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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1353610
審判番号 不服2018-16427  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-07 
確定日 2019-08-13 
事件の表示 特願2014- 90701「収納容器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-209220、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年 4月24日を出願日とする出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
平成30年 1月 4日付け:拒絶理由の通知
平成30年 3月16日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 5月24日付け:拒絶理由の通知
平成30年 7月30日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 9月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年12月 7日 :審判請求書の提出、及び同時に手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明13」という。)は、平成30年12月 7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項によりそれぞれ特定されるものと認められるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「収納物を収納する収納部本体と、前記収納部本体の正面に形成された開口部と、前記収納部本体から上方に延設するパネル部とを有する箱体と、
前記収納物が挿入される凹部を有し、前記箱体内に収納されるブリスターと、
を備え、
前記ブリスターは、前記開口部から前記凹部の外面が前記収納部本体の外方に突出した状態で収納され、
前記ブリスターの前記凹部が前記外方に突出する突出長は、前記収納部本体の奥行の長さと同じまたはそれ以上であり、
前記収納部本体は、オートボトム式の地面を有し、
正面視において、前記ブリスターに前記収納物が挿入された状態における前記ブリスターと前記収納物とからなる挿入物の幅は前記収納部本体の幅より小さく、
前記挿入物の水平方向における最大周長に比べて、前記収納部本体の上部開口における内周面の水平方向の周長が大きい収納容器。」

第3 原査定の拒絶理由
原査定の理由は、平成30年 5月24日付けの拒絶理由通知書に示したものであって、概略以下のとおりである。
1 引用文献一覧
引用文献1 特開2012-171688号公報
引用文献2 特開2013-184724号公報
引用文献3 特開平10-084832号公報
引用文献4 特開2010-265018号公報
引用文献5 特開2007-297060号公報
引用文献6 特開2013-147257号公報
2 拒絶理由
この出願の請求項1?10に係る発明は、引用文献1、2、4に記載された発明及び引用文献3、5、6に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 引用文献
1 引用文献1
原査定で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2012-171688号公報(平成24年 9月10日出願公開))には、次の記載がある。
(1)「【0001】
本発明は、商品と付属品を一緒に収納する商品梱包箱に関する。」
(2)「【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態1の包装箱を示す分解斜視図である。
【図2】包装箱の使用状態を示す断面図である。
【図3】要部の拡大断面図である。」
(3)「【0019】
次に、包装箱を構成する箱本体1および商品を保持する商品保持部材4について説明する。前記箱本体1は紙製で、中空構造の直方体であり、この箱本体1は開口部10が設けられた前面11と、この前面11に対向する背面12を有する。前記前面11の上方には販売店の商品陳列棚における吊り下げロッド90に掛けられる孔112を有する吊り下げ部111を設ける。この吊り下げ部111を挟持する上面13を背面12に一体に形成するとともに、前記付属品3と前記商品保持部材4を出し入れする下面14を前面11に一体に形成する。」
(4)「【0022】
前記商品保持部材4は、内側に商品を保持し、前記箱本体1の前記開口部10に嵌合する形状の凸部51を形成した透明なプラスチック製のカバー5と、前記箱本体1の内形に合わせた形状にした台紙6から構成される。この台紙6の周縁に前記カバー5の外周縁に形成した屈曲部52が係止されることにより、前記台紙6に前記カバー5が着脱自在に取り付けられる。
【0023】
前記カバー5の前記凸部51内側は商品2を保持する収納室511となる。この収納室511の内寸は、幅は商品2の幅とほぼ同等、高さは商品2の高さとほぼ同等、さらに、奥行きは商品2の奥行きとほぼ同等であり、前記収納室511に商品2を収納したときに、商品がガタつかないように保持される寸法となっている。なお、図1では前記カバー5に形成した前記凸部51を直方体の形状にたが(当審注:「形状にしたが」の誤記と認められる。)、本実施の形態1の商品2であるピンホールアイマスクの外形に沿う形状が望ましい。
【0024】
前記凸部51の外寸は、前記カバー5の厚み分だけ内寸よりも大きい。そして、前記箱本体1の前記開口部10の幅は、前記凸部51の幅方向の外寸より若干長く、前記凸部51が前記開口部10に嵌合し、外方に突出するような寸法となっている。」
(5)「【0027】
図2は包装箱1の使用状態を示す断面図で、次に、実施の形態1の包装箱1の使用方法について説明する。
【0028】
まず、前記商品2をプラスチック製の前記カバー5に形成した前記凸部51内側の収納室511に入れる。このとき、商品2は顧客に見せたい部分が正面を向くようにして前記収納室511に収納される。
次に、前記カバー5の屈曲部52を台紙6の周縁に係止して、前記台紙6にカバー5を取り付けると前記収納室511の開口が台紙6で塞がれることで、商品2は収納室511の内部に保持される。そして、前記台紙6と前記カバー5とよりなる商品保持部材4に前記付属品3を奥行き方向に重ねるようにして前記箱本体1の下面14から入れると、前記商品保持部材4と前記付属品3とが前記箱本体1に対して幅方向と高さ方向にほぼ隙間無く収まる。
【0029】
前記箱本体1の内部で前記カバー5の幅方向および高さ方向の位置が前記台紙6との組み合わせにより規制されると、前記カバー5に形成された前記凸部51は前記箱本体1の前記開口部10に対向する。そして、前記凸部51の外寸が前記開口部10の寸法より若干小さく設定されているので、前記開口部10から前記凸部51が外側へと突出することになる。」
(6)図2



