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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A24D |
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管理番号 | 1353721 |
審判番号 | 不服2018-12493 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-09-19 |
確定日 | 2019-08-13 |
事件の表示 | 特願2016-511604「低タールメンソールシガレット」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日国際公開、WO2015/152017、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)3月26日(優先権主張2014年4月3日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月30日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成30年1月25日に意見書の提出及び手続補正がなされ、平成30年6月22日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成30年9月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、平成30年10月15日付けで前置報告がなされ、平成30年11月28日に審判請求人から前置報告に対する上申がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年6月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1?6に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特表2013-511265号公報 2.特開2011-229481号公報 3.国際公開第2013/179429号(周知技術を示す文献) 4.特表2012-527221号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2010-213655号公報(周知技術を示す文献) 6.特開昭55-135581号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成30年9月19日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 たばこロッド部と、チップペーパーで巻装されたフィルター部を有する、タール量が5mg以下の低タールメンソールシガレットであって、前記フィルター部はセルロースアセテートトウで構成された単一のセグメントを含み、前記フィルター部の通気抵抗が25?50mmH_(2)O/27mmであるとともに、前記チップペーパーに穿設されたベンチレーション孔からの空気流入のベンチレーション割合が70%以上であり、前記フィルター部のセルロースアセテートトウに収着させることでメンソールが添加されている、低タールメンソールシガレット。 【請求項2】 前記フィルター部へのメンソール添加量が、低タールメンソールシガレット1本当たり、8mg/本以上である、請求項1に記載の低タールメンソールシガレット。 【請求項3】 前記たばこロッド部またはフィルター部が抵抗体を有する、請求項1または2に記載の低タールメンソールシガレット。 【請求項4】 前記抵抗体がカプセルまたはオリフィスである、請求項3に記載の低タールメンソールシガレット。 【請求項5】 前記低タールメンソールシガレットの円周が20.0?27.0mmである、請求項1?4のいずれか一項に記載の低タールメンソールシガレット。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について (1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様である。)。 「【請求項1】 喫煙物品(10、20、30、40、50)のフィルタ(14)に使用するフィルタセグメント(16)であって、前記フィルタセグメント(16)が、少なくとも1つの煙改質剤が充填された非層状基材(20)を含み、前記非層状基材(20)が、前記フィルタセグメント(16)の本体内に配置され、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップから形成される、フィルタセグメント(16)。 