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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1353200
異議申立番号 異議2018-700930  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-21 
確定日 2019-07-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6329160号発明「厚い熱可塑性複合構造を成形するための方法及び装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6329160号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第6329160号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2013年9月9日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年10月30日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって、平成30年4月27日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、特許掲載公報が同年5月23日に発行され、その後、その特許に対し、同年11月21日に特許異議申立人 角田朗(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされた。
当審において、平成31年1月21日付けで取消理由(以下、「当審取消理由」という。)を通知し、特許権者から同年4月22日に意見書が提出され、当審からの審尋に対して異議申立人から令和1年5月29日に回答書が提出されたものである。

第2 本件発明

本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の熱可塑性複合層を含む積層体を組み立てること;
熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくし、かつ前記積層体を圧縮することを含む、前記積層体を予備固結することであって、層を圧力の下で平らにし、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように、前記積層体を予備固結すること;
予備固結された積層体を最終部品の一般的形状を有するように予備成形すること;及び
少なくとも前記熱可塑性物質の前記溶融温度まで前記積層体を加熱することを含む予備成形された前記積層体を固結することを含む、熱可塑性複合部品を作る方法。
【請求項2】
軟らかくされた層の前記積層体を圧縮することは、前記積層体の容積を低減するために十分な圧力を前記層に加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
軟らかくされた層の前記積層体を圧縮することは:
前記積層体を2つの工具の間に配置すること、及び
前記工具を一緒に押しつけることにより実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
軟らかくされた前記層の前記積層体を圧縮することは、連続圧縮成形機中で実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記予備成形された積層体を固結することは、前記積層体を圧縮することにより実施され、前記方法は、更に:
前記積層体が固結されている際に、前記積層体を望ましい形状に成形することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記積層体を前記望ましい形状に成形することは、連続圧縮成形機中で実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
積層体を加熱するための加熱器、及び前記積層体を圧縮するための予備固結用工具を含み、層が圧力の下で平らにされ、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように構成された、内部へ熱可塑性積層体が供給され得る予備固結領域;
積層体が最終部品の一般的形状を有するように予備成形するように構成された、予備固結領域に後続の予備成形領域;及び
予備成形された前記積層体を固結し、部品形状に成形するための固結用工具を含む、予備成形領域に後続の固結領域を備える、熱可塑性複合部品の連続圧縮成形のための装置。
【請求項8】
連続的、段階的に、前記積層体を、前記予備固結領域、及び前記固結領域を通して移動させるための振動駆動機構を更に含む、請求項7に記載の装置。」

第3 特許異議申立書に記載した理由の概要

平成30年11月21日に異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(特許法第36条第6項第2号:明確性)

本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。具体的には、以下の(1)ないし(4)のとおりである。

(1) 本件特許の請求項1及び7には、予備固結に関し、「層を圧力の下で平らに」との記載があるが、当該記載において「平らに」との記載が、積層体が曲げられるのか平らにされるのかが不明であるし、「層」が平らであることと、「積層体」が平らであることとの違いも不明であるし、「平ら」が完全に平坦でなく曲がったものも含む概念であるかも不明であるし、層を平らにして積層体を曲げるような態様がどのように実施されるのかも不明であるから、本件特許の請求項1及び7における「層を圧力の下で平らに」が、どのような技術的事項を意味するのか不明であって、明確でない。
請求項1及び7を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6及び8についても同様である。(以下、「申立理由1-1」という。)

(2) 本件特許の請求項1及び7には、「積層体を最終部品の一般的形状を有するように予備成形する」との記載がある。しかし、「一般的」との用語は、大辞林第三版によれば、「広く全体を取り上げるさま。広く行き渡っているさま。」と説明されており、その意味の外延が定まらない用語である。
これを、上記請求項1及び7の記載に当てはめると、「積層体を最終部品の広く行き渡っている形状を有するように予備成形する」との意味になるが、「広く行き渡っている形状」との概念の外延が不明であるため、予備成形において、積層体を一体どのような形状に成形すれば請求項1及び7に係る発明の予備成形の概念に含まれ、どのような形状に成形すれば請求項1及び7に係る発明の予備成形の概念に含まれないかが定かではない。
また、請求項1及び7の記載からは、「一般的な形状」が、例えば、予備成形後に更にプレス成形による全体形状の変更を伴う者を含む概念であるのか、予備成形後に不要部分を切除するだけのようなものを含む概念であるのかも明らかでない。
したがって、請求項1及び7並びにそれに従属する請求項2ないし6及び8に係る発明は明確でない。(以下、「申立理由1-2」という。)

