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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする A47C 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする A47C |
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管理番号 | 1353873 |
審判番号 | 不服2018-10103 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-24 |
確定日 | 2019-08-20 |
事件の表示 | 特願2013-136058号「敷寝具」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月19日出願公開、特開2015-8871号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年6月28日の出願であって、平成29年2月15日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月7日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年11月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年4月10日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年7月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年4月10日付け補正の却下の決定及び原査定の概要 1 平成30年4月10日付け補正の却下の決定の概要 平成29年11月2日の手続補正で補正された請求項1に対し、 右側及び左側肩受け部が「上記中央肩受け部よりも薄い」ことを追加する補正、腰受け部が「上記中央肩受け部よりも分厚い」ことを追加する補正、 右側及び左側臀受け部が「上記中央臀受け部よりも薄い」ことを追加する補正、及び「前記頭受け部と、前記各肩受け部と、前記腰受け部と、前記各臀受け部と、前記脚受け部とは、使用者の体形及び体重に対応して硬さ又は厚さの少なくとも一方を個別に調節できるように互いに分割されている」ことを加入する補正は、補正前に存在した発明特定事項を限定するものではないから、限定的減縮を目的とするものではなく、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものではなく、また同法第17条の2第5項第1号、第3号及び第4号に掲げる事項のいずれも目的とするものでもないから、特許法第17条の2第5項に規定する要件に適合していない。 仮に、この補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものとする場合、補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないが、補正後の請求項1の記載には不備があってこの出願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないため、当該補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、この補正は特許法第17条の2第5項第2号の規定に違反するとともに同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 2 原査定の概要 〔理由1〕(明確性)本願は、平成29年4月11日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5の記載が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 〔理由2〕(進歩性)平成29年4月11日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、以下の引用文献1?3に基いて、同請求項5に係る発明は以下の引用文献1?4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献一覧 1.登録実用新案第3112803号公報 2.特開2003-339480号公報 3.特開2002-345603号公報 4.登録実用新案第3124497号公報 第3 本願発明 本願の請求項1?2に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成30年7月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 敷寝具であって、 前記敷寝具の全幅にわたって延びる頭受け部であって、仰向け又は横向きに寝る使用者の頭部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された頭受け部と、 仰向けに寝る使用者の肩部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央肩受け部、並びに該中央肩受け部の右側及び左側の各々に設けられて横向きに寝る使用者の肩部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側肩受け部と、 前記敷寝具の全幅にわたって延びる腰受け部であって、仰向け又は横向きに寝る使用者の腰部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された腰受け部と、 仰向けに寝る使用者の臀部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央臀受け部、並びに該中央臀受け部の右側及び左側の各々に設けられて横向きに寝る使用者の臀部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側臀受け部と、 