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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C04B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
管理番号 1354099
異議申立番号 異議2018-700180  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-28 
確定日 2019-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6189627号発明「ジルコニア焼結体、ジルコニア組成物及びジルコニア仮焼体、並びに歯科用補綴物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6189627号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-23〕について訂正することを認める。 特許第6189627号の請求項1ないし23に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6189627号の請求項1?23に係る特許についての出願は、平成25年 5月10日に出願され、平成29年 8月10日にその特許権の設定登録がされ、平成29年 8月30日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1?23に係る特許について、特許異議申立人 中丸 剛 (以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 2月28日付け 特許異議の申立て
同年 5月 2日付け 取消理由通知
同年 7月 6日付け 訂正の請求、意見書の提出
同年 8月17日付け 申立人による意見書の提出
同年11月20日 特許権者との面接
同年11月29日付け 取消理由通知(決定の予告)
平成31年 2月 1日付け 訂正の請求、意見書の提出

なお、平成31年 2月 1日付けの訂正の請求に対して、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定期間内に意見書は提出されなかった。


第2 訂正請求について
1 訂正の内容
平成31年 2月 1日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の(1)?(23)のとおりである(「・・・・・」は、記載の省略を表すものであり、また、下線部は、訂正箇所を示すものである)。
なお、平成30年 7月 6日付けの訂正の請求は、取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成し、
前記複数のジルコニア粉末を積層させてジルコニア組成物を形成し、
前記ジルコニア組成物を800℃?1200℃で焼成して製造された状態のジルコニア仮焼体であって、
前記仮焼体を ・・・・・
・・・・・
・・・・・ ことを特徴とするジルコニア仮焼体。」
と記載されているのを、
「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、
前記積層体を800℃?1200℃で焼成してジルコニア仮焼体を製造する工程と、
を含み、
前記ジルコニア仮焼体を ・・・・・
・・・・・
・・・・・ ことを特徴とするジルコニア仮焼体の製造方法。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?23も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア仮焼体。」
と記載されているのを、
「(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア仮焼体の製造方法。」
に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3?23も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記複数のジルコニア粉末は、顔料を含有し、顔料の含有率がそれぞれ異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体。」
と記載されているのを、
「前記複数のジルコニア粉末は、顔料を含有し、顔料の含有率がそれぞれ異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体の製造方法。」
に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4?23も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体を1400℃?1600℃で焼結した状態であることを特徴とするジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法により前記ジルコニア仮焼体を製造し、さらに、1400℃?1600℃で焼結してジルコニア焼結体を製造する工程を含むことを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5?19、21も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「 一端から他端に向かう第1方向に延在する直線上において、
・・・・・
・・・・・ことを特徴とする請求項4に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、
一端から他端に向かう第1方向に延在する直線上において、
・・・・・
・・・・・ことを特徴とする請求項4に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6?19、21も同様に訂正する)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「 前記第1点と前記第2点とを結ぶ直線上において、
・・・・・
ことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点と前記第2点とを結ぶ直線上において、
・・・・・
ことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7?11、14?19、21も同様に訂正する)。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「 前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、・・・・・
・・・・・
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、・・・・・
・・・・・
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8?10、14?19、21も同様に訂正する)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に、
「前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、・・・・・
・・・・・
ことを特徴とする請求項7に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、・・・・・
・・・・・
ことを特徴とする請求項7に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、10、14?19、21も同様に訂正する)。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に、
「前記第3点は前記一端から全長の45%の距離にあり、
・・・・・
ことを特徴とする請求項8に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、
前記第3点は前記一端から全長の45%の距離にあり、
・・・・・
ことを特徴とする請求項8に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10、14?19、21も同様に訂正する)。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に、
「前記第1点、前記第3点、前記第4点及び前記第2点において、
・・・・・
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のジルコニア焼結体。
・・・・・ 」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点、前記第3点、前記第4点及び前記第2点において、
・・・・・
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
・・・・・ 」
に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14??19、21も同様に訂正する)。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11に、
「前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、・・・・・
・・・・・
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、・・・・・
・・・・・
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14?19、21も同様に訂正する)。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12に、
「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、
・・・・・
・・・・・ことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、
一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、
・・・・・
・・・・・ことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項12の記載を直接的又は間接的に引用する請求項13??19、21も同様に訂正する)。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項13に、
「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、・・・・・
・・・・・
・・・・・ことを特徴とする請求項12に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、 ・・・・・
・・・・・ことを特徴とする請求項12に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項13の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14?19、21も同様に訂正する)。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項14に、
「前記一端から前記他端までの距離は5mm?18mmであることを特徴とする請求項5?13のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、前記一端から前記他端までの距離は5mm?18mmであることを特徴とする請求項5?13のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項14の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15?19、21も同様に訂正する)。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項15に、
「前記第1方向と直交する第2方向に沿って色が変化しないことを特徴とする請求項5?14のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って色が変化しないことを特徴とする請求項5?14のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項15の記載を直接的又は間接的に引用する請求項16?19、21も同様に訂正する)。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項16に、
「前記第2方向に延在する直線上の2点において、
・・・・・
・・・・・ ことを特徴とする請求項15に記載のジルコニア焼結体。
・・・・・ 」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、
前記第2方向に延在する直線上の2点において、
・・・・・
・・・・・ ことを特徴とする請求項15に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
・・・・・ 」
に訂正する(請求項16の記載を直接的又は間接的に引用する請求項17?19、21も同様に訂正する)。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項17に、
「JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が1000MPa以上であることを特徴とする請求項5?16のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が1000MPa以上であることを特徴とする請求項5?16のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項17の記載を直接的又は間接的に引用する請求項18、19、21も同様に訂正する)。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項18に、
「JISR1607に準拠して測定した破壊靭性が3.5MPa・m^(1/2)以上であることを特徴とする請求項5?17のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、JISR1607に準拠して測定した破壊靭性が3.5MPa・m^(1/2)以上であることを特徴とする請求項5?17のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項18の記載を直接的又は間接的に引用する請求項19、21も同様に訂正する)。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項19に、
「180℃、1MPaで5時間水熱処理試験を施した後のジルコニア焼結体のX線回折パターンにおいて、・・・・・ ことを特徴とする請求項5?18のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記ジルコニア焼結体は、180℃、1MPaで5時間水熱処理試験を施した後のジルコニア焼結体のX線回折パターンにおいて、・・・・・ ことを特徴とする請求項5?18のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。」
に訂正する(請求項19の記載を直接的に引用する請求項21も同様に訂正する)。

