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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1353881
審判番号 不服2018-3851  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-19 
確定日 2019-08-01 
事件の表示 特願2017-516529「真空チャック」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月26日国際公開、WO2017/086333〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年11月16日(優先権主張2015年11月19日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月24日に特許協力条約第19条補正の写し(19条補正のWIPO受領日 平成29年2月17日)が提出され、同年8月31日付けで拒絶理由通知が通知され、同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月11日付けで拒絶査定がなされた。
それに対して、平成30年3月19日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。

第2 平成30年3月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年3月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
連通経路が形成されている基体を備え、前記連通経路を通じて前記基体の表面と基板との間に負圧領域が形成されることにより前記基体の表面側に前記基板を吸着保持するように構成されている真空チャックであって、
前記基体の表面に前記連通経路を囲う環状に窪んでいる環状凹部が形成され、
前記環状凹部に環状の弾性素材からなるシール部材が配置され、
前記シール部材の一部が前記基体の吸着平面を基準とした突出量が1.0?9.0mmの範囲内であるように当該吸着平面より突出し、かつ、弾性的に変形可能に構成され、
前記基板として反りまたはうねりが存在する基板を吸着保持するための真空チャックであることを特徴とする真空チャック。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年3月24日に提出された特許協力条約第19条補正の写しに記載された請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
連通経路が形成されている基体を備え、前記連通経路を通じて前記基体の表面と基板とシール部材との間に負圧領域が形成されることにより前記基体の表面側に前記基板を吸着保持するように構成されている真空チャックであって、
前記基体の表面に前記連通経路を囲う環状に窪んでいる環状凹部が形成され、
前記環状凹部に環状の弾性素材からなる前記シール部材が配置され、
前記シール部材の一部が前記基体の吸着平面を基準とした突出量が1.0?9.0mmの範囲内であるように当該吸着平面より突出し、かつ、弾性的に変形可能に構成されていることを特徴とする真空チャック。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「真空チャック」の内容について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2005-528794号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、半導体処理技術に関し、より詳細には、多用途ウェハキャリアに関する。」

「【0005】
成長プロセス又は除去プロセス中、ウェハは、通常、キャリアヘッドによって保持される。図1Aに示されるように、回転シャフト12を有する従来のキャリアヘッド10は、電着プロセス中、ウェハ14を保持する。ウェハ14は、キャリアヘッド10のキャリアベース18(チャック)の一面16に配置される。成長及び/又は材料除去工程中、キャリアヘッド10は、ウェハの裏面に真空を適用し、クランプ20を用いることにより、キャリアヘッド10のベース18の一面16にウェハ14を確実に保持する。真空は、キャリアベース18とキャリアヘッド10のボディとを通って延びている真空ライン22を用いて適用される。また、クランプ20は、ウェハ14に電気コンタクト24をシールし得る。このような従来のキャリアヘッドでは、ウェハの周縁部の周辺のクランプにより、ウェハのエッジにおいて成長又は材料除去は生じない。…(略)…」

「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、改良されたウェハキャリアを提供することである。
…(略)…」

