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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H04W
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04W
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04W
管理番号 1354050
異議申立番号 異議2018-700046  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-19 
確定日 2019-06-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6164322号発明「無線通信装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6164322号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕、11について訂正することを認める。 特許第6164322号の請求項1ないし3、8ないし11に係る特許を維持する。 特許第6164322号の請求項4ないし7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6164322号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成24年1月31日に出願された特願2012-019087号の一部を平成28年3月9日に新たな特許出願としたものであり、平成29年6月30日にその特許権の設定登録がされ、平成29年7月19日に特許掲載公報が発行された。
これに対し、平成30年1月19日に特許異議申立人東京総合コンサルティング株式会社により請求項1?11に係る特許に対する特許異議の申立てがなされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
平成30年7月3日付け: 取消理由通知書
平成30年9月6日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年11月26日: 特許異議申立人(東京総合コンサルティング株 式会社)による意見書の提出
平成31年2月6日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
平成31年4月11日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、 当該訂正請求書による訂正を「本件訂正請求」 という。)の提出

ここで、平成30年9月6日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、特許異議申立人には一度意見書の提出の機会を与えている。そして、平成31年4月11日付け訂正請求書による訂正の請求により、特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したため、平成31年4月11日の訂正請求に対しては、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する特別の事情にあたると判断して、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えていない。

第2 訂正の適否についての判断
1. 訂正の内容
特許権者が本件訂正請求によって請求した訂正事項は以下のとおりである。(下線は、訂正請求書の記載のとおり。)
(1)一群の請求項1?10に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「無線ネットワークの親局として機能する親局状態で動作可能な無線通信装置」と記載されているのを、「Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi DirectのG/O(Group Ownerの略)状態で動作可能な無線通信装置」に訂正する。
(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2、3、8?10も同様に訂正する。)

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「第1の接続部と、」と記載されているのを、「第1の接続部であって、前記第1種の接続は、前記Wi-Fi Directに従った接続である、前記第1の接続部と、」に訂正する。
(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2、3、8?10も同様に訂正する。)

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、「第2の接続部と、」と「を備え、」との間に、「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値のみを、前記特定デバイスに通知する通知部と、」という記載を追加する訂正を行う。
(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2、3、8?10も同様に訂正する。)

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の接続部は、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記親局状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立する、」と記載されているのを、
「前記第1の接続部は、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記G/O状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記G/O状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記Wi-Fi Directのクライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記クライアント状態にて、前記インターフェィスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記クライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない、」に訂正する。
(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2、3、8?10も同様に訂正する。)

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4?7を削除する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1から7のいずれか一項に記載の無線通信装置。」と記載されているのを、「請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。」に訂正する。
(請求項8の記載を直接的または間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する)

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から8のいずれか一項に記載の無線通信装置。」と記載されているのを、「請求項1から3及び8のいずれか一項に記載の無線通信装置。」に訂正する。
(請求項9の記載を直接的に引用する請求項10も同様に訂正する)

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「前記親局状態」と記載されているのを、「前記G/O状態」に訂正する。

(2)請求項11に係る訂正
ア 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11に「無線ネットワークの親局として機能する親局状態で動作可能な無線通信装置」と記載されているのを、「Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi DirectのG/O(Group Ownerの略)状態で動作可能な無線通信装置」に訂正する。

イ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に「物理的に1個のインターフェイスである、前記第1の接続処理と、」と記載されているのを、「物理的に1個のインターフェイスであり、前記第1種の接続は、前記Wi-Fi Directに従った接続である、前記第1の接続部と、」に訂正する。

ウ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11において、「第2の接続処理と、」と「を実行させ、」との間に、「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値のみを、前記特定デバイスに通知する通知処理と、」という記載を追加する訂正を行う。

エ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項11に「前記第1の接続処理は、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記親局状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立する処理である、」と記載されているのを、
「前記第1の接続処理は、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記G/O状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記G/O状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記Wi-Fi Directのクライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記クライアント状態にて、前記インターフェィスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記クライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない処理である、」に訂正する。

2. 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び、一群の請求項について
(1) 請求項1?10に係る訂正
ア 訂正の目的
(ア) 訂正事項1は、「無線通信装置」が、訂正前の請求項1の「無線ネットワークの親局として機能する親局状態で動作可能な無線通信装置」であったのを、「Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi DirectのG/O(Group Ownerの略)状態で動作可能な無線通信装置」であることに限定している。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ) 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「第1の接続部」において、「前記第1種の接続は、前記Wi-Fi Directに従った接続である」ことをさらに備えることを限定している。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ウ) 訂正事項3は、訂正前の請求項1の「無線通信装置」が、「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値のみを、前記特定デバイスに通知する通知部」をさらに備えることを限定している。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(エ) 訂正事項4は、「第1の接続部」が、訂正前の請求項1の「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記親局状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立する、」であったのを、「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記G/O状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記G/O状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記Wi-Fi Directのクライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記クライアント状態にて、前記インターフェィスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記クライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない、」であることに限定している。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(オ) 訂正事項5は、訂正前の請求項4?7を削除するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(カ) 訂正事項6、7は、択一的に記載された引用する請求項を限定し、引用する請求項の数を減少させるものであり、また、訂正事項5により請求項4?7が削除されたことに伴い、引用関係を整合させるものである。
したがって、訂正事項6、7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(キ) 訂正事項8は、「無線通信装置」が、訂正前の請求項1の「親局状態」で動作することを、「G/O状態」で動作することに限定している。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア) 訂正事項1
設定登録時の特許請求の範囲の請求項7には、「前記第1種の接続は、Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi Directに従った接続であって、前記親局状態はG/O状態である」と記載されている。
また、明細書段落0002に「非特許文献1には、Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi Direct(以下では「WFD」と呼ぶ)について記載されている。」と、同段落0028に「WFDは、Wi-Fi Allianceによって策定された規格である。」と、同段落0029に「プリンタ10と携帯端末8とは、それぞれ、WFDに従った無線通信機能を実行可能である。以下では、WFDに従った無線通信機能を実行可能な機器のことを「WFD対応機器」と呼ぶ。WFDの規格では、WFD対応機器の状態として、Group Owner状態(以下では「G/O状態」と呼ぶ)、クライアント状態、及び、デバイス状態の3つの状態が定義されている。WFD対応機器は、上記の3つの状態のうちの1つの状態で選択的に動作可能である。」と、同段落0099に「(対応関係) プリンタ10、携帯端末8、AP4が、それぞれ、「無線通信装置」、「第1のデバイス」、「第2のデバイス」の一例である。G/O状態、クライアント状態が、それぞれ、「親局状態」、「子局状態」の一例である。」と、それぞれ記載されている。
したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(イ) 訂正事項2
設定登録時の特許請求の範囲の請求項7には、無線通信装置が、「第1種の接続」が「前記Wi-Fi Directに従った接続である」ことが記載されている。
したがって、訂正事項2は、本件特許の願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(ウ) 訂正事項3
明細書段落0012に「無線通信装置は、さらに、特定の場合に、無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、第2の無線チャネルの値のみを、第1のデバイスに通知する通知部を備えていてもよい。」と記載されている。
また、同段落0022に「プリンタ10は、操作部12と、表示部14と、印刷実行部16と、無線インターフェイス18と、制御部20と、を備える。」と、同段落0024に「制御部20は、CPU22とメモリ24とを備える。CPU22は、メモリ24に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。メモリ24は、ROM、RAM、ハードディスク等によって構成される。メモリ24は、CPU22によって実行される上記のプログラムを格納したり、CPU22が処理を実行する過程で取得又は生成されるデータを格納したりする。CPU22が上記のプログラムに従って処理を実行することによって、第1の接続部30、第2の接続部32、決定部34、通知部36、及び、チャネル判断部38の各機能が実現される。」とそれぞれ記載されている。
さらに、同段落0052に「S42のG/Oネゴシエーションの過程において、通知部36は、プリンタ10がWFD接続で利用可能な無線チャネルの値として、1?14chの全ての値を含むチャネルリスト(以下では「通常リスト」と呼ぶ)を、携帯端末8に通知(即ち送信)する。」と、同段落0064に「続いて、S40でYESの場合(非WFD接続が現在確立されている場合)に実行されるS46以降の処理の内容を説明する。S46では、第1の接続部30は、図3のWFD接続処理が開始されてから、1回目のG/Oネゴシエーションが実行されるべき状況であるのか否かを判断する。1回目のG/Oネゴシエーションが実行されるべき状況である場合(S46でYESの場合)には、S48に進み、2回目以降のG/Oネゴシエーションが実行されるべき状況である場合(S46でNOの場合)には、S50に進む。」と、同段落0065に「従って、S48では、第1の接続部30は、プリンタ10のIntent値「14」を携帯端末8に送信する。また、S48では、通知部36は、プリンタ10がWFD接続で利用可能な無線チャネルの値として、現在確立されている非WFD接続で利用されている非WFDチャネル値Vap(即ちメモリ24内の非WFDチャネル値Vap)のみを含むチャネルリスト(以下では「制限リスト」と呼ぶ)を、携帯端末8に通知(即ち送信)する。」と、それぞれ記載されている。
上記明細書の記載事項である、「プリンタ10」が「通知部36」を備え、該「通知部36」が、アクセスポイントとの第2種の接続といえる非WFD接続が現在確立されており、WFD接続処理が開始されてから、1回目のG/Oネゴシエーションが実行されるべき状況である場合、プリンタ10がWFD接続で利用可能な無線チャネルの値として、1?14chの全ての値のうち、現在確立されている非WFD接続で利用されている非WFDチャネル値Vapのみを含むチャネルリストを、携帯端末8に通知する事項は、訂正事項3の「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値のみを、前記特定デバイスに通知する」事項に対応するといえる。
したがって、訂正事項3は、本件特許の願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(エ) 訂正事項4
明細書の段落0022に「プリンタ10は、操作部12と、表示部14と、印刷実行部16と、無線インターフェイス18と、制御部20と、を備える。」、同段落0023に「従って、制御部20は、無線インターフェイス18を利用して、WFDに従った無線通信機能と通常の無線通信機能との両方を同時的に実行し得る。この結果、後で詳しく説明するが、制御部20は、WFD接続と非WFD接続との両方が確立されている状態を形成し得る。」と、同段落0024に「制御部20は、CPU22とメモリ24とを備える。CPU22は、メモリ24に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。メモリ24は、ROM、RAM、ハードディスク等によって構成される。メモリ24は、CPU22によって実行される上記のプログラムを格納したり、CPU22が処理を実行する過程で取得又は生成されるデータを格納したりする。CPU22が上記のプログラムに従って処理を実行することによって、第1の接続部30、第2の接続部32、決定部34、通知部36、及び、チャネル判断部38の各機能が実現される。」と、同段落0025に「詳しくは後述するが、第1の接続部30は、WFDに従った無線通信機能を実行するためのユニットである。例えば、第1の接続部30は、携帯端末8とのWFD接続を確立する。また、第2の接続部32は、WFDに従った無線通信機能ではなく、通常の無線通信機能を実行するためのユニットである。例えば、第2の接続部32は、AP4との非WFD接続を確立する。」と、それぞれ記載されている。
また、上記明細書の段落0043に「(WFD接続処理;図3) 続いて、図3を参照して、デバイス状態のプリンタ10によって実行されるWFD接続処理の内容を説明する。」と、同段落0044に「S40では、第1の接続部30は、プリンタ10とAP4との間に非WFD接続が確立されているのか否かを判断する。」と、同段落0064に「S40でYESの場合(非WFD接続が現在確立されている場合)に実行されるS46以降の処理の内容を説明する。S46では、第1の接続部30は、図3のWFD接続処理が開始されてから、1回目のG/Oネゴシエーションが実行されるべき状況であるのか否かを判断する。1回目のG/Oネゴシエーションが実行されるべき状況である場合(S46でYESの場合)には、S48に進み、2回目以降のG/Oネゴシエーションが実行されるべき状況である場合(S46でNOの場合)には、S50に進む。」と、同段落0072に「S58では、第1の接続部30は、S48又はS50のG/Oネゴシエーションにおいて、プリンタ10がG/Oになるべきことが決定されたのか否かを判断する。S48又はS50のG/Oネゴシエーションでは、プリンタ10のIntent値「14」が利用されるために、通常、プリンタ10がG/Oになるべきことが決定される。この場合、第1の接続部30は、S58でYESと判断して、S64に進む。」と、同段落0073に「S64では、決定部34は、現在確立されている非WFD接続で利用されている非WFDチャネル値Vap(即ちメモリ24内の非WFDチャネル値Vap)を参照して、非WFDチャネル値Vapに一致するWFDチャネル値Vwfdを決定する。そして、決定部34は、決定済みのWFDチャネル値Vwfdを、携帯端末8に送信(即ち通知)する。」と、同0074に「S64を経て実行されるS66では、第1の接続部30は、G/O状態用のWPSネゴシエーションを実行する。これにより、第1の接続部30は、S64で決定されたWFDチャネル値Vwfdを利用して、携帯端末8とのWFD接続を確立する。」と、それぞれ記載されている。
そして、上記明細書の記載事項における、プリンタ10が第1の接続部30を備え、該第1の接続部30が、プリンタ10とAP4との間の非WFD接続が現在確立されている状態で、G/Oネゴシエーションを携帯端末8とG/Oネゴシエーションを実行し、プリンタ10がG/Oになるべきことが決定される場合、現在確立されている非WFD接続で利用されている非WFDチャネル値Vapに一致するWFDチャネル値Vwfdを利用して、無線インターフェイス18を介して、携帯端末8とのWFD接続を確立する事項は、「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行し、前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記G/O状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記G/O状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立」する事項に対応するといえる。

