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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1353167
異議申立番号 異議2017-701194  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-14 
確定日 2019-05-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6156940号発明「改善された耐剥離性を有するベールテープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6156940号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?11]、[12?15]について訂正することを認める。 特許第6156940号の請求項1、3、5、8ないし15に係る特許を取消す。 特許第6156940号の請求項2、4、6、7に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第6156940号(設定登録時の請求項の数は15。以下、「本件特許」という。)は、平成24年5月31日(パリ条約による優先権主張 2011年6月1日 フランス(FR))を国際出願日とする特願2014-513189号に係るものであって、平成29年6月16日に設定登録され、同年7月5日に特許掲載公報が発行された。
特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成29年12月14日、本件特許の請求項1ないし15に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当審において、平成30年2月26日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年5月28日付けで、訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正請求」という。)及び意見書を提出したので、同年6月1日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、同年6月27日付けで意見書を提出した。
そして、当審において、平成30年8月22日付けで取消理由<決定の予告>を通知したところ、特許権者からはなんら応答がなかったものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし5のとおりである。

訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「テープ」とあるうち、工程a)?e)の各工程における作用の対象について、その記載を「フィラメントの集合体」に訂正し、また、「前記テープの長さに平行な方向に延在し、最終テープの所望の幅より大きい幅を有する」とある記載を「最終テープの所望の長さに平行な方向に延在し、前記最終テープの所望の幅より大きい幅を有する」に訂正し、工程e)において「会合させる工程」とある記載を「会合させて、前記テープを形成する工程」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし11についても同様に訂正する。

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記テープの幅が、」とある記載を「前記フィラメントの集合体の幅が、」に訂正し、「50%超大きく、又はさらには少なくとも100%大きい」とある記載を「少なくとも50%大きい」に訂正する。
請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし11についても同様に訂正する。

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「テープ」とある記載を「フィラメントの集合体」に訂正する。
請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5ないし11についても同様に訂正する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「エントレインメント(entrainment)」とある記載を「飛沫同伴」に、また「エントレイン(entrain)される]とある記載を「飛沫同伴される」に、それぞれ訂正する。
請求項9を直接又は間接的に引用する請求項10ないし11についても同様に訂正する。

訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12に「フィラメントの集合体から構成されるテープ」とある記載を「フィラメントの集合体と、不織布と、を含むテープ」に訂正し、「前記テープのそれぞれの面が、ポリマー繊維から形成される不織布と会合しており」とある記載を「前記テープのそれぞれの面で、ポリマー繊維から形成される前記不織布と会合しており」に訂正する。
請求項12を直接又は間接的に引用する請求項13ないし15についても同様に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1) 訂正事項1について

ア この訂正は、訂正前の請求項1に記載の「テープ」とあるうち、工程a)?e)の各工程における作用の対象について、それが最終的に「テープ」となるものであるもののそれらの工程の時点では未だ「フィラメントの集合体」であることを明確にし、それらの工程の結果、最終的に「テープ」となることを明確にするものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 明細書の全体、特に段落【0015】?【0024】の記載において、本件特許の請求項1に係る発明の対象である「テープを調製する方法」の各過程が説明されているところ、明細書中の「テープ」という用語が、「テープを調製する方法」によって最終的に得られるものに限らず、「テープを調製する方法」の各過程の中間段階の対象物を指していることは、本件特許の請求項1に係る発明の技術分野に属する当業者にとって明らかである。したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1に規定されていた「テープを調製する方法」において、「テープ」が「フィラメントの集合体から構成され」ることが明確に規定されていたことから、この調製方法において、訂正前は「テープ」と記載されていた各工程の段階(調製の過程の段階)の作用の対象を「フィラメントの集合体」と明示したに過ぎない。すなわち、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2) 訂正事項2について

ア 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「テープ」の記載について、上記訂正事項1と同様に、本件特許の請求項2に係る発明の「テープを調製する方法」の各工程における作用の対象が、それらの工程の時点では未だ「フィラメントの集合体」であることを明確にするものである。また、特許請求の範囲の請求項2の「50%超大きく、またはさらには少なくとも100%大きい」との記載を「少なくとも50%大きい」と明確にするものである。すなわち、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 明細書の全体、特に段落【0015】?【0024】の記載において、本件特許の請求項2に係る発明の対象である「テープを調製する方法」の各過程が説明されているところ、明細書中の「テープ」という用語が、「テープを調製する方法」によって最終的に得られるものに限らず、「テープを調製する方法」の各過程の中間段階の対象物を指していることは、本件特許の請求項2に係る発明の技術分野に属する当業者にとって明らかである。また、明細書段落【0016】には、「調製過程のテープ(すなわち、『フィラメントの集合体』)の幅は、最終テープの所望の幅より50%超大き」いことが記載されている。したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項2は、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1に規定されていた「テープを調製する方法」において、「テープ」が「フィラメントの集合体から構成され」ることが明確に規定されていたことから、この調製方法において、訂正前は「テープ」と記載されていた各工程の段階(調製の過程の段階)の作用の対象を「フィラメントの集合体」と明示したに過ぎない。また、「50%超大きく、またはさらには少なくとも100%大きい」は、「50%超大きい」、「100%大きい」、「150%大きい」と解釈される要件を「または」で並列に記載しており、訂正事項2は、これを訂正後の「少なくとも50%大きい」と、最も制限の緩い要件のみで規定しているに過ぎない。すなわち、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3) 訂正事項3について

ア 訂正事項3は、訂正前の請求項4の「テープ」の記載について、上記訂正事項1と同様に、本件特許の請求項4に係る発明の「テープを調整する方法」の各工程における作用の対象が、それらの工程の時点では未だ「フィラメントの集合体」であることを明確にするものである。すなわち、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 明細書の全体、特に段落【0015】?【0024】の記載において、本件特許の請求項4に係る発明の対象である「テープを調製する方法」の各過程が説明されているところ、明細書中の「テープ」という用語が、「テープを調製する方法」によって最終的に得られるものに限らず、「テープを調製する方法」の各過程の中間段階の対象物を指していることは、本件特許の請求項4に係る発明の技術分野に属する当業者にとって明らかである。したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

ウ 訂正事項3は、訂正前の請求項4が直接に引用する訂正前の請求項1、または訂正前の請求項2を介して間接に引用する訂正前の請求項1に規定されていた「テープを調製する方法」において、「テープ」が「フィラメントの集合体から構成され」ることが明確に規定されていたことから、この調製方法において、訂正前は「テープ」と記載されていた各工程の段階(調製の過程の段階)の作用の対象を「フィラメントの集合体」と明示したに過ぎない。すなわち、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4) 訂正事項4について

ア 訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「エントレインメント(entrainment)」、「エントレイン(entrain)される」とある記載について、あえて日本語に直し「飛沫同伴する/される」とし、同様に「エントレインメント(entrainment)」を「飛沫同伴」とするものである。すなわち、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5) 訂正事項5について

ア 訂正事項5は、訂正前の請求項12の「テープ」の記載について、これが「ポリマー材料から形成された粉末が分布しているフィラメントの集合体」と「不織布」とを含むものであることを明確にするものである。すなわち、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 明細書の全体、特に段落【0015】?【0024】の記載において、本件特許の請求項1ないし11に係る発明の対象である「テープを調製する方法」の各過程が説明されているところ、明細書中の「テープ」という用語が、「テープを調製する方法」によって最終的に得られるものを指していることは、本件特許の請求項12に係る発明の技術分野に属する当業者にとって明らかである。したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ そして、当訂正事項5は、訂正前の請求項12に規定されていた「テープ」が最終的に「テープ」となったものそのものであって、「ポリマー材料から形成された粉末が分布しているフィラメントの集合体」と「不織布」とを含むものであることを明確にするものであり、当該訂正により訂正前の請求項12に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項12に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。

エ よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(6) 一群の請求項について

訂正前の請求項2?11は、直接または間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正後の請求項2ないし11は、訂正事項1によって請求項1が訂正されることから、訂正事項1に連動して訂正されるものである。従って、訂正事項1ないし4は、訂正前の請求項1ないし11という一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。
また、訂正前の請求項13?15は、直接または間接的に請求項12を引用しているものであって、訂正後の請求項13ないし15は、訂正事項5によって請求項12が訂正されることから、訂正事項5に連動して訂正されるものである。従って、訂正事項5は、訂正前の請求項12ないし15という一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。

3 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?11]、[12?15]について、訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明15」という。)は、平成30年5月28日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。