(7)上記(1)?(6)の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「商品2を収納する箱本体1と、箱本体1の前面11に設けられた開口部10と、箱本体1から上方に設けられる吊り下げ部111とを有する箱本体1と、
商品2が内側に保持される凸部51内側の収納室511を有し、箱本体1内に収納される透明なプラスチック製のカバー5と、
を備え、
カバー5は、開口部10から凸部51が箱本体1の外方に突出した状態で収まり、
箱本体1の下面14は、付属品3と商品保持部材4を出し入れするものであり、
商品保持部材4と付属品3とが箱本体1に対して幅方向と高さ方向にほぼ隙間無く収まる、包装箱。」

2 引用文献2
原査定で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2013-184724号公報(平成25年 9月19日出願公開))には、図面とともに次の記載がある。
(1)「【0001】
この発明は商品を包装する包装体に関する。」
(2)「【0003】
商品の形状および大きさに応じた凹部を持つ透明プラスチック製のブリスター内に商品を入れ,台紙によってブリスターの背面がわの開口を閉じたブリスターパックが知られている。透明なブリスターを通して包装商品がよく見えるので展示効果は高いが,ブリスターを成形する金型の製作が必要であり製造コストは高い。
(3)「【0027】
包装体1Aは,矩形の表枠体2と,矩形の裏パネル体(台紙)3と,これらの表枠体2および裏パネル体3の間に位置するフィルム4とを備える。表枠体2および裏パネル体3は一枚の厚紙によりつくられる。厚紙に代えて,ボール紙,プラスチック・シート,これらの複合材を用いてもよい。フィルム4は透明または半透明の薄いプラスチック製のフィルムであり,好ましくは伸びを生じないまたは生じにくい,すなわち引張伸度が小さいフィルムが用いられる。後述するように,フィルム4は表枠体2の内がわとなる面に設けられる糊部nによってその一側部が接着されている。フィルム4には,たとえばポリ塩化ビニリデンフィルムを用いることができる。」

