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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  A47B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A47B
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A47B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A47B
管理番号 1353162
異議申立番号 異議2018-700749  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-14 
確定日 2019-06-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6315749号発明「カート収容型配膳車」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6315749号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6315749号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6315749号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成25年5月10日を出願日とし、平成30年4月6日付けでその特許権の設定登録がされ、平成30年4月25日に特許掲載公報が発行された。その後、平成30年9月14日に特許異議申立人勝部淳子(以下「申立人」という。)より、請求項1?3に対して特許異議の申立てがされ、平成30年12月26日付けで取消理由(発送日平成31年1月4日)が通知され、その指定期間内である同年1月24日に訂正請求がされたものである。

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
請求項1に、
「内部にトレイが多段に配置され、底部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部にカート全体がそのまま収容されるカート収容室が一体に形成され、カート収容室内に冷気を送入する冷却設備および過熱蒸気または温風を送入する加熱設備が設けられた配膳車本体とを備えており、カート収容室は、上下壁、左右壁および後壁を有し、前側には前記カートを出し入れするカート出入口部とカート出入口部を塞ぐ本体扉を備えており、カート収容室の後壁に、加熱設備から供給される過熱蒸気等が噴き出す過熱蒸気等噴出口と過熱蒸気等を吸い込む過熱蒸気等吸入口並びに冷却設備から供給される冷気が噴き出す冷気噴出口と冷気を吸い込む冷気吸入口が形成され、カートは、後側に前記配膳車本体内の過熱蒸気等噴出口および過熱蒸気等吸入口並びに冷気噴出口および冷気吸入口のそれぞれと連通する連通開口部を有し、同前側にはトレイが出し入れされるトレイ出入口部が形成され、トレイ出入口部および前記連通開口部にこれらを開閉する各カート扉が設けられている、カート収容型配膳車。」
と記載されているのを、
「内部にトレイが多段に配置され、底部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部にカート全体がそのまま収容されるカート収容室が一体に形成され、カート収容室内に冷気を送入する冷却設備および過熱蒸気または温風を送入する加熱設備が設けられた配膳車本体とを備えており、カート収容室は、上下壁、左右壁および後壁を有し、前側には前記カートを出し入れするカート出入口部とカート出入口部を塞ぐ本体扉を備えており、カート収容室の後壁に、加熱設備から供給される過熱蒸気等が噴き出す過熱蒸気等噴出口と過熱蒸気等を吸い込む過熱蒸気等吸入口並びに冷却設備から供給される冷気が噴き出す冷気噴出口と冷気を吸い込む冷気吸入口が形成され、カートは、上下壁および左右壁を有し、後側に前記配膳車本体内の過熱蒸気等噴出口および過熱蒸気等吸入口並びに冷気噴出口および冷気吸入口のそれぞれと連通する連通開口部を有し、同前側にはトレイが出し入れされるトレイ出入口部が形成され、トレイ出入口部および前記連通開口部にこれらを開閉する各カート扉が設けられている、カート収容型配膳車。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項3に、
「加熱設備が配膳車本体のカート収容室の後壁後側下部に設けられ、配膳車本体における過熱蒸気等噴出口の後側に一または複数のヒーターが配置されている、請求項1または請求項2のうちのいずれか一項記載の配膳車。」
と記載されているのを、
「加熱設備が配膳車本体のカート収容室の後壁後側下部に設けられ、配膳車本体における過熱蒸気等噴出口の後側に一または複数のヒーターが配置されている、請求項1または請求項2のうちのいずれか一項記載のカート収容型配膳車。」
に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、取消理由を解消するためになされたものであり、「カート」の構成を明確にし、本件の請求項1に係る発明の効果との対応関係を明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項1は、「カート」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるともいえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1はカートの構成について、明確にした、あるいは限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1は、本件明細書において「【0017】 図4および図5に示すように、カート3は、上下壁3a・3bと、左右壁3c・3dと、配膳車本体2の冷却設備5からの冷気および加熱設備6からの過熱蒸気が流入する連通開口部3eと、トレイTが出し入れされるトレイ出入口部3fと、トレイ出入口部3fおよび連通開口部3eを開閉する左右一対のカート扉14A・14Bを備えている。また、カート3は、前述した通り、その全体が配膳車本体2内に収容されて加熱・冷却が行われるものであるため、当該カート3内の加熱・冷却時に当該カート3は外気と遮断されており、したがって、カート3の上下壁3a・3b、左右壁3c・3dおよびカート扉14A・14Bには軽薄化でき、図示した通り、薄い板厚の簡易パネルで全体が構成されている。また、図10に示すように、カート3のカート扉14A・14Bをそれぞれ左右壁3c・3dの外側に回動させることで、前記連通開口部3eとトレイ出入口部3fが形成されるようになされている。」と記載され、図4、5から看て取れる事項である。
以上のとおり、訂正事項1は明細書等に記載されているものと認められる。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、取消理由を解消するためになされたものであり、「配膳車」の構成を明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項2は、請求項1、2の末尾と同じ文言とすべきところ、誤って「配膳車」としたものであると解することができるから、誤記の訂正を目的とするものであるともいえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2は配膳車の構成について、明確にした、あるいは誤記を訂正したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に(最初に)添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2は、請求項1、2の末尾と整合しており、明細書等に記載されているものであることは明らかである。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1?3は、請求項2、3が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?3は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号?第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項1?3に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」等、あるいはまとめて「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)

「【請求項1】
内部にトレイが多段に配置され、底部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部にカート全体がそのまま収容されるカート収容室が一体に形成され、カート収容室内に冷気を送入する冷却設備および過熱蒸気または温風を送入する加熱設備が設けられた配膳車本体とを備えており、カート収容室は、上下壁、左右壁および後壁を有し、前側には前記カートを出し入れするカート出入口部とカート出入口部を塞ぐ本体扉を備えており、カート収容室の後壁に、加熱設備から供給される過熱蒸気等が噴き出す過熱蒸気等噴出口と過熱蒸気等を吸い込む過熱蒸気等吸入口並びに冷却設備から供給される冷気が噴き出す冷気噴出口と冷気を吸い込む冷気吸入口が形成され、カートは、上下壁および左右壁を有し、後側に前記配膳車本体内の過熱蒸気等噴出口および過熱蒸気等吸入口並びに冷気噴出口および冷気吸入口のそれぞれと連通する連通開口部を有し、同前側にはトレイが出し入れされるトレイ出入口部が形成され、トレイ出入口部および前記連通開口部にこれらを開閉する各カート扉が設けられている、カート収容型配膳車。
【請求項2】
配膳車本体の下壁にカートのキャスターが進入するキャスター進入用開口部が形成されている、請求項1記載のカート収容型配膳車。
【請求項3】
加熱設備が配膳車本体のカート収容室の後壁後側下部に設けられ、配膳車本体における過熱蒸気等噴出口の後側に一または複数のヒーターが配置されている、請求項1または請求項2のうちのいずれか一項記載のカート収容型配膳車。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?3に係る特許に対して平成30年12月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件請求項1?3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3 取消理由通知に記載した取消理由(第36条第6項第2号)について
(1)訂正事項1の訂正により、本件発明1における「カート」は「上下壁および左右壁を有」することが明確になったため、本件明細書の「【発明の効果】【0010】本発明のカート収容型配膳車は、配膳車本体のカート収容室内にカート全体が収容され、カート収容室内でカート内に冷気や過熱蒸気等が循環されるようになされているため、この冷却および加熱時において、カートは外気と完全に遮断された状態となっており、したがって、従来のように、カートを構成する上下壁、左右壁および前後の扉の構造を簡略化することができ、各壁の厚みを薄くすると共に軽量化することが可能となり、またカートの全体サイズを小型化することもでき、そのためカートの移動や方向転換等の操作性も更に向上し、また製造も容易に行えて、コストの削減も可能となる。」の記載との対応関係が明確になった。
また、申立人は、本件明細書の上記記載中の「従来のように・・・簡略化することができ」は意味不明であると主張する(申立書68頁7行?8行)が、上記「従来のように」の記載は全体の文章の流れから見れば、「従来と比べて」などの誤記であると認められる。

(2)訂正事項2の訂正によって、本件発明3の末尾は「カート収容型配膳車」と訂正され、本件発明1、2の末尾との平仄が取れたため、本件発明3の末尾の記載は明確である。
また、申立人は、「本件特許の特許請求の範囲における請求項3には、・・・当該特許請求の範囲上、「加熱設備」と「ヒーター」とはそれぞれ別部材である。しかしながら、本件特許の明細書の【0023】には、「・・・前記加熱コイル31も加熱設備6を構成している」との記載があり、「加熱コイル31」は「加熱設備6」の一部であることが明記されている。それゆえ、本件特許の請求項3における「加熱設備」と「ヒーター」との関係が不明で、「加熱設備」の構成が明らかではないから、本件発明3は不明確である。」(申立書67頁5行?15行)旨主張する。しかしながら、本件発明3の記載から、「加熱設備」と「ヒーター」が別部材である(「ヒーター」が「加熱設備」の一部でない)とは読み取れないし、「加熱設備」と「ヒーター」が別部材でないことと、本件発明3における「加熱設備」と「ヒーター」の位置の規定は矛盾するものではない。

