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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1354042
審判番号 不服2018-15255  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-16 
確定日 2019-08-05 
事件の表示 特願2013-215770号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日出願公開、特開2015- 77238号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月16日の出願であって、平成28年10月17日に手続補正書が提出され、平成29年7月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月5日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年3月23日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月9日付け(発送日:同年8月20日)で、同年3月23日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年11月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年11月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年11月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
遊技者の操作に応じて、遊技球が流下可能な遊技領域に遊技球を発射する発射手段と、
前記遊技領域に設けられる第1始動口又は第2始動口に遊技球が入球することにより、特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と、
前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された場合、前記遊技領域に設けられて所定領域が内部に設けられてなる特別入賞口を開閉させる所定のラウンド遊技を含むラウンド遊技を実行して、当該特別入賞口に遊技球を入球可能にさせる特別遊技を行う特別遊技実行手段と、
前記特別遊技実行手段により前記特別遊技が行われているときに前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過することを条件に、当該特別遊技の終了後、遊技状態を遊技者にとって有利な遊技状態に移行させる遊技状態制御手段と、
前記発射手段により遊技球を発射すべきことを報知する報知手段と、
前記特別入賞口の閉鎖期間に、当該特別入賞口への遊技球の入球を判定する判定手段と、
前記判定手段にて前記特別入賞口への遊技球の入球が判定されると、異常入賞エラーとしてエラー出力を行うエラー出力手段と、を備え、
前記特別遊技実行手段は、
前記特別遊技判定手段により第1特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し易い開閉制御を行う当該第1特別遊技を行い、
前記特別遊技判定手段により第2特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し難い開閉制御を行う当該第2特別遊技を行い、
前記報知手段は、
前記第1特別遊技及び第2特別遊技における最初のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第1報知を行い、
前記第1特別遊技における所定のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第2報知を行い、
前記第1報知及び第2報知は、何れも前記遊技領域において発光して遊技球を発射すべき方向を報知するものとされ、且つ、前記第2報知は、前記第1始動口の入賞による大当たりよりも前記第2始動口の入賞による大当たりのほうが実行される割合が高いこと
を特徴とする遊技機。」
から、
「【請求項1】
A 遊技者の操作に応じて、遊技球が流下可能な遊技領域に遊技球を発射する発射手段と、
B 前記遊技領域に設けられる第1始動口又は第2始動口に遊技球が入球することにより、特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と、
C 前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された場合、前記遊技領域に設けられて所定領域が内部に設けられてなる特別入賞口を開閉させる所定のラウンド遊技を含むラウンド遊技を実行して、当該特別入賞口に遊技球を入球可能にさせる特別遊技を行う特別遊技実行手段と、
D 前記特別遊技実行手段により前記特別遊技が行われているときに前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過することを条件に、当該特別遊技の終了後、遊技状態を遊技者にとって有利な遊技状態に移行させる遊技状態制御手段と、
E 前記発射手段により遊技球を発射すべきことを報知する報知手段と、
F 前記特別入賞口の閉鎖期間に、当該特別入賞口への遊技球の入球を判定する判定手段と、
G 前記判定手段にて前記特別入賞口への遊技球の入球が判定されると、異常入賞エラーとしてエラー出力を行うエラー出力手段と、を備え、
H 前記特別遊技実行手段は、
H1 前記特別遊技判定手段により第1特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し易い開閉制御を行う当該第1特別遊技を行い、
H2 前記特別遊技判定手段により第2特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し難い開閉制御を行う当該第2特別遊技を行い、
I 前記報知手段は、
I1 前記第1特別遊技及び第2特別遊技における最初のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第1報知を行い、
I2 前記第1特別遊技における所定のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第2報知を行い、
J 前記第1報知及び第2報知は、何れも前記遊技領域における各種の演出に用いられる盤ランプを発光し、且つ、他のランプを発光し、それら盤ランプ及び他のランプの発光を組み合わせて遊技球を発射すべき方向を報知するものとされ、且つ、前記第2報知は、前記第1始動口の入賞による大当たりよりも前記第2始動口の入賞による大当たりのほうが実行される割合が高いこと
を特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。また、当審においてA?Jに分説した。)。

2 補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1報知及び第2報知」に関して、「何れも前記遊技領域における各種の演出に用いられる盤ランプを発光し、且つ、他のランプを発光し、それら盤ランプ及び他のランプの発光を組み合わせて遊技球を発射すべき方向を報知するもの」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における段落【0234】、【0242】、図8、9等の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2013-94570号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした特許文献1?特許文献3に記載の技術を組み合わせた場合には、可変入賞装置に遊技媒体が進入したか否かにかかわらず、同一の演出が実行される。そのため、演出内容が単調なものとなり、遊技の興趣が低下するおそれがあった。
【0007】
この発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、遊技媒体の進入に応じた好適な演出により遊技の興趣を向上させることを目的とする。」

(1-b)「【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(遊技機)1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤(ゲージ盤)と、遊技盤を支持固定する遊技機用枠(台枠)3とから構成されている。遊技盤には、ガイドレールによって囲まれた、ほぼ円形状の遊技領域2が形成されている。この遊技領域2には、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれる。」

(1-c)「【0025】
遊技盤の盤面上に形成された遊技領域2には、画像表示装置5の天辺よりも左側の左遊技領域2A(第1遊技領域)と、右側の右遊技領域2B(第2遊技領域)とがある。第1遊技領域である左遊技領域2Aと、第2遊技領域である右遊技領域2Bは、例えば遊技領域2の内部における画像表示装置5の端面や釘の配列PLなどにより区分けされていればよい。打球発射装置から発射されて遊技領域2に打ち込まれた遊技球は、第1遊技領域である左遊技領域2Aへと誘導された場合に、例えば釘の配列PLに沿って誘導されることにより、第2遊技領域である右遊技領域2Bへと誘導不可能または誘導困難となる。
【0026】
左遊技領域2Aには、普通入賞球装置6Aが設けられている。例えば普通入賞球装置6Aは、画像表示装置5の中央下方に設けられている。普通入賞球装置6Aは、例えば所定の玉受部材によって常に一定の開放状態に保たれる第1始動入賞口を形成する。このように、左遊技領域2Aには、常時遊技球が進入(通過)可能な第1始動入賞口を形成する普通入賞球装置6Aが設けられている。
【0027】
右遊技領域2Bには、普通可変入賞球装置6Bと通過ゲート41とが設けられている。例えば普通可変入賞球装置6Bは、画像表示装置5の右側方に設けられ、通過ゲート41は、普通可変入賞球装置6Bの上方に設けられている。普通可変入賞球装置6Bは、図5に示す普通電動役物用のソレノイド81によって垂直位置となる閉鎖状態と傾動位置となる開放状態とに変化する一対の可動翼片を有する電動チューリップ型役物(普通電動役物)を備え、第2始動入賞口を形成する。一例として、普通可変入賞球装置6Bでは、普通電動役物用のソレノイド81がオフ状態であるときに可動翼片が垂直位置となることにより、第2始動入賞口を遊技球が通過(進入)しない閉鎖状態にする。その一方で、普通可変入賞球装置6Bでは、普通電動役物用のソレノイド81がオン状態であるときに可動翼片が傾動位置となることにより、第2始動入賞口を遊技球が通過(進入)できる開放状態にする。なお、普通可変入賞球装置6Bは、ソレノイド81がオフ状態であるときに通常開放状態となり、第2始動入賞口を遊技球が進入(通過)できる一方、ソレノイド81がオン状態であるときの拡大開放状態よりも遊技球が進入(通過)しにくいように構成してもよい。このように、右遊技領域2Bには、第2始動入賞口を遊技球が通過(進入)可能な第1可変状態と、遊技球が通過(進入)不可能または通過(進入)困難な第2可変状態とに変化可能な普通可変入賞球装置6Bが設けられている」

