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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1354043
審判番号 不服2019-397  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-11 
確定日 2019-08-05 
事件の表示 特願2017-101955号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-136511号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成25年2月26日に出願した特願2013-35927号の一部を平成29年5月23日に新たな特許出願(特願2017-101955号)としたものであって、平成30年3月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月24日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月19日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成31年1月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年1月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1?2のうち、請求項1を補正する内容を含むものであり、平成30年5月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
遊技球が入賞可能な入賞手段に入賞した遊技球を検知する入賞検知手段と、
前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されると、所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出の制御を行わせる払出制御コマンドを送信する第1制御手段と、
遊技球を払い出す払出装置と、
前記第1制御手段から送信された払出制御コマンドに基づいて、前記払出装置から賞球として遊技球の払出制御を行う第2制御手段と、
前記払出装置から払い出された遊技球を検出する払出球検出手段と、
前記払出装置から払い出された賞球数を計数記憶する計数記憶手段と、
前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されることに対応して、前記払出装置から払い出す賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段と、
遊技に関する情報を外部に出力可能な外部接続手段と、を備え、
前記計数記憶手段に記憶された計数値が所定の計数値となったことに基づき、賞球払出信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
前記払出予定数記憶手段に記憶された加算値が所定の加算値となったことに基づき、払出予定信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して、セキュリティに関するセキュリティ信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
前記払出予定信号の1回の出力時間を、前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して出力する前記セキュリティ信号の出力時間より長くしないことを特徴とする遊技機。」は、

平成31年1月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
遊技球が入賞可能な入賞手段に入賞した遊技球を検知する入賞検知手段と、
前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されると、所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出の制御を行わせる払出制御コマンドを送信する第1制御手段と、
遊技球を払い出す払出装置と、
前記第1制御手段から送信された払出制御コマンドに基づいて、前記払出装置から賞球として遊技球の払出制御を行う第2制御手段と、
前記払出装置から払い出された遊技球を検出する払出球検出手段と、
前記払出装置から払い出された賞球数を計数記憶する計数記憶手段と、
前記払出制御コマンドを送信した後に、該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段と、
遊技に関する情報を外部に出力可能な外部接続手段と、を備え、
前記計数記憶手段に記憶された計数値が所定の計数値となったことに基づき、賞球払出信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
前記払出予定数記憶手段に記憶された加算値が所定の加算値となったことに基づき、払出予定信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して、セキュリティに関するセキュリティ信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
前記払出予定信号の1回の出力時間を、前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して出力する前記セキュリティ信号の出力時間より長くしないことを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。以下同じ。)。

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1の「前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されることに対応して、前記払出装置から払い出す賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段」という記載を、「前記払出制御コマンドを送信した後に、該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段」と補正するものである。
ここで、補正後の請求項1に係る発明は、「前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されると、所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出の制御を行わせる払出制御コマンドを送信する第1制御手段」と「前記第1制御手段から送信された払出制御コマンドに基づいて、前記払出装置から賞球として遊技球の払出制御を行う第2制御手段」とを備えることから、補正後の請求項1に係る発明における「払出制御コマンド」は、「入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されると、」「送信」されるものであり、「払出装置」に「所定数の遊技球を賞球として払い出す」ことを指示するものであると認められる。
してみると、補正後の請求項1に係る発明の「前記払出制御コマンドを送信した後に、該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段」は、補正前の請求項1に記載された「前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されることに対応して、前記払出装置から払い出す賞球数を加算記憶する」という発明特定事項を実質的に具備しているといえる。
そして、本件補正は、補正前の請求項1の発明特定事項である「払出予定数記憶手段」について、「賞球数を加算記憶する」タイミングが「前記払出制御コマンドを送信した後」であることを限定するとともに、「加算記憶する」「賞球数」が「該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数」であることを限定するものである。
よって、本件補正は、補正前の請求項1の発明特定事項である「払出予定数記憶手段」を実質的に限定するものである。
また、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0030】、【0099】、【0135】?【0136】等の記載からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Mは、分説するため当審にて付した。)。
「A 遊技球が入賞可能な入賞手段に入賞した遊技球を検知する入賞検知手段と、
B 前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されると、所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出の制御を行わせる払出制御コマンドを送信する第1制御手段と、
C 遊技球を払い出す払出装置と、
D 前記第1制御手段から送信された払出制御コマンドに基づいて、前記払出装置から賞球として遊技球の払出制御を行う第2制御手段と、
E 前記払出装置から払い出された遊技球を検出する払出球検出手段と、
F 前記払出装置から払い出された賞球数を計数記憶する計数記憶手段と、
G 前記払出制御コマンドを送信した後に、該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段と、
H 遊技に関する情報を外部に出力可能な外部接続手段と、を備え、
I 前記計数記憶手段に記憶された計数値が所定の計数値となったことに基づき、賞球払出信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
J 前記払出予定数記憶手段に記憶された加算値が所定の加算値となったことに基づき、払出予定信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
K 前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して、セキュリティに関するセキュリティ信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
L 前記払出予定信号の1回の出力時間を、前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して出力する前記セキュリティ信号の出力時間より長くしない
M ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の遡及日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2012-228340号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。

