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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60Q
管理番号 1353208
異議申立番号 異議2018-700924  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-15 
確定日 2019-07-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6392474号発明「車両用補助信号灯具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6392474号の請求項1?2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6392474号の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成30年1月9日に出願され、同年8月31日にその特許権の設定登録がされ、同年9月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年11月15日に特許異議申立人 株式会社REIZ(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。


第2 本件発明
特許第6392474号の請求項1?2に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
車両に予め設けられている固定の信号灯具に連動して点消灯する車両用補助信号灯具であって、
透明または半透明な柔軟材料により形成された帯状の外殻部と、
複数の第1発光ユニットからなる第1発光ユニット群であり、前記複数の第1発光ユニットはそれぞれ複数個の発光素子が前記帯状の外殻部の長さ方向に一次元的に配列され直列接続されたものであり、前記複数の第1発光ユニットが前記帯状の外殻部内にその長さ方向に一次元的に配列された第1発光ユニット群と、
前記帯状の外殻部内に前記第1発光ユニット群に沿って配設され、前記複数の第1発光ユニットのそれぞれの第1端に接続されたアース線と、
前記帯状の外殻部内に前記第1発光ユニット群に沿って配設され、前記複数の第1発光ユニットのそれぞれの第2端に接続された複数の第1信号線と、
前記固定の信号灯具のうち方向指示灯の信号線に接続され、当該方向指示灯の信号線の入力に基づいて、前記第1発光ユニット群の前記複数の第1発光ユニットを順次点消灯させる信号を前記複数の第1信号線に出力する制御部と、
複数の切断位置をそれぞれ示すマークであり、前記帯状の外殻部の前記複数の第1発光ユニット同士の境界部分にそれぞれ表示されたマークと
を含む車両用補助信号灯具。
【請求項2】
複数の第2発光ユニットからなる第2発光ユニット群であり、前記複数の第2発光ユニットはそれぞれ複数個の発光素子が前記帯状の外殻部の長さ方向に一次元的に配列され直列接続され、第1端が前記アース線に接続されたものであり、前記複数の第2発光ユニットが前記第1発光ユニット群の前記複数の第1発光ユニットにそれぞれ沿って前記帯状の外殻部内に一次元的に配列された第2発光ユニット群と、
前記帯状の外殻部内に前記第2発光ユニット群に沿って配設され、前記複数の第2発光ユニットのそれぞれの第2端が接続された第2信号線とを含み、
前記制御部は、さらに前記固定の信号灯具のうち車幅灯の信号線に接続され、当該車幅灯の信号線の入力に基づいて、前記第2発光ユニット群の前記複数の第2発光ユニットを点消灯させる信号を前記第2信号線に出力するものである
請求項1記載の車両用補助信号灯具。」


第3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠である甲第1号証として特開2005-142061号公報(以下「甲1」という。)並びに従たる証拠である甲第2号証として特開2005-183721号公報(以下「甲2」という。)及び甲第3号証として特開2011-253700号公報(以下「甲3」という。)を提出し、請求項1?2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨主張する。


第4 甲1に記載された事項及び発明
本件特許の出願日前に頒布された甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