また、上記明細書の段落0075に「一方において、携帯端末8のIntent値が「15」である場合には、S48又はS50のG/Oネゴシエーションにおいて、プリンタ10がクライントになるべきことが決定される。この場合、第1の接続部30は、S58でNOと判断して、S60に進む。」と、同0076に「S60では、第1の接続部30は、G/O状態の携帯端末8から、携帯端末8によって決定されたWFDチャネル値Vwfdを受信する。そして、チャネル判断部38は、受信済みのWFDチャネル値Vwfdと、現在確立されている非WFD接続で利用されている非WFDチャネル値Vapと、が一致するのか否かを判断する。」と、同段落0077「例えば、S48のG/Oネゴシエーションでは制限リストが携帯端末8に通知されるために、S48のG/Oネゴシエーションが成功した場合には、携帯端末8は、WFDチャネル値Vwfdを、制限リストに含まれる非WFDチャネル値Vapに一致する値に決定する。この場合、S60では、第1の接続部30は、携帯端末8から、非WFDチャネル値Vapに一致するWFDチャネル値Vwfdを受信し、この結果、チャネル判断部38は、S60でYESと判断する。」と、同段落0078に「S60でYESの場合には、S66において、第1の接続部30は、クライアント状態用のWPSネゴシエーションを実行する。これにより、第1の接続部30は、携帯端末8から受信されたWFDチャネル値Vwfd(即ち、非WFDチャネル値Vapに一致する値)を利用して、携帯端末8とのWFD接続を確立する。」と、段落0079に「一方において、S50のG/Oネゴシエーションでは通常リストが携帯端末8に通知されるために、S50のG/Oネゴシエーションが成功した場合には、携帯端末8は、WFDチャネル値Vwfdを、非WFDチャネル値Vapに一致しない値に決定し得る。この場合、S60では、第1の接続部30は、携帯端末8から、非WFDチャネル値Vapに一致しないWFDチャネル値Vwfdを受信し得るために、この結果、チャネル判断部38は、S60でNOと判断し得る。」と、同段落0080に「S60でNOの場合には、S62において、第1の接続部30は、WFD接続を確立することができないことを示す情報を、表示部14に表示させる。この場合、第1の接続部30は、携帯端末8とのWFD接続を確立しない。」と、それぞれ記載されている。
そして、上記明細書の記載事項における、G/Oネゴシエーションにおいて、プリンタ10がクライントに決定された場合において、G/O状態の携帯端末8から、携帯端末8によって決定されたWFDチャネル値Vwfdを受信し、受信済みのWFDチャネル値Vwfdと、現在確立されている非WFD接続で利用されている非WFDチャネル値Vapと、が一致する場合に、携帯端末8から受信されたWFDチャネル値Vwfdを利用して、無線インターフェイス18を介して、携帯端末8とのWFD接続を確立する事項は、「前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記Wi-Fi Directのクライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記クライアント状態にて、前記インターフェィスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立」する事項に対応するといえる。
また、上記明細書の記載事項における、G/Oネゴシエーションにおいて、プリンタ10がクライントに決定された場合において、G/O状態の携帯端末8から、携帯端末8によって決定されたWFDチャネル値Vwfdを受信し、受信済みのWFDチャネル値Vwfdと、現在確立されている非WFD接続で利用されている非WFDチャネル値Vapと、が一致しない場合に、携帯端末8とのWFD接続を確立しない事項は、「前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記クライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない」事項に対応するといえる。
したがって、訂正事項4は、本件特許の願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(オ) 訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項4?7を削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(カ) 訂正事項6及び7

訂正事項6、7は、択一的に記載された引用する請求項を限定し、引用する請求項の数を減少させるものであり、また、訂正事項5により請求項4?7が削除されたことに伴い、引用関係を整合させるものである。
そして、訂正事項6及び7に係る訂正により何ら技術的内容が変更されるものではない。
よって、本件特許の願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲外のものを含むとはいえない。
したがって、訂正事項6及び7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(キ) 訂正事項8
設定登録時の特許請求の範囲の請求項7には、「前記親局状態はG/O状態である」と記載されている。
また、明細書段落0002に「非特許文献1には、Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi Direct(以下では「WFD」と呼ぶ)について記載されている。」と、同段落0028に「WFDは、Wi-Fi Allianceによって策定された規格である。」と、同段落0029に「プリンタ10と携帯端末8とは、それぞれ、WFDに従った無線通信機能を実行可能である。以下では、WFDに従った無線通信機能を実行可能な機器のことを「WFD対応機器」と呼ぶ。WFDの規格では、WFD対応機器の状態として、Group Owner状態(以下では「G/O状態」と呼ぶ)、クライアント状態、及び、デバイス状態の3つの状態が定義されている。WFD対応機器は、上記の3つの状態のうちの1つの状態で選択的に動作可能である。」と、同段落0099に「(対応関係) プリンタ10、携帯端末8、AP4が、それぞれ、「無線通信装置」、「第1のデバイス」、「第2のデバイス」の一例である。G/O状態、クライアント状態が、それぞれ、「親局状態」、「子局状態」の一例である。」と、それぞれ記載されている。
したがって、訂正事項8は、本件特許の願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
(ア) 上記ア(ア)、(ウ)のとおり、訂正事項1、3は、いずれも「無線通信装置」を限定的に減縮するものであり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(イ) 上記ア(イ)、(エ)のとおり、訂正事項2、4は、「第1の接続部」を限定的に減縮するものであり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ) 訂正事項5は、訂正前の請求項4?7を削除するものであるから、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(エ) 上記ア(カ)のとおり、訂正事項6は、択一的に記載された引用する請求項を限定し、引用する請求項の数を減少させるものであり、また、訂正事項5により請求項4?7が削除されたことに伴い、引用関係を整合させるものである。
そうすると、訂正事項6は、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項7についても同様である。
したがって、訂正事項6及び7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(オ) 上記ア(キ)のとおり、訂正事項8は、「無線通信装置」の動作の状態、を「親局状態」から「G/O状態」に限定的に減縮するものであり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ 独立特許要件について
請求項1?10は、本件特許異議申立事件において特許異議の申立てがされている請求項であるから、訂正事項1?10については、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に基づき、独立特許要件は課されない。

オ 一群の請求項について
訂正前の請求項2?10は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1?4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとになされたものである。

(2) 請求項11に係る訂正
訂正前の請求項11に係る発明は、訂正前の請求項1に係る発明をプログラムのカテゴリーで表現した発明であり、また、訂正事項9?12は、訂正事項1?4と同様の訂正事項である。
したがって、上記(1)ア(ア)?(エ)における検討と同様に、訂正事項9?12は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記(1)イ(ア)?(エ)における検討と同様に、訂正事項9?12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
さらに、上記(1)ウ(ア)?(イ)における検討と同様に、訂正事項9?12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
そして、請求項11は、本件特許異議申立事件において特許異議の申立てがされている請求項であるから、訂正事項9?12については、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に基づき、独立特許要件は課されない。

3. 小括
上記のとおり、訂正事項1?8、9?12に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?10、11について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された本件特許請求の範囲の請求項1?11に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明11」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi DirectのG/O(Group Ownerの略)状態で動作可能な無線通信装置であって、
第1種の接続で利用されるべきMACアドレスと、第2種の接続で利用されるべきMACアドレスと、の両方が割り当てられる物理的に1個のインターフェイスと、
複数個の無線チャネルのうちの第1の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、特定デバイスとの前記第1種の接続を確立する第1の接続部であって、前記第1種の接続は、前記Wi-Fi Directに従った接続である、前記第1の接続部と、
前記複数個の無線チャネルのうちの第2の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、前記特定デバイスとは異なるアクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する第2の接続部と、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値のみを、前記特定デバイスに通知する通知部と、
前記第1の接続部は、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記G/O状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記G/O状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記Wi-Fi Directのクライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記クライアント状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記クライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない、無線通信装置。
【請求項2】
印刷を実行する印刷実行部をさらに備える、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
原稿の読取を行う原稿読取部をさらに備える、請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記第2の無線チャネルの値は、前記アクセスポイントによって決定される値である、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記特定デバイスとの前記第1種の接続が確立されている状態で、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されるべき場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を切断する切断部をさらに備え、
前記第2の接続部は、前記特定デバイスとの前記第1種の接続が切断された後に、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する、請求項1から3及び8のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されるべき場合に、前記アクセスポイントから前記第2の無線チャネルの値を受信する第2の受信部をさらに備え、
前記無線通信装置が前記G/O状態で動作しながら前記特定デバイスとの前記第1種の接続が確立されている状態で、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されるべき場合であって、前記アクセスポイントから、前記第1の無線チャネルの値に一致する前記第2の無線チャネルの値が受信される場合に、
前記切断部は、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を切断せず、
前記第2の接続部は、前記特定デバイスとの前記第1種の接続が維持された状態で、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する、請求項9に記載の無線通信装置。
【請求項11】
Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi DirectのG/O(Group Ownerの略)状態で動作可能な無線通信装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記無線通信装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理、即ち、
複数個の無線チャネルのうちの第1の無線チャネルを利用して、前記無線通信装置のインターフェイスを介して、特定デバイスとの第1種の接続を確立する第1の接続処理であって、前記インターフェイスは、前記第1種の接続で利用されるべきMACアドレスと、第2種の接続で利用されるべきMACアドレスと、の両方が割り当てられる物理的に1個のインターフェイスであり、前記第1種の接続は、前記Wi-Fi Directに従った接続である、前記第1の接続処理と、
前記複数個の無線チャネルのうちの第2の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、前記特定デバイスとは異なるアクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する第2接続処理と、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値のみを、前記特定デバイスに通知する通知処理と、を実行させ、
前記第1の接続処理は、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立している状態で、前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記G/O状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記G/O状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記Wi-Fi Directのクライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記クライアント状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記クライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない処理である、
コンピュータプログラム。

第4 平成30年7月3日付け取消理由通知書及び平成31年2月6日付け取消理由通知書に記載した取消理由について
1. 取消理由の概要
訂正前の請求項1?11に係る特許に対して、当審が平成30年7月3日付け取消理由通知書において、特許権者に通知した取消理由の概要をまとめると、次のとおりである。
「請求項1?11に係る発明は、甲1号証?甲6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。(特許法第113条第2号)。」
また、平成30年9月6日付け訂正請求書による訂正の請求により、訂正された請求項1?3,5?11に係る発明に対して、当審が平成31年2月6日付け取消理由通知書(決定の予告)において、特許権者に通知した取消理由の概要をまとめると、次のとおりである。
「請求項1?3,5?11に係る発明は、甲第1号証?甲第6号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。そうすると、請求項1?3,5?11に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1?3、5?11に係る発明は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。」
<甲号証>
甲第1号証?甲第6号証として、以下のとおり引用されている。
甲1 特開2012-19487号公報
甲2 特開2012-9964号公報
甲3 Wi-Fi Peer-to-Peer(P2P) Technical Specification Version 1.1、平成22年、Wi-Fi Alliance
甲4 特開2011-217063号公報
甲5 特開2011-124980号公報
甲6 IEEE Std 802.11,1999 Edition,Part11:Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer(PHY) Specifications、平成11年、IEEE