・記載事項
ア 「【発明を実施するための形態】
【0012】
・・・図1?図12は本発明をパチンコ機に採用した一実施形態を例示している。図1において、遊技機本体1は、矩形状の外枠2と、この外枠2の前側に開閉自在に枢着された前枠3とを備えている。・・・
【0013】
前枠3の上部側には遊技盤5(図2)が例えば前側から着脱自在に装着されると共に、その遊技盤5の前側に対応してガラス扉6が、ガラス扉6の下側に隣接して前面開閉板7が夫々配置されている。・・・
【0014】
遊技盤5の前側には、図2に示すように、発射手段8により発射された遊技球を案内するガイドレール11が略環状に装着されると共に、そのガイドレール11の内側の遊技領域12には、センターケース13、普通図柄始動手段14、特別図柄始動手段15、大入賞手段16、複数、例えば4つの普通入賞手段17a?17d等の遊技部品が配置されている。・・・
【0019】
特別図柄始動手段15は、特別図柄表示手段23による図柄変動を開始させるためのもので、上下2つの始動入賞口(入球口)27,28と、下始動入賞口28を開閉する開閉手段29とを備え、例えばセンターケース13の下側に配置されている。・・・なお、この特別図柄始動手段15には、上下の始動入賞口27,28に入賞した遊技球を夫々検出する近接スイッチ等よりなる入賞検出スイッチ32,33が設けられている。・・・
【0025】
大入賞手段(入球口)16は、遊技球が入賞可能な開状態と入賞不可能な閉状態とに変化可能な開閉板30を備えた作動式で、例えば特別図柄始動手段15の下側に配置されており、特別図柄表示手段23の変動後の停止図柄が大当たり態様となることに基づいて特別利益状態(大当たり状態)が発生したときに、開閉板30が前側に所定時間開放して、その上に落下した遊技球を内部へと入賞させるようになっている。なお、この大入賞手段16には、入賞した遊技球を検出する近接スイッチ等よりなる入賞検出スイッチ34が設けられている。
【0026】
また、例えばこの大入賞手段16の右側に普通入賞手段17aが、左側に普通入賞手段17b?17dが夫々配置されている。これら普通入賞手段(入球口)17a?17dには、入賞した遊技球を検出する近接スイッチ等よりなる入賞検出スイッチ35a?35dが設けられている。」

イ 「【0027】
また、遊技盤5の裏面側には、図3に示すように、センターケース13等の遊技部品を後側から覆う裏カバー36が装着され、この裏カバー36の背面側に、主制御基板37が格納された主基板ケース38、演出制御基板39が格納された演出基板ケース40、液晶制御基板41が格納された液晶基板ケース42等が着脱自在に装着されている。
【0028】
前枠3の裏側には、前側から装着された遊技盤5の裏側を開閉自在に覆う開閉カバー43が着脱自在に装着されると共に、その上部側に遊技球タンク44とタンクレール45とが、左右方向一端側、例えばヒンジ4側に払出手段46と払い出し通路47とが夫々装着されており、遊技球が大入賞手段16等の入賞口に入賞したとき、又は図示しない自動球貸し機から球貸し要求があったときに、遊技球タンク44内の遊技球をタンクレール45を経て払出手段46により払い出し、その遊技球を払い出し通路47を経て貯留皿9に案内するようになっている。なお、払出手段46には、払い出した遊技球を検出する近接スイッチ等よりなる払出検出スイッチ48が設けられている。
【0029】
前枠3の裏側下部には、基板装着台49が着脱自在に装着されており、この基板装着台49の背面側に、電源基板51が格納された電源基板ケース52、払出制御基板53が格納された払出基板ケース54が夫々着脱自在に装着されている。
【0030】
また、前枠3の裏側の例えば右側上部には、各種信号を外部の例えばホール側コンピュータ等に出力するための複数の外部出力端子55a,55b,…を備えた外部出力基板56が装着されている。・・・
【0031】
・・・図4において、主制御基板37は、主に遊技盤5側の遊技動作に関わる制御を行うためのもので、CPU,ROM,RAM等により構成される普通乱数作成処理手段61、普通始動口チェック処理手段62、普通乱数記憶手段63、普通図柄処理手段64、普通利益状態発生手段65、普通図柄表示制御手段66、特別乱数作成処理手段71、特別始動口チェック処理手段72、特別乱数記憶手段73、特別図柄処理手段74、特別利益状態発生手段75、特別図柄表示制御手段76、特別遊技状態発生手段77、入賞処理手段78、制御コマンド送信手段79等を備えている。
【0032】
また、この主制御基板37には、演出制御基板39、払出制御基板53等のサブ制御基板が接続され、また普通図柄表示手段22、特別図柄表示手段23等の表示手段、普通図柄始動手段14の通過検出スイッチ31、特別図柄始動手段15、大入賞手段16、普通入賞手段17a?17dの各入賞検出スイッチ32?34,35a?35d等が接続されている。・・・」

