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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1353205
異議申立番号 異議2019-700279  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-09 
確定日 2019-07-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第6404504号発明「電子チケットシステムおよびプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6404504号の請求項1ないし3、5ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6404504号の請求項1?6に係る特許についての出願は,平成26年5月12日(優先権主張 平成25年5月22日)に出願した特願2014-98242号の一部を平成27年4月27日に新たな特許出願(特願2015-90333号)とし,さらにその一部を平成30年1月16日に新たな特許出願としたものであって,平成30年9月21日にその特許権の設定登録がされ,平成30年10月10日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,平成31年4月9日に特許異議申立人株式会社コトにより特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6404504号の請求項1?6の特許に係る発明(以下,請求項1?6に係る発明をそれぞれ「本件発明1」?「本件発明6」という)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
情報を表示する表示手段,および前記表示手段に重ねて設けられ,同時に複数の位置に接触されたときに個々の接触位置を検出可能な入力手段を有するタッチパネルを有し,電子チケットを前記表示手段に表示するユーザ端末と,
前記入力手段に対する同時接触が検出可能な複数の按部を有するスタンプと,
前記ユーザ端末と通信可能なサーバ装置と
を備え,
前記ユーザ端末は,前記電子チケットの使用に応じたサービスの提供前に,前記表示手段に前記電子チケットを表示している状態で,前記スタンプの按部により同時に接触されると,複数の接触位置を前記入力手段により検出し,検出した接触位置が表示している電子チケットに対応するかを前記サーバ装置に照会し,対応する旨の応答があった場合に,前記表示手段において前記電子チケットが使用済みである旨を示す描画を行い,
前記サーバ装置は,前記電子チケットと当該電子チケットに対応する一つ以上の前記スタンプの按部の配列情報とを予め対応付けて格納し,前記ユーザ端末からの照会に応じて,前記ユーザ端末が検出した接触位置が前記ユーザ端末に表示している電子チケットに対応するかを判定して対応するか否かを前記ユーザ端末に応答し,
前記電子チケットには複数の前記スタンプを識別するための情報が紐づけられることが許容されることを特徴とする電子チケットシステム。
【請求項2】
前記サーバ装置は,前記ユーザ端末からの照会に対し対応する旨の応答をする際に,当該ユーザ端末のユーザにより当該電子チケットが利用されたことを記録することを特徴とする請求項1に記載の電子チケットシステム。
【請求項3】
前記サーバ装置は,前記ユーザ端末に宛てて電子チケットを提供する情報提供部をさらに備えることを特徴とする,請求項1または2に記載の電子チケットシステム。
【請求項4】(省略)
【請求項5】
コンピュータを請求項1から4の何れか1項に記載の電子チケットシステムにおけるサーバ装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
コンピュータを請求項1から4の何れか1項に記載の電子チケットシステムにおけるユーザ端末として機能させることを特徴とするプログラム。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人株式会社コトは,本件特許出願は,国内優先権主張の効果を認めることはできず,本件特許出願に係る発明の新規性及び進歩性は,特願2014-98242号の出願日である平成26年5月12日を基準として判断されるべきものであると主張している。
そして,以下の甲第1号証?甲第8号証を証拠方法として提出し,取消理由1として甲第1号証を主たる証拠とし,また,甲第2?7号証を従たる証拠として,請求項1?3,5,6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1?3,5,6に係る特許を取り消すべきものである旨,また,取消理由2として甲第5号証を主たる証拠とし,また,甲第1?4,6,7号証を従たる証拠として,請求項1?3,5,6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1?3,5,6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

<証拠方法>
甲第1号証:国際公開第2013/105788号
甲第2号証:ワールドビジネスサテライト トレンドたまご 「スマホに押すスタンプ」として放送,株式会社テレビ東京,2013年12月4日放送,ウェブサイト 「BUSINESS ON DEMAND(URL:https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/trend_tamago/post_55682)」における放送内容の画像(【画像1】?【画像8】)をプリントしたもの
甲第3号証:特開2013-238937号公報
甲第4号証:特開2007-66212号公報
甲第5号証:米国特許出願公開第2013/0194202号明細書
甲第6号証:特開2012-118637号公報
甲第7号証:特開2014-26395号公報
甲第8号証:異議決定(異議2016-700385号)

4 各甲号証の記載
(1)甲第1号証(国際公開第2013/105788号)
甲第1号証(韓国語の公報であるため,対応する公表特許公報である特表2015-507270号の日本語を使用した。)には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
ア 「[36] 図面を参照して説明するに先立って,本発明の実施例で,「タッチスタンプ」はタッチスクリーンが採用された携帯端末機のタッチスクリーン上に事前に定められた一定のパターンのタッチ入力を加えるように構成された装置を意味する。
[37] このようなタッチスタンプがタッチスクリーンに加える事前に定められた一定のパターンを以下で「タッチパターン」と表現することにし,タッチパターンは上記タッチスタンプによって加えられるタッチ入力の時間パターン及び/またはタッチ入力の位置パターンを含む。」

イ 「[50] まず,上記タッチスタンプ200内に電源が備えられない場合を説明すると,上記タッチスタンプ200は本体20を含む。上記本体20は上記タッチスタンプ200の全体的な形状を形成し,内部構成を覆う役割をする。
[51] また,上記本体20の一側には接触部24が備えられる。上記接触部24は伝導性物質で構成され,後述するタッチ端子25と電荷の移動が可能な経路を形成する。すなわち,上記接触部24に人体が選択的に触れると携帯端末機にタッチ入力が加えられるようにするスイッチング手段として,上記タッチ端子25を伝導性があり,接地と接続される外部構成(人体)と選択的に接続する部分で,使用者によって操作される部分である。もちろん上記接触部24の位置は図面に図示された位置に限定される訳でなく,上記本体20の一側ならどこにでもなることができる。ここで伝導性物質は,金属や液体または固体電解質などを含むことによって電気伝導性を有する物質を意味する。
[52] 一方,上記一端面21の他端には平面からなる他端面23が形成される。上記他端面23は上記タッチスタンプ200を利用して携帯端末機のタッチスクリーンにタッチ入力を加えるとき,使用者によってタッチスクリーンに密着する部分である。
[53] 上記他端面23には一つ以上のタッチ端子25が上記他端面23を貫いて外部に露出するように設置される。上記タッチ端子25は上記他端面23に平らにまたは外部に所定の高さで露出するように設置することができる。上記タッチ端子25は上記タッチスタンプ200に対して事前に決定されるタッチパターンがどんなパターンなのかによって一つだけ備えることもでき,より多く備えることもできる。このとき上記タッチ端子25は伝導性物質からなる。
[54] それによって静電容量方式のタッチパネルなど接触式タッチパネルに上記タッチ端子25が密着し,上記接触部24に人の手が触れたら,電荷の移動経路が形成されながら電荷の移動が発生して携帯端末機でタッチパネルに対する上記タッチ端子25らのタッチパターンを感知することができるようになる。」

ウ 「[67] さらに,図10に図示されたように本発明の実施例によるタッチスタンプ100は複数のタッチ突起15やタッチ端子25を備えるが,このような複数のタッチ突起15やタッチ端子25は一定のパターンによって配列され,タッチスクリーンに同時にタッチ入力を加えるように構成することもできる。
[68] このようなタッチスタンプ100を利用すると携帯端末機タッチスクリーン上に定められたパターンによるタッチ入力を加えることで多様な認証を行うことができるが,例えば単に携帯端末機のロックを解除する機能を行うこともでき,オフライン上で発給されるクーポンやスタンプカードなどを携帯端末機によりオンラインで実現するにあたって,クーポンまたはスタンプカード発給主体を認証する方法として上記タッチスタンプ100を使用することができる。
[69] このようなタッチスタンプ100を利用した認証方法に対する一つの実施例を図11及び図12を参照して説明する。図11は本発明の実施例によるタッチスタンプを利用した認証システムの構成を図示したネットワーク構成図であり,また,図12は本発明の実施例によるタッチスタンプを利用した認証方法を段階的に図示した流れ図である。
[70] 図11に図示されたように,本発明の実施例による認証システムには複数の携帯端末機2000と,これらとネットワークNを通じて通信する認証サーバ1000が含まれる。上記携帯端末機2000はタッチスクリーンを具備した移動通信端末機になり得る。
[71] また,上記認証サーバ1000はそれぞれのタッチスタンプ100,200のタッチパターン情報と,それぞれのタッチスタンプ100,200に対応する提携会社の加盟店情報を保存するデータベース1100を備える。ここでタッチパターン情報は提携会社または加盟店ごとに互い異なって定められた固有のパターン情報を含むことができる。
[72] それによって上記認証サーバ1000は,上記携帯端末機2000で上記タッチスタンプ100,200による一定のタッチパターンが認識されると,このように認識されたタッチパターン情報を上記携帯端末機2000から受信する。また,受信されたタッチパターン情報を上記データベース1100に保存された複数のタッチパターン情報と比較して,一致するタッチパターン情報を検索する。また,一致するタッチパターン情報があれば,それに対応する提携会社の加盟店情報を確認して上記携帯端末機2000に対するタッチパターン入力が当該加盟店でおこなわれたものであることを認証して上記携帯端末機2000に当該加盟店情報及び認証成功信号を送る。
[73] それによって上記携帯端末機2000では上記認証サーバ1000から受信された加盟店情報及び認証成功信号に対応して事前に設定された動作を行う。
[74] このような認証システムによる認証過程の一実施例として,オンラインスタンプカードサービスを提供する方法を,図12を参照して説明すると,まず上記携帯端末機2000でスタンプカードアプリが実行される段階(S100)が行われる。
[75] 上記スタンプカードアプリは上記認証サーバ1000と連動する端末機用アプリケーションであって,例えば事前に設定された加盟店に対して事前に設定されたタッチパターンを事前に設定された回数だけ入力を受けると商品やサービスと交換可能なクーポンを支給する方式のアプリケーションになることができる。
[76] また,上記スタンプカードアプリが実行されると,上記携帯端末機2000に上記認証サーバ1000の運営主体と事前に契約された複数の加盟店のリストの提供される段階が行われる。例えば,コーヒー専門店や食堂などのリストを提供することができる。それによって上記携帯端末機2000は上記リストにおいて一つの加盟店を使用者から選択を受ける(S110)。
[77] また,上記携帯端末機2000は選択された加盟店に対応するスタンプカード画面を表示する。例えば,コーヒー専門店「コーヒービーン」に対するスタンプカードをタッチスクリーンに表示することができ,既に受け取ったスタンプの数とクーポンを受け取るためにこれから受け取るべきスタンプの数を一緒にタッチスクリーンに表示することができる。
[78] また,上記タッチスタンプ100,200を利用したタッチ入力を受けるために上記携帯端末機2000のタッチスクリーンにスタンプ領域が表示される段階(S120)が行われる。このとき上記スタンプ領域はスタンプカードの区分された複数の領域の中でスタンプを受けない領域になることもでき,別個の領域になることもできる。
[79] それによって上記タッチスクリーンに表示されたスタンプ領域には上記タッチスタンプ100,200からのタッチ入力を加えることができる。また,上記携帯端末機2000が上記スタンプ領域内にタッチ入力を感知(S130)すると,感知されたタッチ入力のタッチパターンを上記S110段階で選択を受けた加盟店に対応して事前に保存されたタッチパターンと比較して事前に保存されたタッチパターンと同一のパターンであるかどうかを判断する(S140)。ここで,上記携帯端末機2000にはそれぞれの加盟店に対応するタッチパターンが事前に保存され,入力されたタッチパターンをこれと比較できるようにすることもでき,または上記携帯端末機2000が入力されたタッチパターンの情報を上記認証サーバ1000に送り,それによって上記認証サーバ1000が送信されたタッチパターンの情報を上記データベース1100に保存されたタッチパターンと比べて認証を行うこともできる。
[80] また,同一のパターンに該当するのであれば,上記スタンプカードに一つのスタンプをさらに追加してタッチスクリーンに表示する(S150)。それによって追加されたスタンプの数が事前に設定された数に到達したかどうかを判断し(S160),事前に定められた数だけ累積したものと確認された上記認証サーバ1000がこれを確認して上記携帯端末機2000で電子クーポンを発給する段階(S170)が行われる。
[81] すなわち,加盟店ではそれぞれ固有のタッチパターンを有するタッチスタンプ100,200を備え,使用者らは自分の携帯端末機2000のタッチスクリーンを通じて上記タッチスタンプ100,200からタッチ入力を受けて,事前に保存された各加盟店に対するタッチパターンに対応するかどうかによって実際に加盟店からタッチ入力を受けたかどうかを認証するようになる。」