2. 甲号証の記載事項
(1) 甲第1号証について
取消理由で引用された特開2012-19487号公報(公開日:平成24年1月26日、以下、「甲第1号証」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
ア 「【0001】
本発明は、複数のネットワークに無線接続することが可能な通信装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IEEE802.11仕様に準拠した、無線LAN用のインタフェースを備える無線機器が数多く製品化され、無線LANが広く利用されるようになっている。無線LANでは、通信を中継する無線アクセスポイントを利用することにより、機器間で通信を行ったり、各機器からインターネットへアクセスしたりすることができる。一般に、このような通信形態はインフラモード接続と呼ばれている。
【0003】
一方、無線アクセスポイントを経由せずに、直接、機器同士が通信することも可能であり、一般に、このような通信形態はアドホックモード接続と呼ばれている。アドホックモード接続においては、各機器は対等の立場で通信を行う。ただし、ネットワークを形成するときにネットワークを作成する機器(ネットワーク作成者)として動作するか、それに追随してネットワークに参加する機器(ネットワーク参加者)として動作するかという役割の違いが存在する。
【0004】
これに対して、インフラモード接続では、通常、各機器が1つのネットワークに対して端末として接続することで、データの送受信を行うが、最近では、端末としての接続とアクセスポイントとしての接続の両方の動作が可能な機能も開発されている。具体的には、Windows7(登録商標)の「Connectify」等が挙げられる(詳細は、下記非特許文献1参照)。このため、インフラモード接続においても端末モード(ネットワーク参加者)として動作する役割と、アクセスポイントモード(ネットワーク作成者)として動作する役割とが存在する。
【0005】
このように、最近ではインフラモード接続においてもアドホックモード接続においても、ネットワーク参加者として動作する役割と、ネットワーク作成者として動作する役割の両方が存在する。
【0006】
更に、通信形態として、インフラモードで接続しつつ、アドホックモードで接続する技術(つまり、インフラモードとアドホックモードとを同時にあるいは切り替えて実行する技術)も提案されている(例えば、下記特許文献1乃至3参照)。このようなことから、無線LANにおけるネットワーク接続には、合計4つの態様が考えられる。
【0007】
図1は、これら4つの態様により各機器(プリンタ101、アクセスポイント102、プリンタ101、PC103、デジタルカメラ104、携帯端末105、106)がネットワーク接続されたシステムの一例を示す図である。以下、図1のシステムについて簡単に説明する。
【0008】
図1において、プリンタ101とアクセスポイント102とはインフラモード接続されており、プリンタ101は端末モードとして動作している。また、PC103とアクセスポイント102とは、インフラモード接続されており、PC103は端末モードとして動作している。これにより、PC103は、アクセスポイント102を介して、プリンタ101にてドキュメント等を印刷することができる。
【0009】
一方、プリンタ101とデジタルカメラ104とは、インフラモード接続されており、デジタルカメラ104は端末モードとして動作している。これにより、デジタルカメラ104は、撮像した画像をプリンタ101にて印刷することが可能となっている。
【0010】
また、プリンタ101と携帯端末105とはアドホックモード接続されており、プリンタ101はネットワーク作成者として動作し、携帯端末105はネットワーク参加者として動作している。更に、プリンタ101と携帯端末106とはアドホックモード接続されており、プリンタ101はネットワーク参加者として動作し、携帯端末106はネットワーク作成者として動作している。
【0011】
ここで、図1に例示したシステムにおいて、それぞれの機器が、どのような態様でネットワーク接続するのが最も適切かは、機器の組合せによっても異なってくる。このため、プリンタ101がどのような態様に対応する機能をサポートしていれば十分かは、一概には言えない。
【0012】
例えば、空港などの一時的な利用で携帯端末105にて撮像した画像をプリンタ101で印刷するような場合について考える。この場合、アクセスポイントの設定を行ってアクセスポイント経由で印刷を行うよりも、目の前に存在するプリンタ101との間の設定だけを行って印刷を行う方がユーザにとっては簡便である。反対に、PC103にて生成されたドキュメントをプリンタ101で印刷する場合には、できるだけ安定した通信を高速に行うことが重要であり、設定の手間が多少かかったとしても、アクセスポイント102経由で通信を行うことが望ましい。このため、プリンタ101は、様々な態様に対応する機能をサポートしていることが望ましい。
【0013】
一方で、プリンタ101等の機器に搭載される無線LAN用のインタフェースは、通常、アンテナが1つのみ配されており、また、物理的なインタフェースの個数も1つのみであることが多い。このため、上述のような複数の機器とのネットワーク接続を同時にサポートする場合、ネットワーク接続する機器ごとにチャネルが異なっていると、チャネルの切り替え処理を行う必要が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】(省略)
【0015】
(中略)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述のようなシステムにおいて、複数の機器と異なる通信形態によりネットワーク接続し、それぞれの機器との通信のたびにチャネルの切り替え処理を行う構成とすると、切り替え処理に伴うパケットのロスが不可避となる。このため、複数の機器と異なる通信形態によりネットワーク接続する場合においては、極力、チャネルの切り替え処理を行うことなく通信できるようにすることが望ましい。
【0017】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、複数のネットワークに無線接続することが可能な通信装置において、チャネルの切り替え処理を行うことなく、通信を行うことができるようにすることを目的とする。
(中略)
【0018】?【0021】(省略)
【0022】
[第1の実施形態]
<1.システムの構成>
本発明の第1の実施形態に係る通信装置(無線LAN用のインタフェース)が搭載されたプリンタ101がネットワーク接続されるシステムの構成は図1に示す通りである。なお、図1に示す各機器の詳細、並びに、各機器とのネットワーク接続の詳細については、既に説明済みであるため、ここでは説明を省略する。
【0023】
<2.プリンタの機能構成>
次に、プリンタ101の機能構成について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る通信装置(無線LAN用のインタフェース)が搭載されたプリンタ101の機能構成図である。
【0024】
図2において、操作部210は、プリンタ101に対するユーザの各種指示を受け付ける機能を備えており、システムコントローラ211を介してCPU215と接続されている。
【0025】
プリントエンジン202は、実際に用紙に画像をプリントする機能を備えており、プリント処理部203によって制御される。表示部206は、LCD表示、LED表示、音声出力等、ユーザに対して情報を出力する機能を備えており、表示処理部207によって制御される。なお、表示部206に出力された情報のうち、ユーザ所望の情報を選択するための操作は、操作部210を介して行われる。
【0026】
メモリカードI/F208は、メモリカード209を接続するためのインタフェースであり、USBI/F212は、外部機器とUSBを介して接続するためのインタフェースである。また、パラレルI/F213は、外部機器とパラレル通信を介して接続するためのインタフェースである。
【0027】
無線通信機能部204は、無線通信を行う機能として、無線の規格となるパケットのフレーミング、データに対する応答処理、データの暗号/復号処理などを行う機能を備えている。また、RF部205は、他の機器が備える無線通信機能部との間で無線信号の送受信を行う機能を備えている。RF部205と無線通信機能部204は1つのブロック(無線LAN用インタフェース)として実現されてもよい。
【0028】
なお、図2では、RF部205が有するアンテナを、プリンタ101の外部に突出する形態で示しているが、RF部205が有するアンテナは、このような形態に限られるものではない。
【0029】
また、本発明は、RF部が1つのみ配されていることを前提としているが、RF部が複数配されている場合であっても、各RF部が同一のチャネルで動作する限りにおいては、本発明を適用することが可能である。
【0030】
図2の各部(202?213)は、ROM216、もしくは、不揮発性の記憶領域であるフラッシュROM214に格納されたプログラムが、CPU215によって実行されることにより、制御される。なお、CPU215がプログラムを実行する際に処理するデータ(設定情報等)は、RAM217、もしくは、フラッシュROM214に、書き込み/読み出し可能に格納されているものとする。
【0031】
<3.テーブルの構成>
次に、図1に示す各ネットワーク接続における、通信形態及び優先度が規定されたテーブルについて説明する。図3は、図1に示す各ネットワーク接続についての、通信形態及び優先度が規定されたテーブルであり、プリンタ101のフラッシュROM214に格納されているものとする。
【0032】
図3において、301はプリンタ101と各機器とのネットワーク接続についての「優先度」を規定する。302は、各ネットワーク接続における通信に用いられる、「ESSID」を規定する。303は、各ネットワーク接続における「ネットワークタイプ」(通信形態)を規定している。304は各ネットワーク接続におけるプリンタ101の動作モードを規定している。305は、各ネットワーク接続におけるプリンタ101の役割を規定している。なお、306はプリンタ101とネットワーク接続される各機器を規定している。
【0033】
図3に示すように、図1に示すシステムにおいて、優先度のもっとも高いネットワーク接続は、プリンタ101とアクセスポイント102との接続である。なお、プリンタ101とアクセスポイント102との間のネットワーク接続において、プリンタ101は、端末モードで動作し、アクセスポイント102にインフラモードにより接続する(ESSID=Infra1)。
【0034】
また、優先度“2”のネットワーク接続は、プリンタ101とデジタルカメラ104との接続である。なお、プリンタ101とデジタルカメラ104との間のネットワーク接続において、プリンタ101はアクセスポイントモードで動作し、端末モードとして動作するデジタルカメラ104とは、インフラモードにより接続する(ESSID=Infra2)。
【0035】
また、優先度“3”のネットワーク接続は、プリンタ101と携帯端末105との接続である。なお、プリンタ101と携帯端末105との間のネットワーク接続において、プリンタ101は、ネットワークの作成者の役割で動作し、携帯端末105とは、アドホックモードにより接続する(ESSID=Adhoc1)。
【0036】
また、優先度“4”のネットワーク接続は、プリンタ101と携帯端末105との接続である。なお、プリンタ101と携帯端末106との間のネットワーク接続において、プリンタ101は、ネットワークの参加者の役割で動作し、携帯端末106とは、アドホックモードにより接続する(ESSID=Adhoc2)。
【0037】
なお、本実施形態では、各ネットワーク接続についての通信形態及び優先度を規定した上記テーブルを、予めプリンタ101が格納しておく構成とした(つまり、ユーザが全てのネットワーク接続について、予め優先度を設定しておく構成とした)。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、ユーザが優先度“3”として2つの異なるネットワーク接続を指定しておき、先にネットワーク接続できた方を優先度が高いと判断することで、優先度を設定するように構成してもよい。
【0038】
<4.ネットワーク接続処理の流れ>
次に、プリンタ101によるネットワーク接続処理の流れについて説明する。図4は、プリンタ101におけるネットワーク接続処理の流れを示すフローチャートである。なお、図4に示すネットワーク接続処理を実行するにあたり、プリンタ101は、いずれのネットワークとも接続されていないものとする。また、ネットワーク接続に際して、プリンタ101は、優先度の高い方から順次接続を開始していくものとする。
【0039】
なお、説明の一般化のため、対象となるネットワーク接続の優先度を“n”と表現する。優先度は小さい値のほうが高いことを意味し、“n-1”は、“n” よりも優先度が1つ高いことを意味している。
【0040】
ステップS401においてネットワークの接続要求が発行されると、ステップS402では、ステップS401にて要求されたネットワーク接続の優先度“n ”と比較して優先度の高いネットワーク接続の有無を、図3を参照しながら判定する。
【0041】
例えば、要求されたネットワーク接続が、プリンタ101とデジタルカメラ104との間のネットワーク接続であったとする。この場合、当該ネットワーク接続の優先度は“2”である。そして、当該優先度と比較して優先度の高いネットワーク接続として、優先度が“1”のネットワーク接続が既に存在しているか否かを判定し、存在していると判定された場合には、ステップS403に進む。一方、優先度が“1”のネットワーク接続がその時点で存在していないと判定された場合には、ステップS406に進む。
【0042】
ステップS406では、プリンタ101がネットワーク参加者として動作する場合には、所定のチャネル(ネットワーク作成者が規定するチャネル)を利用して接続する。また、ネットワーク作成者として動作する場合には、所定のチャネルもしくは空きチャネルを利用してネットワークを生成する。
【0043】
図3の例では、優先度“1”、ESSIDがInfra1のネットワークに接続する。これによって、プリンタ101はアクセスポイント102と接続して、PC103と通信することができるようになる。なお、ここでは、チャネル“7 ”で接続されたものとする。
【0044】
一方、ステップS403では、要求されたネットワーク接続において、プリンタ101がネットワーク作成者として動作するか否かを判定する。具体的には、要求されたネットワーク接続が、インフラモード接続の場合には、アクセスポイントとして起動するのか、端末モードで起動するのかが、ユーザによって指定されるため、ここでは、いずれのモードが指定されたかを判定する。
【0045】
ステップS403においてネットワーク作成者として動作すると判定された場合には、ステップS404に進む。具体的には、インフラモード接続において、アクセスポイントとして起動することをユーザが指定した場合には、ステップS404に進む。
【0046】
ステップS404では、要求されたネットワーク接続の優先度“n”と比較して優先度の高いネットワーク接続において既に利用されているチャネルと同じチャネルでネットワークを作成することができるか否かを判定する。具体的には、ネットワークをスキャンし、その結果、例えば、1つのチャネルに既に多くのネットワークが存在していることが確認された場合には、同じチャネルでネットワークを作成することができないと判定する。あるいは、プリンタ101が作成したネットワークの数が、所定の数(閾値)を超えているかを判断し、超えている場合には、同じチャネルでネットワークを作成することができないと判定する。
【0047】
ステップS404において、同じチャネルでネットワークを作成することができないと判定された場合には、ステップS410に進み、ネットワーク接続に失敗した旨(エラー)を出力する。一方、ステップS404において、同じチャネルでネットワークを作成することができると判定された場合には、ステップS405に進む。ステップS405では、要求されたネットワーク接続の優先度“n ”と比較して優先度の高いネットワークにおいて既に利用されているチャネルと同じチャネルでネットワークを作成する。
【0048】
例えば、要求されたネットワーク接続が、プリンタ101とデジタルカメラ104との間のネットワーク接続であったとすると、当該ネットワーク接続の優先度は“2”であり、アクセスポイントモードして動作することから、ステップS405に進む。このとき、既に、優先度“2”と比較して優先度の高いネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在することから、当該ネットワーク接続において既に利用されているチャネル“7”と同じチャネルでネットワークを作成する。これにより、プリンタ101はアクセスポイント102への接続を維持しつつ、デジタルカメラ104が接続できるネットワークを作成することができる。なお、この場合、1つのチャネルに2つのネットワークが存在することとなる。
【0049】
更に、要求されたネットワーク接続が、プリンタ101と携帯端末105との間のネットワーク接続であったとすると、当該ネットワーク接続の優先度は“3 ”であり、ネットワーク作成者として動作することから、ステップS405に進む。このとき、既に、優先度“3”と比較して優先度の高いネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1、優先度“2”、ESSID=Infra2)が存在する。このため、当該ネットワーク接続において利用されているチャネル“7”と同じチャネルでネットワークを作成する。これにより、プリンタ101はアクセスポイント102への接続を維持しつつ、デジタルカメラ104が接続できるネットワークを作成することができる。この結果、1つのチャネルに3つのネットワークが存在することとなる。
【0050】 一方、ステップS403においてネットワーク作成者として動作しないと判定された場合には、ステップS408に進む。ステップS408では、要求されたネットワーク接続において利用しようとしているチャネルと同一チャネルのネットワーク接続の有無を判定する。ステップS408において、既に、同一チャネルのネットワーク接続が存在していると判定された場合には、ステップS411に進み、当該同一チャネルを利用して、要求されたネットワーク接続を実施する。
【0051】
一方、ステップS408において、要求されたネットワーク接続において利用しようとしているチャネルと同一チャネルのネットワーク接続が存在していないと判定された場合には、ステップS409に進む。ステップS409では、要求されたネットワーク接続において、ネットワーク作成者として動作する機器に対して、チャネル変更の要求を送信する。そして、当該チャネル変更の要求に対する、当該機器からの回答に基づいて、要求されたネットワーク接続において利用しようとしているチャネルの変更可否を判定する。
【0052】
ステップS409において、チャネル変更が可能でないと判定された場合には、ステップS410に進み、ネットワーク接続に失敗した旨(エラー)を出力する。一方、ステップS409において、チャネル変更が可能であると判定された場合には、ステップS412に進み、チャネル変更処理を行い、変更後のチャネルを利用して、要求されたネットワーク接続を実施する。なお、ステップS412におけるチャネル変更処理の詳細は後述する。
【0053】?【0063】(省略)
【0064】
<6.チャネル変更処理(アドホックモードの場合)>
次に、図5のステップS412におけるチャネル変更処理の流れについて図6を用いて説明する。図6は、要求されたネットワーク接続が、アドホックモード接続の場合におけるチャネル変更処理の流れを示すシーケンス図である。
【0065】
ステップS601では、プリンタ101は、チャネル変更を要求するネットワークを構成する各機器に対して、チャネル変更パケットをブロードキャスト送信する。あるいは、ビーコン送信者に対して、チャネル変更パケットをユニキャスト送信する。なお、当該パケットには、変更後のチャネルが記載されているものとする。
【0066】
チャネル変更パケットを受信した機器では、チャネル変更可否を返信し、ステップS602では、プリンタ101が、チャネル変更可否の返信を受信する。なお、ステップS601において、チャネル変更パケットがブロードキャスト送信されていた場合には、全ての機器からの返信を一定時間待つ。また、ステップS601において、チャネル変更パケットがユニキャスト送信されていた場合には、チャネル変更可否の返信もユニキャストで行われるため、チャネル変更パケットをユニキャスト送信した機器からの返信を一定時間待つ。
【0067】
チャネル変更可否の返信を行った機器では、あといくつのビーコンが送信された後に、チャネルが変更されるかを示すチャネルアナウンスメントを含むビーコンを送信する。なお、当該チャネルアナウンスメントの値は、次のビーコン送信者によっても受け継がれていく。このため、プリンタ101では、当該ビーコンを受信することで、あといくつのビーコンが送信された後に、チャネルが変更されるかを認識することができる(ステップS603)。プリンタ101では、変更後のチャネルでビーコンが送信されるまでの間、チャネルアナウンスメントを含むビーコンを受信する(ステップS604)。
【0068】
ステップS605において、チャネル変更可否の返信を行った機器が、ネットワークから離脱すると、ステップS606では、変更後のチャネルでビーコンを送信する。変更後のチャネルでビーコンを受信したプリンタ101では、ステップS607において、変更後のチャネルでネットワーク接続を実施する。また、変更後のチャネルでビーコンを送信した機器では、ステップS608において、変更後のチャネルでネットワーク接続を実施する。
【0069】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、複数の機器とネットワーク接続し、それぞれの機器との通信を行うにあたり、同一チャネルを利用する構成とした。具体的には、ネットワーク接続の優先度を規定し、既に、ネットワーク接続が存在する状態であって、新たに当該ネットワークに接続する場合または新たなネットワークを作成する場合に、当該優先度に従って、チャネルを変更する構成とした。
【0070】
このように、複数の機器と異なる通信態様でネットワーク接続するにあたり、同一のチャネルを利用する構成とすることで、チャネルの切り替え処理を行う必要がなくなり、パケットのロスの発生を抑えることが可能となった。
【0071】?【0092】(省略)
【0093】
また、上記実施形態では、図3に示すテーブルを予めユーザが設定する構成としたが、本発明はこれに限定されず、ユーザがネットワークを列挙し、これに対して、自動的に優先度を設定する構成としてもよい。例えば、インフラモード接続で端末モードとして接続する場合の優先度を“1”、インフラモード接続でアクセスポイントモードとして接続する場合の優先度を“2”と決めておく。また、アドホックモード接続でネットワーク生成者として接続する場合の優先度を“ 3”、アドホックモード接続でネットワーク参加者として接続する場合の優先度を“4”と決めておく。そして、ユーザにはどのモードで接続するのかを指定させるのではなくESSIDだけを指定させた後に、ネットワーク上をスキャンする。これにより、予め決めておいた優先度に従って動的にトータルオーダの順番にて同じチャネルを利用して接続していくことが可能となる。
【0094】
また、上記実施形態では、ネットワーク接続処理やチャネル変更処理(図4?図8)の実行主体を特に限定しなかったが、当該処理は、プリンタ101のCPU215にて実行されてもよいし、無線通信機能部204にて実行されてもよい。なお、無線通信機能部204で実行される場合は、CPUが無線通信機能部204内に存在するか、もしくはハード的な回路が無線通信機能部204内に存在することとなる。」

