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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1354026 |
審判番号 | 不服2017-18170 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-07 |
確定日 | 2019-08-30 |
事件の表示 | 特願2016-520217「スクリーンが保持されていることとスクリーンがタッチされていることとを区別する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月24日国際公開、WO2014/201648、平成28年 9月 8日国内公表、特表2016-527606、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)6月19日を国際出願日とする出願であって、平成28年5月20日付けで手続補正がされ、平成29年2月24日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年5月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成29年7月31日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成29年12月7日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成30年10月15日付けで拒絶理由通知(以下、当該拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)がされ、平成31年4月16日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年7月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (理由1)本願請求項1、8に係る発明は、以下の引用文献Bに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (理由2)本願請求項2-7、9-14に係る発明は、以下の引用文献A-Eに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.特開2012-014648号公報 B.特開2011-028603号公報 C.特開2013-088929号公報 D.特開2011-186941号公報 E.特開2006-146936号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1.本願請求項1-16に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2012-014648号公報(拒絶査定時の引用文献A) 2.特開2011-028603号公報(拒絶査定時の引用文献B) 3.特開2013-088929号公報(拒絶査定時の引用文献C) 4.特開2011-186941号公報(拒絶査定時の引用文献D) 5.特開2006-146936号公報(拒絶査定時の引用文献E) 6.特開2010-165174号公報(当審において新たに引用した文献) 第4 本願発明 本願請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成31年4月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 タッチ・スクリーンが使用可能な機器のフレームの少なくとも一部分の付近に配置されたタッチ・センサの有効化を電気的に検知することと、 前記有効化されたタッチ・センサが有効化された時に生じた前記機器のスクリーンのタッチが所定期間よりも短い場合、前記スクリーンのタッチを前記機器の機能を制御する意図のタッチとして解釈することと、 前記有効化されたタッチ・センサが有効化された時に生じた前記スクリーンのタッチが所定期間よりも長い場合、 前記有効化された時に生じた前記スクリーンのタッチについて、タッチ・スクリーン機能を無効化することと、 所定期間を超える前記スクリーンのタッチについて、有効化された前記タッチ・センサの付近に位置する前記スクリーンの少なくとも一部分のタッチ・スクリーン機能を無効化することと、 を含む、方法。」 また、本願発明2-14の概要は以下のとおりである。 本願発明2-6、13は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明7は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「装置」の発明である。 本願発明8-12、14は、本願発明7を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2012-014648号公報)には、図面とともに、以下の記載がある。 (1) 段落【0022】 「【0022】 入力無効領設定・解除部5は、所定の条件を満たす場合に、誤操作等を防止するために、タッチパネル2の一部に入力無効領域IAを設定する。例えば、入力無効領域設定・解除部5は、GUIまたはハードウェアのボタン(不図示)が押された場合に、入力無効領域IAを設定し、当該ボタンがもう一度押された場合に、入力無効領域IAの設定を解除することにしてもよい。また、例えば、タッチパネル2に、表示部3の有効表示領域に対応する検出領域と、当該第検出領域の周囲を囲い、意図しない指のタッチ(お手つき)を検出するための拡張領域とを設け、入力無効領域設定・解除部5は、拡張領域の座標入力を検出した場合に、当該検出された座標の周囲に存在する検出領域を、入力無効領域IAに設定することにしてもよい。また、入力無効領域設定・解除部5は、当該拡張領域の座標入力が無くなった場合に、入力無効領域IAを解除することにしてもよい。」 (2) 段落【0042】-【0043】 「【0042】 図7および図8に示すように、スレートPC10は、略長方体である筐体11に、回路基板12、表示部であるLCD13、およびタッチパネル2が収納されている。タッチパネル2は、筐体11の額縁11aと略同一平面上に配置されている。タッチパネル2は、ガラス基板に、透明導電体と、保護膜とが積層された構造となっている。 【0043】 タッチパネル2は、LCD13の有効表示領域よりも大きな検知領域を備えており、有効表示領域に対応した検知領域DA1と、検知領域DA1(LCD13の有効表示領域)の周囲を囲う拡張領域DA2とを備えている。検出領域DA1は、操作入力を行うための領域である。拡張領域DA2は、使用者の意図しない指のタッチ(お手つき)を検出するための領域である。この拡張領域DA2は、操作画面でないことを使用者に示すために、黒く印刷されていることが望ましい。使用者は、指でタッチパネル2の検出領域DA1を操作することで、キーボードやマウスによる操作と同じようにスレートPC1を操作することが可能となっている。」 よって、上記各記載事項を関連図面に照らせば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「 スレートPCの筐体の額縁と略同一平面上に配置されているタッチパネルに、表示部の有効表示領域に対応する検出領域と、当該検出領域の周囲を囲い、意図しない指のタッチ(お手つき)を検出するための拡張領域とを設け、この拡張領域は、操作画面でないことを示すために黒く印刷され、拡張領域の座標入力を検出した場合に、当該検出された座標の周囲に存在する検出領域を、入力無効領域に設定する、 方法。」 2.引用文献2について 当審拒絶理由に引用された引用文献2(特開2011-028603号公報)には、図面(特に、図6-7)とともに、段落【0045】に、以下の記載がある。 「【0045】 図7は、第2実施形態において携帯電話機のどの側面が持たれたかによってタッチ無効化領域TIが配設される位置を説明するための図である。なお、図示の例では、携帯電話機をビュースタイルとした場合を示している。 図7(1)は、携帯電話機(筐体)の下側面部が片手持ちされた場合で、下側タッチセンサ11によって筐体の下側面部が持たれたことが検出されると、タッチ無効化領域TIは、タッチスクリーンTSの下端部に確保される。図7(2)は、筐体の上側面部が片手持ちされた場合で、上側タッチセンサ11によって筐体の上側面部が持たれたことが検出されると、タッチ無効化領域TIは、タッチスクリーンTSの上端部に確保される。図7(3)は、筐体の右側面部が片手持ちされた場合で、右側タッチセンサ11によって筐体の右側面部が持たれたことが検出されると、タッチ無効化領域TIは、タッチスクリーンTSの右端部に確保される。図7(4)は、筐体の左側面部が片手持ちされた場合で、左側タッチセンサ11によって筐体の左側面部が持たれたことが検出されると、タッチ無効化領域TIは、タッチスクリーンTSの左端部に確保される。」 3.引用文献3について 当審拒絶理由に引用された引用文献3(特開2013-088929号公報)には、図面(特に、図8)とともに、段落【0057】-【0062】に、以下の記載がある。 「【0057】 次に、入力装置1の動作について説明する。 図8は入力装置1の動作例を示すフローチャートである。この動作を行う入力制御プログラムは、入力装置1内のROMに格納され、入力装置1内のCPUによって実行される。 【0058】 まず、座標取得部12が、タッチパネル11のセンサ出力に基づいて入力座標を取得する(ステップS11)。 【0059】 続いて、把持判定部13が、タッチパネル11のセンサ出力に基づいて、入力装置1がユーザにより把持されているかを判定する(ステップS12)。 【0060】 ステップS12において入力装置1の把持が検出されなかった場合、座標処理部15は、座標取得部12からの入力座標をそのまま制御部16へ出力する(ステップS13)。