エ 以上のア?ウの記載から,甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「本体20と,該本体20の一側に備えられ伝導性物質で構成された接触部24と,一定のパターンによって配列されたタッチ端子25から構成され,上記接触部24は上記タッチ端子25と電荷の移動が可能な経路を形成するものであり,静電容量方式のタッチパネルなど接触式タッチパネルに上記タッチ端子25が密着し,上記接触部24に人の手が触れたら,電荷の移動経路が形成されながら電荷の移動が発生して携帯端末機でタッチパネルに対する上記タッチ端子25らのタッチパターンを感知することができるようになるタッチスタンプ200と([36],[37],[50]-[54],[67]),
タッチスクリーンを具備した複数の携帯端末機2000と([70]),
上記複数の携帯端末機2000とネットワークNを通じて通信する認証サーバ1000と([70]),
から構成される認証システムであって([70]),
上記認証サーバ1000はそれぞれのタッチスタンプ100,200のタッチパターン情報と,それぞれのタッチスタンプ100,200に対応する提携会社の加盟店情報を保存するデータベース1100を備え,ここでタッチパターン情報は提携会社または加盟店ごとに互い異なって定められた固有のパターン情報を含むことができ([71]),それによって上記認証サーバ1000は,上記携帯端末機2000で上記タッチスタンプ100,200による一定のタッチパターンが認識されると,このように認識されたタッチパターン情報を上記携帯端末機2000から受信し,受信されたタッチパターン情報を上記データベース1100に保存された複数のタッチパターン情報と比較して,一致するタッチパターン情報を検索し,一致するタッチパターン情報があれば,それに対応する提携会社の加盟店情報を確認して上記携帯端末機2000に対するタッチパターン入力が当該加盟店でおこなわれたものであることを認証して上記携帯端末機2000に当該加盟店情報及び認証成功信号を送るものであり([72]),
それによって上記携帯端末機2000では上記認証サーバ1000から受信された加盟店情報及び認証成功信号に対応して事前に設定された動作を行うものであり([73]),
このようなタッチスタンプ100を利用すると,オフライン上で発給されるクーポンやスタンプカードなどを携帯端末機によりオンラインで実現するにあたって,クーポンまたはスタンプカード発給主体を認証する方法として上記タッチスタンプ100を使用することができるものであり([68]),
上記携帯端末機2000は選択された加盟店に対応するスタンプカード画面を表示し,タッチスクリーンに表示されたスタンプ領域には上記タッチスタンプ100,200からのタッチ入力を加えることができ,上記携帯端末機2000が上記スタンプ領域内にタッチ入力を感知すると,入力されたタッチパターンの情報を上記認証サーバ1000に送り,それによって上記認証サーバ1000が送信されたタッチパターンの情報を上記データベース1100に保存されたタッチパターンと比べて認証を行うものであり([77],「79]),
加盟店ではそれぞれ固有のタッチパターンを有するタッチスタンプ100,200を備え,使用者らは自分の携帯端末機2000のタッチスクリーンを通じて上記タッチスタンプ100,200からタッチ入力を受けて,事前に保存された各加盟店に対するタッチパターンに対応するかどうかによって実際に加盟店からタッチ入力を受けたかどうかを認証する([81]),
認証システム。」

(2)甲第2号証(ワールドビジネスサテライト トレンドたまご 「スマホに押すスタンプ」として放送,株式会社テレビ東京,2013年12月4日放送,ウェブサイト 「BUSINESS ON DEMAND(URL:https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/trend_tamago/post_55682)」における放送内容の画像(【画像1】?【画像8】)をプリントしたもの)
甲第2号証によると,以下の点が示されているものと認められる。
ア ウェブサイト 「BUSINESS ON DEMAND(URL:https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/trend_tamago/post_55682)」のトップページ
「WBS 【トレたま】スマホに押すスタンプ
2013/12/04(水)23:00

【商品名】
電子スタンプ

【商品の特徴】
スマートフォン上に配布される電子クーポンにスタンプを押すと使用済みが記録されるシステム。判の部分についた25個のドットでいつどこのレジでクーポンを使ったかが記録され,次にどんなクーポンを送ればまた店に来てくれるかをリサーチできます。」

イ 【画像4】
スマートフォンのタッチパネルディスプレイにクーポンが表示されており,スタンプの判の部分にドットが取り付けられている画像。

ウ 【画像5】
スマートフォンのタッチパネルにスタンプの判の部分(ドット)が接触されている画像。

エ 【画像6】
スタンプの判が押された後に,ご利用済みが表示されている画像。

オ 以上のア?エから,甲第2号証には以下の事項が記載されていると認められる。
「スマートフォン上に配布される電子クーポンにスタンプを押すと使用済みが記録されるシステムであって,上記電子クーポンにスタンプの判が押された後にご利用済みが表示され,判の部分についた25個のドットでいつどこのレジでクーポンを使ったかが記録され,次にどんなクーポンを送ればまた店に来てくれるかをリサーチできるシステム。」

(3)甲第3号証(特開2013-238937号公報)
甲第3号証には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
ア 「【0041】
管理サーバ1は,ユーザ端末2から所望の電子クーポンのダウンロード要求を受信すると,電子クーポンデータベース11からダウンロード要求のあった電子クーポンを読み出し,読み出した電子クーポンを,サーバ用通信部12を介して,ダウンロード要求がなされたユーザ端末2に対し配信する(ステップS1)。ユーザ端末2は,端末用通信部21を介して,管理サーバ1により配信された電子クーポンを受信し,受信した電子クーポンを,記憶部22に記憶しておく(ステップS2)。このとき,ユーザ端末2の記憶部22には,複数の電子クーポンを記憶しておくことができる。」

イ 「【0050】
ユーザ端末2の制御部24は,切離画像Bを表示する領域においてスライド入力が検出され,かつユーザ端末2の位置が電子クーポンの利用可能位置に含まれると判断した場合に,タッチパネルディスプレイ23におけるディスプレイ部23aを制御し,本体画像Aから切離画像Bを切り離す表示を行う。図6(b)及び図6(c)には,図6(a)に示された本体画像Aと切離画像Bが連結した状態から,切離画像Bが切り離される様子が示されている。例えば,制御部24は,記憶部22に記憶されている電子クーポンアプリケーション22aに従い,本体画像Aから切離画像Bを切り離すアニメーションを再生することとしてもよい。例えば,記憶部22の一時記憶領域に,本体画像と連結した状態の切離画像(例えば図6(a)に示されるもの),本体画像から切り離され静止した状態の切離画像(例えば図6(c)に示されるもの),及び連結した状態から静止した状態に至るまでの湾曲した複数の切離画像(例えば図6(b)に示されるもの)等を記憶しておき,スライド入力の検出に基づいて,上記複数の画像から構成されるアニメーションを再生し,実際に本体画像Aから切離画像Bを「もぎる」操作が行われたように表示を行う。
また,本体画像Aから切離画像Bを切り離すアニメーションは複数のパターンで記憶部22に記憶されていてもよい。例えば,制御部24は,スライド入力が行われた第1の方向を検出した場合には,その第1の方向に応じた第1のアニメーションを再生し,スライド入力が行われた第2の方向を検出した場合には,その第2の方向に応じた第2のアニメーションを再生する処理を行なっても良い。
【0051】
続いて,ユーザ端末2の制御部24は,本体画像Aから切離画像Bを切り離す表示が行われた後に,電子クーポンの使用済データを生成する(ステップS11)この使用済データには,例えば,電子クーポンが利用された旨の情報や,利用された電子クーポンの識別番号(識別No),電子クーポンの利用日時,利用場所,電子クーポンを利用したユーザのユーザ情報が含まれる。生成された使用済データは,端末用通信部21を介して,管理サーバ1へと送信される(ステップS11)。」

ウ 「【0055】
他方,管理サーバ1は,ステップS11においてユーザ端末2から送信された使用済データを,サーバ用通信部12を介して受信する(ステップS15)。管理サーバ1は,受信した使用済データに基づいて,利用履歴データベース13を更新する(ステップS16)。すなわち,利用履歴データベース13には,本電子クーポンシステムを利用可能なユーザに関するユーザ情報や,各電子クーポンの利用履歴などが関連付けて記憶されている。例えば,使用済データを参照し,電子クーポンの利用履歴を更新することで,使用済データを生成したユーザ端末2を保有するユーザが,どの電子クーポンを利用したのかを管理できる。これにより,例えば,一度電子クーポンを利用したユーザは,同じ電子クーポンを使用できないようにする等の利用制限を設定することも可能である。また,使用済データに含まれる情報に基づいて利用履歴データベース13を更新しておけば,どのユーザがどの電子クーポンを利用したかを把握することができるため,利用履歴データベース13に蓄積された情報を解析して,各ユーザの興味がある事柄を類推できる。」