イ 図1

ウ 図3

エ 図4


オ 甲第1号証に記載された第1の発明(甲1発明1)
(ア) 上記ウ図3及び上記ア段落0031、0033、0035?0037によると、甲第1号証には、予めプリンタ101に格納されたテーブルに、
優先度が1、及びESSIDがInfra1であり、端末モードで動作して、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続、及び、
優先度が3、及びESSIDがAdhoc1であり、ネットワークの作成者の役割で動作して、携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続、及び、
優先度が4、及びESSIDがAdhoc2であり、ネットワークの参加者の役割で動作して、携帯端末106とアドホックモードより接続するネットワーク接続、
を規定する事項が記載されているといえる。
そして、上記イ図1に示されるように、「優先度が3、及びESSIDがAdhoc1であり、ネットワークの作成者の役割で動作して、携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続」における携帯端末105はネットワーク参加者として動作し、「優先度が4、及びESSIDがAdhoc2であり、ネットワークの参加者の役割で動作して、携帯端末106とアドホックモードより接続するネットワーク接続」における携帯端末106はネットワーク作成者として動作する。
してみると、甲第1号証には、
「優先度が1で、ESSIDがInfra1である、端末モードで動作して、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続、優先度が3で、ESSIDがAdhoc1である、ネットワークの作成者の役割で動作して、ネットワーク参加者として動作する携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続、及び、優先度が4で、ESSIDがAdhoc2である、ネットワークの参加者の役割で動作して、ネットワーク作成者として動作する携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続、を規定するテーブルを予め格納したプリンタ101」が記載されているといえる。

(イ) 上記ア段落0013、0016?0017、0070によると、甲第1号証には、アンテナが1つのみ配されており、また、物理的なインタフェースの個数も1つのみである無線LAN用のインタフェースを搭載することに起因する課題を、複数の機器と異なる通信態様でネットワーク接続するにあたり、同一のチャネルを利用することにより解決することが記載され、また、上記ア段落0027には「RF部205と無線通信機能部204は1つのブロック(無線LAN用インタフェース)として実現されてもよい。」と記載されているから、甲第1号証記載のプリンタ101は、「アンテナが1つのみ配されており、また、物理的なインタフェースの個数も1つのみである無線LAN用のインタフェースが搭載され」ているといえる。

(ウ) 上記ア段落0002によると、IEEE802.11仕様に準拠する無線インターフェイスが例示されていることから、甲第1号証記載のプリンタ101が搭載する、無線LAN用インタフェースも、IEEE802.11仕様に準拠するといえ、IEEE802.11では、複数の無線チャネルから使用するチャネルを選択し、無線通信を行うことは技術常識であるから、上記ア段落0043の優先度“1”、ESSIDがInfra1のネットワーク接続、及び、上記ア段落0049の優先度“3”のネットワーク接続が利用する「チャネル“7”」は、それぞれ複数の無線チャネルから選択されたチャネルであることは明らかである。
また、上記ア段落0049によると、要求されたネットワーク接続が、優先度が“3”であり、ネットワーク作成者として動作する、プリンタ101と携帯端末105との間のネットワーク接続であって、優先度の高いネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1、優先度“2”、ESSID=Infra2)が存在する場合、プリンタ101は、当該優先度の高いネットワーク接続において利用されているチャネル“7”と同じチャネルでネットワークを作成することから、プリンタ101は、該ネットワークを作成するために、携帯端末105側に「当該優先度の高いネットワーク接続において利用されているチャネル“7”と同じチャネル」を送信することは明らかである。
よって、上記ア段落0043、0049によれば、甲第1号証には、「複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合において、
プリンタ101がネットワーク作成者の役割で動作し、携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“3”、ESSID=Adhoc1)が要求される場合、プリンタ101は、上記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)において利用されている、複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”と同じチャネルを、携帯端末105に送信し、当該チャネルでネットワークを作成する」事項が記載されているといえる。

(エ) 上記ア段落0038?0052及び図4に記載された「プリンタ101によるネットワーク接続処理の流れ」には、「優先度が4で、ESSIDがAdohoc2である、ネットワークの参加者の役割で動作して、ネットワーク作成者として動作する携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続」について明記されていないものの、上記ネットワーク接続処理が、「アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合」に、「プリンタ101がネットワーク参加者の役割で動作し、ネットワーク作成者として動作する携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)が要求される」ケースを含むことは当然のことである。
そして、上記ア段落0043、0050によると、上記ケースでは、「要求されたネットワーク接続において利用しようとしているチャネルと同一のチャネルのネットワーク接続」が存在する場合、即ち、「ネットワーク作成者である携帯端末106が規定するチャネルと既に存在するアクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)で利用されるチャネルが同一であれば」、プリンタ101は、該チャネルを利用してネットワーク接続を実施することも含まれることは明らかである。
よって、甲1号証には、「複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合において、
プリンタ101がネットワーク参加者の役割で動作し、携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)が要求される場合、プリンタ101は、ネットワーク作成者として携帯端末106が規定するチャネルと前記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)で利用されるチャネルが同一であれば、該チャネルを利用してネットワーク接続を実施する」事項が記載されているといえる。

(オ) また、上記段落0051、0052によると、上記(エ)のケースでは、「要求されたネットワーク接続において利用しようとしているチャネルと同一のチャネルのネットワーク接続」が存在しない場合、即ち、「ネットワーク作成者である携帯端末106が規定するチャネルと既に存在するアクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)で利用されるチャネルが同一でなければ」、プリンタ101は、携帯端末106に対して、チャネル変更の要求を送信し、チャネル変更が可能でなければ、ネットワーク接続に失敗した旨(エラー)を出力する」ことも含まれることは明らかである。
よって、甲1号証には、「複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合において、
プリンタ101がネットワーク参加者の役割で動作し、携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)が要求される場合、プリンタ101は、ネットワーク作成者として動作する携帯端末106が規定するチャネルと前記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)で利用されるチャネルが同一でなければ、携帯端末106に対して、チャネル変更の要求を送信し、チャネル変更が可能でなければ、ネットワーク接続に失敗した旨(エラー)を出力する」事項が記載されているといえる。

以上を踏まえると、甲第1号証には、以下の第1の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認める。
「優先度が1で、ESSIDがInfra1である、端末モードで動作して、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続、優先度が3で、ESSIDがAdhoc1である、ネットワークの作成者の役割で動作して、ネットワーク参加者として動作する携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続、及び、優先度が4で、ESSIDがAdhoc2である、ネットワークの参加者の役割で動作して、ネットワーク作成者として動作する携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続、を規定するテーブルを予め格納したプリンタ101であって、
アンテナが1つのみ配されており、また、物理的なインタフェースの個数も1つのみである無線LAN用のインタフェースが搭載され、
(a)複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合において、
プリンタ101がネットワーク作成者の役割で動作し、携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“3”、ESSID=Adhoc1)が要求される場合、プリンタ101は、上記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)において利用されている、複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”と同じチャネルを、携帯端末105に送信し、当該チャネルでネットワークを作成し、
(b)複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合において、
プリンタ101がネットワーク参加者の役割で動作し、携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)が要求される場合、プリンタ101は、ネットワーク作成者として携帯端末106が規定するチャネルと前記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)で利用されるチャネルが同一であれば、該チャネルを利用してネットワーク接続を実施する、
(c)複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合において、
プリンタ101がネットワーク参加者の役割で動作し、携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)が要求される場合、プリンタ101は、ネットワーク作成者として動作する携帯端末106が規定するチャネルと前記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)で利用されるチャネルが同一でなければ、携帯端末106に対して、チャネル変更の要求を送信し、チャネル変更が可能でなければ、ネットワーク接続に失敗した旨(エラー)を出力する、
プリンタ101。」

カ 甲第1号証に記載された第1の技術事項(甲1技術1)
上記ア段落0030によれば、甲第1号証には、下記の技術事項(甲1技術1)が記載されていると認める。
「プリンタ101の各部(202?213)は、ROM216、もしくは、不揮発性の記憶領域であるフラッシュROM214に格納されたプログラムが、CPU215によって実行されることにより、制御される。」

(2) 甲第2号証について
取消理由で引用された特開2012-9964号公報(公開日:平成24年1月12日、以下、「甲第2号証」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)

ア 「【0001】
本発明は、仮想化された無線ネットワーク・カードを備える無線端末装置を制御する技術に関し、さらに詳細には競合するチャネル間の電波干渉を排除して無線ネットワーク全体としてのスループットの最大化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型携帯式コンピュータ(以下、ノートPCという。)やPDAなどの無線端末装置にはIEEE802.11の規格に適合した無線LAN(WLAN)アダプタが搭載されており、無線基地局またはアクセス・ポイント(AP)を通じてLANを構成するネットワーク機器と通信をすることができる。また、ノートPCは、IEEE802.15の規格に適合したBluetooth(登録商標)またはUWB(Ultra Wide Band)といった無線PAN(WPAN)アダプタを搭載してLAN機器との通信と同時に、プリンタ、プロジェクタ、またはデジタル・カメラといったパーソナル機器との通信ができるようになっている。この場合ノートPCは、WLANアダプタとWPANアダプタを搭載することになる。
【0003】
近年公表された、マイクロソフト社のWindows(登録商標)7、インテル社(インテルは登録商標)のMy WiFi Technology(MWT)、または、米国の無線LAN業界団体であるWi-Fi Allianceにより策定されたWi-Fi Directといったような技術では、1つのWLANアダプタをソフトウエアで仮想化することで2つのネットワーク・アダプタとして動作させることができる。このように1つのLANアダプタを仮想化することで、一方のインターフェースを使ってノートPCをAPに接続するステーションとして動作させ、他方のインターフェースを使ってプリンタやプロジェクタなどのパーソナル機器に接続する仮想APとして動作させることができる。
【0004】(省略)
【0005】
LANアダプタを仮想化したノートPCが、特定のAPを中心とする近接した距離に複数存在するようになると、各ノートPCが仮想APとして動作してパーソナル機器と通信するために必要となるチャネルの数が増大する。チャネルは、2.4GHzまたは5GHzといった無線周波数帯の中で、電波干渉が生じないだけの周波数間隔を空けて決定することもあって周波数帯ごとの数には限界がある。よって仮想APとして動作するノートPCが接近している場合には、パーソナル機器との通信に使用するチャネルが不足して接続できない事態が生じたり、重複したチャネルを使用することでフレームの衝突が頻発してスループットが低下したりする。
【0006】?【0007】(省略)
【0008】
(中略)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ノートPCがステーションとして動作してAPに接続すると同時に仮想APとして動作して配下のパーソナル機器に接続している場合には、それぞれの動作モードで使用するMACアドレスが独立しているため、特許文献2の方法で受信信号を検査しても電波干渉を生じる他のノートPCを特定することができない。また、スループットの最大化を図るためには時間的に変化するネットワークの状態に応じてダイナミックに制御する必要がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、仮想化された無線ネットワーク・カードを実装する複数の無線端末装置を含む複合無線ネットワークにおいて無線チャネルの数を確保する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、複合無線ネットワークにおいてスループットの最大化を図る方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような方法を実現する無線端末装置およびコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】?【0021】(省略)
【0022】
[無線LANシステムの構成]
図1は、IEEE802.11に規定するインフラストラクチャ・モードのLAN10のネットワーク構成を示す図である。図1ではイーサネット(登録商標)のバックボーン・ネットワーク11に、代表的に管理サーバ13、AP20、およびAP30が接続された状態が示されている。バックボーン・ネットワーク11には図1には示していないWebサーバ、メール・サーバ、DNSサーバ、およびデータベース・サーバなどのさまざまなサーバが接続される。1つのAPがカバーする電波の到達範囲として画定された面積的な領域をセルという。図1には、AP20が形成したセル15とAP30が形成したセル17とを示している。さらに仮想APとして動作するノートPC21が形成したセル19も示している。セル15とセル17は、重複する範囲を含んでいる。
【0023】(省略)
【0024】
各ノートPC21a、21b、21c、31a、31bは、ネットワーク・インターフェース・カード(NIC)を搭載している。各ノートPCのNICは、仮想APおよびステーションの2つの動作ができるようにソフトウエアで仮想化されている。したがって、各ノートPCはステーションとして動作してAP20またはAP30に対する接続を維持しながら、プリンタ、プロジェクタ、カメラ、または他のノートPCといったようなWLANのNICを搭載したパーソナル機器と通信することができる。ノートPC21bは、仮想APとして動作してパーソナル機器40b、40cとの間にWLANとは異なる独自の無線ネットワークを構築している。
【0025】
以後、各ノートPC21a、21b、21c、31a、31bとAP20、30により構成される通信ネットワークをWLANといい、仮想APとして動作する各ノートPC21a、21b、21c、31a、31bと対応するパーソナル機器により構成される通信ネットワークを無線パーソナル・エリア・ネットワーク(WPAN)ということにする。ただし本発明におけるWPANは、IEEE802.15に規定するBluetooth(登録商標)またはUWB(Ultra Wide Band)の通信方式とは異なり、IEEE802.11の規格に基づくWLANの通信方式を採用する。管理サーバ13の機能および各ノートPCの構成については後に説明する。
【0026】
[ノートPCの構成]
図2は、ノートPC21a、21b、21c、31a、31bに対応するノートPC100のハードウエア構成を示す概略の機能ブロック図である。ノートPC100は中央演算処理装置(CPU)101、メイン・メモリ103、ディスク・ドライブ105、液晶ディスプレイ装置(LCD)107、入出力デバイス109およびNIC111がバス115に接続されている。ディスク・ドライブ105には、オペレーティング・システム(OS)、アプリケーション・プログラム、およびデバイス・ドライバの他に本実施の形態に関わるプログラムが格納されている。NIC111には、アンテナ113が接続されている。
【0027】
NIC111はデバイス・ドライバと協働してTCP/IP階層モデルのネットワーク・インターフェース層に位置する送信機および受信機として動作する。NIC111は、バス115と無線媒体との間でフレームを双方向に転送する際のバッファ機能を含む。NIC111は、送信時にIPパケットにMACヘッダを付加してフレームを生成したり、受信時にフレームからMACヘッダを除去したりするプロトコル変換機能を含む。
【0028】
NIC111はさらに送信時にデータを符号化および変調してアンテナ113に高周波信号として出力する機能および受信時に復調および誤り訂正処理をする機能を含む。また、NIC111は、デバイス・ドライバの制御により電波出力を変化させたり使用するチャネルを変化させたりすることができる。さらにNIC111は、受信したビーコン・フレームの電波強度を測定したり、通信パケットのエラー・レートおよびSN比を測定したりすることができる。なお、NIC111の構成は周知である。
【0029】
図3は、ノートPC100に実装されるソフトウエアの概略の構成を示す機能ブロック図である。本発明にかかるノートPC100は、WLANとWPANを同時に構築することができる。(中略)
【0030】?【0035】(省略)
【0036】
デバイス・ドライバ167は、NIC111の動作を制御したりNIC111と仮想化モジュール157との間のデータ通信を制御したりするプログラムである。デバイス・ドライバ167とNIC111はTCP/IPプロトコル・モデル階層のネットワーク・インターフェース層に位置する。デバイス・ドライバ167は、パケット制御部165からWLAN195のタイムスロットに設定する切り換え信号を受け取ったときには、NIC111をたとえばチャネル1に設定する。
【0037】
デバイス・ドライバ167は、パケット制御部165からWPAN193のタイムスロットに設定する切り換え信号を受け取ったときには、NIC111をチャネル1とは異なるたとえばチャネル6に設定する。デバイス・ドライバ167は、NIC111に複数の電波出力を設定することができ、さらにチャネル1とチャネル6でNIC111が異なる電波出力で動作するように制御することができる。
【0038】?【0039】(省略)
【0040】
仮想化モジュール157およびデバイス・ドライバ167はノートPC100を時分割で、WLAN195のタイムスロットで動作するときにAPと通信するステーションとして動作させ、かつWPAN193のタイムスロットで動作するときにパーソナル機器と通信する仮想APとして動作させることができる。ユーザは接続ユーティリティ151を通じて仮想APをイネーブルに設定したりディスエーブルに設定したりすることができる。
【0041】?【0042】(省略)
【0043】
ここではNIC111からは、ステーションとして動作するときにチャネル1を使用し、仮想APとして動作するときにチャネル6を使用するといったように時分割でフレームが送信される。それらのフレームはWLAN195のAPにもWPAN193のパーソナル機器にも届くが、APはチャネル1のフレームだけを受信し、パーソナル機器はチャネル6のフレームだけを受信する。また、NIC111はチャネル1で動作するときにはAPから受け取ったフレームを受信し、チャネル6で動作するときはパーソナル機器から受け取ったフレームを受信する。本実施の形態では、仮想化モジュール157をOS155とは別のモジュールとして構成したが、OS155の中に組み込むこともできる。 図3は、ノートPC100に実装されるソフトウエアの概略の構成を示す機能ブロック図である。本発明にかかるノートPC100は、WLANとWPANを同時に構築することができる。
(中略)
【0044】
[電波干渉の発生モデル]
図4は、図1のLAN10に対してWLANとWPANが同時に形成された複合無線ネットワーク50において電波干渉が発生する状況を説明するためのモデル図である。(中略)
【0045】?【0047】(省略)
【0048】
ここで、チャネル1?5は電波干渉が生じないように所定の周波数間隔を空けて中心周波数が指定されている仮想のチャネル番号である。AP20にはノートPC21a、21b、21cがチャネル1で接続され、AP30にはノートPC31a、31bがチャネル2で接続されてそれぞれのWLANを形成している。さらに、ノートPC21bにはパーソナル機器40b、40cがチャネル3で接続され、ノートPC21cにはパーソナル機器40dがチャネル4で接続され、ノートPC31aにはパーソナル機器40eがチャネル5で接続されてそれぞれのWPANを形成している。チャネル1とチャネル2はWLANの物理媒体として使用され、チャネル3?チャネル5はWPANの物理媒体として使用されている。
【0049】
この状態ではAP20、30およびノートPC21b、21c、31aが形成するセルが重複しているとしてもすべてのチャネルが異なっているので電波干渉は生じない。また各ノートPCにおいてWLANとWPANで同じチャネルを使用しても1つのNICから出力されるフレームの送信タイミングは異なるように制御されるために電波干渉は生じない。同様の理由で、各ノートPCが仮想APとして動作して同一のチャネルを使って複数のパーソナル機器に接続されているときも電波干渉は生じない。
【0050】
しかしいずれかのノートPCが仮想APとして動作するときに、他のノートPCが使用しているWLANまたはWPANのチャネルと同一のチャネルをWPANのチャネルとして選定すると、電波干渉が発生してスループットが低下する。(中略)
【0051】(省略)
【0052】
[電波出力制御システム]
図5は、ノートPC100において図3のソフトウエアが実行されることで構成される電波出力制御システム180の構成を示す機能ブロック図である。(中略)。
【0053】
WPAN制御部185は、接続ユーティリティ151、OS155およびデバイス・ドライバ167を含んで構成されており、管理サーバ13に電波干渉を与えるノートPCの電波出力を低減させるように要求する。WPAN制御部185は、管理サーバ13から電波出力の低減要求を受け取ったときに、自らが仮想APとして動作するときの電波出力を低減したり、接続しているパーソナル機器の電波出力を低減したりする処理をする。(中略)。
【0054】
ネットワーク制御部183は、OS155、仮想化モジュール157およびデバイス・ドライバ167を含んで構成されており、仮想AP184とステーション186の機能を時分割動作で提供する。ネットワーク制御部183は、WPAN制御部185によって仮想APイネーブルの設定がされると、自律的に仮想AP184の動作とステーション186の動作を時分割で実行する。(中略)。
【0055】?【0056】(省略)
【0057】
[新たなWPANを形成する際のスループットの低下を抑制する手順]
図6は、図4の複合無線ネットワーク50において、ノートPC21aがパーソナル機器40aと接続するときの手順を示すフローチャートである。ブロック201では、図4に示すようにAP20、30に対して5台のノートPC21a?31bが接続されてWLANを形成している。AP20は、現在接続されているノートPC21a、21b、21cの実MACアドレスとIPアドレスを保有しており、AP30は同様にノートPC31a、31bの実MACアドレスとIPアドレスを保有している。
【0058】
WLANとWPANを同時に構築しているノートPC21b、21c、31aのネットワーク制御部183は、仮想AP184が使用する仮想MACアドレスとステーション186が使用する実MACアドレスを保持している。WLANだけを構築しているノートPC21a、31bのネットワーク制御部183はいまだ仮想APがイネーブルに設定されていない場合は、ステーション186が使用する実MACアドレスだけを保持している。」

