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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L
管理番号 1353829
審判番号 不服2017-10630  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-18 
確定日 2019-07-29 
事件の表示 特願2015-121535「現場スピーカー装置、現場音声放送システム及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月12日出願公開、特開2016- 4272〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月16日(パリ条約による優先権主張2014年6月16日、中国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 8月 1日付け:拒絶理由通知書
同年10月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 3月14日付け:拒絶査定
同年 7月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年10月22日付け:拒絶理由通知書(当審)
平成31年 1月22日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
平成31年1月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、各構成の符号(A)?(F)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成A?構成Fと称する。

(本願発明)
(A)テキスト生成装置のセンサ(110)により検知されたパラメータが所定値に達したことに応じて前記テキスト生成装置により生成されるテキスト信号を受信することと、
(B)前記テキスト信号を、前記テキスト生成装置から分離した現場スピーカー装置(200)内に設けられた音声変換モジュール(210)を介して音声信号に変換することと、
(C)産業環境に警報を放送するために前記現場スピーカー装置(200)のスピーカー(220)を用いて変換された音声信号を再生することと、
を含み、
(D)前記テキスト信号は、前記センサ(110)により検知された前記パラメータが所定値に達したことに応じて、ユーザーにより予め設定された複数のテキストからテキストを選択することにより生成され、
(E)前記テキスト生成装置は、前記複数のテキストからある一つのテキストを選択するヒューマンマシンインターフェースと、前記テキストを送信する送信インタフェースとをさらに含む、
(F)現場音声放送の方法。

第3 拒絶の理由
平成30年10月22日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。

1.(新規性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



●理由1(新規性)について
請求項 1、4、7
引用文献 1

●理由2(進歩性)について
(1)請求項 1、4、7
引用文献 1

(2)請求項 1、4、7
引用文献 1、2

(3)請求項 2、5
引用文献 1?3

(4)請求項 3、6
引用文献 1?4

引用文献1.特開2004-252626号公報
引用文献2.特開昭60-65400号公報
引用文献3.特開平10-319992号公報
引用文献4.特開2008-257012号公報

第4 引用文献
1 引用文献1の記載事項
平成30年10月22日付けで当審が通知した拒絶理由において引用された引用文献1(特開2004-252626号公報)には、次の事項が記載されている。(以下、下線は強調のために当審で付したものである。)

「【0001】
本発明は情報端末装置へのメッセージ伝達方法に関し、特に聴覚障害者用として開発され、各種情報をバイブレータとLCD表示で告知することとした腕時計型情報端末装置へのメッセージ伝達方法に関し、従来より対象者まで拡大して使用用途を広げることができることとする情報端末装置へのメッセージ伝達方法に関する。」

