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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01M
管理番号 1354074
異議申立番号 異議2018-700378  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-08 
確定日 2019-06-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6227696号発明「蓄電デバイス用セパレータ、蓄電デバイス及びリチウムイオン二次電池」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6227696号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。 特許第6227696号の請求項1ないし11,13ないし16に係る特許を維持する。 特許第6227696号の請求項12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6227696号(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2016-77799号)は,平成26年 1月29日に出願した特願2014-14823号の一部を平成28年 4月 8日に新たな特許出願としたものであって,平成29年10月20日にその特許権の設定の登録がされ,同年11月 8日に特許掲載公報が発行された。その後,本件特許について,平成30年 5月 8日特許異議申立人星正美(以下「申立人」という。)より,請求項1?16に係る特許に対する特許異議の申立てがされ,次のとおりに手続が行われた。
平成30年 5月 8日 :申立人による特許異議の申立て
平成30年 7月25日付:取消理由通知書
平成30年 9月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年10月31日付:訂正拒絶理由通知書
平成30年12月 5日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
平成31年 1月11日 :申立人による意見書の提出
平成31年 1月25日付:取消理由通知書(決定の予告)
平成31年 4月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 1年 5月13日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成31年 4月 1日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,次のとおりである。なお,平成30年12月 5日提出の手続補正書で補正された平成30年 9月25日提出の訂正請求書は,特許法第120条の5第7項の規定により,取り下げたものとみなされる。

(1)訂正事項1
請求項1に「前記熱可塑性ポリマーが,シアノ基を有する単量体と,(メタ)アクリル酸エステル単量体と,を単量体単位として有する共重合体を含み,前記共重合体のガラス転移温度が20℃以上である,蓄電デバイス用セパレータ。」と記載されているのを,「前記熱可塑性ポリマーが,シアノ基を有する単量体と,(メタ)アクリル酸エステル単量体と,を単量体単位として有する第1の共重合体を含み,前記第1の共重合体のガラス転移温度が20℃以上であり,前記熱可塑性ポリマーが,シアノ基を有する単量体と,(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として有する,前記共重合体とは別の第2の共重合体を含み,前記第2の共重合体のガラス転移温度が20℃未満であり,前記蓄電デバイス用セパレータを2枚重ねて,その積層方向に,温度25℃,圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である,蓄電デバイス用セパレータ。」に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項10に「前記共重合体」と記載されているのを,「前記第1の共重合体」に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項11に「前記重合体」と記載されているのを,「前記第1の共重合体」に訂正する。

(4)訂正事項4
請求項12を削除する。

(5)訂正事項5
請求項13に「請求項1?12のいずれか1項」と記載されているのを,「請求項1?11のいずれか1項」に訂正する。

(6)訂正事項6
請求項14に「請求項1?13のいずれか1項」と記載されているのを,「請求項1?11及び13のいずれか1項」に訂正する。

(7)訂正事項7
請求項15に「請求項1?14のいずれか1項」と記載されているのを,「請求項1?11,13及び14のいずれか1項」に訂正する。

(8)訂正事項8
請求項16に「請求項1?15のいずれか1項」と記載されているのを,「請求項1?11及び13?15のいずれか1項」に訂正する。

2 訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1(請求項1の訂正)について
訂正事項1は,「熱可塑性ポリマー」として,「シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステルと、を単量体単位として有する」,「ガラス転移温度が20℃以上」の「第1の共重合体」に加えて,「シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステルと、を単量体単位として有する」,「ガラス転移温度が20℃未満」の「第2の共重合体」を含むものに限定し,さらに,「蓄電デバイス用セパレータ」について,「前記蓄電デバイス用セパレータを2枚重ねて、その積層方向に、温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である」と,訂正前の請求項12に記載した事項で限定したものである(なお,下記(4)のとおり,訂正前の請求項12は削除された。)。
よって,訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件特許明細書【0015】には,熱可塑性ポリマーが,「シアノ基を有する単量体(a1)と、(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを単量体単位として有する共重合体を含む」ことが,【0046】には,「共重合体がガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、それらガラス転移温度のうち少なくとも1つは20℃未満」(すなわち第2の共重合体),「少なくとも1つは20℃以上」(すなわち第1の共重合体)であることが記載され,また,【0142】表1には,第1の共重合体の具体例として,水分散体「A1」?「A4」が,同じく第2の共重合体の具体例として水分散体「A7」が記載されている。さらに,【0103】には,「蓄電デバイス用セパレータを2枚重ねて、その積層方向に、温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である」ことが記載されている。
よって,訂正事項1は,新規事項の追加に該当せず,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項,第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2(請求項10の訂正)について
訂正事項2は,上記訂正事項1によって,訂正後の請求項1に「第1の共重合体」及び「第2の共重合体」が記載されたことに伴い,訂正前の請求項10における「前記共重合体」が「第1の共重合体」であることを明確にするものである。
よって,訂正事項2は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,また,新規事項の追加に該当せず,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同条第9項で準用する第126条第5項,第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3(請求項11の訂正)について
訂正事項3は,上記訂正事項1によって,訂正前の請求項1に「第1の共重合体」及び「第2の共重合体」が記載されたことに伴い,訂正前の請求項11における「前記共重合体」が「第1の共重合体」であることを明確にするものである。
よって,訂正事項3は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,また,新規事項の追加に該当せず,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同条第9項で準用する第126条第5項,第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4(請求項12の訂正)について
訂正事項4は,訂正前の請求項12を削除するものである。
よって,訂正事項4は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり(なお,上記(1)のとおり,請求項12に記載した事項により,請求項1は限定された。),また,新規事項の追加に該当せず,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同条第9項で準用する第126条第5項,第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5?8(請求項13?18の訂正)について
訂正事項5?8はいずれも,複数の請求項の引用のうち,上記訂正事項4で削除された請求項12の引用を削除するものである。
よって,訂正事項5?8はいずれも,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮,及び,第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,また,新規事項の追加に該当せず,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同条第9項で準用する第126条第5項,第6項の規定に適合するものである。

3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2?16はいずれも,請求項1を引用するものであって,請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから,本件訂正前の請求項1?16は,一群の請求項である。
そして,本件訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく,また,特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもない。よって,本件訂正請求は,訂正後の請求項〔1?16〕を訂正単位とする訂正の請求をするものであって,特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

4 独立特許要件について
本件においては,訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので,訂正事項1?8に関して,特許法第120条の9第9項で読み替えて準用する第126条第7項は適用されない。

5 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり,平成31年 4月 1日提出の訂正請求書による本件訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり,同条第4項の規定に適合し,かつ,同条第9項において準用する第126条第5項,第6項の規定に適合する。
よって,訂正後の請求項〔1?16〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で検討したとおり,平成31年 4月 1日提出の訂正請求書による本件訂正は適法なものである。そして,本件訂正後の請求項1?16に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」?「本件発明16」といい,まとめて単に「本件発明」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。なお,下線は訂正箇所を示す。

「【請求項1】
ポリオレフィン系の樹脂を50質量%を超えて含む微多孔膜である基材と、その基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された熱可塑性ポリマーを含有する層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、
前記熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、
前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃以上の領域に存在し、
前記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する第1の共重合体を含み、
前記第1の共重合体のガラス転移温度が20℃以上であり、
前記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する、前記共重合体とは別の第2の共重合体を含み、
前記第2の共重合体のガラス転移温度が20℃未満であり、
前記蓄電デバイス用セパレータを2枚重ねて、その積層方向に、温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である、
蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素原子数が1?5の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、炭素原子数が6以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体である、請求項1記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素原子数が6以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体である、請求項2記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項4】
前記炭素原子数が6以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、炭素原子数が6以上14以下の鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである、請求項3記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項5】
前記炭素原子数が6以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群より選ばれる1種以上の単量体である、請求項3記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項6】
前記シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、シクロアルキル基の脂環を構成する炭素原子の数が4?8であるシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである、請求項2?5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項7】
前記シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルアクリレート及びアダマンチルメタクリレートからなる群より選ばれる1種以上の単量体である、請求項2?6のいずれか1項に記載の蓄電デバイスセパレータ。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマーにおける、1720?1750cm^(-1)の波長における赤外吸収ピーク強度に対する2220cm^(-1)?2260cm^(-1)の波長における赤外吸収ピーク強度の比が、0.001?0.320である、請求項1?7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項9】
前記シアノ基を有する単量体が(メタ)アクリロニトリルである、請求項1?8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項10】
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(質量比2:3)に対する前記第1の共重合体の膨潤度が10.0倍以下である、請求項1?9のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項11】
前記第1の共重合体が、架橋性単量体を単量体単位として更に有する、請求項1?10のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
前記基材が、ポリオレフィン微多孔膜である、請求項1?11のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項14】
下記(1)及び(2)の少なくとも一方の剥離強度が、4mN/mm以上である、請求項1?11及び13のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
(1)アルミニウム箔に、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液に濡らした前記蓄電デバイス用セパレータを、前記熱可塑性ポリマーを含有する層の側から重ね合わせ、それらを重ね合わせた方向に80℃、10MPaの圧力で2分間加圧した後、前記アルミニウム箔と前記蓄電デバイス用セパレータとの間を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。
(2)アルミニウム箔に、前記蓄電デバイス用セパレータを、前記熱可塑性ポリマーを含有する層の側から重ね合わせ、それらを重ね合わせた方向に80℃、10MPaの圧力で2分間加圧した後、前記アルミニウム箔と前記蓄電デバイス用セパレータとの間を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。
【請求項15】
請求項1?11、13及び14のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータを備える蓄電デバイス。
【請求項16】
請求項1?11及び13?15のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータを備えるリチウムイオン二次電池。」

第4 当審が通知した取消理由について
1 取消理由の概要
(1)サポート要件
本件特許の訂正前の請求項1?16に係る発明は,下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。
すなわち,訂正前の請求項1に係る発明は,「ガラス転移温度が20℃未満」の別の共重合体が,「シアノ基含有単量体(a1)」を有さない場合も含むものであるが,「シアノ基含有単量体(a1)」を有さず,「(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)」を有する,「ガラス転移温度が20℃未満」のポリマーを用いた場合にも,同様に耐酸化性,密着性に優れるセパレータが得られることまでは,本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示されていない。
よって,「シアノ基含有単量体(a1)」を有することが特定されていない訂正前の請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものではない。また,訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2?16に係る発明についても同様に,発明の詳細な説明に記載したものでない(取消理由通知書27?35頁,取消理由通知書(決定の予告)11?22頁)。

(2)拡大先願
本件特許の訂正前の請求項1?5,8?11,13,15,16に係る発明は,本件特許に係る出願の原出願の出願日前の特許出願であって,本件特許に係る出願の原出願の出願後に出願公開された特願2013-223706号(特開2015-88253号公報(申立人が提示した甲第1号証,以下「甲1」という。)参照。)の願書に最初に添付された明細書に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許に係る出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また,本件特許に係る出願の原出願の出願時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり,第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである(取消理由通知書4?27頁)。

2 本件特許明細書の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には,次の記載がある。なお,下線は当審が付した。
「【0004】
従来、セパレータには、異常加熱した場合には速やかに電池反応が停止される特性(ヒューズ特性)、高温になっても形状を維持して正極物質と負極物質が直接反応する危険な事態を防止する性能(ショート特性)等の、安全性に関する性能が求められている。それらに加えて、最近では、充放電電流の均一化、及びリチウムデンドライト抑制の観点から、セパレータには電極との密着性の向上も求められている。
【0005】
セパレータと電池電極との密接性を良くすることにより、充放電電流の不均一化が起こりにくくなり、また、リチウムデンドライトが析出しにくくなるため、結果として充放電サイクル寿命を長くすることが可能となる。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らが、特許文献1に記載されたような従来のフィルムを用いたセパレータについて検討したところ、そのようなセパレータは電解質溶媒への溶出量及び膨潤度が高いため、接着性(本明細書において、「密着性」と同義である。)が十分ではないことが判明した。また、特許文献1に記載されたような従来のフィルムを用いたセパレータは、耐酸化性についても更に改善の余地がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐酸化性及び接着性の両方に優れた蓄電デバイス用セパレータ、蓄電デバイス、リチウムイオン二次電池及び共重合体を提供することを目的とする。」

「【0015】
本実施形態の共重合体は、シアノ基を有する単量体(a1)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)とを単量体単位として有する共重合体である(以下、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステルである単量体をまとめて「単量体(A)」とも表記する。)。また、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、基材と、その基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された熱可塑性ポリマーを含有する層(以下、「ポリマー層」という。)を備えており、上記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体(a1)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)とを単量体単位として有する共重合体を含むものである。なお、本明細書中、「エチレン性不飽和単量体」とは、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ以上有する単量体を意味する。
【0016】
本発明による効果をより有効且つ確実に奏する観点から、シアノ基を有する単量体(a1)は、シアノ基を有するエチレン性不飽和単量体であることが好ましい。シアノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリルが挙げられ、耐酸化性及び接着性を更に優れたものとする観点からこれらが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)は特に耐酸化性を高めるために用いられるものであり、特に限定されないが、エチレン性不飽和結合を1つ有するものが好ましく、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
CH_(2)=CR^(1)-COO-R^(2) (1)
式(1)中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(2)は置換基を有していてもよくかつ鎖内にヘテロ原子を有していてもよい1価の炭化水素基を示す。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸の炭化水素エステルを含むと好ましい。基1価の炭化水素基としては、例えば、直鎖であっても分岐していてもよい鎖状アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。また、置換基としては、例えば、ヒドロキシル基及びフェニル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えば酸素原子が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。」

「【0036】
上記共重合体におけるシアノ基を有する単量体(a1)の含有割合は、共重合体100質量%に対して、好ましくは1?95質量%である。その下限値は、より好ましくは5質量%であり、更に好ましくは50質量%である。シアノ基を有する単量体(a1)の含有割合が1質量%以上であると、耐酸化性を更に高めることができる。一方、より好ましい上限値は90質量%であり、更に好ましい上限値は85質量%である。シアノ基を有する単量体(a1)の含有割合が95質量%以下であると、接着性を高める観点から好ましい。
【0037】
上記共重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)の含有割合は、共重合体100質量%に対して、好ましくは1?95質量%である。その下限値は、より好ましくは5質量%であり、更に好ましくは10質量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)の含有割合が1質量%以上であると、電解液への膨潤性を抑制し接着性を更に高めることができる。一方、より好ましい上限値は95質量%であり、更に好ましい上限値は85質量%であり、特に好ましい上限値は50質量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)の含有割合が95質量%以下であると、耐酸化性及びハンドリング性を高める観点から好ましい。」

「【0046】
また、共重合体がガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、それらガラス転移温度のうち少なくとも1つは20℃未満の領域に存在し、それらのガラス転移温度のうち少なくとも1つは20℃以上の領域に存在することが好ましい。共重合体のガラス転移温度のうち少なくとも1つが20℃未満の領域に存在することにより、基材が微多孔膜である場合に、微多孔膜との密着性に優れ、その結果、セパレータと電極との密着性に更に優れるという効果を奏する傾向にある。同様の観点から、共重合体のガラス転移温度のうち少なくとも1つは15℃以下の領域に存在することがより好ましく、更に好ましくは-30℃以上15℃以下の領域に存在する。上記20℃未満の領域に存在するガラス転移温度は、共重合体と微多孔膜との密着性を一層高めつつ、ハンドリング性を更に良好に保持する点から、-30℃以上15℃以下の領域にのみ存在することが好ましい。
さらに、共重合体のガラス転移温度のうち少なくとも1つが20℃以上の領域に存在することにより、セパレータと電極との接着性及びハンドリング性に更に優れるという効果を奏する傾向にある。同様の観点から、共重合体のガラス転移温度のうち少なくとも1つが20℃以上120℃以下の領域に存在することがより好ましく、更に好ましくは50℃以上120℃以下の領域に存在する。上記範囲にガラス転移温度が存在することで、更に良好なハンドリング性を付与できる。さらに、電池作製時の加圧により発現する電極とセパレータとの間の密着性を一層高めることができる。上記20℃以上の領域に存在するガラス転移温度は、共重合体と微多孔膜との密着性を一層高めつつ、ハンドリング性を更に良好に保持する点から、20℃以上120℃以下の領域にのみ存在することが好ましい。」

「【0050】
本実施形態において、共重合体又は熱可塑性ポリマー(以下「共重合体等」という。)のガラス転移温度、すなわちTgは、例えば、共重合体等を製造するのに用いるモノマーの種類及び各モノマーの配合比を変更することにより適宜調整できる。共重合体等のTgは、共重合体又は熱可塑性ポリマーの製造に用いられる各モノマーについて一般に示されているそのホモポリマーのTg(例えば、「ポリマーハンドブック」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION)に記載)とモノマーの配合比から概略で推定することができる。例えば約100℃のTgのポリマーを与えるスチレン、メチルメタクリレ-ト、及びアクリルニトリルなどのモノマーを高比率で配合した共重合体等は、高いTgを有する。また、例えば約-80℃のTgのポリマーを与えるブタジエンや約-50℃のTgのポリマーを与えるn-ブチルアクリレ-ト及び2-エチルヘキシルアクリレ-トなどのモノマーを高い比率で配合した共重合体等は、低いTgを有する。
また、ポリマーのTgはFOXの式(下記式(2))より概算することができる。なお、共重合体等のガラス転移温度としては、上記DSCを用いた方法により測定したものを採用する。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+‥‥+Wi/Tgi+‥‥Wn/Tgn (2)
ここで、式(2)中において、Tg(K)は、コポリマーのTgを示し、Tgi(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTgを示し、Wiは、各モノマーの質量分率を示す。」

「【0065】
本実施形態のセパレータは、基材の少なくとも片面の少なくとも一部にポリマー層を有するので、熱プレスの工程を経て、電極及びセパレータ間を接着させることができる。すなわち、ポリマー層は、接着層として機能し得るものである。
熱可塑性ポリマーは、その全量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、上記共重合体を含む。その熱可塑性ポリマーは、上記共重合体以外に、本発明の課題解決を損なわない程度の、その他の成分を含んでもよい。」