イ 図1


ウ 図4


エ 甲第2号証に記載された公知技術(甲2技術)
(ア)上記ア段落0022、0024、0025、0036、0037、0040,0043,0048、上記イ図1によると、甲第2号証には、ステーションとして動作し、チャネル1を使用してAP20と接続されるWLANを形成し、同時に、仮想APとして動作し、チャネル1以外のチャネルを使用してパーソナル機器と接続されるWPANを形成するノートPC21b」が記載されているといえる。

(イ)上記ア段落0024、0036、0037、0043によると、ノートPC21bに搭載されるネットワーク・インターフェース・カード(NIC)は、ノートPC21bがステーションとしてWLANのタイムスロットで動作するときにチャネル1が設定され、ノートPC21bが仮想APとしてWPANのタイムスロットで動作するときチャネル6が設定され、該ネットワーク・インターフェース・カードを介して、WLANを構成するAPと、WPANを構成するパーソナル機器との通信が時分割で行われることから、甲1号証における「ネットワーク・インターフェース・カード」は、「物理的に1個のインターフェイス」であるといえ、また、段落0049の「また各ノートPCにおいてWLANとWPANで同じチャネルを使用しても1つのNICから出力されるフレームの送信タイミングは異なるように制御されるために電波干渉は生じない。」との記載もこれを裏付けている。
よって、甲第2号証記載のノートPC21bは、「物理的に1個のインターフェイス」を備えているといえる。

(ウ)上記ア段落0029、0054、0058によれば、WLANとWPANを同時に構築しているノートPC21bは、仮想APが使用する仮想MACアドレス、及びステーションが使用する実MACアドレスを保持する。

以上踏まえると、甲第2号証には、以下の公知技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されていると認める。
「 物理的に1個のインターフェイスを搭載し、
仮想APが使用する仮想MACアドレス、及びステーションが使用する実MACアドレスを保持し、
ステーションとして動作し、チャネル1を使用してAP20と接続されるWLANを形成し、同時に、仮想APとして動作し、チャネル1以外のチャネルを使用してパーソナル機器と接続されるWPANを形成する、
ノートPC21b。」

(3) 甲第3号証について
取消理由で引用されたWi-Fi Peer-to-Peer(P2P) Technical Specification Version 1.1、平成22年、Wi-Fi Alliance(以下、「甲第3号証」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
ア 「1.4 Definitions
(中略)
Client: A P2P Client or a Legacy Client that is connected to a P2P Group Owner.
(中略)
P2P Client: A P2P Device that is connected to a P2P Group Owner.
(中略)
P2P Concurrent Device: A P2P Device that can concurrently operate as a WLAN STA in WLAN.
P2P Device: WFA P2P certified device that is capable of acting as both a P2P Group Owner and a P2P Client.
(中略)
P2P Group Owner: An "AP-like" entity that may provide and use connectivity between Clients.」(16ページ26行?17ページ24行、当審訳:
1.4 定義
(中略)
クライアント: P2Pグループオーナーに接続された、P2Pクライアント又はレガシークライアント。
(中略)
P2Pクライアント:P2Pグループオーナーに接続されたP2Pデバイス。
(中略)
P2P同時デバイス:WLAN内でWLAN STAとして同時にオペレーションされ得るP2Pデバイス。
P2Pデバイス: P2PグループオーナーとP2Pクライアントの両方として動作し得るWFA P2P認証されたデバイス。
(中略)
P2Pグループオーナー:クライアントとの間に接続を提供及び利用し得る”APのような”エンティティ。)

イ 「2 Architectural overview
2.1 P2P components
The P2P architecture consists of components that interact to support device-to-device communication.
P2P Device:
Supports both P2P Group Owner and P2P Client roles.
Negotiates P2P Group Owner or P2P Client role.
Supports WSC and P2P Discovery mechanism.
May support WLAN and P2P concurrent operation.
P2P Group Owner role:
"AP-like" entity that provides BSS functionality and services for associated Clients(P2P Clients or Legacy Clients).
Provides WSC Internal Registrar functionality.
May provide communication between associated Clients.
May provide access to simultaneous WLAN connection for its associated Clients.
P2P Client role:
Implements non-AP STA functionality
Provides WSC Enrollee functionality.」(20ページ1?19行、当審訳:
2 構造上の概観
2.1 P2P構成要素
P2Pアーキテクチャーは、デバイス-ツー-デバイス通信をサポートするための相互作用する構成要素から構成される。
P2Pデバイス:
P2PグループオーナーとP2Pクライアントの両方の役割をサポートする。
P2Pグループオーナー又はP2Pクライアントの役割を協議する。
WSCとP2P発見メカニズムをサポートする。
WLANとP2Pの同時オペレーションをサポートし得る。
P2Pグループオーナーの役割:
関連付けられたクライアント(P2Pクライアント又はレガシークライアント)に、BSS機能及びサービスを提供する”APのような”エンティティ。
WSC内部レジストラ機能の提供。
関連付けられたクライアントとの通信を提供し得る。
その関連付けられたクライアントのための同時WLAN接続へのアクセスを提供し得る。
P2Pクライアントの役割:
非AP STA機能の実装。
WSC参加者機能の提供。)

ウ 「2.3 Concurrent operation
A P2P Device can operate concurrently with a WLAN(infrastructure network ). Such a device is considered a P2P Concurrent Device. The concurrent operation requires a device to support multiple MAC entities.
As an example, Figure 3 shows a P2P Concurrent Device that has one MAC entity operating as a WLAN-STA and the second MAC entity operating as a P2P Device. The dual MAC functionality can be provided via two separate physical MAC entities each associated with its own PHY entity, two virtual MAC entities over one PHY entity, or any other approach.」(21ページ4行?下から2行、当審訳:
2.3 同時オペレーション
P2Pデバイスは、同時にWLAN(インフラストラクチャネットワーク)でオペレーションできる。このようなデバイスはP2P同時デバイスと考えられる。同時オペレーションは、デバイスに、複数のMACエンティティをサポートすることを要求する。
例として、図3は、WLAN-STAとして動作する1つMACエンティティと、P2Pデバイスとして動作する2つ目のMACエンティティを有するP2P同時デバイスを示している。デュアルMAC機能は、それぞれのPHYエンティティに関連付けられる2つの分離した物理的MACエンティティ、一つのPHYエンティティに対する2つの仮想MACエンティティ、或いは、他のアプローチにより提供される。)

エ 「3.1.4 Group Formation procedure
3.1.4.1 General procedures
A P2P Device may autonomously start a P2P Group by becoming a P2P Group Owner as described in §3.2.2. A P2P Device may use the Group Formation Procedure to form a new P2P Group. Group Formation is used to determine which device shall be the P2P Group Owner, exchange Credentials for the P2P Group and determine its characteristics e.g. whether it shall be a Persistent P2P Group or Temporary P2P Group. Group Formation Procedure consists of Group Owner Negotiation and Provisioning, as described in the following sections.」(37ページ1?10行、当審訳:
3.1.4 グループ形成手順
3.1.4.1 一般的な手順
P2Pデバイスは、3.2.2節の記述のように、P2Pグループオーナーとなることで自主的にP2Pグループを開始しても良い。P2Pデバイスは新たなP2Pグループを形成するためにグループ形成手順を用いても良い。グループ形成は、どのデバイスがP2Pグループオーナーとなるべきかを決定するため、P2Pグループの証明書を交換するため、及び、永続的なP2Pグループか一時的なP2Pグループかなどの特性を判定するために利用できる。グループ形成処理は、以下の節で説明するように、グループオーナーネゴシエーション、及び、提供による。)

オ「3.1.4.2 Group Owner Negotiation
Group Owner Negotiation is a three way frame exchange used to agree which P2P Device shall become P2P Group Owner and to agree on characteristics of the P2P Group,as illustrated in Figure 6.The details of those three frames are described in the following sections.」(39ページ5?9行、当審訳:
1.1.4.2 グループオーナーネゴシエーション
グループオーナーネゴシエーションは、図6に示すように、どのP2PデバイスがP2Pグループオーナーになるかを合意し、P2Pグループの特性について合意するために使用される3方向のフレーム交換である。これら3つのフレームの詳細は以下のセクションに記載されている。)

カ「A primary purpose of Group Owner Negotiation is to exchange the Group Owner Intent attribute to communicate a mesure of desire to be P2P Group Owner.」(39ページ下から7?5行、当審訳:
グループオーナーネゴシエーションの主な目的は、P2Pグループオーナーになりたいという意欲を伝えるために、グループオーナーインテント属性を交換することである。)

キ 甲第3号証40ページ「Figure7-Group Owner determination flowchart」には、グループオーナーを決定するために、各P2Pデバイスのグループオーナーインテント値を比較し、該グループオーナーインテント値が大きいP2Pデバイスを、グループオーナーに決定するフローが図示されている。

ク 甲第3号証に記載された第1の周知技術(甲3技術1)
甲第3号証は、Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi Directに関する技術仕様書といえ、策定された通信規格に係る技術仕様書である甲第3号証に記載された事項は、周知技術といえる。
上記アのP2P同時デバイスの定義、及び上記ウによると、甲第3号証には、下記の第1の周知技術(以下、「甲3技術1」という。)が記載されていると認める。
「一つのPHYエンティティに対する、2つの仮想MACエンティティにより提供され、WLAN-STAとして動作する1つMACエンティティと、P2Pデバイスとして動作する2つ目のMACエンティティを有するP2P同時デバイス。」