(1a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、補助方向指示灯具に関し、詳細には、車両のリヤガラス等に装着され、車両に固定の方向指示灯具に連動して点消灯する補助方向指示灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両には、ブレーキランプ(制動灯)やターンシグナルランプ(方向指示灯)等各種の信号灯具が取り付けられており、これら信号灯具の点消灯によって、車両の状況、挙動や運転者の意図を他車や歩行者等に知らしめるようにしている。
【0003】
また、近年は、外部への注意をさらに喚起することを目的として、信号灯具に連動して点消灯する補助信号灯具が装着されることもある。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、補助方向指示灯具を、補助制動灯と同様に車室内や車両後部リヤガラスなどの取り付ける場合、右用方向指示灯具に連動するものと左用方向指示灯具に連動するものとの2つを1組として設ける必要があるが、この場合、外部から右用の点灯と左用の点灯とを明確に識別できるように、両補助方向指示灯具の発光部を所定の間隔以上離して配置することが求められる。
【0007】
一方、補助方向指示灯具による点灯の視認性を高めるためには、複数個の発光素子を配列して長尺に形成することが好ましく、このような複数個の発光素子を用いるものを含めて、補助方向指示灯具では、発光素子の点消灯制御のために制御用の電子回路が設けられる。そして、この電子回路は、補助方向指示灯具のハウジングから露出した外部ハーネスによって、車両に予め配索されている方向指示灯具への信号線に結線される必要がある。
【0008】
ここで、車両に予め配索されている信号線のうち右用は車両の右側部に配索され、左用は車両の左側部に配索されており、補助方向指示灯具が車両に取り付けられた状態の外観品質上、外部ハーネスのうち外部から露見される部分の長さを可及的に短くする必要がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、2つの補助方向指示灯具の両発光部の間隔を適切に確保しつつ、車両に結線される外部ハーネスの露見長さを短くすることができる補助方向指示灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る補助方向指示灯具は、発光素子と、車両に予め設置された方向指示灯具への信号線に結線される外部ハーネスと、前記発光素子を前記方向指示灯具の点消灯に連動して点消灯させるように制御する電子回路と、前記電子回路、前記発光素子および前記外部ハーネスをこの順番に配列して保持する保持具と、前記車両に装着されるハウジングとを備え、前記発光素子は前記配列の方向に沿って複数個備えられ、前記電子回路は前記複数個の発光素子が順次点消灯するように制御することを特徴とする。
【0011】
ここで、発光素子としては、白熱球やLED等を適用することができる。また、保持具には、電子回路、発光素子および外部ハーネスをマウントして、これらを電気的に接続する基板も含む。
【0012】
また、保持具とハウジングとは一体的に形成されていてもよく、この場合には、ハウジングが、電子回路、発光素子および外部ハーネスをこの順番に配列して保持する保持部を有するものであることと実質的に同一である。
【0013】
車両に予め設置された方向指示灯具(車両固定の方向指示灯具)の点消灯に連動して点消灯するとは、車両固定の方向指示灯具の点灯と同期して点灯し、および車両固定の方向指示灯具の消灯と同期して消灯する必要はなく、車両固定の方向指示灯具の点消灯1サイクルに同期する点消灯であればよい。したがって、車両固定の方向指示灯具の点灯と同期して消灯し、車両固定の方向指示灯具の消灯と同期して点灯するものであってもよい。
【0014】
そして、上記電子回路、発光素子および外部ハーネスの配列方向に沿って備えられた複数の発光素子が順次点消灯するとき、これら複数個の発光素子による点消灯パターンの1サイクルが、車両固定の方向指示灯具の点消灯1サイクルに同期するものであればよい。したがって、複数個の発光素子のうち例えば1つの発光素子は、車両固定の方向指示灯具の点消灯1サイクルの期間中に、2サイクルの点消灯を行うものであっても、その1つの発光素子の2サイクルの点消灯が、複数個の発光素子全体による点消灯のパターンの1サイクルを構成するものであれば、車両固定の方向指示灯具の点消灯に連動して点消灯することに該当する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る補助方向指示灯具によれば、発光素子と、車両に予め設置された方向指示灯具への信号線に結線される外部ハーネスと、発光素子を方向指示灯具の点消灯に連動して点消灯させるように制御する電子回路とが、電子回路、発光素子、外部ハーネスの順番に配列されてハウジングに保持されているため、電子回路を車幅方向の車両中央部側、外部ハーネスを車両外側とするハウジングの姿勢で車両に取り付けることができ、このような姿勢で車両に取り付けることにより、車両の側部に配索された方向指示灯具用の信号線と結線される外部ハーネスの露見長さを短くすることができる。
【0016】
また、右用方向指示灯具に連動する補助方向指示灯具と左用方向指示灯具に連動する補助方向指示灯具との2つを1組として車両に取り付けた状態において、両補助方向指示灯具の発光素子間には、各補助方向指示灯具の電子回路が介在するため、発光素子、電子回路、外部ハーネスの順番で配列されているものよりも、両発光素子の間隔を広く確保することができる。
【0017】
さらに、発光素子は配列の方向に沿って複数個備えられ、電子回路は複数個の発光素子が順次点消灯するように制御するため、外部に対する合図として、よりインパクトの強い印象を与えることができ、注意喚起性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の補助方向指示灯具に係る最良の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る補助方向指示灯具の一実施形態であるターンシグナルランプを示す斜視図である。