「【請求項1】
所与の幅を有するテープを調製する方法であって、前記テープが、前記テープの長さに平行な方向に延在し、それらの間にポリマー材料の粉末が分布しているフィラメントの集合体から構成され、前記テープのそれぞれの面がポリマー繊維の不織布と会合しているテープであって、前記方法が、連続して以下の工程:
a)前記フィラメントの集合体を扇形に拡張する工程;
b)最終テープの所望の長さに平行な方向に延在し、前記最終テープの所望の幅よりも大きい幅を有する強化フィラメントのフィラメントの集合体を供給する工程;
c)ポリマー材料から形成された粉末を、前記フィラメントの集合体の面の少なくとも一方の上に堆積させる工程;
d)前記堆積された粉末を少なくとも部分的に軟化させるために加熱し、次いで、前記フィラメントの集合体を締め付けて、その幅を所望の幅に調整し、前記粉末の少なくとも一部を前記フィラメント間の前記フィラメントの集合体の厚さに浸透させ、その幅を固定し、前記粉末による凝集性を与えるために前記テープを冷却する工程;
e)加熱接着によって、前記フィラメントの集合体のそれぞれの面を、ポリマー繊維から形成された不織布と会合させて、前記テープを形成する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記粉末が堆積されるとき、前記フィラメントの集合体の幅が、前記最終テープの所望の幅より少なくとも50%大きいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも工程d)からの出口まで、連続的な生産ラインで行われることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
工程c)の開始における前記フィラメントの集合体の幅が、扇形に拡張した後に得られる前記フィラメントの集合体の幅より少なくとも20%小さいことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程d)と工程e)の間にトラバース巻取工程を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末の重量が、前記最終テープの全重量(フィラメント+粉末+不織布)の0.5%から8%に相当することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記不織布の全重量が、前記最終テープの全重量(フィラメント+粉末+不織布)の15%未満に相当することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程e)において前記テープと会合する前記不織布の幅が、会合するときの前記テープの幅より大きいことと、前記テープのそれぞれの端部で、前記不織布の切断または高温昇華が行われることとを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記テープと、その端部のいずれかの側の前記切断部分との両方が、飛沫同伴または吸引手段によって飛沫同伴されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィラメントが、以下の材料、すなわち、カーボン、ガラス、アラミド、シリカ、セラミック、およびこれらの混合物から選択される材料から形成されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記不織布および前記粉末が、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミド-ブロックエーテルもしくはエステル、ポリフタルアミド、ポリエステル、コポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、フェノキシ、ブロックコポリマー、エポキシ、およびこれらの混合物からなるグループから選択される材料から形成されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
テープの長さに平行な方向に延在し、その間にポリマー材料から形成された粉末が分布しているフィラメントの集合体と、不織布と、を含むテープであって、前記粉末の少なくとも一部が、前記テープの厚さの中に位置しており、前記テープのそれぞれの面で、ポリマー繊維から形成される前記不織布と会合しており、前記テープの凝集性が、前記粉末と前記不織布との両方によって与えられる、テープ。
【請求項13】
前記テープの全長にわたって、前記テープの幅が、0.25mm未満である標準偏差を有することを特徴とする、請求項12に記載のテープ。
【請求項14】
その長手方向の端部上に切断された繊維を有しないことを特徴とする、請求項12または請求項13のいずれかに記載のテープ。
【請求項15】
前記粉末が、熱硬化性または熱可塑性ポリマーから形成され、前記不織布が、熱可塑性ポリマーから形成されることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか一項に記載のテープ。」

第4 取消理由の概要

平成30年2月26日付けで通知した取消理由は、概ね次のとおりである。

【理由1】 本件特許の請求項1?15についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
【理由2】 本件特許の請求項1、3、5、8、9、11ないし15に係る発明は、本件特許の優先日前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1、3、5、8、9、11ないし15についての特許は、特許を受けることができない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

・・・
1 刊行物
刊行物2: 国際公開第92/20521号(特許異議申立書の証拠方法である甲第2号証。以下、単に「甲2」という。)
刊行物1: 国際公開第2010/061114号(特許異議申立書の証拠方法である甲第1号証。以下、単に「甲1」という。)

