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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C03C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C01B
管理番号 1353744
審判番号 不服2018-10448  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-01 
確定日 2019-07-24 
事件の表示 特願2016-531586「超親水性コーティングを調製する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 5日国際公開、WO2015/016777、平成28年 9月15日国内公表、特表2016-528149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年7月29日、シンガポール)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 2月26日付け:翻訳文の提出
平成29年 7月27日付け:拒絶理由の通知
平成29年11月13日付け:意見書、手続補正書の提出
平成30年 3月27日付け:拒絶査定
平成30年 8月 1日付け:審判請求書、手続補正書の提出
第2 本願発明について
本願の請求項1?9に係る発明は、平成30年8月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「二酸化ケイ素から本質的に構成されているメソ多孔性の超親水性コーティングを調製する方法であって、前記超親水性コーティングに存在する微量の他の物質は原子組成百分率で0.5at%未満であり、二酸化ケイ素は、各々が10nm?50nmの範囲の大きさを有するアイランドとして存在しており、前記方法は、
a)フッ素含有ケイ素錯体及びフッ素捕捉剤を含む過飽和の水性混合物であって、前記過飽和の水性混合物中のフッ素含有ケイ素錯体の濃度は0.02M?0.1Mの範囲にあり、前記過飽和の水性混合物中のフッ素捕捉剤の濃度は0.06M?0.3Mの範囲にある過飽和の水性混合物を提供することと;
b)基材を、約100℃未満の温度で、二酸化ケイ素アイランドを形成するのに十分な時間にわたり前記過飽和の水性混合物と接触させて、基材上に前記メソ多孔性の超親水性コーティングを得ることと
を含む方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるか、又は、当該発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により特許を受けることができない、というのが原査定の拒絶の理由である。
引用文献1:特開平10-158010号公報
第4 引用文献に記載された発明
1 引用文献1
引用文献1には、次の記載がある(当審注:「・・・」は、記載の省略を表す。)。
(1)本発明は、水溶液中での析出現象を利用して酸化珪素含有溶液と基材とを接触させて基材の表面に酸化珪素被膜を形成する酸化珪素被膜の製造方法に関するものである。(【0001】)
(2)・・・酸化珪素含有溶液1は、ケイフッ化アンモニウムを含む水溶液中に、可逆反応である(NH_(4))_(2)SiF_(6)+2H_(2)O⇔SiO_(2)+4HF+2NH_(4)Fの平衡を右に進める添加剤を添加して調製することができる(⇔の記号は可逆反応を示す)。・・・フッ素と反応して水溶性の安定した錯体を形成させるために・・・ほう酸(H_(3)BO_(3))を用いるのが好ましい。(【0009】)
(3)酸化珪素含有溶液1中のケイフッ化アンモニウムの濃度は0.05?1.0モル/リットルであることが好ましい。ケイフッ化アンモニウムの濃度が0.05モル/リットル未満であれば、所定の膜厚の酸化珪素被膜3を得るまでに長時間かかることになり、またケイフッ化アンモニウムの濃度が1.0モル/リットルを超えると、溶液がゲル化して酸化珪素被膜3が得られないという問題が生じる恐れがあり、好ましくない。(【0010】)
(4)・・・添加剤の使用量が少な過ぎると酸化珪素(シリカ)が基材の表面に析出しない恐れがあり、多過ぎると水溶液中に酸化珪素の沈澱物が生じると共に均一な厚みの酸化珪素被膜を形成することができない恐れがある。従って添加剤としてほう酸を用いる場合は、酸化珪素含有溶液1中のほう酸の濃度が0.1?0.5モル/リットルとなるようにほう酸をケイフッ化アンモニウムを含む水溶液に添加するのが好ましい。(【0011】)