【0019】
図示のターンシグナルランプ100(補助方向指示灯具)は、図2に示すように、車両200のリヤガラス210の下部右寄り部分に、その車室内側から貼着され、車両200に予め設けられている固定の右用のターンシグナルランプ230(方向指示灯具)の点消灯に連動して点消灯するように、車両200の右側部に配索されている右用のターンシグナルランプ230の信号線220に接続されている。
【0020】
ここで、車両200の後部右側には右用のターンシグナルランプ230が予め固定的に組み付けられており、車両200の後部左側には、図示を省略した左用のターンシグナルランプが予め固定的に組み付けられており、右用のターンシグナルランプ230への信号線220は車両200の右側部に配索され、左用のターンシグナルランプへの信号線(図示省略)は、車両200の左側に配索されている。
【0021】
なお、以下に詳説するターンシグナルランプ100は、右折または車両右方RHへの車線変更に対応した右用のものであるが、図2に示した左用のターンシグナルランプ100′も右用のターンシグナルランプ100と同様の構成であり、右用のターンシグナルランプ100を上下反対にして、リヤガラス210の下部左寄り部分に貼着され、車両200の左側部の信号線に結線されることにより、左用のターンシグナルランプ100′として使用される。
【0022】
このターンシグナルランプ100は、図1に示すように、方向指示灯として発光する発光手段10と、この発光手段10が内部に配設されるハウジング20と、ハウジング20内部へのゴミの侵入を防止する薄板透明樹脂製のカバー40と、リヤガラス210の被貼着面に貼着される両面粘着テープ50とからなる。
【0023】
発光手段10は、図3の分解斜視図に示すように、ガラス入りエポキシ製の可撓性を有する長尺の薄板基板11(保持具)と、この薄板基板11上に、長尺方向に沿って一列にマウントされたLED12(発光素子)と、薄板基板11の長尺方向の一方の端部側に纏めて配置された電子回路13と、薄板基板11の長尺方向の他方の端部側に接続された外部ハーネス14と、この外部ハーネス14を通過させ、後述するハウジング20の出入口25に密着してこの出入口25を塞ぐゴム製または軟質樹脂製のキャップ15とを備えている。
【0024】
外部ハーネス14は、薄板基板11に接続されている側の端部とは反対側の端部が、車両200の右用の信号線220に接続される。なお、左用のターンシグナルランプ100′については、外部ハーネス14は、車両200に固定の左用のターンシグナルランプの信号線に接続される。
【0025】
LED12は、12個のLED12A,12B,…,12Lからなり、電子回路13は、外部ハーネス14が信号線220に接続された状態において、車両固定のターンシグナルランプ230の点消灯に連動して、LED12A,…,12Lをこの配列順にしたがって順次点消灯させる制御を行うものである。
【0026】
この具体的な点消灯のパターンは、例えば、車両固定のターンシグナルランプ230の点消灯1サイクルの間に、LED12A,…,12Lが、電子回路13に近い側から、2個ずつ順次追加的に点灯されて、すべてのLED12A,…,12Lが点灯した後に、全てのLED12A,…,12Lを一括的に消灯させる点消灯パターンであり、このように12個のLED12が順次追加的に点灯することにより、LED12の発光光が電子回路13に近い側からハーネス14に近い側の方に伸びるように点灯する。
【0027】
なお、薄板基板11の裏面11b(図4参照)には、電子回路13、各LED12A,…,12Lおよび外部ハーネス14を接続する結線回路が形成されており、図4の縦断面図に示すように、各LED12A,…,12L等は半田16によってこの結線回路に電気的に接続されている。また、薄型基板11の表面11aは黒色等の暗色に塗装されており、薄型基板11の存在を外部から視認しにくいものとしている。
【0028】
ハウジング20は、リヤガラス210の被貼着面形状に倣う可撓性材料の一種であるEPDMゴム材によって形成されている。そして、このハウジング20は、長尺中空の略直方体形状に形成され、長尺矩形の4つの周面のうちリヤガラス210に貼着される前面21に、発光手段10による発光光を通過させる開口21aが形成され、この前面21のうち開口21aの領域を除いた残存領域に、両面粘着テープ50が貼付されている。
【0029】
また、このハウジング20の前面21には、前面21とハウジング20の内部に配設された発光手段10との間に装着されるカバー40の脱落を防止するリップ21b,21bが形成されている。
【0030】
さらに、ハウジング20の両端面23,24のうち一方の端面24には、発光手段10がハウジング20の内部に挿入される出入口25が形成されており、この出入口25から、発光手段10の電子回路13側の端部が挿入され、薄型基板11の全体がハウジング11内に挿入されると、発光手段10のキャップ15がこの出入口25に嵌挿されて、出入口25が塞がれる。
【0031】
カバー40は、非常に薄く形成されており可撓性を有している。また、このカバー40は、テクスチャ(模様)がシルク印刷されている領域である目隠し部42と、透明な素通し領域である窓部41とからなり、目隠し部42は、このカバー40がハウジング20に装着された状態で、ハウジング20の内部に配設された発光手段10の電子回路13に対向する領域に対応しており、印刷されたテクスチャが電子回路13を隠蔽している。
【0032】
また、窓部41の縁部近傍には、略相似形の矩形環41aがシルク印刷されているが、この矩形環41aもLED12以外の基板部分を隠蔽する機能を果たしている。なお、目隠し部42は、テクスチャの印刷に代えて、濃色を塗りつぶし印刷してもよい。
【0033】
両面粘着テープ50は、ハウジング20の前面21に予め貼付されているが、この両面粘着テープ50の、リヤガラス210に貼付される面には、図示しない離型紙が貼り付けられており、実際にこのターンシグナルランプ100がリヤガラス210に貼着される際に、離型紙が剥離されて、リヤガラス210に貼着される。