第5 請求項1、3、5、8ないし15に係る特許を取消す理由

当審合議体は、以下述べるように、上記取消理由1の一部及び取消理由2には理由があると判断する。

1 取消理由2(特許法第29条第2項)について

(1) 甲2に記載されている事項

甲2(国際公開第92/20521号)には、以下の記載がある。なお、日本語訳については、甲2のパテントファミリーである特表平6-51054号公報の記載を利用した。

「1. A method for the production of an improved flexible towpreg comprising a plurality of towpreg plies, said towpreg plies comprising reinforcing filaments and matrix forming material, comprising the steps of:
(a) spreading a tow comprising a plurality of reinforcing filaments to expose said reinforcing filaments in a generally columnated manner;
(b) coating said reinforcing filaments with said matrix forming material in a manner causing interfacial adhesion of said matrix forming material to said reinforcing filaments; and
(c) forming said towpreg plies by liquefying said matrix forming material contacting said reinforcing filaments until said matrix forming material coats said reinforcing filaments.
2. The method as claimed in Claim 1, further comprising the step of:
(d) cooling said towpreg plies in a manner such that substantial cohesion between neighboring towpreg plies is prevented until said matrix forming material solidifies.
3. The method as claimed in Claim 2, further comprsing the step of: (e) splitting said coated reinforcing filaments from each other.
4. The method as claimed in Claim 1, further comprising the step of:
(d) forming a fusion coated towpreg tape by passing said fusion coated towpreg through a forming means.
5. The method as claimed in Claim 4, wherein said forming means imparts pressure to said fusion coated towpreg.
6. The method as claimed in Claim 5, wherein said step for forming a fusion coated towpreg tape is carried out at a temperature at which said matrix forming material is pliable.
7. The method as claimed in Claim 6 further comprising the step of cooling said towpreg plies in a manner such that substantial cohesion between neighboring towpreg plies is prevented until said fusion coated towpreg is formed into said fusion coated towpreg tape.
8. The method as claimed in Claim 4, wherein said tape forming step is accomplished by means of two or more cooperating rollers, at least one of said rollers having a generally protruding circumferential structure and at least one of said rollers having a generally intruding circumferential structure, said fusion coated towpreg passing between the intruding circumferential structure and the protruding circumferential structure, a force being imparted to at least one of said rollers thereby imparting said force to said fusion coated towpreg as it passes between said roller.
9. The method as claimed in Claim 4, wherein said tape forming step is accomplished by means of a roller having a generally intruding circumferential structure, said fusion coated towpreg being held in tension and within at least a portion of said intruding circumferential structure.
10. The method as claimed in Claim 2, further comprising the steps of:
(e) overlapping layers comprising at least one of said towpregs in a manner such that a multilayer configuration of towpregs is formed; and
(f) joining said overlapped towpregs together to form a non-woven towpreg fabric.
・・・
27. The method as claimed in Claims 1, 2, 3, 4,10, 15, or 18, wherein said matrix forming material is in powder form when contacted with said reinforcing filaments.
・・・
29. The method as claimed in Claims 1, 2, 3, 4,10,15,or 18, wherein said matrix forming material is selected from the group consisting of ABS group, acetals, acrylics, alkyd polyesters, allyls, aminos, epoxies, fluoroplastics, furans, melamines,nylons, phenolics, phenylene oxides and ethers, polyamides, polyamide-imides, polybutylenes, polycarbonates, polyesters, polyetheretherketones (PEEK), polyetherketoneketones (PEKK), polyetherketones (PEK), polyetherimides, polyethylenes, polyimides, polymethylpentenes, polyphenylene sulfides, polypropylenes, polystyrenes, polyurethanes, sulfones, ureas and vinyls, and blends thereof, copper, low melting-point metals, and precursor ceramics.
・・・
54. The method as claimed in Claims 1, 2, 3, 4, 10, 15, or 18, wherein said coating is accomplished by an electrostatic fluidized bed coating means.
55. The method as claimed in Claims 1, 2, 3, 4, 25 10, 15, or 18, wherein said coating is accomplished by a powder spray coating means.
56. An improved flexible towpreg comprising a plurality of towpreg " plies, said towpreg plies comprising reinforcing filaments and matrix forming material; said 0 reinforcing filaments being spread in a generally columnated manner and further being substantially wetout by said matrix forming material such that said towpreg plies are substantially consolidated composite articles, and said towpreg plies having an average thickness less 5 than 100 microns.
・・・
59. A non-woven towpreg fabric .comprising a plurality of the towpregs claimed in Claim 56, wherein said towpregs are arranged in overlapping layers comprising at least one towpreg and are joined together resulting in said non-woven towpreg fabric.
60. A multidimensional preform fabricated from the non-woven towpreg fabric as claimed in Claim 59, wherein said towpregs are arranged in overlapping layers comprising at least one towpreg and are joined together in a desired configuration to form said preform. 」(特許請求の範囲)
(1.強化フィラメントおよびマトリックス形成材料からなる複数のトウプレグ層からなる改良された柔軟なトウプレグを製造する方法であって、
(a)複数の強化フィラメントからなるトウを延展して、該強化フィラメントをほぼ柱状に露出させ、
(b)該マトリックス形成材料を該強化フィラメントに層間接着させるような仕方で該強化フィラメントを該マトリックス形成材料で被覆し、
(c)該マトリックス形成材料が該強化フィラメントを被覆するまで、該強化フィラメントと接触する該マトリックス形成材料を液化することによって該トウプレグ層を形成する各段階からなることを特徴とする方法。
2.(d)該マトリックス形成材料が凝固するまで隣接するトウプレグ層どうしの実質的な接着を防止するような仕方で該トウプレグ層を冷却する段階をさらに含む請求の範囲第1項記載の方法。
3.(e)該被覆された強化フィラメントどうしを互いに分割する段階をさらに含む請求の範囲第2項記載の方法。
4.(d)該融着被覆されたトウプレグを成形手段に通すことによって融着被覆されたトウプレクテープを成形する段階をさらに含む請求の範囲第1項記載の方法。
5.該成形手段が該融着被覆されたトウプレグに圧力を加える請求の範囲第4項記載の方法。
6.融着被覆されたトウプレグテープを成形する該段階を、該マトリックス形成材料が柔軟であるところの温度で実施する請求の範囲第5項記載の方法。
7.該融着被覆されたトウプレクが該融着被覆されたトウプレクテープに成形されるまで隣接するトウプレク層どうしの実質的な接着を防止するような仕方で該トウプレク層を冷却する段階をさらに含む請求の範囲第6項記載の方法。
8.該テープ成形段階を2個またはそれ以上の係合するローラによって実施し、該ローラの少なくとも1個が全体的に突出する円周構造を有するものであり、該ローラの少なくとも1個が全体的にくぼんだ円周構造を有するものであり、該融着被覆されたトウプレグをくぼんだ円周構造と突出する円周構造との間に通し、
該融着被覆されたトウプレグが該ローラの間を通過するときに、該ローラの少なくとも1個に力を加えることによって該力を該融着被覆されたトウプレグに加える請求の範囲第4項記載の方法。
9.該テープ成形段階を、全体的にくぼんだ円周構造を有するローラによって実施し、該融着被覆されたトウプレグを、張力を加えた状態で、該くぼんだ円周構造の少なくとも一部の中に保持する請求の範囲第4項記載の方法。
10.(e)多層構造のトウプレグが形成されるような仕方で該トウプレグ少なくとも1個からなる層を重ね、(f)該重ねたトウプレグどうしを結合して不織トウプレグ布を形成する段階をさらに含む請求の範囲第2項記載の方法。
・・・
27.該マトリックス形成材料が、該強化フィラメントと接触するとき、粉末形態にある請求の範囲第1項、第2項、第3項、第4項、第10項、第15項または第18項記載の方法。
・・・
29.該マトリックス形成材料が、ABS群、アセタール樹脂類、アクリル樹脂類、アルキドポリエステル類、アリル樹脂類、アミノ化合物類、エポキシ樹脂類、フッ化プラスチック類、フラン樹脂類、メラニン樹脂類、ナイロン類、フェノール樹脂類、フェニレンオキシド類およびエーテル類、ポリアミド頬、ポリアミ
ド-イミド類、ポリブチレン類、ポリカーボネート類、ポリエステル頬、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)類、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)類、ポリエーテルケトン(PEK)類、ポリエーテルイミド類、ポリエチレン類、ポリイミド類、ポリメチルベンテン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリプロピレン類、ポリスチレン類、ポリウレタン類、スルホン類、尿素樹脂類およびビニル樹脂類ならびにそれらの混合物、銅、低融点金属ならびに前駆物質セラミクスからなる群より選択されるものである請求の範囲第1項、第2項、第3項、第4項、第10項、第15項または第18項記載の方法。
・・・
54.静電流動床被覆手段によって該被覆を実施する請求の範囲第1項、第2項、第3項、第4項、第10項、第15項または第18項記載の方法。
55.粉末吹付け被覆手段によって該被覆を実施する請求の範囲第1項、第2項、第3項、第4項、第10項、第15項または第18項記載の方法。
56.改良された柔軟なトウプレグであって、複数のトウプレグ層からなり、該トウプレグ層が、強化フィラメントおよびマトリックス形成材料からなり、該トウプレグ層が実質的に固化した複合品になるよう、該強化材料がほぼ柱状に延展され、さらに、該マトリックス形成材料によって実質的に湿潤されており、該ト
ウプレグ層の平均厚さが100ミクロン未満であることを特徴とする改良された柔軟なトウプレク。
・・・
59.請求の範囲第56項記載の複数のトウプレクからなる不織トウプレグ布であって、該トウプレグを、少なくとも1個のトウプレグからなる重なり合う層に配設し、結合して該不織トウプレグ布にしたものであることを特徴とする不織トウプレグ布。
60.請求の範囲第59項記載の不織トウプレグ布から製造された多次元プレフォームであって、該トウプレグを、少なくとも1個のトウプレグからなる重なり合う層に配設し、所望の形状に結合して該プレフォームに形成したものであることを特徴とする多次元プレフォーム。)(特許請求の範囲)

(2) 甲2に記載された発明
甲2には、上記(1)の記載から、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6として、その記載を整理すると、次の発明(以下、「甲2発明A」という。)が記載されている。

「強化フィラメントおよびマトリックス形成材料からなる複数のトウプレグ層からなる改良された柔軟なトウプレグテープを製造する方法であって、
(a)複数の強化フィラメントからなるトウを延展して、該強化フィラメントをほぼ柱状に露出させ、
(b)該マトリックス形成材料を該強化フィラメントに層間接着させるような仕方で該強化フィラメントを該マトリックス形成材料で被覆し、
(c)該マトリックス形成材料が該強化フィラメントを被覆するまで、該強化フィラメントと接触する該マトリックス形成材料を液化することによって該トウプレグ層を形成する段階、
(d)該融着被覆されたトウプレグを成形手段に通すことによって融着被覆されたトウプレグテープを成形する段階であって、該成形手段が該融着被覆されたトウプレグに圧力を加えるものであり、融着被覆されたトウプレグテープを成形する該段階を、該マトリックス形成材料が柔軟であるところの温度で実施する、
各段階からなる方法。」

また、甲2の上記(1)の請求項56、58、59、60の記載を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明B」という。)が記載されている。

「改良された柔軟なトウプレグテープであって、複数のトウプレグ層からなり、該トウプレグ層が、強化フィラメントおよびマトリックス形成材料からなり、該トウプレグ層が実質的に固化した複合品になるよう、該強化材料がほぼ柱状に延展され、さらに、該マトリックス形成材料によって実質的に湿潤されており、該トウプレグ層の平均厚さが100ミクロン未満である改良された柔軟なトウプレグからなる既知の寸法形状をもつ改良された柔軟なトウプレグテープであって、該トウプレグ層が該トウプレグテープよりも少ない空隙を有するように該トウプレグ層が該トウプレグテープに成形されている改良された柔軟なトウプレグテープであって、
(a)強化フィラメントおよびマトリックス形成材料を用意し、
(b)該強化フィラメントを該マトリックス形成材料で被覆し、
(c)該強化フィラメントと接触する該マトリックス形成材料が液化し、該強化フィラメントを被覆するよう、該強化フィラメントおよび該マトリックス形成材料を加熱することにより、融着被覆されたトウプレグを形成し、
(d)該融着被覆されたトウプレグを成形手段に通すことにより、該融着被覆されたトウプレグに成形力を加えて、融着被覆されたトウプレグテープを製造する各段階からなる方法によって製造される改良された柔軟なトウプレグテープ。」

