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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1353840
審判番号 不服2018-14261  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-26 
確定日 2019-07-29 
事件の表示 特願2016-518「加温用プラスチック製容器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年3月16日出願公開、特開2017-52559〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月5日(国内優先権主張 平成27年9月7日(以下「本件優先日」という。))の特許出願であって、平成30年1月17日付で拒絶理由が通知され、同年3月23日に意見書が提出され、同年7月20日付で拒絶査定(謄本送達は、同月27日)がされ、それに対して、同年10月26日に本件審判の請求がされたものである。

第2 本願発明
本願発明は、特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるが、その請求項1には、次の発明(以下「本願発明」という。)が記載されている。
「容量が400ml?550mlの加温用プラスチック製容器において、
口部と、
前記口部の下方に設けられた肩部と、
前記肩部の下方に設けられた胴部と、
前記胴部の下方に設けられた底部とを備え、
前記胴部は、円筒面を有する略円筒形状からなり、
前記胴部の前記円筒面に、円周方向に所定間隔を空けて5?7枚の圧力吸収パネルが設けられ、
各圧力吸収パネルは、内側に向けて凹となる形状を有し、
全高が160mm?175mmとなることを特徴とする加温用プラスチック製容器。 」

第3 引用文献の記載事項
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本件優先日前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2001-31899号公報)には、次の記載がある。(下線は、当審が加えた)
(1)「【0020】
図1乃至図4に示す加温用プラスチックボトル10は、無菌充てん方式で用いられている非耐熱ボトルからなっている。この加温用プラスチックボトル10は、口部11と、口部11下方に設けられた肩部12と、肩部12下方に設けられた胴部20と、胴部20下方に設けられた底部30とを備えている。
【0021】
このうち胴部20は、円筒面21を有しており、全体として略円筒形状からなっている。胴部20の円筒面21には、周方向に沿って等間隔に胴部20内方へ凹む6つのパネル部23が形成されている。また円筒面21のうち隣接するパネル部23同士の間に、それぞれ柱状部22が形成されている。
【0022】
各パネル部23は、底面23aと、底面23aを取り囲む側壁面23bとを有している。このうち底面23aにはリブ等の凹凸が設けられておらず、なだらかな形状を有している。また図4に示すように、胴部20の水平断面において、パネル部23の底面23aは湾曲しない平坦状の形状からなっている。」
(2)「【0027】
このような加温用プラスチックボトル10のサイズは限定されるものではなく、どのようなサイズのボトルからなっていても良い。例えば、加温用プラスチックボトル10の容積が280ml?350mlであっても良い。とりわけ、容器の全高h_(2)(図1参照)が150mm?160mmであり、容器の胴径w_(3)(図1参照)が65mm?70mmである場合に、本実施の形態による効果を好適に得ることができる。」
(3)「【0031】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0032】
まず加温用プラスチックボトル10内に、例えば緑茶、コーヒー等の内容液を充填し、その後これを密栓する。さらに胴部20周囲にシュリンクフィルム等のラベルを付す。その後、加温用プラスチックボトル10は、ホットウォーマーまたは自動販売機において、加温された状態で販売される。
【0033】
この際、加温用プラスチックボトル10が加温されることにより、内容液も加温され、内容液の体積が増加する。これにより加温用プラスチックボトル10のボトル内圧が増加する。また加温用プラスチックボトル10のボトル内圧が増加することにより、胴部20が膨張する。」
(4)「【0041】
(実施例1)
図1乃至図4に示す構成からなる350ml用の加温用プラスチックボトル10(実施例1)を作製した。この場合、6つのパネル部23の合計体積は32mlであり、各パネル部23の深さd_(1)は4.3mmであった。
【0042】
また、この加温用プラスチックボトル10(実施例1)において、各パネル部23の高さh_(1)は63mm、各パネル部23の幅w_(1)は30mm、容器の全高h_(2)は153mm、胴径w_(3)は68.5mm、各柱状部22の幅w_(2)は3.0mmであった。」
(5)図面関連
ア 【図1】関連
(ア)【図面の簡単な説明】、【0017】
「図1は、本発明の一実施の形態による加温用プラスチックボトルを示す正面図。」
(イ)【図1】



イ 【図2】関連
(ア)【図面の簡単な説明】、【0017】
「図2は、本発明の一実施の形態による加温用プラスチックボトルを示す上面図。」
(イ)【図2】



ウ 【図3】関連
(ア)【図面の簡単な説明】、【0017】
「図3は、本発明の一実施の形態による加温用プラスチックボトルを示す底面図。」
(イ)【図3】



エ 【図4】関連
(ア)【図面の簡単な説明】、【0017】
「図4は、本発明の一実施の形態による加温用プラスチックボトルを示す水平断面図(図1のIV-IV線断面図)。」
(イ)【図4】



