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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61L
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A61L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61L
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A61L
管理番号 1354060
異議申立番号 異議2018-700802  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-03 
確定日 2019-06-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6304065号発明「芳香装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6304065号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 特許第6304065号の請求項1?3、6に係る特許を維持する。 特許第6304065号の請求項4、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯

本件特許第6304065号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成27年2月10日を出願日とし、平成30年3月16日に特許権の設定登録がなされ、同年4月4日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、特許異議申立人 東京総合コンサルティング 株式会社(以下「異議申立人」という。)により、同年10月3日付けで特許異議の申立てがされ、同年12月3日付けで特許権者に取消理由が通知され、その指定期間内の平成31年2月4日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正(以下、「本件訂正」という。)請求がされ、同年2月19日付けで訂正請求があった旨が異議申立人に通知されたが、その指定期間内に異議申立人から意見書の提出がなかったものである。


第2 本件訂正の適否についての判断
本件訂正の請求の趣旨、及び、訂正の内容は、本件訂正請求書の記載によれば、それぞれ以下のとおりのものである。

1. 請求の趣旨
本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求める。

2. 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1?7のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部に位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される」とあるのを、
「新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される前記嵌る接続構造を有し、
前記ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され、
前記モジュール側接続部は、複数の前記部材のうち、前記筒状の側面に位置し、前記容器モジュールを覆う側部カバー部材(12)を取り外した状態で前記嵌る接続構造により前記ハウジング内接続部に接続され、
前記側部カバー部材から突出するように設けられ、前記容器モジュールの外周部に接触または接近して前記容器モジュールを支持する支持片(121)を備え、
前記支持片は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制する」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、請求項3、請求項6も同様に訂正する)。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記新たな芳香液に交換する際には、前記新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部に位置合わせされ、さらに前記ガイド部に前記突出片を保持させた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入する」とあるのを、
「前記新たな芳香液に交換する際には、前記新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と前記嵌る接続構造により位置合わせされ、さらに前記ガイド部に前記突出片を保持させた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入する」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3、請求項6も同様に訂正する)。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記一対の挟持片部は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制する」とあるのを、
「前記一対の挟持片部は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制する」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から請求項5のいずれか一項に」とあるのを、「請求項1から請求項3のいずれか一項に」に訂正する。

(7) 訂正事項7
明細書の段落【0010】に「新たな芳香液に交換する際には、新たな芳香液を貯えた液容器を有する新たな容器モジュールのモジュール側接続部がハウジング内接続部に位置合わせされた状態で、新たな容器モジュールがハウジングの内部に進入することにより、モジュール側接続部とハウジング内接続部とが接続されて新たな容器モジュールが装着されること」とあるのを、
「新たな芳香液に交換する際には、新たな芳香液を貯えた液容器を有する新たな容器モジュールのモジュール側接続部がハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態で、新たな容器モジュールがハウジングの内部に進入することにより、モジュール側接続部とハウジング内接続部とが嵌る接続構造により接続されて新たな容器モジュールが装着される嵌る接続構造を有し、
ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され、
モジュール側接続部は、複数の部材のうち、筒状の側面に位置し、容器モジュールを覆う側部カバー部材(12)を取り外した状態で嵌る接続構造によりハウジング内接続部に接続され、
側部カバー部材から突出するように設けられ、容器モジュールの外周部に接触または接近して容器モジュールを支持する支持片(121)を備え、
支持片は、モジュール側接続部とハウジング内接続部とが嵌る接続構造により接続された状態で、モジュール側接続部がハウジング内接続部から脱離する方向への容器モジュールの移動を抑制すること」に訂正する。


2. 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求
の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部に位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される」という発明特定事項を、「新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される前記嵌る接続構造を有」するという発明特定事項に明確化するという訂正事項(以下、「前者の訂正事項」という。)と、
請求項1を引用する、訂正前の請求項4の発明特定事項について、さらに、訂正前の請求項5で特定されていた、「前記ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され、前記モジュール側接続部は、複数の部材のうち、前記筒状の側面に位置し、前記容器モジュールを覆う側部カバー部材(12)を取り外した状態で前記ハウジング内接続部に接続され、前記側部カバー部材から突出するように設けられ、前記容器モジュールの外周部に接触または接近して前記容器モジュールを支持する支持片(121)を備え、前記支持片は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制する」という発明特定事項を訂正前の請求項1に組み込むと共に、前者の訂正事項に関連して、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部との接続構造が「前記嵌る接続構造」であることを明確化しようとする訂正事項(以下、「後者の訂正事項」という。)とからなっている。
そして、前者の訂正事項は、訂正前の請求項1における「新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが接続され」るという発明特定事項では、新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部との接続構造が明確ではなかったところ、本件特許の明細書【0090】における「ハウジング内接続部7がモジュール側接続部44の内側に嵌ることで両者が接続されるが、…(当審注:「…」は記載の省略を表す。以下、同じ。)モジュール側接続部44がハウジング内接続部7の内側に嵌る接続構造でもよい。」との記載、及び、本件特許の図面【図2】?【図3】の記載に基づいて、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部との接続構造が「前記嵌る接続構造」であることに明確化しようとする訂正事項であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、後者の訂正事項は、請求項1を引用する、訂正前の請求項4の発明特定事項について、さらに、訂正前の請求項5で特定されていた発明特定事項を請求項1に組み込むと共に、前者の訂正事項に関連して、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部との接続構造が「前記嵌る接続構造」であることを明確化しようとする訂正事項であるから、特許請求の範囲の減縮と明瞭でない記載の釈明とを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2) 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2における「前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部に位置合わせされ」るとの発明特定事項について、前記訂正事項1における前者の訂正事項に関連して、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部との位置合わせが「前記嵌る接続構造」によって行われるということを明確化しようとする訂正事項であるから、明瞭でない記載の釈明とを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3) 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3における「前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが接続された状態」との発明特定事項を、前記訂正事項1における前者の訂正事項に関連して、それらが接続された状態が、「前記嵌る接続構造により接続された状態」であることを明確化しようとする訂正事項であるから、明瞭でない記載の釈明とを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4) 訂正事項4及び5
訂正事項4及び5は、訂正前の請求項4及び5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5) 訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1から請求項5のいずれか一項を引用していたところ、訂正事項4と5に伴って、請求項1から請求項3のいずれか一項を引用する請求項とするものであり、請求項6の引用請求項数を減少するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6) 訂正事項7
訂正事項7は、芳香族装置に係る発明に関し、訂正前の請求項1と同様の記載がされていた訂正前の明細書の【0010】の記載を、訂正事項1によって訂正される請求項1の記載と整合させようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7) 独立特許要件について
本件特許の全請求項について特許異議の申立てがされたので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用される請求項はなく、したがって、訂正事項1?7には、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用されない。

(8) 一群の請求項について
訂正前の請求項2?6は、訂正前の請求項1を引用する請求項であり、請求項1?6は一群の請求項であるところ、請求項1に係る訂正事項1を含む本件訂正は、一群の請求項に対して請求されたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。

(9)明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項7による明細書の訂正は、訂正事項1の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり、一群の請求項1?6の全てについてする訂正である。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。


3. 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。


第3 本件訂正発明
上記第2のとおり訂正することを認めるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3、6に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明3」、「本件訂正発明6」ということがあり、また、これらを、まとめて、「本件訂正発明」ということがある。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?3、6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ハウジング(1)と、
前記ハウジングの内部に設けられ、芳香成分を含む芳香液が貯えられた液容器(40)を有する容器モジュール(4)と、
前記ハウジングの外部と連通可能に前記ハウジングの内部に設けられ、前記液容器から排出される前記芳香液の揮発気体が送られる貯留室(45)と、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記貯留室に空気を供給する手段であって、前記貯留室に存在する前記揮発気体を前記ハウジングの外部に放出可能な空気供給手段(2)と、
前記ハウジングに固定された部材(13)にまたは前記ハウジングの一部に、一体に形成され、前記空気供給手段から供給される空気が通る通路が内部に形成されたハウジング内接続部(7)と、
前記貯留室に直通する通路(440)を内部に有するように前記容器モジュールに設けられて、前記ハウジング内接続部に対して着脱可能に構成されるモジュール側接続部(44)と、
を備え、
新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される前記嵌る接続構造を有し、
前記ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され、
前記モジュール側接続部は、複数の前記部材のうち、前記筒状の側面に位置し、前記容器モジュールを覆う側部カバー部材(12)を取り外した状態で前記嵌る接続構造により前記ハウジング内接続部に接続され、
前記側部カバー部材から突出するように設けられ、前記容器モジュールの外周部に接触または接近して前記容器モジュールを支持する支持片(121)を備え、
前記支持片は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制することを特徴とする芳香装置。
【請求項2】
前記容器モジュールから突出する突出片(42)と、
前記ハウジングに固定された部材(13)または前記ハウジングの一部に一体に設けられ、前記突出片が収まる溝を有して上下方向の移動を抑制するように前記容器モジュールを保持可能なガイド部(130)と、
を備え、
前記新たな芳香液に交換する際には、前記新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と前記嵌る接続構造により位置合わせされ、さらに前記ガイド部に前記突出片を保持させた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することを特徴とする請求項1に記載の芳香装置。
【請求項3】
前記ハウジングに固定された部材(13)または前記ハウジングの一部に一体に設けられ、前記容器モジュールの外周部を外側から挟むようにして保持する一対の挟持片部(131)を備え、
前記一対の挟持片部は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制することを特徴とする請求項2に記載の芳香装置。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
車室内に設置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の芳香装置。」


第4 特許異議の申立てについて
1. 申立理由の概要
異議申立人は、以下の甲第1号証?甲第2号証を提出して、以下の申立理由1?3によって、訂正前の請求項1?6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1) 申立理由1
訂正前の請求項1?5に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるので、訂正前の請求項1?5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、訂正前の請求項1?6に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、訂正前の請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2) 申立理由2
訂正前の請求項1、6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、訂正前の請求項1、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3) 申立理由3
訂正前の請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号若しくは第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。

[異議申立人が提出した証拠方法]
甲第1号証:米国特許出願公開第2012/0018530号明細書
甲第2号証:米国特許出願公開第2010/0084484号明細書


2. 取消理由の概要
訂正前の請求項1?6に係る特許に対して、平成30年12月3日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1) 本件の請求項1?6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2) 本件特許の請求項1?4、6に係る発明は、下記の引用文献1?2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1?4、6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


引用文献1:米国特許出願公開第2012/0018530号明細書
(甲第1号証)
引用文献2:登録実用新案第3018216号公報


3. 当審の判断
本件訂正発明1は、訂正前の請求項5に係る発明に相当するから、新規性進歩性については、上記1.の申立理由についてのみ検討を行うこととする。
3A 上記1.の申立理由について
(A-1) 上記申立理由1について
(A-1-1) 甲第1号証の記載事項
ア. 「[0020] FIG. 1A depicts an example of a top view 110 of a fragrance diffusion system, and FIGS. 1B-1D depict examples of side views 120 , 130 , 140 of the fragrance diffusion system. …
[0021] FIG. 2A depicts an example of a profile view 210 of an interior of the fragrance diffusion system, and FIG. 2B depicts an example of a side view 220 of the interior of the fragrance diffusion system. As described below, some of the interior components from the fragrance diffusion system shown in FIGS. 2A and 2B are shown in FIGS. 3-5 . For instance, FIGS. 3-5 show diagrams of interior components of the fragrance diffusion system, where FIG. 3 depicts an example of interior components of a top chassis assembly 300 , FIG. 4 depicts an example of some of the components related to a collector assembly 401 and a cartridge assembly 400 , and FIG. 5 depicts an example of some of the components related to a bottom chassis assembly 500 .」
(当審訳:[0020] 図1Aは、芳香成分拡散システムの側面図110の一例を示し、図1B?図1Dは、芳香成分拡散システムの側面図120,130,140の例を示す。…
[0021] 図2Aは、芳香成分拡散システムの内部構造図210の一例を示し、図2Bは、芳香成分拡散システムの側面図220の一例を示す。以下に説明するように、図2A及び図2Bに示す芳香成分拡散システムの内部構成要素のいくつかは図3?5に示される。例えば、図3?5は、芳香成分拡散システムの内部構成要素の図を示し、図3は、頂部シャーシアセンブリ300の内部構成要素の一例を示し、図4は、コレクタアセンブリ401及びカードリッジアセンブリ400に関連するいくつかの構成要素の一例を示し、図5は、底部シャーシアセンブリ500に関連するいくつかの構成要素の一例を示す。)

イ. 「[0022] FIG. 3 shows the top chassis assembly 300 includes a rotating universal pivot bracket 306 for a mounting mechanism that serves as a horizontal adjustment for a particular fragrance direction by permitting the fragrance diffusion system to pivot up to 180 degrees. The rotating universal pivot bracket 306 mechanism also is configured for a quick disconnect of the apparatus from the mounting bracket for service. A lockable pivot bracket thumb screw 305 can be used to secure a targeted horizontal adjustment in a fixed position, where the pivot bracket thumb screw 305 can be tightened to lock the position of the targeted horizontal adjustment. The rotating universal pivot bracket 306 and the lockable pivot bracket thumb screw 305 can be attached to the top chassis 307 , which is a circular-like plate that rests on top of a pump bracket 308 , a fan bracket 304 and a printed circuit board (PCB) box 309 . The pump bracket 308 is designed to hold an air pump (not shown) that works in the delivery of the compresses air inside the fragrance diffusion system. The pump bracket may also be use to shield the noise coming from the air pump. The fan bracket 304 is configured to hold a fan 302 , and the PCB box 309 can be designed to hold circuit components and systems for controlling the operations of the system.

