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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01L
審判 全部無効 特29条の2  H01L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
管理番号 1353932
審判番号 無効2017-800144  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-11-30 
確定日 2019-08-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第3989794号発明「LED照明装置およびLED照明光源」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3989794号の請求項1ないし13に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許3989794号(以下「本件特許」という。)は、平成14年8月8日(優先権主張 2001年8月9日 日本国)の出願であって、平成19年7月27日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
そして、本件無効審判に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成29年11月30日付け 審判請求書、甲第1?17号証提出
同年 3月26日付け 審判事件答弁書、訂正請求書、
乙第1号証提出
平成30年 5月18日付け 審理事項通知書
同年 6月11日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)、
甲第18?20、22?25号証提出
同年 7月 2日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)、
乙第2号証提出
同年 7月24日付け 第1回口頭審理
同年 8月 6日付け 上申書(請求人)提出
同年 9月 4日付け 上申書(被請求人)、乙第3号証提出
同年 9月18日付け 上申書(請求人)提出
同年11月12日付け 審決の予告
なお、審決の予告に対する応答はなかった。
また、平成30年7月24日の第1回口頭審理において、甲第18?26号証のうち、甲第21号証は甲第20号証の参考資料とし、甲第26号証は甲第23号証の参考資料とする(甲第21号証及び甲26号証は、いずれも欠番とする。)ことが確認された(第1回口頭審理調書参照)。

第2 訂正の適否
1 訂正事項
被請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、平成30年3月26日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?16のとおり訂正することであり、訂正事項は以下のとおりである(なお、下線部が訂正箇所である。また、訂正後の請求項1?6、14?16、及び請求項7?13がそれぞれ一群の請求項をなす。)。

(1)訂正事項1(請求項1に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1を以下の訂正事項1-1、1-2のとおり訂正する(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、4?6も同様に訂正する)。
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1の「を備えるLED照明装置であって、」なる記載に続き、「前記基板の一部にマークが形成されており、」なる事項を付加する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、」とあるのを、
「前記コネクタに設けられたバネ性を有する端子部が前記給電端子を押圧することにより、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けるとともに、前記コネクタにより、前記基板片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて、前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、」と訂正する。

(2)訂正事項2(請求項3に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項3を、
「LEDが片面に実装された基板の当該面に給電端子を有する着脱可能なLED照明光源と、
前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面と接触する熱伝導部材と、
前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される少なくとも1つのコネクタと、
前記コネクタを介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路と、
を備えるLED照明装置であって、
前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定し、
前記基板裏面と前記熱伝導部材との間の接触面積は、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の面積に等しいか、それ以上であり、
前記コネクタは開口部を有する前記LED照明光源の受容部を有し、
前記LED照明光源からの光は前記開口部を通って出射される、
LED照明装置。」と訂正する。
(請求項3を直接又は間接的に引用する請求項14?16も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3(請求項4に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項4に
「前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している請求項1から3のいずれかに記載のLED照明装置。」とあるのを、
「前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している請求項1または2に記載のLED照明装置。」と訂正する。
(請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5、6も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4(請求項7に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項7を以下の訂正事項4-1、4-2のとおり訂正する(請求項7を直接又は間接的に引用する請求項8?13も同様に訂正する)。
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項7の
「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており、」なる記載に続き、「前記基板の一部にマークが形成されており、」なる事項を付加する。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項7に
「前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される、」とあるのを、
「前記コネクタに設けられたバネ性を有する端子部が前記給電端子を押圧することにより、前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されるとともに、前記コネクタにより、前記基板片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて、前記LED照明装置に着脱可能に固定される、」と訂正する。

(5)訂正事項5(請求項10に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項10に
「前記基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つが形成されている、」とあるのを、
「前記基板の一部に、切り欠きまたは凹凸の少なくとも何れか一方が形成されている、」と訂正する。
(請求項10の記載を引用する、請求項13も同様に訂正する。)
なお、訂正事項5について、平成30年3月26日付けの訂正請求書には、「『前記基板の一部に、切り欠きまたは凹凸の少なくともいずれか一方が形成されている、』と訂正する。」(6頁下から2行?7頁1行)と記載されているが、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲には、「前記基板の一部に、切り欠きまたは凹凸の少なくとも何れか一方が形成されている、」と記載されているので、上記訂正請求書に記載された「いずれか一方」は、「何れか一方」の誤記と認める。

(6)訂正事項6(請求項13に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項13に
「前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、」とあるのを、
「前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けるとともに、前記コネクタにより、前記基板片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて、前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、」と訂正する。

(7)訂正事項7
以下の請求項14を新設する。
「【請求項14】
前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している請求項3に記載のLED照明装置。」
(請求項14を引用する、請求項15も同様に訂正する。)

(8)訂正事項8
以下の請求項15を新設する。
「【請求項15】
前記給電ソケットは、電球用口金である請求項14に記載のLED照明装置。」
(請求項15を引用する、請求項16も同様に訂正する。)

(9)訂正事項9
以下の請求項16を新設する。
「【請求項16】
前記コネクタに接続された状態の前記LED照明光源から出た光を透過するカバーを備えている請求項14または15に記載のLED照明装置。」

2 本件訂正における両当事者の主張
請求人は、平成30年6月11日付け口頭審理陳述要領書(6?28頁の「第1」の項)、同年8月6日付け上申書(5?21頁の「第1」の項)及び同年9月18日付け上申書(5?14頁の「第1」の項)で、本件訂正は認められるべきでない旨主張し、被請求人は、平成30年7月2日付け口頭審理陳述要領書(別紙2?24頁の「第1」の項)及び同年9月4日付け上申書(別紙2?17行の「第1」の項)で、本件訂正は認められるべきである旨主張している。

3 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1(請求項1に係る訂正)について
ア 訂正事項1-1について
訂正事項1-1による訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「基板」について、訂正前の請求項10の「前記基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つが形成されている」との記載、及び本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。また、本件明細書とともに特許請求の範囲及び図面を併せて「本件明細書等」という。)の「なお、基板の一部に切り欠き、マーク、または凹凸を設けることによってカード型LED照明光源10の方向を明確にしてもよい。」(段落【0078】)等の記載を根拠に、「前記基板の一部にマークが形成されて」いることを限定するものである。
したがって、訂正事項1-1による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、「基板」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項1-2について
(ア)両当事者の主張
上記訂正事項1-2は、「コネクタ」と「基板」の配設構成について、「前記コネクタに設けられたバネ性を有する端子部が前記給電端子を押圧する」との事項及び「前記コネクタにより、前記基板片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて」との事項(以下両事項を併せて「事項A」ということもある。)を含むものである。
ここで、被請求人は、上記事項Aは、本件明細書等の図3、図13、図20?22、及び図25?31に開示された範囲内である旨主張するのに対し(口頭審理陳述要領書9?15頁の「2」の項)、請求人は、上記事項Aは、本件明細書等に記載された事項の範囲内のものではない旨主張するので(口頭審理陳述要領書10?16頁の「ウ」の項)、以下検討する。

(イ)検討
a 図3に係る本件明細書等の記載について
(a)本件明細書等には、以下の図3が示されている。

(b)ここで、本件明細書の記載によれば、図3(a)には、「実施形態1」としての「LED照明装置の一部を示す斜視図」が示されていること(段落【0065】)、その具体的構造について、「カード型LED照明光源10は、ヒートシンク19の側面に設けられたスロットを通じて所定位置まで挿入される」こと(段落【0066】)及び「ヒートシンク19の中に挿入されたカード型LED照明光源10は、ヒートシンク19内に設けられているコネクタ(不図示)と電気的に接続される」こと(段落【0067】)が明らかである。
(c)しかし、「ヒートシンク19内に設けられているコネクタ」は、そもそも「不図示」とされているとおり、図3(a)より「コネクタ」と「基板」との配設構造を看取することはできない。
また、図3(a)より、ヒートシンク19の側面にスロットが設けられていること、及びカード型LED照明光源10がスロットを通じてヒートシンク19内の所定位置まで挿入される程度の構造は看取し得るが、その構造が、「前記コネクタに設けられたバネ性を有する端子部が前記給電端子を押圧する」ものであって、「前記コネクタにより、前記基板片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて」構成されることまで看取し得るものではない。要するに、図3(a)は、あくまでも「カード型LED照明光源10は、ヒートシンク19の側面に設けられたスロットを通じて所定位置まで挿入される」こと(段落【0066】)及び「ヒートシンク19の中に挿入されたカード型LED照明光源10は、ヒートシンク19内に設けられているコネクタ(不図示)と電気的に接続される」こと(段落【0067】)を示す程度に描かれた特許図面であって、設計図面のような精度をもって記載された図面ということはできないことから、そのような図面から、訂正事項1-2に係る「コネクタ」と「基板」の配設構成は看取し得るものではない。
さらに、図3(a)には、略四角形状のカード型LED照明光源10が示されていることから、基板の形状も同様に略四角形状と解されるところ、そのような略四角形状の基板における「隣接する少なくとも3つの外周辺」と、基板の形状が特定されていない「隣接する少なくとも3つの外周辺」とは、その構成自体が異なることは、技術的に明らかであるから、図3(a)の略四角形状の基板の配設態様を示す図面から、単に「基板片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて」なる構成など看取し得るものではない。これについて補足すれば、例えば、三角形状や五角形状等の基板における「少なくとも3つの外周辺」と、略四角形状の基板における「少なくとも3つの外周辺」とは、その構成自体が異なるのであるから、略四角形状の基板の配設態様を示す図3(a)は、そもそも事項Aの根拠となり得るものではない。
また、図3(b)も、上記図3(a)と同様に、事項Aの根拠となり得るものではない。

b 図13、図20?22、及び図25?31に係る本件明細書等の記載について
(a)本件明細書等には、以下の図13、図20?22、及び図25?31が示されている。



(b)上記図13、図20?22、及び図25?31についても、上記aと同様のことがいえ、それらの図面を根拠として、上記事項Aが記載されているということはできない。

ウ 小括
以上のとおり、訂正事項1-2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできないから、上記訂正事項1-2を含む訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものではない。
したがって、訂正事項1に係る本件訂正を認めることはできない。

(2)訂正事項2(請求項3に係る訂正)について
ア 両当事者の主張
上記訂正事項2は、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を独立形式で書き下し、さらに、「前記コネクタは開口部を有する前記LED照明光源の受容部を有し、前記LED照明光源からの光は前記開口部を通って出射される、」との事項(以下「事項B」ということもある。)を追加するものである。
ここで、被請求人は、上記事項Bは、本件明細書等の段落【0031】、【0032】、【0216】、及び図20、22に開示された範囲内である旨主張するのに対し(口頭審理陳述要領書15?19頁「3」の項)、請求人は、上記事項Bは、本件明細書等に記載された事項の範囲内のものではない旨主張するので(口頭審理陳述要領書18?23頁「(2)(3)」の項)、以下検討する。

イ 検討
(ア)図20に係る本件明細書等の記載について
a 本件明細書等には、上記「(1)」に摘示した図20が示されており、それは、「実施形態4」としての「電球型のLED照明装置」を示すものである(段落【0211】)。
そして、本件明細書には、図20に示されるLED照明装置の構造について、「本体96の上面には、カード型LED照明光源96が嵌め込まれる受容部98が設けられており、本体96は、受容部98に嵌め込まれたカード型LED照明光源96を上面から押さえる固定蓋99を備えている。固定蓋99は、その一端の近傍を回動軸として開閉するように支持されており、カード型LED照明光源95上の給電電極95aと接触するコネクタ電極99aを有している。このコネクタ電極99aは、本体96内の点灯回路(不図示)と接続されている。固定蓋99および受容部98は、その組合せにより、1つの『コネクタ』として機能する」(段落【0211】)、及び「固定蓋99は、受容部98に収められたカード型LED照明光源95の光出射領域を開放しつつ、給電電極95aやその他の部分を押さえる構造を有している」(段落【0212】)と記載されている。
しかし、「コネクタ」として機能する「受容部98」に、上記事項Bに係る「開口部」を設けることの直接的な記載はない。
b ここで、本件明細書には、「開口部」との用語に関し、「図1(a)および図2(a)に示される構成において、LEDベアチップ22で発生した光は、板23に設けられた孔(開口部)23bの内周面に相当する反射面23aで反射され、素子外へ出射する。」(段落【0007】)、及び「LEDベアチップ2が実装された放熱基板1に対して、更に、図4(a)の光学反射板3が組み合わせられ、図4(b)に示すカード型LED照明光源が構成されている。光学反射板3には、放熱基板1上に配列されたLEDベアチップ2に対応する開口部(孔)3bが形成されている。」(段落【0086】)等の記載が認められる。
そうすると、上記事項Bに係る「開口部」とは、図1(a)に示される「孔(開口部)23b」や図4(b)に示される「開口部(孔)3b」のような「孔」と理解することもできるが、被請求人が訂正の根拠とする図20には、そのような「孔」は示されていない。したがって、そのような図面から、訂正事項2に係る「開口部」は看取し得るものではない。
c また、「開口」とは、字義的に「外に向かって穴が開くこと。また、その穴。」(広辞苑第6版)を意味するところ、図20に示される受容部98を、外に向かって穴が開いたものであって、その穴の部分を開口部と解して検討しても、図20からは、そのような「開口部」を「通って出射される」「LED照明光源からの光」までをも看取することはできない。補足すれば、「通る」とは、字義的に「通過する。」(広辞苑第6版)ことを意味するところ、図20からは、カード型照明光源95に配設されたLEDの光が、受容部98の開口部を「通過する」ほどにその受容部98内から発せられることを看取することはできない。要するに、受容部98におけるLEDの配設位置が明確に特定されなければ、LED照明光源からの光が、開口部を通って出射されることは認定できない(例えば、LEDが受容部98から突出した状態に配設されているならば、LED照明光源からの光は開口部を通って出射されることはない。)。
d したがって、図20に係る本件明細書等の記載を根拠として、上記事項Bが記載されているということはできない。

(イ)図22に係る本件明細書等の記載について
a 本件明細書等には、上記「(1)」に摘示した図22が示されており、その説明として、次の記載がある。
「【0216】
図22は、スタンド型のLED照明装置を示している。図22に示されている照明装置本体96には、カード型LED照明光源95を収容するための受容部98が設けられている。この受容部98は、カード型LED照明光源95をスライドさせるように案内するガイドを有している。給電電極95aが設けられている部分を先端としてカード型LED照明光源95を照明装置の受容部98に挿入すれば、カード型LED照明光源95が装着された状態で給電電極95aとコネクタ電極との接続が完了する。装着されたカード型LED照明光源95は、摩擦力によって固定され、不用意には外れない。また、カード型LED照明光源95の基板裏面は受容部98と熱的に接触するため、この接触部分は熱伝導性に優れた材料から形成しておくことが好ましい。
【0217】
図22のスタンド型照明装置では、1枚のカード型LED照明光源95が着脱されるが、1つの照明装置に対して着脱されるカード型LED照明光源の枚数は複数であってもよい。図23は、2枚のカード型LED照明光源が着脱される構成のスタンド型LED照明装置を示している。」
b しかし、上記図22に係る本件明細書等の記載についても、上記(ア)と同様のことがいえ、図22に係る本件明細書等の記載より、上記事項Bが記載されているということはできない。

ウ 小括
以上のとおり、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできないから、上記訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものではない。
したがって、訂正事項2に係る本件訂正を認めることはできない。

(3)訂正事項3(請求項4に係る訂正)について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4に「前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している請求項1から3のいずれかに記載のLED照明装置。」とあるのを、「前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している請求項1または2に記載のLED照明装置。」と訂正するものであるところ、訂正後の請求項4が引用する請求項1及び2に係る訂正事項1は、上記(1)のとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできないから、上記訂正事項3も上記訂正事項1と同様に、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものではない。
したがって、訂正事項3に係る本件訂正を認めることはできない。

(4)訂正事項4(請求項7に係る訂正)について
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項7を上記訂正事項4-1、4-2のとおり訂正するものであるところ、上記訂正事項4-2は、上記訂正事項1-2と同様に上記事項Aを含むものであるから、上記訂正事項4-2による訂正は、上記「(1)イ」と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできない。
したがって、上記訂正事項4-2を含む訂正事項4は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものではないから、訂正事項4に係る本件訂正を認めることはできない。

(5)訂正事項5(請求項10に係る訂正)について
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項10に「前記基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つが形成されている、」とあるのを、「前記基板の一部に、切り欠きまたは凹凸の少なくとも何れか一方が形成されている、」と訂正するものであるところ、訂正後の請求項10が間接的に引用する請求項7に係る訂正事項4は、上記(4)のとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできないから、上記訂正事項5も上記訂正事項4と同様に、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものではない。
したがって、訂正事項5に係る本件訂正を認めることはできない。

(6)訂正事項6(請求項13に係る訂正)について
ア 訂正事項6による訂正は、特許請求の範囲の請求項13に、「前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、」とあるのを、「前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けるとともに、前記コネクタにより、前記基板片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて、前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、」と訂正するが、上記「(1)イ(イ)」で述べたとおり、本件明細書等には、「前記コネクタにより、前記基板片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて」というい事項(上記事項A)が記載されているということはできない。
イ したがって、訂正事項6による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできないから、上記訂正事項6は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものではない。
したがって、訂正事項6に係る本件訂正を認めることはできない。

(7)訂正事項7?9について
訂正事項7?9に係る請求項14?16は、上記訂正事項2により訂正された請求項3を直接または間接的に引用するものであるところ、上記訂正事項2は、上記「(2)イ」で述べたとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできないから、上記訂正事項7?9も上記訂正事項2と同様に、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものではない。
したがって、訂正事項7?9に係る本件訂正を認めることはできない。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものではないから認容できない。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正の請求を認めることはできないから、本件の請求項1?13に係る発明(以下「本件発明1?13」という。)は、本件特許登録時の本件特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりの以下のものと認める。

