• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1353708
審判番号 不服2017-15643  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-20 
確定日 2019-07-17 
事件の表示 特願2015-187028「セルラネットワークと無線ローカルエリアネットワークとのインターワーキング方法およびインターワーキングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日出願公開、特開2016- 15773〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年(平成17年)12月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2004年12月9日 米国、2005年11月22日 米国)を国際出願日とする特願2007-545703号の一部を、平成23年10月28日に新たな特許出願とした特願2011-237510号の一部を、平成25年4月4日に新たな特許出願とした特願2013-78683号の一部を、平成26年5月26日に新たな特許出願とした特願2014-108141号の一部を、平成27年9月24日に更に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年12月 2日付け 拒絶理由通知書
平成29年 6月 6日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 6月16日付け 拒絶査定
平成29年10月20日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

平成30年10月11日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成31年 1月16日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
平成31月1月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下の事項が記載されている。

「 無線送受信ユニット(WTRU)であって、
セルラープロトコルを使用して通信するように構成されたセルラー送受信機と、
無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)プロトコルを使用して通信するように構成されたWLAN送受信機と、
基準をモニタするように構成された、及び、前記セルラー送受信機を使用して第1の接続が維持されおよび同時に前記WLAN送受信機を使用して第2の接続が維持されている間に、前記モニタに基づいて前記セルラー送受信機と前記WLAN送受信機との間でサービスをステアリングするように構成されたコントローラと
を備えたことを特徴とするWTRU。」

第3 拒絶の理由
平成30年10月11日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


1.(略)

2.請求項1の「前記セルラー送受信機と前記WLAN送受信機との間でサービスを同時にステアリングする」という記載について、「ステアリング」という用語は発明の詳細な説明に記載されておらず、コントローラのどのような制御を「ステアリング」と定義しているのか不明確である。そのため、上記記載はいかなることか意味不明である。
また、図5、図6で「一定期間セッションを維持」と記載され、段落26に「2つの接続が同時に維持され」とは記載されているが、2つの接続をコントローラがどのように制御するかは記載されておらず、請求項1の「無線送受信ユニット(WTRU)」の「コントローラ」が行っている「同時にステアリング」がどのような制御であるかは発明の詳細な説明に記載されていない。
(中略)
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
そして、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないことから、発明の詳細な説明の記載は請求項1に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。
請求項8及び請求項1、8を引用している従属請求項についても同様に不備がある。
したがって、請求項1?14に係る発明は不明確であり、請求項1?14に係る発明は発明の詳細な説明に記載されておらず、発明の詳細な説明の記載は請求項1?14に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。(明確性、サポート要件、実施可能要件)

3.(略)

4.図5において「一定期間セッションを維持」と記載されているが、何が、どのセッションを、いつまで、どのようにして維持するか不明である。
また、段落31では「次いで、AP132aは、WTRU102にハンドオーバ完了メッセージを送信し(ステップ528)、その後リソースを解放する。さらに、GGSN128も、リソース割り当てのためのハンドオーバ完了メッセージを、SGSN122を介してノードB112に送信する(ステップ530、532)。次いで、ノードB112は、WTRU102にハンドオーバ完了メッセージを送信する(ステップ534)。次いで、IMS150からのサービスが、UMTSネットワーク110を介して(すなわち、矢印536a?536cによって示されるように、IMS150から、GGSN128、SGSN122、およびノードB112を経由して、WTRU102に)提供される(ステップ536、538)。」と記載されていることから、HO完了後のステップ528後にWTRUがWLANに接続するリソースは解放され、その後のステップ536、538においてIMSからのサービスが、UMTSネットワーク110を介して提供されることが記載されている。つまりWLANの接続によるサービスはステップ528までで終了し、セルラーの接続によるサービスはステップ536、538以降であり、図5においてはWLANの接続によるサービスとセルラーの接続によるサービスを同時に接続していない例になっている。
図6においても図5と同様にWLANの接続によるサービスとセルラーの接続によるサービスを同時に接続していない例になっている。
さらに図5、図6に関連した発明の詳細な説明の記載においても、WTRUがWLANの接続によるサービスとセルラーの接続によるサービスを同時に接続した状態でどのようにWTRUのコントローラが制御するかは発明の詳細な説明には記載されていない。
したがって、図5、図6におけるWTRUの動作及びコントローラの制御動作が不明である。
よって、発明の詳細な説明の記載は請求項1?14に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。(実施可能要件)