エ 【図6】(c)から,電子クーポンが切り離された際に,「クーポンを使用しました。」と表示される点が記載されている。

オ 以上ア?エの記載から,甲第3号証には以下の事項が記載されていると認められる。
「管理サーバ1は,ユーザ端末2から所望の電子クーポンのダウンロード要求を受信すると,電子クーポンデータベース11からダウンロード要求のあった電子クーポンを読み出し,読み出した電子クーポンを,サーバ用通信部12を介して,ダウンロード要求がなされたユーザ端末2に対し配信し,
ユーザ端末2の制御部24は,切離画像Bを表示する領域においてスライド入力が検出され,かつユーザ端末2の位置が電子クーポンの利用可能位置に含まれると判断した場合に,タッチパネルディスプレイ23におけるディスプレイ部23aを制御し,本体画像Aから切離画像Bを切り離す表示を行い,切り離された際に,「クーポンを使用しました。」と表示し,
管理サーバ1は,ユーザ端末2から送信された使用済データを,サーバ用通信部12を介して受信すると,受信した使用済データに基づいて,利用履歴データベース13を更新する,電子クーポンシステム。」

(4)甲第4号証(特開2007-66212号公報)
甲第4号証には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
ア 「【0023】
メモリ120には,電子文書・個人情報記憶部121,印影データ保管部122,押印データ保管部123,及びプログラム記憶部124が設けられている。電子文書・個人情報記憶部121は,押印が未受領である電子文書と,この電子文書に押印すべき人物の個人情報(住所,氏名など)とを関連付けて記憶するもので,電子文書と個人情報を複数組記憶し得るものとする。印影データ保管部122は,印影読み取り装置130により読み取られた印鑑190の印影データ(印影の画像のデジタルデータ)を保管(一時的に記憶)する。押印データ保管部123は,押印済み電子文書,すなわち印影データを挿入済みの電子文書のデータと,押印を受領した(印影データを電子文書に挿入した)日時や場所のデータを記憶する。プログラム記憶部124は,情報処理装置110が実行する各種プログラムを記憶する。そのプログラムには,後述する図4の押印受領処理の制御手順のプログラムも含まれる。なお,メモリ120は,上記以外の各種データの記憶にも用いられる。」

イ 「【0054】
あるいは,電子文書・個人情報記憶部121に,電子文書と,これに押印すべき人物の個人情報と共に,押印すべき印鑑の固有のIDデータを関連付けて記憶するようにしてもよい。そして,ステップS405において,前述のように,印鑑190のRFタグ200からメモリ240に記憶された個人情報データ242を送信させると共に,IDデータ241を送信させて両データを取得する。そして,図4のステップS406において,前述のように個人情報の比較を行うと共に,ステップS405で送信されたIDデータ241と,記憶部121において押印対象の電子文書に関連付けて記憶された押印すべき印鑑のIDデータとが一致するか比較し,個人情報もIDデータも共に一致した場合は,ステップS407?S409の処理を行い,一方または両方が一致しない場合はステップS410,S411の処理を行うようにしてもよい。」

ウ 以上のア及びイの記載から,甲第4号証には以下の事項が記載されていると認められる。
「電子文書・個人情報記憶部121は,押印が未受領である電子文書と,この電子文書に押印すべき人物の個人情報(住所,氏名など)とを関連付けて記憶するもので,電子文書と個人情報を複数組記憶し得るものとすることができ,また,電子文書・個人情報記憶部121に,電子文書と,これに押印すべき人物の個人情報と共に,押印すべき印鑑の固有のIDデータを関連付けて記憶するようにしてもよいこと。」

(5)甲第5号証(米国特許出願公開第2013/0194202号明細書)
甲第5号証には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
ア 「[0005] In a first embodiment, the hardware tool (referred to herein as the "Smart Stamp tool") is composed of a mass of conductive material with a certain number (typically up to five for cooperating with iPhones, up to eleven for iPads) of contact pads that are proud of a flat surface. These points are positioned on the surface in a specific configuration that is unique to each exemplar of the device.」
(訳)「[0005] 第1の実施形態において,ハードウェアツール(以下「スマートスタンプツール」という。)は,その大部分が導電性材料から構成されており,平面を有する幾つかの(通常,iPhone(登録商標)用では5つまでの,iPad(登録商標)用では11つまでの)接触パッドを備えている。これらの接触パッドは,それぞれの原型について特有の立体配置をされた状態で,前記スマートスタンプツールの表面上に配置されている。」

イ 「[0007] When the Smart Stamp tool is placed on the multi-touch-sensitive screen of an intelligent device such as a smartphone or tablet computer, the protruding contact pads make contact with the screen and their locations are detected by the device's capacitive sensors. An application program ("app") running on the device (or on a remote server) mathematically compares the detected locations of the Smart Stamp tool's contact pads to a reference file containing parametric data for versions of the Smart Stamp tool that are authorized with respect to the specific device.
[0008] More specifically, as presently implemented, software provided according to the invention includes an app residing locally on the user's smart device to observe the location of any five points of capacitive contact on the device's multi-touch-sensitive screen ("the observed points"). The software computes data that is parametric of the location and orientation of the five contact points. This parametric data is then submitted via internet communication protocols to a second software program residing on a remote server ("the server software"). The server software mathematically compares the parametric data calculated by the app to data similarly parametric of a set of known authorized point configurations for that app; that is, the server software determines whether the configuration of the detected contact points corresponds to a set of stored contact point locations. The server software returns data to the app indicating whether the observed points satisfied any and all criteria established in comparison with the known authorized points. In this configuration, the server software is capable of serving an authenticating role for a large number of unique apps, each of which would have their own set of one or more unique authorized point configurations.
[0009] It would also be possible to have both the steps of calculating the observed point parametric data and comparison thereof with authorized point configurations occur locally on the user's smart device in a single app, that is, without involvement of a separate server.」
(訳)「[0007] 前記スマートスタンプツールが,スマートフォンやタブレットコンピュータのようなインテリジェントデバイスの,マルチタッチの検出が可能な画面上に配置されると,前記表面から突出した前記接触パッドの各々が前記画面と接触し,前記インテリジェントデバイスが有する静電容量センサによって,前記画面上における前記接触パッド各々の位置が検出される。前記インテリジェントデバイス(または,リモートサーバ)で実行中のアプリケーションプログラム(以下「アプリ」という。)は,前記スマートスタンプツールの接触パッド各々の検出位置を,認可されている特定のスマートスタンプツールの型(バージョン)に関する参照ファイル内のパラメータデータと比較する。
[0008] より具体的には,現在実施されているものとして,本発明に関連するソフトウェアは,ユーザのスマートデバイスに組み込まれた,マルチタッチの検出が可能な当該スマートデバイスの画面に容量性接触される任意の5点の当該画面上における位置(以下「監視ポイント」という。)を監視するためのアプリを含む。当該ソフトウェアは,5つの接触ポイントの位置および当該接触ポイント各々の方向性に関するパラメータデータを計算する。算出されたパラメータデータは,その後,インターネット通信回線を経由して,リモートサーバで実行されている第2のソフトウェアプログラム(以下「サーバソフトウェア」という。)に送信される。当該サーバソフトウェアは,前記アプリによって算出されたパラメータデータを,当該アプリに対する既知の認可ポイントについての一連の配置に関する同様のパラメータデータと比較する。すなわち,サーバソフトウェアは,検出された接触ポイントの配置が,格納されている一連の接触ポイントの位置に対応しているか否かを判断する。サーバソフトウェアは,前記監視ポイントが,既知の認可ポイントとの比較において,ありとあらゆる既定基準を満たしているか否かを示すデータを前記アプリに返信する。かかる構成において,サーバソフトウェアは,それぞれが認可ポイントについて固有の配置を一又は複数有する多数の固有アプリを認証するための認証手段として機能し得る。
[0009] また,独立したサーバを別途用いることなく,監視ポイントのパラメータデータを算出するステップ及び当該パラメータデータと認可ポイントの配置とを比較するステップを,ユーザのスマートデバイスにおいて単一のアプリで実行させることも可能である。」

ウ 「[0011] The art is generally aware of so-called "loyalty cards". In a coffee shop example, a customer may be given a card upon a first purchase, and the card punched, using a tool for punching a uniquely-shaped hole, by the cashier when subsequent transactions are consummated. When, for example, the number of total transactions reaches a given number, as indicated by the number of punches having been removed from the card, the customer may be given the next comparable purchase free. The card, being issued and punched by the coffee shop, thus serves to record the number of transactions, the unique shape of the shop's punch authenticates that each punch in the card was executed by an authorized representative of the shop, and possession of the card by the user authenticates the individual user to the coffee shop.
[0012] In order to replace the loyalty card with the user's smart device, the smart phone or other intelligent device is used in lieu of the card to store information recording the number of prior transactions, comparable to the punches removed, while the Smart Stamp tool is used in lieu of the uniquely-shaped punch to authenticate each transaction in a reliable and secure manner.
[0013] More specifically, the Smart Stamp tool can be employed in cooperation with an intelligent device to authenticate "punches" in a coffee shop loyalty app. The coffee shop will keep a unique Smart Stamp at the point of sale. (A chain of coffee shops would have different Smart Stamps at each location, and the app would be capable of recognizing each and tracking their usage. The app could then transmit this information to the proprietor of the app, for transmission to the management of the chain or other interested parties.)」
(訳)「[0011] いわゆるポイントカードに関する技術が一般的に知られている。例えば,コーヒーショップでは,初回購入時に顧客に対してカードが発行され,次回からの購入時には,レジ係によって,独自形状をした穴を空けるための道具(パンチ)を用いて当該カードに穴が空けられる。例えば,カードに空いた穴の数によって示される総購入回数が一定数に達すると,顧客には,次回の購入が無料となる特典が与えられる。コーヒーショップによって発行され穴が空けられた前記カードは,このように,購入回数を記録するのに役立つ。また,穴がショップ独自の形状であることは,カードに開いたそれぞれの穴がショップの正当権限者によって開けられたものであることを証明すると共に,カードをユーザが所有していることは,コーヒーショップに対して,ユーザ自身が個々の利用者(会員)であることを証明する。
[0012] ポイントカードの代わりにユーザのスマートデバイスを用いるために,スマートフォンまたは他のインテリジェントデバイスが,穴を開けるのと同様,過去の購入回数を記録するための情報を格納するために,当該ポイントカードの代わりに使用されると共に,前記スマートスタンプツールが,それぞれの取引(購入)を確実かつ安全な方法で証明するために,独自形状をしたパンチの代わりに使用される。
[0013] より具体的には,スマートスタンプツールは,インテリジェントデバイスと協働してコーヒーショップのポイントアプリにおける“パンチ”を証明するために用いられる。コーヒーショップは,店頭で,ショップ独自のスマートスタンプの管理を行う。(コーヒーショップチェーンの場合,それぞれの店舗が異なる型のスマートスタンプを所有しており,アプリは,それぞれのスマートスタンプを識別すると共に,当該スマートスタンプ各々の使用をトラッキングすることが可能となっている。アプリが,その後,この情報を,チェーン店の経営者他の関係者に送信することを目的として,アプリの管理者に送信するようにしても構わない。)