[0027] The location of the fan 302 in the system is at the output of the air exit at the fan chassis 301 , and can be substantially flush with the outside front housing 710 of the fragrance system. The fan chassis 301 has a slot 312 located at a bottom area of the air exit to receive a fragrance from an output orifice 409 of the collector assembly 401 on the cartridge bottle assembly 400 . The air pushed at the fan 302 can be air that has a lower pressure than the air coming from the output orifice 409 . By having the slot 312 in the bottom on the fan chassis 301 , the air flow from the fan can directly assist in pushing the fragrance away from the system. The fan chassis 301 can be used to channel the fragrance at the opening 750 of the outside front housing 710 of the fragrance diffusion system.」
(当審訳:[0022] 図3は、頂部シャーシアセンブリ300が、芳香成分拡散システムを180°まで旋回できるようにすることにより、特定の芳香方向に対する水平調整として機能する取り付け機構用の回転ユニバーサルピボットブラケット306を含むことを示す。回転ユニバーサルピボットブラケット306の機構はまた、保守のために装置を取り付けブラケットから迅速に取り外せるように構成される。ロック可能なピボットブラケットつまみねじ305は目標水平調整の位置の固定に使用でき、そのピボットブラケットつまみねじ305を締めて目標水平調整の位置をロックできる。回転ユニバーサルピボットブラケット306及びロック可能なピボットブラケットつまみねじ305は、ポンプブラケット308、ファンブラケット304及びプリント回路基板(PCB)ボックス309の上に載置される円形プレートである頂部シャーシ307に取り付け可能である。ポンプブラケット308は、芳香成分拡散システム内で圧縮空気を伝達する空気ポンプ(不図示)を保持するように設計される。ポンプブラケットは、空気ポンプから生ずる雑音の遮蔽にも使用され得る。ファンブラケット304は、ファン302を保持するように構成され、PCBボックス309は、システムの動作を制御するための回路構成要素とシステムとを保持するように設計し得る。

[0027] システムにおけるファン302の位置は、ファンシャーシ301内の空気出口の出力部にあり、芳香システムの外側のフロントハウジング710と実質的に同一平面であり得る。ファンシャーシ301は、カートリッジボトルアセンブリ400上のコレクタアセンブリ401の出力オリフィス409から芳香成分を受け取るために空気出口の底部領域に位置するスロット312を有する。ファン302で押し出される空気は、出力オリフィス409からの空気よりも低圧の空気であり得る。ファンシャーシ301の底部にスロット312を有することによって、ファンからの空気流は、芳香成分をシステムから押し出すのを直接補助できる。ファンシャーシ301は芳香成分拡散システムの外側のフロントハウジング710の開口部750において芳香成分を分散するために使用可能である。)

ウ. 「[0033] FIG. 4 depicts an example of a collector assembly 401 and a cartridge bottle assembly 400 in the fragrance diffusion system. The collector assembly 401 includes a nozzle 405 , a collector top 406 , the output orifice 409 , a collector bottom 407 , O-rings 403 , 404 and a D-shaped guide plate alignment mechanism 410 . The cartridge bottle assembly 400 includes the bottle 402 to hold the liquid fragrance oil. FIG. 5 depicts an example of a bottom chassis assembly 500 in the fragrance diffusion system. The bottom chassis assembly 500 includes a main chassis 503 , an air adapter 502 , a guide plate 504 , a muffler assembly 507 , a plenum cover 505 , a cam lock mechanism 506 , and two levers 501 . The combination of the muffler assembly 507 and a plenum can be designed to reduce the noise from the air intake of the air pump by providing a restricted air input passageway.
[0034] The collector assembly 401 is formed with a D-shaped collector self alignment feature that allows the user to slide the collector assembly 401 into place where it aligns the collector assembly's nozzle 105 to the air adapter 502 located in the bottom main chassis 503 . A D-shaped guide plate 504 in the bottom chassis assembly 500 can allow for a single orientation of the collector assembly 401 to the guide plate 504 . …
[0035] The fragrance diffusion system can use a replaceable cartridge bottle assembly 400 with the output orifice 409 attached to the collector top 406 . The output orifice 409 can be aligned such that when the collector assembly 401 is self aligned upon insertion by the D-shaped guide plate alignment mechanism 410 , the output orifice 409 can be configured such that the fragrance output is centered on the slot 312 at the air flow from the fan chassis assembly 301 , which can result in an evenly-distributed fragrance as it leaves the housing assembly 700 .

[0040]… The nozzle 405 can be configured to receive the compressed air from the air pump.」
(当審訳:[0033] 図4は、芳香成分拡散システム内のコレクタアセンブリ401及びカートリッジボトルアセンブリ400の一例を示す。コレクタアセンブリ401は、ノズル405と、コレクタ頂部406と、出力オリフィス409と、コレクタ底部407と、Oリング403、404と、D形ガイドプレート整列機構410とを含む。カートリッジボトルアセンブリ400は、液体芳香オイルを保持するためのボトル402を含む。図5は、芳香成分拡散システム内の底部シャーシアセンブリ500の一例を示す。底部シャーシアセンブリ500は、メインシャーシ503と、空気アセンブリ502と、ガイドプレート504と、マフラーアセンブリ507と、プレナムカバー505と、カムロック機構506と、2つのレバー501とを含む。マフラーアセンブリ507とプレナムとの組み合わせは、空気入力通路を制限して、空気ポンプの空気入口からの雑音を低減するように設計可能である。
[0034] コレクタアセンブリ401は、コレクタアセンブリのノズル105を底部メインシャーシ503に位置する空気アダプタ502に整列させる位置にユーザーがコレクタアセンブリ401をスライドできるようにするD形コレクタ自己整列機能を有するように形成される。底部シャーシアセンブリ500のD形ガイドプレート504は、コレクタアセンブリ401がガイドプレート504に対して単一方向に向くようにできる。…
[0035] 芳香成分拡散システムは、出力オリフィス409がコレクタ頂部406に取り付けられた交換可能なカートリッジボトルアセンブリ400を使用できる。出力オリフィス409は、コレクタアセンブリ401が挿入時にD形ガイドプレート整列機構410により自己整列される場合に、芳香成分の出力がスロット312においてファンシャーシアセンブリ301からの空気流の中心に位置するように出口オリフィス409を構成できるように整列可能であり、その結果、芳香成分はハウジングアセンブリ700から出る際に均一に分散される。

[0040]…ノズル405は、空気ポンプからの圧縮空気を受け取るように設定され得る。)

エ. 「[0041] FIGS. 6A-6F depict examples of various views related to the collector assembly. FIG. 6A shows various parts of the collector assembly, and where those parts fit into the collector assembly. The parts includes a snap ring 1 , an input cap 2 , an input tube 3 , o-rings 4 , 5 , 6 , 11 a snap ring 7 , a nozzle 8 , an output cap 9 , a collector top 10 , a collector center 12 , a funnel 13 , and a collector bottom 14 . …
[0042]…The collector bottom 14 may form a main part of the body of the collector assembly 401 , and the collector bottom 14 can be the part of the collector assembly where the fragranced air is collected before the fragranced air exits from the output tube.

[0044] FIGS. 6E and 6F show the collector assembly with a D-shaped collector self alignment feature 21 that allows the user to slide the collector assembly into place. A D-shaped guide plate 22 in the bottom chassis assembly can allow for a single orientation of the collector assembly to the guide plate. The collector assembly can be held into place by levers 19 , 20 , which can lock into place when closed to hold the collector assembly tight against the air pressure from the apparatus by using (locking) tabs 23 , 24 on each side.」
(当審訳:[0041] 図6A?図6Fは、コレクタアセンブリに関する種々の図を示す。図6Aはコレクタアセンブリの種々の部品を示し、これらは、コレクタアセンブリにはめ込まれる。部品は、スナップリング1、入力キャップ2、入力管3、Oリング4、5、6、11、スナップリング7、ノズル8、出力キャップ9、コレクタ頂部10、コレクタ中心部12、漏斗13及びコレクタ底部14を含む。…
[0042]…コレクタ底部14は、コレクタアセンブリ401の本体の主要部を形成し、そのコレクタ底部14は、出力管から放出される前の芳香空気が収集される箇所であり得る。

[0044] 図6E及び図6Fは、ユーザがコレクタアセンブリを適切な位置にスライドできるようにするD形コレクタ自己整列機能21を有するコレクタアセンブリを示す。底部シャーシアセンブリのD形ガイドプレート22は、コレクタアセンブリがガイドアセンブリに対して単一方向に向くようにできる。コレクタアセンブリは、各側のタブ23、24を使用する(ロックする)ことにより、コレクタアセンブリを装置からの空気圧に対してしっかりと保持するために、閉鎖時にロックできるレバー19、20によって適切な位置に保持される。)

オ. 「[0045] FIG. 7 depicts an example of a housing assembly 700 in the fragrance diffusion system. The housing assembly 700 has a first part for a front housing 710 , and a second part for a back housing 720 , and a slide lock 730 to lock the front and back housings 710 , 720 together around the inner components of the fragrance delivery system. The front and back housings 710 , 720 can open in a manner such that most of the interior components of the system can be made available and serviceable to a service person for the system, the cartridge bottle assembly 400 can be inserted into and removed from the system, and the user can program and control the system using the interface on the accessible PCB box 309 .
[0046] The front housing 710 has an opening 750 to receive the fan chassis 301 and output orifice 409 . 」
(当審訳:[0045] 図7は、芳香成分拡散システムにおけるハウジングアセンブリ700の一例を示す。ハウジングアセンブリ700は、フロントハウジング710のための第1部分と、バックハウジング720のための第2部分と、芳香成分伝達システムの内部構成要素の周囲にフロント及びバックハウジング710、720を固定するためのスライドロック730とを有する。フロント及びバックハウジング710、720は、保守要員がそのシステムの内部構成要素のほとんどを利用でき且つ保守できるように開くことができ、カートリッジボトルアセンブリ400は、そのシステムに挿入でき、また、そのシステムから脱離でき、ユーザは、アクセス可能なPCBボックス309のインターフェイスを利用して、そのシステムをプログラムでき、制御できる。
[0046] フロントハウジング710は、ファンシャーシ301と出力オリフィス409を受け入れるための開口部750を有する。)


