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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G11B 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 G11B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G11B |
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管理番号 | 1353164 |
異議申立番号 | 異議2018-700951 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-11-27 |
確定日 | 2019-06-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6340267号発明「磁気ディスク基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6340267号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕、〔16?18〕について訂正することを認める。 特許第6340267号の請求項1?18に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6340267号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?18に係る特許についての出願は、平成26年6月30日(優先権主張 平成25年12月3日)に出願され、平成30年5月18日にその特許権の設定登録がされ、平成30年6月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年11月27日に特許異議申立人相見彩により特許異議の申立てがされ、当審は、平成31年1月18日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成31年3月13日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は意見書を提出しなかった。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 (1-1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ここで、前記非球状シリカ粒子Aが複数の粒子が凝集又は融着した形状であり、前記被研磨基板がNi-Pめっきアルミニウム合金基板であり、前記研磨パッドがベース層と発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドであり、その表面層の圧縮率が2.5%以上である」と記載されているのを、「ここで、前記非球状シリカ粒子Aが複数の粒子が凝集又は融着した形状であり、前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、コロイダルシリカであり、前記被研磨基板がNi-Pめっきアルミニウム合金基板であり、前記研磨パッドがベース層と発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドであり、その表面層の圧縮率が2.5%以上である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?15も同様に訂正する)。 (1-2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項16に「複数の粒子が凝集又は融着した形状の非球状シリカ粒子A、酸、酸化剤及び水を含有し、アルミナ砥粒を実質的に含まない研磨液組成物であって、ベース層と圧縮率が2.5%以上の発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドを用い、被研磨基板であるNi-Pめっきアルミニウム合金基板を粗研磨するための、研磨液組成物」と記載されているのを、「複数の粒子が凝集又は融着した形状の非球状シリカ粒子A、酸、酸化剤及び水を含有し、アルミナ砥粒を実質的に含まない研磨液組成物であって、前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、コロイダルシリカであり、ベース層と圧縮率が2.5%以上の発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドを用い、被研磨基板であるNi-Pめっきアルミニウム合金基板を粗研磨するための、研磨液組成物」に訂正する(請求項16の記載を引用する請求項17?18も同様に訂正する)。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1?15〕及び〔16?18〕に対して請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1及び訂正事項2は、訂正前の請求項1及び16に「前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、コロイダルシリカであり、」との記載を追加することにより、訂正前の請求項1及び16に係る発明における「複数の粒子が凝集又は融着した形状の非球状シリカ粒子A」の種類をより具体的に特定し、さらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、明細書の発明の詳細な説明には、段落0022において、非球状シリカ粒子Aのシリカとして特定の形状をもったコロイダルシリカが記載され、段落0023において、当該形状の非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種類のシリカ粒子であることが記載されているから、訂正事項1及び訂正事項2により追加された上記記載に係る構成は、明細書に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。