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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
管理番号 1353170
異議申立番号 異議2017-701151  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-06 
確定日 2019-02-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6143818号発明「マイコプラズマ・ニューモニエ検出用免疫クロマト分析装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6143818号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。 特許第6143818号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6143818号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成27年8月31日(優先権主張 平成27年6月1日)の出願であって、平成29年5月19日付けでその特許権の設定登録がされ、同年6月7日に特許掲載公報が発行された。その後、同年12月6日に特許異議申立人松下 亮(以下、「申立人松下」という。)より、同月7日に特許異議申立人森岡 道朗(以下、「申立人森岡」という。)より請求項1?4に対して特許異議の申立てがされ、平成30年3月5日付けで取消理由が通知され、同年5月8日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年6月6日に特許権者より上申書が提出され、同年6月18日に申立人松下から意見書が提出され、同年8月21日付けで当審より取消理由(決定の予告)が通知され、特許権者は、その指定期間内である同年10月26日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人松下は、同年12月10日に意見書を提出した。
なお、申立人森岡は、平成30年5月19日に死亡したことが確認されたため、死亡後の同年6月22日に受理した申立人森岡名義の意見書は、合議体の判断において参酌しないこととした。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少するものであって、」及び「前記標識物質保持部は前記抗体を0.06?0.25μg含有し、」を追加する訂正をする。
そして、請求項1に係る発明を直接または間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4の「標識物質保持部に保持されている」を「標識物質保持部に0.06?0.25μg保持されている」に訂正する。また、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」を、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識し、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少する抗体」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1及び2は、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」を、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識し、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少する」ものに限定し、「標識物質保持部」の抗体の量が「0.06?0.25μg」であると、「標識物質保持部」の抗体の量を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
また、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」及び「標識物質保持部」の抗体の量を限定することが、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはならないことは明らかである。
そして、「抗体」に関するELISA法による競合阻害試験について、本件明細書の発明の詳細な説明には、(以下、下線は当審にて付与した。)

「【0023】
また、本発明における抗体P30(A)が、「マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIを強く認識する」抗体であるとは、具体的には、全長のMycoplasma pneumonia P30タンパク質(アミノ酸1-274:配列番号1)あるいはMycoplasma pneumonia P30タンパク質のアミノ酸96-274断片(これらのタンパク質をタンパク質Aとする)と、ドメインIIIあるいはドメインIIIにおけるアミノ酸の3種類の繰り返し配列(配列番号3?5)を一以上含むドメインIIIの断片(これらのタンパク質をタンパク質Bとする)との、ELISA法による競合阻害試験(競合阻害ELISA試験)を行ったときに、タンパク質Aに対する抗体の反応がタンパク質Bの存在により反応が阻害される場合におけるその抗体とも定義できる。競合阻害ELISA試験としては、直接競合法と間接競合法の何れの試験方法によっても定義できる。」

「【0029】
上記方法で、一次抗体のみを加えたウェルの吸光度より一次抗体とドメインIIIまたはドメインIIIにおけるアミノ酸の3種類の繰り返し配列を一以上含むドメインIIIの断片を加えたウェルの吸光度が減少することが確認でき、「マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIを強く認識する」ことが確認できる。本発明においては、ドメインIIIあるいはドメインIIIにおけるアミノ酸の3種類の繰り返し配列を一以上含むドメインIIIの断片を一次抗体の40倍量用いた場合の吸光度が30%以上減少、または一次抗体の80倍量用いた場合の吸光度が50%以上減少すれば、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIをより強く認識することが確認できる。」
「【0125】
[試験例4]
試験例2における抗体P30(A)および比較例1における抗体P30(B)が、「マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIを強く認識する」抗体であるか確認するため、競合阻害ELISA試験(間接競合法)を行った。本試験では、競合させるドメインIIIの断片として、試験例1で使用した上記ペプチド1またはペプチド2のいずれかを使用し、さらに上記ペプチドの濃度を下記表6、7のように変更して(×1?×640)、試験例2または比較例1に記載の方法と同様にして競合阻害ELISA試験(間接競合法)を行った。結果を表6、7に示す。表6は、抗体として抗体P30(A)を使用した結果であり、表7は、抗体として抗体P30(B)を使用した結果である。また表6の結果を図5、表7の結果を図6に示す。」
「【0128】
表6及び図5の結果より、ペプチド濃度を一次抗体抗P30(A)抗体濃度の40倍とした場合に、ウェルの吸光度がコントロールと比較して30%以上減少し、80倍量とした場合でも50%以上減少することが確認できた。なお、抗体P30(A)はペプチド1及びペプチド2のいずれにも阻害を受けることから、抗体P30(A)は配列番号3に示すアミノ酸配列(PGMAPR)を認識することが本試験でも確認できた。」
等が記載されており、
また、「標識物質保持部」が含有する抗体量の説明として、本件明細書の発明の詳細な説明には、
「 【0035】
標識物質保持部中の抗体P30(A)(第1抗体)の含有量は、通常0.06?0.25μgであり、好ましくは0.1?0.2μgであり、より好ましくは0.1?0.15μgである。また、標識物質保持部の単位面積当たりの抗体P30(A)(第1抗体)の含有量は、通常0.1?0.42μg/cm^(2)であり、好ましくは0.17?0.33μg/cm^(2)であり、より好ましくは0.17?0.25μg/cm^(2)である。」
と記載されている。よって、訂正事項1及び2に係る訂正は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正前の請求項1?3は、請求項2及び3が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正事項1に係る訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正を認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1?4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】
試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を検出するための免疫クロマト分析装置と、検体希釈液とを含む、免疫クロマト分析キットであって、
前記標識物質保持部及び検出部が、配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体を含有し、
前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少するものであって、
前記標識物質保持部は前記抗体を0.06?0.25μg含有し、
前記検体希釈液が、HLB値が13?17の非イオン性界面活性剤を含有する、
免疫クロマト分析キット。
【請求項2】
前記標識物質保持部が含有する標識物質が金コロイド粒子であり、前記標識物質保持部が前記金コロイド粒子を、0.25?0.7μg/cm^(2)含有する、請求項1に記載の免疫クロマト分析キット。
【請求項3】
前記検体希釈液が含有する非イオン性界面活性剤の50%以上が、HLB値が13?17の非イオン性界面活性剤である、請求項1または2に記載の免疫クロマト分析キット。
【請求項4】
試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む免疫クロマト分析装置を用いて、検体中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出する方法であって、以下の工程(1)?(4)を含む免疫クロマト分析方法。
(1)HLB値が13?17の非イオン性界面活性剤を含有する、検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に0.06?0.25μg保持されている、配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識し、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少する抗体(以下、抗体P30(A)と表記する)によりマイコプラズマ・ニューモニエを認識させる工程
(3)前記検体及び抗体P30(A)を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出部に含まれる抗体P30(A)により検出する工程」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
(1)平成30年3月5日付け取消理由通知について
訂正前の請求項1?4に係る発明に対して、当審が平成30年3月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア 訂正前の請求項1?4に係る発明は、引用例1に記載された発明である。そして、訂正前の請求項1?4に係る発明は、引用例1?7に記載された発明及び引用例1?11に記載された発明より、当業者が容易に想到できたものである。また、訂正前の請求項1?4に係る発明は、先願12の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明である。すると、訂正前の請求項1?4に係る特許は特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項及び特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
したがって、訂正前の請求項1?4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 訂正前の請求項1?4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、訂正前の請求項1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、発明の詳細な説明は、当業者が訂正前の請求項1?4に係る特許を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、訂正前の請求項1?4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、訂正前の請求項1?4に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)平成30年8月21日付け取消理由通知(決定の予告)について
平成30年5月8日にされた訂正請求により訂正された訂正後の請求項1?4に係る発明(以下、「第1回訂正発明1?4」という。)に対して、当審が平成30年8月21日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

ア 第1回訂正発明1?4は引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術事項及び引用例3?11に記載された技術事項より認定される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、第1回訂正発明1?4は、先願12の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明である。すると、第1回訂正発明1?4に係る特許は特許法第29条第2項及び特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
したがって、第1回訂正発明1?4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)引用例1?11及び先願12について
上記(1)及び(2)において引用された引用例1?11及び先願12は以下のとおりである。

引用例1.国際公開第2015/025968号
(申立人松下の甲1号証、申立人森岡の甲8号証)
引用例2.S. F. DALLO, A. L. LAZZELL, A. CHAVOYA, S. P. REDDY, AND J. B. BASEMAN、Biofunctional Domains of the Mycoplasma pneumoniae P30 Adhesin、INFECTION AND IMMUNITY、米国、1996.07.発行、Vol. 64, No. 7、p. 2595-2601
(申立人松下の甲2号証、申立人森岡の甲9号証)
引用例3.特開2012-037253号公報
(申立人松下の甲3号証)
引用例4.特開2012-058058号公報
(申立人松下の甲4号証)
引用例5.特開2010-019786号公報
(申立人松下の甲5号証)
引用例6.特開2012-159440号公報
(申立人松下の甲6号証、申立人森岡の甲4号証)
引用例7.特開2014-167439号公報
(申立人松下の甲7号証、申立人森岡の甲2号証)
引用例8.特開2009-085911号公報
(申立人森岡の甲3号証)
引用例9.特開2005-291780号公報
(申立人森岡の甲5号証)
引用例10.特開平11-108932号公報
(申立人森岡の甲6号証)
引用例11.特開2007-163182号公報
(申立人森岡の甲7号証)
先願12.PCT/JP2016/052318号(国際公開第2016/121831号)(申立人森岡の甲1号証)

2 引用例の記載
(1)引用例1について
ア 引用例1に記載された事項
引用例1(国際公開第2015/025968号、申立人松下の甲1号証、申立人森岡の甲8号証)には、以下の事項が記載されている。

(引1a)「[0026]
P30タンパク質は分子量30KDaのタンパク質であり、P1タンパク質と同様に接着と病原性に関係する接着タンパク質の1つである。マイコプラズマ・ニューモニエの菌体においては、接着器官の先端部の細胞表面に局在しており、細胞膜内に埋没しているN末端と細胞膜外に存在するC末端を持つ膜貫通型タンパク質である。また、C末端側にはプロリンを多く含むアミノ酸配列が存在し、前記プロリンを多く含むアミノ酸配列の繰り返し構造が存在する。一般的にプロリンを含むアミノ酸配列からなる領域は、立体的な高次構造をとることが知られており、抗体の反応するエピトープとなり得ることが知られている。
したがって、本発明で使用する抗体は、P30タンパク質の細胞外領域における、プロリンを多く含むアミノ酸配列の繰り返し構造からなる部分を認識する抗体である可能性が高い。また配列番号2のアミノ酸配列は、前記細胞外領域を構成するアミノ酸配列であり、前記プロリンを多く含むアミノ酸配列の繰り返し構造を含む領域を含み、P30タンパク質におけるエピトープを含むと考えられる領域である。」

(引1b)「[0034]
被験試料中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出するための本発明のイムノクロマトグラフィー測定法は、公知のイムノクロマトグラフィーテストストリップの構成に準拠して容易に実施できる。
一般に、かかるイムノクロマトグラフィーテストストリップは、抗原の第一の抗原決定基にて抗体抗原反応可能な第一の抗体と、前記抗原の第二の抗原決定基にて抗体抗原反応可能で且つ標識された第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されて構成される。第一の抗体および第二の抗体は、上述のように、それぞれポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であっても良いが、少なくとも何れか一方がモノクローナル抗体であることが好ましい。通常は、第一の抗体及び第二の抗体は「ヘテロ」の組み合わせで用いられ、すなわち、抗原上の位置および構造の何れもが異なる各抗原決定基をそれぞれ認識する第一の抗体及び第二の抗体が組み合わせて用いられる。しかしながら、第一の抗原決定基と第二の抗原決定基は抗原上の位置が異なっていれば構造的に同一であってもよく、その場合、第一の抗体および第二の抗体は「ホモ」の組み合わせのモノクローナル抗体であってよく、すなわち、第一の抗体および第二の抗体の両方に同一のモノクローナル抗体が使用できる。」