カ. 「






キ. 「





ク. 「





ケ. 「




コ. 「





サ. 「




シ. 「






ス. 「






セ. 「






ソ. 「






タ. 「





チ. 「





ツ. 「





(A-1-2) 甲第1号証に記載された発明
上記(A-1-1)のア.?ツ.によれば、甲第1号証には、
「頂部シャーシアセンブリ300とカートリッジボトルアセンブリ400と底部シャーシアセンブリ500とからなる内部構成要素、及び、前記内部構成要素の周囲に固定されるハウジングアセンブリ700を備えた芳香成分拡散システムであって、
前記頂部シャーシアセンブリ300は、前記芳香成分拡散システムを180°まで旋回できるようにする回転ユニバーサルピボットブラケット306、前記芳香成分拡散システム内で圧縮空気を伝達する空気ポンプを保持するポンプブラケット308、前記芳香成分拡散システムの外側のフロントハウジング710の開口部750において芳香成分を分散するために使用されるファン302を有するファンシャーシ301を保持するファンブラケット304及び前記芳香成分拡散システムの動作を制御するためのプリント回路基板(PCB)ボックス309を含んでおり、
前記カートリッジボトルアセンブリ400は、交換可能であって、前記空気ポンプからの圧縮空気を受け取るノズル405、コレクタ頂部406、芳香成分を分散する出力オリフィス409、前記出力オリフィス409から分散される前の芳香空気が収集されるコレクタ底部407、D形ガイドプレート整列機構410を含むコレクタアセンブリ401及び液体芳香オイルを保持するためのボトル402を含んでおり、前記ノズル405と前記コレクタ底部407と前記コレクタ頂部406と前記出力オリフィス409とが順次連通するとともに、前記コレクタ底部407と前記ボトル402とが接続されており、
前記底部シャーシアセンブリ500は、メインシャーシ503、空気アセンブリ502、前記カートリッジボトルアセンブリ400の前記コレクタアセンブリ401を単一方向を向くようにするガイドプレート504及びカムロック機構506、2つのレバー501を含んでおり、
前記ハウジングアセンブリ700は、前記ファンシャーシ301と前記出力オリフィス409を受け入れるための前記開口部750を有する前記フロントハウジング710、バックハウジング720、前記内部構成要素の周囲に前記フロント及び前記バックハウジング710、720を固定するためのスライドロック730を含んでおり、それらを組み立てることで筒状に形成されており、
前記カートリッジボトルアセンブリ400の交換時に、ユーザが適切な位置にスライドできるように前記D形コレクタ自己整列機構410と前記ガイドプレート504とによって、前記カートリッジボトルアセンブリ400の前記コレクタアセンブリ401における前記ノズル405が前記底部シャーシアセンブリ500の前記空気アダプタ502に自己整列される位置にまで、前記カートリッジボトルアセンブリ400がスライドされ、
その自己整列される場合に、前記コレクタアセンブリ401における前記出力オリフィス409は、前記ファンシャーシアセンブリ301のスロット312に整列され、前記カートリッジボトルアセンブリ400をしっかりと保持するために、前記底部シャーシアセンブリ500のカムロック機構506によって、前記カートリッジボトルアセンブリ400が前記底部メインシャーシ500の2つのレバー501で適切な位置に保持される、
芳香成分拡散システム。」
という発明(以下、「甲1発明」ということがある。)が記載されていると認める。


(A-1-3) 本件訂正発明と甲1発明との対比・検討
(A-1-3-1) 本件訂正発明1と甲1発明との対比・検討
ア. 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「ハウジングアセンブリ700」、「液体芳香オイルを保持するためのボトル402」、「芳香成分拡散システム」は、それぞれ、本件訂正発明1における「ハウジング(1)」、「芳香成分を含む芳香液が貯えられた液容器(40)」、「芳香装置」に相当し、また、甲1発明における「カートリッジボトルアセンブリ400」は、その発明における「頂部シャーシアセンブリ300とカートリッジボトルアセンブリ400と底部シャーシアセンブリ500とからなる内部構成要素」の周囲に前記ハウジングアセンブリ700が固定され、当該内部構成要素のうちの前記カートリッジボトルアセンブリ400が液体芳香オイルを保持するためのボトル402を含んでいることから、本件訂正発明1における「前記ハウジングの内部に設けられ、芳香成分を含む芳香液が貯えられた液容器(40)を有する容器モジュール(4)」に相当する。
また、甲1発明における「前記出力オリフィスから分散される前の芳香空気が収集されるコレクタ底部407」、「前記芳香成分拡散システム内で圧縮空気を伝達する空気ポンプ」、「底部シャーシアセンブリ500」についても、前記の「カートリッジボトルアセンブリ400」と同様の検討から、それぞれ、本件訂正発明1における「前記ハウジングの外部と連通可能に前記ハウジングの内部に設けられ、前記液容器から排出される前記芳香液の気体が送られる貯留室(45)」、「前記ハウジングの内部に設けられ、前記貯留室に空気を供給する手段であって、前記貯留室に存在する前記気体を前記ハウジングの外部に放出可能な空気供給手段(2)」、「前記ハウジングに固定された部材(13)」に相当するといえ、そして、甲1発明における「前記底部シャーシアセンブリ500の前記空気アダプタ502」は、前記カートリッジボトルアセンブリ400の交換時に、前記空気ポンプからの圧縮空気を受け取るノズル405と自己整列されて、前記空気ポンプからの圧縮空気が通る通路が内部に形成されることとなっていることは明らかであるから、本件特許発明1における「前記ハウジングに固定された部材(13)にまたは前記ハウジングの一部に、一体に形成され、前記空気供給手段から供給される空気が通る通路が内部に形成されたハウジング内接続部(7)」に相当する。
また、甲1発明における「前記空気ポンプからの圧縮空気を受け取るノズル405」は、前記コレクタ底部407と連通しており、前記カートリッジボトルアセンブリ400の交換時に前記底部シャーシアセンブリ500の前記空気アダプタ502と自己整列されることからして、本件訂正発明1における「前記貯留室に直通する通路(440)を内部に有するように前記容器モジュールに設けられて、前記ハウジング内接続部に対して着脱可能に構成されるモジュール側接続部(44)」に相当する。
また、甲1発明における「前記ハウジングアセンブリ700は、…前記フロントハウジング710、バックハウジング720、前記内部構成要素の周囲に前記フロント及び前記バックハウジング710、720を固定するためのスライドロック730を含んでおり、それらを組み立てることで筒状に形成されて」いることは、本件訂正発明1における「前記ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され」ていることに相当する。
また、甲1発明における「前記カートリッジボトルアセンブリ400の交換時に、ユーザが適切な位置にスライドできるように前記D形コレクタ自己整列機構410と前記ガイドプレート504とによって、前記カートリッジボトルアセンブリ400の前記コレクタアセンブリ401における前記ノズル405が前記底部シャーシアセンブリ500の前記空気アダプタ502に自己整列される位置にまで、前記カートリッジボトルアセンブリ400がスライドされ」ることは、前記カートリッジボトルアセンブリ400の交換時に、前記ハウジングアセンブリ700のスライドロック730が開放され、前記D形コレクタ自己整列機構410と前記ガイドプレート504とによって、前記ノズル405と前記空気アダプタ502とが嵌合するように位置決めされ、前記カートリッジボトルアセンブリ400がスライドされて、前記ノズル405と前記空気アダプタ502とが嵌合接続されて内部構成要素が構成され、そして、その内部構成要素の周囲に前記スライドロック730によって前記ハウジングアセンブリ700が固定されることを意味していることから、本件訂正発明1における「新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される前記嵌る接続構造を有し、前記モジュール側接続部は、前記嵌る接続構造により前記ハウジング内接続部に接続され」ることに相当する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<一致点>
「ハウジング(1)と、
前記ハウジングの内部に設けられ、芳香成分を含む芳香液が貯えられた液容器(40)を有する容器モジュール(4)と、
前記ハウジングの外部と連通可能に前記ハウジングの内部に設けられ、前記液容器から排出される前記芳香液の気体が送られる貯留室(45)と、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記貯留室に空気を供給する手段であって、前記貯留室に存在する前記気体を前記ハウジングの外部に放出可能な空気供給手段(2)と、
前記ハウジングに固定された部材(13)に、一体に形成され、前記空気供給手段から供給される空気が通る通路が内部に形成されたハウジング内接続部(7)と、
前記貯留室に直通する通路(440)を内部に有するように前記容器モジュールに設けられて、前記ハウジング内接続部に対して着脱可能に構成されるモジュール側接続部(44)と、を備え、
新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される前記嵌る接続構造を有し、
前記ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され、
前記モジュール側接続部は、前記嵌る接続構造により前記ハウジング内接続部に接続される、芳香装置」の点。

<相違点>
相違点1:液容器から排出されて貯留室に送られる芳香液の気体が、本件訂正発明1では「芳香液の揮発気体」であるのに対し、甲1発明では「芳香液の揮発気体」であるのかが明らかではない点。

相違点2:新たな芳香液に交換する際には、本件訂正発明1では「前記モジュール側接続部は、複数の前記部材のうち、前記筒状の側面に位置し、前記容器モジュールを覆う側部カバー(12)を取り外した状態で」「前記ハウジング内接続部に接続され、前記側部カバー部材から突出するように設けられ、前記容器モジュールの外周部に接触または接近して前記容器モジュールを支持する支持片(121)を備え、前記支持片は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制する」との発明特定事項を備えているのに対し、甲1発明では、ハウジングアセンブリ700のスライドロック730が開放された状態で、空気アダプタ502とノズル405とが接続されることは明らかであるものの、前記の発明特定事項を備えているのか明らかではない点。

イ. 事案に鑑み、上記相違点2から検討するに、上記(A-1-1)のオ.及びツ.に示したとおり、ハウジングアセンブリ700は、フロントハウジング710、バックハウジング720、スライドロック730から組み立てられており、そして、新たな芳香液に交換する際には、ハウジングアセンブリ700のスライドロック730が開放された状態で、空気アダプタ502とノズル405とが接続されることは明らかであるものの、その状態では、上記(A-1-1)のキ.?ク.に示したとおり、フロントハウジング710、バックハウジング720、及び、スライドロック730という、ハウジングアセンブリ700を構成する複数の部材は、一体化しており、いずれも、取り外される部材でないことは明らかである。また、仮に、スライドロック730が開放されていることをもって、スライドロック730が取り外されていると解したとしても、当該スライドロック730は、そもそも、カートリッジボトルアセンブリ400を覆うものではないから、本件訂正発明1における、容器モジュールを覆う側部カバー(12)には相当し得ない。
また、前記したフロントハウジング710とバックハウジング720は、一応、カートリッジボトルアセンブリ400を覆う部材であるものの、いずれも、新たな芳香液に交換する際に取り外される部材でないことは明らかであるし、さらには、上記(A-1-1)のオ.、キ.?ク.及びツ.に示したとおりのものである、甲第1号証のハウジングアセンブリ700に関する具体的な記載からみても、カートリッジボトルアセンブリ400が脱離する方向に移動するのを抑制する部材を備えているともいえないから、本件訂正発明1における、容器モジュールを覆う側部カバー(12)に相当し得ない。
してみると、甲1発明の芳香装置が上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えていないことは明らかであるし、また、甲1発明の芳香装置が上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備え得ることを、甲第1号証の記載から把握することもできない。

ウ. なお、異議申立人は、上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項について、特許異議申立書において、甲第1号証に記載される、フロントハウジング710の下部のリブは、「前記側部カバー部材から突出するように設けられ、前記容器モジュールの外周部に接触または接近して前記容器モジュールを支持する支持片(121)を備え、 前記支持片は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制すること」に相当する旨主張している(第41頁2行?第41頁第11行)。
甲第1号証には、上記(A-1-1)のキ.、ク.、ツ.のとおり、フロントハウジング710の下部に凸部のあることが示されているものの、その凸部に対しては、符号も付されておらず、何らの説明も記載されていないことから、その凸部が何のための凸部であるのかを甲第1号証の記載から把握することはできないし、その凸部が異議申立人主張のとおりのリブであるということを、裏付け得る具体的且つ客観的な証拠も見当たらない。また、甲第1号証におけるフロントハウジング710やバックハウジング720が、本件訂正発明1における、容器モジュールを覆う側部カバー(12)に相当し得ないことは上記イ.で検討したとおりである。
それらのため、異議申立人の前記主張は採用し得ない。

エ. したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。


(A-1-3-2) 本件訂正発明2、3、6と甲1発明との対比・判断
本件訂正発明2、3、6はいずれも、請求項1を引用するものであって、本件訂正発明1が備える発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(A-1-3-1)での検討と同様にして、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。


(A-1-4) 小括
よって、上記申立理由1によっては、本件訂正発明に係る特許を取り消すことができない。


(A-2) 上記申立理由2について
上記申立理由2は、訂正前の請求項1、6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、訂正前の請求項1、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨の申立理由である。
ここで、上記第2で検討したとおり、本件訂正請求が認められて、請求項1には、訂正前の請求項4に記載されている発明特定事項と訂正前の請求項5に記載されている発明特定事項とが組み込まれることとなった。
したがって、上記申立理由2によっては、本件訂正発明に係る特許を取り消すことができないことは明らかである。