【請求項2】 前記非層状基材(20)が、約5000コレスタ単位と約30000コレスタ単位の間の通気性を有するフィルタプラグラップから形成される、請求項1に記載のフィルタセグメント(16)。 【請求項3】 前記非層状基材(20)が、約6000コレスタ単位と約24000コレスタ単位の間の通気性を有するフィルタプラグラップから形成される、請求項2に記載のフィルタセグメント(16)。 【請求項4】 前記非層状基材(20)が、約10g/m^(2)と約80g/m^(2)の間の坪量を有するフィルタプラグラップから形成される、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のフィルタセグメント(16)。 【請求項5】 前記非層状基材(20)にメントールが充填される、請求項1から請求項4の何れかに記載のフィルタセグメント(16)。 【請求項6】 前記非層状基材(20)が着色される、前記請求項の何れかに記載のフィルタセグメント(16)。 【請求項7】 前記非層状基材(20)が、フィルタプラグラップの1つ又はそれ以上のストリップから形成されたスレッドである、前記請求項の何れかに記載のフィルタセグメント(16)。 【請求項8】 前記非層状基材(20)が、約0.5mmと約3mmの間の直径を有する、請求項7に記載のフィルタセグメント(16)。 【請求項9】 前記非層状基材(20)が、前記フィルタセグメント(16)の前記本体内で軸方向に延びる、請求項7又は請求項8に記載のフィルタセグメント(16)。 【請求項10】 前記請求項の何れかに記載のフィルタセグメント(16)の製造に使用するスレッドのボビンであって、該スレッドが、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップから形成され、約0.5mmと約3mmの間の直径を有する。 【請求項11】 請求項1から請求項9の何れかに記載のフィルタセグメント(16)を含む、喫煙物品(10、20、30、40、50)のためのフィルタ(14)。 【請求項12】 そのマウスエンドに請求項1から請求項9の何れかに記載のフィルタセグメント(16)を含む、喫煙物品(30、50)のためのマルチセグメントフィルタ(14)。 【請求項13】 請求項11又は請求項12に記載のフィルタ(14)を含む、喫煙物品(10、20、30、40、50)。 【請求項14】 喫煙物品(10、20、30、40、50)のフィルタ(14)のためのフィルタセグ メント(16)の前記本体内に少なくとも1つの煙改質剤のための非層状基材(20)として、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップの使用。 【請求項15】 フィルタ(14)を含む喫煙物品(10、20、30、40、50)によって生じる煙を改質する方法であって、前記フィルタ(14)のフィルタセグメント(16)の前記本体内に少なくとも1つの煙改質剤が充填された、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップから形成された非層状基材(20)を提供する段階を含む方法。」(特許請求の範囲) 「【0035】 本発明の特定の好ましい実施形態において、非層状基材にはメントールが充填され、より好ましくは液体又は溶融メントールが充填される。 【0036】 非層状基材には、例えば、浸漬、噴霧、もしくは塗布により少なくとも1つの液体煙改質剤をフィルタプラグラップに塗布することで、少なくとも1つの液体煙改質剤を充填することができる。 【0037】 非層状基材はスレッドであることが好ましい。本明細書で使用する場合、用語「スレッド(thread)」は、何らかの細長い非層状基材を示すために使用される。例えば、非層状基材は、フィルタプラグラップの1つ又はそれ以上の層状ストリップを撚ったもので形成できる。 【0038】 細長い非層状基材の直径は、約0.5mmと約3mmの間であることが好ましく、約0.5mmと約2.5mmの間であることがより好ましく、約0.8mmと約2mmの間であることが最も好ましい。 【0039】 例えば、細長い非層状基材は、約11mmの幅のフィルタプラグラップの撚られた層状ストリップから形成される直径約0.8mmのスレッド、約40mmの幅のフィルタプラグラップの撚られた層状ストリップから形成される直径約1.3mmのスレッド、又は約50mmの幅のフィルタプラグラップの撚られた層状ストリップから形成される直径約1.6mmのスレッドとすることができる。 【0040】 本発明によれば、本発明のフィルタセグメントの製造に使用するスレッドのボビンが提供され、スレッドは、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性のフィルタプラグラップから形成される、直径は約0.5mmと約3mmの間である。 