(1-d)「【0030】
普通可変入賞球装置6Bの下方には、2つの特別可変入賞球装置7A、7Bが設けられている。すなわち、特別可変入賞球装置7A、7Bは、第2遊技領域となる右遊技領域2Bに設けられている。
【0031】
特別可変入賞球装置7Aは、図5に示す上大入賞口扉用のソレノイド82Aによって開閉駆動される上大入賞口扉を備え、その上大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する上大入賞口を形成する。一例として、特別可変入賞球装置7Aでは、上大入賞口扉用のソレノイド82Aがオフ状態であるときに上大入賞口扉が上大入賞口を閉鎖状態にする。その一方で、特別可変入賞球装置7Aでは、上大入賞口扉用のソレノイド82Aがオン状態であるときに上大入賞口扉が上大入賞口を開放状態にする。特別可変入賞球装置7Aに形成された上大入賞口に進入した遊技球は、例えば図5に示す上大入賞口スイッチ23Aによって検出される。
【0032】
特別可変入賞球装置7Bは、図5に示す下大入賞口扉用のソレノイド82Bによって開閉駆動される下大入賞口扉を備え、その下大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する下大入賞口を形成する。一例として、特別可変入賞球装置7Aでは、下大入賞口扉用のソレノイド82Aがオフ状態であるときに下大入賞口扉が下大入賞口を閉鎖状態にする。その一方で、特別可変入賞球装置7Aでは、下大入賞口扉用のソレノイド82Aがオン状態であるときに下大入賞口扉が下大入賞口を開放状態にする。特別可変入賞球装置7Aに形成された下大入賞口に進入した遊技球は、例えば図5に示す下大入賞口スイッチ23Bや特定領域スイッチ24によって検出される。」

(1-e)「【0080】
この実施の形態では、大当り遊技状態におけるラウンド遊技の実行回数が特定回数としての「15」となったときに、下大入賞口を開放状態とするラウンド遊技が実行されて特別可変入賞球装置7Bが遊技者にとって有利な第1状態となる。一方、ラウンド遊技の実行回数が特定回数としての「15」以外であるときには、上大入賞口を開放状態とするラウンド遊技が実行されて特別可変入賞球装置7Aが遊技者にとって有利な第1状態となる。そして、下大入賞口に進入した遊技球が図5に示す特定領域スイッチ24によって検出されることで、大当り遊技状態の終了後に確変状態となるための確変制御条件が成立する。すなわち、特定領域スイッチ24の設置箇所を特定領域とし、この特定領域を遊技球が通過したことに基づいて、所定の確変制御条件を成立させることができる。
・・・
【0083】
主基板11では、所定の電源基板からの電力供給が開始されると、遊技制御用マイクロコンピュータ100が起動し、CPU103によって遊技制御メイン処理となる所定の処理が実行される。遊技制御メイン処理を開始すると、CPU103は、割込み禁止に設定した後、必要な初期設定を行う。この初期設定では、例えばRAM101がクリアされる。また、遊技制御用マイクロコンピュータ100に内蔵されたCTC(カウンタ/タイマ回路)のレジスタ設定を行う。これにより、以後、所定時間(例えば、2ミリ秒)ごとにCTCから割込み要求信号がCPU103へ送出され、CPU103は定期的にタイマ割込み処理を実行することができる。初期設定が終了すると、割込みを許可した後、ループ処理に入る。なお、遊技制御メイン処理では、パチンコ遊技機1の内部状態を前回の電力供給停止時における状態に復帰させるための処理を実行してから、ループ処理に入るよう
にしてもよい。
・・・
【0088】
図6は、特別図柄プロセス処理の一例を示すフローチャートである。この特別図柄プロセス処理において、CPU103は、まず、始動入賞判定処理を実行する(ステップS101)。始動入賞判定処理では、第1始動口スイッチ22Aや第2始動口スイッチ22Bがオンであるか否かが判定される。このとき、第1始動口スイッチ22Aがオンであれば、普通入賞球装置6Aに形成された第1始動入賞口を遊技球が通過(進入)したことに基づいて、第1特図を用いた特図ゲームの保留記憶数である第1特図保留記憶数を更新するための第1始動入賞処理が行われる。一方、第2始動口スイッチ22Bがオンであれば、普通可変入賞球装置6Bに形成された第2始動入賞口を遊技球が通過(進入)したことに基づいて、第2特図を用いた特図ゲームの保留記憶数である第2特図保留記憶数を更新するための第2始動入賞処理が行われる。
【0089】
一例として、第1始動入賞処理では、第1特図保留記憶数が所定の上限値(例えば「4」)となっているか否かを判定する。このとき第1特図保留記憶数が上限値に達していれば、第1始動入賞処理を終了する。一方、第1特図保留記憶数が上限値未満であれば、RAM102の所定領域(例えば遊技制御カウンタ設定部)に設けられた第1保留記憶数カウンタの格納値である第1保留記憶数カウント値を1加算する。こうして、第1保留記憶数カウント値は、第1始動入賞口を遊技球が通過(進入)して第1特図を用いた特図ゲームに対応した第1始動条件が成立したときに、1増加(インクリメント)するように更新される。その後、始動入賞の発生に対応した所定の遊技用乱数を抽出して、RAM102の所定領域(例えば第1特図保留記憶部)に保留データとして記憶させる。
【0090】
第2始動入賞処理では、第2特図保留記憶数が所定の上限値(例えば「4」)となっているか否かを判定する。このとき第2特図保留記憶数が上限値に達していれば、第2始動入賞処理を終了する。一方、第2特図保留記憶数が上限値未満であれば、RAM102の所定領域(例えば遊技制御カウンタ設定部)に設けられた第2保留記憶数カウンタの格納値である第2保留記憶数カウント値を1加算する。こうして、第2保留記憶数カウント値は、第2始動入賞口を遊技球が通過(進入)して第2特図を用いた特図ゲームに対応した第2始動条件が成立したときに、1増加(インクリメント)するように更新される。その後、始動入賞の発生に対応した所定の遊技用乱数を抽出して、RAM102の所定領域(例えば第2特図保留記憶部)に保留データとして記憶させる。
【0091】
ステップS101にて始動入賞判定処理を実行した後、CPU103は、RAM102の所定領域(例えば遊技制御フラグ設定部)に設けられた特図プロセスフラグの値に応じて、ステップS110?S117の処理のいずれかを選択して実行する。
【0092】
ステップS110の特別図柄通常処理は、特図プロセスフラグの値が“0”のときに実行される。この特別図柄通常処理では、第1特図保留記憶部や第2特図保留記憶部といった、RAM102の所定領域に記憶されている保留データの有無などに基づいて、第1特別図柄表示装置4Aや第2特別図柄表示装置4Bによる特図ゲームを開始するか否かの判定が行われる。また、特別図柄通常処理では、特図表示結果決定用の乱数値MR1を示す数値データに基づき、特別図柄や飾り図柄の可変表示結果を「大当り」とするか否かを、その可変表示結果が導出表示される以前に決定(事前決定)する。さらに、特別図柄通常処理では、特図ゲームにおける特別図柄の可変表示結果に対応して、第1特別図柄表示装置4Aや第2特別図柄表示装置4Bによる特図ゲームにおける確定特別図柄(大当り図柄やハズレ図柄のいずれか)が設定される。特別図柄通常処理では、特別図柄や飾り図柄の可変表示結果を事前決定したときに、特図プロセスフラグの値が“1”に更新される。」

