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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A41B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A41B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A41B
管理番号 1354058
異議申立番号 異議2018-700526  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-27 
確定日 2019-06-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6255203号発明「吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6255203号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3、5〕、4について訂正することを認める。 特許第6255203号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6255203号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年10月4日の特許出願であって、平成29年12月8日にその特許権の設定登録がされ、平成29年12月27日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成30年6月27日:特許異議申立人鈴木佐知子(以下「申立人」という。)よる特許異議の申立て
平成30年8月15日付け:取消理由通知書
平成30年10月19日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
平成30年11月28日:申立人による意見書の提出
平成30年12月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成31年2月25日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
平成31年4月4日:申立人による意見書の提出

なお、平成30年10月19日の訂正の請求は、平成31年2月25日の訂正の請求により、特許法第120条の5第7項の規定に従い取り下げられたものとみなす。


第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
平成31年2月25日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6255203号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有した吸収性物品であって、」とあるのを、「縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有し、
着用者が赤ん坊または幼児である吸収性物品であって、」に訂正し、かつ

「前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さは、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さより長く、
前記脚周り弾性部材を前記吸収性本体に張り合わせる際に前記脚周り弾性部材を前記縦方向に伸長させる割合よりも、
前記背側帯弾性部材を前記背側帯部材に張り合わせる際に前記背側帯弾性部材を前記横方向に伸長させる割合の方が大きい、ことを特徴とする」とあるのを、「前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さは、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さより長く、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大きく、
前記脚周り弾性部材を前記吸収性本体に張り合わせる際に前記脚周り弾性部材を前記縦方向に伸長させる割合よりも、
前記背側帯弾性部材を前記背側帯部材に張り合わせる際に前記背側帯弾性部材を前記横方向に伸長させる割合の方が大きく、
前記腹側帯部材のうちの、前記縦方向において前記吸収性コアと重なる領域を下部領域としたとき、
前記下部領域の、前記横方向における中央部分には、
前記腹側帯弾性部材が前記横方向に非連続に配置されており、
イラストが形成されたイラストシートが設けられている、ことを特徴とする」に訂正する。

(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項4に「請求項3に記載の吸収性物品であって、
前記腹側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さは、
前記背側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さよりも長い、ことを特徴とする吸収性物品。」とあるのを、「縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有し、
着用者が赤ん坊または幼児である吸収性物品であって、
前記縦方向に沿って設けられ、排泄物を吸収する吸収性本体と、
前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の一端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記一端部に前記横方向の中央部が固定された腹側帯部材と、
前記腹側帯部材とは別部材として前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の他端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記他端部に前記横方向の中央部が固定された背側帯部材と、を有し、
前記吸収性本体は、液体吸収性素材を積層してなる吸収性コアと、前記吸収性コアを該吸収性コアの非肌側から覆う液不透過性の防漏シートを有し、
前記吸収性コアより前記横方向外側には、脚周り弾性部材が前記縦方向に沿って配置され、
前記背側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する背側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記腹側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する腹側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さは、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さより長く、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大きく、
前記脚周り弾性部材を前記吸収性本体に張り合わせる際に前記脚周り弾性部材を前記縦方向に伸長させる割合よりも、
前記背側帯弾性部材を前記背側帯部材に張り合わせる際に前記背側帯弾性部材を前記横方向に伸長させる割合の方が大きく、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記背側帯弾性部材は、前記横方向において前記背側帯部材の一端部から他端部までの間で前記吸収性コアと重なる部分に少なくとも非連続となる部分を有し、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記腹側帯弾性部材は、前記横方向において前記腹側帯部材の一端部から他端部までの間で前記吸収性コアと重なる部分に少なくとも非連続となる部分を有し、
前記腹側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さは、
前記背側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さよりも長い、ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する。