「【0088】
また、本実施形態では、熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有していることが好ましい。これにより、電極への接着性とハンドリング性とのバランスをより良好に両立することができる。
【0089】
本実施形態では、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも1つが20℃未満の領域に存在することが好ましい。これにより、基材との密着性に一層優れ、その結果、セパレータは電極との密着性により優れるという効果を奏する。同様の観点から、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも1つが、15℃以下の領域に存在することがより好ましく、更に好ましくは-30℃以上15℃以下の領域に存在する。熱可塑性ポリマーと基材との密着性を高めつつ、ハンドリング性を更に良好に保持する点から、20℃未満の領域に存在するガラス転移温度が-30℃以上15℃以下の領域にのみ存在することが好ましい。
【0090】
本実施形態では、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも1つが20℃以上の領域に存在することが好ましい。これにより、セパレータと電極との接着性及びハンドリング性に更に優れるという効果を奏する。また、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも1つが20℃以上120℃以下の領域に存在することがより好ましく、更に好ましくは50℃以上120℃以下である。上記範囲にガラス転移温度が存在することで、更に良好なハンドリング性を付与できる。さらに、電池作製時の加圧により発現する電極とセパレータとの間の密着性を一層高めることができる。熱可塑性ポリマーと基材との密着性を一層高めつつ、ハンドリング性を更に良好に保持する点から、20℃以上の領域に存在するガラス転移温度は、20℃以上120℃以下の領域にのみ存在することが好ましく、50℃以上120℃以下の領域にのみ存在することがより好ましい。
【0091】
熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有することは、例えば、2種類以上の熱可塑性ポリマーをブレンドする方法や、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーを用いる方法によって達成できるが、これらの方法に限定されない。コアシェル構造とは、中心部分に属するポリマーと、外殻部分に属するポリマーが異なる組成からなる、二重構造の形態をしたポリマーである。
【0092】
特に、ポリマーブレンドやコアシェル構造は、ガラス転移温度の高いポリマーと低いポリマーとを組み合せることにより、熱可塑性ポリマー全体のガラス転移温度を制御できる。また、熱可塑性ポリマー全体に複数の機能を付与できる。例えば、ブレンドの場合は、特にガラス転移温度が20℃以上の領域に存在するポリマーと、ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在するポリマーとを、2種類以上ブレンドすることで、耐ベタツキ性と基材への塗れ性とを更に良好に両立することができる。ブレンドする場合の混合比としてはガラス転移温度が20℃以上の領域に存在するポリマーと、ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在するポリマーとの比が0.1:99.9?99.9:0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは、5:95?95:5であり、更に好ましくは50:50?95:5であり、特に好ましくは60:40?90:10である。コアシェル構造の場合は、外殻ポリマーの種類を変えることにより、ポリオレフィン微多孔膜など他材料に対する接着性や相溶性の調整ができ、中心部分に属するポリマーの種類を変更することで、例えば熱プレス後の電極への接着性を高めたポリマーに調整することができる。また、粘性の高いポリマーと弾性の高いポリマーとを組み合わせて粘弾性の制御をすることもできる。
【0093】
なお、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーのシェルのガラス転移温度は、特に限定されないが、20℃未満が好ましく、15℃以下がより好ましく、-30℃以上15℃以下が更に好ましい。また、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーのコアのガラス転移温度は、特に限定されないが、20℃以上が好ましく、20℃以上120℃以下がより好ましく、50℃以上120℃以下が更に好ましい。」

「【0136】
(密着性試験)
上記方法により得られた電極を幅17mm、長さ50mmに切断した。一方、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液(富山薬品工業製)に、セパレータ(サイズ:幅20mm、長さ100mm)を浸漬して十分に濡らした後に引き上げた。次いで、上記電極と十分に濡らしたセパレータとを重ねた後にアルミニウム製のジップ付き袋に入れ、80℃、10MPaの条件で、2分間プレスを行った。その後、電極とセパレータとの積層体を袋から取り出して密着性試験用のサンプルとした。得られた試験用サンプルの基材と電極との間の90°剥離強度を、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2-500N(製品名)を用いて、引張速度50mm/分で測定した。剥離強度の値に基づいて、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
6mN/mm以上…◎
4mN/mm以上6mN/mm未満…○
4mN/mm未満…×」

「【0138】
(15)セパレータのハンドリング性(耐ブロッキング性;常温剥離強度試験)
20mm×100mmに切り取ったセパレータ2枚を準備し、それらの熱可塑性ポリマーを含有する層同士を重ね合わせた後、温度25℃、圧力5MPaの条件で3分間プレスを行った。プレス後のサンプルにおけるセパレータ同士の90°剥離強度を、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2-500N(製品名)を用いて、引張速度50mm/分で測定した。剥離強度の値に基づいて、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
40mN/mm以下…○
40mN/mm超…×
【0139】
(16)耐酸化性
NCセルによるトリクル試験後のセパレータ表面の黒色化具合を観察して耐酸化性を評価した。詳細には、水分散液を塗布したセパレータを18mmφ、上記「(13)セパレータと電極との密着性」にて作製した正極及び負極を16mmφの円形(円板)に切り出し、正極と負極との活物質面が対向するよう、正極、セパレータ及び負極の順に積層した後に、蓋付きステンレス金属製容器に収納した。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と、それぞれ接するように配置した。この容器内に上記電解液を注入して密閉し、その状態で室温にて1日放置して電池を得た。なお、電解液は、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF_(6)を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより 調製したものを用いた。次いで、組み立てた電池を1/3Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を8時間行い、その後1/3Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。次に、1Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を3時間行い、その後1Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。最後に1Cの電流値で4.2Vまで定電流充電をした後に4.2Vの定電圧充電を3時間行い前処理とした。
次に、前処理を行った電池を、1Cの電流で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を温度70℃下で100時間行った。この電池よりセパレータを取り出し、付着物を取り除くために、ジメトキシエタン、エタノール、及び1規定の塩酸中で各15分間、超音波洗浄を行った。その後、空気中にて乾燥し、セパレータの正極接触面側の黒色変色具合を目視にて観察し、耐酸化性評価を行った。判定は、面積あたりにおける黒色に変色した割合で評価した。
5%未満:◎
5%以上20%未満:○
20%以上:×」

「【0140】
[合成例1]
(水分散体A1)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、乳化剤として「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液、表中「KH1025」と表記。以下同様。)2.0質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液、表中「SR1025」と表記。以下同様。)0.5質量部とを投入した。次いで、反応容器内部の温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液(表中「APS(aq)と表記。以下同様。」)を7.5質量部添加した。過硫酸アンモニウム水溶液を添加終了した5分後に、乳化液を滴下槽から反応容器に150分かけて滴下した。なお、乳化液は、シアノ基を有する単量体(a1)(表中、「シアノ基含有単量体(a1)」と表記。)として、アクリロニトリル(表中、「AN」と表記。以下同様。)5.0質量部、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)として、2-エチルヘキシルアクリレート(表中、「EHA」と表記。以下同様。)10質量部、シクロヘキシルメタクリレート(表中、「CHMA」と表記。以下同様。)83質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A-TMPT、新中村化学工業株式会社製商品名、表中、「A-TMPT」と表記。以下同様。)1.0質量部、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(表中、「AcSi」と表記。以下同様。)0.5質量部、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(表中、「カルボキシル基含有単量体」と表記。)としてアクリル酸(表中、「AA」と表記。以下同様。)1.0質量部、メタクリル酸(表中、「MAA」と表記。以下同様。)1.0質量部、乳化剤として「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)2.0質量部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液7.5質量部、及びイオン交換水52質量部の混合物をホモミキサーにより5分間混合させて作製した。
乳化液の滴下終了後、反応容器内部の温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却した。得られたエマルジョンを、水酸化アンモニウム水溶液(25%水溶液)でpH=9.0に調整し、濃度40%の水分散体を得た(水分散体A1)。得られた水分散体A1中の共重合体について、上記方法により、Tg、平均粒径、及び電解液に対する膨潤度を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0141】
[合成例2?11]
(水分散体A2?A11)
原材料の種類及び配合比を表1に示すように変更した以外は、合成例1と同様にして、水分散体A2?A11を得た、なお、表中、「BMA」、「BA」及び「MMA」は、それぞれ(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)の1種であるブチルメタクリレート、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートを意味する。得られた水分散体A2?A11中の共重合体について、上記方法により、Tg、粒子径、赤外吸収ピーク強度の比及び電解液に対する膨潤度を測定した。得られた結果を表1に示す。なお、表中、原材料の組成は質量基準である。
【0142】
【表1】



「【0147】
[実施例1]
固形分で80質量部の水分散体A1と、固形分で20質量部の水分散体A7とを、水に均一に分散させて、熱可塑性ポリマーを含む塗布液(固形分30質量%)を調製した。次いで、基材B1の片面にマイクログラビアコーターを用いて、ポリマー層がドット状になるように塗布液を塗布した。その後、60℃にて塗布後の塗布液を乾燥して水を除去した。さらに、基材B1のもう片面にも同様に塗布液を塗布し、再度上記と同様にして乾燥させた。こうして、基材B1の両面にポリマー層を形成したセパレータを得た。なお、このセパレータにおいて、ポリマー層の平均厚さは1μm、基材への担持量は0.5g/m^(2)であった。
得られたセパレータについて、上記方法により、耐ブロッキング性、耐酸化性及び密着性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0148】
[実施例2?8、比較例1?3]
水分散体の種類及び混合割合(質量%)、ポリマー層のパターン、基材の種類、並びに、塗布液中の固形分(質量部)を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、セパレータを作製した。なお、比較例3では、塗布液を用いなかった。得られたセパレータの各種物性及び評価・試験結果を表2に示す。
【0149】
【表2】



3 甲1の記載事項
甲1には,「リチウムイオン二次電池用接着剤、リチウムイオン二次電池用セパレータ及びリチウム二オン二次電池」(発明の名称)に関して,次の記載がある。なお,下線は当審が付した。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池を構成する部材同士を接着するための接着剤であって、
前記接着剤が、粒子状重合体を含み、
前記粒子状重合体が、コア部と、前記コア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有し、
前記コア部が、電解液に対する膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、
前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体からなり、
前記粒子状重合体中のアミド単量体単位の割合が、0.1重量%以上20重量%である、リチウムイオン二次電池用接着剤。
【請求項2】
前記コア部の重合体のガラス転移温度が、0℃以上100℃以下であり、
前記シェル部の重合体のガラス転移温度が、50℃以上200℃以下である、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用接着剤。
【請求項3】
多孔膜と電極とを接着するための接着剤である、請求項1又は2記載のリチウムイオン二次電池用接着剤。
【請求項4】
セパレータ基材及び接着層を備え、
前記接着層が、粒子状重合体を含み、
前記粒子状重合体が、コア部と、前記コア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有し、
前記コア部が、電解液に対する膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、
前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体からなり、
前記粒子状重合体中のアミド単量体単位の割合が、0.1重量%以上20重量%である、リチウムイオン二次電池用セパレータ。
【請求項5】
正極、負極、電解液及びセパレータを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記セパレータが請求項4記載のリチウムイオン二次電池用セパレータである、リチウムイオン二次電池。」

「【0029】
iv.耐ブロッキング性:
通常、シェル部の重合体は、電解液に膨潤していない状態においては接着性を有さず、電解液に膨潤することにより初めて接着性を発現する。そのため、粒子状重合体は、電解液に膨潤していない状態において接着性を発現しない。このため、その粒子状重合体を含む接着層は電解液に膨潤していない状態では接着性を発現しないので、その接着層を備えるセパレータは、重ねてもブロッキングを生じ難いものと推察される。」

「【0047】
また、コア部の重合体は、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体単位とは、架橋性単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。また、架橋性単量体とは、加熱又はエネルギー線の照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。架橋性単量体単位を含むことにより、重合体の膨潤度を、前記の範囲に容易に収めることができる。」

「【0052】
コア部の重合体のガラス転移温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、特に好ましくは20℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。コア部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、接着層の接着性を更に高めることができる。さらに、上限値以下にすることにより、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性を更に高めることができる。ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121に従って測定しうる。」

「【0062】
また、シェル部の重合体は、架橋性単量体単位を含みうる。架橋性単量体としては、例えば、コア部の重合体に用いうる架橋性単量体として例示したものと同様の例が挙げられる。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。」

「【0067】
シェル部の重合体のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは150℃以下である。シェル部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、接着層を備えたセパレータはブロッキングが更に生じ難くなり、また、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、接着層の接着性を更に高めることができる。」

「【0087】
〔1.2.接着層用バインダー〕
本発明の接着剤は、粒子状重合体に加えて、更に接着層用バインダーを含むことが好ましい。接着層用バインダーを用いることにより、電解液に膨潤している状態及び膨潤していない状態の両方において粒子状重合体同士を接着させることができる。そのため、接着層の形成を容易に行うことが可能となり、また、接着層の機械的強度を高めることが可能となる。さらに、接着層用バインダーにより、接着層の接着性を更に向上させることができる。」

「【0101】
接着層用バインダーとしての重合体のガラス転移温度は、好ましくは-100℃以上、より好ましくは-90℃以上、特に好ましくは-80℃以上であり、好ましくは0℃以下、より好ましくは-5℃以下、特に好ましくは-10℃以下である。接着層用バインダーとしての重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、接着層の接着性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、接着層の柔軟性を高めることができる。」

「【0134】
〔3.1.セパレータ基材〕
セパレータ基材としては、例えば、微細な孔を有する多孔性基材を用いうる。このようなセパレータ基材を用いることにより、二次電池において電池の充放電を妨げることなく短絡を防止することができる。中でも、セパレータ基材としては、有機材料により形成された多孔性基材を用いることが好ましい。有機材料により形成された多孔性基材は、電池内部の温度が高くなった場合に融解して細孔を塞ぐことにより、リチウムイオンの移動を防いて電流を遮断できるので、リチウムイオン二次電池の安全性を高めることができる。
【0135】
セパレータ基材の例を挙げると、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)及びこれらの混合物、並びにこれらの共重合体等を含む樹脂からなる多孔性基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース等を含む樹脂からなる多孔性基材;前記の樹脂の繊維を織った織物;前記の樹脂の繊維の不織布;絶縁性粒子の集合体、などが挙げられる。また、これらを任意の組み合わせで2層以上備える多層構造の積層体を、セパレータ基材として用いてもよい。」

「【0162】
〔3.3.セパレータが備える接着層〕
本発明のセパレータは、セパレータ基材上に、直接又は多孔膜等の任意の層を介して、接着層を備える。このようなセパレータは、例えば、セパレータ基材を基材として用いるか、又は、セパレータ基材及び任意の層を備える積層体を基材として用い、その基材上に上述した接着層の製造方法によって接着層を形成することにより、製造することができる。この際、接着層は、セパレータの片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。」

「【0199】
[評価方法]
〔1.電極と多孔膜とのピール強度の測定方法〕
実施例及び比較例で製造した、正極及びセパレータを備える積層体、並びに、負極及びセパレータを備える積層体を、それぞれ10mm幅に切り出して、試験片を得た。この試験片を電解液中に温度60℃で3日間浸漬した。この際、電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとビニレンカーボネートの混合溶媒(体積混合比EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm^(3))^(1/2))に、支持電解質としてLiPF_(6)を溶媒に対し1mol/リットルの濃度で溶かしたものを用いた。
その後、試験片を取り出し、表面に付着した電解液を拭き取った。その後、この試験片を、電極(正極又は負極)の表面を下にして、電極の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を、正極及びセパレータを備える積層体並びに負極及びセパレータを備える積層体でそれぞれ3回、合計6回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度とした。
【0200】
〔2.耐ブロッキング性の評価方法〕
セパレータを、幅5cm×長さ5cm、幅4cm×長さ4cm、にそれぞれ正方形に切って試験片とする。これらを二枚重ね合わせたサンプル(未プレスの状態のサンプル)と、重ね合わせた後に40℃、10g/cm^(2)の加圧下に置いたサンプル(プレスしたサンプル)とを作製した。これらのサンプルを、それぞれ24時間放置した。24時間放置後のサンプルにおいて、重ね合わせられたセパレータ同士の接着状態(ブロッキング状態)を目視で確認し、下記基準で評価した。
A:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングしない。
B:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングするが剥がれる。
C:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングし剥がれない。
D:未プレスの状態のサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングする。」

「【0208】
〔6.コア部の重合体の膨潤度の測定方法〕
実施例及び比較例においてコア部を構成する重合体を含む水分散液を製造した方法と同様にして、コア部を構成する重合体を含む水分散液を製造した。この水分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを製造した。
【0209】
このフィルムを1cm角に裁断し、試験片を得た。この試験片の重量を測定し、W0とした。
また、前記の試験片を電解液に、60℃で72時間浸漬した。その後、試験片を電解液から取り出し、試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬試験後の試験片の重量W1を測定した。
これらの重量W0及びW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算した。
【0210】
この際、電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとビニレンカーボネートの混合溶媒(体積混合比EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm^(3))^(1/2))に、支持電解質としてLiPF_(6)を溶媒に対し1mol/リットルの濃度で溶かしたものを用いた。」