5.図5の「一定期間セッションを維持」と図6の「一定期間セッションを維持」の場所が相違しており、何が、どのセッションを、いつまで、どのようにして維持しているのか不明である。(中略)
したがって、発明の詳細な説明の記載は請求項1?14に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。(実施可能要件)

第4 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

「【0005】
最初に、WTRUはWLANとの接続を確立し、APとPDGとの間にトンネルが確立される。さらに、PDGはIPネットワークとのトンネルを確立する。次いで、WTRUは、WLANを介して配信されるサービスを呼び出す。APからの信号品質が予め定められた閾値よりも下回った場合、WLANからセルラネットワークへのハンドオーバが実行される。セルラネットワークとの新たな接続は、WLANとの現在の接続を切断する前もしくは切断した後のいずれかに確立されてもよく、または2つの接続が同時に維持されてもよい。」

「【0026】
図5は、本発明の第2の実施形態に従う、インターワーキングプロセス500の信号図である。第2の実施形態に従うと、WTRU102は、複数のセッションを同時に維持することができ、WLAN130aとの既存の接続は、ハンドオーバが完了した後も切断されない。2つの接続が同時に維持され、アプリケーションは、一方のネットワークから他方のネットワークへ転送される(すなわち、「同時に存在する」)。」

「【0031】
IMS150はGGSN128にリロケーション応答を送信し(ステップ522)、GGSN128はPDG129にその応答を転送する(ステップ524)。PDG129は、AP132aにリロケーション応答を送信する(ステップ526)。次いで、AP132aは、WTRU102にハンドオーバ完了メッセージを送信し(ステップ528)、その後リソースを解放する。さらに、GGSN128も、リソース割り当てのためのハンドオーバ完了メッセージを、SGSN122を介してノードB112に送信する(ステップ530、532)。次いで、ノードB112は、WTRU102にハンドオーバ完了メッセージを送信する(ステップ534)。次いで、IMS150からのサービスが、UMTSネットワーク110を介して(すなわち、矢印536a?536cによって示されるように、IMS150から、GGSN128、SGSN122、およびノードB112を経由して、WTRU102に)提供される(ステップ536、538)。」

図5は以下のとおりである。

図6は以下のとおりである。

第5 判断
1.当審拒絶理由の「2.」の「「ステアリング」という用語は発明の詳細な説明に記載されておらず、コントローラのどのような制御を「ステアリング」と定義しているのか不明確である。そのため、上記記載はいかなることか意味不明である。」及び「請求項1の「無線送受信ユニット(WTRU)」の「コントローラ」が行っている「同時にステアリング」がどのような制御であるかは発明の詳細な説明に記載されていない。」について検討する。

まず、平成31月1月16日にされた手続補正により特許請求の範囲の請求項1は、「前記セルラー送受信機および前記WLAN送受信機を使用して接続がセルラーコアネットワークに維持されながら、前記セルラー送受信機と前記WLAN送受信機との間でサービスを同時にステアリングするように構成されたコントローラ」が「基準をモニタするように構成された、及び、前記セルラー送受信機を使用して第1の接続が維持されおよび同時に前記WLAN送受信機を使用して第2の接続が維持されている間に、前記モニタに基づいて前記セルラー送受信機と前記WLAN送受信機との間でサービスをステアリングするように構成されたコントローラ」に補正された。

