• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1353774
審判番号 不服2018-11287  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-21 
確定日 2019-08-15 
事件の表示 特願2015- 71379「SO3分析方法および分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-191616、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成27年3月31日の出願であって、平成29年9月12日付けで拒絶理由が通知され、同年11月27日に意見書が提出されたが、平成30年4月13日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対して、同年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
その後、当審において令和元年5月10付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月21日に意見書及び手続補正書が提出された。


第2 本願発明

本願の請求項1ないし8に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和元年6月21日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである。

「 【請求項1】
除塵処理、除湿処理、減圧処理のいずれも行わないSО_(3)およびCO_(2)およびH_(2)Oを含む排ガスに対し、レーザ光を照射する照射手段と、
前記排ガスに照射され当該排ガスを透過したレーザ光を受光する受光手段と、
前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段と、
前記受光手段からの出力と前記波長制御手段からの参照信号を基に赤外分光法によりSО_(3)濃度を演算するSО_(3)濃度演算手段とを備える
ことを特徴とするSО_(3)分析装置。」

なお、本願発明2ないし8の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明8は、本願発明1に対応する方法に係る発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。


第3 引用文献の記載事項、引用発明

1 引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2001-289783号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

(引1-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、排ガス中のSO_(3)濃度測定方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガスタービンコンバインドサイクルプラントやボイラ等においては、石炭、オリマルジョン、油等のように硫黄分を含有する燃料を用いる場合がある。このような硫黄分を含有する燃料を燃焼させると排ガス中にSO_(3)が生じ、このSO_(3)は、高温腐食や低温腐食の原因となっている。
【0003】ガスタービンコンバインドサイクルプラントのガスタービン入口の温度は通常略700?900℃程度の範囲にあり、この温度域においては、SO_(3)によりCOSO_(4)、NiSO_(4)等が生じて、タービンブレードを高温腐食させるという問題がある。
【0004】このため、従来、このようなガスタービンコンバインドサイクルプラントでは、経験則からタービンブレードの寿命を予測し、定期的にタービンブレードの点検、交換を行っていた。
【0005】又、ボイラにおいては、ボイラ火炉の出口温度は通常略150?400℃程度の範囲にあり、この温度域においては、SO_(3)によりH_(2)SO_(4)が生じて、排ガス煙道、下流のガス空気予熱器や集塵器等を低温腐食させるという問題がある。又、上記したSO_(3)は、煙突から紫煙を発生する原因とされており、この問題に対しても対処する必要がある。
【0006】上記した問題に対処するべく、従来から排ガス中のSO_(3)を測定する方法が実施されている。
【0007】従来の排ガス中のSO_(3)を測定する方法は、排ガスをサンプリングし、除塵、除湿等を行った、サンプリングガスを水に通してSO_(3)を水中に溶解させ、その後SO_(3)が溶解した水を手分析による化学分析を行ってSO_(3)を定量している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の排ガス中のSO_(3)濃度測定方法は、排ガスをサンプリングし手分析によってSO_(3)を定量する方法であるために、測定に30分?1時間の測定時間を要し、計測時間に遅れが生じるという問題を有していた。又、サンプリングした排ガスの除塵、除湿等を行っているために、排ガス煙道中の排ガスとは性状が異なった状態で測定されてしまう可能性があるという問題を有していた。
【0009】このように、従来においては、煙道の排ガス中のSO_(3)を、オンラインで計測できる方法の開発が望まれていたが、このような方法は存在しなかった。
【0010】本発明は、かかる従来方法のもつ問題点を解決すべくなしたもので、排ガス煙道のSO_(3)濃度をオンラインで測定することができるようにした排ガス中のSO_(3)濃度測定方法及び装置を提供することを目的としている。」