(引1c)「[0046]
(実施例1:組換えP30タンパク質の発現と精製)
マイコプラズマ・ニューモニエ M129株のP30タンパク質のアミノ酸配列をDDBJ(国立遺伝学研究所データベース)より入手した。前記P30タンパク質のアミノ酸配列から、膜貫通ドメインを除いた細胞外領域である配列番号2に示すアミノ酸配列(AA74-274)を特定し、対応する遺伝子配列を合成した。His-tag発現用ベクターであるpET302/NT-Hisを制限酵素EcoRIで切断した後、脱リン酸化処理としてアルカリフォスファターゼにより処理し、前記遺伝子配列と混合し、DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ)を用いてライゲーション反応をおこなった。目的遺伝子を組み込んだ組換えP30プラスミドを組換え蛋白発現用宿主E.coli BL(DE3)pLysS(Novagen)に導入した。導入菌をLB寒天平板培地で培養し、得られたコロニーをLB液体培地で培養した。さらに1mM IPTG(タカラバイオ)を添加して組換えP30タンパク質の発現を誘導した後、E.coli回収した。回収した菌を可溶化バッファー[0.5%Triron X-100(sigma)、10mM Imidazole、20mM Phosphateおよび0.5M NaCl(pH7.4)(Amersham)]に再浮遊し、超音波処理により可溶化した後、組換えP30タンパク質をHis trap Kit(Amersham)を用いて精製した。この精製タンパク質をリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと称する)に対して透析し、目的の組換えP30タンパク質とした。
[0047]
(実施例2:組換えP30タンパク質に対するモノクローナル抗体の作出)
実施例1で得られた組換えP30タンパク質を免疫用抗原として、組換えP30タンパク質に対するモノクローナル抗体(以下、抗P30抗体と称する)を作出した。モノクローナル抗体の作出は常法に従っておこなった。100μgの組換えP30タンパク質と等量のAduvant Complete Freund(Difco)を混合して、マウス(BALB/c、5週齢、日本SLC)に3回免疫し、その脾臓細胞を細胞融合に用いた。細胞融合には、マウスの骨髄腫細胞であるSp2/0-Ag14細胞(Shulmanら、1978)を用いた。細胞の培養には、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(Gibco)にL-グルタミン 0.3mg/ml、ペニシリンGカリウム 100単位/ml、硫酸ストレプトマイシン 100μg/ml、Gentacin 40μg/mlを添加し(DMEM)、これに牛胎児血清(JRH)を10%となるように加えた培養液を用いた。細胞融合は、免疫マウスの脾臓細胞とSp2/0-Ag14細胞を混合し、そこにPolyethylene glycol solution(Sigma)を添加することにより行った。融合細胞はHAT-DMEM[0.1mM Sodium Hypoxantine、0.4μM Aminopterinおよび0.016mM Thymidine(Gibco)を含む血清加DMEM]で培養し、酵素結合抗体法(ELISA)により培養上清中の抗体産生を確認した。抗体産生陽性の細胞をHT-DMEM[0.1mM Sodium Hypoxantineおよび0.16mM Thymidineを含む血清加DMEM]で培養し、さらに血清加DMEMで培養を続けた。
[0048]
(実施例3:モノクローナル抗体の調製)
クローニングした細胞は、2,6,10,14-Tetramethylpentadecane(Sigma)を接種しておいたマウス(BALB/c、リタイア、日本SLC)に腹腔内接種し、腹水を採取した。この腹水をプロテインGカラムに供し、モノクローナル抗体を精製した。作出したモノクローナル抗体のアイソタイプは、Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Reagents(Sigma)を用いて同定した。
最終的にP30タンパク質に対するモノクローナル抗体産生細胞が5クローン得られた。これらのモノクローナル抗体のイムノグロブリンアイソタイプは全てIgG1であった。」

(引1d)「[0057]
(実施例5:抗P30抗体を用いたイムノクロマトグラフィーテストストリップの作製)
(1)抗P30抗体の調製
実施例3で得られたハイブリドーマBLA-001およびBLA-002をマウス腹腔に接種し得られた腹水それぞれを、さらに常法によりプロテインGを用いたIgG精製を行い、抗P30抗体とした。
[0058]
(2)白金-金コロイド粒子溶液の調製
使用するガラス器具の全てを王水で洗浄した。390mlの超純水をフラスコに入れて沸騰させ、この沸騰水に塩化金酸水溶液(水溶液1リットル当たり金として1g 、片山科学工業株式会社製)30mlを加え、その後、1重量% クエン酸ナトリウム水溶液60mlを加え、6分45秒後に、塩化白金酸水溶液(水溶液1リットル当たり白金として1g、和光純薬工業株式会社製) 30mlを加えた。塩化白金酸水溶液添加から5分後に1重量% クエン酸ナトリウム水溶液60mlを加え、4時間、還流を行い、白金-金コロイド懸濁液を得た。
[0059]
(3)白金-金コロイド標識抗P30抗体溶液の調製
白金-金コロイド標識する抗P30抗体として、上記(1)で得られたクローンBLA-002を用い、下記の手順で白金-金コロイド標識を行った。
抗P30抗体の蛋白換算重量1μg(以下、抗体の蛋白換算重量を示すとき、単に、その精製蛋白質の重量分析による重量数値で示す)と上記(2)の白金-金コロイド溶液1mlとを混合し、室温で2分間静置してこの抗体のことごとくを白金-金コロイド粒子表面に結合させた後、白金-金コロイド溶液における最終濃度が1%となるように10%ウシ血清アルブミン(以下、「BSA」と記す)水溶液を加え、この白金-金コロイド粒子の残余の表面をことごとくこのBSAでブロックして、白金-金コロイド標識抗P30抗体(以下、「白金-金コロイド標識抗体」と記す)溶液を調製した。この溶液を遠心分離(5600×G、30分間)して白金-金コロイド標識抗体を沈殿せしめ、上清液を除いて白金-金コロイド標識抗体を得た。この白金-金コロイド標識抗体を10%サッカロース・1%BSA・0.5%Triton-X100を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁して白金-金コロイド標識抗体溶液を得た。
[0060]
(4)マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質検出イムノクロマトグラフィーテストストリップの作製
(4-1)マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質と白金?金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位
幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース膜をクロマトグラフ媒体のクロマト展開用膜担体3として用意した。抗P30抗体1.0mg/mlが含有されてなる溶液0.5μlを、このクロマト展開用膜担体3におけるクロマト展開開始点側の末端から7.5mmの位置にライン状に塗布して、これを室温で乾燥し、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質と白金-金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位31とした。この塗布用抗P30抗体として、上記(1)で得られたクローンBLA-001を用いた。
(4-2)白金-金コロイド標識抗体含浸部材
5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布に、白金-金コロイド標識抗体溶液37.5μlを含浸せしめ、これを室温で乾燥させて白金-金コロイド標識抗体含浸部材2とした。
(4-3)イムノクロマトグラフィーテストストリップの作製
上記クロマト展開用膜担体3、上記標識抗体含浸部材2の他に、試料添加用部材5として綿布と、吸収用部材4として濾紙を用意した。そして、これらの部材を用いて、図1と同様のイムノクロマトグラフィーテストストリップを作製した。
[0061]
(5)試験
参考例1で得られたマイコプラズマ・ニューモニエのM129株およびFH株の培養菌液を検体抽出液で希釈して、所定濃度に調製し、被検試料とした。そして、被検試料120μlを用いて上記(4)で得られたテストストリップの試料添加用部材5にマイクロピペットで滴下してクロマト展開し、室温で15分放置後、上記捕捉部位31で捕捉されたP30タンパク質と白金-金コロイド標識抗体との複合体の捕捉量を肉眼で観察した。捕捉量は、その量に比例して増減する黒色の呈色度合いを肉眼で-(着色なし)、±(微弱な着色)、+(明確な着色)、++(顕著な着色)、+++(顕著な着色)の5段階に区分して判定した。
その結果を表4に示す。表4から明らかなように、2種の抗P30抗体を使用したイムノクロマトグラフィー測定法により、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質を検出できることがわかった。またBlankにおける非特異的呈色も確認されなかった。」

(引1e)「[0072]
(実施例7:咽頭拭い液からのマイコプラズマ・ニューモニエの検出)
臨床的にマイコプラズマ・ニューモニエの感染が疑われる患者81名を対象とし、患者咽頭を滅菌した綿棒により擦過し、81例の咽頭拭い液を採取した。咽頭拭い液を採取した綿棒を0.7mlの検体抽出液に抽出し、被験試料として調製した。被検試料は本発明のP30タンパク質検出イムノクロマトグラフィーテストストリップを用いて、マイコプラズマ・ニューモニエの検出を実施した。また対照として、P1タンパク質検出イムノクロマトグラフィーテストストリップを用い、性能比較試験を実施した。採取した全ての臨床検体は、国立感染症研究所作成の遺伝子検査法に基づく核酸増幅法(PCR法)を実施し、マイコプラズマ・ニューモニエの存在確認を実施した。
[0073]
被験試料120μlを実施例3にて作製したイムノクロマトグラフィーテストストリップの試料添加用部材5にマイクロピペットにて滴下してクロマト展開させ、室温にて15分間放置後、捕捉部位31で捕捉された抗原と白金-金コロイド標識抗体との複合体を肉眼で観察して判定を行った。結果を表7に示す。また対照として比較例4にて作製したイムノクロマトグラフィーテストストリップを用い、同様の方法にて反応後、判定を行った。結果を表8に示す。」

(引1f)「[表7]



(引1g)「[表8]



(引1h)「[0078]
表7及び表8から明らかなように、本発明のP30タンパク質検出イムノクロマトグラフィーテストストリップを用いた検出法と核酸増幅法(PCR法)の結果は良好に相関することが示された。また比較例のP1タンパク質検出イムノクロマトグラフィーテストストリップと比較して、本発明は高い検出感度を示した。本結果から臨床現場において、本発明のP30タンパク質検出イムノクロマトグラフィーテストストリップにより、マイコプラズマ・ニューモニエを高感度かつ特異的に検出することが可能であることが示された。」

(引1i)「[図1]



イ 引用例1に記載された発明
上記(引1b)?(引1d)より、引用例1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「被験試料中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出するためのイムノクロマトグラフィーテストストリップ及び検体抽出液であって、
P30タンパク質のアミノ酸配列から、膜貫通ドメインを除いた細胞外領域である配列番号2に示すアミノ酸配列(AA74-274)を特定し、組換えP30タンパク質を精製し、
得られた組換えP30タンパク質を免疫用抗原として、組換えP30タンパク質に対するモノクローナル抗体(以下、抗P30抗体と称する)を作出し、
最終的にP30タンパク質に対するモノクローナル抗体産生細胞が5クローン得られ、
得られたモノクローナル抗体産生細胞が5クローンのうち、ハイブリドーマBLA-001およびBLA-002をマウス腹腔に接種し、得られた腹水それぞれを、さらに常法によりプロテインGを用いたIgG精製を行い、抗P30抗体を精製し、
得られたクローンBLA-002を用いた抗P30抗体に白金-金コロイド標識を行い、白金-金コロイド標識抗P30抗体(以下、「白金-金コロイド標識抗体」と記す)溶液を調製し、
クローンBLA-001を用いた抗P30抗体を、クロマト展開用膜担体3にライン状に塗布して、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質と白金-金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位31とし、
白金-金コロイド標識抗体溶液37.5μlを含浸せしめ、これを室温で乾燥させて白金-金コロイド標識抗体含浸部材2とし、
クロマト展開用膜担体3、上記標識抗体含浸部材2の他に、試料添加用部材5として綿布と、吸収用部材4として濾紙を用意し、これらの部材を用いて作製したイムノクロマトグラフィーテストストリップと
被検試料とするために、マイコプラズマ・ニューモニエのM129株およびFH株の培養菌液を希釈することにより所定濃度に調整する検体抽出液とからなる
イムノクロマトグラフィーテストストリップ及び検体抽出液。」