ウ 「【0045】
入賞処理手段78は、上始動入賞口27、下始動入賞口28、大入賞手段16、普通入賞手段17a?17dの7つの入賞口への遊技球の入賞に関する処理を行うもので、入賞管理手段78a、賞球管理手段(賞球払出指示手段、賞球個数加算手段)78b、外部信号出力管理手段(賞球予定信号出力手段)78c、入賞管理データテーブル78d、コマンドデータテーブル78e等を備えている。入賞管理手段78a、賞球管理手段78b及び外部信号出力管理手段78cは、夫々入賞管理処理(図7)、賞球管理処理(図8)、外部信号出力管理処理(図9)を、例えば所定時間毎(ここでは4ms毎)に発生する定期割り込みにおいて実行するように構成されている。
【0046】
入賞管理データテーブル78dは、入賞口と入賞カウンタとの対応関係を規定するもので、図5に示すように、例えば上始動入賞口27、下始動入賞口28、大入賞手段16、普通入賞手段17a?17dの7つの入賞口に対して、夫々4種類の入賞カウンタ1?4の何れかが割り当てられている。
・・・
【0048】
コマンドデータテーブル(賞球個数情報記憶手段)78eは、入賞カウンタと払出個数指定コマンドとの対応関係を規定するものである。なお、払出個数指定コマンドは、例えば2バイトで構成されており、その下位バイトが賞球個数の数値となっている。即ち、このコマンドデータテーブル78eでは、払出個数指定コマンドが賞球個数情報を構成しており、入賞カウンタと払出個数指定コマンドとの対応関係だけでなく、入賞カウンタと入賞個数との対応関係についても規定されている。
【0049】
まず、入賞管理手段78aによる入賞管理処理(図7)について説明する。この入賞管理処理では、入賞口数の値がループ回数Nにセットされ(S1)、n=1からn=NまでのN回のループ処理(S2?S6)が実行される。・・・
【0050】
n=1からn=Nまでの各ループ処理においては、入賞口nへの入賞があったか否かが、その入賞口nに対応する入賞検出スイッチからの検出信号に基づいて判定される(S3)。・・・
【0051】
S3において入賞口nへの入賞があったと判定された場合には(S3:Yes)、入賞管理データテーブル78dを参照して、その入賞口nに対応する入賞カウンタに1が加算される(S4)。・・・」

エ 「【0053】
続いて、賞球管理手段78bによる賞球管理処理(図8)について説明する。この賞球管理処理では、入賞カウンタの種類数がループ回数Mにセットされ(S11)、n=1からn=MまでのM回のループ処理(S12?S16)が実行される。・・・
【0054】
このn=1からn=MまでのM回のループ処理においては、入賞カウンタnの値が0であるか否かが判定され(S13)、入賞カウンタnの値が0でないと判定された時点(S13:No)でループ処理から抜けるようになっている。・・・
【0055】
入賞カウンタnの値が0でないと判定されてループ処理から抜けた場合には(S13:No)、入賞カウンタnの値が1減算される(S17)と共に、その入賞カウンタnに対応する払出個数指定コマンドがコマンドデータテーブル78e(図6)から読み出され、後述する制御コマンド送信手段79を介して払出制御基板53に送信される(S18)。・・・
【0056】
また、所定のワーク領域(記憶領域)から賞球個数カウンタの値が読み出され、S18でコマンドデータテーブル78eから読み出された払出個数指定コマンドの下位バイトの値(即ち賞球個数)がその賞球個数カウンタに加算される(S19a)。ここで、賞球個数カウンタは、払い出し予定の賞球の累計をカウントするもので、一定の記憶領域が割り当てられている。・・・
【0057】
このように本実施形態では、払出制御基板53に送信する払出個数指定コマンドから賞球個数のデータを取得し、賞球個数カウンタに加算しているため、限られた記憶領域を有効活用することができ、また処理も簡略化できる。」

オ 「【0061】
続いて、外部信号出力管理手段78cによる外部信号出力管理処理(図9)について説明する。・・・
【0062】
S22においてタイマ値が0であると判定された場合には、賞球個数カウンタの値がワーク領域から取得され(S23)、この賞球個数カウンタの値から所定の減算値、例えば10(所定個数)が減算された後(S24)、減算後の賞球個数カウンタの値が0より小であるか否かが判定される(S25)。
【0063】
そして、減算後の賞球個数カウンタの値が0以上であれば(S25:No)、即ち減算前の賞球個数カウンタの値が10個(所定個数)以上であれば、その減算後の賞球個数カウンタの値がワーク領域に格納され(S26)、タイマに所定時間(例えば200ms)に対応する所定値(例えば50)がセットされる(S27)。・・・
【0064】
そして、外部出力信号データのうち、賞球予定信号に対応するビットに、信号出力を示す例えば1がセットされ(S28)、タイマの値が1減算され(S29)、その他の外部出力信号に関する外部出力信号データの設定処理(S30)が行われた後、その外部出力信号データに基づいて外部出力信号の出力が行われ(S31)、賞球予定信号出力処理は終了する。
【0065】
ここで、外部出力信号データは、複数種類の外部出力信号に対応する複数のビットで構成されており、S31において、例えば1に設定されているビットに対応する外部出力信号が外部出力端子55a,55b,…から出力されるようになっており、賞球予定信号は、それら複数種類の外部出力信号の1つである。従って、賞球個数カウンタの値が10個に達することに基づいて(S25:No)、対応する外部出力端子55aから賞球予定信号の出力が開始される(S28,S31)。
・・・
【0070】
以上の外部信号出力管理処理により、賞球個数カウンタの値(遊技球が入賞した入賞口に対応する賞球個数の累計)が10個に達する毎に、外部出力端子55aから賞球予定信号が100ms間継続して出力される。・・・」