(引1-イ)「【0021】本発明者らは、SO_(3)が紫外域の光に吸収スペクトルを持ち、しかもその吸収スペクトルの強度がSO_(3)の濃度に対応することを見出し、この関係を用いることにより、排ガス中のSO_(3)濃度をオンラインで測定できる方法及び装置を完成した。
【0022】図1は、高温腐食が生じる温度域での排ガス中のSO_(3)濃度を測定する方法を実施するための試験計測装置の一例を示したものである。
【0023】図1に示すように、試験計測装置1は、試験空間2を有する吸収セル3と、少なくともSO_(3)の吸収域をカバーする紫外域の光を投射するランプあるいはレーザ等の光源を備えた集光光学系4と、該集光光学系4からの紫外光を前記吸収セル3の一端に備えた石英の透過板5から試験空間2に入射し、吸収セル3の他端に備えた反射鏡6により反射させて透過板5から外部の受光光学系7に導き、透過光を分光器8に導入するようにしている。
【0024】前記吸収セル3は、SO_(3)の含有濃度を変化させたガスを供給できる濃度調整装置9に、弁11を備えた供給管10を介して接続されていると共に、吸収セル3には弁11を備えた排出管12が接続されており、吸収セル3の試験空間2のSO_(3)濃度を任意に調整できるようにしている。
【0025】又、吸収セル3には、温度コントローラ13が設けられていて試験空間2のSO_(3)ガスの温度を調整できるようになっている。14は温度モニタ、15は圧力計である。
【0026】前記分光器8にはCCD16、分光器コントローラ17が備えられて試験計測部18が構成されており、試験計測部18にて計測した吸収スペクトルが演算装置19に入力されている。演算装置19には、試験空間2のSO_(3)濃度を種々変化させた場合の吸収スペクトルと、温度コントローラ13により温度を種々変化させたときの吸収スペクトルが入力されており、更に、SO_(3)の吸収スペクトル計測時にノイズとなるSO_(2)等の有害ガスの影響を計測したノイズ成分20が入力されており、演算装置19は、SO_(3)濃度と吸収スペクトルとの校正特性21を出力するようになっている。
【0027】一方、図2?図4は、高温腐食が生じる温度域での排ガス中のSO_(3)濃度を計測するための煙道22に備える実計測装置23を示している。
【0028】実計測装置23は、前記試験計測装置1と類似した構成を有しており、前記集光光学系4と受光光学系7と同様に対の構成を有して、煙道22のガス流路と直交する面において幅方向(図2の左右)に3個の集光光学系4aと受光光学系7aを、前後方向(図2の上下)に2個の集光光学系4bと受光光学系7bを配置している。
【0029】図2中24は、集光光学系4に接続された電源、25は、受光光学系7に光ファイバ26を介して接続された分光器8と、CCD16と、分光器コントローラ17とからなる実計測部である。
【0030】27は、実計測部25の分光器コントローラ17に接続された濃度演算装置であり、該濃度演算装置27には、前記図1の演算装置19によって得られた校正特性21が入力されると共に、煙道22に設けた温度計28からの排ガス温度29が入力されるようになっている。
【0031】図3は、前記煙道22に備えている集光光学系4a,4bの一例を示しており、煙道22の側壁に管台状に形成した計測口30のフランジ31に取り付けられている。図3の集光光学系4a,4bは、ケーシング32の内部に、少なくともSO_(3)の吸収域をカバーする紫外域の光を投射するキセノンランプ33、細口34を有するプレート35、光をパルス的に投射するためのチョッパー36、必要紫外域の光のみを透過させてノイズを防止するカットオン等のフィルタ37、レンズ38、前記フランジ31との間に挟持するようにした光学窓39、光学窓39の計測口30側に空気を吹き付けるパージ管40とを備えている。41はケーシング32内の温度の上昇を防止する空冷ファンである。
【0032】図4は、前記煙道22に備えている受光光学系7a,7bの一例を示しており、煙道22の側壁に前記計測口30と対抗するように設けられた計測口42のフランジ43に取り付けられている。図4の受光光学系7a,7bは、前記計測口42のフランジ43との間に光学窓44を挟むようにしたケーシング45を備えており、該ケーシング45の内部に、必要紫外域の光のみを透過させてノイズを防止するカットオン等のフィルタ46と受光部47とを備えている。受光部47は前記光ファイバ26に接続されている。光学窓39の計測口30側にも空気を吹き付けるパージ管40を備えている。
【0033】なお、前記図3の集光光学系4a,4b及び図4の受光光学系7a,7bの構成は、図1の試験計測装置1の構成にも適用することができる。
【0034】又、図5は、低温腐食が生じる温度域での排ガス中のSO_(3)濃度を測定する方法を実施するための試験計測装置48の一例を示したものである。この試験計測装置48は、吸収セル3に供給するSO_(3)を含有するガス中の水分濃度を調整する水分付加装置49を備えていることと、吸収セル3内のガス中の水分濃度を検出する水分モニタ50を備えていること以外は図1の試験計測装置1と同一である。
【0035】又、図6は、低温腐食が生じる温度域での排ガス中のSO_(3)濃度を測定する方法を実施するための煙道22に備える実計測装置51の一例を示したものである。この実計測装置51は、吸収セル3(当審注:【図6】の記載及び前後の文脈からみて、「吸収セル3」は「煙道22」の誤記と認める。)内のガス中の水分濃度を検出する水分計52を備えて検出した水分濃度53を濃度演算装置27に入力していること以外は図2の実計測装置23と同一である。
【0036】又、図6では、対をなして幅方向と前後方向に配置した集光光学系4a,4bと受光光学系7a,7bに対して、斜めに交差する方向の集光光学系4cと受光光学系7cを対で設けた場合を示している。」

(引1-ウ)「【0048】次に、低温腐食が生じる温度域、例えば150?400℃での排ガス中のSO_(3)濃度を測定する場合の方法について説明する。
【0049】ボイラのこのような温度条件の排ガスの場合には、通常12%前後の水分を含有しており、このような排ガスにおいては、排ガス中のSO_(3)は十分な水分に対して飽和雰囲気にあるために反応してH_(2)SO_(4)となる。この点について調査したところ、図10に示すような愕化学平衡曲線が得られた。化学平衡的には、400℃以下の低温度は、SO_(3)と水分が反応して一部のSO_(3)がH_(2)SO_(4)蒸気に変化している。このときの変化域Xは、調度ボイラの出口温度域に一致している。
【0050】まず、図5において、濃度調整装置9により所定濃度のSO_(3)ガスを吸収セル3内に供給して密閉した状態において、集光光学系4から発せられる紫外光を試験空間2に通過させ、SO_(3)によって光強度が変化した透過光を受光光学系7により取り出し、得られた透過光を試験計測部18の分光器8で分光することにより、吸収セル3内の光路上に存在するSO_(3)濃度に比例する吸収スペクトルが計測される。
【0051】このような試験計測を、SO_(3)濃度を変化させて複数回実施することにより各々の吸収スペクトルを得ると共に、温度コントローラ13によりガス温度を変化させて複数回実施することにより複数の吸収スペクトルを得、更に、水分付加装置49により水分濃度を変化させて得た吸収スペクトルを夫々演算装置19に入力し、更に妨害ガス等によるノイズ成分を求め、上記吸収スペクトルの強度とノイズ成分とを用いてケモメトリックス法により、SO_(3)濃度と吸収スペクトルとの校正特性21を得る。
【0052】一方、図6に示したように煙道22に備えた実計測装置23(当審注:【図6】の記載及び前後の文脈からみて、「実計測装置23」は「実計測装置51」の誤記と認める。)の各集光光学系4a,4b,4cから発せられる紫外光を煙道22内に通過させ、SO_(3)によって光強度が変化した透過光を受光光学系7a,7b,7cにより取り出し、得られた透過光を実計測部25の分光器8で分光することにより、煙道22内の光路上に存在するSO_(3)濃度に比例する実吸収スペクトルを計測し、計測した実吸収スペクトルを濃度演算装置27に入力する。又、温度計28により検出した排ガス温度29を濃度演算装置27に入力すると共に、水分計52により検出した水分濃度53濃度演算装置27に入力する。
【0053】濃度演算装置27には、前記図1(当審注:前後の文脈からみて、「図1」は「図5」の誤記と認める。)の演算装置19で得られた校正特性21が入力されているので、濃度演算装置27は、実吸収スペクトルと、排ガス温度29と、水分濃度53とを、前記校正特性21と照合することにより、排ガス中のSO_(3)濃度を高精度に測定することができる。試験の結果、SO_(3)濃度を1ppmの単位で測定することができた。」