(3) 本件特許の請求項1には「予備固結された積層体を最終部品の一般的形状を有するように予備成形すること」との記載、請求項7には「積層体が最終部品の一般的形状を有するように予備成形するように構成された、予備固結領域に後続の予備成形領域」との記載があるが、これらの記載では、予備成形時の温度が特定されておらず、そのため、本件特許発明の予備成形は、溶融温度未満の温度まで積層体を加熱する場合も、溶融温度以上の温度まで積層体を加熱する場合も含むものとなり、当該記載は明確でない。また、請求項1及び7の記載からは、予備成形後に更に成形を行うのか否かも不明であり、仮に予備成形後に更に本成形を行う場合には、予備成形において溶融温度以上の温度まで積層体を加熱するとすれば、本件特許発明における予備成形と本成形とを分けることの技術的な意義も明らかでない。従って、請求項1及び7は明確でなく、請求項1及び7を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6及び8についても同様である。(以下、「申立理由1-3」という。)

(4) 本件特許の請求項5には、「積層体が固結されている際に、前記積層体を望ましい形状に成形する」との記載があるが、どのような形に成形すれば本件特許発明の固結の概念に含まれることになるかわからず、明確でない。
請求項5を直接引用する請求項6についても同様である。(以下、「申立理由1-4」という。)

2 申立理由2(特許法第29条第2項:進歩性)

本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。具体的には、以下の(1)ないし(4)のとおりである。

(1) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第5号証に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「申立理由2-1」という。)

(2) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証及び甲第5号証に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「申立理由2-2」という。)

(3) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第4号証及び甲第5号証に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「申立理由2-3」という。)


(4) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証ないし甲第4号証に記載の周知技術及び甲第5号証に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「申立理由2-4」という。)

3 証拠方法

甲第1号証:特表2010-506768号公報
甲第2号証:福井県工業技術センター(川邊和正、増田敦士、村上哲彦、岩下美和)、「開繊炭素繊維を用いた先端複合材料の三次元成型加工技術」、加工技術2006年3月号、2006年3月10日発行、p.17-19
甲第3号証:M.Hou、”Stamp forming of continuous glass fibre reinforced polypropylene”、Composites Part A:Applied Science and Manufacturing、Volume 28、Issue 8、20 January 1997、P.695-702
甲第4号証:特開平7-47596号公報
甲第5号証:特開2005-52987号公報

なお、文献名等の表記は概略特許異議申立書の記載に従った。

第4 合議体の申立理由についての判断

合議体は、以下述べるように、申立理由1-1?1-4、申立理由2-1?2-4には、いずれも理由はないと判断する。なお、当審取消理由とその判断については、後述の第5において述べる。

1 申立理由1について

(1) 申立理由1-1
異議申立人は、上記第3 1(1)に記載のように主張するが、「平らにし」との記載が、積層体が曲げられることを意味しないことは明らかであるし、(積層体を構成する)「層」を「平ら」にすることと「積層体」が「平ら」であることとの違いは、当該請求項の記載の理解には無関係であり、「平ら」が完全に平坦でなく曲がったものを含むかどうかも請求項の明確さとは無関係な事項である。加えて、層を平らにして積層体を曲げるような態様がどのように実施されるのかも、請求項の明確さとは無関係な事項である。
そうすると、異議申立人の主張は、全て失当であって、請求項1及び7の「層を圧力の下で平らにし」とは、その文言どおり、「層」を「圧力」の下で、「平ら」にすることを意味することは明らかであって、請求項1ないし8に係る発明は明確である。

(2) 申立理由1-2
請求項1及び7の「積層体を最終部品の一般的形状を有するように予備成形する」とは、当業者において「積層体を最終部品に共通である形状を有するように予備成形する」あるいは「積層体を最終部品の大部分に共通である形状を有するように予備成形する」ことであると理解できるから、請求項1ないし8に係る発明は明確である。
異議申立人は、上記第3 1(2)に記載のように主張するが、明確かどうかの判断は、その語句について日本語の辞書に記載されている事項に置き換えて理解できることが求められるものではなく、請求項の記載自体が当業者が明確に理解できるかどうかを判断するものであって、当該主張は採用できない。
また、異議申立人は、令和1年5月29日提出の回答書において、「一般的」の意味が広辞苑第6版によるものであっても、前者の「最終部品に共通である形状」は、予備成形された形状が最終部品と同じ形状であることを意味し、予備成形後に成形がないのであれば「予備成形」との用語の意味までも不明確になる旨、また、後者の「最終部品の大部分に共通である形状」は、「大部分」との用語が不明確であるために、予備成形された形状が最終部品に比べてどの程度同じ形状であれば当該記載に該当するか不明となる旨主張する。
しかし、前者の「最終部品に共通である形状」とは、予備成形品の形状の一部が最終部品と共通の形状であることを意味しており、予備成形である以上、最終部品と同じ形状の場合は予備成形といわないことは自明であるから、異議申立人の主張は失当であって、採用できない。
また、後者における「大部分」とは半分を超える程度を意味していることは明らかであるから、異議申立人の主張は失当であって、採用できない。