「【0018】
まず、図2乃至図6として示す実施例1を説明すると、この全体構成には無線送信機1-1と腕時計型とした情報端末装置1-2のほかに、来客や警報等を検知する各種センサー2-1、シリアル通信機器2-2、シリアル出力センサー2-3が含まれ、特に図示しないが電波の不感地帯対応のために、中間に無線中継器が入る場合もある。
【0019】
前記したシリアル出力センサー2-3には各種センサー2-1からの入力信号が入る入力検出回路2-4が備えられている。この入力検出回路2-4に接続された入力信号は信号判定部2-5を通ってメッセージ送出部2-6へ接続される。このメッセージ送出部2-6にはID記億部2-8及びメッセージ記憶部2-9も接続されており、これらの信号はシリアル出力部2-9よりシリアルデータとして出力される。
【0020】
この実施例1における無線送信機1-1にあって、各センサー機器からの信号はその信号の種類に応じてセンサー入力部2-13、シリアル通信機器入力部2-14、シリアル出力センサー入力部2-19に接続され、各々送信処理制御部2-15へ接続される。この送信処理制御部2-15には操作用のコールボタン2-20、メッセージ再生ボタン2-21、メッセージが表示されるメッセージ表示部2-10、送信ID記億部2-16、送信メッセージ記憶部2-17及び時計部2-18が接続されている。送信処理制御部2-15の出力として無線送信部2-11を経由し、送信アンテナ2-12へ接続される。
【0021】
また、実施例1の情報端末装置1-2は前記した送信アンテナ2-12からの送信信号を受ける受信アンテナ2-23を備え、その受信アンテナ2-23は無線受信部2-22に接続され、その出力は受信処理部2-25に接続される。この受信処理部2-25にはアップ、ダウン、スクロールが可能な操作キー2-24、表示用のメッセージ表示部2-10、着信があったことを装着者に知らせるバイブレータ2-26、受信ID記億部2-27、受信メッセージ記憶部2-28及び時計部2-18が接続される。
【0022】
腕時計型とした情報端末装置1-2には前記したメッセージ表示部2-10で機能するLCD表示部2-29及び操作キー2-24が外観に表出され、その他に時刻設定やアラーム設定等のためのボタンが配置されている。バイブレータ2-26は装置内に実装されている。
【0023】
ここで、上記構成とした実施例1の動作を説明する。この実施例1は主として聴覚障害者が日常生活を行なうためのもので、生活情報や警報信号等の情報を各センサーが検知すると、それをバイブレータ2-26の振動及びLCD表示部2-29における文字表示によって随時通知する。即ち、来客や警報を各種センサー2-1、2-2、2-3が検知すると、その検知を無線送信機1-1へ検知したセンサーのID番号と文字メッセージを送出する。
【0024】
無線送信機1-1はセンサーからのシリアル信号を受信したデータ内容を確認してOKであれば、その内容を送信アンテナ2-12から送信し、同時にその内容をメッセージ記憶部2-17で記憶する。情報端末装置1-2は無線送信機1-1からの信号を受信アンテナ2-23で受信し、バイブレータ2-26を振動させると共にメッセージを受信メッセージ記憶部2-28で記憶し、LCD表示部2-29にメッセージを表示する。
【0025】
シリアル出力センサー2-3はセンサーに応じた検出回路が構成されている。例えば、センサーとして火災報知器の報知音信号検出(マイク)が接続されているとすると、火災報知器からの信号によってシリアル出力センサー2-3はONとなって無線送信機1-1にシリアル出力センサー2-3に付与されたIDと予め記憶されている文字メッセージがシリアル出力で接続される。
【0026】
この場合、文字メッセージの例として「No.1カサイハッセイ(火災発生)」とすると、センサーが火災報知器の報知音を検出して無線送信機1-1へこのメッセージを送出する。送出するメッセージの内容は図7として示している無線区間のフレームフォーマット例において、プリアンブルとシンクコードを除いた部分となる。」

「【0038】
さらに、図10として示す実施例3は音声系出力を追加したものであり、具体的にはブザー4-1、スピーカ4-2、テキスト音声合成部4-3が追加してある。この音声系出力の追加は前記した実施例2の構成に追加してもよく、ブザー4-1とスピーカ4-2及びテキスト音声合成部4-3とは同時に必要はなく、ブザー4-1のみの単独またはスピーカ4-2及びテキスト音声合成部4-3の単独でもよい。
【0039】
この実施例3では着信があるとバイブレータ2-26と同様のパターンでブザー4-1が鳴動する。このバイブレータ2-26とブザー4-1は同時に動作させても、各々個別に動作させてもよい。テキスト音声合成部4-3では送られてきたテキスト文字のメッセージを音声に変換してスピーカ4-2より出力するものである。
【0040】
本実施の形態は上記のように構成されている。この構成によって聴覚障害者に限らず、騒音場所での着信情報伝達、両手を使う作業者への情報伝達、病院等で衛生面から手で機器を握ることができない業務、呼び出し音を発生させてはならない場所での情報伝達等にそのまま適用でき、健常者用として一般業務にも使用できる。このために、防災、防犯、工事作業現場、病院、バリアフリー関連、レジャー産業をはじめ一般企業向け等としても幅広く利用される。」

「【図2】



「【図3】



「【図4】



「【図10】



2 引用文献1に記載の技術的事項
上記1に摘記した記載から、引用文献1には、次の(ア)?(ク)の技術的事項が記載されているものと認められる。

(ア)引用文献1には、段落0001に記載のように、情報端末装置へのメッセージ伝達方法に関することが記載されている。また、引用文献1に記載の情報端末装置へのメッセージ伝達方法の適用について、段落0040には、防災、防犯、工事作業現場、病院をはじめ一般企業向け等として利用されることが記載されている。