「【0220】
[実施例1]
〔1-1.多孔膜用バインダーの製造〕
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過硫酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器でイオン交換水50部、分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体として、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N-メチロールアクリルアミド1部及びアクリルアミド1部を混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、多孔膜用バインダーとして(メタ)アクリル重合体を含む水分散液を製造した。
得られた(メタ)アクリル重合体の体積平均粒子径D50は0.36μm、ガラス転移温度は-45℃であった。
【0221】
〔1-2.多孔膜用スラリーの製造〕
非導電性粒子としてアルミナ粒子(住友化学社製「AKP-3000」、体積平均粒子径D50=0.45μm、テトラポッド状粒子)を用意した。
水溶性重合体として、エーテル化度0.8?1.0のカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製「Daicel 1220」)を用いた。なお、水溶性重合体の1%水溶液の粘度は、10mPa・s?20mPa・sであった。
【0222】
非導電性粒子100部及び水溶性重合体1.5部を混合し、さらにイオン交換水を固形分濃度が40重量%になるように混合して、非導電性粒子を分散させた。さらに、多孔膜用バインダーとして前記の(メタ)アクリル重合体を含む水分散液を固形分相当で6部、及び、ポリエチレングリコール型の界面活性剤(サンノプコ社製「SNウェット366」)0.2部を混合し、多孔膜用スラリーを製造した。
【0223】
〔1-3.粒子状重合体の製造〕
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、コア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル74.5部、メタクリル酸4部、エチレンジメタクリレート1部、及び、アクリルアミド0.5部;乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、コア部を構成する粒子状の重合体を含む水分散液を得た。
【0224】
次いで、この水分散液に、シェル部の製造に用いる単量体組成物として、スチレン19.5部及びアクリルアミド0.5部を連続添加し、70℃に加温して重合を継続した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止することにより、粒子状重合体を含む水分散液を製造した。得られた粒子状重合体の体積平均粒子径D50は0.45μmであった。得られた粒子状重合体について、上述した方法でコアシェル比率、及び、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合を測定した。
【0225】
〔1-4.接着剤の製造〕
前記の粒子状重合体を含む水分散液を粒子状重合体の量で100部、接着層用バインダーとして多孔膜用バインダーとして製造した前記(メタ)アクリル重合体の水分散液を(メタ)アクリル重合体の量で6部、並びに、水溶性重合体としてエーテル化度0.8?1.0のカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製「Daicel 1220」)0.5部を混合し、さらにイオン交換水を固形分濃度が20%になるように混合し、スラリー状の接着剤を得た。
【0226】
〔1-5.セパレータの製造〕
ポリエチレン製の有機多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)をセパレータ基材として用意した。用意したセパレータ基材の両面に、前記多孔膜用スラリーを塗布し、50℃で3分間乾燥させて、セパレータ基材の両面に多孔膜を形成した。多孔膜の1層当たりの厚みは、3μmであった。
次いで、各多孔膜の上に、前記のスラリー状の接着剤をスプレーコート法により塗布し、50℃で1分間乾燥した。これにより、1層当たりの厚みが2μmの接着層を多孔膜上に設けて、セパレータを得た。このセパレータは、接着層、多孔膜、セパレータ基材、多孔膜及び接着層を、この順に備えていた。
このセパレータについて、上述した方法で耐ブロッキング性の評価を行った。
【0227】
〔1-6.負極用の粒子状バインダーの製造〕
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3-ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2-ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状バインダー(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状バインダーを含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって前記の混合物から未反応単量体の除去を行い、30℃以下まで冷却して、所望の粒子状バインダーを含む水分散液を得た。
【0228】
〔1-7.負極用スラリーの製造〕
人造黒鉛(体積平均粒子径:15.6μm)100部、及び、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部混合し、さらにイオン交換水を加えて固形分濃度を68%に調整し、25℃で60分間混合した。こうして得られた混合液に、イオン交換水を加えて固形分濃度を62%に調整した後、さらに25℃で15分間混合した。この混合液に、上記の負極用の粒子状バインダーを含む水分散液を固形分相当量で1.5部加え、イオン交換水を入れて最終固形分濃度を52%に調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリーを得た。
【0229】
〔1-8.負極の製造〕
前記負極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極活物質層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
【0230】
〔1-9.正極用スラリーの製造〕
正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoO_(2)を100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS-100」)を2部、及び、正極用バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製「#7208」)を固形分相当で2部混合し、これにN-メチルピロリドンを加えて全固形分濃度を70%にした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリーを調製した。
【0231】
〔1-10.正極の製造〕
前記正極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、プレス後の正極を得た。
【0232】
〔1-11.リチウムイオン二次電池の製造〕
プレス後の正極を49×5cm^(2)に切り出した。切り出された正極の正極活物質層上に、55×5.5cm^(2)に切り出したセパレータを配置した。さらに、プレス後の負極を50×5.2cm^(2)の正方形に切り出し、この切り出された負極を前記セパレータの正極とは反対側に、負極活物質層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。これを捲回機によって捲回し、捲回体を得た。この捲回体を60℃0.5MPaでプレスし、扁平体とした。この扁平体を、電池の外装としてのアルミニウム包材外装で包み、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF_(6))を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口した。これにより、800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
こうして得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で、高温サイクル試験の前後でのセル体積変化、高温サイクル特性、及び、低温出力特性を評価した。
【0233】
〔1-12.ピール強度測定用のサンプルの製造〕
前記正極を直径13mmの円形に切り抜いて、円形の正極を得た。前記負極を直径14mmの円形に切り抜いて、円形の負極を得た。また、前記セパレータを直径18mmの円形に切り抜いて、円形のセパレータを得た。
円形のセパレータの片面に正極又は負極を、電極活物質層側の面でセパレータに接触する向きにして沿わせた。その後、温度80℃、圧力0.5MPaで10秒間、加熱プレス処理を施して、正極及び負極をセパレータに圧着して、正極又は負極とセパレータとを備える積層体を得た。
【0234】
こうして得られたサンプルを用いて、上述した方法で、電極と多孔膜とのピール強度を測定した。」

「【0242】
[実施例9]
前記工程〔1-3〕に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル74.5部の代わりに、アクリロニトリル64.5部及び2-エチルヘキシルアクリレート10部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。」

「【0252】
[比較例2]
前記工程〔1-3〕に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル74.5部、メタクリル酸4部、エチレンジメタクリレート1部、及び、アクリルアミド0.5部を組み合わせて用いる代わりに、メタクリル酸(当審注:表4の比較例2のコア部単量体「MMA 70」との記載より,「メタクリル酸メチル」の誤記と認める。)70部、アクリロニトリル25部、及び、メタクリル酸5部を組み合わせて用いた。
また、前記工程〔1-3〕において、シェル部の製造に用いる単量体組成物を添加しなかった。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。」

「【0256】
[比較例5]
前記工程〔1-3〕に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル74.5部、メタクリル酸4部、エチレンジメタクリレート1部、及び、アクリルアミド0.5部を組み合わせて用いる代わりに、メタクリル酸メチル50部、アクリロニトリル25部及びメタクリル酸5部を組み合わせて用いた。
また、前記工程〔1-3〕に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレンの量を20部に変更し、アクリルアミドを用いなかった。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。」

「【0258】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表1?表5に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
「EDMA」:エチレンジメタクリレート
「MMA」:メタクリル酸メチル
「MAA」:メタクリル酸
「AAm」:アクリルアミド
「AN」:アクリロニトリル
「2-EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート
「PVDF」:ポリフッ化ビニリデン
「PST」:ポリスチレン
「Tg」:ガラス転移温度
「ST」:スチレン
「コアシェル比」:粒子状重合体の体積平均粒子径に対するシェル部の平均厚みの比
「MV」:体積平均粒子径
「BA」:ブチルアクリレート
「NMA」:N-メチロールアクリルアミド
「CMC」:カルボキシメチルセルロース
「被覆割合」:コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合
また、単量体の欄において、単量体の略称の隣の数値は、その略称が示す単量体の量を表す。
さらに、水溶性重合体の項において、水溶性重合体の略称の隣の数値は、その略称が示す水溶性重合体の量を表す。」

「【0260】
【表2】



「【0262】
【表4】



「【0263】
【表5】



4 当審の判断
(1)サポート要件について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
そこで,以下,本件発明が解決しようとする課題を踏まえつつ,本件特許の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かを検討する。

ア 本件発明が解決しようとする課題について
上記2の摘示のうち,【0004】,【0005】,【0008】,【0009】の記載によれば,本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は,「耐酸化性及び接着性の両方に優れた蓄電デバイス用セパレータ、蓄電デバイス、リチウムイオン二次電池及び共重合体を提供すること」である。そして,本件課題の「接着性」とは,「セパレータと電池電極との密着性」のことである。

イ 本件課題を解決できる範囲について
(ア)上記2の摘示のうち,【0015】?【0017】,【0036】?【0037】,【0046】,【0050】,【0065】,【0088】?【0093】の記載によれば,「共重合体」又はそれを含む「熱可塑性ポリマー」は,「シアノ基含有単量体(a1)」と「(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)」とを,単量体単位として有するものであることがわかる。
すなわち,【0015】には,「本実施形態の共重合体は、シアノ基を有する単量体(a1)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)とを単量体単位として有する共重合体である」と記載されており,【0065】には,「熱可塑性ポリマーは、その全量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、上記共重合体を含む。その熱可塑性ポリマーは、上記共重合体以外に、本発明の課題解決を損なわない程度の、その他の成分を含んでもよい」と記載されている。よって,【0046】における「共重合体」,【0088】?【0093】における「熱可塑性ポリマー」,及び【0092】における「ガラス転移温度が20℃以上の領域に存在するポリマー」,「ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在するポリマー」は,全て,「シアノ基を有する単量体(a1)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)とを単量体単位として有する共重合体」であると解するのが相当である。

(イ)また,上記2の摘示のうち,【0136】,【0138】?【0142】,【0147】?【0149】の記載によれば,シアノ基を有する単量体(a1)と,(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)とを単量体として有する,ガラス転移温度が20℃未満の共重合体を用いることによって,「耐酸化性及び接着性の両方に優れた蓄電デバイス用セパレータ、蓄電デバイス、リチウムイオン二次電池及び共重合体を提供すること」という,本件課題を解決していることが理解できる。
すなわち,表2を参酌すると,実施例1?4,7では,【0139】に説明される耐酸化性,【0136】に説明される密着性ともに,評価が「◎」又は「○」であり,良好な結果となっている。ここで,実施例1?4,7はいずれも,「基材B1の両面にポリマー層を形成したセパレータ」であり,「ポリマー層」の「ポリマー」は,表1に示す組成の共重合体を含む水分散体「A1」?「A4」,「A10」のいずれか80質量部と,同じく水分散体「A7」20質量部とを水に均一に分散させた塗布液に含まれるものである。そして,いずれの水分散体も,「シアノ基含有単量体(a1)」,及び「(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)」を単量体単位とする共重合体を含み,そのガラス転移温度Tgは,次のとおりである。

実施例1:「A1」(Tg47.4℃)と「A7」(Tg-11.6℃)
実施例2:「A2」(Tg61.8℃)と「A7」(Tg-11.6℃)
実施例3:「A3」(Tg79.3℃)と「A7」(Tg-11.6℃)
実施例4:「A4」(Tg54.9℃)と「A7」(Tg-11.6℃)
実施例7:「A10」(Tg24.8℃)と「A7」(Tg-11.6℃)

ウ 本件発明が本件課題を解決できるかについて
本件発明1は,訂正後の請求項1に記載のとおり,「熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する、前記共重合体とは別の第2の共重合体を含み、」かつ「第2の共重合体のガラス転移温度が20℃未満であり、」と特定したものである。
そして,上記イのとおり,本件特許明細書の発明の詳細な説明によれば,そのような第2の共重合体(水分散体「A7」に含まれる共重合体)を用いることにより,耐酸化性,密着性に優れるセパレータが得られること,すなわち,本件課題を解決できることが示されているのであるから,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
また,本件発明2?11,13?16は,本件発明1の技術的内容を引用して,さらに特定したものであるから,本件発明1と同様に,発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。

エ 申立人の主張について
申立人は,本件訂正後の本件発明に関して,「第2の共重合体」について十分な説明がなされていない点,熱可塑性ポリマーが第1の共重合体及び第2の共重合体を「含む」と規定している点,及び,明らかに効果を奏さない実施態様を包含している点において,サポート要件を満たしていない旨主張している(令和1年 5月13日提出の意見書2頁17行?6頁16行)ので,以下,検討する。

(ア)共重合体の組成に関して,発明の詳細な説明【0016】には,「本発明による効果をより有効且つ確実に奏する観点から、シアノ基を有する単量体(a1)は、シアノ基を有するエチレン性不飽和単量体であることが好ましい」ものであり,例えば,アクリロニトリル,メタクリロニトリルが,耐酸化性及び接着性を更に優れたものとする観点から好ましい旨が,同じく【0017】には,「(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)は特に耐酸化性を高めるために用いられるものであり、特に限定されないが、エチレン性不飽和結合を1つ有するものが好ましく」,「(メタ)アクリル酸の炭化水素エステルを含むと好ましい」旨が記載されている。また,【0036】,【0037】には,「シアノ基を有する単量体(a1)」及び「(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)」の含有割合について,接着性や耐酸化性の観点からみた好ましい範囲が記載されている。
さらに,共重合体のガラス転移温度が20℃未満であることに関して,発明の詳細な説明【0046】には,「基材が微多孔膜である場合に、微多孔膜との密着性に優れ、その結果、セパレータと電極との密着性に更に優れる」,「共重合体と微多孔膜との密着性を一層高めつつ、ハンドリング性を更に良好に保持する点から、-30℃以上15℃以下の領域にのみ存在することが好ましい」と記載されている。また,【0089】には,共重合体を含む熱可塑性ポリマーのガラス転移温度が20℃未満であることに関して,「基材との密着性に一層優れ、その結果、セパレータは電極との密着性により優れる」,「熱可塑性ポリマーと基材との密着性を高めつつ、ハンドリング性を更に良好に保持する点から、20℃未満の領域に存在するガラス転移温度が-30℃以上15℃以下の領域にのみ存在することが好ましい」と記載されている。
よって,当業者であれば,水分散体「A7」に含まれる共重合体の組成のみに限られることなく,ガラス転移温度が20℃未満の共重合体又はそれを含む熱可塑性ポリマーを,ガラス転移温度が20℃以上のものと組み合わせて用いることで,本件課題を解決できることを理解することができる。

(イ)熱可塑性ポリマーに含まれる成分として,発明の詳細な説明【0065】には,「熱可塑性ポリマーは、その全量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、上記共重合体を含む。その熱可塑性ポリマーは、上記共重合体以外に、本発明の課題解決を損なわない程度の、その他の成分を含んでもよい。」とされている。
よって,第1の共重合体及び第2の共重合体以外の成分が熱可塑性ポリマーに含まれ得るとしても,それは,あくまで本件課題の解決を損なわない程度で許容されるものであり,発明の効果を奏し得ないまでに多量の成分を含むものではない。

(ウ)甲1【0200】には,申立人が根拠とする「耐ブロッキング性の評価方法」に関して,
「セパレータを、幅5cm×長さ5cm、幅4cm×長さ4cm、にそれぞれ正方形に切って試験片とする。これらを二枚重ね合わせたサンプル(未プレスの状態のサンプル)と、重ね合わせた後に40℃、10g/cm^(2)の加圧下に置いたサンプル(プレスしたサンプル)とを作製した。これらのサンプルを、それぞれ24時間放置した。24時間放置後のサンプルにおいて、重ね合わせられたセパレータ同士の接着状態(ブロッキング状態)を目視で確認し、下記基準で評価した。
A:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングしない。
B:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングするが剥がれる。
C:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングし剥がれない。
D:未プレスの状態のサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングする。」と記載されている。
これに対して,本件特許明細書の発明の詳細な説明【0138】には,セパレータのハンドリング性(耐ブロッキング性;常温剥離強度試験)に関して,
「20mm×100mmに切り取ったセパレータ2枚を準備し、それらの熱可塑性ポリマーを含有する層同士を重ね合わせた後、温度25℃、圧力5MPaの条件で3分間プレスを行った。プレス後のサンプルにおけるセパレータ同士の90°剥離強度を、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2-500N(製品名)を用いて、引張速度50mm/分で測定した。剥離強度の値に基づいて、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
40mN/mm以下…○
40mN/mm超…×」と記載されており,両者は,サンプルの処理温度,処理圧力及び処理時間において条件が異なっている。
よって,甲1の比較例2,5,6において,ブロッキング評価が「C」であったとしても,これは,本件発明に係る剥離強度の測定とは異なる条件下での評価であるから,このことから直ちに,本件発明が,明らかに効果を奏しない実施態様を包含しているということはできない。

オ サポート要件についてのまとめ
以上のとおり,本件発明1?11,13?16は,発明の詳細な説明に記載されたものである。よって,この取消理由は解消した。

(2)拡大先願について
ア 甲1に記載された発明
上記3の摘示,特に,実施例9,比較例2,比較例5にそれぞれ着目すると,甲1には,次の発明が記載されているといえる。
なお,実施例9,比較例2,比較例5として,接着層,多孔膜,セパレータ基材,多孔膜及び接着層を,この順に備えるセパレータが記載されているところ,【0162】には,「セパレータ上に,直接」「接着層を備える」旨の記載があるから,甲1には,セパレータ基材上に直接接着層を備えるセパレータが記載されているといえるので,次のとおり(甲1-1発明)?(甲1-3発明)を認定する。

(ア)実施例9に着目したもの(甲1-1発明)
「ポリエチレン製の有機多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)であるセパレータ基材の両面に、1層当たりの厚み2μmの接着層を有するリチウムイオン二次電池に用いるセパレータであって、
前記接着層は、粒子状重合体を含む水分散液を粒子状重合体の量で100部、接着層用バインダーとして(メタ)アクリル重合体の水分散液を(メタ)アクリル重合体の量で6部を含み、
粒子状重合体は、コアシェル構造を有し、コア部重合体の単量体は、アクリロニトリル64.5部、2-エチルヘキシルアクリレート10部、メタクリル酸4部、エチレンジメタクリレート1部、アクリルアミド0.5部であり、コア部重合体のガラス転移温度は47℃であり、コア部重合体の電解液に対する膨潤度は7倍であり、
シェル部重合体の単量体は、スチレン19.5部、アクリルアミド0.5部であり、シェル部重合体のガラス転移温度は、100℃であり、
接着層用バインダーが含む前記(メタ)アクリル重合体は、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N-メチロールアクリルアミド1部、アクリルアミド1部を重合した粒子状の重合体であり、接着層用バインダーのガラス転移温度は-45℃である、セパレータ。
ただし、コア部重合体の電解液に対する膨潤度は、以下のように測定した値である。
(コア部の重合体膨潤度測定方法)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、コア部の製造に用いる単量体組成物として、アクリロニトリル64.5部、2-エチルヘキシルアクリレート10部、メタクリル酸4部、エチレンジメタクリレート1部、アクリルアミド0.5部;乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌する。その後、60℃に加温して重合を開始する。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、コア部を構成する粒子状の重合体を含む水分散液を得る。
この水分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを製造する。
このフィルムを1cm角に裁断し、試験片を得る。この試験片の重量を測定し、W0とする。
また、前記の試験片を電解液に、60℃で72時間浸漬する。その後、試験片を電解液から取り出し、試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬試験後の試験片の重量W1を測定する。
これらの重量W0及びW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算する。
この際、電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとビニレンカーボネートの混合溶媒(体積混合比EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm^(3))^(1/2))に、支持電解質としてLiPF_(6)を溶媒に対し1mol/リットルの濃度で溶かしたものを用いる。」

