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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04F
管理番号 1353992
審判番号 不服2018-6799  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-18 
確定日 2019-08-08 
事件の表示 特願2016-146065「床用化粧材」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月20日出願公開、特開2016-183559〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成21年7月21日(優先権主張平成20年7月22日(特願2008-188884号)、平成21年3月17日(特願2009-63871号))に出願した特願2009-170055号(以下「親出願」という。)の一部を平成27年4月10日に特願2015-80710号(以下「子出願」という。)として新たに出願し、さらに子出願の一部を平成28年7月26日に特願2016-146065号として新たに出願したものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年 7月 4日:拒絶理由通知(7月11日発送)
平成29年 9月11日:意見書、手続補正書
平成30年 2月14日:拒絶査定(2月20日送達)
平成30年 5月18日:審判請求書
平成31年 2月28日:拒絶理由(3月5日発送)
平成31年 4月24日:意見書、手続補正書


2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成31年4月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「化粧シートの裏面に、木質板、不織布クッション材、及び防湿フィルムが順に積層されている床用化粧材であって、
(i)前記防湿フィルムは、温度40℃、湿度90%における透湿度が7g/m^(2)・24時間以下であり、
(ii)前記床用化粧材は、コンクリートスラブ上に接着剤層を介して直貼りする用途に用いるものであり、
(iii)前記防湿フィルムは、表裏両面のいずれにも紙層を有さない、
ことを特徴とする床用化粧材。」

(なお、上記(i)については、優先権主張の基礎となった特願2009-63871号の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲に記載された事項である。)


3 拒絶の理由
平成31年2月28日付けで当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。

(進歩性)本件出願の請求項1?8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である下記の引用文献1又は2、及び3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平10-292611号公報
引用文献2:特開平4-120360号公報
引用文献3:特開2008-238688号公報
(公開日:平成20年10月9日)


4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、審決で付した。以下同様。)
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は床材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、床基板の裏面に合成樹脂系あるいはゴム系発泡体等の緩衝材を貼着し、防音性能及び施工下地面の不陸吸収性能を付与した直貼り床材が知られている。」

イ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの床材を施工する際は、下地面に接着剤を塗布した後、床材の実を嵌合しながら固定するものであるが、下地面に塗布した接着剤が緩衝材内に浸透した状態で硬化することにより、緩衝材の緩衝機能が低下させられてしまう。
【0005】または、床材を嵌合した後、十分な接着力を得るため床材表面に作業者が重りの代わりに乗ることにより、緩衝材が圧縮され裏面に形成された凹凸の凹部が下地面に塗布された接着剤に接触した状態で接着剤が硬化してしまう。
【0006】このような状態で施工された床材は十分な防音性能を示すことができないという問題が発生していた。特にこの問題は、床材裏面に貼着する緩衝材として連続気泡型の発泡体を用いた場合に生じやすい問題であった。また、床材をコンクリートスラブ等の床下地面に施工する際に、コンクリートスラブの硬化反応が十分に完了していない状態で施工することがある。
【0007】このような場所においては、床板を施工した後にコンクリートスラブの硬化反応に伴い多量の水分がコンクリートスラブ表面側に放出され、この水分を木質系床板基板が吸収することにより床板基板に膨張が生じ、反りが生じたり床板基板の接合部において突き上げが生ずるという問題が発生していた。」

ウ 「【0010】
【作用】本発明の床材によれば、クッション材層の裏面に接着が浸透せず、且つクッション機能を有するシート状物が積層一体化されてなる構成により、施工の際に床下地に塗布した接着剤がクッション材内に浸透することがなく、施工方法に係わらず床材の持つ防音機能を十分に発揮することができ、また、床下地面からの水分の発散による床板基板の反り等の問題も発生しない床材の提供を可能としたものである。」