(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項20に、
「800℃?1200℃で焼成することにより請求項1?3のいずれか一項に記載の仮焼体となることを特徴とするジルコニア組成物。」
と記載されているのを、
「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、
を含み、
請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法に用いることを特徴とする積層体の製造方法。」
に訂正する。

(21)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項21に、
「1400℃?1600℃で焼結することにより請求項5?19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体となることを特徴とするジルコニア組成物。」
と記載されているのを、
「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、
を含み、
請求項5?19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法に用いることを特徴とする積層体の製造方法。」
に訂正する。

(22)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項22に、
「請求項1?3のいずれか一項に記載の仮焼体を切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする歯科用補綴物。」
と記載されているのを、
「請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法によりジルコニア仮焼体を製造し、さらに、切削加工した後に焼結することを特徴とする歯科用補綴物の製造方法。」
に訂正する(請求項22の記載を直接的に引用する請求項23も同様に訂正する)。

(23)訂正事項23
特許請求の範囲の請求項23に、
「請求項1?3に記載の仮焼体を、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結した状態であることを特徴とする請求項22に記載の歯科用補綴物。」
と記載されているのを、
「請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法によりジルコニア仮焼体を製造し、さらに、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結することを特徴とする請求項22に記載の歯科用補綴物の製造方法。」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1は、「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成し、前記複数のジルコニア粉末を積層させてジルコニア組成物を形成し、前記ジルコニア組成物を800℃?1200℃で焼成して製造された状態のジルコニア仮焼体であって、 ・・・・・ ことを特徴とするジルコニア仮焼体。」と記載され、「・・・・・ジルコニア組成物を800℃?1200℃で焼成して製造された状態」などのジルコニア仮焼体の製造方法に関する発明特定事項を有する物(「ジルコニア仮焼体」)の発明が特定されていたため、当該請求項に記載された発明が明確でないものとなっていた。
これに対して、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「ジルコニア仮焼体」という物の発明を、「ジルコニア仮焼体の製造方法」という製造方法の発明に訂正して、当該請求項に記載の発明を明確にするものである。
また、訂正事項1は、請求項1を「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、前記積層体を800℃?1200℃で焼成してジルコニア仮焼体を製造する工程と、を含み、 前記ジルコニア仮焼体を・・・・・」と訂正し、訂正前の請求項1に記載されていたジルコニア仮焼体の製造方法に関する特定事項について、より具体的に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。