(3)したがって、本件発明1?3は明確であるから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(第29条の2第29条第2項)の概要
取消理由通知において採用しなかった、訂正前の請求項1?3に係る特許に対して申し立てられた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件発明1?3は、甲第1号証の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、その特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

(2)本件発明1?3は、甲第2号証?甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:特開2014-54487号公報(特願2012-202552号)
甲第2号証:登録実用新案第3095794号公報
甲第3号証:特開2011-45478号公報
甲第4号証:特開平8-291966号公報
甲第5号証:特開2000-116757号公報

5 甲各号証の記載
(1)甲第1号証には、次の記載があり、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(下線は決定で付与。以下同じ。)
ア 「【請求項1】
食品を加熱および冷却するための加熱冷却手段と、
この加熱冷却手段に接続される外側カートと、
前記外側カート内に出し入れ可能に収納される内側カートとを備え、
食品提供時には、前記内側カートが前記外側カート内から取り出され、この取り出された内側カートによって食品が提供場所まで搬送される
ことを特徴とする食品提供システム。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を提供するための食品提供システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された食品提供システムが知られている。
【0003】
この従来の食品提供システムは、食品を加熱および冷却するための加熱冷却手段(ステーションユニット)と、この加熱冷却手段に脱着可能に接続される断熱性の断熱カート(収容ユニット)とを備えている。そして、食品提供時には、断熱カートが加熱冷却手段から取り外され、この取り外された断熱カートによって食品が提供場所まで搬送される。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の食品提供システムでは、例えば断熱カート自体の重さが比較的重い場合があり、このような場合には、断熱カートを使用して食品を提供場所まで搬送することが作業者にとって重労働になるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、食品を提供場所まで容易に搬送できる食品提供システムを提供することを目的とする。」

ウ 「【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、食品提供時において、内側カートを外側カート内から取り出し、この取り出した内側カートによって食品を提供場所まで搬送できるため、食品を提供場所まで容易に搬送できる。」

エ 「【0015】
図1および図2において、1は食品提供システムで、この食品提供システム1は、食品を被提供者に提供するための装置である。なお、図2に示す矢印方向を前後および左右の方向として説明する。
【0016】
食品提供システム1は、食品を加熱および冷却するための加熱冷却手段である温冷装置(ステーション)2と、この温冷装置2に脱着可能に接続される箱形状の断熱性の外側カート(カート)3と、内部に食品が出し入れ可能に収納され、外側カート3内に出し入れ可能に収納される箱形状の非断熱性の内側カート(扉付インサート)4とを備えている。
【0017】
食品(図示せず)は、トレイA上の容器B内に入れられた状態で、これらトレイAおよび容器Bとともに、内側カート4内に出し入れ可能に収納(保存)される。すなわち例えば、温めて食する食品である温食(米飯および主菜等)は、トレイAの一方側上に載った容器B内に入れられた状態で内側カート4内の一方側に出し入れ可能に収納され、かつ、冷して食する食品である冷食(冷菜および飲み物等)は、トレイAの他方側上に載った容器B内に入れられた状態で内側カート4内の他方側に出し入れ可能に収納される。
【0018】
このように、例えば内側カート4は、食品の入った容器Bが上面上に複数載置された複数枚(例えば2列×12段=24枚)のトレイAを、複数列多段に収納可能な構成となっている。
【0019】
なお、ステーションである温冷装置2は、例えば病院内の所定位置に設置されている。断熱カートである外側カート3は、例えばメンテナンス時や清掃時等の必要時以外は、常に温冷装置2の前面に解除可能に接続されている。
【0020】
そして、この食品提供システム1においては、食品提供時には、人力で走行可能な搬送車である内側カート4が、温冷装置2に接続された外側カート3内から取り出され、この取り出された内側カート4によって食品が提供場所まで搬送される。
【0021】
つまり、食品提供時には、作業者(例えば看護士)は、軽量な内側カート4を温冷装置2に接続した外側カート3内から取り出し、この取り出した内側カート4を使用して、この内側カート4内の食品を提供場所(例えば病室付近)まで搬送し、その提供場所において食品を内側カート4内から取り出して被提供者(例えば患者)に提供する。
【0022】
外側カート3は、図1および図2に示されるように、温冷装置2に対して接続およびその接続を解除可能なものであり、複数の走行輪であるキャスタ6を下端部に有し、このキャスタ6により床面等の走行面上を走行可能となっている。
【0023】
また、外側カート3は、例えば1台の内側カート4が出し入れ可能に収納されるカート収納部(カート収納空間部)7と、このカート収納部7の前面を開口させてこのカート収納部7に対して内側カート4を出し入れ可能な開口面であるカート出入用開口部8とを有している。
【0024】
さらに、外側カート3は、カート出入用開口部8を開閉する回動可能な矩形状の断熱前板である断熱扉11と、カート収納部7の左右の側面を覆う矩形状の左右1対の断熱側板12と、カート収納部7の上面を覆う正方形状の断熱上板13とを有している。
【0025】
そして、左右の断熱側板12は、カート収納部7を介して互いに離間対向して配置され、一方の断熱側板である右側の断熱側板12の前端部に断熱扉11の側端部である右端部がヒンジ14を介して回動可能に取り付けられている。なお、前側の断熱扉11、左右の断熱側板12、および断熱上板13は、いずれも断熱機能を有したものであり、例えば中空状の外枠内に断熱材が内装された構成となっている。
【0026】
また、断熱上板13の後端部には、外側カート3を温冷装置2に対して解除可能に固定して温冷装置2と外側カート3との接続状態を維持する固定手段15が設けられている。この固定手段15は、例えば電磁石等にて構成されている。
【0027】
なお、外側カート3は、前面開口部16、後面開口部17および下面開口部18を有しており、前面開口部16がカート出入用開口部8となっている。後面開口部17は、温冷装置2と外側カート3との接続時には温冷装置2によって閉鎖された状態になるが、温冷装置2と外側カート3との接続が解除されると後面開口部17は開口し、この場合には、外側カート3の内部を後面開口部17からも確認することができて、衛生状態を維持できる。下面開口部18は、温冷装置2と外側カート3との接続時には、後述する内側カート4の下板36によって閉鎖される。
【0028】
内側カート4は、図3ないし図6にも示されるように、外側カート3のカート収納部7に出し入れ可能に収納されるものであり、複数の走行輪であるキャスタ21およびブレーキ手段22を下端部に有し、ブレーキ手段22によるブレーキを解除した状態でキャスタ21により床面等の走行面上を走行可能となっている。
【0029】
また、内側カート4は、食品がトレイA上の容器B内に入れられた状態で出し入れ可能に収納される食品収納部(食品収納空間部)23と、この食品収納部23の前面を開口させてこの食品収納部23に対して食品を出し入れ可能な一方側の食品出入用開口部である前側開口部(第1開口面)24と、この食品収納部23の後面を開口させてこの食品収納部23に対して食品を出し入れ可能な他方側の食品出入用開口部である後側開口部(第2開口面)25とを有している。
【0030】
食品収納部23には、トレイAを載置可能な水平状の複数の棚板26が上下方向に等間隔をおいて配設されている。また、食品収納部23には鉛直状の仕切壁27が配設され、この仕切壁27によって食品収納部23が左右に2分割されている。すなわち例えば、食品収納部23の左側が温食用の第1室(温食が収納される温食用収納部)23aとなっており、食品収納部23の右側が冷食用の第2室(冷食が収納される冷食用収納部)23bとなっている。
【0031】
なお、第1室23aと第2室23bとを仕切る仕切壁27は、トレイAが例えば前側開口部24側から後側開口部25側へと通過できるよう、トレイAの中間部である薄板状の挿入部を、間に挿入可能な上下方向に隣り合う複数の板状部材28にて構成されている。
【0032】
さらに、内側カート4は、この内側カート4の前面開口部である前側開口部24を開閉する一方側の扉体である前側扉体31と、この内側カート4の後面開口部である後側開口部25を開閉する他方側の扉体である後側扉体32とを有している。つまり、内側カート4は、開口部24,25を開閉する観音開き式の扉体31,32を前後に有している。
【0033】
また、内側カート4は、食品収納部23の一側面である左側面を覆う矩形状の一方側の側板体である左側板体(側板体)33と、食品収納部23の他側面である右側面を覆う矩形状の他方側の側板体である右側板体(側板体)34と、食品収納部23の上面を覆う正方形状の上板35と、食品収納部23の下面を覆う正方形状の下板36とを有している。
【0034】
前側扉体31は、上板35および下板36に対して270度回動可能な矩形板状をなす中空状の左右1対の前扉部材(扉部材)41にて構成されている。同様に、後側扉体32は、上板35および下板36に対して270度回動可能な矩形板状をなす中空状の左右1対の後扉部材(扉部材)42にて構成されている。
【0035】
そして、各扉部材41,42は、開方向である一方向への回動により開口部24,25を開口させる開状態となり、閉方向である他方向への回動により開口部24,25を閉鎖する閉状態となり、その開状態時においては各扉部材41,42が側板体33,34の外面に近接して位置する。
・・・
【0039】
つまり、この左側板体33内の通気用空間部51には、食品の保冷時には温冷装置2から冷気が供給されるが、食品の再加熱時(食品を提供する直前時である配膳直前時)には温冷装置2から熱気が供給される。なお、通気用空間部51のうち温冷装置2側に位置する後面開口が冷気および熱気の流入口51aとなっており、通気用空間部51のうち温冷装置2側とは反対側に位置する前面開口が冷気および熱気の流出口51bとなっている。
・・・
【0042】
つまり、この右側板体34内の通気用空間部56には、食品の保冷時および再加熱時のいずれの時においても、第2室23b内の冷食がチルド温度帯に保冷されるように、温冷装置2から冷気が供給される。なお、通気用空間部56のうち温冷装置2側に位置する後面開口が冷気の流入口56aとなっており、通気用空間部51のうち温冷装置2側とは反対側に位置する前面開口が冷気の流出口56bとなっている。
・・・
【0046】
温冷装置2は、図1および図2に示されるように、前面が開口した箱形状をなすもので、一方側である左側には冷気熱気供給手段61を有し、他方側である右側には冷気供給手段62を有している。なお、温冷装置2は、図示しないが、供給手段61,62を制御する制御手段や操作手段等を有している。
【0047】
冷気熱気供給手段61は、食品の保冷時には冷気を流入口51aを通して通気用空間部51に向けて吐き出しかつ食品の再加熱時には熱気を流入口51aを通して通気用空間部51に向けて吐き出す吐出口63と、食品の保冷時には第1室23aの冷気を吸い込みかつ食品の再加熱時には第1室23aの熱気を吸い込む吸込口64とを有している。
【0048】
また、吐出口63と吸込口64との間の流路65の途中には、熱気を生成する熱気生成部66、冷気を生成する冷気生成部67、および冷気・熱気を循環させるためのファン部68が設けられている。そして、食品の保冷時には、冷気生成部67で生成された冷気が温冷装置2内の流路65と内側カート4内の通気用空間部51および第1室23aを循環し、また、食品の再加熱時には、熱気生成部66で生成された熱気が温冷装置2内の流路65と内側カート4内の通気用空間部51および第1室23aを循環する。
【0049】
冷気供給手段62は、食品の保冷時および再加熱時に冷気を流入口56aを通して通気用空間部56に向けて吐き出す吐出口71と、食品の保冷時および再加熱時に第2室23bの冷気を吸い込む吸込口72とを有している。
【0050】
また、吐出口71と吸込口72との間の流路73の途中には、冷気を生成する冷気生成部74および冷気を循環させるためのファン部75が設けられている。そして、食品の保冷時および再加熱時のいずれにおいても、冷気生成部74で生成された冷気が温冷装置2内の流路73と内側カート4内の通気用空間部56および第2室23bを循環する。」