よって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕、〔16?18〕について訂正することを認める。 3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?18に係る発明(以下「本件発明1?18」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 なお、本件発明1、16の各構成には、「A」?「G」の符号を当審において付した。以下、構成A?構成Gと称する。 (本件発明1)【請求項1】 A:下記工程(1)を含む、磁気ディスク基板の製造方法。 (1)非球状シリカ粒子A、酸、酸化剤及び水を含有し、アルミナ砥粒を実質的に含まない研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び前記被研磨基板の少なくとも一方を動かして前記研磨対象面を粗研磨する工程。 B:ここで、前記非球状シリカ粒子Aが複数の粒子が凝集又は融着した形状であり、 B1:前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、コロイダルシリカであり、 C:前記被研磨基板がNi-Pめっきアルミニウム合金基板であり、 D:前記研磨パッドがベース層と発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドであり、その表面層の圧縮率が2.5%以上である。 (本件発明2)【請求項2】 前記研磨パッドの表面層がポリウレタン製である、請求項1記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明3)【請求項3】 前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、 金平糖型のシリカ粒子A1は、最も小さいシリカ粒子の粒径を基準にして、粒径が5倍以上異なる2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状であり、 異形型のシリカ粒子A2は、最も小さいシリカ粒子の粒径を基準にして、粒径が1.5倍以内の2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状であり、 異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3は、粒径が1.5倍以内の2つ以上の粒子が凝集又は融着した粒子に、さらに、凝集又は融着した前記粒子の最も小さいシリカ粒子の粒径を基準にして粒径が1/5以下の小さな粒子が凝集又は融着した形状である、請求項1又は2に記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明4)【請求項4】 前記非球状シリカ粒子Aの電子顕微鏡で測定される粒子の絶対最大長の平均が、80.0nm以上500.0nm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明5)【請求項5】 研磨液組成物が電子顕微鏡で測定して得られる粒子の絶対最大長を直径とする円の面積bを電子顕微鏡観察で測定して得られる該粒子の投影面積aで除して100を乗じた面積率(b/a×100)が110.0?200.0%であるシリカ粒子を全シリカ粒子に対して30.0質量%以上含有する、請求項1から4のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明6)【請求項6】 前記研磨パッドが連続発泡タイプの研磨パッドである、請求項1から5のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明7)【請求項7】 前記研磨パッドの表面部材がポリウレタンエラストマーを含む、請求項1から6のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明8)【請求項8】 前記非球状シリカ粒子Aが水ガラス法で製造されたシリカ粒子である、請求項1から7のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明9)【請求項9】 レーザー光散乱法で測定した研磨液組成物中のシリカ粒子の体積平均粒子径(D50)が、50nm以上500nm以下である、請求項1から8のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明10)【請求項10】 研磨液組成物中のシリカ粒子が金平糖型のシリカ粒子A1及び異形型のシリカ粒子A2を含み、A1/A2の質量比率が5/95?95/5の範囲にあり、 研磨液組成物中のシリカ粒子における前記粒子A1及びA2の合計量が80質量%以上である、請求項3から9のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明11)【請求項11】 研磨液組成物のpHが0.5?6.0である、請求項1から10のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明12)【請求項12】 研磨液組成物の酸が硫酸又はリン酸若しくはホスホン酸である、請求項1から11のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明13)【請求項13】 さらに、下記工程(2)及び工程(3)を含み、工程(1)と工程(3)を、互いに別の研磨機で行う請求項1から12のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (2)工程(1)で得られた基板を洗浄する工程。 (3)工程(2)で得られた基板をシリカ粒子Bを含有する研磨液組成物Bを用いて研磨対象面を研磨する工程。 (本件発明14)【請求項14】 工程(3)の研磨液組成物に含有されるシリカ粒子のレーザー光散乱法で測定した体積平均粒子径(D50)が、工程(1)の研磨液組成物に含有されるシリカ粒子のレーザー光散乱法で測定した体積平均粒子径(D50)より小さいシリカ粒子である、請求項13記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明15)【請求項15】 工程(1)の研磨液組成物は、球状シリカ粒子をさらに含み、 球状シリカ粒子と非球状シリカ粒子Aとの質量比(球状シリカ/非球状シリカA)は、0を超え30/70以下である、請求項1から14のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (本件発明16)【請求項16】 E:複数の粒子が凝集又は融着した形状の非球状シリカ粒子A、酸、酸化剤及び水を含有し、アルミナ砥粒を実質的に含まない研磨液組成物であって、 E1:前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、コロイダルシリカであり、 F:ベース層と圧縮率が2.5%以上の発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドを用い、 G:被研磨基板であるNi-Pめっきアルミニウム合金基板を粗研磨するための、研磨液組成物。 (本件発明17)【請求項17】 (1)請求項16に記載の研磨液組成物、及びベース層と圧縮率が2.5%以上の発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドを用い、被研磨基板であるNi-Pめっきアルミニウム合金基板の研磨対象面を研磨する工程、 (2)工程(1)で得られた基板を洗浄する工程、及び、 (3)工程(2)で得られた基板の研磨対象面をシリカ粒子Bを含有する研磨液組成物Bを用いて研磨する工程を有し、 前記工程(1)と(3)を互いに別の研磨機で行う磁気ディスク基板用の研磨方法。 (本件発明18)【請求項18】 請求項16に記載の研磨液組成物、及びベース層と圧縮率が2.5%以上の発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドを用い、被研磨基板であるNi-Pめっきアルミニウム合金基板の研磨対象面を研磨する第一の研磨機と、 前記第一研磨機で研磨した基板を洗浄する洗浄ユニットと、 シリカ粒子を含有する研磨液組成物を用いて洗浄後の基板を研磨する第二の研磨機とを備える磁気ディスク基板の研磨システム。 4 取消理由通知に記載した取消理由について (1)取消理由の概要 本件訂正前の請求項1?18に係る特許に対して、当審が平成31年1月18日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ア 請求項1、2、6、7、8、11、12、16に係る発明は、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1、2、6、7、8、11、12、16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 イ 請求項1?18に係る特許は、特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 甲第1号証:特開2005-1019号公報 甲第2号証:特開2002-327170号公報 甲第3号証:特開平9-204658号公報 甲第4号証:特開2008-142839号公報 (2)甲号証の記載 (2-1)甲第1号証について (2-1-1)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、次の記載がある。なお、以下の下線は当審で付したものである。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、研磨液組成物と研磨パッドを用いた基板の製造方法、研磨方法及び微小うねりの低減方法に関する。」 「【0011】 ここでいう、微小うねりとは、粗さとうねりの中間の波長を持つ表面の凹凸であり、短波長うねり(波長50?500μmのうねり)、長波長うねり(波長500μm?5mmのうねり)に分類される。」 「【0014】 本発明に用いられる研磨パッドとしては、平均気孔径が0.01?35μmの表面部材を有するものであれば、その構造について特に限定はなく、例えば、「CMP技術基礎実例講座シリーズ第2回メカノケミカルポリシング(CMP)の基礎と実例(ポリシングパッド編)1998年5月27日資料 グローバルネット株式会社編」、「CMPのサイエンス 柏木正広編 株式会社サイエンスフォーラム 第4章」に記載されるようなスエードタイプ、不織布タイプ、ポリウレタン独立発泡タイプ及びこれらを積層した二層構造タイプがあるが、表面粗さ、微小うねり、表面欠陥であるマイクロスクラッチ、幅広スクラッチを低減する観点からは、スエードタイプが好ましい。ここで、スエードタイプとは、少なくともベース層と発泡した表面層とを有する構造の研磨パッドをいう。ベース層の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高硬度樹脂が好ましい。また、表面層の材質としてはポリウレタンが好ましい。スエードタイプの研磨パッドの例としては、特に限定はなく、例えば、特開平11-335979号公報、特開2001-62704号公報に記載のものが挙げられる。」 「【0016】 また、本発明で用いられる研磨液組成物は、研磨材と水とを含有する研磨液組成物であって、該研磨材は、研磨用に一般に使用されている研磨材を使用することができる。該研磨材として、金属;金属又は半金属の炭化物、窒化物、酸化物、ホウ化物;ダイヤモンド等が挙げられる。金属又は半金属元素は、周期律表(長周期型)の2A、2B、3A、3B、4A、4B、5A、6A、7A又は8A族由来のものである。研磨材の具体例として、酸化アルミニウム、炭化珪素、ダイヤモンド、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ等が挙げられ、これらを1種以上使用することは研磨速度を向上させる観点から好ましい。中でも、酸化アルミニウム、シリカ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等が、半導体ウエハや半導体素子、磁気記録媒体用基板等の精密部品用基板の研磨に適している。