【0034】
また、ハウジング20は、図4の縦断面図に示すように、その内部に、薄型基板11を案内する基板溝27,27(案内溝)と、カバー40を保持するカバー溝26,26とが形成されている。そして、薄型基板11は、ハウジング20の端面24に形成された出入口25から基板溝27,27間に挿し入れられて、この薄型基板11の厚さ方向に沿った端面が基板溝27,27の各溝底に接触した摩擦力のみによってハウジング20に保持されている。
【0035】
なお、発光手段10をハウジング20に挿入する際は、薄型基板11の厚さ方向に沿った端面と基板溝27,27の溝底との僅かな接触面による摩擦力のみが挿入反力として作用するだけであり、組立作業性を向上させることができる。
【0036】
また、カバー40は、カバー溝26,26間に挿し入れられて、このカバー40の厚さ方向に沿った端面がカバー溝26,26の溝底に接触した摩擦力およびリップ21b,21bによってハウジング20に保持されている。
【0037】
次に、本実施形態に係るターンシグナルランプ100の作用について説明する。
【0038】
まず、ハウジング20の前面21に貼付された両面粘着テープ50の図示しない離型紙が剥離され、この両面粘着テープ50が貼付された前面21が、車両200のリヤガラス210の車室内面右寄り部分(車室内から後方を見たときの下部左寄り部分)等、所望の設置位置に押圧される。
【0039】
ここで、ハウジング20は可撓性材料によって形成されているため、貼着面である前面21がリヤガラス210の被貼着面に倣うようにハウジング20全体が変形し、ターンシグナルランプ100は、この変形した状態のまま、両面粘着テープ50の粘着力によってリヤガラス210に貼着される。
【0040】
そして、リヤガラス210の下部右寄り部分に貼着されるターンシグナルランプ100の向きは、発光手段10の外部ハーネス14が車両200の右外側方向、発光手段10の電子回路13が車両200の車幅方向の中央方向となる略水平向きである。
【0041】
一方、リヤガラス210の下部左寄り部分に貼着されるターンシグナルランプ100′の向きは、発光手段10の外部ハーネス14が車両200の左外側方向、発光手段10の電子回路13が車両200の車幅方向の中央方向となる略水平向きである。
【0042】
各ターンシグナルランプ100,100′がリヤガラス210に貼着された後、外部ハーネス14が、車両固定の各ターンシグナルランプの信号線に接続される。すなわち、右用のターンシグナルランプ100の外部ハーネス14は、車両200の左側に配索されている信号線220に接続され、左用のターンシグナルランプ100′の外部ハーネス14は、車両200に左側に配索されている信号線に接続される。
【0043】
車両固定の各ターンシグナルランプの信号線に接続された後は、車両固定のターンシグナルランプの点消灯1サイクルの間に、右または左の対応するターンシグナルランプ100または100′の各LED12A,…,12Lが、電子回路13に近い側から外部ハーネス14に近い側に向けて2個ずつ順次追加的に点灯し、全LED12A,…,12Lが点灯すると、全LED12A,…,12Lが一括的に消灯する。
【0044】
この結果、方向指示しようとする方向に向けてLED12の発光光が伸びるように視認され、外部に対する合図として、よりインパクトの強い印象を与えることができ、注意喚起性能を高めることができる。なお、電子回路13の制御によるLED12の点消灯パターンはこの形態に限るものではなく、複数のLED12を他の点消灯パターンによって順次点消灯させるようにしてもよい。さらにLED12の配列も、1列に限るものではなく、2列以上の配列としてもよく、この場合、長手方向に沿った配列方向について、順次点消灯させる点消灯パターンを採用するのが、注意喚起性能を高めるうえで好ましい。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るターンシグナルランプ100によれば、LED12と外部ハーネス14と電子回路13とが、電子回路13、LED12、外部ハーネス14の順番に配列されて薄型基板11に保持されているため、図2に示すように、左右のターンシグナルランプ100,100′をそれぞれ、電子回路13が車幅方向の車両中央部側、外部ハーネス14が車両外側となる姿勢で車両200のリヤガラス210に取り付けることにより、車両200の側部に配索された信号線と結線される外部ハーネス14の露見長さを短くすることができる。
【0046】
また、左右のターンシグナルランプ100,100′のLED12,12間には、各ターンシグナルランプ100,100′の電子回路13,13が介在するため、実際に発光する左右のLED12,12間の間隔W2を、ハウジング10,10間の間隔W1よりも広く確保することができる。
【0047】
さらに、各ターンシグナルランプ100,100′のハウジング20は被貼着面に倣って変形するため、車両の車種や部位ごとに異なる曲面形状のリヤガラスに対しても貼付することができ、したがって、車種等ごとに専用のハウジングを用意する必要がなく、単一のハウジングによって、膨大な種類の車種等に対応することができ、汎用性を有するものとすることができる。よって、製造コストおよび管理コストを低減することができる。
・・・
【0052】
なお、本実施形態に係るターンシグナルランプ100は、ハウジング20がEPDMゴム材によって形成されているが、本発明に係る補助方向指示灯具は、このようなゴム材等の可撓性材料によってハウジングが形成されているものに限定されるものではない。
【0053】
特に、リヤガラスに直接貼着されるものではなく、車両のリヤパーセルトレイや車室内のルーフトリム等に取り付けられるものでは、他の硬質の樹脂材料や軽合金等可撓性を有しない材料によってハウジングを形成してもよい。
【0054】
また、発光手段10の発光体として複数のLED12A,…,12Lを用いることによって、消費電力を低減することができるとともに、発光体の寿命を大幅に延ばすことができる。」