オ 「【0055】
そして、図8に示すように、内側カート4が病院に到着すると、作業者は、温冷装置2に接続されている外側カート3の断熱扉11を開方向に回動させてカート出入用開口部8を開口させ、このカート出入用開口部8から、前側開口部24および後側開口部25を開口させた内側カート4をカート収納部7に収納する。
【0056】
つまりこのとき、作業者は、4枚の各扉部材41,42を開方向に回動させて開状態にすることで、内側カート4の前後における前側開口部24および後側開口部25を開口させた後、その内側カート4を外側カート3内に向けて走行させてカート収納部7に収納する(図2参照)。なお、この収納後、作業者は断熱扉11を閉方向に回動させて、外側カート3のカート出入用開口部8を断熱扉11で閉鎖する。
【0057】
次いで、作業者が、温冷装置2の操作手段を操作して運転を開始させると、内側カート4内の食品が冷気循環により冷却されてチルド温度帯に保冷され、その後、予め設定された設定時間になると、内側カート4内の食品のうち温食のみが熱気循環により再加熱される。
【0058】
つまり、食品の保冷時(設定時間になるまでの間)には、内側カート4内の第1室23aに収納された温食は冷気熱気供給手段61からの冷気により保冷され、内側カート4内の第2室23bに収納された冷食は冷気供給手段62からの冷気により保冷される。そして、食品の再加熱時には、第2室23bの冷食は継続して冷気供給手段62からの冷気により保冷されるが、第1室23aに収納された温食は、冷気熱気供給手段61からの熱気により所定温度まで加熱される。
【0059】
次いで、食品の再加熱が完了して食品提供時になると、作業者は、温冷装置2に接続されている外側カート3の断熱扉11を開方向に回動させてカート出入用開口部8を開口させ、このカート出入用開口部8から内側カート4を外側カート3外に取り出し、配膳作業を開始する。
【0060】
つまり、作業者は、温冷装置2に接続された外側カート3内から取り出した内側カート4を使用して、食品を提供場所である、例えば病室付近まで搬送する。
【0061】
この食品の搬送時において、内側カート4の前側開口部24および流出口51b,56bは閉状態の前側扉体31にて閉鎖され、かつ、内側カート4の後側開口部25および流入口51a,56aは閉状態の後側扉体32にて閉鎖されている。このため、内側カート4内の食品収納部23は扉体31,32、側板体33,34および上下板35,36にて囲まれており、食品収納部23に収納された食品が外気と触れないようになっている。
【0062】
そして、提供場所において、作業者は、内側カート4の前側開口部24および後側開口部25の少なくともいずれか一方を開口させてから、トレイAを内側カート4内から引き出すことで食品を取り出し、その食品をトレイA上の容器Bに盛付けられた状態で、病室内の患者に提供する。このとき、温食は温かく、冷食は冷えており、患者は、最適な温度でその食品を食することが可能である。
【0063】
なお、食事後において、トレイA、空の容器(例えば椀や皿等の食器)Bおよび残飯は、内側カート4内に収納された状態で、トラック81によって給食センターに戻される。
【0064】
そして、上記食品提供システム1によれば、食品提供時において、外側カート3を温冷装置2に接続した状態のまま、内側カート4を外側カート3内から取り出し、この取り出した内側カート4によって食品を提供場所まで搬送できるため、従来の場合に比べて、食品を提供場所まで容易に搬送できる。
【0065】
また、内側カート4は、断熱機能を必ずしも必要とせず、内側カート4の軽量化を容易に図ることができるため、比較的に軽量な内側カート4を使用することで、食品を提供場所までより一層容易に搬送できる。
・・・
【0077】
さらに、外側カート3は、例えば内側カート4を案内する案内用のスリット部が形成された断熱下板を有したものや、後面開口部17を開閉する断熱扉体を有したもの等でもよい。」

カ 上記ア?オの記載を踏まえると以下の甲1発明が記載されていると認められる。

甲1発明
「食品を加熱および冷却するための加熱冷却手段と、
この加熱冷却手段に接続される外側カート3と、
前記外側カート3内に出し入れ可能に収納される内側カート4とを備え、
食品提供時には、前記内側カート4が前記外側カート3内から取り出され、この取り出された内側カート4によって食品が提供場所まで搬送され、
外側カート3は、温冷装置2に対して接続およびその接続を解除可能なものであり、複数の走行輪であるキャスタ6を下端部に有し、このキャスタ6により床面等の走行面上を走行可能となっており、1台の内側カート4が出し入れ可能に収納されるカート収納部(カート収納空間部)7と、このカート収納部7の前面を開口させてこのカート収納部7に対して内側カート4を出し入れ可能な開口面であるカート出入用開口部8とを有し、カート出入用開口部8を開閉する回動可能な矩形状の断熱前板である断熱扉11と、カート収納部7の左右の側面を覆う矩形状の左右1対の断熱側板12と、カート収納部7の上面を覆う正方形状の断熱上板13とを有しており、
内側カート4は、食品がトレイA上の容器B内に入れられた状態で出し入れ可能に収納される食品収納部(食品収納空間部)23と、この食品収納部23の前面を開口させてこの食品収納部23に対して食品を出し入れ可能な一方側の食品出入用開口部である前側開口部(第1開口面)24と、この食品収納部23の後面を開口させてこの食品収納部23に対して食品を出し入れ可能な他方側の食品出入用開口部である後側開口部(第2開口面)25とを有しており、食品収納部23には、トレイAを載置可能な水平状の複数の棚板26が上下方向に等間隔をおいて配設されており、
この内側カート4の前面開口部である前側開口部24を開閉する一方側の扉体である前側扉体31と、この内側カート4の後面開口部である後側開口部25を開閉する他方側の扉体である後側扉体32とを有しており、食品収納部23の一側面である左側面を覆う矩形状の一方側の側板体である左側板体(側板体)33と、食品収納部23の他側面である右側面を覆う矩形状の他方側の側板体である右側板体(側板体)34と、食品収納部23の上面を覆う正方形状の上板35と、食品収納部23の下面を覆う正方形状の下板36とを有しており、この左側板体33内の通気用空間部51には、食品の保冷時には温冷装置2から冷気が供給されるが、食品の再加熱時(食品を提供する直前時である配膳直前時)には温冷装置2から熱気が供給され、
冷気熱気供給手段61は、食品の保冷時には冷気を流入口51aを通して通気用空間部51に向けて吐き出しかつ食品の再加熱時には熱気を流入口51aを通して通気用空間部51に向けて吐き出す吐出口63と、食品の保冷時には第1室23aの冷気を吸い込みかつ食品の再加熱時には第1室23aの熱気を吸い込む吸込口64とを有しており、
内側カート4は、断熱機能を必ずしも必要とせず、内側カート4の軽量化を容易に図ることができるため、比較的に軽量な内側カート4を使用することで、食品を提供場所までより一層容易に搬送でき、
外側カート3は、内側カート4を案内する案内用のスリット部が形成された断熱下板を有したものや、後面開口部17を開閉する断熱扉体を有したものでもよい、
食品提供システム。」