カ 「【0073】
払出制御基板53は、払出手段46による賞球等の払い出しに関する制御を行うためのもので、払出制御手段84、賞球信号作成手段85、賞球信号出力手段86等を備えている。払出制御手段84は、払出手段46の駆動制御を行うもので、例えば主制御基板37から払出個数指定コマンドを受信した場合に、その払出個数指定コマンドで指定された賞球個数に基づいて払出手段46を作動させるようになっている。
【0074】
賞球信号作成手段85と賞球信号出力手段86とは、外部出力端子55a,55b,…からの賞球信号の出力に関する制御を行うもので、夫々賞球信号作成処理(図10)、賞球信号出力処理(図11)を、例えば所定時間毎(ここでは4ms毎)に発生する定期割り込みにおいて実行するように構成されている。
【0075】
賞球信号作成手段85による賞球信号作成処理(図10)では、まず賞球信号タイマの値が0でないことを条件に1減算する処理が行われる(S41,S42)。ここで、賞球信号タイマは、賞球信号の出力時間を管理するためのもので、後述するS45において所定値がセットされるようになっている。
【0076】
続いて、賞球済カウンタの値が10以上であるか否かが判定される(S43)。ここで、賞球済カウンタは、払出手段46によって払い出された賞球の個数をカウントするもので、払出検出スイッチ48が遊技球を検出する毎に1が加算されるようになっている。
【0077】
S43において賞球済カウンタの値が10以上であると判定された場合には、即ち払出手段46によって払い出された賞球の個数が10個(特定個数)に達した場合には、賞球済カウンタの値が10減算され(S44)、賞球信号タイマに所定時間(例えば100ms)に対応する所定値(例えば25)がセットされる(S45)。この賞球信号タイマは、当該賞球信号作成処理が実行される毎に、即ち4ms毎に、値が0になるまで上述したS42において1ずつ減算されるようになっているため、S45において25がセットされた後、100ms(=4ms×25)経過した時点で0となる。・・・
【0078】
そして、賞球信号タイマの値が0であるか否かが判定され(S46)、賞球信号タイマの値が0であれば賞球信号フラグに00Hがセットされ(S48)、賞球信号タイマの値が0でなければ賞球信号フラグに5AHがセットされる(S47)。
【0079】
以上の賞球信号作成処理により、賞球済カウンタの値が10に達する毎、即ち払出手段46によって払い出された賞球の個数が10個に達する毎に、賞球信号フラグの値が5AHとなり、この状態が100ms継続するようになっている。
【0080】
そして、賞球信号出力手段86による賞球信号出力処理(図11)では、その賞球信号フラグの値が5AHであることを条件に、対応する外部出力端子55bから賞球信号が出力されるようになっている(S51,S52)。これにより、払出手段46によって賞球が10個払い出される毎に、外部出力端子55bから賞球信号が100ms間継続して出力される。」

・認定事項
キ 【0053】に「賞球管理手段78bによる賞球管理処理(図8)」と記載され、
【0055】に「入賞カウンタnの値が0でないと判定されてループ処理から抜けた場合には・・・その入賞カウンタnに対応する払出個数指定コマンドが・・・読み出され、・・・制御コマンド送信手段79を介して払出制御基板53に送信される(S18)。」と記載され、
【0056】に「所定のワーク領域(記憶領域)から賞球個数カウンタの値が読み出され、S18でコマンドデータテーブル78eから読み出された払出個数指定コマンドの下位バイトの値(即ち賞球個数)がその賞球個数カウンタに加算される(S19a)。」と記載され、

また、賞球管理手段78bにて実行される賞球管理処理のフローチャートを示す【図8】に、


賞球管理処理において、入賞カウンタnに対応する払出個数指定コマンドを送信するステップ(S18)の実行後に、ワーク領域から賞球個数カウンタの値を取得し、払出個数指定コマンドの下位バイトの値(賞球個数)を加算するステップ(S19a)を実行することが示されている。

したがって、引用文献1には、「賞球管理手段78bによる賞球管理処理において、入賞カウンタnに対応する払出個数指定コマンドを払出制御基板53に送信するステップの実行後に、当該払出個数指定コマンドの下位バイトの値(即ち賞球個数)を賞球個数カウンタに加算」することが示されているものと認められる。