前記敷寝具の全幅にわたって延びる脚受け部であって、仰向け又は横向きに寝る使用者の脚部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された脚受け部とを備え、 前記右側及び左側肩受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力は、前記中央肩受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力よりも小さく、 前記右側及び左側臀受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力は、前記中央臀受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力よりも小さく、 前記各受け部の各々は、内部に複数の芯材が収容された中袋によって形成されており、 前記各中袋における複数の芯材は、互いに硬さ又は厚さの少なくとも一方が異なり、 前記複数の芯材は交換可能である ことを特徴とする敷寝具。 【請求項2】 請求項1において、 表面にパッドが重ねられて使用される ことを特徴とする敷寝具。」 第4 引用文献の記載事項等 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。なお、文章の途中の改行は省略した。)。 (1a)「【要約】 (修正有) 【課題】外傷又は奇形等のにより仰向けに寝ることが困難である障害者が使用する敷布団で、骨格または筋肉の偏在を補正し、快適に仰向けに寝られ、また下半身が不随である被介護者が使用し、布団の上で排泄したとしても、分解により家庭用洗濯機で洗濯できる大きさに分解できる敷布団を提供する。 【解決手段】抗菌ネット製の袋にカットパイプ等粒状の中綿を封入したセル、抗菌ネット又は布製の袋にセルを複数個入れファスナーで開口部を閉めたユニット、このユニットをファスナーで複数個連結することによって、敷布団を製作し、セルの中の粒状の中綿の量を調整して骨格または筋肉の偏在を補正できるようにし,また汚した場合はユニットごと、セルごとに、粒状の中綿を散らかさずに家庭用洗濯機で洗濯できる。」 (1b)「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 平面である敷布団に仰向けに寝ることが困難である障害者に使用される敷布団で、ネットの袋に、カットパイプ等の粒状の中綿を封入したセルと、ネット又は布製の袋で、複数個のセルを封入し、ファスナー、ボタン等で開口部を閉じたユニット、このユニットを複数個組み合わせ、ファスナー、ボタン等で連結して1枚の敷布団とする構造の敷布団で、セルの中の中綿の量を調整し、骨格又は筋肉の偏在を補正することにより、快適に仰向けで寝られることを特徴とするユニット詰物体型敷布団の構造。 【請求項2】 請求項1の布団で、下半身が不随である被介護者等に使用し、布団の上で排泄、嘔吐等で汚してしまった時、家庭用洗濯機で洗濯できる大きさのユニット及びセルに分解できて、粒状の中綿を封入したまま洗濯、乾燥できることを特徴としたユニット詰物体型の布団、座布団、枕等の構造。」 (1c)「【考案の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本考案は、平面である敷布団に仰向けに寝ることが困難である障害者に使用される、凹凸を自由に作れるユニット詰物体型敷布団に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、外傷や奇形等によって、仰向けに寝ることが困難な障害者に使用される敷布団は、その障害を補正するような布団を職人に作ってもらうか、雑誌等を下に敷いて補正することで仰向けに寝ることを可能としているが、職人に作ってもらう場合は高価であり、また納期もかかるため、汚すなどによって使用不可能となった場合作り直しとなり、高額の費用が必要で、作っている間は、雑誌等を下に敷いて補正しなくてはならない。また雑誌等で補正する場合は、万年床の場合以外は寝るたびに正確に雑誌等を置いてから敷布団を敷かないと正しく補正できない。 【0003】 前項の障害者の場合寝返りを打つことが困難な場合が多く、繊維質の綿の布団では通気性が悪いため背中部分がムレ、床ズレや熱中症の原因となる場合がある。 【0004】 下半身が不自由である被介護者の排泄の処理は、紙オムツによることが多いが、交換中に排泄してしまった場合。また嘔吐や食事をこぼすなどによって、そのままでは使用できないほど汚れた敷布団は、天然繊維綿の布団は家庭では洗濯できず、また合成繊維の布団であっても洗濯には浴槽を用い、屋外にまる一日干さなければならないために、悪天候が続くといつまでも洗濯できない状態となってしまう。 【0005】 カットパイプやそば殻などの粒状の中綿により構成される布団や枕の、生地または中綿を洗濯する場合は、生地から中綿を取り出さなければ大きすぎて家庭用の洗濯機で洗濯することは困難である。 【考案の開示】 【考案が解決しようとする課題】 【0006】 外傷または奇形等の障害により、平面である敷布団に仰向けに寝ることが困難である障害者が、骨格又は筋肉の偏在を補正し、快適に仰向けで寝られる敷布団を安価に提供する。 【0007】 下半身が不随である被介護者が、布団の上で排泄してしまった場合でも、家庭用洗濯機で容易に洗濯できる敷布団を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本考案の請求項1記載の敷布団は、それぞれ異なった厚みのユニット布団を、ファスナー等により連結することによる。 【0009】 本考案の請求項2記載の敷布団は、前項のユニット布団に、生地に抗菌樹脂製のネットを、中綿にカットパイプ等の抗菌樹脂素材を用いることによて、家庭用洗濯機で洗濯、脱水までを行い、自然乾燥でもすばやく乾くようにする。 