ケ 甲第3号証に記載された第2の周知技術(甲3技術2)
上記イによると、甲第3号証には、Wi-Fi Directにおいて、関連付けられたクライアント(P2Pクライアント又はレガシークライアント)にBSS機能及びサービスを提供する”APのような”エンティティとしてのP2Pグループオーナーの役割が記載されている。
してみると、甲第3号証には、下記の周知技術(以下、「甲3技術2」という。)が記載されていると認める。
「Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi Directにおいて、関連付けられたクライアントにBSS機能及びサービスを提供する”APのような”エンティティとしてのP2Pグループオーナーの役割がある。」

コ 甲第3号証に記載された第3の周知技術 (甲3技術3)
上記エ、オ、カ及びキによると、甲第3号証には、Wi-Fi Directにおいて、P2Pグループを形成する際に、各P2Pデバイスのグループオーナーインテント値を比較し、どのP2PデバイスがP2Pグループオーナーとなるかを決定するグループオーナーネゴシエーションを行い、P2PデバイスがP2Pグループオーナーになるためには、他のP2Pデバイスのグループオーナーインテント値よりも大きいグループオーナーインテント値を設定しなければならないことが記載されている。
してみると、甲第3号証には、下記の周知技術(以下、「甲3技術3」という。)が記載されていると認める。
「Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi Directにおいて、各P2Pデバイスのグループオーナーインテント値を比較し、どのP2PデバイスがP2Pグループオーナーとなるかを決定するグループオーナーネゴシエーションが行われ、P2PデバイスがP2Pグループオーナーになるためには、他のP2Pデバイスのグループオーナーインテント値よりも大きいグループオーナーインテント値を設定しなければならないこと。」

(4) 甲第4号証について
取消理由で引用された特開2011-217063号公報(以下、「甲第4号証」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。
)
ア 「【0002】
複数の無線端末装置のうちの1つが制御局としてネットワークを生成し、他の無線端末装置が子局としてネットワークに参加する技術が知られている。更に、既に制御局として動作している端末が、その制御局としての役割を他の子局と交替する技術が知られている。制御局の交替時には、周期的に送出しているビーコンフレーム中に、「制御局の交替が発生すること」、「新しい制御局」、「制御局の交替が発生するタイミング」を情報として配置させ、ネットワーク内の全ての端末に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、ネットワーク内の全ての端末が、制御局の切り替えを行う必要がある。すると、切り替え制御が複雑になるため、切り替え動作の時間が長くなる場合や、切り替え処理の負担が増大する場合がある。本明細書では、このような不便性を解消することができる技術を提供する。
【0005】?【0015】(省略)
【0016】
図1に、本願に係る第1実施形態として例示される通信システム5のブロック図を示す。通信システム5は、MFP(Multi Function Printer)10、アクセスポイント(以下「AP」と称す)51、PC(Personal Computer)52、第1子機1および第2子機2、モバイル機器4を備える。MFP10によってWPAN(WirelessPersonal Area Network)201、WLAN(Wireless Local Area Network)202が形成されている。尚、WPAN201およびWLAN202の方式の例としては、例えばIEEE802.11a/b/gの規格で定められる通信方式が挙げられる。
【0017】?【0018】(省略)
【0019】
モバイル機器4は、WPAN201により、データ信号の無線通信213を行う既知の装置である。また、MFP10は、ルーティング装置(通信システム5内で情報送信経路を選択するための装置)の機能を有している。よって、モバイル機器4は、MFP10からAP51を経由して、インターネット53に接続可能とされる。
【0020】
MFP10の構成について説明する。MFP10は、CPU16、記憶部32、無線通信制御回路11、音声IC14(CODEC)、モデム部15、内蔵受話器17、操作部22、表示部24、印刷部26、スキャナ部28、を備える。これらの構成要素は、互いに通信可能に接続されている。CPU16は、記憶部32に記憶されているプログラム42に従って、様々な処理を実行する。またCPU16は、記憶部32、無線通信制御回路11、音声IC14等に関する各種の制御を行う。
【0021】?【0026】(省略)
【0027】
通信システム5は、第1通信状態と第2通信状態との2つの通信状態を備えている。第1通信状態は、MFP10がルーティング装置となる状態である。一方、第2通信状態は、第1子機1または第2子機2がルーティング装置となる状態である。(中略)
【0028】
そして第1通信状態では、無線通信制御回路11によって、WPAN201およびWLAN202が構築される。WPAN201には、複数の通信端末(第1子機1、第2子機2、モバイル機器4)が接続されている。WPAN201により、無線通信制御回路11と第1子機1との間で、音声信号の無線通信211が行われる。また、無線通信制御回路11と第2子機2との間で、音声信号の無線通信212が行われる。また、無線通信制御回路11とモバイル機器4との間で、データ信号の無線通信213が行われる。無線通信211ないし213は、同時に通信可能とされている。WLAN202には、AP51が接続されている。WLAN202により、無線通信制御回路11とAP51との間で、データ信号の無線通信221が行われる。すなわち第1通信状態では、1の無線通信制御回路11によって、第1子機1および第2子機2による音声通信と、モバイル機器4によるデータ通信との2種類の通信を行うことが可能とされている。
【0029】
WPAN201およびWLAN202は、同時に使用可能とされている。同時に使用する方法の例としては、時分割多元接続(TDMA: Time Division Multiple Access)を用いる方法が挙げられる。TDMAでは、伝送に用いる搬送周波数をタイムスロットと呼ばれる単位で分割して、同一周波数において複数の通信を可能にする。本願の例では、タイムスロットを、WPAN201およびWLAN202に割り当てることで、多元接続が行われる。なお、この場合の「同時に使用可能」とは、WPAN201の通信とWLAN202の通信が、同時期に並存して実行可能であるという意味である。WPAN201から送信されてくるパケットと、WLAN202から送信されてくるパケットとが、同一時間に受信可能であるという意味に限定されることはない。
【0030】
無線通信制御回路11を、WPAN201を構築する回路として機能させる方法としては、例えば、Wi-Fi Allianceが提唱する、Wi-Fi Directの機能を用いる方法が挙げられる。これにより、無線通信制御回路11がWiFi Directのサーバの役割を行う。また、Intel(登録商標)が提唱する、My WiFi Technologyの機能を用いる方法が挙げられる。」
【0031】?【0088】(省略)
【0089】
本願に係る通信システム5の効果を説明する。音声通信はリアルタイム性が要求されるため、データ通信に比して負荷が重い通信である。よって、第1通信状態(図9)において、第2子機2との音声通信と、モバイル機器4とのデータ通信とを同時に行うと、無線通信212および213の負荷が重くなるため、音声が途切れるなどの通信エラーが発生したり、通信速度が低下する場合がある。しかし、本願の通信システム5では、電話回線網100からの着信に対して音声通信を開始することを条件として、第1通信状態から第2通信状態へ移行する。第2通信状態(図10)では、第2子機2とMFP10の無線通信制御回路11との間で、無線通信212による音声通信が行なわれる。また、第1子機1と4モバイル機器4との間で、無線通信214によるデータ通信が行われる。よって、音声通信とデータ通信とを切り離すことができ、MFP10の無線通信制御回路11の負荷を減らすことができるため、通信エラー等の発生を防止できる。
【0090】
また、本願の通信システム5では、第1通信状態と第2通信状態との間の切り替え時に、モバイル機器4に対して、「通信先の交替が発生すること」、「新しい通信先」、「通信先の交替が発生するタイミング」等の情報を報知する必要がない。よって、通信状態の切り替えのための特別な処理をモバイル機器4に行なわせることがないため、切り替え制御を簡素化することができる。これにより、切り替え動作の時間が長くなることや、切り替え処理の負担が増大することを防止することが可能となる」

イ 図1


ウ 甲第4号証に記載された公知技術(甲4技術)
(ア)上記イ図1及びアの段落0016、0019によると、甲第4号証には、MFP10がルーティング装置として、モバイル機器4と接続されてWPAN201が形成され、MFP10がAP51と接続されてWLAN202が形成される事項が記載されているといえる。

(イ)上記ア段落0029によれば、甲第4号証には、WPAN201とWLAN202とは、時分割多元接続を用いて同時に形成でき、同一周波数において複数の通信を可能にすることが記載されているといえる。

(ウ)上記ア段落0020、0028によれば、甲第4号証に記載されたMFP10は、印刷部26、スキャナ部28を備え、さらに、MFP10は、モバイル機器4との間で無線通信213を行い、AP51との間で無線通信221を行う無線通信制御回路11を備えることが記載されているといえる。

以上踏まえると、甲第4号証には、以下の公知技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されていると認める。
「印刷部及びスキャナ部と、
モバイル機器4との間で無線通信213を行い、AP51との間で無線通信221を行う無線通信制御回路11と、を備え、
MPF10がルーティング装置として、モバイル機器4と接続されるWPAN201と、MPF10がAP51と接続されるWLAN202とが、時分割多元接続を用いて同時に形成される、
MFP10。」

(5) 甲第5号証について
取消理由で引用された特開2011-124980号公報(以下、「甲第5号証」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
ア 「【0003】
また、無線LANシステムにおける利用周波数は、一般的に、親機により自律的に設定される、あるいは、ユーザにより設定される。そして、IEEE802.11で規定される無線LANシステムにおいては、子機が親機の利用周波数を検出し、検出した周波数で親機に接続することにより無線通信装置のグループが構成される。なお、子機は、親機から報知情報として送信されるビーコンにより親機の利用周波数を検出することも、ブローブリクエストおよびブローブレスポンスの送受信を行うことによって親機の利用周波数を検出することも可能である。
(中略)
【0004】
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、利用周波数が異なる2の無線通信装置のグループがある場合、双方のグループの利用周波数は異なるので、グループ間で通信を行うことができない。このため、異なるグループに属する無線通信装置間での通信を行うためには、一方のグループにおける複数の無線通信装置間の接続を切断し、当該複数の無線通信装置を他方のグループの無線通信装置と接続処理を行う必要があった。
【0006】
しかし、一方のグループにおける複数の無線通信装置間の接続を切断すると、無線通信装置間の通信が途絶えてしまう。また、複数の無線通信装置が、接続処理としてセキュリティのための暗号化設定(例えば、WPS/WPA)を再度行うには時間を要し、また、ユーザにとって煩雑であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、同一グループを構成する無線通信装置間の接続を維持したまま他のグループと接続することが可能な、新規かつ改良された無線通信装置、無線通信システム、プログラム、および無線通信方法を提供することにある。
【0008】?【0024】(省略)
【0025】
具体的には、グループ1は、親機20A、および親機20Aと接続中の子機22Aおよび22Bからなる。このグループ1では、親機20Aにより通信が管理され、周波数1を利用して通信が行われている。なお、WiFi Directによれば、専用のアクセスポイントでない親機20Aであっても、ビーコン送信などアクセスポイントとしての動作を行い、図1に示したように複数の子機22を接続することが可能である。一般的には、無線LANルータと呼ばれる、ルータにアクセスポイントを内蔵した製品が、専用のアクセスポイントである、本例では、親機20AはPC(Personal Computer)であり、専用のアクセスポイントでない。
【0026】
また、グループ2は、親機20C、および親機20Cと接続中の子機22Cおよび22Dからなる。このグループ2では、親機20Cにより通信が管理され、グループ1と異なる周波数2を利用して通信が行われている。ここで、親機20Aは、専用のアクセスポイントである。
【0027】?【0028】(省略)
【0029】
また、図1においては、親機20の一例として、親機20Cはアクセスポイント、親機20AはPC(Personal Computer)である場合を示し、子機22の一例として携帯電話(22A、22C)、携帯型音楽再生装置(22B)、および撮像装置(22D)を示したが、親機20および子機22などの無線通信装置はかかる例に限定されない。
(中略)
【0030】
ここで、異なるグループに属する無線通信装置間で通信を行うためには、一方のグループにおける複数の無線通信装置間の接続を切断し、当該複数の無線通信装置を他方のグループの無線通信装置と接続処理を行う方法が考えられる。例えば、グループ2に属する親機20A、子機22Aおよび22Bは、図2に示したように、親機20Aと子機22Aおよび22Bとの接続を切断し、グループ1に属する親機22Cと再接続する方法が考えられる。
【0031】
しかし、親機20Aと子機22Aおよび22Bとの接続を切断すると、子機22Aおよび22Bの通信が途絶えてしまう。また、親機20A、子機22Aおよび22Bの各々がグループ1に属する親機20Cと接続処理を行うと、処理負荷および処理時間が増大するという問題がある。
【0032】
そこで、上記事情を一着眼点にして本実施形態を創作するに至った。本実施形態によれば、同一グループを構成する無線通信装置間の接続を維持したまま他のグループと接続することが可能である。以下、このような本実施形態について詳細に説明する。
【0033】?【0040】(省略)
【0041】
(3-1.第1の動作例)
図4は、異なるグループを接続するための第1の動作例を示したシーケンス図である。図4に示した例では、親機20Aと子機22Aは接続されており、親機20Cは周波数2を利用中で、親機20Aと子機22Aは周波数1を利用中である。ここで、親機20Aと子機22Aを親機20Cと接続するために、親機20Aと親機20Cにおいて接続トリガとしてPush Buttonがユーザにより押圧されると(S304)、親機20Aは接続先を探すためにActive周波数スキャン動作を開始する。
【0042】
(中略)
また、Active周波数スキャン動作は、親機20Aが利用可能な全周波数でプローブリクエストを送信し、プローブレスポンスの返信を一定時間待つ動作である。また、親機20Aと子機22Aを親機20Cと接続するための接続トリガとしては、ユーザによるボタン操作に限られず、例えば、所定の条件を満たした場合に親機20Aや子機22Aなどの機器の判断によって接続トリガが発生するような構成としてもよい。
【0043】
このActive周波数スキャン動作により、親機20Aは周波数2で親機20Cからプローブレスポンスを受信し(S312)、接続すべき無線通信装置である親機20C、および親機20Cが利用中の周波数2を検出することができる。
【0044】
その後、親機20Aの制御部216は、グループの利用周波数を変更するための、IEEE802.11yで規定されるExtended Channel Switch Announcementメッセージを通信部からブロードキャストさせる。ここで、Extended Channel Switch Anno uncementメッセージについて図5を参照して説明する。
【0045】
図5は、Extended Channel Switch Announcementメッセージの構成を示した説明図である。図5に示したように、このメッセージは、Category、ActionValue、ChannelSwitchMode、NewRegulatoryClass、NewChannelNumber、およびChannelSwitchCountからなる。
【0046】
NewChannelNumberは変更後の周波数を示す情報であり、ChannelSwitchCountは周波数の変更タイミングを示す情報(例えば、何回先のビーコン送信タイミングであるか)である。図4に示した動作例においては、NewChannelNumberには周波数2を示す情報が記載される。
【0047】
したがって、このメッセージを受信した子機22Aは、NewChannelNumberおよびChannelSwitchCountを参照し、親機20Aと同一タイミングに利用周波数を周波数2に変更することができる(S320)。
(中略)
【0048】
これにより、親機20A、子機22Aおよび親機20Cの利用周波数が同一となるので、親機20Aは、子機22Aの親機として動作すると共に、親機20Cの子機として動作することが可能となる。なお、本例では、専用のアクセスポイントではない親機20Aが、専用のアクセスポイントである親機20Cの子機として動作する例を示したが、親機20Cが親機20Aの子機として動作してもよい。
【0049】
続いて、親機20Aが、親機20CとIEEE802.11およびWiFi Allianceで定義される接続処理を行う。具体的には、親機20Aと親機20Cは、Authentication/Assosiation/WPS procedure/4-way handshakeなどを行い(S324、S328、S332)、セキュリティの設定を完了する。その結果、親機20C、親機20Aおよび子機22Aが相互にデータ通信を行うことが可能となる(S336)。
【0050】
図6は、上述したグループ間の接続動作を行った後の各無線通信装置間の接続関係を示した説明図である。図6に示したように、親機20Aは、同一グループに属する子機22Aおよび22Bとの接続関係を保ったまま、グループ2の親機20Cと接続することができる。すなわち、本実施形態によれば、子機22Aおよび22Bは、個別にグループ2の親機20Cと接続処理を行うことなくグループ2に属する無線通信装置と通信を行うことが可能となる。なお、図6に示した接続関係は、以下に説明する第2?第4の動作例でも同様である。」