(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれかに記載の吸収性物品であって、」とあるのを、「請求項1?3のいずれかに記載の吸収性物品であって、」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、吸収性物品について、「着用者が赤ん坊または幼児である」こと、背側帯弾性部材及び腹側帯弾性部材について、「前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大き」いことを限定し、さらに腹側弾性部材について、「前記腹側帯部材のうちの、前記縦方向において前記吸収性コアと重なる領域を下部領域としたとき、前記下部領域の、前記横方向における中央部分には、前記腹側帯弾性部材が前記横方向に非連続に配置されて」いること、及び当該中央部分に、「イラストが形成されたイラストシートが設けられている」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、本件特許明細書の【0055】の「特に、着用者が赤ん坊や幼児である場合は、寝姿勢でおむつが着用されることが多いため、背側(臀部側)の股間部に隙間が生じると、排泄物が漏出しやすくなる。」の記載、【0050】の「腹側帯弾性部材35a(背側帯弾性部材35b)は領域ADeにおいて、吸収性本体10の横方向(幅方向)両端で縦方向に伸長された状態で設けられた脚周り弾性部材17及び脚周り補助弾性部材19の一部と交差するように配置されている。」、【0051】の「このような交差領域では、おむつ1の着用時において脚周り弾性部材17及び脚周り補助弾性部材19によって吸収性本体10を縦方向に収縮させる力が働くと共に、腹側帯弾性部材35a(背側帯弾性部材35b)によって吸収性本体10を横方向(幅方向)に引っ張る力が働く。」、及び【0056】に「吸収性本体10(吸収性コア11)や脚周り弾性部材17が背側帯弾性部材35bによって横方向(幅方向)外側に引っ張られる力の方が、腹側帯弾性部材35aによって横方向(幅方向)外側に引っ張られる力よりも大きくなる。」の記載、【0042】の「下部領域ADは、横方向の中央部ADcに、吸収性本体10のうちの吸収性コア11が存在する部分10pが重ね合わせられて固定される領域である。」、及び【0044】の「上記中央部ADcのうちの横方向の中央部分ADccには、弾性部材35が存在しておらず、故に、上記中央部ADcでは、弾性部材35が横方向に非連続に配置されている。」の記載、並びに【0046】の「下部領域ADの上記中央部ADcには、動物等の不図示のイラストが形成されたイラストシート40が設けられているが、上記と同様の理由で、このイラストシート40の皺の発生も抑制される。よって、イラストは見えやすくなる。」の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
上記訂正事項2は、訂正前の請求項4が請求項3の記載を引用し、請求項3が請求項1の記載を引用していたのを、当該他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載とするとともに、吸収性物品について、「着用者が赤ん坊または幼児である」こと、背側帯弾性部材及び腹側帯弾性部材について、「前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大き」いことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、本件特許明細書の【0055】の記載、【0050】、【0051】及び【0056】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
上記訂正事項3は、訂正前の請求5が請求項1?4のいずれかの記載を引用していたのを、請求項1?3のいずれかの記載を引用するものへと、引用する請求項の選択肢を減らすものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)一群の請求項、別の訂正単位とする求めについて
訂正事項1及び3に係る訂正前の請求項1?3、5は、その請求項2、3、5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
また、訂正事項2に係る訂正前の請求項4については、特許権者から、訂正後の請求項4について訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることの求めがあったことから、訂正後の請求項4については、請求項ごとに訂正されたものとする。

(5)小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3、5〕、4について訂正を認める。


第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有し、
着用者が赤ん坊または幼児である吸収性物品であって、
前記縦方向に沿って設けられ、排泄物を吸収する吸収性本体と、
前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の一端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記一端部に前記横方向の中央部が固定された腹側帯部材と、
前記腹側帯部材とは別部材として前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の他端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記他端部に前記横方向の中央部が固定された背側帯部材と、を有し、
前記吸収性本体は、液体吸収性素材を積層してなる吸収性コアと、前記吸収性コアを該吸収性コアの非肌側から覆う液不透過性の防漏シートを有し、
前記吸収性コアより前記横方向外側には、脚周り弾性部材が前記縦方向に沿って配置され、
前記背側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する背側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記腹側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する腹側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さは、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さより長く、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大きく、
前記脚周り弾性部材を前記吸収性本体に張り合わせる際に前記脚周り弾性部材を前記縦方向に伸長させる割合よりも、
前記背側帯弾性部材を前記背側帯部材に張り合わせる際に前記背側帯弾性部材を前記横方向に伸長させる割合の方が大きく、
前記腹側帯部材のうちの、前記縦方向において前記吸収性コアと重なる領域を下部領域としたとき、
前記下部領域の、前記横方向における中央部分には、
前記腹側帯弾性部材が前記横方向に非連続に配置されており、
イラストが形成されたイラストシートが設けられている、ことを特徴とすることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記背側帯弾性部材は、前記横方向において前記背側帯部材の一端部から他端部までに亘って連続して配置されている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記背側帯弾性部材は、前記横方向において前記背側帯部材の一端部から他端部までの間に少なくとも非連続となる部分を有し、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記腹側帯弾性部材は、前記横方向において前記腹側帯部材の一端部から他端部までの間に少なくとも非連続となる部分を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有し、
着用者が赤ん坊または幼児である吸収性物品であって、
前記縦方向に沿って設けられ、排泄物を吸収する吸収性本体と、
前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の一端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記一端部に前記横方向の中央部が固定された腹側帯部材と、
前記腹側帯部材とは別部材として前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の他端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記他端部に前記横方向の中央部が固定された背側帯部材と、を有し、
前記吸収性本体は、液体吸収性素材を積層してなる吸収性コアと、前記吸収性コアを該吸収性コアの非肌側から覆う液不透過性の防漏シートを有し、
前記吸収性コアより前記横方向外側には、脚周り弾性部材が前記縦方向に沿って配置され、
前記背側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する背側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記腹側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する腹側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さは、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さより長く、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大きく、
前記脚周り弾性部材を前記吸収性本体に張り合わせる際に前記脚周り弾性部材を前記縦方向に伸長させる割合よりも、
前記背側帯弾性部材を前記背側帯部材に張り合わせる際に前記背側帯弾性部材を前記横方向に伸長させる割合の方が大きく、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記背側帯弾性部材は、前記横方向において前記背側帯部材の一端部から他端部までの間で前記吸収性コアと重なる部分に少なくとも非連続となる部分を有し、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記腹側帯弾性部材は、前記横方向において前記腹側帯部材の一端部から他端部までの間で前記吸収性コアと重なる部分に少なくとも非連続となる部分を有し、
前記腹側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さは、
前記背側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さよりも長い、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1?3のいずれかに記載の吸収性物品であって、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分の前記縦方向の長さは、前記吸収性コアの前記縦方向の長さよりも長く、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分の前記縦方向の一端側が前記吸収性コアの腹側端部よりも前記縦方向の外側に、前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分の前記縦方向の他端側が前記吸収性コアの背側端部よりも前記縦方向の外側に配置される、ことを特徴とする吸収性物品。」