(2)引用例2について
ア 引用例2に記載された事項
引用例2(S. F. DALLO, A. L. LAZZELL, A. CHAVOYA, S. P. REDDY, AND J. B. BASEMAN、Biofunctional Domains of the Mycoplasma pneumoniae P30 Adhesin、INFECTION AND IMMUNITY、米国、1996.07.発行、Vol. 64, No. 7、p. 2595-2601、申立人松下の甲2号証、申立人森岡の甲9号証)には、以下の事項が記載されている。

(引2a)「Antibody reagents. Two synthetic peptides derived from the proline-rich carboxy-terminal repeat regions of adhesin P30 (amino acids PGMAPRPGMPPH [repeats A and B] and PGMAPRPGFPPCA [repeats A and C], i.e., amino acids 171 to 269 [10]) and one peptide upstream from these repeats (RLLEEKERQEQLAEQ [amino acids 106 to 120]) were purchased from Peninsula Laboratories (Belmont, Calif.) and coupled to keyhole limpet hemocyanin by the procedure supplied by Pierce (Rockford, Ill.). Eucaryotic structural proteins and goat antibodies to human fibrinogen were purchased from Sigma. MAbs reactive against the P30 adhesin of M. pneumoniae were previously described (31). Rabbit monospecific antibody reagents were generated by The University of Texas Health Science Center Institutional Immunology Facility. In this case, 2.5-kg male New Zealand White rabbits were immunized with 0.5 mg of the keyhole limpet hemocyanin-coupled P30 synthetic peptide or a keyhole limpet hemocyanin-irrelevant peptide emulsified in Freund’s incomplete adjuvant. On days 24, 43, and 59, rabbits received boosters of 300 mg, 400 mg, and 3.5 mg, respectively, of coupled peptides resuspended in Freund’s incomplete adjuvant. All immunizations were administered subcutaneously at multiple sites.」(2596頁左欄27-43行、当審訳:「抗体試薬。Adhesin P30のカルボキシ末端のプロリンリッチリピート領域に由来する2つの合成ペプチド(アミノ酸PGMAPRPGMPPH[リピートAおよびB]およびPGMAPRPGFPPCA[リピートAおよびC]、すなわちアミノ酸171-269[10])とそれらのリピートの上流の1つのペプチド(RLLEEKERQEQLAEQ[アミノ酸106-120])とをPeninsula Laboratories (Belmont, Calif.)から購入し、Pierce (Rockford, Ill.)によって提供された方法によって、スカシガイヘモシアニンにカップリングした。真核生物の構造タンパク質と人ファブリノーゲンに対するヤギ抗体は、Sigmaから購入した。M.ニューモニエのP30 Adhesinと反応するMabは、すでに知られている(31)。ウサギの単一特異性抗体は、テキサス大学ヘルスサイエンスセンターの所内免疫室において作成された。この場合、2.5kgの雄のニュージーランドホワイトウサギを、0.5mgのP30合成ペプチドにカップリングしたスカシガイヘモシアニンまたはスカシガイヘモグロビンと無関係なフロイント不完全アジュバントで乳化したペプチドで免疫した。24、43および59日に、ウサギは、それぞれ300μg、400μgおよび3.5mgのフロイント不完全アジュバントで再懸濁したカップリングしたペプチドで、追加免疫を受けた。すべての免疫は複数部位に皮下投与した。」)

(引2b)「Comparison of proline-rich repeats at the carboxy end of the wild-type P30 and mutant 7 P25 proteins. One of the unusual properties of the P30 adhesin of wild-type M. pneumoniae is the presence of three different types of proline-rich, 6-amino-acid repeats at the carboxy terminus (10). Figure 5A schematically contrasts the wild-type P30 adhesin, with its proline-rich 13-repeat units, with the mutant 7 truncated P25-related peptide. This latter deletion is very much apparent in the hydrophilicity plots of the wild-type and mutant 7 P30-related peptides (Fig. 5B). The truncated 25-kDa peptide of mutant 7 also contained each of the three different proline-rich repeats. However, repeat A (PGMAPR) was present seven times in the wild type and only three times in mutant 7; repeats B (PGMPPH) and C (PGFPPQ) were present three times in the wild type and only once in mutant 7. Interestingly, the deletion of the 144-bp comprising the eight repeat units in mutant 7 was in frame and did not affect the downstream reading frame of the cytadherence accessory hmw-3 gene (Fig. 4).」(2597頁右欄10行?2598頁左欄14行、当審訳:「天然P30と特異変種7 P25タンパク質のカルボキシ末端における、プロリンリッチの繰り返しの比較。
天然のM.ニューモニエのP30 adhesinの特異的な特徴の1つは、カルボキシ末端で6アミノ酸が繰り返す、3つの異なるタイプのプロリンリッチの存在である(10)。図5Aは、プロリンリッチな13の繰り返し単位を持つ天然のP30 adhesinと、変異型7の短縮型P25関連ペプチドとを模式的に比較している。後者の欠失は天然及び変異型7のP30関連ペプチドの親水性プロットにおいて大変明白である(図5B)。変異型7の短縮型の25kDaのペプチドもまた、3つの異なるプロリンリッチな繰り返しを含んでいる。しかしながら、リピートA(PGMAPR)は、天然のもので7回、変異型7で3回のみ存在し、リピートB(PGMPPH)及びC(PGFPPQ)は、天然のもので3回、変異体7で1回のみ存在する。興味深いことに、変異体7の8つのリピートユニットを含む144kpの欠失はインフレームであり、下流の細胞接着補助遺伝子hmw-3のリーディングフレームには影響していなかった。」)

(引2c)「Surface localization of the P30 proline-rich repeat domain. Whole-cell mycoplasma RIP was performed with antibodies generated against the proline-rich A-B and A-C repeat regions and an upstream non-proline-rich, hydrophilic region (Fig. 5A). As shown in Fig. 6B, antibodies reactive against the proline-rich A-B repeat region precipitated a 30-kDa protein from wild-type M. pneumoniae, a 25-kDa protein from mutant 7, and no peptides from mutant 15. An identical pattern was observed when antibodies generated against the A-C repeat region were used (data not shown). Antibodies generated against the upstream non-proline-rich region and prebleeding control sera detected no surface-accessible epitopes from either the wildtype or mutant mycoplasmas (Fig. 6A). Consistent with the RIP analysis (Fig. 6), the non-proline-rich, hydrophilic region (amino acids 106 to 120) is located between two membranespanning domains (amino acids 72 to 97 and 122 to 150), suggesting an intracytoplasmic orientation.」(2598頁左欄15行-右欄8行、当審訳:「P30プロリンリッチ繰り返しドメインの表面ローカリゼーション。プロリンリッチなAB及びACの繰り返し領域及び上流の非プロリンリッチな親水性領域に対して作製した抗体を用いての全細胞放射性免疫沈降を行った(図5A)。図6Bに見られるように、プロリンリッチなABの繰り返し領域に対し反応する抗体は、天然のM.ニューモニエから、30kDaのタンパク質、変異型7から25kDaのタンパク質を沈降させたが、変異型15からは如何なるペプチドも沈降させなかった。ACの繰り返し領域に対し作製された抗体を用いた時にも同じパターンが観察された(データ非掲載)。上流の非プロリンリッチ領域に対して作製された抗体及び予備採血コントロール血清では、天然又は変異型のマイコプラズマのいずれからも表面に接触可能なエピトープを検出できなかった(図6A)。放射性免疫沈降分析と一致して(図6)、非プロリンリッチな親水性領域(アミノ酸106?120)は、細胞質内配向を示している2つの膜貫通ドメイン(アミノ酸72?97及び122?150)の間に位置している。」)

(引2d)「

FIG. 5. (A) Schematic representation of the wild-type P30 adhesin and mutant P25-related peptide of M. pneumoniae. The repeat domains are indicated by the letters A (amino acids PGMAPR), B (PGMPPH), and C (PGFPPQ). Synthetic peptides composed of domains A and B and A and C were used to generate rabbit monospecific antibody reagents (see Materials and Methods). The asterisk indicates a nonrepetitive, non-proline-rich upstream sequence (amino acids 106 to 120 [RLLEEKERQEQLAEQ]) against which antisera were also raised. (B) Hydrophilicity plot of the deduced amino acid sequences of the functional P30 adhesin and its nonfunctional truncated 25-kDa counterpart (P25) determined by the method of Hopp and Woods (17). On the abscissa, positive numbers represent hydrophilic domains of the protein and negative numbers indicate hydrophobic domains; ordinate values are amino acid residues.」(2598頁左欄Fig.5及びその説明、当審訳:「図5 (A)M.ニューモニエの天然のP30 adhesin及び変異型P25関連のペプチドの模式図。繰り返しドメインが文字A(アミノ酸PGMAPR)、B(PGMPPH)、及び、C(PGFPPQ)で示される。ドメインA及びB、ならびに、A及びCからなる合成ペプチドを用いてウサギ単一特異性抗体試薬を作成した(材料と方法参照)。星印は、同様に抗血清を作成した上流の非プロリンリッチな非リピート配列(アミノ酸106?120[RLLEEKERQEQLAEQ])を示している。(B)機能的なP30 adheshin及び機能的でない短縮された25kDaの対応物(P25)のアミノ酸配列により推察された親水性のプロットが、Hopp and Woodsの方法により、決定された。横軸上の、正の値は親水性ドメインを表し、負の値は疎水性ドメインを表す。」)

イ 引用例2に記載された技術事項
(ア)(引2b)より、「天然のM.ニューモニエのP30 adhesinの特異的な特徴の1つは、カルボキシ末端で6アミノ酸が繰り返す3つの異なるタイプのプロリンリッチの存在であ」り、「リピートA(PGMAPR)は、天然のもので7回、変異型7で3回のみ存在し、リピートB(PGMPPH)及びC(PGFPPQ)は、天然のもので3回、変異体7で1回のみ存在する」ことから、「M.ニューモニエのP30 adhesin」には、「プロリンリッチ」な3つの異なるタイプのアミノ酸配列があり、これらのうち「リピートA(PGMAPR)は、天然のもので7回、変異型7で3回のみ存在し、リピートB(PGMPPH)及びC(PGFPPQ)は、天然のもので3回、変異体7で1回のみ存在する」ことが理解できる。

(イ)(引2a)及び(引2c)より、「Adhesin P30のカルボキシ末端のプロリンリッチリピート領域に由来する2つの合成ペプチド(アミノ酸PGMAPRPGMPPH[リピートAおよびB]およびPGMAPRPGFPPCA[リピートAおよびC]、すなわちアミノ酸171-269[10])とそれらのリピートの上流の1つのペプチド(RLLEEKERQEQLAEQ[アミノ酸106-120])」である、「プロリンリッチなAB及びACの繰り返し領域及び上流の非プロリンリッチな親水性領域に対して作製した抗体を用いての全細胞放射性免疫沈降を行」った結果、「プロリンリッチなABの繰り返し領域に対し反応する抗体は、天然のM.ニューモニエから、30kDaのタンパク質、変異型7から25kDaのタンパク質を沈降させたが、変異型15からは如何なるペプチドも沈降させ」ず、「ACの繰り返し領域に対し作製された抗体を用いた時にも同じパターンが観察された」ことより、「Adhesin P30のカルボキシ末端のプロリンリッチリピート領域に由来する2つの合成ペプチド(アミノ酸PGMAPRPGMPPH[リピートAおよびB]およびPGMAPRPGFPPCA[リピートAおよびC]、すなわちアミノ酸171-269[10])」をエピトープとする抗体は、天然のM.ニューモニエを検出できる点が理解できる。

(ウ)以上(ア)及び(イ)より、引用例2には、「M.ニューモニエのP30 adhesinには、3つの異なるタイプのアミノ酸配列があり、これらのアミノ酸配列のうちリピートA(PGMAPR)は、天然のもので7回、変異型7で3回のみ存在し、リピートB(PGMPPH)及びC(PGFPPQ)は、天然のもので3回、変異体7で1回のみ存在し、Adhesin P30のカルボキシ末端のプロリンリッチリピート領域に由来する2つの合成ペプチド(アミノ酸PGMAPRPGMPPH[リピートAおよびB]およびPGMAPRPGFPPCA[リピートAおよびC]、すなわちアミノ酸171-269[10])をエピトープとする抗体は、天然のM.ニューモニエを検出できること」(以下、「技術事項2」という。)が記載されている。