「【請求項1】
LEDが片面に実装された基板の当該面に給電端子を有する着脱可能なLED照明光源と、
前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面と接触する熱伝導部材と、
前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される少なくとも1つのコネクタと、
前記コネクタを介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路と、
を備えるLED照明装置であって、
前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、LED照明装置。
【請求項2】
前記基板のうち前記LEDが実装されている基板面の一端側に給電電極が形成されており、
前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の中心位置が前記基板の中心位置からずれている請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
前記基板裏面と前記熱伝導部材との間の接触面積は、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の面積に等しいか、それ以上である請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項4】
前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している請求項1から3のいずれかに記載のLED照明装置。
【請求項5】
前記給電ソケットは、電球用口金である請求項4に記載のLED照明装置。
【請求項6】
前記コネクタに接続された状態の前記LED照明光源から出た光を透過するカバーを備えている請求項4または5に記載のLED照明装置。
【請求項7】
基板と、前記基板の片面に実装されたLEDとを備えたLED照明光源であって、
前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており、
前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される、LED照明光源。
【請求項8】
前記基板の中心位置は、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の中心位置からずれている請求項7に記載のLED照明光源。
【請求項9】
前記基板が長方形形状であって、当該長方形形状の角が丸まっている、請求項8に記載のLED照明光源。
【請求項10】
前記基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つが形成されている、請求項8に記載のLED照明光源。
【請求項11】
前記LEDは、前記基板にフリップチップボンディングで直接実装されている、請求項8に記載のLED照明光源。
【請求項12】
前記LEDは、面実装素子またはチップ型素子として組み込まれる、請求項8に記載のLED照明光源。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載のLED照明光源における給電端子を前記LEDが実装されている面から裏面へ押圧しながら接続するコネクタと、
前記コネクタを介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路と、
を備えたLED照明装置であって、
前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、LED照明装置。」

第4 請求人の主張の概要
請求人は、「特許第3989794号の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、甲第1?17号証を添付した平成29年11月30日付けの審判請求書、甲第18?20、22?25号証を添付した平成30年6月11日付けの口頭審理陳述要領書、同年8月6日付けの上申書、及び同年9月18日付けの上申書を提出し、以下の無効理由1?5により、本件特許は、特許法第123条第1項第2号及び第4号に該当し、無効とすべきものであると主張している。
なお、本件訂正が容認できないことは、上記「第2」で述べたとおりであるので、無効理由は以下のとおりに整理される(第1回口頭審理調書参照)。

ア 無効理由1
本件特許の請求項1?13に係る発明は、本件特許の基礎出願(甲第15号証)の明細書、図面のいずれにも記載されていない。したがって、本件特許の請求項1?13に係る発明についての特許法第29条の2の規定の適用にあたっては、その出願日として、本件特許の出願日(平成14年8月8日)の出願日を基準とすべきである。
してみると、本件特許の請求項1?13に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2002-207158号(特開2004-55160号公報(甲第2号証)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一又は実質同一であり、しかも発明者も出願人も同一ではないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
イ 無効理由2
本件請求項1、3及び7に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、あるいは、本件請求項1?13に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。したがって、本件特許は同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
ウ 無効理由3
本件請求項7及び8に係る発明は、甲第14号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、あるいは、本件請求項7?12に係る発明は、甲第14号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。したがって、本件請求項7?12に係る特許は同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
エ 無効理由4
本件特許の請求項1、2及び7に係る発明は明確でないため、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
オ 無効理由5
本件請求項1及び7に係る発明は明確でないため、本件特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。また、本件特許の発明の詳細な説明の記載は当業者が本件請求項1及び7に係る発明を実施することができる程度に明瞭かつ十分に記載されていないから、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。さらに、本件請求項1及び7に係る発明は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された発明でないため、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。したがって、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

また、請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証 :特許第3989794号公報(本件特許)
甲第2号証 :特開2004-55160号公報
甲第3号証 :特開昭62-229987号公報
甲第4号証 :特開平2-43059号公報
甲第5号証 :特公平4-47467号公報
甲第6号証 :実願昭56-128776号
(実開昭58-34301号)のマイクロフィルム
甲第7号証 :特開昭62-211973号公報
甲第8号証 :特開2000-269552号公報
甲第9号証 :特開平10-303465号公報
甲第10号証:特開平6-5926号公報
甲第11号証:特開平11-168235号公報
甲第12号証:特開平11-121797号公報
甲第13号証:特開2001-156336号公報
甲第14号証:特開2001-143519号公報
甲第15号証:特願2001-242857号(本件特許の基礎出願)
甲第16号証:平成19年5月21日付け意見書
甲第17号証:特開平8-25689号公報
甲第18号証:特開2000-286457号公報
甲第19号証:特開2002-93206号公報
甲第20号証:韓国登録実用新案20-284166号公報
甲第21号証:(欠番)
甲第22号証:広辞苑第6版 株式会社岩波書店
2008年1月11日 第6版第1刷発行 2284頁
甲第23号証:平成29年10月5日付け準備書面(被告その1)
甲第24号証:平成29年10月5日付け証拠説明書(被告その1)
甲第25号証:平成29年10月13日付け準備書面(被告その2)
甲第26号証:(欠番)

第5 被請求人の主張の概要
被請求人は、「訂正を認める。本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、乙第1号証を添付した平成30年3月26日付け審判事件答弁書、同年3月26日付け訂正請求書、乙第2号証を添付した同年7月2日付け口頭審理陳述要領書、及び乙第3号証を添付した同年9月4日付け上申書を提出して、本件訂正は認められるべきであり、請求人の主張する無効理由及び証拠によっては本件発明を無効とすることはできないと主張している。
なお、本件訂正が容認できないことは、上記「第2」で述べたとおりである。

また、被請求人の提出した証拠方法は、以下のとおりである。
乙第1号証 :広辞苑第六版DVD-ROM版(写し)
株式会社岩波書店 2008年1月11日
第6版第1刷発行 「たん‐し【端子】」の項
乙第2号証 :平成29年12月7日付け原告第1準備書面
乙第3号証 :特開2017-199850号公報

第6 無効理由についての当審の判断
1 各甲号証の記載事項等
(1)甲第2号証
(1-1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証に係る出願(特願2002-207158号)は、平成14年7月16日に出願され、平成16年2月19日に出願公開がされたものであり(以下、甲第2号証に係る出願を「甲2先願」という。)、甲2先願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「甲2明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。また、以下の事項は、公開公報(甲第2号証)に記載のとおり摘示した。)。
なお、本件特許の出願人はその出願時において、甲2先願の出願人と同一の者ではなく、発明者も同一の者ではない。
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数のLEDを光源として基板に実装したLED集積光源を用いたLED光源装置に関し、特にLED集積光源とこのLED集積光源に給電するソケットの構造に関する。」
(2b)「【0017】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るLED光源装置を示す斜視図、図2は図1のLED光源装置の要部構成要素のLED集積光源ユニットとこのLED集積光源ユニットに電気を給電するためのソケットと保持部の分解斜視図、図3は図2に示す要部構成部材をさらに分解した詳細な分解斜視である。図4はLED集積光源ユニットをソケットに取り付けた状態を示す要部正面図、図5はLED集積光源ユニットをソケットに取り付けた状態を示す要部断面図、図6はLED集積光源ユニットの取付け要領を示す部分断面図である。
【0018】
図1において、LED光源装置は、このLED光源装置本体27の下面凹部に設けられた平面部4と、LED集積光源ユニット1、この平面部4に取り付けられLED集積光源ユニット1の一端が挿入され電気的接続をするソケット2と、LED集積光源ユニット1の他端部を支持する保持部3がそれぞれ4個配設されている。
図2において、LED集積光源ユニット1は、表面実装用のLED光源8と電路パターン9を形成した基板7より構成され、9aは給電部、9bは非給電部、であり、7aは給電部側端部、7bは非給電部側端部である。ソケット2はL形受け部11、L形受け部カバー12を備え、保持部3は、保持片である摺動支持片14と摺動支持片を保持する保持カバーである摺動片固定カバー16を備える。
【0019】
次に、図3によりLED光源装置の構成を詳細に説明する(図1、2に示したものは一部省略)。10はLED集積光源ユニット1の電路パターン9を絶縁保護するための絶縁カバー、2は内部にバネ性を有する導電性金属の帯板を湾曲させて形成された一対のL形の端子板13とこの端子板13の外郭となるL形受け部11及び両側壁に円筒状の一対の凸部5を形成したL形受け部カバー12から構成されるソケット、37は上記円筒状の凸部5と回動自在に嵌合するL形金具、3はLED集積光源ユニット1をソケット2に挿入する際その挿入方向に摺動自在に可動する摺動支持片14とこの摺動支持片14を上記ソケット2の方向に付勢する板ばね17と上記摺動支持片14及び板ばね17を内蔵する摺動片固定カバー16から構成される保持部である。29は摺動支持片14の下側に形成された摺動支持片14の操作用取っ手である。
なお、絶縁カバー10に白色塗装を行えば反射板も兼ねることができる。
【0020】
以上の各部材をを取付けた状態の側面図が図4であり断面図が図5である。図4、5において図1?3で説明した部分は説明を省略する。4aは装置本体の平面部4に形成した凸状の平面部であり、LED集積光源ユニット1をソケットへ取付けたときに、LED集積光源ユニット1が接触するようにしている。
なお、LED用の電源はLED集積光源ユニット1内か本体内に設けられる。」
(2c)「【0025】
実施の形態2.
実施の形態1はソケットを回動可能に本体に取付けたが、本実施の形態はソッケトを本体に固定したものである。
図7は、この発明の実施の形態2に係るLED光源装置の断面図であり、LED集積光源ユニットをソケットと保持部に取付けた状態を示す図、図8はLED集積光源ユニットをソケットに取付ける手順を示す図である。
【0026】
図において、実施の形態1の図5、6と同じまたは同等の部分には同一の符号を付し説明を省略する。図に示すようにソケット2は実施の形態1とほぼ同じ構成であるが円筒状の凸部5はなく本体27の平面部4に固定されている点が異なり、また、保持部3の構成も実施の形態1とほぼ同じであるが摺動片14の摺動ストローク、板バネ17のストローク、摺動支持片14の支持部14aと摺動片固定カバー16の摺動方向長さを各々実施の形態1より長くしている。
なお、摺動支持片14の支持部14aの長さをL、LED集積光源ユニット1のソケット2に挿入部の長さをL1、LED集積光源ユニット1の保持部3の支持部14aに支持される長さをL2、支持部14aが摺動片固定カバー16に支持されている長さをL3とすると、LはほぼL1+L2+L3となるようにする。
【0027】
次に、図7、図8によりLED集積光源ユニット1の取付けを説明する。図8(a)はL
ED集積光源ユニット1をソケット2に取り付ける直前の状態を示す図、図8(b)はLED集積光源ユニット1をソケット2に取り付けた状態を示す図である。
【0028】
まず、図8(a)に示すように、LED集積光源ユニット1を取り付ける前に摺動支持片14の取っ手29をソケット2と反対方向に摺動させておく。この操作によりLED集積光源ユニット1をLED光源装置本体の平面部4の凸状の平面4aとほほ平行かつ密着状態にできる。次に、図8(b)に示すようにLED集積光源ユニット1の給電部側端部7aをソケット2に挿入する。この操作により一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされるとともに、LED集積光源ユニット1がL形受け部11側に付勢され、LED集積光源ユニット1がソケット2に固定される。
【0029】
この状態で取っ手29から手を離すと、板バネ17の付勢力により摺動支持片14がソケット2の方に摺動し、手動片14の支持部14aがLED集積光源ユニット1の非給電部側7bの下側に位置するようになりLED集積光源ユニット1が固定される。
このとき、LED集積光源ユニット1のLED光源装置本体27側の平面部4に形成された凸状平面部4aがLED集積光源ユニット1の基板7の背面4が接触しLED光源8で発生した熱が基板7を通して効率よく放熱される。」
(2d)甲第2号証には、以下の図が示されている。


(1-2)甲2明細書等に記載された発明
ア 甲2明細書等には、「複数のLEDを光源として基板に実装したLED集積光源を用いたLED光源装置」に関する技術について開示されており(摘示(2a))、かかる「LED光源装置」の実施形態2(摘示(2c))として、以下の事項が認定できる。
(ア)LED光源装置は、LED光源装置本体27の下面凹部に設けられた平面部4と、LED集積光源ユニット1と、この平面部4に取り付けられLED集積光源ユニット1の一端が挿入され電気的接続をするソケット2と、LED集積光源ユニット1の他端部を支持する保持部3が配設されていること、及び
LED集積光源ユニット1は、表面実装用のLED光源8と電路パターン9を形成した基板7より構成されていること(摘示(2b)段落【0018】)
(イ)ソケット2は、内部にバネ性を有する導電性金属の帯板を湾曲させて形成された一対のL形の端子板13と、この端子板13の外郭となるL形受け部11及び両側壁に円筒状の一対の凸部5を形成したL形受け部カバー12から構成されること、及び
保持部3は、LED集積光源ユニット1をソケット2に挿入する際その挿入方向に摺動自在に可動する摺動支持片14と、この摺動支持片14を上記ソケット2の方向に付勢する板ばね17と、上記摺動支持片14及び板ばね17を内蔵する摺動片固定カバー16から構成されること(摘示(2b)段落【0019】)
(ウ)LED光源8用の電源はLED集積光源ユニット1内かLED光源装置本体27内に設けられていること(摘示(2b)段落【0020】)
(エ)また、段落【0018】(摘示(2b))及び図2(摘示(2d))の記載より、電路パターン9は、給電部9a及び非給電部9bを備えることが明らかである。
なお、上記(ア)?(エ)の事項は、「LED光源装置」の実施形態1(摘示(2b))として記載されているが、甲2明細書等の段落【0025】?【0026】には、「LED光源装置」の実施形態2について、「実施の形態1はソケットを回動可能に本体に取付けたが、本実施の形態はソッケト(当審注:「ソケット」の誤記と認める。)を本体に固定したものである。・・・図において、実施の形態1の図5、6と同じまたは同等の部分には同一の符号を付し説明を省略する。」(摘示(2c))と記載されているとおり、上記(ア)?(エ)の事項は、その具体的構造に照らして、実施形態2の構成としても認定し得るものである。
(オ)ソケット2は本体に固定されること(摘示(2c)段落【0025】)
(カ)LED集積光源ユニット1の給電部側端部7aをソケット2に挿入し、この操作により一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされるとともに、LED集積光源ユニット1がL形受け部11側に付勢され、LED集積光源ユニット1がソケット2に固定されること(摘示(2c)段落【0028】)
(キ)保持部3の摺動支持片14がソケット2の方に摺動し、摺動支持片14の支持部14aがLED集積光源ユニット1の非給電部側7bの下側に位置するようになりLED集積光源ユニット1が固定され、
LED光源装置本体27側の平面部4に形成された凸状平面部4aがLED集積光源ユニット1の基板7の背面に接触し、LED光源8で発生した熱が基板7を通して放熱されること(摘示(2c)段落【0029】)
(ク)本件明細書の「図12からわかるように、給電電極54が設けられる領域の広さだけ、多層配線基板51のサイズは光学反射板52のサイズよりも大きくなる。このため、本実施形態では、LEDベアチップ53がマトリックス状に実装されている領域(光出射領域またはLEDクラスタ領域)の中心位置(光学中心)と基板の中心位置とが一致せず、カード型LED照明光源の曲げの応力中心が、もろい光学系の中心と一致せず、強度が向上している。」(段落【0143】)等の記載によれば、「光出射領域」とは、基板(多層配線基板51)における、LED(LEDベアチップ53)がマトリックス状に実装されている領域を意味するもと理解することができる。
以上を踏まえると、甲2明細書等の図1、2、7及び8(摘示(2d))に示される、基板7におけるLED光源8の配設態様(図2)、基板7の裏面と凸状平面部4aとの配設態様(図1、7、8)より、以下の事項が看取できる。
a 基板7のうちLED光源8が実装されている基板面の一端側に給電部9aが形成され(図2)、基板7においてLED光源8が実装されている光出射領域の中心位置が基板7の中心位置からずれていること(図7、8)
b 基板7は長方形形状であること(図2、7、8)
c 基板7の裏面と凸状平面部4aとの間の接触面積は、基板7においてLED光源8が実装されている光出射領域の面積以上であること(図1、7、8)

(2)以上によれば、先願明細書には、次の発明(以下「甲2発明A」及び「甲2発明B」という。)が記載されていると認められる。
ア 甲2発明A
「LED光源装置であって、
LED光源装置は、LED光源装置本体27の下面凹部に設けられた平面部4と、LED集積光源ユニット1と、この平面部4に取り付けられLED集積光源ユニット1の一端が挿入され電気的接続をするソケット2と、LED集積光源ユニット1の他端部を支持する保持部3が配設され、
LED集積光源ユニット1は、表面実装用のLED光源8と電路パターン9を形成した基板7より構成され、
ソケット2は、内部にバネ性を有する導電性金属の帯板を湾曲させて形成された一対のL形の端子板13と、この端子板13の外郭となるL形受け部11及び両側壁に円筒状の一対の凸部5を形成したL形受け部カバー12から構成され、
保持部3は、LED集積光源ユニット1をソケット2に挿入する際その挿入方向に摺動自在に可動する摺動支持片14と、この摺動支持片14を上記ソケット2の方向に付勢する板ばね17と、上記摺動支持片14及び板ばね17を内蔵する摺動片固定カバー16から構成され、
LED光源8用の電源はLED集積光源ユニット1内かLED光源装置本体27内に設けられ、
電路パターン9は、給電部9a及び非給電部9bを備え、
ソケット2は本体に固定され、
LED集積光源ユニット1の給電部側端部7aをソケット2に挿入し、この操作により一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされるとともに、LED集積光源ユニット1がL形受け部11側に付勢され、LED集積光源ユニット1がソケット2に固定され、
保持部3の摺動支持片14がソケット2の方に摺動し、摺動支持片14の支持部14aがLED集積光源ユニット1の非給電部側7bの下側に位置するようになりLED集積光源ユニット1が固定され、
LED光源装置本体27側の平面部4に形成された凸状平面部4aがLED集積光源ユニット1の基板7の背面に接触し、LED光源8で発生した熱が基板7を通して放熱され、
基板7のうちLED光源8が実装されている基板面の一端側に給電部9aが形成され、基板7においてLED光源8が実装されている光出射領域の中心位置が基板7の中心位置からずれており、
基板7は長方形形状であり、
基板7の裏面と凸状平面部4aとの間の接触面積は、基板7においてLED光源8が実装されている光出射領域の面積以上である、
LED光源装置。」