(イ)上記情報端末装置へのメッセージ伝達方法の全体構成について、実施例1として、段落0018には、無線送信機1-1、情報端末装置1-2、各種センサー2-1、シリアル出力センサー2-3が含まれることが記載されている。また、実施例1に対応する図2には、前記シリアル出力センサー2-3は「シリアル出力センサー1」「シリアル出力センサー2」のように複数存在することが記載されている。

(ウ)前記シリアル出力センサー2-3について、段落0019、図3には、前記各種センサー2-1からの入力信号が入る入力検出回路2-4が備えられ、前記入力検出回路2-4に接続された入力信号は信号判定部2-5を通ってメッセージ送出部2-6へ接続され、前記メッセージ送出部2-6にはID記億部2-8及びメッセージ記憶部2-9も接続され、これらの信号はシリアル出力部2-9よりシリアルデータとして出力されることが記載されている。

(エ)前記無線送信機1-1について、前記シリアル出力センサー2-3に関するものとして、段落0020、図4には、前記シリアル出力センサー2-3からの信号はシリアル出力センサー入力部2-19に接続され、送信処理制御部2-15へ接続され、前記送信処理制御部2-15の出力として無線送信部2-11を経由し、送信アンテナ2-12へ接続されることが記載されている。

(オ)前記情報端末装置1-2について、段落0021には、前記送信アンテナ2-12からの送信信号を受ける受信アンテナ2-23を備え、その受信アンテナ2-23は無線受信部2-22に接続され、その出力は受信処理部2-25に接続されることが記載されている。
また、段落0038、図10には、実施例1の構成に音声系出力を追加した実施例3として、テキスト音声合成部4-3が受信処理制御部2-25に接続され、スピーカ4-2が前記テキスト音声合成部4-3に接続されることが記載されている。
なお、前記「受信処理部2-25」及び前記「受信処理制御部2-25」の記載の不整合については、前記「受信処理部2-25」は、「受信処理制御部2-25」の誤記と認め、「受信処理制御部」と認定した。

(カ)前記(ウ)のシリアル出力センサー2-3の動作について、段落0025、0026には、各種センサー(例えば、火災報知音信号検出(マイク))に応じた検出回路が構成され、火災報知器からの信号によってシリアル出力センサー2-3がONとなって、無線送信機1-1にシリアル出力センサー2-3に付与されたIDと予め記憶されている文字メッセージ(例えば、「No.1カサイハッセイ(火災発生)」)をシリアル出力することが記載されている。

(キ)前記(エ)の無線送信機1-1の動作について、段落0024には、無線送信機1-1は、センサーからのシリアル信号を受信したデータ内容を送信アンテナ2-12から送信することが記載されている。

(ク)前記(オ)の情報端末装置1-2の動作について、段落0024、0039には、情報端末装置1-2は無線送信機1-1からの信号を受信アンテナ2-23で受信し、テキスト音声合成部4-3では送られてきたテキスト文字のメッセージを音声に変換してスピーカ4-2より出力することが記載されている。

3 引用発明
以上より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、各構成の符号(a)?(h)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成a?構成hと称する。