2 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本件優先日前に頒布された刊行物である引用文献2(特開昭61-255857号公報)には、次の記載がある。
(1)2頁左上欄8行?右上欄1行
「〈発明の目的〉
本発明の目的はガスバリヤ-性の改良され、層間接着性の改良された多層配向ポリエステルボトルを提供することにある。
〈発明の構成〉
本発明は多層配向ボトルであって、該ボトルがエチレンテレフタレート単位を主体とする熱可塑性ポリエステルの層及びオレフィン-ビニルアルコール共重合体と融点が120℃以上250℃以下の結晶性ポリエステルとを50:50乃至10:90の重量比で含有するブレンド物の層の少くとも2層からなる多層構造物から成ることを特徴とする多層配向ポリエステルボトルである。」
(2)4頁右上欄下11行?左下欄7行
「実施例1?10および比較例1?9
表1に示すポリエステルとエチレン成分44モル%を含むエチレン-ビニルアルコール共重合体を30mmφ押出機を用いてシリンダー温度230?240℃の設定にて溶融混練した後冷却しペレット化した。尚比較例1の試料については上記温度で押出をすることができず260℃に上昇せしめ実施したがエチレン-ビニルアルコール共重合体が分解したため中止した。得られた混合物を外層とし固有粘度0.75のポリエチレンテレフタレートを内層とする多層延伸ポリエステルを日精ASB機械(株)製150D型多層配向ブロー成形機を用いて成形した。多層ボトルの胴部の延伸倍率は縦方向約2倍、横方向約4倍であり、容器の寸法は高さ約170mm胴径約70mm,胴部の肉厚は外層0.05?0.07mm,内層0.25?0.27mm容積500ccであつた。」

第4 対比・判断
1 対比
(1)引用発明の認定
前記第3、1(1)?(5)に摘記した引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「容積が280ml?350mlの加温用プラスチックボトル10であって、
口部11と、口部11下方に設けられた肩部12と、肩部12下方に設けられた胴部20と、胴部20下方に設けられた底部30とを備え、
胴部20は、円筒面21を有し、略円筒形状からならなり、
胴部20の円筒面21には、周方向に沿って等間隔に胴部20内方へ凹む6つのパネル部23が形成され、
容器の全高h_(2)が150mm?160mmであり、容器の胴径w_(3)が65mm?70mmである、加温用プラスチックボトル10。」の発明
(2)対比
引用発明の「加温用プラスチックボトル10」、「パネル部23」は、本願発明の「加温用プラスチック製容器」、「圧力吸収パネル」に相当し、それを踏まえると、引用発明の6つのパネル部23は、本願発明の「5?7枚の圧力吸収パネル」に包含される。
(3)一致点及び相違点の認定
ア 一致点
そうすると、本願発明と引用発明との一致点は、
「加温用プラスチック製容器において、
口部と、
前記口部の下方に設けられた肩部と、
前記肩部の下方に設けられた胴部と、
前記胴部の下方に設けられた底部とを備え、
前記胴部は、円筒面を有する略円筒形状からなり、
前記胴部の前記円筒面に、円周方向に所定間隔を空けて5?7枚の圧力吸収パネルが設けられ、
各圧力吸収パネルは、内側に向けて凹となる形状を有する加温用プラスチック製容器。 」である点。
イ 相違点
本願発明と引用発明との相違点は、次のとおりである。
容器の容量と全高において、本願発明においては、「容量が400ml?550ml」であり、「全高が160mm?175mm」であるのに対し、引用発明においては、「容積が280ml?350ml」であり、「全高が150mm?160mm」である点。
2 相違点についての検討
(1)動機づけについて
引用発明のような飲料容器について、「容積が280ml?350ml」のものを「容量が400ml?550ml」のものに変更しようとすることは、当該飲料容器を用いる飲料品の分野において、その商品の種類を増やし、販売機会を増加しようとするという一般的な動機づけがあるといえる。
そして、具体的に、加温用プラスチック容器について、「容積が280ml?350ml」のものを、「容量が400ml?550ml」のものに変更し得ることは、本件優先日前に知られていた以下の例示にみられるような技術常識からもいうことができる。
・引用文献3:特開2005-75421号公報
・・発明の名称「加熱用樹脂製容器及び加熱用樹脂製容器入り飲料」
・・段落【0025】「樹脂製容器の容量は、本実施の形態では270mlであるが、500mlでもよく・・・」
(2)容量の増加に関して
引用発明に着目して、その容量を増加させる場合には、通常、胴径と全高との一方または両方を増加させる必要があることは明らかであるところ、胴径を維持したまま、全高を大きくすることで容量を増加する手段を選択することは、後記するように飲料容器の分野においてよく知られた手段であり、当業者が適宜選択し得ることである。
すなわち、商品の陳列等の便宜のために、(a)容量が350mlと500mlの缶ビールの場合や(b)容量が500mlと1000mlの紙パック牛乳の場合のように、胴径を維持したまま高さを変えることにより、容量を変化させることは、本件優先日前によく知られた技術常識であり、引用発明においても、前記第3、1(3)に摘記した引用文献1に記載の「ホットウォーマー」内に陳列されることが予定されているのであるから、上記の容量増加手段を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、引用発明の容器の胴径は、65mm?70mmであるところ、胴径を維持したまま、容量を400ml?550mlのものに変更する際に、全高が160mm?175mmに収まるようになることは、引用文献2の、容量が500cc、すなわち、500mlのプラスチックボトルのサイズとして、胴径が約70mm、高さが170mmのものが知られていることから、当該容器の胴径と容量の関係からみて、当業者が容易になし得ることといえる。
(3)小括
上記より、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-31 
結審通知日 2019-06-04 
審決日 2019-06-17 
出願番号 特願2016-518(P2016-518)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 白川 敬寛
門前 浩一
発明の名称 加温用プラスチック製容器  
代理人 中村 行孝  
代理人 村田 卓久  
代理人 朝倉 悟  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 中村 行孝  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 永井 浩之  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 村田 卓久  
代理人 佐藤 泰和  

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