第4 当審の判断
1 取消理由(決定の予告)の概要
平成30年12月20日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

(進歩性について)
本件発明1?5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件発明1?5に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2011-217899号公報
甲第2号証:特開2009-240640号公報
平成30年11月28日付け意見書とともに、以下の証拠が提出された。
甲第3号証:特開2012-157661号公報
甲第4号証:特開2013-183813号公報
甲第5号証:特開2011-125641号公報
平成31年4月4日付け意見書とともに、以下の証拠が提出された。
甲第6号証:特開2003-339768号公報
甲第7号証:特開2003-339769号公報
甲第8号証:特開2013-75106号公報


2 取消理由(決定の予告)についての判断
(1)本件発明1について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
同じ色のシャーシ及び吸収体本体を有する吸収性物品であって、
前記シャーシは、前胴回り領域と、後胴回り領域と、該前胴回り領域と該後胴回り領域との間に介在する股下領域とを有し、
前記吸収体本体は、前記シャーシよりも前記吸収性物品の肌当接面側で、かつ、前記股下領域から前記前胴回り領域及び前記後胴回り領域に渡って設けられており、
前記前胴回り領域及び前記後胴回り領域において、前記吸収性物品の幅方向に沿って複数の胴回り弾性部材が設けられており、
前記股下領域内において、前記前胴回り領域において設けられている胴回り弾性部材と前記後胴回り領域において設けられている胴回り弾性部材とが接触しないように配置されており、
前記前胴回り領域又は前記後胴回り領域において、前記吸収体本体が設けられている第1領域では、前記吸収性物品の肌非当接面側からのみ視認可能であり、該吸収体本体が設けられていない第2領域では、該吸収性物品の肌非当接面側及び肌当接面側の両方から視認可能である線状の識別部が設けられており、
前記識別部は、前記第1領域及び前記第2領域に跨って配置されていることを特徴とする吸収性物品。」
(イ)「【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の展開図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の平面図におけるA-A断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の平面図におけるB-B断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の表面を前面側から見た外観図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の表面を後面側から見た外観図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の裏面を前面側から見た外観図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の裏面を後面側から見た外観図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の製造方法を説明するための図である。
【図10】本発明の変更例1に係る吸収性物品の平面図である。
【図11】本発明の変更例2に係る吸収性物品の平面図である。
【図12】本発明の変更例3に係る吸収性物品の展開図である。
【図13】従来の吸収性物品を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の第1の実施形態)
図1乃至図9を参照して、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品1について説明する。本実施形態に係る吸収性物品1は、パンツ型オムツや吸水下着等である。
【0017】
本実施形態に係る吸収性物品1は、同じ色のシャーシ3及び吸収体本体2を有する。ここで、シャーシ3及び吸収体本体2には、一般的な吸収性物品1の着用者の視覚において同じである判断される色が付与されていればよく、定量的に色を表す値(例えば、輝度等)が厳密に一致する色が付与されている必要はない。
【0018】
例えば、本実施形態に係る吸収性物品1では、シャーシ3及び吸収体本体2には、白基調の色が付与されているものとする。
【0019】
図1乃至図4に示すように、吸収体本体2は、着用者の肌に当接する液透過性のシートである吸収体本体側トップシート10と、吸収体コア20と、液不透過性のシートである吸収体本体側バックシート30とによって構成されている。
【0020】
吸収体本体側トップシート10には、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の繊維からなる親水性不織布からなり、スパンボンドやエアスルー等の製法によって製造されるものを使うことができる。吸収体本体側バックシート30には、ポリエチレン(PE)等の防水性フィルムからなるものを使用できる。
【0021】
例えば、吸収体本体側トップシート10は、25g/m^(2)のエアスルー不織布であり、吸収体本体側バックシート30は、22g/m^(2)の透湿性ポリエチレンフィルムである。
【0022】