3 引用文献7
平成30年 1月 4日付けの拒絶理由通知で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平11-349042号公報(平成11年12月21日出願公開、以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。
(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は照明器具の陳列展示に好適なブリスター包装体に関するものである。」
(2)「【0005】
【発明の実施の形態】図1?図4の照明器具Aのブリスター包装体は透明プラスチックシートおよび板紙を用いる。透明プラスチックシートは被包装物である照明器具Aの正面側に沿った膨らみ部32を具備し、かつ膨らみ部32の基部外周に連設するフランジ部31を具備する。板紙で形成する箱体部40を備える。箱体部40は照明器具Aの背面側を収納する。箱体部40にフランジ部31を係止する係止部30を設ける。箱体部40に膨らみ部32を突出させるための覗き窓70を設ける。・・・」
(3)「【0006】組立て要領について補足する。透明プラスチックシートの膨らみ部32に照明器具Aの正面側をセットする。箱体部40の表面板49を膨らみ部32に被せ、かつ覗き窓70に膨らみ部32を嵌合させる。箱体部40の背面板55を折り返して照明器具Aの平面側をくるむ。その際に上下の蓋板50・56に連設する差し込み片51・57を箱内へ差し込みむ。・・・」
(4)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装体の斜視図である。
【図2】図1の断面図である。」
(5)図1



(6)図2




第5 対比及び判断
1 本願発明1と、引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「商品2」、「箱本体1」、「透明なプラスチック製のカバー5」、「下面14」、「包装箱」は、それぞれ本願発明1の「収納物」、「収納部本体」、「ブリスター」、「地面」、「収納容器」に相当する。
(2)引用発明の「箱本体1の前面11に設けられた開口部10」は、本願発明1の「前記収納部本体の正面に形成された開口部」に相当する。
(3)引用発明の「箱本体1から上方に設けられる吊り下げ部111」は、本願発明1の「前記収納部本体から上方に延設されるパネル部」に相当する。
(4)引用発明の「商品2が内側に保持される凸部51内側の収納室511は、本願発明1の「収納物が挿入される凹部」に相当する。
(5)引用発明のカバー5が「開口部10から凸部51が箱本体1の外方に突出した状態で収まる」ことは、本願発明1のブリスターが「前記開口部から前記凹部の外面が前記収納部本体の外方に突出した状態で収納され」ることに相当する。
(6)引用発明の「商品保持部材4と付属品3とが箱本体1に対して幅方向と高さ方向にほぼ隙間無く収まる」ことは、その態様からみて、本願発明1の「正面視において、前記ブリスターに前記収納物が挿入された状態における前記ブリスターと前記収納物とからなる挿入物の幅は前記収納部本体の幅より小さ」いことに相当する。
(7)以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
「収納物を収納する収納部本体と、前記収納部本体の正面に形成された開口部と、前記収納部本体から上方に延設するパネル部とを有する箱体と、
前記収納物が挿入される凹部を有し、前記箱体内に収納されるブリスターと、
を備え、
前記ブリスターは、前記開口部から前記凹部の外面が前記収納部本体の外方に突出した状態で収納され、
正面視において、前記ブリスターに前記収納物が挿入された状態における前記ブリスターと前記収納物とからなる挿入物の幅は前記収納部本体の幅より小さい、収納容器」である点。
【相違点1】
本願発明1は、ブリスターの凹部が外方に突出する突出長が、収納部本体の奥行の長さと同じまたはそれ以上であるのに対し、引用発明は、突出長と収納部本体の奥行の長さとの関係が不明である点。
【相違点2】
収納部本体の地面について、本願発明1は、オートボトム式であるのに対し、引用発明の「下面14」は、「付属品3と商品保持部材4を出し入れするものであ」るが、オートボトム式であるか否かの記載がない点。
【相違点3】
本願発明1は、挿入物の水平方向における最大周長に比べて、収納部本体の上部開口における内周面の水平方向の周長が大きいのに対し、引用発明は、これらの周長の関係が不明である点。

