• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02B
管理番号 1353905
審判番号 不服2018-6136  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-07 
確定日 2019-08-20 
事件の表示 特願2015-544086「排気ガスターボチャージャ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年5月30日国際公開、WO2014/081602、平成27年12月14日国内公表、特表2015-535569、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)11月14日(パリ条約による優先権主張2012年(平成24年)11月23日(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続は以下のとおりである。

平成29年5月23日(発送日) :拒絶理由通知書
平成29年10月17日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年1月5日(発送日) :拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年5月7日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年12月25日(発送日):拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由 」という。)
平成31年4月9日 :応対記録
平成31年4月12日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし4に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-180864号公報
2.特開平10-37754号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2011/066130号(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願は、特許請求の範囲(請求項1及び2)の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成31年4月12日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
排気ガスターボチャージャ(1)であって、
-タービン(2)を有し、
・前記タービンが、流入ダクト(4)によって取り囲まれたタービンホイール(3)を有し、
-VTGカートリッジ(5)を有し、
・前記VTGカートリッジが、前記流入ダクト(4)に配置されかつ回転可能なベーンシャフト(9)によってベーン軸受リング(7)に取り付けられる複数のベーン(8)を有し、前記ベーンシャフトがベーンレバー(10)に接続され、前記ベーンレバーのレバーヘッド(11)が、外側で前記ベーン軸受リング(7)を取り囲む調整リング(13)の関連の溝(12)内に係合し、これによって前記調整リング(13)の回転が前記ベーン(8)を回転させ、
-前記調整リング(13)を前記ベーン軸受リング(7)に半径方向で取り付けるために前記ベーンレバー(10)が半径方向軸受を形成する排気ガスターボチャージャ(1)において、
-2つの最少流れストッパ(25、26)が、互いに選択可能な角度間隔(α)で前記ベーン軸受リング(7)に配置され、各最少流れストッパ(25、26)は、前記VTGカートリッジの最低可能排気ガス通過量の位置で前記調整リング(13)に接触してその回転を停止させるように位置づけられる、
ことを特徴とする排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項2】
前記最少流れストッパ(25、26)がピンの形態であることを特徴とする請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項3】
前記排気ガスターボチャージャ(1)において、前記半径方向軸受は、前記ベーンレバー(10)のレバーヘッド(11)と、前記調整リングの溝(12)の対向面(15)との間に形成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項4】
前記排気ガスターボチャージャ(1)において、前記調整リング(13)の凹部が、平行のストッパ縁部(27、28)を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項5】
排気ガスターボチャージャ(1)のVTGカートリッジ(5)であって、
-流入ダクト(4)を境界付けるディスク(6)及びベーン軸受リング(7)を有し、
-前記流入ダクト(4)に配置されかつ回転可能なベーンシャフト(9)によって前記ベーン軸受リング(7)に取り付けられる複数のベーン(8)を有し、前記ベーンシャフトがベーンレバー(10)に接続され、前記ベーンレバーのレバーヘッド(11)が、外側で前記ベーン軸受リング(7)を取り囲む調整リング(13)の関連の溝(12)内に係合し、これによって前記調整リング(13)の回転が前記ベーン(8)を回転させ、
-前記調整リング(13)を前記ベーン軸受リング(7)に半径方向で取り付けるために前記ベーンレバー(10)が半径方向軸受を形成するVTGカートリッジ(5)において、
-2つの最少流れストッパ(25、26)が、互いに選択可能な角度間隔(α)で前記ベーン軸受リング(7)に配置され、各最少流れストッパ(25、26)は、前記VTGカートリッジの最低可能排気ガス通過量の位置で前記調整リング(13)に接触してその回転を停止させるように位置づけられる、
ことを特徴とするVTGカートリッジ(5)。
【請求項6】
前記最少流れストッパ(25、26)がピンの形態を有し、
前記最少流れストッパ(25、26)と接触する前記調整リング(13)の凹部(29、30)が、平行のストッパ縁部(27、28)を有することを特徴とする請求項5に記載のVTGカートリッジ(5)。」