(3) 本件特許発明1と甲2発明Aとの対比・判断
本件特許発明1と甲2発明Aとを対比する。
甲2発明Aの「強化フィラメント」は、本件特許発明1の「フィラメント」に相当し、甲2発明Aの「マトリクス形成材料」は、甲2の請求項29の記載から、本件特許発明1の「ポリマー材料」に相当する。
甲2発明Aの「(b)該マトリックス形成材料を該強化フィラメントに層間接着させるような仕方で該強化フィラメントを該マトリックス形成材料で被覆」する工程についての、甲2における具体的な記載である「次に、トウフィラメント13は被覆システム20に入り、そこでマトリックス材料がトウフィラメント13に塗被される。トウフィラメント13が被覆システム20に入り、そこを通過するとき、トウフィラメント13は延展状態に維持される。多くの異なる被覆システム20が有用であり、これらを以下の実施例として論じる。粉末吹付け被覆システムおよび静電流動床システムが好ましく、粉末吹付け被覆システムが通常は運用するのにより低廉である。他に種々の被覆システム20、例えば湿潤粉末、ホットメルトおよび溶液被覆を使用することができる。」(第33頁1?11行)との記載から、甲2発明Aにおいても、マトリクス形成材料(ポリマー材料)の粉末を強化フィラメント(本件特許発明1の「フィラメント集合体の面」に相当)の上に堆積させる工程を備えており、甲2発明Aの「トウプレグテープ」は、ポリマー材料の粉末が分布しているフィラメントの集合体から構成されているといえる。
甲2発明Aの「強化フィラメントからなるトウを延展して」いる工程は、甲2の「トウ11は、送出しホイール10を離れたのち、第一のローラ群17に入り、そこでフィラメント13が延展される。この第一のローラ群17の配置は、トウ11が第一のローラ群17の中を、連続するローラの上下を通過しながら縫うように進むことを可能にし、トウフィラメント13に一定の張力を加え、また、トウフィラメント13の振動を軽減することに役立つ。次に、トウ11はエアコーム19に入り、そこで強制空気がフィラメント13をさらに延展させる。エアコーム19を離れたのち、トウ11は第二のローラ群17に入り、そこでフィラメント13がさらに延展される。例えば、柔軟なトウプレグを維持するためには、3,000フィラメント分のトウが通常は1インチを超える幅にまで延展される。この第二のローラ群17の配置は、同じ理由から、第一のローラ群の配置と同様である。この第二のローラ群の最後のローラもまた、繊維が被覆システム20に入る前に繊維を接地することができるよう、導電物質でできていることが好ましい。他に種々のトウ延展機18手段を利用することができる。例えば、平滑な、溝付きの、もしくは冠歯付きのローラまたはドラム;エアコーム;エアコームとローラもしくはドラムとを組み合わせたもの;エアバンディングジェット;超音波延展機ならびに液槽である。トウ延展手段を選ぶ際に第一に重要なことは、選ばれた手段がトウを延展して好ましくは1フィラメント分の厚さしかない柱状のテープにするということ、ならびにその手段が繊維もしくはフィラメントを損傷しないということである。」(第32頁3?29行)との記載及び本件特許明細書の段落【0044】の記載からみて、本件特許発明1の「フィラメント集合体を扇形に拡張する工程」に相当する。
甲2発明Aの「該強化フィラメントをほぼ柱状に露出させ」る工程は、その後にマトリクス形成材料を被覆する工程を有していて、甲2の「次に、トウフィラメント13は被覆システム20に入り、そこでマトリックス材料がトウフィラメント13に塗被される。トウフィラメント13が被覆システム20に入り、そこを通過するとき、トウフィラメント13は延展状態に維持される。」(第33頁1?5行)の記載があるから、本件特許発明1における「最終テープの所望の長さに平行な方向に延在し」た「強化フィラメントのフィラメント集合体を供給する工程」に相当する。
甲2発明Aの「(c)該マトリックス形成材料が該強化フィラメントを被覆するまで、該強化フィラメントと接触する該マトリックス形成材料を液化することによって該トウプレグ層を形成する段階」は、本件特許発明1の「堆積された粉末を少なくとも部分的に軟化させるために加熱」することに相当する。
甲2発明Aの「(d)該融着被覆されたトウプレグを成形手段に通すことによって融着被覆されたトウプレグテープを成形する段階であって、該成形手段が該融着被覆されたトウプレグに圧力を加えるものであり、融着被覆されたトウプレグテープを成形する該段階を、該マトリックス形成材料が柔軟であるところの温度で実施する」工程は、甲2の「第一の好ましい実施態様においては、テープ成形区域は、係合する2個のローラである、溝付きローラ60とうね付きローラ62からなる。溝付きローラ60およびうね付きローラ62の2種の配置を図10および11aに示す。うね付きローラ62のうねが溝付きローラ60の溝と係合してその中にはまる。粉末融着被覆されたトウ49を溝付きローラ60とうね付きローラ62との間に通して、入力された粉末融着被覆されたトウプレグをトウ49から既知の形状寸法のテープ50に成形する。」(第44頁25?34行)の記載から、本件特許発明1の「その幅を固定し、前記粉末による凝集性を与えるために前記テープを冷却する工程」を包含している。
甲2発明Aの柔軟なトウプレグテープを製造する方法は、FIG1から、連続した製造方法といえる。

そうすると、本件特許発明1と甲2発明Aとは、
「所与の幅を有するテープを調製する方法であって、前記テープが、前記テープの長さに平行な方向に延在し、それらの間にポリマー材料の粉末が分布しているフィラメントの集合体から構成され、前記方法が、連続して以下の工程:
a)前記フィラメント集合体を扇形に拡張する工程;
b)最終テープの所望な長さに平行な方向に延在し、強化フィラメントのフィラメントの集合体を供給する工程;
c)ポリマー材料から形成された粉末を、前記フィラメントの集合体の面の少なくとも一方の上に堆積させる工程;
d)前記堆積された粉末を少なくとも部分的に軟化させるために加熱し、その幅を固定し、前記粉末による凝集性を与えるために前記テープを冷却する工程;
を含む方法。」
の点で一致し、下記の相違点1ないし3で相違する。

<相違点1>
テープに関し、本件特許発明1は、「前記テープのそれぞれの面がポリマー繊維の不織布と会合」させて形成する「テープ」であって、「e)加熱接着によって、前記フィラメントの集合体のそれぞれの面を、ポリマー繊維から形成された不織布と会合させる工程」を有するのに対し、甲2発明Aは、不織布を会合させたテープではなく、不織布と会合させる工程もない点。
<相違点2>
粉末を堆積させる工程に提供されるフィラメントの集合体の幅に関し、本件特許発明1は、「最終テープの所望の幅よりも大きい幅を有する」と特定するのに対し、甲2発明Aは、この点を特定しない点。
<相違点3>
最終形状のテープを形成するd)工程において、本件特許発明1は、「前記フィラメントの集合体を締め付けて、その幅を所望の幅に調整し、前記粉末の少なくとも一部を前記フィラメント間の前記フィラメントの集合体の厚さに浸透させ、」と特定するのに対し、甲2発明Aは、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。
相違点1について
甲2の特許請求の範囲の請求項10及び13には、「(e)多層構造のトウプレグが形成されるような仕方で該トウプレグ少なくとも1個からなる層を重ね、(f)該重ねたトウプレグどうしを結合して不織トウプレグ布を形成する段階をさらに含む」こと、「ホットメルト結合、縫合、ニードルパンチ、圧力点結合、流体衝突巻き込み、結合材フィラメント介在および結合材織り糸介在からなる群より選択される結合方法を使用して、該トウプレグどうしを結合する請求の範囲第10項記載の方法。」が記載されている。
そうすると、甲2発明Aのトウプレグテープを3枚以上重ねてホットメルト結合する態様を行うことは、当業者が容易に想到し得たと言え、その場合には、トウプレグテープ自体がポリマー繊維の不織布といえるから、3枚以上重ねられた真ん中のトウプレグテープのそれぞれの面がポリマー繊維の不織布と会合しているテープとなり、e)加熱接着によって、前記テープのそれぞれの面を、ポリマー繊維から形成された不織布と会合させる工程を有するものとなるので、相違点1の構成を有するものとなる。
そして、そのことにより格別な効果が奏されるとも認められない。

相違点2について
甲2発明Aの「(d)該融着被覆されたトウプレグを成形手段に通すことによって融着被覆されたトウプレグテープを成形する段階であって、該成形手段が該融着被覆されたトウプレグに圧力を加えるものであり、融着被覆されたトウプレグテープを成形する該段階を、該マトリックス形成材料が柔軟であるところの温度で実施する」工程は、対比で述べたとおり「テープ成形区域は、係合する2個のローラである、溝付きローラ60とうね付きローラ62からなる。溝付きローラ60およびうね付きローラ62の2種の配置を図10および11aに示す。うね付きローラ62のうねが溝付きローラ60の溝と係合してその中にはまる。粉末融着被覆されたトウ49を溝付きローラ60とうね付きローラ62との間に通して、入力された粉末融着被覆されたトウプレグをトウ49から既知の形状寸法のテープ50に成形する。」という工程を包含しており、FIG.11aのような溝付きローラとうね付きローラ62との間を通して既知の形状寸法のテープを成形する場合には、トウプレグの幅方向端部が規制されていることから、当該成形工程により、フィラメントの集合体は幅方向に狭められているといえるから、粉末を堆積させる工程時のトウプレグの幅は、最終的なトウプレグの幅よりも広くなっている。
してみれば、上記の成形工程をとった場合には、相違点2は実質的な相違点でない。

相違点3について
甲2発明Aにおける(d)の工程(本件特許発明1の「最終形状のテープを形成するd)工程」)において、相違点2において検討したFIG11aのような溝付きローラとうね付きローラ62との間を通して既知の形状寸法のテープを成形する場合には、トウプレグ(フィラメント集合体)を2つのローラ間で押圧していることになるから、トウプレグ(フィラメント集合体)を締め付けて、その幅を所望の幅に調整し、粉末の少なくとも一部を前記フィラメント間の前記トウプレグ(フィラメント集合体)の厚さに浸透させているといえることから、相違点3についても実質的な相違点ではない。