(イ)比較例2に着目したもの(甲1-2発明)
「ポリエチレン製の有機多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)であるセパレータ基材の両面に、1層当たりの厚み2μmの接着層を有するリチウムイオン二次電池に用いるセパレータであって、
前記接着層は、粒子状重合体を含む水分散液を粒子状重合体の量で100部、接着層用バインダーとして(メタ)アクリル重合体の水分散液を(メタ)アクリル重合体の量で6部を含み、
粒子状重合体は、メタクリル酸メチル70部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸5部を重合したものであり、粒子状重合体のガラス転移温度は100℃であり、
接着層用バインダーが含む前記(メタ)アクリル重合体は、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N-メチロールアクリルアミド1部、アクリルアミド1部を重合した粒子状の重合体であり、接着層用バインダーのガラス転移温度は-45℃である、セパレータ。」

(ウ)比較例5に着目したもの(甲1-3発明)
「ポリエチレン製の有機多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)であるセパレータ基材の両面に、1層当たりの厚み2μmの接着層を有するリチウムイオン二次電池に用いるセパレータであって、
前記接着層は、粒子状重合体を含む水分散液を粒子状重合体の量で100部、接着層用バインダーとして(メタ)アクリル重合体の水分散液を(メタ)アクリル重合体の量で6部を含み、
粒子状重合体は、コアシェル構造を有し、コア部重合体の単量体は、メタクリル酸メチル50部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸5部であり、コア部重合体のガラス転移温度は116℃であり、
シェル部重合体の単量体は、スチレン20部であり、シェル部重合体のガラス転移温度は、100℃であり、
接着層用バインダーが含む前記(メタ)アクリル重合体は、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N-メチロールアクリルアミド1部、アクリルアミド1部を重合した粒子状の重合体であり、接着層用バインダーのガラス転移温度は-45℃である、セパレータ。」

イ 本件発明との対比
(ア)本件発明と甲1-1発明との対比
甲1-1発明の「ポリエチレン製の有機多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)であるセパレータ基材」は,その「ポリエチレン」が,「ポリオレフィン」の一種であるから,本件発明1の「ポリオレフィン系の樹脂を50質量%を超えて含む微多孔膜である基材」に相当する。
甲1-1発明の「接着層」は,「粒子状重合体」と「接着層用バインダー」とを含み,「粒子状重合体」と「接着層用バインダー」は,その単量体成分から,「熱可塑性ポリマー」を含有することは明らかであり,本件発明1の「熱可塑性ポリマーを含有する層」に相当する。そして,その配置態様について,甲1-1発明の「セパレータ基材の両面に」「有する」ことは,本件発明1の「基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された」ことに相当する。
甲1-1発明の「接着層」が,いずれも「熱可塑性ポリマー」である「粒子状重合体」と「接着層用バインダー」とを含み,「粒子状重合体」のガラス転移温度が,コア部47℃,シェル部100℃であり,「接着層用バインダー」のガラス転移温度が-45℃であることは,本件発明1の「熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃以上の領域に存在し」に相当する。
甲1-1発明の「粒子状重合体は、コアシェル構造を有し、コア部重合体の単量体は、アクリロニトリル64.5部、2-エチルヘキシルアクリレート10部、メタクリル酸4部、エチレンジメタクリレート1部、アクリルアミド0.5部であり、」は,本件発明1の「前記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する第1の共重合体を含み、」に相当する。そして,そのガラス転移温度について,甲1-1発明の「コア部重合体のガラス転移温度は47℃であり、」は,本件発明1の「前記第1の共重合体のガラス転移温度が20℃以上であり、」と,47℃で重複している。
甲1-1発明の「接着層用バインダーが含む前記(メタ)アクリル重合体は、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N-メチロールアクリルアミド1部、アクリルアミド1部を重合した粒子状の重合体であり、」は,本件発明1の「前記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する、前記共重合体とは別の第2の共重合体を含み、」に相当する,そして,そのガラス転移温度について,甲1-1発明の「接着層用バインダーのガラス転移温度は-45℃である、」は,本件発明1の「前記第2の共重合体のガラス転移温度が20℃未満であり、」と,-45℃で重複している。
甲1-1発明の「セパレータ」は「リチウムイオン二次電池に用いる」ものであるところ,「リチウムイオン二次電池」が「蓄電デバイス」に相当することは明らかであるから,本件発明1の「蓄電デバイス用セパレータ」に相当する。
そうすると,本件発明1と甲1-1発明とは,次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「ポリオレフィン系の樹脂を50質量%を超えて含む微多孔膜である基材と,その基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された熱可塑性ポリマーを含有する層と,を備える蓄電デバイス用セパレータであって,
前記熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有しており,
前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し,
前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃以上の領域に存在し,
前記熱可塑性ポリマーが,シアノ基を有する単量体と,(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する第1の共重合体を含み,
前記第1の共重合体のガラス転移温度が47℃であり,
前記熱可塑性ポリマーが,シアノ基を有する単量体と,(メタ)アクリル酸エステル単量体と,を単量体単位として有する,前記共重合体とは別の第2の共重合体を含み,
前記第2の共重合体のガラス転移温度が-45℃である,
蓄電デバイス用セパレータ。」

(相違点)
剥離強度について,本件発明1では,「蓄電デバイス用セパレータを2枚重ねて、その積層方向に、温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である」のに対し,甲1-1発明では,そのような特定がない点。

よって,本件発明1は,甲1-1発明と同一ではない。
また,本件発明2?5,8?11,13,15,16は,本件発明1の技術的内容を引用して,さらに特定したものであるから,本件発明1と同様に,甲1-1発明と同一ではない。

(イ)本件発明と甲1-2発明との対比
甲1-2発明の「ガラス転移温度」が「100℃」である「粒子状重合体」は,その単量体成分から,「熱可塑性ポリマー」であることは明らかであり,甲1-2発明の「アクリロニトリル」,「メタクリル酸メチル」は,それぞれ,本件発明1の「シアノ基を有する単量体」,「(メタ)アクリル酸エステル」に相当するから,本件発明1の「ガラス転移温度が20℃以上である」「共重合体」との事項のうち,ガラス転移温度が100℃である共重合体の点で一致する。
その他は,上記(ア)と同様に判断できるから,本件発明1?5,8?11,13,15,16と甲1-2発明とは,上記(ア)と同様の相違点を有する。
よって,本件発明1?5,8?11,13,15,16は,甲1-2発明と同一ではない。

(ウ)本件発明と甲1-3発明との対比
甲1-3発明の「コア部重合体」の「単量体」である「メタクリル酸メチル」,「アクリロニトリル」は,それぞれ本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル単量体」,「シアノ基を有する単量体」に相当し,甲1-3発明の「コア部重合体」は,本件発明1の「共重合体」に相当し,甲1-3発明の「ガラス転移温度」が「116℃」である「コア部重合体」と,本件発明1の「共重合体のガラス転移温度が20℃以上である」は,共重合体のガラス転移温度が「116℃」の点で一致する。
その他は,上記(ア)と同様に判断できるから,本件発明1?5,8?11,13,15,16と甲1-3発明とは,上記(ア)と同様の相違点を有する。
よって,本件発明1?5,8?11,13,15,16は,甲1-3発明と同一ではない。

ウ 申立人の主張について
(ア)訂正前の本件発明12について
申立人は,訂正前の本件発明12に関し,甲1には,2枚重ね合わせたサンプルを40℃,10g/cm^(2)の加圧下に置いた,プレスしたサンプルを24時間放置した後の接着状態(ブロッキング)を目視で確認する評価方法において,実施例9及び10のセパレータは,セパレータ同士がブロッキングしなかったと記載されている(【0200】,表2)から,剥離強度の数値は記載されていなくとも,同等の剥離強度を満たす蓋然性が高い旨主張している(特許異議申立書23頁1?12行,平成31年 1月11日提出の意見書7頁16?32行)。
訂正前の請求項12に対して,当審は拡大先願に基づく取消理由を通知しておらず,また,本件訂正により請求項12は削除されたものであるが,本件発明との上記相違点と関連するので,以下,検討する。
上記(1)エ(ウ)で検討したとおり,甲1【0200】に記載される耐ブロッキング性の評価は,本件発明における剥離強度の評価と,サンプルの処理温度,処理圧力及び処理時間において条件が異なっている。よって,甲1の実施例において,ブロッキング評価「A」又は「B」が示されていたとしても,本件発明に係る剥離強度の測定とは異なる条件下での評価であるから,このことから直ちに,本件発明に特定される剥離強度と同等である蓋然性が高いということはできない。

(イ)訂正前の本件発明14について
申立人は,訂正前の本件発明14に関し,甲1には,【0011】にセパレータと電極との接着性に優れることが,【0233】,表2の実施例9には電極と多孔膜とのピール強度は5.6N/mであったことが示されており,甲1の実施例9に示されているセパレータは,電極と多孔質膜とのピール強度よりみて,加熱剥離強度が4mN/mm以上である蓋然性が高い旨も主張している(特許異議申立書23頁20?34行)。
訂正前の請求項14に対して,当審は拡大先願に基づく取消理由を通知していないものであるが,以下,検討する。
甲1の実施例9におけるピール強度は,甲1【0199】に記載の方法で測定した,電極とセパレータとのピール強度であり,表2によれば5.6N/mであることが読み取れる。これに対し,本件発明14では,アルミニウム箔とセパレータとの剥離強度が4mN/mm以上であることを特定するものであり,甲1【0199】の測定方法による電極とセパレータとのピール強度が5.6N/mであることをもって,直ちに,本件発明に特定される剥離強度と同等である蓋然性が高いということはできない。よって,本件発明14は甲1発明と同一ではない。

エ 拡大先願についてのまとめ
以上のとおり,本件発明1?5,8?11,13?16は,甲1に記載された発明と同一であるとはいえない。よって,この取消理由は解消した。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
申立人は,上記第4で検討した理由のほか,次の(1)?(4)の理由により,訂正前の請求項1?16に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。申立人が提出した証拠方法は次のとおりである。

甲第2号証:再公表特許WO2011/40474号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2007-59271号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2004-342572号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:再公表特許WO2010/74202号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開2007-35541号公報(以下「甲6」という。)

(1)甲2に基づく新規性
本件特許の訂正前の請求項1,2,8,9,11,13,15,16に係る発明は,甲2に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり,第113条第2号に該当し,取り消されるべきである(特許異議申立書24頁12行?26頁17行)。

(2)甲2に基づく進歩性
本件特許の訂正前の請求項1?16に係る発明は,甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,第113条第2号に該当し,取り消されるべきである(特許異議申立書26頁18行?31頁25行)。

(3)甲4に基づく進歩性
本件特許の訂正前の請求項1?16に係る発明は,甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,第113条第2号に該当し,取り消されるべきである(特許異議申立書31頁26行?36頁13行)。

(4)実施可能要件
本件特許の訂正前の請求項1?16に係る発明は,発明の詳細な説明に当業者が実施できるように記載されたものではないから,特許法第36条第6項第1号の要件を満たしておらず,第113条第4号に該当し,取り消されるべきである(特許異議申立書38頁25行?最下行)。

2 甲2について
甲2には,「二次電池用多孔膜及び二次電池」(発明の名称)に関して,次の記載がある。なお,下線は当審が付した。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔膜用バインダー、及び非導電性粒子を含んでなり、
前記多孔膜用バインダーが、ビニル単量体成分を重合してなるポリマーを内層とし、親水性官能基を有する単量体成分を重合してなるポリマーを外層とする異相構造を有するポリマー粒子である、二次電池用多孔膜。
【請求項2】
前記親水性官能基が、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1記載の二次電池用多孔膜。
【請求項3】
前記外層が、さらに、(メタ)アクリロニトリルの重合単位及び(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を含むポリマーである請求項1又は2に記載の二次電池用多孔膜。
【請求項4】
多孔膜用バインダー、非導電性粒子、及び溶媒を含み、
前記多孔膜用バインダーが、ビニル単量体成分を重合してなるポリマーを内層とし、親水性官能基を有する単量体成分を重合してなるポリマーを外層とする異相構造を有するポリマー粒子である、二次電池多孔膜用スラリー。
【請求項5】
多孔膜用バインダー、非導電性粒子、及び溶媒を含み、前記多孔膜用バインダーが、ビニル単量体成分を重合してなるポリマーを内層とし、親水性官能基を有する単量体成分を重合してなるポリマーを外層とする異相構造を有するポリマー粒子である、二次電池多孔膜用スラリーを基材に塗布する工程、及び前記スラリーが塗布された基材を乾燥する工程を含む、二次電池用多孔膜の製造方法。
【請求項6】
電極合剤層用バインダー及び電極活物質を含んでなる電極合剤層が、集電体に付着してなり、かつ電極合剤層の表面に、請求項1?3のいずれかに記載の多孔膜を有してなる二次電池用電極。
【請求項7】
有機セパレーター上に、請求項1?3のいずれかに記載の多孔膜を有してなる二次電池用セパレーター。
【請求項8】
正極、負極、セパレーター及び電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレーターの少なくともいずれかに、請求項1?3のいずれかに記載の多孔膜を有してなる、二次電池。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔膜に関し、さらに詳しくはリチウムイオン二次電池などに用いられる、高いレート特性を有する多孔膜に関する。また本発明は、かかる多孔膜を有する二次電池に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、リチウムイオン伝導性を維持しながら、強度が向上され、割れが生じにくいリチウムイオン二次電池などの二次電池に用いられる多孔膜を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、無機粒子などの非導電性粒子とともに、特定の構造及び特定の官能基を有するバインダーを使用することにより、非導電性粒子を含むスラリーの分散性や粘度特性を制御することができ、多孔性を十分に制御したまま、多孔膜の均一薄膜塗工が可能となった。その結果、リチウムイオン伝導性を維持しながら、多孔膜強度が改良され、多孔膜の割れが抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。」

「【0018】
(多孔膜用バインダー)
本発明に用いる多孔膜用バインダーは、ビニル単量体成分を重合してなるポリマーを内層とし、親水性官能基を有する単量体成分を重合してなるポリマーを外層とする異相構造を有するポリマー粒子である。
本発明に用いる多孔膜用バインダーは、化学構造が異なる2以上のポリマーの相が異相構造を形成してなるポリマー粒子により構成される。本発明において、異相構造とは、化学構造が異なる2以上のポリマーの相が異相構造を形成してなる粒子において、粒子が、単一の均一相ではなく、互いに異なる2以上の相から構成されることを意味する。
【0019】
本発明において、多孔膜用バインダーが異相構造を有することにより、後述する多孔膜用スラリーの分散性、粒度特性が向上し、スラリーの粘性変化を小さくすることができ、薄膜を均一に塗工することができる。その結果、多孔性を十分に制御したまま、密着性を上げることができ、多孔膜の割れを防止するという優れた効果が得られる。
【0020】
本発明に用いる前記ポリマー粒子の異相構造は、粒子の内層と外層という二つの相を備え、粒子の内層はビニル単量体成分を重合してなるポリマーで構成され、粒子の外層は親水性官能基を有する単量体成分を重合してなるポリマーで構成される。
【0021】
ポリマー粒子を構成する2以上のポリマーの中には、ガラス転移温度(以下、Tgという)が異なる2種のポリマーが含まれることが好ましい。本発明において、ポリマー粒子のガラス転移温度は、室温において多孔膜に柔軟性を与えることができ、多孔膜のロール巻き取り時や捲回時のひび、多孔膜層の欠け等を抑制することができる観点より、粒子の内層を形成するポリマーのガラス転移温度が-60℃以上20℃以下で、外層を形成するポリマーのガラス転移温度が0℃以上であることが好ましく、粒子の内層を形成するポリマーのガラス転移温度が-50℃以上10℃以下で、外層を形成するポリマーのガラス転移温度が0℃以上50℃以下であることがより好ましい。ポリマーのガラス転移温度は、構成する単量体の使用割合などを変更することによって調製可能である。
【0022】
本発明の多孔膜用バインダーは、ビニル単量体成分を重合してなるポリマーを内層とする。
ビニル単量体成分を構成する単量体としては、脂肪族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、アミド基含有(メタ)アクリル単量体、多官能ジ(メタ)アクリル単量体、芳香族ビニル単量体などが例示される。本発明において、アクリル酸およびメタクリル酸のことを(メタ)アクリル酸と、アクリルおよびメタアクリルのことを(メタ)アクリルと、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルのことを(メタ)アクリロニトリルと、アリルおよびメタアリルのことを(メタ)アリルと、アクリロイルおよびメタアクリロイルのことを(メタ)アクリロイルと、それぞれ略記することがある。
【0023】
脂肪族ビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体、アミド基含有(メタ)アクリル単量体、多官能性ジ(メタ)アクリル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が1?5であるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、及びアクリル酸ペンチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、及びメタクリル酸ペンチルなどのメタクリル酸エステル;が挙げられる。
【0024】
アミド基含有(メタ)アクリル単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0025】
多官能性ジ(メタ)アクリル単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。」

「【0030】
本発明の多孔膜用バインダーは、親水性官能基を有する単量体成分を重合してなるポリマーを外層とする。
親水性官能基を有する単量体成分としては、-OH基(水酸基)、-COOH基(カルボキシル基)、-SO_(3)H基(スルホン酸基)、エポキシ基、-PO_(3)H_(2)基、-PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)、及び低級ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも一つの親水性官能基を有する単量体成分が挙げられる。親水性官能基としては、これらの中でも、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましく、スルホン酸基、エポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることがより好ましく、スルホン酸基であることが特に好ましい。外層にスルホン酸基を有する単量体成分を重合したポリマーを使用すると、非導電性粒子の分散安定性に優れ、その結果、多孔膜層の均一薄膜塗工が可能であり、レート特性に優れる。
外層に親水性官能基を存在させること、すなわち、粒子表面近傍に親水性官能基があることで非導電性粒子の表面と相互作用しやすく、非導電性粒子の分散安定化に優れた効果を示す。
【0031】
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3-ブテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、マレイン酸-ジ-2-ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ-4-ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ-2-ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;…(中略)…などが挙げられる。」