イ 甲2発明B
「LED光源装置に用いられるLED集積光源ユニット1であって、
LED光源装置は、LED光源装置本体27の下面凹部に設けられた平面部4と、LED集積光源ユニット1と、この平面部4に取り付けられLED集積光源ユニット1の一端が挿入され電気的接続をするソケット2と、LED集積光源ユニット1の他端部を支持する保持部3が配設され、
LED集積光源ユニット1は、表面実装用のLED光源8と電路パターン9を形成した基板7より構成され、
ソケット2は、内部にバネ性を有する導電性金属の帯板を湾曲させて形成された一対のL形の端子板13と、この端子板13の外郭となるL形受け部11及び両側壁に円筒状の一対の凸部5を形成したL形受け部カバー12から構成され、
保持部3は、LED集積光源ユニット1をソケット2に挿入する際その挿入方向に摺動自在に可動する摺動支持片14と、この摺動支持片14を上記ソケット2の方向に付勢する板ばね17と、上記摺動支持片14及び板ばね17を内蔵する摺動片固定カバー16から構成され、
LED光源8用の電源はLED集積光源ユニット1内かLED光源装置本体27内に設けられ、
電路パターン9は、給電部9a及び非給電部9bを備え、
ソケット2は本体に固定され、
LED集積光源ユニット1の給電部側端部7aをソケット2に挿入し、この操作により一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされるとともに、LED集積光源ユニット1がL形受け部11側に付勢され、LED集積光源ユニット1がソケット2に固定され、
保持部3の摺動支持片14がソケット2の方に摺動し、摺動支持片14の支持部14aがLED集積光源ユニット1の非給電部側7bの下側に位置するようになりLED集積光源ユニット1が固定され、
LED光源装置本体27側の平面部4に形成された凸状平面部4aがLED集積光源ユニット1の基板7の背面に接触し、LED光源8で発生した熱が基板7を通して放熱され、
基板7のうちLED光源8が実装されている基板面の一端側に給電部9aが形成され、基板7においてLED光源8が実装されている光出射領域の中心位置が基板7の中心位置からずれており、
基板7は長方形形状であり、
基板7の裏面と凸状平面部4aとの間の接触面積は、基板7においてLED光源8が実装されている光出射領域の面積以上である、
LED光源装置に用いられるLED集積光源ユニット1。」

(2)甲第3号証
(2-1)甲第3号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の事項が記載されている(なお、促音は小文字で表記した。)。
(3a)「2.特許請求の範囲
表面に複数の素子収納凹部が形成されかつ凹部以外の表面が絶縁層によって被覆された良導体からなる金属基板と、前記各素子収納凹部にそれぞれ配設されて前記金属基板と電気的に導通する複数の発光素子と、前記絶縁層の表面に形成され前記各発光素子がリード線を介して電気的に接続された共通導電層とで基板ユニットを構成し、この基板ユニットを複数個電気的に接続したことを特徴とする照明装置。」(1頁左下欄5?13行)
(3b)「〔産業上の利用分野〕
本発明は発光素子を光源として使用する照明装置に関する。」(1頁左下欄15?17行)
(3c)「第1図は本発明に係る照明装置の基本的構成を示す断面図、第2図は基板ユニットの要部斜視図である。なお、図中第11図および第12図と同一構成部材部分に対しては同一符号を以って示し、その説明を省略する。これらの図において、Al等の良導体からなる金属基板1の表面には複数個の素子収納凹部3がその長手方向に適宜な間隔をおいて形成され、また凹部3を除く表面全体が絶縁層4によって被覆されている。共通導電層5は金属基板1の長手方向に延在する如く前記絶縁層4上に形成され、さらにこの絶縁層4上には複数個のチップ状の導電層10が前記各素子収納凹部3に対応して形成されている。
発光素子2は半導体チップからなり、各素子収納凹部3の底面中央にそれぞれ直接配設固定されることにより金属基板1と導通し、またリード線としての金線7によって当該素子に対応する前記導電層10にそれぞれ電気的に並列接続されている。各導電層10は前記共通導電層5に点灯用抵抗体Rを介してそれぞれ接続されている。点灯用抵抗体Rとしては印刷抵抗が小さく形成できる点で有利であるが、チップ抵抗であってもよい。
前記素子収納凹部3は略逆梯形に形成されることにより、その内壁面3aがアルミニウムの蒸着,反射特性に優れた塗料の塗布等によって反射面を形成している。この反射面3aは金属基板1の全体をメッキすることによっても形成し得る。前記素子収納凹部3には透明な樹脂14が充填されて前記発光素子2をモールドしている。樹脂14としてはエポキシ樹脂等が使用され、その表面は略半球状に膨出形成されることにより凸レンズを形成している。なお、第2図においては樹脂14を省略している。
このように構成された基板1は所定の大きさに形成されることにより基板ユニット12を構成している。そして、この基板ユニット12は第3図に示すように照明装置の大きさに応じて放熱器30上に複数個並列配置され、かつリード線32によって電気的に接続されている。第4図は6つの基板ユニット12を電気的に接続した例を示すもので、4つの基板ユニット12を電源15に対して直列に接続し、2つの基板ユニット12を並列接続したものである。前記放熱器30はアルミニウム等からなり、その表面に前記基板ユニット12が絶縁層31を介して配設され、裏面には放熱効果を増大させるため複数の溝34が形成されている。」(2頁右上欄16行?3頁左上欄2行)
(3d)「第5図は第3図に示した照明装置を車輌用灯具に適用した場合の例を示す断面図である。同図において、35はバックカバー、36は前面レンズ、37はインナーレンズ、38は放熱用孔である。インナーレンズ37の表面には多数の魚眼集光レンズ39が各発光素子(図示せず)に対応して形成されている。
かくして、このような構成からなる照明装置によれば、金属基板1の良導体としての電気的特性をそのまま利用し、発光素子2と該基板1とを導通させ、この基板1に電流を流すように構成しているので、第11図に示した従来装置とは異なり素子収納凹部3内に絶縁層と導電層を積層形成する必要がなく、照明装置の製作が簡単かつ容易で、安価に提供し得る。また、発光素子2を金属基板1に直接接触させればよいので、これらの導通も確実である。
さらに、金属基板1は所定の大きさに形成されてあらかじめ発光素子2が実装されることにより基板ユニット12を構成しているので、この基板ユニット12を照明装置の大きさに応じて必要個数電気的に接続すれば、各種照明装置に対応でき、金属基板1の種類を削減することができる。したがって、基板ユニット12の保管,管理が容易で、あるユニットのうちの1つもしくは任意個数の発光素子2が故障した場合は、そのユニットだけ交換すればよいので、メインテナンスも簡単である。」(3頁左上欄3行?同頁右上欄9行)
(3e)「第6図は基板ユニットの他の実施例を示す平面図である。この実施例は4つの端子部41,42,43,44を基板ユニット12の表面各角部にそれぞれ設けたものである。左側の端子部41,42は、絶縁層4を取り除き金属基板1を露呈させて端子部としたものである。これに対して右側の端子部43,44は絶縁層4上に形成された導電パターンからなり、各列の共通導電層5にそれぞれ接続されている。各端子部41,42,43,44には金属基板1の裏面に貫通するねじ取付用孔46がそれぞれ形成されている。第7図はこのように形成された基板ユニット12の電気回路を示し、第8図は該ユニット12(12A?12H)を左右方向(直列方向)に4つ、前後方向(並列方向)に2つ、合計8つ並べて配置し、これらを電気的に接続したものである。電気的に接続する手段としては第9図に示すように導電板50が使用され、互いに隣接する端子部41と43,42と44,41,42,43および44をそれぞれ接続している。導電板50は、各端部41,42,43,44にそれぞれ設けられたねじ取付用孔46に挿通され放熱器30のねじ孔51にねじ込まれる一対もしくは4個の止めねじ52によって基板ユニット12上に固定される。この場合、端子部41と43,42と44をそれぞれ接続する導電板50は短冊状に形成され、端子部41,42,43,44を接続する導電板50は矩形に形成されている。前記止めねじ52は絶縁材料によって形成されている。
第10図にこのように構成された照明装置の電気回路図を示す。
なお、本発明を基板ユニット12同士をリード線32と導電板50とでそれぞれ接続した場合の実施例を説明したが、本発明はこれに何ら特定されるものではなく適宜なソケットを使用して接続してもよく、要は電気的接続手段であれば何でもよい。」(3頁右上欄10行?同頁右下欄6行)
(3f)「〔発明の効果〕
以上説明したように本発明に係る照明装置によれば、金属基板自体の電気的特性をそのまま利用し、これと発光素子とを導通させたので、金属基板と発光素子との電気的接続が確実で、素子収納凹部内に絶縁層と導電箔を積層形成する必要がなく、安価に提供し得る。また、金属基板に複数の発光素子を組付けてユニット化し、この基板ユニットを複数枚電気的に接続して照明装置を構成するようにしているので、照明装置の大きさに応じて基板ユニットの使用枚数を選定するだけでよく、金属基板の種類を削減し得る。したがって、部品管理が容易であり、また故障時等においては基板ユニットを交換するだけでよいので、メインテナンスも簡単である。」(3頁右下欄7行?4頁左上欄1行)
(3g)「4.図面の簡単な説明
・・・
1・・・・金属基板、2,2a・・・・発光素子、3・・・・素子収納凹部、4・・・・絶縁層、5・・・・共通導電層、6・・・・導電層、7・・・・金線(リード線)、10・・・・導電層、12・・・・基板ユニット、15・・・・電源、41?44・・・・端子部、50・・・・導電板、R・・・・点灯用抵抗体。」(4頁左上欄2?末行)
(3h)甲第3号証には、以下の図が示されている。


(2-2)甲第3号証に記載された発明
ア 甲3号証には、「発光素子を光源として使用する照明装置」に関する技術について開示されており(摘示(3b))、かかる「照明装置」の他の実施例(摘示(3e))として、以下の事項が認定できる。
(ア)表面に複数の素子収納凹部3が形成されかつ凹部以外の表面が絶縁層4によって被覆された良導体からなる金属基板1と、前記各素子収納凹部3にそれぞれ配設されて前記金属基板1と電気的に導通する複数の発光素子2と、前記絶縁層4の表面に形成され前記各発光素子2がリード線7を介して電気的に接続された共通導電層5とで基板ユニット12を構成し、この基板ユニット12を複数個電気的に接続した照明装置(摘示(3a)(3g))
(イ)4つの端子部41,42,43,44を基板ユニット12の表面各角部にそれぞれ設け、左側の端子部41,42は、絶縁層4を取り除き金属基板1を露呈させて端子部としたものであり、右側の端子部43,44は絶縁層4上に形成された導電パターンからなり、各列の共通導電層5にそれぞれ接続されており、各端子部41,42,43,44には金属基板1の裏面に貫通するねじ取付用孔46がそれぞれ形成され、
基板ユニット12を左右方向に4つ、前後方向に2つ、合計8つ並べて配置し、これらを電気的に接続する手段として導電板50が使用され、導電板50は、各端部41,42,43,44にそれぞれ設けられたねじ取付用孔46に挿通され放熱器30のねじ孔51にねじ込まれる一対もしくは4個の止めねじ52によって基板ユニット12上に固定されること(摘示(3e))
(ウ)甲3号証の図面(摘示(3h))の記載より、以下の事項が看取できる。
a 放熱器30は、その表面に基板ユニット12が絶縁層31を介して配設されること(第9図)
b 金属基板1の裏面と絶縁層31との間の接触面積、及び絶縁層31と放熱器との間の接触面積のそれぞれは、金属基板1において発光素子2が実装されている光出射領域の面積以上であること(第6、9図)
c 基板1が長方形形状であること(第6図)

(2)以上によれば、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明A」及び「甲3発明B」という。)が記載されていると認められる。
ア 甲3発明A
「表面に複数の素子収納凹部3が形成されかつ凹部以外の表面が絶縁層4によって被覆された良導体からなる金属基板1と、前記各素子収納凹部3にそれぞれ配設されて前記金属基板1と電気的に導通する複数の発光素子2と、前記絶縁層4の表面に形成され前記各発光素子2がリード線7を介して電気的に接続された共通導電層5とで基板ユニット12を構成し、この基板ユニット12を複数個電気的に接続した照明装置であって、
4つの端子部41,42,43,44を基板ユニット12の表面各角部にそれぞれ設け、左側の端子部41,42は、絶縁層4を取り除き金属基板1を露呈させて端子部としたものであり、右側の端子部43,44は絶縁層4上に形成された導電パターンからなり、各列の共通導電層5にそれぞれ接続されており、各端子部41,42,43,44には金属基板1の裏面に貫通するねじ取付用孔46がそれぞれ形成され、
基板ユニット12を左右方向に4つ、前後方向に2つ、合計8つ並べて配置し、これらを電気的に接続する手段として導電板50が使用され、導電板50は、各端部41,42,43,44にそれぞれ設けられたねじ取付用孔46に挿通され放熱器30のねじ孔51にねじ込まれる一対もしくは4個の止めねじ52によって基板ユニット12上に固定され、
放熱器30は、その表面に基板ユニット12が絶縁層31を介して配設され、
金属基板1の裏面と絶縁層31との間の接触面積、及び絶縁層31と放熱器との間の接触面積のそれぞれは、金属基板1において発光素子2が実装されている光出射領域の面積以上であり、
基板1が長方形形状である、
照明装置。」

イ 甲3発明B
「照明装置に用いられる基板ユニット12であって、
照明装置は、
表面に複数の素子収納凹部3が形成されかつ凹部以外の表面が絶縁層4によって被覆された良導体からなる金属基板1と、前記各素子収納凹部3にそれぞれ配設されて前記金属基板1と電気的に導通する複数の発光素子2と、前記絶縁層4の表面に形成され前記各発光素子2がリード線7を介して電気的に接続された共通導電層5とで基板ユニット12を構成し、この基板ユニット12を複数個電気的に接続した照明装置であり、
4つの端子部41,42,43,44を基板ユニット12の表面各角部にそれぞれ設け、左側の端子部41,42は、絶縁層4を取り除き金属基板1を露呈させて端子部としたものであり、右側の端子部43,44は絶縁層4上に形成された導電パターンからなり、各列の共通導電層5にそれぞれ接続されており、各端子部41,42,43,44には金属基板1の裏面に貫通するねじ取付用孔46がそれぞれ形成され、
基板ユニット12を左右方向に4つ、前後方向に2つ、合計8つ並べて配置し、これらを電気的に接続する手段として導電板50が使用され、導電板50は、各端部41,42,43,44にそれぞれ設けられたねじ取付用孔46に挿通され放熱器30のねじ孔51にねじ込まれる一対もしくは4個の止めねじ52によって基板ユニット12上に固定され、
放熱器30は、その表面に基板ユニット12が絶縁層31を介して配設され、
金属基板1の裏面と絶縁層31との間の接触面積、及び絶縁層31と放熱器との間の接触面積のそれぞれは、金属基板1において発光素子2が実装されている光出射領域の面積以上であり、
基板1が長方形形状である、
照明装置に用いられる基板ユニット12。」

(3)甲第4号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(4a)「本発明は、サーマルヘッド或いはLEDアレイヘッド等のプリンタヘッドの基板上に搭載されたドライバIC等の電子部品を封止材にて封止することにより保護するプリンタヘッドの電子部品保護構造に関する。」(1頁右下欄1?5行)
(4b)「LEDアレイヘッド31は、金属からなるヒートシンク32と、その上部に搭載されたアルミナ基板33とを有している。アルミナ基板33上には、互いに対応する部分同士がリードワイヤにて接続されたLEDアレイチップ34及びドライバIC35が搭載されている。また、ドライバIC35は、アルミナ基板33の基端側即ち第7図に於ける下側に形成された配線36の一端部にもリードワイヤにて接続されている。配線36の他端部は、外部回路に接続されたフレキシブルケーブル37の一端に接触すると共にその上側から、スペーサ38を介してヒートシンク32にねじ止めされた圧接板39により、シリコンラバー40を介して押圧されている。」(3頁左下欄4?17行)
(4c)甲第4号証には、以下の図が示されている。


(4)甲第5号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5証には、以下の事項が記載されている。
(5a)「本発明は、例えば信号灯、広告灯などに従来のフイラメント式のものに換えて使用できるように同一規格の口金などが設けられているLED表示灯に関するものである。」(1頁2欄3?6行)
(5b)「第1図に符号1で示すものはセラミツクなど熱伝導性の良い部材を用いて形成された基板であり、該基板1の前面側には第2図に一例として示すような配置でLEDチツプ2がマウントされ、更に従来例でも説明したように透明な樹脂3でコーテイングが行なわれているものである。この基板1の背面側にはアルミニウムなどで形成された放熱ブロツク4が密接して取付けられ、該放熱ブロツクの他の一方の面には、例えばブリツチを構成した整流用のダイオード5がプリント基板6を介して取付けられていて、このときに前記基板1と前記プリント基板6とには夫々に電気配線が行なわれていて第3図に示すように電気回路を構成している。このよう基板1とダイオード5とが組合わされた放熱ブロツク4には前面側(発光側)にレンズキヤツプ7が取付けられ、後面側(電源側)には口金8が取付けられるものであるが、本発明によりこの口金8内には電流制限用の抵抗器9が配設され、・・・・前記抵抗器9はこの熱伝導性絶縁物10に埋設されている。」(2頁3欄34行?同頁4欄15行)
(5c)「以上に説明したように、本発明により口金中に配設される電流制限用の抵抗器を、前記口金中に熱伝導性絶縁物を充填し、前記抵抗器を前記熱伝導性絶縁物中に埋設するようにして、前記抵抗器と前記口金とを熱的に接続した放熱方法としたことで、前記抵抗器に生ずる発熱は口金部に伝導され、該口金が接続されるソケツトなどを介して灯体の外部に放熱されるものとなるので、LEDチツプにこの抵抗器の発熱を伝導することがなくなり、商用電圧など比較的に高い電圧で使用でき、しかも従来の白熱電球と差替えて使用できるる小型のLED表示灯を実現可能にするという優れた効果を奏するものであり、更に前記口金と、前記LEDチツプが熱的に接続されている放熱ブロツクとをホルダで熱的に絶縁する放熱方法とすることで前記の効果を一層に高くするものである。」(2頁4欄32行?3頁5欄3行)
(5d)甲第5号証には、以下の図が示されている。


(5)甲第6号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
(6a)「本考案は自動車の車体に取付けて使用するパーキングランプ又はサイドマーカランプ等の車輛用表示灯に関するものである。」(明細書1頁12?14行)
(6b)「1はアルミニウム等の金属をベースとするプリント基板であり、該プリント基板を略長方形に形成すると共に周縁部寄りに溝部2を設けてプリント板面3を区画し、該プリント板面上に多数個の発光ダイオード4をチップの状態で載せ」(明細書2頁14?18行)
(6c)「このように構成されたプリント基板上に載置されるレンズカバー8は通常のパーキングランプ等の灯具に使用されているものと略同じであり、全体形状として四角形状の皿形を呈し、内側面(図において下部)には発光ダイオードチップ4の光を拡散させるためにレンズカット部9を有している。」(明細書3頁16行?4頁2行)
(6d)甲第6号証には、以下の図が示されている。




