• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F02B
審判 全部無効 2項進歩性  F02B
管理番号 1353926
審判番号 無効2018-800059  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-16 
確定日 2019-08-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第6098314号発明「流量可変バルブ機構及び過給機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6098314号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成25年4月15日に出願され、平成29年3月3日に特許権の設定の登録がなされたものである。

以後の本件特許に関連する手続の概要は以下のとおりである。
平成30年 5月16日 本件無効審判の請求
同年 6月28日 手続補正書(方式)
同年 9月10日 審判事件答弁書
同年11月 2日 審理事項通知書
同年12月21日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成31年 1月29日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 2月19日 口頭審理

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」という。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
タービンハウジングの内部又は前記タービンハウジングに連通した状態で接続した接続体の内部に、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流量可変通路が形成された過給機に用いられ、
前記ガス流量可変通路の開口部を開閉する流量可変バルブ機構において、
前記タービンハウジング又は前記接続体の外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され、基端部が前記タービンハウジング又は前記接続体の外側へ突出したステムと、
前記ステムの基端部に一体的に設けられ、アクチュエータの駆動により前記ステムの軸心周りに正逆方向へ揺動するリンク部材と、
前記ステムに一体的に設けられ、取付穴が貫通形成された取付部材と、
前記取付部材の前記取付穴に嵌合して設けられ、前記取付部材に対するガタが許容され、前記ガス流量可変通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能なバルブ本体、及び前記バルブ本体の中央に一体的に設けられかつ前記取付部材の前記取付穴に嵌合したバルブ軸を備えたバルブと、
前記バルブ軸の先端部に一体的に設けられ、前記バルブを前記取付部材に対して離脱不能にするための止め金と、を具備し、
前記取付部材の前記取付穴の内周面と前記バルブ軸の外周面との嵌合クリアランスは、前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付部材の前記取付穴の深さ寸法を引いた値よりも小さく設定され、
前記バルブ軸の外周面が前記取付部材の前記取付穴の表側周縁及び裏側周縁に接触しかつ前記バルブ本体の頂面が前記取付部材の裏面に接触するという条件を満たした場合に、前記止め金が前記取付部材の表面に対して非接触になるように構成されている、流量可変バルブ機構。
【請求項2】
前記バルブ本体における前記ステムに近い側に切欠が前記ステムの長手方向に沿って形成されている、請求項1に記載の流量可変バルブ機構。
【請求項3】
前記止め金の裏面の外周縁に面取が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の流量可変バルブ機構。
【請求項4】
エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する過給機において、
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項の請求項に記載の流量可変バルブ機構を具備した、過給機。
【請求項5】
取付穴が形成された取付部材と、
バルブ本体、及び前記バルブ本体に形成され前記取付穴に嵌合されたバルブ軸を含むバルブと、
前記バルブ軸の先端部に設けられた止め金と、
を有する流量可変バルブ機構であって、
前記取付穴の内周面と前記バルブ軸の外周面との嵌合クリアランスは、前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付穴の深さ寸法を引いた値より小さく、前記バルブ軸の外周面が前記取付部材の前記取付穴の表側周縁及び裏側周縁に接触しかつ前記バルブ本体の前記頂面が前記取付部材の裏面に接触するという条件を満たした場合に、前記止め金が前記取付部材の表面に対して非接触になるように構成される、流量可変バルブ機構。
【請求項6】
前記取付部材に設けられたステムを有し、
前記バルブ本体には、前記バルブ本体における前記ステムに近い側に切欠が前記ステムの長手方向に沿って形成されている、請求項5に記載の可変バルブ機構。
【請求項7】
前記嵌合クリアランスに対する、前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付穴の深さ寸法を引いた値の比は、3.5?6.5である、請求項5に記載の可変バルブ機構。
【請求項8】
前記止め金の裏面の外周縁に面取が形成されている、請求項5に記載の可変バルブ機構。
【請求項9】
前記バルブ軸の外周面は前記取付穴の表側周縁及び裏側周縁に接触し、かつ前記バルブ本体の頂面が前記取付部材の裏面に接触する場合には、前記止め金は前記取付部材の表面に対して非接触である、請求項5に記載の可変バルブ機構。」

第3 請求人の主張
請求人は、審判請求書、手続補正書(方式)及び口頭審理陳述要領書において、「特許第6098314号にかかる特許請求の範囲の請求項1ないし9にかかる発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」ことを請求の趣旨とし、甲第1号証ないし甲第10号証を提出して、次のような、第1の無効理由及び第2の無効理由を主張する。

1 第1の無効理由
請求項1、4、5及び9に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と同一であるため、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができず、その特許は、同法第123条第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。
請求項2及び6に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、同法第123条第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。
請求項3及び8に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、同法第123条第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。
請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、同法第123条第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。

2 第2の無効理由
請求項1、4、5及び9に係る発明は、甲第8号証に記載の発明及び甲第10号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、同法第123条第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。
請求項2及び6に係る発明は、甲第8号証に記載の発明、甲第10号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、同法第123条第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。
請求項3及び8に係る発明は、甲第8号証に記載の発明、甲第10号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、同法第123条第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。
請求項7に係る発明は、甲第8号証に記載の発明及び甲第10号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は、同法第123条第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。

3 証拠方法
甲第1号証:実願昭54-179355号(実開昭56-97530号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開2012-167610号公報
甲第3号証:特開平6-280591号公報
甲第4号証:特開2005-226591号公報
甲第5号証:特開平5-171961号公報
甲第6号証:実願昭63-101858号(実開平2-22618号)のマイクロフィルム
甲第7号証:特開2013-24043号公報
甲第8号証:実願昭62-8433号(実開昭63-118337号)のマイクロフィルム
甲第9号証:特開平4-272430号公報
甲第10号証:実願昭63-101860号(実開平2-22619号)のマイクロフィルム

第4 被請求人の主張
被請求人は、審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書において、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」ことを答弁の趣旨とし、第1の無効理由及び第2の無効理由に対して、次のように反論する。

1 第1の無効理由に対して
請求項1、4、5及び9に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と同一ではない。
請求項2及び6に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項3及び8に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 第2の無効理由に対して
請求項1、4、5及び9に係る発明は、甲第8号証に記載の発明及び甲第10号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなない。
請求項2及び6に係る発明は、甲第8号証に記載の発明、甲第10号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項3及び8に係る発明は、甲第8号証に記載の発明、甲第10号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなない。
請求項7に係る発明は、甲第8号証に記載の発明及び甲第10号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 各甲号証の記載事項等
1 甲第1号証
甲第1号証には、「ターボ過給機の排気弁機構」に関して、図面(特に、第1図ないし第3図を参照)を参照して、次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与した。なお、拗音、促音は小文字で表記した。以下同様。)。

(1)「実用新案登録請求の範囲
1. スリーブの中で回転自在に取付けられたシャフトの軸線に直角方向に固定されたステーに、前記シャフトの回転方向の接続方向に孔を設け、この孔径より細い径を持つ弁体の固定軸を挿入することによって弁体がステーに対して軸方向にも、径方向にもガタを持たせた弁体と、弁座の開閉によってタービンに流入する内燃機関の排気ガスの一部をバイパスさせる構造のターボ過給機の排気弁において、前記弁体の弁座と着座する面を、弁体軸線方向に対して全周にわたり傾斜させたテーパ形状にすることにより弁着座時、弁体の前記傾斜面が弁座孔内に挿入され、弁が弁座中心に常に着座するようにしたことを特徴とするターボ過給機の排気弁機構。」(明細書第1ページ第3行ないし第17行)