(2)甲第2号証には、次の記載があり、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
ア 「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】移送用のキャスターと、開閉可能な密閉扉を備え、複数のトレーを収容可能に構成された断熱性の収容ユニットと、
前記収容ユニットとの連結手段と、冷却空気および加熱空気を生成し前記密閉扉を開放させて連結された前記収容ユニット内へ前記空気を供給する加熱手段および冷却手段とを備えるステーションユニットと、
から構成され、前記トレー上に載置される保冷食品を必要に応じて冷却あるいは加熱するための冷蔵・加熱システムであって、
前記収容ユニットは、
対向する面に前記密閉扉が設けられていると共に、底部に転動可能なキャスターを備える箱形の収容庫と、
該収容庫内に収容可能なカートと、から構成され、
前記カートは、
底部に転動可能なキャスターを一体的に備えると共に、該カート内に前記複数のトレーを多段に亘って保持するトレー保持手段を備えたことを特徴とする食品の冷蔵・加熱システム。」

イ 「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、食品を必要に応じて冷却あるいは加熱するための冷蔵・加熱システムに係り、特に保冷食品を積載して搬入・搬出を行うカートを収納器内に収納することのできる収納ユニットを備えた冷蔵・加熱システムおよび当該システムに用いられる収容ユニットに関する。
・・・
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、上記冷蔵・加熱システムの収容ユニットU3の収容庫100は、保温機能を持たせるために、収容庫100の内壁や密閉扉104の内部に断熱材を配設すると共に、断熱性および耐久性を高めるためにステンレス鋼板等を用いて内外壁を構成している。
【0006】
そのため、収容庫100自体の重量が数十キロに達する場合がある。したがって、この収容庫100に保冷食品等を載置した多数のトレーを積載した状態で移送させる場合には押したり引いたりするのに相当の力が必要となり、作業者の労力負担が大きいという問題があった。
特に、冷蔵・加熱システムを用いる各種食堂等では女性の従業員が収容ユニットU3の移送作業に従事することも多く、労力の軽減可能な軽量の収容ユニットが望まれている。
【0007】
また、一括して調理された保冷食品等は、給食センター等においてトレーに載せられた状態で収容庫100に予め収納されている方が食堂等の受け入れ側にとって利便性が高いが、収容庫100は上述の通り重量が嵩み、また体積も大きいため保冷トラック等の車両に積載して運搬するには不向きであり、また収容庫100自体の価格も高いため、多数の保冷食品を収納するために収容庫を複数台用意することは難しいという問題もあった。
【0008】
本考案は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、保冷食品等の移送作業に要する労力を軽減できると共に、保冷トラック等の運搬車両へ容易に積載して運搬することのできる食品の冷蔵・加熱システムおよび当該システムに用いられる収容ユニットを提供することを目的とする。」

ウ 「【0018】
本実施形態に係る冷蔵・加熱システムS1は、図4、図5に示すように、箱形の収容ユニットU1と、ステーションユニットU2とから構成されている。
収容ユニットU1は、さらに箱形の収容庫100と単独で移送可能なカート200とから構成されている。収容庫100は、図1に示すように、移送用のキャスターC2および開閉可能な密閉扉2a,2bを備える断熱性の箱形台車として構成されている。収容庫100は、内壁を備える金属製(例えばステンレス製)の箱形フレーム10の下面に樹脂(例えば、ポリエチレン)製の底板部材5が固設され、この底板部材5の下面には固定式のキャスターC2aおよび回転式のキャスターC2bが配設されている。なお、本実施形態では、便宜的に固定式のキャスターC2aが設けられている側を正面、回転式のキャスターC2bが設けられている側を背面と呼ぶものとする。
【0019】
底板部材5は、バンパーとしての役目も果たすため、壁や他の収容ユニットU1との衝突を避け得るように、収容ユニットU1本体の外周より若干外側に出っ張るように設計されている。
【0020】
収容庫100の上面には移送用のバー状のハンドル7を備える天板部材6が配設されている。
【0021】
収容庫100の正面側および背面側には、開口部を塞ぐ密閉扉2a,2bが、ヒンジ部材4を介して開閉自在に設けられている。各密閉扉2a,2bのヒンジ部材4の反対側には、回動可能なロック用ハンドル3a,3bがそれぞれ設けられ、該ロック用ハンドル3a,3bと対向する箱形フレーム10の内壁の端部にはロック用ハンドル3a,3bの端部と係合するロック受部材12が配設されている。
・・・
【0025】
収容庫100の底板40の端部には、後述するカート200を収容庫100内に収納する際に、カート200側のキャスターC2の支持部211を挿通させるための挿通溝41が形成されている。これにより、カート200に一体的に配設されたキャスターC2に妨げられることなく、カート200を収容庫100内へスムーズに収納することができる。
【0026】
カート200は、図2に示すように、トレー(図2では図示しない)を収納する箱状の収容部201と、この収容部201の下端側に垂直方向に延びる支持部211および水平方向に延設される台車部210を介して4つのキャスターC1が設けられている。
・・・
【0029】
本実施形態において、収容部201は、略中央から背面側のワイヤ線材を組み合わせた部位201aと、正面側にかけての金属板で構成された部位201bで構成されている。なお、収容部201の構成はこれに限らず、全体をワイヤ線材で組んでもよいし、逆に全体を金属板で構成するようにしてもよい。
【0030】
また、図2(b)の正面図に示されるように、略中央部に立設される多段の挿通部204aを有する仕切板204が設けられ、図示しないトレーを多段に亘って保持できるようになっている(トレーTを積載した状態は図6または図7に示す)。
【0031】
ここで、図4を参照してステーションユニットU2の構成について簡単に説明する。
ステーションユニットU2は、脚部401を底面に備える縦長のフレーム400の上方側に制御装置300、下方側に加熱装置301aおよび冷却装置301bが配設されている。また、制御装置300と加熱装置301aおよび冷却装置301bとの間と、加熱装置301aおよび冷却装置301bの下方には、収容庫100を電磁力で吸引して連結させるための電磁石ユニット302a,302bが配設されている。下方の電磁石ユニット302bの直上には、収容庫100側のガイドローラ(図示せず)を嵌入させるためのガイド部304が設けられている。
・・・
【0034】
加熱装置301aと冷却装置301bは、中央に設けられる仕切部301cによって、左右に分離されている。加熱装置301aと冷却装置301bは、それぞれ熱風または冷風を吹き出すためのメッシュ状の送風部307a,307bを備えており、図示は省略するが、送風部307a,307bの裏側および制御装置300の裏側には、循環させる空気の熱源および冷却源としてのヒータ、コンプレッサ、送風ファン等が配設されている。
【0035】
そして、収容庫100が連結されるステーションユニットU2は、収容庫100内に収納されるカート100(決定注;「200」の誤記と認める。)の仕切板204で仕切られる左右の空間に、熱風と冷風を別々に供給できるようになっており、例えばトレーTの左側に載置されるサラダやデザート等に対しては冷風を供給して冷やし、トレーTの右側に載置される例えばスープやグラタン等に対しては熱風を供給して温めることができる。
【0036】
次に図4から図7を参照して、本実施形態に係る冷蔵・加熱システムの使用方法について説明する。
まず、図4に示すように、ステーションユニットU2に対して収容庫100のキャスターC2a,C2bを転動させて移送し、手動で接続させる。この際に、ステーションユニットU2の制御により電磁石ユニット302a,302bが自動的に作動して、図5に示すように収容庫100が固定された状態となる。
【0043】
次いで、収容庫100の背面側の密閉扉2bを閉じ、ステーションユニットU2の制御により加熱装置301aおよび冷却装置301bを稼働させて、加熱処理や冷却処理を行う。これにより、カート200内に積載されたトレーTに載置されている保冷食品等の加熱や冷却を行うことができる。
【0044】
上記加熱・冷却処理が終了した後、再び収容庫100の背面側の密閉扉2bを開け、移送用ハンドル203をカート200に装着する。そして、移送用ハンドル203を引っ張ってカート200を収容庫100内から搬出させ、カート200のキャスターC1を転動させて、食事を提供する所までカート200を移送させる。なお、カート200には保温機能が無いので、食品等の温度を保ちたい場合には、カート200を収納したままの状態で、収容庫100をステーションユニットU2から離脱させ、収容庫100のキャスターC2a,C2bを転動させて移送するようにしてもよい。
【0045】
以上述べたように、本実施形態に係る食品の冷蔵・加熱システムS1によれば、保冷食品Fを載置したトレーTを収容ユニットU1の一部を構成するカート200に収納して運搬することができるので、重量の嵩む収容庫100内に保冷食品を直接収納して移送させる場合に比して労力を軽減することができる。また、カート200は収容庫100より軽量かつ小型にできるため、保冷食品等を積載した状態でトラック等の車両で運搬するのに適している。また、トレーTを収容したカート200ごと収容庫100内に収納できるので、保冷食品Fを載置したトレーTを一々積み替える必要がなく、冷却処理や加熱処理を行う際の利便性を損なうことがないという利点がある。
・・・
【0047】
【考案の効果】
以上説明したように本考案は、下部に移送用のキャスターを、また側部に開閉可能な密閉扉を備え、複数のトレーを収容可能に構成された断熱性の収容ユニットと、前記収容ユニットとの連結手段を備えると共に、冷却空気および加熱空気を生成し前記密閉扉を開放させて連結された前記収容ユニット内へ前記空気を供給する加熱手段および冷却手段とを備えるステーションユニットとから構成され、前記トレー上の保冷食品を必要に応じて冷却あるいは加熱するための冷蔵・加熱システムであって、前記収容ユニットは、正面と背面に前記密閉扉を備えると共に、底部に転動可能なキャスターを備える箱形の収容庫と、該収容庫内に収容可能なカートとから構成され、前記カートは、底部に転動可能なキャスターを一体的に備えると共に、該カート内に前記複数のトレーを多段に亘って保持するトレー保持手段を備えるようにしたので、保冷食品を載置したトレーを収容ユニットの一部を構成するカートに収納して運搬することができるので、重量の嵩む収容庫内に保冷食品を直接収納して移送させる場合に比して労力を軽減することができるという効果がある。
【0048】
また、カートは収容庫より軽量かつ小型にできるため、保冷食品等を積載した状態でトラック等の車両で運搬することができるという効果がある。
また、トレーを収容したカートごと収容庫内に収納できるので、保冷食品を載置したトレーを一々積み替える必要がなく、冷却処理や加熱処理を行う際の利便性を損なうことがないという効果がある。」