(1-f)「【0134】
図12は、大当り開放中処理として、図6のステップS115にて実行される処理の一例を示すフローチャートである。図12に示す大当り開放中処理において、CPU103は、まず、大入賞口開放上限時間が経過したか否かを判定する(ステップS311)。このとき、大入賞口開放上限時間が経過していなければ(ステップS311;No)、上大入賞口スイッチ23Aと下大入賞口スイッチ23Bのうちで、遊技球の検出が有効な大入賞口スイッチから伝送された検出信号がオン状態となったか否かを判定する(ステップS312)。例えば、ラウンドカウント値が「1」?「14」のいずれかであるときには、上大入賞口スイッチ23Aによる遊技球の検出が有効となることから、ステップS312の処理では、上大入賞口スイッチ23Aから伝送された検出信号がオン状態となったか否かを判定する。一方、ラウンドカウント値が「15」であるときには、下大入賞口スイッチ23Bによる遊技球の検出が有効となることから、ステップS312の処理では、下大入賞口スイッチ23Bから伝送された検出信号がオン状態となったか否かを判定する。
・・・
【0140】
この実施の形態では、大当り種別が「大当りA」であるか「大当りB」であるかにかかわらず、大当り遊技状態におけるラウンド遊技の実行回数が「1」(第1ラウンド)?「14」(第14ラウンド)のいずれかである場合には、特別可変入賞球装置7Aに形成された上大入賞口を開放状態とするラウンド遊技が実行され、ラウンド遊技の実行回数が「15」(第15ラウンド)である場合には、特別可変入賞球装置7Bに形成された下大入賞口を開放状態とするラウンド遊技が実行される。一方、大当り種別が「大当りA」であるか「大当りB」であるかに応じて、ラウンド遊技の実行回数が「15」となる第15ラウンドにて下大入賞口を開放状態とする上限時間(大入賞口開放上限時間)を、異ならせるように設定する。より具体的には、大当り種別が「大当りA」の場合には、第15ラウンドでも第1ラウンド?第14ラウンドの場合と同様に、大入賞口開放上限時間が29.5秒に設定される。これに対して、大当り種別が「大当りB」の場合には、第15ラウンドにおける大入賞口開放上限時間として、第1ラウンド?第14ラウンドよりも短い2.0秒が設定される。
【0141】
図13は、大当り遊技状態におけるラウンド遊技の実行例を示す説明図である。図13(A1)および(A2)は、大当り種別が「大当りA」に決定されたことに基づくラウンド遊技の実行例を示している。図13(B1)および(B2)は、大当り種別が「大当りB」に決定されたことに基づくラウンド遊技の実行例を示している。図13(A1)および(B1)に示すように、ラウンド遊技の実行回数が「1」?「14」である第1ラウンド(1R)?第14ラウンド(14R)では、特別可変入賞球装置7Aに形成された上大入賞口を開放状態とするラウンド遊技が実行される。一方、図13(A2)および(B2)に示すように、ラウンド遊技の実行回数が「15」である第15ラウンド(15R)では、特別可変入賞球装置7Bに形成された下大入賞口を開放状態とするラウンド遊技が実行される。この第15ラウンドにて下大入賞口を開放状態とする上限時間は、図10に示すステップS297の処理で図11(B)に示すような決定が行われることにより、大当り種別が「大当りB」である場合に、大当り種別が「大当りA」である場合よりも短い時間(2.0秒)となる。したがって、大当り種別が「大当りB」である場合には、下大入賞口に遊技球を進入させることが困難であり、確変制御条件が成立しにくい。こうして、ラウンド遊技の実行回数が特定回数である「15」となったときに、下大入賞口の変化態様に応じて確変制御条件の成立しやすさを異ならせて、特定回数のラウンド遊技に対する遊技者の興味を高めることができる。」

(1-g)「【0166】
ステップS175の大当り中演出処理は、演出プロセスフラグの値が“5”のときに実行される処理である。この大当り中演出処理において、演出制御用CPU120は、例えば大当り遊技状態における演出内容に対応した演出制御パターン等を設定し、その設定内容に基づく演出画像を画像表示装置5の画面上に表示させることや、音声制御基板13に対する指令(効果音信号)の出力によりスピーカ8L、8Rから音声や効果音を出力させること、ランプ制御基板14に対する指令(電飾信号)の出力により遊技効果ランプ9や装飾用LEDを点灯/消灯/点滅させることといった、大当り遊技状態における各種の演出制御を実行する。また、大当り中演出処理では、例えば主基板11から伝送される大当り終了指定コマンドを受信したことなどに対応して、演出制御プロセスフラグの値が“6”に更新される。
・・・
【0169】
ステップS502にて第15ラウンドの実行中ではないと判定された場合には(ステップS502;No)、第1指示報知演出を実行するための演出動作制御を行った後(ステップS503)、大当り中演出処理を終了する。例えば、ステップS503の処理では、第1指示報知演出を実行するために予め用意された演出制御パターンなどから読み出した演出制御実行データ(例えば表示制御データ、音声制御データ、ランプ制御データあるいは可動部材制御データの一部または全部など)に応じて、所定の演出態様による第1指示報知演出を実行するために、各種指令を作成して表示制御部123や音声制御基板13、ランプ制御基板14などに対して伝送させればよい。これにより、例えば図18(A)に示すような演出画像を画像表示装置5の表示領域に表示させることといった、第1指示報知演出が実行される。
【0170】
図18(A)に示す演出画像は、特別可変入賞球装置7Aに形成された上大入賞口が開放状態となる(遊技球が進入しても確変制御条件が成立しない)ことに対応して、「ノーマルアタッカー開放!!」というメッセージを報知する文字画像MM1や、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージや右向き矢印を示す指示報知画像AR1を、含んでいる。指示報知画像AR1は、第1指示報知演出に対応して予め定められた表示態様(例えば青色の文字色や白色の背景色、無地の模様の一部または全部など)で表示されればよい。
【0171】
ステップS502にて第15ラウンドの実行中であると判定された場合には(ステップS502;Yes)、第2指示報知演出を実行するための演出動作制御を行った後(ステップS504)、大当り中演出処理を終了する。例えば、ステップS504の処理では、第2指示報知演出を実行するために予め用意された演出制御パターンなどから読み出した演出制御実行データに応じて、第1指示報知演出とは異なる演出態様で第2指示報知演出を実行するために、各種指令を作成して表示制御部123や音声制御基板13、ランプ制御基板14などに対して伝送させればよい。これにより、例えば図18(B)に示すような演出画像を画像表示装置5の表示領域に表示させることといった、第2指示報知演出が実行される。
【0172】
図18(B)に示す演出画像は、特別可変入賞球装置7Bに形成された下大入賞口が開放状態となる(遊技球が進入すれば確変制御条件が成立する)ことに対応して、「スペシャルアタッカー開放!!」というメッセージを報知する文字画像MM2や、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージや右向き矢印を示す指示報知画像AR2を、含んでいる。指示報知画像AR2は、第2指示報知演出に対応して、図18(A)に示す指示報知画像AR1とは異なる表示態様(例えば赤色の文字色や金色の背景色、サクラ柄の模様の一部または全部など)で表示されればよい。加えて、図18(B)に示す演出画像は、図18(A)に示す第1指示報知演出における演出画像とは異なり、所定のキャラクタ画像CS1を含んでいる。
・・・
【0174】
なお、第1指示報知演出と第2指示報知演出とでは、画像表示装置5の表示領域に表示される任意の演出画像(キャラクタ画像、文字画像、背景画像などの種類、表示色、大きさ、表示時間といった表示内容の一部または全部)を相違させることにより、それぞれの演出態様を異ならせればよい。また、演出画像の相違により演出態様を異ならせるものに限定されず、例えばスピーカ8L、8Rから出力される効果音の出力態様、遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった発光体の点灯態様(点灯色、点灯強度、点灯時間、点灯回数などの一部または全部)、演出用に設けられた可動部材の動作態様(動作速度、動作距離、動作方向などの一部または全部)など、任意の演出動作を相違させることにより、演出態様を異ならせることができればよい。
【0175】
ステップS504の処理では、第15ラウンドにおける下大入賞口が開放状態となる上限時間(大入賞口開放上限時間)に応じて、第2指示報知演出における演出態様を異ならせるための演出動作制御が行われてもよい。例えば、演出制御用CPU120は、主基板11から伝送された大当り開始指定コマンドに含まれる情報(EXTデータ)などに基づいて、大当り種別が「大当りA」であるか「大当りB」であるかを特定する。この特定結果に応じて、ステップS504の処理では、異なる演出制御パターンによる演出動作制御が行われる。これにより、例えば大当り種別が「大当りB」に対応して第15ラウンドにおける下大入賞口の大入賞口開放上限時間が比較的に短い時間(2.0秒)となる場合には、大当り種別が「大当りA」に対応して第15ラウンドにおける下大入賞口の大入賞口開放上限時間が比較的に長い時間(29.5秒)となる場合と比べて、演出画像の表示などを異ならせてもよい。より具体的には、大当り種別が「大当りB」に対応して下大入賞口が2.0秒にわたり開放状態となる場合には、メッセージを報知する文字画像MM2を大当り種別が「大当りA」の場合よりも派手なものにすること、あるいは、下大入賞口が開放状態となるまでの待ち時間をカウントダウン表示することにより、演出態様を異ならせてもよい。」