(2)「本案による一実施例を図によって説明すると、第1図において、1はターボ過給機で、コンプレッサ2とタービン3を備えている。4はタービンケースで、排気ガスはタービン入口5から流入し大部分はタービン羽根車(図示せず)に供給されタービン羽根車を駆動した後、タービン出口6から放出される。またタービン入口5から流入した排気ガスの一部は、タービンケース4のタービン入口5の下流直後に設けた通路孔7を介してタービン出口5に直接放出される。
8は排気弁装置で、スリーブ(図示せず)の中に回転自在なようにシャフト9は挿入されている。シャフト9の一端にはリンク10が固定され、リンク10の他端はロッド11がリンク10をシャフト9の中心軸に対して回転方向に可動可能に結合されている。シャフト9の軸線と直角方向にはステー12が溶接などの手法で固定されており、ステー12の他端にはシャフト9の回転方向に対し接線方向に弁固定用孔13があいている。
14は弁体で、弁固定用孔13の内径より細い弁固定軸15が弁固定用孔13に挿入され、ステーの厚みtより長く設定された弁固定軸15の端部にはスペーサ16が挿入され、更に固定軸15の先端部は、スペーサ16が抜け出ないよう、リベッティング等の手法でカシメてある。
一方、17は排気弁アクチュエータで、コンプレッサ2の吐出圧力によってロッド11を押したり引いたりする構造となっている。」(明細書第4ページ第11行ないし第5ページ第18行)

(3)「以上のような構成において本案の動作例を説明すると、コンプレッサ2の吐出圧力が設定より高くなると、アクチュエータ17が作動しロッド11を矢印P方向に押すため、リンク10がシャフト9を回転させる。これにより第2図に示したようにステー12がP’方向に回転し弁体14が弁座19から離れ、通路孔7が解放され、排気ガスの一部がタービン入口5から直接タービン出口6へ放出される。
次にターボ過給機1の出力が低下し、コンプレッサ2の吐出圧が低くなるとアクチュエータ17のロッド11が矢印Pと逆方向に動き、先とは逆に第2図に示したように、ステー12をP”方向に回転させる。この時、弁体14の傾斜面18と通路孔7の傾斜面20が、たがいにしゅう動しあいながら、ついには弁体14は弁座19の通路孔7の中心に自動調心され全閉状態となる。」(明細書第6ページ第3行ないし第6ページ第19行)

(4)上記(2)の「8は排気弁装置で、スリーブ(図示せず)の中に回転自在なようにシャフト9は挿入されている。シャフト9の一端にはリンク10が固定され、リンク10の他端はロッド11がリンク10をシャフト9の中心軸に対して回転方向に可動可能に結合されている。」の記載、及び第1図においてロッド11及びリンク10がタービンケース4の外側に位置していることが看取できることからみて、シャフト9はタービンケース4の外壁を貫通しその一端がタービンケース4の外側へ突出していることが分かる。そうすると、シャフト9は、タービンケース4の外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持されているといえる。

(5)上記(1)の「この孔径より細い径を持つ弁体の固定軸を挿入することによって弁体がステーに対して軸方向にも、径方向にもガタを持たせた弁体」の記載及び上記(2)の「14は弁体で、弁固定用孔13の内径より細い弁固定軸15が弁固定用孔13に挿入され」の記載からみて、弁体14は、ステー12に対するガタが許容されていることが分かる。

(6)第2図及び第3図の図示内容並びに技術常識から「弁体14」と「弁固定軸15」は一体的であるということができる。また、「弁体14」と「弁固定軸15」を合わせて「弁」ということができる。

(7)上記(2)の「14は弁体で、弁固定用孔13の内径より細い弁固定軸15が弁固定用孔13に挿入され、ステーの厚みtより長く設定された弁固定軸15の端部にはスペーサ16が挿入され、更に固定軸15の先端部は、スペーサ16が抜け出ないよう、リベッティング等の手法でカシメてある。」との記載並びに第2図及び第3図からみて、スペーサ16は、弁をステー12に対して抜け出ないようにするためのものといえる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)が記載されている。

〔甲1発明1〕
「タービンケース4の内部に、タービン羽根車側へ供給される排気ガスの流量を可変とするための通路孔7が形成されたターボ過給機1に用いられ、
前記通路孔7の開口部を開閉する排気弁機構において、
前記タービンケース4の外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され、一端が前記タービンケース4の外側へ突出したシャフト9と、
前記シャフト9の一端に固定され、排気弁アクチュエータ17の駆動により前記シャフト9の中心軸に対して回転方向に可動可能であるリンク10と、
前記シャフト9に一体的に設けられ、弁固定用孔13が貫通形成されたステー12と、
前記ステー12の前記弁固定用孔13に挿入され、前記ステー12に対するガタが許容され、前記通路孔7の開口部側の弁座19に当接離隔可能な弁体14、及び前記弁体14に一体的に設けられかつ前記ステー12の前記弁固定用孔13に挿入された弁固定軸15とを備えた弁と、
前記弁固定軸15の先端部をリベッティング等の手法でカシメてあり、前記弁を前記ステー12に対して抜け出ないようにするためのスペーサ16と、を具備する、
排気弁機構。」

〔甲1発明2〕
「弁固定用孔13が形成されたステー12と、
弁体14、及び前記弁体14に形成され前記弁固定用孔13に挿入された弁固定軸15を含む弁と、
前記弁固定軸15の先端部をリベッティング等の手法でカシメて抜け出ないようにされたスペーサ16と、
を有する排気弁機構。」

2 甲第2号証
甲第2号証には、図面(特に、図1ないし図3)を参照して、次の事項が記載されている。

「【0036】
次に、本実施例のウェイストゲートバルブのバルブ本体5の詳細を図1ないし図3に基づいて説明する。ここで、バルブアーム7の回転軸であるシャフト8の中心線の位置を、バルブ本体5およびバルブアーム7の回転中心Oとする(図1および図2参照)。
本実施例のバルブ本体5は、ハウジングと同様に、耐熱性金属(例えば耐熱アルミニウム合金や耐熱鋼等)により形成されている。このバルブ本体5は、バルブアーム7の出力部に拘束されている。また、バルブ本体5は、バルブアーム7の回転中心Oを中心にして回転運動を行うように構成されている。
バルブ本体5には、第2排気ガス流路2、特に連通孔4を開閉する板状の閉鎖部が設けられている。バルブ本体5の閉鎖部には、シート凹部6の凹曲面15に対向(曲面接触)する対向面(表面、バルブフェース)が形成されている。
【0037】
バルブ本体5には、バルブアーム7に一体回転可能に連結(結合)する角柱状の結合部21が一体的に形成されている。この結合部21は、バルブ本体5の閉鎖部の凸曲面側(バルブフェース側)に対して反対側の背面から外部へ向けて真っ直ぐに突出した凸状の嵌合ピン部(突起)である。また、結合部21の中心線方向の一端部(バルブ本体5の閉鎖部の背面から最も離れた先端部)には、バルブアーム7の出力部からのバルブ本体5の抜け止めを行うための矩形鍔状のフランジ22が一体的に形成されている。
また、バルブ本体5の閉鎖部の表面全体は、シート凹部6の凹曲面15の曲率半径と略同一曲率半径を有するように湾曲して形成される円弧状(部分円筒面形状、円筒外周面の一部を切り取った形状)の凸曲面14となっている。これにより、バルブ本体5は、シート凹部6に対して着座、離脱して連通孔4を閉鎖、開放すると共に、連通孔4の開口面積を連続的に変更して連通孔4から第2排気ガス流路2へ流入する排気ガスの流量を制御する。
【0038】
次に、本実施例のウェイストゲートバルブのバルブアーム7の詳細を図1ないし図3に基づいて説明する。
本実施例のバルブアーム7は、バルブ本体5およびハウジングと同様に、耐熱性金属(例えば耐熱アルミニウム合金や耐熱鋼等)により形成されている。このバルブアーム7は、連通孔4の流路中心線方向(連通孔4を流れる排気ガスの流れ方向(排気流方向))に対して垂直な方向に延びるシャフト8を有し、このシャフト8の半径方向の外側に延びる、つまりシャフト8の一端部から直角に屈曲するように図示下方に延長されたL字状のクランクアームを構成している。
バルブアーム7のシャフト8は、ベアリングを介して、ハウジングの軸受け孔に回転自在に支持されている。このシャフト8の回転中心は、バルブアーム7の回転中心Oである。」