イ 新規事項の有無について
「顔料の添加率を調整する」こと、「上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する」こと、及びこれらの工程を含む訂正後の請求項1で特定されたジルコニア仮焼体の製造方法は、本件明細書の段落【0061】、【0062】、【0106】、【0108】及び【0192】の記載から導き出される事項である。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正前の請求項1に係る発明の課題は、本件明細書の段落【0009】?【0020】の記載から把握されるところ、訂正後の請求項1に係る発明の課題も何ら変更されるものではない。
また、訂正前の請求項1に係るジルコニア仮焼体の発明の技術的特徴は、特定の製造方法により、焼成試験による変形量が所定の範囲である仮焼体が得られることを特定しているのに対して、訂正後の請求項1に係るジルコニア仮焼体の製造方法の発明の技術的特徴は、上記特定の製造方法をさらに限定した製造方法により、上記仮焼体を製造することを特定するものであるから、訂正後の請求項1に係る発明の技術的特徴は、訂正前の請求項1に係る発明の技術的特徴を実質上拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、特許法第2条第3項第1号に規定された「物の発明」(訂正前の請求項1に係る発明)及び同項第3号に規定された「物を生産する方法の発明」(訂正後の請求項1に係る発明)の「実施」について比較すると、「物を生産する方法の発明」の「実施」は、「物の発明」の「実施」に包含されるから、訂正後の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為は、訂正前の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項1を「ジルコニア仮焼体の製造方法」の発明に訂正したことに伴って、請求項1を引用する請求項2を「ジルコニア仮焼体の製造方法」の発明に訂正し、訂正後の請求項1と整合させるものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項1の検討と同様であり、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1の検討と同様であり、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項1を「ジルコニア仮焼体の製造方法」の発明に訂正したことに伴って、請求項1を引用する請求項3を「ジルコニア仮焼体の製造方法」の発明に訂正し、訂正後の請求項1と整合させるものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項1の検討と同様であり、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1の検討と同様であり、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項4は、「ジルコニア仮焼体を1400?1600℃で焼結した状態である」という製造方法に関する発明特定事項を有する「ジルコニア焼結体」という「物の発明」を特定していたため、当該請求項に記載された発明が明確でないものとなっていた。
これに対して、訂正事項4は、請求項4を「請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法により前記ジルコニア仮焼体を製造し、さらに、1400℃?1600℃で焼結してジルコニア焼結体を製造する工程を含むことを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法。」と訂正することにより、「ジルコニア焼結体」の「製造方法」であることを明確にし、また、訂正後の請求項1と整合させるものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項4は、明細書の段落【0192】などの記載に基づくものであるから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、ジルコニア焼結体の製造方法であることを明確にし、また、訂正後の請求項1と整合させるものであって、訂正事項1の検討と同様にして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5?19について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項5?19は、訂正前の請求項4を直接的又は間接的に引用して「ジルコニア焼結体」という「物の発明」を特定していたため、それらの請求項に記載された発明が明確でないものとなっていた。
これに対して、訂正事項5?19は、請求項5?19を「ジルコニア焼結体の製造方法」とそれぞれ訂正することにより、訂正後の請求項5?19において「ジルコニア焼結体」の「製造方法」であることを明確にし、引用する訂正後の請求項4と整合させるものである。
したがって、訂正事項5?19は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項5?19は、明細書の段落【0192】などの記載に基づくものであるから、訂正事項5?19は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5?19は、請求項5?19において、ジルコニア焼結体の製造方法であることを明確にし、また、引用する訂正後の請求項4と整合させるものであって、訂正事項4の検討と同様にして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項20について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項20は、訂正前の請求項1に記載されていた「前記複数のジルコニア粉末を積層させて」形成した「ジルコニア組成物」について、「800?1200℃で焼成することにより請求項1?3のいずれか一項に記載の仮焼体となる」という製造方法に関する発明特定事項を有する「物の発明」として特定していたため、当該請求項に記載された発明が明確でないものとなっていた。
これに対して、訂正事項20は、前記「ジルコニア組成物」について、訂正後の請求項1において「積層体」という明確な記載に改めることに伴って、請求項20を「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、を含み、請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法に用いることを特徴とする積層体の製造方法。」と訂正することにより、当該「積層体」の「製造方法」に係る発明であることを明確にするものである。