(3)引用例3について
ア 引用例3に記載された事項
引用例3(特開2012-037253号公報、申立人松下の甲3号証)には、以下の事項が記載されている。
(引3a)「【0020】
本発明のイムノクロマトグラフィー用試薬組成物中に使用できる非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名「Tween」シリーズ)、ポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、ポリオキシエチレンp-t-ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等を挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(商品名「Brij35」)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(商品名「Brij58」)が好ましく用いられる。特に好ましくは、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(商品名「Brij35」)であり、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(商品名「Brij35」)以外の非イオン性界面活性剤を実質的に含有しないことが望ましい。しかしながら、悪影響を及ぼさない範囲内においてその他の非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤などを配合して使用することも可能である。」

(引3b)「【0042】
(2)標識物質溶液の作製
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:LC40nm)0.5mlに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.05mg/mlの濃度になるように希釈したマウス由来抗インフルエンザAモノクローナル抗体(第二抗体)を0.1ml加え、室温で10分間静置した。次いで、1重量%の牛血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加え、更に室温で10分間静置した。その後、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1重量%のBSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加えた。以上の手順で標識物質溶液を作製した。
【0043】
(3)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製
上記作製した標識物質溶液300μLに300μLの10重量%トレハロース水溶液と1.8mLの蒸留水を加えたものを15mm×300mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識保持部材を作製した。次に、バッキングシートから成る基材に、上記作製したクロマトグラフィー媒体、標識物質保持部材、試料を添加する部分に用いるサンプルパッド(ミリポア社製:300mm×30mm)、展開した試料や標識物質を吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。そして、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、イムノクロマトグラフィー用試験片とした。
【0044】
(4)検体処理試薬の作製
2重量%カゼイン、25mM KCl、1重量%Brij35、0.095%アジ化ナトリウムを含む50mMのBicine緩衝液(pH8.5)を調製し、鼻汁・痰・咽頭ぬぐい液等の検体を処理するための試薬とした。」

(引3c)「【0046】
[実施例2=Tween20]
実施例1でBrij35の代わりに、ポリオキシエチレン(20)-ソルビタンモノラウリル酸エステル(Tween20(商品名))を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3=Triton X-100]
実施例1でBrij35の代わりに、ポリオキシエチレン(10)-p-t-オクチルフェニルエーテル(TritonX-100(商品名))を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。」

(4) 引用例4に記載された事項
引用例4(特開2012-058058号公報、申立人松下の甲4号証)には、以下の事項が記載されている。
(引4a)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、核酸又は免疫クロマトグラフィー測定を行うにあたり、分析対象物以外の成分の非特異的反応による結合を低減し、且つ分析対象物の分散能を高めクロマト担体上の展開性を良化するとともに、特異的反応を促進することで、低濃度の分析対象物を用いても正確且つ迅速な判断ができるようにすることを課題とする。」

(引4b)「【0024】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドが挙げられる。非イオン性界面活性剤のHLBは、10?18が好ましく、13?18がより好ましい。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンからなる群から選択される1種以上が特に好ましい。」

(5) 引用例5に記載された事項
引用例5(特開2010-019786号公報、申立人松下の甲5号証)には、以下の事項が記載されている。

(引5a)「【0030】
非イオン性界面活性剤
本発明で用いられる展開液は、上記酸素原子含有極性基を有するビニル系水溶性ポリマーに加え、非イオン性界面活性剤をさらに含有する。非イオン性界面活性剤としては、HLB値が10?18、さらに好ましくはHLB値が13?18のポリオキシエチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。ポリオキシエチレン系界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名「Tween」シリーズ)、ポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、ポリオキシエチレンp-t-ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)等を挙げることができ、より具体的には、「Tween」シリーズでは、特にTween20(商品名、HLB値16.7)、Tween40(商品名、HLB値15.6)、Tween60(商品名、HLB値15.0)、Tween80(商品名、HLB値14.9)、「Triton」シリーズでは、特にTriton X-100(商品名、HLB値13.5)、Nonidet P-40(商品名、HLB値13.1)、TritonX-102(商品名、HLB14.6)、TritonX-165(商品名、HLB15.8)、TritonX-405(商品名、HLB17.9)、「TritonN」シリーズでは、特にTritonN-101(商品名、HLB13.5)、TritonN-111(商品名、HLB13.8)、TritonN-150(商品名、HLB15.0)等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤は、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。上記した非イオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、組成物全体の重量に対し0.01?10重量%の範囲であり、好ましくは0.05?5重量%である。」

(6) 引用例6に記載された事項
引用例6(特開2012-159440号公報、申立人松下の甲6号証、申立人森岡の甲4号証)には、以下の事項が記載されている。
(引6a)「【請求項1】
試料供給部、標識試薬保持部、検出試薬が担持された免疫クロマトグラフ媒体部、および吸水部からなる免疫クロマトグラフィー装置と、食品中の動物肉由来タンパク質を被検出物質として抽出し、その抽出された抽出液を免疫クロマトグラフィー装置へ供給し、金ナノ粒子標識試薬とともに展開させ、被検出物質を検出するための免疫クロマト用抽出展開液と、を備える免疫クロマト検出キットにおいて、
抽出液は、免疫クロマトグラフィー装置へ直接供給され、移動相を構成する展開液として免疫クロマト装置中の標識試薬保持部に乾燥保持された金ナノ粒子標識試薬を溶出し、その溶出された金ナノ粒子標識試薬とともに展開されるものであって、抽出展開液が0.03?1w/v%のHLB値が12?18である非イオン界面活性剤、及び、0.01?0.5Mのアルカリ金属無機塩を含有する水溶液からなることを特徴とする食品中の動物肉由来タンパク質を検出するための免疫クロマト検出キット。」

(引6b)「【0018】
本発明の免疫クロマト検出キットに使用される抽出展開液中のHLB値が12?18である非イオン性界面活性剤は、夾雑物の抽出を抑制し被検出物質の高濃度の抽出、金ナノ粒子標識試薬の溶出と展開速度の促進、及び、展開ムラの抑制のために加える。HLB値が12?18である非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名「Tween」シリーズ)、ポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、ポリオキシエチレンp-t-ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等を挙げることができる。より具体的に「Tween」シリーズでは、特にTween20(商品名、HLB値16.7)、Tween40(商品名、HLB値15.6)、Tween60(商品名、HLB値15.0)、Tween80(商品名、HLB値14.9)、「Triton」シリーズでは、特にTriton X-100(商品名、HLB値13.5)、Nonidet P-40(商品名、HLB値13.1)、TritonX-102(商品名、HLB14.6)、TritonX-165(商品名、HLB15.8)、TritonX-405(商品名、HLB17.9)、「TritonN」シリーズでは、特にTritonN-101(商品名、HLB13.5)、TritonN-111(商品名、HLB13.8)、TritonN-150(商品名、HLB15.0)を挙げることができ好適に用いられる。HLB値が12?18である非イオン性界面活性剤は、単独でも2種以上を混合しても用いることが出来る。最適には、「Tween」シリーズのTween20(商品名、HLB値16.7)、Tween40(商品名、HLB値15.6)、Tween60(商品名、HLB値15.0)、Tween80(商品名、HLB値14.9)が単独で用いられる。」

(7)引用例7について
ア 引用例7に記載された事項
引用例7(特開2014-167439号公報、申立人松下の甲7号証、申立人森岡の甲2号証)には、以下の事項が記載されている。
(引7a)「【請求項1】
マイコプラズマ・ニューモニアを免疫クロマトグラフィー法で検出するために用いる検体浮遊液であって、非イオン性界面活性剤、及びトリス緩衝液及びホウ酸を含む緩衝液からなる群から選ばれる1つ以上の緩衝液を含みpHが7.0?8.5である検体浮遊液。
【請求項2】
非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項1に記載の検体浮遊液。
【請求項3】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルがHLB値12?15のポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項2に記載の検体浮遊液。」

(引7b)「【請求項8】
請求項1ないし4のいずれかに記載の検体浮遊液、及びマイコプラズマ・ニューモニアに対する抗体を用いた免疫クロマトグラフィー装置を含む、マイコプラズマ・ニューモニア検出用の免疫クロマトグラフィー・アッセイ・キット。」

(引7c)「【0034】
免疫クロマトグラフィー法においてマイコプラズマ・ニューモニアを捕捉するためには、マイコプラズマ・ニューモニアに対する抗体を捕捉試薬として用いることができるが、抗体の種類はマイコプラズマ・ニューモニア抗原と結合することができるものであれば特に限定されない。例えば、マイコプラズマ・ニューモニアを特異的に認識するポリクローナル抗体やモノクローナル抗体等が挙げられる。
【0035】
マイコプラズマ・ニューモニアを特異的に検出する抗体としては、例えば、特許文献1記載のリボソーム蛋白質L7/L12に対する抗体、及び特許文献2記載の膜抗原蛋白質に対するモノクローナル抗体が挙げられる。これらの中でも、リボソーム蛋白質L7/L12に対する抗体が好ましい。L7/L12リボソームタンパク質は、全ての微生物において同一の機能が保存された蛋白質の一種であり、蛋白質合成に必須なリボゾーム蛋白質としてその存在が知られている。また、リボソーム蛋白質L7/L12複合体は極めて安定であることが知られており、構造安定性が高く本発明の検体浮遊液のpH領域などの環境下でも構造が安定と考えられ、抗体との反応が阻害されにくいことが予想される。また、蛋白質のアミノ酸配列が既知であることより、免疫クロマトグラフィー法での免疫測定方法に、より有効な抗体を選択することが可能と考えられる。また、細胞内に1000?10000個が存在するために免疫測定方法には有効な抗原と考えらえる。また、以下に記載の公知の方法により、マイコプラズマ・ニューモニアを他の細菌と識別可能な抗体を実際に取得可能である。」

(引7d)「【0037】
本発明で使用することができる免疫クロマトグラフィー装置の一例を図1に示す。
該装置は、免疫測定法によってマイコプラズマ・ニューモニアの抗原を検出するための装置であって、該抗原に対する標識された第一の抗体又は標識された該抗原が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該抗原に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分又は該第2部分の上流に連結され、検体が滴下される第3部分とを有する試験片を含む装置である」

(引7e)「【0050】
(2)抗体固定化メンブレンの作製
抗体固定化用メンブレンには、ニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF135、300mm×20mm)を用いた。リン酸緩衝液(pH7.0)にてAMMP-Aを2.0mg/mLの濃度になるように希釈した。この溶液30μLをメンブレン上に1mmの幅で塗布し、50℃で30分間乾燥させた。乾燥後、0.5(w/v)%のスクロース(和光純薬社製)、0.05(w/v)%のコール酸ナトリウム(和光純薬社製)を含むトリス緩衝液(pH8.0)に洗浄し、室温で一晩乾燥させ固定化メンブレン(第2部分)を作製した。
【0051】
(3)抗体標識金コロイド含浸パッドの作製
金コロイド分散液(BBI社製:60nm)1mLにリン酸緩衝液(pH7.0)にて希釈した200μg/mLになるように調整したAMMP-Bを0.1mL加え撹拌後、室温で30分間静置した。次いで10(w/v)%のウシ血清アルブミン(SIGMA社製、以下BSA)を0.1mL加え撹拌後、さらに30分間静置した。その後、7000×gで20分間遠心分離を行い、上清を除去した後に、0.2(w/v)%のBSA、2(w/v)%のスクロースを含むトリス緩衝液(pH8.0)1mLを添加し十分に撹拌し懸濁した後に、10mm×120mmのグラスファイバー(ミリポア社製)に均一になるように添加し、真空乾燥機にて乾燥させ、抗体標識金コロイド含浸パッド(第1部分)を作製した。
【0052】
(4)免疫クロマトグラフィー用試験片の作製
接着層を持つバッキングシート(Adhesives Research Inc.製)からなる基材に上記作製した抗体固定化メンブレン、抗体標識金コロイド含浸パッド、試料を添加する部分に用いるサンプルパッド(第3部分:旭化成せんい社製、NE107)、展開した試料や余剰抗体固定化金コロイドを吸収するための吸収パッドを貼り合せた。そして、裁断機を用いて5mmの幅になるように裁断し、免疫クロマトグラフィー用試験片とした。」