上記(1-a)?(1-g)の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「a 遊技球を発射して遊技領域2に打ち込む打球発射装置と(段落【0015】)、
b 前記遊技領域2に設けられる第1始動入賞口又は第2始動入賞口を遊技球が通過したことに基づいて第1始動入賞処理又は第2始動入賞処理を実行した後、特別図柄や飾り図柄の可変表示結果を「大当り」とするか否かを、その可変表示結果が導出表示される以前に決定(事前決定)する主基板11のCPU103と(段落【0025】?【0027】、【0083】、【0088】?【0092】)、
c 大当り種別が「大当りA」であるか「大当りB」であるかにかかわらず、ラウンド遊技の実行回数が「15」(第15ラウンド)である場合には、遊技領域2に設けられて特定領域スイッチ24が設置された特定領域を有する下大入賞口を開放状態とするラウンド遊技を実行する主基板11のCPU103と(段落【0030】?【0032】、【0080】、【0083】、【0134】、【0140】)、
d 下大入賞口を開放状態とするラウンド遊技が実行され、特定領域スイッチ24の設置された特定領域を遊技球が通過したことに基づいて、大当り遊技状態の終了後に確変状態とする主基板11のCPU103と(段落【0080】、【0083】、【0134】、【0136】)、
e 遊技球を発射するよう遊技者に指示するメッセージを画像表示装置5に表示する演出制御用CPU120と(段落【0166】、【0170】、【0172】)、を備え、
h 主基板11のCPU103は、
h1 大当り種別が「大当りA」のラウンド遊技の場合には、第15ラウンドでも第1ラウンド?第14ラウンドの場合と同様に、下大入賞口開放の上限時間が29.5秒に設定され、
h2 大当り種別が「大当りB」のラウンド遊技の場合には、第15ラウンドにおける下大入賞口開放上限時間として、第1ラウンド?第14ラウンドよりも短い2.0秒が設定され、遊技球を進入させることが困難となるものであり(段落【0083】、【0134】、【0140】、【0141】)、
i 演出制御用CPU120は、
i1 第15ラウンドの実行中ではないと判定された場合には、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージや右向き矢印を示す指示報知画像AR1を含む第1指示報知演出を実行し、
i2 第15ラウンドの実行中であると判定された場合には、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージや右向き矢印を示す指示報知画像AR2に加えて所定のキャラクタ画像CS1を含む第2指示報知演出を実行し(段落【0166】、【0169】?【0172】)、
第2指示報知演出は、大当り種別が「大当りA」であるか「大当りB」であるかに応じて異なる演出制御パターンによる演出動作制御が行われ(段落【0175】)、
j 第1指示報知演出と第2指示報知演出とでは、遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった発光体の点灯態様(点灯色、点灯強度、点灯時間、点灯回数などの一部または全部)など、任意の演出動作を相違させることにより、演出態様を異ならせることができればよく(段落【0174】)、
第2始動入賞口への遊技球の通過に基づいて第2特図が変動するときには、第1始動入賞口への遊技球の通過に基づいて第1特図が変動するときよりも高い割合で大当り種別が「大当りA」に決定される(段落【0088】、【0109】)
パチンコ遊技機(段落【0015】)。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2016-192619号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2-a)「【0011】
以下、添付の図面に基づき本発明の実施形態を説明する。図1に示す遊技機1は、遊技媒体として遊技球を用いるパチンコ遊技機であって、遊技盤2の縁に外レール3及び内レール4が略円形に配置され、前記外レール3及び内レール4によって区画された遊技領域6が前記遊技盤2上に設けられている。」

(2-b)「【0055】
大当たり遊技では、前記上大入賞口71又は下大入賞口81の何れか一方への入賞が可能となるラウンド状態と前記上大入賞口71及び下大入賞口81の両方への入賞が不可能となるインターバル状態が交互に繰り返され、前記ラウンド状態が16ラウンド実行される。前記ラウンド状態時に前記上大入賞口71又は下大入賞口81に入賞すると遊技球が払い出される。
1回のラウンド状態は、前記上大入賞口71又は下大入賞口81の動作開始(ラウンド開始)から所定時間(ラウンド時間)経過することによる第1終了条件の成立によって、あるいは第1終了条件の成立前(ラウンド時間の経過前)に、前記上大入賞口71又は下大入賞口81に予め設定された所定個数(本実施例では10球)入賞することによる第2終了条件の成立によって終了し、インターバル状態になる。
【0056】
また、前記上大入賞口71に入賞した遊技球が上大入賞口71内の前記確変領域76を通過して特典遊技状態が決定されると、大当たり遊技(特別遊技)終了後の遊技状態が通常遊技状態よりも遊技者に有利な特典遊技状態になり、次に大当たりの当否判定手段によって大当りと判定されるまで特典遊技状態が続く。本実施例では、通常遊技状態は前記低確率状態、特典遊技状態は前記高確率状態(確変状態)に設定されている。一方、前記確変領域76を遊技球が通過せず、通常遊技状態に決定されると、大当たり遊技(特別遊技)終了後、次に確変(特典遊技状態)が決定されるまで、通常遊技状態(低確率状態)が続く。」

(2-c)「【0070】
さらに、本実施例では、前記上大入賞口71及び前記下大入賞口81の閉鎖後の入賞無効期間内に、大入賞口への入賞が検出(検知)されたり、前記上大入賞口71が開放していないときに確変領域76あるいは上大入賞口用排出口78を遊技球が通過したことが検出(検知)されたり、前記下大入賞口81が開放中のときに、前記上大入賞口71の内部に位置する確変領域76又は上大入賞口用排出口78を遊技球が通過したことが検知されたり、前記上大入賞口71の入賞数と確変領域76及び上大入賞口用排出口(外れ領域)78の通過球数が一致していなかったりすると、前記スピーカ38あるいはランプ35又は表示装置10等で、異常報知(エラー報知)が行われる。」

上記(2-a)?(2-c)の記載事項を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例2記載の事項」という。)。

「大当たり遊技では、上大入賞口71又は下大入賞口81の何れか一方への入賞が可能となるラウンド状態となり、上大入賞口71に入賞した遊技球が上大入賞口71内の確変領域76を通過して特典遊技状態が決定されると、大当たり遊技(特別遊技)終了後の遊技状態が確変状態となる遊技機1において(段落【0011】、【0055】、【0056】)、
前記上大入賞口71及び前記下大入賞口81の閉鎖後の入賞無効期間内に、大入賞口への入賞が検出(検知)されると、スピーカ38あるいはランプ35又は表示装置10等で、異常報知(エラー報知)が行われる遊技機1(段落【0077】)。」