イ 図2


ウ 甲第5号証に記載された第1の公知技術(甲5技術1)
上記ア段落0003によると、甲第5号証には、下記の第1の公知技術(以下、「甲5技術1」という。)が記載されていると認める。
「無線LANシステムにおける利用周波数は、親機により設定され、子機は、親機から報知情報として送信されるビーコン、又は、ブローブリクエストおよびブローブレスポンスの送受信を行うことによって親機の利用周波数を検出する。」
エ 甲第5号証に記載された第2の公知技術(甲5技術2)
上記イ図2の記載によれば、上記ア段落0030の「例えば、グループ2に属する親機20A、子機22Aおよび22Bは、図2に示したように、親機20Aと子機22Aおよび22Bとの接続を切断し、グループ1に属する親機22Cと再接続する方法が考えられる。」との記載は、「例えば、グループ1に属する親機20A、子機22Aおよび22Bは、図2に示したように、親機20Aと子機22Aおよび22Bとの接続を切断し、グループ2に属する親機20Cと再接続する方法が考えられる。」の誤記と認められる。
そして、上記ア段落0030によると、甲第5号証には、下記の第2の公知技術(以下、「甲5技術2」という。)が記載されていると認める。
「親機20Aと子機22Aおよび22Bが接続されている場合に、親機20Aと子機22Aおよび22Bとの接続を切断し、グループ2に属するアクセスポイントである親機20Cと再接続する。」

オ 甲第5号証に記載された第3の公知技術(甲5技術3)
上記ア段落0005記載の、利用周波数が異なる2の無線通信装置のグループがある場合、異なるグループに属する無線通信装置間での通信を行うためには、一方のグループにおける複数の無線通信装置間の接続を切断し、当該複数の無線通信装置を他方のグループの無線通信装置と接続処理を行う必要があるとの課題に対し、上記ア段落0041?0048の(3-1.第1の動作例)においては、グループ1の利用周波数をグループ2の利用中の周波数2に変更し、親機20A、子機22Aおよび親機20Cの利用周波数を同一とすることにより、親機20Aは、子機22Aの親機として動作すると共に、親機20Cの子機として動作することが可能となるとの効果を得るものである。
してみると、親機20Aは、一方のグループにおける子機22Aとの間の利用周波数と、他方のグループにおけるアクセスポイントである親機20Cの利用中の周波数とが同じであれば、他方のグループの無線通信装置であるアクセスポイントである親機20Cと接続処理を行う場合に、一方のグループにおける無線通信装置(子機22A)との間の接続を切断する必要はないことは明らかである。
したがって、甲第5号証には、下記の第3の公知技術(以下、「甲5技術3」という。)が記載されていると認める。
「親機20Aは、一方のグループにおける子機22Aとの間の利用周波数と、他方のグループにおけるアクセスポイントである親機20Cの利用中の周波数とが同じであれば、他方のグループの無線通信装置であるアクセスポイントである親機20Cと接続処理を行う場合に、一方のグループにおける無線通信装置(子機22A)との間の接続を切断する必要はない。」

(6) 甲第6号証について
取消理由で引用されたIEEE Std 802.11,1999 Edition,Part 11: Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications、平成11年、IEEE(以下、「甲第6号証」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)

ア 「7.2.3.9 Probe Response frame format
The frame body of a management frame of subtype Probe Response contains the information shown in Table12」(48ページ下から2-末行、当審訳:
2.2.3.9 プローブレスポンスフレームフォーマット
サブタイプがプローブレスポンスの管理フレームのフレームボディは、表12に示す情報を含む。)


(表題の当審訳:表12 プローブレスポンスフレームボディ、オーダー7のDSパラメータセットについての記載の当審訳:DSパラメータセットの情報要素は、直接シーケンスPHYを用い、STAにより生成されたプローブレスポンスフレーム内に示す。)

ウ 「7.3.2.4 DS Parameter Set element
The DS Parameter Set element contains information to allow channel number identification for STAs using a direct sequence spread spectrum(DSSS) PHY.The information field contains a single parameter containing the dot11CurrentChannelNumber(see 15.4.6.2 for values). The length of the dot11CurrentChannelNumber parameter is 1 octet. See Figure 38」(56ページ下から9?5行、当審訳:
7.3.2.4 DSパラメータセット要素
DSパラメータセット要素は、直接拡散方式(DSSS)PHYを使って、STAにチャネル番号識別子を許可する情報を含む。情報フィールドは、dot11CurrentChannelNumber(値については15.4.6.2参照)を含んでいる単一のパラメータを含む。dot11CurrentChannelNumberパラメータの長さは1オクテットである。図38参照)

エ 甲第6号証に記載された周知技術(甲6技術)
IEEEにより策定されたWLANの通信規格に係る技術仕様書である甲第6号証に記載された事項は、周知技術といえる。
そして、プローブレスポンスが親機といえるアクセスポイントから送信され、子機といえるSTAにより受信される情報であるという技術常識を踏まえると、上記ア?ウによると、甲第6号証には、下記の周知技術(以下、「甲6技術」という。)が記載されていると認める。
「子機は、子機にチャネル番号識別子を許可する情報を含むプローブレスポンスフレームを受信する。」

3. 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
(ア) 無線LAN用のインターフェースを備え、アクセスポイント102と携帯端末105にネットワーク接続を行う甲1発明1のプリンタ101は、無線通信装置といえる。
また、「ネットワークの作成者の役割」は、無線ネットワークの親局としての機能といえ、甲1発明1の「優先度が3で、ESSIDがAdhoc1である、ネットワークの作成者の役割で動作して、ネットワーク参加者として動作する携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続」を作成する際のプリンタ101の「ネットワーク作成者の役割で動作」するとは、「親局状態」で動作するといえる。
そして、本件特許明細書段落0099には、「親局状態」の一例として、「G/O状態」が示されているから、甲1発明1のプリンタ101は、「親局状態で動作可能な無線通信装置」といえる点で本件発明1と共通する。

(イ) 甲1発明1が搭載する「アンテナが1つのみ配されており、また、物理的なインタフェースの個数も1つのみである無線LAN用のインタフェース」は、「物理的に1個のインターフェイス」といえるから、甲1発明1は、「物理的に1個のインターフェイス」を備える点で本件発明1と共通する。

(ウ) 甲1発明1において、携帯端末105との接続に用いる複数の無線チャネルから選択される無線チャネル、及び、アクセスポイント102との接続に用いる複数の無線チャネルから選択される無線チャネルを、それぞれ「複数個の無線チャネルのうちの第1の無線チャネル」、及び「複数個の無線チャネルのうちの第2の無線チャネル」と呼称することは任意である。
また、甲1発明1の「携帯端末105」は「特定デバイス」といえ、甲1発明1において、該携帯端末105との接続は、無線LAN用のインタフェースを介して行われることは自明である。
してみると、甲1発明1の「上記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)において利用されている、複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”と同じチャネル」で作成されるネットワーク接続(優先度“3”、ESSID=Adhoc1)(甲1発明の(a)参照)、又は、「ネットワーク作成者として携帯端末106が規定するチャネルと前記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)で利用されるチャネルが同一」である場合に作成されるネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)(甲1発明の(b)参照)は、「複数個の無線チャネルのうちの第1の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して」確立される「特定デバイスとの第1種の接続」といえる。
さらに、甲1発明1の「アクセスポイント102」は「携帯端末105」とは異なるから、該「アクセスポイント102」は「前記特定デバイスとは異なるアクセスポイント」といえ、甲1発明1において、該アクセスポイント102との接続も、無線LAN用のインタフェースを介して行われることは自明である。
よって、甲1発明1の「複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い」たネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)は、「前記複数個の無線チャネルのうちの第2の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して」確立される「前記特定デバイスとは異なるアクセスポイントとの前記第2種の接続」といえる。
そして、甲1発明1が、ネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)、及び、ネットワーク接続(優先度“3”、ESSID=Adhoc1)又はネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)に対して、それぞれのネットワーク接続を確立する手段を有しているといえることは明らかであり、また、ネットワーク接続(優先度“3”、ESSID=Adhoc1)又はネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)を確立する手段を「第1の接続部」、ネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)を確立する手段を「第2の接続部」と呼称することは任意である。
したがって、甲1発明1は、「複数個の無線チャネルのうちの第1の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、特定デバイスとの前記第1種の接続を確立する第1の接続部と、
前記複数個の無線チャネルのうちの第2の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、前記特定デバイスとは異なるアクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する第2の接続部」を備えるといえる点で本件発明1と共通する。

(エ) 甲1発明1は、複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合において、プリンタ101がネットワーク作成者として動作し、携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“3”、ESSID=Adhoc1)が要求される場合、プリンタ101は、上記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)において利用されている、複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”と同じチャネルを、携帯端末105に送信する(甲1発明(a))ことから、甲1発明1のプリンタ101は、「複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合、上記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)において利用されている、複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”と同じチャネルを、携帯端末105に送信する手段」を有していることは明らかである。
そして、甲1発明1の「複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用いた、アクセスポイント102との間のネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合」は、「前記第2種の接続が確立されている状態」といえる。
さらに、該携帯端末105に送信する手段を「通知部」と呼称することは任意であり、また、「複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”」が、プリンタ101が利用可能な無線チャネルの範囲のうちの無線チャンネルの1つであることは自明である。
よって、甲1発明1は、「アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値を、前記特定デバイスに通知する通知部」を備えているといえる点で本件発明1と共通する。

(オ)甲1発明1において、要求される「ネットワーク接続(優先度“3”、ESSID=Adhoc1)」では、「プリンタ101がネットワーク作成者の役割で動作」することが決められており、さらに、上記(ア)のように「ネットワーク作成者の役割で動作」するとは、「親局状態」で動作することといえる。
また、甲1発明1の「プリンタ101がネットワーク作成者の役割として動作し、携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“3”、ESSID=Adhoc1)」に利用されるチャネルは、「存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)」が利用しているチャネル“7”と一致するチャネルであり、また、携帯端末105とのネットワークの作成が、無線LAN用のインタフェースを介して行われることは自明である。
してみると、「複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合において、プリンタ101がネットワーク作成者の役割として動作し、携帯端末105とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“3”、ESSID=Adhoc1)が要求される場合、プリンタ101は、上記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)において利用されている、複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”と同じチャネルでネットワークを作成」する甲1発明1は、「第1の接続部」が「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が前記親局状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記親局状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立」する点で本件発明1と共通する。

(カ) 甲1発明1において、要求される「ネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)」では、「プリンタ101がネットワーク参加者の役割で動作」することが決められており、 また、「ネットワークの参加者の役割」は、無線ネットワークの子局としての機能といえるから、甲1発明1の「ネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)」を作成する際のプリンタ101の「ネットワーク参加者の役割で動作」するとは、「子局状態」で動作することといえる。
また、甲1発明1において、「プリンタ101がネットワーク参加者の役割として動作し、携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)が要求され」てネットワークが作成される際に、ネットワーク作成者である携帯端末106が規定して送信されたチャネルを、プリンタ101が受信することは自明である。
そして、甲1発明1では、「プリンタ101がネットワーク参加者の役割として動作し、携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)」に利用されるチャネルが、「存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)」が利用しているチャネル“7”と一致する場合にネットワークが作成され、また、該作成されたネットワークへの接続が、無線LAN用のインタフェースを介して行われることは自明である。
さらに、本件明細書段落0099には、「子局状態」の一例が「クライアント状態」であることからすれば、「複数の無線チャネルから選択されたチャネル“7”を用い、アクセスポイント102にインフラモードにより接続するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)が存在する場合において、プリンタ101がネットワーク参加者の役割で動作し、携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)が要求される場合、プリンタ101は、ネットワーク作成者として携帯端末106が規定するチャネルと前記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)で利用されるチャネルが同一であれば、該チャネルを利用してネットワーク接続を実施」する甲1発明1は、「第1の接続部」が「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態」で、「前記無線通信装置が前記子局状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記子局状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立」する点で本件発明1と共通する。

(キ) 甲1発明1の「プリンタ101がネットワーク参加者の役割で動作し、携帯端末106とアドホックモードにより接続するネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)が要求される場合、プリンタ101は、ネットワーク作成者として動作する携帯端末106が規定するチャネルと前記存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)で利用されるチャネルが同一でなければ、携帯端末106に対して、チャネル変更の要求を送信し、チャネル変更が可能でなければ、ネットワーク接続に失敗した旨(エラー)を出力する」とは、要求される「ネットワーク接続(優先度“4”、ESSID=Adhoc2)」に利用されるチャネルが、「存在するネットワーク接続(優先度“1”、ESSID=Infra1)」が利用しているチャネル“7”と一致しない場合に、ネットワークが作成されないことも含むことは明らかである。
よって、甲1発明1は、「第1の接続部」が「前記無線通信装置が前記子局状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない」点で本件発明1と共通する。

以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明1とは以下の点で一致し、相違する。
「 親局状態で動作可能な無線通信装置であって、
物理的に1個のインターフェイスと、
複数個の無線チャネルのうちの第1の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、特定デバイスとの第1種の接続を確立する第1の接続部と、
前記複数個の無線チャネルのうちの第2の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、前記特定デバイスとは異なるアクセスポイントとの第2種の接続を確立する第2の接続部と、
アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値を、前記特定デバイスに通知する通知部とを備え、
前記第1の接続部は、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が前記親局状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記親局状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記無線通信装置が前記子局状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記子局状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記無線通信装置が前記子局状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない、
無線通信装置。」

相違点1
「親局状態で動作可能な無線通信装置」に関し、本件発明1は、「Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi DirectのG/O(Group Ownerの略)状態」で動作可能であるのに対し、甲1発明1では、ネットワーク作成者の役割で動作可能であるが、「Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi DirectのG/O(Group Ownerの略)状態」で動作可能であることが特定されていない点。