エ 「【0011】
【実施の形態】図1は本発明の床材の断面図の一例を示すものであり、裏面、床材基板1の裏面にクッション材2が貼着され、該クッション材2の裏面にはシート状物3が貼着されている。
【0010】(審決注:原文のママ)本発明の床材を形成する床材基板1としては、例えば、合板、木削片板、木質繊維板、単板積層板を単独でまたは任意組み合わせ複合したもの、あるいは板材と板材との間に緩衝効果の優れた合成樹脂シート、発泡合成樹脂シートあるいは遮音シート等を挟み込むように積層したものを用いることができる。
【0012】また、基板表面には任意化粧層を形成することができる。この化粧層は、天然木材を切削して得られる天然突板、人工突板、および不織布、紙、合成樹脂シートを裏打ちした突板シート、または、化粧紙、樹脂含浸紙、不織布、紙、合成樹脂シート等の化粧シートを、接着剤を用い接着することにより形成するか、あるいは化粧板表面に直接塗装または印刷を施すことにより形成される。また、化粧層の表面に、上塗り層を設けることもできる。
【0013】このような化粧層を設けることにより、表面側からの水分の浸透も防止されることとなり、湿度変化に伴う反り、結露、腐食等の問題を解決することができるものである。
【0014】さらに、床材基板1裏面側から、溝を形成することにより、床材基板1の剛性を下げ床材表面に衝撃が加わった後に、床基板自体の変形によりこの衝撃を吸収することができ防音性能を向上すさせることができる。
【0015】本発明のクッション材2としては、床材基板1表面に与えられた衝撃を収縮変形することにより衝撃エネルギーを吸収する緩衝機能を有するものであり、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの合成樹脂発泡体あるいはゴム発泡体を用いることができる。」

オ 「【0029】本発明のシート状物3としては、接着剤が浸透せず、且つ制振機能を有するものであって、例えばポリエチレン、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリスチレン等の合成樹脂及びゴムなどのシート状物、発泡シート状物を用いることができる。発泡シート状物を用いる場合は、接着剤が浸透しないために、独立発泡型の発泡シート状物を用いる。
【0030】さらに、好ましくは、防湿機能を有し接着剤による接着力の優れたものが用いられる。また、部分的に粗面加工を施すことにより接着剤の投錨効果を上げさらに接着力を向上させたものを使用することが好ましい。」

カ 各図を参照すると、床材基板1の裏面に切溝が形成されていることが看取できる。

キ 上記アないしカからみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。
「合板、木削片板、木質繊維板、単板積層板を単独でまたは任意組み合わせ複合した床材基板1の裏面にクッション材2が貼着され、該基板表面には合成樹脂シートである化粧シートを接着し、該クッション材2の裏面には、接着剤が浸透しないポリエチレン、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリスチレン等の合成樹脂及びゴムなどのシート状物、発泡シート状物を用いることができる防湿機能を有するシート状物3が貼着されている直貼り床材であって、
直貼り床材は、コンクリートスラブからなる床下地面に接着剤を塗布して施工するものであって、
床材基板1裏面に切溝が形成されている、
直貼り床材。」

(2)引用文献2
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「<産業上の利用分野>
本発明はコンクリートに直貼りして用いられる防音性の床板に関する。」(1頁左下欄末行?右下欄2行)

イ 「<実施例>
第1図に示される実施例において、1は床基板であって表板2及び裏板3を緩衝シート4を介して積層接着して成る。
表板2及び裏板3はいずれも合板、繊維板、パーティクルボード、積層板、木板等から任意選択して用いられる。表板2の表面には必要に応じて化粧単板、化粧紙、化粧合成樹脂シート等の化粧シート状物が貼着され、あるいは柄模様印刷や着色塗装等によって任意化粧が施される。」(2頁左下欄9?18行)

ウ 「床基板1の裏面には、その裏面に防湿層7が設けられて成る弾性繊維マット8が接着剤や粘着剤を用いて積層される。
防湿層7としては塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂シート、アスファルト、アスファルトフェルト、アスファルトまたは合成樹脂を含浸させた紙あるいは不織布等が任意に用いられる。
弾性繊維マット8としてはヤシ繊維、麻、ヘチマ繊維、綿等の天然繊維、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアセタール、ナイロン等の合成樹脂繊維、ロックウール、グラスウール、鉱滓綿等の無機繊維等の繊維質材料を、合成樹脂、合成ゴム、生ゴム、ラテックス等のバインダーを用いてマット状に固着したものである。」(2頁右下欄17行?3頁左上欄12行)