(引1-エ)【図3】




(引1-オ)【図4】




(引1-カ)【図6】




(2)
ア (引1-イ)には、集光光学系4c及び受光光学系7cの構造に関する詳細な記載はなく、集光光学系4a,4b及び受光光学系7a,7bと異なる構造としなければならない特段の事情があるとも認められないことから、集光光学系4c及び受光光学系7cの構造は、それぞれ集光光学系4a,4b及び受光光学系7a,7bと同じ構造であると解するのが相当である。

イ 上記アを踏まえると、上記(引1-ア)ないし(引1-カ)の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 低温腐食が生じる温度域での排ガス中のSO_(3)濃度を測定するための煙道22に備える実計測装置51であって、
煙道22のガス流路と直交する面において幅方向に3個の集光光学系4aと受光光学系7aを、前後方向に2個の集光光学系4bと受光光学系7bを配置してあり、
対をなして幅方向と前後方向に配置した集光光学系4a,4bと受光光学系7a,7bに対して、斜めに交差する方向の集光光学系4cと受光光学系7cを対で設けてあり、
集光光学系4a,4b,4cは、煙道22の側壁に管台状に形成した計測口30のフランジ31に取り付けられていて、ケーシング32の内部に、少なくともSO_(3)の吸収域をカバーする紫外域の光を投射するキセノンランプ33、細口34を有するプレート35、光をパルス的に投射するためのチョッパー36、必要紫外域の光のみを透過させてノイズを防止するカットオン等のフィルタ37、レンズ38、前記フランジ31との間に挟持するようにした光学窓39、光学窓39の計測口30側に空気を吹き付けるパージ管40とを備えており、
受光光学系7a,7b,7cは、煙道22の側壁に前記計測口30と対抗するように設けられた計測口42のフランジ43に取り付けられていて、前記計測口42のフランジ43との間に光学窓44を挟むようにしたケーシング45を備えており、該ケーシング45の内部に、必要紫外域の光のみを透過させてノイズを防止するカットオン等のフィルタ46と受光部47とを備えており、
実計測部25は、受光光学系7に光ファイバ26を介して接続された分光器8と、CCD16と、分光器コントローラ17とからなり、
濃度演算装置27は、実計測部25の分光器コントローラ17に接続されており、
該濃度演算装置27には、試験計測装置48の演算装置19で得られたSO_(3)濃度と吸収スペクトルとの校正特性21が入力されると共に、煙道22に設けた温度計28からの排ガス温度29が入力されるようになっており、
煙道22内のガス中の水分濃度を検出する水分計52を備えて検出した水分濃度53を濃度演算装置27に入力するようになっており、
各集光光学系4a,4b,4cから発せられる紫外光を煙道22内に通過させ、SO_(3)によって光強度が変化した透過光を受光光学系7a,7b,7cにより取り出し、得られた透過光を実計測部25の分光器8で分光することにより、煙道22内の光路上に存在するSO_(3)濃度に比例する実吸収スペクトルを計測し、計測した実吸収スペクトルを濃度演算装置27に入力し、
温度計28により検出した排ガス温度29を濃度演算装置27に入力すると共に、水分計52により検出した水分濃度53を濃度演算装置27に入力し、
濃度演算装置27は、実吸収スペクトルと、排ガス温度29と、水分濃度53とを、校正特性21と照合することにより、排ガス中のSO_(3)濃度を高精度に測定することができる、
実計測装置51。」

2 引用文献2について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(Buzykin O. G.,“Spectroscopic Detection of Sulfer Oxides in the Aircraft Wake”,Journal of Russian Laser Research,米国,Springer,2005年,Vol.26, No.5,p.402-426)には、次の事項が記載されている(翻訳は、当審で作成したものである。(引2-エ)の「SO_(3) (sulfur trioxide).」以外の下線は、当審で付加した。)。

(引2-ア)第402頁1?2行
「SPECTROSCOPIC DETECTION OF SULFUR OXIDES IN THE AIRCRAFT WAKE」
(翻訳:航空機航跡中の硫黄酸化物の分光検出)