エ 上記ア?ウの記載を踏まえると以下の甲2発明が記載されていると認められる。

甲2発明
「移送用のキャスターと、開閉可能な密閉扉を備え、複数のトレーを収容可能に構成された断熱性の収容ユニットと、
前記収容ユニットとの連結手段と、冷却空気および加熱空気を生成し前記密閉扉を開放させて連結された前記収容ユニット内へ前記空気を供給する加熱手段および冷却手段とを備えるステーションユニットU2と、から構成され、
前記トレー上に載置される保冷食品を必要に応じて冷却あるいは加熱するための冷蔵・加熱システムであって、
前記収容ユニットは、対向する面に前記密閉扉が設けられていると共に、底部に転動可能なキャスターを備える箱形の収容庫100と、該収容庫100内に収容可能なカート200と、から構成され、
前記カート200は、底部に転動可能なキャスターを一体的に備えると共に、該カート内に前記複数のトレーを多段に亘って保持するトレー保持手段を備えており、トレーを収納する箱状の収容部201と、この収容部201の下端側に垂直方向に延びる支持部211および水平方向に延設される台車部210を介して4つのキャスターC1が設けられており、収容部201は、全体を金属板で構成するようにしてもよく、
ステーションユニットU2は、脚部401を底面に備える縦長のフレーム400の上方側に制御装置300、下方側に加熱装置301aおよび冷却装置301bが配設されており、
収容庫100が連結されるステーションユニットU2は、収容庫100内に収納されるカート200の仕切板204で仕切られる左右の空間に、熱風と冷風を別々に供給できるようになっている、
食品の冷蔵・加熱システム。」

(3)甲第3号証には、次の記載があり、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
ア 「【請求項1】
複数のトレイを水平な第1方向に複数列、垂直方向に複数段に配列保持可能であり、再加熱庫の内部に挿入されうると共に、該再加熱庫の内部から引き出されて移動可能な間仕切りフレームと、
前記再加熱庫の内部から引き出された状態で前記間仕切りフレームに装着可能であり、前記間仕切りフレームの矩形の底面と共に直方体状の保温庫を形成する保温カバーを備えた配膳カート。
・・・
【請求項9】
前記トレイは、加熱される食品が搭載される加熱スペースと、加熱されない食品が搭載される非加熱スペースで構成され、前記加熱スペースと前記非加熱スペースは前記水平な第1方向に直交する水平な第2方向に配列されており、
前記間仕切りフレームは、その中央部付近に設けられた垂直な断熱壁を有し、前記断熱壁には、前記トレイの前記加熱スペースと前記非加熱スペースの間の仕切り部分が挿入される水平な複数のスリット及び該スリットを塞ぐための垂直方向に変位する可動板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の配膳カート。
・・・
【請求項11】
固定された状態で使用され冷蔵庫として使用される第1領域と、冷蔵庫及び再加熱庫として使用される第2領域を備えた再加熱庫と、
冷蔵庫として使用される前記第1領域及び前記第2領域に接続され、前記第1領域及び前記第2領域の食品を第1所定温度に冷蔵保存するための冷却装置と、
再加熱庫として使用される前記第2領域に接続され、前記第2領域の食品を第2所定温度に再加熱するための加熱装置と、
請求項9に記載の配膳カートを備え、
前記トレイの加熱スペースが前記第2領域に、前記トレイの非加熱スペースが前記第1領域に、それぞれ対応するようにのみ、前記配膳カートを前記再加熱庫に挿入しうることを特徴とするクックチルシステム。」

イ 「【0003】
ここで、配膳車とは、保温庫内にトレイを水平方向及び垂直方向に複数配列して収納すると共に、少なくとも保温庫内の温度を一定の範囲に維持するための加熱装置及び必要に応じて冷却装置を備えたものをいい、配膳カートとは、トレイを水平方向及び垂直方向に複数配列した状態で搬送するものであって、加熱装置や冷却装置を備えていないものをいうものとする。また、配膳カートには保温機能を備えたものと保温機能を備えていないものの両方が含まれる。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来例の問題点を解決するためになされたものであり、少なくとも保温庫と加熱装置(必要に応じて、さらに冷却装置)を固定設置し、保温庫内で食品を所定温度に再加熱して提供するクックチルシステム及びそのシステムに適する保温機能を備えた配膳カートを提供することを目的としている。」

ウ 「【0033】
本発明の一実施形態に係るクックチルシステム及びそれに適する保温機能を備えた配膳カートについて、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るクックチルシステムは、冷蔵庫を兼ねた再加熱庫を固定設置すると共に、多数のトレイを配列保持した間仕切りフレームを再加熱庫に対して挿入及び引き出し可能とし、再加熱庫から引き出された間仕切りフレームに保温カバーを装着して配膳カートとして使用するものである。
【0034】
図1は、本実施形態に係る再加熱庫1の扉8を閉じた状態を示し、図2は再加熱庫1の扉8を開いた状態を示す。再加熱庫1は、例えば2つの間仕切りフレーム10を収納しうる収納庫2と、収納庫2に温風を供給する加熱装置3と、収納庫2に冷風を供給する冷却装置4と、加熱温度や冷蔵温度などを設定するための操作パネル5と、設定された温度に従って加熱装置3及び冷却装置4などを制御する制御装置6と、加熱温度や冷蔵温度などを設定するための操作パネル5などで構成されている。また、収納庫2の周囲には、加熱装置3又は冷却装置4からの温風又は冷風を誘導するためのダクトやファンが設けられている(図示せず)。
【0035】
再加熱庫1の正面には、収納庫2の開口を覆うための2つの扉8が蝶番を介して取り付けられており、扉8はそれぞれ蝶番によって2つに折りたたむことができる。再加熱庫1の収納庫2は、見かけ上、間仕切りフレーム10及び2つの扉8に対応してさらに2つの空間2a,2bに区分され、各空間2a,2bには、それぞれ間仕切りフレーム10が装着される。
・・・
【0040】
本実施形態では、間仕切りフレーム10は、図3に示すように、複数のトレイ9を水平方向に複数列、垂直方向に複数段に配列保持可能なフレーム本体部11と、フレーム本体部11の底部に着脱可能な台車12で構成されている。また、間仕切りフレーム10には、保温カバー20が装着可能である。保温カバー20は、再加熱庫1の収納庫2から引き出された状態で間仕切りフレーム10に装着可能、すなわち、保温カバー20を装着した状態では、間仕切りフレーム10は再加熱庫1の収納庫2に挿入できないように構成されている。保温カバー20は、間仕切りフレーム10の矩形の底面と共に直方体状の保温庫を形成する。
【0041】
このように、間仕切りフレーム10は、事実上金属枠体のみで構成され、壁が存在しないので、トレイ9に食品を載せて再加熱庫1で再加熱処理する際、間仕切りフレーム10の上に搭載された全てのトレイ9上の食品をほぼ均一に加熱することができる。また、間仕切りフレーム10の熱容量が小さく、再加熱時のエネルギーロスが少ない。さらに、再加熱庫1から間仕切りフレーム10を引き出す際、作業者が誤って高温の部分に触れる可能性は小さく、安全性が高い。また、加熱装置3及び冷却装置4は固定されているので、配膳車に搭載されたものに比べて、故障する確率が低くなる。
・・・
【0045】
図4に示す構成例では、間仕切りフレーム10は、その中央部に設けられた断熱壁10cのみを有しており、断熱壁10cにトレイ9の底部を支えるために両側に突出したガイドフランジ10dが設けられている。また、間仕切りフレーム10の両側部にはフレームのみが設けられ、トレイ9の両側壁と係合される水平なガイドレールは設けられていない。このような構成によれば、トレイ9の形状が限定されるものの、間仕切りフレーム10の構造の簡略化、軽量化及びコストダウンを図ることができる。
・・・
【0047】
次に、本実施形態に係る配膳カート、すなわち間仕切りフレーム10及び保温カバー20のさらに他の具体的構成例について、図5を参照しつつ説明する。図5において、(a)は保温カバー20を装着していない状態における間仕切りフレーム10の構成、(b)は保温カバー20の一部(断熱カーテン20a)の構成、(c)は間仕切りフレーム10に断熱カーテン20aを装着するときの状態、(d)は間仕切りフレーム10に断熱カー
テン20aを装着した後の状態をそれぞれ示す。
【0048】
図5に示す構成例では、間仕切りフレーム10は、その中央部に設けられ、両側に突出したガイドフランジ10dを備えた断熱壁10cのみを有しており、間仕切りフレーム10の両側部にはフレームのみが設けられ、トレイ9の両側壁と係合される水平なガイドレールは設けられていない。さらに、間仕切りフレーム10には、底面10eの四隅に設けられた4本の垂直な支柱10fにそれぞれ蝶番25を介して回転可能に連結され、トレイ9を着脱するための開口部を覆う4つの開閉扉22が設けられている。なお、開閉扉22側の蝶番を間仕切りフレーム10の蝶番に対して取り外し可能とし、開閉扉22を着脱可能に構成してもよい。また、操作ハンドル13を間仕切りフレーム10に着脱可能としてもよい。
【0049】
保温カバー20は、例えばねじりばねなどによって、芯棒に巻き付けられる方向に付勢された断熱カーテン20aであり、芯棒の軸がトレイ9を水平に配列する第1方向に平行になるように間仕切りフレーム10の天井部分に装着される。間仕切りフレーム10のフレームには、断熱カーテン20aをガイドするためのガイド部材10gが設けられており、それによって、断熱カーテン20aの内側がトレイ9上の食品などに接触することを防止することができる。このように、保温カバー20をカーテン状にすることにより、保温カバー20の取り付けがきわめて容易であり、且つ、保管スペースの極小化することができる。
・・・
【0053】
以上説明したように、本発明に係るクックチルシステム及びそれに適する保温機能を備えた配膳カートによれば、あらかじめ食品が載置されたトレイ9を間仕切りフレーム10上に水平方向及び垂直方向に配列した状態で、固定された再加熱庫1に挿入し、加熱されるべき食品を加熱処理するので、図7に示す従来のクックチルシステムと異なり、間仕切りフレーム10の上に搭載された全てのトレイ上の加熱されるべき食品をほぼ均一に加熱することができる。また、間仕切りフレーム10は、事実上金属枠体のみで構成され、壁が存在しないので、保温庫に比べてそれ自体の熱容量が小さく、再加熱時のエネルギーロスが少ない。さらに、間仕切りフレーム10を再加熱庫から引き出し、間仕切りフレーム10の保温カバー20を装着して保温機能を備えた配膳カートを構成するので、再加熱庫から引き出される際、作業者が誤って高温の部分に触れる可能性は小さく、安全性は高い。
さらに、間仕切りフレーム10と保温カバーで構成される保温機能を備えた配膳カートを用いて配膳するので、配膳の際、調理された食品の温度を一定の範囲に保つことができる。また、加熱装置3(必要に応じて、冷却装置4)は固定されているので、配膳車に搭載されたものに比べて、故障する確率が低くなる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、間仕切りフレーム10は、必ずしもフレーム本体部11と台車12が分離可能である必要はなく、車輪つきのまま間仕切りフレーム10を再加熱庫の収納庫2に挿入するような構成であってもよい。さらに、再加熱庫1やトレイ9なども上記実施形態の構成に限定されず、加熱される食品と加熱されない食品をそれぞれ別のトレイに載置すると共に、加熱される食品のみを再加熱庫1で再加熱するような構成であってもよい。」