エ 「従って、床板表面側からの衝撃は弾性繊維マット8に伝搬されてこれによって吸収されるものであり、沈み防止部材9が該衝撃を受けることがないので上記弾性繊維マットによる衝撃吸収作用を妨げることはない。」(3頁右上欄15?19行)

オ 「第2図に示される実施例は同様の構成の床板において、更に基板1において、裏板4を貫通する溝10が複数本幅方向に亙って刻設されている。」(4頁左上欄5?7行)

カ 上記アないしオからみて、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。
「合板、繊維板、パーティクルボード、積層板、木板等から任意選択して用いられる表板2及び裏板3を緩衝シート4を介して積層接着して成る床基板1の裏面に、その裏面に塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂シートが任意に用いられる防湿層7が設けられて成る弾性繊維マット8が積層され、表板2の表面に化粧合成樹脂シートが貼着された床板であって、
床板は、コンクリートに直貼りして用いられるものであって、
基板1において、裏板4を貫通する溝10が複数本幅方向に亙って刻設されてなる、
床板。」

(3)引用文献3
引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系基材に貼着する防湿シートおよびそれを用いた化粧シートおよびそれらからなる化粧板に関し、さらに詳しくは、環境温・湿度の変化による木質系基材の吸湿や放湿によって生じる反りを防止する機能を有する防湿シートおよびそれを用いた化粧シートおよびそれらからなる化粧板に関するものである。」

イ 「【0012】
本発明の防湿シートは、透湿度(JIS Z 0208)が2.0g/m^(2)・24hr以下であるために、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シートあるいは紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シートに比べて格段に優れた防湿性能を有し、また、本発明の防湿シートおよびそれを用いた化粧シートからなる化粧板は、ドア、引き戸、間仕切りなど、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、反りを生じることが殆どないという優れた効果を奏する。また、本発明の防湿シートおよびそれを用いた化粧シートからなる化粧板は、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合などに剥離する虞が殆どないという優れた効果を奏する。また、本発明の防湿シートおよびそれを用いた化粧シートからなる化粧板は、化粧板用基材の表面色や色むらを隠蔽して化粧シートの意匠性を損なうことがないという優れた効果を奏する。」

ウ 「【0014】
図1は本発明にかかる防湿シートの一実施例を図解的に示す層構成図であって、防湿シート1は着色された合成樹脂製基材層(以下、合成樹脂製着色基材層と呼称する)10の一方の面に蒸着層11と接着用プライマー層15とを形成したものである。なお、前記合成樹脂製着色基材層10の他方の面に、必要に応じて接着用プライマー層16(図4、5参照)を設けてもよいものである。なお、他方の面に接着用プライマー層16を設ける場合としては、たとえば、化粧板用基材の裏面に防湿シート1として本来の目的に使用する場合に設けるものであり、この防湿シート1を設けた化粧板を、たとえば、ドア、引き戸、間仕切りなどの芯材に貼着する際に、芯材と化粧板とを接着する接着剤の選択肢が広がり、貼着作業を容易なものとすることができるという効果を奏する。
【0015】
図2は本発明にかかる防湿シートを用いた化粧シートの第1実施形態を図解的に示す層構成図であって、化粧シート2は前記防湿シート1の前記合成樹脂製着色基材層10の表出面に印刷層17を設け、該印刷層17面全面に硬化型樹脂からなる表面保護層18を設けたものである。
【0016】
図3は本発明にかかる防湿シートを用いた化粧シートの第2実施形態を図解的に示す層構成図であって、化粧シート2’は前記防湿シート1の前記合成樹脂製着色基材層10の表出面に印刷層を設け、該印刷層17面全面に接着剤層12を介して合成樹脂製透明層13を設け、該合成樹脂製透明層13面全面に硬化型樹脂からなる表面保護層18を設けたものである。」