第5 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第1号)の判断
平成31年4月12日の手続補正により、当該補正前の請求項1の「-前記半径方向軸受は、前記ベーンレバー(10)のレバーヘッド(11)と、前記調整リングの凹部(29、30)の半径方向外平面との間に形成され、かつ
-前記調整リング(13)の凹部が、平行のストッパ縁部(27、28)を有し、」との記載を削除した結果、請求項1及び2の特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
したがって、この拒絶の理由は解消した。

第6 原査定についての判断
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-180864号公報(以下「引用文献1」という。)には、「可変ノズルユニット」に関して、図面(特に、図1ないし図3を参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)

ア 「【0001】
本発明は、可変ノズル型ターボチャージャに取り付けられる可変ノズルユニットに関する。」

イ 「【0022】
以下、本発明を自動車用エンジンに設けられる可変ノズル型のターボチャージャに適用した一実施形態について、図1?図9を参照して説明する。
図1に示されるように、エンジン1における吸気通路2の上流部分、及び排気通路3の下流部分は、それぞれターボチャージャ4に繋がっている。このターボチャージャ4は、吸気通路2の下流側へ空気を送り出すためのコンプレッサホイール5と、排気通路3を通過する排気の吹き付けに基づいて回転するタービンホイール6とを備えている。そして、タービンホイール6が回転すると、それと一体にコンプレッサホイール5が回転し、これによりエンジン1の吸入空気量が増加して同エンジン1の出力を向上させることが可能となる。
【0023】
ターボチャージャ4において、タービンホイール6に排気を吹き付けるための排気経路8上には可変ノズルユニット7が取り付けられている。この可変ノズルユニット7は、アクチュエータ9により駆動されて上記排気経路8の排気流通面積を増減させ、それによって上記タービンホイール6に吹き付けられる排気の流速を可変とするものである。このようにタービンホイール6に吹き付けられる排気の流速を可変とすることで、ターボチャージャ4の回転速度が変更され、エンジン1の過給圧(吸気圧)が調整されるようになる。具体的には、上記排気経路8の排気流通面積を小さくすると、タービンホイール6に吹き付けられる排気の流速が大となってターボチャージャ4の回転速度が高くなり、エンジン1の過給圧は上昇する。また、上記排気経路8の排気流通面積を大きくすると、タービンホイール6に吹き付けられる排気の流速が小となってターボチャージャ4の回転速度が低くなり、エンジン1の過給圧は低下する。」

ウ 「【0024】
次に、可変ノズルユニット7の詳細な構造について図2及び図3を参照して説明する。
図2に示されるように、可変ノズルユニット7は、リング状のメインプレート10に対しその周方向に等間隔をおいた状態で組み付けられる複数の可変ノズル11と、メインプレート10の中心線と同一軸線上に設けられて上記複数の可変ノズル11と係合される板状のユニゾンリング12とを備えている。また、上記ユニゾンリング12は、その内周面における周方向についての複数箇所にそれぞれ接するよう上記メインプレート10に組み付けられた複数(この例では四つ)の鍔付ローラ13により、上記軸線周りに回動可能となるように支持されている。そして、ユニゾンリング12を上記軸線周りで回動させることにより、そのユニゾンリング12に係合された複数の可変ノズル11が同期して開閉動作し、ターボチャージャ4における上記排気経路8(図1)の排気流通面積が可変とされる。
【0025】
ユニゾンリング12の内周面には、複数の切欠部14,15,16a,16b,17が形成されている。これら切欠部のうち、切欠部14,15,16a,17は、ユニゾンリング12の回動方向について、上記複数の鍔付ローラ13の上記回動方向についての互いの位置関係と同様の位置関係を有している。そして、切欠部14,15,16aはユニゾンリング12の内周面に対し鍔付ローラ13の外形よりも大きい曲率を有する円弧状にへこむ形状となっており、切欠部17はユニゾンリング12の組み付け時における鍔付ローラ13とユニゾンリング12との干渉を回避可能な大きさに形成されている。」

エ 「【0026】
また、切欠部16bはユニゾンリング12をアクチュエータ9(図1)と係合するために用いられる係合ピン18が挿入されるものであり、切欠部17はユニゾンリング12の回動を所定範囲内に規制すべくメインプレート10に固定されたストッパ19が挿入されるものとなっている。従って、上記アクチュエータ9が駆動されると、その駆動による力が係合ピン18を介してユニゾンリング12に作用し、同ユニゾンリング12が上記のように回動することとなる。また、ユニゾンリング12の回動は、上記切欠部17の内面がストッパ19に当たることにより、その切欠部17の上記回動方向の長さに対応する所定範囲に規制されることとなる。」