補正後の請求項1では「前記モニタに基づいて前記セルラー送受信機と前記WLAN送受信機との間でサービスをステアリングするように構成されたコントローラ」と記載されているが、「ステアリング」とは「(1)自動車や船舶の方向転換。「?‐ギア」(2)自動車のハンドル。ステアリング‐ホイール。また、ハンドルの切れぐあい。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]であり、方向転換である舵取りを意味しているが、ステアリングという記載だけではどのような舵取りか具体的には不明確である。
そして、「ステアリング」という用語は発明の詳細な説明に記載されておらず、具体的動作が不明確である。
よって、「(基準の)モニタに基づいてステアリングする」とはどのような制御を意味しているか意味不明であり、また発明の詳細な説明に記載されていない。

ここで、請求人は平成31年1月16日に提出した意見書において、「補正後の請求項1の「基準をモニタし、モニタに基づいてセルラー送受信機とWLAN送受信機との間でサービスをステアリングする」ことにより、第0026段落に記載されたように『・・・WTRU102は、複数のセッションを同時に維持することができ・・・ハンドオーバが完了した後も切断されない。2つの接続が同時に維持され、アプリケーションは、一方のネットワークから他方のネットワークへ転送される・・・』ことになることが明確に把握されるものと思料します。」と主張し、また、「基準をモニタし、モニタに基づいてセルラー送受信機とWLAN送受信機との間でサービスをステアリングするように構成されたコントローラに関して、」本願明細書の第0005、0026段落を根拠と主張している。
しかしながら、請求人が根拠として主張する本願明細書段落26の「WTRU102は、複数のセッションを同時に維持することができ、WLAN130aとの既存の接続は、ハンドオーバが完了した後も切断されない。2つの接続が同時に維持され、アプリケーションは、一方のネットワークから他方のネットワークへ転送される(すなわち、「同時に存在する」)。」には、WTRU102は複数のセッションを同時に維持することは記載されているが、「モニタに基づいてステアリングする」という制御がどのような制御であるかについては記載されていない。また、「アプリケーションは、一方のネットワークから他方のネットワークへ転送される」という記載だけではモニタの結果が転送するネットワークの選択にどのように反映されているか不明確である。そして、本願明細書段落5において「APからの信号品質が予め定められた閾値よりも下回った場合、WLANからセルラネットワークへのハンドオーバが実行される。」と記載されているが、ハンドオーバを判断するために信号品質は使用されていることは読み取れるが、ステアリングにどのように利用するかは記載されていない。
このため、請求人の主張は採用できない。

よって、「モニタに基づいてステアリングする」という制御がどのような制御か不明確であるから、請求項1の「ステアリング」がどのような制御であるか不明確であるし、発明の詳細な説明に記載されていない。そして、「サービスをステアリングする」という用語もどのような制御か不明確である。

したがって、請求項1に係る発明は不明確であり、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものでない。

2.当審拒絶理由の「4.」の「図5、図6におけるWTRUの動作及びコントローラの制御動作が不明である。」、及び当審拒絶理由の「5.」の「図5の「一定期間セッションを維持」と図6の「一定期間セッションを維持」の場所が相違しており、何が、どのセッションを、いつまで、どのようにして維持しているのか不明である。」ことから、「発明の詳細な説明の記載は請求項1に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。」について検討する。