酸化アルミニウムについては、α、θ、γ等種々の結晶系が知られているが、用途に応じ適宜選択、使用することができる。この内、シリカ、特にコロイダルシリカは、より高度な平滑性を必要とする高記録密度メモリー磁気ディスク用基板の最終仕上げ研磨用途や半導体デバイス基板の研磨用途に適している。 【0017】 また、本発明においては、表面粗さ(Ra 、Rmax) 、微小うねりを低減し、スクラッチ等の表面欠陥を減少させて、表面品質を向上させる観点から、研磨材としてシリカを用いることがより好ましい。シリカとしては、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、表面修飾したシリカ等が挙げられ、中でも、コロイダルシリカが好ましい。なお、コロイダルシリカは、例えば、ケイ酸水溶液から生成させる製法により得ることができる。」 「【0045】 また、本発明に用いられる研磨液組成物は、研磨速度の向上、表面粗さ(Ra、Rmax)や微小うねりの低減の観点から、さらに酸化剤を含有してもよい。酸化剤としては、共立出版刊「化学大辞典3」P910に記載されている酸化剤を使用できる。この中でも、過酸化水素、硝酸鉄(III)、過酢酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸鉄(III)及び硫酸アンモニウム鉄(III)が好ましい。表面に金属イオンが付着せず汎用に使用され安価であるという観点から過酸化水素が特に好ましい。これらの酸化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。」 「【0047】 また、前記研磨液組成物は、研磨速度の向上、表面粗さ(Ra、Rmax)や微小うねりの低減及びスクラッチ等の表面欠陥を減少させる観点から、酸及び/又はその塩を含有してもよい。酸及び/又はその塩としては、その酸のpK1が2以下の化合物が好ましく、微小スクラッチを低減する観点から、pK1が1.5以下、より好ましくは1以下、最も好ましくはpK1で表せない程の強い酸性を示す化合物が望ましい。その例としては、改訂4版 化学便覧(基礎編)II、pp316-325(日本化学会編)に記載の酸が挙げられ、中でも、幅広スクラッチを低減する観点から、無機酸や有機ホスホン酸が好ましい。また、無機酸の中では、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸がより好ましい。有機ホスホン酸の中では、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)がより好ましい。」 「【0058】 【実施例】 (被研磨物) 被研磨基板として、Ni-Pメッキされた基板をアルミナ研磨材を含有する研磨液であらかじめ粗研磨し、基板表面粗さ(Ra)1nmとした厚さ1.27mmの95mmφのアルミニウム合金基板を用いて研磨評価を行った。」 (2-1-2)甲第1号証に記載の技術的事項 上記記載から、甲第1号証には、以下(ア)?(オ)の技術的事項が記載されているものと認められる。 (ア)段落0001によれば、研磨液組成物と研磨パッドを用いた基板の製造方法が記載されている。 (イ)段落0014によれば、前記研磨パッドとして、ベース層とポリウレタンを材質とする発泡した表面層とを有する構造を備えたスエードタイプのものを用いることが記載されている。 (ウ)段落0016、0045、0047によれば、前記研磨液組成物は、研磨材と水、酸化剤、ホスホン酸や硫酸等の酸とを含有するものであることが記載されている。 (エ)段落0017によれば、長波長うねり(波長500μm?5mmのうねり)を含む微小うねりを低減し、スクラッチ等の表面欠陥を減少させて、表面品質を向上させる観点から、前記研磨材としてコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、表面修飾したシリカ等を用いることが記載されている。 (オ)段落0058によれば、被研磨基板として、Ni-Pメッキされた基板をアルミナ研磨材を含有する研磨液であらかじめ粗研磨したアルミニウム合金基板を用いることが記載されている。 (2-1-3)引用発明 以上より、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。なお、各構成の符号(a)?(e)は、説明のために当審が付したものであり、以下、構成a?構成eと称する。 (引用発明) (a)研磨液組成物と研磨パッドを用いた基板の製造方法であって、 (b)前記研磨パッドとして、ベース層とポリウレタンを材質とする発泡した表面層とを有する構造を備えたスエードタイプのものを用い、 (c)前記研磨液組成物は、研磨材と水、酸化剤、ホスホン酸や硫酸等の酸とを含有するものであり、 (d)長波長うねり(波長500μm?5mmのうねり)を含む微小うねりを低減し、スクラッチ等の表面欠陥を減少させて、表面品質を向上させる観点から、前記研磨材としてコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、表面修飾したシリカ等を用い、 (e)被研磨基板として、Ni-Pメッキされた基板をアルミナ研磨材を含有する研磨液であらかじめ粗研磨したアルミニウム合金基板を用いる (a)方法。 (2-2)甲第2号証及び甲第3号証について (2-2-1)甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、次の記載がある。なお、以下の下線は当審で付したものである。 「【0007】 【発明の実施の形態】本発明の研磨液組成物は、前記のように、研磨材、酸化剤、研磨促進剤として有機ホスホン酸及び水を含有してなるものである。」 「【0010】また、本発明においては、表面粗さ(Ra 、Rmax) 、うねり(Wa)を低減し、スクラッチ等の表面欠陥を減少させて、表面品質を向上させる観点から、研磨材としてシリカ粒子を用いることがより好ましい。シリカ粒子としては、コロイダルシリカ粒子、ヒュームドシリカ粒子、表面修飾したシリカ粒子等が挙げられ、中でも、コロイダルシリカ粒子が好ましい。なお、コロイダルシリカ粒子は、例えば、ケイ酸水溶液から生成させる製法により得ることができる。」 