吸収体コア20は、図3及び図4に示すように、例えば、粉砕されたパルプ(例えば、200g/m^(2))や高吸収性ポリマー(例えば、200g/m^(2))の混合体20Aを包装シート20Bで包装することによって生成されるものである。」
(ウ)「【0027】
図1乃至図4に示すように、吸収体本体2の長手方向Lの両側部には、防漏壁Gが設けられている。すなわち、防漏壁Gは、吸収体本体側バックシート30の幅方向Wの両側部に接合されている。
【0028】
かかる防漏壁Gは、糸状の防漏壁用弾性部材41と、防水フィルム42と、疎水性不織布43とによって構成されている。」
(エ)「【0032】
防漏壁用弾性部材41は、天然ゴムや合成ゴムやスパンデックス等によって構成されていてもよい、例えば、防漏壁用弾性部材41は、左右2本ずつの620texのスパンデックス糸であり、2.2倍の伸張倍率で伸張された状態で、疎水性不織布43にスリットノズル方式で塗工されたホットメルト接着剤によって固定されている。
【0033】
また、図1乃至図4に示すように、シャーシ3は、センターシート50と、前胴回りシート60と、後胴回りシート70とによって構成されている。
【0034】
その結果、図2(a)及び図2(b)に示すように、シャーシ3は、前胴回りシート60に対応する前胴回り領域S10Aと、後胴回りシート70に対応する後胴回り領域S10Bと、前胴回り領域S10Aと後胴回り領域S10Bとの間に介在する股下領域S20とを有する。
【0035】
ここで、吸収体本体2は、図1乃至図4に示すように、シャーシ3の吸収性物品1の肌当接面側に、股下領域S20から前胴回り領域S10A及び後胴回り領域S10Bに渡って設けられている。
【0036】
なお、図2(a)及び図2(b)に示すように、前胴回り領域S10A及び後胴回り領域S10Bでは、吸収体本体2は、幅方向Wの中央領域に設けられている。」
(オ)「【0039】
ここで、前胴回りトップシート61と前胴回りバックシート62との間には、腰回りギャザー用弾性部材90W1や前胴回りギャザー用弾性部材90Fや脚回りギャザー用弾性部材100が伸張された状態で保持されている。」
(カ)「【0042】
ここで、後胴回りトップシート71と後胴回りバックシート72との間には、腰回りギャザー用弾性部材90W2や後胴回りギャザー用弾性部材91や脚回りギャザー用弾性部材92が伸張された状態で保持されている。」
(キ)「【0048】
例えば、腰回りギャザー用弾性部材90W1、90W2の伸張倍率は、3.0倍(スパンデックスの場合の太さは、940dtex)であり、前胴回りギャザー用弾性部材90F及び後胴回りギャザー用弾性部材91の伸張倍率は、2.5倍(スパンデックスの場合の太さは、780dtex)である。
【0049】
例えば、腰回りギャザー用弾性部材90W1、90W2の本数は、それぞれ5本であり、前胴回りギャザー用弾性部材90Fの本数は、8本であり、後胴回りギャザー用弾性部材91の本数は、11本である。」
(ク)「【0050】
また、脚回りギャザー用弾性部材92は、後胴回りトップシート71及び後胴回りバックシート72において、幅方向Wの一方の端部から他方の端部に向けて、長手方向Lの内側の端部(脚回り開口部を形成する領域)に沿って屈曲しながら到達するように配置されている。例えば、脚回りギャザー用弾性部材92の伸張倍率は、1.8倍(スパンデックスの場合の太さは、780dtex)である。
【0051】
また、脚回りギャザー用弾性部材100は、前胴回りトップシート61及び前胴回りバックシート62において、幅方向Wの一方の端部と他方の端部との間で、直線状に配置される。例えば、脚回りギャザー用弾性部材100の伸張倍率は、2.0倍(スパンデックスの場合の太さは、780dtex)であり、脚回りギャザー用弾性部材100の本数は、4本である。
【0052】
なお、図1乃至図4に示すように、上述したセンターシート50や前胴回りシート60や後胴回りシート70を構成するそれぞれの部材は、ヒートシールやソニックシールやホットメルト接着剤等によって接合されるように構成されている。」
(ケ)「【0060】
具体的には、前胴回り領域S10Aには、吸収性物品1の幅方向Wに沿って、複数の腰回りギャザー用弾性部材90W1や、複数の前胴回りギャザー用弾性部材90Fや、複数の脚回りギャザー用弾性部材100が設けられている。
【0061】
また、後胴回り領域S10Bには、吸収性物品1の幅方向Wに沿って、複数の腰回りギャザー用弾性部材90W2や、複数の後胴回りギャザー用弾性部材91や、複数の脚回りギャザー用弾性部材92が設けられている。
【0062】
ここで、本実施形態に係る吸収性物品1では、股下領域S20内において、前胴回り領域S10Aにおいて設けられている胴回り弾性部材(例えば、前胴回りギャザー用弾性部材90Fや脚回りギャザー用弾性部材100)と後胴回り領域S10Bにおいて設けられている胴回り弾性部材(例えば、後胴回りギャザー用弾性部材91や脚回りギャザー用弾性部材92)とが接触しないように配置されている。
【0063】
また、本実施形態に係る吸収性物品1では、図2(a)及び図2(b)に示すように、前胴回り領域S10A又は後胴回り領域S10Bにおいて、吸収体本体2が設けられている第1領域Xでは、吸収性物品1の肌非当接面側からのみ視認可能であり、吸収体本体2が設けられていない第2領域Yでは、吸収性物品1の肌非当接面側及び肌当接面側の両方から視認可能である線状の識別部が設けられている。
【0064】
例えば、かかる識別部は、複数の胴回り弾性部材のうち、吸収体本体2よりも吸収性物品1の肌非当接面側において第1領域X及び第2領域Yに渡って設けられている胴回り弾性部材によって構成されている。」
(コ)「図1