(A-3) 上記申立理由3について
(A-3-1) 上記申立理由3についての具体的な理由
上記申立理由3は、訂正前の請求項1?6に係る特許は、次の(3-1)?(3-6)の理由のため、特許法第36条第6項第1号若しくは第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである旨の申立理由である。
(3-1) 訂正前の請求項1の記載は、単に「ハウジング」と規定されるのみで、その構造が規定されていない結果、「前記ハウジングの内部」、「前記ハウジングの外部」、「前記ハウジングに固定された部材」、「前記ハウジングの一部」、といった規定がどこを指すのか不明確であるし、また、こうしたハウジングの表現で配置を規定している、「容器モジュール」、「貯留室」、「空気供給手段」、「ハウジング内接続部」も不明確なものとなっているので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本件特許明細書には、「大きく3個の部品で構成される筒状の筐体」しか開示されておらず(段落0016)、これを、係る限定のない「ハウジング」まで一般化することはできないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3-2) 訂正前の請求項1の記載は、「貯留室」と「容器モジュール」との関係について、それらが「前記ハウジングの内部に設けられ」と規定するのみで、「貯留室」が「容器モジュール」外に配置される構成を包含しているのか否かが不明であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本件特許明細書には、「貯留室」が「容器モジュール」に設けられた実施例しか開示されておらず、「貯留室」が「容器モジュール」外に設けられた実施例は開示も示唆もないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3-3) 訂正前の請求項1の記載は、「新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部に位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される」ことが規定されるが、使用方法を限定したものであって、装置の構造が特定されておらず、如何にしてこの使用方法が実現されるのかが不明確であるし、上記(3-1)のとおり、そもそも、「ハウジング」が不明確であり、「前記ハウジングの内部に進入する」というのは、どこからどこへ容器モジュールが移動するのかが不明確であり、しかも、「モジュール側接続部」と「前記ハウジング内接続部」の接続構造が何ら規定されておらず、例えば、「接続部」は、ねじによる接続構造も含まれ得るが、このようなねじによる接続の場合、「前記ハウジングの内部に進入する」だけでどのように接続が確立するのか不明確であり、また、そもそも、「位置合わせ」とはどのような態様を意味するのか不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
更に、「モジュール側接続部」と「前記ハウジング内接続部」について、本件特許明細書には、管状の部材が軸方向に嵌合する構成のみ開示されているところ(段落0028?0032、0099)、前記のとおり「接続部」は、ねじによる接続構造も含まれ得るが、こうした他の接続構造は示唆もないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3-4) 訂正前の請求項2?請求項6の記載は、請求項1を引用するところ、上記(3-1)?(3-3)と同様の理由により、特許法第36条第6項第1号若しくは第2号に規定する要件を満たしていない。

(3-5) 訂正前の請求項2及び引用先の請求項1の記載では、新たな容器モジュールを装着する方向が規定されていないために、新たな容器モジュールが上下方向に装着される場合を包含するが、その請求項2の「前記突出片が収まる溝を有して上下方向の移動を抑制するように前記容器モジュールを保持可能なガイド部」によって、新たな容器モジュールを装着することができず、構造的に矛盾する構成を包含してしまっているし、また、そもそも、上下方向とは装置との関係でどの方向かも不明確であるので、訂正前の請求項1?2は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、訂正前の請求項2の記載は、新たな容器モジュールが上下方向に装着されつつ、ガイド部によって上下方向の移動が抑制される場合を包含するところ、そのような構成は本件特許明細書には開示がなく、特許法第36条第6項第1号若しくは第2号に規定する要件を満たしていない。

(3-6) 訂正前の請求項4の規定のみでは、「側部カバー部材」は、筒状周壁全体を含む筒状体である場合も含まれるが、そのような構成の場合、取り外した「側部カバー」に容器モジュールが装着されるのか、残存する他のハウジング構成部材に容器モジュールが装着されるのか、不明確であり、残存する他のハウジング構成部材の内部に容器モジュールが進入することでモジュール側接続部が装着させるのであれば、残存する他のハウジング構成部材の構成も不明確であり、また、「側部カバー部材」が筒状の周壁全体を含む場合、「モジュール側接続部」と「ハウジング内接続部」がどのように接続されるのか不明であり、両者の「位置合わせ」の態様も不明確であるので、訂正前の請求項4は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本件特許明細書には、「側部カバー部材」として、断面形状が半円形で全体として殻形状の側部カバー部材12のみしか開示されておらず、これを、係る限定のない「側部カバー」にまで一般化することはできないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


(A-3-2) 上記申立理由3の具体的な理由についての検討
そこで、上記(A-3-1)に示した(3-1)?(3-6)の理由(以下、それぞれ、単に、「(3-1)の理由」?「(3-6)の理由」という。)について、順次検討する。
ア. (3-1)の理由について
「ハウジング」は、例えば、株式会社岩波書店 広辞苑第六版によれば、機械装置などを囲む箱形の覆いとされており、本件訂正発明1における「ハウジング」を、そのような意味で把握すると、上記第3に示される、「前記ハウジングの内部」、「前記ハウジングの外部」、「前記ハウジングに固定された部材」、「前記ハウジングの一部」といった特定は明確であるし、また、こうしたハウジングの表現で配置を規定している、「容器モジュール」、「貯留室」、「空気供給手段」、「ハウジング内接続部」も明確であるので、本件訂正発明1は特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合している。
また、本件訂正発明1は、上記第3に示されるように、「ハウジング(1)」について、「前記ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され」るとの発明特定事項を備えているところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、例えば、「ハウジング1は複数の部材(ベース部材10、上側部材11、側部カバー部材12)が組み立てられることで筒状に形成される。」(【0069】)という、前記の発明特定事項に対応する記載があり、また、以下のとおりの【図1】の記載もあるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合している。
「【図1】


したがって、(3-1)の理由によっては、本件訂正発明1に係る特許を取り消すことができない。

イ. (3-2)の理由について
「貯留室(45)」と「容器モジュール(4)」との配置に関し、本件訂正発明1には、上記第3に示されるように、「液容器(40)を有する容器モジュール(4)と、」「前記液容器から排出される前記芳香液の揮発気体が送られる貯留室(45)と、」「前記貯留室に直通する通路(440)を内部に有するように前記容器モジュールに設けられて、前記ハウジング内接続部に対して着脱可能に構成されるモジュール側接続部(44)と、を備え」ることが特定されているところ、「モジュール側接続部」が「前記貯留室に直通する通路(440)を内部に有するように前記容器モジュールに設けられて」いるということは、当然ながら、「貯留室(45)」も、通路(440)と同様に、「容器モジュール(4)」内に配置されていることとなるから、「貯留室」が「容器モジュール」外に配置される構成は包含されていない。
したがって、(3-2)の理由によっても、本件訂正発明1に係る特許を取り消すことができない。

ウ. (3-3)の理由について
本件訂正発明1は、上記第3に示されように、「新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される前記嵌る接続構造を有し、前記ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され、前記モジュール側接続部は、複数の前記部材のうち、前記筒状の側面に位置し、前記容器モジュールを覆う側部カバー部材(12)を取り外した状態で前記嵌る接続構造により前記ハウジング内接続部に接続され」るとの発明特定事項を備えているところ、この発明特定事項は、方法的表現ではあるが、モジュール側接続部とハウジング内接続部の装置構造を理解することができるので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合している。
また、本件訂正発明1の前記の発明特定事項に対応して、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、例えば、「実施形態においては、ハウジング内接続部7がモジュール側接続部44の内側に嵌ることで両者が接続されるが、ハウジング内接続部7とモジュール側接続部44との接続に係る構造はこのような形態に限定されない。モジュール側接続部44がハウジング内接続部7の内側に嵌る接続構造でもよい。」(【0090】)という記載があり、また、上記ア.に示した【図1】の記載と、以下のような【図2】の記載とがあるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合している。
「【図2】


したがって、(3-3)の理由によっても、本件訂正発明1に係る特許を取り消すことができない。

エ. (3-4)の理由について
上記ア.?ウ.の検討によれば、本件訂正発明1は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合しており、また、特許法第36条第6項第1号に規定する要件にも適合しているから、請求項1を引用する、本件訂正発明2、3、6も、本件訂正発明1と同様に、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合しており、また、特許法第36条第6項第1号に規定する要件にも適合している。
したがって、(3-4)の理由によっては、本件訂正発明2、3、6に係る特許を取り消すことができない。

オ. (3-5)の理由について
本件訂正発明1には、上記第3に示されているように、「前記液容器から排出される前記芳香液の揮発気体が」あることが特定されているところ、技術常識に照らし、気体が揮発する方向が上方向であるから、上下方向は明確に特定されているところ、さらに、本件訂正発明1は、上記第3に示されているように、「側部カバー部材から突出するように設けられ、前記容器モジュールの外周部に接触または接近して前記容器モジュールを支持する支持片(121)を備え、前記支持片は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制する」との発明特定事項を備えており、側部カバー部材から突出するように設けられている支持片(121)が、モジュール側接続部とハウジング内接続部とが嵌る接続構造により接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への容器モジュールの移動を抑制するということは、モジュール側接続部とハウジング内接続部とが嵌る接続構造は、上下方向にないことも特定されていることも明らかであるから、新たな容器モジュールが上下方向に装着される場合を包含していない。
したがって、(3-5)の理由によっても、本件訂正発明1?3、6に係る特許を取り消すことができない。

カ. (3-6)の理由について
本件訂正発明1においては、その装置構造からして、「側部カバー部材」が筒状周壁全体を含む筒状体である場合を包含していないことは明らかといえるし、また、「側部カバー部材」が、断面形状が半円形で全体として殻形状の側部カバー部材12のみしか開示されていないとしても、本件訂正発明についての、「芳香液を交換可能な芳香装置において、交換前の芳香液と交換後の芳香液とが接触して混ざり合う事態を防止可能であり、交換時の作業性を簡便にできる装置を提供する」との課題(【0008】)の解決にあたり、当該「側部カバー部材」は、上記第3に示されるとおり、取り外された状態となる部材であり、その断面形状が特定の断面形状に限定される必要のないことは明らかであるから、本件訂正発明1は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合しているし、特許法第36条第6項第1号に規定する要件にも適合している。
したがって、(3-6)の申立理由によっても、本件訂正発明1?3、6に係る特許を取り消すことができない。


(A-3-3) 小括
よって、上記申立理由3によっても、本件訂正発明に係る特許を取り消すことができない。


3B 上記2.の取消理由について
(B-1) 上記2.(1)の取消理由について
訂正前の請求項1に対して、「前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが接続され」るという特定では、新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが、直接、嵌合接続されることを意味しているのか、あるいは、それ以外の態様で接続されることを意味しているのかが明らかではなく、多義的な特定となっているし、また、「前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部に位置合わせされた状態」という特定についても、前記の特定と同様、多義的な特定になっているため、当該請求項1の記載は不明確であるし、その請求項1を引用する請求項2?6の記載も不明確であるから、請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨の取消理由を通知した。
このような取消理由に対して、上記第2で検討したとおり、本件訂正請求が認められて、請求項1には、「前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態」で、「前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続され」るとの特定がなされることとなり、すなわち、新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされ、そして、前記嵌る接続構造により接続されるとの特定がなされることとなり、前記した多義的な特定は解消された。
そのため、前記の取消理由は理由のないものとなった。