(引2-イ)第402頁11?24行
「 Abstract
The absorption/emission spectral regions of SO, SO_(2), SO_(3), S_(2)O and HSO are analyzed for the range from UV (λ ≧ 0.2 μm)(当審注:原文における「≧」の表記は、「>」の下に「-」である。) to IR (λ < 30 μm) and are compared with the atmospheric transmission spectrum. It is shown that many vibrational bands of the compounds considered fall into atmospheric transmission windows. For the vibrational bands of SO, SO_(2), SO_(3), S_(2)O, and HSO molecules there are some gases which hinder the absorption diagnostics of the indicated compounds. These interfering gases are natural components of atmospheric air as well as specific gases of aircraft engine exhaust. It is found that the least influence of the interference takes place in the 2400-2700 cm^(-1) IR region. The spectroscopic techniques used for the detection of aircraft engine exhaust compounds are briefly reviewed, with much consideration given to SO_(2). The IR absorption spectra of SO_(2) and other gases are calculated for the conditions of the aircraft engine nozzle exit. Narrow spectral intervals suitable for SO_(2) detection in a hot flow are determined. An analysis is made for the detection capabilities of CO_(2) lasers (including isotope CO_(2) lasers) and CO lasers (both fundamental band and first-overtone ones) as applied to SO_(2) detection in aircraft engine exhaust.」
(翻訳: 要約
SO、SO_(2)、SO_(3)、S_(2)O及びHSOの吸収/発光スペクトル領域をUV(λ≧0.2μm)からIR(λ<30μm)の範囲で分析し、大気透過スペクトルと比較する。考慮された化合物の多くの振動帯が大気透過窓に入ることが示されている。 SO、SO_(2)、SO_(3)、S_(2)O及びHSO分子の振動帯については、示された化合物の吸収診断を妨げるガスがいくつか存在する。これらの干渉ガスは、航空機エンジンの排気ガスの特定のガスと同様に、大気の天然成分である。干渉の影響が最も少ないのは、2400?2700 cm^(-1) IR領域であることが見いだされた。航空機エンジンの排気化合物の検出に使用される分光学的手法を、SO_(2)に重点を置いて簡単に説明する。SO_(2)及び他のガスのIR吸収スペクトルは、航空機エンジンのノズル出口の条件に対して計算される。高温流中のSO_(2)検出に適した狭いスペクトル間隔が決定される。航空機エンジン排気中のSO_(2)検出に適用されるCO_(2)レーザー(同位体CO_(2)レーザーを含む)およびCOレーザー(基本帯域と第一倍音帯域の両方)の検出能力について分析を行った。)

(引2-ウ)第403頁18?24行
「 We consider here the following sulfur compounds: SO, SO_(2), SO_(3), S_(2)O, and HSO. The main spectroscopic properties of the indicated compounds are reviewed below. Spectral regions of radiation absorption/emission are analyzed for each substance, and interfering gases of atmospheric air and aircraft wake are identified. Also, the spectroscopic schemes used for the detection of aircraft engine exhaust gases are briefly reviewed. Much consideration is given to SO_(2) detection. IR spectra of SO_(2) and other exhaust gases are calculated for the engine nozzle exit conditions of a Boeing 707 aircraft. An analysis is made for the detection capabilities of CO_(2) and CO lasers as applied to SO_(2) detection in aircraft exhaust flow.」
(翻訳: ここでは、以下の硫黄化合物を検討する:SO、SO_(2)、SO_(3)、S_(2)O及びHSO。示された化合物の主な分光特性は以下に概説されている。各物質について放射線の吸収/放出のスペクトル領域を分析し、大気中及び航空機の航跡中の干渉ガスを特定する。また、航空機エンジンの排気ガスの検出に使用される分光法を簡単に概説する。SO_(2)の検出に重点が置かれている。SO_(2)及び他の排気ガスのIRスペクトルが、ボーイング707航空機のエンジンノズル出口条件に対して計算される。航空機の排気流中のSO_(2)検出に適用されるCO_(2)及びCOレーザーの検出能力について分析を行う。)

(引2-エ)第404頁下から6行?第405頁1行
「 SO_(3) (sulfur trioxide). The ground electronic state of SO_(3) has a plane structure with D_(h) symmetry; the O-SO_(2) bond energy is 3.55±0.01 eV. The absorption spectrum of sulfur trioxide begins near 3100 Å and consists of weak diffuse bands superimposed on the continuum [2]. In [14, 15], the SO_(3) UV absorption spectrum was studied in detail, with indications of the cross sections. In Table 4, the positions of the main vibrational bands of SO_(3) are presented. The rotational Raman spectrum of SO_(3) was obtained in [18]. It is possible to use the Raman band at 1068 cm^(-1) for SO_(3) determination in SO_(2) by measurement of the intensity of this band relative to the SO_(2) band at 1151 cm^(-1) [2].」
(翻訳: SO_(3)(三酸化硫黄)。 SO_(3)の基底電子状態はD_(h)対称の平面構造を持つ; O-SO_(2)結合エネルギーは3.55±0.01 eVである。三酸化硫黄の吸収スペクトルは、3100A付近から始まり、連続域に重なった弱い拡散したバンドで構成されている[2]。 [14、15]では、SO_(3)のUV吸収スペクトルが詳細に研究されており、断面図が示されている。表4に、SO_(3)の主な振動帯の位置を示す。SO_(3)の回転ラマンスのペクトルは[18]から得た。1152 cm^(-1)のSO_(2)バンドに対する1068 cm^(-1)のバンドの強度の測定により、SO_(2)中のSO_(3)の決定に1068 cm^(-1)のラマンバンドを使用することが可能である[2]。)