エ 上記ア?ウの記載を踏まえると以下の甲3発明が記載されていると認められる。

甲3発明
「固定された状態で使用され冷蔵庫として使用される第1領域と、冷蔵庫及び再加熱庫として使用される第2領域を備えた再加熱庫と、
複数のトレイ9を水平な第1方向に複数列、垂直方向に複数段に配列保持可能であり、再加熱庫の内部に挿入されうると共に、該再加熱庫の内部から引き出されて移動可能な間仕切りフレーム10と、前記再加熱庫の内部から引き出された状態で前記間仕切りフレームに装着可能であり、前記間仕切りフレームの矩形の底面と共に直方体状の保温庫を形成する保温カバーを備えた配膳カートを備え、
前記配膳カートを前記再加熱庫に挿入でき、
間仕切りフレーム10は、複数のトレイ9を水平方向に複数列、垂直方向に複数段に配列保持可能なフレーム本体部11と、フレーム本体部11の底部に着脱可能な台車12で構成されており、間仕切りフレーム10には、保温カバー20が装着可能であり、
間仕切りフレーム10には、底面10eの四隅に設けられた4本の垂直な支柱10fにそれぞれ蝶番25を介して回転可能に連結され、トレイ9を着脱するための開口部を覆う4つの開閉扉22が設けられており、
間仕切りフレーム10は、必ずしもフレーム本体部11と台車12が分離可能である必要はなく、車輪つきのまま間仕切りフレーム10を再加熱庫の収納庫2に挿入するような構成であってもよい、
クックチルシステム。」

(4)甲第4号証には、次の記載がある。
ア 「【請求項1】 断熱壁体にて箱状に構成された保温室本体と、底部に車輪を備えて前記保温室本体内から引き出し可能に収容されると共に内部が左右に冷蔵部と温蔵部とに区分されるトレイ収容ワゴンと、前記保温室本体に設けられ前記トレイ収容ワゴンの冷蔵部を冷却する冷却装置と、前記保温室本体に設けられ前記トレイ収容ワゴンの温蔵部を加熱する加熱装置とを備てなる冷温蔵装置。」

イ 「【0011】
【実施例】以下、本発明を配膳車に適用した一実施例について、図1ないし図12を参照しながら説明する。まず、図1は本実施例に係る冷温蔵装置としての配膳車1の全体構成を示している。この配膳車1は、全体として矩形箱状に構成された保温室本体2の底部に、図2にも示すように、移動用の複数個のキャスター3を備えて構成されている。また、前記保温室本体2の側面にはハンドル4が設けられている。
【0012】前記保温室本体2は、前後両面が開放した断熱箱体から構成され、図2にも示すように、その中央部に設けられた中間壁5によって、内部に左右2室のワゴン収容室6が形成されている。また、各ワゴン収容室6の前面及び背面には、扉7が開閉可能に設けられている。この扉7は、扉枠8内にガラス9を設けてなり、前記扉枠8の内面部には、前記ワゴン収容室6の周囲部との間をシールするマグネットガスケット10(図11,12参照)が設けられている。尚、前記左右のワゴン収容室6は、左右対称的に設けられており、以下、代表させて右側のワゴン収容室6について述べる。また、詳しく図示はしないが、前記中間壁5部分には、右側のワゴン収容室6のうち左内側壁側に冷気を供給すると共に、左側のワゴン収容室6のうち右内側壁側に冷気を供給する冷却装置が設けられている。さらに、右側のワゴン収容室6の右内側壁(及び左側のワゴン収容室6の左内側壁)には、加熱装置としての面状ヒータ11(図2参照)が設けられている。
【0013】そして、前記ワゴン収容室6内には、食品が載置される例えばプラスチック製のトレイ12を、前後に二列且つ上下に多段に収容するトレイ収容ワゴン13が、引き出し可能に収容されるようになっている。この場合、前記トレイ12は、横長の矩形状をなし、中央部に位置する平板な境界部12aの左側に、冷たい状態で供される食品が載置され、前記境界部12aの右側に、温かい状態で供される食品が載置されるようになっている。このトレイ収容ワゴン13は、図1ないし図3に示すように、前後両面が開放された矩形箱状をなし前記ワゴン収容室6内にほぼ密に嵌り込む大きさの枠体14内に、後述するようなトレイ12を受けるための棚部材、及び、トレイ収容ワゴン内13を左右(冷蔵部及び温蔵部)に区分する断熱壁を備えて構成されている。また、枠体14の底部には、トレイ収容ワゴン13を前後方向に移動させるための車輪15が、四隅部に位置して設けられている。このトレイ収容ワゴン13の詳細については後述する。」

(5)甲第5号証には、次の記載がある。
ア 「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態に係る移動自在車収容式熱風消毒保管装置について図1乃至図10を参照して説明する。移動自在車収容式熱風消毒保管装置は、洗浄済みの食器類を収納・運搬するためのコンテナ(移動自在車)1と、熱風により消毒動作を行う消毒保管庫10(後述の図3等参照)とからなる。コンテナ1は食器類を収納した状態で消毒保管庫内に収容されるものであり、内部に食器類を収納するためのラック2が設けられ、下部に設けられたキャスタ3によって図1(a)に矢印で示す両方向に走行自在とされている。
【0015】コンテナ1の前面及び背面には、開閉自在な扉部5がそれぞれ2組ずつ取り付けられている。図2(c)に示すように、扉部5は板状体の複数の扉5A,5Bが長蝶番4で連結されてなる。この長蝶番4によって扉5A,5Bの連結部においてはシール効果が得られる。図2(b)に示すように、扉5Aは蝶番6でコンテナ1の天板1aに、コンテナ1の側部方向へ270度の回動が可能に取り付けられている。扉部5は、扉5A,5Bが水平横方向にスライド移動することによって、扉部5,5が観音開きのように開閉する構成とされている。扉部5を開けるときは、図1(b)に示すように、扉5A,5Bの蝶番4による連結部分を手前側にせり出した状態となるようにして、扉5Bを扉5A側にスライド移動させる。扉5A,5Bをスライド移動させていくと、扉部5が全開となった状態では、扉5A,5Bはコンテナ1前面の端部において折り畳まれた形状となる。
【0016】コンテナ1の左右両側部には、扉部5を折り畳まれた状態で収納することが可能な扉収納部1b(扉部収納部)が設けられており、折り畳まれた状態の扉部5をコンテナ1の側面部方向に回動させることによって、扉部5が扉収納部1bに収納される。扉収納部1bは、コンテナ1上部の天板1aがコンテナ1本体部分の幅よりも、折り畳んだ状態の扉部5の厚み分だけ大きくすることで構成されている。コンテナ1は、扉部5が開かれ、扉部5が扉収納部1bに収納された状態で、コンテナ1の前面及び背面が、後述するコンテナ収容部11の左右両側面壁に対面するようにして消毒保管庫内に収容される。」