上記ア?カの記載事項、上記キの認定事項、及び、図面の図示内容を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?mは、本件補正発明のA?Mに対応させて付与した。)。
「a 遊技機本体1は前枠3を備え(【0012】)、前枠3には遊技盤5が装着され(【0013】)、
遊技盤5の遊技領域12には、特別図柄始動手段15、大入賞手段16、普通入賞手段17a?17dが配置され(【0014】)、
特別図柄始動手段15は、始動入賞口27、28を備え、特別図柄始動手段15には、始動入賞口27、28に入賞した遊技球を検出する入賞検出スイッチ32、33が設けられ(【0019】)、
大入賞手段16には、入賞した遊技球を検出する入賞検出スイッチ34が設けられ(【0025】)、
普通入賞手段17a?17dには、入賞した遊技球を検出する入賞検出スイッチ35a?35dが設けられ(【0026】)、
b 遊技盤5の裏面側には、主制御基板37が装着され(【0027】)、
主制御基板37は、入賞処理手段78、制御コマンド送信手段79を備え(【0031】)、
主制御基板37には、払出制御基板53が接続され、特別図柄始動手段15、大入賞手段16、普通入賞手段17a?17dの各入賞検出スイッチ32?34,35a?35dが接続され(【0032】)、
入賞処理手段78は、入賞管理手段78a、賞球管理手段78bを備え(【0045】)、
入賞管理手段78aによる入賞管理処理においては、入賞口nへの入賞があったか否かが、その入賞口nに対応する入賞検出スイッチからの検出信号に基づいて判定され、入賞口nへの入賞があったと判定された場合には、その入賞口nに対応する入賞カウンタに1が加算され(【0049】?【0051】)、
賞球管理手段78bによる賞球管理処理においては、入賞カウンタnの値が0であるか否かが判定され、入賞カウンタnの値が0でないと判定された場合には、その入賞カウンタnに対応する払出個数指定コマンドが1個ずつ読み出され、制御コマンド送信手段79を介して払出制御基板53に送信され(【0053】?【0055】)、払出個数指定コマンドは、その下位バイトが賞球個数の数値となっており(【0048】)、
c 前枠3の裏側には、払出手段46が装着され、払出手段46は、遊技球が入賞口に入賞したときに、遊技球を払い出し(【0028】)、
d 前枠3の裏側下部には、払出制御基板53が装着され(【0029】)、払出制御基板53は、払出制御手段84を備え、払出制御手段84は、主制御基板37から払出個数指定コマンドを受信した場合に、その払出個数指定コマンドで指定された賞球個数に基づいて払出手段46を作動させ(【0073】)、
e 払出手段46には、払い出した遊技球を検出する払出検出スイッチ48が設けられ(【0028】)、
f 賞球済カウンタは、払出手段46によって払い出された賞球の個数をカウントするもので、払出検出スイッチ48が遊技球を検出する毎に1が加算されるようになっており(【0076】)、
g 賞球管理手段78bによる賞球管理処理において、入賞カウンタnに対応する払出個数指定コマンドを払出制御基板53に送信するステップの実行後に、当該払出個数指定コマンドの下位バイトの値(即ち賞球個数)を賞球個数カウンタに加算し、賞球個数カウンタは、払い出し予定の賞球の累計をカウントするもので、一定の記憶領域が割り当てられており(【0055】?【0056】、認定事項キ)、
h 前枠3の裏側には、各種信号を外部のホール側コンピュータ等に出力するための複数の外部出力端子55a、55bを備えた外部出力基板56が装着され(【0030】)、
i 払出制御基板53は、賞球信号作成手段85、賞球信号出力手段86を備え(【0073】)、
賞球信号作成手段85による賞球信号作成処理では、賞球済カウンタの値が10に達する毎、即ち払出手段46によって払い出された賞球の個数が10個に達する毎に、賞球信号フラグの値が5AHとなり(【0075】?【0079】)、
賞球信号出力手段86による賞球信号出力処理では、賞球信号フラグの値が5AHであることを条件に、対応する外部出力端子55bから賞球信号が出力され(【0080】)、
j、l 外部信号出力管理手段78cによる外部信号出力管理処理により、賞球個数カウンタの値が10個に達する毎に、外部出力端子55aから賞球予定信号が100ms間継続して出力される(【0061】?【0070】)、
m パチンコ機(【0012】)。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
(a)引用発明における構成aの「遊技盤5の遊技領域12に」「配置され」た「特別図柄始動手段15」の「始動入賞口27、28」、「大入賞手段16」及び「普通入賞手段17a?17d」は、本件補正発明における構成Aの「遊技球が入賞可能な入賞手段」に相当する。
また、引用発明における構成aの「始動入賞口27、28に入賞した遊技球を検出する入賞検出スイッチ32、33」、「大入賞手段16に」「入賞した遊技球を検出する入賞検出スイッチ34」及び「普通入賞手段17a?17dに」「入賞した遊技球を検出する入賞検出スイッチ35a?35d」は、本件補正発明における構成Aの「入賞手段に入賞した遊技球を検知する入賞検知手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本件補正発明の構成Aに相当するものである。

(b)引用発明における構成bの「入賞管理処理」において、「入賞口nに対応する入賞検出スイッチからの検出信号に基づいて」「入賞口nへの入賞があったと判定され」ることは、本件補正発明における構成Bの「入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知される」ことに相当する。
また、引用発明における構成bの「賞球管理処理」における「その下位バイトが賞球個数の数値となって」いる「払出個数指定コマンド」は、本件補正発明における構成Bの「所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出の制御を行わせる払出制御コマンド」に相当し、同様に、「払出個数指定コマンド」を「払出制御基板53に送信」することは、「払出制御コマンドを送信する」ことに相当する。
そして、引用発明における構成bの「入賞管理処理」と「賞球管理処理」とを実行する「主制御基板37」は、本件補正発明における構成Bの「前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されると、所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出の制御を行わせる払出制御コマンドを送信する第1制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成bは、本件補正発明の構成Bに相当するものである。

(c)引用発明における構成cの「遊技球を」「払い出」す「払出手段46」は、本件補正発明における構成Cの「遊技球を払い出す払出装置」に相当する。
してみると、引用発明の構成cは、本件補正発明の構成Cに相当するものである。

(d)引用発明における構成dの「主制御基板37から」「受信した」「払出個数指定コマンド」は、本件補正発明における構成Dの「前記第1制御手段から送信された払出制御コマンド」に相当する。
また、引用発明における構成dの「主制御基板37から払出個数指定コマンドを受信した場合に、その払出個数指定コマンドで指定された賞球個数に基づいて払出手段46を作動させ」る「払出制御手段84」は、本件補正発明における構成Dの「前記第1制御手段から送信された払出制御コマンドに基づいて、前記払出装置から賞球として遊技球の払出制御を行う第2制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成dは、本件補正発明の構成Dに相当するものである。

(e)引用発明における構成eの「払出手段46に」「設けられ」た「払い出した遊技球を検出する払出検出スイッチ48」は、本件補正発明における構成Eの「前記払出装置から払い出された遊技球を検出する払出球検出手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成eは、本件補正発明の構成Eに相当するものである。

(f)引用発明における構成fの「払出手段46によって払い出された賞球の個数をカウントする」「賞球済カウンタ」は、本件補正発明における構成Fの「前記払出装置から払い出された賞球数を計数記憶する計数記憶手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成fは、本件補正発明の構成Fに相当するものである。