まず、当審拒絶理由の「5.」において指摘したとおり、「図5の「一定期間セッションを維持」と図6の「一定期間セッションを維持」の場所が相違しており、どのセッションを、いつまで維持しているのか図5及び図6の記載では不明である。
そして、当審拒絶理由の「4.」において指摘したように、図5に関する本願明細書段落31では「次いで、AP132aは、WTRU102にハンドオーバ完了メッセージを送信し(ステップ528)、その後リソースを解放する。(中略)次いで、IMS150からのサービスが、UMTSネットワーク110を介して(すなわち、矢印536a?536cによって示されるように、IMS150から、GGSN128、SGSN122、およびノードB112を経由して、WTRU102に)提供される(ステップ536、538)。」と記載されていることから、HO完了後のステップ528後にWTRUがWLANに接続するリソースは解放され、その後のステップ536、538においてIMSからのサービスが、UMTSネットワーク110を介して提供されることが記載されている。つまり、WLANの接続によるサービスはステップ528までで終了し、セルラーの接続によるサービスはステップ536、538以降であり、図5においてはWLANの接続によるサービスとセルラーの接続によるサービスを同時に接続していない例になっている。
したがって、図5では請求項1の「前記セルラー送受信機を使用して第1の接続が維持されおよび同時に前記WLAN送受信機を使用して第2の接続が維持されている間」では無い。
図6も同様に請求項1の「前記セルラー送受信機を使用して第1の接続が維持されおよび同時に前記WLAN送受信機を使用して第2の接続が維持されている間」では無い。
さらに図5、図6に関連した発明の詳細な説明の記載においても、WTRUがWLANの接続によるサービスとセルラーの接続によるサービスを同時に接続した状態でどのようにWTRUのコントローラが制御するかは発明の詳細な説明には記載されておらず、図5、図6におけるWTRUの動作及びコントローラの制御動作が不明である。

そして、請求人は平成31年1月16日に提出した意見書において、当審拒絶理由の「4.」及び当審拒絶理由の「5.」について反論はない。

したがって、請求項1に係る発明は図5や図6には記載されておらず、図5や図6を根拠に請求項1に係る発明を実施しうる程度に記載されているとは認められない。

3.当審拒絶理由の「2.」の「どのような制御を「ステアリング」と定義しているのか不明確である。」との指摘の上で、「請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないことから、発明の詳細な説明の記載は請求項1に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。」について検討する。

上記「1.」で検討したとおり、「モニタに基づいてステアリングする」という制御がどのような制御か不明確であり、また、図5や図6及びその説明をみても「モニタに基づいてステアリングする」ことについては開示されておらず、当該動作が不明であるから、請求項1の「ステアリング」がどのような制御であるか不明確である。したがって、発明の詳細な説明の記載は請求項1に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。

ここで、請求人は平成31年1月16日に提出した意見書において、当審拒絶理由の「2.」については段落5及び段落26が根拠と主張している。
請求人が根拠として主張する本願明細書段落26には「WTRU102は、複数のセッションを同時に維持することができ、WLAN130aとの既存の接続は、ハンドオーバが完了した後も切断されない。2つの接続が同時に維持され、アプリケーションは、一方のネットワークから他方のネットワークへ転送される(すなわち、「同時に存在する」)。」と記載されていることから、WTRU102は複数のセッションを同時に維持することは記載されているが、「モニタに基づいてステアリングする」という制御がどのような制御であるか記載されていない。また、「アプリケーションは、一方のネットワークから他方のネットワークへ転送される」という記載だけではモニタの結果が転送するネットワークの選択にどのように反映されているか記載されていない。そして、請求人が根拠として主張する本願明細書段落5において「APからの信号品質が予め定められた閾値よりも下回った場合、WLANからセルラネットワークへのハンドオーバが実行される。」と記載されているが、ハンドオーバを判断するために信号品質は使用されていることは読み取れるが、ステアリングにどのように利用するかは記載されておらず、自明でもない。
このため請求人の主張は採用できない。

したがって、発明の詳細な説明の記載は請求項1に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。

第6 むすび
以上のとおり、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号の規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号又は第2号の規定する要件を満たしていないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-12 
結審通知日 2019-02-19 
審決日 2019-03-04 
出願番号 特願2015-187028(P2015-187028)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04W)
P 1 8・ 537- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 中木 努
脇岡 剛
発明の名称 セルラネットワークと無線ローカルエリアネットワークとのインターワーキング方法およびインターワーキングシステム  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