(サ)「図2



(シ)【0060】?【0064】の記載から、吸収性物品1の前胴回りシート60の前胴回り領域S10A及び後胴回りシート70の後胴回り領域S10Bの幅方向Wに沿って、複数本の胴回り弾性部材(前胴回りギャザー用弾性部材90F、脚回りギャザー用弾性部材100、後胴回りギャザー用弾性部材91、脚回りギャザー用弾性部材92)が配置されており、これらの胴回り弾性部材の何本かは、識別部として吸収体本体2が設けられている第1領域X及び吸収体本体2が設けられていない第2領域Yに渡って設けられているところ、吸収体本体2の長手方向Lの両側部には、防漏壁用弾性部材41が備えられているのであるから、前胴回りシート60の前胴回り弾性部材(90F、100)及び後胴回りシート70の後胴回り弾性部材(91、92)の少なくとも何本かは、前記防漏壁用弾性部材41の一部と交差していると理解できる。
このことは、図2からも把握することができる。

(ス)【0032】及び【0048】の記載から、防漏壁用弾性部材41(左右2本ずつ、スパンデックス糸620tex、伸張倍率2.2倍)の伸長倍率よりも後胴回りギャザー用弾性部材91(スパンデックス780dtex、伸張倍率2.5倍)を伸長させる割合の方が大きいことが理解できる。

(セ)上記記載を総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「長手方向Lに沿って吸収体本体2が、これと交差する幅方向Wに沿って前胴回りシート60及び後胴回りシート70が設けられた吸収性物品1であって、
長手方向Lに沿って設けられた、排泄物を吸収する吸収体本体2と、
幅方向Wに沿って、吸収体本体2を非肌側から覆って、前記吸収体本体2の一端部と他端部がそれぞれの略中央部に固定された前胴回りシート60及び後胴回りシート70と、を有し、
前記吸収体本体2は、粉砕されたパルプや高吸収性ポリマーの混合体を含む吸収体コア20を含んでおり、
前記吸収体コア20は非肌側からポリエチレン(PE)等の防水フィルムからなる吸収体本体側バックシート30によって覆われており、
前記吸収体本体2の長手方向Lの両側部には、糸状の防漏壁用弾性部材41が備えられた防漏壁Gが設けられており、
前記前胴回りシート60及び後胴回りシート70には、防漏壁用弾性部材41の一部と交差する前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100、並びに後胴回りギャザー用弾性部材91又は脚回りギャザー用弾性部材92がそれぞれ幅方向Wに沿って配置されており、
前回りシート60の吸収体コア20が配置される第1領域Xにおいて、前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100がそれぞれ幅方向Wに沿って配置されており、
前記防漏壁用弾性部材41は、左右2本ずつ620texのスパンデックス糸を2.2倍の伸長倍率で伸長された状態で、前胴回りギャザー用弾性部材90F及び後胴回りギャザー用弾性部材91は、780dtexのスパンデックス糸を2.5倍の伸長倍率で、脚回りギャザー用弾性部材92は、780dtexのスパンデックス糸を、1.8倍の伸長倍率で、脚回りギャザー用弾性部材100は、780dtexのスパンデックス糸を、2.0倍の伸長倍率で伸長された状態で、それぞれ固定され、
防漏壁用弾性部材41の伸長倍率よりも後胴回りギャザー用弾性部材91の伸長倍率の方が大きい、
吸収性物品1。」

イ 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「吸収体本体2」は、その作用及び構造から本件発明1の「吸収性本体」に相当し、同様に「前胴回りシート60」は「腹側帯部材」に、「後胴回りシート70」は「背側帯部材」に、「吸収性物品1」は「吸収性物品」に、「吸収体コア20」は「吸収性コア」に、「ポリエチレン(PE)等の防水フィルムからなる吸収体本体側バックシート30」は「液不透過性の防漏シート」に、「糸状の防漏壁用弾性部材41」は「脚周り弾性部材」に、「前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100」は「腹側帯弾性部材」に、「後胴回りギャザー用弾性部材91又は脚回りギャザー用弾性部材92」は「背側帯弾性部材」に、それぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「長手方向L」及び「幅方向W」を有する「吸収性物品1」は、「長手方向L」及び「幅方向W」が縦方向及び横方向と表現し得ることは明らかであるから、本件発明1の「縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有し」た「吸収性物品」に相当する。
(ウ)甲1発明の「長手方向Lに沿って設けられた、排泄物を吸収する吸収体本体2」は、本件発明1の「前記縦方向に沿って設けられ、排泄物を吸収する吸収性本体」に相当する。
(エ)甲1発明の「幅方向Wに沿って、吸収体本体2を非肌側から覆って、前記吸収体本体2の一端部と他端部がそれぞれの略中央部に固定された前胴回りシート60及び後胴回りシート70」は、本件発明1の「前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の一端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記一端部に前記横方向の中央部が固定された腹側帯部材と、前記腹側帯部材とは別部材として前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の他端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記他端部に前記横方向の中央部が固定された背側帯部材」に相当する。
(オ)甲1発明の「前記吸収体本体2は、粉砕されたパルプや高吸収性ポリマーの混合体を含む吸収体コア20を含んでおり、前記吸収体コア20は非肌側からポリエチレン(PE)等の防水フィルムからなる吸収体本体側バックシート30によって覆われて」いることは、本件特許明細書の【0032】を参酌すると、本件発明1の「液体吸収性素材」が液状吸収性粒状物を含むものであるから、本件発明1の「前記吸収性本体は、液体吸収性素材を積層してなる吸収性コアと、前記吸収性コアを該吸収性コアの非肌側から覆う液不透過性の防漏シートを有」することに相当する。
(カ)甲1発明の「前記吸収体本体2の長手方向Lの両側部には、糸状の防漏壁用弾性部材41が備えられた防漏壁Gが設けられ」ていることは、当該吸収体本体2に吸収体コア20が含まれていることを踏まえれば、本件発明1の「前記吸収性コアより前記横方向外側には、脚周り弾性部材が前記縦方向に沿って配置され」ることに相当する。
(キ)甲1発明の「前記前胴回りシート60及び後胴回りシート70には、防漏壁用弾性部材41の一部と交差する前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100、並びに後胴回りギャザー用弾性部材91又は脚回りギャザー用弾性部材92がそれぞれ幅方向Wに沿って配置されて」いることは、本件発明1の「前記背側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する背側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、前記腹側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する腹側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され」ることに相当する。
(ク)甲1発明の「防漏壁用弾性部材41の伸長倍率よりも後胴回りギャザー用弾性部材91の伸長倍率の方が大きい」ことは、本件発明1の「前記脚周り弾性部材を前記吸収性本体に張り合わせる際に前記脚周り弾性部材を前記縦方向に伸長させる割合よりも、前記背側帯弾性部材を前記背側帯部材に張り合わせる際に前記背側帯弾性部材を前記横方向に伸長させる割合の方が大き」いことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有した吸収性物品であって、
前記縦方向に沿って設けられ、排泄物を吸収する吸収性本体と、
前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の一端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記一端部に前記横方向の中央部が固定された腹側帯部材と、
前記腹側帯部材とは別部材として前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の他端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記他端部に前記横方向の中央部が固定された背側帯部材と、を有し、
前記吸収性本体は、液体吸収性素材を積層してなる吸収性コアと、前記吸収性コアを該吸収性コアの非肌側から覆う液不透過性の防漏シートを有し、
前記吸収性コアより前記横方向外側には、脚周り弾性部材が前記縦方向に沿って配置され、
前記背側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する背側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記腹側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する腹側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記脚周り弾性部材を前記吸収性本体に張り合わせる際に前記脚周り弾性部材を前記縦方向に伸長させる割合よりも、
前記背側帯弾性部材を前記背側帯部材に張り合わせる際に前記背側帯弾性部材を前記横方向に伸長させる割合の方が大きい、
吸収性物品。」