【考案の効果】 【0010】 厚みの異なるユニットの組み合わせにより、凹凸のある敷布団を作ることが出来、平面である敷布団に仰向けに寝ることが困難である障害者が、快適に仰向けで寝ることが出来る。また標準化されたユニットにより、量産が可能となり、安価に提供することができる。 【0011】 下半身が不随である被介護者が、敷布団に排泄してしまった場合。また嘔吐や食事をこぼすなどによって、そのままでは使用できないほど汚れてしまった場合、汚れた部分のユニットを家庭用洗濯機で洗濯、脱水までを行い、自然乾燥でもすばやく乾くため、悪天候が続く場合でも洗濯でき、また予備のユニットと交換することにより、長時間敷布団が使用できない状態を避けることが出来る。 【0012】 ユニットごとの洗濯ができるため、カットパイプ等を使用した布団や枕であっても、生地から中綿を取り出さずに洗濯することができ、カットパイプ等の粒状の中綿を散らかさずに洗濯することが出来るため、洗濯後は容易に元の敷布団に組み立てることが出来る。 【考案を実施するための最良の形態】 【0013】 敷布団の部分の厚みを調整し、骨格又は筋肉の偏在を補正する目的と、家庭用洗濯機で洗濯することを同時に可能にした構造である。 【実施例1】 【0014】 本考案のユニット型敷布団の最小単位を構成するセルの構造を、図1を用いて説明する。セルは、抗菌樹脂製の洗濯ネット状の生地1に、中綿である抗菌樹脂製のカットパイプ2を封入したものである。この中綿の量により敷布団を構成した場合の部分の高さを調整するため、ネットの口はファスナー3で閉じる形状とする。本考案に係わる中綿はカットパイプであることを要さず、そば殻及び木炭片等を用いることもできる。 【0015】 図2に示すユニットは、ユニット袋5(当審注:段落【0022】の「4 ユニット袋」という記載及び図2から「ユニット袋4」の誤記と認める。)にセル4(当審注:段落【0022】の「5 セル」という記載及び図2から「セル5」の誤記と認める。)を複数個封入する。ユニット袋は抗菌樹脂製のネットの生地で、セルを封入するポケットを有し、ファスナー6で開口部を閉じる形状とする。以後ユニット袋にセルが封入されたものをユニットと呼ぶ。本考案に係わるユニット袋はネットによる生地であることを要さず、布であっても使用することが出来る。 【0016】 ユニット袋にはユニット間を連結する連結用ファスナー7を有し、複数ユニットを連結して図3(当審注:図3に複数ユニットを連結した敷布団は示されていない一方、図4に示されていることから、「図4」の誤記と認める。)に示す敷き布団とする。 【0017】 本考案の用途は敷布団に限定するものではなく、ユニット袋に入れるセルの個数、ユニットの連結数により、座布団、長座布団、及び枕にも応用可能である。 【実施例2】 【0018】 不時の排泄等により一部分を汚し、使用できない場合は、ファスナーを取り外し、ユニット袋及びセルを洗濯機で洗濯する。このときセルを分解する必要が無いため、中綿であるカットパイプがセルから出ることなく、容易にもとの敷布団に組上げることが出来る。 【産業上の利用可能性】 【0019】 本考案による敷布団は、セルの標準化による量産化により安価に生産可能なため、介護ベッド用の敷布団をはじめ、洗濯可能な通気性のよい敷布団として、健常者用の布団として も利用できる。 【0020】 本考案による敷布団は、セルを組み合わせる個数により、座布団や枕、また敷布団でもシングルサイズ及びダブルサイズに組替えることが出来るため、これまで専門の職人に依頼していた打ち直しを家庭で出来るようにすることが出来る。 【図面の簡単な説明】 【0021】 【図1】セルの構造である。 【図2】ユニット及びユニット袋の構造である。 【図3】ユニットの構造である。 【図4】完成した敷布団である。 【図5】ユニットの厚みを変化させ、厚みに凹凸を持たせた敷布団の例である。 【図6】図5の敷布団により臀部の補正をした正面図の例である。 【符号の説明】 【0022】 1 セルの生地 2 中綿であるカットパイプ 3 セルのファスナー 4 ユニット袋 5 セル 6 ユニット袋のセル封入用ファスナー 7 ユニット連結ファスナー」 (1d)引用文献1には以下の図が示されている。 (2)引用文献1に記載された発明 (2-1)摘記事項(1a)?(1c)及び摘記事項(1d)の図から以下の事項が認定できる。 ア 外傷又は奇形等により平面である敷き布団に仰向けに寝ることが困難である障害者が使用する敷布団において、 ネットの袋にカットパイプ等の粒状の中綿を封入したセル、ネット又は布製の袋にセルを複数個入れ、ファスナーで開口部を閉めたユニット、このユニットをファスナーで複数個連結することによって、1枚の敷布団とする構造の敷布団であって、 セルの中の粒状の中綿の量を調整して骨格または筋肉の偏在を補正することにより、快適に仰向けで寝ることができ、また汚した場合はユニット及びセルに分解できてユニットごと又はセルごとに、粒状の中綿を封入したまま家庭用洗濯機で洗濯できること(要約、請求項1?2)。 イ 引用文献1における実施例1についての段落【0014】?【0017】の記載及び図1?6の図示内容から、上記「ア」における「ネットの袋にカットパイプ等の粒状の中綿を封入したセル」は、実施例1では「洗濯ネット状の生地1」に「カットパイプ2」の粒状の中綿を封入した「セル5」として構成され、同じく「ネット又は布製の袋にセルを複数個入れ、ファスナーで開口部を閉めたユニット」は、「ネットの生地」の「ユニット袋4」に「セル5」を3個敷布団の幅方向に並べて入れ、「ファスナー6」で開口部を閉めた「ユニット」として構成され、「このユニットをファスナーで複数個連結することによって、1枚の敷布団とする構造の敷布団」は、この「ユニット」を「連結用ファスナー7」で5個敷布団の長手方向に並べて連結することによって、頭部を支えるユニット、肩部を含む頭側胴部を支えるユニット、臀部を含む足側胴部を支えるユニット、大腿を含む脚部を支えるユニット、足を含む脚部を支えるユニットからなる1枚の敷布団とする構造の敷布団として構成されることが明らかである。 