3 甲第3号証
甲第3号証には、図面(特に、図1及び図2)を参照して、次の事項が記載されている。

(1)「【0008】
【実施例】本発明の実施例1,2を順に説明する。
〔実施例1〕実施例1について、ウェイストゲートバルブが示された図1を参照して説明する。図1(a)は一部破断側面図、(b)は要部拡大断面図である。図示のウェイストゲートバルブは、ターボチャージャのタービン部に導入されるエンジンの排気ガスのバイパス通路を開閉するバルブ体1と、そのバルブ体1にピン2を介して取り付けられるアーム状支持部材3とを備えている。
【0009】ピン2はバルブ体1と一体成形されているとともに、前記支持部材3の取付孔4に挿通されかつそのピン2の先端小径軸部2aにリング状をした抜け止め部材5が接合剤6によって接合されている。なお支持部材3の基端部の連結孔3aには、図示しないバルブ開閉用アクチュエータの駆動シャフトが挿着される。」

(2)「【0012】〔実施例2〕実施例2について、ウェイストゲートバルブが示された図1を参照して説明する。図1(a)は一部破断側面図、(b)は要部拡大断面図である。なお本例は、実施例1の一部を変更したものであるからその変更部分について詳述し、実施例1と同一もしくは均等構成と考えられる部分には図面に同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0013】本例は、抜け止め部材5を実施例1のリング状ものに代え円盤状の抜け止め部材51とするとともに、先端小径軸部2aを排除したピン21の先端面に前記抜け止め部材51を接合剤6によって全面的に接合したものである。従って、実施例1と比べるとピン2と抜け止め部材51との接合面積が増大するのでその接合強度が高いといえる。」

4 甲第4号証
甲第4号証には、図面(特に、図13)を参照して、次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
本発明は、過給機に係り、特に、ウェイストゲートバルブを備えたものに関する。」

(2)「【0011】
上記従来の過給機のウェイストゲートバルブの弁体102と、弁体支持部材104との間には、僅かな隙間が形成されている。
【0012】
なお、上記ウェイストゲートバルブの弁体102と上記弁体支持部材104との互いの係合部の形状が円筒の表面の形状に形成されているとすると、上記隙間として、半径方向の隙間GP51とスラスト方向の隙間GP53との各隙間が存在する。
【0013】
上記各隙間GP51、GP53が設けられている理由は、上記弁体102の平面状の弁座部102Aと、貫通孔108周辺の平面状の弁座部108Aとを互いに面で密着させて、貫通孔108を確実に閉じることができるようにするためである。」

(3)「【0017】
ところで、上記各隙間GP51、GP53によって、過給機の運転中に、上記弁体102が、上記弁体支持部材104や上記筐体106(貫通孔108の周辺の部位)に繰り返してぶつかり騒音が発生するという問題がある。」

5 甲第5号証
甲第5号証には、次の事項が記載されている。

「【0003】ところで、この種の排気制御弁は、内部を700℃程度の排気ガスが通り、弁体、弁軸、ブッシュ等の各部材がその排気熱により非常に加熱され膨張するため、弁体の動きに支障が出ないように、製造時には、弁体とボディ間、ブッシュの端部と弁軸の段差部間、弁軸の先端部と閉鎖プレート間、弁軸と外周部のブッシュの内側又は外側などに、例えば0.2mmから0.5mmの隙間が設けられるように設計されている。」

6 甲第6号証
甲第6号証には、図面(特に、第5図ないし第8図)を参照して、次の事項が記載されている。

「さて次に、第5図?第8図を参照して、排気カット弁11の詳細について説明する。
先ず、分岐排気通路3bの途中には、主弁座71が形成されている。排気カット弁11は、1つの保持アーム72および弁体73とを有しする。保持アーム72は、その基端部が、分岐吸気通路3bの通路壁に回転自在に保持された回転ロッド74に一体回転するように取付けられている。この回転ロッド74は、分岐排気通路3bの方向と略直交する方向に伸びて、弁座71よりも若干上流側でかつ通路部分よりも横方向に偏った位置に設けられている。そして、保持アーム72は、その先端部付近に弁体73保持用の保持孔72aを有する。
弁体73は、弁座71に離着座して分岐排気通路3bを実質的に開閉するものである。この弁体73は、その上流側面において前記保持孔72a内を貫通する連結部73aが突設され、この連結部73aの先端部には、保持孔72aよりも大径の抜止部73bが形成されている。」(明細書第24ページ第2行ないし第20行)

7 甲第7号証
甲第7号証には、図面(特に、図3)を参照して、次に事項が記載されている。

(1)「【0035】
図3は、バルブアッセンブリ51及び取付板52との拡大図である。
この図に示すように、バルブアッセンブリ51は、バイパス流路3e開口を開閉する弁体51aと当該弁体51aを取付板52に対して固定する座金51bとが軸部51cを介して連結された構成を有している。」

(2)「【0038】
また、本実施形態においては、座金51bの中央部に貫通孔が設けられており、軸部51cが弁体51aの上部から座金51bの貫通孔に挿通されることで、軸部51cの先端が座金51bから突出して配置されている。そして、軸部51cの先端と座金51bとが溶接接合されることによって、軸部51cと座金51bとが固定されている。
【0039】
取付板52は、軸部51cが挿通される貫通孔を有しており、当該貫通孔に軸部51cが挿通され、弁体51aと座金51bとで狭持されている。そして、取付板52は、不図示のリンク板アッセンブリを介してアクチュエータからの駆動力が伝達されることによって図2(a)に示すように回動される。この取付板52の回動によってバルブアッセンブリ51も回動される。」

8 甲第8号証
甲第8号証には、「過給機等のバルブ」に関して、図面(特に、第1図、第4図及び第9図)を参照して、次の事項が記載されている。

(1)「[産業上の利用分野]
本考案は過給機のウェイストゲートバルブ等のバルブに関するものである。
[従来の技術]
第8図に示すように往復動内燃機関a等では過給機bを搭載して、その排気エネルギーを利用してタービンcを駆動し、その駆動回転力により同軸上のコンプレッサdを介して空気を圧縮し、前記内燃機関aへの空気量を増加して過給し、出力の増大を図っている。
しかし、内燃機関aの回転数が高くなるとタービンcの回転数も増加し、コンプレッサdから内燃機関aへ送られるブースト圧が高くなり過ぎてエンジントラブルの原因となったり、或いはタービンcに過剰の排気ガスが供給された場合、過給機がオーバースピードし破損したりする。
そのため、第8図及び第9図に示すようにウェイストゲートバルブeをタービン車室fの入口部等に設け、ブースト圧力が所定の値を超えたときアクチュエータgが作動し、レバーによりリンク板hが回動せしめられ、該リンク板hに固定された軸iが回転し、該軸iの他端にバルブ取付板jを介して取り付けられたウェイストゲートバルブeが開かれ、タービン車室fに導入される排気ガスの一部を外部に逃がし、ブースト圧力の一定化を図っている。」(明細書第1ページ第13行ないし第2ページ第19行)