つまり、入力座標に対して無効化処理や補正処理などの特別な処理を行わない。なお、ここでは、入力無効領域D3および補正領域D2は形成されておらず、タッチパネル11の面全体にわたって、通常領域D1となっている。 【0061】 ステップS12において入力装置1の把持が検出された場合、座標処理部15は、各領域を形成する。つまり、タッチパネル11上に、通常領域D1、補正領域D2、および入力無効領域D3を形成する。そして、座標処理部15は、入力座標が入力無効領域D3内の座標であるか否かを判定する(ステップS14)。この入力座標は、例えば把持時に無意識にされた入力に相当する。 【0062】 ステップS14において入力座標が入力無効領域D3内の座標である場合には、座標処理部15は、入力座標を無効とする無効化処理を行う(ステップS15)。つまり、座標処理部15は、入力座標を制御部16へ出力せずに破棄する。」 4.引用文献4について 当審拒絶理由に引用された引用文献4(特開2011-186941号公報)には、図面(特に、図7)とともに、段落【0018】-【0029】に、以下の記載がある。 「【0018】 以下、図7を用いてタッチパネル制御SW112の処理を説明する。 まず、タッチパネル制御SW112は、タッチパネル制御HW111からのタッチ情報の通知を待つ(ステップS201)。タッチパネル制御SW112は、タッチパネル制御HW111からタッチ情報の通知を取得すると(ステップS202)、タッチ情報の内容を判定する(ステップS203)。以降の説明において、タッチパネル制御SW112は、タッチ情報が新規情報(開始情報)、移動情報または終了情報のいずれであるかを判定することとする。しかしながら、タッチパネル制御SW112は、異なる判定基準を採用してもよい。例えば、タッチパネル制御SW112は、タッチ情報が新規情報または終了情報のいずれであるかを判定してもよい。 【0019】 ステップS203においてタッチ情報が新規情報であると判定すると、タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブルに項目を追加する(ステップS204)。ここで、タッチ情報管理テーブルは、例えば図4に示されるものであり、記憶部113または他の記憶手段によって保持される。図4の例に関して、タッチ情報管理テーブルにおいて、各項目は番号(No)によって識別される。各項目は、新規情報の示すタッチ位置(例えば、x軸上の位置及びy軸上の位置)及び新規情報の取得時刻(タッチ開始時刻)を含む。この新規情報の取得時刻は、タッチパネル制御SW112がタイマーを参照して検知する。また、この新規情報の取得時刻からの経過時間(タッチ時間)もタッチ情報管理テーブル上で管理される。 【0020】 次に、タッチパネル制御SW112は、新規情報の示す位置(タッチ位置)が所定エリア内であるか否かを判定する(ステップS205)。ここで、所定エリアは、設計的または実験的に定められてよい。以降の説明では、ユーザが情報処理装置100を保持する場合に指が接触しやすいエリアを所定エリアとして想定している。故に、例えば、図3に示すように、タッチパネル110の縁付近が所定エリア130として定められる。また、所定エリアは、記憶部113または他の記憶手段によって保持されるエリア管理テーブル上で管理される。図5は、エリア管理テーブルの一例を示している。但し、所定エリアは、任意の形状であってよい。ステップS205において、新規情報の示す位置が所定エリア内であると判定されれば処理はステップS201に戻り、そうでなければ処理はステップS206に進む。 【0021】 ステップS206において、タッチパネル制御SW112は該当項目に関する未通知の情報を上位層120へ通知し、処理はステップS201に戻る。具体的には、処理がステップS205からステップS206へ遷移したのであれば、タッチ情報制御SW112は該当項目(新規情報に対応する項目)の新規情報を上位層120へ通知する。また、後述するように、処理がステップS207からステップS206へ遷移したのであれば、タッチ情報制御SW112は該当項目(移動情報に対応する項目)の移動情報を上位層120へ通知する。ここで、該当項目の新規情報が未通知である場合には、タッチ情報制御SW112は新規情報、移動情報の順に上位層120へ通知する。尚、タッチパネル制御SW112は、新規情報が通知済みであるか否かを参照するために、ステップS205における判定結果をタッチ情報管理テーブルに記録しておいてもよい。 【0022】 ステップS203においてタッチ情報が移動情報であると判定すると、タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブルに移動情報を記録し(ステップS207)、処理はステップS206に進む。具体的には、タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブル上の該当項目の移動量(例えば、x軸上の移動量及びy軸上の移動量)を更新する。 