソタクチックペンタド[mmmm]の含有量が高い、又はキシレン可溶分が低いポリプロピレンにおいて、アイソタクチックペンタド[mmmm]の含有量が高いものほど結晶化温度も高い、又は、キシレン可溶分が低いものほど結晶化温度が高いと一般化して、これを個々のポリプロピレンに当てはめることが直ちにできないことは、本件明細書(実施例及び比較例)や上記特表2006-527271号公報(実施例2、5及び比較例2、6)の記載からも明らかである。
そして、甲1には甲1発明1?4におけるポリプロピレンの結晶化温度が記載されていないだけでなく、甲1発明1?4におけるポリプロピレンのアイソタクチックペンタド[mmmm]の含有量やキシレン可溶分も記載されていないのであるから、なおさら、甲1に記載された重合方法で製造された甲1発明1?4の結晶化温度が113℃より高いことが裏付けられるとはいえない。また、甲1発明1?4において、ポリプロピレンの結晶化温度を113℃より高くすることを当業者が容易に想到し得たともいえない。

イ また、申立人は、上記意見書において、「『プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がなく』なる事項が、特許異議申立書で主張したとおり、当該技術分野においてよく知られた事項であることは、特許異議申立書で例示として挙げた特許文献だけではなく、一般的な書籍、技術雑誌の総説及び論文により裏付けられているものです。しかも、技術雑誌の総説や論文には、かかる事項を裏付けるための具体的な触媒や反応温度なども示されています。」と主張し、本件発明1は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明、並びに、甲1及び甲3の記載に基づき、当業者が容易に発明することができたものであるナッタ触媒により製造されるポリプロピレンにおいて、アイソタクチックペンダット“mmmm
”が高い分率を示す場合に異種結合は極めて少ないことがよく知られた事項であるから、甲1に記載された発明のポリプロピレンも位置不規則性が見いだせない蓋然性が高い旨を主張する。
しかしながら、上記アで述べたように、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとも、甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、上記位置不規則性について検討するまでもなく、本件発明1、2、5?7、20?29に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、本件特許の請求項1、2、5?7、20?29に係る特許を取り消すことはできない。
他に、本件特許の請求項1、2、5?7、20?29に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3及び4に係る特許は、第2で述べたとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議申立てについて、請求項3及び4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5であり、分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きく、
PI_(HT)は、下記の式(1)にしたがって算出され、
PI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であり、
プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がなく、
結晶化温度Tcが113℃より高いことを特徴とする、ポリプロピレン。
【請求項2】
85%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
キシレン可溶分が4.4重量%未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリプロピレン。
【請求項6】
メルトフローレートMFRが0.01?1000g/10分であることを特徴とする、請求項1、2および5の何れか1項に記載のポリプロピレン。
【請求項7】
反応器における重合によって直接的に調製されることを特徴とする、請求項1、2、5および6の何れか1項に記載のポリプロピレン。
【請求項8】
分子量分布指数Mw/Mnが2.5?5.5であり、分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きいポリプロピレンを調製する方法であって、
PI_(HT)は、下記の式(1)にしたがって算出され、
PI_(HT)=10^(5)*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であり、
以下のステップ:
(1)チーグラーナッタ触媒の存在下においてプロピレンを前重合するステップ、
(2)ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91?150℃の重合温度においてプロピレンを重合するステップ
を含み、
上記チーグラーナッタ触媒は、以下の成分:
(1)チタン含有固体触媒成分;
(2)アルキルアルミニウム化合物;
の反応生成物を含み、
上記成分(1)としての上記チタン含有固体触媒成分は、アルコキシマグネシウム化合物とチタン化合物と内部電子供与体化合物とを接触させた反応生成物であり、
上記チタン化合物は、式(I)で表される少なくとも1つの化合物から選ばれ、
【化4】

(式(I)において、
RはC_(1)-C_(14)脂肪族ヒドロカルボニルおよび芳香族ヒドロカルボニルから選ばれ;
Xはハロゲンであり;
nは0?4から選ばれる整数であり;
nが2と同じか2より小さい場合、R基は同じでも異なっていてもよい);
上記内部電子供与体化合物は、式(IV)で表される少なくとも1つのジエーテル化合物から選ばれる
【化5】