(3) 申立理由1-3
異議申立人は、上記第3 1(3)に記載のように主張するが、請求項1及び7の「予備成形する」際の温度が「予備成形」を可能にする温度であることは、当業者において明らかである。すなわち、予備成形が可能ならば、溶融温度未満でも、溶融温度以上でもよいことは明らかである。
また、請求項1及び7には、本成形に相当する「積層体を固結する」工程、本成形を行う「予備成形領域に後続の固結領域」が特定されているから、予備成形後に成形を行うものであることも明らかである。そして、当業者は、予備成形とは本成形の前に行う成形と理解しており、本成形とは明確に区別できる。
したがって、当業者は、予備成形する温度を特定しなくとも、請求項1ないし8に係る発明を理解できる。
よって、異議申立人の主張は失当であって、採用できない。

(4) 申立理由1-4
異議申立人は、上記第3 1(4)に記載のように主張するが、当業者は、請求項5の「前記積層体が固結されている際に、前記積層体を望ましい形状に成形する」における「望ましい形状」とは、成形品を製造する時には当然に成形される形状と理解でき、前記請求項5の記載において、どのような形状が固結の概念に含まれるかを当業者は当然理解できるから、請求項5及び6に係る発明は明確である。

2 申立理由2について

異議申立人の申立理由2-1ないし2-4は、全て甲1に記載された発明を主引用発明とした進歩性であることから、これらをまとめて検討する。

(1) 甲1の記載事項
甲1には、次の事項(以下、「甲1の記載事項」という。)が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非均一な厚さを有する熱可塑性材料の多数のプライスタックを形成し、
(B)ステップ(A)で形成されたスタックから湾曲されたブランクを切断し、
(C)予備成形された部品を製造するために湾曲されたパスで予備成形構造を通して湾曲されたブランクを供給し、
(D)湾曲されたパスでプレス機を通して予備成形された部品を供給し、
(E)プライを圧縮するために予備成形された部品を加圧するステップを含んでいる熱可塑性積層部品の製造方法。
・・・
【請求項7】
熱可塑性材料は自由流動温度を有するマトリックス樹脂コンポーネントを含み、方法はさらに、
(F)前記ステップ(E)が行われる前に予備成形された部品を少なくとも熱可塑性材料のマトリックス樹脂コンポーネントの自由流動温度まで加熱するステップを含んでいる請求項1記載の方法。」

イ 「【図面の簡単な説明】
【0010】
・・・
【図2】図2は調節された多層スタックを成形するために使用されるコンベア台の斜視図
である。
【図3】図3は図2で成形された調節された多層スタックの1例の斜視図である。
【図4】図4は図1の熱可塑性複合積層を成形するために使用される強化構造の予備成形ゾーンと強化ゾーンを示す図である。
【図5】図5は図4の強化構造の予備成形ゾーンの斜視図である。」

ウ 「【0018】
自動化プロセスでは、図2で示されているように熱可塑性材料30の複数のプライ32または34(図3)は結合するために揃えられた多層の非均一な厚さまたは均一な厚さの多層プライスタック58または60を成形するためにローラー46からコンベア台48へ広げられる。ローラー46はそれぞれのプライ層32、34を別の隣接する層32、34に関して特定の配向で載置するためにコンベア台48の1端部50または側面52、54に沿って配置されることができる。したがって、例えば完全なプライ32の下部層は一方の方向で延在する一方方向ファイバ38を有して載置され、次のそれぞれの上部の完全なプライ32は別の方向(例えば下に存在するプライ32に関して45または90度)で載置されたファイバ38を有することができる。コンベア台48上に位置されるレーザプロジェクタ56は完全なプライ32に関する局部的または部分的なプライ34および/またはポケット36の適切な位置を確実にする。」