(引7f)「【0054】
(6)検体浮遊液の準備
0.1(w/v)%のアジ化ナトリウム(ナカライテスク社製)を含むTris・HCl緩衝液(pH7.5)100mLに0.5(w/v)%となるようにポリオキシエチレンセチルエーテル(SIGMA社製、商品名:Brij58、HLB値:14.0)を加え検体浮遊液とした。」

イ 引用例7に記載された発明
上記(引7a)?(引7f)より、引用例7には以下の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されている

「マイコプラズマ・ニューモニアを免疫クロマトグラフィー法で検出するために用いる検体浮遊液であって、非イオン性界面活性剤からなる緩衝液を含み、
非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、
ポリオキシエチレンアルキルエーテルがHLB値12?15のポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、
検体浮遊液、及びマイコプラズマ・ニューモニアに対する抗体を用いた免疫クロマトグラフィー装置を含む、マイコプラズマ・ニューモニア検出用の免疫クロマトグラフィー・アッセイ・キットであって、
マイコプラズマ・ニューモニアを特異的に検出する抗体として、リボソーム蛋白質L7/L12に対する抗体、及び膜抗原蛋白質に対するモノクローナル抗体を用い、
免疫測定法によってマイコプラズマ・ニューモニアの抗原を検出するための装置であって、該抗原に対する標識された第一の抗体が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該抗原に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分又は該第2部分の上流に連結され、検体が滴下される第3部分とを有する試験片を含む装置であり、
固定化メンブレン(第2部分)を作製し、
抗体標識金コロイド含浸パッド(第1部分)を作製し、
基材に抗体固定化メンブレン、抗体標識金コロイド含浸パッド、試料を添加する部分に用いるサンプルパッド(第3部分)、展開した試料や余剰抗体固定化金コロイドを吸収するための吸収パッドを貼り合せ、免疫クロマトグラフィー用試験片とした、
マイコプラズマ・ニューモニア検出用の免疫クロマトグラフィー・アッセイ・キット。」

(8)引用例8に記載された事項
引用例8(特開2009-085911号公報、申立人森岡の甲3号証)には、以下の事項が記載されている。
(引8a)「【請求項1】
0.05?0.5w/v%の非イオン性界面活性剤と0.5?2.5Mの無機塩を含有することを特徴とする、免疫測定法により食品中のアレルギー物質を検出するための検体希釈液。
【請求項2】
非イオン性界面活性剤のHLB値が10?20である請求項1記載の検体希釈液。
【請求項3】
非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである請求項1又は2記載の検体希釈液。」

(引8b)「【0032】
試験例4:イムノクロマト法における、甲殻類タンパク質の測定
甲殻類タンパク質のイムノクロマト法における検体希釈液の甲殻類以外の食品タンパク質に対する交差反応性の影響を検証した。」

(9)引用例9に記載された事項
引用例9(特開2005-291780号公報、申立人森岡の甲5号証)には、以下の事項が記載されている。
(引9a)「【0010】
本発明の組成物は、免疫測定法に供する検体浮遊液を調製するために用いられる媒体組成物である。免疫測定法は、特に限定されないが、分析対象物を含む検体がメンブラン上、もしくはメンブラン上の捕捉試薬固定化領域(判定領域)に直接滴下される、フロースルー式免疫測定法やイムノクロマトグラフィー(ラテラルフロー式免疫測定法)が好ましい。」

(引9b)「【0014】
非イオン性界面活性剤としては、HLB値が10以上、さらに好ましくはHLB値が13以上のポリオキシエチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。HLB値の上限は特にないが、通常、HLB値は、20以下である。ポリオキシエチレン系界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができ、より具体的には、ポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、特にTriton X-100(商品名、HLB値13.5)、Nonidet P-40(商品名、HLB値13.1)、TritonX-102(商品名、HLB14.6)、TritonX-165(商品名、HLB15.8)、TritonX-405(商品名、HLB17.9)、ポリオキシエチレンp-t-ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)、特にTritonN-101(商品名、HLB13.5)、TritonN-111(商品名、HLB13.8)、TritonN-150(商品名、HLB15.0)等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤は、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。」

(10)引用例10に記載された事項
引用例10(特開平11-108932号公報、申立人森岡の甲6号証)には、以下の事項が記載されている。
(引10a)「【0046】ここで、検体の処理に用いる陰イオン性界面活性剤はSDS以外でも、セチル硫酸ナトリウムや他のアルキル化硫酸エステル、ドデシルスルホン酸ナトリウムのようなアルキル化スルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などでも可能であり、陰イオン性界面活性剤以外に加える界面活性剤としては、CHAPS(3-〔3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕-1-プロパンスルホン酸),CHAPSO(3-〔コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)、ドデシル-N-ベタインなどの両イオン性界面活性剤やTritonX100などのポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル類、NP40などのポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル類、Tween80などのポリオキシエチレンソルビトールエステル類、Brij58のようなポリオキシエチレンドデシルエーテル類、オクチルグルコシドといった非イオン性界面活性剤が適当で有り、好ましくはCHAPSなどの両イオン性界面活性剤とTriton-X100などの非イオン性界面活性剤を含む。また、ここに尿素、チオ尿素などの蛋白質の高次構造を壊す様な作用を示す薬剤(蛋白質変性剤)を加えることも効果的である。」

(11)引用例11に記載された事項
引用例11(特開2007-163182号公報、申立人森岡の甲7号証)には、以下の事項が記載されている。
(引11a)「【0006】
特許文献3には、エンザイムイムノアッセイ法でHbA1cの濃度を測定する際、2-ブタノールとともに併用される溶血試薬として界面活性剤が挙げられ、通常用いられる多くの標識酵素(例えば、アミラーゼ)の酵素活性を低下させないため、ノニオン性界面活性剤が好ましいことが開示されている。
【特許文献1】特表平8-501208号公報
【特許文献2】特開平6-11510号公報
【特許文献3】特開平9-166594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、近年、検査の緊急性、救急医療、在宅検査などに対応できる迅速・簡便(且つ正確)な検査:ポイント・オブ・ケア検査(POCT)のニーズが高まっており、特に検査のスピードが要求されている。そのため、検査ための検体前処理として、溶血工程の時間も短縮する必要性がますます高まっている。
【0008】
しかしながら、特許文献1?3のいずれも、イオン性界面活性剤もしくはノニオン性界面活性剤を用いて溶血処理を行うことが開示されているものの、どの界面活性剤が短時間で完全溶血できるのか明確ではなく、通常の溶血工程は数分間の時間がかかっていた。
【0009】
本発明の目的は、迅速に完全溶血することができ、且つ酵素活性への阻害もない、界面活性剤を使用する溶血方法および溶血試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特許文献3に記載されているノニオン性界面活性剤は、非常に広範囲のものが挙げられており、これらのノニオン性界面活性剤には、(イ)溶血できるが酵素活性に阻害があるもの、(ロ)酵素活性に阻害がないが溶血できないもの、(ハ)迅速に完全溶血できず、かつ酵素活性に阻害があるもの、(ニ)迅速に完全溶血でき、かつ酵素活性に阻害がないものが含まれているものと考えられる。本発明者らは、どのようなノニオン性界面活性剤が、(a)迅速完全溶血、(b)酵素への阻害がないという、(a)および(b)の二つの条件を同時に満足するのか、鋭意検討を行った結果、以下の構成によって、上記課題を達成することができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0011】
本発明に係る溶血方法は、糖化タンパク質を検出するための、界面活性剤を用いる溶血方法であって、該界面活性剤がHLB値11?13の範囲のノニオン性界面活性剤であることを特徴とするものである。」

(12)引用例3?11に記載された技術事項
(ア)引用例3には、イムノクロマトグラフィー用検体処理液に、「Brij35」、「Tween20」、「TritonX-100」などの非イオン界面活性剤を使用した点が記載されており、「Brij35」、「Tween20」、「TritonX-100」のHLB値は、それぞれ16、16.7、13.7である。

(イ)引用例4及び5には、非イオン界面活性剤を含むイムノクロマトグラフ法における展開液が開示され、非イオン界面活性剤のHLB値が13?18が好ましい点が記載されている。

(ウ)引用例6には、免疫クロマトグラフィー装置に使用される、抽出展開液にHLB値が12?18の非イオン界面活性剤を含む点が記載されている。

(エ)引用例7には、免疫クロマトグラフィーの検体浮遊液に含まれる、非イオン界面活性剤のHLB値が12?15である点が記載されている。

(オ)引用例8には、甲殻類タンパク質のイムノクロマト法における検体希釈液に、HLB値が10?20の非イオン性界面活性剤を含む点が記載されている。

(カ)引用例9には、イムノクロマトグラフィーの検体浮遊液に、HLB値が13以上の非イオン界面活性剤を含む点が記載されている。

(キ)引用例10には、検体の処理に、非イオン性界面活性剤である「TritonX100」を含む処理液を使用した点が記載されており、「TritonX100」のHLB値は、13.7である。

(ク)引用例11には、エンザイムイムノアッセイ法において、HLB値11?13の範囲のノニオン性界面活性剤を含む溶血試薬を使用した点が記載されている。

(13)先願12について
ア 先願12の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項
取消理由通知において引用した先願12(PCT/JP2016/052381(優先権主張2015年(平成27年)1月29日)、国際公開第2016/121831号(申立人森岡の甲1号証))の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の事項が記載されている。

(先12a)「[0035]
被験試料中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出するための本発明のイムノクロマトグラフィー測定法は、公知のイムノクロマトグラフィー法テストストリップの構成に準拠して容易に実施できる。
一般に、かかるイムノクロマトグラフィー法テストストリップは、抗原の第一の抗原決定基にて抗体抗原反応可能な第一の抗体と、前記抗原の第二の抗原決定基にて抗体抗原反応可能で且つ標識された第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されて構成される。第一の抗体および第二の抗体は、上述のように、それぞれポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であっても良いが、少なくとも何れか一方がモノクローナル抗体であることが好ましい。通常は、第一の抗体及び第二の抗体は「ヘテロ」の組み合わせで用いられ、すなわち、抗原上の位置および構造の何れもが異なる各抗原決定基をそれぞれ認識する第一の抗体及び第二の抗体が組み合わせて用いられる。しかしながら、第一の抗原決定基と第二の抗原決定基は抗原上の位置が異なっていれば構造的に同一であってもよく、その場合、第一の抗体および第二の抗体は「ホモ」の組み合わせのモノクローナル抗体であってよく、すなわち、第一の抗体および第二の抗体の両方に同一のモノクローナル抗体が使用できる。」