(2)「本考案は上述の問題点を解決し、バルブの閉塞を確実になし得るようにすることを目的としてなされたもので、基端部を中心として回動する取付板の先端部に若干のガタをもって枢着した弁体によりバルブ孔を開閉するようにしたバルブにおいて、前記取付板の弁体枢着部よりも先端側であって弁体側、若しくは弁体の枢着部側の少なくともいずれかに角度規制用の凸部を設けたことを特徴とする過給機等のバルブにかかるものである。」(明細書第3ページ第20行ないし第4ページ第9行)

(3)「第1図乃至第4図は本考案の一実施例であり、軸1端に基端部側において固定した弁体取付板2の先端部に断面角形の孔3を穿設し、半球状の頂部4を有する弁体5を該弁体5の頂部4に凸設した角柱状の枢着軸6を前記孔3に若干の隙間7をもって挿入貫通し、座金8により外れ止めしてある。」(明細書第4ページ第18行ないし第5ページ第4行)

(4)「従って、開状態にある弁体5の下端が弁孔11の縁に引掛かったり、座面14との間にこじりを生じたりすることがなく、確実に閉鎖動作し得る。」(明細書第5ページ第20行ないし第6ページ第3行)

(5)過給機の構造に関する技術常識から、タービン車室fを構成するために、タービンハウジングがあることは自明である。そして、それを前提にすれば、タービン車室fはタービンハウジングの内部ということができる。

(6)過給機の構造に関する技術常識および第9図の図示内容から、軸iは、一端がタービンハウジングの外側へ突出しているといえる。そうすると、軸iは、タービンハウジングの外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持されているといえる。

(7)甲第8号証全体の記載ぶりからみて、上記(1)の[従来の技術]として記載された事項は、上記(3)及び(4)の「本考案の一実施例」として記載された事項の前提であると理解できることから、「本考案の一実施例」として記載されたものも、タービン車室fを構成するためのタービンハウジング、タービンc、アクチュエータg及びリンク板hを備えているといえる。また、[従来の技術]として記載されたものにおける「軸i」は「本考案の一実施例」として記載されたものの「軸1」といえる。

(8)上記(2)の「取付板の先端部に若干のガタをもって枢着した弁体」の記載及び上記(3)の「弁体5を該弁体5の頂部4に凸設した角柱状の枢着軸6を前記孔3に若干の隙間7をもって挿入貫通し」の記載から、弁体5は、弁体取付板2に対するガタが許容されていることが分かる。

(9)上記(3)の「半球状の頂部4を有する弁体5を該弁体5の頂部4に凸設した角柱状の枢着軸6」の記載、並びに第1図、第2図及び第4図において、枢着軸6が頂部4の頂上付近に設けられていることからみて、枢着軸6は、弁体5の中央に凸設されているといえる。

(10)「弁体5」と「角柱状の枢着軸6」を合わせて「弁」ということができる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合すると、甲第8号証には、次の発明(以下、「甲8発明1」及び「甲8発明2」という。)が記載されている。

〔甲8発明1〕
「タービンハウジングの内部に、タービンc側へ供給される排気ガスの流量を可変とするための弁孔11が形成された過給機に用いられ、
前記弁孔11の開口部を開閉する過給機等のバルブにおいて、
前記タービンハウジングの外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され、一端が前記タービンハウジングの外側へ突出した軸1と、
前記軸1の一端に固定され、アクチュエータgの駆動により前記軸1の軸心周りに回転するリンク板hと、
前記軸1に固定され、孔3が穿設された弁体取付板2と、
前記弁体取付板2の前記孔3に挿入貫通され、前記弁体取付板2に対するガタが許容され、前記弁孔11の開口部側の座面14に当接離隔可能な弁体5、及び前記弁体5の中央に凸設されかつ前記弁体取付板2の前記孔3に挿入貫通された角柱状の枢着軸6を備えた弁と、
前記枢着軸6の先端部に一体的に設けられ、前記弁を前記弁体取付板2に対して外れ止めするための座金8と、を具備した、
過給機等のバルブ。」

〔甲8発明2〕
「孔3が形成された弁体取付板2と、
弁体5、及び前記弁体5に形成され前記孔3に嵌合された枢着軸6を含む弁と、
前記枢着軸6の先端部に設けられた座金8と、
を有する過給機等のバルブ。」

9 甲第9号証
甲第9号証には、次の事項が記載されている。

「【0005】ウエストゲートバルブの上述した問題点に対処するべく、図6に示すようなウエストゲートバルブも提案されている(実開昭63-118337号)。このウエストゲートバルブは、平板状の弁体部60aと該弁体部60aに対して垂直に延びる弁軸部60bとから成るバルブフラッパ60を有しており、アーム61への装着に当たっては、バルブフラッパ弁軸部60bをアーム61の下方より挿入し、アーム61上部より突出した部分においてワッシャ62等により固定する方法を採用しており、固定部をバルブフラッパ弁体部60aより離れさせ高温の排気ガスに曝されないようにしており、更にウエストゲートバルブ作動時、下方からの排気ガスの流れによって必要以上にバルブフラッパ60が傾斜しないように移動規制のための凸部60cをバルブフラッパ60に形成している。
【0006】ところで上述したようなウエストゲートバルブにおいては一般に、ウエストゲートバルブ閉弁の際の着座性(即ち排気ガスのシール性)や組み付け性の観点から、バルブフラッパ60の弁軸部60bとアーム61の貫通穴との間に僅かなガタ(間隙)63を有してバルブフラッパ60が装着されるようになっている。その結果、ウエストゲートバルブ作動時において、バルブフラッパ60に対して図5で示したような曲げモーメントがかかると、バルブフラッパ60はアーム61に対して傾斜することとなり、アーム61の貫通穴のエッジ61aとバルブフラッパ60の弁軸部60bとが接触する。即ちバルブフラッパ弁軸部60のつけ根部分にはこの接触と曲げモーメントからのかなりの応力がかかることとなり、この部分でのバルブフラッパ60の信頼性に乏しい。」

10 甲第10号証
甲第10号証には、図面(特に、第5図ないし第8図)を参照して、次の事項が記載されている。
「さて次に、第5図?第8図を参照して、排気カット弁11の詳細について説明する。
先ず、分岐排気通路3bの途中には、主弁座71が形成されている。排気カット弁11は、1つの保持アーム72および主と副の2つの弁体73、74とを有する。保持アーム72は、その基端部が、分岐吸気通路3bの通路壁に回転自在に保持された回転ロッド75に一体回転するように取付けられている。この回転ロッド75は、分岐排気通路3bの方向と略直交する方向に延びて、主弁座71よりも若干上流側でかつ通路部分よりも横方向に偏った位置に設けられている。
前記主弁体73は、主弁座71に離着座されるもので、このため分岐排気通路3bの径に応じた十分に大きなものとして形成されている。この主弁体73は、前記保持アーム72に対して、所定の遊びをもってフローティング支持されている。この点を詳述すると、主弁体73には、上流側に向けて一対の連結部73aが突設される一方、保持アーム72にはこの連結部73aに対応して一対の保持孔72aが形成されている。上記連結部73aが保持孔72a内を貫通していて、該連結部73aの先端部には、保持孔72aよりも大径の抜止部材76が固定されている。そして、連結部73aの長さは保持孔72aの長さよりも十分大きくされ、また、連結部73aの径は保持孔72aの径よりも若干小さくされている。これにより、連係部73aしたがって主弁体73は、保持孔72aの軸方向および径方向において遊びを有するようにフローティング支持される。」(明細書第25ページ第2行ないし第26ページ第11行)