【0023】 ステップS203においてタッチ情報が終了情報であると判定すると、タッチパネル制御SW112は該当項目(終了情報に対応する項目)に対応する移動情報が存在するか否かを更に判定する(ステップS208)。例えば、タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブルを参照して判定を行う。対応する移動情報が存在すると判定されれば処理はステップS209に進み、そうでなければ処理はステップS210に進む。 【0024】 ステップS209において、タッチパネル制御SW112は該当項目に関する未通知の情報を上位層120へ通知し、処理はステップS212に進む。具体的には、タッチパネル制御SW112は、該当項目の終了情報を上位層120へ通知する。ここで、該当項目の新規情報が未通知である場合には、タッチパネル制御SW112は新規情報、終了情報の順に上位層120へ通知する。尚、タッチパネル制御SW112は、後述する学習などに使用する目的で、該当項目に関する情報が上位層120へ通知されたことを示すフラグをタッチ情報管理テーブル上に記録しておいてもよい。 【0025】 ステップS210において、タッチパネル制御SW112は終了情報の示す位置が所定エリア内であるか否かを判定する。尚、整合性の観点から、この所定エリアは、ステップS205における所定エリアと同一であることが望ましい。終了情報の示す位置が所定エリア内であれば処理はステップS211に進み、そうでなければ処理はステップS209に進む。 【0026】 ステップS211において、タッチパネル制御SW112は終了情報に対応する新規情報の取得時刻から終了情報の取得時刻までの経過時間がタイマー閾値以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー閾値以上であれば処理はステップS212に進み、そうでなければ処理はステップS209に進む。具体的には、タッチパネル制御SW112は、タッチ情報管理テーブルを参照して経過時間を取得し、タイマー閾値管理テーブルを参照してタイマー閾値を取得できる。タイマー閾値管理テーブルは、記憶部113または他の記憶手段によって保持され、タイマー閾値を管理する。タイマー閾値管理テーブルの一例を図6に示す。タイマー閾値は、設計的または実験的に定められてよく、例えばタッチパネル110に関して想定される通常のタッチ時間の上限よりも大きい値である。 【0027】 ステップS212において、タッチパネル制御SW112は該当項目(終了情報に対応する項目)をタッチ情報管理テーブルから削除し、処理はステップS201に戻る。 【0028】 以上のようなタッチパネル制御SW112の処理の技術的意義を説明する。 上記処理を通じて、タッチパネル制御SW112はタッチパネル110への入力情報を有効な入力情報(上位層120へ通知すべき入力情報、情報処理装置の動作に反映される入力情報とも解釈できる)と無効な入力情報(上位層120へ通知すべきでない入力情報、情報処理装置の動作に反映されない入力情報とも解釈できる)との間で弁別する。本実施形態は、無効な入力情報の一類型として、情報処理装置100を保持するときにタッチパネル110に指が接触したことによって発生する入力情報を想定している。この入力情報は、タッチ位置がタッチパネル110の縁付近に偏る、タッチ時間が長い、移動がない(または移動量が小さい)などの特徴を持ちやすいと予想される。タッチパネル制御SW112は、このような空間的特徴または時間的特徴を持つ入力情報を検出することにより、弁別を実現する。具体的には、上記処理において、タッチパネル制御SW112は、新規情報の示す位置が所定エリア内であれば、当該新規情報の上位層120への通知を保留している。そして、タッチパネル制御SW112は、該当項目に移動がないまま終了情報を取得すると、タッチ時間をタイマー閾値と比較する。タッチ時間がタイマー閾値以上であれば、該当項目は上記特徴を備えており、無効な入力情報である可能性が高い。故に、タッチパネル制御SW112は、該当項目に関する情報の上位層120への通知を省略し、意図しない処理の発生を予防する。 【0029】 尚、図7の処理は、無効な入力情報を弁別するためにタイマー閾値、所定エリア及び移動情報を利用しているが、これらの一部のみが利用されてもよいし、その他の評価基準が導入されてもよい。」 5.引用文献5について 当審拒絶理由に引用された引用文献5(特開2006-146936号公報)には、図面(特に、図8)とともに、段落【0037】に、以下の記載がある。 「【0037】 図8は、本発明による非スタイラス入力を処理するために行われる具体的なステップを示す流れ図である。まず、ステップ801において、タッチセンシティブ装置165への非スタイラス入力は、タッチセンシティブ装置165によって検出される。この非スタイラス入力は、ユーザーの手、指、又はスタイラス166以外の他のオブジェクトであってもよい。ステップ802において、タッチセンシティブ装置165はスタイラス166が近接ゾーン207の内側にあるかどうかを感知する。