エ 「【0020】
次にステップ170では、図2で形成された仮留めされていないスタック58、60の幾つかのまたは全ての種々のプライ32、34は均一または非均一な厚さの仮留めされた多層プライシートスタック74、76を形成するために種々の予め定められた位置で共に仮留めされることができる。好ましくは、スタック58、60はそれぞれのスタック74、76を形成するためにはんだごてまたは超音波溶接機(図示せず)を使用して共に仮留めされることができるが、当業者に知られている熱可塑性材料の種々のプライ32、34を共に結合するために使用される他の装置も考えられる。プライ32、34間の仮留めの量および位置は、種々のプライ32、34とポケット64の数及び位置を含むがそれに限定されない幾つかの要因にしたがう。さらに、仮留めの量は単一部材として輸送されることができる実質的に一体化され仮留めされたスタック74、76を形成するのに十分でなければならない。」

オ 「【0021】
ステップ175では、仮留めされたスタック74、76はその後、より小さいピースへ切断されることができ、または図1の床げた20のような熱可塑性複合積層の形成に使用される準備がされている。」

カ 「【0023】
図4および5を参照すると、強化構造78は予備成形ゾーン80と強化ゾーン82を含むことができる。予備成形ゾーン80では、均一または不均一な厚さの仮留めされたスタック74、76の少なくとも1つと、随意選択的に充填ナゲット26の少なくとも1つと、非均一な厚さの仮留めされたスタック76と均一な厚さの仮留めされたスタック74または熱可塑性材料の図2および3の単一のプライ32の少なくとも1つの組合せは連続的なプロセスでそれらの適切な配向で装着され、予備成形された部品84を形成するために上昇温度で所望の形状に予備成形される。予備成形された部品84はその後、予備成形ゾーン80を出て、強化ゾーン82に入り、ここで前述の図1で説明したように床げた20のような単一の一体化された熱可塑性複合積層を形成するように合体強化される。部品の予備成形で使用される上昇温度は仮留めされたスタック74、76または単一のプライ32の軟化を生じさせるのに十分な温度でなければならず、それによって層は予備成形プロセス中に屈曲されることができる。しかしながら上昇温度はマトリックス樹脂40、42のポリマーコンポーネントが粘性の液体の一貫性を有する温度よりも低温でなければならない。」

キ 「【0026】
仮留めされたスタック74、76とナゲット26が予備成形ゾーン80を通って強化ゾーン82の方向へ動くとき、u型チャンネル86のいずれかの側の非均一な仮留めされたスタック76の第1の対94のフランジ96は相互に離れるようにU型チャンネル86のそれぞれの外側部分98方向への熱及び圧力下で外方向に屈曲される。フランジ96はそれ故、フランジ96と均一または非均一な厚さの仮留めされたスタック76のそれぞれの内端部との間に位置されるナゲット26により、均一または非均一な厚さの仮留めされたスタック76の内側に対して平らに結合される。予備成形ゾーン80内の熱は非均一な厚さの仮留めされたスタック76のフランジ96の変形を可能にするのに十分な温度に上昇されるが、それぞれのスタック74、76とナゲット26のマトリックス樹脂40、42のポリマーコンポーネントが粘性の液体の一貫性を有する温度よりも低温である。フランジ86の屈曲はローラー(図示せず)のような外部成形装置によりフランジ96に与えられる圧力によって開始される。サイドツーリングシート部材92は仮留めされたスタック74をフランジ96に対して内方向に圧迫し、フランジ96に与えられる付加的な圧力を発生し、これはフランジ96の屈曲を促す。予備成形部品84はその後強化ゾーン82へ動く準備をされる。」

ク 「【0028】
強化構造102は予備成形された部品84を強化ゾーン82内で前方向に予備成形ゾーン80から離れるように段階的に移動する脈動構造106を有する。部品84が前方向に動くとき、部品は最初に加熱ゾーン108に入り、この加熱ゾーン108はスタック74、76とナゲット26のマトリックス樹脂40、42のポリマーコンポーネントの自由流動を可能にする温度まで部品を加熱する。次に、部品84は加圧ゾーン112へ前方向に移動し、ここで標準化されたダイス104は仮留めされたスタック74、76の種々のプライ32、34およびナゲット26をその所望の形状と厚さへ合体強化する(即ちマトリックス樹脂の自由流動を可能にする)のに十分な予め規定された力(圧力)で集合的または個別に下げられ、ここでは床げた20のウェブ領域22と1対のキャップ領域24とを成形する。各ダイス104は絶縁体を有する複数の異なる温度ゾーンを有して形成される。ダイス104は実際には部品84と接触しないが、部品84に対向するU型チャンネル86とサイドツーリング部材92の外部表面と接触する。したがってチャンネル86、92のそれぞれの内部表面は部品84の一部分に対して圧縮する。この圧縮は、全てのダイス104が1つの独立した調整されたステップで圧縮するように行われる。ダイス104は開かれ、部品84は強化ゾーン102内で予備成形ゾーン80から離れるように前進される。ダイス104はその後再度閉じられ、部品84の一部が異なる温度ゾーン内の力により圧縮されることを可能にする。部品84が冷却ゾーン114方向へガイドローラー105に沿って段階的に前進されるときプロセスはダイス104の各温度ゾーンで反復される。
【0029】
形成および成形された部品84はその後、加圧ゾーン112から離れている冷却ゾーン114へ入り、温度はマトリックス樹脂40、42の自由流動温度よりも低くされ、それによって溶融され強化された部品をその最終的に加圧された形状116へ硬化させる。加圧された部品116はその後強化構造102を出て、サイドシート部材92はスクラップとしてローラー120へ再度巻き付けられる。」