「【0038】
本発明においては、外層を構成するポリマーは、親水性官能基を有する単量体の重合単位に加えて、さらに、(メタ)アクリロニトリルの重合単位及び(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を含むポリマーであることが好ましい。
外層を構成するポリマーが、さらに、(メタ)アクリロニトリルの重合単位及び(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を含むことにより、多孔膜スラリーの分散性、粘性変化、および多孔膜の柔軟性など特性全体のバランスに優れた効果を示す。
【0039】
(メタ)アクリロニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。中でもアクリロニトリルが好ましい。(メタ)アクリロニトリルの重合単位の含有割合は、重合時のアクリロニトリル量として単量体全量100重量%に対して、好ましくは3?30重量%の範囲である。(メタ)アクリロニトリルの重合単位の含有割合が、前記範囲にあることで、ポリマーの運動性を適度に保ち、非導電性粒子の分散安定化及び多孔膜の柔軟性に優れた効果を示す。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が1?5であるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、及びアクリル酸ペンチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、及びメタクリル酸ペンチルなどのメタクリル酸エステル;が挙げられる。中でもアクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルの重合単位の含有割合は、重合時の(メタ)アクリル酸エステル量として単量体全量100重量%に対して好ましくは70?95重量%の範囲である。(メタ)アクリル酸エステルの重合単位の含有割合が前記範囲にあることで、ポリマーの運動性を適度に保ち、非導電性粒子の分散安定化及び多孔膜の柔軟性に優れた効果を示す。
【0041】
外層を構成するポリマーは、親水性官能基を有する単量体成分、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)アクリル酸エステル以外に、これらと共重合可能な単量体の重合単位を含有していてもよい。共重合可能な単量体としては、内層で例示した共重合可能な単量体を使用することができる。
親水性官能基を有する単量体成分、(メタ)アクリロニトリルの重合単位、(メタ)アクリル酸エステルの重合単位以外の含有割合は、全重合単位の好ましくは0?10重量%、より好ましくは0?5重量%である。
これらの単量体は、1種単独でまたは2種以上を併せて使用することができる。」

「【0094】
(二次電池用セパレーター)
本発明の二次電池用セパレーターは、有機セパレーター上に、前記多孔膜を有してなる。
【0095】
有機セパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミド樹脂を含んでなるセパレーターなどの公知のものが用いられる。
本発明に用いる有機セパレーターとしては、電子伝導性がなくイオン伝導性があり、有機溶媒の耐性が高い、孔径の微細な多孔質膜が用いられ、例えばポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜またはポリオレフィン系の繊維を織ったもの、またはその不織布、絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、前述の多孔膜用スラリーの塗工性が優れ、セパレーター全体の膜厚を薄くし電池内の活物質比率を上げて体積あたりの容量を上げることができるため、ポリオレフィン系の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
有機セパレーターの厚さは、通常0.5?40μm、好ましくは1?30μm、更に好ましくは1?10μmである。この範囲であると電池内でのセパレーターによる抵抗が小さくなり、また有機セパレーターへの塗工時の作業性が良い。」

「【0104】
セパレーターとしては、上述の二次電池用セパレーターで例示された有機セパレーターが挙げられる。正極及び負極としては、前記二次電池用電極で例示された結着剤及び電極活物質を含んでなる電極合剤層が集電体に付着してなるものが挙げられる。
本発明の二次電池において、多孔膜が積層されてなる正極や負極としては、前記二次電池用電極を正極や負極として用いればよく、多孔膜が積層されてなるセパレーターとしては、前記二次電池用セパレーターをセパレーターとして用いればよい。
【0105】
リチウムイオン二次電池の具体的な製造方法としては、正極と負極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。本発明の多孔膜は正極又は負極、セパレーターのいずれかに形成されてなる。また独立で多孔膜のみでの積層も可能である。必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。」

「【0109】
<電極特性:柔軟性>
電極またはセパレーターを幅3cm×長さ9cmの矩形に切って試験片とする。多孔膜用スラリーを塗工していない側の面を下にして机上に置き、長さ方向の中央(端部から2.5cmの位置)、塗工していない側の面に直径1mmのステンレス棒を短手方向に横たえて設置する。このステンレス棒を中心にして試験片を多孔膜層が外側になるように180度折り曲げる。10枚の試験片について試験し、各試験片の多孔膜層の折り曲げた部分について、ひび割れまたは剥がれの有無を観察し、下記の基準により判定する。ひび割れまたは剥がれが少ないほど、多孔膜が柔軟性、すなわち伸強度に優れることを示す。
A:10枚中全てにひび割れまたは剥がれがみられない
B:10枚中1?3枚にひび割れまたは剥がれがみられる
C:10枚中4?9枚にひび割れまたは剥がれがみられる
D:10枚中全てにひび割れまたは剥がれがみられる 」

「【0112】
(実施例1)
<ポリマーの作製>
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水300部、アクリル酸n-ブチル48.5部、アクリル酸エチル41.5部、アクリロニトリル5部、スチレン5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20部および分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン0.05部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れ、十分攪拌した後、80℃に加温し重合を開始した。固形分濃度から求めた重合転化率がほぼ98%となった時、さらにイオン交換水200部、アクリル酸n-ブチル5部、アクリル酸エチル76部、アクリロニトリル16.5部、グリシジルメタクリレート2.0部、2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸0.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10部および分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン0.05部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れ、十分に撹拌した後、70℃に加温して重合し、重合体粒子A水分散液を得た。固形分濃度から求めた重合転化率はほぼ99%であった。
得られた重合体粒子Aは、内層と外層とからなる異相構造を有するポリマー粒子であることが確認された。また、この重合体粒子Aの内層のガラス転移温度は-20℃、外層のガラス転移温度は0℃であった。重合体粒子Aの内層と外層の割合は、50:50であった。また、重合体粒子Aの個数平均粒子径は、300nmであった。重合体粒子Aの外層のエポキシ基及びスルホン酸基の合計含有割合は単量体(グリシジルメタクリレート、2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸)の割合で2.5%、外層の(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステルの重合単位の割合は97.5%、内層のビニル単量体成分の含有割合は単量体の割合で100%であった。結果を表1に示す。
【0113】
<多孔膜用スラリーの作成>
非導電性粒子(酸化アルミニウム、平均粒径0.3μm、鉄含有量<20ppm)と、重合体Aとを、100:2.5の含有割合(固形分相当比)となるように混合し、更に水を固形分濃度が30%になるように混合させてビーズミルを用いて分散させ多孔膜用スラリーを調製した。得られた多孔膜用スラリーの安定性及び分散性を測定した。結果を表2に示す。
【0114】
<負極用電極組成物および負極の製造>
負極活物質として粒子径20μm、比表面積4.2m^(2)/gのグラファイト98部と、負極合剤層用バインダーとしてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を固形分相当で5部を混合し、更にN-メチルピロリドンを加えてプラネタリーミキサーで混合してスラリー状の負極用電極組成物(負極合剤層形成用スラリー)を調製した。この負極用電極組成物を厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、110℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ60μmの負極合剤層を有する負極を得た。
【0115】
<正極用電極組成物および正極の製造>
正極活物質としてスピネル構造を有するマンガン酸リチウム95部に、正極合剤層用バインダーとしてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を固形分相当で3部を加え、さらに、アセチレンブラック2部、N-メチルピロリドン20部を加えて、プラネタリーミキサーで混合してスラリー状の正極用電極組成物(正極合剤層形成用スラリー)を調製した。この正極用電極組成物を厚さ18μmのアルミニウム箔に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ70μmの正極合剤層を有する正極を得た。
【0116】
<多孔膜付電極の作成>
前記多孔膜用スラリーを、負極に負極活物質層が完全に覆われるように、厚さ3μmで塗工し、次いで110℃で20分間乾燥することにより、多孔膜を形成し多孔膜付電極を作製した。作製した多孔膜付電極の柔軟性を評価した。結果を表2に示す。
【0117】
<電池の作製>
次いで、得られた正極を直径13mm、負極を14mmφの円形に切り抜いた。正極電極の正極活物質層面側に直径18mm、厚さ25μmの円形ポリプロピレン製多孔膜からなるセパレーターを介在させて、互いに電極活物質層が対向し、外装容器底面に正極のアルミニウム箔が接触するように配置し、更に負極の銅箔上にエキスパンドメタルを入れ、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。この容器中に電解液(EC/DEC=1/2、1M LiPF_(6))を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのリチウムイオン二次電池を製造した(コインセルCR2032)。得られた電池についてレート特性及び高温サイクル特性を測定した。結果を表2に示す。」

「【0124】
(実施例5)
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水300部、アクリル酸n-ブチル55部、アクリル酸エチル30部、アクリロニトリル14部、グリシジルメタクリレート1部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20部および分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン0.05部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れ、十分攪拌した後、80℃に加温し重合した。固形分濃度から求めた重合転化率がほぼ98%となった時、さらにイオン交換水200部、アクリル酸エチル69.5部、アクリロニトリル30部、メタクリル酸ヒドロキシエチル0.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10部および分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン0.05部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れ、十分に撹拌した後、70℃に加温して重合し、重合体粒子E水分散液を得た。固形分濃度から求めた重合転化率はほぼ99%であった。得られた重合体粒子Eは、内層と外層とからなる異相構造を有するポリマー粒子であることが確認された。また、この重合体粒子Eの内層のガラス転移温度は-10℃、外層のガラス転移温度は15℃であった。重合体粒子Eの内層と外層の割合は、50:50であった。また、重合体粒子Eの個数平均粒子径は、300nmであった。重合体粒子Eの外層の水酸基の含有割合は単量体(メタクリル酸ヒドロキシエチル)の割合で0.5%、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステルの重合単位の割合は99.5%、内層のビニル単量体成分の含有割合は単量体の割合で100%であった。結果を表1に示す。
【0125】
重合体粒子Aのかわりに重合体粒子Eを用いたこと以外は、実施例1と同様に、多孔膜用スラリー、多孔膜付電極及び電池を作製した。そして、実施例1と同様に、多孔膜用スラリーの安定性及び分散性、多孔膜付電極の柔軟性、電池のレート特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
【0126】
(実施例6)
<ポリマーの作製>
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水300部、アクリル酸n-ブチル48.5部、アクリル酸エチル41.5部、アクリロニトリル5部、スチレン5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20部および分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン0.05部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れ、十分攪拌した後、80℃に加温し重合した。固形分濃度から求めた重合転化率がほぼ98%となった時、さらにイオン交換水200部、アクリル酸n-ブチル5部、アクリル酸エチル76部、アクリロニトリル16.5部、グリシジルメタクリレート2部、メタクリル酸ヒドロキシエチル0.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10部および分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン0.05部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れ、十分に撹拌した後、70℃に加温して重合し、重合体粒子F水分散液を得た。固形分濃度から求めた重合転化率はほぼ99%であった。得られた重合体粒子Fは、内層と外層とからなる異相構造を有するポリマー粒子であることが確認された。
また、この重合体粒子Fの内層のガラス転移温度は-20℃、外層のガラス転移温度は0℃であった。重合体粒子Fの内層と外層の割合は、50:50であった。また、重合体粒子Fの個数平均粒子径は、300nmであった。重合体粒子Fの外層のエポキシ基及び水酸基の合計含有割合は単量体(グリシジルメタクリレート、メタクリル酸ヒドロキシエチル)の割合で2.5%、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステルの重合単位の割合は97.5%、内層のビニル単量体成分の含有割合は単量体の割合で100%であった。結果を表1に示す。
【0127】
重合体粒子Aのかわりに重合体粒子Fを用いたこと以外は、実施例1と同様に、多孔膜用スラリーを作製した。多孔膜用スラリーの安定性及び分散性を評価した。結果を表2に示す。
【0128】
<多孔膜付セパレーターの作製>
前記多孔膜用スラリーを、幅65mm、長さ500mm、厚さ25μmの乾式法により製造された単層のポリプロピレン製セパレーター(気孔率55%)上に乾燥後の厚さが3μmになるようにワイヤーバーを用いて塗工し、次いで80℃で30分間乾燥することにより、多孔膜を形成し多孔膜付セパレーターを得た。得られた多孔膜付セパレーターの柔軟性を評価した。その結果を表2に示す。」

「【0140】

【0141】



3 甲3について
甲3には,「電池用セパレータのための接着剤担持多孔質フィルムとそれを用いる電池の製造方法」(発明の名称)に関して,次の記載がある。なお,下線は当審が付した。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋構造を有すると共に、反応性官能基を有し、5倍以上の膨潤度と5?100%のゲル分率を有する反応性ポリマー粒子を相互に融着させて形成した接着剤層を基材多孔質フィルムに担持させてなることを特徴とする電池用セパレータのための接着剤担持多孔質フイルム。
【請求項2】
反応性官能基がヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミノ基である請求項1に記載の接着剤担持多孔質フイルム。
【請求項3】
反応性ポリマーのガラス転移温度が0?100℃の範囲にある請求項1に記載の接着剤担持多孔質フイルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の接着剤担持多孔質フイルムの接着剤担持面に電極を圧着して電極/多孔質フィルム積層体を形成し、この積層体を電池容器に仕込んだ後、この積層体を形成する反応性ポリマーの反応性官能基に対して反応性を有する多官能架橋剤を溶解させた電解液を上記電池容器に注入し、反応性ポリマーを更に架橋させて、電極を多孔質フィルムに接着することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項5】
反応性官能基がヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミノ基であり、多官能架橋剤が多官能イソシアネートである請求項4に記載の電池の製造方法。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の電池の製造における上述したような問題を解決するためになされたものであって、電池の製造において有用であって、特性にすぐれると共に耐熱性にすぐれる電池を容易に製造することができるのみならず、保存性や耐ブロッキング性にすぐれる電池用セパレータのための接着剤担持多孔質フイルムを提供することを目的とし、特に、電池の製造に際して、これに電極を圧着し、仮接着して、電極/多孔質フィルム(セパレータ)積層体とすれば、電池を効率よく製造することができ、しかも、電解液中、接着剤担持多孔質フイルム中の反応性ポリマーを膨潤させつつ、電解液に溶解させた多官能架橋剤の作用によって、反応性ポリマーを反応させ、更に架橋させて、多孔質フィルム(セパレータ)と電極を接着させることによって、放電負荷特性にすぐれ、更に、セパレータの電極との接着性や耐熱性にもすぐれる電池を得ることができる電池用セパレータのための接着剤担持多孔質フイルムを提供することを目的とする。
【0008】
更に、本発明は、そのような電池用セパレータのための接着剤担持多孔質フイルムを用いる電池の製造方法を提供することを目的とする。」

「【0010】
更に、本発明によれば、上記接着剤担持多孔質フイルムの接着剤担持面に電極を圧着して電極/多孔質フィルム積層体を形成し、この積層体を電池容器に仕込んだ後、この積層体を形成する反応性ポリマーの反応性官能基に対して反応性を有する多官能架橋剤を溶解させた電解液を上記電池容器に注入し、反応性ポリマーを更に架橋させて、電極を多孔質フィルムに接着することを特徴とする電池の製造方法が提供される。」

「【0013】
また、本発明による接着剤担持多孔質フィルムは、耐ブロッキング性にもすぐれるので、保管時にその間にリリースフィルムを介在させる必要がない利点も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、基材多孔質フィルムは、電池の製造後には、セパレータとして機能するものであるので、その厚さは、通常、3?100μmの範囲であり、特に、10?80μmの範囲であることが好ましい。厚さが3μmよりも薄い場合には、強度が不十分であって、電池においてセパレータとして用いた場合に内部短絡を起こす虞があり、一方、100μmを越える場合には、電極間距離が大きすぎて、電池の内部抵抗が過大となる虞がある。更に、電極間の絶縁性と電解質塩イオンの移動性という点から、基材多孔質フィルムは、平均孔径が0.01?5μm程度の細孔を有し、空孔率が20?80%程度のものが好ましい。
【0015】
本発明において、基材多孔質フィルムは、上述した膜厚や多孔質特性を有するものであれば特に限定されないが、更に、耐溶剤性や耐酸化還元性を考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質フィルムが好ましい。なかでも、加熱されたときに樹脂が溶融して細孔が閉塞する性質を有し、電池に所謂シャットダウン機能を有せしめることができる点から、基材多孔質フィルムとしては、ポリエチレンからなるものが特に好適である。尚、ここに、ポリエチレンとは、エチレンのホモポリマーのみならず、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどのα-オレフィンとエチレンとのコポリマーを含むものとする。」

「【0017】
本発明による電池用セパレータのための接着剤担持多孔質フイルムは、架橋構造を有すると共に、反応性官能基を有し、5倍以上の膨潤度と5?100%のゲル分率を有する反応性ポリマー粒子を相互に融着させて形成した接着剤層を上述したような基材多孔質フィルムに担持させてなるものである。」

「【0025】
また、反応性官能基を有するモノマーや上記多官能モノマーに共重合させる他のモノマーは、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ) アクリル系モノマーが好ましく用いられる。この(メタ) アクリル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ) アクリレート、プロピル(メタ) アクリレート、ブチル(メタ) アクリレート、イソオクチル(メタ) アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ) アクリレート、ドデシル(メタ) アクリレート等のアルキル(メタ) アクリレートを例示することができ、ここに、アルキル基は、炭素原子数が1?18程度のものが好ましい。
【0026】
本発明によれば、得られる反応性ポリマーのガラス転移温度を高めるために、必要に応じて、このような(メタ) アクリル系モノマーとして、(メタ) アクリル酸のイソボルニル、ジシクロペンタニル、テトラヒドロフルフリル、ベンジル、シクロヘキシルエステル等や、また、イミド基等の高極性基を有するイミド(メタ) アクリレート、ジエチル(メタ) アクリルアミド、(メタ) アクリロイルモルフォリン等の(メタ) アクリルアミド基やマレイミド基を有するモノマー等、そのホモポリマーのガラス転移温度が常温、好ましくは、40℃以上のものを用いることができる。
【0027】
また、必要に応じて、ニトリル基を有する共重合性モノマー成分、好ましくは、(メタ) アクリロニトリル成分や、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン等の炭化水素やヘテロ原子を含む基を有するビニル系モノマーも、反応性官能基を有するモノマーに共重合させる他のモノマーとして用いることができる。」

「【0040】
更に、本発明によれば、反応性ポリマーのガラス転移温度は、接着剤担持多孔質フィルムに電極を圧着し、仮接着させる際のハンドリングの容易性を考慮すれば、0℃以上であることが好ましく、特に、30℃以上であることが好ましい。他方、反応性ポリマーからなる接着剤層を基材多孔質フィルムに容易に転写することができ、また、接着剤担持多孔質フィルムに電極を圧着、仮接着させるときの多孔質フィルムへの有害な影響がないように、100℃以下であることが好ましく、特に、90℃以下であることが好ましい。」