2 上記相違点について検討する。
まず相違点1について検討する。引用文献1の図2における凸部51と箱本体1の奥行寸法や、「商品保持部材4と付属品3とが箱本体1に対して幅方向と高さ方向にほぼ隙間無く収まる」こと、付属品3と商品保持部材4を下面14から出し入れすることからみて、引用発明の凸部51の突出長は、箱本体1の奥行の長さよりも相当程度小さいものと解される。
そして、引用発明において、上記の突部51の突出長を、上記相違点1に係る本願発明1の構成のように箱本体1の奥行の長さと同じまたはそれ以上とすることは、引用文献1に記載されていないし、示唆する記載もないから、当業者にとって容易とはいえない。
また、引用文献2には、上記第4の2に摘記した事項と図面の開示からみて、透明のフィルムで商品を覆い表枠体2と裏パネル体3で挟み込み表枠体2から突出させた包装体1Aが記載されているけれども、用いられているのは「フィルム」であって、本願発明1のブリスターのように、突出長を収納部本体の奥行の長さと同じまたはそれ以上とできるようなものであることは記載されていないし、示唆する記載もない。
さらに、平成30年 1月 4日付けの拒絶理由通知書に引用した引用文献7には、上記第4の3に摘記したように、ブリスターを箱体部40から大きく突出させたブリスター包装体が記載されており、包装の際にはブリスターを箱体部40の開口部(覗き窓70)に嵌合させてから背面板55を折り返すことが記載されている。しかしながら、引用発明は商品を箱本体1の下面14から入れて包装するものであって、この包装方法の違いを考慮すると、引用発明において引用文献7に記載された突出長の大きいブリスターをそのまま適用することは困難であるし、包装の仕方も引用文献7に合わせるのであれば、ブリスターをセットした後に箱体を折り返して組み立てることとなるから、相違点2に係るオートボトム式の地面、すなわち箱体が畳まれた状態から拡開する際に底面を形成する機構を採用することに阻害事由が存在するといえる。
また、他の引用文献の記載をあわせて考慮しても、引用発明において、少なくとも上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成を同時に備えることが当業者にとって容易であったという証拠も動機づけも見当たらない。
そして、本願発明1は、上記相違点1?3に係る構成を備えることにより、オートボトムを備えた収納部本体にブリスター及び収納物を挿入するという動作のみで容易に収納できる構成であるとともに、突出長の大きいブリスターにより収納物を外部から容易に視認できる収納容器を提供するという、顕著な効果を奏する。
よって、本願発明1は、引用発明、引用文献1,2及び7の記載事項、及び他の文献の記載を参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1において「前記挿入物の水平方向における最大周長に比べて、前記収納部本体の上部開口における内周面の水平方向の周長が大きい」との特定事項(以下「特定事項1」という。)を、「前記挿入物の水平方向における最大周長と前記収納部本体の上部開口における内周面の水平方向の周長との比が1:1.05?1:1.5の範囲である」との特定事項(以下「特定事項2」という。)に替えたものである。
上記特定事項1は、その内容からみて上記特定事項2の上位概念であることは明らかであるから、本願発明2は本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項の一部を下位概念としたものである。したがって、本願発明1が上記2に記載したとおり引用文献に記載された発明等に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本願発明2も、引用発明、引用文献1,2及び7の記載事項、及び他の文献の記載を参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本願発明3?13
本願発明3?13は、直接又は間接の引用により本願発明1又は2の発明特定事項をすべて含み、さらに限定事項を付加したものである。したがって、本願発明1及び2が上記2及び3に記載のとおり引用文献に記載された発明等に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本願発明3?13も、引用発明、引用文献1,2及び7の記載事項、及び他の文献の記載を参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 まとめ
上記のとおり、本願発明1?13は、引用発明、引用文献1,2及び7の記載事項、及び他の文献の記載を参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-30 
出願番号 特願2014-90701(P2014-90701)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 西尾 元宏
横溝 顕範
発明の名称 収納容器  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 鈴木 史朗  
代理人 松沼 泰史  
代理人 松沼 泰史  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 鈴木 史朗  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 清水 雄一郎  

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