第5 むすび
以上のとおり、取消理由、特許異議の申立理由、及び、証拠によっては、請求項1?3、6に係る特許を取り消すことができない。
さらに、他に請求項1?3、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4?5に係る特許は存在しないものとなったため、請求項4?5に対して、異議申立人がした特許異議の申立ては却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
芳香装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香成分を含む芳香液の揮発気体を外部に放出することができる芳香装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の芳香装置は、容器に格納した液体香料に空気を吹き付け、液体香料を揮発させて匂いを発生させる装置である。したがって、この芳香装置は、アロマオイル等の液体香料を人為的に滴下させる作業を経ることなく、外部へ芳香することができる。この芳香装置は、液体香料をそれぞれ収容する6個の芳香液容器と、空気を送るエアポンプと、エアポンプから送られた空気を一旦溜める空気供給室と、空気供給室から各容器に空気を導入する流量を制御する6個の電磁弁と、ブレンダー室と、を有する。空気供給室は、ビニルパイプによってエアポンプと接続されている。空気供給室と各電磁弁、電磁弁と香料容器、各電磁弁とブレンダー室、のそれぞれもビニルパイプによって接続されている。
【0003】
エアポンプから送られた空気は、空気供給室に一旦溜められ、第一から第六の電磁弁のそれぞれが接続されるビニルパイプに分配される。空気は、開いている電磁弁を通過して芳香液容器内の液体香料の液面付近に供給され、閉じている電磁弁においては、空気供給室に戻るようになっている。芳香液容器内に供給された空気のそれぞれは、匂いとともにブレンダー室に流入してブレンドされ、所望の匂いがブレンダー室から放出されることで芳香装置が設置されている部屋全体に行き渡る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-236400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置において、各芳香液容器には、その蓋部に2本のビニルパイプが接続されている。一つは、ブレンダー室に接続される出口パイプであり、もう一つは、電磁弁に接続される入口パイプである。すなわち、芳香液容器は、このようにパイプを接続可能な構造を有し、専用の蓋部を備える容器であることが必要である。また、芳香液の交換時には、柔らかいパイプを専用の蓋部に取り付け、芳香液容器を芳香装置の所定の場所に固定する作業が必要になる。
【0006】
また、例えば自動車の室内のように不安定な設置環境であり、かつ限られた活動範囲の中で特許文献1のような装置を使う場合には、芳香液容器の蓋部を素早く専用の蓋部に付け替えてパイプに接続する交換作業をすばやく行うことは難しい。
【0007】
また、芳香液が入った容器を直接、ハウジングに着脱する芳香装置においては、ユーザーが香りを変更する際に交換前の芳香液が装置側に付着していると、交換後の芳香液が前の芳香液に接触して、二つの香りが混ざり合ってしまうという懸念がある。このような事態になると、芳香液本来の香りが損なわれてしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、芳香液を交換可能な芳香装置において、交換前の芳香液と交換後の芳香液とが接触して混ざり合う事態を防止可能であり、交換時の作業性を簡便にできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。なお、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
開示する芳香装置に係る発明のひとつは、ハウジング(1)と、ハウジングの内部に設けられ、芳香成分を含む芳香液が貯えられた液容器(40)を有する容器モジュール(4)と、ハウジングの外部と連通可能にハウジングの内部に設けられ、液容器から排出される芳香液の揮発気体が送られる貯留室(45)と、ハウジングの内部に設けられ、貯留室に空気を供給する手段であって、貯留室に存在する揮発気体をハウジングの外部に放出可能な空気供給手段(2)と、ハウジングに固定された部材(13)にまたはハウジングの一部に、一体に形成され、空気供給手段から供給される空気が通る通路が内部に形成されたハウジング内接続部(7)と、貯留室と直通する通路(440)を内部に有するように容器モジュールに設けられて、ハウジング内接続部に対して着脱可能に構成されるモジュール側接続部(44)と、を備え、
新たな芳香液に交換する際には、新たな芳香液を貯えた液容器を有する新たな容器モジュールのモジュール側接続部がハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態で、新たな容器モジュールがハウジングの内部に進入することにより、モジュール側接続部とハウジング内接続部とが嵌る接続構造により接続されて新たな容器モジュールが装着される嵌る接続構造を有し、
ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され、
モジュール側接続部は、複数の部材のうち、筒状の側面に位置し、容器モジュールを覆う側部カバー部材(12)を取り外した状態で嵌る接続構造によりハウジング内接続部に接続され、
側部カバー部材から突出するように設けられ、容器モジュールの外周部に接触または接近して容器モジュールを支持する支持片(121)を備え、
支持片は、モジュール側接続部とハウジング内接続部とが嵌る接続構造により接続された状態で、モジュール側接続部がハウジング内接続部から脱離する方向への容器モジュールの移動を抑制することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ハウジングに固定された部材またはハウジングの一部に一体に形成されたハウジング内接続部にモジュール側接続部を位置合わせした状態で、容器モジュールを押し入れることにより、簡便な操作による装着作業を実施できる。さらに、容器モジュールの引き抜き動作により、ハウジング内接続部とモジュール側接続部との接続状態が解除して容器モジュールを取り出せるため、さらに簡便な取り外し作業を実施できる。すなわち、この発明は、例えば、従来技術のように、新しく交換した各芳香液容器の蓋部に対して2本のビニルパイプをつなぎ直す等の面倒な作業を改善することができる。
【0012】
さらに、この発明によれば、貯留室と直接通じる通路を内部に有するモジュール側接続部をハウジング内接続部に接続することで、新たな容器モジュールに交換する。これにより、モジュール側接続部は揮発気体にさらされうるが芳香液が付着しない部位であるため、新たな容器モジュールに交換しても、交換の前後で液体同士が混ざり合うことを解消できる。したがって、この発明は、交換前の芳香液と交換後の芳香液とが接触して混ざり合う事態を防止可能であり、さらに交換時の作業性を簡便にできる芳香装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る芳香装置の概要構成を示す分解図である。
【図2】第1実施形態の芳香装置において、容器モジュールとハウジングとの接続構造を示す断面図である。
【図3】容器モジュールとハウジングとの接続構造について他の形態を示す部分断面図である。
【図4】容器モジュールがハウジングに対して位置決め及び保持される構造を示す正面図である。
【図5】容器モジュールがハウジングに対して位置決め及び保持される構造を示す平面図である。
【図6】第2実施形態において、容器モジュールがハウジングに対して位置決め及び保持される構造を示す平面図である。
【図7】第3実施形態において、容器のシール構造を示す部分断面図である。
【図8】第4実施形態において、容器のシール構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る一形態としての第1実施形態について図1?図5、図7を参照して説明する。図1に示すように、芳香装置100は、ハウジング1、ポンプ2、制御基板3、容器モジュール4等を備える。
【0016】
ハウジング1は、ポンプ2、制御基板3、容器モジュール4を内蔵する。ハウジング1は、大きく3個の部品で構成される筒状の筐体である。ハウジング1は、天井部に位置する上側部材11と、筒状の側部の半分及びハウジング1の底部とを形成するベース部材10と、ベース部材10に着脱自在で筒状の側部の半分を形成する側部カバー部材12と、を備えて構成される。例えば、ハウジング1は、円筒状であり、人が片手で握れる程度の外径サイズ、例えばカップホルダーに収容できる程度の外径サイズであることが好ましい。
【0017】
上側部材11は、ベース部材10に対してねじ111による締結構造によって固定される椀状の部材である。したがって、ベース部材10には、上側部材11が上方から蓋をするように装着される。上側部材11には、上側部材11の天面の中心部から放射状に延びる複数の開口110が形成された保護ガードが設けられている。
【0018】
上側部材11の裏側であってハウジング1の上部には、制御基板3が設置されている。制御基板3には、ポンプ2の作動を制御する制御装置が搭載され、ユーザーがハウジング1の外から操作可能な電源スイッチ30が搭載されている。制御基板3には、電源ケーブルを介した外部電源または内蔵する蓄電池からの電力が供給される。上側部材11には、上側部材11の天面の中心部に開口部が設けられており、この開口部には電源スイッチ30が外部から操作可能なように露出している。
【0019】
ベース部材10には、ハウジング1の内部を左右の二つの空間に分けるように設けられる中央壁部材13が固定されている。中央壁部材13のねじ穴132に挿通されたねじ133がベース部材10のボス穴に螺合することにより、中央壁部材13は締結されてベース部材10に固定される。ベース部材10は、ハウジング1内における、左右方向の一方側において容器モジュール4が装着され、反対側の他方側においてポンプ2を下端部から上端部まで覆う。
【0020】
側部カバー部材12は、半円筒状であり、上側部材11とベース部材10の底部とで上下から挟まれるように支持される。側部カバー部材12は、ベース部材10との嵌め合い構造により装着される関係にある。側部カバー部材12は、半円筒状の上端部、側端部において、ベース部材10に設けられた係合凹部に嵌る突起部を有し、下部には弾性変形容易なU字状のロック端子部120を有する。側部カバー部材12は、各突起部がベース部材10の係合凹部に嵌った状態で、最後に側部カバー部材12の下部を押すことにより、ロック端子部120を弾性変形させながら、ベース部材10の底部から突出する形状の係止片10aに係合させてロックする。この操作によって、側部カバー部材12をベース部材10に結合することができる。
【0021】
また、ベース部材10と側部カバー部材12との嵌め合い部には、ハウジング1内の気密性を確保するため、パッキン等のシール部材を設けることが好ましい。また、上側部材11とベース部材10や側部カバー部材12との嵌め合い部にも、パッキン等のシール部材を設けることが好ましい。また、これらの両部材の嵌め合いによって、ハウジング1内の必要な気密性が確保できている場合には、シール部材を設けなくてもよい。
【0022】
上側部材11、ベース部材10、側部カバー部材12及び中央壁部材13は、樹脂材料で形成することができる。例えば、ベース部材10、側部カバー部材12及び中央壁部材13は、ABS樹脂から形成することができる。上側部材11は、発光ダイオード等の光を外部に照らすために、アクリル樹脂を用いて、光透過性の高い透明の部材としたり、または光を散乱させるすりガラス状に表面を形成した部材としたりすることができる。
【0023】
電源スイッチ30がオン状態に操作されると、芳香装置100の電源が入り、電力がポンプ2にも供給可能になり、ポンプ2を制御可能な状態になる。ポンプ2は、電源スイッチ30がオン状態になるとともに強制的に運転したり、設定されたタイマーに応じて運転したり、自動制御により所定の動作条件が成立した場合に運転したり、するように構成することができる。ポンプ2が運転されると、貯留室45に空気が送り込まれ、貯留室45の圧力が所定の条件を満たすと芳香が上側部材11からハウジング1の外部に放出される。
【0024】
芳香が放出される場合、制御装置は、発光ダイオード等の点灯部を点灯する。点灯した光は、上側部材11等を照らす。この視覚による演出と放出されるアロマ成分とが相まって、ユーザーをリラックスさせることに寄与する。
【0025】
次に、図2を参照しながら、容器モジュール4の構造について説明する。容器モジュール4は、ボトルカバー41と、芳香成分を含む液体である芳香液を予め貯えた液容器40とを備える。容器モジュール4は、一つの液容器40に対して一つのボトルカバー41を一体に組み合わせて構成される一つの部品である。すなわち、ユーザーが芳香液を交換したい場合には、交換前の容器モジュール4ごと、新たな芳香液を内蔵する新たな容器モジュール4に交換することになる。したがって、交換前の容器モジュール4から、液容器40だけを取り外して、新たな芳香液を内蔵する液容器40を付け替える交換を予定していない。つまり、交換前のボトルカバー41は、芳香液の交換の際に、新たな容器モジュール4とともに、新たなボトルカバー41に取り替えられる。例えば、ユーザーは、各種の芳香液を購入したい場合には、欲しい芳香液を内蔵した容器モジュール4という一つのユニットごと購入し、所望の芳香液を使用したい場合には、所望の芳香液を内蔵する容器モジュール4ごと付け替えることになる。
【0026】
ボトルカバー41は、上端及び下端が開口する形状である。ボトルカバー41は、液容器40を着脱可能に構成されている。この着脱構造は、前述したようにユーザーによって着脱することを予定して設けられたものではない。例えば、製造段階において、複数の部品を組み立てるために設けられた着脱構造である。このため、ボトルカバー41は、下端側に液容器40の一端側が装着可能な取付部43を備え、上端側に逆止弁の機能を有する弁装置6を内蔵する。ボトルカバー41は、例えば、ABS樹脂等の樹脂材料から構成されている。また、液容器40とボトルカバー41を一部品として製作してもよい。この場合、液容器40とボトルカバー41は、一体不可分に構成される。
【0027】