(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開2011-120836号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(3-a)「【0019】
[パチンコ遊技機1の概略構成]
まず、パチンコ遊技機1の概略構成及び動作について説明する。図1は、パチンコ遊技機1の概略正面図である。パチンコ遊技機1は、不図示の発射装置から打ち出された遊技球が入賞すると賞球を払い出すように構成されている。図1に示されるように、パチンコ遊技機1は、遊技球が打ち出される遊技盤2と、遊技盤2を囲む枠部材5とを備えている。枠部材5は、遊技盤2に対して蝶番(不図示)を介して開閉可能に構成されると共に、遊技盤2に対して着脱可能に構成されている。
・・・
【0022】
遊技者がハンドル31を小さい回転角で回転させる、いわゆる左打ちを行うと、遊技球が相対的に弱い打球力で発射装置から打ち出される。この場合、遊技球は、画像表示器6の上方に設けられた遊技クギに跳ね返されて、例えば矢印14で示されるように画像表示器6の左側の遊技領域20へと案内される。一方、遊技者がハンドル31を大きい回転角で回転させる、いわゆる右打ちを行うと、遊技球が相対的に強い打球力で発射装置から打ち出される。この場合、遊技球は、画像表示器6の上方に設けられた遊技クギを越えて、例えば矢印15で示されるように画像表示器6の右側の遊技領域20へと案内される。」

(3-b)「【0029】
遊技球が移動する遊技領域20における右寄りの所定位置(右打ちされた遊技球が通過する位置)に大入賞口23が配置されている。大入賞口23は、特別図柄抽選の結果に応じて開放される。大入賞口23の開口部には、大入賞口23を開閉するプレートが設けられている。大入賞口23は、通常はこのプレートが遊技盤2と同一平面を形成する姿勢となっているために遊技球が入らない状態となっている。そして、特別図柄抽選に当選するとプレートの上端側が遊技盤2の前面側へ傾倒して遊技球が入賞可能な大当たり状態となる。大当たり状態になると、所定条件を満たすまで上記プレートが大入賞口23を開放した状態を維持した後に大入賞口23を閉塞する動作が、所定回数(例えば15回又は2回)繰り返される。大入賞口23に1個の遊技球が入賞する毎に13個の賞球が払い出されるので、大当たり中に遊技者が大入賞口23を狙って右打ちを行うことで、多量の賞球を得ることが可能な大当たり遊技を楽しむことができる。
・・・
【0031】
遊技盤2の前面の画像表示器6と近接する位置に、各種の演出に用いられる盤ランプ8、可動役物7、右打ち報知器10が配置されている。盤ランプ8は、遊技者によるゲームの進行に応じて発光することによって光による各種の演出を行う。可動役物7は、発光しながら遊技盤2に対して回転することにより、各種の演出を行う。右打ち報知器10は、右打ち報知器10を構成する6個のLED61?66(本発明の複数の発光部の一例)(図6参照)が矢印で示す方向へ流れるように発光することによって遊技者に対して右打ちを促す報知を行う。この右打ち報知器10の動作については後に詳述する。」

(3-c)「【0161】
大当たり開始コマンドを受信したとコマンド受信部1311によって判定された場合(ステップS109:YES)、表示制御部1316は、大当たり開始コマンドに含まれている情報に基づいて大当たりの種類を判別して、その大当たりに応じた当たり演出を開始する(ステップS110)。これにより、大当たりの開始を示すオープニング演出、大当たり中にラウンド数や演出画像を画像表示器6に表示する演出、スピーカ35、盤ランプ8、可動役物7等による演出が開始される。
【0162】
ところで、RAM133には、大当たり中にコマンド受信部1311によって受信されたオープンコマンドの総数であるコマンド数KO、及びクローズコマンドの総数であるコマンド数KCが記憶されている。ステップS110の処理によって当たり演出が開始されると、カウント部1312は、RAM133に記憶されているコマンド数KOをリセットし(ステップS111)、RAM133に記憶されているコマンド数KCをリセットする(ステップS112)。

・・・
【0165】
コマンド数KOが規定数と一致していると報知制御部1314によって判定された場合(ステップS115:YES)、報知制御部1314は、報知部1315による右打ち報知の禁止を指示する禁止コマンドをRAM133にセットして、右打ち報知器10による右打ち報知を禁止する(ステップS118)。この禁止コマンドは、図14のステップS12におけるコマンド送信処理によってランプ制御部150へ送信される。そして、この禁止コマンドを受信したランプ制御部150の制御に基づいて、右打ち報知器10による右打ち報知が禁止される。一方、コマンド数KOが規定数と一致していないと判定した場合(ステップS115:NO)、設定部1313は、右打ち報知を開始させるタイミングである開始タイミング(又は、中断された右打ち報知を再開させるタイミングである再開タイミング)を、ステップS113においてオープンコマンドがコマンド受信部1311によって受信されたタイミングに設定する(ステップS116)。そして、報知制御部1314は、ステップS116において設定された開始タイミング(又は再開タイミン)で、報知部1315に対して右打ち報知を開始(又は再開)させる(ステップS117)。具体的には、報知制御部1314は、右打ち報知器10による右打ち報知を開始させるためのスタートコマンドをRAM133にセットする処理を報知部1315に実行させる。このスタートコマンドは、図14のステップS12のコマンド送信処理によってランプ制御部150へ送信される。そして、このスタートコマンドを受信したランプ制御部150の制御に基づいて、右打ち報知器10による右打ち報知が開始(又は再開)される。


(3-d)




(3-e)図1には、盤ランプ8は、右打ちを行う経路(矢印15)と略平行に設けられた点が示されている。

上記(3-a)?(3-d)の記載事項、及び(3-e)の認定事項を総合すると、引用例3には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例3記載の事項」という。)。
「遊技盤2に、各種の演出に用いられる盤ランプ8、右打ち報知器10が配置され、遊技領域20における右寄りの所定位置に大入賞口23が配置され、大当たり状態になると、所定条件を満たすまで上記プレートが大入賞口23を開放した状態を維持した後に大入賞口23を閉塞する動作が、所定回数繰り返される遊技機1において(段落【0029】、【0031】、【0019】)、
大当たり開始コマンドを受信した場合に、盤ランプ等による演出が開始され、大当り中のオープンコマンドが受信されたタイミングで右打ち報知を開始させ(段落【0161】、【0161】、【0165】)、
右打ち報知器10は、6個のLED61?66が矢印で示す方向へ流れるように発光することによって遊技者に対して右打ちを促す報知であり(段落【0031】)、
盤ランプ8は、右打ちを行う経路と略平行に設けられた遊技機1(認定事項(3-e)。」

(4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(下記の見出しの(a)?(j)は、引用発明の構成に対応している。)。

(a)引用発明の「打球発射装置」が、遊技者の操作に応じて遊技球を発射させるものであること、引用発明の「遊技領域2」が遊技球が流下可能であることは、いずれも自明な事項である。
よって、引用発明の「遊技球を発射して遊技領域2に打ち込む打球発射装置」は、本願補正発明の「遊技者の操作に応じて、遊技球が流下可能な遊技領域に遊技球を発射する発射手段」に相当する。