(先12b)「[0047]
(実施例1:組換えP30タンパク質の発現と精製)
マイコプラズマ・ニューモニエM129株のP30タンパク質のアミノ酸配列をDDBJ(国立遺伝学研究所データベース)より入手した。前記P30タンパク質のアミノ酸配列から、膜貫通ドメインを除いた細胞外領域である配列番号2に示すアミノ酸配列(AA74-274)を特定し、対応する遺伝子配列を合成した。His-tag発現用ベクターであるpET302/NT-Hisを制限酵素EcoRIで切断した後、脱リン酸化処理としてアルカリフォスファターゼにより処理し、前記遺伝子配列と混合し、DAN Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ)を用いてライゲーション反応をおこなった。目的遺伝子を組み込んだ組換えP30プラスミドを組換え蛋白発現用宿主E.coli BL(DE3) pLysS(Novagen社の製品)に導入した。導入菌をLB寒天平板培地で培養し、得られたコロニーをLB液体培地で培養した。さらに1mM IPTG(タカラバイオ社の製品)を添加して組換えP30タンパク質の発現を誘導した後、E.coliを回収した。回収した菌を可溶化バッファー[0.5% Triton X-100(Sigma社の製品)、10mM Imidazole、20mM Phosphateおよび0.5M NaCl(pH7.4)(Amersham社の製品)]に再浮遊し、超音波処理により可溶化した後、組換えP30タンパク質をHis trap Kit(Amersham社の製品)を用いて精製した。この精製タンパク質をリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと称する)に対して透析し、目的の組換えP30タンパク質とした。
[0048]
(実施例2:組換えP30タンパク質に対するモノクローナル抗体の作出)
実施例1で得られた組換えP30タンパク質を免疫用抗原として、組換えP30タンパク質に対するモノクローナル抗体(以下、抗P30抗体と称する)を作出した。モノクローナル抗体の作出は常法に従っておこなった。100μgの組換えP30タンパク質と等量のAduvant Complete Freund(Difco社の製品)を混合して、マウス(BALB/c、5週齢、日本SLC)に3回免疫し、その脾臓細胞を細胞融合に用いた。細胞融合には、マウスの骨髄腫細胞であるSp2/0-Ag14細胞(Shulmanら、1978)を用いた。細胞の培養には、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(Gibco社の製品)にL-グルタミン 0.3mg/ml、ペニシリンGカリウム 100単位/ml、硫酸ストレプトマイシン 100μg/ml、Gentacin 40μg/mlを添加し(以下、DMEMと称する)、これに牛胎児血清(JRH社の製品)を10%となるように加えた培養液を用いた。細胞融合は、免疫マウスの脾臓細胞とSp2/0-Ag14細胞を混合し、そこにPolyethylene glycol solution(Sigma社の製品)を添加することにより行った。融合細胞はHAT-DMEM[0.1mM Sodium Hypoxanthine、0.4μM Aminopterinおよび0.016mM Thymidine(Gibco社の製品)を含む血清加DMEM]で培養し、酵素結合抗体法(ELISA)により培養上清中の抗体産生を確認した。抗体産生陽性の細胞をHT-DMEM[0.1mM Sodium Hypoxantineおよび0.16mM Thmidineを含む血清加DMEM]で培養し、さらに血清加DMEMで培養を続けた。
[0049]
(実施例3:モノクローナル抗体の調製)
クローニングした細胞は、2, 6, 10, 14-Tetramethylpentadecane(Sigma社の製品)を接種しておいたマウス(BALB/c、リタイア、日本SLC)に腹腔内接種し、腹水を採取した。この腹水をプロテインGカラムに供し、モノクローナル抗体を精製した。作出したモノクローナル抗体のアイソタイプは、Mouse Monoloconal Antibody Isotyping Reagents(Sigma社の製品)を用いて同定した。
最終的にP30タンパク質に対するモノクローナル抗体産生細胞が6クローン得られた。」

(先12c)「[0052]
(実施例4:抗P30抗体のエピトープ解析)
配列番号1のマイコプラズマ・ニューモニエ由来のP30タンパク質のアミノ酸配列より、N末端側に存在するプロリンを多く含む領域からエピトープとなり得る可能性のあるアミノ酸配列を選択し、配列番号3乃至5のアミノ酸配列からなるポリペプチドを合成した。合成したポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列のN末端から178-189番目のGMAPRPGMPPHP(配列番号3)、190-201番目のGMAPRPGFPPQP(配列番号4)および、250-262番目のGMAPRPGMQPPRP(配列番号5)であった。なお、配列番号3に示す配列は、N末端から202-213番目および226-237番目において同様の配列が存在し、また配列番号4に示す配列は214-225番目および238-249番目において同様の配列が存在する。すなわち、配列番号3および4のアミノ酸配列はP30タンパク質内に複数存在し、繰り返し構造を有している。
前記配列番号3乃至5に示すアミノ酸配列からなるペプチドを、96穴マイクロプレートに添加し固相化した。対照として、マイコプラズマ・ニューモニエ(M.pneumoniae)精製菌体、実施例1にて調製した精製P30タンパク質、P30タンパク質のN末端側から101-125番目のKRKEKRLLEEKERQEQLORIS(配列番号6)、126-145番目のAQQEEQQALEQQAAAEAHAE(配列番号7)からなるポリぺプチド、および参考例1にて調製したマイコプラズマ・ニューモニエのP1タンパク質を固相化し、前記と同様に実施例3にて作出したモノクローナル抗体の反応性を確認した。
ペプチドを所定濃度にて固相化したマイクロプレートに、実施例3にて作製したモノクローナル抗体を添加し、室温にて1時間反応させた。次にウェル内の溶液を吸引除去し、洗浄後、ビオチン標識抗マウス抗体を反応させた。1時間の反応の後、ウェル内の溶液を吸引除去し洗浄した後、アビジン標識ホースラディッシュペルオキシダーゼを添加し反応させた。その後、発色基質として3, 3’, 5, 5’-テトラメチルベンジジン(TMBZ)溶液を添加し反応させ、2規定の硫酸により反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(Biorad社の製品)にて主波長450nmにて吸光度を測定した。結果を表1に示す。
[表1]

[0053]
上記結果より、モノクローナル抗体BLMP001は、配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチドに最も強い反応を示した。また類似配列である配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドおよび配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対しても反応を示した。
モノクローナル抗体BLMP002は配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対し強い反応を示し、モノクローナル抗体BLMP003は配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドに強い反応を示した。モノクローナル抗体BLMP001と同様に、類似するアミノ酸配列からなる他のポリペプチドに対しても反応性を示した。
モノクローナル抗体BLMP004は、配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチド全てに対し反応を示した。それぞれのアミノ酸配列における共通する配列を認識するモノクローナル抗体であることが推測される。
モノクローナル抗体BLMP001、BLMP002及びBLMP003はM.pneumoniae精製菌体および精製P30タンパク質に対し高い反応を示し、対照とした精製P1タンパク質に対し反応性を示さなかった。
よってモノクローナル抗体BLMP001はP30タンパク質における配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識し、モノクローナル抗体BLMP002は配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識し、モノクローナル抗体BLMP003は配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識する抗体であることが確認された。
[0054]
(実施例5:抗P30抗体を用いたイムノクロマトグラフィー法テストストリップの作製)
(1)抗P30抗体の調製
実施例3で得られたモノクローナル抗体BLMP001産生細胞およびモノクローナル抗体BLMP004産生細胞をマウス腹腔に接種し得られた腹水それぞれを、さらに常法によりプロテインGを用いたIgG精製を行い、抗P30抗体とした。
[0055]
(2)白金-金コロイド粒子溶液の調製
使用するガラス器具の全てを王水で洗浄した。390mlの超純水をフラスコに入れて沸騰させ、この沸騰水に塩化金酸水溶液(水溶液1リットル当たり金として1g 、片山化学工業株式会社製)30mlを加え、その後、1重量% クエン酸ナトリウム水溶液60mlを加え、6分45秒後に、塩化白金酸水溶液(水溶液1リットル当たり白金として1g、和光純薬工業株式会社製) 30mlを加えた。塩化白金酸水溶液添加から5分後に1重量% クエン酸ナトリウム水溶液60mlを加え、4時間、還流を行い、白金-金コロイド懸濁液を得た。
[0056]
(3)白金-金コロイド標識抗P30抗体溶液の調製
白金-金コロイド標識する抗P30抗体として、上記(1)で得られたモノクローナル抗体BLMP001を用い、下記の手順で白金-金コロイド標識を行った。
抗P30抗体の蛋白換算重量1μg(以下、抗体の蛋白換算重量を示すとき、単に、その精製蛋白質の重量分析による重量数値で示す)と上記(2)の白金-金コロイド溶液1mlとを混合し、室温で2分間静置してこの抗体のことごとくを白金-金コロイド粒子表面に結合させた後、白金-金コロイド溶液における最終濃度が1%となるように10% ウシ血清アルブミン(以下、「BSA」と記す)水溶液を加え、この白金-金コロイド粒子の残余の表面をことごとくこのBSAでブロックして、白金-金コロイド標識抗P30抗体(以下、「白金-金コロイド標識抗体」と記す)溶液を調製した。この溶液を遠心分離(5600×G、30分間)して白金-金コロイド標識抗体を沈殿せしめ、上清液を除いて白金-金コロイド標識抗体を得た。この白金-金コロイド標識抗体を10% サッカロース・1% BSA・0.5% Triton-X100を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁して白金-金コロイド標識抗体溶液を得た。
[0057]
(4)マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質検出用イムノクロマトグラフィー法テストストリップの作製
(4-1)マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位
幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース膜をクロマトグラフ媒体のクロマト展開用膜担体3として用意した。抗P30抗体1.0 mg/mlが含有されてなる溶液0.5μlを、このクロマト展開用膜担体3におけるクロマト展開開始点側の末端から7.5mmの位置にライン状に塗布して、これを室温で乾燥し、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質と白金-金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位31とした。この塗布用抗P30抗体として、上記(1)で得られたモノクローナル抗体BLMP004を用いた。
(4-2)白金-金コロイド標識抗体含浸部材
5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布に、白金-金コロイド標識抗体溶液37.5μlを含浸せしめ、これを室温で乾燥させて白金-金コロイド標識抗体含浸部材2とした。
(4-3)イムノクロマトグラフィー法テストストリップの作製
上記クロマト展開用膜担体3、上記標識抗体含浸部材2の他に、試料添加用部材5として綿布と、吸収用部材4として濾紙を用意した。そして、これらの部材を用いて、図1と同様のイムノクロマトグラフィー法テストストリップを作製した。
[0058]
(5)試験
マイコプラズマ・ニューモニエのM129株およびFH株の培養菌液を検体抽出液で希釈して、所定濃度に調製し、被検試料とした。そして、被検試料100μ1を用いて上記(4)で得られたテストストリップの試料添加用部材5にマイクロピペットで滴下してクロマト展開し、室温で15分放置後、上記捕捉部位31で捕捉されたP30タンパク質と白金-金コロイド標識抗体との複合体の捕捉量を肉眼で観察した。捕捉量は、その量に比例して増減する黒色の呈色度合いを肉眼で-(着色なし)、±(微弱な着色)、+(明確な着色)、++(顕著な着色)、+++(極めて顕著な着色)の5段階に区分して判定した。陰性対照として、マイコプラズマ・ジェニタリウム(M.genitalium)の培養菌液を所定濃度にて用いた。
その結果を表2に示す。表2から明らかなように、マイコプラズマ・ニューモニエの2株に対し高い反応性を示し、陰性対照であるマイコプラズマ・ジェニタリウムに対しては適用した濃度全てにおいて陰性を示した。2種の抗P30抗体を使用したイムノクロマトグラフィー測定法により、高感度かつ高精度にマイコプラズマ・ニューモニエを検出できることがわかった。」

(先12d)「[0062]
(実施例7:咽頭拭い液からのマイコプラズマ・ニューモニエの検出)
臨床的にマイコプラズマ・ニューモニエの感染が疑われる患者20例を対象とし、前記患者から滅菌した綿棒を用いて、咽頭拭い液を採取した。前記咽頭拭い液は国立感染症研究所報告の核酸増幅法により、咽頭拭い液中にマイコプラズマ・ニューモニエが存在するか確認した。その結果より、採取した咽頭拭い液中からマイコプラズマ・ニューモニエの存在が確認された検体16例(陽性例)と遺伝子が検出されなかった検体4例(陰性例)を選択し、選択された咽頭拭い液を被験試料として調製した。被験試料は本発明のP30タンパク質検出イムノクロマトグラフィー法テストストリップを用いて、マイコプラズマ・ニューモニエの検出を実施した。従来法として市販されているマイコプラズマ・ニューモニエのP1タンパク質を検出する試薬を用いた。
[0063]
被検試料100μlを実施例5にて作製したイムノクロマトグラフィー法テストストリップの試料添加用部材5にマイクロピペットでそれぞれ滴下してクロマト展開し、室温で15分間放置後、捕捉部位31で捕捉された抗原と白金-金コロイド標識抗体との複合体を肉眼で観察して判定を行った。捕捉量は、その量に比例して増減する黒色の呈色度合いを肉眼で-(着色なし)、±(微弱な着色)、+(明確な着色)、++(顕著な着色)、+++(極めて顕著な着色)の5段階に区分して判定した。試験の結果を表4に示す。
[表4]