「【0030】自然乾燥させたシリカ粒子にPt-Pdを蒸着させて、日立製作所(株)製電界効果走査型電子顕微鏡(FE-SEM:S-4000型)を用いて、視野中に500個程度のシリカ粒子が観察されるように倍率を3000倍?10万倍に調節し、一つの試料台について2点観察し写真を撮影する。撮影された写真(10.16 cm×12.7cm)をコピー機等によりA4サイズに拡大して、撮影されたすべてのシリカ粒子の粒径をノギス等により計測し集計する。この操作を数回繰り返して、計測するシリカ粒子の数が2000個以上になるようにする。SEMによる測定点数を増やすことは、正確な粒径分布を求める観点からより好ましい。測定した粒径を集計し、小さい粒径から順にその頻度(%)を加算してその値が10% となる粒径をD10 、同じく50% となる粒径をD50 、90% となる粒径をD90 として本発明における個数基準の粒径分布を求めることができる。尚、ここでいう粒径分布は一次粒子の粒径分布として求められる。但し、酸化アルミニウム、酸化セリウム、ヒュームドシリカ等の一次粒子が融着した二次粒子が存在している場合においては、その二次粒子の粒径に基づいて、粒径分布を求めることができる。」 (2-2-2)甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、次の記載がある。なお、以下の下線は当審で付したものである。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータ等の記憶装置に使用される磁気ディスク基板、特にNiPメッキしたアルミディスク基板を高鏡面に研磨することができ、高密度な磁気ディスク基板を製造するのに適した研磨用組成物及び磁気ディスク基板の研磨方法に関する。」 「【0006】 【発明の実施の形態】本発明に用いるヒュームドシリカ粒子は、揮発性シラン化合物(一般には四塩化ケイ素が用いられる。)を酸素と水素の混合ガスの炎の中(1000℃内外)で加水分解させたもので、極めて微細で高純度なシリカ粒子である。例えばイオン交換法(ケイ酸ナトリウムとカチオン交換樹脂とを反応させて得た超微粒シリカを粒子成長させて作る。)などで得られるコロイダルシリカと比べると、コロイダルシリカが個々に分散した一次粒子として存在するのに対し、ヒュームドシリカは数nm?100nm程度の一次粒子が多数凝集して鎖状につながり0.1?10μmの二次粒子を形成している。この二次粒子の形成により研磨パッドヘの保持力が高くなり、研磨レートを飛躍的に向上することができる。上記ヒュームドシリカは一次粒子の平均粒子径が5?120nmであることが好ましい。平均粒子径が5nm未満では加工レートが著しく低く、また120nmより大きい粒子は工業的に安定に製造することが難しいという傾向があるからである。また、ヒュームドシリカの研磨スラリーへの添加量は、1?40重量%が望ましい。添加量が1重量%未満では研磨レー卜が著しく低く、また40重量%を越えても研磨レートの向上が見られないだけでなく、ゲル化し易くなる傾向があるからである。」 (2-2-3)甲第2号証及び甲第3号証に記載の技術事項 上記記載から、甲第2号証及び甲第3号証には、以下の技術事項(以下、「甲2甲3技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 (甲2甲3技術) 磁気ディスク基板を研磨する研磨液組成物において、研磨材として用いるヒュームドシリカ粒子は、「非球状」かつ「複数の粒子が凝集又は融着した形状」であること。 (2-3)甲第4号証について (2-3-1)甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、次の記載がある。なお、以下の下線は当審で付したものである。 「【0010】 本発明で使用する研磨パッドは、パッド表面の気孔部の平均気孔径が60μm以下、かつパッド表面積に占める気孔部の面積割合が60%以下であり、圧縮率が3?20%である。かかる特徴を有する研磨パッドを用いて研磨することにより、研磨後の基板の微小うねりを低減できる。よって、本方法で製造された磁気ディスク基板を用いると、磁気ヘッドの浮上量を低減できるため、磁気ディスク基板の記録密度向上が可能となる。なお、ここでいう「微小うねり」とは、粗さとうねりの中間の波長を持つ表面の凹凸であり、本明細書においては、波長500μm?5mmのうねりを指す。」 「【0031】 <研磨パッドの構造> 研磨パッドとしては独立発泡タイプと連続発泡タイプの研磨パッドが使用できるが、研磨屑の排出性の観点から連続発泡タイプのものが好ましく使用される。連続発泡タイプの研磨パッドとしては、例えば、「CMP技術基礎実例講座シリーズ第2回メカノケミカルポリシング(CMP)の基礎と実例(ポリシングパッド編)1998年5月27日資料 グローバルネット株式会社編」、あるいは「CMPのサイエンス 柏木正広編 株式会社サイエンスフォーラム 第4章」に記載されたような研磨パッドが使用できる。連続発泡タイプには、さらにスエードタイプと不織布タイプがあるが、研磨時の安定的な砥粒の保持性と研磨屑の排出性、つまり生産の安定性の観点、及び微少うねり低減の観点から、スエードタイプがより好ましい。ここでスエードタイプとは、特開平11-335979に記載されているような、ベース層とベース層に垂直な紡錘状気孔を有する発泡層とを有する構造のことをいう。」 「【0044】 (研磨方法) 厚さ1.27mm、外径95mmのNi-Pメッキされたアルミニウム合金からなる基板の表面を両面加工機により、上記各研磨液組成物を用いて以下の設定条件で研磨し、磁気記録媒体用基板として用いられるNi-Pメッキされたアルミニウム合金基板の研磨物を得た。なお、研磨前の上記基板は、「Zygo NewView5032」を用いた測定における短波長うねり(波長:50?400μm)が3.8nmであり、同測定による長波長うねり(波長:0.4?2mm)が1.6nmであった。」 (2-3-2)甲第4号証に記載の技術事項 上記記載から、甲第4号証には、以下の技術事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 (甲4技術事項) 「磁気ディスク基板の研磨工程で使用する研磨パッドであって、被研磨基板がNi-Pメッキされたアルミニウム合金からなる基板であり、スエードタイプであり、圧縮率が3?20%であり、研磨後の基板の波長500μm?5mmのうねりである微小うねりを低減できる研磨パッド。」 (3)当審の判断 (3-1)特許法第29条第2項について (3-1-1)本件発明1について (3-1-1-1)対比 本件発明1の構成A?構成Dを引用発明の構成a?構成eと対比する。 (構成Cについて) 引用発明は、構成eの被研磨基板が、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板であるから、「被研磨基板がNi-Pめっきアルミニウム合金基板」である点で本件発明1の構成Cと一致する。 (構成A、構成B、構成B1について) 上記(構成Cについて)のとおり、引用発明の構成eの被研磨基板は、Ni-Pめっきアルミニウム合金基板である点で、本件発明1の構成Cの被研磨基板と一致するから、構成eの被研磨基板に対応する構成aの「基板」は、構成Cの被研磨基板に対応する構成Aの「磁気ディスク基板」に相当する。よって、構成aの「基板の製造方法」は、構成Aの「磁気ディスク基板の製造方法」に相当する。 そして、構成aの「研磨液組成物と研磨パッドを用いた」が、「研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び前記被研磨基板の少なくとも一方を動かして前記研磨対象面を研磨する工程」を、基板の製造方法に含んでいることは、当業者に明らかな事項である。よって、構成aは、構成Aの「研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び前記被研磨基板の少なくとも一方を動かして前記研磨対象面を研磨する工程」を含む磁気ディスク基板の製造方法に相当する。 また、構成cの「研磨液組成物」は、「研磨材と水、酸化剤、ホスホン酸や硫酸等の酸とを含有するもの」であって、前記「研磨材」として「コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、表面修飾したシリカ等」(構成d)を用いているから、「シリカ粒子A、酸、酸化剤及び水を含有し、アルミナ砥粒を実質的に含まない研磨液組成物」である点で、構成Aと共通する。 しかしながら、研磨液組成物に含まれるシリカ粒子Aについて、本件発明1では「非球状」かつ「前記非球状シリカ粒子Aが複数の粒子が凝集又は融着した形状」(構成B)であり、さらに「前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、コロイダルシリカ」(構成B1)であるのに対し、引用発明の「コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、表面修飾したシリカ等」(構成d)では当該特定がなされていない点で、両者は相違する。 また、引用発明の構成eは、「被研磨基板として、Ni-Pメッキされた基板をアルミナ研磨材を含有する研磨液であらかじめ粗研磨したアルミニウム合金基板を用いる」というものであるから、アルミナ研磨材を含有する研磨液であらかじめ粗研磨した基板を研磨するものである。よって、被研磨基板の研磨について、本件発明1では「粗研磨」であるのに対し、引用発明では「アルミナ研磨材を含有する研磨液であらかじめ粗研磨した後の研磨」である点で、両者は相違する。 (構成Dについて) 引用発明の構成bの研磨パッドは、「ベース層とポリウレタンを材質とする発泡した表面層とを有する構造を備えたスエードタイプのもの」であるから、「ベース層と発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッド」である点で、構成Dと一致する。 しかしながら、引用発明は、研磨パッドの圧縮率が特定されておらず、研磨パッドの圧縮率について、本件発明1では「表面層の圧縮率が2.5%以上である」のに対し、引用発明では当該特定がされていない点で、両者は相違する。 (3-1-1-2)一致点、相違点 以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。 (一致点) A’:下記工程(1)を含む、磁気ディスク基板の製造方法。 (1)シリカ粒子A、酸、酸化剤及び水を含有し、アルミナ砥粒を実質的に含まない研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び前記被研磨基板の少なくとも一方を動かして前記研磨対象面を粗研磨する工程。 C:前記被研磨基板がNi-Pめっきアルミニウム合金基板であり、 D’:前記研磨パッドがベース層と発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドである。 (相違点1) 研磨液組成物に含まれるシリカ粒子Aについて、本件発明1は、「非球状」かつ「前記非球状シリカ粒子Aが複数の粒子が凝集又は融着した形状」であり、さらに「前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、コロイダルシリカ」であるのに対し、引用発明の「コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、表面修飾したシリカ等」は、当該特定がなされていない点。(構成B及び構成B1) (相違点2) 被研磨基板の研磨について、本件発明1では「粗研磨」であるのに対し、引用発明では「アルミナ研磨材を含有する研磨液であらかじめ粗研磨した後の研磨」である点。(構成A) (相違点3) 研磨パッドの圧縮率について、本件発明1では「表面層の圧縮率が2.5%以上である」のに対し、引用発明では当該特定がされていない点。(構成D) (3-1-1-3)判断 上記相違点のうち、まず相違点1について検討する。 研磨液組成物において研磨材として用いる非球状シリカ粒子として、「非球状」かつ「複数の粒子が凝集又は融着した形状」であるシリカ粒子は、甲2甲3技術事項にあるとおり、周知の技術事項である。しかしながら、研磨液組成物に含まれる非球状シリカ粒子として、「金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子」であるコロイダルシリカ粒子を用いることは、甲第2号証及び甲第3号証には記載されていない。