「【0044】
また、反応性ポリマーからなる接着剤層を基材多孔質フィルム上に形成し、担持させるに際して、接着剤層を基材多孔質フィルムの全面に形成し、担持させてもよく、また、基材多孔質フィルム上に、例えぱ、線状、斑点状、格子目状、縞状、亀甲模様状等のように、部分的に形成し、担持させてもよい。」

「【0070】
実施例1
(反応性ポリマー粒子の調製)
アクリル酸メチル 50 重量部
アクリル酸イソボルニル 40 重量部
アクリロニトリル 10 重量部
アクリル酸4-ヒドロキシブチル 0.5重量部
ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル 3 重量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 0.3重量部
水溶性アゾ化合物(2,2’-アゾビス〔2-(2-
イミダゾリン-2-イル)プロパン 0.1重量部
イオン交換水 200 重量部
【0071】
窒素ガス雰囲気下、上記配合物を一括して反応容器に仕込み、温度40℃にてエマルション重合を行った後、濾過し、凝集物を除いて、反応性ポリマー粒子の水分散液を得た。この水分散液を半透膜(ヴィスキングチューブ(孔径5nm))にて流水で7日間抽出することによって、水溶性物を分離除去して、反応性ポリマー粒子の水分散液を得た。このようにして得られた反応性ポリマー粒子の平均粒子径、膨潤度、ゲル分率及びガラス転移温度を表1に示す。
【0072】
(接着剤担持多孔質フィルムの調製)
上記反応性ポリマー粒子の水分散液をワイヤーバー(ワイヤー径0.2mm)を用いてポリプロピレンフィルム上に平行な多数の線状に塗布し、80℃に加熱して、接着剤層を筋状に形成した。次いで、この接着剤層をポリエチレン製基材多孔質フィルム(厚さ25μm、空孔率50%、平均孔径0.1μm)の表裏両面に転写して、本発明による接着剤担持多孔質フイルムを得た。この接着剤担持多孔質フィルムについて、接着剤層の面積担持率、接着剤層の平均厚み、耐ブロッキング性及び調製直後の電極との接着性を表1に示す。
【0073】
また、この接着剤担持多孔質フィルムの保存性、即ち、前述したように、接着剤担持多孔質フイルムを調製した直後、40℃にて7日間保存した後、又は40℃にて30日間保存した後のそれぞれの接着剤担持多孔質フイルムについて、電極との接着性と共に、得られた電池について、放電負荷特性と耐熱性を調べた。結果を表2に示す。
【0074】
(負極/接着剤担持多孔質フィルム/正極積層体の作製)
後述する電池の製造に用いる2016サイズのコイン電池用缶に適応するように、上記接着剤担持多孔質フィルムをハンドカッターにて裁断し、その表面に正極シートを沿わせると共に、裏面に負極シートを沿わせた後、温度80℃、圧力5kg/cm^(2) で5分間加熱、加圧して、正負の電極シートを接着剤担持多孔質フィルムに圧着して、電極シートを接着剤担持多孔質フィルムに仮接着しなる負極/接着剤担持多孔質フィルム/正極積層体(以下、電極/多孔質フィルム積層体ということがある。)を作製した。
【0075】
(電池の製造及びその評価)
アルゴンガス置換したグローブボックス中、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶媒(容量比1/2)1.2モル/L濃度となるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6) を溶解させて電解液を調製した。トリメチロールプロパン1モル部にトルエンジイソシアネート3モル部を付加させた3官能イソシアネート(トルエンジイソシアネートアダクト体)1重量部を上記電解液100重量部に溶解させて、多官能架橋剤を含む電解液を得た。上記3官能イソシアネートの量は反応性ポリマー粒子100重量部に対して約10重量部に相当する。
【0076】
上記電極/多孔質フィルム積層体を正負電極板を兼ねる2016サイズのコイン電池用缶に仕込み、上記電解液をこのコイン電池用缶内に注入した後、電池用缶を封口して、仕掛品を製作した。この後、この仕掛品を温度50℃の恒温室中に7日間投入して、上記電極/多孔質フィルム積層体中の多孔質フィルムに担持させた接着剤を上記3官能イソシアネートと反応、架橋させて、正負電極シートを接着剤多孔質フィルム(セパレータ)に接合させ、かくして、電極/接着剤担持多孔質フィルム(セパレータ)接合体を有するコイン型リチウムイオン二次電池を得た。
【0077】
このようにして得られた電池について、放電負荷特性、電池の膨れ性及び耐熱性を表1に示す。」

「【0091】

【0092】



4 甲4について
甲4には,「電池用セパレータのための部分架橋接着剤担持多孔質フィルムとその利用」(発明の名称)に関して,次の記載がある。なお,下線は当審が付した。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に官能基を有し、この官能基に対して反応性を有する多官能化合物と反応することによって架橋し得る反応性ポリマーを用意し、これに多官能化合物を反応させ、一部、架橋させてなる部分架橋接着剤を基材多孔質フィルムに担持させてなることを特徴とする、電池用セパレータのための部分架橋接着剤担持多孔質フィルム。
【請求項2】
部分架橋接着剤が活性水素をもつ官能基を有する反応性ポリマーに多官能イソシアネート化合物を反応させ、一部、架橋させてなるものである請求項1に記載の部分架橋接着剤担持多孔質フィルム。
【請求項3】
部分架橋接着剤が活性水素をもつ官能基を有する反応性ポリマーに多官能エポキシ化合物を反応させ、一部、架橋させてなるものである請求項1に記載の部分架橋接着剤担持多孔質フィルム。
【請求項4】
活性水素をもつ官能基がヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基である請求項2又は3に記載の部分架橋接着剤担持多孔質フィルム。
【請求項5】
部分架橋接着剤が5?99%の範囲のゲル分率を有する請求項1に記載の部分架橋接着剤担持多孔質フィルム。
【請求項6】
部分架橋接着剤を基材多孔質フィルムに担持率5?95%の範囲で担持させてなる請求項1に記載の部分架橋接着剤担持多孔質フィルム。
【請求項7】
反応性ポリマーが-30℃から100℃の間のガラス転移温度を有するものである請求項1から4のいずれかに記載の部分架橋接着剤担持多孔質フィルム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の部分架橋接着剤担持多孔質フィルムに電極を積層し、圧着してなる電極/多孔質フィルム積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の電極/多孔質フィルム積層体中の部分架橋接着剤を反応性ポリマー中の未反応の官能基と多官能化合物との反応によって更に架橋させて、電極を多孔質フィルムに接着してなる電極/多孔質フィルム接合体。
【請求項10】
多孔質フィルムが150℃で1時間加熱した後の面積熱収縮率が20%以下である請求項9に記載の電極/多孔質フィルム接合体。
【請求項11】
分子内に官能基を有し、この官能基に対して反応性を有する多官能化合物と反応することによって架橋し得る反応性ポリマーを用意し、これに上記多官能化合物を反応させ、一部、架橋させてなる部分架橋接着剤を基材多孔質フィルムに担持させ、このようにして得られた部分架橋接着剤担持多孔質フィルムに電極を積層し、圧着して、電極/多孔質フィルム積層体とし、この電極/多孔質フィルム積層体を電池容器内に仕込んだ後、上記多官能化合物を含む電解液を上記電池容器内に注入し、加熱して、多孔質フィルムに担持させた部分架橋接着剤をその反応性ポリマー中の未反応の前記官能基を上記多官能化合物と反応させ、更に架橋させて、電極を多孔質フィルムに接着して、電極/多孔質フィルム接合体を形成すると共に、この電極/多孔質フィルム接合体における多孔質フィルムをセパレータとして有する電池を得ることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項12】
分子内に官能基を有し、この官能基に対して反応性を有する多官能化合物と反応することによって架橋し得る反応性ポリマーを用意し、これに上記多官能化合物を反応させて得られる接着剤にて多孔質フィルムに電極が接着された電極/多孔質フィルム接合体を電極/セパレータ接合体として有する電池。」

「【0020】
本発明によれば、上記反応性ポリマーは、通常、ガラス転移温度が-30℃から100℃の範囲にあり、好ましくは、0℃から80℃の範囲にある。即ち、本発明による部分架橋接着剤担持多孔質フィルムは、上記ガラス転移温度を有する反応性ポリマーを一部、架橋させて部分架橋接着剤とし、これを担持させてなるものである。本発明によれば、このような部分架橋接着剤担持多孔質フィルムを用いるとき、必要に応じて、部分架橋接着剤を適当な温度に加熱した後、電極を多孔質フィルムに圧着することによって、電極を容易に仮接着することができる。
【0021】
更に、本発明によれば、特に、ガラス転移温度が常温以上である反応性ポリマーから得られる部分架橋接着剤を担持させた多孔質フィルムは、常温においては、そのような部分架橋接着剤が粘着性をもたないので、部分架橋接着剤担持多孔質フィルムを重ねたり、捲回したりする際にも、ブロッキングを起こさない。また、例えば、部分架橋接着剤を担持させた多孔質フィルムを捲回機に案内し、ここで電極に積層して積層体を得る際にも、上記多孔質フィルムがロールガイドに粘着して、ロールガイドに取られるようなことがない。」

「【0027】
他方、官能基をもたない共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリルモノマーのほか、種々のビニルモノマー、例えば、スチレン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のように、アルキル基における炭素原子数が1?12のアルキルエステルが好ましく用いられる。
【0029】
上記のほか、例えば、(メタ)アクリル酸のイソボニルエステル、ジシクロペンテニルエステル、テトラヒドロフルフリルエステル等や、また、分子中にベンジル基やシクロヘキシル基のような環状炭化水素基やマレイミド基を有する(メタ)アクリル酸エステル、イミド基のような高極性基を有するイミド(メタ)アクリレート等、そのホモポリマーのガラス転移温度が常温(23℃)以上である(メタ)アクリル酸エステルは、得られる反応性ポリマーのガラス転移温度を高める必要があるときに好適に用いられる。」

「【0031】
しかし、本発明において、反応性ポリマーは、上記に限られるものではなく、反応性ポリマーの有する官能基、例えば、前述したイソシアネート基やエポキシ基と反応し得る官能基、例えば、活性水素を有するポリマーであればよく、例えば、イソシアネート基やエポキシ基と反応し得る官能基を有するポリオレフィン系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー等も用いることができる。更に、本発明によれば、分子中にヒドロキシル基を有するアクリル変性フッ素樹脂(例えば、セントラル硝子(株)製セフラルコートFG730B、ワニスとして入手することができる。)も、反応性ポリマーとして好適に用いることができる。」

「【0033】
上述したような反応性ポリマーは、例えば、べンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチルのような溶剤中で所要のモノマーを共重合させることによって、ポリマー溶液として得ることができる。他方、エマルジョン重合法によれば、反応性ポリマーの水分散液を得ることができるので、これよりポリマーを分離、乾燥させた後、上述したような溶剤に溶解させてポリマー溶液として用いる。尚、エマルジョン法によるときは、前述したモノマーに加えて、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレートのような多官能性架橋性モノマーを1重量%以下の割合で用いてもよい。」

「【0042】
このように、本発明に従って、反応性ポリマーに多官能化合物を反応させて、その一部を反応、架橋させることによって得られる反応生成物、即ち、部分架橋接着剤は、これを多孔質フィルムに担持させ、このような部分架橋接着剤担持多孔質フィルムに、好ましくは、加熱下に、電極を圧着すれば、電極を多孔質フィルムに容易に仮接着して貼り合わせることができ、かくして、電極/多孔質フィルム積層体を得ることができる。」

「【0046】
更に、本発明によれば、基材多孔質フィルムに反応性ポリマーと多官能化合物とからなる架橋性接着剤を塗布する際に、部分的に、即ち、例えば、筋状、斑点状、格子目状、縞状、亀甲模様状等に部分的に塗布するのが好ましく、特に、接着剤を塗布する基材多孔質フィルムの表面の面積の5?95%の範囲で上記架橋性接着剤を塗布し、反応性ポリマーを一部、架橋させることによって、電極と多孔質フィルム(従って、セパレータ)との間に強固な接着を得ると共に、そのような電極/セパレータ接合体を用いることによって、すぐれた特性を有する電池を得ることができる。」

「【0062】
参考例1
(反応性ポリマーの調製)
N,N-ジメチルアクリルアミド45重量部、ブチルアクリレート38重量部、アクリロニトリル15重量部及び2-ヒドロキシエチルアクリレート2重量部をアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部と共に酢酸エチル150重量部に溶解させてなるモノマー混合物溶液を攪拌機と窒素導入管とコンデンサを備えた四つ口フラスコに仕込み、攪拌下にフラスコ内を窒素置換した。次いで、温水浴中、攪拌しながら、60℃で24時間重合を行い、更に、75℃に昇温して、この温度で4時間重合を行った後、酢酸エチルを加えて、濃度25重量%のアクリルポリマー接着剤溶液を得た。この反応性ポリマーのガラス転移温度は48℃であった。
【0063】
反応性ポリマーのガラス転移温度は、次のようにして測定した(以下、同じ)。即ち、反応性ポリマーの溶液を剥離紙上にキャスティングし、乾燥させた後、厚さ0.2?0.5mm、幅5mmのシートを得、このシートをチャック間距離10mmとし、セイコー電子工業(株)製DSM120を用いて、曲げモード10Hzで貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)を測定し、tanδ(E”/E’)のピーク温度をガラス転移温度とした。
【0064】
参考例2
(反応性ポリマーの調製)
参考例1において、N-アクリロイルモルホリン35重量部、ブチルアクリレート48重量部、アクリロニトリル15重量部及び2-ヒドロキシエチルアクリレート2重量部をアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部と共に酢酸エチル150重量部に溶解させてなるモノマー混合物溶液を用いた以外は、参考例1と同様にして、反応性ポリマーの濃度25重量%の溶液を得た。この反応性ポリマーのガラス転移温度は42℃であった。
【0065】
(反応性ポリマーの調製)
ブチルアクリレート41重量部、メチルメタクリレート41重量部、アクリロニトリル15重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート2重量部、ラウリルメルカプタン0.1重量部及びノニオン界面活性剤3重量部を用いて、常法に従ってエマルジョン重合を行った。得られた反応性ポリマーの水分散液に10%塩酸を加えて、反応性ポリマーを沈殿させ、これを取り出して、十分に水洗した後、減圧乾燥した。このようにして得られた反応性ポリマーを酢酸エチルに溶解させて、25重量%濃度の反応性ポリマーの溶液を得た。この反応性ポリマーのガラス転移温度は34℃であった。
【0066】
参考例4
(反応性ポリマーの調製)
ブチルアクリレート41重量部、メチルメタクリレート41重量部、アクリロニトリル15重量部、メタクリル酸3重量部、ラウリルメルカプタン0.1重量部及びアニオン界面活性剤3重量部を用いて、常法に従って水中でエマルジョン重合を行った。得られた反応性ポリマーの水分散液に10%塩酸を加えて、反応性ポリマーを沈殿させ、これを取り出して、十分に水洗した後、減圧乾燥した。このようにして得たポリマーを酢酸エチルに溶解させて、25重量%濃度の反応性ポリマーの溶液を得た。この反応性ポリマーのガラス転移温度は36℃であった。
【0067】
参考例5
N,N-ジエチルアクリルアミド65重量部、ブチルアクリレート32重量部及び4-ヒドロキシブチルアクリレート3重量部をアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部と共に酢酸エチル150gに溶解させてなるモノマー混合物溶液を用いて、参考例1と同様にして、濃度25重量%の反応性ポリマーの溶液を得た。この反応性ポリマーのガラス転移点は36℃であった。
【0068】
参考例6
(反応性ポリマーの調製)
アクリロニトリル10重量部、メタクリル酸5重量部、ブチルアクリレート30重量部、エチルアクリレート60重量部、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル3重量部、n-ドデシルメルカプタン0.08重量部、過硫酸カリウム0.3重量部及びイオン交換水300重量部を用いてエマルジョン重合を行って、反応性ポリマーの水分散液を得た。この反応性ポリマーの水分散液に10%塩酸を加えて、反応性ポリマーを沈殿させ、取り出して、十分に水洗した後、減圧乾燥させた。この反応性ポリマーの重量平均分子量は約85万であり、ガラス転移温度は-13℃であった。このようにして得られた反応性ポリマーをトルエン/メチルエチルケトン(重量比75/25)混合溶剤に溶解させて、上記反応性ポリマーの7%濃度の溶液を調製した。
【0069】
参考例7
アクリロニトリル40重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート2重量部、メチルメタクリレート10重量部、2-エチルヘキシルアクリレート50重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部及びトルエン300重量部を用いて、常法に従って、溶液重合を行って、反応性ポリマーのトルエン溶液を得た。この反応性ポリマーの重量平均分子量は約30万であり、ガラス転移温度は5℃であった。
【0070】
実施例1
(部分架橋接着剤担持多孔質フィルムの調製)
ヘキサメチレンジイソシアネート3モル部をトリメチロールプロパン1モル部に付加させてなる3官能イソシアネート(以下、単に、3官能イソシアネートという。)0.8gを参考例1で得た反応性ポリマーの溶液100gに加えて、架橋性接着剤の溶液とした。この架橋性接着剤の溶液を溝付きバー(溝幅0.1mm、深さ0.03mm、溝間の間隔0.2mm)を用いて、延伸ポリプロピレンフィルムからなる剥離性フィルム上に筋状に塗布し、50℃で1分間乾燥して、上記架橋性接着剤を筋状に部分塗布した剥離性フィルムを得た。
【0071】
次いで、直ちにこのフィルムの架橋性接着剤の塗布面をポリエチレン樹脂製多孔質フィルム(厚さ25μm、空孔率50%、平均孔径0.1μm、以下、同じ。)の表裏面に貼り合わせて、上記架橋性接着剤をポリエチレン樹脂製多孔質フィルムの表裏面にそれぞれ担持率60%にて筋状に転写した後、50℃の恒温器中に7日間投入して、架橋性接着剤中の反応性ポリマーを一部、架橋させ、かくして、ゲル分率56%の部分架橋接着剤を担持させた多孔質フィルムを得た。
【0072】
(電極の調製)
平均粒径15μmのコバルト酸リチウム(LiCoO_(2))と黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデン樹脂を重量比85:10:5で混合し、これをN-メチル-2-ピロリドンに加えて、固形分濃度15重量%のスラリーを調製した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の表面に厚み200μmに塗布した後、80℃で1時間乾燥させた。その後、このアルミニウム箔の裏面にも、同様に、上記スラリーを厚み200μmに塗布し、120℃で2時間乾燥させた後、ロールプレスを通して、厚み200μmの正極シートを調製した。
【0073】
黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデン樹脂を重量比95:5で混合し、これをN-メチル-2-ピロリドンに加えて、固形分濃度15重量%のスラリーを調製した。このスラリーを厚さ20μmの銅箔の表面に厚み200μmに塗布した後、80℃で1時間乾燥させた。その後、この銅箔の裏面にも、同様に、上記スラリーを厚み200μmに塗布し、120℃で2時間乾燥させた後、ロールプレスを通して、厚み200μmの負極シートを調製した。
【0074】
(負極/セパレータ/正極積層体の調製)
上記部分架橋接着剤担持ポリエチレン樹脂製多孔質フィルムの表面に上記正極シートを沿わせると共に、裏面に上記負極シートを沿わせた後、温度80℃、圧力5kg/cm^(2)で5分間加熱、加圧し、正負の電極シートを上記部分架橋接着剤を担持させたポリエチレン樹脂製多孔質フィルムに圧着し、仮接着して、負極/多孔質フィルム/正極積層体を得た。
【0075】
(電池の組立て)
アルゴン置換したグローブボックス中、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶媒(容量比1/2)に1.2モル/L濃度となるように電解質塩六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6))を溶解させて、電解液を調製した。更に、3官能イソシアネート2重量部を上記電解液100重量部に溶解させた。
【0076】
上記負極/多孔質フィルム/正極積層体を正負電極板を兼ねる2016サイズのコイン型電池用缶に仕込み、上記3官能イソシアネートを溶解させた電解液をこのコイン型電池の缶内に注入した後、電池用缶を封口して、仕掛品を製作した。この後、この仕掛品を温度50℃の恒温器中に7日間投入して、上記負極/多孔質フィルム/正極積層体の多孔質フィルムに担持させた部分架橋接着剤中の反応性ポリマーを上記3官能イソシアネートと架橋反応させ、正負の電極を多孔質フィルム、即ち、セパレータに接着させ、かくして、負極/多孔質フィルム(セパレータ)/正極接合体を有するコイン型リチウムイオン二次電池を得た。
【0077】
(電池の放電負荷特性の評価)
上記電池について、0.2CmAのレートにて5回充放電を行った後、0.2CmAのレートで充電し、更にその後、2.0CmAのレートで放電を行って、2.0CmAのレートでの放電容量/0.2CmAのレートでの放電容量の比にて評価した放電負荷特性は93%であった。
【0078】
(電池の膨れ性の評価)
また、上記充放電試験の後、電池の膨れ性を評価した。ここに、電池の膨れ性とは、電解液における気泡の発生やセパレータに接着した電極シートの伸縮等によって、セパレータが電極から浮き上がることをいう。上記充放電試験の後、電池を分解し、セパレータを観察して評価したところ、膨れはみられなかった。
【0079】
(セパレータ(多孔質フィルム)と電極との接着性の評価)
所定の寸法に打ち抜いた正極/多孔質フィルム/負極積層体に前記3官能ジイソシアネートを溶解させた電解液を含浸させた後、ガラス板の間に挟み、更に、電解液の揮発を抑えるためにフッ素樹脂シートで包み、その上に50gの錘を載せて、温度50℃の恒温室中に7日間投入して、上記正極/多孔質フィルム/負極積層体の多孔質フィルムに担持させた部分架橋接着剤中の反応性ポリマーを上記3官能ジイソシアネートと架橋反応させて、正負の電極を多孔質フィルム(即ち、電池におけるセパレータ)に接着させて、正極/多孔質フィルム/負極接合体を得た。
【0080】
このようにして得られた正極/多孔質フィルム/負極接合体を1cm幅に裁断した後、電解液中に常温で24時間浸漬した。この後、湿った常態にて正極/多孔質フィルム/負極接合体から電極を剥がしたときに抵抗があるときを○とし、既に電極が剥がれているときを×とした。
【0081】
(セパレータ(多孔質フィルム)の面積熱収縮率の測定と評価)
セパレータ(多孔質フィルム)と電極との接着性の評価のために調製したと同様に、正極/多孔質フィルム/負極接合体を得た。このようにして得られた正極/多孔質フィルム/負極接合体をガラス板に挟んだまま、150℃の乾燥機中に1時間投入した後、正極/多孔質フィルム/負極接合体からガラス板を取り外し、セパレータを正負の電極から剥がし、スキャナで読み込んで、最初に用いた多孔質フィルムの面積と比較して、面積熱収縮率を求めたところ、5%であった。結果をまとめて、表1に示す。」