「【0017】
以下でより充分に説明されるように、ウェハキャリア106は、真空吸引を用いてウェハ108の裏面113からウェハ108を保持する。…(略)…
【0021】
図3A及び図3Bの各々は、本発明の実施形態のウェハキャリア106の切断側面図をさらに詳細に示す。以下で明らかにされるように、図3Aと図3Bとで示される実施形態間の違いは、用いられるシール部材154のタイプである。ウェハキャリア106は、下端部142及び上端部144を備えるキャリアボディ140を有する。キャリア106の下端部142は、キャリアベース146、即ちチャックを有し、キャリアベース146にウェハ108が保持される。キャリアベースは、プラスチック、スチール又はチタンのような様々な材料によって形成され得る。そして、図示されるように、キャリアリング147は、ウェハの、以下で説明される支持パッド166に接触している外表面よりも下方に延びている外表面部分を有し得、ウェハ108の裏面よりも下方に延びている外表面部分を越えるウェハ108の側方への移動が防止される。キャリアベース146は、好ましくは、キャリアリング147に囲まれている。キャリアリングは、キャリアベースと別体的に構成され得、あるいは、一体的な部品であり得る。キャリアリングは、プラスチック、又は、処理溶液内で安定なあらゆる材料によって形成され得る。ウェハキャリア106は、シャフト110を介して回転又は移動される。本実施形態では、キャリアベース146の底面148は、好ましくは、ディスク形状であり、第1の外表面部分150及び第2の外表面部分152を有する。第1の外表面部分150は、内側領域である第2の外表面部分を囲んでいる周縁外表面である。底面148の第1及び第2の外表面部分150,152は、この後説明される本発明のシール部材154によって設定されている。
【0022】
シール部材154は、底面148において、第1及び第2の外表面150,152間に形成されている円形グルーブ156内に位置され、ベース146の内側領域を規定しており、シール部材154は、ウェハ108の裏側に接触しているときには、ウェハ108の裏側の内側領域を設定する。流体ライン158は、以下でさらに説明されるように、流体供給源を、底面148の第1の外表面部分150の複数の出口ポート159に接続する。出口ポート159は、第1の外表面150の周囲で径方向に配置されており、このため、出口ポートは、シール部材154の周囲に同心的に形成されている。流体ライン158の下端部160は、第1の外表面部分150に直接接続され得るが、キャリアベース146とキャリアリング147との間を通り得る。これら実施形態では、流体ライン158は、ガス、好ましくは非酸化ガスを、ウェハ108の裏面113の周縁裏側エッジ162に噴出させるのに用いられる。非酸化ガスは、好ましくは、窒素ガスであり得る。孔は、どんな数でもあり得、様々な径を有し得るが、最も好ましいと判明している0.5乃至1mmの範囲の直径であることが好ましい。好ましい実施形態では、200mmと300mmとの間のウェハサイズについて、16乃至64個の孔が、ウェハキャリアのエッジを取り巻いて配置されている。もちろん、このような孔の数は、変化され得、また、孔に代わって、連続的なスリット若しくは複数のスリット、又は、別の形状の開口が、代わりに用いられ得る。ガス流速は、変化され得、流速は、好ましくは、毎分10リットルと毎分60リットルとの間の流速である。以下で充分に説明されるように、ポート159から放出されるガスは、周縁裏側エッジ162を連続的に吹き流れ、電解液のような液体がウェハ108の裏側に到達して望ましくない汚染を生じさせるのを防止するのを補助する別のシールを提供する。
【0023】
ウェハ108は、真空吸引の適用によってキャリアベース146によって保持される。この目的のため、複数の真空ライン164は、キャリアベース146の第2の外表面152に接続される。ウェハの裏面を支持するために、支持パッド166即ちバックパッドが、好ましくは、第2の外表面部分152に取り付けられ、真空吸引の適用下、ウェハをほぼ水平な状態に保持するが、必ずしも必須のものではない。支持パッド166が用いられるときには、真空ライン164は、支持パッド166の貫通孔に連続する。本実施形態では、ウェハは、ライン164を介して適用される真空によって保持されるが、ウェハは、真空カップを用いて保持され得る。シールを生成するために、シール部材154は、典型的には50乃至100ミクロンの範囲の量だけ支持パッド166を越えて延びている必要があり、このようにしてシールが適切に形成され得る。以下で説明するように、シール部材154は、支持パッド166よりも比較的充分に軟らかいであろう。
【0024】
ウェハキャリア106の機械的部材のような他の部材は、従来通り構成され得、当業者に周知であろう。キャリアヘッド106は、所定の形態のジンバル機構及びこれと協働する機械的部材を提供され得る。このような従来の部材は、さらに説明する必要はないであろう。」

「【0027】
本発明の原理に従い、シール部材154は、シール機能が、最小の真空吸引の適用によって充分に達成されるように、設計される。
図3A及び図4Aに示されるシール部材154Aは、絶縁材料で形成されているO-リングである。…(略)…
【0028】
図3B及び図4Bに示されるガスケット154Bは、O-リング154Aの代わりとなる。図5の部分斜視図に示されるように、ガスケット154Bは、球根状(bulb shape)断面の円形ボディ300を有する。ボディ300は、第1の部分302即ち取り付け部分、及び、第2の部分304即ちシール部分を有する。シール部分304は、好ましくは、真空が適用されたときにより多くのシール面を提供するように外側に向かって傾斜され得、これは以下で充分に説明される。
【0029】
図6Aは、圧縮力が適用されておらず、即ち、ウェハが保持されていない状態でのガスケット154Bを断面で示す。図6Aを参照し、ガスケット154Bは、取り付け部分302を円形グルーブ156に挿入することによりウェハキャリアに配置されている。ガスケット154Bのシール部分304は、ウェハ108の裏面113に通常対面する傾斜面であるシール面306を規定する。シール部分304は、「h」で示され、支持パッド166の頂部よりも高い圧縮距離を有する。圧縮距離は、0.1mm乃至0.3mmの範囲内、好ましくは0.2mmであり得る。シール段階では、圧縮距離「h」は、ゼロまで減少され、シール面306を完全に使用することが可能となる。
【0030】
図6Bは、ウェハ108の裏面113をシールするときのガスケット154Bを示す。図6Bに示されるように、真空吸引がウェハ108の裏面113に適用されているときには、ウェハ108は、シール面306に押圧され、シール部分304を潰してシール機能を達成させる。ガスケット154Bは、容易に、即ち、シール部分306の潰れにより、より大きなシール面を提供して、シール機能を達成する。
【0031】
本実施形態では、ガスケット154Bは、エラストマーのような弾性材料によって形成され得る。このような材料の内の1つの材料が、ブランド名Kalrez(商標)で市販され入手可能であり、デュポンから入手可能であり得る。しかしながら、好ましい実施形態では、本発明のガスケット部材は上述したようであるが、ガスケット部材は、上で定められたシール機能を発揮し、本発明の範囲内である限りは、圧縮可能な材料、膜、又は、チューブ等によって形成され得ることが理解される。」