以上のことから、本件特許発明1は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 本件特許発明3と甲2発明Aとの対比・判断
本件特許発明3は、本件特許発明1又は2について、「少なくとも工程d)から出口まで、連続的な生産ラインで行われること」を特定するものであるが、本件特許発明のようなテープの製造工程を連続工程として行うことは周知な技術事項(以下、「周知技術1」という。)であるから、この点は、当業者が適宜行い得たことである。
そうすると、その余の点は上記(3)での検討のとおりであって、本件特許発明3は、甲2に記載された発明及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5) 本件特許発明5と甲2発明Aとの対比・判断
本件特許発明5は、本件特許発明1ないし4について、「工程d)と工程e)の間にトラバース巻取工程を含むこと」を特定するものであるが、本件特許発明のようなテープの製造工程において、トラバース巻取工程を設けることは周知な技術事項(例えば、甲1の第12頁30?32行、図5参照、以下、「周知技術2」という。)であるから、この点は、当業者が適宜行い得たことである。
そうすると、その余の点は上記(3)ないし(4)での検討のとおりであって、本件特許発明5は、甲2に記載された発明及び周知技術1?2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6) 本件特許発明8と甲2発明Aとの対比・判断
本件特許発明8は、本件特許発明1ないし7について、「前記工程e)において前記テープと会合する前記不織布の幅が、会合するときの前記テープの幅より大きいことと、前記テープのそれぞれの端部で、前記不織布の切断または高温昇華が行われること」を特定するものであるが、本件特許発明のようなテープの製造工程において、加熱接着する不織布の幅をテープより広いものとすることや、圧着した不織布の端部を切断することは周知な技術事項(例えば、甲1の第10頁28?29行、第11頁27?30行参照、以下、「周知技術3」という。)であるから、この点は、当業者が適宜行い得たことである。
そうすると、その余の点は上記(3)ないし(5)での検討のとおりであって、本件特許発明8は、甲2に記載された発明及び周知技術1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7) 本件特許発明11と甲2発明Aとの対比・判断
本件特許発明11は、本件特許発明1ないし10について、「前記不織布および前記粉末が、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミド-ブロックエーテルもしくはエステル、ポリフタルアミド、ポリエステル、コポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、フェノキシ、ブロックコポリマー、エポキシ、およびこれらの混合物からなるグループから選択される材料から形成されること」を特定するものであるが、甲2には、マトリクス材料として、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリウレタン類、アセタール樹脂類、ポリプロピレン類、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)類、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)類、ポリフェニレンスルフィド類が例示(第21頁12?25行)されており、不織布の繊維として、有機繊維類、特にアラミド類、および低融点でない芳香族ポリエステル類のような液晶繊維類が例示(第20頁16?20行)されているから、この点は新たな相違点とはならない。
そうすると、その余の点は上記(3)ないし(6)での検討のとおりであって、本件特許発明11は、甲2に記載された発明及び周知技術1?4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8) 本件特許発明12と甲2発明Bとの対比・判断
本件特許発明12と甲2発明Bを対比すると、本件特許発明1と甲2発明Aの対比と同様の相当関係が成り立つから、
「テープの長さに平行な方向に延在し、その間にポリマー材料から形成された粉末が分布しているフィラメントの集合体のテープであって、前記粉末の少なくとも一部が、前記テープの厚さの中に位置しており、テープの凝集性が、前記粉末によって与えられる、テープ。」
の点で一致し、下記の相違点4で相違している。

<相違点4>
テープに関し、本件特許発明12は、「フィラメント集合体と、不織布と、を含むテープ」であって、「テープのそれぞれの面で、ポリマー繊維から形成される前記不織布と会合して」と特定すると共にテープの凝集性が「前記粉末と不織布との両方によって与えられる」と特定するのに対し、甲2発明Bは、不織布を会合させたテープではなく、テープの凝集性は粉末によって与えられている点。

以下、相違点について検討する。
相違点4について
甲2の特許請求の範囲の請求項10及び13には、「(e)多層構造のトウプレグが形成されるような仕方で該トウプレグ少なくとも1個からなる層を重ね、(f)該重ねたトウプレグどうしを結合して不織トウプレグ布を形成する段階をさらに含む」こと、「ホットメルト結合、縫合、ニードルパンチ、圧力点結合、流体衝突巻き込み、結合材フィラメント介在および結合材織り糸介在からなる群より選択される結合方法を使用して、該トウプレグどうしを結合する請求の範囲第10項記載の方法。」が記載されている。
そうすると、甲2発明Bのトウプレグテープを3枚以上重ねてホットメルト結合する態様を行うことは、当業者が容易に想到し得たといえ、その場合には、トウプレグテープはポリマー繊維の不織布といえるから、トウプレグテープを3枚重ねたものは、フィラメント集合体と不織布とを含むテープといえるし、真ん中のトウプレグテープのそれぞれの面がポリマー繊維の不織布と会合しているテープとなる。加えて、そのような3層のテープの凝集性が、それぞれのトウプレグテープの粉末と不織布(両面側のトウプレグテープ)との両方によって与えられることになるのは当然のことである。
そして、そのことにより格別な効果が奏されるとも認められない。

そうすると、本件特許発明12は、甲2発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9) 本件特許発明13と甲2発明Bとの対比・判断
本件特許発明13は、本件特許発明12について、「前記テープの全長にわたって、前記テープの幅が、0.25mm未満である標準偏差を有すること」を特定するものであるが、甲2発明Bにおける「(d)該融着被覆されたトウプレグを成形手段に通すことにより、該融着被覆されたトウプレグに成形力を加えて、融着被覆されたトウプレグテープを製造する」工程を、甲2の「第一の好ましい実施態様においては、テープ成形区域は、係合する2個のローラである、溝付きローラ60とうね付きローラ62からなる。溝付きローラ60およびうね付きローラ62の2種の配置を図10および11aに示す。うね付きローラ62のうねが溝付きローラ60の溝と係合してその中にはまる。粉末融着被覆されたトウ49を溝付きローラ60とうね付きローラ62との間に通して、入力された粉末融着被覆されたトウプレグをトウ49から既知の形状寸法のテープ50に成形する。」(第44頁25?34行)という溝付きローラ60とうね付きローラ62を利用するものであった場合には、トウプレグテープの幅方向端部が規制されていることから、甲2発明Bのトウプレグテープの幅が、0.25mm未満である標準偏差を有するものとなる蓋然性が高い。してみれば、この点は新たな相違点とはならない。
仮に、この点において相違するとしても、トウプレグテープの幅が一定であることが望ましいことは当業者において周知の技術事項(以下、「周知技術5」という。)であるから、甲2発明Bのトウプレグテープの幅が、0.25mm未満である標準偏差を有するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そうすると、その余の点は上記(8)での検討のとおりであって、本件特許発明13は、甲2に記載された発明及び周知技術5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10) 本件特許発明14と甲2発明Bとの対比・判断
本件特許発明14は、本件特許発明12ないし13について、「その長手方向の端部上に切断された繊維を有しないこと」を特定するものであるが、甲2発明Bのようなトウプレグテープにおいて、その長手方向の端部上に切断された繊維を有しないテープとすることは周知(甲1の第11頁27行?第12頁6行参照、以下「周知技術6」という。)であるから、この点は、周知技術6に基いて当業者が適宜行い得たことである。
そうすると、その余の点は上記(8)ないし(9)での検討のとおりであって、本件特許発明14は、甲2に記載された発明及び周知技術5?6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11) 本件特許発明15と甲2発明Bとの対比・判断
本件特許発明15は、本件特許発明12ないし14について、「前記粉末が、熱硬化性または熱可塑性ポリマーから形成され、前記不織布が、熱可塑性ポリマーから形成されること」を特定するものであるが、甲2には、マトリクス材料として、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリウレタン類、アセタール樹脂類、ポリプロピレン類、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)類、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)類、ポリフェニレンスルフィド類が例示(第21頁12?25行)されており、不織布の繊維として、有機繊維類、特にアラミド類、および低融点でない芳香族ポリエステル類のような液晶繊維類が例示(第20頁16?20行)されているから、この点は実質的な相違点ではない。
そうすると、その余の点は上記(8)ないし(10)での検討のとおりであって、本件特許発明15は、甲2に記載された発明及び周知技術5?6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(12) 特許権者の平成30年5月28日付け意見書の主張について
特許権者は、平成30年5月28日付け意見書において、本件特許発明1は、「プリフォームまたは複合部品を製造するために使用される中間材料としての『テープ』を調整する方法をその対象とするものである。一方、・・・甲2発明Aは・・・更なる樹脂の付加を必要としない、最終品として使用可能な複合部品が得られる。換言すれば、甲2発明Aは、最終品として使用可能な複合部品としてのトウプレグテープを製造する方法をその対象とするものである。すなわち、甲2発明Aの対象は、本件特許発明1の対象とは異質なものであって、甲2に記載された事項をもって、直ちにこれを本件特許発明1の対象である(中間材料の)のテープに使用しようと考えるのは妥当でない」と主張する。
しかし、本件特許発明1には、そのテープの用途を特定する記載はなく、いわんや、「プリフォームまたは複合部品を製造するために使用される中間材料としての」なる発明特定事項はなく、上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるから、採用できない。