エ 「[0017] For example, the user's smart phone could be used to replace a ticket for a concert, and the Smart Stamp tool to replace the ticket taker. The user would buy his or her ticket through a smartphone app designed to interact with the Smart Stamp. The user could then simply contact the device screen at the entrance to the concert venue with a Smart Stamp tool. The successful authentication would then cause the app to generate an "OK" screen which could be shown to an entry guard, or a barcode or the like, which could be scanned by an automated door operator to allow passage.」
(訳)「[0017] 例えば,ユーザのスマートフォンはコンサートのチケットに置き換えて使用することができ,スマートスタンプツールは当該チケットのもぎり係が用いる道具に置き換えて使用することができる。ユーザは,前記スマートスタンプと相互作用するように設計されたスマートフォンアプリを通じて,自身のチケットを購入することになる。当該ユーザは,その後コンサート会場の入場口において,自身のスマートフォンの画面に前記スマートスタンプを無造作に接触させる。認証が成功すると,入場警備員に提示される「OK」画面,あるいは,通行を許可するためドア自動開閉装置によってスキャンされるバーコードその他のコードを前記アプリに生成させるようにする。」

オ 以上のア?エの記載から,甲第5号証には以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「導電性材料から構成され特有の立体配置をされた幾つかの接触パッドを備えたスマートスタンプツールと([0005]),
前記スマートスタンプツールが,スマートフォンやタブレットコンピュータのようなインテリジェントデバイスの,マルチタッチの検出が可能な画面上に配置されると,前記表面から突出した前記接触パッドの各々が前記画面と接触し,前記インテリジェントデバイスが有する静電容量センサによって,前記画面上における前記接触パッド各々の位置が検出されるものであり,より具体的には,ユーザのスマートデバイスに組み込まれた,マルチタッチの検出が可能な当該スマートデバイスの画面に容量性接触される任意の5点の当該画面上における位置(以下「監視ポイント」という。)を監視するためのアプリを含み,当該ソフトウェアは,5つの接触ポイントの位置および当該接触ポイント各々の方向性に関するパラメータデータを計算し,算出されたパラメータデータは,その後,インターネット通信回線を経由して,リモートサーバで実行されている第2のソフトウェアプログラム(以下「サーバソフトウェア」という。)に送信され,前記アプリによって算出されたパラメータデータを,当該アプリに対する既知の認可ポイントについての一連の配置に関する同様のパラメータデータと比較し,検出された接触ポイントの配置が,格納されている一連の接触ポイントの位置に対応しているか否かを判断し,前記監視ポイントが,既知の認可ポイントとの比較において,ありとあらゆる既定基準を満たしているか否かを示すデータを前記アプリに返信するものであり,サーバソフトウェアは,それぞれが認可ポイントについて固有の配置を一又は複数有する多数の固有アプリを認証するための認証手段として機能し得るものであり([0007],[0008]),
また,独立したサーバを別途用いることなく,監視ポイントのパラメータデータを算出するステップ及び当該パラメータデータと認可ポイントの配置とを比較するステップを,ユーザのスマートデバイスにおいて単一のアプリで実行させることも可能であり([0009]),
スマートスタンプツールは,インテリジェントデバイスと協働してコーヒーショップのポイントアプリにおける“パンチ”を証明するために用いられ,コーヒーショップチェーンの場合,それぞれの店舗が異なる型のスマートスタンプを所有しており,アプリは,それぞれのスマートスタンプを識別すると共に,当該スマートスタンプ各々の使用をトラッキングすることが可能となっており,アプリが,その後,この情報を,チェーン店の経営者他の関係者に送信することを目的として,アプリの管理者に送信するようにしても構わないものであり([0013]),
また,ユーザのスマートフォンはコンサートのチケットに置き換えて使用することができ,スマートスタンプツールは当該チケットのもぎり係が用いる道具に置き換えて使用することができ,ユーザは,前記スマートスタンプと相互作用するように設計されたスマートフォンアプリを通じて,自身のチケットを購入し,その後コンサート会場の入場口において,自身のスマートフォンの画面に前記スマートスタンプを無造作に接触させ,認証が成功すると,入場警備員に提示される「OK」画面を前記アプリに生成させる([0017]),
システム。」

(6)甲第6号証(特開2012-118637号公報)
甲第6号証には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
ア 「【0029】
認証システム1は,タブレット型コンピュータ3と,電子印鑑5とを備えている。電子印鑑5は,タブレット型コンピュータ3に対して,静電容量の変化からなる識別情報を入力可能な認証器である。タブレット型コンピュータ3は,入力された識別情報に対して認証を行う。
【0030】
(2)タブレット型コンピュータ
タブレット型コンピュータ3は,主に,タッチパネル7と,ディスプレイ9と,制御部11とを有している。タッチパネル7は,静電容量方式のタッチパネルである。ディスプレイ9は,例えば,液晶ディスプレイである。
【0031】
制御部11は,タッチパネル7に信号が入力されると,それに基づいて情報処理を行い,さらにディスプレイ9に各種表示を行わせる。制御部11は,CPU,RAM,ROM等からなりプログラムを実行するコンピュータであり,認証部13,表示制御部15,入力データ記憶部17,認証データ記憶部19,タイマー部21,及び表示データ記憶部23を有している。入力データ記憶部17には,電子印鑑5から入力された識別情報が保存される。認証データ記憶部19には,認証部13が認証を行う認証データが予め保存されている。認証データとは,識別情報に対応するデータである。タイマー部21は,必要に応じて生成され,タッチダウン及びタッチアップの時間間隔を計測する。表示データ記憶部23には,認証データに対応する表示データと,承認不可を示す表示データとが予め保存されている。認証データに対応する表示データとは,この実施形態では,印鑑画像である。」

イ 「【0055】
なお,認証制御動作時には,タブレット型コンピュータ3のディスプレイ9には,例えば,図11に示すように,承認を求める書類情報と,電子印鑑を押し当てる部分である第1印鑑押当部分7a,第2印鑑押当部分7b,第3印鑑押当部分7cが表示されている。」
【0056】
操作者が電子印鑑5をタブレット型コンピュータ3のタッチパネル7に押し付けると,タクトスイッチ39がオンされて,バッテリ29からマイコン制御部27に電力が供給される。これにより,マイコン制御部27がスイッチングリレー41に対して電力オンと電力オフとを繰り返す。電力オンによってスイッチングリレー41は連通状態になり,その結果,タッチパネル7にはタッチダウンが入力される。電力オフによってスイッチングリレー41は遮断状態になり,その結果,タッチパネル7にはタッチアップが入力される。
【0057】
タッチダウン又はタッチアップが入力されると,タイマー部21が時間計測を開始する。なお,このときに,表示制御部15は,受信中であることの表示をディスプレイ9に表示させる。
【0058】
認証部13は,タイマー部21からの情報に基づいて,タッチダウン又はタッチアップの時間間隔を入力データ記憶部17に記憶する。
【0059】
以上のステップは,400ms以上のタッチアップを検出するまで繰り返される。そして,次に,認証部13は,入力データ記憶部17に保存された入力データに一致する認証データが認証データ記憶部19に存在するか否か,さらには入力データが電子印鑑5の押し当てられた箇所に正しく対応したものであるか否かを調べる。この照合作業により,用いられた電子印鑑5が正しいものか否かが判定される。用いられた電子印鑑5が正しい場合には,表示制御部15が,用いられた電子印鑑5に対応する印鑑画像を表示データ記憶部23から取り出し,それをディスプレイ9に表示させる。」

ウ 「【0082】
ステップS17では,認証部13は,入力データ記憶部17に保存された識別情報に対応する認証データが認証データ記憶部19に保存されているか否か,さらには当該入力データが電子印鑑5の押し当てられた箇所に正しく対応したものであるか否かを調べる。入力データが電子印鑑5の押し当てられた箇所に正しく対応していない場合とは,例えば部長印が押されるべき箇所に課長印が押された場合である。両方ともYesの場合は,プロセスはステップS18に移行する。一方でもNoの場合は,プロセスはステップS19に移行する。
【0083】
ステップS18では,認証部13からの指示に基づいて,表示制御部15は,対応する印鑑の印鑑画像データを表示データ記憶部23から取り出して,ディスプレイ9に表示する。例えば,図11に示すように,山本印である電子印鑑5が第1印鑑押当部分7aに正しく押されると,第1印鑑押当部分7aに「山本」の印鑑画像が表示される。
【0084】
このように,タブレット型コンピュータ3は,電子印鑑5からの識別情報を認証した後に,電子印鑑5を特定する情報を表示する。つまり,例えば,判子を紙に押したときに印鑑画像が映るように,電子印鑑5を特定する情報がタブレット型コンピュータ3の表面に表示される。これにより,操作者は,自分の電子印鑑5による認証が正しく行われた場合に,タブレット型コンピュータ3の動作に基づいてそのことを知ることができる。なお,認証部13は,印鑑画像を付加して文書ファイルを保存する。」

エ 「【0104】
(c)前記実施形態では認証システムは電子的に記録された書類の承認作業である印鑑押捺に用いられたが,他の認証作業,例えば,装置の利用,書類の閲覧,施設への入場の権限があることを認証する作業に用いられてもよい。」