エ 「【0020】
次に、防湿シート1、化粧シート2,2’および化粧板3を構成する諸材料について説明する。まず、前記合成樹脂製着色基材層10としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン-プロピレン共重合体,エチレン-ビニルアルコール共重合体,あるいは、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等のエステル系熱可塑性樹脂、ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、あるいは、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記合成樹脂製着色基材層10は、一軸ないし二軸方向に延伸したシートであっても、未延伸であってもよいものである。着色剤としては、耐候性に優れる周知の顔料を適宜用いることができ、上記樹脂と顔料との混合方法はドライブレンドであっても、マスターバッチのいずれであってもよいが、ムラのない均一な着色基材層を得るという意味ではマスターバッチが好ましい。なお、前記合成樹脂製着色基材層10は、着色した透明、半透明あるいは不透明(隠蔽性がある)のいずれであってもよいものである。」

オ 上記アないしエからみて、引用文献3には、次の技術事項(以下「文献3技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「化粧板の木質系基材に貼着する防湿シートの透湿度(JIS Z 0208)を2.0g/m^(2)・24hr以下とすること。」


5 当審の判断
(1)引用発明1を主引用発明として検討
ア 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「化粧シート」、「合板、木削片板、木質繊維板、単板積層板を単独でまたは任意組み合わせ複合した床用基板1」、「防湿機能を有するシート状物3」、「直貼り床材」は、それらの機能及び構成からみて、それぞれ、本願発明の「化粧シート」、「木質板」、「防湿フィルム」、「床用化粧材」に相当する。
引用発明1の「クッション材2」と本願発明の「不織布クッション材」とは、「クッション材」で共通する。
引用発明1の「直貼り床材は、コンクリートスラブからなる床下地面に接着剤を塗布して施工するものである」ことは、本願発明の「前記床用化粧材は、コンクリートスラブ上に接着剤層を介して直貼りする用途に用いるものであ」ることに相当する。
引用発明1において、「防湿機能を有するシート状物3」は、「接着剤が浸透しないポリエチレン、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリスチレン等の合成樹脂及びゴムなどのシート状物、発泡シート状物を用いることができる」ものであって、かつ、該「シート状物3」の表裏両面に紙層が存在するとの特定もないことから、引用発明1の「防湿機能を有するシート状物3」は、本願発明の「防湿フィルム」と同様に、「表裏両面のいずれにも紙層を有さない」ものである。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
「化粧シートの裏面に、木質板、クッション材、及び防湿フィルムが順に積層されている床用化粧材であって、
(ii)前記床用化粧材は、コンクリートスラブ上に接着剤層を介して直貼りする用途に用いるものであり、
(iii)前記防湿フィルムは、表裏両面のいずれにも紙層を有さない、
床用化粧材。」で一致し、以下の2点で相違している。

〔相違点1〕クッション材が、本願発明は、不織布であるのに対し、引用発明1は、不織布との特定がない点。
〔相違点2〕防湿フィルムについて、本願発明は、温度40℃、湿度90%における透湿度が7g/m^(2)・24時間以下のものであるのに対し、引用発明1は、透湿度の特定がない点。

相違点の判断
上記相違点1及び2について検討する。
(ア)相違点1
特開2004-44315号公報(段落【0008】、【0010】)、特開2007-197982号公報(段落【0020】)及び特開2001-173214号公報(段落【0002】)に記載されているように、床用化粧材の裏面側に設けたクッション材を不織布とすることは、親出願の優先日前に建材業界において一般的に広く知られた周知慣用手段に過ぎないことから、該慣用手段に基づいて、引用発明1のクッション材2に不織布を採用することは、当業者が適宜なし得た設計上の微差程度のことである。