オ 「【0027】
図3は、図2の可変ノズルユニット7を矢印A-A方向から見た断面図である。同図から分かるように、ユニゾンリング12は、メインプレート10に対し厚さ方向に並列に設けられており、その状態で鍔付ローラ13によりメインプレート10に支持されている。この鍔付ローラ13は、同ローラ13を貫通するヘッドピン20周りに回転可能となっており、そのヘッドピン20をメインプレート10の孔21に対し同プレート10の図中左側から圧入することで固定されている。」

カ 「【0029】
メインプレート10に設けられた複数の可変ノズル11(図3には一つのみ図示)は、メインプレート10に組み付けられたユニゾンリング12の内周面よりも内側に位置してメインプレート10の孔32を同プレート10の厚さ方向に貫通するノズルピン23を備えている。このノズルピン23において、その一端にはメインプレート10の厚さ方向一方側(図中右側)に位置するノズルベーン24が固定され、他端にはメインプレート10の厚さ方向他方側(図中左側)に位置するアーム25が固定されている。同アーム25は、ノズルピン23からメインプレート10の厚さ方向他方側に設けられたユニゾンリング12の内周面に向けて突出し、その内周面に形成された凹部26に挿入されて同凹部26と係合している。
【0030】
従って、ユニゾンリング12がその中心線周りに回動すると、同ユニゾンリング12の各凹部26に係合されたアーム25がユニゾンリング12により上記回動方向に押される。その結果、各アーム25がノズルピン23をその軸線周りに回動させることになり、同ノズルピン23の回動に伴って各ノズルベーン24が同ノズルピン23を中心にして各々同時に且つ同方向に回動する。こうした隣合うノズルベーン24の回動に基づき同ノズルベーン24が開閉動作することになり、その開閉動作に基づき各ノズルベーン24間の隙間の大きさ、すなわちタービンホイール6に排気を吹き付けるための排気経路8(図1)の排気流通面積が変化し、同排気の流速が可変とされるようになる。」

キ 図1に示されるターボチャージャが、タービンを備えていることは明らかである。

ク 上記イの記載事項及び図1の図示内容からみて、タービンホイール6は排気経路8によって取り囲まれているといえる。

ケ 上記ウ及びオの記載事項並びに図2及び図3の図示内容からみて、ユニゾンリング12は、メインプレート10を取り囲むことが分かる。

上記アないしケの記載事項及び図面の図示内容からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ターボチャージャ4であって、
タービンを有し、
前記タービンが、排気経路8によって取り囲まれたタービンホイール6を有し、
可変ノズルユニット7を有し、
前記可変ノズルユニット7が、前記排気経路8上に取り付けられかつ回動可能なノズルピン23によってメインプレート10に固定される複数のノズルベーン24を有し、前記ノズルピン23がアーム25に固定され、前記アーム25のユニゾンリング12の内周面に向けて突出し、その内周面に形成された凹部26に挿入される部位が、径方向外側で前記メインプレート10を取り囲むユニゾンリング12の凹部26と係合し、従って、前記ユニゾンリング12の回動が前記ノズルベーン24を回動させ、
前記ユニゾンリング12を前記メインプレート10に半径方向で取り付けるために前記アーム25がユニゾンリング12の凹部26に挿入されて係合するターボチャージャ4において、
ストッパ19が、前記メインプレート10に固定され、ストッパ19は、前記ユニゾンリング12の切欠部17の内面に当たることによりユニゾンリング12の回動が規制される、
ターボチャージャ4。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平10-37754号公報(以下「引用文献2」という。)には、「可変ノズルターボチャージャ」に関して、図面(特に、図1並びに図3ないし5を参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、開度可変ノズルを備えたターボチャージャ(以下、可変ノズルターボチャージャという)に関する。」