ケ「



(2) 甲1に記載された発明
甲1の特許請求の範囲の請求項1及び7(上記(1)ア)の記載から、以下の成形方法の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認める。

「ステップ(A) 非均一な厚さを有する熱可塑性材料の多数のプライスタックを形成し、
ステップ(B) ステップ(A)で形成されたスタックから湾曲されたブランクを切断し、
ステップ(C) 予備成形された部品を製造するために湾曲されたパスで予備成形構造を通して湾曲されたブランクを供給し、
ステップ(D) 湾曲されたパスでプレス機を通して予備成形された部品を供給し、
ステップ(E) プライを圧縮するために予備成形された部品を加圧し、
ステップ(F) 前記ステップ(E)が行われる前に予備成形された部品を少なくとも熱可塑性材料のマトリックス樹脂コンポーネントの自由流動温度まで加熱する、
これらのステップを含む熱可塑性積層部品の製造方法。」

また、発明の詳細な説明の段落【0023】、【0028】、【0029】及び図4及び5(上記(1)カ、ク及びケ)の記載から、以下の発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されていると認める。

「均一または不均一な厚さの仮留めされた多層プライシートスタック74、76の少なくとも1つと、随意選択的に充填ナゲット26の少なくとも1つと、非均一な厚さの仮留めされた多層プライシートスタック76と均一な厚さの仮留めされた多層プライシートスタック74または熱可塑性材料の単一のプライ32の少なくとも1つの組合せは連続的なプロセスでそれらの適切な配向で装着し、予備成形された部品84を形成するために上昇温度で所望の形状に予備成形する予備成形ゾーン80、
多層プライシートスタック74、76とナゲット26のマトリックス樹脂40、42のポリマーコンポーネントの自由流動を可能にする温度まで部品を加熱する加熱ゾーン108、
標準化されたダイス104は仮留めされた多層プライシートスタック74、76の種々のプライ32、34およびナゲット26をその所望の形状と厚さへ合体強化する(即ちマトリックス樹脂の自由流動を可能にする)のに十分な予め規定された力(圧力)で集合的または個別に下げられ、ここでは床げた20のウェブ領域22と1対のキャップ領域24とを成形する加圧ゾーン112、
加圧ゾーン112から離れている冷却ゾーン114へ入り、それによって溶融され強化された部品をその最終的に加圧された形状116へ硬化させる冷却ゾーン114を有する、
製造装置。」

なお、異議申立人は、特許異議申立書において、甲1に記載された発明を認定していない。

(3) 本件発明1と甲1発明Aとの対比、判断
本件発明1と甲1発明Aを対比する。
甲1発明Aの「熱可塑性材料の」「プライスタック」は、「熱可塑性材料30の複数のプライ32または34(図3)は結合するために揃えられた多層の非均一な厚さまたは均一な厚さの多層プライスタック58または60を成形するためにローラー46からコンベア台48へ広げられる」(段落【0018】、上記(1)ウ)ものであるから、本件発明1における「熱可塑性複合層」に相当する。
また、甲1発明Aの「熱可塑性積層部品の製造方法」は、本件発明1における「熱可塑性複合部品を作る方法」に相当する。
甲1発明Aの「少なくとも熱可塑性材料のマトリックス樹脂コンポーネントの自由流動温度」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂の溶融温度」に相当するから、甲1発明Aのステップ(F)とステップ(E)を合わせたステップを持つことが、本件発明1の「積層体を一般的形状を有するように予備成形すること、及び 少なくとも前記熱可塑性物質の前記溶融温度まで前記積層体を加熱することを含む」工程を有することに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明Aとの一致点及び相違点は、それぞれ次のとおりであると認める。

・ 一致点
複数の熱可塑性複合層を含む積層体を組み立てること;
積層体を予備成形すること;及び
少なくとも前記熱可塑性物質の前記溶融温度まで前記積層体を加熱することを含む予備成形された前記積層体を固結することを含む、熱可塑性複合部品を作る方法。