(b)引用発明の「第1始動入賞口」、「第2始動入賞口」は、それぞれ、本願補正発明の「第1始動口」、「第2始動口」に相当する。
また、引用発明において、「大当り」と決定された場合に、ラウンド遊技(特別遊技)を行うことは明らかであるから、引用発明の「可変表示結果を「大当り」とするか否かを」「決定(事前決定)する」点は、本願補正発明の「特別遊技を行うか否かを判定する」点に相当する。
よって、引用発明の「前記遊技領域2に設けられる第1始動入賞口又は第2始動入賞口を遊技球が通過したことに基づいて第1始動入賞処理又は第2始動入賞処理を実行した後、特別図柄や飾り図柄の可変表示結果を「大当り」とするか否かを、その可変表示結果が導出表示される以前に決定(事前決定)する主基板11のCPU103」は、本願補正発明の「前記遊技領域に設けられる第1始動口又は第2始動口に遊技球が入球することにより、特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段」に相当する。

(c)引用発明の「特定領域を有する下大入賞口」は、本願補正発明の「所定領域が内部に設けられてなる特別入賞口」に相当する。
また、引用発明の「大当り種別が「大当りA」であるか「大当りB」であるかにかかわらず」「ラウンド遊技の実行回数が「15」(第15ラウンド)である場合に」「下大入賞口を開放状態とするラウンド遊技を実行する」点は、本願補正発明の「特別遊技を行うと判定された場合」「特別入賞口を開閉させる所定のラウンド遊技を含むラウンド遊技を実行」する点に相当する。
よって、引用発明の「大当り種別が「大当りA」であるか「大当りB」であるかにかかわらず、ラウンド遊技の実行回数が「15」(第15ラウンド)である場合には、遊技領域2に設けられて特定領域スイッチ24が設置された特定領域を有する下大入賞口を開放状態とするラウンド遊技を実行する主基板11のCPU103」は、本願補正発明の「前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された場合、前記遊技領域に設けられて所定領域が内部に設けられてなる特別入賞口を開閉させる所定のラウンド遊技を含むラウンド遊技を実行して、当該特別入賞口に遊技球を入球可能にさせる特別遊技を行う特別遊技実行手段」に相当する。

(d)引用発明の「ラウンド遊技」、「確変状態」は、それぞれ、本願補正発明の「特別遊技」、「遊技者にとって有利な遊技状態」に相当する。
よって、引用発明の「下大入賞口を開放状態とするラウンド遊技が実行され、特定領域スイッチ24の設置された特定領域を遊技球が通過したことに基づいて、大当り遊技状態の終了後に確変状態とする主基板11のCPU103」は、本願補正発明の「前記特別遊技実行手段により前記特別遊技が行われているときに前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過することを条件に、当該特別遊技の終了後、遊技状態を遊技者にとって有利な遊技状態に移行させる遊技状態制御手段」に相当する。

(e)引用発明において「遊技球を発射する」のは、構成aに示された「打球発射装置」であることは明らかである。
よって、引用発明の「遊技球を発射するよう遊技者に指示するメッセージを画像表示装置5に表示する演出制御用CPU120」は、本願補正発明の「前記発射手段により遊技球を発射すべきことを報知する報知手段」に相当する。

(h1)引用発明の「「大当りA」のラウンド遊技」は、本願補正発明の「第1特別遊技」に相当する。
また、引用発明の「第15ラウンドで」「下大入賞口開放の上限時間が29.5秒に設定され」る点は、本願補正発明の「所定のラウンド遊技において」「遊技球が前記所定領域を通過し易い開閉制御を行う」点に相当する。
よって、引用発明の「大当り種別が「大当りA」のラウンド遊技の場合には、第15ラウンドでも第1ラウンド?第14ラウンドの場合と同様に、下大入賞口開放の上限時間が29.5秒に設定され」る点は、本願補正発明の「前記特別遊技判定手段により第1特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し易い開閉制御を行う当該第1特別遊技を行」う点に相当する。

(h2)引用発明の「「大当りB」のラウンド遊技」は、本願補正発明の「第2特別遊技」に相当する。
また、引用発明の「第15ラウンドで」「下大入賞口開放上限時間として、第1ラウンド?第14ラウンドよりも短い2.0秒が設定され、遊技球を進入させることが困難となる」点は、本願補正発明の「所定のラウンド遊技において」「遊技球が前記所定領域を通過し難い開閉制御を行う」点に相当する。
よって、引用発明の「大当り種別が「大当りB」のラウンド遊技の場合には、第15ラウンドにおける下大入賞口開放上限時間として、第1ラウンド?第14ラウンドよりも短い2.0秒が設定され、遊技球を進入させることが困難となるものであ」る点は、本願補正発明の「前記特別遊技判定手段により第2特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し難い開閉制御を行う当該第2特別遊技を行」う点に相当する。

(i1)引用発明の「第15ラウンドの実行中ではないと判定された場合」とは、最初のラウンドを含むものであり、また、大当りの種類についての特定はないから、「大当りA」のラウンド遊技(第1特定遊技)及び「大当りB」のラウンド遊技(第2特定遊技)の場合であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「第1指示報知演出」は、本願補正発明の「第1報知」に相当する。
よって、引用発明の「第15ラウンドの実行中ではないと判定された場合には、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージや右向き矢印を示す指示報知画像AR1を含む第1指示報知演出を実行」する点は、本願補正発明の「前記第1特別遊技及び第2特別遊技における最初のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第1報知を行」う点に相当する。

(i2)引用発明の「第15ラウンドの実行中であると判定された場合」とは、大当りの種類についての特定はないから、「大当りA」のラウンド遊技及び「大当りB」のラウンド遊技の場合が含まれる。
そして、引用発明においては、「第2指示報知演出は、大当り種別が「大当りA」であるか「大当りB」であるかに応じて異なる演出制御パターンによる演出動作制御が行われる」ものである。
そうすると、引用発明の「「大当りA」のラウンド遊技(第1特定遊技)における第2指示報知演出」は、本願補正発明の「第2報知」に相当する。
よって、引用発明の「第15ラウンドの実行中であると判定された場合には、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージや右向き矢印を示す指示報知画像AR2に加えて所定のキャラクタ画像CS1を含む第2指示報知演出を実行し、第2指示報知演出は、大当り種別が「大当りA」であるか「大当りB」であるかに応じて異なる演出制御パターンによる演出動作制御が行われる点は、本願補正発明の「前記第1特別遊技における所定のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第2報知を行」う点に相当する。

(j)引用発明の構成i1には「遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージや右向き矢印を示す指示報知画像AR1を含む第1指示報知演出」、構成i2には「遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージや右向き矢印を示す指示報知画像AR2に加えて所定のキャラクタ画像CS1を含む第2指示報知演出」が示されているから、引用発明の「第1指示報知演出」及び「第2指示報知演出」は、遊技球を発射すべき方向を報知するものである。
また、引用発明の「第1指示報知演出と第2指示報知演出」は、遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった複数のランプを組合わせて報知するといえる。
よって、引用発明の「第1指示報知演出と第2指示報知演出とでは、遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった発光体の点灯態様(点灯色、点灯強度、点灯時間、点灯回数などの一部または全部)など、任意の演出動作を相違させることにより、演出態様を異ならせることができればよ」い点と、本願補正発明の「前記第1報知及び第2報知は、何れも前記遊技領域における各種の演出に用いられる盤ランプを発光し、且つ、他のランプを発光し、それら盤ランプ及び他のランプの発光を組み合わせて遊技球を発射すべき方向を報知する」点とは、「前記第1報知及び第2報知は、何れも複数のランプを組合わせて報知する」点で共通する。