ウ 実施例1についての段落【0014】の「この中綿の量により敷布団を構成した場合の部分の高さを調整する」という記載及び上記「イ」を踏まえると、上記「ア」における「セルの中の粒状の中綿の量を調整」することは、「セル5」の中の粒状の中綿の量の調整により敷布団の部分の高さを調整することといえる。 (2-2)したがって、これらを整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「外傷又は奇形等により平面である敷き布団に仰向けに寝ることが困難である障害者が使用する敷布団において、 洗濯ネット状の生地1にカットパイプ2の粒状の中綿を封入したセル5、ネットの生地のユニット袋4にセル5を3個敷布団の幅方向に並べて入れ、ファスナー6で開口部を閉めたユニット、このユニットを連結用ファスナー7で5個敷布団の長手方向に並べて連結することによって、頭部を支えるユニット、肩部を含む頭側胴部を支えるユニット、臀部を含む足側胴部を支えるユニット、大腿を含む脚部を支えるユニット、足を含む脚部を支えるユニットからなる1枚の敷布団とする構造の敷き布団であって、 セル5の中の粒状の中綿の量の調整により敷布団の部分の高さを調整して骨格または筋肉の偏在を補正することにより、快適に仰向けで寝ることができ、また汚した場合はユニット及びセルに分解できてユニットごと又はセルごとに、粒状の中綿を封入したまま家庭用洗濯機で洗濯できる、 敷布団。」 2 引用文献2について (1)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の記載がある。 (2a)「【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は、通気性及びクッション性に優れ、特にへたりの起こりにくい敷布団用のクッション材に関するものである。 【0002】 【従来の技術】敷布団用のクッション材には、繊維シートを複数枚積層したものや、ポリウレタンフォーム、三次元立体編物等が所定の厚さ大きさに形成され、袋状に形成した布製の外装体につめ込む方法で敷布団が製造されている。 【0003】しかし、これらのクッション材は、敷布団として使用を重ねるうちに、人が横たわる部分が徐々にへたり、敷布団中央部と周辺部に高低差が発現し、寝心地が悪くなるという問題があった。この問題解決のために種々の技術が提案されており、クッション性を向上するために、例えば、繊維シートの場合、特開昭58-212413、特開平11-123126のように、布団の中央部の綿の充填密度を側部よりも大きくなるようにしたり、人間の横たわる中央部の中綿の高さを高くして製造している例がある。また、特開平11-123126のように、繊維シートを所定巾と敷布団の厚さに合わせた長さに切断した小ブロック体とし、該小ブロック体を立てるように連結し、繊維方向を上下方向にすることによって、通気性とクッション性が向上し、寝心地がよくなる旨の開示もある。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、従来技術では、敷布団を製造するのに、何工程かを経なければならず、手間と時間を費やし、コストの問題や、充填密度をあげることから重さの問題もあり、また長期間に亘る使用によるへたりや底つき感、透湿性や通気性で満足の得られるものではなかった。本発明は、底つき感がなく、クッション性が良好でしかも透湿性や通気性に優れ、製造工程を簡略化できる敷布団用クッション材を提供するものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、優れたクッション性と通気性をもち、しかも使用部位に応じて簡単に硬度が変えられる三次元立体編物に着目し、本発明に到達した。 【0006】すなわち第1の発明の敷布団用クッション材は、互いに離間して配置された表編地と裏編地とを連結糸でつないだ三次元立体編物で形成されたクッション材で、使用部位によって硬度を変えたことを特徴とする敷布団用クッション材である。この敷布団用クッション材は、軽量でクッション性に富み、使用部位によって硬度を変えているため長期間に亘る使用によるへたりや底つき感のない敷布団用クッション材である。 【0007】第2の発明は、上記三次元立体編物の厚さが10?50mmで、表裏編地の地編糸が200?2500dtexのマルチフィラメントからなり、連結糸が250?1500dtexのモノフィラメントからなる敷布団用クッション材である。前記地編糸と連結糸の組み合わせで、軽量で適度のクッション性と圧縮硬さを保有した敷布団用クッション材となる。 【0008】第3の発明は、使用部位を長手方向に足部、腰部、頭部に3分割し、その部位に適した硬度とした敷布団用クッション材である。前記のように使用部位を3分割し、人が敷布団の上に寝た状態において最も荷重のかかる、腰部の硬度をあげ、荷重に応じて硬度を変えたものである。このような構成により、長期間に亘る使用により、敷布団が船底型にへたるようなことが軽減され、寝心地のよい状態を維持することが可能となる。 【0009】第4の発明は、使用部位を長手方向に足部、腰部、頭部に3分割し、かつ幅方向に中央部、左側部、右側部に3分割し、その部位に適した硬度とした敷布団用クッション材である。前記のように使用部位を9分割し、人が敷布団の上に寝た状態において最も荷重のかかる、腰部中央部の硬度をあげ、他の部位についても、荷重に応じて硬度を変えたものである。このような構成により、長期間に亘る使用により、敷布団が船底型にへたるようなことが軽減され、さらに寝心地のよい状態を維持することが可能となる。 【0010】第5の発明は、三次元立体編物の幅方向の各部位に応じて編組織を変化させ、35?85の硬度において2段階乃至4段階に変化させた敷布団用クッション材である。三次元立体編物は、編成組織を変えることにより、編成密度を自由に設定することが出来、前記各部位に応じた硬度に一工程で編み上げるものである。 【0011】第6の発明は、三次元立体編物の長手方向の各部位に応じて連結糸の太さおよび/または本数を変えることにより編成密度を変化させ、35?85の硬度において2段階乃至4段階に変化させた敷布団用クッション材である。