第6 当審の判断
1 第1の無効理由について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1の「タービンケース4」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1の「タービンハウジング」に相当し、以下同様に、「タービン羽根車」は「タービンインペラ」に、「通路孔7」は「ガス流量可変通路」に、「ターボ過給機1」は「過給機」に、「排気弁機構」は「流量可変バルブ機構」に、「シャフト9」は「ステム」に、「前記タービンケース4の外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され、一端が前記タービンケース4の外側へ突出した」は「前記タービンハウジングの外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され、基端部が前記タービンハウジングの外側へ突出した」に、「排気弁アクチュエータ17」は「アクチュエータ」に、「リンク10」は「リンク部材」に、「前記シャフト9の一端に固定され、排気弁アクチュエータ17の駆動により前記シャフト9の中心軸に対して回転方向に可動可能である」は「前記ステムの基端部に一体的に設けられ、アクチュエータの駆動により前記ステムの軸心周りに正逆方向へ揺動する」に、「弁固定用孔13」は「取付穴」に、「ステー12」は「取付部材」に、「前記ステー12の前記弁固定用孔13に挿入され」は「前記取付部材の前記取付穴に嵌合して設けられ」に、「弁座19」は「バルブシート」に、「弁体14」は「バルブ本体」に、「弁固定軸15」は「バルブ軸」に、「弁」は「バルブ」に、「スペーサ16」は「止め金」に、「前記弁固定軸15の先端部をリベッティング等の手法でカシメてあり」は「前記バルブ軸の先端部に一体的に設けられ」に、「前記ステー12に対して抜け出ないように」は「前記取付部材に対して離脱不能に」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明1の「弁体14に一体的に設けられかつ前記ステー12の前記弁固定用孔13に挿入された弁固定軸15」と、本件特許発明1の「バルブ本体の中央に一体的に設けられかつ前記取付部材の前記取付穴に嵌合したバルブ軸」とは「バルブ本体に一体的に設けられかつ前記取付部材の前記取付穴に嵌合したバルブ軸」という限りにおいて一致している。

したがって、両者の間には、次の一致点及び相違点がある。
〔一致点〕
「タービンハウジングの内部に、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流量可変通路が形成された過給機に用いられ、
前記ガス流量可変通路の開口部を開閉する流量可変バルブ機構において、
前記タービンハウジングの外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され、基端部が前記タービンハウジングの外側へ突出したステムと、
前記ステムの基端部に一体的に設けられ、アクチュエータの駆動により前記ステムの軸心周りに正逆方向へ揺動するリンク部材と、
前記ステムに一体的に設けられ、取付穴が貫通形成された取付部材と、
前記取付部材の前記取付穴に嵌合して設けられ、前記取付部材に対するガタが許容され、前記ガス流量可変通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能なバルブ本体、及び前記バルブ本体に一体的に設けられかつ前記取付部材の前記取付穴に嵌合したバルブ軸を備えたバルブと、
前記バルブ軸の先端部に一体的に設けられ、前記バルブを前記取付部材に対して離脱不能にするための止め金と、を具備した、
流量可変バルブ機構。」

〔相違点1〕
本件特許発明1においては、バルブ軸がバルブ本体の「中央」に一体的に設けられているのに対して、甲1発明1においては、弁固定軸15が弁体14の中央に設けられているのか不明な点。

〔相違点2〕
本件特許発明1においては「前記取付部材の前記取付穴の内周面と前記バルブ軸の外周面との嵌合クリアランスは、前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付部材の前記取付穴の深さ寸法を引いた値よりも小さく設定され、前記バルブ軸の外周面が前記取付部材の前記取付穴の表側周縁及び裏側周縁に接触しかつ前記バルブ本体の頂面が前記取付部材の裏面に接触するという条件を満たした場合に、前記止め金が前記取付部材の表面に対して非接触になるように構成されている」のに対して、甲1発明1においては、そのように構成されているのか不明な点。

ア 上記相違点1についての検討
甲第1号証の第2図及び第3図には、弁固定軸15が弁体14の中央に設けられていることが、一応描かれているように見える。
しかしながら、甲第1号証の明細書には、弁固定軸15が弁体14の中央に設けられているという旨の明示的記載はない。
また、第2図及び第3図は、一方向から見た図面であって、他の方向から見た図面は無いことから、弁固定軸15の位置を特定することはできない。
そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点である。

イ 上記相違点2についての検討
甲第1号証の第2図及び第3図には、ステー12の弁固定用孔13の内周面と弁固定軸15の外周面との間隙が、弁体14の頂面とスペーサ16の裏面との間隔寸法から前記ステー12の前記弁固定用孔13の深さ寸法を引いた値よりも小さく、前記弁固定軸15の外周面が前記ステー12の前記弁固定用孔13の表側周縁及び裏側周縁に接触しかつ前記弁体14の頂面が前記ステー12の裏面に接触するという条件を満たした場合に、前記スペーサ16が前記ステー12の表面に対して非接触になることが、一応描かれているように見える。
しかしながら、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲第1号証に記載されているということはできない。その理由は以下のとおりである。

(ア)甲第1号証の第2図や第3図は、寸法を正確に記載した図面であるとはいえない。
すなわち、「かしめ」とは、「2つ以上の部品の密着度を増すために、たがねなどの先端を当ててハンマなどで叩き、塑性変形を与えてすきまをなくすこと。」(社団法人実践教育訓練研究所編 機械用語大辞典 1997年11月28日 初版第1刷 日刊工業新聞社 第140ページ)である。甲第1号証では、弁固定軸15の端部にはスペーサ16が挿入され、固定軸15の先端はスペーサ16が抜け出ないようにリベッティング等の手法でカシメてあるから(甲第1号証の第5ページ第12行ないし第15行)、スペーサ16と固定軸15とは密着されていて、その間に隙間は存在しないと考えられるところ、第2図ではスペーサ16と固定軸15との間に隙間が設けられており、実際の構造を正しく表現できているとはいえない。しかも、このような図面では、本件特許発明1の「止め金」に相当するスペーサー16の位置を特定することができないから、本件特許発明1の「前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付部材の前記取付穴の深さ寸法を引いた値」を特定することもできない。
さらに、第2図、第3図及び第4図を比較すると、スペーサ16の厚さや径が、それぞれ異なっているから、この点からしても、甲第1号証の図面の寸法に信頼性があるとはいえない。

(イ)甲第1号証の明細書からは、その記載内容及び技術常識を総合しても、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を導き出すことができない。
請求人は、口頭審理陳述要領書(第4ページ第11行ないし第6ページ第18行)において概略、次のような根拠を示し、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成が、甲第1号証に記載されている旨を主張しているが、以下のとおり、いずれも採用できない。