相違点2
「物理的に1個のインターフェイス」に関し、本件発明1では、「第1種の接続で利用されるべきMACアドレスと、第2種の接続で利用されるべきMACアドレスと、の両方が割り当てられる」のに対し、甲1発明1では、MACアドレスについて特定されていない点。

相違点3
「第1接続部」に関し、本件発明1では、「第1種の接続は、前記Wi-Fi Directに従った接続」であるのに対し、甲1発明1では、「第1種の接続は、前記Wi-Fi Directに従った接続」であると特定されていない点。

相違点4
「通知部」に関し、本件発明1では、「前記第2の無線チャネルの値のみ」を特定デバイスに通知しているのに対し、甲1発明1では、「前記第2の無線チャネルの値のみ」を特定デバイスに通知しているか明らかでない点。

相違点5
「第1の接続部」に関し、本件発明1では、「前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行し」ているのに対し、甲1発明1では、「前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行」することが特定されていない点。

相違点6
「第1の接続部」に関し、本件発明1では、第2種の接続が確立されている状態で、「G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記G/O状態で動作することが決定される場合」に、「前記G/O状態」にて第1種の接続を確立するのに対し、
甲1発明1は、第2種の接続が確立されている状態で、「無線通信装置が前記親局状態で動作することが決定される場合」に、「親局状態」にて第1種の接続を確立する点。

相違点7
「第1の接続部」に関し、本件発明1では、第2種の接続が確立されている状態で、「G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記Wi-Fi Directのクライアント状態で動作することが決定される場合」において、第2の無線チャネルの値と一致する第1の無線チャネルの値が受信される場合に「前記クライアント状態」にて第1種の接続を確立するのに対し、
甲1発明1では、第2種の接続が確立されている状態で、「無線通信装置が子局状態で動作することが決定される場合」において、第2の無線チャネルの値と一致する第1の無線チャネルの値が受信される場合に「前記子局状態」にて第1種の接続を確立する点。

相違点8
「第1の接続部」に関し、本件発明1では、第2種の接続が確立されている状態で、「G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記クライアント状態で動作することが決定される場合」において、第2の無線チャネルの値と一致しない第1の無線チャネルの値が受信される場合に第1種の接続を確立しないのに対し、
甲1発明1では、第2種の接続が確立されている状態で、「無線通信装置が前記子局状態で動作することが決定される場合」において、第2の無線チャネルの値と一致しない第1の無線チャネルの値が受信される場合に第1種の接続を確立しない点。

イ 判断
(ア)相違点5について
a 甲1発明1は、ネットワーク接続についての優先度、ネットワークタイプ(「インフラモード」、「アドホックモード」)、及び、プリンタ101の動作モード・役割(「端末モード」、「ネットワーク作成者」、「ネットワーク参加者」)が規定された「テーブル」を備え、該優先度に従い、作成するネットワークのチャネルを決定することが記載されていることから、甲1発明1では、ネットワークタイプとプリンタ101の役割が予め規定されたネットワークを作成することが前提であり、ネットワークを作成する際に、プリンタ101と携帯端末105のいずれが「ネットワークの作成者」又は「ネットワークの参加者」であるかを決定するようなネゴシエーションをする必要性はないことは明らかであって、甲第1号証の記載を参酌しても、ネゴシエーションについて示唆する記載は見当たらない。

b また、「Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi Directにおいて、各P2Pデバイスのグループオーナーインテント値を比較し、どのP2PデバイスがP2Pグループオーナーとなるかを決定するグループオーナーネゴシエーションが行われ、P2PデバイスがP2Pグループオーナーになるためには、他のP2Pデバイスのグループオーナーインテント値よりも大きいグループオーナーインテント値を設定しなければならないこと。」との甲3技術3は周知であることからすれば、甲1発明1に、単に「G/Oネゴシエーション」を採用して、優先度“3”又は優先度“4”のネットワーク接続が要求された場合に、該「G/Oネゴシエーション」を行ったとしても、プリンタ101及び携帯端末105の各グループオーナーインテント値によっては、プリンタ101の役割が常に同じ状態が得られるとは限らない。
してみると、甲1発明1に、常に同じ状態が得られない「G/Oネゴシエーション」を採用する上で阻害要因が存在するといえる。

c そして、甲1発明1において、優先度“3”又は優先度“4”のネットワーク接続が要求され、その際、該「G/Oネゴシエーション」を行った場合に、優先度“3”又は優先度“4”のネットワーク接続において規定されるプリンタ101と携帯端末105の役割が得られるようにするためには、予めプリンタ101のグループオーナーインテント値のみならずプリンタ以外の携帯端末のグループオーナーインテント値を設定する必要性があることは明らかである。

d 上記a?cからすれば、役割が予め規定された甲1発明1に、どのデバイスがG/O状態になるか不確実な「G/Oネゴシエーション」を採用することは、当業者が容易に想到し得ない事項といえる。
してみれば、甲1発明1において、「前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行」することは、当業者が容易に想到し得ない事項であるといえる。

ウ 小括
したがって、上記イのとおり、本件発明1は、甲1発明1、及び、甲3技術に基づいても当業者が容易に発明をすることができないものである。
更に、甲1発明1に、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証に記載された各技術事項を採用したとしても、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができないものである。

(2) 本件発明2、3、8、9、10について
本件発明2、3、8、9、10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、上記(1)で述べた理由と同様な理由により、甲1発明1、及び、甲3技術に基づいても当業者が容易に発明をすることができないものである。
更に、甲1発明1に、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証に記載された各技術事項を採用したとしても、本件発明2、3、8、9、10は当業者が容易に発明をすることができないものである。

(3) 本件発明11について
本件発明11は、上記(1)で対比・判断した本件発明1をプログラムのカテゴリーとして表現したものである。
そして、甲第1号証段落0030には、甲1技術1のとおり、「プリンタ101の各部(202?213)は、ROM216、もしくは、不揮発性の記憶領域であるフラッシュROM214に格納されたプログラムが、CPU215によって実行されることにより、制御される。」ことが記載されているから、甲1発明1はプログラムのカテゴリーとして表現する技術事項を含む。
しかしながら、上記(1)で述べたとおり、本件発明1は、甲1発明1、及び、甲3技術に基づいても当業者が容易に発明をすることができないものである。
したがって、本件発明11は、上記(1)で述べた理由と同様な理由により、甲1発明1、及び、甲3技術に基づいても当業者が容易に発明をすることができないものである。
更に、甲1発明1に、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証に記載された各技術事項を採用したとしても、本件発明11は当業者が容易に発明をすることができないものである。

(4) なお、甲第2号証?甲第6号証の各記載からすれば、仮に、甲第2号証?甲第6号証から引用発明を認定し、該引用発明に他の各甲号証の技術事項を適用したとしても、本件発明1?3、8?11の発明に係る構成に到達しないことは明らかである。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1. 特許法第36条第6項第2号
(1) 異議申立人は、平成30年1月19日付けの特許異議申立書(p32)において、特許法第36条第6項第2号に関し、下記の点を主張した。
ア 本件特許発明1乃至11において、第1の接続部とインターフェイスとがどう区別されているのか、第2の接続部とインターフェイスとがどう区別されているのかが示されていないため、本件特許発明1は明確ではない。
イ 本件特許発明1に記載の「物理的に1個のインターフェイス」は、物理的にどのような構成からなる物かが明確ではなく、何をもって「物理的に1個」であるのかが不明確であるから、特許を受けようとする発明が明確でない。

(2) アについて
訂正特許請求の範囲に記載された請求項1には、「複数個の無線チャネルのうちの第1の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、特定デバイスとの前記第1種の接続を確立する第1の接続部」、「前記複数個の無線チャネルのうちの第2の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、前記特定デバイスとは異なるアクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する第2の接続部」と記載されている。
そして、該記載からすれば、「特定デバイスとの第1種の接続を確立」するという機能を有する「第1の接続部」及び「アクセスポイントとの第2種の接続を確立」するという機能を有する「第2の接続部」と、「第1の接続部」と「特定デバイス」との間、又は、「第2の接続部」と「アクセスポイント」との間の「接続」を担う「インターフェイス」について、請求項1に係る発明において果たす働きや役割が明確に区別できることは明らかであり、本件明細書0022?0025の記載からしても、「第1の接続部」及び「第2の接続部」と、「インターフェイス」とが明確に区別できることは明らかである。

(3) イについて
上記請求項1に記載の「物理的に1個のインターフェイス」とは、「インターフェイス」が「物理的に1個」であると規定するものであるところ、該「インターフェイス」が、「第1の接続部」と「特定デバイス」との間、又は、「第2の接続部」と「アクセスポイント」との間の「接続」を担うものであることは、上記(2)で述べたとおりであって、「物理的に1個のインターフェイス」は明確である。

(4) 前記(2)及び(3)から、本件発明1乃至11は明確であるといえ、異議申立人の主張する前記理由は採用できない。

2. 特許法第36条第4項第1号
(1) 異議申立人は、平成30年1月19日付けの特許異議申立書(p33)において、下記の点を主張した。
平成29年4月24日付けて提出された意見書によれば、「物理的に1個のインターフェイス」のサポート箇所として段落0023を挙げている。しかしながら、段落0023には、「無線インターフェイス18は、制御部20が無線通信を実行する際に利用されるインターフェイスである。無線インターフェイス18は、物理的には1個のインターフェイスである。ただし、無線インターフェイス18には、WFD接続で利用されるべきMACアドレスと、非WFD接続で利用されるべきMACアドレスと、の両方が割り当てられている。従って、制御部20は、無線インターフェイス18を利用して、WFDに従った無線通信機能と通常の無線通信機能との両方を同時的に実行し得る。この結果、後で詳しく説明するが、制御部20は、WFD接続と非WFD接続との両方が確立されている状態を形成し得る。」との記載があるに過ぎず、無線インターフェイス18の具体的構成が何ら記載されていない。即ち、無線インターフェイス18が、物理的な物として、具体的に何を指すのかが不明確であり、何を物理的に1個として構成すればよいのか不明である。

(2) しかし、本件明細書段落0023の記載、及び、本件図1からすれば、「無線インターフェイス18」は「無線通信」を行うものであり、その構成は、「WFDに従った無線通信」と「通常の無線通信」の両方を同時的に実行できる機能を有する構成であれば、具体的な構成に係わらず足り得るものである。
よって、当業者であれば、出願時の技術常識に基づいて、「無線インターフェイス18」の具体的な構成を理解できる。

(3)したがって、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえ、異議申立人の主張する前記理由は採用できない。

3.平成30年11月26日付け意見書について
異議申立人は、平成30年11月26日付けの意見書において、平成30年9月6日付け訂正請求書により訂正された請求項1乃至11に係る発明は、特許法第36条第6項2号、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない旨主張しているが、平成30年9月6日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされるため、異議申立人の主張する理由は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1?3、8?11は、甲第1号証?甲第6号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものである。
また、本件発明1?3、8?11に係る発明は明確であり、発明の詳細な説明は当事者が実施しうる程度に明確かつ十分に記載されている。
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?3、8?11に係る特許は特許法第113条第2号又は第4号に該当せず、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3、8?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項4?7に係る特許は訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項4?7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi DirectのG/O(Group Ownerの略)状態で動作可能な無線通信装置であって、
第1種の接続で利用されるべきMACアドレスと、第2種の接続で利用されるべきMACアドレスと、の両方が割り当てられる物理的に1個のインターフェイスと、
複数個の無線チャネルのうちの第1の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、特定デバイスとの前記第1種の接続を確立する第1の接続部であって、前記第1種の接続は、前記Wi-Fi Directに従った接続である、前記第1の接続部と、
前記複数個の無線チャネルのうちの第2の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、前記特定デバイスとは異なるアクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する第2の接続部と、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値のみを、前記特定デバイスに通知する通知部と、を備え、
前記第1の接続部は、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記G/O状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記G/O状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記Wi-Fi Directのクライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記クライアント状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記クライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない、
無線通信装置。
【請求項2】
印刷を実行する印刷実行部をさらに備える、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
原稿の読取を行う原稿読取部をさらに備える、請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記第2の無線チャネルの値は、前記アクセスポイントによって決定される値である、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記特定デバイスとの前記第1種の接続が確立されている状態で、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されるべき場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を切断する切断部をさらに備え、
前記第2の接続部は、前記特定デバイスとの前記第1種の接続が切断された後に、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する、請求項1から3及び8のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されるべき場合に、前記アクセスポイントから前記第2の無線チャネルの値を受信する第2の受信部をさらに備え、
前記無線通信装置が前記G/O状態で動作しながら前記特定デバイスとの前記第1種の接続が確立されている状態で、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されるべき場合であって、前記アクセスポイントから、前記第1の無線チャネルの値に一致する前記第2の無線チャネルの値が受信される場合に、
前記切断部は、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を切断せず、
前記第2の接続部は、前記特定デバイスとの前記第1種の接続が維持された状態で、前記アクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する、請求項9に記載の無線通信装置。
【請求項11】
Wi-Fi Allianceによって策定されたWi-Fi DirectのG/O(Group Ownerの略)状態で動作可能な無線通信装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記無線通信装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理、即ち、
複数個の無線チャネルのうちの第1の無線チャネルを利用して、前記無線通信装置のインターフェイスを介して、特定デバイスとの第1種の接続を確立する第1の接続処理であって、前記インターフェイスは、前記第1種の接続で利用されるべきMACアドレスと、第2種の接続で利用されるべきMACアドレスと、の両方が割り当てられる物理的に1個のインターフェイスであり、前記第1種の接続は、前記Wi-Fi Directに従った接続である、前記第1の接続処理と、
前記複数個の無線チャネルのうちの第2の無線チャネルを利用して、前記インターフェイスを介して、前記特定デバイスとは異なるアクセスポイントとの前記第2種の接続を確立する第2の接続処理と、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値として、前記無線通信装置が利用可能な無線チャネルの値の範囲のうちの前記第2の無線チャネルの値のみを、前記特定デバイスに通知する通知処理と、を実行させ、
前記第1の接続処理は、
前記アクセスポイントとの前記第2種の接続が確立されている状態で、前記Wi-Fi DirectのG/Oネゴシエーションを前記特定デバイスと実行し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記G/O状態で動作することが決定される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記G/O状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記Wi-Fi Directのクライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記第2の無線チャネルの値と一致する前記第1の無線チャネルの値を利用して、前記クライアント状態にて、前記インターフェイスを介して前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立し、
前記G/Oネゴシエーションにおいて、前記無線通信装置が前記クライアント状態で動作することが決定される場合において、前記特定デバイスから、前記特定デバイスによって決定される前記第1の無線チャネルの値であって、前記第2の無線チャネルの値と一致しない前記第1の無線チャネルの値が受信される場合に、前記特定デバイスとの前記第1種の接続を確立しない処理である、
コンピュータプログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-06 
出願番号 特願2016-45369(P2016-45369)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H04W)
P 1 651・ 536- YAA (H04W)
P 1 651・ 537- YAA (H04W)
最終処分 維持  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 畑中 博幸
長谷川 篤男
登録日 2017-06-30 
登録番号 特許第6164322号(P6164322)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 無線通信装置  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  

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