イ 「【0010】
本発明実施例の可変ノズルターボチャージャは、さらに、ユニゾンリング13に形成された、ユニゾンリング回転中心(リング中心でもある)を弧の中心として弧状に延びる穴(ユニゾンリング13を厚さ方向に貫通しているもの、図示例は穴の場合を示す)または溝(ユニゾンリング13を厚さ方向に貫通していないもの)からなるガイド23と、ターボチャージャの静止部材であるノズルプレート12とベアリングハウジング11とに固定されノズルプレート12とベアリングハウジング11との間にわたって延びる少なくとも1本のピンを有するストッパ24と、を有する。ストッパ24はガイド23内に入っており、たとえばガイド23を挿通している。ストッパ24とガイド23の組み合わせは、ユニゾンリング13の周方向に複数セット(たとえば、3セットまたはそれ以上)設けられている。ストッパ24は静止部材に固定されて静止しているが、ガイド23はストッパ24に対して相対的に動き、その時ガイド23の穴または溝の辺はストッパ24に摺動可能に接触する(ガイド23の穴または溝の辺とストッパ24との間に摺動を許す微小隙間がある場合を含む)。ストッパ24が、弧状のガイド23の長手方向一端23aと当たったときにノズルベーン17の全開位置を出し(図4参照)、弧状のガイド23の長手方向他端23bと当たったときにノズルベーン17の全閉位置を出す(図5参照)ように、ガイド23の弧の長さ、位置と、ストッパ24の位置との関係が予め設定されている。」

上記ア及びイの記載事項及び図面の図示内容からみて、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「可変ノズルターボチャージャにおいて、複数のストッパ24が、所定の角度間隔でノズルプレート12に固定され、前記ストッパ24は、開度可変ノズルの全閉位置でユニゾンリング13に形成されたガイド23の長手方向他端23bに接触してその回転を停止させるように位置づけられること。」

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/066130号(以下「引用文献3」という。)には、「TURBOCHARGER」に関して、図面(特に、図1及び図2を参照)とともに次の事項が記載されている。

ア 「The invention relates to a turbocharger according to the preamble of claim 1.」(第1ページ5行)
(当審仮訳)「この発明は、請求項1の前文に記載のターボチャージャに関する。」