(1b)甲1には以下の図が記載されている。

以上の記載事項(1a)?(1b)を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「車両に固定の方向指示灯具に連動して点消灯する補助方向指示灯具であって、
補助方向指示灯具のターンシグナルランプ100(補助方向指示灯具)は、車両200のリヤガラス210の下部右寄り部分に、その車室内側から貼着され、車両200に予め設けられている固定の右用のターンシグナルランプ230(方向指示灯具)の点消灯に連動して点消灯するように、車両200の右側部に配索されている右用のターンシグナルランプ230の信号線220に接続されている、右用のものであり、
左用のターンシグナルランプ100′も右用のターンシグナルランプ100と同様の構成であり、右用のターンシグナルランプ100を上下反対にして、リヤガラス210の下部左寄り部分に貼着され、車両200の左側部の信号線に結線されることにより、左用のターンシグナルランプ100′として使用され、
ターンシグナルランプ100は、方向指示灯として発光する発光手段10と、この発光手段10が内部に配設されるハウジング20と、ハウジング20内部へのゴミの侵入を防止する薄板透明樹脂製のカバー40と、リヤガラス210の被貼着面に貼着される両面粘着テープ50とからなり、
発光手段10は、可撓性を有する長尺の薄板基板11(保持具)と、この薄板基板11上に、長尺方向に沿って一列にマウントされたLED12と、薄板基板11の長尺方向の一方の端部側に纏めて配置された電子回路13と、薄板基板11の長尺方向の他方の端部側に接続された外部ハーネス14と、この外部ハーネス14を通過させ、ハウジング20の出入口25に密着してこの出入口25を塞ぐゴム製または軟質樹脂製のキャップ15とを備え、
外部ハーネス14は、薄板基板11に接続されている側の端部とは反対側の端部が、車両200の右用の信号線220に接続され、左用のターンシグナルランプ100′については、外部ハーネス14は、車両200に固定の左用のターンシグナルランプの信号線に接続され、
LED12は、12個のLED12A,12B,…,12Lからなり、
電子回路13は、外部ハーネス14が信号線220に接続された状態において、車両固定のターンシグナルランプ230の点消灯に連動して、LED12A,…,12Lをこの配列順にしたがって順次点消灯させる制御を行うものであり、
点消灯のパターンは、車両固定のターンシグナルランプ230の点消灯1サイクルの間に、LED12A,…,12Lが、電子回路13に近い側から、2個ずつ順次追加的に点灯されて、すべてのLED12A,…,12Lが点灯した後に、全てのLED12A,…,12Lを一括的に消灯させる点消灯パターンであり、
薄板基板11の裏面11bには、電子回路13、各LED12A,…,12Lおよび外部ハーネス14を接続する結線回路が形成されており、各LED12A,…,12L等は半田16によってこの結線回路に電気的に接続されており、
ハウジング20は、リヤガラス210の被貼着面形状に倣う可撓性材料の一種であるEPDMゴム材によって、長尺中空の略直方体形状に形成され、長尺矩形の4つの周面のうちリヤガラス210に貼着される前面21に、発光手段10による発光光を通過させる開口21aが形成され、この前面21のうち開口21aの領域を除いた残存領域に、両面粘着テープ50が貼付されており、
ターンシグナルランプ100によれば、LED12と外部ハーネス14と電子回路13とが、電子回路13、LED12、外部ハーネス14の順番に配列されて薄型基板11に保持されている、
補助方向指示灯具。」