また、当該事項は甲第4号証にも記載されていない。よって、引用発明は研磨材としてコロイダルシリカを用いるものであるが、引用発明のコロイダルシリカを「金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子」とすることは、当業者であっても容易に想到しうるものとはいえない。 したがって、本件発明1は、その他の相違点である相違点2及び相違点3について検討するまでもなく、当業者であっても引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3-1-1-4)取消理由通知において採用しなかった甲号証について 平成30年11月27日に提出された特許異議申立書に記載された甲第5号証(特開2014-29754号公報(平成26年2月13日公開))及び甲第6号証(特開2014-29755号公報(平成26年2月13日公開))は、いずれも本件特許の出願(出願日:平成26年6月30日)より前であって優先権主張の日(平成25年12月3日)よりも後に公開された文献である。 しかしながら、上記相違点1に係る本件発明1の構成B及び構成B1に係る構成は、優先権主張の基礎とされた出願である特願2013-250300号の願書に最初に添付した明細書に記載されていた構成である。したがって、本件発明1の構成B及び構成B1に係る構成についての容易想到性の判断において、本件特許の優先権主張の日より後に公開された甲第5号証及び甲第6号証を用いることはできない。 (3-1-2)本件発明2、6、7、8、11、12について 本件発明2、6、7、8、11、12は、本件発明1を引用するものであるから、上記(3-1-1)と同様の理由により、当業者であっても引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3-1-3)本件発明16について 本件発明16の研磨液組成物は、本件発明1の方法で用いられる研磨液組成物と同じ構成を有するから、上記(3-1-1)と同様の理由により、当業者であっても引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3-2)特許法第36条第6項第1号について 当審が平成31年1月18日に特許権者に通知した特許法第36条第6項第1号に係る取消理由は、本件発明1の「複数の粒子が凝集又は融着した形状の非球状シリカ粒子A」において、異形型及び金平糖型のコロイダルシリカ以外のものについてまで、発明が解決しようとする課題を解決できるとは示されておらず、また、当該解決できることが出願時の技術常識から明らかであるともいえないから、本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでない、というものである。 しかしながら、本件訂正により訂正された請求項1は、上記構成B1が追加されたことにより、非球状シリカ粒子Aが異形型及び金平糖型のコロイダルシリカに限定されているから、訂正後の本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。 また、本件発明1を引用する本件発明2?15、本件発明1の方法で用いられる研磨液組成物と同じ構成を有する本件発明16、及び本件発明16を引用する本件発明17、18についても、上記と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1?18に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記工程(1)を含む、磁気ディスク基板の製造方法。 (1)非球状シリカ粒子A、酸、酸化剤及び水を含有し、アルミナ砥粒を実質的に含まない研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び前記被研磨基板の少なくとも一方を動かして前記研磨対象面を粗研磨する工程。 ここで、前記非球状シリカ粒子Aが複数の粒子が凝集又は融着した形状であり、 前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、コロイダルシリカであり、 前記被研磨基板がNi-Pめっきアルミニウム合金基板であり、 前記研磨パッドがベース層と発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドであり、その表面層の圧縮率が2.5%以上である。 【請求項2】 前記研磨パッドの表面層がポリウレタン製である、請求項1記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項3】 前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、 金平糖型のシリカ粒子A1は、最も小さいシリカ粒子の粒径を基準にして、粒径が5倍以上異なる2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状であり、 異形型のシリカ粒子A2は、最も小さいシリカ粒子の粒径を基準にして、粒径が1.5倍以内の2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状であり、 異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3は、粒径が1.5倍以内の2つ以上の粒子が凝集又は融着した粒子に、さらに、凝集又は融着した前記粒子の最も小さいシリカ粒子の粒径を基準にして粒径が1/5以下の小さな粒子が凝集又は融着した形状である、請求項1又は2に記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項4】 前記非球状シリカ粒子Aの電子顕微鏡で測定される粒子の絶対最大長の平均が、80.0nm以上500.0nm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項5】 