イ 「Figure 2 shows a partial view of a first embodiment of the guide grate IS according to the invention on an enlarged scale.
Illustrated representatively for all of the guide blades of said guide grate 18 is a blade lever which is denoted by the reference symbol 20 and which, at one end, has a fastening ring 21 with a recess 22 in which one end of the blade shaft 8 is fixed.
A lever head 23 of the blade lever 20 is arranged in an engagement recess 24 of the adjusting ring 5 and is therefore in engagement with the adjusting ring 5. As can also be seen from figure 2, for this purpose, the lever head 23 is provided with a first contact limb 35 and a second contact limb 36 which fit into the engagement recess 24 of the adjusting ring 5. The blade lever 20 may be produced by means of punching and subsequent forming. By means of the shaping of the two contact limbs, it is ensured firstly that as large a contact surface with the engagement recesses 24 as possible is generated and secondly that the contact surface of the contact limbs is not adversely affected by the punching process. Alternatively, an MIM production process may also be used.
The blade bearing ring 6 is provided, on its radially outer side 40, with depressions 41 between in each case two adjacent engagement recesses 24. Furthermore, the blade bearing ring 6 has an encircling annular wall 38 which is elevated in relation to the annular body 32 and which is provided, correspondingly to the blade spacing, with contact regions 39 for the fastening ring 21 of each blade lever 20, which contact regions 39 are matched to the size and shape of the fastening ring 21.
The adjusting ring 5 is mounted in the blade bearing ring 6 by means of a plain bearing arrangement 28 (see Figure 3). As illustrated in Figure 2, the blade bearing ring 6 also has fixed to it a first stop 25, which defines a minimum stop of an adjustment of the adjusting ring 5 in relation to the blade bearing ring 6, and a second stop 26, which defines a maximum stop of an adjustment of the adjusting ring 5 in relation to the blade bearing ring 6.
The assembly of the blade bearing ring 6 and adjusting ring 5 takes place here in that the adjusting ring 5 is placed between the depressions 41 of the blade bearing ring 6 and is subsequently (in the manner of a bayonet connection) rotated into the sliding surfaces of said depressions 41 by means of a rotation by half of one blade spacing, such that as a result of the engagement of the guide lugs 30 into the guide slots 29, a radial plain bearing arrangement with an axial stop at both sides is formed. After the fastening rings 21 of the blade levers 20 have been welded to the blade shafts 21 , the first stop 25 and the second stop 26 are pressed into the blade bearing ring 6. As a result of the angle of rotation which is restricted by the stops 25 and 26, the adjusting ring 5 and blade bearing ring 6 can thereafter no longer be separated or pulled apart. 」(第2ページ14行ないし第3ページ13行)
(当審仮訳)「図2は、拡大された本発明によるガイド格子18の第1の実施の形態の部分図を示す。
前記ガイド格子18のガイドブレードのすべてについて代表的に示されるように、参照符号20で示されるブレードレバーは、一端において、中にブレードシャフト8の一端が固定される凹部22を有する固定リング21を有する。
ブレードレバー20のレバーヘッド23は、調整リング5の係合凹部24内に配置され、したがって、調整リング5に係合している。図2からも分かるように、この目的のために、ブレードレバー20のレバーヘッド23は、第1の接触脚部35と第2の接触脚部36とともに、調整リング5の係合凹部24に嵌合する。ブレードレバー20は、パンチングおよび後に続くフォーミングによって製作されてもよい。2つの接触脚部を形成することによって、第1に、可能な限り係合凹部24との大きな接触面が形成され、第2に、接触脚部の接触面が打ち抜き加工によって不利に影響されないことが保証される。また、MIM製造プロセスを用いてもよい。
ブレード軸受リング6は、その半径方向外側40に、それぞれ2つの隣接する係合凹部24の間に凹部41を備えている。
さらに、ブレード軸受リング6は環状体32から上昇し、ブレードの間隔に対応して各ブレードレバー20の固定リング21の接触領域39を備えた環状壁38を有し、接触領域39は固定リング21の大きさと形状に適合している。調整リング5は、滑り軸受装置28(図3参照)によって、ブレード軸受リング6内に取り付けられている。
図2に示すように、ブレード軸受リング6には、ブレード軸受リング6に対する調整リング5の調整の最小停止部を規定する第1のストップ25と、ブレード軸受リング6に対する調整リング5の調整の最大停止を規定する第2のストップ26とが固定されている。
ブレード軸受リング6と調整リング5との組立は、調整リング5がブレード軸受リング6の凹部41の間に配置され、続いて(バヨネット接合のように)、ブレードの間隔の半分だけ回転することによって前記凹部41の摺動面内に回転され、その結果、ガイド突起30がガイド溝29内に係合する結果、両側に軸方向ストッパーを有するラジアルすべり軸受装置が形成される。
ブレードレバー20の固定リング21がブレードシャフト21(「8」の誤記と認められる。)に溶接された後、第1のストップ25及び第2のストップ26は、ブレード軸受リング6に押し込まれる。
停止部25および26によって制限される回転角の結果として、調整リング5およびブレード軸受リング6はもはや分離または引き離されることができない。」

上記ア及びイの記載事項及び図面の図示内容からみて、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「ターボチャージャにおいて、2つのストップ25及び26が、所定の角度間隔でブレード軸受リング6に固定され、各ストップ25及び26は、ガイド格子18の最小停止位置で調整リング5に接触してその回転を停止させるように位置づけられること。」

2 対比・判断
(1)本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者における「ターボチャージャ4」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、前者における「排気ガスターボチャージャ」に相当し、以下同様に、「排気経路8」は「流入ダクト」に、「タービンホイール6」は「タービンホイール」に、「可変ノズルユニット7」は「VTGカートリッジ」に、「回動」は「回転」に、「ノズルピン23」は「ベーンシャフト」に、「メインプレート10」は「ベーン軸受リング」に、「ノズルベーン24」は「ベーン」に、「アーム25」は「ベーンレバー」に、「径方向外側」は「外側」に、「ユニゾンリング12」は「調整リング」に、「凹部26」は「溝」に、「従って」は「これによって」に、それぞれ相当する。
したがって、後者の「可変ノズルユニット7が、前記排気経路8上に取り付けられ」ることは前者の「VTGカートリッジが、前記流入ダクトに配置され」ることに相当し、以下同様に、「回動可能なノズルピン23によってメインプレート10に固定される複数のノズルベーン24」は「回転可能なベーンシャフトによってベーン軸受リングに取り付けられる複数のベーン」に、「ノズルピン23がアーム25に固定され」ることは「ベーンシャフトがベーンレバーに接続され」ることに、「ユニゾンリング12の凹部26」は「調整リングの関連の溝」に、それぞれ相当する。