したがって、訂正事項20は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項20における「顔料の添加率を調整する」こと、「上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する」こと、及びこれらの工程を含む訂正後の請求項20で特定された「積層体」の製造方法は、本件明細書の段落【0062】、【0106】、【0108】及び【0192】の記載から導き出される事項である。
したがって、訂正事項20は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項20は、請求項20を積層体の製造方法であることを明確にし、訂正後の請求項1と整合させるものであり、訂正事項1の検討と同様にして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(7)訂正事項21について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項21は、訂正前の請求項1に記載されていた「前記複数のジルコニア粉末を積層させて」形成した「ジルコニア組成物」であって、請求項4を引用するものについて「1400℃?1600℃で焼結することにより請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体となる」という製造方法に関する発明特定事項を有する「物の発明」として特定していたため、当該請求項に記載された発明が明確でないものとなっていた。
これに対して、訂正事項21は、前記「ジルコニア組成物」について、訂正後の請求項1において「積層体」という明確な記載に改めるに伴って、請求項21を「ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、を含み、請求項5?19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法に用いることを特徴とする積層体の製造方法。」と訂正することにより、当該「積層体」の「製造方法」に係る発明であることを明確にするものである。
したがって、訂正事項21は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項21における「顔料の添加率を調整する」こと、「上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する」こと、及びこれらの工程を含む訂正後の請求項21で特定された「積層体」の製造方法は、本件明細書の段落【0062】、【0106】、【0108】及び【0192】の記載から導き出される事項である。
したがって、訂正事項21は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項21は、請求項21を積層体の製造方法であることを明確にし、訂正後の請求項4と整合させるものであり、訂正事項4の検討と同様にして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(8)訂正事項22について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項22は、「請求項1?3のいずれか一項に記載の仮焼体を切削加工した後に焼結した状態である」という製造方法に関する発明特定事項を有する「歯科用補綴物」という「物の発明」を特定していたため、当該請求項に記載された発明が明確でないものとなっていた。
これに対して、訂正事項22は、請求項22を「請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法によりジルコニア仮焼体を製造し、さらに、切削加工した後に焼結することを特徴とする歯科用補綴物の製造方法。」と訂正することにより、「歯科用補綴物」の「製造方法」であることを明確にし、訂正後の請求項1と整合させるものである。
したがって、訂正事項22は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項22は、本件明細書の段落【0115】の記載から導き出される事項である。
したがって、訂正事項22は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項22は、請求項22を歯科用補綴物の製造方法であることを明確にし、訂正後の請求項1と整合させるものであって、訂正事項1の検討と同様にして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(9)訂正事項23について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項23は、「請求項1?3に記載の仮焼体を、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結した状態である」という製造方法に関する発明特定事項を有する「歯科用補綴物」という「物の発明」を特定していたため、当該請求項に記載された発明が明確でないものとなっていた。
これに対して、訂正事項23は、請求項23を「請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法によりジルコニア仮焼体を製造し、さらに、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結する状態であることを特徴とする請求項22に記載の歯科用補綴物の製造方法。」と訂正することにより、「歯科用補綴物」の「製造方法」であることを明確にし、訂正後の請求項1と整合させるものである。
したがって、訂正事項23は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項23は、本件明細書の段落【0115】の記載から導き出される事項である。
したがって、訂正事項23は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項23は、請求項23を歯科用補綴物の製造方法であることを明確にし、訂正後の請求項1と整合させるものであって、訂正事項1の検討と同様にして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 一群の請求項について
上記訂正事項1?23に係る訂正前の請求項1?23は、請求項2?23が、直接又は間接的に請求項1を引用する関係にあるから、一群の請求項である。
したがって、訂正事項1を含む本件訂正請求は、一群の請求項である請求項1?23について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