・ 相違点1
本件発明1は、「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくし、かつ前記積層体を圧縮することを含む、前記積層体を予備固結することであって、層を圧力の下で平らにし、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように、前記積層体を予備固結すること」という工程を特定するのに対し、甲1発明Aは、当該工程について特定しない点。

・ 相違点2
予備成形に関し、本件発明1は、「最終部品の一般的形状を有するように」と特定するのに対し、甲1発明Aは、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。

相違点1について
甲2ないし5のいずれの文献にも、相違点1に係る「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくし、かつ前記積層体を圧縮することを含む、前記積層体を予備固結することであって、層を圧力の下で平らにし、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように、前記積層体を予備固結すること」については記載がない。
そして、本件発明1においては、相違点1に係る「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくし、かつ前記積層体を圧縮することを含む、前記積層体を予備固結することであって、層を圧力の下で平らにし、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように、前記積層体を予備固結する」という工程を備えることにより「層の積み重ねが最終形状に成形される際に、繊維の歪を低減又は除去する」(段落【0005】)という効果を奏するものであり、この効果について、甲1ないし5のいずれの文献の記載からも予測することは困難である。
してみれば、相違点1に係る構成は、相違点1に係る構成自体が記載された文献がなく、さらに、その構成によって得られる効果は当業者にとって予測することが困難といえるから、当業者において想到容易でない。
よって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲1発明A、すなわち甲1に記載された発明、甲2ないし5に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4) 異議申立人の申立理由2における主張についての検討
ア 甲1に記載された発明に関して、異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第1号証の段落0026には、「予備成形ゾーン80内の熱は非均一な厚さの仮留めされたスタック76のフランジ96の変形を可能にするのに十分な温度に上昇されるが、それぞれのスタック74、76とナゲット26のマトリックス樹脂40、42のポリマーコンポーネントが粘性の液体の一貫性を有する温度よりも低温である。」と記載されている。即ち、甲第1号証には、熱可塑性物質の融点温度未満の温度まで積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくすること及びそのための加熱器(予備成形ゾーン80)が開示されている。更に、甲第1号証の段落0026には、「仮留めされたスタック74、76とナゲット26が予備成形ゾーン80を通って強化ゾーン82の方向へ動くとき、u型チャンネル86のいずれかの側の非均一な仮留めされたスタック76の第1の対94のフランジ96は相互に離れるようにU型チャンネル86のそれぞれの外側部分98方向への熱及び圧力下で外方向に屈曲される。」と記載されている。即ち、甲第1号証には、軟らかくされた積層体に圧力をかけて圧縮すること及びそのための予備固結用工具(予備成形ゾーン80)が開示されている。以上により、甲第1号証には、熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくすること及び前記積層体を圧縮することを含む予備固結工程と、そのための加熱器及び予備固結工具を含む予備固結領域とが開示されている。」(14ページ9行?15ページ4行)と主張する。
しかし、甲1の段落【0026】に記載の「予備成形ゾーン80」とは、本件発明1における「予備成形」を行う部分に相当するから、当該「予備成形ゾーン80」における加熱において「マトリックス樹脂40、42のポリマーコンポーネントが粘性の液体の一貫性を有する温度よりも低温」まで加熱することは、本件発明1の「予備固結」工程の加熱とは無関係であって、上記の記載から、甲1に「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくする」「予備固結」する工程があるということはできない。
よって、上記異議申立人の主張は、失当であって採用できない。

イ 異議申立人は、申立理由2-1に関し、特許異議申立書において「・・・・即ち、甲第2号証には、熱可塑性複合層を含む積層体を予め加熱及び圧縮することで層を平らにし、予備固結した後、その予備固結された平らな積層体を成形する思想が開示されている。」(16ページ26行?28行)と主張する。
しかし、甲2は、「1.はじめに」における「コールドプレス成型による加工特性について検討したので、その結果について報告する。」との記載、「2-2コールドプレス成型に関する実験方法」などの記載からみて、その前提としてコールドブレス成型を前提とするものであるから、甲1発明Aの溶融温度以上での成型には適用できない。
仮に、当該甲2のコールドプレス成型が、甲1発明Aと同様な溶融温度以上での成型を含むとしても、甲2に記載の「コンソルージョン」(本件発明1の「予備固結」に相当)における温度条件が記載されていないから、熱可塑性樹脂の融点以下の温度でコンソルージョンが行われているものとはいえない。そうすると、甲2におけるコンソルージョンは、「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱すること」が行われているとはいえず、相違点1に係る「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくし、かつ前記積層体を圧縮することを含む、前記積層体を予備固結することであって、層を圧力の下で平らにし、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように、前記積層体を予備固結する」という工程を有しているとはいえない。
よって、上記異議申立人の主張は、失当であって採用できない。