三次元立体編物の長手方向の各部位に応じて連結糸の太さおよび/または本数を変えることにより編成密度を変え、前記各部位に応じた硬度に一工程で編み上げるものである。」 (2b)「【0016】図1は、本発明の敷布団のクッション材に用いる三次元立体編物の概略図である。人体の荷重のかかる部位に応じて区分けし、長手方向に足部、腰部、頭部にそれぞれ1/4、1/2、1/4の幅に区分し、幅方向に左側部、中央部、右側部にそれぞれ1/6、2/3、1/6の幅に区分し、その区分に適した硬度に編み上げたものである。該硬度は使用部位によって、連結糸2の密度を変えて得ることができ、最も荷重のかかりやすい腰部・中央部の硬度を50?85、頭部・中央部、足部・中央部、腰部・両側部の硬度を45?65、その他の部位を35?50とした。頭部、腰部、足部、中央部、両側部の幅の区分は、上記のような幅には特に限定されないが、敷布団の大きさに合わせ、自由に設定される。 【0017】硬度はデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計、アスカーF型、高分子計器株式会社製)を用いて測定し、5回の測定値の平均をその試料の硬度とした。」 (2c)「【0020】図3は腰部中央部の三次元立体編物の編成組織図である。表編地の組織は1リピート4コース(L1?L2)の六角メッシュ、連結糸の組織は1リピート2コース(L3?L4)、裏編地の組織は1リピート2コース(L5?L6)の鎖挿入とし、目付け1100g/m2の三次元立体編物を得た。硬度は72であった。 【0021】図4は腰部両側部の三次元立体編物の編成組織図である。表編地の組織は1リピート4コース(L1?L2)の六角メッシュ、連結糸の組織は1リピート2コース(L3?L4)、裏編地の組織は1リピート2コース(L5?L6)の鎖挿入とし、目付け990g/m2の三次元立体編物を得た。硬度は59である。 【0022】図5は頭部中央部、足部中央部の三次元立体編物の編成組織図である。表編地の組織は1リピート4コース(L1?L2)の六角メッシュ、連結糸の組織は1リピート2コース(L3?L4)、裏編地の組織は1リピート2コース(L5?L6)の鎖挿入とし、目付け850g/m2の三次元立体編物を得た。硬度は52である。 【0023】図6は頭部両側部、足部両側部の三次元立体編物の編成組織図である。表編地の組織は1リピート4コース(L1?L2)の六角メッシュ、連結糸の組織は1リピート2コース(L3?L4)、裏編地の組織は1リピート2コース(L5?L6)の鎖挿入とし、目付け750g/m2の三次元立体編物を得たこのようにして得た。硬度は41である。 【0024】表面及び裏面の組織はすべて共通で、連結糸の組織で硬度をかえた。」 (2d)引用文献2には以下の図が示されている。 (2)引用文献2に記載された技術的事項 摘記事項(2a)?(2c)及び摘記事項(2d)の図から、引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。 「へたりの起こりにくい敷布団用のクッション材に用いる三次元立体編物を、人体の荷重のかかる部位に応じて区分けし、長手方向に足部、腰部、頭部に区分し、幅方向に左側部、中央部、右側部に区分し、 デュロメータ(スプリング式ゴム硬度計、アスカーF型、高分子計器株式会社製)を用いて測定した硬度において、最も荷重のかかりやすい腰部・中央部の三次元立体編物の硬度は72、腰部両側部の三次元立体編物の硬度は59である。」 第5 当審の判断 1 理由1(明確性)について (1)理由1の概要 平成29年4月11日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1における「圧縮応力」に関する記載に係る事項が一意に決められるものではないために、請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?5に係る発明は明確でないから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に違反している。 (2)判断 平成30年7月24日の手続補正で補正された請求項1の「前記右側及び左側肩受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力は、前記中央肩受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力よりも小さく、前記右側及び左側臀受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力は、前記中央臀受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力よりも小さく」という記載では、各圧縮応力について「無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力」であることが特定されているので、請求項1の該記載に係る事項は一意に決められるものといえることから、明確である。 したがって、請求項1及び請求項1を直接引用する請求項2に係る発明は、明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものでない。 2 理由2(進歩性)について (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明の「敷布団」及び「障害者」は、本件発明1の「敷寝具」及び「使用者」に相当する。 (イ)引用発明の「頭部を支えるユニット」は、「ユニット袋4にセル5を3個敷布団の幅方向に並べて入れ」たものなので「敷布団」の全幅にわたって延びるものといえること、「障害者が」「仰向けで寝ることができ」る「敷布団」を構成するユニットであること、及びその「3個」の「セル5」について「セル5の中の粒状の中綿の量の調整により敷布団の部分の高さを調整」すなわち厚さを調節できることから、かかる「頭部を支えるユニット」は、上記「(ア)」をも踏まえると、本件発明1の「前記敷寝具の全幅にわたって延びる頭受け部であって、仰向け又は横向きに寝る使用者の頭部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された頭受け部」に相当するものといえる。 (ウ)引用発明の「肩部を含む頭側胴部を支えるユニット」は、少なくとも肩部を支えるものであること、「障害者が」「仰向けで寝ることができ」る「敷布団」を構成するユニットであること、「ユニット袋4にセル5を3個敷布団の幅方向に並べて入れ」たものであって中央の「セル5」による部分とその中央の「セル5」の右側及び左側の各々に設けられる右側及び左側の「セル5」による部分があること、及びその「3個」の「セル5」について「セル5の中の粒状の中綿の量の調整により敷布団の部分の高さを調整」すなわち厚さを調節できることから、かかる「肩部を含む頭側胴部を支えるユニット」と、本件発明1の「仰向けに寝る使用者の肩部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央肩受け部、並びに該中央肩受け部の右側及び左側の各々に設けられて横向きに寝る使用者の肩部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側肩受け部」とは、上記「(ア)」をも踏まえると、「仰向けに寝る使用者の肩部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央肩受け部、並びに該中央肩受け部の右側及び左側の各々に設けられて、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側肩受け部」の限りで共通するものといえる。 (エ)引用発明の「臀部を含む足側胴部を支えるユニット」は、少なくとも臀部を支えるものであること、「障害者が」「仰向けで寝ることができ」る「敷布団」を構成するユニットであること、「ユニット袋4にセル5を3個敷布団の幅方向に並べて入れ」たものであって中央の「セル5」による部分とその中央の「セル5」の右側及び左側の各々に設けられる右側及び左側の「セル5」による部分があること、及びその「3個」の「セル5」について「セル5の中の粒状の中綿の量の調整により敷布団の部分の高さを調整」すなわち厚さを調節できることから、かかる「臀部を含む足側胴部を支えるユニット」と、本件発明1の「仰向けに寝る使用者の臀部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央臀受け部、並びに該中央臀受け部の右側及び左側の各々に設けられて横向きに寝る使用者の臀部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側臀受け部」とは、上記「(ア)」をも踏まえると、「仰向けに寝る使用者の臀部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央臀受け部、並びに該中央臀受け部の右側及び左側の各々に設けられて、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側臀受け部」の限りで共通するものといえる。 (オ)引用発明の「大腿を含む脚部を支えるユニット」及び「足を含む脚部を支えるユニット」は、それぞれ「ユニット袋4にセル5を3個敷布団の幅方向に並べて入れ」たものなので「敷布団」の全幅にわたって延びるものといえること、「障害者が」「仰向けで寝ることができ」る「敷布団」を構成するユニットであること、及びその「3個」の「セル5」について「セル5の中の粒状の中綿の量の調整により敷布団の部分の高さを調整」すなわち厚さを調節できることから、かかる「大腿を含む脚部を支えるユニット」及び「足を含む脚部を支えるユニット」は、上記「(ア)」をも踏まえると、本件発明1の「前記敷寝具の全幅にわたって延びる脚受け部であって、仰向け又は横向きに寝る使用者の脚部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された脚受け部」に相当するものといえる。 以上のことから、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「敷寝具であって、 前記敷寝具の全幅にわたって延びる頭受け部であって、仰向け又は横向きに寝る使用者の頭部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された頭受け部と、 仰向けに寝る使用者の肩部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央肩受け部、並びに該中央肩受け部の右側及び左側の各々に設けられて、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側肩受け部と、 仰向けに寝る使用者の臀部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央臀受け部、並びに該中央臀受け部の右側及び左側の各々に設けられて、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側臀受け部と、 前記敷寝具の全幅にわたって延びる脚受け部であって、仰向け又は横向きに寝る使用者の脚部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された脚受け部とを備える敷寝具。」 <相違点1> 「中央肩受け部」及び「右側及び左側肩受け部」並びに「中央臀受け部」及び「右側及び左側臀受け部」について、 本願発明1は、使用者が仰向け及び横向きで寝ることを想定して「仰向けに寝る使用者の肩部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央肩受け部、並びに該中央肩受け部の右側及び左側の各々に設けられて横向きに寝る使用者の肩部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側肩受け部」であって「前記右側及び左側肩受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力は、前記中央肩受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力よりも小さく」と特定するとともに、 「仰向けに寝る使用者の臀部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された中央臀受け部、並びに該中央臀受け部の右側及び左側の各々に設けられて横向きに寝る使用者の臀部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側臀受け部」であって「前記右側及び左側臀受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力は、前記中央臀受け部の無負荷時の厚みから40%圧縮したときの圧縮応力よりも小さく」と特定するのに対し、 引用発明は、「外傷又は奇形等により平面である敷き布団に仰向けに寝ることが困難である障害者」が「快適に仰向けで寝ることができ」る敷布団であって、本件発明1のように特定するものでない点。 <相違点2> 本件発明1は、「中央肩受け部」及び「右側及び左側肩受け部」並びに「中央臀受け部」及び「右側及び左側臀受け部」の構成とは別に、「前記敷寝具の全幅にわたって延びる腰受け部であって、仰向け又は横向きに寝る使用者の腰部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された腰受け部」の構成を特定するのに対し、引用発明は、そのような構成を特定するものでない点。 <相違点3> 本願発明1は「前記各受け部の各々は、内部に複数の芯材が収容された中袋によって形成されており、前記各中袋における複数の芯材は、互いに硬さ又は厚さの少なくとも一方が異なり、前記複数の芯材は交換可能である」という構成を特定するのに対し、引用発明はそのような構成を特定するものでない点。 イ 判断 上記相違点1について検討する。 (ア)原査定における判断(平成29年9月7日付けの最後の拒絶理由通知) 「文献2には、長手方向に足部、腰部及び頭部に区分し、幅方向に左側部、中央部及び右側部に区分し、デュロメータで測定したアスカーF型硬度において、腰部・中央部の硬度が72とし、腰部・両側部の硬度を59とした([0016]-[0017],[0020]-[0024],図1)敷布団が記載されている。 文献2に記載された発明における腰部は、上記相違点における肩受け部及び臀受け部に相当するから、上記相違点に係る技術的事項は文献2に記載されているものである。デュロメータによる硬さの測定は、一定の押圧力における圧子の押し込み量が所定の最大値である場合を0とし全く押し込まれない場合を100とするものであるから、デュロメータにより硬さの値がより大きいことは、本願における圧縮応力の大きさもより大きいものということが言える。してみると、文献2に記載された発明における腰部・中央部の硬度が72とし、腰部・両側部の硬度を59とすることは、上記相違点における「前記右側及び左側肩受け部の圧縮応力は、前記中央肩受け部の圧縮応力よりも小さく、前記右側及び左側臀受け部の圧縮応力は、前記中央臀受け部の圧縮応力よりも小さい」ことに相当する。 文献1に記載された発明と文献2に記載された発明とは、いずれも敷布団に関し、同一の技術分野に属する。また、寝心地を向上させるという共通の作用を有する(文献1の[0006];文献2の[0003]-[0005])から、組み合わせる動機を有する。してみると、文献1に記載された発明において、文献2に記載されているように硬さを設定することに、格段の困難を要するものではないし、顕著な作用効果を奏するものでもない。」(第3頁第12?32行) (イ)判断 引用発明の課題は、「外傷又は奇形等のにより仰向けに寝ることが困難である障害者が使用する敷布団で、骨格または筋肉の偏在を補正し、快適に仰向けに寝られ、また下半身が不随である被介護者が使用し、布団の上で排泄したとしても、分解により家庭用洗濯機で洗濯できる大きさに分解できる敷布団を提供する」(記載事項(1a)の要約)ことと理解することができ、引用発明における特に「ユニット」を構成する「セル5の中の粒状の中綿の量の調整により敷布団の部分の高さを調整して骨格または筋肉の偏在を補正する」という構成及び「ユニット及びセルに分解でき」という構成により、該課題を解決し、「敷布団の部分の厚みを調整し、骨格又は筋肉の偏在を補正する目的と、家庭用洗濯機で洗濯することを同時に可能にした」(記載事項(1c)の段落【0013】)ものと理解することができる。 一方、本願発明1の課題は、「個々の使用者Uが敷寝具1上に仰向け又は横向きに寝た状態で、その体形等に合わせて各ブロックの特性を細かく調節することにより、使用者Uの理想的な寝姿勢を保つことができる敷寝具1を提供すること」(明細書の段落【0069】)と理解することができ、相違点1に係る本願発明1の構成における「横向きに寝る使用者の肩部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側肩受け部」及び「横向きに寝る使用者の臀部を支えるべく、硬さ又は厚さの少なくとも一方を調節できるように構成された右側及び左側臀受け部」についての構成は「横向きの状態にある使用者Uはその体の中心がまっすぐに伸びた理想的な寝姿勢をとる」(明細書の段落【0067】)ためのものといえる。 してみると、引用発明と本願発明1の課題は異なるのであって、「障害者」が「快適に仰向けに寝」るための引用発明において、相違点1に係る本願発明1の構成における、「横向きの状態にある使用者Uはその体の中心がまっすぐに伸びた理想的な寝姿勢をとる」ための「右側及び左側肩受け部」及び「右側及び左側臀受け部」についての構成を採用する理由がない。 