4 独立特許要件について
本件特許の請求項1?23の全ての請求項について特許異議の申立てがされたので、本件訂正請求においては、訂正後の請求項1?23に係る発明について、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件についての規定は適用はされない。

5 小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?23〕について訂正することを認める。


第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?23に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明23」といい、まとめて「本件発明」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す)。

「【請求項1】
ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、
前記積層体を800℃?1200℃で焼成してジルコニア仮焼体を製造する工程と、
を含み、
前記ジルコニア仮焼体を幅50mm×高さ10mm×奥行き5mmの寸法の直方体形状に成形したものを試験片とし、前記試験片において、幅50mm×奥行き5mmとなる面を底面としたとき、前記ジルコニア粉末の積層によって形成される境界面が前記底面と平行になっており、
前記試験片を1500℃で2時間焼成し、
2つの前記底面のうち、凹面に変形した底面を下にして載置したとき、
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.15以下であることを特徴とするジルコニア仮焼体の製造方法。
【請求項2】
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア仮焼体の製造方法。
【請求項3】
前記複数のジルコニア粉末は、顔料を含有し、顔料の含有率がそれぞれ異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体の製造方法。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法により前記ジルコニア仮焼体を製造し、さらに、1400℃?1600℃で焼結してジルコニア焼結体を製造する工程を含むことを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記ジルコニア焼結体は、
一端から他端に向かう第1方向に延在する直線上において、
前記一端から全長の25%までの区間にある第1点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L1,a1,b1)とし、
前記他端から全長の25%までの区間にある第2点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L2,a2,b2)としたとき、
L1が58.0以上76.0以下であり、
a1が-1.6以上7.6以下であり、
b1が5.5以上26.7以下であり、
L2が71.8以上84.2以下であり、
a2が-2.1以上1.8以下であり、
b2が1.9以上16.0以下であり、
L1<L2であり、
a1>a2であり、
b1>b2であり、
前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度の増減傾向が変化しないことを特徴とする請求項4に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項6】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点と前記第2点とを結ぶ直線上において、
前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)値が1以上減少する区間が存在せず、
前記第1点から前記第2点に向かってa^(*)値が1以上増加する区間が存在せず、
前記第1点から前記第2点に向かってb^(*)値が1以上増加する区間が存在しないことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項7】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第1点と前記第2点の間にある第3点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L3,a3,b3)としたとき、
L3が62.5以上80.5以下であり、
a3が-1.8以上5.5以下であり、
b3が4.8以上21.8以下であり、
L1<L3<L2であり、
a1>a3>a2であり、
b1>b3>b2である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項8】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第3点と前記第2点の間にある第4点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L4,a4,b4)としたとき、
L4が69.1以上82.3以下であり、
a4が-2.1以上1.8以下であり、
b4が3.5以上16.2以下であり、
L1<L3<L4<L2であり、
a1>a3>a4>a2であり、
b1>b3>b4>b2である、
ことを特徴とする請求項7に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項9】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第3点は前記一端から全長の45%の距離にあり、
前記第4点は前記一端から全長の55%の距離にある、
ことを特徴とする請求項8に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項10】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点、前記第3点、前記第4点及び前記第2点において、
隣接する2点におけるL^(*)値の差をΔL^(*)とし、
隣接する2点におけるa^(*)値の差をΔa^(*)とし、
隣接する2点におけるb^(*)値の差をΔb^(*)とし、
以下の式1よりΔE^(*)abを算出した場合、
前記第1点と前記第3点間のΔE^(*)abは3.7以上14.3以下であり、
前記第3点と前記第4点間のΔE^(*)abは1.8以上10.5以下であり、
前記第4点と前記第2点間のΔE^(*)abは1.0以上9.0以下である、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
[式1]