<相違点1>
吸収性物品について、本件発明1では、「着用者が赤ん坊または幼児である」のに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さは、前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さより長」く、「前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大き」いのに対して、甲1発明は、そのようなものであるか明らかでない点。
<相違点3>
本件発明1は、「前記腹側帯部材のうちの、前記縦方向において前記吸収性コアと重なる領域を下部領域としたとき、前記下部領域の、前記横方向における中央部分には、前記腹側帯弾性部材が前記横方向に非連続に配置されており、イラストが形成されたイラストシートが設けられている」のに対して、甲1発明は、前回りシート60の吸収体コア20が配置される第1領域Xにおいて、前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100がそれぞれ幅方向Wに沿って配置されているものの、それらは、第1領域Xの中央部分で非連続に配置されているかは明らかでなく、また、イラストシートは設けられていない点。

ウ 判断
事案に鑑み、まず上記相違点2及び3について検討する。
<相違点2について>
甲第1号証の【0015】には、図1は「本発明の実施形態に係る吸収性物品の展開図である。」、図2は「本発明の実施形態に係る吸収性物品の平面図である。」と記載されており、【0016】には、「図1乃至図9を参照して、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品1について説明する。本実施形態に係る吸収性物品1は、パンツ型オムツや吸水下着等である。」と記載されているから、図1及び図2は、具体的なパンツ型オムツや吸水下着の設計図としての展開図や平面図ではなく、本発明の第1の実施形態に係るパンツ型オムツや吸水下着等の吸収性物品を説明するための参照図であると理解される。
そして、甲第1号証の記載からは、防漏壁用弾性部材41の一部と交差する前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100、並びに後胴回りギャザー用弾性部材91又は脚回りギャザー用弾性部材92の具体的な配置について、【0048】?【0051】にそれぞれの本数が記載され、これらの胴回り部材の何本かが、糸状の防漏壁用弾性部材41と交差していることまでは把握できるが、当該防漏壁用弾性部材41を備えた吸収体本体2が、前胴回りシート60及び後胴回りシート70とそれぞれどの程度重ねられており、かつ、その重ねられた部分に前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100、並びに後胴回りギャザー用弾性部材91又は脚回りギャザー用弾性部材92をどの程度配置するかは記載や示唆はなく、ましてや、これらの配置によって、後胴回りシート70における幅方向の引っ張り力と前胴回りシート60における幅方向の引っ張り力とのバランスをどのようにとるかについての技術思想は、何ら見当たらない。
そうすると、甲第1号証には、前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100、並びに後胴回りギャザー用弾性部材91又は脚回りギャザー用弾性部材92について、糸状の防漏壁用弾性部材41との関係における配置を具体的に説明した記載や示唆はなく、たとえ、図1及び図2から、前胴回りギャザー用弾性部材90F及び後胴回りギャザー用弾性部材91が、糸状の防漏壁用弾性部材41と交差する領域及び当該領域に配置されている本数を数えることができたとしても、当該図1及び図2の記載をそのような関係を具体的に示した図として理解することは、適切でない。
したがって、甲第1号証には、上記相違点2に係る本件発明1の事項が、記載や示唆されているとはいえず、また、甲第2号証?甲第7号証にも当該事項は記載も示唆もされていないから、甲1発明について、上記相違点2おける本件発明1に係る事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

<相違点3について>
本件発明1は、腹側帯弾性部材が横方向に非連続に配置されている中央部分に、イラストが形成されたイラストシートが設けられていることで、当該中央部分が皺の発生が防止されて平坦となり、当該平坦な部分に設けたイラストシートは、着用者が容易に表面側及び裏面側を識別することができるという効果を奏するものである。
一方、甲第2号証?甲第5号証には、腹側帯弾性部材が横方向に非連続に配置された中央部分を設けることが、甲第6号証及び甲第7号証には、中央部分にイラストを設けることが記載されているとしても、腹側帯弾性部材が横方向に非連続に配置された中央部分にイラストシートを設けることについては、甲第1号証?甲第7号証に記載も示唆もない。
したがって、甲1発明について、上記相違点3における本件発明1に係る事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