また、甲2には、以下の記載がある。
「59. A non-woven towpreg fabric .comprising a plurality of the towpregs claimed in Claim 56, wherein said towpregs are arranged in overlapping layers comprising at least one towpreg and are joined together resulting in said non-woven towpreg fabric.
60. A multidimensional preform fabricated from the non-woven towpreg fabric as claimed in Claim 59, wherein said towpregs are arranged in overlapping layers comprising at least one towpreg and are joined together in a desired configuration to form said preform. 61. A composite article fabricated from a plurality of the towpregs claimed in Claim 56, wherein said plurality of towpregs are arranged in a desired configuration and joined together resulting in a contoured preform having the general configuration of said composite article, and said preform is further acted upon to form said composite article.」(特許請求の範囲の請求項59、60)
(59.請求の範囲第56項記載の複数のトウプレグからなる不織トウプレグ布であって、該トウプレグを、少なくとも1個のトウプレグからなる重なり合う層に配設し、結合して該不織トウプレグ布にしたものであることを特徴とする不織トウプレグ布。
60.請求の範囲第59項記載の不織トウプレグ布から製造された多次元プレフォームであって、該トウプレグを、少なくとも1個のトウプレグからなる重なり合う層に配設し、所望の形状に結合して該プレフォームに形成したものであることを特徴とする多次元プレフォーム。)(特許請求の範囲の請求項59、60)
「1. Field of the Invention
The present invention is directed to flexible multiply towpreg, products therefrom, and a method of production therefor and, more specifically, a very flexible multiply towpreg suitable for weaving, braiding, and the like, products made therefrom, and a method for producing such a towpreg. The flexible multiply towpreg can be formed into a flexible multiply towpreg tape of uniform dimensions and accurate geometry suitable for filament winding, pultrusion, and the like; a non-woven towpreg fabric suitable for further processing to form multi-dimensional fabrics, preforms, and composite structures; and towpregs comprising continuous fibers or filaments combined with a matrix resin comprising, in part, recycled plastics.」(第1頁第5?19行)
(1.発明の分野
本発明は、柔軟なマルチプライ(多層)トウ(繊維束)プレグ、その製品およびその製造方法に、より具体的には、製織、編組などに適した非常に柔軟な多層トウプレグ、その製品およびそのようなトウプレグを製造する方法に指向されている。この柔軟な多層トウプレグは、フィラメント巻取り、引抜き成形(パルトルージョン)などに適した均一な寸法および正確な寸法形状を有する柔軟な多層トウプレグのテープ;更に加工して多次元的な織物、プレフォーム(予備形成品)および複合構造を形成するのに適した不織トウプレグ織物;ならびにリサイクル(再利用)プラスチックを部分的に含むマトリックス樹脂と組み合わせた連続繊維またはフィラメントを含むトウプレグに成型することができる。)(公報第4頁右下欄第4?15行)
「The primary object of this invention is to provide a flexible multiply towpreg suitable for weaving, braiding, filament winding, pultrusion, tape formation, non-woven fabric formation, and conversion into sheet of bulk molding compound feedstock.
A further object of this invention is the production of commercially feasible towpreg from a variety of fibers and matrices.
Yet another object of this invention is to provide flexible towpreg containing a sufficient number of filaments to be suitable for the economic production of composite structures. An additional object of this invention is to provide towpreg with the reinforcing fibers sufficiently wetout so that excessive pressure is not required to complete fiber wetout during the consolidation of the composite. Another object of this invention is to produce towpreg rapidly in order to minimize substantial curing or resin advancement of the matrix during towpreg manufacture. Another object of this invention is to permit the production of towpreg starting with the matrix material in the form of inexpensive coarse powders, which are more than twice the diameter of the fibers, or short fibers.
A further object of this invention is. the production of commercially feasible towpreg tape from a variety of fibers and matrices. Another object of this invention is to provide a non-woven flexible towpreg fabric well-suited for pultrusion, filament winding, or conversion into sheet of bulk molding compound feedstock, and for fabricating a variety of preforms and composite structures. Yet another object of this invention is to provide non-woven flexible towpreg fabric containing a sufficient number of filaments to be suitable for the economic production of 2-dimensional and 3-dimensional preforms and composite structures. Still another object of this invention is to produce a non-woven towpreg fabric that can be processed in a manner similar to tacky thermoset prepreg tape to layup advanced composite structures.
A further object of this invention is to produce a non-woven towpreg fabric that can be used to make bonded preforms for resin transfer modeling, such as tubular preforms, which can be made by tube rolling.
Another object of this invention is to provide a towpreg comprising substrate fibers or filaments coated with a matrix material that uses as a primary matrix material recycled plastics.
Yet another object of this invention is to permit production of towpregs starting with the matrix material in the form of inexpensive waste plastics. An additional object of this invention is to provide a method for producing towpregs that uses a matrix material that minimizes harm to the processing equipment or the end product.
A final object of this invention is to provide towpregs that can be produced from a somewhat mixed or contaminated matrix material source that does not need to be purified but which still results in a composite with satisfactory properties.」(第12頁第13行?第14頁第3行)
(本発明の第一の目的は、製織、編組、フィラメント巻取り、引抜き成形、テープ形成、不織織物形成、および塊状の注型用混成原料のシートへの転換に適した柔軟な多層トウプレグを提供することである。
本発明のその他の目的は、各種の繊維およびマトリックスからの商業的に実施できるトウプレグの製造である。
本発明の更に別の目的は、複合構造を有する経済的製品に適した充分な数のフィラメントを含有する柔軟なトウプレグを提供することである。
本発明の追加的な目的は、充分に浸漬した結果、複合物を統合する際に繊維の完全な浸漬に過剰な圧力が必要とされない補強繊維を有するトウプレグを提供することである。
本発明のもう一つの目的は、トウプレグ製造の際にマトリックスの実質的な硬化または樹脂の加齢を最小化するために、トウプレグを迅速に製造することである。
本発明のもう一つの目的は、廉価な、繊維の直径の2倍を超える粗い粉末、または短い繊維の形態のマトリックス材料からのトウプレグ製造の開始を可能にすることである。
本発明のその他の目的は、各種の繊維およびマトリックスからの商業的に実施できるトウプレグテープの製造である。
本発明のもう一つの目的は、引抜き成形、フィラメント巻取り、または塊状の注型用混成原料のシートへの転換に、および各種のプレフォームおよび複合構造の織り上げに充分に適した柔軟なトウプレグの不織織物を提供することである。
本発明の更にもう一つの目的は、二次元または三次元的プレフォームおよび複合構造の経済的製造に適した充分な数の繊維を含有する柔軟なトウプレグの不織織物を提供することである。
本発明の更にもう一つの目的は、粘着性の熱硬化性プレプレグテープと同様な方法で加工して、先端的な複合構造をレイアップすることができる不織トウプレグ織物を製造することである。
本発明のその他の目的は、樹脂移動モデル形成のための接合されたプレフォーム、例えば、チューブローリング法を用いて製造できる管状プレフォームを製造するのに用いることができる不織トウプレグ織物を製造することである。
本発明のもう一つの目的は、主要なマトリックス材料としてリサイクルプラスチックを用いるマトリックス材料で被覆した基質繊維またはフィラメントを含むトウプレグを提供することである。
本発明の更にもう一つの目的は、廉価な廃プラスチックの形態でのマトリックス材料からのトウプレグ製造の開始を可能にすることである。
本発明の追加的な目的は、加工装置または最終製品に対する損傷を最小化するマトリックス材料を用いるトウプレグの製造法を提供することである。
本発明の最後の目的は、精製する必要はないが、なおも充分な特性を有する複合物を生じる、多少とも混合され、または混入されたマトリックス材料源から製造できるトウプレグを製造することである。)(公報第7頁右下欄第17行?第8頁右上欄第15行)
「The production of a non-woven fabric from the towpreg is discussed in connection with reference to Figs. 14 - 17. The plies 113, interply connectors 111, and individual filaments 110 together makeup an individual towpreg 133 comprising reinforcing filaments 132 coated with matrix forming material 131. After the towpregs 133 are cooled in the cooling step 112, the towpregs 133 are arranged in a desired fabric pattern, such as the unidirectional overlap pattern shown in Fig. 14a or the multidirectional overlap pattern shown in Fig. 15a. Preferably, the arrangement of towpregs 133 comprise the overlapping of the towpregs 133 so as to increase the strength of the resulting fabric 139.
Once the towpregs 133 are properly arranged, the towpregs 133 are joined together. Hot melt bonding of the overlayed towpregs 133 at selected points results in the point bonded fabric 139 shown in Fig. 14b and Fig. 15b. One or more point bonds 137 are used to bind the towpregs 133 together. Using point bonding rather than continuous bonding of towpregs 133 to each other results in a fabric 139 which maintains flexibility. Alternatively, stitching 138, needle punching, pressure point bonding, or water-jet impingement can be used to join the towpregs 133. A representation of such a stitch pattern is shown in Fig. 17. The stitching can be done at an angle to the direction of travel of the towpregs 133 to facilitate continuous processing. The non-woven fabrics of this invention do not have interleaved reinforcing fibers; however, binder filaments or yarns may interleave the reinforcing fibers as shown in Fig. 24. In this case, the hydrid fabric is woven, but the assembly of reinforcing fibers is non-woven. The resulting fabric 139 then can be wound in a winding step for further use. Alternatively, the towpregs 133 or the resulting fabric 139 can be acted upon so as to create 2- and 3-dimensional non-woven fabrics and even preforms having complex contours. For example, tubular preforms can be made by multiaxial layup or tube rolling, a common practice for fabricating golf club shafts, tennis rackets, and sailing masts, among other structures.」(第27頁第13行?第28頁第17行)
(図14?17の参照と関連させて、トウプレグからの不織織物の製造を考察する。層113、層間連結子111および単位フィラメント110は、共同して、マトリックス形成材料131で被覆した補強フィラメント132を含む単位トウプレグ133を作成する。冷却工程112でトウプレグ133を冷却した後、所望の図形、例えば、図14aに示した一方向性重複図形、または図15aに示した多方向性重複図形へとトウプレグ133を配列する。好ましくは、トウプレグ133の配列は、得られる織物139の強度を増大させるために、トウプレグ133の重ね合いを含む。
トウプレグ133を適正に配列したならば、トウプレグ133を纏めて結合する。重ね合わせたトウプレグ133の選ばれた箇所でのホットメルト接着の結果、図14bおよび図15bに示した点接着織物139が得られる。1カ所またはそれ以上の接着137は、トウプレグ133を纏めて接着するために用いられる。トウプレグ133の相互の連続的接着を用いずに点接着を用いる結果、柔軟性を保った織物139が得られる。これに代えて、縫製138、針による穿孔、加圧点接着または水ジェット衝撃を用いてトウプレグ133を結合することもできる。そのような縫製図形の一つの表現を図17に示す。縫製は、トウプレグ133の移動方向に対してある角度で実施して、連続工程を容易にすることができる。本発明の不織織物には補強繊維を挟み込まないが、図24に示したとおり、結合材のフィラメントまたは糸には補強繊維を挟み込んでもよい。この場合、混成織物が製織されるが、補強繊維の組立は不織である。
次いで、得られた織物139を巻取り工程で巻き取り、その後の用途に用いる。これに代えて、トウプレグ133または得られた織物139に基づいて作業し、二次元または三次元的不織織物、および複雑な輪郭を有するプレフォームさえ形成することができる。例えば、他の構造のうちでも特にゴルフクラブの軸、テニスラケットおよび帆走用マストの製作のための一般的な実施法である多軸レイアップまたは管圧延によって、管状のプレフォームを製造することができる。)(公報第12頁左上欄第22行?右上欄第24行)