オ 以上のア?エの記載から,甲第6号証には以下の事項が記載されていると認められる。
「タブレット型コンピュータ3と,電子印鑑5とを備える認証システム1であって,
電子印鑑5は,タブレット型コンピュータ3に対して,静電容量の変化からなる識別情報を入力可能な認証器であり,
タブレット型コンピュータ3の制御部11は,認証部13,表示制御部15,入力データ記憶部17,認証データ記憶部19,タイマー部21,及び表示データ記憶部23を有し,入力データ記憶部17には,電子印鑑5から入力された識別情報が保存され,認証データ記憶部19には,認証部13が認証を行う認証データが予め保存され,認証データとは,識別情報に対応するデータであり,
タブレット型コンピュータ3のディスプレイ9には,例えば,承認を求める書類情報と,電子印鑑を押し当てる部分である第1印鑑押当部分7a,第2印鑑押当部分7b,第3印鑑押当部分7cが表示され,
操作者が電子印鑑5をタブレット型コンピュータ3のタッチパネル7に押し付けると,タッチパネル7にはタッチダウン又はタッチアップが入力され,タッチダウン又はタッチアップの時間間隔を入力データ記憶部17に記憶し,
認証部13は,入力データ記憶部17に保存された入力データに一致する認証データが認証データ記憶部19に存在するか否か,さらには入力データが電子印鑑5の押し当てられた箇所に正しく対応したものであるか否かを調べ,この照合作業により,用いられた電子印鑑5が正しいものか否かが判定され,用いられた電子印鑑5が正しい場合には,表示制御部15が,用いられた電子印鑑5に対応する印鑑画像を表示データ記憶部23から取り出し,それをディスプレイ9に表示させるものであり,
当該認証システムは電子的に記録された書類の承認作業である印鑑押捺に用いられたが,他の認証作業,例えば,装置の利用,書類の閲覧,施設への入場の権限があることを認証する作業に用いられてもよい,認証システム。」

(7)甲第7号証(特開2014-26395号公報)
甲第7号証には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
ア 「【0009】
図1は,本実施形態の電子クーポン管理システムの概略図である。この図にあるように,本実施形態によれば,クーポンサーバ装置は,商業施設Aにて操作される外部端末からの電子クーポンの入稿を受付ける。そしてクーポンサーバ装置は入稿内容に応じて電子クーポンを生成しユーザ端末に対し提供するが,当該電子クーポンは,そのままでは利用が不可であるロック状態にて提供される。ロック状態の電子クーポンの提供を受けたユーザ端末は,予めロック解除先として選択された商業施設Bにて操作される外部端末との間で前記ロック状態を解除する処理を行う。前記ロック解除処理が完了することにより,ユーザ端末において電子クーポンの商業施設Aでの利用が可能になる。当該電子クーポン管理システムのもとでは,クーポンを入稿する商業施設Aは親和性のある他の商業施設を選択することなどにより,電子クーポン発行を効率的な集客手段として利用することが可能になる。いっぽう,入稿の際に指定された商業施設Bとしても,消費者間でお得な電子クーポンの利用が可能になる商業施設として評判になることによる集客効果を期待できる。なお,ここで「商業施設」とは店舗のほか,映画館,美術館,博物館,劇場,庭園,駅,駐車場,スポーツジム,動物園,水族館,スタジアム,コンサートホール,アミューズメントパーク,遊園地,海水浴場,キャンプ場,スキー場,果物狩り農園などその利用に対価が必要なあらゆる施設を含み,施設の規模の大小は特に問わない。
【0010】
なお,図2は,本発明で用いる電子クーポンを言語ファイルを用いて表す一例を示す図である。この図が示すように,電子クーポンは,入稿元の商業施設の商業施設IDやクーポンの内容として表示する情報,ロック状態を解除するための解除キー,クーポンを利用する際に用いるクーポンキー,利用可能期間を示す情報,ロック解除先となる商業施設の商業施設IDなどの情報から構成されている。なお,図2はロック解除先となる商業施設にてロックを解除した状態の電子クーポンのデータを示している。詳しくは以下で説明する。
【0011】
続いて,図3は,図2で例示した電子クーポンの利用時の流れの一例を示すフローチャートである。この図に示すように,ステップS0301では,消費者は,スマホや携帯電話などの外部端末装置を用いてロック状態の電子クーポンのデータをクーポンサーバ装置からダウンロードする。次にステップS0302では,消費者の外部端末装置がロック解除先となる商業施設の商業施設IDの出力要求が当該ロック解除先とされている商業施設が用いる端末装置からあるかどうかを判断する。
要求があるとの判断であればステップS0303に移行し,要求が無いとの判断である場合はステップS0302の処理に戻る。次に,ステップS0303では,消費者の外部端末装置が電子クーポンファイルに含まれるロック解除先となる商業施設IDのデータを要求元へ出力する。
ステップS0304では,ロック解除先となる商業施設の端末装置にて,消費者の端末装置から出力されてくる商業施設IDと予め設定された施設IDとが合致するかどうかの判断を行いその結果を消費者の端末装置に返信する。返信内容が当該IDが合致するとの判断であれば,ステップS0305に移行する。IDが合致しないとの判断であれば,ステップS0302の処理に戻る。ステップS0305では,ロック状態の解除を要求するために用いる解除キーのデータを消費者の端末装置が前記商業施設の端末装置に出力する。そしてステップS0306では,前記商業施設の端末装置にて当該解除キーのデータが合致しているかを判断する。前記データが合致しているとの判断である場合には,ステップS0307に移行する。前記データが合致していないとの判断である場合には,前記ロック解除先とされている商業施設が用いる端末装置又は/及び消費者の端末装置にて解除キーが不一致である旨の表示を行い,ステップS0302の処理に戻る。
次にステップ0307では,電子クーポンファイルに当該電子クーポンを利用可能な状態とするために用いるクーポンキーを書き込む。消費者の端末装置にて行われるこの処理がいわゆる「ロック解除」と位置づけられる。
次にステップS0308では,消費者の端末装置にてクーポン利用先となる商業施設の商業施設IDの出力要求が当該クーポン利用先とされている商業施設が用いる端末装置からあるかどうかを判断する。
要求があるとの判断であればステップS0309に移行し,要求が無いとの判断である場合はステップS0308の処理に戻る。ステップS0309では,消費者の端末装置が電子クーポンのファイルに含まれる利用施設IDのデータを要求元へ出力する。そしてステップS0310では,商業施設の端末装置にて,消費者の端末装置から出力されてくる商業施設IDと予め設定された施設IDが合致するかどうかの判断を行う。ここでの判断が当該IDが合致するとの判断であれば,ステップS0311に移行する。IDが合致しないとの判断であれば,ステップS0308の処理に戻る。ステップS0311では,商業施設の端末装置より利用期間データの要求を消費者の端末装置が受け,これに対しステップS0312では消費者の端末装置が電子クーポンファイルに含まれる利用期間データを当該商業施設の端末装置に出力する。そしてステップS0313では,商業施設の端末装置が前記出力を受けた利用期間データが示す利用期間内に現日時が含まれるかどうかを判断し,利用期間内であればステップS0314に移行する。利用期間外であれば,利用期間が到来していない場合はステップS0308の処理に戻り,利用期間が経過している場合は処理を終了する。
そして,ステップS0314では,商業施設の端末装置からのクーポンデータの要求を消費者の端末装置が受け,これに対しステップS0315では消費者の端末装置がクーポンデータを前記商業施設の端末装置に出力する。そこでステップS0316では,出力を受けたクーポンデータが本来利用可能なデータと合致しているかを商業施設の端末装置が判断する。利用可能なデータと合致しているとの判断であれば,ステップS0317に移行する。合致していないとの判断であれば,利用が不可である旨の表示を行い,ステップS0308の処理に戻る。ステップS0317では,クーポンデータのうち表示データを消費者の端末装置にて表示する。
さらにステップS0318では,商業施設の端末装置が電子クーポンの利用を続ける場合かどうかを判断する。続けるとの判断である場合にはステップS0302に戻り,続けないとの判断である場合には,処理を終了する。
なお,この図のうち,ステップS0301の処理は消費者の外部端末装置にて行われる。そして,ステップS0302からステップS0307までの処理はロック解除先となる商業施設にて行われ,ステップS0308からステップS0318までの処理は電子クーポンの利用先となる商業施設にて行われる。」

イ 「【0021】
また,前記のとおり商業施設IDは複数選択可能としてもよい。商業施設IDの選択は,電子クーポンのロックを解除するために赴くべき店舗を特定するために行われるが,複数の商業施設IDを選択してクーポンを入稿した場合,例えば,複数選択したうちいずれか一の商業施設にさえ赴けばロック解除状態が実現できるようにしても良いし,複数の商業施設全てに足を運ぶことでロック解除状態が実現できるようにしても良い。後者のように複数の商業施設すべてに訪問することを条件にクーポンのロックが解除される構成をとることによって,消費者は複数の商業施設全てをまわるという,いわばアールピージーゲームを体験しているかのような感覚を得ることができる。そして,消費者は,あたかもゲームをクリアする際の達成感を得るがごとく気軽に各商業施設を訪れることが期待できることから,前記複数の商業施設IDを選択可能とする構成をとることによって,各商業施設の集客数の向上に資することが期待可能となる。

ウ 以上のア及びイの記載から,甲第7号証には以下の事項が記載されていると認められる。
「電子クーポンは,入稿元の商業施設の商業施設IDやクーポンの内容として表示する情報,ロック状態を解除するための解除キー,クーポンを利用する際に用いるクーポンキー,利用可能期間を示す情報,ロック解除先となる商業施設の商業施設IDなどの情報から構成され,
また,上記商業施設IDは複数選択可能としてもよく,商業施設IDの選択は,電子クーポンのロックを解除するために赴くべき店舗を特定するために行われるが,複数の商業施設IDを選択してクーポンを入稿した場合,例えば,複数選択したうちいずれか一の商業施設にさえ赴けばロック解除状態が実現できるようにしても良いし,複数の商業施設全てに足を運ぶことでロック解除状態が実現できるようにしても良く,
消費者の外部端末装置が電子クーポンファイルに含まれるロック解除先となる商業施設IDのデータを要求元へ出力すると,ロック解除先となる商業施設の端末装置にて,消費者の端末装置から出力されてくる商業施設IDと予め設定された施設IDとが合致するかどうかの判断を行いその結果を消費者の端末装置に返信する,電子クーポン管理システム。」

5 当審の判断
(1)国内優先権主張の効果について
異議申立人の主張する取消理由1,取消理由2は,国内優先権主張の効果が認められないことを前提とすることから,まず,国内優先権主張の効果について検討する。
ア 本件の請求項1に係る発明は,「電子チケット」の使用に応じたサービスの提供前に,ユーザ端末の表示手段にスタンプを接触させると,前記表示手段に「電子チケット」を使用済みである旨を示す描画を行うものである。
この「電子チケット」について,本件明細書には次の事項が記載されている。
「【0003】
また,音楽,映画,スポーツ等の各種イベントの入場券,交通機関の利用券,事前に購入された商品の引換券などもインターネット等を介して電子チケットという形態で利用者の携帯端末に発行され,電子チケットを提示することでイベント会場への入場や交通機関の利用といったサービスを享受できる仕組みが実現されつつある。以下の説明では,電子的に発行されるクーポン,スタンプカード,イベントチケット,商品引換券等,インターネット等を介して電子的に発行されるクーポンやチケットを総称して「電子チケット」という。」
上記記載によれば,「電子チケット」は,クーポンやスタンプカードのほかに,音楽,映画,スポーツ等の各種イベントの入場券,交通機関の利用券,事前に購入された商品の引換券をも含んだ,インターネット等を介して電子的に発行されるチケットの総称である。