(引用発明)
(a)防災、防犯、工事作業現場、病院をはじめ一般企業向け等として利用される情報端末装置へのメッセージ伝達方法であって、
(b)無線送信機、情報端末装置、各種センサー、複数のシリアル出力センサーを備え、
(c)前記シリアル出力センサーは、前記各種センサーからの入力信号が入る入力検出回路が備えられ、前記入力検出回路に接続された入力信号は信号判定部を通ってメッセージ送出部へ接続され、前記メッセージ送出部にはID記億部及びメッセージ記憶部も接続され、これらの信号はシリアル出力部よりシリアルデータとして出力されるものであり、
(d)前記無線送信機は、前記シリアル出力センサーからの信号は、シリアル出力センサー入力部に接続され、送信処理制御部へ接続され、前記送信処理制御部の出力として無線送信部を経由し、送信アンテナへ接続されるものであり、
(e)前記情報端末装置は、前記送信アンテナからの送信信号を受ける受信アンテナを備え、その受信アンテナは無線受信部に接続され、その出力は受信処理制御部に接続され、テキスト音声合成部が受信処理制御部に接続され、スピーカが前記テキスト音声合成部に接続されるものであり、
(f)前記シリアル出力センサーは、各種センサー(例えば、火災報知音信号検出(マイク))に応じた検出回路が構成され、火災報知器からの信号によってシリアル出力センサーがONとなって、無線送信機にシリアル出力センサーに付与されたIDと予め記憶されている文字メッセージ(例えば、「No.1カサイハッセイ(火災発生)」)をシリアル出力し、
(g)前記無線送信機は、センサーからのシリアル信号を受信したデータ内容を送信アンテナから送信し、
(h)前記情報端末装置は、前記無線送信機からの信号を受信アンテナで受信し、前記テキスト音声合成部では送られてきたテキスト文字のメッセージを音声に変換して前記スピーカより出力する
(a)方法。

4 引用文献2の記載事項
上記引用文献2(特開昭60-65400号公報)には、次の事項が記載されている。

「本発明は、マンション、寮、アパート等の集合住宅や会社、工場、病院等で用いられ、火災、ガス漏れ等を監視し、検知する警報装置に関する。」(1頁右欄19行?2頁左上欄1行)

「第1図は、本発明の1実施例に係る警報装置のブロック構成を示す。同図において、1は中央監視装置で、この中央監視装置1に伝送線2aおよびインターホン回線(通話線)2bを接続し、これらの伝送線2aおよびインターホン回線2bに複数個の端末機3(3-1,3-2,…,3-n)をマルチドロップ方式で接続し、各端末機には温度センサ、赤外線センサ等の火災センサ4(4-1,4-2,…,4-n)、ガス漏れ検知器5(5-1,5-2,…,5-n)および煙検知器6(6-1,6-2,…,6-n)等のセンサ類、警報ベルや赤ランプ、警報表示プレート等の警報表示手段7(7-1,7-2,…,7-n)ならびにスピーカ8(8-1、8-2,…,8-n)を接続している。なお、センサ類としてはさらに図示しない防犯ベル、非常ベルおよび火災報知用等のスイッチ類を設けてもよい。
中央監視装置1および端末機3は、いずれもマイクロプロセッサ等からなる制御装置(CPU)およびメモリを有し、各CPUの制御のもとに伝送線2aを介して相互データ伝送を行なうとともにインターホン回線2bを介して中央監視装置1からの音声情報を拡声放送する。」(2頁右下欄8行?3頁左上欄9行)

「第3図は5階建の1棟35住戸からなる集合住宅において、第1?35の各住戸に第1図の端末機3-1?3-35の各1台ずつとセンサ類4-1?4-35,5-1?5-35,6-1?6-35の各1組ずつを設置した場合の警報エリアすなわち警報を発すべき住戸のパターンを示す。」(3頁左下欄8?13行)





第6 対比
本願発明の構成A?Fを引用発明の構成a?hと対比する。

1 構成D及び構成Eについて
構成b、構成c及び構成fの「各種センサー」及び「入力信号」は、構成Dの「センサ(110)」及び「パラメータ」に相当する。構成fの「火災報知器からの信号によってシリアル出力センサーがONとなって」は、構成cの信号判定部が、入力検出回路に入力した入力信号を判定したことに応じてONとなったと認められるから、「センサにより検知されたパラメータが所定値に達したことに応じて」生じたものといえる。
そして、構成fの「文字メッセージ」は、「センサにより検知されたパラメータが所定値に達したことに応じて」シリアル出力されるものであるから、構成Eの「テキスト信号」に相当する。
構成bのとおり、「シリアル出力センサー」は、複数備えられており、構成fのとおり、各シリアル出力センサーの検出回路は各種センサーに応じたものが構成されるものであり、予め記憶されている文字メッセージは各種センサーに応じたものであることは自明である。そうすると、複数のシリアル出力センサーが備えられた引用発明において、各種センサーに応じてONとなったシリアル出力センサーが文字メッセージをシリアル出力することは、予め記憶された複数の文字メッセージが各種センサーに応じて選択されてシリアル出力されることになるといえるから、構成fのシリアル出力センサーを複数備えることは、構成D及び構成Eの「複数のテキストからある一つのテキストを選択する」ことに相当する。
また、装置の使用者が装置の設定を行うことは常套手段であり、上記文字メッセージの設定はユーザーが通常行うものと認められる。
したがって、構成fのシリアル出力センサーが複数備えられて各種センサーに応じて予め記憶された文字メッセージをシリアル出力することは、構成Dと一致する。
構成bの複数のシリアル出力センサーは、構成Eの「ヒューマンマシンインターフェース」と一致する。
構成gの無線送信機は、シリアル出力センサーからの文字メッセージの信号を情報端末装置に送信するものであるから、構成Eの「送信インタフェース」に相当する。
よって、構成f、構成gは、構成Eに相当する。