上記記載からみて、甲2発明Aは、本件特許発明1のテープと同様に中間材料として利用されるものであるから、たとえ、本件特許発明1において、その用途として「プリフォームまたは複合部品を製造するために使用される中間材料としての」を特定されたとしても、この点は、あらたな相違点とはならない。

2 取消理由1(特許法第36条第6項第2号)について
本件特許の請求項9の「切断部分との両方が、飛沫同伴または吸引手段によって飛沫同伴される」との記載は、日本語として理解できないので、本件特許の請求項9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4項に該当し、取り消すべきものである。請求項9を直接又は間接的に引用する請求項10及び11についても同様である。(乙1号証によれば、「エントレインメント」、「エントレイン」はどのような意味かは理解できるが、乙1号証に記載の「エントレインメント」「エントレイン」の意味と、「飛沫同伴」とが結びつかず、「切断部分との両方が、飛沫同伴または吸引手段によって飛沫同伴される」との記載は、日本語として理解できない。)

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項9並びに同項を引用する請求項10及び11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1、3、5、8、11ないし15に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1、3、5、8、11ないし15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第6 本件特許の請求項2、4、6、7に係る特許が維持される理由

1 異議申立人は本件特許の請求項2、4、6、7に係る特許に対して、証拠方法として下記の甲第1号証ないし第4号証を提示するとともに、以下の取消理由を主張している。

甲第1号証:国際公開第2010/061114号
甲第2号証:国際公開第92/20521号
甲第3号証:特開2007-216432号公報
号第4号証:特開2005-280348号公報

本件特許の請求項2、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項2、4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由A」という。)。
本件特許の請求項6、7に係る発明は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本件特許の請求項6、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由B」という。)。
本件特許の請求項6、7に係る発明は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項6、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由C」という。)。
本件特許の請求項2、4、6、7に係る特許は、請求項4、6、7が引用する請求項2に不明確な記載があり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願について特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由D」という。)。
なお、当該取消理由Dは、当審からの取消理由として通知したものでもある。

2 取消理由Aについて
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)に記載された発明
甲1の請求の範囲、特に請求項1?3、12、13、第3頁第16?32行、第4頁第24?28行、第5頁第8?13行、第6頁第23?25行、第9頁第13?18行、第10頁第17?31行、第11頁第27行?第12頁第6行、第12頁第30?32行、第13頁第24?27行、第14頁第16?20行、第18頁第16行?第19頁第8行、図5?7の記載からみて、以下の発明(甲1発明)が記載されていると認める。
「その各面上でポリマー接着剤と結合した、強化ストランド又は長繊維のリボンの調製方法であって、前記リボンは、その全長にわたり本質的に一定な所与の幅を有し、ストランド又は長繊維はリボンの長さに平行な方向に伸長する方法において、次の
a)寸法取り器により、リボンの幅を所望の幅に調整する段階、
b)その各面上でリボンを接着剤と結合して、リボンの均一な密着を確実にし、その結果、接着剤の総重量が、得られるリボンの総重量の15%未満である段階
を含み、
ポリマー接着剤が、1つ又は複数の熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマーの粉体であるか、1つ又は複数の熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマーの不織材料又は不織布である
方法。」
(2) 本件特許発明2及び4に係る発明と甲1発明との対比・判断
本件特許発明2及び4と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点A>
調整方法の工程として、本件特許発明2及び4は、「c)ポリマー材料から形成された粉末を、前記フィラメントの集合体の面の少なくとも一方の上に堆積させる工程」と「e)加熱接着によって、前記テープのそれぞれの面を、ポリマー繊維から形成された不織布と会合させる工程」を含むのに対して、甲1発明は、ポリマー接着剤として、ポリマー材料からの粉体か不織布のいずれかを利用するものである点。
<相違点B>
本件特許発明2は、「粉末が堆積されるとき、前記フィラメントの集合体の幅が、前記最終テープの所望の幅より少なくとも50%大きい」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。
<相違点B’>
本件特許発明4は、「工程c)の開始における前記フィラメントの集合体の幅が、扇形に拡張した後に得られる前記フィラメントの集合体の幅より少なくとも20%小さい」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。
以下、相違点について検討する。
相違点Aについて
甲1発明は、「その各面上でポリマー接着剤と結合した、強化ストランド又は長繊維のリボンの調製方法」であって、当該ポリマー接着剤として、ポリマーの粉体かポリマーの不織布のいずれかを選択するものである。
一方で、本件特許発明2及び4のc)工程とe)工程を有するということは、甲1発明においては、強化ストランド又は長繊維(フィラメント集合体)に対して、粉体を堆積させることと、不織布を会合させることを併用することに相当するが、甲1には接着剤としてポリマーの粉体とポリマーの不織布を併用することについての記載ないし示唆はないから、実質的な相違点である。そして、ポリマー接着剤として、ポリマーの粉体とポリマーの不織布を併用する動機付けはないから、相違点Aは、当業者において想到容易でない。
相違点Bについて
相違点Bに係る事項は、甲第1号証及び第4号証に記載されておらず、その他の異議申立人が提示した証拠にも記載されていない。そして、甲1での実施例においては、粉末が堆積されるとき、リボン(フィラメントの集合体)の幅は、最終的なリボン(最終テープ)の幅とほぼ同じ幅であって、当該幅を変更する動機もなく、示唆もなされていない。
してみれば、相違点Bは、当業者が容易に想到できるものではない。
相違点B’について
相違点B’に係る事項は、甲第1号証及び第4号証に記載されておらず、その他の異議申立人が提示した証拠にも記載されていない。甲1での実施例においては、粉末が堆積されるとき、リボン(フィラメントの集合体)の幅は、最終的なリボン(最終テープ)の幅とほぼ同じ幅であって、当該幅を変更する動機もなく、示唆もなされていない。
してみれば、相違点B’は、当業者が容易に想到できるものではない。
(3) まとめ
以上のことから、本件特許発明2及び4は、少なくとも上記相違点A及びB又はB’について、当業者において想到容易でないことから、甲1に記載された発明から容易に発明をすることができたとはいえず、異議申立人の取消理由Aの主張は理由がない。