ボトルカバー41には、上部に内蔵する弁装置6と下部の取付部43との間に位置する、中ほどの筒内部に貯留室45が形成されている。貯留室45を形成する壁には、ポンプ2から送られる空気が流れる通路440を内部に有するモジュール側接続部44が設けられている。モジュール側接続部44は、貯留室45に直接通じる通路を有し、ボトルカバー41の中心軸に対して直交するようにボトルカバー41から突出する筒状部である。モジュール側接続部44は、例えば、ボトルカバー41と同様にABS樹脂等の樹脂材料で形成される。
【0028】
中央壁部材13は、ハウジング1に固定された部材であり、ポンプ2から供給される空気が通る通路が内部に形成されたハウジング内接続部7を備える。ハウジング内接続部7は、ハウジング1の内部に設けられて、モジュール側接続部44と接続される部分である。ハウジング内接続部7は、中央壁部材13に対して直交するように延びる通路を内部に形成する筒状部である。ハウジング内接続部7は、例えば、中央壁部材13と同様にABS樹脂等の樹脂材料で形成される。
【0029】
この筒状部は、ボトルカバー41側に突出しており、モジュール側接続部44の筒状部の内周面に嵌められることで内接して、ハウジング内接続部7とモジュール側接続部44とが接続されることになる。このようにモジュール側接続部44がハウジング内接続部7に外接するように両者が接続されることにより、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7との気密性が確保されることになる。モジュール側接続部44の内径寸法とハウジング内接続部7の外径寸法とは、このような気密性が確保できる寸法関係となるように設定される。したがって、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7とを接続するように、容器モジュール4を中央壁部材13に組み合わせることで、芳香装置100における容器モジュール4の取付けを実施することができる。
【0030】
また、図3に示すように、モジュール側接続部44の外周部にOリング441を設けるようにしてもよい。この構成によれば、モジュール側接続部44がハウジング内接続部7に外接したときに、モジュール側接続部44の内周部とハウジング内接続部7の外周部との気密性を高めることができる。
【0031】
また、モジュール側接続部44の少なくとも内周部は、ハウジング内接続部7を形成する材料よりも軟性が高い、例えば、天然ゴム、合成ゴム等のエラストマで形成することが好ましい。この場合、モジュール側接続部44の内周部とその他の部分とは、二色成形によって一体に製作することができる。この構成によれば、モジュール側接続部44がハウジング内接続部7に外接したときに、モジュール側接続部44の内周部とハウジング内接続部7の外周部との密着度が向上するので、両者の気密性だけでなく、両者間に働く保持力も高めることができる。
【0032】
また、ハウジング内接続部7は、ハウジング1の一部に一体に形成するように構成してもよい。例えば、ハウジング内接続部7は、ベース部材10に一体に形成するように構成することができる。
【0033】
中央壁部材13には、ハウジング内接続部7の反対側に筒状部71が設けられている。筒状部71は、ハウジング内接続部7内の通路に連通し、中央壁部材13に対して直交するように延びる通路を内部に有する。筒状部71の外周面には、ポンプ2とハウジング内接続部7とを連通させるチューブ20が嵌められて接続される。チューブ20は、例えばシリコーンゴムでできており、筒状部71との接続部におけるシール性を向上することができる。
【0034】
貯留室45の上端開口の周囲に設けられる周縁部65には、弁装置6の弁体60が接触する。周縁部65は、ボトルカバー41の上部の内側に設置される筒状体である。周縁部65の外周には、ボトルカバー41の上部とこの筒状体とをシールするOリング650が設けられている。Oリング650によるシール構造は、貯留室45の空気が外部に漏れることを防止する。周縁部65は、閉弁時に弁体60が接触する弁座を構成する。弁体60は、貯留室45の上端開口よりも大きい外形を有し、上端開口を上方から完全に覆う。
【0035】
弁体60は、上方に延びるシャフト61と一体であり、その下端部の外周にシール部材62を備えている。シール部材62は、弁体60の下端部の外周面に周設する弾性変形容易な弾性部材であり、例えばOリングを採用することができる。シャフト61の外周には、所定のばね定数を有するコイルスプリング63が設けられている。コイルスプリング63は、シャフト61と同軸に設けられている。コイルスプリング63は、自然長よりも縮んだ状態で、その下端部が弁体60の上面に接触し、その上端部が、ボトルカバー41の上端部の開口部64を形成する枠部に接触するように設けられている。したがって、弁体60が周縁部65に接触した状態では、コイルスプリング63は、下方向に弁体60を押し、上方向に前述の枠部を押す作用をする。
【0036】
ポンプ2を運転すると、ポンプ2からの空気がチューブ20内に送られ、さらに空気はハウジング内接続部7及びモジュール側接続部44の内部を介して貯留室45に到達する。貯留室45に流入する空気供給量が増加していくと、貯留室45の圧力が高くなる。そして、弁体60を上方へ押す力が、コイルスプリング63によって弁体60を下方に押す力よりも大きくなったときに、コイルスプリング63が軸方向に縮んで弁体60が上方へ変位する。これにより、シール部材62による周縁部65とのシールが解除されて貯留室45の上部が開放される。そして、貯留室45の空気が上方へ移動し、芳香液の揮発気体がこの空気の移動とともに、開口部64を通じてハウジング1の外部に流出する。
【0037】
このように、ポンプ2は、貯留室45に存在する揮発気体をハウジング1の外部に放出可能な空気供給手段であり、貯留室45の圧力を変化させることができる手段でもある。そして、弁装置6は、貯留室45の圧力が作用して当該圧力に応じて弁体60が変位することによって貯留室45を開放する。弁装置6は、貯留室45とハウジング1の外部とを連通可能に構成する弁手段をなす。
【0038】
図1及び図4に示すように、容器モジュール4には、ボトルカバー41よりも上部の円筒部分から突出する板状の突出片42が設けられる。中央壁部材13には、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7とが接続された状態で、突出片42が収まる溝を有するガイド部130が設けられる。ガイド部130は、中央壁部材13から、ボトルカバー41の両側に向けてそれぞれ突出する一対の柱状部で構成される。上下方向に平行な柱状部の縦断面は、U字状を横に倒したような形状を呈する。一対の柱状部は、互いに溝が向かい合うように設けられる。突出片42における上下方向の厚さ寸法は、ガイド部130に形成された溝に突出片42が挿入可能な寸法に設定される。
【0039】
ガイド部130に形成される溝や突出片42は、モジュール側接続部44やハウジング内接続部7が延びる方向に沿うように延びている。換言すれば、ガイド部130の溝や突出片42は、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7とを接続する際に、容器モジュール4を押し込む方向に延びている。
【0040】
したがって、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7とを接続する際には、突出片42をガイド部130の溝に収めるように位置合わせし、突出片42をガイド部130の溝にスライドさせながら容器モジュール4を押し込む。これにより、突出片42がガイド部130によって上下方向に保持されるため、モジュール側接続部44を少なくとも上下方向に位置決めすることができる。さらに、一対の柱状部は、互いに溝が向かい合い、突出片42の先端面を包むように保持するため、容器モジュール4が軸心に直交する方向に移動することを阻止できる。これにより、突出片42がガイド部130によって水平方向にも保持されるため、モジュール側接続部44を左右方向、水平方向にも位置決めすることができる。以上より、モジュール側接続部44の軸心とハウジング内接続部7の軸心とを一致させることができるため、ユーザーは両者の接続を確実かつ迅速に行うことができる。
【0041】
また、ガイド部130は、中央壁部材13ではなく、ハウジング1の一部に一体に設けられるようにしてもよい。したがって、ガイド部130は、ハウジング1に固定された部材またはハウジング1の一部に一体に設けられることになる。
【0042】
また、図4及び図5に図示するように、中央壁部材13には、容器モジュール4の外周部を外側から挟むようにして保持する一対の挟持片部131が設けられる。一対の挟持片部131は、中央壁部材13から、ボトルカバー41の両側に向けてそれぞれ突出する一対の突出片によって構成される。挟持片部131は、その根元部が中央壁部材13に一体であり、先端が自由端である。したがって、挟持片部131は、中央壁部材13に支持される片持ち梁と同様の形態であるため、弾性変形容易で先端に向かうほど左右方向に変位容易である。
【0043】
一対の挟持片部131は、弾性変形容易な点を活かして、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7とが接続された状態で、ボトルカバー41の取付部43よりも上方部分を抱き抱えるように保持する。一対の挟持片部131のそれぞれには、先端側に互いに近づく方向に突出する突起部が設けられている。この向かい合うように突出する突起部と突起部との間隔がボトルカバー41の抱えられる部分の直径寸法よりも小さくなる状態で、一対の挟持片部131はボトルカバー41を抱えるように保持している。したがって、一対の挟持片部131は、モジュール側接続部44がハウジング内接続部7から脱離する方向に容器モジュール4が移動することを阻止するように、容器モジュール4を保持できる。
【0044】
図4に示すように、芳香装置100は、容器モジュール4が下方に大きく変位することを阻止するために、容器モジュール4の底部を下方から支える支持部材5を備える。支持部材5と位置調整部53は、上下方向の支持位置を調整可能な調整機能を有する可動式の支持手段である。支持部材5は、容器モジュール4の底部が乗る台座部51と、台座部51の両側から上に凸のU字状に延びる細長い脚部50と、を備えて構成される。脚部50には、その先端側に2個の爪部500が設けられている。位置調整部53は、中央壁部材13に設けられ、爪部500に係り合う複数のラチェット溝530を備えている。脚部50は台座部51の両側に2個あるので、中央壁部材13は、それぞれの爪部500に対応する位置に上下に並ぶ複数のラチェット溝530を備える。したがって、中央壁部材13は、支持部材5の両側にそれぞれ位置調整部53を備える。
【0045】
爪部500は、脚部50の先端側において、外方に先細り状に突出する突起を構成する。この先細り状の突起は、下面が水平方向に延び、上面が先端に向かうほど下方に位置する形状である。例えば、この突起の縦断面は、直角三角形の底角の一つを形成する形状をなす。ラチェット溝530の内面形状も、爪部500の外形形状に沿うように形成されている。したがって、ラチェット溝530、すなわちラチェット用の歯車は、通常の歯車と異なり、歯を傾けて形成されている。この傾きがラチェットに方向性をもたらしている。複数のラチェット溝530は、上下方向に並べて設けられる。この上下方向に並ぶ複数のラチェット溝530のいずれかに、爪部500が嵌めることにより、支持部材5がその位置で保持されるので、容器モジュール4の降下を抑制することができる。
【0046】
第1実施形態の場合、爪部500は、ラチェット溝530と係り合うことにより、上方に可動するが下方には可動しがたいラチェット機構を発揮する。換言すれば、ラチェット溝530は、爪部500との間でラチェット機構を発揮する。ラチェット溝530で構成される歯車が適する上方向に支持部材5が移動するときは、爪部500及びラチェット溝530が傾斜面同士ですべり合うため、爪部500はラチェット溝530を容易に乗り越えてまたさらに上のラチェット溝530に落ち着く。一方、支持部材5が逆の下方向に移動しようとすると、爪部500及びラチェット溝530が水平面同士で面接触するため、爪部500はラチェット溝530からの大きな反力を受け、下方に移動することができない。
【0047】
また、各脚部50は、上に凸のU字状に細長く形成された部分であるので、容易に弾性変形しやすい。さらに、各爪部500は、各脚部50が弾性変形した状態でラチェット溝530に係合しているため、各脚部50の先端側は、外方に向けて広がろうとする力をラチェット溝530に与える。したがって、各爪部500とラチェット溝530とは、強固に係り合う関係を維持できるため、支持部材5を位置調整部53に安定した状態で保持することに寄与する。このように、ラチェット溝530と爪部500は、動作方向を一方向に制限するために用いられる。ラチェット溝530と爪部500は、歯車及び歯止めとして機能することにより、支持部材5を上下方向に位置調整可能であるとともに、支持部材5の降下を阻止することができる。
【0048】
さらに支持部材5は、上下方向に所定の長さを有する板状のスライド部52を備える。さらに中央壁部材13には、スライド部52が嵌って上下方向にスライドするレール部540と、スライド部52がレール部540に嵌った状態でスライド部52がレール部540から脱離しないように保持する案内板部54と、が設けられる。支持部材5の上下方向の位置を変更する際には、支持部材5の変位とともに、スライド部52はレール部540に嵌りながら上下方向にスライドする。案内板部54、レール部540、スライド部52のそれぞれは、ラチェット溝530よりも、液容器40寄りの内方であって、ポンプ2寄りの奥側に位置するように設けられている。
【0049】
台座部51の上下方向の高さ位置を変更する際には、支持部材5を上方に持ち上げることにより、前述したように各爪部500がより上方のラチェット溝530に移動する。この移動のときに、スライド部52はレール部540を上方にスライドし、案内板部54は、爪部500がラチェット溝530から外れないように、ユーザー側に位置するスライド部52の前面を保持する。これにより、上方に移動しやすく、下方に移動しがたく、中央壁部材13からの脱離を阻止する機能を有して、容器モジュール4の下方への移動を抑制する支持手段を提供できる。
【0050】