ウ 異議申立人は、申立理由2-2に関し、特許異議申立書において「甲第3号証の第695頁左欄第20?24行には、・・・(溶融点/軟化点が存在することにより、熱可塑性複合体の予備固結された平らな積層体のような、後で処理すなわち成形可能な中間形態を生成することが可能となる。)と記載され、第696頁左欄第34?40行には、・・・(予備固結された平らな積層体の製作手順では、(a)8層のGF/PPプリプレグを金型(100mm×160mm)に入れて180±℃の温度で加熱プレスし、(b)15分間予熱し、1.2MPaの圧力を5分かけ)と記載されている。即ち、甲第3号証には、熱可塑性複合層を含む積層体を予め加熱及び圧縮して層を平らにし、予備固結した後、その予備固結された平らな積層体を成形する技術思想が開示されている。」(17ページ9行?24行)と主張する。
しかし、甲3に記載の「予備固結」は、甲3の「本金型を室温で使用して予熱した固結積層体を所期の形状に成形した。固結GF/PP積層体を原料として使用し、そして、外部ヒータによる加熱接触によってPPポリマーマトリックスの溶融温度以上まで加熱した」(696頁左欄)、「予備固結された平らな積層体の製作手順は、(a)8層のGF/PPプリプレグを金型(100mm×160mm)に入れて180±℃の温度で加熱プレスする」(696頁左欄)との記載から、熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱して行うものであって(ポリプロピレンの融点は、135?165℃程度である。)、相違点1に係る「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくし、かつ前記積層体を圧縮することを含む、前記積層体を予備固結することであって、層を圧力の下で平らにし、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように、前記積層体を予備固結する」という工程を有しているとはいえない。
よって、上記異議申立人の主張は、失当であって採用できない。

エ 異議申立人は、申立理由2-3に関し、特許異議申立書において、「甲第4号証の段落0002には「一般的な従来の繊維強化熱可塑性樹脂系複合材料の曲げ成形法を図4によって説明する。まず繊維強化熱可塑性樹脂系複合材料の成形素材(プリブレグ)1を積層してホットプレス装置3等で加熱加圧してあらかじめ均一な積層平板4を予備成形する。次に、形状を賦形するために積層平板4を成形型5の上型と下型に間にセットしてホットプレス装置3等で高温高圧下曲げ加工により二次成形して成形品7を得ている。」と記載されている。即ち、甲第4号証には、積層体を所望の形状に成形する前に、層を圧力の下で平らにして予備固結することが開示されており、それが一般的な技術であることが言及されている。」(17ページ26行?18ページ6行)と主張する。
しかし、甲4の段落【0002】に記載の従来技術は、予備成形として記載されているものであって、予備成形前に行う「予備固結工程」に関わるものではないし、仮に、当該「予備成形」が、「予備固結工程」に相当するといえたとしても、その予備固結工程における温度について記載はないから、相違点1に係る「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって層を部分的に固結する予備固結する」という工程が行われているものとはいえない。そうすると、甲4の段落【0002】に記載の予備成形は、相違点1に係る「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくし、かつ前記積層体を圧縮することを含む、前記積層体を予備固結することであって、層を圧力の下で平らにし、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように、前記積層体を予備固結する」という工程を有しているとはいえない。
よって、上記異議申立人の主張は、失当であって採用できない。

オ 異議申立人は、特許異議申立書の申立理由2-4において、「空洞制御や歪制御のために成形前に積層体の層を圧力の下で平らに予備固結する技術は複数の文献(甲2?4)に開示されており、特に甲第4号証には、それが一般的な技術であることが言及されている・・・。即ち、当該技術は当業者によく知られた周知技術であると言える。そして、本成形前に積層体の層を圧力の下で平らに予備固結することも、予備成形前に積層体の層の圧力の下で平らに予備固結することも、空洞抑制や歪抑制という共通の作用を奏するのであるから、当業者には、空洞抑制や歪抑制のために上記周知技術を甲1発明に適用し、甲1発明の予備成形前に積層体の層を圧力の下で平らに予備固結しようとする動機づけが存在する。即ち、当業者は、甲1発明において、予備成形ゾーン80にて積層体を所望の形状に変形させて予備成形することで空洞や歪の発生の問題に直面すると、その周知の課題を解決するために予備成形前に積層体の平坦な状態で予備固結しようとする動機づけが十分に存在する。」(35ページ12行?25行)と主張する。
しかし、上記イ?エでの検討のとおり、甲2ないし4には「熱可塑性物質の溶融温度未満の温度まで前記積層体の中の層を加熱することによって前記層を軟らかくし、かつ前記積層体を圧縮することを含む、前記積層体を予備固結することであって、層を圧力の下で平らにし、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように、前記積層体を予備固結する」という工程は記載されていないし、まして、空洞抑制や歪抑制に関する記載も甲2ないし4には一切存在していない。
よって、上記異議申立人の主張は、失当であって採用できない。