[0064]
表4から明らかなように、本発明の検出法と核酸増幅法の比較結果から、本発明の検出法は陽性一致率93.8%、陰性一致率100.0%、および、全体一致率95.0%と非常に高い一致率を示し、核酸増幅法と同等の精度にて検出することができることを確認した。従来法と比較し、本発明の検出法は高い検出感度と特異性を有する検出法であることが示された。
以上の結果から、本発明のイムノクロマトグラフィー法テストストリップは、咽頭拭い液からマイコプラズマ・ニューモニエを高感度かつ高精度に検出することができることを確認した。」


(先12e)「[図1]



イ 先願12の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明
上記(先12a)?(先12c)より、先願12の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面には以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

「被験試料中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出するためのイムノクロマトグラフィーテストストリップ及び検体抽出液であって、
マイコプラズマ・ニューモニエM129株のP30タンパク質のアミノ酸配列をDDBJ(国立遺伝学研究所データベース)より入手し、
前記P30タンパク質のアミノ酸配列から、膜貫通ドメインを除いた細胞外領域である配列番号2に示すアミノ酸配列(AA74-274)を特定し、対応する遺伝子配列を合成し、
得られた組換えP30タンパク質を免疫用抗原として、組換えP30タンパク質に対するモノクローナル抗体(以下、抗P30抗体と称する)を作出し、
クローニングした細胞は、2, 6, 10, 14-Tetramethylpentadecane(Sigma社の製品)を接種しておいたマウス(BALB/c、リタイア、日本SLC)に腹腔内接種し、腹水を採取し、
この腹水をプロテインGカラムに供し、モノクローナル抗体を精製し、
最終的にP30タンパク質に対するモノクローナル抗体産生細胞が6クローン得られ、
配列番号1のマイコプラズマ・ニューモニエ由来のP30タンパク質のアミノ酸配列より、N末端側に存在するプロリンを多く含む領域からエピトープとなり得る可能性のあるアミノ酸配列を選択し、配列番号3乃至5のアミノ酸配列からなるポリペプチドを合成し、
合成したポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列のN末端から178-189番目のGMAPRPGMPPHP(配列番号3)、190-201番目のGMAPRPGFPPQP(配列番号4)および、250-262番目のGMAPRPGMQPPRP(配列番号5)であり、配列番号3に示す配列は、N末端から202-213番目および226-237番目において同様の配列が存在し、また配列番号4に示す配列は214-225番目および238-249番目において同様の配列が存在し、すなわち、配列番号3および4のアミノ酸配列はP30タンパク質内に複数存在し、繰り返し構造を有し、
上記P30タンパク質に対するモノクローナル抗体産生細胞から産生される抗P30抗体のうち、
モノクローナル抗体BLMP001は、配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチドに最も強い反応を示し、また類似配列である配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドおよび配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対しても反応を示し、
モノクローナル抗体BLMP004は、配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチド全てに対し反応を示し、
得られたモノクローナル抗体BLMP001産生細胞およびモノクローナル抗体BLMP004産生細胞をマウス腹腔に接種し得られた腹水それぞれを、さらに常法によりプロテインGを用いたIgG精製を行い、抗P30抗体とし、
白金-金コロイド標識する抗P30抗体として、得られたモノクローナル抗体BLMP001を用い、下記の手順で白金-金コロイド標識を行い、
得られたモノクローナル抗体BLMP004を用いて、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質と白金-金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位31とし、
ガラス繊維不織布に、白金-金コロイド標識抗体溶液37.5μlを含浸せしめ、これを室温で乾燥させて白金-金コロイド標識抗体含浸部材2とし、
上記クロマト展開用膜担体3、上記標識抗体含浸部材2の他に、試料添加用部材5として綿布と、吸収用部材4として濾紙を用意し、これらの部材を用いて作製された、イムノクロマトグラフィー法テストストリップと、
被検試料として、マイコプラズマ・ニューモニエのM129株およびFH株の培養菌液を希釈することにより所定濃度に調整する検体抽出液とからなる、
マイコプラズマ・ニューモニエを検出するためのイムノクロマトグラフィーテストストリップ及び検体抽出液。」

3 当審の判断
(1)引用発明1との対比・判断
ア 本件発明1との対比
(ア)引用発明1の「試料添加用部材5」、「標識抗体含浸部材2」、「クロマト展開用膜担体3」及び「吸収用部材4」は、それぞれ本件発明1の「試料添加部」、「標識物質保持部」、「検出部」及び「吸収部」に相当する。そして、図1より引用発明1の「試料添加用部材5」、「標識抗体含浸部材2」及び「クロマト展開用膜担体3」は、「イムノクロマトグラフィーテストストリップ」の一部として形成されている点が見て取れる。そうすると、引用発明1の「試料添加用部材5」、「標識抗体含浸部材2」及び「クロマト展開用膜担体3」からなる部分は、本件発明1の「試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部」に相当する。

(イ)引用発明1の「マイコプラズマ・ニューモニエを検出するためのイムノクロマトグラフィーテストストリップ」及び「検体抽出液」は、それぞれ、本件発明1の「マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を検出するための免疫クロマト分析装置」及び「検体希釈液」に相当する。そして、引用発明1の「マイコプラズマ・ニューモニエを検出するためのイムノクロマトグラフィーテストストリップ」は、「被検試料とするために、マイコプラズマ・ニューモニエのM129株およびFH株の培養菌液を希釈することにより所定濃度に調整する検体抽出液」と共に使用されるものであって、引用発明1の「マイコプラズマ・ニューモニエを検出するためのイムノクロマトグラフィーテストストリップ」と「検体抽出液」とがキットとして使用されることは技術常識であるから、引用発明1の「マイコプラズマ・ニューモニエを検出するためのイムノクロマトグラフィーテストストリップ及び検体抽出液」は、本件発明1の「免疫クロマト分析キット」に相当する。

(ウ)引用発明1の「抗P30抗体」は「P30タンパク質のアミノ酸配列から、膜貫通ドメインを除いた細胞外領域である配列番号2に示すアミノ酸配列(AA74-274)を特定し、得られた組換えP30タンパク質を免疫用抗原として」、「組換えP30タンパク質に対するモノクローナル抗体」として作出されたものであるから、本件発明1の「抗体」とは、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のアミノ酸配列を認識する抗体」である点で共通する。

上記(ア)?(ウ)より、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、相違点1?3で相違する。

(一致点)
「試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を検出するための免疫クロマト分析装置と、検体希釈液とを含む、免疫クロマト分析キットであって、
前記標識物質保持部及び検出部が、配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のアミノ酸配列を認識する抗体を含有する
免疫クロマト分析キット。」

(相違点1)前記標識物質保持部及び検出部に含有される抗体が、本件発明1は、いずれも「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」であって、「前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少するものであ」るのに対し、引用発明1は、配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のアミノ酸配列を認識する抗体ではあるが、配列番号2のどこのアミノ酸配列を認識するものであるか特定されておらず、また、「クローンBLA-001を用いた抗P30抗体を、クロマト展開用膜担体3に」、「クローンBLA-002を用いた」「白金-金コロイド標識抗体」を「標識抗体含浸部材2」に使用した点。

(相違点2)標識物質保持部の抗体の含有量が、本件発明1は、「0.06?0.25μg」であるのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。

(相違点3)検体希釈液が、本件発明1は、「HLB値が13?17の非イオン性界面活性剤を含有」しているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。

イ 本件発明1についての判断
相違点1について検討する。
本件発明1の「抗体」は、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」であって、「配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少する」「抗体」であることから、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列」を、特に認識する「抗体」であると認められる。
本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0014】に、「また、配列番号2に示されるP30タンパク質のドメインIIIは、P30タンパク質(配列番号1)のうちアミノ酸配列の177番目から274番目に相当する領域であり、特定のアミノ酸の繰り返し配列に富むドメインである。ドメインIIIにおけるアミノ酸の繰り返し配列は3種類あり、配列番号3(PGMAPR)に示されるアミノ酸配列が7箇所、配列番号4(PGMPPH)に示されるアミノ酸配列が3箇所、配列番号5(PGFPPQ)に示されるアミノ酸配列が3箇所存在する。」と記載されており、この記載より、本件発明1の「ドメインIII」は「P30タンパク質(配列番号1)のうちアミノ酸配列の177番目から274番目に相当する領域」であって、技術事項2の「アミノ酸171-269[10]」は、プロリンを多く含むアミノ酸配列の繰り返し構造からなる部分の全てをいずれも含んでいることから、技術事項2の「アミノ酸171-269[10]」は、本件発明1の「ドメインIII」にほぼ一致しているといえる。そして、技術事項2の「リピートA(PGMAPR)」は、本件発明1の「ドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列」に相当する。また、技術事項2の「Adhesin P30のカルボキシ末端のプロリンリッチリピート領域に由来する2つの合成ペプチド(アミノ酸PGMAPRPGMPPH[リピートAおよびB]およびPGMAPRPGFPPCA[リピートAおよびC]、すなわちアミノ酸171-269[10])をエピトープとする抗体」は、いずれも、リピートAを認識しているから、技術事項2の「抗体」は、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」であると認められる。しかしながら、引用例2には、技術事項2の「抗体」が、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列」を、どの程度認識するかに関し何ら記載されていない。
すると、技術事項2の「抗体」は「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」ではあるが、該アミノ酸配列をどの程度認識する抗体であるか特定されていないから、技術事項2より、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」であって、「配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少する」「抗体」を、当業者が容易に想到できるとは認められない。
また、他の引用例3?11には、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列」を特に認識する抗体は記載されていない。
よって、本件発明1は、引用発明1、技術事項2及び引用例3?11に記載された技術事項から当業者が容易に想到できたものであるとはいえないから、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、当業者が容易に発明できたものではない。

ウ 本件発明2?4について
本件発明2は、本件発明1を「前記標識物質保持部が含有する標識物質が金コロイド粒子であり、前記標識物質保持部が前記金コロイド粒子を、0.25?0.7μg/cm^(2)含有する」と限定したものであり、本件発明3は、本件発明1又は2を、「前記検体希釈液が含有する非イオン性界面活性剤の50%以上が、HLB値が13?17の非イオン性界面活性剤」であると限定したものであり、本件発明4は、本件発明1の「免疫クロマト分析キット」を、この「免疫クロマト分析キット」と同様の手段を有する装置を用いて「検体中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出する方法」としたものであって、いずれの発明も、本件発明1と同様に相違点1を有しているから、本件発明2?4も、上記(イ)と同様に理由により、引用発明1、技術事項2及び引用例3?11に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

エ 以上ア?ウのとおり、本件発明1?4は、引用発明1、技術事項2及び引用例3?11に記載された技術事項から当業者が容易に想到できたものではなく、本件発明1?4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、本件特許は同法第113条第2号に該当せず、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。

(2)引用発明7との対比・判断
ア 本件発明1との対比
本件発明1と引用発明7とを対比する。
(ア)引用発明7の、「検体浮遊液」、「マイコプラズマ・ニューモニアに対する抗体を用いた免疫クロマトグラフィー装置」、「試料を添加する部分に用いるサンプルパッド(第3部分)」、「抗体標識金コロイド含浸パッド(第1部分)」、「固定化メンブレン(第2部分)」及び「展開した試料や余剰抗体固定化金コロイドを吸収するための吸収パッド」は、それぞれ本件発明1の、「検体希釈液」、「マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を検出するための免疫クロマト分析装置」、「試料添加部」、「標識物質保持部」、「検出部」及び「吸収部」に相当する。そして、引用発明7の「該抗原に対する標識された第一の抗体又は標識された該抗原が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該抗原に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分又は該第2部分の上流に連結され、検体が滴下される第3部分とを有する」部分は、本件発明1の「試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部」に相当し、引用発明7の「検体浮遊液、及びマイコプラズマ・ニューモニアに対する抗体を用いた免疫クロマトグラフィー装置を含む、マイコプラズマ・ニューモニア検出用の免疫クロマトグラフィー・アッセイ・キット」は、本件発明1の「マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を検出するための免疫クロマト分析装置と、検体希釈液とを含む、免疫クロマト分析キット」に相当する。