第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明の「車両に固定の方向指示灯具」及び「車両200に予め設けられている固定の右用のターンシグナルランプ230(方向指示灯具)」のそれぞれは、本件発明1の「車両に予め設けられている固定の信号灯具」に相当し、また「前記固定の信号灯具のうち方向指示灯」にも相当する。

イ 甲1発明の「車両に固定の方向指示灯具に連動して点消灯する補助方向指示灯具」、「右用のものであ」る「ターンシグナルランプ100(補助方向指示灯具)」及び「左用のターンシグナルランプ100′」のそれぞれは、上記「ア」をも踏まえると、本件発明1の「車両に予め設けられている固定の信号灯具に連動して点消灯する車両用補助信号灯具」に相当する。

ウ 甲1発明の「可撓性材料の一種であるEPDMゴム材によって、長尺中空の略直方体形状に形成され」る「ハウジング」と、本件発明1の「透明または半透明な柔軟材料により形成された帯状の外殻部」とは、帯状であれば長尺状といえることを踏まえると、「柔軟材料により形成された長尺状の外殻部」である限りにおいて共通するものといえる。

エ 甲1発明の「発光手段10」における「LED12」は「長尺の」「薄板基板11上に、長尺方向に沿って一列にマウントされた」「12個のLED12A,12B,…,12L」からなり、その「12個のLED12A,12B,…,12L」は「電子回路13に近い側から」、「順次追加的に点灯され」る「2個ずつ」の6組からなるものといえる。そして「2個ずつ」のそれぞれの組は点灯させる上での構成単位となること、「12個のLED12A,12B,…,12L」のそれぞれは本件発明1の「発光素子」に相当すること、「ターンシグナルランプ100」において「長尺の」「薄板基板11」についての「長尺方向」が「長尺中空の略直方体形状」の「ハウジング20」についての長尺方向と同一なのは甲1の図1,3の図示内容から明らかなこと、及び上記「ウ」を踏まえると、「長尺の」「薄板基板11上に」、「ハウジング20」についての長尺方向と同一の「長尺方向に沿って一列にマウントされた」「12個のLED12A,12B,…,12L」における「2個ずつ」の6組のそれぞれの組と、本件発明1の「それぞれ複数個の発光素子が前記帯状の外殻部の長さ方向に一次元的に配列され直列接続されたものであ」る「複数の第1発光ユニット」とは、「それぞれ複数個の発光素子が前記長尺状の外殻部の長さ方向に一次元的に配列されたものであ」る「複数の第1発光ユニット」である限りで共通するものといえる。
そうすると、甲1発明の「LED12」は、その「2個ずつ」の6組からなるので、本件発明1の「複数の第1発光ユニットからなる第1発光ユニット群」に相当する。