イ 「【0019】次に、消毒保管庫について図3及び図4を参照して説明する。消毒保管庫10は、コンテナ1及びコンテナ1に収納されている食器類を熱風によって消毒し保管するものであり、庫内には、コンテナ1を収容するためのコンテナ収容部11が設けられている。消毒保管庫10はコンテナ収容部11内において、コンテナ1及びコンテナ1に収納されている食器類に熱風を吹き出すことで消毒を行う。コンテナ収容部11の上部には、熱風を作り出すための熱源13、及びブロワモータ15により駆動されるブロワ羽根16からなる送風機が設けられており、コンテナ収容部11の側部には、熱源13で作り出された熱風をコンテナ収容部11に送り込むための通風路14が熱風仕切板11aにより区画形成されている。この通風路14からコンテナ収容部11内に送り込まれた熱風は、コンテナ収容部11内に収容されたコンテナ1内を通った後、ブロワ羽根16の吸い込み口11bに吸い込まれ、循環する。なお、コンテナ収容部11は、コンテナ収容部11内の温度を一定に保つために断熱材12で覆われている。
【0020】また、コンテナ収容部11内の熱風仕切板11aを含む側壁及び扉部10aの下部には、コンテナ1の進行方向を案内するためのガイド部材18が設けられており、このガイド部材18に対応してコンテナ1の下部にはガイド当たり部材19が設けられている。これらガイド部材18及びガイド当たり部材19は四方に設けられ、ガイド部材18及びガイド当たり部材19によって、コンテナ1はコンテナ収容部11内において正確に位置決めされる。ガイド部材18及びガイド当たり部材19は、コンテナ1がコンテナ収容部11に収容された状態で、両部材の間隔が約1mm程度になるように設定され、コンテナ1の底部とコンテナ収容部11内とを実質的に隔離し得る寸法間隔に構成されている。なお、図3(a)では、コンテナ1の正面・背面のガイド当たり部材19、及びコンテナ収容部11内側面部分のガイド部材18の図示を省略し、図3(b)では、コンテナ1の側部のガイド当たり部材19、及びコンテナ収容部11奥の側壁と扉部10a部分のガイド部材18の図示を省略している。」

ウ 「【0030】本発明に係る移動自在車収容式熱風消毒保管装置で消毒を行う場合の手順について説明する。運転準備は次の手順による。(1)コンテナ1を消毒保管庫10の付近に移動し、コンテナ1の扉部5を開いて折り畳んだ状態で扉収納部1bに収納し、ロック部8により固定する。(2)洗浄後の食器類をコンテナ1内のラック2に収納し、コンテナ1を消毒保管庫10のコンテナ収容部11内に収容する。コンテナ1収容時には、コンテナ収容部11内部及び扉部10aに設けられているガイド部材18に沿って収容する。このとき、コンテナ1の底部に設けられたガイド当たり部材19がコンテナ収容部11内部奥側のガイド部材18に接することで簡易的な位置決めがされる。(3)センサ22によって、コンテナ1がコンテナ収容部11内に収容され、かつコンテナ1の扉部5が扉収納部1bに収納されていることが検知されると、センサ22から制御部にオン信号が送出される。(4)消毒保管庫10の扉部10aを閉じ、ロック部21によって固定する。(5)センサ20により扉部10aが閉じていることが検知されると、制御部にオン信号が送出される。(6)センサ20及び22の両方からオン信号の送出があった状態の時のみ消毒保管庫10による消毒動作が開始可能となる。」

6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(第29条の2第29条第2項)について
(1)第29条の2について
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲1発明と本件発明1を対比すると、少なくとも以下の相違点1で相違する。

(相違点1)
本件発明1では「配膳車本体」に「カート収容室内に冷気を送入する冷却設備および過熱蒸気または温風を送入する加熱設備が設けられ」ているのに対し、甲1発明では「外側カート」が「温冷装置(加熱冷却手段)に対して接続およびその接続が解除可能なものであ」る点。

(イ)判断
相違点1について検討する。
甲1発明の「外側カート」に「温冷装置(加熱冷却手段)」が設けられていないことは明らかであり、さらに、甲第2号証?甲第5号証の記載を参酌しても、相違点1に係る構成が、設計上の微差であることを示唆する記載は認められない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、「外側カート3が温冷装置2に対して脱着可能な構成は、甲第1号証において一実施例の構成として例示されたものに過ぎない。このことは、甲第1号証の請求項1には、「脱着可能」という文言がなく、一体型の外側カート接続温冷装置をも含むべく、「・・・加熱冷却手段に接続される外側カート・・・」と記載されていることからも明らかである。また、甲第1号証の請求項1に記載された発明は、その課題(断熱カートが重い)及び作用効果(カートの操作性向上)が本件発明と同じであり、これら課題及び作用効果からみても、外側カートが加熱冷却手段に対して脱着可能な構成(両者が別体の構成)を必須の構成とするものではなく、外側カードが加熱冷却手段に一体に接続される一体構成(両者が一体の構成)を含むものであって、当該一体構成は甲第1号証に記載されているに等しい事項である。」(申立書26頁1行?12行)、「甲第1号証の【0019】には、「・・・外側カート3は、例えばメンテナンス時や清掃時等の必要時以外は、常に温冷装置2の前面に解除可能に接続されている。」と記載されている。そして、この記載の内容は、常に温冷装置2と外側カート3とが接続されていることを基本とすることから、“メンテナンス性や清掃性等を考慮しなければ、外側カートと温冷装置とを一体の構成としてもよい”、という意味を含んでいる。また、甲第1号証の【0064】に「・・・食品提供システム1によれば、食品提供時において、外側カート3を温冷装置2に接続した状態のまま、内側カート4を外側カート3内から取り出し、この取り出した内側カート4によって食品を提供場所まで搬送できる・・・」と記載されていることからも明らかなように、食品提供時における実質的な使用の仕方からみて、この食品提供システム1は、外側カード3と温冷装置2とを一体の構成としたものと実質的に何ら変わらないものである。」(申立書27頁2行?15行)、「甲第1号証の【図8】からは、内側カート4の全体がそのまま収容されるカート収納部7を有する部屋構造のカート収容室が一体に形成され、外側カート3と温冷装置2とが一体となった一体型の外側カート接続温冷装置を看取できる。すなわち、【図8】に接した当業者であれば、当該【図8】の図示内容に基づいて、「内側カート4」と「一体型の外側カート接続温冷装置」とからなる2部材構成の食品提供システムの発明を把握することができる。」(申立書27頁19行?24行)旨主張する。
しかしながら、甲第1号証には、「外側カート」と「加熱冷却手段」が一体構成であること、あるいは、「外側カート」に「加熱冷却手段」が設けられていることは明記されておらず、さらに、甲第1号証において、(食品を加熱および冷却するための加熱冷却手段である)「ステーションユニット」と、(加熱冷却手段に脱着可能に接続される断熱性の断熱カートである)「収容ユニット」を備えていることが前提となっていることは明らかである(例えば、【0003】参照。)。このような解釈は、上記前提以外の実施例がないことからも推認できることである。したがって、甲第1号証において相違点1に係る本件発明1の構成について示唆されているとはいえず、当該構成は甲第1号証に記載されているに等しい事項であるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(エ)小活
したがって、本件発明1は、甲1発明と同一ではないから、その特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

イ 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア参照)により、甲1発明と同一ではないから、その特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

(2)第29条第2項について
ア 甲第2号証が主引用例の場合
(ア)本件発明1について
a 対比
甲2発明と本件発明1を対比すると、甲2発明において「収容ユニット」と「ステーションユニットU2」は別部材であるから、当該両部材が本件発明1の「配膳車本体」に相当するとはいえない。
したがって、少なくとも以下の相違点2で相違する。