図3Bは、以下のとおりである。


図4Bは、以下のとおりである。


図6Aは、以下のとおりである。


図6Bは、以下のとおりである。


(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 図3B及び図4Bに示されるガスケット154Bは、段落【0021】等に記載のシール部材154の一実施形態である(【0027】、【0028】等)。

b 図3B、図5、及び図6Aから、円形グルーブ156(審決注:グルーブ(groove)とは溝のこと。)は、キャリアベース146の第2の外表面部分152に形成され、真空ライン164を囲う環状に窪んでいる環状の凹部であることが見てとれる。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「真空吸引を用いてウェハ108の裏面113からウェハ108を保持するウェハキャリア106であって、
ウェハキャリア106の下端部142は、キャリアベース146、即ちチャックを有し、キャリアベース146にウェハ108が保持され、
キャリアベース146の底面148の第1及び第2の外表面部分150,152は、シール部材154によって設定されており、
ウェハ108が、真空吸引の適用によってキャリアベース146によって保持されるように、複数の真空ライン164が、キャリアベース146の第2の外表面152に接続され、
シール部材154であるガスケット154Bは、球根状(bulb shape)断面の円形ボディ300を有し、ボディ300は、第1の部分302即ち取り付け部分、及び、第2の部分304即ちシール部分を有し、シール部分304は、好ましくは、真空が適用されたときにより多くのシール面を提供するように外側に向かって傾斜され、
キャリアベース146の第2の外表面部分152に、真空ライン164を囲う環状に窪んでいる円形グルーブ156が形成され、
ガスケット154Bは、取り付け部分302を円形グルーブ156に挿入することによりウェハキャリアに配置され、ガスケット154Bのシール部分304は、ウェハ108の裏面113に通常対面する傾斜面であるシール面306を規定し、シール部分304は、支持パッド166の頂部よりも高い、0.1mm乃至0.3mmの範囲内の圧縮距離を有し、
真空吸引がウェハ108の裏面113に適用されているときには、ウェハ108は、シール面306に押圧され、シール部分304を潰してシール機能を達成させ、
ガスケット154Bは、弾性材料によって形成されるウェハキャリア106。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ウェハキャリア106」、「ウェハ108」、「キャリアベース146」、「真空ライン164」、「シール部材154」、「円形グルーブ156」は、それぞれ本件補正発明の「真空チャック」、「基板」、「基体」、「連通経路」、「シール部材」、「環状凹部」に相当する。

(イ)引用発明は、「ウェハキャリア106の下端部142は、キャリアベース146、即ちチャックを有し、キャリアベース146にウェハ108が保持され、キャリアベース146の底面148の第1及び第2の外表面部分150,152は、シール部材154によって設定されており、ウェハ108が、真空吸引の適用によってキャリアベース146によって保持されるように、複数の真空ライン164が、キャリアベース146の第2の外表面152に接続され」るものであるところ、「キャリアベース146の(底面148の)第2の外表面152」は、本件補正発明の「基体の表面」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、「連通経路が形成されている基体を備え、前記連通経路を通じて前記基体の表面と基板との間に負圧領域が形成されることにより前記基体の表面側に前記基板を吸着保持するように構成されている真空チャック」である点で一致する。

(ウ)引用発明は、「キャリアベース146の第2の外表面部分152に、真空ライン164を囲う環状に窪んでいる円形グルーブ156が形成され」ているから、本件補正発明と引用発明とは、「前記基体の表面に前記連通経路を囲う環状に窪んでいる環状凹部が形成され」ている点で一致する。