【0041】 細長い非層状基材は、フィルタセグメント本体内を軸方向に延びることが好ましい。細長い基材は、フィルタセグメントの中心を軸方向に延びることがより好ましい。 【0042】 細長い非層状基材の長さは、フィルタセグメントの長さにほぼ等しいことが好ましい。 【0043】 非層状基材の長さは、約5mmと約22mmの間であることが好ましく、約8mmと約18mmとの間であることがより好ましく、約15mmであることが最も好ましい。 【0044】 しかしながら、本発明のフィルタセグメントは、他の形態の非層状基材を含むことができる。例えば、基材は、フィルタプラグラップのボール又はペレットとすることができる。 【0045】 フィルタセグメントは、濾過材プラグを含むことが好ましく、繊維状濾過材プラグを含むことがより好ましく酢酸セルローストウプラグを含むことが最も好ましい。本発明の特定の好ましい実施形態において、フィルタセグメントは、約1.5と約8.0の間のフィラメント当たりのデニール、及び約15000と約46000の間の合計デニールをもつ酢酸セルローストウのプラグを含む。 【0046】 非層状基材は、濾過材プラグ内に配置することが好ましい。非層状基材は、濾過材プラグを通って軸方向に延びることが好ましい。非層状基材は、濾過材プラグの中心を通って軸方向に延びることがより好ましい。 【0047】 しかしながら、非層状基材は、フィルタセグメント本体内の他の場所に配置できる。例えば、非層状基材は、フィルタセグメント本体内のキャビティ内に配置できる。 【0048】 本発明のフィルタセグメントは、少なくとも1つの煙改質剤が充填された単一の非層状基材を含むことが好ましく、少なくとも1つの煙改質剤が充填された単一の細長い非層状基材を含むことがより好ましく、少なくとも1つの煙改質剤が充填された単一のスレッドを含むことが最も好ましい。 【0049】 本発明の好ましい実施形態において、フィルタセグメントは、濾過材プラグ、及び少なくとも1つの香味料が充填され濾過材プラグの中心を通って軸方向に延びる単一の細長い非層状基材又はスレッドを含む。本発明の特定の好ましい実施形態において、フィルタセグメントは、濾過材プラグ、及びメントールが充填され濾過材プラグの中心を通って軸方向に延びる単一の細長い非層状基材を含む。 【0050】 しかしながら、本発明のフィルタセグメントは、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性をもつフィルタプラグラップから形成され各々には少なくとも1つの煙改質剤が充填された、2つ又はそれ以上の非層状基材を含むことができる。」 「【0054】 フィルタセグメントは、ISO6565:2002で測定する場合に約40mmWGと約100mmWGの間の吸引抵抗(RTD)をもつことが好ましく、約70mmWGの吸引抵抗をもつことがより好ましい。」 「【0065】 本発明のフィルタの全カプセル化吸引抵抗(RTD)は、ISO6565:2002で測定する場合に約100mmWG(水位計)と約180mmWGの間であることが好ましい。 【0066】 本発明のフィルタは単一のセグメントフィルタとすることができる。 もしくは、本発明のフィルタは、本発明のフィルタセグメント及び少なくとも1つの追加のフィルタセグメントを含むマルチセグメントフィルタとすることができる。 【0067】 本発明のマルチセグメントフィルタは、1つ又はそれ以上の追加の本発明のフィルタセグメント又は1つ又はそれ以上の追加の本発明以外のフィルタセグメント、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。」 「【0080】 しかしながら、本発明のマルチセグメントフィルタは、異なる構成の1つ又はそれ以上の追加の香味放出セグメントを含むことができることを理解されたい。 【0081】 例えば、本発明のマルチセグメントフィルタは、植物葉材料(例えば、細断又は切断タバコ又はペパーミント葉)、1つ又はそれ以上の液体香味料で含浸された濾過材プラグ(例えば、メントールで含浸された酢酸セルローストウのプラグ)、1つ又はそれ以上の香味料が充填された複数の不活性ビーズ又は粒体(例えば、メントールが充填された複数のセルロースビーズ又は粒体)、又はこれらの組み合わせを含む1つ又はそれ以上の追加の香味放出セグメントを更に含むことができる。」 「【0095】 本発明のフィルタは、特に好都合には、「低タール」フィルタ付きシガレット、及びニコチンを除いた全乾燥粒子状物質(NFDPM)又は約4mgと約6mgの間の「タール」送達を有する特に「低タール」通気式フィルタ付きシガレット、及びニコチンを除いた全乾燥粒子状物質(NFDPM)又は約3mg又はそれ以下の「タール」送達を有する「超低タール」フィルタ付きシガレットのためのフィルタとして使用することができる。」 