(g)引用発明における構成gの「払出個数指定コマンドを」「送信するステップの実行後」は、本件補正発明における構成Gの「前記払出制御コマンドを送信した後」に相当し、同様に、「当該払出個数指定コマンドの下位バイトの値(即ち賞球個数)」は「該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数」に相当する。
そして、引用発明における構成gの「払出個数指定コマンドを」「送信するステップの実行後」に、「当該払出個数指定コマンドの下位バイトの値(即ち賞球個数)を」「加算し」、「払い出し予定の賞球の累計をカウントする」「賞球個数カウンタ」は、本件補正発明における構成Gの「前記払出制御コマンドを送信した後に、該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成gは、本件補正発明の構成Gに相当するものである。

(h)引用発明における構成hの「各種信号を外部のホール側コンピュータ等に出力するための複数の外部出力端子55a、55bを備えた外部出力基板56」は、本件補正発明における構成Hの「遊技に関する情報を外部に出力可能な外部接続手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成hは、本件補正発明の構成Hに相当するものである。

(i)引用発明における構成iの「賞球済カウンタの値が10に達する」ことは、本件補正発明における構成Iの「前記計数記憶手段に記憶された計数値が所定の計数値となったこと」に相当し、同様に、「賞球信号」は「賞球払出信号」に、「外部出力端子55bから賞球信号が出力され」ることは、「賞球払出信号を前記外部接続手段へ出力する」ことに、それぞれ相当する。
してみると、引用発明の構成iは、本件補正発明の構成Iに相当するものである。

(j)引用発明における構成j、lの「賞球個数カウンタの値が10個に達する」ことは、本件補正発明における構成Jの「前記払出予定数記憶手段に記憶された加算値が所定の加算値となったこと」に相当し、同様に、「賞球予定信号」は「払出予定信号」に、「外部出力端子55aから賞球予定信号が」「出力される」ことは、「払出予定信号を前記外部接続手段へ出力する」ことに、それぞれ相当する。
してみると、引用発明の構成j、lは、本件補正発明の構成Jに相当するものである。

(l)引用発明における構成j、lの「賞球予定信号が」「継続して出力される」「100ms間」は、本件補正発明における構成Lの「払出予定信号の1回の出力時間」に相当する。
してみると、引用発明の構成j、lと本件補正発明の構成Lとは、「払出予定信号の1回の出力時間」がある点で共通する。

(m)引用発明における構成mの「パチンコ機」は、本件補正発明における構成Mの「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明の構成mは、本件補正発明の構成Mに相当するものである。

上記(a)?(m)によれば、本件補正発明と引用発明とは、
「A 遊技球が入賞可能な入賞手段に入賞した遊技球を検知する入賞検知手段と、
B 前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されると、所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出の制御を行わせる払出制御コマンドを送信する第1制御手段と、
C 遊技球を払い出す払出装置と、
D 前記第1制御手段から送信された払出制御コマンドに基づいて、前記払出装置から賞球として遊技球の払出制御を行う第2制御手段と、
E 前記払出装置から払い出された遊技球を検出する払出球検出手段と、
F 前記払出装置から払い出された賞球数を計数記憶する計数記憶手段と、
G 前記払出制御コマンドを送信した後に、該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段と、
H 遊技に関する情報を外部に出力可能な外部接続手段と、を備え、
I 前記計数記憶手段に記憶された計数値が所定の計数値となったことに基づき、賞球払出信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
J 前記払出予定数記憶手段に記憶された加算値が所定の加算値となったことに基づき、払出予定信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
L’ 前記払出予定信号の1回の出力時間がある
M ことを特徴とする遊技機。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1](構成K)
本件補正発明は、前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して、セキュリティに関するセキュリティ信号を前記外部接続手段へ出力するように構成されているのに対して、引用発明は、払出予定数記憶手段(「「賞球済カウンタ」)の初期化に対応して、セキュリティに関するセキュリティ信号を外部接続手段(「外部出力基板56」)へ出力するという構成を備えていない点。

[相違点2](構成L)
本件補正発明は、前記払出予定信号の1回の出力時間を、前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して出力する前記セキュリティ信号の出力時間より長くしないのに対して、引用発明は、払出予定信号(「賞球予定信号」)の1回の出力時間を100ms間としているものの、そもそもセキュリティ信号を出力するという構成を備えていないため、払出予定信号の1回の出力時間をセキュリティ信号の出力時間より長くしないという構成も備えていない点。

(4)当審判合議体における判断
ア 相違点1、2について
相違点1、2は、払出予定数記憶手段の初期化に対応して、外部接続手段へ出力されるセキュリティ信号に関する技術であって、互いに関連しているのでまとめて検討する。

(ア)拒絶査定時に提示され、本願の遡及日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2012-223204号公報(以下「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。

「【0052】
パチンコ遊技機1裏面において、上方には、各種情報をパチンコ遊技機1の外部に出力するための各端子を備えたターミナル基板160が設置されている。ターミナル基板160には、例えば、大当り遊技状態の発生を示す大当り情報等の情報出力信号(図53に示す図柄確定回数1信号、始動口信号、大当り1信号、大当り2信号、大当り3信号、時短信号、入賞信号、セキュリティ信号、高確中信号、賞球情報)を外部出力するための情報出力端子が設けられている。」

「【0065】
・・・主基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する遊技制御用マイクロコンピュータ(遊技制御手段に相当)560が搭載されている。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、ゲーム制御(遊技進行制御)用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用される記憶手段としてのRAM55、プログラムに従って制御動作を行うCPU56およびI/Oポート部57を含む。」

「【0072】
また、RAM55は、その一部または全部が電源基板において作成されるバックアップ電源によってバックアップされている不揮発性記憶手段としてのバックアップRAMである。・・・特に、少なくとも、遊技状態すなわち遊技制御手段の制御状態に応じたデータ(特別図柄プロセスフラグや、保留記憶数をカウントするための保留記憶数カウンタの値など)と未払出賞球数を示すデータ(具体的には、後述する賞球コマンド出力カウンタの値)は、バックアップRAMに保存される。」