オ 上記「エ」で述べたように、甲1発明の「LED12」における「12個のLED12A,12B,…,12L」は、「長尺の」「薄板基板11上に」、「ハウジング20」についての長尺方向と同一の「長尺方向に沿って一列にマウントされた」ものなので、「12個のLED12A,12B,…,12L」における「2個ずつ」の6組も「ハウジング20」についての長尺方向と同一の「長尺方向に沿って一列に」あることは明らかであること、「LED12」を備える「発光手段10」が「ハウジング20」の「内部に配設される」こと、及び上記「ウ」,「エ」を踏まえると、甲1発明の「LED12」と、本件発明1の「複数の第1発光ユニットからなる第1発光ユニット群であり、前記複数の第1発光ユニットはそれぞれ複数個の発光素子が前記帯状の外殻部の長さ方向に一次元的に配列され直列接続されたものであり、前記複数の第1発光ユニットが前記帯状の外殻部内にその長さ方向に一次元的に配列された第1発光ユニット群」とは、「複数の第1発光ユニットからなる第1発光ユニット群であり、前記複数の第1発光ユニットはそれぞれ複数個の発光素子が前記長尺状の外殻部の長さ方向に一次元的に配列されたものであり、前記複数の第1発光ユニットが前記長尺状の外殻部内にその長さ方向に一次元的に配列された第1発光ユニット群」である限りにおいて共通するものといえる。

カ 甲1発明の「車両200の右側部に配索されている右用のターンシグナルランプ230の信号線220」は、上記「ア」をも踏まえると、本件発明1の「前記固定の信号灯具のうち方向指示灯の信号線」に相当する。

キ 甲1発明において「電子回路13は、外部ハーネス14が信号線220に接続された状態において、車両固定のターンシグナルランプ230の点消灯に連動して、LED12A,…,12Lをこの配列順にしたがって順次点消灯させる制御を行うものであ」り、またその「信号線220」は「車両200の右側部に配索されている右用のターンシグナルランプ230の信号線220」であり、さらに「薄板基板11の裏面11bには、電子回路13、各LED12A,…,12Lおよび外部ハーネス14を接続する結線回路が形成されており、各LED12A,…,12L等は半田16によってこの結線回路に電気的に接続されて」いることから、「電子回路13」は「外部ハーネス14」及び「結線回路」を介して「ターンシグナルランプ230の信号線220」に接続されるものといえる。そして「電子回路13」が「車両固定のターンシグナルランプ230の点消灯に連動して、LED12A,…,12Lをこの配列順にしたがって順次点消灯させる制御を行う」のであるから、その「制御」は「ターンシグナルランプ230の信号線220」の入力に基づくことは技術的に明らかである。
そうすると、かかる「電子回路13」と、本件発明1の「前記固定の信号灯具のうち方向指示灯の信号線に接続され、当該方向指示灯の信号線の入力に基づいて、前記第1発光ユニット群の前記複数の第1発光ユニットを順次点消灯させる信号を前記複数の第1信号線に出力する制御部」とは、上記「ア」,「エ」,「カ」をも踏まえると、「前記固定の信号灯具のうち方向指示灯の信号線に接続され、当該方向指示灯の信号線の入力に基づいて、前記第1発光ユニット群の前記複数の第1発光ユニットを順次点消灯させる制御部」である限りにおいて共通するものといえる。

以上のことから、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

<一致点1>
「車両に予め設けられている固定の信号灯具に連動して点消灯する車両用補助信号灯具であって、
柔軟材料により形成された長尺状の外殻部と、
複数の第1発光ユニットからなる第1発光ユニット群であり、前記複数の第1発光ユニットはそれぞれ複数個の発光素子が前記長尺状の外殻部の長さ方向に一次元的に配列されたものであり、前記複数の第1発光ユニットが前記長尺状の外殻部内にその長さ方向に一次元的に配列された第1発光ユニット群と、
前記固定の信号灯具のうち方向指示灯の信号線に接続され、当該方向指示灯の信号線の入力に基づいて、前記第1発光ユニット群の前記複数の第1発光ユニットを順次点消灯させる制御部と、
を含む車両用補助信号灯具。」

<相違点1>
「柔軟材料により形成された長尺状の外殻部」が、本件発明1では「透明または半透明な柔軟材料により形成された帯状」のものであるのに対し、甲1発明では「可撓性材料の一種であるEPDMゴム材によって、長尺中空の略直方体形状に形成され」たものである点。

<相違点2>
「第1発光ユニット」が、本件発明1では「それぞれ複数個の発光素子が前記帯状の外殻部の長さ方向に一次元的に配列され直列接続されたものであ」るのに対し、甲1発明ではそのように直列接続されたものであるのか不明な点。