〔主張1〕甲第1号証の明細書中には、「弁体をステーに対して軸方向にも径方向にも自由に動きうるガタを持たせることにより、弁体を可動させるシャフトとスリーブの隙間を大きくし、熱歪による変形によるシャフトとスリーブの焼付きや、不純物によるによる固着をなくし、常に弁と弁座が完全に着座できる構造が用いられている。しかし、このような構造では、弁体がステーに対して径方向に自由に動くため、弁座に設けられた通路孔の大きさに更に自由に動きうる弁体の動き範囲を加算した以上の大きさに弁体を設定しないと、弁体が完全に弁座の通路孔を塞ぐことができず、排気弁構造が大型化し、ターボ過給機システムの小型化の大きな障害となっていた。」(甲第1号証の明細書第2ページ第18行ないし第3ページ第11行、以下、「問題点1」という。)との記載があり、甲第1号証に記載の考案は、このような問題点1を解決した排気弁機構を提供することを目的としている(甲第1号証の明細書第4ページ第4行ないし第5行)ので、甲第1号証の第2図及び第3図に示される構造は、当然に、当該問題点1を解消した構造となっているはずである。すなわち、弁固定軸15の外周面と弁固定用孔13の内周面との間の間隔は、甲第1号証の第2図及び第3図において図示されているように、弁体14が弁軸15の径方向において動きうる範囲が大きくならないように十分に小さく設定されていると解釈すべきである。

上記〔主張1〕について検討すると、甲第1号証の考案は、上記〔主張1〕に記載されたような問題点1及び「弁と弁座の着座位置を一定にできないため着座面は必ず面接触とせねばならず、さらには使用状態においてこの平面度が熱歪によりそこなわれたり、・・・と言う不具合が生じていた。」(甲第1号証の明細書第3ページ第12行ないし最下行)という問題点(以下、「問題点2」という。)を解決することを目的とし、「弁体の弁座と着座する面を、弁体軸線方向に対して全周にわたり傾斜させたテーパ形状にすることにより弁着座時、弁体の前記傾斜面が弁座孔内に挿入された弁が弁座中心に常に着座するようにした」(実用新案登録請求の範囲)、「弁座通路孔に対して弁体の傾斜面を接させることで、弁体が自動調心する自動調心作用を利用して、弁体が常に弁座中心に着座し、更には一定した着座が得られる効果を利用して弁と弁座を線接触させるようにした」(甲第1号証の明細書第6行ないし第10行)というものである。
そうすると、上記問題点1を解決するために「弁固定軸15の外周面と弁固定用孔13の内周面との間の間隔は、」「弁体14が弁軸15の径方向において動きうる範囲が大きくならないように十分に小さく設定している」とは必ずしもいえないから、請求人の主張は採用できない。

〔主張2〕弁体14が自動調心できるようにするには、弁固定軸15の軸方向において、ステー12と、弁体14の頂面およびスペーサ16との間には、少なくとも弁固定軸15の外周面と弁固定用孔13の内周面との間の間隔と同等以上の隙間が必要となる。

上記〔主張2〕について検討すると、「弁体14が自動調心できるようにすること」と、「ステー12と、弁体14の頂面およびスペーサ16との間には、少なくとも弁固定軸15の外周面と弁固定用孔13の内周面との間の間隔と同等以上の隙間が必要である」こととの間には、関連性は認められないから、請求人の主張は採用できない。

〔主張3〕甲第1号証の明細書には、「・・・弁固定用孔13の内径より細い弁固定軸15が弁固定用孔13に挿入され、ステー12の厚みtよりも長く設定された弁固定軸15の端部にはスペーサ16が挿入され、更に固定軸15の先端部は、リベッティング等の手法でカシメてある。」(甲第1号証の明細書第5ページ第10行ないし第15行)との記載があるとおり、スペーサ16はカシメにより弁固定軸15に固定されるので、弁固定軸15の軸方向には、このカシメ加工のためのマージンをも確保することが必要となるので、弁固定軸15の軸方向には、少なくとも弁固定軸15の外周面と弁固定用孔13の内周面との間の間隔以上の隙間に加え、カシメ加工のためのマージンも必要となり、弁固定軸15の軸方向における、ステー12と、弁体14の頂面およびスペーサ16との間隔は、比較的大きく設定される。

上記〔主張3〕について検討すると、甲第1号証の明細書には「固定軸15の先端部は、スペーサ16が抜け出ないよう、リベッティング等の手法でカシメてある。」(甲第1号証の明細書第5ページ第13行ないし第15行)と記載されており、カシメ加工を行うのは、固定軸15の先端部であるから、スペーサ16とステー12の間にカシメ加工のためのマージンを確保することが必要であるとは考えられず、カシメ加工は、スペーサ16とステー12の間の固定軸15方向の間隙の大きさに影響を与えるとは考えられないから、請求人の主張は採用できない。

上記(ア)及び(イ)からすると、甲第1号証には、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成が記載されているとはいえない。
したがって、上記相違点2は、実質的なものである。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明1とを対比すると、本件特許発明2のうち本件特許発明1を引用する部分については、上記相違点1及び相違点2を有しており、さらに、次の点で相違する。

〔相違点3〕
本件特許発明2においては「前記バルブ本体における前記ステムに近い側に切欠が前記ステムの長手方向に沿って形成されている」のに対して、甲1発明1においては、そのような構成を有していない点。

ア 上記相違点1についての検討
甲第1号証には、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成が記載されていないことは、上記(1)で検討したとおりである。
しかしながら、バルブ軸をバルブ本体のどの位置に設けるかは、重量バランスや周辺の他の部材との関係を考慮して、当業者が適宜決定し得ることであり、バルブ軸をバルブ本体の中央に設けることは、格別困難なことではない。
そうすると、甲1発明1において、弁固定軸15を弁体14の中央に設けることにより、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記相違点2についの検討
甲第1号証には、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成が記載されていないことは、上記(1)で検討したとおりである。
また、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲第2号証には記載も示唆もされていない。
さらに、本件特許発明の課題は「車両用過給機の運転中におけるウェイストゲートバルブからのチャタリング音(バルブの振動に伴う接触音)を低減するには、バルブの重量だけでなく止め金の重量を増大して、排気ガスの脈動圧力等によるバルブの振動(バルブ及び止め金の振動)を抑える必要がある。一方、止め金の重量の増大によって止め金の外径が大きくなり、バイパス通路の開口部を開いた状態において、バルブが取付部材の取付穴の中心線に対して傾動すると、図6に示すように、バルブ本体が取付部材の裏面に、止め金が取付部材の表面に同時に接触して、取付部材から止め金に大きな反力が働くことなる。そのため、車両用過給機の累積運転時間の増加に伴い、バルブ軸の先端部と止め金との結合力(締結力)が低下することになり、ウェイストゲートバルブの耐久性、換言すれば、車両用過給機の耐久性を向上させることが困難になる。」(本件特許明細書段落【0009】及び【0010】)という問題点を解決する流量可変バルブ機構を提供すること(以下「本件発明課題」という。)であるが、このような課題は、甲第1号証及び甲第2号証には記載されていない。
そうすると、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲第1号証及び甲第2号証から当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1発明1及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を有するものである。
そして、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、上記(2)で述べたとおり、甲第1号証及び甲第2号証から、当業者が容易に想到できたものではない。
また、甲第3号証には、本件発明課題も上記相違点2に係る本件特許発明1の構成も記載されていない。
そうすると、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲第1号証及び甲第3号証から当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明3は、甲1発明1及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を有するものである。
したがって、本件特許発明4は、上記(1)で述べたとおり、甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(5)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2の「弁固定用孔13」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1の「取付穴」に相当し、以下同様に、「ステー12」は「取付部材」に、「弁体14」は「バルブ本体」に、「弁固定用孔13に挿入された」は「取付穴に嵌合された」に、「弁固定軸15」は「バルブ軸」に、「弁」は「バルブ」に、「弁固定軸15の先端部をリベッティング等の手法でカシメて抜け出ないようにされた」は「バルブ軸の先端部に設けられた」に、「スペーサ16」は「止め金」に、「排気弁機構」は「流量可変バルブ機構」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の間には、次の一致点及び相違点がある。
〔一致点〕
「取付穴が形成された取付部材と、
バルブ本体、及び前記バルブ本体に形成され前記取付穴に嵌合されたバルブ軸を含むバルブと、
前記バルブ軸の先端部に設けられた止め金と、
を有する流量可変バルブ機構。」