(相違点2)
本件発明1では「配膳車本体」に「カート収容室内に冷気を送入する冷却設備および過熱蒸気または温風を送入する加熱設備が設けられ」ているのに対し、甲2発明では「収容ユニットと、前記収容ユニットとの連結手段と、冷却空気および加熱空気を生成し前記密閉扉を開放させて連結された前記収容ユニット内へ前記空気を供給する加熱手段および冷却手段とを備えるステーションユニットU2と、から構成され」ている点。

b 判断
相違点2について検討する。
甲2発明において、「収容ユニット」と「加熱手段および冷却手段とを備えるステーションユニットU2」は別体であることが前提であり、さらに、「収容ユニット」は「キャスター」を有しているから移動可能であるが、「ステーションユニットU2」は「脚部401を底面に備える縦長のフレーム」でありキャスターなどにより移動できるものではなく、使用態様が異なるものであるから、両者を一体にする必要性は認められず、また、両者を一体にすることが設計事項であることを示唆する証拠もないから、甲2発明において、両者を一体にすることは当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。
また、甲第3号証には、「再加熱庫」に冷蔵、加熱装置を設けること(以下、「甲3記載事項」という。)が、甲第4号証には、「配膳車」を冷温蔵装置とすること(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されている。
しかしながら、甲第3号証における「再加熱庫」は固定設置されるものであるから、甲2発明の「移送用のキャスター」「を備え」る「収容ユニット」に相当するものではない。また、甲第4号証における「配膳車」はキャスターを備え、移動可能であるから、甲2発明の「移送用のキャスター」「を備え」る「収容ユニット」に相当するものであるが、「配膳車」の内部に設置される「トレイ収容ワゴン」は、「配膳車」から引き出し可能であるものの、「配膳車」から離れて使用されるものでないから、甲2発明の「カート」に相当するとはいえない。以上のように、甲第3号証、甲第4号証に記載された事項は、甲2発明と比較して、甲2発明の「収容ユニット」周辺の前提となる構造が異なっており、このような異なった構造の中から、甲3記載事項、甲4記載事項を選択して、甲2発明に適用する動機付けはないというべきである。
また、甲第5号証には、「消毒保管庫」に「熱源」等を一体的に設けること(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されているが、甲第5号証における「消毒保管庫」は固定設置されるものであるから、甲2発明の「移送用のキャスター」「を備え」る「収容ユニット」に相当するものではなく、甲第3号証、甲第4号証に記載された事項を併せて参酌したとしても、上記と同様に、甲2発明において、甲5記載事項を選択して、適用する動機付けはないというべきである。

c 申立人の主張について
申立人は、「[相違点1](カ-ト収容室の相違)冷却設備および加熱設備が設けられた配膳車本体に関し、本件発明1では、「(配膳車本体に)カート収容室が一体に形成され」ているのに対し、甲2発明では、そのような構成に特定されていない点。」(申立書49頁1行?5行)、「相違点1に係る本件発明1の「(配膳車本体に)カート収容室が一体に形成され」ているとの構成は、本件特許の出願前における周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。(決定注;「である。」を追記した。)そして、甲2発明と周知技術1とは、いずれも、病院等の施設において軽量なカートを用いて食事(温かい食品及び冷たい食品を含む食事)を提供することが可能なカート収容型配膳車に関するもので、その技術分野が同じであるから、甲2発明に対して周知技術1を適用する動機付けがあり、その一方、その適用を妨げる阻害要因は存在しない。しかも、甲第2号証には、「ステーションユニットU2の制御により電磁石ユニット302 a, 302bが自動的に作動して、図5に示すように収容庫100が固定された状態となる。」(【0036】)との記載があり、ステーションユニットと収容庫とを互いに固定して一体化することが開示されているから、この甲第2号証の記載は、周知技術1を甲2発明に適用することについての示唆であるといえる。」(申立書50頁11行?下から4行)、「甲2発明は、食事を提供するための冷蔵・加熱システム(カート収容型配膳車)に関するものであり、他方、甲5技術事項は、食器類を消毒保管するための消毒保管装置に関するものである。しかし、甲2発明と甲5技術事項とは、移動自在なカートと、このカートの全体がそのまま収容される扉付きの部屋構造のカート収容室とを備えたカート収容型の厨房機器に関する技術である点で共通しており、この点に着目すると、両者の技術分野は関連している。・・・また、甲5技術事項の消毒保管庫は、甲2発明の配膳車本体と同様、熱風を循環させてカート内の処理対象物を熱処理するものであるから、甲2発明と甲5技術事項との間において作用、機能が共通している。」(申立書59頁6行?18行)旨主張する。
しかしながら、上記a、bで説示したように、申立人が相違点としていない「冷却設備および加熱設備が設けられた配膳車本体」の有無の点が相違点2であり、甲2発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

d 小活
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、及び甲第3号証?甲第5号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(イ)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記(ア)参照)により、甲2発明、及び甲第3号証?甲第5号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

イ 甲第3号証が主引用例の場合
(ア)本件発明1について
a 対比
甲3発明と本件発明1を対比すると、少なくとも以下の相違点3で相違する。

(相違点3)
本件発明1では「配膳車本体」に「カート収容室内に冷気を送入する冷却設備および過熱蒸気または温風を送入する加熱設備が設けられ」ているのに対し、甲3発明では「固定された状態で使用され」る「再加熱庫」に「冷蔵庫として使用される第1領域と、冷蔵庫及び再加熱庫として使用される第2領域を備えた」点。

b 判断
甲第2号証、甲第5号証には、「配膳車本体」に「カート収容室内に冷気を送入する冷却設備および過熱蒸気または温風を送入する加熱設備が設けられ」ることは記載されていない。
甲第4号証には、「配膳車」を冷温蔵装置とすること(上記「甲4記載事項」)が記載されている。しかしながら、甲第3号証において「【発明が解決しようとする課題】【0009】本発明は上記従来例の問題点を解決するためになされたものであり、少なくとも保温庫と加熱装置(必要に応じて、さらに冷却装置)を固定設置し、保温庫内で食品を所定温度に再加熱して提供するクックチルシステム及びそのシステムに適する保温機能を備えた配膳カートを提供することを目的としている。」と記載されているように、甲3発明の「再加熱庫」は「固定された状態で使用され」ることが前提であるので、甲第4号証における「配膳車」のように移動可能とする動機付けはないというべきである。

c 申立人の主張について
申立人は、「[相違点A]4つの開口である過熱蒸気等噴出口、過熱蒸気等吸入口、冷気噴出口及び冷気吸入口に関し、本件発明1では、それら4つの開口が「カート収容室の後壁に」形成されているのに対し、甲3発明では、そのような構成に特定されていない点。
・・・相違点Aについて検討する。甲第2号証には、上述したように甲2発明が記載されており、この甲2発明は構成1Dを備えている。つまり、この甲第2号証には、「カート収容室におけるステーションユニットU2の前面(カート収容室の後壁)に、加熱装置301a (加熱設備)から供給される熱風が噴き出す送風部307a(過熱蒸気等噴出口)と熱風を吸い込む熱風吸入口(過熱蒸気等吸入口)、並びに前記冷却装置301b(冷却設備)から供給される冷風が噴き出す送風部307b(冷気噴出口)と冷風を吸い込む冷風吸入口(冷気吸入口)が形成されている、冷蔵・加熱システムS1(カート収容型配膳車)。」(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されている。・・・したがって、甲3発明において、甲2技術事項の如く4つの開口(過熱蒸気等噴出口、過熱蒸気等吸人口、冷気噴出口及び冷気吸入口)をカート収容室の後壁に形成して、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。」(申立書64頁5行?65頁6行)旨主張する。
しかしながら、上記a、bで説示したように、申立人が相違点としていない「カート収容室内に冷気を送入する冷却設備および過熱蒸気または温風を送入する加熱設備が設けられ」ているのが「配膳車本体」であるか否かの点を相違点3として進歩性の判断をしているから、申立人が主張する相違点Aについて検討するまでもなく、甲3発明において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。

d 小活
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明、及び甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(イ)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記(ア)参照)により、甲3発明、及び甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にトレイが多段に配置され、底部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部にカート全体がそのまま収容されるカート収容室が一体に形成され、カート収容室内に冷気を送入する冷却設備および過熱蒸気または温風を送入する加熱設備が設けられた配膳車本体とを備えており、カート収容室は、上下壁、左右壁および後壁を有し、前側には前記カートを出し入れするカート出入口部とカート出入口部を塞ぐ本体扉を備えており、カート収容室の後壁に、加熱設備から供給される過熱蒸気等が噴き出す過熱蒸気等噴出口と過熱蒸気等を吸い込む過熱蒸気等吸入口並びに冷却設備から供給される冷気が噴き出す冷気噴出口と冷気を吸い込む冷気吸入口が形成され、カートは、上下壁および左右壁を有し、後側に前記配膳車本体内の過熱蒸気等噴出口および過熱蒸気等吸入口並びに冷気噴出口および冷気吸入口のそれぞれと連通する連通開口部を有し、同前側にはトレイが出し入れされるトレイ出入口部が形成され、トレイ出入口部および前記連通開口部にこれらを開閉する各カート扉が設けられている、カート収容型配膳車。
【請求項2】
配膳車本体の下壁にカートのキャスターが進入するキャスター進入用開口部が形成されている、請求項1記載のカート収容型配膳車。
【請求項3】
加熱設備が配膳車本体のカート収容室の後壁後側下部に設けられ、配膳車本体における過熱蒸気等噴出口の後側に一または複数のヒーターが配置されている、請求項1または請求項2のうちのいずれか一項記載のカート収容型配膳車。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-24 
出願番号 特願2013-99844(P2013-99844)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A47B)
P 1 651・ 853- YAA (A47B)
P 1 651・ 16- YAA (A47B)
P 1 651・ 537- YAA (A47B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渋谷 知子蔵野 いづみ  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 井上 博之
富士 春奈
登録日 2018-04-06 
登録番号 特許第6315749号(P6315749)
権利者 株式会社井上製作所
発明の名称 カート収容型配膳車  
代理人 河野 修  
代理人 河野 修  
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