(6)甲第7号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
(7a)「本発明は発光ダイオードを用いた灯火装置に関する。」(1頁右下欄8?9行)
(7b)「第4図は第2図及び第3図に示された底板部材3を示している。図からも明らかな様に、板状の底板部材3には複数のLED9及びLED9へ供給される電流を制御する抵抗10が担持されている。」(2頁右上欄18行?同頁左下欄2行)
(7c)甲第7号証には、以下の図が示されている。


(7)甲第8号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第8号証には、以下の事項が記載されている。
(8a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板の長さ方向で左右対称の光度分布が得られると共に、ワイヤボンデングの信頼性を高めることができる、発光ダイオ-ド(LED)チップを用いた超小型のチップ型発光装置に関する。」
(8b)「【0021】図1において、基板2の形状は、平面視略長方形状(例えば、長さ×幅のサイズが1.0mm×0.5mm)であり、基板2の表面両端部には、第1の電極パターン3と第2の電極パターン4が形成されている。基板2の一対の短手側の端縁の一方中央部には、厚み方向に貫通する半円筒形状の切欠部7が形成される。また、基板2の他方の短手側の端縁には、幅方向でみて両側二個所に厚み方向に貫通する1/4円筒形状の切欠部8a、8bが形成されている。
・・・
【0031】また、基板の一方端縁には切欠部は一個所形成され、他方の端縁には切欠部は二個所形成されているので、LEDチップの極性判別が容易となる。特に透光性樹脂モールドが乳白色の場合には、透光性樹脂モールド内に封止されているLEDチップが見にくくなっているが、基板に形成されている切欠部の数が一方端縁では一個所であり、他方端縁では二個所であることから、非対称な電極構造であり、チップ型発光装置の外観から極性判別が簡単に行える。」
(8c)甲第8号証には、以下の図が示されている。


(8)甲第9号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第9号証には、以下の事項が記載されている。
(9a)「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、チップマウント、表面実装等と称されて、例えばプリント配線板などの上に取付穴を設けることなく面で実装すること等を可能としたチップ部品素子に関するものである。」
(9b)「【0019】この工程によりチップ基板は機能的には完成するものであるが、(h)に示したようにチップ素子20のカソード電極を判別するためのマーク9を絶縁性の着色樹脂等により形成し、同時に下面の離間部12の一部にも絶縁性のマーク9を形成することで図2に示したようなチップ基板20が完成する。なお、絶縁層7、7’や基体1は完成した実装基板41の表面に露出する部分もあるので、チップ基板に搭載するチップ素子21がLED等の発光素子である場合には反射率の高い絶縁材料によりこれらを形成する方が良く、白色系の絶縁材料とすることが特に好ましい。」
(9c)甲第9号証には、以下の図が示されている。

(9)甲第10号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第10号証には、以下の事項が記載されている。
(10a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、家電製品等に組み込まれる基板の表面実装に用いられるチップ形発光ダイオードに係り、特に、そのチップ形発光ダイオードの電極の識別構造に関する。」
(10b)「【0007】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。まず、本発明の一実施例に係るチップ形発光ダイオード10の構成を図1を参照して説明する。すなわち、ガラスエポキシ樹脂基板やセラミック等の基板11の上面に一対のリード電極12a、12bが形成され、その一方のリード電極12aに発光ダイオード素子13が接合され、その発光ダイオード素子13と他方のリード電極12bとの間が金線等の金属細線14で接続されている。そして、これらの発光ダイオード素子13や金属細線14等は、透光性合成樹脂等で被われ、モールド部15が形成されている。また、基板11の上面の一方のリード電極12aと、基板11の下面に配された図示しない下部電極との間は、基板11の側面16aに形成された凹部17に配された端子電極18aを介して電気的に接続され、他方のリード電極12bと、基板11の下面の別の下部電極との間は、上記の側面16aに対向する平坦な側面16bに配された端子電極18bを介して電気的に接続されている。
・・・
【0013】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、基板の上面に配された各リード電極の導出端に接続する二つの端子電極の内、一方を基板の平坦側面部に形成し、他方の端子電極を前記側面部に対向しかつ凹部が形成された側面部に形成したことにより、電極の判別は基板の側面に形成された凹部の有無という形状の違いに基づいて行なえ、従って、表面実装工程等において、電極の判別を容易に行なうことができる。」
(10c)甲第10号証には、以下の図が示されている。



(10)甲第11号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第11号証には、以下の事項が記載されている。
(11a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、同一面側に正負一対の電極を有する発光ダイオード(LED)チップを基板に電気的に接続して形成される発光ダイオードに関するものである。」
(11b)「【0016】図1に示すように、実施の形態1の発光ダイオードは、正負一対の電極を構成する所定の配線パターン12を有する基板11と、LEDチップ13を備える。LEDチップ13の下面にはAuパッド等の金属層からなる反射層14が、金属蒸着等により全面に形成されている。LEDチップ13は、同一面側(図中下面側)に正負一対の電極(図示略)を有し、両電極をフリップチップボンディングにより基板11の両配線パターン12にそれぞれバンプ15を介して電気的に接続するようになっている。」
(11c)甲第11号証には、以下の図が示されている。

(11)甲第12号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第12号証には、以下の事項が記載されている。
(12a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば青色発光ダイオード等の光デバイスに利用される窒化ガリウム系化合物を利用したチップ型の半導体発光装置に係り、特に発光装置の厚みをさらに薄く形成できるようにしたチップ型半導体発光装置に関する。」
(12b)「【0029】発光素子1は、図1に示すように、結晶基板1aを発光観測面とする姿勢すなわちn側及びp側電極2,3をリード基板6側に向けてマイクロバンプ4,5をそれぞれリード7a,7bに接続して固定されている。そして、結晶基板1aを透明としておくことによって、p-n接合による発光域から図において上向き方向に発光させることができる。
・・・
【0033】図3はこのようなp側及びn側の電極が結晶基板に対して対向する面に形成されるフリップチップ型の発光素子であって、請求項3に記載の発光装置を対象とする発光素子の構成を示す図である。
(12c)甲第12号証には、以下の図が示されている。


(12)甲第13号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第13号証には、以下の事項が記載されている。
(13a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可視光が発光可能な発光素子と、この発光素子からの光を蛍光体によって波長変換する発光ダイオードに係わり、特に可視光の長波長側においても高輝度に発光可能なことにより演色性の高い混色光が発光可能な発光ダイオードを提供することにある。
(13b)「【0013】このような構成の発光素子を銅箔の一対のリード電極205、206となるパターンが形成された硝子エポキシ回路基板204上に金バンプを利用して発光素子の電極と電気的に接続させフリップチップ型に配置させる。つぎに、エポキシ樹脂中にセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体203として(Y0.8Gd0.2)3Al5O12:Ceを含有させたモールド部材207をスクリーン印刷により塗布して硬化させる。」
(13c)甲第13号証には、以下の図が示されている。

(13)甲第14号証
(13-1)甲第14号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第14号証には、以下の事項が記載されている。
(14a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はLCDの照光装置に係わり、特に、低コストで種類の異なるLEDに対応することができるLCDの照光装置に関する。
・・・
【0010】
【発明の実施の形態】この発明の実施例であるLCDの照光装置を図面に基づいて説明する。図1はこの発明の実施例であるLCDの照光装置に用いられる光ガイドを示す平面図である。また、図2は図1におけるA-A断面図である。
【0011】図に示すように、光ガイド1には図3および図4に示す小基板3を位置決め固定するためのスリット1a、1aおよび爪1b、1bが設けられ、さらに、LEDから光を導くための凹み1c、1c…が設けられている。
【0012】また、図3に示すように基板2には小基板3と接続するためのランド2a、2aと側面発光LEDを半田付けするためのランド2b、2b…が設けられている。小基板3は天面発光LED3、3…を使用するときに用いられるもので、天面発光LED3、3を半田付けするためのランドおよび小基板3を基板2に接続するためのランド3a、3aが設けられており、小基板3はランド3a、3aとランド2a、2aをリード線5により接続することにより基板2に接続される。
【0013】図4(a)および図5は上記の光ガイド1、小基板3、基板2および天面発光LED6を用いてLED11を照明する場合を示している。この場合図3に示す小基板3は光ガイド1のスリット1a、1aと爪1b、1bにより固定され、小基板3に取付けられた天面発光LED6は光ガイド1に対して正確に位置決めされる。
【0014】また、光ガイドの厚みの厚いものには小基板3の高さを高くすることにより天面発光LED6を光ガイド1に対して適正位置とすることができる。なお、LCD11はフラットケーブル4により基板2に接続される。
【0015】図4(b)は上記の光ガイド1および基板2と側面発光LED7を用いてLED11を照明する場合を示している。この場合図3に示す小基板3は用いられず、側面発光LEDは図3に示すランド2b、2b…により基板2に半田付けされる。なお、LCD11はフラットケーブル4により基板2に接続される。」
(14b)甲14号証には、以下の図が示されている。


なお、段落【0012】に記載された「天面発光LED3、3」は、「天面発光LED6、6」の誤記と認める。

(13-2)甲第14号証に記載された発明
ア 甲14号証に記載される摘示(14a)(14b)より、以下の事項が認定できる。
(ア)小基板3の片面に複数の天面発光LED6が実装されて、天面発光LED6を用いた光源が構成されること(図3)、
(イ)該光源は、LCDの照光装置に設けられるものであること(段落【0001】、【0010】)
(ウ)小基板3のうち天面発光LED6が実装されている小基板3の片面の一端側に、ランド3a、3aが設けられていること(図3)
(エ)小基板3はランド3a、3aとランド2a、2aをリード線5により接続することにより基板2に接続されること(段落【0012】)、が明らかである。

(2)以上によれば、甲第14号証には、次の発明(以下「甲14発明」という。)が記載されていると認められる。
甲14発明
「小基板3の片面に複数の天面発光LED6が実装されて、天面発光LED6を用いた光源が構成され、
該光源は、LCDの照光装置に設けられるものであり、
小基板3のうち天面発光LED6が実装されている小基板3の片面の一端側に、ランド3a、3aが設けられ、
小基板3はランド3a、3aとランド2a、2aをリード線5により接続することにより基板2に接続される、光源。」

2 無効理由について
2-1 無効理由1について
2-1-1 本件発明1?13についての優先権主張について
本件発明1は、「前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される少なくとも1つのコネクタと」を「備える」こと、及び「前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」ことを、また、本件発明7は、「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており、前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される」ことを、それぞれ発明特定事項として特定するが、本件特許の出願の優先権主張の基礎とされた特願2001-242857号の明細書及び図面(甲第15号証、以下「優先権明細書等」という。)には、上記発明特定事項の記載はないし、また、かかる発明特定事項が優先日当時、当業者に自明な事項であるということもできない。
したがって、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面には、優先権明細書等に記載がない事項を付加するものであって、それらの事項は優先権明細書等の全ての記載を総合することにより導き出せない事項であって、新たな技術的事項を導入する事項が記載されているものといえるから、本件発明1、7及び本件発明1、7を直接または間接的に引用する本件発明2?6、8?13については、優先権主張の利益を享受することはできない。
よって、本件発明1?13についての特許法29条の2(無効理由1)及び29条(無効理由2、3)の規定の適用については、現実の出願日である平成14年8月8日が基準日となる。

2-1-2 当審の判断
(1)本件発明1に対して
ア 対比
本件発明1と甲2発明Aとを対比する。
(ア)甲2発明Aの「表面実装用のLED光源8」は、本件発明1の「LED」に相当する。
(イ)甲2発明Aの「表面実装用のLED光源8と電路パターン9を形成し」て構成された「基板7」は、上記アをも踏まえると、本件発明1の「LEDが片面に実装された基板」に相当する。
(ウ)甲2発明Aの「電路パターン9」は、「給電部9a及び非給電部9bを備え」るものであるところ、「一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされる」ことから、上記「給電部9a」は、給電のための端子をなすことが明らかである。
したがって、甲2発明Aの「給電部9a」は、本件発明1の「給電端子」に相当する。
(エ)甲2発明Aは、「LED集積光源ユニット1の給電側端部7aをソケット2に挿入すると、一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされるとともに、LED集積光源ユニット1がL形受け部11側に付勢され、LED集積光源ユニット1がソケット2に固定され」るものであるから、上記「LED集積光源ユニット1」は、着脱可能な構成ということができる。
したがって、甲2発明Aの「表面実装用のLED光源8と電路パターン9を形成した基板7より構成され」る「LED集積光源ユニット1」は、上記(ア)?(ウ)をも踏まえると、本件発明1の「LEDが片面に実装された基板の当該面に給電端子を有する着脱可能なLED照明光源」に相当するものといえる。
(オ)甲2発明Aの「LED光源装置本体27側の平面部4に形成された凸状平面部4a」は、「LED集積光源ユニット1の基板7の背面に接触し、LED光源8で発生した熱が基板7を通して放熱される」ものであるから、熱を伝導する熱伝導部材ということができる。
また、上記「基板7の背面」は、上記(イ)をも踏まえると、本件発明1の「前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面」ということができる。
したがって、甲2発明Aの上記「凸状平面部4a」は、本件発明1の「前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面と接触する熱伝導部材」に相当するものといえる。
(カ)甲2発明Aの「ソケット2」は、「内部にバネ性を有する導電性金属の帯板を湾曲させて形成された一対のL形の端子板13と、この端子板13の外郭となるL形受け部11及び両側壁に円筒状の一対の凸部5を形成したL形受け部カバー12から構成される」ものであるところ、「LED集積光源ユニット1の給電部側端部7aをソケット2に挿入し、この操作により一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされるとともに、LED集積光源ユニット1がL形受け部11側に付勢され、LED集積光源ユニット1がソケット2に固定され」、さらに、「保持部3の摺動支持片14がソケット2の方に摺動し、摺動支持片14の支持部14aがLED集積光源ユニット1の非給電部側7bの下側に位置するようになりLED集積光源ユニット1が固定され」ることで、「LED光源装置本体27側の平面部4に形成された凸状平面部4aがLED集積光源ユニット1の基板7の背面に接触」するものである。
したがって、そのような「LED集積光源ユニット1」の固定の態様に照らせば、上記「ソケット2」は、「基板7の背面」と「凸状平面部4a」とを「接触」させるに足る押圧力で押圧しながら「給電部9a」に接続されたものということができるから、甲2発明Aの「ソケット2」は、上記(イ)、(ウ)、(オ)をも踏まえると、本件発明1の「前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される少なくとも1つのコネクタ」に相当するものといえる。
そして、甲2発明Aの「LED光源装置」は、本件発明1の「LED照明装置」に相当するから、上記(エ)をも踏まえると、甲2発明Aの「ソケット2」による、「LED集積光源ユニット1」の「固定」の構成は、本件発明1の「コネクタ」による、「前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」という構成に相当するものといえる。

そうすると、本件発明1と甲2発明Aとは、
「LEDが片面に実装された基板の当該面に給電端子を有する着脱可能なLED照明光源と、
前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面と接触する熱伝導部材と、
前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される少なくとも1つのコネクタと、
を備えるLED照明装置であって、
前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、LED照明装置。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
〔相違点1〕
本件発明1は、「前記コネクタを介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路」を具備するのに対し、甲2発明Aは、「LED光源8用の電源はLED集積光源ユニット1内かLED光源装置本体27内に設けられ」るものの、「点灯回路」を具備するものとして特定されていない点。

イ 判断
(ア)甲2発明Aは、「LED光源8用の電源はLED集積光源ユニット1内かLED光源装置本体27内に設けられ」ものであるから、「LED光源8用の電源」が「LED光源装置本体27」内に設けられる場合には、当然のことながら、電源からの電力が、ソケット2を介してLED集積光源ユニット1に供給されることが明らかである。
そして、そのような電源を用いてLED照明光源(LED集積光源ユニット1)のLED(LED光源8)を点灯させるために、その点灯を行わせるための点灯回路を要することは技術常識であるから、甲2発明Aにおいても、コネクタ(ソケット2)を介してLED照明光源(LED集積光源ユニット1)と電気的に接続される点灯回路を具備することは予定されている、というべきである。
したがって、上記相違点1は、相違点ではない。
(イ)仮に、上記相違点1が相違点であるとしても、例えば、甲5号証(摘示(5b))には、電源とLEDチツプ2との間に、LEDチツプ2を点灯させるための、整流用のダイオード5や電流制限用の抵抗器9を含む電気回路を設けることが記載されているように、LED(LEDチツプ2)を点灯させるために、その点灯を行わせるための点灯回路(電気回路)を配することは周知技術であるから、甲2発明Aにおいて、コネクタ(ソケット2)を介してLED照明光源(LED集積光源ユニット1)と電気的に接続される点灯回路を具備するものとすることは、周知技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものと介すべき合理性もない。
したがって、上記相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差であり、実質的な相違点ではない。

ウ 被請求人の主張について
(ア)被請求人は、審判事件答弁書(8頁2行?11頁5行)において、
a 甲2発明Aにおいて、ソケット2はLED集積光源ユニット1をLED照明光源装置に対して固定しているものではなく、LED集積光源ユニット1をLED光源装置に対して着脱可能に固定しているのは、摺動支持片14であり、また、
b 甲第2号証には、平面部4aが基板7の裏面と「接触」することが記載されているに過ぎず、基板7の裏面と平面部4aとが「押圧」されたり「押し付け」られたりすることについては一切記載されていないことから、
甲第2号証には、本件発明1の「前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」ことは記載されていない旨主張するので、以下検討する。