(引2-オ)第405頁16行?第408頁下から5行
「3. Absorption Bands of Sulfur Oxides and Atmospheric Transmission Spectra
Figure 1 shows the transmission spectra of the standard atmosphere in a wide wavelength range (from IR to UV). The spectra are calculated using MODTRAN code. It is seen from Fig. 1 that the abrupt decrease in transmission at the beginning of the UV region is caused by strong absorption of radiation by ozone (Hartley bands), oxygen (Schumann.Runge system), and by Rayleigh (molecular) scattering of radiation. In Fig. 2, the transmission in IR bands of the main atmospheric gases is plotted. In Fig. 3, the wavelength regions of electronic absorption bands of SO, SO_(2), SO_(3), S_(2)O, and HSO are shown. Figure 5 shows the positions of IR absorption band centers of these molecules. Figure 4 contains more detailed information on absorption cross sections of SO_(2), SO_(3), COS, and CS_(2) in the UV region. From all these figures it is possible to conclude that UV absorption diagnostics of the considered sulfur compounds is possible only at small distances. On the other hand, in visible, IR, and microwave ranges there is a number of transmission windows (as well as microwindows) where the attenuation of radiation in the atmosphere is low and, hence, diagnostics is possible using large distances. From the standpoint of sulfur compound detection the following windows are interesting: 500-600 cm^(-1) (for SO_(2) and SO_(3)), 1150-1200 cm^(-1) (for SO, SO_(2), and S_(2)O), and 2450-2800 cm^(-1) (for SO_(2), SO_(3), and HSO).
Let us define the gases that can hinder the absorption diagnostics of sulfur compounds in aircraft wake. Among the atmospheric gases we consider molecules contained in the HITRAN-96 spectroscopic database: H_(2)O, CO_(2), O3, N_(2)O, CO, CH_(4), O_(2), NO, SO_(2), NO_(2), NH_(3), HNO_(3), OH, HF, HCl, HBr, HI, ClO, OCS, H_(2)CO, HOCl, N_(2), HCN, CH_(3)Cl, H_(2)O_(2), C_(2)H_(2), C_(2)H_(6), PH_(3), COF_(2), SF6, H_(2)S, and HCOOH. Many of these gases are present in significant amounts (above atmospheric) in the exhaust of aircraft engines (e.g., H_(2)O, CO_(2), CO, NO, NO_(2), HNO_(3), OH, H_(2)CO, H_(2)O_(2), and C_(2)H_(2)). Among volatile organic compounds the following gases are additionally present in the exhausts: ethene (C_(2)H_(4)), propene (C_(3)H_(6)), acetaldehyde (C_(2)H_(4)O), acrolein (C_(3)H_(4)O), benzene (C_(6)H_(6)), toluene (C_(7)H_(8)), etc. Table 5 gives information on interfering gases that hinder detection of sulfur oxides in the IR region within the indicated spectral intervals (±100 cm^(-1) offset is taken around each central frequency). Figure 6 shows the IR absorption spectra of some organic substances related to aircraft engine exhausts as well as the positions of IR bands of SO, SO_(2), SO_(3), S_(2)O, and HSO. From Table 5 and Fig. 6, it follows that minimum influence of interfering gases is observed in the IR region of 2400-2700 cm^(-1). It should be pointed out that this spectral region overlaps with the lasing range of a first-overtone CO laser [52].」
(翻訳:3.硫黄酸化物の吸収帯と大気透過スペクトル
図1は、広い波長範囲(IRからUVまで)における標準大気の透過スペクトルを示す。スペクトルはMODTRANコードを使用して計算される。図1からわかるように、UV領域の最初の部分での透過率の急激な減少は、オゾン(ハートレー帯)、酸素(シューマン-ルンゲ系)による放射線の強い吸収、及び放射線のレーリー(分子)散乱に起因する。図2には、大気中の主要ガスのIRバンドにおける透過率がプロットされている。図3に、SO、SO_(2)、SO_(3)、S_(2)O及びHSOの電子吸収帯の波長域を示す。図5は、これらの分子のIR吸収帯中心の位置を示す。図4は、UV領域におけるSO_(2)、SO_(3)、COS及びCS_(2)の吸収断面図に関するより詳細な情報を含む。これらすべての図から、考察対象の硫黄化合物のUV吸収診断は、短い距離でのみ可能であると結論付けることが可能である。一方、可視域、IR域及びマイクロ波域では、大気中の放射線の減衰が少ない透過窓(同様にマイクロ窓)が多数あり、そのため、長距離を使用した診断が可能である。硫黄化合物検出の観点からは、以下の窓が重要である:500?600 cm^(-1)(SO_(2)及びSO_(3)の場合)、1150?1200 cm^(-1)(SO、SO_(2)及びS_(2)Oの場合)及び2450?2800 cm^(-1)(SO_(2)、SO_(3)及びHSOの場合)。
航空機の航跡中の硫黄化合物の吸収診断を妨げる可能性があるガスを定義しよう。大気ガスの中で、HITRAN-96分光データベースに含まれる分子を検討する:H_(2)O、CO_(2)、O3、N_(2)O、CO、CH_(4)、O_(2)、NO、SO_(2)、NO_(2)、NH_(3)、HNO_(3)、OH、HF、HCl、HBr、HI、ClO、OCS、H_(2)CO、HOCl、N_(2)、HCN、CH_(3)Cl、H_(2)O_(2)、C_(2)H_(2)、C_(2)H_(6)、PH_(3)、COF_(2)、SF6、H_(2)S及びHCOOH。これらのガスの多くは航空機エンジンの排気中にかなりの量(大気中以上)で存在している(例えば、H_(2)O、CO_(2)、CO、NO、NO_(2)、HNO_(3)、OH、H_(2)CO、H_(2)O_(2)及びC_(2)H_(2))。揮発性有機化合物の中で、次のガスが排気中にさらに存在する:エテン(C_(2)H_(4))、プロペン(C_(3)H_(6))、アセトアルデヒド(C_(2)H_(4)O)、アクロレイン(C_(3)H_(4)O)、ベンゼン(C_(6)H_(6))、トルエン(C_(7)H_(8))など。表5は、示されたスペクトル間隔内のIR領域内(各中心周波数の周囲で±100 cm^(-1)のオフセットがとられる)における硫黄酸化物の検出を妨げる妨害ガスに関する情報を提供する。図6は、航空機エンジンの排気に関連するいくつかの有機物質のIR吸収スペクトルを、SO、SO_(2)、SO_(3)、S_(2)O及びHSOのIRバンドの位置とともに示す。表5及び図6から、干渉ガスの影響が最小限であるのは、2400?2700 cm^(-1)のIR領域で観察されることがわかる。このスペクトル領域は、第一倍音COレーザーの発振範囲[52]と重なることを指摘しておく必要がある。)