そして、引用発明において、第2始動入賞口を遊技球が通過するときには、第1始動入賞口を遊技球が通過するときよりも高い割合で「大当りA」が決定されるから、「大当りA」のラウンド遊技(第1特定遊技)における第2指示報知演出(第2報知)も実行される割合が高いといえる。
よって、引用発明の「第2始動入賞口への遊技球の通過に基づいて第2特図が変動するときには、第1始動入賞口への遊技球の通過に基づいて第1特図が変動するときよりも高い割合で大当り種別が「大当りA」に決定される」点は、本願補正発明の「前記第2報知は、前記第1始動口の入賞による大当たりよりも前記第2始動口の入賞による大当たりのほうが実行される割合が高い」点に相当する。
また、引用発明の「パチンコ遊技機」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技者の操作に応じて、遊技球が流下可能な遊技領域に遊技球を発射する発射手段と、
B 前記遊技領域に設けられる第1始動口又は第2始動口に遊技球が入球することにより、特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と、
C 前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された場合、前記遊技領域に設けられて所定領域が内部に設けられてなる特別入賞口を開閉させる所定のラウンド遊技を含むラウンド遊技を実行して、当該特別入賞口に遊技球を入球可能にさせる特別遊技を行う特別遊技実行手段と、
D 前記特別遊技実行手段により前記特別遊技が行われているときに前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過することを条件に、当該特別遊技の終了後、遊技状態を遊技者にとって有利な遊技状態に移行させる遊技状態制御手段と、
E 前記発射手段により遊技球を発射すべきことを報知する報知手段と、を備え、
H 前記特別遊技実行手段は、
H1 前記特別遊技判定手段により第1特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し易い開閉制御を行う当該第1特別遊技を行い、
H2 前記特別遊技判定手段により第2特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し難い開閉制御を行う当該第2特別遊技を行い、
I 前記報知手段は、
I1 前記第1特別遊技及び第2特別遊技における最初のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第1報知を行い、
I2 前記第1特別遊技における所定のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第2報知を行い、
J’ 前記第1報知及び第2報知は、何れも複数のランプを組合わせて報知するものとされ、且つ、前記第2報知は、前記第1始動口の入賞による大当たりよりも前記第2始動口の入賞による大当たりのほうが実行される割合が高い遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成F、G)
本願補正発明は、「前記特別入賞口の閉鎖期間に、当該特別入賞口への遊技球の入球を判定する判定手段と」、「前記判定手段にて前記特別入賞口への遊技球の入球が判定されると、異常入賞エラーとしてエラー出力を行うエラー出力手段と、を備え」るのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

[相違点2](構成J)
第1報知及び第2報知に関して、本願補正発明は、「何れも前記遊技領域における各種の演出に用いられる盤ランプを発光し、且つ、他のランプを発光し、それら盤ランプ及び他のランプの発光を組み合わせて遊技球を発射すべき方向を報知するもの」であるのに対し、引用発明は、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージを含む第1指示報知演出と、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージ含む第2指示報知演出と、遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった発光体の点灯態様を組合わせたものである点。

(5)判断
ア 上記相違点1について検討する。
引用例2記載の事項には、「大当たり遊技では、上大入賞口71又は下大入賞口81の何れか一方への入賞が可能となるラウンド状態となり、上大入賞口71に入賞した遊技球が上大入賞口71内の確変領域76を通過して特典遊技状態が決定されると、大当たり遊技(特別遊技)終了後の遊技状態が確変状態となる遊技機1において、
前記上大入賞口71及び前記下大入賞口81の閉鎖後の入賞無効期間内に、大入賞口への入賞が検出(検知)されると、スピーカ38あるいはランプ35又は表示装置10等で、異常報知(エラー報知)が行われる遊技機1。」が開示されている。
上記引用例2記載の事項においては、上大入賞口71及び前記下大入賞口81の閉鎖後の入賞無効期間内に、大入賞口への入賞が検出(検知)し、異常報知(エラー報知)が行われるから、本願補正発明の構成F、Gに対応する構成を備えている。
そして、引用発明と引用例2記載の事項とは、共に大入賞口に入賞した遊技球が所定領域を通過することにより大当り遊技の終了後に確変状態となる遊技機である点で共通するものである。
よって、引用発明に引用例2記載の事項を適用し、特別入賞口の閉鎖期間に、当該特別入賞口への遊技球の入球を判定する判定手段と、判定手段にて特別入賞口への遊技球の入球が判定されると、異常入賞エラーとしてエラー出力を行うエラー出力手段とを備えるように構成し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記相違点2について検討する。
引用例3記載の事項には、「遊技盤2に、各種の演出に用いられる盤ランプ8、右打ち報知器10が配置され、遊技領域20における右寄りの所定位置に大入賞口23が配置され、大当たり状態になると、所定条件を満たすまで上記プレートが大入賞口23を開放した状態を維持した後に大入賞口23を閉塞する動作が、所定回数繰り返される遊技機1において、
大当たり開始コマンドを受信した場合に、盤ランプ等による演出が開始され、大当り中のオープンコマンドが受信されたタイミングで右打ち報知を開始させ、
右打ち報知器10は、6個のLED61?66が矢印で示す方向へ流れるように発光することによって遊技者に対して右打ちを促す報知であり、
盤ランプ8は、右打ちを行う経路と略平行に設けられた遊技機1。」が開示されている。
上記引用例3記載の事項において、「盤ランプ8」は「各種の演出に用いられる」ものであるとともに、「大当たり開始コマンドを受信した場合に」「演出が開始され」、「右打ちを行う経路と略平行に設けられ」ている。一方、「右打ち報知器10」は「大当り中のオープンコマンドが受信されたタイミングで右打ち報知を開始」するものである。
したがって、引用例3記載の事項は、大当り遊技において「盤ランプ8」及び「右打ち報知器10」とを組合わせて遊技球を発射すべき方向を報知する、本願補正発明のJに対応する構成を備えているといえる。
そして、引用発明と引用例3記載の事項とは、共に大当り遊技において右打ち報知を行う遊技機である点で共通するものである。
よって、引用発明における第1指示報知演出と第2指示報知演出に、引用例3記載の事項を適用し、盤ランプ及び他のランプの発光を組み合わせて遊技球を発射すべき方向を報知するように構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、遊技機の技術分野において、遊技領域において発光して遊技球を発射すべき方向を報知する表示器を設けることは、周知の技術である。
(例えば、引用例3の段落【0031】、図6に記載された6個のLEDが流れるように発光することで遊技者に対して右打ちを報知する右打ち報知器10、特開平5-84344号公報の段落【0010】、図2に記載された遊技者に右打ちを指示するための右打ち表示器25を参照のこと。以下「周知の技術A」という。)
さらに、遊技機の技術分野において、各種の演出に用いられる遊技盤に設けられたランプを用いて遊技球を発射すべき方向を報知することは、周知の技術である。
(例えば、引用例3の段落【0161】、図1に記載された大当りが開始されると、右打ちを行う経路と略平行に設けられた盤ランプ8による演出を行う点、特開2013-59578号公報の段落【0166】、【0171】、【0183】、図12、13に記載された遊技盤用ランプ532や遊技台枠用ランプ542の点滅により右打ち指示の報知「A」の組合わせ報知パターン「PA1」を行う点を参照のこと。以下「周知の技術B」という。)
そして、引用発明と周知の技術A、Bとは、いずれも大当り遊技において右打ち報知を行う遊技機である点で共通するものである。
よって、引用発明において周知の技術A、Bを併せて適用し、盤ランプ及び他のランプの発光を組み合わせて遊技球を発射すべき方向を報知するように構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び引用例3記載の事項に基づいて、若しくは引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術A、Bに基づいて当業者が容易になし得たものである。