後者の「アーム25のユニゾンリング12の内周面に向けて突出し、その内周面に形成された凹部26に挿入される部位」は前者の「レバーヘッド」に相当する。

後者の「前記ユニゾンリング12を前記メインプレート10に半径方向で取り付けるために前記アーム25がユニゾンリング12の凹部26に挿入されて係合する」ことは、本願の明細書の段落【0019】を参酌すれば、前者の「調整リングをベーン軸受リングに半径方向で取り付けるためにベーンレバーが半径方向軸受を形成する」ことに相当する。

後者の「ストッパ19が、前記メインプレート10に固定され、ストッパ19は、前記ユニゾンリング12の切欠部17の内面に当たることによりユニゾンリング12の回動が規制される」と前者の「2つの最少流れストッパが、互いに選択可能な角度間隔で前記ベーン軸受リングに配置され、各最少流れストッパは、VTGカートリッジの最低可能排気ガス通過量の位置で調整リングに接触してその回転を停止させるように位置づけられる」とは、「ストッパがベーン軸受リングに配置され、ストッパは、調整リングに接触してその回転を停止させるように位置づけられる」という限りで一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

〔一致点〕
「排気ガスターボチャージャであって、
タービンを有し、
前記タービンが、流入ダクトによって取り囲まれたタービンホイールを有し、
VTGカートリッジを有し、
前記VTGカートリッジが、前記流入ダクトに配置されかつ回転可能なベーンシャフトによってベーン軸受リングに取り付けられる複数のベーンを有し、前記ベーンシャフトがベーンレバーに接続され、前記ベーンレバーのレバーヘッドが、外側で前記ベーン軸受リングを取り囲む調整リングの関連の溝内に係合し、これによって前記調整リングの回転が前記ベーンを回転させ、
前記調整リングを前記ベーン軸受リングに半径方向で取り付けるために前記ベーンレバーが半径方向軸受を形成する排気ガスターボチャージャにおいて、
ストッパがベーン軸受リングに配置され、ストッパは、調整リングに接触してその回転を停止させるように位置づけられる、
排気ガスターボチャージャ。」

〔相違点〕
ストッパがベーン軸受リングに配置され、ストッパは、調整リングに接触してその回転を停止させるように位置づけられる点に関して、本願発明1は、「2つの最少流れストッパが、互いに選択可能な角度間隔で」ベーン軸受リングに配置され、「各最少流れストッパは、VTGカートリッジの最低可能排気ガス通過量の位置で」調整リングに接触してその回転を停止させるように位置づけられるのに対して、引用発明は、ストッパ19が、メインプレート10に固定され、ストッパ19は、ユニゾンリング12の切欠部17の内面に当たることによりユニゾンリング12の回動が規制される点。

上記相違点について検討する。

引用文献2記載事項について
引用文献2記載事項は「可変ノズルターボチャージャにおいて、複数のストッパ24が、所定の角度間隔でノズルプレート12に固定され、前記ストッパ24は、開度可変ノズルの全閉位置でユニゾンリング13に形成されたガイド23の長手方向他端23bに接触してその回転を停止させるように位置づけられること。」である。
そして、本願発明1と引用文献2記載事項とを対比すると、後者の「可変ノズルターボチャージャ」は、その機能、構成および技術的意義からみて前者の「排気ガスターボチャージャ」に相当し、以下同様に、「ノズルプレート12」は「ベーン軸受リング」に、「固定され」は「配置され」に、「開度可変ノズル」は「VTGカートリッジ」に、それぞれ相当する。
後者の「ユニゾンリング13に形成されたガイド23の長手方向他端23b」は前者の「調整リング」に含まれる。
後者の「複数のストッパ24」と前者の「2つの最少流れストッパ」とは、「複数のストッパ」という限りで一致し、以下同様に「全閉位置」と「最低可能排気ガス通過量の位置」とは「閉じ側の所定位置」という限りで一致し、「所定の角度間隔」と「互いに選択可能な角度間隔」とは「所定の角度間隔」という限りで一致する。