(イ)検討
上記「ア(カ)」で述べたとおり、甲2発明Aの「ソケット2」は、「内部にバネ性を有する導電性金属の帯板を湾曲させて形成された一対のL形の端子板13と、この端子板13の外郭となるL形受け部11及び両側壁に円筒状の一対の凸部5を形成したL形受け部カバー12から構成される」ものであるところ、「LED集積光源ユニット1の給電部側端部7aをソケット2に挿入し、この操作により一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされるとともに、LED集積光源ユニット1がL形受け部11側に付勢され、LED集積光源ユニット1がソケット2に固定され」、さらに、「保持部3の摺動支持片14がソケット2の方に摺動し、摺動支持片14の支持部14aがLED集積光源ユニット1の非給電部側7bの下側に位置するようになりLED集積光源ユニット1が固定され」ることで、「LED光源装置本体27側の平面部4に形成された凸状平面部4aがLED集積光源ユニット1の基板7の背面に接触」するものであるから、「LED集積光源ユニット1」を「LED光源装置」に固定するために、「ソケット2」及び「保持部3」が用いられることは技術的に明らかである。
してみると、甲2発明Aの「ソケット2」は「保持部3」とともに、「LED集積光源ユニット1」を「LED光源装置」に着脱可能に固定する機能を有するものといわざるを得ない。
さらに、甲2発明Aの「ソケット2」は、「内部にバネ性を有する」「一対のL形の端子板13」を備えるものであって、「LED集積光源ユニット1の給電部側端部7aをソケット2に挿入」すると、「LED集積光源ユニット1がL形受け部11側に付勢され」のであるから、上記「ソケット2」は、「基板7の背面」と「凸状平面部4a」とを「接触」させるに足る押圧力で押圧しながら「給電部9a」に接続されたものということができる。
したがって、甲2発明Aの「ソケット2」は、本件発明1の「前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される少なくとも1つのコネクタ」に相当するものといえるから、被請求人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲2発明Aと同一であり、かつ、本件特許の出願人はその出願時において、甲2先願の出願人と同一の者ではなく、発明者も同一の者ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(2)本件発明2に対して
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板のうち前記LEDが実装されている基板面の一端側に給電電極が形成されており、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の中心位置が前記基板の中心位置からずれている」との発明特定事項(以下「発明特定事項A」という。)を付加して発明を特定したものであるが、甲2発明Aは、「基板7のうちLED光源8が実装されている基板面の一端側に給電部9aが形成され、基板7においてLED光源8が実装されている光出射領域の中心位置が基板7の中心位置からずれている」という構成を具備するものであり、かかる構成は、本件発明2の上記発明特定事項Aに相当するものといえる。
したがって、本件発明2は、本件発明1と同様に、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(3)本件発明3に対して
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板裏面と前記熱伝導部材との間の接触面積は、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の面積に等しいか、それ以上である」との発明特定事項(以下「発明特定事項B」という。)を付加して発明を特定したものであるが、甲2発明Aは、「基板7の裏面と凸状平面部4aとの間の接触面積は、基板7においてLED光源8が実装されている光出射領域の面積以上である」という構成を具備するものであり、かかる構成は、本件発明3の上記発明特定事項Bに相当するものといえる。
したがって、本件発明3は、本件発明1と同様に、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(4)本件発明4に対して
ア 本件発明4は、本件発明1?3のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに「前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明4と甲2発明Aとを対比すると、両者は、上記「(1)ア(ア)」で述べた一致点で一致し、相違点1で一応相違するとともに、さらに、以下の相違点2で相違するものといえる。
〔相違点2〕
本件発明4は、「前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している」のに対し、甲2発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(31頁の「エ」の項)において、本件発明4と甲2発明Aとを対比すると、甲2発明Aは、上記相違点2に係る本件発明4の構成を具備していない点で本件発明4と相違するが、LED照明装置の点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを設けることは周知技術であるから、上記相違点2に係る本件発明4の構成は、周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない旨主張する。
なお、請求人は、上記周知技術を示す文献として、甲第5号証を提出している(審判請求書47頁の「ウ」の項)。

ウ 検討
上記相違点1についての判断は、上記「(1)イ」で述べたとおりであるので、以下相違点2について検討する。
(ア)甲2発明Aの「LED光源装置」は、「LED光源装置本体27の下面凹部に設けられた平面部4と、LED集積光源ユニット1と、この平面部4に取り付けられLED集積光源ユニット1の一端が挿入され電気的接続をするソケット2と、LED集積光源ユニット1の他端部を支持する保持部3が配設され」ることを前提として、「LED光源8用の電源はLED集積光源ユニット1内かLED光源装置本体27内に設けられ」るものである。
したがって、既に、「電源」を具備する甲2発明Aの「LED光源装置」において、あえて「給電ソケット」を設けてまで、外部から電気エネルギーを供給するように構成すべき理由はない。
(イ)また、甲第5号証には、「LED表示灯」に関し(摘示(5a))、基板1の前面側にLEDチツプ2がマウントされ、この基板1の背面側には放熱ブロツク4が密接して取付けられること、該放熱ブロツクの他の一方の面には、整流用のダイオード5がプリント基板6を介して取付けられていること、及び放熱ブロツク4の後面側(電源側)に口金8が取付けられていることが記載され、そのような「LED表示灯」の構造が周知技術であるとしても、上記「LED表示灯」の構造は、そもそもそれ自体が「電源」を具備するものではないから、「電源」を具備する甲2発明Aの「LED光源装置」において、上記甲第5号証にも記載されるところの周知技術を付加すべき合理性はない。
(ウ)したがって、上記相違点2に係る本件発明4の構成が、周知技術の付加であって新たな効果を奏するものではない、とまでいうことはできないから、請求人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、上記相違点2は、実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ということはできないから、本件発明4は、甲2発明Aと実質同一であるとはいえない。
したがって、本件発明4は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである、ということはできない。

(5)本件発明5に対して
ア 本件発明5は、本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに「前記給電ソケットは、電球用口金である」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明5と甲2発明Aとを対比すると、両者は、上記「(1)ア(ア)」で述べた一致点で一致し、上記「(1)ア(ア)」及び上記「(4)ア」で述べた上記相違点1及び2で相違するとともに、さらに、以下の相違点3で相違するものといえる。
〔相違点3〕
本件発明5は、「前記給電ソケットは、電球用口金である」のに対し、甲2発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(31?32頁の「オ」の項)において、本件発明5と甲2発明Aとを対比すると、甲2発明Aは、上記相違点3に係る本件発明5の構成を具備していない点で本件発明5と相違するが、給電ソケットを電球用口金とすることは周知技術であるから、上記相違点3に係る本件発明5の構成は、周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない旨主張する。
なお、請求人は、上記周知技術を示す文献として、甲第5号証を提出している(審判請求書48頁の「イ」の項)。

ウ 判断
(ア)上記「(4)ウ」で述べたとおり、上記相違点2は、実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ということはできない。
また、上記相違点3に係る本件発明5の構成は、上記相違点2に係る本件発明4の構成を更に具現化してその構成を限定するものであるから、上記「(4)ウ」で述べたとおり、甲第5号証に記載される「LED表示灯」の構造が周知技術であるとしても、かかる「LED表示灯」の構造は、そもそもそれ自体が「電源」を具備するものではないから、「電源」を具備する甲2発明Aの「LED光源装置」において、上記甲第5号証にも記載されるところの周知技術を付加すべき合理性はない。
(イ)したがって、上記相違点2及び3に係る本件発明4の構成が、周知技術の付加であって新たな効果を奏するものではない、とまでいうことはできないから、請求人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、上記相違点2及び3は、実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ということはできないから、本件発明5は、甲2発明Aと実質同一であるとはいえない。
したがって、本件発明5は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである、ということはできない。

(6)本件発明6に対して
ア 本件発明6は、本件発明4または5の発明特定事項を全て含み、さらに「前記コネクタに接続された状態の前記LED照明光源から出た光を透過するカバーを備えている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明6と甲2発明Aとを対比すると、両者は、上記「(1)ア(ア)」で述べた一致点で一致し、少なくとも、上記「(1)ア(ア)」及び上記「(4)ア」で述べた上記相違点1及び2で相違するとともに、さらに、以下の相違点4で相違するものといえる。
〔相違点4〕
本件発明6は、「前記コネクタに接続された状態の前記LED照明光源から出た光を透過するカバーを備えている」のに対し、甲2発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(32頁の「カ」の項)において、本件発明6と甲2発明Aとを対比すると、甲2発明Aは、上記相違点4に係る本件発明6の構成を具備していない点で本件発明6と相違するが、LED照明光源から出た光を透過するカバーを設けることは周知技術であるから、上記相違点4に係る本件発明6の構成は、周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない旨主張する。
なお、請求人は、上記周知技術を示す文献として、甲第5号証及び甲第6号証を提出している(審判請求書49?51頁の「ウ」の項)。

ウ 判断
上記「(4)ウ」で述べたとおり、上記相違点2は、実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ということはできない。
したがって、上記相違点4に係る本件発明6の構成が、甲第5号証及び甲第6号証に記載されているように周知技術であり、課題解決のための具体化手段における微差であるとしても、上記相違点2は、実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ということはできないから、本件発明6は、甲2発明Aと実質同一であるとはいえない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明6は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである、ということはできない。

(7)本件発明7に対して
ア 対比
本件発明7と甲2発明Bとを対比する。
(ア)甲2発明Bの「基板7」は、本件発明7の「基板」に相当する。
(イ)甲2発明Bの「表面実装用のLED光源8」は、本件発明7の「前記基板の片面に実装されたLED」に相当する。
(ウ)甲2発明Bの「LED光源装置本体27の下面凹部に設けられた平面部4と、LED集積光源ユニット1と、この平面部4に取り付けられLED集積光源ユニット1の一端が挿入され電気的接続をするソケット2と、LED集積光源ユニット1の他端部を支持する保持部3が配設されて」構成される「LED光源装置」は、本件発明7の「LED照明装置」に相当する。
(エ)甲2発明Bの「電路パターン9」は、「給電部9a及び非給電部9bを備え」るものであるところ、「一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされる」ことから、上記「給電部9a」は、給電のための端子をなすことが明らかである。
したがって、甲2発明Bの「給電部9a」は、本件発明1の「給電端子」に相当する。
(オ)甲2発明Bの「ソケット2」は、「内部にバネ性を有する導電性金属の帯板を湾曲させて形成された一対のL形の端子板13と、この端子板13の外郭となるL形受け部11及び両側壁に円筒状の一対の凸部5を形成したL形受け部カバー12から構成される」ものであるところ、「LED集積光源ユニット1の給電部側端部7aをソケット2に挿入し、この操作により一対の端子板13がLED集積光源ユニット1の電路パターン9の給電部9aに接触して電気的接続がされるとともに、LED集積光源ユニット1がL形受け部11側に付勢され、LED集積光源ユニット1がソケット2に固定され」、さらに、「保持部3の摺動支持片14がソケット2の方に摺動し、摺動支持片14の支持部14aがLED集積光源ユニット1の非給電部側7bの下側に位置するようになりLED集積光源ユニット1が固定され」ることで、「LED光源装置本体27側の平面部4に形成された凸状平面部4aがLED集積光源ユニット1の基板7の背面に接触」するものである。
してみると、そのような「LED集積光源ユニット1」の固定の態様に照らせば、上記「ソケット2」は、「基板7の背面」と「凸状平面部4a」とを「接触」させるに足る押圧力で押圧しながら「給電部9a」に接続されたものということができるから、甲2発明Aの「LED集積光源ユニット1」は、基板7のうちLED光源8が実装されている基板7の片面の一端側に、LED集積光源ユニット1が取り付けられるLED光源装置のソケット2によって、基板7の片面から基板7の裏面への方向に押圧されて、給電部9aがソケット2に接続されること、さらには、ソケット2によって基板7の片面から基板7の裏面への方向に押圧されてLED光源装置に着脱可能に固定されることも技術的に明らかである。
したがって、甲2発明Bの「LED集積光源ユニット1」は、上記(イ)?(エ)をも踏まえると、本件発明1の「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており、前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される」「LED照明光源」に相当するものといえる。

そうすると、本件発明7と甲2発明Bとは、
「基板と、前記基板の片面に実装されたLEDとを備えたLED照明光源であって、
前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており、
前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される、LED照明光源。」
の点で一致し、相違点は存在しない。

イ 被請求人の主張について
被請求人は、審判事件答弁書(8頁2行?11頁5行)において、上記「(1)ウ(ア)」の被請求人の主張と同様に、甲第2号証には、本件発明7の「前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される」ことは記載されていない旨主張するが、上記「(1)ウ(イ)」で述べたとおり、甲2発明Bの「ソケット2」は「保持部3」とともに、「LED集積光源ユニット1」を「LED光源装置」に着脱可能に固定する機能を有するものといわざるを得ないし、さらに、上記「ソケット2」は、「基板7の背面」と「凸状平面部4a」とを「接触」させるに足る押圧力で押圧しながら「給電部9a」に接続されたものということができる。
したがって、甲2発明Bの「LED集積光源ユニット1」は、本件発明7の「前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される」「LED照明光源」に相当するものといえるから、被請求人の上記主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明7は、甲2発明Bと同一であり、かつ、本件特許の出願人はその出願時において、甲2先願の出願人と同一の者ではなく、発明者も同一の者ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(8)本件発明8に対して
本件発明8は、本件発明7の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板の中心位置は、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の中心位置からずれている」との発明特定事項(以下「発明特定事項C」という。)を付加して発明を特定したものであるが、甲2発明Bは、「基板7においてLED光源8が実装されている光出射領域の中心位置が基板7の中心位置からずれている」という構成を具備するものであり、かかる構成は、本件発明8の上記発明特定事項Cに相当するものといえる。
したがって、本件発明8は、本件発明7と同様に、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(9)本件発明9に対して
ア 本件発明9は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板が長方形形状であって、当該長方形形状の角が丸まっている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものである。
ここで、甲2発明Bの「基板7が長方形形状である」との構成と、本件発明8の上記「前記基板が長方形形状であって、当該長方形形状の角が丸まっている」との構成とは、「前記基板が長方形形状である」という構成の限度で共通するものといえるから、本件発明9と甲2発明Bとを対比すると、両者は、上記「(7)ア」で述べた一致点に加え「前記基板が長方形形状である」点で一致し、以下の相違点5で相違するものといえる。
〔相違点5〕
「長方形形状」の「基板」について、本件発明9は、「当該長方形形状の角が丸まっている」のに対し、甲2発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(33頁の「ケ」の項)において、本件発明9と甲2発明Bとを対比すると、甲2発明Bは、上記相違点5に係る本件発明9の構成を具備していない点で本件発明9と相違するが、長方形形状の基板の角を丸めることは周知技術であるから、上記相違点5に係る本件発明9の構成は、周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない旨主張するので、以下検討する。
なお、請求人は、上記周知技術を示す文献として、甲第6号証及び甲第7号証を提出している(審判請求書54?55頁の「ウ」の項)。

ウ 検討
相違点5について検討する。
甲第6号証には、「車輛用表示灯」に関し(摘示(6a))、プリント基板1を略長方形に形成するとともに、該プリント基板1のプリント板面3上に多数個の発光ダイオード4をチップの状態で載せることが記載されているところ(摘示(6b))、第1図(摘示(6d))より、上記プリント基板1の角が丸まっていることが看取できる。
また、甲第7号証には、「灯火装置」に関し(摘示(7a))、板状の底板部材3に複数のLED9を担持させることが記載されているところ(摘示(7b))、第4図(a)(摘示(7c))より、上記底板部材3は矩形状をなし、その角が丸まっていることが看取できる。
そうすると、LED(発光ダイオード4、LED9)を実装した基板(プリント基板1、底板部材3)を長方形状に構成するに際し、その角を丸めて構成することは、かかる技術分野の周知技術ということができるから、甲2発明Bの「長方形形状」の「基板7」においても、その角を丸めて構成する程度のことは想定の範囲というべきであり、さらに、そのように基板7の角を丸めていれば、基板7の着脱時等に、基板7の角部でスクラッチ(ひっかくこと)の可能性を減らし得ることも技術常識に照らして明らかである。
したがって、上記相違点5に係る本件発明9の構成は、周知技術の付加あるいは転換にすぎず、新たな効果を奏するものということもできないから、上記相違点5は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
したがって、本件発明9は、甲2発明Bと実質同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(10)本件発明10に対して
ア 本件発明10は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つが形成されている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明10と甲2発明Bとを対比すると、両者は、上記「(7)ア」で述べた一致点で一致し、以下の相違点6で相違するものといえる。
〔相違点6〕
本件発明10は、「前記基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つが形成されている」のに対し、甲2発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(33?34頁の「コ」の項)において、本件発明10と甲2発明Bとを対比すると、甲2発明Bは、上記相違点6に係る本件発明10の構成を具備していない点で本件発明10と相違するが、基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つを形成することは周知技術であるから、上記相違点6に係る本件発明10の構成は、周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない旨主張するので、以下検討する。
なお、請求人は、上記周知技術を示す文献として、甲第8号証?甲第10号証を提出している(審判請求書57?60頁の「ウ」の項)。

ウ 検討
相違点6について検討する。
甲第8号証には、「チップ型発光装置」に関し(摘示(8a))、基板2の一対の短手側の端縁の一方中央部に切欠部7を、基板2の他方の短手側の端縁に切欠部8a、8bを形成し、LEDチップの極性判別を行うことが記載され(摘示(8b)(8c))、
甲第9号証には、「チップ部品素子」に関し(摘示(9a))、チップ基板20にマーク9を着色樹脂等により形成し、チップ素子のカソード電極を判別することが記載され(摘示(9b)(9c))、
甲第10号証には、「チップ形発光ダイオード」に関し(摘示(10a))、基板11の側面16aに凹部17を形成し、電極の判別を行うことが記載されているように(摘示(10b)(10c))、基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つを形成し、基板の位置関係を正確に把握できるように構成することは、かかる技術分野の周知技術ということができるから、甲2発明Bの「基板7」の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つを形成することは、周知技術の付加あるいは転換にすぎず、新たな効果を奏するものということもできないから、上記相違点6は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
したがって、本件発明10は、甲2発明Bと実質同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(11)本件発明11に対して
ア 本件発明11は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記LEDは、前記基板にフリップチップボンディングで直接実装されている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明11と甲2発明Bとを対比すると、両者は、上記「(7)ア」で述べた一致点で一致し、以下の相違点7で相違するものといえる。
〔相違点7〕
本件発明11は、「前記LEDは、前記基板にフリップチップボンディングで直接実装されている」のに対し、甲2発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(34頁の「サ」の項)において、本件発明11と甲2発明Bとを対比すると、甲2発明Bは、上記相違点7に係る本件発明11の構成を具備していない点で本件発明11と相違するが、LEDを基板にフリップチップボンディングで直接実装することは周知技術であるから、上記相違点7に係る本件発明11の構成は、周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない旨主張するので、以下検討する。
なお、請求人は、上記周知技術を示す文献として、甲第11号証?甲第13号証を提出している(審判請求書61?64頁の「ウ」の項)。