(引2-カ)第406頁下部 Fig.2.


Fig. 2. Infrared transmission spectra of standard 1976 US atmosphere. MODTRAN calculations. Horizontal path L = 5 km at altitude H = 12.2 km. No aerosols included. Spectral resolution is 25 cm^(-1).」
(翻訳(標題のみ):図2 1976年の米国標準大気の赤外線透過スペクトル。MODTRAN計算。水平経路L= 5 km、標高H= 12.2 km。エアロゾルは含まない。スペクトル分解能cm^(-1)。)

(引2-キ)第408頁上部 Fig.5.


Fig. 5. Position of IR bands for SO, SO_(2), SO_(3), S_(2)O, and HSO. Transmission spectrum of standard US 1976 atmosphere is shown. No aerosols included. H = 12.2 km and horizontal path L = 5 km.」
(翻訳(図題のみ):図5 SO、SO_(2)、SO_(3)、S_(2)O及びHSOのIRバンドの位置。1976年の米国標準大気の透過スペクトルを示す。エアロゾルは含まない。H= 12.2 km、水平経路L= 5 km。)

(引2-ク)第409頁 TABLE 5.



(翻訳(標題のみ):表5. IR領域における硫黄酸化物の吸収診断を妨げる妨害ガス)


第4 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明とを対比する。


(ア)引用発明は、「低温腐食が生じる温度域での排ガス中のSO_(3)濃度を測定するための煙道22に備える実計測装置51」であるから、引用発明の「排ガス」に「SO_(3)」が含まれていることは明らかである。

(イ)引用発明において、「煙道22」内に「排ガス」が存在していることは明らかである。

(ウ)引用発明の「少なくともSO_(3)の吸収域をカバーする紫外域の光を投射するキセノンランプ33」「を備え」た「集光光学系4a,4b,4c」と、本願発明1の「レーザ光を照射する照射手段」とは、「光を照射する照射手段」の点で共通する。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)を踏まえると、引用発明の「煙道22の側壁に管台状に形成した計測口30のフランジ31に取り付けられていて、」「少なくともSO_(3)の吸収域をカバーする紫外域の光を投射するキセノンランプ33」「を備え」、「発せられる紫外光を煙道22内に通過させ」る「集光光学系4a,4b,4c」と、本願発明1の「除塵処理、除湿処理、減圧処理のいずれも行わないSО_(3)およびCO_(2)およびH_(2)Oを含む排ガスに対し、レーザ光を照射する照射手段」とは、「SО_(3)を含む排ガスに対し、光を照射する照射手段」の点で共通する。


(ア)引用発明の「受光部47」「を備え」た「受光光学系7a,7b,7c」と、「受光光学系7a,7b,7cにより取り出し、得られた透過光を」「分光器8で分光することにより、煙道22内の光路上に存在するSO_(3)濃度に比例する実吸収スペクトルを計測」する「実計測部25」とを併せたものと、本願発明1の「レーザ光を受光する受光手段」とは、「光を受光する受光手段」の点で共通する。

(イ)上記(ア)並びにアの(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「煙道22の側壁に前記計測口30と対抗するように設けられた計測口42のフランジ43に取り付けられていて、」「受光部47」「を備え」、「各集光光学系4a,4b,4cから発せられる紫外光を煙道22内に通過させ、SO_(3)によって光強度が変化した透過光を」「取り出」す「受光光学系7a,7b,7c」と、「受光光学系7a,7b,7cにより取り出し、得られた透過光を」「分光器8で分光することにより、煙道22内の光路上に存在するSO_(3)濃度に比例する実吸収スペクトルを計測」する「実計測部25」とを併せたものと、本願発明1の「前記排ガスに照射され当該排ガスを透過したレーザ光を受光する受光手段」とは、「前記排ガスに照射され当該排ガスを透過した光を受光する受光手段」の点で共通する。