(5)・・・適当な大きさの反応容器10に調製後直ぐの酸化珪素含有溶液1を入れ、酸化珪素含有溶液1中に直ちに基材2を浸漬する。そして浸漬後10?50時間放置することによって基材2の表面に酸化珪素(SiO_(2))を析出させて、図1に示すように基材2の表面に所定の膜厚(10?1000nm)の酸化珪素被膜3を形成する。基材2を浸漬させている間の酸化珪素含有溶液1の温度(反応温度)は40℃以上である。・・・(【0013】)
(6)(実施例1)縦、横の長さが50mm、厚さが1.3mmの無アルカリガラス・・・を十分に洗浄、乾燥し、試料の基材2とした。濃度が0.4モル/リットルの(NH_(4))_(2)SiF_(6)水溶液を62.5ミリリットル用意し、これに濃度が0.5モル/リットルのほう酸水溶液を100ミリリットル加え、これを水で希釈して250ミリリットルの酸化珪素含有溶液1を調製した。この酸化珪素含有溶液1中の(NH_(4))_(2)SiF_(6)の濃度は0.1モル/リットルで、またほう酸の濃度は0.2モル/リットルであった。・・・
次に酸化珪素含有溶液1を50℃にした後、直ちに上記基材2を垂直に浸漬した。この際基材2の下部40mmの部分まで浸漬し、上部10mmの部分は酸化珪素含有溶液1に接触しないようにして保持した。20時間経過後、基材2を引き上げて水で洗浄して乾燥することによって、基材2の表面(浸漬した部分のみ)に厚み50nmの酸化珪素被膜3を形成した。・・・(【0019】-【0020】)
2 引用発明
上記(6)の記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「(NH_(4))_(2)SiF_(6)の濃度が0.1モル/リットルであり、ほう酸の濃度が0.2モル/リットルである酸化珪素含有水溶液を、50℃にした後、ガラス基材を20時間浸漬し、厚み50nmの酸化珪素被膜を形成する方法。」
第5 発明の対比
本願明細書の【0017】では、「フッ素含有ケイ素錯体」の一種として「(NH_(4))_(2)SiF_(6)」が紹介されており、また、同【0020】では、「フッ素捕捉剤」の一種として「ホウ酸」が紹介されている。
以上を踏まえて本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「(NH_(4))_(2)SiF_(6)」は前者の「フッ素含有ケイ素錯体」に相当し、以下同様に、「モル/リットル」は「M」に、「ほう酸」は「フッ素捕捉剤」に、「酸化珪素含有水溶液」は「水性混合物」に、「浸漬」は「接触」に、「酸化珪素被膜」は「二酸化ケイ素から本質的に構成されているコーティング」にそれぞれ該当する。
したがって、両者は、下記の点で一致し、下記の点で一応相違する。
<一致点>
「フッ素含有ケイ素錯体及びフッ素捕捉剤を含む水性混合物であって、水性混合物中のフッ素含有ケイ素錯体の濃度は0.02M?0.1M、フッ素捕捉剤の濃度は0.06M?0.3Mの範囲にある水性混合物を提供することと、
基材を、約100℃未満の温度で水性混合物と接触させて、基材上に二酸化ケイ素から本質的に構成されているコーティングを得ることと
を含む方法。」
<相違点>
相違点1:本願発明は、「メソ多孔性」で、「二酸化ケイ素が10nm?50nmの範囲の大きさを有するアイランドとして存在」し、「超親水性」を有するコーティングを調製する方法であり、「二酸化ケイ素アイランドを形成するのに十分な時間にわたり」基材を水性混合物と接触させるのに対し、引用発明は、厚み50nmの酸化珪素被膜を形成する方法であり、20時間ガラス基材を酸化珪素含有水溶液に浸漬する点。
相違点2:本願発明は「コーティングに存在する微量の他の物質は原子組成百分率で0.5at%未満」であるのに対し、引用発明では被膜中の他の物質の量が不明である点。
相違点3:本願発明は「過飽和の」水性混合物を使用するのに対し、引用発明の酸化珪素含有水溶液が過飽和であるか不明である点。
第6 相違点の判断
上記第5の相違点1?3について検討する。
まず、相違点1について、本願発明のコーティングのアイランド等の構造は、本願発明の実施例の記載から、0.1Mの(NH_(4))_(2)SiF_(6)と0.3Mのホウ酸を含有する水性混合物を使用した場合には、50℃で16時間ガラス基材を溶液中に吊り下げることにより得られるものと認められる(【0052】-【0053】参照)。