「【0113】
また、この実施の形態では、遊技機への電源投入が行われて初期化処理が実行された場合にも、セキュリティ信号が所定期間(例えば、30秒間)ホールコンピュータなどの外部装置に出力される。」

「【0114】
なお、この実施の形態では、上記のように、異常入賞が検出された場合と、初期化処理(例えば、遊技機への電源投入時に、クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理)が実行された場合とで、共通のセキュリティ信号をターミナル基板160の共通のコネクタCN8から外部出力している。」

「【0256】
ステップS5120?S5124の処理が実行されることによって、この実施の形態では、所定数分の払出条件が成立するごとに(賞球10個分の入賞が発生するごとに)、入賞情報記憶カウンタの値が1ずつ加算され、後述する情報出力処理によって入賞信号が外部出力されることになる。」

「【0461】
また、情報出力処理のステップS1021?S1023および図58に示す入賞タイマセット処理によって、いずれかの入賞口(第1始動入賞口13、第2始動入賞口14、大入賞口、普通入賞口29,30)への入賞が発生し、賞球予定数が10個累積するごとに、入賞信号が出力される。すなわち、入賞信号が100ms間オン状態となった後、100ms間オフ状態になる。この入賞信号がホールコンピュータに入力されることによって、賞球予定数を認識させることができる。」

上記記載事項を総合すると、周知例1には、次の事項(以下「周知例1記載の事項」という。)が記載されていると認められる。

「遊技制御用マイクロコンピュータ560のRAM55には、未払出賞球数を示すデータが保存され、賞球予定数が10個累積するごとに、入賞信号がターミナル基板160から外部出力されるパチンコ遊技機1において、RAM55の記憶内容をクリアする初期化処理が実行された場合に、セキュリティ信号が30秒間ターミナル基板160から外部装置に出力され、入賞信号が外部出力される場合、入賞信号が100ms間オン状態となるパチンコ遊技機1。」

周知例1記載の事項の「RAM55」は、「未払出賞球数を示すデータが保存され」るものであるから、本件補正発明の構成Kの「払出予定数記憶手段」に相当し、同様に、「RAM55の記憶内容をクリアする初期化処理」は「払出予定数記憶手段の初期化」に、「セキュリティ信号」は「セキュリティに関するセキュリティ信号」に、「ターミナル基板160」は「外部接続手段」に、それぞれ相当する。
そうすると、周知例1記載の事項の「RAM55の記憶内容をクリアする初期化処理が実行された場合に、セキュリティ信号が」「ターミナル基板160から外部装置に出力され」ることは、本件補正発明の構成Kの「払出予定数記憶手段の初期化に対応して、セキュリティに関するセキュリティ信号を外部接続手段へ出力する」ことに相当する。
また、周知例1記載の事項の「賞球予定数が10個累積するごとに、」「外部出力される」「入賞信号」は、本件補正発明の構成Lの「払出予定信号」に相当し、同様に、「入賞信号が外部出力される場合、入賞信号が」「オン状態となる」「100ms間」は、「払出予定信号の1回の出力時間」に、「セキュリティ信号が」「外部装置に出力され」る「30秒間」は、「前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して出力する前記セキュリティ信号の出力時間」に、それぞれ相当する。
そして、「100ms間」が「30秒間」よりも長くないことは明らかであるから、周知例1記載の事項の「セキュリティ信号が30秒間」「外部装置に出力され、入賞信号が外部出力される場合、入賞信号が100ms間オン状態となる」ことは、本件補正発明の構成Lの「前記払出予定信号の1回の出力時間を、前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して出力する前記セキュリティ信号の出力時間より長くしない」ことに相当する。
以上より、周知例1記載の事項は、本件補正発明の構成K、Lに相当するものである。

(イ)拒絶査定時に提示され、本願の遡及日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2012-34775号公報(特に、【0060】、【0063】、【0070】、【0111】、【0112】、【0194】、【0372】を参照)及び特開2012-24499号公報(特に、【0037】、【0052】、【0058】、【0177】、【0178】、【0273】、【0463】)にも、周知例1記載の事項と同様の事項が記載されている。

上記(ア)、(イ)より、パチンコ遊技機の技術分野において、払出予定数記憶手段の初期化に対応して、セキュリティに関するセキュリティ信号を外部接続手段へ出力するように構成し、払出予定信号の1回の出力時間を、払出予定数記憶手段の初期化に対応して出力するセキュリティ信号の出力時間より長くしないこと、すなわち、上記相違点1及び2に係る本件補正発明の構成K及びLは、本願の遡及日前において周知の技術事項であったといえる。

そして、引用発明と上記周知の技術事項とは、払出予定数記憶手段に記憶された加算値が所定の加算値となったことに基づき、払出予定信号を外部へ出力するパチンコ遊技機である点で共通しているから、引用発明に上記周知の技術事項を付加して、払出予定数記憶手段の初期化に対応して、セキュリティに関するセキュリティ信号を外部接続手段へ出力するように構成するとともに、払出予定信号の1回の出力時間(引用発明における構成lの「賞球予定信号が」「継続して出力される」「100ms間」)を、払出予定数記憶手段の初期化に対応して出力するセキュリティ信号の出力時間より長くしないようにして、上記相違点1及び2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 効果について
本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明、及び、上記周知の技術事項から予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、平成31年1月11日付け審判請求書において、次のとおり主張する。