これは、スタイラス166の距離及び/又は横位置を検出し、スタイラス166の距離及び/又は横位置が近接ゾーン207の内側にあるかどうかを判定することによって行うことができる。代替として、これは単に、スタイラス166の存在を検出することによって行うこともできる。そのような場合、単に検出されたスタイラス166の存在は、スタイラス166が近接ゾーン207の内側にあることを示している。スタイラス166が近接ゾーン207の内側にないことが判定された場合、タッチセンシティブ装置165又はコンピュータはステップ803において、ユーザーがスタイラス166を使用して最後に電子インクで書き込んだ後あらかじめ決められた時間が経過したかどうかを判定する。代替として、スタイラス166が最後にタッチセンシティブ表面205に接触した後あらかじめ決められた時間が経過したかどうか判定することもできる。さらにもう1つの代替として、スタイラス166が直前に近接ゾーン207から出た後あらかじめ決められた時間が経過したかどうか判定することもてきる。ステップ803の理由は、ユーザーがスタイラス166で書き込む間に発生する可能性のあるスタイラスを自然に持ち上げる動作を考慮することにある。ユーザーが、単語の間及び行の間に短時間スタイラス166を持ち上げることが予想される。したがって、スタイラス166が持ち上げられるこの短時間にユーザーの意図しない非スタイラス入力が不適切に受け入れられてしまう確率を低減するため、非スタイラス入力が正常に再び受け入れられるまでに時間遅延を導入することができる。時間遅延は任意の長さにすることができるが、書き込まれる単語と行の間にユーザーがスタイラスを一時的に持ち上げると予想される時間の量と一致する長さにすることが好ましい。たとえば、時間遅延は1秒未満、又は約1秒、あるいは1秒よりも長くてもよい。」 6.引用文献6について 当審拒絶理由に引用された引用文献6(特開2010-165174号公報)には、図面とともに、段落【0060】に、以下の記載がある。 「【0060】 タッチ入力領域14aを不感状態に設定した場合、位置情報の逐次変化が検出されない状態になったとき、又は、不感状態に設定してから所定時間経過したとき、不感状態の設定の解除を行なうか判定する(ステップS24)。不感状態の設定の解除を行なわない場合、引き続き、タッチ入力領域14aの設定を不感状態に維持する。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「スレートPC」は、そのタッチパネルに、表示部の有効表示領域に対応する検出領域を設けるものであるから、本願発明1における「タッチ・スクリーンが使用可能な機器」に相当する。 また、引用発明において「拡張領域の座標入力を検出」することは、タッチパネルによって使用者の意図しない指のタッチ(お手つき)を検出するものであり、ここでの検出は電気的に行われるものであるから、本願発明1において「タッチ・センサの有効化を電気的に検知」することに対応し、本願発明1と引用発明とは、「タッチ・スクリーンが使用可能な機器において、タッチ・センサの有効化を電気的に検知」することを含む点で一致する。 イ 引用発明における「検出領域」は、表示部の有効表示領域に対応するものであるから、本願発明1における「スクリーン」に相当し、引用発明において「検出された座標の周囲に存在する検出領域を、入力無効領域に設定」することは、検出された座標の周囲の検出領域の一部分を入力無効領域に設定するものであるから(図7を参照。)、本願発明1において「有効化された前記タッチ・センサの付近に位置する」前記機器の「スクリーンの少なくとも一部分のタッチ・スクリーン機能を無効化」することに相当し、このことを含む点で、本願発明1と引用発明とは一致する。 よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりであるといえる。 [一致点] 「 タッチ・スクリーンが使用可能な機器において、 タッチ・センサの有効化を電気的に検知することと、 有効化されたタッチ・センサの付近に位置する前記機器のスクリーンの少なくとも一部分のタッチ・スクリーン機能を無効化することと、 を含む、方法。」 [相違点1] 「タッチ・センサ」が、本願発明1では、「機器のフレームの少なくとも一部分の付近に配置された」ものであるのに対して、引用発明では、検出領域の周囲を囲う拡張領域に配置されている点。 [相違点2] 本願発明1は、 「 前記有効化されたタッチ・センサが有効化された時に生じた前記機器のスクリーンのタッチが所定期間よりも短い場合、前記スクリーンのタッチを前記機器の機能を制御する意図のタッチとして解釈することと、 前記有効化されたタッチ・センサが有効化された時に生じた前記スクリーンのタッチが所定期間よりも長い場合、 前記有効化された時に生じた前記スクリーンのタッチについて、タッチ・スクリーン機能を無効化することと、 所定期間を超える前記スクリーンのタッチについて、有効化された前記タッチ・センサの付近に位置する前記スクリーンの少なくとも一部分のタッチ・スクリーン機能を無効化することと、」を含むのに対して、 引用発明は、「前記有効化されたタッチ・センサが有効化された時に生じた前記機器のスクリーンのタッチが所定期間よりも短い場合、前記スクリーンのタッチを前記機器の機能を制御する意図のタッチとして解釈」し、「所定期間よりも長い場合、前記有効化された時に生じた前記スクリーンのタッチについて、タッチ・スクリーン機能を無効化する」ものではなく、単に「有効化されたタッチ・センサの付近に位置する前記機器のスクリーンの少なくとも一部分のタッチ・スクリーン機能を無効化する」のみである点。 (2) 相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 ア 引用文献3(上記「第5」の3.)には、入力装置がユーザにより把持されたことが検出されたとき、タッチパネル上に入力無効領域を形成し、入力座標が当該入力無効領域内であったときは、把持時に無意識にされた入力として当該入力座標を廃棄することが記載されている。 しかし、引用発明に、引用文献3に記載された技術を適用したとしても、把持時に無意識にされた入力を一律無効化するという構成にとどまり、有効化されたタッチ・センサが有効化された時に生じた機器のスクリーンのタッチが、所定期間よりも短い場合、スクリーンのタッチを機器の機能を制御する意図のタッチとして解釈し、所定期間よりも長い場合、有効化された時に生じたスクリーンのタッチについて、タッチ・スクリーン機能を無効化すること、すなわち、本願発明1の上記相違点2に係る構成に到達し得ない。 イ また、例えば、引用文献4(上記「第5」の4.)に記載されるように、ユーザが情報処理装置を保持する場合に、指が接触しやすい所定エリアへのタッチ時間が閾値以上であれば、無効な入力情報と判断するようにすることは、周知・慣用技術であるものの、有効化されたタッチ・センサが有効化された時に生じた機器のスクリーンのタッチが、所定期間よりも長いか否かで、入力情報の有効/無効を判断することまで周知技術であったとは認められない。 そうしてみると、有効化されたタッチ・センサが有効化された時に生じた機器のスクリーンのタッチが、所定期間よりも短い場合、スクリーンのタッチを機器の機能を制御する意図のタッチとして解釈し、所定期間よりも長い場合、有効化された時に生じたスクリーンのタッチについて、タッチ・スクリーン機能を無効化すること、すなわち、本願発明1の上記相違点2に係る構成は、引用文献1-6のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、周知技術であるともいえないから、上記相違点2は、当業者が容易に想到できたものとはいえない。 したがって、本願発明1は、上記相違点1を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献1-6に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2-14について 上記「第4」のとおり、本願発明2-6、13は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明7は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「装置」の発明であり、本願発明8-12、14は、本願発明7を減縮した発明であって、本願発明1の上記相違点2に係る構成と実質的に同一の構成を備えるものである。 よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-14も、当業者であっても、引用発明、引用文献1-6に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定についての判断 平成31年4月16日付けの手続補正で補正された請求項1-14は、上記「第6」のとおり、本願発明1の上記相違点2に係る構成を備えるものであり、当該構成は、原査定における引用文献A-Eには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-14は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Eに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-08-20 |
出願番号 | 特願2016-520217(P2016-520217) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 塩屋 雅弘 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
白井 亮 稲葉 和生 |
発明の名称 | スクリーンが保持されていることとスクリーンがタッチされていることとを区別する方法及び装置 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 阿部 豊隆 |