そこで、当該本願発明の実施例に係る製造条件と引用発明の製造条件とを対比すると、(NH_(4))_(2)SiF_(6)の濃度_(、)基材の材質及び液温において差異はなく、引用発明は、ほう酸の濃度について0.1M低いものの、基材を酸化珪素含有水溶液に浸漬する時間が4時間長い。
してみると、上記第4の1(4)(5)の記載からみて、ほう酸濃度が低いことで、酸化珪素の析出が遅くなるものの、浸漬時間が長いことにより、その分析出時間が担保されていると考えられるから、結果として、引用発明でも本願発明の実施例と同程度の被膜が形成されていると認められる。
さらに、引用発明で形成された膜厚は50nmであり、当該膜厚は析出物の大きさに相当すると考えられるから、このことからも引用発明で酸化珪素について10nm?50nmの範囲の大きさを有するアイランドが形成されているものと認められる。
すなわち、その製造条件及び膜厚からみて引用発明により得られた被膜もまた、「メソ多孔性」で、「二酸化ケイ素が10nm?50nmの範囲の大きさを有するアイランドとして存在」していると考えられる。そして、下記の参考文献1、2に記載のとおり、酸化珪素被膜が親水性を示すことは周知であるから、当該被膜が「超親水性」を有することは当業者に自明なことといえる。
参考文献1:海妻良浩著、「パルスプラズマ化学気相成長法を用いた親水性
酸化珪素膜の形成」、2007年、真空、50巻10号、63
5?638ページ
参考文献2:西田雅樹ほか、「ナノレベルの二酸化ケイ素膜を材料表面に形
成させる処理(イトロ処理)とその効果」、2005年、第5
5回ネットワークポリマー講演討論会講演要旨集、227?2
28ページ
なお、仮に、引用発明において、アイランドの大きさが10?50nmの範囲にないとしても、上記第4の1(4)(5)に記載のとおり、引用発明におけるほう酸の濃度を0.3Mにすることや浸漬する時間を16時間とすることで、析出物であるアイランドの大きさを変更することは、当業者が容易になし得ることである。
次に、相違点2について、引用発明は酸化珪素被膜を形成することを目的としており、上記相違点1の検討で示したとおり、製造条件も同等であるから、引用発明においても、本願発明と同様に被膜中には他の物質が0.5at%未満しか含まれないと考えられる。
最後に、相違点3について、本願発明の「過飽和」とは、水性混合物に含有される(NH_(4))_(2)SiF_(6)やホウ酸の飽和溶解度からみて、これらが過飽和であることを意味するものではなく、二酸化ケイ素が過飽和になって、二酸化ケイ素の析出が可能であることを指す用語であると考えるのが自然であるから、この点において本願発明と引用発明に相違があるとは認められない。
ここで、請求人は引用文献1の【0015】にある「シリカを飽和させる
作業や濾過する作業を必要としない」との記載を捉えて、引用発明で利用される酸化珪素含有水溶液が過飽和でない旨を主張しているが、同【0015】の「飽和」は、従来例のケイフッ化水素酸に対するシリカの飽和を指すものであって、引用発明の酸化珪素含有水溶液が過飽和であるか否かを説明するものではないと考えられる。
したがって、相違点1?3は、実質的な相違点とはいえない。また、相違点1については、仮に実質的な相違があったとしても、引用文献1に記載された技術的事項からみて、当業者にとって設計的事項の範囲内のものといえる。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるか、当該発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから、本願は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-21 
結審通知日 2019-02-26 
審決日 2019-03-11 
出願番号 特願2016-531586(P2016-531586)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C01B)
P 1 8・ 113- Z (C03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 史泰増山 淳子  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 蛭田 敦
後藤 政博
発明の名称 超親水性コーティングを調製する方法  
代理人 恩田 誠  
代理人 本田 淳  
代理人 恩田 博宣  
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