「【0100】 フィルタは、先端紙によって喫煙可能材料のロッドに取り付けられることが好ましい。先端紙は、その長さの少なくとも一部分に沿って透明とすることができる。 【0101】 本発明の可燃性喫煙物品は、消費者によって喫煙可能材料のロッドからフィルタを通って吸い込まれる主流煙を通気するために、フィルタに沿った場所において穿孔の少なくとも1つの円周の列を更に含むことが好ましい。 【0102】 穿孔の少なくとも1つの円周の列は、フィルタのマウスエンドから少なくとも12mmに配置されることが好ましい。 【0103】 本発明の可燃性喫煙物品は、ISO9512:2002で測定する場合に約40%と約80%の間の通気を有することが好ましく、約70%の通気を有することがより好ましい。」 「【0123】 本発明の第1の実施形態のフィルタ付きシガレット10の単一セグメントフィルタ14は、包装されたタバコロッド12に隣接してこれと当接する本発明の単一フィルタセグメント16を含む。図1に示すように、フィルタセグメント16は、酢酸セルローストウ18のプラグ並びにフィルタ14及び包装されたタバコロッド12の長手方向軸線に対して平行な酢酸セルローストウ18のプラグを通って軸方向に延びる中心香味担持スレッド20を含む。中心香味担持スレッド20は、中心香味担持スレッド20の端部が、フィルタセグメント16の端部において見えるように、酢酸セルローストウ18のプラグと実質的に同じ長さのものである。メントールが充填された中心香味担持スレッド20は、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有する撚られたフィルタプラグラップから形成される。」 「【0129】 図3に示す本発明の第3の実施形態のフィルタ付きシガレット30のマルチセグメントフィルタ14はまた、当接する端と端を接した関係で、包装されたタバコロッド12から遠位の本発明のマウスエンドフィルタセグメント16と、マウスエンドフィルタセグメント16の下流に配置され、包装されたタバコロッド12に隣接しこれと当接するロッドエンドフィルタセグメント24との2つのフィルタセグメントを含む。 【0130】 図3に示す本発明の第3の実施形態のフィルタ付きシガレット30のマルチセグメントフィルタ14のマウスエンドフィルタセグメント16は、図1に示す本発明の第1の実施形態のフィルタ付きシガレット10の単一セグメントフィルタ14のフィルタセグメント16と同じ構成のものである。 【0131】 本発明の第3の実施形態のフィルタ付きシガレット30のマルチセグメントフィルタ14のロッドエンドフィルタセグメント24は、そこを通って実質的に均等に分配されたメントールが充填された複数の粒体を有する高濾過効率の酢酸セルローストウのプラグ含む。 【0132】 喫煙時、フィルタ付きシガレット30の包装されたタバコロッド12の着火端部から下流に吸い込まれる主流煙は、マルチセグメントフィルタ14のロッドエンドフィルタセグメント24を通過し、ここで、高濾過効率の酢酸セルローストウは、部分的に煙の粒子相成分を濾過して取り除き、メントールは、酢酸セルローストウに分配された粒体から主流煙の中に放出される。次いで、主流煙は、本発明のマウスエンドフィルタセグメント16の下流を通過し、ここで、酢酸セルローストウはまた、部分的に煙の粒子相成分を濾過して取り除き、更にメントールは、酢酸セルローストウを通って軸方向に延びる中心香味担持スレッド20から主流煙の中に放出される。 【0133】 マルチセグメントフィルタ14のロッドエンドフィルタセグメント24及びマウスエンドフィルタセグメント16の酢酸セルローストウは、主流煙の粒子相成分を濾過する。同時に、ロッドエンドフィルタセグメント24の粒体、及びマルチセグメントフィルタ14のマウスエンドフィルタセグメント16の中心香味担持スレッド20は、主流煙に対して2段階の香味強化をもたらす。」 「【0147】 実施例 図3に示す本発明の第3の実施形態のフィルタ付きシガレットが製造され、下の表3に示す寸法及び特性を有する。」 「表3 」 「図3 」 (2) 上記(1)の記載事項を総合し、実施例の図3に示すフィルタ付きシガレットに着目すると、以下の発明が引用文献1には、記載されていると認めらる。 