2 構成Aについて
構成hの「前記無線送信機からの信号」は、構成fの「文字メッセージ」のシリアル出力であって、構成gの「シリアル信号を受信したデータ内容」であるから、「センサにより検知されたパラメータが所定値に達したことに応じて生成されるテキスト信号」といえる。
よって構成hの「無線送信機からの信号を受信アンテナで受信」することは、構成Aと一致する。
そして、以上のことから、引用発明の各種センサ、複数のシリアル出力センサー及び無線送信機からなる構成は、本願発明の「テキスト生成装置」と一致する。

3 構成Bについて
情報端末装置は、構成aのとおり、防災、防犯、工事作業現場、病院をはじめ一般企業向け等として利用されるものであり、構成hのとおり、アンテナを介して前記無線送信機と送受信を行うものであり、スピーカを有するものであるから、構成Bの「前記テキスト生成装置から分離した現場スピーカー装置(200)」と一致する。
そして、構成hの情報端末装置のテキスト音声合成部において音声に変換される「送られてきたテキスト文字のメッセージ」は、受信アンテナで受信した信号であり、上記2のとおり「テキスト信号」といえるから、構成hの「テキスト音声合成部」は、構成Bのテキスト信号を音声信号に変換する「音声変換モジュール(210)」と一致する。
よって、構成hは、構成Bと一致する。

4 構成Cについて
構成hの情報端末装置の「スピーカ」は、テキスト音声合成部で変換された音声を出力するものであり、構成Cの変換された音声信号を再生する「スピーカー(220)」と一致する。
また、前記スピーカによる音声出力は、構成fのように、例えば、火災報知器からの信号に基づき、「No.1カサイハッセイ(火災発生)」の文字メッセージが出力され、構成hのように、当該文字メッセージが音声に変換されて行われるものであり、当該構成の目的は、構成Cの「産業環境に警報を放送するために」と一致する。
よって、構成hは、構成Cと一致する。

5 構成Fについて
前記構成A?Eに相当する構成を有する引用発明は、構成Fの「現場音声放送の方法」に相当するといえる。

7 まとめ
上記1?6のとおり、本願発明の構成A?構成Fは、いずれも引用発明の構成との間に差異がないから、本願発明は引用文献1に記載された発明である。

第7 進歩性について
なお、仮に、構成eの「情報端末装置」が、構成Bの「現場スピーカー装置」には相当せず、本願発明は引用文献1に記載された発明ではなかったとしても、警報装置のスピーカー装置を現場に設置して拡声放送する方法は、上記引用文献2に記載されているように周知技術であり、引用発明のスピーカに係る構成として、警報等に係るメッセージの音声を防災、防犯、工事作業現場等で出力するために、現場に設置して拡声放送するスピーカーである「現場スピーカー装置」を用いることは、当該周知技術に基づき当業者が容易に想到しうることである。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

第8 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
なお、仮に、前記引用文献1に記載された発明でないとしても、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-06 
結審通知日 2019-03-07 
審決日 2019-03-19 
出願番号 特願2015-121535(P2015-121535)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G10L)
P 1 8・ 113- WZ (G10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大野 弘  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 渡辺 努
樫本 剛
発明の名称 現場スピーカー装置、現場音声放送システム及びその方法  
代理人 内藤 和彦  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  

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