「【0117】
しかも、このような積層体を電池容器内に仕込み、電池容器内に電解液を注入しても、電極と多孔質フィルム(セパレータ)との仮接着は保持されており、しかも、部分架橋接着剤中の反応性ポリマーは、部分架橋されているので、電解液中での溶出が防止され、又は低減され、そして、電池の製造時には、部分架橋接着剤中の反応性ポリマーの更なる架橋によって、電極が多孔質フィルム(セパレータ)に密着性よく強固に且つ安定して接着された電極/セパレータ接合体を形成する。」

5 甲5について
甲5には,「リチウムイオン二次電池用セパレータ及びリチウムイオン二次電池」(発明の名称)に関して,次の記載がある。なお,下線は当審が付した。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機セパレーター上に、非導電性粒子及び結着剤を含む多孔膜が積層されてなり、
前記結着剤が(メタ)アクリロニトリル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む共重合体を含んでなることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレーター。
【請求項2】
前記結着剤において、共重合体中の(メタ)アクリロニトリル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位との比率(=(メタ)アクリロニトリル単量体単位/(メタ)アクリル酸エステル単量体単位)が、質量比で5/95?50/50の範囲にある請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用セパレーター。
【請求項3】
前記結着剤において、共重合体中の(メタ)アクリロニトリル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計含有割合が50質量%以上である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用セパレーター。
【請求項4】
前記結着剤が、加熱またはエネルギー線照射により架橋可能なものである請求項1?3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用セパレーター。
【請求項5】
前記結着剤において、共重合体が、熱架橋性の架橋性基を含み、前記熱架橋性の架橋性基が、エポキシ基、N-メチロールアミド基、及びオキサゾリン基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1?4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用セパレーター。
【請求項6】
前記結着剤において、共重合体が、更に、カルボン酸基、ヒドロキシル基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる親水性基を少なくとも1種含むものである請求項1?5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用セパレーター。
【請求項7】
非導電性粒子、(メタ)アクリロニトリルの単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステルの単量体単位を含む共重合体を含んでなる結着剤、並びに溶媒を含む多孔膜用スラリーを、有機セパレーター上に塗布し、次いで乾燥することを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法。
【請求項8】
正極、負極、電解液及び請求項1?6のいずれかに記載のセパレーターを備えてなるリチウムイオン二次電池。」

「【0036】
本発明において、共重合体中の(メタ)アクリロニトリル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位との比率(=(メタ)アクリロニトリル単量体単位/(メタ)アクリル酸エステル単量体単位)は、質量比で、好ましくは5/95?50/50、より好ましくは5/95?30/70、さらに好ましくは10/90?20/80の範囲である。(メタ)アクリロニトリル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位との質量比率を前記範囲にすることにより、電解液への溶出を示さずに有機セパレーター上に塗工させた際の変形を生じにくくすることができる。さらに、高温においても電解液の膨潤性を保ちながら溶出しにくく、優れた高温特性を示す。」

「【0075】
本発明において、結着剤として用いる上記共重合体のガラス転移温度は、室温において多孔膜に柔軟性を与えることができ、ロール巻き取り時や捲回時のひびや、多孔膜層の欠け等を抑制することができる観点より、好ましくは15℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。共重合体のガラス転移温度は、共重合体を構成する単量体の使用割合などを変更することによって調製可能である。」

6 甲6について
甲6には,「電池用セパレータとこれを用いる電池の製造方法」(発明の名称)に関して,次の記載がある。なお,下線は当審が付した。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーと多官能モノマーとこれらに共重合性を有するその他のラジカル重合性モノマーとをラジカル共重合してなり、架橋構造を有すると共に、上記多官能架橋剤と反応して架橋し得る官能基を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの少なくとも一方の上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされていることを特徴とする電池用セパレータ。
【請求項2】
反応性ポリマーが20?100%の範囲のゲル分率と5倍以上の膨潤度を有し、この反応性ポリマーからなるフィルムが0.3?5.0μmの範囲の厚みを有すると共に、絶縁性微粒子が1?100μmの範囲の平均粒子径を有し、この絶縁性微粒子が上記反応性ポリマー100重量部に対して20?1000重量部の範囲で含まれている請求項1に記載の電池用セパレータ。
【請求項3】
反応性ポリマーの有する官能基がヒドロキシ基、カルボキシル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の電池用セパレータ。
【請求項4】
反応性ポリマーの有する官能基がヒドロキシ基又はカルボキシル基であるとき、多官能架橋剤が多官能イソシアネート化合物又は多官能エポキシ化合物であり、反応性ポリマーの有する官能基がエポキシ基であるとき、多官能架橋剤が酸無水物又は多官能アミン化合物である請求項1に記載の電池用セパレータ。
【請求項5】
多官能架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーと多官能モノマーとこれらに共重合性を有するその他のラジカル重合性モノマーとを水に分散させ、ラジカル共重合して、架橋構造を有すると共に、上記多官能架橋剤と反応して架橋し得る官能基を有する反応性ポリマーの分散液を得、これに絶縁性微粒子を混合し、得られた反応性ポリマーの分散液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記絶縁性微粒子を分散担持させた反応性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、次いで、このようにして得られた剥離性フィルム上の反応性ポリマーからなるフィルムの一対を、その絶縁性微粒子の担持面を対面させつつ、重ね合わせて貼り合わせ、かくして、架橋構造を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされている電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
反応性ポリマーの分散液に反応性ポリマー100重量部に対して平均粒子径1?100μmの絶縁性微粒子20?2000重量部を混合し、得られた反応性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記絶縁性微粒子を分散担持させた反応性ポリマーからなる厚み0.3?5.0μmのフィルムを上記剥離性フィルム上に形成する請求項5記載の電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
多官能架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーと多官能モノマーとこれらに共重合性を有するその他のラジカル重合性モノマーとを水に分散させ、ラジカル共重合してなり、従って、架橋構造を有すると共に、上記多官能架橋剤と反応して架橋し得る官能基を有する反応性ポリマーの溶液に絶縁性微粒子を混合し、得られた反応性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記絶縁性微粒子を分散させた反応性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、別に、多官能架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーと多官能モノマーとこれらに共重合性を有するその他のラジカル重合性モノマーとを水に分散させ、ラジカル共重合してなり、従って、架橋構造を有すると共に、上記多官能架橋剤と反応して架橋し得る官能基を有する反応性ポリマーの分散液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記反応性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、次いで、このようにして得られた剥離性フィルム上の反応性ポリマーからなるフィルムの一対を離れて対向させつつ、重ね合わせて貼り合わせ、かくして、架橋構造を有すると共に、多官能架橋剤と反応して架橋し得る官能基を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの一方の上に絶縁性微粒子がその間に空隙を有するように分散され、担持されている電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
反応性ポリマーの分散液に反応性ポリマー100重量部に対して平均粒子径1?100μmの絶縁性微粒子20?2000重量部を混合し、得られた反応性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記絶縁性微粒子を分散担持させた反応性ポリマーからなる厚み0.3?5.0μmのフィルムを上記剥離性フィルム上に形成する請求項5記載の電池用セパレータの製造方法。
【請求項9】
反応性ポリマーが20?100%の範囲のゲル分率と5倍以上の膨潤度を有し、この反応性ポリマーからなるフィルムが0.3?5.0μmの範囲の厚みを有する請求項3から6のいずれかに記載の電池用セパレータの製造方法。
【請求項10】
反応性ポリマーの有する官能基がヒドロキシ基、カルボキシル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種である請求項5から8のいずれかに記載の電池用セパレータの製造方法。
【請求項11】
反応性ポリマーの有する官能基がヒドロキシ基又はカルボキシル基であるとき、多官能架橋剤が多官能イソシアネートであり、反応性ポリマーの有する官能基がエポキシ基であるとき、多官能架橋剤が酸無水物である請求項5から8のいずれかに記載の電池用セパレータの製造方法。
【請求項12】
請求項1から4のいずれかに記載の電池用セパレータに電極シートを積層し、圧着して、電極シート/セパレータ積層体を形成し、この積層体を電池容器に仕込んだ後、上記セパレータを形成する反応性ポリマーの有する官能基に対して反応性を有する多官能架橋剤を溶解させた電解液を上記電池容器に注入し、反応性ポリマーを更に架橋させて、電極シートをセパレータに接着することを特徴とする電池の製造方法。」

「【0022】
ラジカル重合性多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
他方、前記官能基をもたないその他の共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールアルキルエーテル等の(メタ)アクリルモノマーのほか、種々のビニルモノマー、例えば、スチレン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、ビニレンカーボネート等を挙げることができる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のように、アルキル基における炭素原子数が1?12のアルキルエステルが好ましく用いられる。
【0025】
上記のほか、例えば、(メタ)アクリル酸のイソボルニルエステル、ジシクロペンテニルエステル、テトラヒドロフルフリルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル等のような環状基を有するエステル、マレイミド基を有する(メタ)アクリル酸エステル、イミド基のような高極性基を有するイミド(メタ)アクリレート等、そのホモポリマーのガラス転移温度が約40℃以上である(メタ)アクリル酸エステル類や(メタ)アクリルアミド類は、得られる反応性ポリマーのガラス転移温度を高める必要があるときに好適に用いられる。」

「【0032】
本発明によれば、反応性ポリマーは、通常、ガラス転移温度が-30℃から100℃の範囲にあることが好ましく、特に、0℃から80℃の範囲にあることが好ましい。反応性ポリマーのガラス転移温度が0℃以下であるときは、セパレータを形成するこのような反応性ポリマーからなるフィルムに常温にて電極シートを圧着すれば、電極シートをセパレータに仮接着して、直ちに電極シート/セパレータ積層体を得ることができる。
【0033】
反応性ポリマーのガラス転移温度が0?100℃の範囲にあるときは、このような反応性ポリマーからなるセパレータに電極シートを仮接着するには、通常、セパレータを加熱し、これに電極シートを圧着することが必要である。しかし、反応性ポリマーのガラス転移温度が0?100℃の範囲にあるときは、特に、常温以上、最も好ましくは、40℃以上であるときは、セパレータは常温においてブロッキング性をもたないので、セパレータを積層したり、ロールに捲回したりする際にその間に剥離シートを挟む必要がない利点や、また、電極シートをセパレータに貼り合わせる際に関連する設備、例えば、ガイドロール等に付着することがなく、作業性や取扱い性にすぐれる利点がある。」

7 当審の判断
当審は,申立人が主張する上記1(1)?(4)は,いずれも採用できないものと判断する。その理由は以下のとおりである。

(1)甲2に基づく新規性について
ア 甲2に記載された発明
上記2の摘示,特に,請求項1,請求項7,実施例5に着目すると,甲2には,次の発明が記載されているといえる。
なお,実施例5では,負極上に多孔膜スラリーを塗布乾燥して,多孔膜を作製しているが,請求項6,【0094】,【0095】,実施例6を参酌すると,多孔膜は,電極または有機セパレータのいずれの上にも有することができるものであって,ポリプロピレン製微多孔膜基材に,多孔膜を形成したセパレーターについても記載されているといえるから,次のとおり甲2発明を認定する。

(甲2発明)
「ポリプロピレン製の有機セパレータ上に、多孔膜を有してなる二次電池用セパレーターであって、
多孔膜が、多孔膜用バインダー、及び非導電性粒子を含んでなり、
前記多孔膜用バインダーが、ビニル単量体成分を重合してなるポリマーを内層とし、親水性官能基を有する単量体成分を重合してなるポリマーを外層とする異相構造を有するポリマー粒子であり、
内層は、アクリル酸nーブチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、グリシジルメタクリレートを単量体成分とする重合体であり、
内層のガラス転移温度は、-10℃であり、
外層は、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、メタクリル酸ヒドロキシエチルを単量体成分とする重合体であり、
外層のガラス転移温度は、15℃である、セパレーター。」

イ 本件発明と甲2発明との対比
甲2発明の「ポリプロピレン製の有機セパレータ」は,甲2【0095】の「孔径の微細な多孔質膜」との記載から,微多孔膜であり,その上に,さらに多孔膜を有するものであるから,本件発明1の「ポリオレフィン系の樹脂を50質量%以上を超えて含む微多孔膜である基材」に相当する。
甲2発明の「多孔膜」は,有機セパレータ上に形成されるから,本件発明1の「その基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された」「層」に相当する。そして,甲2発明の「多孔膜」に含まれる「多孔膜用バインダー」は,「ビニル単量体成分を重合してなるポリマーを内層とし、親水性官能基を有する単量体成分を重合してなるポリマーを外層とする異相構造を有するポリマー粒子」であるから,本件発明1の「熱可塑性ポリマー」に相当する。
甲2発明の「ポリマー粒子」は,「内層のガラス転移温度は、-10℃」,「外層のガラス転移温度は、15℃」であるから,本件発明1の「前記熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、」かつ「前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、」に相当する。
甲2発明の「ポリマー粒子」を構成する単量体成分において,「アクリロニトリル」は「シアノ基を有する単量体」であり,「アクリル酸nーブチル」,「アクリル酸エチル」,「グリシジルメタクリレート」,「メタクリル酸ヒドロキシエチル」はいずれも「(メタ)アクリル酸エステル単量体」であるから,甲2発明における「内層」,「外層」は,どちらも,シアノ基を有する単量体と,(メタ)アクリル酸エステル単量体とを単量体単位として有する,別の共重合体である。そして,甲2発明における「内層のガラス転移温度は、-10℃であり」は,本件発明における「前記第2の共重合体のガラス転移温度が20℃未満であり、」と,-10℃で重複している。
甲2発明の「セパレータ」は「二次電池用」であるところ,「二次電池」が「蓄電デバイス」に相当することは明らかであるから,本件発明1の「蓄電デバイス用セパレータ」に相当する。

そうすると,本件発明1と甲2発明とは,次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「ポリオレフィン系の樹脂を50質量%を超えて含む微多孔膜である基材と、その基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された熱可塑性ポリマーを含有する層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、
前記熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、
前記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する第1の共重合体を含み、
前記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する、前記共重合体とは別の第2の共重合体を含み、
前記第2の共重合体のガラス転移温度が-10℃である、
蓄電デバイス用セパレータ。」