イ これに対し,国内優先権の基礎となった特願2013-120218号(以下,「優先基礎出願」という。)の明細書等に,「電子チケット」という記載は無く,第1実施形態としてクーポンが,第2実施形態としてスタンプラリーの画面が記載されているのみである。
そして,発明が解決しようとする課題として「顧客がいつ・どこで・どのクーポンを利用したか,顧客1人当たりの売上及びそれに応じて発行されるポイントのデータを把握することが容易ではない。このため,小売店側がクーポンやポイントを販売促進の方法として効果的かつ効率的に利用することは実際には困難である。」(【0004】)が記載され,また,作用効果として「登録済みのクーポンが利用されると,クーポンをいつ・誰が・どこの店舗で利用したかを端末情報記憶部41が把握し,これらの情報を端末情報記憶部が蓄積する。店舗はこれらの情報を利用してマーケティングや販売促進活動を行ったり,新たなクーポンの企画に活かしたりすることができる。」(【0037】),「このように,チェックポイントに到着すると,チェックポイントにいつ・誰が・どこのチェックポイントに到着したかをサーバ40が把握し,これらの情報を蓄積することができる。」(【0041】)が記載されている。
しかしながら,ここには「電子チケット」という記載はなく,クーポンやポイント,スタンプラリーのような販売促進方法のみが記載され,しかも,発明の課題及び作用効果が,販売促進方法の効果的かつ効率的な利用であることからみて,優先基礎出願に係る発明は,販売促進方法とは関係の無い,音楽,映画,スポーツ等の各種イベントの入場券,交通機関の利用券,事前に購入された商品の引換券のような「電子チケット」を対象としていないことは明らかである。

ウ そうすると,「電子チケット」は,優先基礎出願に記載されていたクーポンや,スタンプカードを含むとしても,優先基礎出願に記載されていないイベントの入場券等をも含んだ,このような上位概念は,優先基礎出願の明細書等に記載されていなかったものである。
したがって,本件の請求項1に係る発明について,国内優先権主張の効果を認めることはできない。

エ また,請求項1を直接または間接的に引用する請求項2?6に係る発明についても同様に,国内優先権主張の効果を認めることはできない。

オ 以上ア?エのとおりであるから,本件の請求項1?6に係る発明についての新規性及び進歩性の判断の基準日は,特願2014-98242号の出願日である平成26年5月12日である。

(2)取消理由1(甲第1号証を主引例とした理由)
(2-1)請求項1に係る発明(本件発明1)について
本件発明1と甲第1号証に記載された前記甲1発明を対比する。
ア 本件発明1の「情報を表示する表示手段,および前記表示手段に重ねて設けられ,同時に複数の位置に接触されたときに個々の接触位置を検出可能な入力手段を有するタッチパネルを有し,電子チケットを前記表示手段に表示するユーザ端末」との事項について
甲1発明の「携帯端末機2000」は「タッチスクリーン」を具備しており,また,当該「タッチスクリーン」は,「タッチスタンプ200」に備えられた「一定のパターンによって配列されたタッチ端子25」が密着した際に,上記「タッチ端子25」によるタッチパターンを感知可能とする,つまり一定のパターンとして配列された「タッチ端子25」のそれぞれの接触位置を同時に検出可能とする入力手段として機能するものであることから,甲1発明の「携帯端末機2000」は,本件発明1の「ユーザ端末」に対応するものである。
また,「携帯端末機2000」は,「上記携帯端末機2000は選択された加盟店に対応するスタンプカード画面を表示し,タッチスクリーンに表示されたスタンプ領域には上記タッチスタンプ100,200からのタッチ入力を加えることができ」と記載されているように,スタンプカードを表示する表示画面を備え,また,当該表示画面に重ねてタッチスクリーンが設けられていることは明らかである。
さらに,「オフライン上で発給されるクーポンやスタンプカードなどを携帯端末機によりオンラインで実現するにあたって,クーポンまたはスタンプカード発給主体を認証する方法として上記タッチスタンプ100を使用することができるものであり」との記載から,「携帯端末機2000」において表示する対象は,「クーポンまたはスタンプカードなど」であり,いわゆる電子チケットを含むといえる。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,
「情報を表示する表示手段,および前記表示手段に重ねて設けられ,同時に複数の位置に接触されたときに個々の接触位置を検出可能な入力手段を有するタッチパネルを有し,電子チケットを前記表示手段に表示するユーザ端末」
を備える点で共通する。

イ 本件発明1の「前記入力手段に対する同時接触が検出可能な複数の按部を有するスタンプ」との事項について
甲1発明の「タッチスタンプ200」は上記アで示したように,「タッチスクリーン」に対する同時接触が検出可能な複数の「タッチ端子25」を有するものである。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,
「前記入力手段に対する同時接触が検出可能な複数の按部を有するスタンプ」
を備える点で共通する。

ウ 本件発明1の「前記ユーザ端末と通信可能なサーバ装置」との事項について
甲1発明も「上記複数の携帯端末機2000とネットワークNを通じて通信する認証サーバ1000」を備えていることから,甲1発明の「認証サーバ1000」は本件発明1の「サーバ装置」に対応するものである。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,
「前記ユーザ端末と通信可能なサーバ装置」
を備える点で共通する。

エ 本件発明1の「前記ユーザ端末は,前記電子チケットの使用に応じたサービスの提供前に,前記表示手段に前記電子チケットを表示している状態で,前記スタンプの按部により同時に接触されると,複数の接触位置を前記入力手段により検出し,検出した接触位置が表示している電子チケットに対応するかを前記サーバ装置に照会し,対応する旨の応答があった場合に,前記表示手段において前記電子チケットが使用済みである旨を示す描画を行い」との事項について
甲1発明の「上記認証サーバ1000はそれぞれのタッチスタンプ100,200のタッチパターン情報と,それぞれのタッチスタンプ100,200に対応する提携会社の加盟店情報を保存するデータベース1100を備え,ここでタッチパターン情報は提携会社または加盟店ごとに互い異なって定められた固有のパターン情報を含むことができ([71]),それによって上記認証サーバ1000は,上記携帯端末機2000で上記タッチスタンプ100,200による一定のタッチパターンが認識されると,このように認識されたタッチパターン情報を上記携帯端末機2000から受信し,受信されたタッチパターン情報を上記データベース1100に保存された複数のタッチパターン情報と比較して,一致するタッチパターン情報を検索し,一致するタッチパターン情報があれば,それに対応する提携会社の加盟店情報を確認して上記携帯端末機2000に対するタッチパターン入力が当該加盟店でおこなわれたものであることを認証して上記携帯端末機2000に当該加盟店情報及び認証成功信号を送るものであり」,「それによって上記携帯端末機2000では上記認証サーバ1000から受信された加盟店情報及び認証成功信号に対応して事前に設定された動作を行うものであり」,及び,「上記携帯端末機2000は選択された加盟店に対応するスタンプカード画面を表示し,タッチスクリーンに表示されたスタンプ領域には上記タッチスタンプ100,200からのタッチ入力を加えることができ,上記携帯端末機2000が上記スタンプ領域内にタッチ入力を感知すると,入力されたタッチパターンの情報を上記認証サーバ1000に送り,それによって上記認証サーバ1000が送信されたタッチパターンの情報を上記データベース1100に保存されたタッチパターンと比べて認証を行うものであり」との記載,及び上記アで示した「携帯端末機2000」の機能によれば,「携帯端末機2000」では「タッチスタンプ」のタッチパターンの情報を「認証サーバ1000」に送り,該「認証サーバ1000」において,送信されたタッチパターンの情報を「データベース1100」に保存されたタッチパターンと比べて認証を行い,一致するタッチパターン情報があれば,それに対応する提携会社の加盟店情報を確認し,「携帯端末機2000」に対するタッチパターン入力が当該加盟店でおこなわれたものであることを認証して「携帯端末機2000」に当該加盟店情報及び認証成功信号を送り,「携帯端末機2000」では受信された加盟店情報及び認証成功信号に対応して事前に設定された動作を行うものである。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,
「前記ユーザ端末は,前記電子チケットの使用に応じたサービスの提供前に,前記表示手段に前記電子チケットを表示している状態で,前記スタンプの按部により同時に接触されると,複数の接触位置を前記入力手段により検出し,検出した接触位置を前記サーバ装置に照会し,応答があった場合に,事前に設定された動作を行う」
点で共通する。
なお,本件発明1では検出した接触位置が表示している電子チケットに対応するかを前記サーバ装置に照会しているのに対し,甲1発明では上記携帯端末機に対するタッチパターン入力が当該加盟店でおこなわれたものであることを認証するために照会するものである点で相違する。
また,応答として,本件発明1では照会に対して「対応する旨の応答」が返信されるのに対し,甲1発明では,「加盟店情報及び認証成功信号」が返信される点で相違する。
また,事前に設定された動作として,本件発明1では表示手段において電子チケットが使用済みである旨を示す描画を行うが,甲1発明ではそのようになっていない点で相違する。

オ 本件発明1の「前記サーバ装置は,前記電子チケットと当該電子チケットに対応する一つ以上の前記スタンプの按部の配列情報とを予め対応付けて格納し,前記ユーザ端末からの照会に応じて,前記ユーザ端末が検出した接触位置が前記ユーザ端末に表示している電子チケットに対応するかを判定して対応するか否かを前記ユーザ端末に応答し」との事項について
甲1発明の「認証サーバ1000」では,上記エでも示したように,「受信されたタッチパターン情報を上記データベース1100に保存された複数のタッチパターン情報と比較して,一致するタッチパターン情報を検索し,一致するタッチパターン情報があれば,それに対応する提携会社の加盟店情報を確認して上記携帯端末機2000に対するタッチパターン入力が当該加盟店でおこなわれたものであることを認証して上記携帯端末機2000に当該加盟店情報及び認証成功信号を送る」ものであることから,上記本件発明1の事項は相違点である。

カ 本件発明1の「前記電子チケットには複数の前記スタンプを識別するための情報が紐づけられることが許容される」との事項について
甲1発明には当該事項についての記載はなく相違点である。