次に、芳香装置100において、容器モジュール4を交換する際の手順について説明する。まず、現在装着されている容器モジュール4を取り外す作業を実施する。側部カバー部材12を片方の手でつかみ、U字状のロック端子部120をもう一方の手の指でつまむようにしてベース部材10の底部の係止片10aとのロック状態を解除し、側部カバー部材12を引き抜いてベース部材10から取り外す。そして、容器モジュール4のボトルカバー41の中ほどあるいは上部を指でつまみ、手前側に引くと、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7との接続状態が解除されて容器モジュール4を引き出すことができる。
【0051】
次に、新たな容器モジュール4を取り付ける作業を説明する。容器モジュールごと交換された新たな容器モジュール4について、ボトルカバー41の中ほどあるいは上部を指でつまみ、突出片42をガイド部130に形成された溝に挿入して奥側(ポンプ2側)に押し入れていく。これにより、モジュール側接続部44をハウジング内接続部7に正確に位置合わせすることができる。さらに容器モジュール4を奥側に押し進め、モジュール側接続部44がハウジング内接続部7に当接した状態から、最後のひと押しをすると、モジュール側接続部44がハウジング内接続部7に外接して接続する際の抵抗感が得られるとともに装着が終了する。このとき、一対の挟持片部131によってボトルカバー41の外周部が外側から挟まれるように保持されるため、容器モジュール4の脱離を阻止する機能を強化することができる。
【0052】
次に、容器モジュール4の降下を抑制するために、支持部材5及び位置調整部53を含む支持手段によって容器モジュール4を下方から保持する作業を実施する。支持部材5を指でつまみ、中央壁部材13に装着された容器モジュール4に対して液容器40の底部に下から台座部51が当たるまで、支持部材5を押し上げる。この際、爪部500がラチェット溝530に確実に嵌るように、台座部51を水平に保つように押し上げる。以上の作業により、容器モジュール4の降下を抑制する作用を容器モジュール4に与えることができる。最後に、側部カバー部材12をベース部材10に取り付け、芳香装置100を所定の場所に設置することにより、交換作業は完了する。
【0053】
液容器40には、芳香液を内蔵した市販の汎用ボトルを用いることができる。液容器40に貯えられる芳香液は、アロマオイルであり、例えば、既存の植物性オイルである。このオイルは、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール類に精油(エッセンシャルオイル)を含ませて作成することができる。
【0054】
液容器40は、一端側(例えば上端側)に、揮発気体が排出する排出部を備えている。排出部は、容器の内部と外部とを連通させる通路を形成する。排出部は、液容器40の開口端である瓶口に設けられた排出キャップ46で構成される。この排出キャップ46は、ドロッパーと呼ばれ、アロマオイル等として市販される汎用ボトルに予め設けられているものを採用することができる。ドロッパーは、汎用ボトルの瓶口を下に向けたときに滴下される一滴量が所定範囲に設定される形状、サイズの排出通路を備えている。この所定範囲の滴下量は、例えば規格にしたがって設定される。
【0055】
排出キャップ46について図7を参照しながら説明する。排出キャップ46は、内管部460と、内管部460と下端部で一体に連結される外管部461と、内管部460と外管部461との間で下方に延びるノズル部464と、外管部461の一端(上端)に形成されたフランジ部462と、が一体となる部材である。外管部461は、液容器40の上端開口部に内接する。排出キャップ46は、外管部461が液容器40の上端開口部に内接し、かつフランジ部462が液容器40の上端に接触した状態で液容器40に装着されている。
【0056】
内管部460は、液容器40の中心軸と同軸に設けられ、上端及び下端が開口して、容器の内部と外部とを連通させる連絡通路4600を形成する。この連絡通路4600は、上方に設けられる貯留室45で開口する。連絡通路4600は、下端において断面積が他の部位よりも小さく絞られている。
【0057】
ノズル部464は、内管部460に沿うように外側に設けられる。ノズル部464は、内管部460と外管部461とを一体に連結する底部463よりもさらに下方に延びるパイプ状部をなす。ノズル部464は、上端及び下端が開口して容器の内部と外部とを連通させる連絡通路4640を形成する。連絡通路4640は、排出キャップ46の上端から下端まで延びる通路である。連絡通路4640は、連絡通路4600と同様に、下端において断面積が他の部位よりも小さく絞られている。ノズル部464の下端は、液容器40に芳香液が貯えられた状態で、その液面よりも上方に位置してもよいし、芳香液に浸る位置にあってもよい。
【0058】
連絡通路4600と連絡通路4640は、容器の内部と外部とを連通させる通路であり、容器内の揮発気体が流出する排出通路でもある。液容器40内の揮発気体は、連絡通路4600及び連絡通路4640の少なくとも一方から流出しうる。また、ユーザーが液容器40だけを手で持って大きく傾けた場合には、内部の芳香液は、連絡通路4600及び連絡通路4640の一方を通じて容器内の気体が抜けることにより、他方の通路から流出する。このように、液容器40を傾けることで芳香液を滴下させることができる。
【0059】
液容器40の上端部には、外周に雄ねじ部401が形成されている。雄ねじ部401は、汎用ボトルを取り付けるために、汎用ボトルに予め設けられている、所定の形状、ピッチの雄ねじ部と同様である。取付部43には、内周に、雄ねじ部401と螺合可能な雌ねじ部430が形成されている。したがって、雌ねじ部430は、汎用ボトルに予め設けられている雄ねじ部のサイズに適合するように形成されている。また、液容器40及び排出キャップ46は、例えばABS等の樹脂材料で形成することができるが、適合サイズの雄ねじ部401を形成できるのであれば、液容器40は樹脂製に限られるものではない。
【0060】
このような構成により、液容器40は、雄ねじ部401と雌ねじ部430の螺合によって、液容器40の上端部が取付部43に装着され、この装着される部分よりも下側の部分がボトルカバー41の取付部43から露出している。そして、液容器40内の芳香液が揮発して発生した気体は、内管部460の排出通路を通って容器外に流出し、貯留室45に流入して貯えられる。
【0061】
次に、芳香装置100がもたらす作用効果について述べる。芳香装置100は、ハウジング1に固定された部材にまたはハウジング1の一部に、一体に形成され、ポンプ2から供給される空気が通る通路が内部に形成されたハウジング内接続部7と、容器モジュール4に設けられるモジュール側接続部44と、を備える。モジュール側接続部44は、貯留室45に直通する通路440を内部に有するように容器モジュール4に設けられて、ハウジング内接続部7に対して着脱可能に構成される。新たな芳香液に交換する際には、新たな容器モジュール4のモジュール側接続部44がハウジング内接続部7に位置合わせされた状態で、新たな容器モジュール4がハウジング1の内部に進入する。この動作により、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7とが接続されて新たな容器モジュール4が装着される。
【0062】
この構成によれば、ハウジング1に固定された部材またはハウジング1の一部に一体に形成されたハウジング内接続部7にモジュール側接続部44を位置合わせした状態で、容器モジュール4を押し入れることで、ワンタッチの簡便な操作により装着を実施できる。さらに、一方、容器モジュール4の引き抜き動作により、ハウジング内接続部7とモジュール側接続部44との接続状態が解除して容器モジュール4を取り出すことができる。このため、簡便な取り外し作業も実施できる。すなわち、芳香装置100では、前述した従来技術のように、新しく交換した各芳香液容器の蓋部に2本のビニルパイプをつなぎ直すような面倒な作業を不要にする交換作業を実現する。
【0063】
さらに、芳香装置100によれば、新たな容器モジュールの交換の際には、貯留室45と直接通じる通路を内部に有するモジュール側接続部44をハウジング内接続部7に接続する。このため、モジュール側接続部44は芳香液が付着しない部位であるため、新たな容器モジュール4を何度付け替えても、交換の前後で、交換前の芳香液と交換後の芳香液とが接触して混ざり合うことを防止できる。したがって、交換後の芳香液が醸し出す本来の香りを損なうような事態を回避できる芳香装置100を実現できる。
【0064】
また、芳香装置100は、容器モジュール4から突出する突出片42と、ハウジング1に固定された部材またはハウジング1の一部に一体に設けられるガイド部130と、を備える。ガイド部130は、突出片42が収まる溝を有して上下方向の移動を抑制するように容器モジュール4を保持可能に構成される。新たな芳香液に交換する際には、新たな容器モジュール4のモジュール側接続部44がハウジング内接続部7に位置合わせされ、さらにガイド部130に突出片42を保持させた状態で、新たな容器モジュール4がハウジング1の内部に進入する。
【0065】
この構成によれば、突出片42をガイド部130の溝に収めてスライドさせながら、新たな容器モジュール4をハウジング1の内部に進入させることができる。これにより、突出片42の上下方向の移動が抑制された状態で容器モジュール4の進入動作が行われるので、容器モジュール4を上下方向に関して正確な位置で装着することができる。また、この効果により、容器モジュール4が傾かないように交換作業を実施することができる。
【0066】
また、ガイド部130を構成する一対の柱状部は、互いに溝が向かい合い、突出片42の先端面を包むように保持する。この構成によれば、容器モジュール4が軸心に交差する方向に移動すること、例えば左右方向に大きく移動することを阻止できる。これにより、突出片42がガイド部130によって水平方向に保持されるため、振動により、容器モジュール4に対して回転方向の力が作用したとしても、この動きを防止することが可能である。したがって、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7との接続状態が緩んだり、容器モジュール4の脱落や大きな傾きによって、芳香液が外部に漏れるような事態を防止できる。
【0067】
また、芳香装置100は、ハウジング1に固定された部材またはハウジング1の一部に一体に設けられ、容器モジュール4の外周部を外側から挟むようにして保持する一対の挟持片部131を備える。一対の挟持片部131は、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7とが接続された状態で、モジュール側接続部44がハウジング内接続部7から脱離する方向への容器モジュール4の移動を抑制する。
【0068】
この構成によれば、容器モジュール4が軸心に交差する方向に移動することを阻止できる。これによれば、衝撃、振動等により、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7との接続状態が緩んだり、解除されて容器モジュール4が脱落したりするような事態を防止できる。
【0069】
また、ハウジング1は複数の部材(ベース部材10、上側部材11、側部カバー部材12)が組み立てられることで筒状に形成される。モジュール側接続部44は、複数の部材のうち、筒状の側面に位置し、容器モジュール4を覆う側部カバー部材12を取り外した状態でハウジング内接続部7に接続される。これによれば、新たな芳香液に交換するときには、側部カバー部材12を取り外すと、容器モジュール4を外部に露出させることができる。このため、交換前の容器モジュール4の取り外しと、新たな容器モジュール4の装着とを片手の出し入れによって実施可能であり、簡便な操作性の向上が図れる。
【0070】
また、芳香装置100は、自動車の車室内に設置され、車室内で用いられることが好ましい。車室内は、建物の室内と比較して狭い空間であり、また、平坦な場所が少なく、平坦な場所の面積も小さい。芳香装置100によれば、ユーザーが狭い車室内で容器モジュール4を取り外し及び装着することにより、交換作業を短時間かつ簡便な作業によって実現できる。このように、容器モジュール4の交換作業を狭い作業空間で、小さい体の動きでもって実施することができる。したがって、芳香装置100は、車室内に設置し、車室内で用いる場合には、非常に有用な装置である。
【0071】
さらに、芳香装置100は、複数の部材を組み立てられるハウジング1の一部を車室内の内装部品に固定することにより、車室内に設置されることが好ましい。ここでいう内装部品は、例えば、インストルメントパネルの一部、空調装置の吹出しグリル、シート、内装材等の車室内に設けられる各種の部材である。
【0072】
これによれば、容器モジュール4の交換の際には、ハウジング1の一部をなす一つの部材を取り外した状態で、新たな容器モジュール4を装着し、さらに容器モジュール4を覆うように当該部材を取り付けて元に戻す。このとき、ハウジング1の一部が内装部品に固定されているので、交換作業を行う者は、片手で作業を実施することが可能である。したがって、容器モジュール4の交換作業を狭い作業空間で、さらに小さい体の動きでもって実施することが可能である。
【0073】
(第2実施形態)
第2実施形態では、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7とが接続されたときに、容器モジュール4を支持する支持手段に係る構成について図6を参照して説明する。図6の平面図において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0074】
図6に示すように、芳香装置100は、側部カバー部材12から突出するように設けられる部分であって、容器モジュール4の外周部に接触または接近して容器モジュール4を支持する支持片121を備える。支持片121は、ボトルカバー41上部の外周部の形状に沿う端部形状を有している。
【0075】
容器モジュール4を芳香装置100に装着した状態で、側部カバー部材12をベース部材10に装着したときに、支持片121は、ボトルカバー41の上部に接触したり、ボトルカバー41を中央壁部材13側に押し付けたりする突出寸法に設定されている。これにより、芳香装置100が転倒したり、芳香装置100に衝撃が加わったりしても、側部カバー部材12が外れない限り、側部カバー部材12による支持力を容器モジュール4に与え続けることができる。
【0076】