ここで、原査定において引用された引用文献2には、上記「第4 2(2)」で述べたように、「へたりの起こりにくい敷布団のクッション材に用いる三次元立体編物を、人体の荷重のかかる部位に応じて区分けし、長手方向に足部、腰部、頭部に区分し、幅方向に左側部、中央部、右側部に区分し、デュロメータ(スプリング式ゴム硬度計、アスカーF型、高分子計器株式会社製)を用いて測定した硬度において、最も荷重のかかりやすい腰部・中央部の三次元立体編物の硬度は72、腰部両側部の三次元立体編物の硬度は59である。」という技術的事項が記載されており、該技術的事項の課題は、記載事項(2a)(段落【0002】?【0005】)から、「敷布団用のクッション材には、繊維シートを複数枚積層したものや、ポリウレタンフォーム、三次元立体編物等が所定の厚さ大きさに形成され、袋状に形成した布製の外装体につめ込む方法で敷布団が製造されている」が、「これらのクッション材は、敷布団として使用を重ねるうちに、人が横たわる部分が徐々にへたり、敷布団中央部と周辺部に高低差が発現し、寝心地が悪くなるという問題があった」ところ、「この問題解決のために種々の技術が提案されて」いるものの、「敷布団を製造するのに、何工程かを経なければならず、手間と時間を費やし、コストの問題や、充填密度をあげることから重さの問題もあり、また長期間に亘る使用によるへたりや底つき感、透湿性や通気性で満足の得られるものではなかった」ことから、「底つき感がなく、クッション性が良好でしかも透湿性や通気性に優れ、製造工程を簡略化できる敷布団用クッション材を提供する」ことと理解することができる。そして、該技術的事項はこのような課題を解決するために「優れたクッション性と通気性をもち、しかも使用部位に応じて簡単に硬度が変えられる三次元立体編物に着目し」、「到達した」ものであって、「へたりの起こりにくい敷布団のクッション材に用いる三次元立体編物」を「長手方向に足部、腰部、頭部に区分し、幅方向に左側部、中央部、右側部に区分し」、「最も荷重のかかりやすい腰部・中央部の三次元立体編物の硬度」を「腰部両側部の三次元立体編物の硬度」よりも硬くするものといえる。そして該技術的事項における「敷布団」と、「腰部」とは、本願発明1における「敷寝具」と、「肩部」、「腰部」及び「臀部」とに相当する。 してみると、引用発明の課題は引用文献2に記載の該技術的事項の課題と異なるし、引用発明において引用文献2に記載の該技術的事項の課題が内在するともいえないことから、引用発明に引用文献2に記載の該技術的事項を適用する動機付けは存在しない。 補足すると、引用発明のクッション材は「カットパイプ2」等の「粒状の中綿」であって、引用文献2に記載の該技術的事項の課題における「これらのクッション材は、敷布団として使用を重ねるうちに、人が横たわる部分が徐々にへたり、敷布団中央部と周辺部に高低差が発現し、寝心地が悪くなるという問題」の前提となる「繊維シートを複数枚積層したものや、ポリウレタンフォーム、三次元立体編物等が所定の厚さ大きさに形成され、袋状に形成した布製の外装体につめ込」まれたものでない。仮に引用発明において使用を重ねるうちに意図せぬ高低差が発現したとしても、「粒状の中綿の量により敷布団の部分の高さを調整」できることから、引用発明において引用文献2の課題における高低差についての問題は存在しない。 また仮に引用発明に対して引用文献2に記載の該技術的事項を適用したとすると、引用発明におけるクッション材が「粒状の中綿」から「三次元立体編物」となってしまうために引用発明が企図する「敷布団の部分の高さを調整」できず、引用発明の課題が解決できなくなることから、引用発明に対して引用文献2に記載の該技術的事項を適用することには阻害要因があるといえる。 さらにそもそも引用文献2には、上記「第4 2(2)」で述べた技術的事項が記載されているにすぎず、相違点1に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。また原査定で引用された引用文献3(特に段落【0007】?【0011】、図1?3)には、中芯2及び中芯3(本願発明1の「複数の芯材」に相当する。)についての技術的事項が記載されているものの、相違点1に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。 したがって、相違点2?3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2?3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものでない。 よって、本願発明1は、当業者であっても原査定において引用された引用文献1?3に基いて容易に発明できたものとはいえない。 (2)本願発明2について 本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに「表面にパッドが重ねられて使用されること」の特定により減縮したものである。そして、引用文献4(特に段落【0018】、図3)には敷き寝具材w(本願発明2の「パッド」に相当する。)についての技術的事項が開示されているものの、上記「(1)イ(イ)」の判断と同様に相違点1に係る本願発明2の構成は記載も示唆もされていない。そうすると、本願発明2は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても原査定において引用された引用文献1?4に基いて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-07-29 |
出願番号 | 特願2013-136058(P2013-136058) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WYB
(A47C)
P 1 8・ 537- WYB (A47C) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井出 和水 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 中村 泰二郎 |
発明の名称 | 敷寝具 |
代理人 | 特許業務法人前田特許事務所 |