ウ 検討
相違点7について検討する。
甲第11号証には、「発光ダイオード」に関し(摘示(11a))、LEDチップ13の両電極をフリップチップボンディングにより基板11の両配線パターン12にそれぞれバンプ15を介して電気的に接続することが記載され(摘示(11b)(11c))、
甲第12号証には、「チップ型の半導体発光装置」に関し(摘示(12a))、フリップチップ型の発光素子1を、リード基板6側に向けてマイクロバンプ4、5をそれぞれリード7a、7bに接続して固定することが記載され(摘示(12b)(12c))、
甲第13号証には、「発光ダイオード」に関し(摘示(13a))、硝子エポキシ回路基板204上に金バンプを利用して発光素子の電極と電気的に接続させフリップチップ型に配置させることが記載されているように(摘示(13b)(13c))、LEDを基板にフリップチップボンディングで直接実装ことは、かかる技術分野の周知技術ということができるから、甲2発明Bの「LED光源8」を、「基板7」にフリップチップボンディングで直接実装することは、周知技術の付加あるいは転換にすぎず、新たな効果を奏するものということもできないから、上記相違点7は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
したがって、本件発明11は、甲2発明Bと実質同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(12)本件発明12に対して
ア 本件発明12は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記LEDは、面実装素子またはチップ型素子として組み込まれる」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明12と甲2発明Bとを対比すると、両者は、上記「(7)ア」で述べた一致点で一致し、以下の相違点8で相違するものといえる。
〔相違点8〕
本件発明12は、「前記LEDは、面実装素子またはチップ型素子として組み込まれる」のに対し、甲2発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(34頁の「シ」の項)において、本件発明12と甲2発明Bとを対比すると、甲2発明Bは、上記相違点8に係る本件発明12の構成を具備していない点で本件発明12と相違するが、LEDを、面実装素子またはチップ型素子として組み込むことは周知技術であるから、上記相違点8に係る本件発明12の構成は、周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない旨主張するので、以下検討する。
なお、請求人は、上記周知技術を示す文献として、甲第11号証?甲第13号証を提出している(審判請求書65頁の「ウ」の項)。

ウ 検討
相違点8について検討する。
甲第11号証には、「発光ダイオード」に関し(摘示(11a))、LEDチップ13の両電極をフリップチップボンディングにより基板11の両配線パターン12にそれぞれバンプ15を介して電気的に接続することが記載され(摘示(11b)(11c))、
甲第12号証には、「チップ型の半導体発光装置」に関し(摘示(12a))、フリップチップ型の発光素子1を、リード基板6側に向けてマイクロバンプ4、5をそれぞれリード7a、7bに接続して固定することが記載され(摘示(12b)(12c))、
甲第13号証には、「発光ダイオード」に関し(摘示(13a))、硝子エポキシ回路基板204上に金バンプを利用して発光素子の電極と電気的に接続させフリップチップ型に配置させることが記載されているように(摘示(13b)(13c))、LEDを、面実装素子またはチップ型素子として組み込むことは、かかる技術分野の周知技術ということができるから、甲2発明Bの「LED光源8」を、面実装素子またはチップ型素子として組み込むことは、周知技術の付加あるいは転換にすぎず、新たな効果を奏するものということもできないから、上記相違点8は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
したがって、本件発明12は、甲2発明Bと実質同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(13)本件発明13に対して
ア 対比
(ア)本件発明13は、本件発明8?12のいずれかの発明特定事項を全て含む「LED照明光源」に加え、さらに、「LED照明光源における給電端子を前記LEDが実装されている面から裏面へ押圧しながら接続するコネクタと、前記コネクタを介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路と、を備え」、及び「前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」との事項を付加して、「LED照明装置」の発明として特定したものであるから、上記「(1)(7)(8)」で述べた検討内容をも踏まえて本件発明13と甲2発明Aとを対比すると、
甲2発明Aの「LED集積光源ユニット1」は、本件発明13の「請求項8」「に記載のLED照明光源」に相当し、
甲2発明Aの「ソケット2」は、本件発明13の「給電端子を前記LEDが実装されている面から裏面へ押圧しながら接続するコネクタ」に相当し、
甲2発明Aの「LED光源装置」は、本件発明13の「LED照明装置」に相当し、
甲2発明Aの「ソケット2」による、「LED集積光源ユニット1」の「固定」の構成は、本件発明13の「前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」という構成に相当するものといえる。

そうすると、本件発明13と甲2発明Aとは、
「請求項8に記載のLED照明光源における給電端子を前記LEDが実装されている面から裏面へ押圧しながら接続するコネクタと、
を備えたLED照明装置であって、
前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、LED照明装置。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
〔相違点9〕
本件発明13は、「前記コネクタを介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路」を具備するのに対し、甲2発明Aは、「LED光源8用の電源はLED集積光源ユニット1内かLED光源装置本体27内に設けられ」るものの、「点灯回路」を具備するものとして特定されていない点。

イ 判断
上記相違点9に係る本件発明13の構成は、上記「(1)ア」で述べた相違点1に係る本件発明1の構成と同じである。
したがって、上記「(1)イ」の判断と同様に、上記相違点9は、相違点ではないか、あるいは、課題解決のための具体化手段における微差であり、実質的な相違点ではない。
また、本件発明13と甲2発明Aとの対比において、本件発明13の「LED照明光源」を、請求項9?12のいずれかに記載のLED照明光源として特定し、上記相違点5?8と同様な相違点が存在するとしても、上記(9)?(12)の判断と同様に、各相違点に係る構成は、周知技術の付加あるいは転換にすぎず、新たな効果を奏するものということはできない(各相違点は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。)。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明13は、甲2発明Aと同一あるいは実質同一であり、かつ、本件特許の出願人はその出願時において、甲2先願の出願人と同一の者ではなく、発明者も同一の者ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

2-2 無効理由2について
(1)本件発明1に対して
ア 対比
本件発明1と甲3発明Aとを対比する。
(ア)甲3発明Aの「発光素子2」は、本件発明1の「LED」に相当する。
(イ)甲3発明Aの「金属基板1」は、本件発明1の「基板」に相当する。
また、上記「金属基板1」には、「表面に複数の素子収納凹部3が形成され」ており、「発光素子2」は「前記各素子収納凹部3にそれぞれ配設されて前記金属基板1と電気的に導通する」ものであるから、上記「金属基板1」の片面に「発光素子2」が実装されていることも明らかである。
したがって、甲3発明Aの「金属基板1」は、上記(ア)をも踏まえると、本件発明1の「LEDが片面に実装された基板」に相当するものといえる。
(ウ)甲3発明Aの「4つの端子部41,42,43,44」は、「基板ユニット12の表面各角部にそれぞれ設け」られるものであるところ、上記「端子部41,42,43,44」が、給電のための端子をなすことは技術的に明らかであるから、本件発明1の「給電端子」に相当する。
(エ)甲3発明Aの「基板ユニット12」は、甲第3号証に「故障時等においては基板ユニットを交換するだけでよいので、メインテナンスも簡単である。」(摘示(3f))と記載されているとおり、着脱可能な構成ということができる。
さらに、甲3発明Aの「基板ユニット12」は、「金属基板1」と「発光素子2」と「共通導電層5」とで「構成」されるとともに、「表面各角部に」は、「4つの端子部41,42,43,44」が「それぞれ設け」られるものである。
したがって、甲3発明Aの「基板ユニット12」は、上記(ア)?(ウ)をも踏まえると、本件発明1の「LEDが片面に実装された基板の当該面に給電端子を有する着脱可能なLED照明光源」に相当するものといえる。
(オ)甲3発明Aは、「基板ユニット12」が、「金属基板1」と、「発光素子2」と、「共通導電層5」とで「構成」されるものであるところ、「放熱器30は、その表面に基板ユニット12が絶縁層31を介して配設され」るものであるから、上記「基板ユニット12」を「構成」する「金属基板1」の裏面が、「絶縁層」に接触することは明らかである(第9図(摘示(3h))にもそのように示されている。)。
また、当然のことながら、「基板ユニット12」で発生した熱は、「絶縁層31」を介して「放熱器30」で放熱されることから、「絶縁層31」及び「放熱器30」は、それらが一体として熱を伝導する熱伝導部材として機能することも技術的に明らかである。
したがって、甲3発明Aの「放熱器30」及び「絶縁層31」は、上記(ア)(イ)をも踏まえると、本件発明1の「前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面と接触する熱伝導部材」に相当するものといえる。
(カ)本件明細書の「カード型LED照明光源10は、このコネクタを介して不図示の点灯回路と電気的に接続される。なお、本明細書において、『コネクタ』の文言は、着脱可能な機構により、カード型LED照明光源との電気的接続を行う部材・部品を広くカバーするものとする。」(段落【0067】)との記載によれば、本件発明1の「コネクタ」は、「着脱可能な機構により、カード型LED照明光源との電気的接続を行う部材・部品」と位置付けられるものである。
ここで、甲3発明Aは、「各端子部41,42,43,44には金属基板1の裏面に貫通するねじ取付用孔46がそれぞれ形成され、基板ユニット12を左右方向に4つ、前後方向に2つ、合計8つ並べて配置し、これらを電気的に接続する手段として導電板50が使用され、導電板50は、各端部41,42,43,44にそれぞれ設けられたねじ取付用孔46に挿通され放熱器30のねじ孔51にねじ込まれる一対もしくは4個の止めねじ52によって基板ユニット12上に固定される」ものであるから、少なくとも、上記「導電板50」及び「止めねじ52」は、「基板ユニット12」を着脱可能にするための機構であって、基板ユニット12との電気的接続を行う部材・部品ということができ、要するに「コネクタ」と称することができる。さらに、その固定の態様は、「金属基板1」の裏面、「絶縁層31」及び「放熱器30」を押圧しながら「端子部41,42,43,44」に接続されるものと解し得る。
したがって、甲3発明Aの「導電板50」及び「止めねじ52」は、上記(イ)(ウ)(オ)をも踏まえると、本件発明1の「前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される少なくとも1つのコネクタ」に相当するものといえる。
そして、甲3発明Aの「照明装置」は、本件発明1の「LED照明装置」に相当するから、上記「導電板50」及び「止めねじ52」による、「基板ユニット12」の「固定」の構成は、本件発明1の「コネクタ」による、「前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」という構成に相当するものといえる。

そうすると、本件発明1と甲3発明Aとは、
「LEDが片面に実装された基板の当該面に給電端子を有する着脱可能なLED照明光源と、
前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面と接触する熱伝導部材と、
前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される少なくとも1つのコネクタと、
を備えるLED照明装置であって、
前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、LED照明装置。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
〔相違点I〕
本件発明1は、「前記コネクタを介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路」を具備するのに対し、甲3発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 判断
上記相違点Iについて検討する。
(ア)甲第3号証には、「第4図は6つの基板ユニット12を電気的に接続した例を示すもので、4つの基板ユニット12を電源15に対して直列に接続し、2つの基板ユニット12を並列接続したものである。」(摘示(3c))とも記載されているように、甲3発明Aにおいても、「左右方向に4つ、前後方向に2つ、合計8つ並べて配置し」た「基板ユニット12」に対して電源からの電力が供給されるべきことは自明であるから、そのような電源からの電力が、導電板50を介して基板ユニット12に供給されることも技術的に明らかである。
そして、そのような電源を用いてLED照明光源(基板ユニット12)のLED(発光素子2)を点灯させるために、その点灯を行わせるための点灯回路を要することは技術常識であるから、甲3発明Aにおいても、コネクタ(導電板50)を介してLED照明光源(基板ユニット12)と電気的に接続される点灯回路を具備することは予定されている、というべきである。
したがって、上記相違点Iは、実質的な相違点ではないから、本件発明1は、甲3発明Aである。
(イ)仮に、上記相違点Iが実質的な相違点であるとしても、例えば、甲5号証(摘示(5a))には、電源とLEDチツプ2との間に、LEDチツプ2を点灯させるための、整流用のダイオード5や電流制限用の抵抗器9を含む電気回路を設けることが記載されているように、LED(LEDチツプ2)を点灯させるために、その点灯を行わせるための点灯回路(電気回路)を配することは周知技術(以下「周知技術1」という。)であるから、甲3発明Aにおいて、コネクタ(導電板50)を介してLED照明光源(基板ユニット12)と電気的に接続される点灯回路を具備するものとすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
したがって、上記相違点Iに係る本件発明1の構成は、甲3発明A及び上記周知技術1に基いて、当業者が容易に想到し得るものといえる。
そして、本件発明1の効果も、甲3発明A及び上記周知技術1から当業者が予測し得る範囲のものといえる。

ウ 被請求人の主張について
(ア)被請求人は、審判事件答弁書(14?16頁の「(1)」の項)において、甲3発明Aは、金属基板1と放熱器30との間に絶縁層31が介在していることから、甲3発明Aは、放熱器30が「前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面と接触」していないし、「前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧」もしていないし、「前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付け」てもいないことになる、旨主張するので、以下検討する。

(イ)検討
上記「ア(オ)」で述べたとおり、「基板ユニット12」で発生した熱は、「絶縁層31」を介して「放熱器30」で放熱され、「絶縁層31」及び「放熱器30」は、それらが一体として熱を伝導する熱伝導部材として機能することが技術的に明らかであるから、甲3発明Aは、熱伝導部材(絶縁層31及び放熱器30)が、「前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面と接触」したものといわざるを得ない。
また、甲3発明Aの「導電板50」及び「止めねじ52」は、上記「ア(カ)」で述べたとおり、「基板ユニット12」を着脱可能にするための機構であって、基板ユニット12との電気的接続を行う部材・部品ということができ、その固定の態様に照らせば、「金属基板1」の裏面、「絶縁層31」及び「放熱器30」を押圧しながら「端子部41,42,43,44」に接続されるものと解し得るから、甲3発明Aは、「前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧」し、「前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付け」たものといわざるを得ない。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲3発明Aであるか、あるいは、実質的な相違点であったとしても、甲3発明A及び周知技術1に基いて当業者が容易になし得るものである。

(2)本件発明2に対して
ア 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板のうち前記LEDが実装されている基板面の一端側に給電電極が形成されており、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の中心位置が前記基板の中心位置からずれている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものである。
ここで、甲3発明Aは、「4つの端子部41,42,43,44を基板ユニット12の表面各角部にそれぞれ設け、左側の端子部41,42は、絶縁層4を取り除き金属基板1を露呈させて端子部としたものであり、右側の端子部43,44は絶縁層4上に形成された導電パターンからなり、各列の共通導電層5にそれぞれ接続されて」構成されるものであるところ、上記「左側の端子部41,42」あるいは「右側の端子部43,44」は、金属基板1のうちLED光源8が実装されている基板面の一端側に配置された給電電極ということができるから、上記「左側の端子部41,42」あるいは「右側の端子部43,44」の配設構成は、上記「(1)ア(ア)?(ウ)」をも踏まえると、本件発明2の「前記基板のうち前記LEDが実装されている基板面の一端側に給電電極が形成されており」という構成に相当するものといえる。
してみると、本件発明2と甲3発明Aとは、上記「(1)ア」で述べた一致点に加え、「前記基板のうち前記LEDが実装されている基板面の一端側に給電電極が形成されており」という構成の点で一致し、上記相違点Iの点で一応相違するとともに、以下の相違点IIで相違するものといえる。
〔相違点II〕
本件発明2は、「前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の中心位置が前記基板の中心位置からずれている」のに対し、甲3発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(40?44頁の「(2)」の項)において、本件発明2と甲3発明Aとを対比すると、甲3発明Aは、上記相違点IIに係る本件発明2の構成を具備していない点で本件発明2と相違するが、甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術事項をも加味すれば、上記相違点IIに係る本件発明2の構成は、単なる設計事項にすぎない旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
上記相違点Iについての判断は、上記「(1)イ」で述べたとおりであるので、以下相違点IIについて検討する。
甲3発明Aの「照明装置」は、「表面に複数の素子収納凹部3が形成されかつ凹部以外の表面が絶縁層4によって被覆された良導体からなる金属基板1と、前記各素子収納凹部3にそれぞれ配設されて前記金属基板1と電気的に導通する複数の発光素子2と、前記絶縁層4の表面に形成され前記各発光素子2がリード線7を介して電気的に接続された共通導電層5とで基板ユニット12を構成し」てなるものであり、上記「金属基板1」に対する「複数の発光素子2」の配設位置は、「照明装置」として機能する範囲で、任意に設定し得るものと理解するのが自然かつ合理的である。
さらに、例えば、甲第3号証の第1図(摘示(3h))に示される金属基板1に対する発光素子2の配設位置や、甲第4号証の第8図(摘示(4c))に示されるアルミナ基板33に対するLEDアレイチップ34の配設位置等をも参考とするならば、基板においてLEDが実装されている光出射領域の中心位置を、基板の中心位置からずれて配置することは、通常の実施範囲のものということもできる。
してみると、甲3発明Aの基板(金属基板1)において、LED(発光素子2)が実装されている光出射領域の中心位置を、基板(金属基板1)の中心位置からずれて配設することは、当業者が必要に応じ適宜設定する設計事項にすぎないものというべきである。
したがって、上記相違点IIに係る本件発明2の構成は、甲3発明Aに基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。
そして、本件発明2の効果も、甲3発明Aから当業者が予測し得る範囲のものといえる。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明2は、甲3発明Aに基いて、あるいは甲3発明A及び上記周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3に対して
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板裏面と前記熱伝導部材との間の接触面積は、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の面積に等しいか、それ以上である」との発明特定事項(以下「発明特定事項D」という。)を付加して発明を特定したものであるが、甲3発明Aは、「金属基板1の裏面と絶縁層31との間の接触面積、及び絶縁層31と放熱器との間の接触面積のそれぞれは、金属基板1において発光素子2が実装されている光出射領域の面積以上」という構成を具備するものであり、かかる構成は、本件発明3の上記発明特定事項Dに相当するものといえる。
したがって、本件発明3は、本件発明1と同様に、甲3発明Aであるか、あるいは、実質的な相違点があったとしても、甲3発明A及び周知技術1に基いて当業者が容易になし得るものである。

(4)本件発明4に対して
ア 本件発明4は、本件発明1?3のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに「前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明4と甲3発明Aとを対比すると、両者は、上記「(1)ア(ア)」で述べた一致点で一致し、上記相違点I及びIIで相違するとともに、さらに、以下の相違点IIIで相違するものといえる。
〔相違点III〕
本件発明4は、「前記点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを更に有している」のに対し、甲3発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(46?48頁の「(4)」の項)において、本件発明4と甲3発明Aとを対比すると、甲3発明Aは、上記相違点IIIに係る本件発明4の構成を具備していない点で本件発明4と相違するが、LED照明装置の点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケットを設けることは、例えば甲第5号証に開示されているように周知技術であるから、上記相違点IIIに係る本件発明4の構成は、当業者が容易に想到し得る旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
上記相違点I及びIIについての判断は、上記「(1)イ」及び「(2)ウ」で述べたとおりであるので、以下相違点IIIについて検討する。
(ア)甲第3号証には、「第4図は6つの基板ユニット12を電気的に接続した例を示すもので、4つの基板ユニット12を電源15に対して直列に接続し、2つの基板ユニット12を並列接続したものである。」(摘示(3c))とも記載されているように、甲3発明Aにおいても、「左右方向に4つ、前後方向に2つ、合計8つ並べて配置し」た「基板ユニット12」に対して電源からの電力の供給が予定されていることは自明である。
(イ)ここで、甲第5号証には、「LED表示灯」に関し(摘示(5a))、基板1の前面側にLEDチツプ2がマウントされ、この基板1の背面側には放熱ブロツク4が密接して取付けられること、及び放熱ブロツク4の後面側(電源側)に口金8が取付けられていることが記載されており(摘示(5b))、そのように口金8を用いて電源からの電力を供給することは、かかる技術分野の周知技術(以下「周知技術2」という。)ということもできる。
そうすると、電源からの電力の供給が予定される甲3発明Aにおいて、上記甲第5号証にも記載された周知技術2をも参考として、点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための給電ソケット(口金8)を設けることは、当業者にとって格別困難なことではない。
したがって、上記相違点IIIに係る本件発明4の構成は、甲3発明A及び周知技術2に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。