研磨液組成物が電子顕微鏡で測定して得られる粒子の絶対最大長を直径とする円の面積bを電子顕微鏡観察で測定して得られる該粒子の投影面積aで除して100を乗じた面積率(b/a×100)が110.0?200.0%であるシリカ粒子を全シリカ粒子に対して30.0質量%以上含有する、請求項1から4のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項6】 前記研磨パッドが連続発泡タイプの研磨パッドである、請求項1から5のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項7】 前記研磨パッドの表面部材がポリウレタンエラストマーを含む、請求項1から6のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項8】 前記非球状シリカ粒子Aが水ガラス法で製造されたシリカ粒子である、請求項1から7のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項9】 レーザー光散乱法で測定した研磨液組成物中のシリカ粒子の体積平均粒子径(D50)が、50nm以上500nm以下である、請求項1から8のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項10】 研磨液組成物中のシリカ粒子が金平糖型のシリカ粒子A1及び異形型のシリカ粒子A2を含み、A1/A2の質量比率が5/95?95/5の範囲にあり、 研磨液組成物中のシリカ粒子における前記粒子A1及びA2の合計量が80質量%以上である、請求項3から9のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項11】 研磨液組成物のpHが0.5?6.0である、請求項1から10のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項12】 研磨液組成物の酸が硫酸又はリン酸若しくはホスホン酸である、請求項1から11のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項13】 さらに、下記工程(2)及び工程(3)を含み、工程(1)と工程(3)を、互いに別の研磨機で行う請求項1から12のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 (2)工程(1)で得られた基板を洗浄する工程。 (3)工程(2)で得られた基板をシリカ粒子Bを含有する研磨液組成物Bを用いて研磨対象面を研磨する工程。 【請求項14】 工程(3)の研磨液組成物に含有されるシリカ粒子のレーザー光散乱法で測定した体積平均粒子径(D50)が、工程(1)の研磨液組成物に含有されるシリカ粒子のレーザー光散乱法で測定した体積平均粒子径(D50)より小さいシリカ粒子である、請求項13記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項15】 工程(1)の研磨液組成物は、球状シリカ粒子をさらに含み、 球状シリカ粒子と非球状シリカ粒子Aとの質量比(球状シリカ/非球状シリカA)は、0を超え30/70以下である、請求項1から14のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。 【請求項16】 複数の粒子が凝集又は融着した形状の非球状シリカ粒子A、酸、酸化剤及び水を含有し、アルミナ砥粒を実質的に含まない研磨液組成物であって、 前記非球状シリカ粒子Aは、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種のシリカ粒子であって、コロイダルシリカであり、 ベース層と圧縮率が2.5%以上の発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドを用い、被研磨基板であるNi-Pめっきアルミニウム合金基板を粗研磨するための、研磨液組成物。 【請求項17】 (1)請求項16に記載の研磨液組成物、及びベース層と圧縮率が2.5%以上の発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドを用い、被研磨基板であるNi-Pめっきアルミニウム合金基板の研磨対象面を研磨する工程、 (2)工程(1)で得られた基板を洗浄する工程、及び、 (3)工程(2)で得られた基板の研磨対象面をシリカ粒子Bを含有する研磨液組成物Bを用いて研磨する工程を有し、 前記工程(1)と(3)を互いに別の研磨機で行う磁気ディスク基板用の研磨方法。 【請求項18】 請求項16に記載の研磨液組成物、及びベース層と圧縮率が2.5%以上の発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドを用い、被研磨基板であるNi-Pめっきアルミニウム合金基板の研磨対象面を研磨する第一の研磨機と、 前記第一研磨機で研磨した基板を洗浄する洗浄ユニットと、 シリカ粒子を含有する研磨液組成物を用いて洗浄後の基板を研磨する第二の研磨機とを備える磁気ディスク基板の研磨システム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-05-28 |
出願番号 | 特願2014-135361(P2014-135361) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(G11B)
P 1 651・ 851- YAA (G11B) P 1 651・ 537- YAA (G11B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中野 和彦 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 樫本 剛 |
登録日 | 2018-05-18 |
登録番号 | 特許第6340267号(P6340267) |
権利者 | 花王株式会社 |
発明の名称 | 磁気ディスク基板の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人池内アンドパートナーズ |
代理人 | 特許業務法人池内アンドパートナーズ |