(ア)「また、引用文献1に開示された遊技機は、上記段落0070の記載や図12の記載から明らかなように、入賞口に入球を所定個数確認した時点でホールコンピュータ(外部装置)に払出予定信号を出力するものであり、本願発明1のように、払出制御コマンド送信後に当該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶し、この加算値が所定値となったことに基づいて払出予定信号を出力する構成ではありません。即ち、この引用文献1には、払出制御コマンド送信後に当該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶し、この加算値が所定値となったことに基づいて払出予定信号を出力するという構成については記載が見当たりません。」(【本願発明が特許されるべき理由】の(ハ)引用文献の説明)

(イ)「特に特徴Aのうちの、「前記払出制御コマンドを送信した後に、該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段と、…を備え、… 前記払出予定数記憶手段に記憶された加算値が所定の加算値となったことに基づき、払出予定信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、」という特徴イによれば、既述したように、賞球払出信号と払出予定信号の出力タイミングが近くなり、払出予定数(払出予定の賞球数)と払出数(実際に払い出された賞球数)の相互関係を例えば外部装置において調べることが容易になるという効果が得られます。
これに対して、各引用文献(引用文献1乃至4)には、少なくとも上記特徴A(特に上記特徴イ)について明示又は示唆する記載が見当たりません。このため、各引用文献に開示された構成を組み合わせることができたとしても、本願発明1と同等の構成及び効果を実現することはできません。」(【本願発明が特許されるべき理由】の(ニ)本願発明と引用文献との対比)

そこで、請求人の上記主張について検討する。
上記「第2 3(3)対比の(g)、(j)」において説示したとおり、請求人が「特徴イ」とする本件補正発明の「前記払出制御コマンドを送信した後に、該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段と、…を備え、… 前記払出予定数記憶手段に記憶された加算値が所定の加算値となったことに基づき、払出予定信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、」という構成(構成G、J)は、引用発明も備えているものである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(5)小括
よって、本件補正発明は、引用発明、及び、周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
上記1?3より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?2に係る発明は、平成30年5月24日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものであると認める(記号A?Mは、分説するため当審にて付した。)。

「A 遊技球が入賞可能な入賞手段に入賞した遊技球を検知する入賞検知手段と、
B 前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されると、所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出の制御を行わせる払出制御コマンドを送信する第1制御手段と、
C 遊技球を払い出す払出装置と、
D 前記第1制御手段から送信された払出制御コマンドに基づいて、前記払出装置から賞球として遊技球の払出制御を行う第2制御手段と、
E 前記払出装置から払い出された遊技球を検出する払出球検出手段と、
F 前記払出装置から払い出された賞球数を計数記憶する計数記憶手段と、
G’ 前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されることに対応して、前記払出装置から払い出す賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段と、
H 遊技に関する情報を外部に出力可能な外部接続手段と、を備え、
I 前記計数記憶手段に記憶された計数値が所定の計数値となったことに基づき、賞球払出信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
J 前記払出予定数記憶手段に記憶された加算値が所定の加算値となったことに基づき、払出予定信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
K 前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して、セキュリティに関するセキュリティ信号を前記外部接続手段へ出力するように構成され、
L 前記払出予定信号の1回の出力時間を、前記払出予定数記憶手段の初期化に対応して出力する前記セキュリティ信号の出力時間より長くしない
M ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特開2012-228340号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2 3(2)引用文献1」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2 3(1)本件補正発明」で検討した本件補正発明の構成G「前記払出制御コマンドを送信した後に、該払出制御コマンドによって払い出しを指示された賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段」を、構成G’「前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されることに対応して、前記払出装置から払い出す賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段」としたものである。

そこで、本願発明の構成G’について、本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における構成bの「入賞管理処理」において、「入賞口nに対応する入賞検出スイッチからの検出信号に基づいて」「入賞口nへの入賞があったと判定され」ることは、本願発明における構成G’の「前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されること」に相当する。
また、引用発明における構成gの「賞球管理処理において、」「払出制御基板53に送信する」「払出個数指定コマンドの下位バイトの値(即ち賞球個数)」は、本願発明における構成G’の「前記払出装置から払い出す賞球数」に相当する。
そして、引用発明における構成bの「入賞管理処理」において、「入賞口nへの入賞があったと判定された場合に」、構成gの「賞球管理処理において、」「払出制御基板53に送信する」「払出個数指定コマンドの下位バイトの値(即ち賞球個数)を」「加算」する「賞球個数カウンタ」は、本願発明における構成G’の「前記入賞検知手段によって遊技球の入賞が検知されることに対応して、前記払出装置から払い出す賞球数を加算記憶する払出予定数記憶手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成b、gは、本願発明の構成G’に相当する構成を具備している。

本願発明の構成A?F、H?Mは、上記本件補正発明の構成A?F、H?Mと同じであり、前記「第2 3(3)対比」にて説示したとおり、引用発明の構成a?f、h?j、mは、本願発明の構成A?F、H?J、Mに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、本件補正発明と引用発明との相違点である上記相違点1及び2(構成K及びL)において相違し、その余の点で一致するものである。
そして、上記相違点1及び2については、前記「第2 3(4)当審判合議体における判断 ア 相違点1、2について」における検討内容と同様の理由により、引用発明、及び、拒絶査定時に提示された文献に記載された周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願発明は、引用発明、及び、拒絶査定時に提示された文献に記載された周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-10 
結審通知日 2019-06-11 
審決日 2019-06-24 
出願番号 特願2017-101955(P2017-101955)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 有賀 綾子  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 田邉 英治
木村 隆一
発明の名称 遊技機  
代理人 鹿嶋 英實  

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