(ア)引用発明の「必要紫外域の光」が「SO_(3)の吸収域」を含むことは明らかである。

(イ)上記(ア)及びア(ウ)を踏まえると、引用発明の「キセノンランプ33」が「投射する」「少なくともSO_(3)の吸収域をカバーする紫外域の光」のうち、「必要紫外域の光のみを透過させてノイズを防止するカットオン等のフィルタ37」と、本願発明1の「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段」とは、「前記照射手段が照射する前記光の波長をSО_(3)の吸収波長を含む範囲に制限する波長制限手段」の点で共通する。


(ア)上記イ(ア)を踏まえると、引用発明の「濃度演算装置27に入力」される「実計測部25」で「計測した実吸収スペクトル」は、本願発明1の「前記受光手段からの出力」に相当する。

(イ)引用発明の「試験計測装置48の演算装置19で得られたSO_(3)濃度と吸収スペクトルとの校正特性21」と、本願発明1の「前記波長制御手段からの参照信号」とは、「濃度演算に用いる基準データ」の点で共通する。

(ウ)引用発明の「実吸収スペクトルと、排ガス温度29と、水分濃度53とを、校正特性21と照合すること」と、本願発明1の「赤外分光法」とは、「分光法」の点で共通する。

(エ)引用発明の「排ガス中のSO_(3)濃度を高精度に測定することができる」「濃度演算装置27」は、本願発明1の「SО_(3)濃度を演算するSО_(3)濃度演算手段」に相当する。

(オ)上記(ア)ないし(エ)を踏まえると、引用発明の「実計測部25」で「計測した実吸収スペクトル」、「温度計28により検出した排ガス温度29」、「水分計52により検出した水分濃度53」及び「試験計測装置48の演算装置19で得られたSO_(3)濃度と吸収スペクトルとの校正特性21」が「入力」され、「実吸収スペクトルと、排ガス温度29と、水分濃度53とを、校正特性21と照合することにより、排ガス中のSO_(3)濃度を高精度に測定することができる」「濃度演算装置27」と、本願発明1の「前記受光手段からの出力と前記波長制御手段からの参照信号を基に赤外分光法によりSО_(3)濃度を演算するSО_(3)濃度演算手段」とは、「前記受光手段からの出力と濃度演算に用いる基準データを基に分光法によりSО_(3)濃度を演算するSО_(3)濃度演算手段」の点で共通する。

オ 引用発明の「低温腐食が生じる温度域での排ガス中のSO_(3)濃度を測定するための煙道22に備える実計測装置51」は、本願発明1の「SО_(3)分析装置」に相当する。

(2)よって、本願発明1と引用発明とは、

「 SО_(3)を含む排ガスに対し、光を照射する照射手段と、
前記排ガスに照射され当該排ガスを透過した光を受光する受光手段と、
前記照射手段が照射する前記光の波長をSО_(3)の吸収波長を含む範囲に制限する波長制限手段と、
前記受光手段からの出力と濃度演算に用いる基準データを基に分光法によりSО_(3)濃度を演算するSО_(3)濃度演算手段とを備える
SО_(3)分析装置。」

の発明である点で一致し、次の5点で相違する。

(相違点1)
「SО_(3)を含む排ガス」が、本願発明1は、「除塵処理、除湿処理、減圧処理のいずれも行わないSО_(3)およびCO_(2)およびH_(2)Oを含む排ガス」であるのに対し、引用発明は、「除塵処理、除湿処理、減圧処理のいずれも行わない」ものであること及び「CO_(2)およびH_(2)Oを含む」ことは特定されていない点。

(相違点2)
「照射手段」が「照射」し「受光手段」が「受光する」「光」が、本願発明1においては、「レーザ光」であるのに対して、引用発明においては、「キセノンランプ33」が「投射する」「光」である点。

(相違点3)
「前記照射手段が照射する前記光の波長をSО_(3)の吸収波長を含む範囲に制限する波長制限手段」が、本願発明1においては、「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段」であるのに対して、引用発明においては、「必要紫外域の光のみを透過させてノイズを防止するカットオン等のフィルタ37」である点。

(相違点4)
「分光法」で用いる「濃度演算に用いる基準データ」が、本願発明1においては、「前記波長制御手段からの参照信号」であるのに対して、引用発明においては、「試験計測装置48の演算装置19で得られたSO_(3)濃度と吸収スペクトルとの校正特性21」である点。

(相違点5)
「分光法」が、本願発明1においては、「赤外分光法」であるのに対して、引用発明においては、「紫外光」を用いたものである点。

(3)相違点についての判断

ア 事案に鑑み、最初に上記相違点3について検討する。

引用文献2は、「航空機航跡中の硫黄酸化物の分光検出」に関する文献であり、(引2-イ)ないし(引2-カ)から、以下の(ア)ないし(オ)の事項が読み取れる。

(ア)SO、SO_(2)、SO_(3)、S_(2)O及びHSOの吸収/発光スペクトル領域をUV(λ≧0.2μm)からIR(λ<30μm)の範囲で分析した。・・・(引2-イ)

(イ)図5及び表5から、SO_(3)には、495、529、1391、2443及び2773cm^(-1)を中心とする吸収帯が存在する。・・・(引2-キ)、(引2-ク)

(ウ)考察対象の硫黄化合物のUV吸収診断は、短い距離でのみ可能であり、IR域では、大気中の放射線の減衰が少ない透過窓(同様にマイクロ窓)が多数あり、そのため、長距離を使用した診断が可能である。・・・(引2-オ)

(エ)硫黄化合物検出の観点からは、以下の窓が重要である:500?600 cm^(-1)(SO_(2)及びSO_(3)の場合)、1150?1200 cm^(-1)(SO、SO_(2)及びS_(2)Oの場合)及び2450?2800 cm^(-1)(SO_(2)、SO_(3)及びHSOの場合)。・・・(引2-オ)