(相違点1)
少なくとも一つの熱可塑性ポリマー及び第1の共重合体のガラス転移温度について,本件発明1では,ガラス転移温度が20℃以上であるのに対し,甲2発明では,ポリマー粒子の外層のガラス転移温度が15℃である点。

(相違点2)
剥離強度について,本件発明1では,「蓄電デバイス用セパレータを2枚重ねて、その積層方向に、温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である」のに対し,甲2発明では,そのような特定がない点。

ウ 相違点について
(ア)相違点1に関して,甲2【0021】には,外層を形成するポリマーのガラス転移温度が0℃以上50℃以下であることがより好ましい旨の記載はあるものの,当該範囲のうち,さらに「20℃以上」が好ましい旨の記載や示唆はない。また,実施例において,ガラス転移温度が最も高いものは,15℃である。よって,甲2発明には,複数のガラス転移温度のうちの一つとして「20℃以上」という技術的事項が示されているとはいえないから,相違点1は実質的な相違点である。

(イ)相違点2に関して,甲2には,「発明が解決しようとする課題」として「リチウムイオン伝導性を維持しながら、強度が向上され、割れが生じにくいリチウムイオン二次電池などの二次電池に用いられる多孔膜を提供すること」は示されているが,耐ブロッキング性についての記載や示唆はみられない。よって,甲2発明には,耐ブロッキング性の評価指標として「90°剥離強度が40mN/mm以下である」という技術的事項が示されているとはいえないから,相違点2は実質的な相違点である。

エ 甲2に基づく新規性についてのまとめ
以上のとおり,本件発明1は,甲2に記載された発明ではない。
また,本件発明2,8,9,11,13,15,16はいずれも,本件発明1の技術的内容を引用して,さらに特定したものであるから,本件発明1と同様に,甲2に記載された発明ではない。

(2)甲2に基づく進歩性について
ア 本件発明と甲2発明との対比
上記(1)で検討したとおり,甲2発明と本件発明とは相違点1,2において相違する。

イ 相違点1についての検討
(ア)甲2発明における「ポリマー粒子」は,非導電性粒子同士を結着するバインダーであり,甲2【0021】には,ポリマー粒子のガラス転移温度について,多孔膜の巻き取り時や捲回時のひび,多孔膜層の欠け等を抑制する観点から好ましい範囲が示されているものである。

(イ)これに対して,甲3には,上記3に摘示のとおり,「反応性ポリマー」粒子を相互に融着させて形成した接着剤層を基材多孔質フィルムに担持する技術(請求項1)が記載されているが,その発明が解決しようとする課題は,甲3【0007】に記載のとおり,保存性や耐ブロッキング性にすぐれる電池用セパレータのための接着剤担持多孔質フィルムの提供であり,そのために,電解液に溶解させた多官能架橋剤の作用によって,「反応性ポリマー」をさらに架橋させて,多孔質フィルム(セパレータ)と電極を接着させるというものである。また,「反応性ポリマー」のガラス転移温度についても,甲3【0040】に,ハンドリング性の容易性を考慮した好ましい範囲が記載されるに止まるものである。

(ウ)そうすると,甲2発明の「ポリマー粒子」と,甲3に記載される「反応性ポリマー」とは,単量体単位が一部重複するものの,その構造,組成,セパレータにおける役割が異なっているし,甲2と甲3では,ガラス転移温度の好ましい範囲を特定する際の観点も異なっているから,両者を組み合わせる動機づけがあるとはいえず,甲2発明において,外層の重合体のガラス転移温度を20℃以上とすることは,当業者といえども容易に想到できたこととはいえない。また,本件特許明細書【0088】に記載された「電極への接着性とハンドリング性とのバランスを良好に両立する」という効果は,甲2発明ないし甲3の記載事項から予測できるものとはいえない。

ウ 相違点2についての検討
(ア)甲3【0040】には,ポリマーのTgが0℃以上,とくに30℃以上であると,ハンドリング性が良い旨記載されている。
また,甲4【0021】には,ガラス転移温度が常温以上である反応性ポリマーから得られる部分架橋接着剤を担持させた多孔質フィルムは,常温においては,そのような部分架橋接着剤が粘着性を持たないので,ブロッキングを起こさない旨記載されている。
さらに,甲6【0033】には,反応性ポリマーのガラス転移温度が0?100℃の範囲にあるときは,セパレータは常温においてブロッキング性を持たないので,セパレータを積層したり,ロールに捲回したりする際にその間に剥離シートを挟む必要がない旨記載されている。

(イ)ここで,共重合体のガラス転移温度が常温以上である場合にブロッキング性が抑制されることが知られていたとしても,そのような共重合体を積層して蓄電デバイス用セパレータを作製したときに,「その積層方向に、温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である」かどうかは明らかでなく,まして,共重合体として,ガラス温度が20℃以上のものと20℃未満のものとを組み合わせて用いることは,甲3,甲4及び甲6には記載も示唆もされていない。

(ウ)申立人は,共重合体のガラス転移温度Tgが常温以上のときにブロッキング性を持たないことは,当業者にとって周知技術である旨主張する(異議申立書30頁10?31行)。
しかしながら,本件特許明細書には,水分散体「A8」の共重合体を用いた参考例8のように,ガラス転移温度が常温以上であっても耐ブロッキング性の評価が「×」(剥離強度が40mN/mm超)の場合も示されている(表2)。よって,共重合体のガラス転移温度が常温以上のときに,常にブロッキング性を持たないかどうかは不明であるから,周知技術ということはできない。

エ 甲2に基づく進歩性についてのまとめ
以上のとおり,本件発明1は,甲2発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
また,本件発明2?16は,本件発明1の技術的内容を引用して,さらに特定したものであるから,本件発明1と同様に,甲2発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

(3)甲4に基づく進歩性について
ア 甲4に記載された発明
上記4の摘示,特に請求項1,参考例1,実施例1に着目すると,甲4には次の発明が記載されているといえる(以下「甲4発明」という。)。

(甲4発明)
「分子内に官能基を有し、この官能基に対して反応性を有する多官能化合物と反応することによって架橋し得る反応性ポリマーを用意し、これに多官能化合物を反応させ、一部、架橋させてなる部分架橋接着剤をポリエチレン樹脂製の基材多孔質フィルムに担持させてなる、電池用セパレータであって、
反応性ポリマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド、ブチルアクリレート、アクリロニトリル及び2-ヒドロキシエチルアクリレートを単量体単位とするポリマーであり、
反応性ポリマーのガラス転移温度は、48℃である、セパレータ。」

イ 本件発明と甲4発明との対比
甲4発明の「ポリエチレン樹脂製の基材多孔質フィルム」は,本件発明1の「ポリオレフィン系の樹脂を50質量%を超えて含む微多孔膜である基材」に相当する。
甲4発明の「部分架橋接着剤」は,「分子内に官能基を有し、この官能基に対して反応性を有する多官能化合物と反応することによって架橋し得る反応性ポリマー」に「多官能化合物を反応させ、一部、架橋させてなる」ものであり,本件発明1の「熱可塑性ポリマー」に相当する。
甲4発明の「ブチルアクリレート」,「2-ヒドロキシエチルアクリレート」は(メタ)アクリル酸エステル単量体であり,「アクリロニトリル」はシアノ基を有する単量体であるから,本件発明1と甲4発明とは,「熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する」共重合体を含んでいる点において共通している。
甲4発明の「セパレータ」は「電池用」であるところ,「電池」が「蓄電デバイス」に相当することは明らかであるから,本件発明1の「蓄電デバイス用セパレータ」に相当する。
そうすると,本件発明1と甲4発明とは,次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「ポリオレフィン系の樹脂を50質量%を超えて含む微多孔膜である基材と、その基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された熱可塑性ポリマーを含有する層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、
前記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する共重合体を含む、蓄電デバイス用セパレータ。」

(相違点3)
少なくとも一つの熱可塑性ポリマー及び共重合体のガラス転移温度について,本件発明1では,ガラス転移温度が20℃以上のもの,及び,20℃未満のものを有するのに対し,甲4発明では,「部分架橋」を行う前の「反応性ポリマー」のガラス転移温度は48℃であるものの,「部分架橋接着剤」のガラス転移温度は不明である点。

(相違点4)
剥離強度について,本件発明1では,「蓄電デバイス用セパレータを2枚重ねて、その積層方向に、温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である」のに対し,甲4発明では,そのような特定がない点。

ウ 相違点3についての検討
(ア)甲4【0021】には,ガラス転移温度が常温以上である「反応性ポリマー」から得られる「部分架橋接着剤」を担持させることに関して,常温においては,そのような「部分架橋接着剤」が粘着性を持たないので,ブロッキングを起こさず,また多孔質フィルムがロールガイドに粘着することはない旨は示されているが,「部分架橋接着剤」がガラス転移温度を複数有することの言及はなく,まして,ガラス転移温度を「20℃以上」及び「20℃未満」とすることについては,記載も示唆もされていない。

(イ)また,甲5【0075】には,結着剤として用いる共重合体のガラス転移温度は,好ましくは15℃以下であり,共重合体を構成する単量体の使用割合などを変更することによって調製可能であることが記載され,また,甲6【0032】には,反応性ポリマーは,通常,ガラス転移温度が-30℃から100℃の範囲にあることが好ましいことが記載されているが,「部分架橋接着剤」がガラス転移温度を複数有することについては,いずれの文献にも示されていない。

(ウ)よって,甲4発明において,「部分架橋剤」がガラス転移温度を複数有することにより,本件発明1に想到することは、当業者といえども容易になし得たことではない。

エ 相違点4についての検討
(ア)甲3【0040】には,ポリマーのTgが0℃以上,とくに30℃以上であると,ハンドリング性が良い旨記載されている。
また,甲4【0021】には,ガラス転移温度が常温以上である反応性ポリマーから得られる部分架橋接着剤を担持させた多孔質フィルムは,常温においては,そのような部分架橋接着剤が粘着性を持たないので,ブロッキングを起こさない旨記載されている。
さらに,甲6【0033】には,反応性ポリマーのガラス転移温度が0?100℃の範囲にあるときは,セパレータは常温においてブロッキング性を持たないので,セパレータを積層したり,ロールに捲回したりする際にその間に剥離シートを挟む必要がない旨記載されている。

(イ)ここで,共重合体のガラス転移温度が常温以上である場合にブロッキング性が抑制されることが知られていたとしても,そのような共重合体を積層して蓄電デバイス用セパレータを作製したときに,「その積層方向に、温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である」かどうかは明らかでなく,まして,共重合体として,ガラス温度が20℃以上のものと20℃未満のものとを組み合わせて用いることは,甲3,甲4及び甲6には記載も示唆もされていない。

(ウ)申立人は,共重合体のガラス転移温度Tgが常温以上のときにブロッキング性を持たないことは,当業者にとって周知技術である旨主張する(異議申立書30頁10?31行)。
しかしながら,本件特許明細書には,水分散体「A8」の共重合体を用いた参考例8のように,ガラス転移温度が常温以上であっても耐ブロッキング性の評価が「×」(剥離強度が40mN/mm超)の場合も示されている(表2)。よって,共重合体のガラス転移温度が常温以上のときに,常にブロッキング性を持たないかどうかは不明であるから,周知技術ということはできない。

オ 甲4に基づく進歩性についてのまとめ
以上のとおり,本件発明1は,甲4発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
また,本件発明2?16は,本件発明1の技術的内容を引用して,さらに特定したものであるから,本件発明1と同様に,甲4発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(4)実施可能要件について
ア 物の発明における発明の実施とは,その物の生産,使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号),物の発明について特許法第36条第4項第1号が定める実施可能要件を充足するためには,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その物を製造し,使用することができる程度の記載があることを要する,と解される。
そこで,上記観点から,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かを検討する。

イ 本件特許明細書の記載
上記第4の2に摘示のとおり,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,本件発明に係る共重合体は,シアノ基を有する単量体(a1)と,(メタ)アクリル酸エステル単量体(a2)とを単量体として有する共重合体であること,その具体例である実施例1?4,7には,ガラス転移温度が20℃以上である共重合体を有する水分散体「A1」?「A4」と,ガラス転移温度が20℃未満である共重合体を有する水分散体「A7」とを組み合わせることにより,耐酸化性及び接着性の両方に優れた蓄電デバイス用セパレータを得られることが記載されている。
そうすると,当業者は,そのような記載を含む本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載と,出願時の技術常識を参酌して,過度の試行錯誤を要することなく,本件発明1?16を実施することができる。

実施可能要件についてのまとめ
以上のとおり,本件特許明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明1?16を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。

(5)その他
ア 申立人は,コアシェル型共重合体が一つの共重合体として解されるのか否かという点,剥離強度の測定法の点,及び,請求項15を引用する請求項16の記載が不明瞭であるから,訂正後の請求項1?16の記載は発明が明確でない旨主張している(平成31年 1月11日提出の意見書2頁下から4?1行,13頁11行?15頁23行)。

イ 上記の主張は特許異議申立書において申立の理由として主張していたものではなく,また,その補正ができる期間内に主張したものでもないので,特許異議申立の要旨を変更するものであるから,採用しない。ちなみに,本件発明の明確性は,次のとおり判断できる。

(ア)申立人が「コアシェル型共重合体は,一般にコア部とシェル部が異なるガラス転移温度を有しているものの,一つの共重合体として認識されるものである」とする具体的根拠が不明であるが,本件特許明細書の発明の詳細な説明【0091】?【0093】には,コアシェル構造を備える熱可塑性共重合体の適用について記載されている。そして,コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーのシェルのガラス転移温度は,20℃未満が好ましいこと,コアのガラス転移温度は,20℃以上が好ましいことが記載されている。したがって,熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を2つ有する構成は,コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーによっても達成できること,その場合に,シェルのガラス転移温度を20℃未満,コアのガラス転移温度を20℃以上とすれば良いことは,当業者が明確に理解することができる。

(イ)剥離強度の測定法に関して,申立人は,概要,セパレータの作成条件を問題としているようであるが,本件発明に係る剥離強度の測定対象は蓄電デバイス用セパレータから切り取ったサンプルであり,そのようなサンプルの準備方法は本件特許明細書の発明の詳細な説明【0138】に記載されるとおり,明確に理解することができる。

(ウ)請求項15は,「蓄電デバイス用セパレータを備える蓄電デバイス」に係るものであり,「蓄電デバイス用セパレータ」も特定されているから,請求項16に係る「蓄電デバイス用セパレータを備えるリチウムイオン二次電池」において,請求項15を引用することにより,発明が不明確であるとまではいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,当審が通知した取消理由,及び,特許異議申立書に記載した申立理由によっては,請求項1?11,13?16に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?11,13?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また,請求項12に係る特許は,上記のとおり,訂正により削除されたから,請求項12に係る特許異議の申立ては,その対象が存在しないものとなったため,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系の樹脂を50質量%を超えて含む微多孔膜である基材と、その基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された熱可塑性ポリマーを含有する層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、
前記熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃未満の領域に存在し、
前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃以上の領域に存在し、
前記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する第1の共重合体を含み、
前記第1の共重合体のガラス転移温度が20℃以上であり、
前記熱可塑性ポリマーが、シアノ基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を単量体単位として有する、前記共重合体とは別の第2の共重合体を含み、
前記第2の共重合体のガラス転移温度が20℃未満であり、
前記蓄電デバイス用セパレータを2枚重ねて、その積層方向に、温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度が40mN/mm以下である、
蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素原子数が1?5の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、炭素原子数が6以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体である、請求項1記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素原子数が6以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体である、請求項2記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項4】
前記炭素原子数が6以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、炭素原子数が6以上14以下の鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである、請求項3記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項5】
前記炭素原子数が6以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群より選ばれる1種以上の単量体である、請求項3記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項6】
前記シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、シクロアルキル基の脂環を構成する炭素原子の数が4?8であるシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである、請求項2?5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項7】
前記シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルアクリレート及びアダマンチルメタクリレートからなる群より選ばれる1種以上の単量体である、請求項2?6のいずれか1項に記載の蓄電デバイスセパレータ。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマーにおける、1720?1750cm^(-1)の波長における赤外吸収ピーク強度に対する2220cm^(-1)?2260cm^(-1)の波長における赤外吸収ピーク強度の比が、0.001?0.320である、請求項1?7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項9】
前記シアノ基を有する単量体が(メタ)アクリロニトリルである、請求項1?8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項10】
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(質量比2:3)に対する前記第1の共重合体の膨潤度が10.0倍以下である、請求項1?9のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項11】
前記第1の共重合体が、架橋性単量体を単量体単位として更に有する、請求項1?10のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
前記基材が、ポリオレフィン微多孔膜である、請求項1?11のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項14】
下記(1)及び(2)の少なくとも一方の剥離強度が、4mN/mm以上である、請求項1?11及び13のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
(1)アルミニウム箔に、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液に濡らした前記蓄電デバイス用セパレータを、前記熱可塑性ポリマーを含有する層の側から重ね合わせ、それらを重ね合わせた方向に80℃、10MPaの圧力で2分間加圧した後、前記アルミニウム箔と前記蓄電デバイス用セパレータとの間を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。
(2)アルミニウム箔に、前記蓄電デバイス用セパレータを、前記熱可塑性ポリマーを含有する層の側から重ね合わせ、それらを重ね合わせた方向に80℃、10MPaの圧力で2分間加圧した後、前記アルミニウム箔と前記蓄電デバイス用セパレータとの間を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。
請求項15】
請求項1?11、13及び14のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータを備える蓄電デバイス。
【請求項16】
請求項1?11及び13?15のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータを備えるリチウムイオン二次電池。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-17 
出願番号 特願2016-77799(P2016-77799)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H01M)
P 1 651・ 537- YAA (H01M)
P 1 651・ 536- YAA (H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M)
P 1 651・ 16- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 神野 将志  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 土屋 知久
平塚 政宏
登録日 2017-10-20 
登録番号 特許第6227696号(P6227696)
権利者 旭化成株式会社
発明の名称 蓄電デバイス用セパレータ、蓄電デバイス及びリチウムイオン二次電池  
代理人 内藤 和彦  
代理人 赤堀 龍吾  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 江口 昭彦  
代理人 赤堀 龍吾  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  
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