<本件発明1の奏する効果について>
そして、本件発明1は、上記相違点2及び3の構成を有することにより、背側では十分なフィット性を有し、かつ、腹側では適度なフィット感を維持することができ着用者が足を前方に動かす動作を妨げにくくなる(【0057】)、及び中央部分に設けたイラストシートにより、着用者が容易に表面側及び裏面側を識別することができる(【0044】?【0046】)という、本件特許明細書記載の格別な効果を奏するものである。

エ 小括
上記のとおり、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2、3及び5について
本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項を全て有し、更に限定を付加したものであるから、本件発明2、3及び5と甲1発明とを比較すると、少なくとも上記相違点1?3で相違する。
そして、上記相違点2及び3については、上記(1)ウで検討したとおりである。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明2、3及び5は、甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明4について
ア 対比
本件発明4と甲1発明とを比較すると、上記相違点1、2及び下記の相違点4で相違し、その余の点で一致する。

<相違点4>
本件発明4は、「前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記背側帯弾性部材は、前記横方向において前記背側帯部材の一端部から他端部までの間で前記吸収性コアと重なる部分に少なくとも非連続となる部分を有し、前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記腹側帯弾性部材は、前記横方向において前記腹側帯部材の一端部から他端部までの間で前記吸収性コアと重なる部分に少なくとも非連続となる部分を有し、前記腹側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さは、前記背側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さよりも長い」のに対して、引用発明は、防漏壁用弾性部材41の一部と交差する前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100、並びに後胴回りギャザー用弾性部材91又は脚回りギャザー用弾性部材92がそれぞれ幅方向Wに沿って配置されているものの、それらは、吸収体コア20が配置される第1の領域Xにおいて、少なくとも非連続に配置されているかは明らかでなく、また、防漏壁用弾性部材41の一部と交差する前胴回りギャザー用弾性部材90F又は脚回りギャザー用弾性部材100、並びに後胴回りギャザー用弾性部材91又は脚回りギャザー用弾性部材92と吸収体コア20とが重なる部分の幅方向の長さも明らかでない点。

イ 判断
事案に鑑み、まず上記相違点2及び4について検討する。
<相違点2について>
相違点2については、上記(1)ウで検討したとおりである。

<相違点4について>
相違点4について、申立人は、平成31年4月4日付け意見書において、新たに甲第8号証を示して、甲1発明において、甲8号証記載の事項を採用することで、当業者が容易になし得たことである旨主張する(16頁11行?18頁15行)。
しかし、上記相違点4に係る本件発明4の事項は、本件特許の設定登録時の請求項4に係る事項であるから、今回の訂正の請求に付随して初めて生じた事項とはいえず、実質的に新たな取消理由を主張するものであり、また、たとえ甲第8号証を採用したとしても、上記相違点2について当業者が容易に想到し得たものでない以上、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合にあたらないから、甲第8号証に基づいた申立理由は採用しない。

そして、本件発明4は、上記相違点4に係る事項を有することで、「弾性部材が吸収性コア11と重なる部分が長いほど、該弾性部材によって吸収性コア11が横方向(幅方向)外側に強く引っ張られるため、本実施形態のように、背側帯弾性部材35bと吸収性コア11との重なり部分を短くすることで、背側において吸収性コア11を直接横方向(幅方向)外側に引っ張る力が強くなりすぎないようにしている。これにより、臀部における吸収性本体10のフィット感を維持しつつ、臀部と吸収性コア11との間に若干のスペースが形成され、排泄された便を拡散させることなく当該スペースに保持することができる。一方、腹側において吸収性コア11を直接横方向(幅方向)外側に引っ張る力を強くすることで、吸収性コア11を身体に密着させ、排泄された尿が漏出することを抑制できる。」(【0058】)という効果を有するものである。
一方、甲第2号証?甲第7号証には、弾性部材と吸収性コアとの重なる部分の長さについては、記載や示唆はない。
したがって、甲1発明について、甲第2号証?甲第7号証に基いて、上記相違点4における本件発明5に係る事項とすることは、当業者が容易になし得たとはいえず、また、設計上適宜なし得たことであるともいえない。

ゆえに、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)まとめ
本件発明1?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

3 取消理由(決定の予告)に採用しなかった取消理由について
(1)新規性について
申立人は、本件発明1、2、5は、甲1発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである旨主張する。