(オ)考察対象の化合物の吸収診断を妨げる干渉ガスは、航空機エンジンの排気ガスの特定のガスと同様に、大気の天然成分であり、干渉の影響が最も少ないのは、2400?2700 cm^(-1) IR領域である。・・・(引2-イ)、(引2-オ)

上記(ア)ないし(オ)を総合すると、航空機航跡中の硫黄酸化物の分光検出では、大気中の放射線の減衰の観点から、UV吸収診断ではなく、長距離を使用した診断が可能であるIR域での吸収診断が適しており、SO_(3)には、495、529、1391、2443及び2773cm^(-1)(波長3.606、4.093、7.189、18.90及び20.20μm)を中心とする吸収帯が存在するが、検出の観点からは、500?600 cm^(-1)(波長1.67?20.0μm)及び2450?2800 cm^(-1)(波長3.57?4.08μm)が重要な窓であり、干渉の影響が最も少ないのは、2400?2700 cm^(-1) (波長3.70?4.17μm)IR領域であるといえる。

上記のとおり、引用文献2は、航空機航跡中の硫黄酸化物の分光検出のために、大気中の放射線の減少や航空機排ガスによる干渉の影響を考慮して、SO_(3)の検出に適した窓の1つとして、2450?2800 cm^(-1)(波長3.57?4.08μm)を提示し、干渉の影響が最も少ない範囲として2400?2700 cm^(-1) (波長3.70?4.17μm)IR領域を提示している。

これに対し、引用発明は、煙道中の排ガス中のSO_(3)濃度を測定するものであり、航空機航跡中の硫黄酸化物の分光検出のように大気中に長距離の光路を設ける必要がなく、航空機排ガスとは干渉ガスの種類も異なるものである。
そうすると、引用文献2に、航空機航跡中の硫黄酸化物の分光検出において、SO_(3)の検出に適した窓の1つとして、IR域である2450?2800 cm^(-1)(波長3.57?4.08μm)が提示され、干渉の影響が最も少ない範囲として2400?2700 cm^(-1) (波長3.70?4.17μm)IR領域が提示されているとしても、用途が異なりUV光が使用可能な引用発明において、直ちにIR域の光を用いる動機付けとなるものではない。
また、引用文献2には、SO_(3)の吸収帯の1つとして、2443cm^(-1)(波長4.093μm)を中心とする吸収帯が提示されていることから、仮に、この吸収帯を利用するとしても、本願発明1は、4.060?4.182μmの波長範囲に多数のスペクトルがあり、CO_(2)やH_(2)Oの吸収ピークの影響をほとんど受けない領域にもSO_(3)吸収ピークが存在することを見いだして(明細書段落【0026】)、「4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長」を採用したものであるから、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明及び引用文献2の記載事項から、当業者が容易に想起し得た事項であるとは認められない。

イ したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし7について

本願発明2ないし7は、本願発明1の「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明8について

本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定は、請求項1、2及び9に係る発明は、上記引用文献1及び2に基づいて、請求項3ないし8に係る発明は、上記引用文献1及び2並びに引用文献3(特開2009-85872号公報)、引用文献4(特開2003-42950号公報)及び引用文献5(特開2003-14633号公報)に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

しかしながら、令和元年6月21日にされた手続補正で補正された請求項1及び8は、それぞれ「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段」という事項、「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段」に対応する構成を有するものとなっており、上記第4で検討したとおり、本願発明1ないし8は、引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ここで、上記引用文献3及び4は、2波長の励起レーザ光を入射する差周波発生のレーザ光源が周知技術であることを示すために引用された文献であり、本願発明1の「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段」という構成を開示するものではない。
また、上記引用文献5は、紫外線吸収スペクトルから求めたSО_(3)濃度を計測時のガス圧力を用いて補正する技術が公知であることを示すために引用された文献であり、本願発明1の「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段」という構成を開示するものではない。
そうすると、引用文献3ないし5の記載事項を考慮したとしても、本願発明1ないし8は、引用発明及び引用文献2ないし5の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について

当審拒絶理由は、特許法第36条第6項第2号に関するものである。

当審では、請求項1には、「波長制御手段」を特定する記載として、「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.060μm?4.182μm帯のSО3の吸収波長に制御する波長制御手段」及び「前記波長制御手段は、前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μmに制御する」とあるが、両者の波長範囲が一致していないため、「波長制御手段」がどのような波長範囲に制御するものであるのかが判然としないとの拒絶の理由を通知しているが、令和元年6月21日にされた手続補正(以下「本件手続補正」という。)において、「前記照射手段が照射する前記レーザ光の波長を4.093μm?4.098μm、4.1045μm?4.1065μm、4.110μm?4.115μm、4.117μm?4.126μm、または4.131μm?4.132μm帯のSО_(3)の吸収波長に制御する波長制御手段」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
また、請求項8に対しても同様の拒絶の理由を通知しているが、本件手続補正において請求項8について請求項1と同様の補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび

以上のとおり、本願発明1ないし8は、引用発明及び引用文献2ないし5の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
そして、当審拒絶理由によっても、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-08-02 
出願番号 特願2015-71379(P2015-71379)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
P 1 8・ 537- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野寺 麻美子大河原 綾乃塚本 丈二  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
信田 昌男
発明の名称 SO3分析方法および分析装置  
代理人 永田 健悟  
代理人 豊田 義元  
代理人 豊田 義元  
代理人 永田 健悟  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