〔相違点4〕
本件特許発明5においては「前記取付穴の内周面と前記バルブ軸の外周面との嵌合クリアランスは、前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付穴の深さ寸法を引いた値より小さく、前記バルブ軸の外周面が前記取付部材の前記取付穴の表側周縁及び裏側周縁に接触しかつ前記バルブ本体の前記頂面が前記取付部材の裏面に接触するという条件を満たした場合に、前記止め金が前記取付部材の表面に対して非接触になるように構成される」のに対して、甲1発明2においては、そのように構成されているのか不明な点。

上記相違点4について検討する。
上記相違点4に係る本件特許発明5の構成は、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成と実質的に同じものである。
そして、上記(1)で述べたとおり、甲第1号証には、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成が記載されているとはいえない。
したがって、本件特許発明5は甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(6)本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明5を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点4に係る本件特許発明5の構成を有している。
そして、上記相違点4に係る本件特許発明5の構成は、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成と実質的に同じものであるから、上記(1)で述べたとおり、甲第1号証には記載されているとはいえず、また、上記(2)で述べたとおり、甲第1号証及び甲第2号証から、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明6は、甲1発明2及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明5を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点4に係る本件特許発明5の構成を有している。
そして、上記相違点4に係る本件特許発明5の構成は、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成と実質的に同じものであるから、上記(2)で述べたとおり、甲第1号証から、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明7は、甲1発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件特許発明5を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点4に係る本件特許発明5の構成を有している。
そして、上記相違点4に係る本件特許発明5の構成は、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成と実質的に同じものであるから、上記(3)で述べたとおり、甲第1号証及び甲第3号証から、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明8は、甲1発明2及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明5を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点4に係る本件特許発明5の構成を有している。
したがって、上記(5)で述べたとおり、本件特許発明9は、甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(10)小括
以上によれば、本件特許発明1、4、5及び9は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明1、4、5及び9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当しないので、無効理由1によって無効とすることはできない。
本件特許発明2及び6は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件特許発明3及び8は、甲第1号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件特許発明7は、甲第1号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明2、3、6ないし8についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当しないので、無効理由1によって無効とすることはできない。

3 第2の無効理由について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲8発明1とを対比すると、甲8発明1の「タービンc」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1の「タービンインペラ」に相当し、以下同様に、「弁孔11」は「ガス流量可変通路」に、「過給機等のバルブ」は「流量可変バルブ機構」に、「軸1」は「ステム」に、「前記タービンハウジングの外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され」は「前記タービンハウジング又は前記接続体の外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され」に、「一端が前記タービンハウジングの外側へ突出した」は「基端部が前記タービンハウジングの外側へ突出した」に、「前記軸1の一端に固定され」は「前記ステムの基端部に一体的に設けられ」に、「アクチュエータg」は「アクチュエータ」に、「アクチュエータgの駆動により前記軸1の軸心周りに回転する」は「アクチュエータの駆動により前記ステムの軸心周りに正逆方向へ揺動する」に、「リンク板h」は「リンク部材」に、「孔3」は「取付穴」に、「弁体取付板2」は「取付部材」に、「前記軸1に固定され、孔3が穿設された弁体取付板2」は「前記ステムに一体的に設けられ、取付穴が貫通形成された取付部材」に、「前記弁体取付板2の前記孔3に挿入貫通され」は「前記取付部材の前記取付穴に嵌合して設けられ」に、「座面14」は「バルブシート」に、「弁体5」は「バルブ本体」に、「角柱状の枢着軸6」は「バルブ軸」に、「弁体5の中央に凸設され」は「バルブ本体の中央に一体的に設けられ」に、「前記弁体取付板2の前記孔3に挿入貫通された」は「前記取付部材の前記取付穴に嵌合した」に、「弁」は「バルブ」に、「外れ止めする」は「離脱不能にする」に、「座金8」は「止め金」に、それぞれ相当する。

したがって、両者には、次の一致点及び相違点がある。
〔一致点〕
「タービンハウジングの内部に、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流量可変通路が形成された過給機に用いられ、
前記ガス流量可変通路の開口部を開閉する流量可変バルブ機構において、
前記タービンハウジングの外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され、基端部が前記タービンハウジングの外側へ突出したステムと、
前記ステムの基端部に一体的に設けられ、アクチュエータの駆動により前記ステムの軸心周りに正逆方向へ揺動するリンク部材と、
前記ステムに一体的に設けられ、取付穴が貫通形成された取付部材と、
前記取付部材の前記取付穴に嵌合して設けられ、前記取付部材に対するガタが許容され、前記ガス流量可変通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能なバルブ本体、及び前記バルブ本体の中央に一体的に設けられかつ前記取付部材の前記取付穴に嵌合したバルブ軸を備えたバルブと、
前記バルブ軸の先端部に一体的に設けられ、前記バルブを前記取付部材に対して離脱不能にするための止め金と、を具備した、
流量可変バルブ機構。」

〔相違点5〕
本件特許発明1においては「前記取付部材の前記取付穴の内周面と前記バルブ軸の外周面との嵌合クリアランスは、前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付部材の前記取付穴の深さ寸法を引いた値よりも小さく設定され、前記バルブ軸の外周面が前記取付部材の前記取付穴の表側周縁及び裏側周縁に接触しかつ前記バルブ本体の頂面が前記取付部材の裏面に接触するという条件を満たした場合に、前記止め金が前記取付部材の表面に対して非接触になるように構成されている」のに対して、甲8発明1においては、そのように構成されているのか不明な点。

上記相違点5について検討する。
上記相違点5に係る本件特許発明1の構成は、甲第10号証には記載も示唆もされていない。
また、甲第8号証及び甲第10号証には、本件発明課題は記載されていない。
そうすると、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成は、甲第8号証及び甲第10号証から当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲8発明1及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

請求人は審判請求書(平成30年6月28日付け手続補正書)において、次のように主張しているので検討する。

〔主張1〕「特開平04-272430号公報(甲第9号証)においては、甲第8号証に記載のウェイストゲートバルブに関して、以下のように言及されている。
<甲第9号証の段落【0005】>
『ウエストゲートバルブの上述した問題点に対処するべく、図6に示すようなウエストゲートバルブも提案されている(実開昭63-118337号)。このウエストゲートバルブは、平板状の弁体部60aと該弁体部60aに対して垂直に延びる弁軸部60bとから成るバルブフラッパ60を有しており、アーム61への装着に当たっては、バルブフラッパ弁軸部60bをアーム61の下方より挿入し、アーム61上部より突出した部分においてワッシャ62等により固定する方法を採用しており、固定部をバルブフラッパ弁体部60aより離れさせ高温の排気ガスに曝されないようにしており、更にウエストゲートバルブ作動時、下方からの排気ガスの流れによって必要以上にバルブフラッパ60が傾斜しないように移動規制のための凸部60cをバルブフラッパ60に形成している。』
<甲第9号証の段落【0006】>
『ところで上述したようなウエストゲートバルブにおいては一般に、ウエストゲートバルブ閉弁の際の着座性(即ち排気ガスのシール性)や組み付け性の観点から、バルブフラッパ60の弁軸部60bとアーム61の貫通穴との間に僅かなガタ(間隙)63を有してバルブフラッパ60が装着されるようになっている。その結果、ウエストゲートバルブ作動時において、バルブフラッパ60に対して図5で示したような曲げモーメントがかかると、バルブフラッパ60はアーム61に対して傾斜することとなり、アーム61の貫通穴のエッジ61aとバルブフラッパ60の弁軸部60bとが接触する。即ちバルブフラッパ弁軸部60のつけ根部分にはこの接触と曲げモーメントからのかなりの応力がかかることとなり、この部分でのバルブフラッパ60の信頼性に乏しい。』
仮に甲第8号証に記載のウェイストゲートバルブにおいて、枢着軸の外周面と弁体取付板に設けられた孔の縁とが接触している際に弁体取付板と止め金とが接触しているとすると、弁体取付板と止め金とが接触により枢着軸にかかる応力が緩和されるため、枢着軸に『かなりの応力』がかかることはない。そのため、枢着軸の外周面と弁体取付板に設けられた孔の縁とが接触している際に弁体取付板と止め金とが接触していないことは、甲第8号証に記載されているに等しい。」(平成30年6月28日付け手続補正書(方式)の第43ページ第9行ないし第44ページ第11行)