(式(IV)において、
R_(1)およびR_(2)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状、分枝状、および環式のC_(1)-C_(20)脂肪族基から選ばれ;
R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(8)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して水素、ハロゲン原子、ならびに直鎖状または分枝状のC_(1)-C_(20)アルキル、C_(3)-C_(20)シクロアルキル、C_(6)-C_(20)アリール、C_(7)-C_(20)アルキルアリール、およびC_(7)-C_(20)アリールアルキルから選ばれ、任意でR_(3)?R_(8)は互いに結合して環を形成することができる)
ことを特徴とする、調製方法。
【請求項9】
以下のステップ:
(1)気相または液相中、-10℃?50℃、かつ0.1?10.0MPaにおいて、上記チーグラーナッタ触媒の存在下でプロピレンを前重合し、プロピレンの前重合体を得るステップであって、前重合率は2?3000g重合体/g触媒に制御されているステップ;
(2)上記ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91?150℃、かつ1.0?6.0MPaにおいて、0.5?4.0時間の重合時間でプロピレンを単独重合し、上記プロピレンの重合体を得るステップ
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
上記ステップ(1)およびステップ(2)は、同一の反応器において非連続的に行われる、または、異なる反応器において連続的に行われることを特徴とする、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
上記ステップ(1)において、プロピレンの前重合温度は0?30℃に制御され;前重合圧力は1.0?6.0MPaであることを特徴とする、請求項8?10の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項12】
上記ステップ(1)は、0?30℃の温度におけるプロピレンの液相バルク前重合であり;上記ステップ(2)は、91?110℃の温度におけるプロピレンの気相単独重合であることを特徴とする、請求項8?11の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項13】
上記ステップ(2)におけるプロピレンの気相重合は、横型ミキサーシャフトを備え、10?150rpmの撹拌速度であり、かつTタイプ、矩形、傾きのあるパドル、ドアタイプ、V字形、およびそれらの任意の組み合わせから選ばれる混合羽根を備える、熱を除去するために急冷液を用いる横型反応器において行われることを特徴とする、請求項8?12の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項14】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、式Mg(OR^(1))_(2-m)(OR^(2))_(m)(当該式において、R^(1)およびR^(2)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ直鎖状および分枝状のC_(1)-C_(8)アルキル基の1つから選ばれ、0≦m≦2である)で表される少なくとも1つの化合物から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
【請求項15】
上記式において、R^(1)はエチルであり、R^(2)は(2-エチル)ヘキシルであり、0.001≦m≦0.5であることを特徴とする、請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、球体状の外観であり、平均粒径D50が10?150μmであり、粒径分布指数SPAN<1.1であり、SPANは下記式(III):
【数1】

(式(III)において、
D90は90%の累積重量分率に相当する粒径を表し;
D10は10%の累積重量分率に相当する粒径を表し;
D50は50%の累積重量分率に相当する粒径を表す)
によって算出されることを特徴とする、請求項8?15の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項17】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、以下の方法:不活性ガス雰囲気の保護下において、出発原料としてのアルコールおよびマグネシウム金属と混合ハロゲン化剤とを反応させ、球体状のジアルコキシマグネシウム微粒子を調製すること、によって調製され;上記アルコールとマグネシウムとの重量比は、4?50:1であり;上記アルコールは直鎖状または分枝状のモノアルコールまたは多価アルコールであり;上記ハロゲン化剤はハロゲン元素およびハロゲン化物の少なくとも1つから選ばれ、ハロゲン原子とマグネシウムとモル比が0.0002?0.2:1において用いられることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項18】
上記チーグラーナッタ触媒は、以下の成分:
(1)上記チタン含有固体触媒成分;
(2)上記アルキルアルミニウム化合物;
(3)外部電子供与体化合物;
の反応生成物を含むことを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
【請求項19】
上記外部電子供与体化合物は、式(VII)で表される有機ケイ素化合物である
【化6】