「約4mgと約6mgの間のタール送達を有する低タール通気式フィルタ付きシガレットであって、 喫煙物品のフィルタに使用するフィルタセグメントが、 少なくとも1つの煙改質剤が充填された非層状基材を含み、前記非層状基材が、メントールが充填された中心香味担持スレッドからなり、前記フィルタセグメントの本体内に配置され、12000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップから形成され、酢酸セルローストウのプラグを含む、長さ15mmで吸引抵抗(RTD)が56mmWGである、マウスエンドのフィルタセグメントと、 メントールが充填された複数の粒体を有する高濾過効率の酢酸セルローストウのプラグであり、長さが12mmで吸引抵抗(RTD)が50mmWGである、ロッドエンドのフィルタセグメントとを含む、 マルチセグメントフィルタとされ、 消費者によって喫煙可能材料のロッドからフィルタを通って吸い込まれる主流煙を通気するために、フィルタに沿った場所において穿孔の少なくとも1つの円周の列を含み、穿孔の少なくとも1つの円周の列は、フィルタのマウスエンドから少なくとも12mmに配置され、ISO9512:2002で測定する場合に約40%と約80%の間の通気を有することが好ましく、約70%の通気を有し、 喫煙時、フィルタ付きシガレットの包装されたタバコロッドの着火端部から下流に吸い込まれる主流煙は、マルチセグメントフィルタのロッドエンドフィルタセグメントを通過し、ここで、高濾過効率の酢酸セルローストウは、部分的に煙の粒子相成分を濾過して取り除き、メントールは、酢酸セルローストウに分配された粒体から主流煙の中に放出され、次いで、主流煙は、マウスエンドフィルタセグメントの下流を通過し、ここで、酢酸セルローストウはまた、部分的に煙の粒子相成分を濾過して取り除き、更にメントールは、酢酸セルローストウを通って軸方向に延びる中心香味担持スレッドから主流煙の中に放出される、 低タール通気式フィルタ付きシガレット。」 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0045】 <第2のフィルタセグメントの作製> フィルタ素材としてセルロースアセテート繊維を用い、糸として漂白綿糸(太さ:イギリス式番手表示で20/8)、香気発生剤としてメントールを用い、上記公知の方法により、第2のフィルタセグメントを作製した。綿糸には、6mgのメントールを担持させた。作製した第2のフィルタセグメントの円周長は24.9mmであり、長さは15mmであった。 【0046】 <フィルタ付きシガレットの作製> 通常のタバコ充填材(メントール添加)、巻紙、チップペーパーおよび上で作製した第1および第2のフィルタセグメントを用い、図2に示す構造を有するフィルタ付きシガレットを作製した。シガレットロッドの円周長は24.9mmであり、長さは59mmであった。また、チップペーパーの、第2のフィルタセグメント(120)の端面120bからの長さは32mmであり、そしてチップペーパーには、第2のフィルタセグメント(120)の端面120bから14mmの位置に多数のベンチレーション孔を設けた。作製したフィルタ付きシガレットのタバコ充填材は、4mgのメントールを含んでいた。すなわち、作製したフィルタ付きシガレットは、合計で、(6+4=)10mgのメントールを担持していた。 【0047】 比較例1 タバコ充填材に添加したメントール量を6mgに変更し、メントール担持糸を組み込んだ第2のフィルタセグメントの代わりにメントール3mgを添加したセルロースアセテート繊維トウからなるフィルタを用いた以外は、実施例1と同様にして、フィルタ付きシガレットを作製した。このフィルタシガレットは、合計で、実施例1のフィルタ付きシガレットより少ない(6+3=)9mgのメントールを担持していた。」 3.引用文献3について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「[0051] <第二実施形態> 図10に本発明の第二実施形態であるカプセルフィルターを有するシガレットを示す。 [0052]このシガレットは、フィルター部分が第一実施形態と異なり他の同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。 [0053] 第二実施形態のフィルター4は、フィルタープラグ44と、フィルタープラグ44の周囲に巻かれた外包紙の一例である巻取紙46と、フィルタープラグ44の中に埋め込まれたカプセル48と、で構成されている。(このようにフィルターの内部にカプセルが埋め込まれた構造のフィルターを本明細書では「埋め込みフィルター」と呼ぶ)。 [0054] カプセル、フィルタープラグ、チップペーパー、巻取紙は第一実施形態において説明したものと同様のものを使用することが出来、シガレットの各寸法においても第一実施形態において説明したものと同様のものを使用することが出来る。 [0055] また、カプセルの製造方法についても第一実施形態で説明したカプセルと同様なのでここでは説明を省略する。 [0056] 本実施形態においてもカプセル48は周辺フィルター41a、41bにおいてフィルタープラグの径方向外側からのフィルタープラグ44への押込率が0.5に到達する前に破壊される。 [0057] また、カプセル比B/Aは0.55≦B/A≦0.75、好ましくは0.55≦B/A≦0.70、とすることが出来き、カプセル変形率は2/3以下である。 [0058] 第二実施形態におけるフィルター付きシガレットにおいてもカプセルはフィルターの中に存在するため、ユーザーがカプセルを破壊する際には周辺フィルター41a、41bにも圧を与えるので、カプセルを破壊する際にはフィルターが反発力として働くことになり、反発力の値はカプセルを破壊するために押込率が大きくなればそれだけ大きくなる。 [0059] しかし、本実施形態によるカプセルフィルターを有するシガレットはフィルターの押込率が特定値(0.5)以下のときにカプセルを破壊することが出来るので、ユーザーが従来よりもカプセルを破壊しやすいと感じることが出来る。 [0060] 従来の埋め込みフィルターを有するシガレットにおいてはカプセル箇所43におけるフィルターの存在により大きな「わりにくい」感覚を与える傾向にあったため、本発明の適用が特に有効である。 [0061] また、一般的に埋め込みフィルターを有するシガレットにおいては、セルロースアセテート繊維などをロッド状に凝集形成してフィルタープラグを作成する工程において、繊維を凝集する際にカプセルを繊維内に配置して作成される。 [0062] 従って、その様にして作成された第二実施形態におけるフィルター付きシガレットにおいてはカプセル比が0.55≦B/A≦0.75であることによって、カプセル位置のフィルタープラグが従来よりも押し固められるのでユーザーの指による圧力がカプセルに伝達しやすくなり、よりいっそうユーザーがカプセルを割りやすいと感じることができる。 [0063] カプセルの割りやすさとユーザーがシガレットを吸引する際に感じる通気抵抗の関係を鑑みると、カプセル比が0.55≦B/A≦0.70の場においては、カプセルの割りやすさを維持しながら通気抵抗もほど良くすることができる(通気抵抗が高すぎると吸引が困難となり、通気抵抗が低すぎると吸引している感じが得にくい。)という点で好ましい。 [0064] また、本実施形態においても前述のとおり、本発明はチップペーパーの外周長さが25mm以下、23mm以下、17mm以下、15mm以下と小さくなればそれに応じてより好適に適用できる。」 4.引用文献4について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0073】 流量制限要素26は、直径が小さい単一の中央オリフィス38が設けられた横方向障壁36を更に含む。図2に示すように、横方向障壁36は、流量制限要素26の第1及び第3の管状部分30、34の内側周囲によって少なくとも部分的に形成された第1の上流側空洞40と、流量制限要素の第2の管状部分32の内側周囲によって部分的に形成された第2の下流側空洞42との間に配置される。」 5.引用文献5について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0048】 また、本発明では、たばこフィルタの通気抵抗を増大させることなく、たばこフィルタ内に前記たばこフィルタ用素材を組み込むことができる。そのため、本発明のたばこフィルタは、たばこ煙用に適した通気性を有しており、たばこフィルタの通気抵抗は、長さ120mm、円周24.5±0.2mmのたばこフィルタを、流量17.5ml/秒で空気を通過させたときの圧力損失で測定したとき、150?600mmWG(ウォーターゲージ)の範囲から選択でき、例えば、160?300mmWG、好ましくは170?250mmWG、さらに好ましくは170?190mmWG程度であってもよい。 また、本発明のたばこは、前記たばこフィルタ(又はたばこフィルタ用素材)を備えている。」 6.引用文献6について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。 「本発明のフイルター用プラグは第4図に示す如き独特な構造を有しているものであり、この構造によつて発現される第1の効果はその通気抵抗と使用トウ量との関係である。この点を立証するため、本発明のフイルター用プラグと従来のプレーンフイルター用プラグと比較してその通気抵抗とトウ使用量との関係を第5図に示した。繊維集合体としては、単繊維が2.2デニールのY型断面よりなるアセテート・トウを用いた。フイルター用プラグの形状は円周24.7mm、長さ120mmとした。」(公報第2ページ左下欄第14行?右下欄第4行) 第5 当審の判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、 引用発明の「フィルタ」・「マルチセグメントフィルタ」、 「マウスエンドのフィルタセグメント」・「ロッドエンドのフィルタセグメント」、 「酢酸セルローストウ」、 「吸引抵抗(RTD)」、 「ロッド」、 「穿孔」、 及び「メントール」は、 それぞれ、本願発明1の「フィルター部」、 「セグメント」、 「セルロースアセテートトウ」、 「通気抵抗」、 「たばこロッド部」、 「ベンチレーション孔」、 及び「メンソール」に相当する。 