上記〔主張1〕について検討すると、甲第8号証に如何なる発明が記載されているのかは甲第8号証の記載内容及び技術常識から判断すべきであって、甲第8号証とは別個の刊行物である甲第9号証に如何なる記載があるのかは、甲第8号証に記載された発明の認定とは直接の関係がない。そして、甲第8号証自体には、請求人が主張する上記の構成を開示する記載は存在しないから、請求人の主張は採用できない。

〔主張2〕「前記取付部材の前記取付穴の内周面と前記バルブ軸の外周面との嵌合クリアランスは、前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付部材の前記取付穴の深さ寸法を引いた値よりも小さく設定され」との本件特許発明1の構成は、甲第10号証に記載されている(甲第10号証発明の『保持アーム』、『保持孔』、『連結部』、『主弁体』及び『抜止部材』は、本件特許発明1の『取付部材』、『取付穴』、『弁軸』、『バルブ本体』及び『止め金』にそれぞれ相当する)ことからして、相違点6(審決注:本審決における相違点5に相当する。)に係る構成は、技術常識ないし周知技術に過ぎない。」(平成30年6月28日付け手続補正書(方式)の第49ページ第12行ないし第18行)

上記〔主張2〕について検討すると、甲第10号証に記載された発明は、弁構造の前提が、甲8発明1とは異なるものであるから、甲8発明1に適用する動機付けは存在しないし、また、「前記取付部材の前記取付穴の内周面と前記バルブ軸の外周面との嵌合クリアランスは、前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付部材の前記取付穴の深さ寸法を引いた値よりも小さく設定され」という事項が技術常識ないし周知技術とは認められないから、請求人の主張は採用できない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成を有している。
そして、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成は、上記(1)で述べたとおり、甲第8号証及び甲第10号証から、当業者が容易に想到できたものではない。
また、甲第2号証には、本件発明課題も上記相違点5に係る本件特許発明1の構成も記載されていない。
そうすると、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成は、甲第8号証、甲第10号証及び甲第2号証から当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明2は、甲8発明1並びに甲第10号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成を有している。
そして、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成は、上記(1)で述べたとおり、甲第8号証及び甲第10号証から、当業者が容易に想到できたものではない。
また、甲第3号証には、本件発明課題も上記相違点5に係る本件特許発明1の構成も記載されていない。
そうすると、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成は、甲第8号証、甲第10号証及び甲第3号証から当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明3は、甲8発明1並びに甲第10号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成を有している。
したがって、本件特許発明4は、上記(1)で述べたとおり、甲8発明1及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲8発明2とを対比すると、甲8発明2の「孔3」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1の「取付穴」に相当し、以下同様に、「弁体取付板2」は「取付部材」に、「弁体5」は「バルブ本体」に、「枢着軸6」は「バルブ軸」に、「弁」は「バルブ」に、「座金8」は「止め金」に、「過給機等のバルブ」は「流量可変バルブ機構」に、それぞれ相当する。
したがって、両者には、次の一致点及び相違点がある。
〔一致点〕
「取付穴が形成された取付部材と、
バルブ本体、及び前記バルブ本体に形成され前記取付穴に嵌合されたバルブ軸を含むバルブと、
前記バルブ軸の先端部に設けられた止め金と、
を有する流量可変バルブ機構。」

〔相違点6〕
本件特許発明5においては「前記取付穴の内周面と前記バルブ軸の外周面との嵌合クリアランスは、前記バルブ本体の頂面と前記止め金の裏面との間隔寸法から前記取付穴の深さ寸法を引いた値より小さく、前記バルブ軸の外周面が前記取付部材の前記取付穴の表側周縁及び裏側周縁に接触しかつ前記バルブ本体の前記頂面が前記取付部材の裏面に接触するという条件を満たした場合に、前記止め金が前記取付部材の表面に対して非接触になるように構成される」のに対して、甲8発明2においては、そのように構成されているのか不明な点。

上記相違点6について検討する。
上記相違点6に係る本件特許発明5の構成は、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成と実質的に同じものであり、上記(1)で述べたとおり、甲第10号証に記載も示唆もされていない。
また、甲第8号証及び甲第10号証には、本件発明課題は記載されていない。
そうすると、上記相違点6に係る本件特許発明5の構成は、甲第8号証及び甲第10号証から当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明5は、甲8発明2及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明5を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点6に係る本件特許発明5の構成を有している。
そして、上記相違点6に係る本件特許発明5の構成は、上記(5)で述べたとおり、甲第8号証及び甲第10号証から、当業者が容易に想到できたものではない。
また、甲第2号証には、本件発明課題も上記相違点6に係る本件特許発明5の構成も記載されていない。
そうすると、上記相違点6に係る本件特許発明5の構成は、甲第8号証、甲第10号証及び甲第2号証から当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明6は、甲8発明2並びに甲第10号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明5を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点6に係る本件特許発明5の構成を有している。
したがって、本件特許発明7は、上記(5)で述べたとおり、甲8発明2及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件特許発明5を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点6に係る本件特許発明5の構成を有している。
そして、上記相違点6に係る本件特許発明5の構成は、上記(5)で述べたとおり、甲第8号証及び甲第10号証から、当業者が容易に想到できたものではない。
また、甲第3号証には、本件発明課題も上記相違点6に係る本件特許発明5の構成も記載されていない。
そうすると、上記相違点6に係る本件特許発明5の構成は、甲第8号証、甲第10号証及び甲第3号証から当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明8は、甲8発明2並びに甲第10号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明5を、その請求項の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、上記相違点6に係る本件特許発明5の構成を有している。
したがって、本件特許発明9は、上記(5)で述べたとおり、甲8発明2及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(10)小括
以上によれば、本件特許発明1、4、5、7及び9は、甲第8号証に記載の発明及び甲第10号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件特許発明2及び6は、甲第8号証に記載の発明、甲第10号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件特許発明3及び8は、甲第8号証に記載の発明、甲第10号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許発明1ないし9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当しないので、無効理由2によって無効とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許発明1ないし9についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-19 
結審通知日 2019-03-22 
審決日 2019-04-02 
出願番号 特願2013-84513(P2013-84513)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (F02B)
P 1 113・ 113- Y (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 津田 健嗣  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 粟倉 裕二
鈴木 充
登録日 2017-03-03 
登録番号 特許第6098314号(P6098314)
発明の名称 流量可変バルブ機構及び過給機  
代理人 柴森 康裕  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 十河 陽介  
代理人 牧野 知彦  
代理人 岡田 健太郎  
代理人 倉貫 北斗  
代理人 藤井 由紀  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