(式(VII)において、
R^(1”)およびR^(2”)は同じでも異なっていてもよく、それぞれハロゲン、水素原子、1?20の炭素原子を有するアルキル、3?20の炭素原子を有するシクロアルキル、6?20の炭素原子を有するアリール、および1?20の炭素原子を有するハロゲン化アルキルのうちの1つであり;
R^(3”)は、1?20の炭素原子を有するアルキル、3?20の炭素原子を有するシクロアルキル、6?20の炭素原子を有するアリール、および1?20の炭素原子を有するハロゲン化アルキルのうちの1つであり;
m”およびn”はそれぞれ0?3の整数であり、m”+n”<4である)
ことを特徴とする、請求項18に記載の調製方法。
【請求項20】
スピニング、薄膜注入、もしくはキャスティングのプロセス、または透明材料の調製における、請求項1、2および5?7の何れか1項に記載のポリプロピレンの使用。
【請求項21】
分子量分布指数Mw/Mnが3.0?4.9であることを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項22】
分子量分布幅PI_(HT)における高分子量テールの多分散性指数が2.1より大きいことを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項23】
90%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有することを特徴とする、請求項2に記載のポリプロピレン。
【請求項24】
93%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有することを特徴とする、請求項2に記載のポリプロピレン。
【請求項25】
結晶化温度Tcが115℃より高いことを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項26】
キシレン可溶分が2.3重量%未満であることを特徴とする、請求項5に記載のポリプロピレン。
【請求項27】
キシレン可溶分が1.6重量%未満であることを特徴とする、請求項5に記載のポリプロピレン。
【請求項28】
メルトフローレートMFRが10?100g/10分であることを特徴とする、請求項6に記載のポリプロピレン。
【請求項29】
メルトフローレートMFRが1?399g/10分であることを特徴とする、請求項6に記載のポリプロピレン。
【請求項30】
以下のステップ:
(1)上記チーグラーナッタ触媒の存在下においてプロピレンを前重合するステップ、
(2)ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91?110℃の重合温度においてプロピレンを重合するステップ
を含む、請求項8に記載の調製方法。
【請求項31】
ステップ(1)において、前重合率は3?2000g重合体/g触媒に制御されていることを特徴とする、請求項9に記載の調製方法。
【請求項32】
ステップ(2)において、ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91?110℃、かつ1.0?6.0MPaにおいて、0.5?4.0時間の重合時間でプロピレンを単独重合し、上記プロピレンの重合体を得ることを特徴とする、請求項9に記載の調製方法。
【請求項33】
上記ステップ(1)において、プロピレンの前重合温度は10?25℃に制御されることを特徴とする、請求項11に記載の調製方法。
【請求項34】
上記ステップ(1)において、前重合圧力は1.5?5.5MPaであることを特徴とする、請求項11に記載の調製方法。
【請求項35】
上記式(IV)において、
R_(1)およびR_(2)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状または分枝状のC_(1)-C_(6)アルキルから選ばれ;R_(5)およびR_(6)は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状または分枝状のC_(1)-C_(10)アルキルおよびC_(3)-C_(10)シクロアルキルから選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
【請求項36】
0.001≦m≦0.25であることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項37】
0.001≦m≦0.1であることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項38】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、平均粒径D50が15?100μmであることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項39】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、平均粒径D50が18?80μmであることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項40】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、粒径分布指数SPAN<1.05であることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項41】
ポリプロピレンが、85%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有する、請求項8に記載の調製方法。
【請求項42】
ポリプロピレンが、プロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入に起因する位置不規則性がない、請求項8または41に記載の調製方法。
【請求項43】
ポリプロピレンが、結晶化温度Tcが113℃より高い、請求項8、41および42の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項44】
ポリプロピレンが、キシレン可溶分が4.4重量%未満である、請求項8、41、42および43の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項45】
ポリプロピレンが、メルトフローレートMFRが0.01?1000g/10分である、請求項8、41、42、43および44の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項46】
スピニング、薄膜注入、もしくはキャスティングのプロセス、または透明材料の調整における、請求項8?19の何れか1項に記載の調製方法によって調製されるポリプロピレンの使用。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-24 
出願番号 特願2013-225693(P2013-225693)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C08F)
P 1 652・ 113- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡▲崎▼ 忠  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 海老原 えい子
近野 光知
登録日 2017-09-15 
登録番号 特許第6209056号(P6209056)
権利者 中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院 中国石油化工股▲ふん▼有限公司
発明の名称 狭分子量分布ポリプロピレンおよびその調製方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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