キ 本件発明1の「電子チケットシステム」との事項について
甲1発明の「認証システム」も,携帯端末機に表示されたクーポンまたはスタンプカードなどの電子チケットに対し,タッチスタンプの接触によりタッチパターンが検出され,当該タッチパターン情報からサーバにおいて,保存されたタッチパターン情報と比較され,その結果に基づいて事前に設定された動作を行うシステムであり,電子チケットを扱うという上位概念では電子チケットシステムであるといえる。
よって,本件発明1と甲1発明は,「電子チケットシステム」である点で共通する。

ク 以上のア?キによれば,本件発明1と甲1発明との一致点,及び,相違点は以下のとおりである。
<一致点>
情報を表示する表示手段,および前記表示手段に重ねて設けられ,同時に複数の位置に接触されたときに個々の接触位置を検出可能な入力手段を有するタッチパネルを有し,電子チケットを前記表示手段に表示するユーザ端末と,
前記入力手段に対する同時接触が検出可能な複数の按部を有するスタンプと,
前記ユーザ端末と通信可能なサーバ装置と,
を備え,
前記ユーザ端末は,前記電子チケットの使用に応じたサービスの提供前に,前記表示手段に前記電子チケットを表示している状態で,前記スタンプの按部により同時に接触されると,複数の接触位置を前記入力手段により検出し,検出した接触位置を前記サーバ装置に照会し,応答があった場合に,事前に設定された動作を行う,
電子チケットシステム。

<相違点1>
本件発明1では検出した接触位置が表示している電子チケットに対応するかを前記サーバ装置に照会しているのに対し,甲1発明では上記携帯端末機に対するタッチパターン入力が当該加盟店でおこなわれたものであることを認証するために照会するものである点で相違する。
<相違点2>
応答として,本件発明1では照会に対して対応する旨の応答が返信されるのに対し,甲1発明では,加盟店情報及び認証成功信号が返信される点で相違する。
<相違点3>
事前に設定された動作として,本件発明1では表示手段において電子チケットが使用済みである旨を示す描画を行うが,甲1発明ではそのようになっていない点で相違する。
<相違点4>
本件発明1のサーバ装置では,「前記電子チケットと当該電子チケットに対応する一つ以上の前記スタンプの按部の配列情報とを予め対応付けて格納し,前記ユーザ端末からの照会に応じて,前記ユーザ端末が検出した接触位置が前記ユーザ端末に表示している電子チケットに対応するかを判定して対応するか否かを前記ユーザ端末に応答し」との処理を行うのに対し,甲1発明のサーバ装置ではそのような処理を行っていない点。
<相違点5>
本件発明1では「前記電子チケットには複数の前記スタンプを識別するための情報が紐づけられることが許容される」ものであるのに対し,甲1発明ではそのようになっていない点。

ケ 上記相違点について検討する。
上記相違点1,2,4,5は,甲1発明に対し,本件発明1のユーザ端末で電子チケットとスタンプの接触により検出した接触位置が,当該電子チケットに対応するかをサーバ装置に照会する処理,及び,サーバ装置において,前記電子チケットと当該電子チケットに対応する一つ以上の前記スタンプの按部の配列情報とを予め対応付けて格納し,前記ユーザ端末からの照会に応じて,前記ユーザ端末が検出した接触位置が前記ユーザ端末に表示している電子チケットに対応するかを判定し対応するか否かを前記ユーザ端末に応答する処理の違いに起因する相違点である。
そして,これらの相違点1,2,4,5については,上記甲第2号証?甲第7号証には記載も示唆もない。
なお,甲第4号証には「電子文書・個人情報記憶部121は,押印が未受領である電子文書と,この電子文書に押印すべき人物の個人情報(住所,氏名など)とを関連付けて記憶するもので,電子文書と個人情報を複数組記憶し得るものとすることができ,また,電子文書・個人情報記憶部121に,電子文書と,これに押印すべき人物の個人情報と共に,押印すべき印鑑の固有のIDデータを関連付けて記憶するようにしてもよいこと。」が記載されているものの,ここでは電子文書と個人情報を複数組記憶し得るとの記載がある程度で,本件発明1のように電子チケットと複数のスタンプの按部の配列情報が記憶されるものではないし,また,甲第6号証には,タブレット型コンピュータにおいて,承認を求める書類情報と,正しい電子印鑑の入力データが記憶部に記憶されていること,また,施設への入場の権限があることを認証する作業に用いられてもよいと記載されているものの,本件発明1のように電子チケットと複数のスタンプの按部の配列情報が記憶されるものではなく,また,サーバ装置による処理でもない。
したがって,上記相違点3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証に基づいて当業者が容易になし得たものではない。

コ まとめ
以上ア?ケに記載したとおり,本件発明1は,甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2-2)請求項2及び3に係る発明(本件発明2及び3)について
本件発明2及び3は,上記(2-1)で検討した本件発明1に対し,さらに技術的事項を追加して限定したものである。
そして,本件発明1は上記(2-1)で示したように甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件発明2及び3も,甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2-3)請求項5に係る発明(本件発明5)について
本件発明5は,本件発明1の「電子チケットシステム」における「サーバ装置」として機能させるための「プログラム」としたものであるから,上記(2-1)で検討したように,甲1発明と上記相違点2,4,5で相違する。
そして,上記相違点2,4,5については,甲第2号証?甲第7号証には記載も示唆もない。
よって,本件発明5についても,甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2-4)請求項6に係る発明(本件発明6)について
本件発明6は,本件発明1の「電子チケットシステム」における「ユーザ端末」として機能させるための「プログラム」としたものであるから,上記(2-1)で検討したように,甲1発明と上記相違点1?3で相違する。
特に,相違点1に関しては,「ユーザ端末」が「検出した接触位置が表示している電子チケットに対応するかを前記サーバ装置に照会」すること,また,「サーバ装置」において「前記電子チケットと当該電子チケットに対応する一つ以上の前記スタンプの按部の配列情報とを予め対応付けて格納し,前記ユーザ端末からの照会に応じて,前記ユーザ端末が検出した接触位置が前記ユーザ端末に表示している電子チケットに対応するかを判定」することから,「ユーザ端末」から「サーバ装置」に対して,表示している電子チケットを識別可能な情報と検出した接触位置の情報を送信していることも明らかである。
そして,相違点1及び2については,甲第2号証?甲第7号証には記載も示唆もない。
よって,相違点3について検討するまでもなく,本件発明6は,甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2-5)まとめ
以上(2-1)?(2-4)のとおりであるから,特許異議申立人が提出した甲第1号証?甲第7号証によっては,請求項1?3,5,6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

(3)取消理由2(甲第5号証を主引例とする理由)
(3-1)請求項1に係る発明(本件発明1)について
本件発明1と甲第5号証に記載された前記甲5発明を対比する。
ア 本件発明1の「情報を表示する表示手段,および前記表示手段に重ねて設けられ,同時に複数の位置に接触されたときに個々の接触位置を検出可能な入力手段を有するタッチパネルを有し,電子チケットを前記表示手段に表示するユーザ端末」との事項について
甲5発明のスマートフォンやタブレットコンピュータのようなインテリジェントデバイスは,マルチタッチの検出が可能な画面を備えており,後述するスマートスタンプツールの接触パッド各々が前記画面と接触した際に,前記接触パッドの各々の位置を検出することから,当該インテリジェントデバイスは本件発明1の「ユーザ端末」に対応するものである。
また,甲5発明の「ユーザのスマートフォンはコンサートのチケットに置き換えて使用することができ,スマートスタンプツールは当該チケットのもぎり係が用いる道具に置き換えて使用することができ」との事項から,甲5発明も「電子チケット」を処理するシステムである。
そうすると,本件発明1と甲5発明は,
「情報を表示する表示手段,および前記表示手段に重ねて設けられ,同時に複数の位置に接触されたときに個々の接触位置を検出可能な入力手段を有するタッチパネルを有し,電子チケットを前記表示手段に表示するユーザ端末」
を備える点で共通する。

イ 本件発明1の「前記入力手段に対する同時接触が検出可能な複数の按部を有するスタンプ」との事項について
甲5発明の「導電性材料から構成され特有の立体配置をされた幾つかの接触パッドを備えたスマートスタンプツール」も,上記アでも示したようにマルチタッチの検出が可能なインテリジェントデバイスの画面上に接触されると,その接触パッドの位置が検出可能とされるものである。
そうすると,本件発明1と甲5発明は,
「前記入力手段に対する同時接触が検出可能な複数の按部を有するスタンプ」
を備える点で共通する。

ウ 本件発明1の「前記ユーザ端末と通信可能なサーバ装置」との事項について
甲5発明もインテリジェントデバイスで検出された接触パッドの位置等をインターネット通信回線を経由して「リモートサーバ」へ送信していることから,甲5発明の「リモートサーバ」は本件発明1の「サーバ装置」に対応するものである。
そうすると,本件発明1と甲5発明は,
「前記ユーザ端末と通信可能なサーバ装置」
を備える点で共通する。