また、引用発明の、「少なくとも1つの煙改質剤が充填された非層状基材を含み、前記非層状基材が、メントールが充填された中心香味担持スレッドからな」る「マウスエンドのフィルタセグメント」と、「メントールが充填された複数の粒体を有する高濾過効率の酢酸セルローストウのプラグであ」る「ロッドエンドのフィルタセグメント」とからなる「マルチセグメントフィルタ」を有する「低タール通気式フィルタ付きシガレット」は、低タールメンソールシガレットといえるから、引用発明の「約4mgと約6mgの間のタール送達を有する低タール通気式フィルタ付きシガレット」と、本願発明1の「タール量が5mg以下の低タールメンソールシガレット」とは、「タール量が5mg以下4mg以上の低タールメンソールシガレット」との限りで一致している。 引用発明の「フィルタセグメント」は、「マウスエンドのフィルタセグメント」と「ロッドエンドのフィルタセグメント」とからなる「マルチセグメントフィルタ」とされているが、「ロッドエンドのフィルタセグメント」は、「酢酸セルローストウのプラグ」からなり、単一のセグメントをなすものである。そうすると、引用発明の「フィルタセグメント」は、本願発明1の「前記フィルター部はセルロースアセテートトウで構成された単一のセグメントを含」むものに相当する。 引用発明の「長さ15mmで吸引抵抗(RTD)が56mmWGである、マウスエンドのフィルタセグメント」と、「長さが12mmで吸引抵抗(RTD)が50mmWGである、ロッドエンドのフィルタセグメントとを含む、マルチセグメントフィルタ」は、マルチセグメントフィルタとして、両者を併せてみると、長さが27mmで、吸引抵抗が106mmWGといえる。そうすると、引用発明の「長さ15mmで吸引抵抗(RTD)が56mmWGである、マウスエンドのフィルタセグメント」と、「長さが12mmで吸引抵抗(RTD)が50mmWGである、ロッドエンドのフィルタセグメントとを含む、マルチセグメントフィルタ」と、本願発明1の「前記フィルター部の通気抵抗が25?50mmH_(2)O/27mmである」こととは、「前記フィルター部が通気抵抗を有する」との限りで一致する。 また、引用発明の「穿孔」がベンチレーションの役割をすることは明らかであるから、引用発明の「消費者によって喫煙可能材料のロッドからフィルタを通って吸い込まれる主流煙を通気するために、フィルタに沿った場所において穿孔の少なくとも1つの円周の列を含み、 穿孔の少なくとも1つの円周の列は、フィルタのマウスエンドから少なくとも12mmに配置され」ていることと、本願発明1の「前記チップペーパーに穿設されたベンチレーション孔」があることとは、「穿設されたベンチレーション孔」があることとの限りで一致する。 引用発明の「ISO9512:2002で測定する場合に約40%と約80%の間の通気を有することが好ましく、約70%の通気を有し」ていることと、本願発明1の「ベンチレーション孔からの空気流入のベンチレーション割合が70%以上であ」ることとは、「ベンチレーション孔からの空気流入のベンチレーション割合が70%以上80%以下であ」る限りで一致する。 引用発明の「前記非層状基材が、メントールが充填された中心香味担持スレッドからな」る「マウスエンドのフィルタセグメント」は、「マウスエンドフィルタセグメントの下流を通過し、ここで、酢酸セルローストウはまた、部分的に煙の粒子相成分を濾過して取り除き、更にメントールは、酢酸セルローストウを通って軸方向に延びる中心香味担持スレッドから主流煙の中に放出される」態様を有し、「メントールが充填された複数の粒体を有する高濾過効率の酢酸セルローストウのプラグであ」る「マルチセグメントフィルタのロッドエンドフィルタセグメント」は、「ここで、高濾過効率の酢酸セルローストウは、部分的に煙の粒子相成分を濾過して取り除き、メントールは、酢酸セルローストウに分配された粒体から主流煙の中に放出され」る態様を有することと、本願発明1の「前記フィルター部のセルロースアセテートトウに収着させることでメンソールが添加されている」こととは、「前記フィルター部にメンソールが添加されている」ことの限りで一致する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「たばこロッド部と、フィルター部を有する、タール量が5mg以下4mg以上の低タールメンソールシガレットであって、前記フィルター部はセルロースアセテートトウで構成された単一のセグメントを含み、前記フィルター部が通気抵抗を有し、穿設されたベンチレーション孔からの空気流入のベンチレーション割合が70%以上80%以下であり、フィルター部にメンソールが添加されている、低タールメンソールシガレット。」 (相違点) フィルター部について、本願発明1は、「チップペーパーで巻装された」ものであり、「ベンチレーション孔」が「チップペーパーに穿設された」ものであり、「通気抵抗が25?50mmH_(2)O/27mmである」とともに、「前記フィルター部のセルロースアセテートトウに収着させることでメンソールが添加されている」のに対して、引用発明は、フィルタプラグラップを有するものの、チップペーパーを備えるかは不明であり、また、マルチセグメントフィルタの吸引抵抗が106mmWG/27mmであり、「マウスエンドのフィルタセグメント」は、「少なくとも1つの煙改質剤が充填された非層状基材を含み、前記非層状基材が、メントールが充填された中心香味担持スレッドからな」り、また、「ロッドエンドのフィルタセグメント」に「メントールが充填された複数の粒体」によりメンソールが添加されている点。 (2)相違点についての判断 本願発明1は、「フィルター部のセルロースアセテートトウに収着させることでメンソールが添加されている」ものであり、「収着」について、本願明細書には、具体的に定義はないが、一般に、「吸収と吸着とが同時に行われること。」(広辞苑第六版)からして、本願発明1は、セルロースアセテートトウにメンソールが吸収及び吸着とが同時に行われている態様のものであるといえる。 一方、引用発明は、「少なくとも1つの煙改質剤が充填された非層状基材を含み、前記非層状基材が、メントールが充填された中心香味担持スレッドからな」り、また、「メントールが充填された複数の粒体によりメンソールが添加されてい」るものであって、フィルター部のセルロースアセテートトウにメンソールが収着されている態様とは異なるものといえる。 そして、本願発明1は、フィルター部のセルロースアセテートトウにメンソールが収着されているものについて、「メンソール製品の中でも特に低タールシガレットの喫煙時の煙中メンソール量や、蔵置後の煙中メンソール量の安定性を高められる」(本願明細書【0006】)、「本発明では、喫煙時の煙中メンソール量が高められていると共に、蔵置後の煙中メンソール量の変化が少ない低タールメンソールシガレットを提供する。」(本願明細書【0007】)との課題を解決するために、穿設されたベンチレーション孔からの空気流入のベンチレーション割合が70%以上のものにおいて、上記相違点における、「通気抵抗が25?50mmH_(2)O/27mm」とすることで上記課題の解決手段とするものである。 そして、本願発明1は、上記相違点に係る本願発明の特定事項を採用することにより、空気流入のベンチレーション割合が高いシガレット設計にすることで、煙中メンソール量が高くなることを実証し(本願発明【0033】)、フィルターの通気抵抗が低いフィルターを使用することで、煙中メンソール量が安定して維持されやすいことを実証し(本願明細書【0041】)、さらに、通気抵抗の低いフィルターに対してベンチレーションの割合が高い条件と併せて供した場合においても、「前記フィルター部の通気抵抗が25?50mmH_(2)O/27mmであるとともに、前記チップペーパーに穿設されたベンチレーション孔からの空気流入のベンチレーション割合が70%以上であ」る態様とすることで、煙中メンソールの量が高くなり且つ蔵置後においてもメンソールが安定して維持されやすいシガレットを作製することが可能となることが確認されている(本願明細書表5、図1)。 そうすると、引用発明において、メンソールの添加状態の異なる低タール通気式フィルタ付きシガレットにおいて、上記相違点に係る本願発明1の特定事項を採用する動機付けがあるとはいえず、他の引用文献2?6を参照しても、示唆するところはない。 また、引用文献1?6をみても、上記相違点に係る本願発明1の特定事項が、当業者が適宜なし得る設計的事項ということはできない。 そうすると、引用発明において、相違点に係る本願発明1の特定事項を採用することが、引用発明、引用文献2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。 したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2?5について 本願発明2?5も、上記相違点に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-07-30 |
出願番号 | 特願2016-511604(P2016-511604) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A24D)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 沼田 規好、西田 侑以 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 槙原 進 |
発明の名称 | 低タールメンソールシガレット |
代理人 | 本間 博行 |
代理人 | 菅家 博英 |
代理人 | 丹羽 武司 |
代理人 | 佐貫 伸一 |
代理人 | 今堀 克彦 |