そうすると、引用文献2記載事項は、以下のものということができる。

「排気ガスターボチャージャにおいて、複数のストッパが、所定の角度間隔でベーン軸受リングに配置され、各ストッパは、VTGカートリッジの閉じ側の所定位置で調整リングに接触してその回転を停止するように位置づけられること。」

してみると、引用文献2記載事項は、少なくとも、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項における「2つの最少流れ」ストッパが、「互いに選択可能な」角度間隔でベーン軸受リングに配置され、「各最少流れ」ストッパは、VTGカートリッジの「最低可能排気ガス通過量」の位置で調整リングに接触してその回転を停止させるように位置づけられるという事項を備えていない。

引用文献3記載事項について
引用文献3記載事項は「ターボチャージャにおいて、2つのストップ25及び26が、所定の角度間隔でブレード軸受リング6に固定され、各ストップ25及び26は、ガイド格子18の最小停止位置で調整リング5に接触してその回転を停止させるように位置づけられること。」である。
そして、本願発明1と引用文献3記載事項とを対比すると、後者の「ターボチャージャ」は、その機能、構成および技術的意義からみて前者の「排気ガスターボチャージャ」に相当し、以下同様に、「ブレード軸受リング6」は「ベーン軸受リング」に、「固定され」は「配置され」に、「ガイド格子18」は「VTGカートリッジ」に、それぞれ相当する。
後者の「2つのストップ25及び26」と前者の「2つの最少流れストッパ」とは、「2つのストッパ」という限りで一致し、以下同様に「所定の角度間隔」と「互いに選択可能な角度間隔」とは「所定の角度間隔」という限りで一致し、「最小停止位置」と「最低可能排気ガス通過量の位置」とは「最小の位置」という限りで一致する。

そうすると、引用文献3記載事項は、以下のものということができる。

「排気ガスターボチャージャにおいて、2つのストッパが、所定の角度間隔でベーン軸受リングに配置され、各ストッパは、VTGカートリッジの最小の位置で調整リングに接触してその回転を停止させるように位置付けられること。」

してみると、引用文献3記載事項は、少なくとも、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項における「2つの最少流れ」ストッパが、「互いに選択可能な」角度間隔でベーン軸受リングに配置され、「各最少流れ」ストッパは、VTGカートリッジの「最低可能排気ガス通過量」の位置で調整リングに接触してその回転を停止させるように位置づけられるという事項を備えていない。

そして、このような相違点に係る本願発明1の発明特定事項を備えていない引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を引用発明に適用しても、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項には到達しない。
また、上記相違点にかかる本願発明1の特定事項は、本願の優先日前において周知の技術でもない。
そうすると、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を総合しても、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を容易になし得るとはいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし本願発明4について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし4は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし本願発明4は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし本願発明4は、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)本願発明5について
本願発明5と引用発明とを対比すると、両者は、上記相違点と同じ相違点を有し、その余の点で一致する。

上記相違点について検討したのと同様に、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項は、相違点に係る本願発明5の発明特定事項を備えていない。
そして、相違点に係る本願発明5の発明特定事項を備えていない引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を引用発明に適用しても、上記相違点に係る本願発明5の発明特定事項には到達しない。
そうすると、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を総合しても、上記相違点に係る本願発明5の発明特定事項を容易になし得るとはいえない。

したがって、本願発明5は、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(4)本願発明6について
本願の特許請求の範囲における請求項6は、請求項5の記載を直接、かつ、請求項5の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明6は、本願発明5の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明6は、本願発明5と同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3.小括
上述のとおり、本願発明1ないし6は、原査定の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、当審が通知した理由及び原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-08-06 
出願番号 特願2015-544086(P2015-544086)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 種子島 貴裕  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 齊藤 公志郎
水野 治彦
発明の名称 排気ガスターボチャージャ  
代理人 大賀 眞司  
代理人 百本 宏之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