(エ)引用発明は、「シール部材154であるガスケット154Bは、球根状(bulb shape)断面の円形ボディ300を有し、ボディ300は、第1の部分302即ち取り付け部分」を有し、「ガスケット154Bは、取り付け部分302を円形グルーブ156に挿入することによりウェハキャリアに配置され」、「ガスケット154Bは、弾性材料によって形成される」から、本件補正発明と引用発明とは、「前記環状凹部に環状の弾性素材からなるシール部材が配置され」ている点で一致する。

(オ)引用発明は、「ガスケット154Bのシール部分304は、ウェハ108の裏面113に通常対面する傾斜面であるシール面306を規定し、シール部分304は、支持パッド166の頂部よりも高い、0.1mm乃至0.3mmの範囲内の圧縮距離を有し、 真空吸引がウェハ108の裏面113に適用されているときには、ウェハ108は、シール面306に押圧され、シール部分304を潰してシール機能を達成させ、ガスケット154Bは、弾性材料によって形成される」から、ガスケット154Bのシール部分304はキャリアベース146の吸着表面より突出し、かつ、弾性的に変形可能に構成されたものであるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記シール部材の一部が前記基体の吸着平面より突出し、かつ、弾性的に変形可能に構成され」たものである点で共通する。

(カ)上記(2)ア(ア)に摘記の引用文献1の段落【0005】には、従来技術のキャリアヘッドが保持するウェハは、成長プロセス又は除去プロセス中のウェハである旨が記載されているところ、成長プロセス又は除去プロセス中のウェハには、「反り又はうねりが存在」し得ることは技術常識であるから、本件補正発明と引用発明とは、「前記基板として反りまたはうねりが存在する基板を吸着保持するための真空チャックである」点で一致する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「連通経路が形成されている基体を備え、前記連通経路を通じて前記基体の表面と基板との間に負圧領域が形成されることにより前記基体の表面側に前記基板を吸着保持するように構成されている真空チャックであって、
前記基体の表面に前記連通経路を囲う環状に窪んでいる環状凹部が形成され、
前記環状凹部に環状の弾性素材からなるシール部材が配置され、
前記シール部材の一部が前記基体の吸着平面吸着平面より突出し、かつ、弾性的に変形可能に構成され、
前記基板として反りまたはうねりが存在する基板を吸着保持するための真空チャックである真空チャック。」

【相違点1】
シール部材の一部の「突出量」について、本件補正発明は、「前記基体の吸着平面を基準とした突出量が1.0?9.0mmの範囲内であるように当該吸着平面より突出し」ているのに対し、引用発明は、「ガスケット154Bのシール部分304は、ウェハ108の裏面113に通常対面する傾斜面であるシール面306を規定し、シール部分304は、支持パッド166の頂部よりも高い、0.1mm乃至0.3mmの範囲内の圧縮距離を有」するものである点。

(4)判断
以下、相違点1について検討する。
ア 引用発明において、保持するウェハとして、薄化したウェハや、大型の基板、SiCやGaN等の反りが強い基板を載置対象とすることは普通のことであり、また、反りを有する被加工物を適切に保持する真空チャックにおいて、吸着平面を基準とした突出量は、保持するウェハの大きさや、反りやうねりの程度、シール部材のシール部分の断面形状及び材質、真空吸引が適用されたときに必要な吸引力等の様々な要因に合わせて決定すべき設計的事項である。
そして、引用発明において、「キャリアベース146の底面148の第1及び第2の外表面部分150,152は、シール部材154によって設定されており」、「シール部分304は、好ましくは、真空が適用されたときにより多くのシール面を提供するように」されており、「真空吸引がウェハ108の裏面113に適用されているときには、ウェハ108は、シール面306に押圧され、シール部分304を潰してシール機能を達成させ」るものであるから、その突出量を十分に大きいものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 次に、本件補正発明における「前記基体の吸着平面を基準とした突出量」の数値範囲について検討する。
本願の明細書の段落【0021】には、「第2要素22は、第1要素21に対して間隙20を有し、その基端部において第1要素21に接続されている。例えば、断面視において、第2要素22の長さLが2.0?20[mm]の範囲に含まれ、第2要素22の厚さTが0.1?2.0[mm]の範囲に含まれ、かつ、吸着平面を基準とした第2要素22の突出高さHが1.0?9.0[mm]の範囲に含まれるようにシール部材2が構成されていてもよい。」と記載されている。
しかしながら、本願の明細書及び図面を精査しても、本件補正発明において、「前記基体の吸着平面を基準とした突出量」を、「1.0?9.0mmの範囲内」であるようにしたことにより格別な効果が生じているとは認められないから、「1.0?9.0mmの範囲内」という突出量の数値範囲に臨界的な意義を認めることはできない。