エ 小括
以上のとおり、本件発明4は、甲3発明A及び上記周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5に対して
ア 本件発明5は、本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに「前記給電ソケットは、電球用口金である」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明5と甲3発明Aとを対比すると、両者は、上記「(1)ア(ア)」で述べた一致点で一致し、上記相違点I?IIIで相違するとともに、さらに、以下の相違点IVで相違するものといえる。
〔相違点IV〕
本件発明5は、「前記給電ソケットは、電球用口金である」のに対し、甲3発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(48頁の「(5)」の項)において、本件発明5と甲3発明Aとを対比すると、甲3発明Aは、上記相違点IVに係る本件発明5の構成を具備していない点で本件発明5と相違するが、給電ソケットを電球用口金とすることは、例えば甲第5号証に開示されているように周知技術であるから、上記相違点IVに係る本件発明5の構成は、当業者が容易に想到し得る旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
上記相違点I?IIIについての判断は、上記「(1)イ」、「(2)ウ」及び「(4)ウ」で述べたとおりであるので、以下相違点IVについて検討する。
(ア)上記「(4)ウ」で述べたとおり、甲第5号証には、「LED表示灯」に関し(摘示(5a))、基板1の前面側にLEDチツプ2がマウントされ、この基板1の背面側には放熱ブロツク4が密接して取付けられること、及び放熱ブロツク4の後面側(電源側)に口金8が取付けられていることが記載されており(摘示(5b))、そのように口金8を用いて電源からの電力を供給することは、かかる技術分野の周知技術(周知技術2)ということもできる。
ここで、甲第5号証の「しかも従来の白熱電球と差替えて使用できる」(摘示(5c))との記載によれば、上記「口金8」は、電球用の口金と理解することができる。
そうすると、電源からの電力の供給が予定される甲3発明Aにおいて、上記甲第5号証にも記載された周知技術2をも参考として、点灯回路に対して外部から電気エネルギーを供給するための電球用口金(口金8)を設けることは、当業者にとって格別困難なことではない。
したがって、上記相違点IVに係る本件発明5の構成は、甲3発明A及び周知技術2に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。

エ 小括
以上のとおり、本件発明5は、甲3発明A及び上記周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明6に対して
ア 本件発明6は、本件発明4または5の発明特定事項を全て含み、さらに「前記コネクタに接続された状態の前記LED照明光源から出た光を透過するカバーを備えている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明6と甲3発明Aとを対比すると、両者は、上記「(1)ア(ア)」で述べた一致点で一致し、上記相違点I?IVで相違するとともに、さらに、以下の相違点Vで相違するものといえる。
〔相違点V〕
本件発明6は、「前記コネクタに接続された状態の前記LED照明光源から出た光を透過するカバーを備えている」のに対し、甲3発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(48?51頁の(6)の項)において、本件発明6と甲3発明Aとを対比すると、甲3発明Aは、上記相違点Vに係る本件発明6の構成を具備していない点で本件発明6と相違するが、LED照明光源から出た光を透過するカバーを設けることは甲第5号証及び甲第6号証に例示されているように周知技術であるから、上記相違点Vに係る本件発明6の構成は、当業者が容易に想到し得る旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
上記相違点I?IVについての判断は、上記「(1)イ」、「(2)ウ」、「(4)ウ」及び「(5)ウ」で述べたとおりであるので、以下相違点Vについて検討する。
(ア)甲第3号証には、「第5図は第3図に示した照明装置を車輌用灯具に適用した場合の例を示す断面図である。同図において、35はバックカバー、36は前面レンズ、37はインナーレンズ、38は放熱用孔である。インナーレンズ37の表面には多数の魚眼集光レンズ39が各発光素子(図示せず)に対応して形成されている。」(摘示(3d))と記載されているように、甲3発明Aは、LED照明光源(基板ユニット12)から出た光を透過するカバー(前面レンズ36、インナーレンズ37)を設けることも想定されるものである。
(イ)さらに、甲第5号証には、「LED表示灯」に関し(摘示(5a))、基板1の前面側にLEDチツプ2がマウントされ、この基板1の背面側には放熱ブロツク4が密接して取付けられること、及び放熱ブロツク4には前面側(発光側)にレンズキヤツプ7が取付けられことが記載され(摘示(5b))、
甲第6号証には、「車輛用表示灯」に関し(摘示(6a))、プリント基板1のプリント板面3上に多数個の発光ダイオード4をチップの状態で載せること、及びプリント基板1上にレンズカバー8を載置することが記載されているように(摘示(6b)(6c))、LED照明装置(LED表示灯、車輛用表示灯)を構成するに際し、LED照明光源(基板1及びLEDチツプ2、プリント基板1及び発光ダイオード4)から出た光を透過するカバー(レンズキヤツプ7、レンズカバー8)を設けることは、かかる技術分野の周知技術(以下「周知技術3」という。)ということができる。
そうすると、甲3発明Aにおいて、LED照明光源から出た光を透過するカバーを設けることは、そもそも想定されている構成ということもできるし、周知技術3をも参考として当業者が容易に想到し得るものといえる。

エ 小括
以上のとおり、本件発明6は、甲3発明A及び上記周知技術1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明7に対して
ア 対比
本件発明7と甲3発明Bとを対比する。
(ア)甲3発明Bの「金属基板1」は、本件発明7の「基板」に相当する。
(イ)甲3発明Bの「発光素子2」は、本件発明7の「LED」に相当する。
また、上記「金属基板1」には、「表面に複数の素子収納凹部3が形成され」ており、「発光素子2」は「前記各素子収納凹部3にそれぞれ配設されて前記金属基板1と電気的に導通する」ものであるから、上記「金属基板1」の片面に「発光素子2」が実装されていることも明らかである。
したがって、甲3発明Bの「発光素子2」は、上記(ア)をも踏まえると、本件発明7の「前記基板の片面に実装されたLED」に相当するものといえる。
(ウ)甲3発明Bの「表面実装用のLED光源8と電路パターン9を形成した基板7より構成され」る「LED集積光源ユニット1」は、上記(ア)(イ)をも踏まえると、本件発明7の「基板と、前記基板の片面に実装されたLEDとを備えたLED照明光源」に相当するものといえる。
(エ)甲3発明Bの「LED光源装置本体27の下面凹部に設けられた平面部4と、LED集積光源ユニット1と、この平面部4に取り付けられLED集積光源ユニット1の一端が挿入され電気的接続をするソケット2と、LED集積光源ユニット1の他端部を支持する保持部3が配設されて」構成される「LED光源装置」は、本件発明7の「LED照明装置」に相当する。
(オ)甲3発明Bの「4つの端子部41,42,43,44」は、「基板ユニット12の表面各角部にそれぞれ設け」られるものであるところ、上記「端子部41,42,43,44」が、給電のための端子をなすことは技術的に明らかであるから、本件発明7の「給電端子」に相当する。
(カ)本件明細書の「カード型LED照明光源10は、このコネクタを介して不図示の点灯回路と電気的に接続される。なお、本明細書において、『コネクタ』の文言は、着脱可能な機構により、カード型LED照明光源との電気的接続を行う部材・部品を広くカバーするものとする。」(段落【0067】)との記載によれば、本件発明7の「コネクタ」は、「着脱可能な機構により、カード型LED照明光源との電気的接続を行う部材・部品」と位置付けられるものである。
ここで、甲3発明Bは、「各端子部41,42,43,44には金属基板1の裏面に貫通するねじ取付用孔46がそれぞれ形成され、基板ユニット12を左右方向に4つ、前後方向に2つ、合計8つ並べて配置し、これらを電気的に接続する手段として導電板50が使用され、導電板50は、各端部41,42,43,44にそれぞれ設けられたねじ取付用孔46に挿通され放熱器30のねじ孔51にねじ込まれる一対もしくは4個の止めねじ52によって基板ユニット12上に固定される」ものであるから、少なくとも、上記「導電板50」及び「止めねじ52」は、「基板ユニット12」を着脱可能にするための機構であって、基板ユニット12との電気的接続を行う部材・部品ということができ、要するに「コネクタ」と称することができる。
さらに、その固定の態様は、「金属基板1」の裏面、「絶縁層31」及び「放熱器30」を押圧しながら「端子部41,42,43,44」に接続されるものと解し得る。
さらにまた、甲3発明Bの「各端子部41,42,43,44」は、「左側の端子部41,42」及び「右側の端子部43,44」として特定されるとおり、金属基板1のうち発光素子28が実装されている金属基板1の片面の一端側に設けられるものである。
そうすると、甲3発明Bの「基板ユニット12」は、上記(ア)?(オ)をも踏まえると、本件発明7の「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており、前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される」「LED照明光源」に相当するものといえる。

そうすると、本件発明7と甲3発明Bとは、
「基板と、前記基板の片面に実装されたLEDとを備えたLED照明光源であって、
前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており、
前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される、LED照明光源。」
の点で一致し、相違点は存在しない。

イ 小括
以上のとおり、本件発明7は、甲3発明Bである。

(8)本件発明8に対して
本件発明8は、本件発明7の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板の中心位置は、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の中心位置からずれている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明8と甲3発明Bとを対比すると、両者は、上記「(7)ア」で述べた一致点で一致し、以下の相違点VIで相違するものといえる。
〔相違点VI〕
本件発明8は、「前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の中心位置が前記基板の中心位置からずれている」のに対し、甲3発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(53?54頁の「(8)」の項)において、本件発明8と甲3発明Bとを対比すると、甲3発明Bは、上記相違点VIに係る本件発明8の構成を具備していない点で本件発明8と相違するが、本件発明2と同様に、上記相違点VIに係る本件発明8の構成は、単なる設計事項にすぎない旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
甲3発明Bの「照明装置」は、「表面に複数の素子収納凹部3が形成されかつ凹部以外の表面が絶縁層4によって被覆された良導体からなる金属基板1と、前記各素子収納凹部3にそれぞれ配設されて前記金属基板1と電気的に導通する複数の発光素子2と、前記絶縁層4の表面に形成され前記各発光素子2がリード線7を介して電気的に接続された共通導電層5とで基板ユニット12を構成し」てなるものであり、上記「金属基板1」に対する「複数の発光素子2」の配設位置は、「照明装置」として機能する範囲で、任意に設定し得るものと理解するのが自然かつ合理的である。
さらに、例えば、甲第3号証の第1図(摘示(3h))に示される金属基板1に対する発光素子2の配設位置や、甲第4号証の第8図(摘示(4c))に示されるアルミナ基板33に対するLEDアレイチップ34の配設位置等をも参考とするならば、基板においてLEDが実装されている光出射領域の中心位置を、基板の中心位置からずれて配置することは、通常の実施範囲のものということもできる。
してみると、甲3発明Bの基板(金属基板1)において、LED(発光素子2)が実装されている光出射領域の中心位置を、基板(金属基板1)の中心位置からずれて配設することは、当業者が必要に応じ適宜設定する設計事項にすぎないものというべきである。
したがって、上記相違点VIに係る本件発明8の構成は、甲3発明Bに基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。
そして、本件発明8の効果も、甲3発明Bから当業者が予測し得る範囲のものといえる。

エ 小括
以上のとおり、本件発明8は、甲3発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件発明9に対して
ア 本件発明9は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板が長方形形状であって、当該長方形形状の角が丸まっている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものである。
ここで、甲3発明Bの「基板1が長方形形状である」との構成と、本件発明9の上記「前記基板が長方形形状であって、当該長方形形状の角が丸まっている」との構成とは、「前記基板が長方形形状である」という構成の限度で共通するものといえるから、本件発明9と甲3発明Bとを対比すると、両者は、上記「(7)ア」で述べた一致点に加え「前記基板が長方形形状である」点で一致し、上記相違点VIで相違するとともに、さらに、以下の相違点VIIで相違するものといえる。
〔相違点VII〕
「長方形形状」の「基板」について、本件発明9は、「当該長方形形状の角が丸まっている」のに対し、甲3発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(54?56頁の「(9)」の項)において、本件発明9と甲3発明Bとを対比すると、甲3発明Bは、上記相違点VIIに係る本件発明9の構成を具備していない点で本件発明9と相違するが、長方形形状の基板の角を丸めることは甲第6号証及び甲第7号証に例示されているように周知技術であるから、上記相違点VIIに係る本件発明9の構成は、当業者が容易に想到し得る旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
上記相違点VIについての判断は、上記「(8)ウ」で述べたとおりであるので、以下相違点VIIについて検討する。
甲第6号証には、「車輛用表示灯」に関し(摘示(6a))、プリント基板1を略長方形に形成するとともに、該プリント基板1のプリント板面3上に多数個の発光ダイオード4をチップの状態で載せることが記載されているところ(摘示(6b))、第1図(摘示(6d))より、上記プリント基板1の角が丸まっていることが看取できる。
また、甲第7号証には、「灯火装置」に関し(摘示(7a))、板状の底板部材3に複数のLED9を担持させることが記載されているところ(摘示(7b))、第4図(a)(摘示(7c))より、上記底板部材3は矩形状をなし、その角が丸まっていることが看取できる。
そうすると、LED(発光ダイオード4、LED9)を実装した基板(プリント基板1、底板部材3)を長方形状に構成するに際し、その角を丸めて構成することは、かかる技術分野の周知技術(以下「周知技術4」という。)ということができるから、甲3発明Bの「長方形形状」の「金属基板1」においても、その角を丸めて構成する程度のことは想定の範囲というべきである。
したがって、上記相違点VIIに係る本件発明9の構成は、甲3発明B及び周知技術4に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。

エ 小括
以上のとおり、本件発明9は、甲3発明B及び周知技術4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10)本件発明10に対して
ア 本件発明10は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つが形成されている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明10と甲3発明Bとを対比すると、両者は、上記「(7)ア」で述べた一致点で一致し、上記相違点VIで相違するとともに、さらに、以下の相違点VIIIで相違するものといえる。
〔相違点VIII〕
本件発明10は、「前記基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つが形成されている」のに対し、甲3発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(56?60頁の「(10)」の項)において、本件発明10と甲3発明Bとを対比すると、甲3発明Bは、上記相違点VIIIに係る本件発明10の構成を具備していない点で本件発明10と相違するが、基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つを形成することは甲第8号証?甲第10号証に例示されているように周知技術であるから、上記相違点VIIIに係る本件発明10の構成は、当業者が容易に想到し得る旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
上記相違点VIについての判断は、上記「(8)ウ」で述べたとおりであるので、以下相違点VIIIについて検討する。
甲第8号証には、「チップ型発光装置」に関し(摘示(8a))、基板2の一対の短手側の端縁の一方中央部に切欠部7を、基板2の他方の短手側の端縁に切欠部8a、8bを形成し、LEDチップの極性判別を行うことが記載され(摘示(8b)(8c))、
甲第9号証には、「チップ部品素子」に関し(摘示(9a))、チップ基板20にマーク9を着色樹脂等により形成し、チップ素子のカソード電極を判別することが記載され(摘示(9b)(9c))、
甲第10号証には、「チップ形発光ダイオード」に関し(摘示(10a))、基板11の側面16aに凹部17を係止し、電極の判別を行うことが記載されているように(摘示(10b)(10c))、基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つを形成し、基板の位置関係を正確に把握できるように構成することは、かかる技術分野の周知技術(以下「周知技術5」という。)ということができるから、甲3発明Bの「基板7」の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つを形成することは、当業者が容易に想到し得るものといえる。
なお、被請求人は、審判事件答弁書(18頁の「(3)ウ」の項)において、請求人が提示する証拠には、基板の一部にマークが形成されている態様の開示はない旨主張するが、甲第9号証の段落【0019】には、 「チップ素子20のカソード電極を判別するためのマーク9を・・・形成することで図2に示したようなチップ基板20が完成する。」(摘示(9b))と記載されており、基板(チップ基板20)の一部にマーク(マーク9)を形成することが開示されている。
したがって、上記相違点VIIIに係る本件発明10の構成は、甲3発明B及び周知技術5に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。

エ 小括
以上のとおり、本件発明10は、甲3発明B及び周知技術5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11)本件発明11に対して
ア 本件発明11は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記LEDは、前記基板にフリップチップボンディングで直接実装されている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明11と甲3発明Bとを対比すると、両者は、上記「(7)ア」で述べた一致点で一致し、上記相違点VIで相違するとともに、さらに、以下の相違点IXで相違するものといえる。
〔相違点IX〕
本件発明11は、「前記LEDは、前記基板にフリップチップボンディングで直接実装されている」のに対し、甲3発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(60?64頁の「(11)」の項)において、本件発明11と甲3発明Bとを対比すると、甲3発明Bは、上記相違点IXに係る本件発明11の構成を具備していない点で本件発明11と相違するが、LEDを基板にフリップチップボンディングで直接実装することは甲第11号証?甲第13号に例示されているように周知技術であるから、上記相違点IXに係る本件発明11の構成は、当業者が容易に想到し得る旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
上記相違点VIについての判断は、上記「(8)ウ」で述べたとおりであるので、以下相違点IXについて検討する。
甲第11号証には、「発光ダイオード」に関し(摘示(11a))、LEDチップ13の両電極をフリップチップボンディングにより基板11の両配線パターン12にそれぞれバンプ15を介して電気的に接続することが記載され(摘示(11b)(11c))、
甲第12号証には、「チップ型の半導体発光装置」に関し(摘示(12a))、フリップチップ型の発光素子1を、リード基板6側に向けてマイクロバンプ4、5をそれぞれリード7a、7bに接続して固定することが記載され(摘示(12b)(12c))、
甲第13号証には、「発光ダイオード」に関し(摘示(13a))、硝子エポキシ回路基板204上に金バンプを利用して発光素子の電極と電気的に接続させフリップチップ型に配置させることが記載されているように(摘示(13b)(13c))、LEDを基板にフリップチップボンディングで直接実装することは、かかる技術分野の周知技術(以下「周知技術6」という。)ということができるから、甲3発明Bの「発光素子2」を、「金属基板1」にフリップチップボンディングで直接実装することは、当業者が容易に想到し得るものといえる。
したがって、上記相違点IXに係る本件発明11の構成は、甲3発明B及び周知技術6に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。