イ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明、引用例2記載の事項及び引用例3記載の事項、若しくは引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術A、Bから予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、「ここで、審査官殿は、補正の却下の決定における備考欄において、「遊技盤面に打ち出し方向を指示する専用のランプを設けて報知すること(「他のランプを発光し、」に相当する。例えば、文献3の段落0076?0078、図1、6、文献4の段落0010、0041?0045、図2を参照。)、および遊技盤面に設けられた装飾用ランプを打ち出し方向を指示するランプとして兼用にして報知すること(「遊技領域における各種の演出に用いられる盤ランプを発光し、」に相当する。例えば、文献5の段落0166、0184、0192、図12?13、文献6の段落0354、図1?2を参照。)のいずれの事項も本願出願時に周知の技術であり、引用文献1に記載の発明において、それら周知技術を採用することに格別の困難性はなく、当業者が通常の創作能力を発揮して適宜になし得る事項である。」と記載されている。
しかしながら、これら引用文献に記載の発明は、本願発明の如く「遊技領域における各種の演出に用いられる盤ランプを発光し、且つ、他のランプを発光し、それら盤ランプ及び他のランプの発光を組み合わせて遊技球を発射すべき方向を報知する構成」(本願発明の上記特徴点(c)参照)について具備しておらず、「盤ランプを大きく且つ所定の演出効果の高い位置に配設することができるとともに、広い範囲に亘って遊技球を発射すべき方向を報知することができる」なる本願発明の効果(上記効果(3))を奏することは決してない。」(審判請求書「(b)本願発明と引用文献との対比」)と主張する。
しかしながら、上記(2)イで検討したとおり、引用例3記載の事項において、「盤ランプ8」は「各種の演出に用いられる」ものであるとともに、「大当たり開始コマンドを受信した場合に」「演出が開始され」、「右打ちを行う経路と略平行に設けられ」ており、「右打ち報知器10」は「大当り中のオープンコマンドが受信されたタイミングで右打ち報知を開始」することが示されている。
そうすると、引用例3記載の事項の「盤ランプ8」及び「右打ち報知器10」の組合わせにより、広い範囲に亘って遊技球を発射すべき方向を報知することができるといった本願補正発明と同様の効果を奏するものといえる。
よって、請求人の主張は採用できない。

(6)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び引用例3記載の事項に基づいて、若しくは引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術A、Bに基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年9月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
A 遊技者の操作に応じて、遊技球が流下可能な遊技領域に遊技球を発射する発射手段と、
B 前記遊技領域に設けられる第1始動口又は第2始動口に遊技球が入球することにより、特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と、
C 前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された場合、前記遊技領域に設けられて所定領域が内部に設けられてなる特別入賞口を開閉させる所定のラウンド遊技を含むラウンド遊技を実行して、当該特別入賞口に遊技球を入球可能にさせる特別遊技を行う特別遊技実行手段と、
D 前記特別遊技実行手段により前記特別遊技が行われているときに前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過することを条件に、当該特別遊技の終了後、遊技状態を遊技者にとって有利な遊技状態に移行させる遊技状態制御手段と、
E 前記発射手段により遊技球を発射すべきことを報知する報知手段と、
F 前記特別入賞口の閉鎖期間に、当該特別入賞口への遊技球の入球を判定する判定手段と、
G 前記判定手段にて前記特別入賞口への遊技球の入球が判定されると、異常入賞エラーとしてエラー出力を行うエラー出力手段と、を備え、
H 前記特別遊技実行手段は、
H1 前記特別遊技判定手段により第1特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し易い開閉制御を行う当該第1特別遊技を行い、
H2 前記特別遊技判定手段により第2特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し難い開閉制御を行う当該第2特別遊技を行い、
I 前記報知手段は、
I1 前記第1特別遊技及び第2特別遊技における最初のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第1報知を行い、
I2 前記第1特別遊技における所定のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第2報知を行い、
J1 前記第1報知及び第2報知は、何れも前記遊技領域において発光して遊技球を発射すべき方向を報知するものとされ、且つ、前記第2報知は、前記第1始動口の入賞による大当たりよりも前記第2始動口の入賞による大当たりのほうが実行される割合が高いこと
を特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-94570号公報
引用文献2:特開2013-192619号公報
引用文献3:特開2011-120836号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開平5-84344号公報(周知技術を示す文献)

3 刊行物
引用例1、2及びその記載事項、並びに引用発明及び引用例2記載の事項は、上記「第2 3(1)(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「第1報知及び第2報知」に関して、「何れも前記遊技領域における各種の演出に用いられる盤ランプを発光し、且つ、他のランプを発光し、それら盤ランプ及び他のランプの発光を組み合わせて遊技球を発射すべき方向を報知するもの」における下線部の限定を削除するものである。
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明の構成J1と引用発明の構成jとは、「前記第1報知及び第2報知は、何れも遊技球を発射すべき方向を報知するものとされ、且つ、前記第2報知は、前記第1始動口の入賞による大当たりよりも前記第2始動口の入賞による大当たりのほうが実行される割合が高い遊技機」である点で共通する。
さらに、上記「第2 3(4)」における検討を踏まえると、本願発明と引用発明とは、
「A 遊技者の操作に応じて、遊技球が流下可能な遊技領域に遊技球を発射する発射手段と、
B 前記遊技領域に設けられる第1始動口又は第2始動口に遊技球が入球することにより、特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と、
C 前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された場合、前記遊技領域に設けられて所定領域が内部に設けられてなる特別入賞口を開閉させる所定のラウンド遊技を含むラウンド遊技を実行して、当該特別入賞口に遊技球を入球可能にさせる特別遊技を行う特別遊技実行手段と、
D 前記特別遊技実行手段により前記特別遊技が行われているときに前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過することを条件に、当該特別遊技の終了後、遊技状態を遊技者にとって有利な遊技状態に移行させる遊技状態制御手段と、
E 前記発射手段により遊技球を発射すべきことを報知する報知手段と、を備え、
H 前記特別遊技実行手段は、
H1 前記特別遊技判定手段により第1特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し易い開閉制御を行う当該第1特別遊技を行い、
H2 前記特別遊技判定手段により第2特別遊技を行うと判定された場合、所定のラウンド遊技において前記特別入賞口に入球した遊技球が前記所定領域を通過し難い開閉制御を行う当該第2特別遊技を行い、
I 前記報知手段は、
I1 前記第1特別遊技及び第2特別遊技における最初のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第1報知を行い、
I2 前記第1特別遊技における所定のラウンド遊技の際に、前記特別入賞口に向けて遊技球を発射すべきことを示す第2報知を行い、
J1’ 前記第1報知及び第2報知は、何れも遊技球を発射すべき方向を報知するものとされ、且つ、前記第2報知は、前記第1始動口の入賞による大当たりよりも前記第2始動口の入賞による大当たりのほうが実行される割合が高い遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成F、G)
本願発明は、「前記特別入賞口の閉鎖期間に、当該特別入賞口への遊技球の入球を判定する判定手段と」、「前記判定手段にて前記特別入賞口への遊技球の入球が判定されると、異常入賞エラーとしてエラー出力を行うエラー出力手段と、を備え」るのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

[相違点2’](構成J1)
第1報知及び第2報知に関して、本願発明は、「前記第1報知及び第2報知は、何れも前記遊技領域において発光して遊技球を発射すべき方向を報知する」するのに対し、引用発明は、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージを含む第1指示報知演出と、遊技球を右遊技領域2Bに発射するよう遊技者に指示する「右打ちしてね!」のメッセージ含む第2指示報知演出と、遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった発光体の点灯態様を組合わせたものであり、遊技領域において発光して遊技球を発射すべき方向を報知するかどうか不明である点。

上記相違点について検討する。
相違点1については、上記「第2 3(5)ア」で検討したとおり、引用発明に引用例2記載の事項を適用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
相違点2’については、上記「第2 3(5)イ」で検討したとおり、遊技機の技術分野において、遊技領域において発光して遊技球を発射すべき方向を報知する表示器を設けることは、周知の技術Aであるから、引用発明に周知の技術Aを適用し、相違点2’に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
よって、本願発明は、引用発明、引用例2記載の事項、周知の技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-30 
結審通知日 2019-06-07 
審決日 2019-06-18 
出願番号 特願2013-215770(P2013-215770)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 直行  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 平城 俊雅
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 越川 隆夫  

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