(イ)引用発明7の「免疫クロマトグラフィー装置」は、「免疫測定法によってマイコプラズマ・ニューモニアの抗原を検出するための装置であって、「抗体標識金コロイド含浸パッド(第1部分)」には、「該抗原に対する標識された第一の抗体が保持され」、「固定化メンブレン(第2部分)」には、「該抗原に対する第二の抗体が固定化され」ており、「マイコプラズマ・ニューモニアを特異的に検出する抗体として、リボソーム蛋白質L7/L12に対する抗体、及び膜抗原蛋白質に対するモノクローナル抗体を用い」ていることから、引用発明7の「抗体標識金コロイド含浸パッド(第1部分)」及び「固定化メンブレン(第2部分)」と、本件発明1の「前記標識物質保持部及び検出部」とは、「マイコプラズマ・ニューモニエ」の「アミノ酸配列を認識する抗体を含有し」ている点で共通する。

(ウ)引用発明7の「検体浮遊液」は、「非イオン性界面活性剤からな」り、「非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがHLB値12?15のポリオキシエチレンアルキルエーテルであ」ることから、本件発明1の「前記検体希釈液」とは、「HLB値が13?15の非イオン性界面活性剤を含有する」点で共通する。

(エ)以上(ア)?(ウ)より、本件発明1と引用発明7とを対比すると、次の一致点で一致し、相違点1ないし3で相違する。

(一致点)
「試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を検出するための免疫クロマト分析装置と、検体希釈液とを含む、免疫クロマト分析キットであって、
前記標識物質保持部及び検出部が、マイコプラズマ・ニューモニエのアミノ酸配列を認識する抗体を含有し、
前記検体希釈液が、HLB値が13?15の非イオン性界面活性剤を含有する、
免疫クロマト分析キット。」

(相違点1)前記標識物質保持部及び検出部のイコプラズマ・ニューモニエのアミノ酸配列を認識する抗体が、本件発明1は、いずれも「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」であって、「前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少するものであ」るのに対し、引用発明7は、「リボソーム蛋白質L7/L12に対する抗体、及び膜抗原蛋白質に対するモノクローナル抗体」である点。

(相違点2)前記標識物質保持部の前記抗体の含有量が、本件発明1は、0.06?0.25μgであるのに対し、引用発明7は、そのような特定がない点。

(相違点3)検体希釈液の非イオン性界面活性剤のHLB値が、本件発明1は、13?17であるのに対し、引用発明7は、12?15である点。

イ 本件発明1についての判断
相違点1について検討する。
上記(1)イで検討したとおり、技術事項2には、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」が記載されているものの、技術事項2の「抗体」が、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列」をどの程度認識するものなのかは記載されていないから、本件発明1は他の相違点を検討するまでもなく、引用発明7及び技術事項2から当業者が容易に想到できたものではない。

ウ 本件発明2?4について
本件発明2及び3は、本件発明1を引用している発明であり、また、本件発明4は、本件発明1のキットを使用したマイコプラズマ・ニューモニエの検出方法としたものであるから、いずれも上記相違点1を有している。そうすると、本件発明2?4は、上記本件発明1と同様の理由により、引用発明7及び技術事項2から当業者が容易に想到できたものではない。

エ 以上ア?ウのとおり、本件発明1?4は、引用発明7及び技術事項2から当業者が容易に想到できたものではなく、本件発明1?4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、本件特許は同法第113条第2号に該当せず、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。

(3)先願発明との対比・判断
ア 本件発明1との対比・判断
先願発明の「抗P30抗体」は、「マイコプラズマ・ニューモニエM129株のP30タンパク質のアミノ酸配列をDDBJ(国立遺伝学研究所データベース)より入手し、前記P30タンパク質のアミノ酸配列から、膜貫通ドメインを除いた細胞外領域である配列番号2に示すアミノ酸配列(AA74-274)を特定し、対応する遺伝子配列を合成し、得られた組換えP30タンパク質を免疫用抗原として、組換えP30タンパク質に対するモノクローナル抗体(以下、抗P30抗体と称する)を作出し」たものであるから、配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のアミノ酸配列を認識する抗体である。そして、先願発明において用いられる「抗P30抗体」は、「クローニングした細胞」「2, 6, 10, 14-Tetramethylpentadecane(Sigma社の製品)を接種しておいたマウス(BALB/c、リタイア、日本SLC)に腹腔内接種し、腹水を採取し、この腹水をプロテインGカラムに供し、モノクローナル抗体を精製」することにより、「最終的に得られた6クローンのP30タンパク質に対するモノクローナル抗体産生細胞」のうち、「モノクローナル抗体BLMP001産生細胞およびモノクローナル抗体BLMP004産生細胞をマウス腹腔に接種し得られた腹水それぞれを、さらに常法によりプロテインGを用いたIgG精製を行い」得られたものである。
そして、「合成したポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列のN末端から178-189番目のGMAPRPGMPPHP(配列番号3)、190-201番目のGMAPRPGFPPQP(配列番号4)および、250-262番目のGMAPRPGMQPPRP(配列番号5)であり、配列番号3に示す配列は、N末端から202-213番目および226-237番目において同様の配列が存在し、また配列番号4に示す配列は214-225番目および238-249番目において同様の配列が存在し、すなわち、配列番号3および4のアミノ酸配列はP30タンパク質内に複数存在し、繰り返し構造を有し」、「モノクローナル抗体BLMP001は、配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチドに最も強い反応を示し、また類似配列である配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドおよび配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対しても反応を示し」、「モノクローナル抗体BLMP004は、配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチド全てに対し反応を示」すことから、「モノクローナル抗体BLMP001産生細胞およびモノクローナル抗体BLMP004産生細胞」から産生される、「モノクローナル抗体BLMP001」及び「モノクローナル抗体BLMP004」は、いずれも配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対し反応を示すものであり、これらの抗体は、配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列の共通部分である、「GMAPRP」を認識する抗体であることは明らかである。
そうすると、上記(1)イで述べたとおり、本件発明1の「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列」が、「PGMAPR」であること、先願12の国際出願日における国際出願の明細書に添付された配列表を参酌すると、「配列番号2に示すアミノ酸配列(AA74-274)」において、「PGMAPR」からなる配列の次のアミノ酸は、必ず「P」となっていることが見て取れること、そして、先願発明の「モノクローナル抗体BLMP001」及び「モノクローナル抗体BLMP004」が「GMAPRP」を認識できるものであることからすれば、これらの抗体が、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列」である「PGMAPR」も認識できることは明らかであるから、先願発明の「標識抗体含浸部材2」に含浸した「モノクローナル抗体BLMP001」と「クロマト展開用膜担体3」に塗布した「モノクローナル抗体BLMP004」とは、共に本件発明1の「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」に相当し、先願発明の「標識抗体含浸部材2」及び「クロマト展開用膜担体3」は、本件発明1の「前記標識物質保持部及び検出部」とは、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体を含有」する点で共通している。
しかしながら、本件発明1の「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」は、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少するものであ」って、これは、本件発明1の「抗体」が、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列」を、特に認識する抗体であると認められるところ、先願発明の「抗体」は、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」ではあるが、該アミノ酸配列をどの程度認識する抗体であるか特定されていないから、本件発明1と先願発明とは、前記標識物質保持部及び検出部に含有される抗体が、本件発明1は、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」であって、「前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少するものであ」るのに対し、先願発明の「抗体」は、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体」であるが、「配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少するものであ」ると特定されていない点で相違する。そして、先願12の国際出願日における国際出願の明細書には、先願発明の「抗体」が、他のアミノ酸配列と比べ、「配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列」をどの程度優位に認識するか記載されておらず、また、先願発明の「抗体」が、「配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少するものであ」る程度に認識することが自明の事項であるとも認められないから、本件発明1は先願発明と同一であるとはいえない。

イ 本件発明2?4と対比・判断
本件発明2は、本件発明1を「前記標識物質保持部が含有する標識物質が金コロイド粒子であり、前記標識物質保持部が前記金コロイド粒子を、0.25?0.7μg/cm^(2)含有する」と限定したものであり、本件発明3は、本件発明1又は2を、「前記検体希釈液が含有する非イオン性界面活性剤の50%以上が、HLB値が13?17の非イオン性界面活性剤」であると限定したものであり、本件発明4は、本件発明1の「免疫クロマト分析キット」を、この「免疫クロマト分析キット」と同じ手段を有する装置を用いて「検体中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出する方法」としたものであって、本件発明1と同じ相違点を有するものであるから、上記アと同様の理由により、先願発明と同一であるとはいえない。

ウ 以上ア及びイのとおり、本件発明1?4は、先願発明と同一であるとはいえず、本件特許は特許法第184条の13により読み替えた特許法第29条の2の規定に違反してされたものとはいえないから、同法113条第2号に該当せず、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。

(4)サポート要件、実施可能要件について
本件発明1の検体希釈液は、HLB値が13?17の非イオン界面活性剤を含有するものであるのに対し、本件明細書の発明の詳細な説明には、HLB値が13?17の範囲に入る非イオン性界面活性剤を含有する検体希釈液が記載されているものの、HLB値が13?17の全ての範囲をカバーする非イオン界面活性剤を含有するものは記載されていないから、本件発明1?4に係る特許は特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に記載する要件を満たしていない旨通知したが、検体希釈液に含有させる非イオン界面活性剤のHLB値をどの程度とするかは、使用される検体の種類や検査環境によって適宜設定されるものであって、HLB値が13?17の非イオン界面活性剤を含有する検体希釈液も、引用例3?11に見られるように周知であるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載より検体希釈液に含有される非イオン界面活性剤のHLB値を13?17まで拡張できることは、当業者であれば十分に理解できるし、また、過度の負担を強いられることなく実施できるものである。
そうすると、本件発明1?4は、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に記載する要件を満たしているから、同法113条第4号に該当せず、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、平成30年3月5日付けで取消理由通知及び同年8月21日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び申立人松下による特許異議申立書及び申立人森岡による特許異議申立書に記載した特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を検出するための免疫クロマト分析装置と、検体希釈液とを含む、免疫クロマト分析キットであって、
前記標識物質保持部及び検出部が、配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識する抗体を含有し、
前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少するものであって、
前記標識物質保持部は前記抗体を0.06?0.25μg含有し、
前記検体希釈液が、HLB値が13?17の非イオン性界面活性剤を含有する、
免疫クロマト分析キット。
【請求項2】
前記標識物質保持部が含有する標識物質が金コロイド粒子であり、前記標識物質保持部が前記金コロイド粒子を、0.25?0.7μg/cm^(2)含有する、請求項1に記載の免疫クロマト分析キット。
【請求項3】
前記検体希釈液が含有する非イオン性界面活性剤の50%以上が、HLB値が13?17の非イオン性界面活性剤である、請求項1または2に記載の免疫クロマト分析キット。
【請求項4】
試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む免疫クロマト分析装置を用いて、検体中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出する方法であって、以下の工程(1)?(4)を含む免疫クロマト分析方法。
(1)HLB値が13?17の非イオン性界面活性剤を含有する、検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に0.06?0.25μg保持されている、配列番号2のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質のドメインIIIのうち配列番号3のアミノ酸配列を認識し、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチド1との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド1を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド1を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列からなるマイコプラズマ・ニューモニエのP30の全長タンパク質と、配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド2との、ELISA法による競合阻害試験において、前記ペプチド2を前記抗体の80倍量用いた場合は、前記ペプチド2を用いない場合と比較して吸光度が50%以上減少する抗体(以下、抗体P30(A)と表記する)によりマイコプラズマ・ニューモニエを認識させる工程
(3)前記検体及び抗体P30(A)を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出部に含まれる抗体P30(A)により検出する工程
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-04 
出願番号 特願2015-171163(P2015-171163)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 536- YAA (G01N)
P 1 651・ 113- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三木 隆  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 福島 浩司
▲高▼橋 祐介
登録日 2017-05-19 
登録番号 特許第6143818号(P6143818)
権利者 田中貴金属工業株式会社
発明の名称 マイコプラズマ・ニューモニエ検出用免疫クロマト分析装置  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
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