(5) 本件発明2ないし6について
本件発明2ないし6は、直接又は間接的に本件発明1を引用する発明であるから、上記(2)と同様に、甲1に記載された発明及び甲2ないし5に記載の技術事項に基づいて容易に発明をできたものとはいえない。

(6) 本件発明7と甲1発明Bとの対比、判断
本件発明7と甲1発明Bとを対比する。
甲1発明Bの「多層プライスタック」は、本件発明7における「積層体」に相当する。
また、甲1発明Bの「製造装置」は、強化された部品を製造するものであって、当該部品は熱可塑性複合部品といいえるものであるから、本件発明7の「熱可塑性複合部品のための装置」という限りにおいて一致する。
甲1発明Bの「予備成形ゾーン」は、本件発明7における「予備成形領域」に相当する。
甲1発明Bの「その所望の形状と厚さへ合体強化する(即ちマトリックス樹脂の自由流動を可能にする)のに十分な予め規定された力(圧力)で集合的または個別に下げられる成形をされ」る「加圧ゾーン」は、本件発明7における「部品を成形するための固結用工具を含む」「固結領域」に相当する。
甲1発明Bの「加熱ゾーン」には、積層体を加熱するための加熱器が存在することは自明である。
そうすると、本件発明7と甲1発明Bとの一致点及び相違点は、それぞれ次のとおりであると認める。

・ 一致点
積層体を加熱するための加熱器、
積層体が予備成形するように構成された予備成形領域;及び
予備成形された前記積層体を固結し、部品形状に成形するための固結用工具を含む、予備成形領域に後続の固結領域を備える、熱可塑性複合部品のための装置。

・ 相違点3
本件発明7は、「積層体を圧縮するための予備固結用工具を含み、層が圧力の下で平らにされ、層の間の空洞を形成する隙間を除去し、実質的に層の全体の領域にわたり、互いの面同士が接触して層が緊密に詰め込まれるように層を部分的に固結するように構成された、内部へ熱可塑性積層体が供給され得る予備固結領域」を備えることを特定するのに対し、甲1発明Bは、当該領域を備えることについて特定しない点。

・ 相違点4
予備成形に関し、本件発明7は、「最終部品の一般的形状を有するように」と特定するのに対し、甲1発明Bは、この点を特定しない点。

・ 相違点5
熱可塑性複合部品のための装置に関し、本件発明7は、「連続圧縮成形」のためのと特定するのに対し、甲1発明Bは、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。
相違点3は、上記(2)の相違点1に係る方法としての構成の相違を装置の構成として表現したものであり、相違点1と実質的に同じであるから、上記(2)における相違点1についての判断のとおりである。
してみれば、本件発明7は、相違点4及び5について検討するまでもなく、甲1発明B、すなわち甲1に記載された発明及び甲2ないし5に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7) 本件発明8について
本件発明8は、直接本件発明7を引用する発明であるから、上記(5)と同様に、甲1に記載された発明及び甲2ないし5に記載の技術事項に基づいて容易に発明をできたものとはいえない。

(8) まとめ
よって、申立理由2は、理由がない。

第5 当審取消理由とそれについての合議体の判断

1 当審取消理由
当審取消理由は、「本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」であって、具体的には、請求項1及び7の「積層体を最終部品の一般的形状を有するように予備成形する」との記載が明確でないというものであって、異議申立人の申立理由1-2と同旨である。

2 合議体の当審取消理由についての判断
上記第4 1(2)に記載のとおりであって、請求項1及び7の記載は明確であって、上記取消理由は理由がない。

第6 むすび

したがって、異議申立人の主張する申立理由及び当審取消理由によっては、請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2019-06-28 
出願番号 特願2015-539596(P2015-539596)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B29C)
P 1 651・ 537- Y (B29C)
最終処分 維持  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大島 祥吾
渕野 留香
登録日 2018-04-27 
登録番号 特許第6329160号(P6329160)
権利者 ザ・ボーイング・カンパニー
発明の名称 厚い熱可塑性複合構造を成形するための方法及び装置  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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