また、容器モジュール4を芳香装置100に装着した状態で、側部カバー部材12をベース部材10に装着したときに、支持片121は、ボトルカバー41の上部に接触しなくても、ボトルカバー41の脱落を防止可能な突出寸法に設定される。この突出寸法は、ポンプ2からの空気が貯留室45に供給可能な程度にモジュール側接続部44がハウジング内接続部7から脱離しない隙間寸法となるように設定することができる。これにより、例えばモジュール側接続部44がハウジング内接続部7から抜けかかったとしても、支持片121がボトルカバー41の上部に接触して支持するので、側部カバー部材12による支持力を容器モジュール4に与え続けることができる。
【0077】
このように、支持片121は、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7とが接続された状態で、モジュール側接続部44がハウジング内接続部7から脱離する方向に容器モジュール4が移動することを阻止する。したがって、側部カバー部材12が外れない限り、第2実施形態の支持片121によれば、衝撃、振動、転倒等によって、モジュール側接続部44とハウジング内接続部7との接続状態が解除されてしまうことを防止することができる。
【0078】
(第3実施形態)
第3実施形態では、取付部43の外部と貯留室45との間を遮蔽するシール手段に係る構成について図7を参照して説明する。図7において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、前述の実施形態と同様である。以下、前述の実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0079】
図7に示すように、パッキン部材47は、外力が作用することにより弾性変形容易な弾性部材である。パッキン部材47は、リング状の円盤であり、液容器40の一端面であるフランジ部462と取付部43との間に設けられる。すなわち、パッキン部材47は、貯留室45の下端開口の周囲に形成される周縁部431とフランジ部462とによって挟まれ、軸方向の圧縮力を受ける。内管部460は、パッキン部材47の内周縁の内側を突き抜け、その先端開口部は貯留室45に位置する。
【0080】
雄ねじ部401と雌ねじ部430とが螺合して、液容器40が取付部43に装着されることにより、パッキン部材47は、取付部43に押しつけられ、液容器40の一端面と周縁部431との間に挟まれて弾性変形する。そして、パッキン部材47は、液容器40と取付部43と両方に密着し、取付部43の外部と貯留室45との間を遮蔽するシール手段を構成する。すなわち、液容器40に汎用ボトルを採用しても、このシール手段によってシール性を確保できるので、貯留室45に流出した揮発気体が取付部43の外に漏れることを抑制できる。
【0081】
(第4実施形態)
第4実施形態では、取付部43の外部と貯留室45との間を遮蔽するシール手段の他の形態について図8を参照して説明する。図8において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第4実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、前述の実施形態と同様である。以下に、前述の実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0082】
図8に示すように、芳香装置100は、シール手段として、液容器40の一端側を内包する取付部143の内周に設けられ、弾性変形可能なリング状弾性部147,147Aを備える。リング状弾性部147,147Aは、外力が作用することにより弾性変形容易な弾性部材である。リング状弾性部147とリング状弾性部147Aは、上下方向に間隔をあけて並ぶリング状の円盤であり、それぞれ、取付部143の内周面から中心に向けて一周分リブ状に突出するように、予め取付部143に設けられている。リング状弾性部147は、リング状弾性部147Aよりも上方に位置する。
【0083】
リング状弾性部147,147Aは、取付部143よりも軟質の材料で形成される。リング状弾性部147,147Aは、例えば、硬質の樹脂である取付部143に、エラストマを二色成形することによって形成することができる。リング状弾性部147,147Aは、液容器40の上端部に位置する雄ねじ部401と取付部143の内周面との間で弾性変形して、液容器40の上端部に密着する。このように、リング状弾性部147,147Aは、液容器40が取付部143に装着された状態で弾性変形して液容器40の上端部の外周に密着し、取付部143の外部と貯留室45との間を遮蔽するシール手段である。
【0084】
芳香装置100は、シール手段が液容器40と取付部143との間に密着するように液容器40を支持する液容器支持手段を備える。この液容器支持手段は、リング状弾性部147,147Aを少なくとも含んで構成される。液容器40が取付部143に装着されることにより、リング状弾性部147,147Aが弾性変形して液容器40の上端部の外周に密着し、液容器40は、シール手段が液容器40と取付部143との間に密着するように支持される。
【0085】
次に、液容器40を取付部143に装着する手順について説明する。液容器40の上端側を下方から取付部143の内側に差し込み、フランジ部462が周縁部431に接触するまで押し込む。これにより、図8のように弾性変形したリング状弾性部147及びリング状弾性部147Aが液容器40の上端部の外周に密着した状態で液容器40を取付部143に装着することができる。このように、リング状弾性部147,147Aは、液容器40が取付部143に装着された状態で弾性変形して液容器40の上端部の外周に密着し、取付部143の外部と貯留室45との間を遮蔽するシール手段である。
【0086】
第4実施形態によれば、高い精度のねじ形状を必要とせずとも、シール性を確保できるため、貯留室45に流出した揮発気体が取付部143の外に漏れることを抑制できるとともに、簡単な構成の取付部143を採用することができる。また、液容器40として、上端部の外周に雄ねじ部が形成されていない汎用ボトルを用いたとしても、シール性を確保することができる。
【0087】
また、液容器40には、少量の芳香液を収納するだけで十分であるため、芳香液を含む液容器40の重量は小さい。したがって、第4実施形態によれば、リング状弾性部147,147Aを液容器40の上端部の外周に密着させる構成であっても、液容器40を取付部143に装着するための保持力を確保することができる。
【0088】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0089】
前述の実施形態において容器モジュール4に対して着脱可能な構成である液容器40を、容器モジュール4に対して着脱できない一体の一部分として構成してもよい。この場合、例えば液容器を構成する部分は、容器モジュール4においてボトルカバーと一体の樹脂成型品として形成することができる。
【0090】
前述の実施形態においては、ハウジング内接続部7がモジュール側接続部44の内側に嵌ることで両者が接続されるが、ハウジング内接続部7とモジュール側接続部44との接続に係る構造はこのような形態に限定されない。モジュール側接続部44がハウジング内接続部7の内側に嵌る接続構造でもよい。また、前述の実施形態においては、モジュール側接続部44が容器モジュール4の外周部から突出する形状であるが、モジュール側接続部44が容器モジュール4の外周部よりも凹む位置に設けられる構成でもよい。この場合には、ハウジング内接続部7が中央壁部材13から容器モジュール4側に突出する形状であり、ハウジング内接続部7が容器モジュール4の外周部よりも容器モジュール4の中心軸寄りの位置で、モジュール側接続部44に接続されることになる。
【0091】
前述の実施形態のポンプ2は、貯留室45に空気を供給して貯留室45の圧力を変化させて、弁装置6による貯留室45の開放を促す装置であるが、本発明の空気供給手段はこれに限定されない。例えば、空気供給手段は、弁装置6を利用することなく、貯留室45に供給した空気の風量によって、貯留室45の揮発気体を直接押し出し、ハウジング1の外部に放出する装置であってもよい。
【0092】
前述の実施形態の芳香装置100は、他の機器と一体に設けられたり、他の機器に内蔵されたりするものであってもよい。例えば、芳香装置100は、イオン発生装置、照明装置と一体にすることができる。また、芳香装置100における、空気の流れ方向、弁装置6の弁体60の移動方向は、上記実施形態で説明するものに限定されない。
【0093】
また、前述の実施形態のポンプ2には、空気を供給する装置として、シロッコファン、軸流ファン、ターボファン等を備える送風機を用いることができる。
【0094】
前述の実施形態の排出キャップ46は、液容器40の上端開口部に装着される部品であるが、この形態に限定されない。例えば、排出キャップ46は、液容器40と一体の部分であって、その上端開口部に一体に形成されて排出通路を構成する部分であってもよい。
【0095】
前述の実施形態において、支持部材5の脚部50には、その先端側に2個の爪部500が設けられているが、ラチェット溝530に係合する爪部500は1個でもよいし、3個以上でもよい。
【0096】
前述の実施形態における弁装置6は、ボトルカバー41と別体の部品をボトルカバー41に設置する構成でもよいし、ボトルカバー41と一体の一部品で構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…ハウジング
2…ポンプ(空気供給手段)
4…容器モジュール
7…ハウジング内接続部
13…中央壁部材(ハウジングに固定された部材)
40…液容器
44…モジュール側接続部
45…貯留室
440…通路
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、
前記ハウジングの内部に設けられ、芳香成分を含む芳香液が貯えられた液容器(40)を有する容器モジュール(4)と、
前記ハウジングの外部と連通可能に前記ハウジングの内部に設けられ、前記液容器から排出される前記芳香液の揮発気体が送られる貯留室(45)と、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記貯留室に空気を供給する手段であって、前記貯留室に存在する前記揮発気体を前記ハウジングの外部に放出可能な空気供給手段(2)と、
前記ハウジングに固定された部材(13)にまたは前記ハウジングの一部に、一体に形成され、前記空気供給手段から供給される空気が通る通路が内部に形成されたハウジング内接続部(7)と、
前記貯留室に直通する通路(440)を内部に有するように前記容器モジュールに設けられて、前記ハウジング内接続部に対して着脱可能に構成されるモジュール側接続部(44)と、
を備え、
新たな芳香液に交換する際には、前記新たな芳香液を貯えた前記液容器を有する新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と嵌る接続構造により位置合わせされた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することにより、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続されて前記新たな前記容器モジュールが装着される前記嵌る接続構造を有し、
前記ハウジングは複数の部材(10,11,12)が組み立てられることで筒状に形成され、
前記モジュール側接続部は、複数の前記部材のうち、前記筒状の側面に位置し、前記容器モジュールを覆う側部カバー部材(12)を取り外した状態で前記嵌る接続構造により前記ハウジング内接続部に接続され、
前記側部カバー部材から突出するように設けられ、前記容器モジュールの外周部に接触または接近して前記容器モジュールを支持する支持片(121)を備え、
前記支持片は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制することを特徴とする芳香装置。
【請求項2】
前記容器モジュールから突出する突出片(42)と、
前記ハウジングに固定された部材(13)または前記ハウジングの一部に一体に設けられ、前記突出片が収まる溝を有して上下方向の移動を抑制するように前記容器モジュールを保持可能なガイド部(130)と、
を備え、
前記新たな芳香液に交換する際には、前記新たな前記容器モジュールの前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部と前記嵌る接続構造により位置合わせされ、さらに前記ガイド部に前記突出片を保持させた状態で、前記新たな前記容器モジュールが前記ハウジングの内部に進入することを特徴とする請求項1に記載の芳香装置。
【請求項3】
前記ハウジングに固定された部材(13)または前記ハウジングの一部に一体に設けられ、前記容器モジュールの外周部を外側から挟むようにして保持する一対の挟持片部(131)を備え、
前記一対の挟持片部は、前記モジュール側接続部と前記ハウジング内接続部とが前記嵌る接続構造により接続された状態で、前記モジュール側接続部が前記ハウジング内接続部から脱離する方向への前記容器モジュールの移動を抑制することを特徴とする請求項2に記載の芳香装置。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
車室内に設置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の芳香装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-10 
出願番号 特願2015-24540(P2015-24540)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A61L)
P 1 651・ 851- YAA (A61L)
P 1 651・ 853- YAA (A61L)
P 1 651・ 121- YAA (A61L)
P 1 651・ 537- YAA (A61L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松井 一泰  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 小川 進
櫛引 明佳
登録日 2018-03-16 
登録番号 特許第6304065号(P6304065)
権利者 株式会社デンソー アルパイン株式会社
発明の名称 芳香装置  
代理人 久保 貴則  
代理人 矢作 和行  
代理人 野々部 泰平  
代理人 野々部 泰平  
代理人 矢作 和行  
代理人 久保 貴則  
代理人 野々部 泰平  
代理人 久保 貴則  
代理人 矢作 和行  

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