ウ したがって、引用発明において、シール部材の突出量を、本件補正発明のように、「前記基体の吸着平面を基準とした突出量が1.0?9.0mmの範囲内であるように当該吸着平面より突出し」たものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

なお、チャックテーブルにおいて、反りを有する被加工物を適切に保持するため、環状シール部の上面の高さをウェーハの反りに合わせて、吸着面の高さよりも高くすることは、下記の周知例1に記載されているように周知であるから、引用発明において、反りまたはうねりが存在する基板を吸着保持する際に、シール部材の突出量をウェハの反りに合わせて決めることは、当業者が容易に設計できることである。

・周知例1:特開2014-72510号公報
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの被加工物を保持するチャックテーブルに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなレーザー加工装置で加工される被加工物は、ある程度の反りを有していることがある。例えば、貼り合わせられた複数の基板をレーザー光線の照射で分離するリフトオフ加工において、被加工物は、基板の貼り合わせに起因する反りを有している。反りを有する被加工物を外周側が高くなるようにチャックテーブル上に載置すると、被加工物の外周部分は吸着部の表面から浮き上がり、被加工物と吸着部との密着性は低くなる。この場合、チャックテーブルは十分な吸引力を発揮できず、被加工物を適切に保持できない。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、反りを有する被加工物を適切に保持可能なチャックテーブルを提供することを目的とする。」
「【0020】
ところで、従来のチャックテーブルにおいて、中央部分より外周部分が高くなるように反らされたウェーハWを吸着部上に載置すると、ウェーハWの中央部分は吸着面と接触するが、ウェーハWの外周部分は吸着面から浮き上がってしまう。この場合、ウェーハWと吸着部との密着性は低くなるので、チャックテーブルは十分な吸引力(吸着力)を発揮できず、ウェーハWを適切に保持することができない。
【0021】
そこで、本実施の形態のチャックテーブル15では、吸着部153の周囲に、吸着部153を囲む環状シール部154を設ける。この環状シール部154は、吸着面153aに載置されたウェーハWの外周部分を保持できるように、ウェーハWの外周に対応した径を有している。また、環状シール部154の上面154aは、吸着面153aより高い位置に形成されている。環状シール部154の上面154aの高さは、ウェーハWの反りに合わせて、吸着面153aの高さよりも高くなるように設定されている。
【0022】
これにより、中央部分より外周部分が高くなるように反らされたウェーハWを吸着部153上に載置すると、ウェーハWの中央部分は吸着面153aと接触し、ウェーハWの外周部分は環状シール部154の上面154aと接触する。環状シール部154にウェーハWの外周部分が接触されることで、ウェーハWを吸引保持するための気密性を確保することができる。
【0023】
環状シール部154は、弾性部材であるフッ素ゴムスポンジで形成されている。…(略)…
【0035】
また、環状シール部は、交換可能に構成されていても良い。例えば、高さの異なる複数の環状シール部をあらかじめ用意しておき、ウェーハの反りなどに応じて交換することができる。また、高さの異なる環状シール部を有する複数のチャックテーブルをそれぞれ用意しておき、ウェーハの反りなどに応じて適したチャックテーブルを選択するようにしても良い。このように、環状シール部の高さをウェーハの反りに応じて変更することで、環状シール部とウェーハとの密着性を高めることができる。その結果、ウェーハと環状シール部とで囲まれた空間の気密性を更に高めることが可能である。
【0036】
また、上記実施の形態において、環状シール部は、断面形状において角部を有しているが(図3参照)、環状シール部は、角部が面取りで除去されていても良い。この場合、ウェーハに加わる局所的な応力を更に緩和し、ウェーハの破損を防止できる。」

よって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年3月19日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年3月24日に提出された特許協力条約第19条補正の写しに記載された請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-5に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2005-528794号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記基板として反りまたはうねりが存在する基板を吸着保持するための真空チャックである」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-31 
結審通知日 2019-06-04 
審決日 2019-06-18 
出願番号 特願2017-516529(P2017-516529)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 和樹  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 加藤 浩一
恩田 春香
発明の名称 真空チャック  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  
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