エ 本件発明1の「前記ユーザ端末は,前記電子チケットの使用に応じたサービスの提供前に,前記表示手段に前記電子チケットを表示している状態で,前記スタンプの按部により同時に接触されると,複数の接触位置を前記入力手段により検出し,検出した接触位置が表示している電子チケットに対応するかを前記サーバ装置に照会し,対応する旨の応答があった場合に,前記表示手段において前記電子チケットが使用済みである旨を示す描画を行い」との事項について
甲5発明の「ユーザのスマートデバイスに組み込まれた,マルチタッチの検出が可能な当該スマートデバイスの画面に容量性接触される任意の5点の当該画面上における位置(以下「監視ポイント」という。)を監視するためのアプリを含み,当該ソフトウェアは,5つの接触ポイントの位置および当該接触ポイント各々の方向性に関するパラメータデータを計算し,算出されたパラメータデータは,その後,インターネット通信回線を経由して,リモートサーバで実行されている第2のソフトウェアプログラム(以下「サーバソフトウェア」という。)に送信され,前記アプリによって算出されたパラメータデータを,当該アプリに対する既知の認可ポイントについての一連の配置に関する同様のパラメータデータと比較し,検出された接触ポイントの配置が,格納されている一連の接触ポイントの位置に対応しているか否かを判断し,前記監視ポイントが,既知の認可ポイントとの比較において,ありとあらゆる既定基準を満たしているか否かを示すデータを前記アプリに返信するものであり,サーバソフトウェアは,それぞれが認可ポイントについて固有の配置を一又は複数有する多数の固有アプリを認証するための認証手段として機能し得る」との記載によれば,ユーザのインテリジェントデバイスに組み込まれたアプリにより,スマートスタンプツールの接触端子の位置等からパラメータデータを算出してリモートサーバへ送信し,リモートサーバでは,当該アプリに対する既知の認可ポイントについての一連の配置に関する同様のパラメータデータと比較することにより,当該アプリを認証し,当該アプリに返信するというものである。
また,甲5発明の「ユーザのスマートフォンはコンサートのチケットに置き換えて使用することができ,スマートスタンプツールは当該チケットのもぎり係が用いる道具に置き換えて使用することができ,ユーザは,前記スマートスタンプと相互作用するように設計されたスマートフォンアプリを通じて,自身のチケットを購入し,その後コンサート会場の入場口において,自身のスマートフォンの画面に前記スマートスタンプを無造作に接触させ,認証が成功すると,入場警備員に提示される「OK」画面を前記アプリに生成させる」との記載によれば,スマートフォンアプリを通じて,自身のチケットを購入し,その後コンサート会場の入場口において,自身のスマートフォンの画面に前記スマートスタンプを無造作に接触させ,認証が成功すると,入場警備員に提示される「OK」画面を前記アプリに生成させるというものであるが,具体的なスマートフォンアプリと電子チケットの関係は記載されておらず,上記リモートサーバにおける処理からすると,ここでの処理はスマートフォンアプリの認証を行っているものとしかいえない。
そうすると,本件発明1と甲5発明は,
「前記ユーザ端末は,前記電子チケットの使用に応じたサービスの提供前に,前記表示手段に前記電子チケットを表示している状態で,前記スタンプの按部により同時に接触されると,複数の接触位置を前記入力手段により検出し,検出した接触位置を前記サーバ装置に照会し,応答があった場合に,前記表示画面に所定の表示を行う」
点で共通する。
なお,本件発明1では検出した接触位置が表示している電子チケットに対応するかを前記サーバ装置に照会しているのに対し,甲5発明ではユーザのインテリジェントデバイスに組み込まれたアプリを認証するための照会である点で相違する。
また,応答として,本件発明1では照会に対して「対応する旨の応答」が返信されるのに対し,甲5発明では,アプリの認証結果が返信される点で相違する。
また,表示画面に表示する所定の表示として,本件発明1では電子チケットが使用済みである旨を示す描画を行うが,甲5発明では「OK」画面である点で相違する。

オ 本件発明1の「前記サーバ装置は,前記電子チケットと当該電子チケットに対応する一つ以上の前記スタンプの按部の配列情報とを予め対応付けて格納し,前記ユーザ端末からの照会に応じて,前記ユーザ端末が検出した接触位置が前記ユーザ端末に表示している電子チケットに対応するかを判定して対応するか否かを前記ユーザ端末に応答し」との事項について
甲5発明の「リモートサーバ」では,上記エでも示したように,ユーザのインテリジェントデバイスに組み込まれたアプリに対する既知の認可ポイントについての一連の配置に関する同様のパラメータデータと比較することにより,当該アプリを認証し,当該アプリに返信するというものであることから,上記本件発明1の事項は相違点である。

カ 本件発明1の「前記電子チケットには複数の前記スタンプを識別するための情報が紐づけられることが許容される」との事項について
甲5発明には当該事項についての記載はなく相違点である。

キ 本件発明1の「電子チケットシステム」との事項について
甲5発明の「システム」も,インテリジェントデバイスのアプリ(スマートフォンアプリ)による電子チケットに対し,スマートスタンプの接触端子の位置等からパラメータデータを算出してリモートサーバへ送信し,当該リモートサーバにおいて,当該アプリに対する既知のパラメータデータと比較され,その結果に基づいてインテリジェントデバイスの表示画面に所定の表示を行うシステムであり,電子チケットを扱うという上位概念では電子チケットシステムであるといえる。
よって,本件発明1と甲5発明は,「電子チケットシステム」である点で共通する。

ク 以上のア?キによれば,本件発明1と甲5発明との一致点,及び,相違点は以下のとおりである。
<一致点>
情報を表示する表示手段,および前記表示手段に重ねて設けられ,同時に複数の位置に接触されたときに個々の接触位置を検出可能な入力手段を有するタッチパネルを有し,電子チケットを前記表示手段に表示するユーザ端末と,
前記入力手段に対する同時接触が検出可能な複数の按部を有するスタンプと,
前記ユーザ端末と通信可能なサーバ装置と,
を備え,
前記ユーザ端末は,前記電子チケットの使用に応じたサービスの提供前に,前記表示手段に前記電子チケットを表示している状態で,前記スタンプの按部により同時に接触されると,複数の接触位置を前記入力手段により検出し,検出した接触位置を前記サーバ装置に照会し,応答があった場合に,前記表示画面に所定の表示を行う,
電子チケットシステム。

<相違点1>
本件発明1では検出した接触位置が表示している電子チケットに対応するかを前記サーバ装置に照会しているのに対し,甲5発明ではユーザのインテリジェントデバイスに組み込まれたアプリを認証するための照会である点。
<相違点2>
応答として,本件発明1では照会に対して「対応する旨の応答」が返信されるのに対し,甲5発明では,アプリの認証結果が返信される点。
<相違点3>
表示画面に表示する所定の表示として,本件発明1では電子チケットが使用済みである旨を示す描画を行うが,甲5発明では「OK」画面である点。
<相違点4>
本件発明1のサーバ装置では,「前記電子チケットと当該電子チケットに対応する一つ以上の前記スタンプの按部の配列情報とを予め対応付けて格納し,前記ユーザ端末からの照会に応じて,前記ユーザ端末が検出した接触位置が前記ユーザ端末に表示している電子チケットに対応するかを判定して対応するか否かを前記ユーザ端末に応答し」との処理を行うのに対し,甲5発明のリモートサーバではそのような処理を行っていない点。
<相違点5>
本件発明1では「前記電子チケットには複数の前記スタンプを識別するための情報が紐づけられることが許容される」ものであるのに対し,甲5発明ではそのようになっていない点。

ケ 上記相違点について検討する。
上記相違点1,2,4,5は,甲5発明に対し,本件発明1のユーザ端末で電子チケットとスタンプの接触により検出した接触位置が,当該電子チケットに対応するかをサーバ装置に照会する処理,及び,サーバ装置において,前記電子チケットと当該電子チケットに対応する一つ以上の前記スタンプの按部の配列情報とを予め対応付けて格納し,前記ユーザ端末からの照会に応じて,前記ユーザ端末が検出した接触位置が前記ユーザ端末に表示している電子チケットに対応するかを判定し対応するか否かを前記ユーザ端末に応答する処理の違いに起因する相違点である。
そして,これらの相違点1,2,4,5については,上記甲第1号証?甲第4号証,甲第6号証及び甲第7号証には記載も示唆もない。
なお,甲第4号証には「電子文書・個人情報記憶部121は,押印が未受領である電子文書と,この電子文書に押印すべき人物の個人情報(住所,氏名など)とを関連付けて記憶するもので,電子文書と個人情報を複数組記憶し得るものとすることができ,また,電子文書・個人情報記憶部121に,電子文書と,これに押印すべき人物の個人情報と共に,押印すべき印鑑の固有のIDデータを関連付けて記憶するようにしてもよいこと。」が記載されているものの,ここでは電子文書と個人情報を複数組記憶し得るとの記載がある程度で,本件発明1のように電子チケットと複数のスタンプの按部の配列情報が記憶されるものではないし,また,甲第6号証には,タブレット型コンピュータにおいて,承認を求める書類情報と,正しい電子印鑑の入力データが記憶部に記憶されていること,また,施設への入場の権限があることを認証する作業に用いられてもよいと記載されているものの,本件発明1のように電子チケットと複数のスタンプの按部の配列情報が記憶されるものではなく,また,サーバ装置による処理でもない。
したがって,上記相違点3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲5発明,甲第1号証?甲第4号証,甲第6号証及び甲第7号証に基づいて当業者が容易になし得たものではない。

コ まとめ
以上ア?ケに記載したとおり,本件発明1は,甲5発明,甲第1号証?甲第4号証,甲第6号証及び甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-2)請求項2及び3に係る発明(本件発明2及び3)について
本件発明2及び3は,上記(3-1)で検討した本件発明1に対し,さらに技術的事項を追加して限定したものである。
そして,本件発明1は上記(3-1)で示したように甲5発明,甲第1号証?甲第4号証,甲第6号証及び甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件発明2及び3も,甲5発明,甲第1号証?甲第4号証,甲第6号証及び甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-3)請求項5に係る発明(本件発明5)について
本件発明5は,本件発明1の「電子チケットシステム」における「サーバ装置」として機能させるための「プログラム」としたものであるから,上記(3-1)で検討したように,甲1発明と上記相違点2,4,5で相違する。
そして,上記相違点2,4,5については,甲第1号証?甲第4号証,甲第6号証及び甲第7号証には記載も示唆もない。
よって,本件発明5についても,甲5発明,甲第1号証?甲第4号証,甲第6号証及び甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-4)請求項6に係る発明(本件発明6)について
本件発明6は,本件発明1の「電子チケットシステム」における「ユーザ端末」として機能させるための「プログラム」としたものであるから,上記(3-1)で検討したように,甲1発明と上記相違点1?3で相違する。
特に,相違点1に関しては,「ユーザ端末」が「検出した接触位置が表示している電子チケットに対応するかを前記サーバ装置に照会」すること,また,「サーバ装置」において「前記電子チケットと当該電子チケットに対応する一つ以上の前記スタンプの按部の配列情報とを予め対応付けて格納し,前記ユーザ端末からの照会に応じて,前記ユーザ端末が検出した接触位置が前記ユーザ端末に表示している電子チケットに対応するかを判定」することから,「ユーザ端末」から「サーバ装置」に対して,表示している電子チケットを識別可能な情報と検出した接触位置の情報を送信していることも明らかである。
そして,相違点1及び2については,甲第1号証?甲第4号証,甲第6号証及び甲第7号証には記載も示唆もない。
よって,相違点3について検討するまでもなく,本件発明6は,甲5発明,甲第1号証?甲第4号証,甲第6号証及び甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-5)まとめ
以上(3-1)?(3-4)のとおりであるから,特許異議申立人が提出した甲第1号証?甲第7号証によっては,請求項1?3,5,6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

6 むすび
したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1?3,5,6に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?3,5,6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-06-24 
出願番号 特願2018-4978(P2018-4978)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 金子 幸一
相崎 裕恒
登録日 2018-09-21 
登録番号 特許第6404504号(P6404504)
権利者 playground株式会社
発明の名称 電子チケットシステムおよびプログラム  
代理人 浅野 哲平  
代理人 折坂 茂樹  

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