(イ)相違点2
防湿フィルムの透湿度については、設計上必要とされる値のものを用いることは、当業者が適宜選択し得る事項であって、引用文献3には、透湿シートの透湿度(JIS Z 0208)を2.0g/m^(2)・24hr以下とする文献3技術事項が記載されていることから、引用発明1の「防湿機能を有するシート状物3」の透湿度を文献3技術事項とすることにより、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 小活
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、文献3技術事項及び周知慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)引用発明2を主引用発明として検討
ア 対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「化粧合成樹脂シート」、「合板、繊維板、パーティクルボード、積層板、木板等から任意選択して用いられる表板2及び裏板3を緩衝シート4を介して積層接着して成る床基板1」、「塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂シートが任意に用いられる防湿層7」、「床板」は、それらの機能及び構成からみて、それぞれ、本願発明の「化粧シート」、「木質板」、「防湿フィルム」、「床用化粧材」に相当する。
引用文献2の「床板表面側からの衝撃は弾性繊維マット8に伝搬されてこれによって吸収されるものであり」(上記4(2)エ)との記載からみて、引用発明2の「弾性繊維マット8」は、クッション機能を備えているから、引用発明2の「弾性繊維マット8」と本願発明の「不織布クッション材」とは、「クッション材」で共通する。
引用発明2の「床板は、コンクリートに直貼りして用いられるものであ」ることは、本願発明の「前記床用化粧材は、コンクリートスラブ上に接着剤層を介して直貼りする用途に用いるものであ」ることに相当する。
引用発明2において、「防湿層7」は、「塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂シートが任意に用いられる」ものであって、かつ、「防湿層7」の表裏両面に紙層が存在するとの特定もないことから、引用発明2の「防湿層7」は、本願発明の「防湿フィルム」と同様に、「表裏両面のいずれにも紙層を有さない」ものである。

したがって、本願発明と引用発明2とは、
「化粧シートの裏面に、木質板、クッション材、及び防湿フィルムが順に積層されている床用化粧材であって、
(ii)前記床用化粧材は、コンクリートスラブ上に接着剤層を介して直貼りする用途に用いるものであり、
(iii)前記防湿フィルムは、表裏両面のいずれにも紙層を有さない、
床用化粧材。」で一致し、以下の2点で相違している。

〔相違点A〕クッション材が、本願発明は、不織布であるのに対し、引用発明2は、不織布との特定がない点。
〔相違点B〕防湿フィルムについて、本願発明は、温度40℃、湿度90%における透湿度が7g/m^(2)・24時間以下のものであるのに対し、引用発明2は、透湿度の特定がない点。

相違点の判断
上記相違点A及びBについて検討する。
(ア)相違点A
特開2004-44315号公報(段落【0008】、【0010】)、特開2007-197982号公報(段落【0020】)及び特開2001-173214号公報(段落【0002】)に記載されているように、床用化粧材の裏面側に設けたクッション材を不織布とすることは、親出願の優先日前に建材業界において一般的に広く知られた周知慣用手段に過ぎないことから、該慣用手段に基づいて、引用発明2の弾性繊維マット8の代わりに不織布を採用することは、当業者が適宜なし得た設計上の微差程度のことである。

(イ)相違点B
防湿フィルムの透湿度については、設計上必要とされる値のものを用いることは、当業者が適宜選択し得る事項であって、引用文献3には、透湿シートの透湿度(JIS Z 0208)を2.0g/m^(2)・24hr以下とする文献3技術事項が記載されていることから、引用発明2の「防湿層7」の透湿度を文献3技術事項とすることにより、上記相違点Bに係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 小活
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明2、文献3技術事項及び周知慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)請求人の主張について
平成31年4月24日付け意見書において、「主引例である引用発明1、2におけるクッション材層及び弾性繊維マットは、いずれも不織布とは異なる(もはや不織布とはいえない)材料であり、これらの引用発明1、2に、クッション材について開示のない引用文献3を如何に組み合わせても本願発明には想到し得ないものと確信します。」(3頁1?4行)と主張している。
しかしながら、上記(1)イ(ア)及び(2)イ(ア)で説示したように、クッション材として不織布を用いることは、慣用手段に過ぎないことから、引用発明1又は2に適用することに、何ら困難性はない。
そして、その効果についても、「また、これらの引用文献1?3からは不織布クッション材を用いることを必須とする本願発明の床用化粧材の優れた効果は予測する余地がないものと確信します。」(3頁4?6行)と主張しているが、その効果の内容について何ら主張されておらず、また発明の詳細な説明においても、クッション材として、不織布が例示されていたり、実施例として用いられているものの、その効果についての記載はない。
また、クッション材として不織布を用いることに顕著な効果を奏するものとも認められない。
よって、請求人の主張は採用できない。


6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1又は2に記載された発明、引用文献3に記載された技術事項及び周知慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-31 
結審通知日 2019-06-04 
審決日 2019-06-25 
出願番号 特願2016-146065(P2016-146065)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 油原 博  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
富士 春奈
発明の名称 床用化粧材  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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