エ 小括
以上のとおり、本件発明11は、甲3発明B及び周知技術6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(12)本件発明12に対して
ア 本件発明12は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記LEDは、面実装素子またはチップ型素子として組み込まれる」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるから、本件発明12と甲3発明Bとを対比すると、両者は、上記「(7)ア」で述べた一致点で一致し、上記相違点VIで相違するとともに、さらに、以下の相違点Xで相違するものといえる。
〔相違点X〕
本件発明12は、「前記LEDは、面実装素子またはチップ型素子として組み込まれる、」のに対し、甲3発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(64?66頁の「(12)」の項)において、本件発明12と甲3発明Bとを対比すると、甲3発明Bは、上記相違点Xに係る本件発明12の構成を具備していない点で本件発明12と相違するが、LEDを、面実装素子またはチップ型素子として組み込むことは甲第11号証?甲第13号証に例示されているように周知技術であるから、上記相違点Xに係る本件発明12の構成は、当業者が容易に想到し得る旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
上記相違点VIについての判断は、上記「(8)ウ」で述べたとおりであるので、以下相違点Xについて検討する。
甲第11号証には、「発光ダイオード」に関し(摘示(11a))、LEDチップ13の両電極をフリップチップボンディングにより基板11の両配線パターン12にそれぞれバンプ15を介して電気的に接続することが記載され(摘示(11b)(11c))、
甲第12号証には、「チップ型の半導体発光装置」に関し(摘示(12a))、フリップチップ型の発光素子1を、リード基板6側に向けてマイクロバンプ4、5をそれぞれリード7a、7bに接続して固定することが記載され(摘示(12b)(12c))、
甲第13号証には、「発光ダイオード」に関し(摘示(13a))、硝子エポキシ回路基板204上に金バンプを利用して発光素子の電極と電気的に接続させフリップチップ型に配置させることが記載されているように(摘示(13b)(13c))、LEDを、面実装素子またはチップ型素子として組み込むことは、かかる技術分野の周知技術(以下「周知技術7」という。)ということができるから、甲3発明Bの「発光素子2」を、面実装素子またはチップ型素子として組み込むことは、当業者が容易に想到し得るものといえる。
したがって、上記相違点Xに係る本件発明12の構成は、甲3発明B及び周知技術7に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。

エ 小括
以上のとおり、本件発明12は、甲3発明B及び周知技術7に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(13)本件発明13に対して
ア 対比
(ア)本件発明13は、本件発明8?12のいずれかの発明特定事項を全て含む「LED照明光源」に加え、さらに、「LED照明光源における給電端子を前記LEDが実装されている面から裏面へ押圧しながら接続するコネクタと、前記コネクタを介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路と、を備え」、及び「前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」との事項を付加して、「LED照明装置」の発明として特定したものであるから、上記「(1)(7)(8)」で述べた検討内容をも踏まえて本件発明13と甲3発明Aとを対比すると、
甲3発明Aの「基板ユニット12」は、本件発明13の「請求項8」「に記載のLED照明光源」に相当し、
甲3発明Aの「導電板50」及び「止めねじ52」は、本件発明13の「給電端子を前記LEDが実装されている面から裏面へ押圧しながら接続するコネクタ」に相当し、
甲3発明Aの「照明装置」は、本件発明13の「LED照明装置」に相当し、
甲3発明Aの「導電板50」及び「止めねじ52」による、「基板ユニット12」の「固定」の構成は、本件発明13の「前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」という構成に相当するものといえる。

そうすると、本件発明13と甲3発明Aとは、
「請求項8に記載のLED照明光源における給電端子を前記LEDが実装されている面から裏面へ押圧しながら接続するコネクタと、
を備えたLED照明装置であって、
前記コネクタは、前記LED照明光源における前記基板の裏面を前記LED照明装置に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、LED照明装置。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
〔相違点i〕
本件発明1は、「前記コネクタを介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路」を具備するのに対し、甲3発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 判断
上記相違点iに係る本件発明13の構成は、上記「(1)ア」で述べた相違点Iに係る本件発明1の構成と同じである。
したがって、上記「(1)イ」の判断と同様に、上記相違点iは、実質的な相違点ではないか、仮に、上記相違点iが実質的な相違点であるとしても、上記相違点iに係る本件発明13の構成は、甲3発明A及び上記周知技術1に基いて、当業者が容易に想到し得るものといえる。
また、本件発明13と甲3発明Aとの対比において、本件発明13の「LED照明光源」を、請求項9?12のいずれかに記載のLED照明光源として特定し、上記相違点VII?Xと同様な相違点が存在するとしても、上記(9)?(12)の判断と同様に、各相違点VII?Xに係る構成は、甲3発明B及び周知技術4?7に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明13は、甲3発明Aと実質的に同一であるか、あるいは、実質的な相違点があったとしても、甲3発明A及び周知技術1、4?7に基いて当業者が容易になし得るものである。

2-3 無効理由3について
(1)本件発明7に対して
ア 対比
本件発明7と甲14発明とを対比する。
(ア)甲14発明の「小基板3」は、本件発明7の「基板」に相当する。
(イ)甲14発明の「複数の天面発光LED6」は、「小基板3の片面に」「実装され」るものであるから、本件発明7の「前記基板の片面に実装されたLED」に相当する。
(ウ)甲14発明の「天面発光LED6を用いた光源」は、上記(ア)(イ)をも踏まえると、本件発明7の「基板と、前記基板の片面に実装されたLEDとを備えたLED照明光源」に相当する。
(エ)甲14発明の「小基板3」は「ランド3a、3aとランド2a、2aをリード線5により接続することにより基板2に接続される」ものであるから、その配設構造に照らして、上記「ランド3a、3a」は、給電端子として機能することが明らかである。
したがって、甲14発明の「小基板3のうち天面発光LED6が実装されている小基板3の片面の一端側に、ランド3a、3aが設けられ」という構成と、本件発明7の「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており」という構成とは、上記(ア)(イ)をも踏まえると、「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、給電端子が設けられ」るという構成の限度で共通するものといえる。

そうすると、本件発明7と甲14発明とは、
「基板と、前記基板の片面に実装されたLEDとを備えたLED照明光源であって、
前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、給電端子が設けられている、LED照明光源。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点A〕
本件発明7は、「LED照明光源」が、「当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており、 前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される」ものであるのに対し、甲14発明は、「天面発光LED6を用いた光源」が、「小基板3はランド3a、3aとランド2a、2aをリード線5により接続することにより基板2に接続される」ものである点。

イ 請求人の主張
請求人は、審判請求書(67?71頁の「(1)」の項)において、本件発明7はLED照明光源に関する発明であるが、LED照明光源自体の構成要件として特定されているのは、「基板」、「前記基板の片面に実装されたLED」、「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、給電端子が設けられており」のみであり、その他は、LED照明光源の構成外の事情である照明装置やそのコネクタによって規定されているため、構成要件としては意味がなく、発明特定事項として無視すべきであるから、本件発明7は甲第14号証に基づき新規性進歩性を欠如している旨主張するので、以下検討する。

ウ 検討
(ア)本件発明7の「LED照明光源」は、「当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており、前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される」ことを発明特定事項とするものであるから、本件発明7において、「給電端子」は、「LED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される」ことに特化されたものとして、また、「LED照明光源」は、「前記コネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記LED照明装置に着脱可能に固定される」ことに特化されたものと解するのが相当である。
(イ)請求人は、上記相違点Aに係る本件発明7の構成は、構成要件としては意味がなく、発明特定事項として無視すべきである旨主張するが、特許請求の範囲の記載は、特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならず(特許法第36条第5項)、また、特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないことから(同法第70条)、上記相違点Aに係る本件発明7の構成に意味がなく、発明特定事項として無視すべき理由はない。したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(ウ)そして、甲14発明における「天面発光LED6を用いた光源」は、「小基板3はランド3a、3aとランド2a、2aをリード線5により接続することにより基板2に接続される」ものであって、上記「ランド3a、3a」は、「ランド2a、2a」と「リード線5により接続」される構成であるから、上記相違点Aに係る本件発明7の構成とは、その具体的な構造が明らかに異なるものである。
したがって、本件発明7と甲14発明とは、上記相違点Aで相違するから、本件発明7は、甲14発明であるということはできないし、甲14発明の「天面発光LED6を用いた光源」を、上記相違点Aに係る本件発明7の構成のものとすることが周知技術であって容易想到と解すべき理由もないから、本件発明7は、甲14発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

エ 小括
以上のとおり、本件発明7は、甲14発明であるとはいえないし、また、甲14発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

(2)本件発明8に対して
本件発明8は、本件発明7の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板の中心位置は、前記基板において前記LEDが実装されている光出射領域の中心位置からずれている」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるところ、請求人は、審判請求書(71?72頁の「(2)」の項)において、本件発明8は甲14発明であり、または甲14発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかし、上記(1)で述べたとおり、本件発明7は、甲14発明であるとはいえないし、また、甲14発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件発明7の発明特定事項を全て含み、さらに、新たな発明特定事項を付加して発明を特定する本件発明8も本件発明7と同様に、甲14発明であるとはいえないし、また、甲14発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3)本件発明9?12に対して
本件発明9は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板が長方形形状であって、当該長方形形状の角が丸まっている」との発明特定事項を付加して発明を特定し
本件発明10は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記基板の一部に、切り欠き、マーク、凹凸の中から選択される少なくとも1つが形成されている」との発明特定事項を付加して発明を特定し、
本件発明11は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記LEDは、前記基板にフリップチップボンディングで直接実装されている」との発明特定事項を付加して発明を特定し、
本件発明12は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに「前記LEDは、面実装素子またはチップ型素子として組み込まれる」との発明特定事項を付加して発明を特定したものであるところ、
請求人は、審判請求書(72?75頁の「(3)?(6)」の項)において、本件発明9?12は、甲14発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかし、上記(2)で述べたとおり、本件発明8は、甲14発明であるとはいえないし、また、甲14発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできないから、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに、新たな発明特定事項を付加して発明を特定する本件発明9?12も本件発明8と同様に、甲14発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

2-4 無効理由4について
(1)請求人の主張
請求人は、審判請求書(75?80頁の「4」の項)において、概ね以下のとおり主張する。
ア 請求項1について
請求項1に記載された「給電端子」と本件明細書に記載された「給電端子」とでは、「照明装置」の構成であるのか、それとも「照明光源」の構成であるのかで齟齬が生じており、請求項1に係る発明の構成が不明確である。
イ 請求項2について
「給電端子」の用語の意味が不明であるのに加えて、「給電端子」と「給電電極」との関係も不明であり、請求項2に係る発明の構成が不明確である。
ウ 請求項7について
請求項7に係る発明はLED照明光源に関する発明であるが、LED照明光源自体の構成要件として特定されているのは、「基板」、「前記基板の片面に実装されたLED」、「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、給電端子が設けられており」のみであり、その他は、LED照明光源の構成外の照明装置やそのコネクタによって規定されている。したがって、本件請求項7は、その内容を特定できない。

(2)検討
ア 請求項1について
本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1には、「LEDが片面に実装された基板の当該面に給電端子を有する着脱可能なLED照明光源と、・・・熱伝導部材と、・・・コネクタと、・・・点灯回路と、を備えるLED照明装置であって」と記載されているとおり、「LED照明光源」が「給電端子を有する」ことが明確に特定されている。
また、本件明細書には、本件発明1に係る実施形態について、「本実施形態では、図12に示すように、給電電極54が多層配線基板51の上面における4つの辺のうちの1つの辺の側に集中的に配列されているため、カード型LED照明光源は、図中の矢印Aの方向に押されて、コネクタに差し込まれることになる。」(段落【0142】)と記載されているところ、上記「給電電極54」が、いわゆる「給電端子」をなすことは技術的に明らかであるから、請求項1に記載された「給電端子」は、具体的には、「給電電極54」として構成されることも技術的に明らかである。
したがって、請求項1に記載された「給電端子」の構成は明確であって、さらに、本件明細書の記載と齟齬が生じているということもできないから、請求人の上記「(1)ア」の主張は採用できない。

イ 請求項2について
本件特許に係る特許請求の範囲の請求項2には、「前記基板のうち前記LEDが実装されている基板面の一端側に給電電極が形成されており」と記載されているとおり、「給電電極」が「前記基板のうち前記LEDが実装されている基板面の一端側に」「形成されて」いることが明確に特定されている。
そして、上記アで述べたとおり、請求項1に記載された「給電端子」は、具体的には、「給電電極54」として構成されることも明らかであるから、請求項1を引用する請求項2に記載された「給電電極」とは、請求項1に記載された「給電端子」を具体化した構成と理解することができる。
したがって、「給電端子」と「給電電極」との関係において、請求項2の記載が不明確ということはできないから、請求人の上記「(1)イ」の主張は採用できない。

ウ 請求項7について
上記「2-3(1)ウ」で述べたとおり、特許請求の範囲の記載は、特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならず(特許法第36条第5項)、また、特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないことから(同法第70条)、本件発明7は、請求項7に記載されるとおりの発明として特定されたものと解すべきである。
したがって、本件発明7は、請求項7に記載されるとおりの発明として特定することができ、その内容が特定できないというものではないから、請求人の上記「(1)ウ」の主張は採用できない。

エ 小括
したがって、請求項1、2及び7の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないとはいえないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないということはできない。

2-5 無効理由5について
(1)請求人の主張
請求人は、審判請求書(80?86頁の「5」の項」)において、概ね以下のとおり主張する。
ア 請求項1について
請求項1でいう「コネクタ」と「熱伝導部材」とはどのような関係にあるのか、また、「コネクタ」及び「熱伝導部材」は、それぞれいかなる部材であるか不明であり、請求項1に係る発明の構成は明確でないし、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件請求項1に係る発明を実施することができる程度に明瞭かつ十分に記載されていないし、請求項1に係る発明は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された発明でもない。
イ 請求項7について
請求項7には「給電端子」との構成要件があるが、この意味は請求項1における「給電端子」と同じ意味であると理解されるが、「給電端子」の意味を特定することができないから、特許を受けようとする発明が不明確であり、また、当該発明は本件明細書に実施可能なように記載されていないし、請求項7に係る発明は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された発明でもない。

(2)検討
ア 請求項1について
(ア)本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1の記載によれば、「熱伝導部材」は、「前記基板のうち前記LEDが実装されていない基板裏面と接触する」ものとして、また、「コネクタ」は、「前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される」ものであって、「前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」ものとして特定されている。
(イ)ここで、本件明細書の「コネクタは、・・・本体55と、・・・コネクタ電極56と、熱伝導性に優れた金属プレート(底板)57と、・・・配線コード58とを備えている。」(段落【0140】)との記載によれば、「コネクタ」が「熱伝導性に優れた金属プレート(底板)57」を備えることが明らかである。
また、本件明細書の「本実施形態のカード型LED照明光源は、図12に示すように、金属板50と、多層配線基板51と、金属製の光学反射板52とを備えている。金属板50および多層配線基板51は、全体として1つの『カード型LED照明光源』を構成している。」(段落【0133】)、「金属板50は、放熱基板のベースメタルである。」(段落【0134】)、「裏面に貼り付けられる金属板50の材料は、アルミニウムに限られず、銅でもよい。金属板50の裏面は、コネクタなどに設けた熱伝導性の良い部材と接触して放熱性を高めるように平坦であることが好ましい」(段落【0166】)、及び「熱伝導材部材とカード型LED照明光源との熱的接触を高めるにためには、熱伝導材部材をカード型LED照明光源に対して押圧する機構を採用することが好ましい。」(段落【0167】)等の記載によれば、上記「多層配線基板51」は、「金属板50」とともに「放熱基板」を構成し、かかる「放熱基板」の裏面は、「熱伝導材部材」に押圧されて接触することも明らかである。
してみると、「コネクタ」をなす「熱伝導性に優れた金属プレート(底板)57」が、「熱伝導材部材」(要するに「熱伝導部材」)として構成されていることも技術的に明らかである。
(ウ)したがって、請求項1に記載された「熱伝導部材」は、「コネクタ」の一部をなす構成と理解することができるから、請求項1に係る発明の構成が明確でないということはできない。
また、上記(イ)のとおり、本件明細書の記載により、「コネクタ」が「熱伝導性に優れた金属プレート(底板)57」を備えるものであって、かかる「熱伝導性に優れた金属プレート(底板)57」が「熱伝導部材」として構成されていることも理解することができるから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件請求項1に係る発明を実施することができる程度に明瞭かつ十分に記載されていない、ということもできないし、請求項1に係る発明が、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された発明でない、ということもできない。
よって、請求人の上記「(1)ア」の主張は採用できない。

イ 請求項7について
(ア)本件特許に係る特許請求の範囲の請求項7には、「基板と、前記基板の片面に実装されたLEDとを備えたLED照明光源であって、前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタによって前記基板片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタに接続される給電端子が設けられており」と記載されているとおり、「LED照明光源」に「備え」られる「基板」に、「給電端子が設けら」ることが明確に特定されている。
そして、上記「2-4(2)ア」で述べたとおり、上記「給電端子」は、具体的には、本件明細書に記載される「給電電極54」として構成されることも明らかであるから、請求人の上記「(1)イ」の主張は採用できない。
ウ 小括
したがって、請求項1及び7の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないとはいえず、さらに、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1及び7を実施することができる程度に明瞭かつ十分に記載されていない、ということもできず、さらにまた、請求項1及び7に係る発明は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された発明でない、ということもできないから、許法第36条第6項第1号、2号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないということはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?3、7?13に係る特許は、無効理由1によって無効とすべきものであり、また、本件発明1?13に係る特許は、無効理由2によって無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-12 
結審通知日 2019-03-14 
審決日 2019-03-27 
出願番号 特願2002-231765(P2002-231765)
審決分類 P 1 113・ 536- ZB (H01L)
P 1 113・ 113- ZB (H01L)
P 1 113・ 16- ZB (H01L)
P 1 113・ 537- ZB (H01L)
P 1 113・ 121- ZB (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柿崎 拓  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 中川 真一
氏原 康宏
登録日 2007-07-27 
登録番号 特許第3989794号(P3989794)
発明の名称 LED照明装置およびLED照明光源  
代理人 市川 浩  
代理人 牧野 知彦  
代理人 伊藤 真  
代理人 市川 浩  
代理人 日向寺 雅彦  
代理人 牧野 知彦  
代理人 小崎 純一  
代理人 小崎 純一  
代理人 日向寺 雅彦  
代理人 平井 佑希  

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