しかし、上記2(1)及び(2)でに示したとおり、本件発明1、2、5と甲1発明とは、上記相違点1?相違点3で相違し、上記相違点1?相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1、2、5は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(2)サポート要件について
本件発明の解決しようとする課題は、「着用者の臀部側において十分なフィット性を有する3ピースタイプの使い捨ておむつを提供すること」(【0006】)である。
そして、本件特許明細書の【0056】には、「吸収性本体10(吸収性コア11)や脚周り弾性部材17が背側帯弾性部材35bによって横方向(幅方向)外側に引っ張られる力の方が、腹側帯弾性部材35aによって横方向(幅方向)外側に引っ張られる力よりも大きくなる。これにより、本実施形態のおむつ1では背側のフィット性を高くすることができる。」と記載されており、本件発明1は、「前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大きく、」するとの発明特定事項を有することで、本件発明の解決しようとする課題を解決できると理解される。
ここで、申立人は、本件特許明細書の記載からは、本件発明1が「排泄物が漏れることを抑制することができる」ことが理解できないから、サポート要件を充足しない旨主張するが、本件発明1が本件発明の解決しようとする課題を解決できることは、上記のとおり本件発明1の発明特定事項及び本件特許明細書の記載から理解できるから、申立人の主張は採用できない。
また、本件発明2?5についても同様である。
そうすると、本件発明1?5は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものとはいえず、その特許は、取り消されるべきものであるとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有し、
着用者が赤ん坊または幼児である吸収性物品であって、
前記縦方向に沿って設けられ、排泄物を吸収する吸収性本体と、
前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の一端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記一端部に前記横方向の中央部が固定された腹側帯部材と、
前記腹側帯部材とは別部材として前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の他端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記他端部に前記横方向の中央部が固定された背側帯部材と、を有し、
前記吸収性本体は、液体吸収性素材を積層してなる吸収性コアと、前記吸収性コアを該吸収性コアの非肌側から覆う液不透過性の防漏シートを有し、
前記吸収性コアより前記横方向外側には、脚周り弾性部材が前記縦方向に沿って配置され、
前記背側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する背側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記腹側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する腹側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さは、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さより長く、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大きく、
前記脚周り弾性部材を前記吸収性本体に張り合わせる際に前記脚周り弾性部材を前記縦方向に伸長させる割合よりも、
前記背側帯弾性部材を前記背側帯部材に張り合わせる際に前記背側帯弾性部材を前記横方向に伸長させる割合の方が大きく、
前記腹側帯部材のうちの、前記縦方向において前記吸収性コアと重なる領域を下部領域としたとき、
前記下部領域の、前記横方向における中央部には、
前記腹側帯弾性部材が前記横方向に非連続に配置されており、
イラストが形成されたイラストシートが設けられている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記背側帯弾性部材は、前記横方向において前記背側帯部材の一端部から他端部までに亘って連続して配置されている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記背側帯弾性部材は、前記横方向において前記背側帯部材の一端部から他端部までの間に少なくとも非連続となる部分を有し、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記腹側帯弾性部材は、前記横方向において前記腹側帯部材の一端部から他端部までの間に少なくとも非連続となる部分を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有し、
着用者が赤ん坊または幼児である吸収性物品であって、
前記縦方向に沿って設けられ、排泄物を吸収する吸収性本体と、
前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の一端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記一端部に前記横方向の中央部が固定された腹側帯部材と、
前記腹側帯部材とは別部材として前記横方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前記縦方向の他端部を前記吸収性本体の非肌側から覆いながら前記他端部に前記横方向の中央部が固定された背側帯部材と、を有し、
前記吸収性本体は、液体吸収性素材を積層してなる吸収性コアと、前記吸収性コアを該吸収性コアの非肌側から覆う液不透過性の防漏シートを有し、
前記吸収性コアより前記横方向外側には、脚周り弾性部材が前記縦方向に沿って配置され、
前記背側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する背側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記腹側帯部材には、前記脚周り弾性部材の一部と交差する腹側帯弾性部材が前記横方向に沿って配置され、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さは、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域の前記縦方向の長さより長く、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記背側帯弾性部材とが交差する領域が、前記背側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力は、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記腹側帯弾性部材とが交差する領域が、前記腹側帯弾性部材によって前記横方向の外側に引っ張られる力より大きく、
前記脚周り弾性部材を前記吸収性本体に張り合わせる際に前記脚周り弾性部材を前記縦方向に伸長させる割合よりも、
前記背側帯弾性部材を前記背側帯部材に張り合わせる際に前記背側帯弾性部材を前記横方向に伸長させる割合の方が大きく、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記背側帯弾性部材は、前記横方向において前記背側帯部材の一端部から他端部までの間で前記吸収性コアと重なる部分に少なくとも非連続となる部分を有し、
前記脚周り弾性部材の一部と交差する前記腹側帯弾性部材は、前記横方向において前記腹側帯部材の一端部から他端部までの間で前記吸収性コアと重なる部分に少なくとも非連続となる部分を有し、
前記腹側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さは、
前記背側帯弾性部材のうち伸長状態にある部分と前記吸収性コアとが重なる部分の前記横方向の長さよりも長い、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1?3のいずれかに記載の吸収性物品であって、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分の前記縦方向の長さは、前記吸収性コアの前記縦方向の長さよりも長く、
前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分の前記縦方向の一端側が前記吸収性コアの腹側端部よりも前記縦方向の外側に、前記脚周り弾性部材のうち伸長状態にある部分の前記縦方向の他端側が前記吸収性コアの背側端部よりも前記縦方向の外側に配置される、ことを特徴とする吸収性物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-11 
出願番号 特願2013-209234(P2013-209234)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A41B)
P 1 651・ 113- YAA (A41B)
P 1 651・ 537- YAA (A41B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤井 眞吾一ノ瀬 薫  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 佐々木 正章
千壽 哲郎
登録日 2017-12-08 
登録番号 特許第6255203号(P6255203)
権利者 ユニ・チャーム株式会社
発明の名称 吸収性物品  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 一色国際特許業務法人  

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