<相違点3>
本件発明1の「車両用補助信号灯具」は「前記帯状の外殻部内に前記第1発光ユニット群に沿って配設され、前記複数の第1発光ユニットのそれぞれの第1端に接続されたアース線と、前記帯状の外殻部内に前記第1発光ユニット群に沿って配設され、前記複数の第1発光ユニットのそれぞれの第2端に接続された複数の第1信号線と」を含むものであって、「制御部」が「前記第1発光ユニット群の前記複数の第1発光ユニットを順次点消灯させる信号を前記複数の第1信号線に出力する」ものであるのに対し、甲1発明の「車両用補助信号灯具」がそのような「アース線」及び「第1信号線」を含むのか不明であって、「制御部」がそのように「順次点消灯させる信号を前記複数の第1信号線に出力する」ものであるのか不明である点。

<相違点4>
本件発明1の「車両用補助信号灯具」は「複数の切断位置をそれぞれ示すマークであり、前記帯状の外殻部の前記複数の第1発光ユニット同士の境界部分にそれぞれ表示されたマーク」を含むのに対し、甲1発明の「車両用補助信号灯具」はそのような「マーク」を含まない点。

(2)判断
事案に鑑み、まず相違点4について検討する。
相違点4について、申立人は平成30年11月15日に提出された特許異議申立書の第13頁第19?23行において「複数のユニット同士の境界部分を切断可能とする点については、甲第2号証の段落番号0012、甲第3号証の0022に示すように周知技術であり、また、外郭部に切断位置を示すマークを表示することは、甲第3号証の段落番号0048等の記載から、当業者であれば、容易に想到し得るものである。」と主張する(当審注:甲3において切断可能とする点は段落番号「0022」でなく、「0020」等に示されているので下線部の「0022」は「0020」等の誤記と解される。)。
確かに、本件特許の出願日前に頒布された甲2(段落【0012】等)及び甲3(段落【0020】等)には複数のユニット同士の間を切断可能とする技術的事項が記載されており、特に甲3(段落【0020】,【0048】等)にはその切断位置を示す「切断可能線76」を付す技術的事項も記載されているものと認められる。
しかしながら、甲1発明は、「2つの補助方向指示灯具の両発光部の間隔を適切に確保しつつ、車両に結線される外部ハーネスの露見長さを短くすることができる補助方向指示灯具を提供すること」(段落【0009】)という課題を解決するためのものであって、「補助方向指示灯具の一実施形態であるターンシグナルランプ100」の構成として特に「ターンシグナルランプ100によれば、LED12と外部ハーネス14と電子回路13とが、電子回路13、LED12、外部ハーネス14の順番に配列されて薄型基板11に保持されている」ことを特定したことで該課題を解決して「左右のターンシグナルランプ100,100′をそれぞれ、電子回路13が車幅方向の車両中央部側、外部ハーネス14が車両外側となる姿勢で車両200のリヤガラス210に取り付けることにより、車両200の側部に配索された信号線と結線される外部ハーネス14の露見長さを短くすることができる」(段落【0045】)という効果、及び「左右のターンシグナルランプ100,100′のLED12,12間には、各ターンシグナルランプ100,100′の電子回路13,13が介在するため、実際に発光する左右のLED12,12間の間隔W2を、ハウジング10,10間の間隔W1よりも広く確保することができる」(段落【0046】)という効果を奏するものである。このような甲1発明において甲2及び甲3に記載された技術的事項を適用し、発光ユニットとしての「2個ずつ」の各組同士の間で切断した場合には制御部としての「電子回路13」が切り離されてしまって機能不能となることは明らかであり、また仮に該適用の際に「電子回路13」が切り離されてしまわないように「電子回路13」の位置を「外部ハーネス14」側に設計変更すると甲1発明の課題が解決できなくなってしまうことから、甲1発明に対して甲2及び甲3に記載された技術的事項を適用することには阻害要因があるといえる。
よって、相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者であっても甲1発明及び甲2?3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものでない。
したがって、相違点1?3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲1発明及び甲2?3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものでない。

2 本件発明2について
本件発明2は本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮するものであるから、上記「1」と同様の理由により、本件発明2は甲1発明及び甲2?3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものでない。

3 小括
以上より、本件発明1?2は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないので、その発明に係る特許は取り消すべきものでない。


第6 むすび
以上のとおり、請求項1?2に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消すことができない。また、他に請求項1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-06-28 
出願番号 特願2018-1396(P2018-1396)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B60Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 下原 浩嗣  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 中川 真一
中村 泰二郎
登録日 2018-08-31 
登録番号 特許第6392474号(P6392474)
権利者 株式会社シェアスタイル
発明の名称 車両用補助信号灯具  
代理人 南瀬 透  
代理人 加藤 久  
代理人 特許業務法人安倍・下田国際特許事務所  
代理人 遠坂 啓太  

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