3 取消理由B及びCについて
(1)甲1に記載の発明と甲第3号証(以下、「甲3」という。)に記載の発明
甲1には、上記2(1)のとおりの発明が記載されている。
甲3の特許請求の範囲、段落【0017】、【0025】?【0027】、【0031】?【0033】、【0037】?【0039】、図1、2の記載から、以下の発明(甲3発明)が記載されていると認める。
「開繊された少なくとも1本の長繊維束を一方向に引き揃えて所定幅の開繊シートに整形する整形工程と、開繊シートの少なくとも一方の面を被覆するように止着シートを密着させて開繊シートの長繊維を止着する止着工程と、止着シートが密着した開繊シートを巻き取る巻取工程とを備え、
さらに、集束された長繊維束を開繊する開繊工程を備え、
前記止着工程では、止着シートを開繊シートの表面に散在する熱融着材を介して密着させる、
一方向強化繊維シートの製造方法。」
(2)本件特許発明6及び7と甲1発明との対比・判断
本件特許発明6及び7と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記2(2)における相違点Aと以下の点で相違する。
<相違点C>
本件特許発明6は、「前記粉末の重量が、前記最終テープの全重量(フィラメント+粉末+不織布)の0.5%から8%に相当すること」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。
<相違点C’>
本件特許発明7は、「前記不織布の全重量が、前記最終テープの全重量(フィラメント+粉末+不織布)の15%未満に相当すること」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。
以下、相違点について検討する。
相違点Aについて
上記2(2)のとおり、相違点Aは実質的な相違点であって、また、当業者において想到容易でない。
相違点Cについて
甲第1号証に記載されている複合材料部品は、「ポリマー材料の粉末が分布しているフィラメント集合体」と「ポリマー繊維から形成された不織布」を同時に備えた構成のものは記載されていないから、「前記粉末の重量が、前記最終テープの全重量(フィラメント+粉末+不織布)の0.5%から8%に相当する」ものは、その「前記最終テープの全重量」という概念が存在せず、相違点Cは実質上の相違点である。そして、当該相違点Cは、粉末と不織布をともに設ける動機が存在しないことから、当業者において想到容易でない。
相違点C’について
上記相違点Cと同様であって、相違点C’は実質上の相違点であって、当該相違点C’は当業者において想到容易でない。
(3)本件特許発明6及び7と甲3発明との対比・判断
本件特許発明6及び7と甲3発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点D>
テープのそれぞれの面が会合している部材について、本件特許発明6及び7は、「ポリマー繊維の不織布」であるのに対して、甲3発明は、「止着シート」である点。
<相違点E>
本件特許発明6は、「前記粉末の重量が、前記最終テープの全重量(フィラメント+粉末+不織布)の0.5%から8%に相当する」と特定するのに対して、甲3発明は、この点を特定しない点。
<相違点E’>
本件特許発明7は、「前記不織布の全重量が、前記最終テープの全重量(フィラメント+粉末+不織布)の15%未満に相当する」と特定するのに対して、甲3発明は、この点を特定しない点。
以下、相違点について検討する。
相違点Dについて
甲3において、止着シートに関し「止着シートR’としては、微粘着性を有するとともに伸縮性が小さく可撓性がある薄いシートが好ましく、例えば、表面がコーティング処理された工程紙や、ポリエステル系樹脂フィルム等が挙げられる。」(段落【0032】)との記載があることから、止着シートは不織布とはいえず、不織布を包含する概念でもない。
してみれば、相違点Dは実質的な相違点である。
そして、止着シートとして不織布を利用する動機もなく、示唆もないから、相違点Dは、当業者において想到容易でない。
相違点E及びE’について
上記相違点Dでの検討のとおり、甲3発明の止着シートとして不織布は想定されていないことから、不織布の重量を構成要件として含む相違点E及びE’は実質的な相違点であって、また、当業者において想到容易でない。
(4) まとめ
以上のことから、本件特許発明6及び7は、少なくとも上記相違点A及びC又はC’において、甲1に記載された発明と相違するから、甲1に記載された発明でない。また、少なくとも上記相違点D及びE又はE’について、甲3に記載された発明と相違するから、甲3に記載された発明でない。
さらに、本件特許発明6及び7は、少なくとも上記相違点A及びC又はC’において、当業者が容易になし得たものといえないことから、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、少なくとも上記相違点D及びE又はE’について、当業者が容易になし得たものといえないことから、甲3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、異議申立人の取消理由B及びCの主張は理由がない。

4 取消理由Dについて
請求項2における不明確な点は、請求項2の記載が「前記フィラメントの集合体の幅が、前記最終テープの所望の幅より少なくとも50%大きいこと」と訂正されたことにより解消しているので、異議申立人の取消理由Dの主張は理由がない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、特許第6156940号の請求項1、3、5、8ないし15に係る特許を取消す。
また、特許第6156940号の請求項2、4、6、7に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項2、4、6、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
別掲
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の幅を有するテープを調製する方法であって、前記テープが、前記テープの長さに平行な方向に延在し、それらの間にポリマー材料の粉末が分布しているフィラメントの集合体から構成され、前記テープのそれぞれの面がポリマー繊維の不織布と会合しているテープであって、前記方法が、連続して以下の工程:
a)前記フィラメントの集合体を扇形に拡張する工程;
b)最終テープの所望の長さに平行な方向に延在し、前記最終テープの所望の幅よりも大きい幅を有する強化フィラメントのフィラメントの集合体を供給する工程;
c)ポリマー材料から形成された粉末を、前記フィラメントの集合体の面の少なくとも一方の上に堆積させる工程;
d)前記堆積された粉末を少なくとも部分的に軟化させるために加熱し、次いで、前記フィラメントの集合体を締め付けて、その幅を所望の幅に調整し、前記粉末の少なくとも一部を前記フィラメント間の前記フィラメントの集合体の厚さに浸透させ、その幅を固定し、前記粉末による凝集性を与えるために前記テープを冷却する工程;
e)加熱接着によって、前記フィラメントの集合体のそれぞれの面を、ポリマー繊維から形成された不織布と会合させて、前記テープを形成する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記粉末が堆積されるとき、前記フィラメントの集合体の幅が、前記最終テープの所望の幅より少なくとも50%大きいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも工程d)からの出口まで、連続的な生産ラインで行われることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
工程c)の開始における前記フィラメントの集合体の幅が、扇形に拡張した後に得られる前記フィラメントの集合体の幅より少なくとも20%小さいことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程d)と工程e)の間にトラバース巻取工程を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末の重量が、前記最終テープの全重量(フィラメント+粉末+不織布)の0.5%から8%に相当することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記不織布の全重量が、前記最終テープの全重量(フィラメント+粉末+不織布)の15%未満に相当することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程e)において前記テープと会合する前記不織布の幅が、会合するときの前記テープの幅より大きいことと、前記テープのそれぞれの端部で、前記不織布の切断または高温昇華が行われることとを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記テープと、その端部のいずれかの側の前記切断部分との両方が、飛沫同伴または吸引手段によって飛沫同伴されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィラメントが、以下の材料、すなわち、カーボン、ガラス、アラミド、シリカ、セラミック、およびこれらの混合物から選択される材料から形成されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記不織布および前記粉末が、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミド-ブロックエーテルもしくはエステル、ポリフタルアミド、ポリエステル、コポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、フェノキシ、ブロックコポリマー、エポキシ、およびこれらの混合物からなるグループから選択される材料から形成されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
テープの長さに平行な方向に延在し、その間にポリマー材料から形成された粉末が分布しているフィラメントの集合体と、不織布と、を含むテープであって、前記粉末の少なくとも一部が、前記テープの厚さの中に位置しており、前記テープのそれぞれの面で、ポリマー繊維から形成される前記不織布と会合しており、前記テープの凝集性が、前記粉末と前記不織布との両方によって与えられる、テープ。
【請求項13】
前記テープの全長にわたって、前記テープの幅が、0.25mm未満である標準偏差を有することを特徴とする、請求項12に記載のテープ。
【請求項14】
その長手方向の端部上に切断された繊維を有しないことを特徴とする、請求項12または請求項13のいずれかに記載のテープ。
【請求項15】
前記粉末が、熱硬化性または熱可塑性ポリマーから形成され、前記不織布が、熱可塑性ポリマーから形成されることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか一項に記載のテープ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-01-07 
出願番号 特願2014-513189(P2014-513189)
審決分類 P 1 651・ 113- ZDA (C08J)
P 1 651・ 537- ZDA (C08J)
P 1 651・ 121- ZDA (C08J)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 北澤 健一加賀 直人  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大島 祥吾
長谷部 智寿
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6156940号(P6156940)
権利者 ヘクセル ランフォルセマン
発明の名称 改善された耐剥離性を有するベールテープ  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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