【請求項11】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第1点と前記第2点の間にある第3点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L3,a3,b3)としたとき、
L3が69.1以上82.3以下であり、
a3が-2.1以上1.8以下であり、
b3が3.5以上16.2以下であり、
L1<L3<L2であり、
a1>a3>a2であり、
b1>b3>b2である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項12】
前記ジルコニア焼結体は、
一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、
前記一端から前記他端に向かう直線上においてL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度の増減傾向が変化しないことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項13】
前記ジルコニア焼結体は、前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)値は増加傾向にあり、a^(*)値及びb^(*)値は減少傾向にあることを特徴とする請求項12に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項14】
前記ジルコニア焼結体は、前記一端から前記他端までの距離は5mm?18mmであることを特徴とする請求項5?13のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項15】
前記ジルコニア焼結体は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って色が変化しないことを特徴とする請求項5?14のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項16】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第2方向に延在する直線上の2点において、
前記2点間のL^(*)値の差をΔL^(*)とし、
前記2点間のa^(*)値の差をΔa^(*)とし、
前記2点間のb^(*)値の差をΔb^(*)とし、
以下の式2よりΔE^(*)abを算出した場合、
ΔE^(*)abが1未満であることを特徴とする請求項15に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
[式2]

【請求項17】
前記ジルコニア焼結体は、JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が1000MPa以上であることを特徴とする請求項5?16のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項18】
前記ジルコニア焼結体は、JISR1607に準拠して測定した破壊靭性が3.5MPa・m^(1/2)以上であることを特徴とする請求項5?17のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項19】
前記ジルコニア焼結体は、180℃、1MPaで5時間水熱処理試験を施した後のジルコニア焼結体のX線回折パターンにおいて、2θが30°付近の正方晶由来の[111]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さに対する、2θが28°付近の単斜晶由来の[11-1]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さの比が1以下であることを特徴とする請求項5?18のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項20】
ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、
を含み、
請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法に用いることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項21】
ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、
を含み、
請求項5?19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法に用いることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項22】
請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法によりジルコニア仮焼体を製造し、さらに、切削加工した後に焼結することを特徴とする歯科用補綴物の製造方法。
【請求項23】
請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法によりジルコニア仮焼体を製造し、さらに、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結することを特徴とする請求項22に記載の歯科用補綴物の製造方法。」


第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1?23に係る特許に対して、平成30年 5月 2日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

取消理由1:本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

請求項1?23に係る発明が解決しようとする課題は、本件明細書【0009】?【0020】によると、積層構造を有する成形体から寸法精度の高いジルコニア焼結体を得ることであると認められ、実施例の工程により得られた仮焼体は上記課題を解決できると認識できるが、請求項1は、顔料の添加率が異なるジルコニア粉末を調整することや、積層時に振動を与えて上下層の境界に混合層を形成することは特定されていないから、請求項1及びこれを引用する請求項2?23に係る発明は、上記課題を解決できる手段を認識することはできない。

取消理由2:本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(1) 請求項1?23
ア ジルコニア仮焼体は「積層体」であるから、「組成物」の記載は明確でない。

イ 「800?1200℃で焼成して製造された状態のジルコニア仮焼体」と記載されているから、「ジルコニア仮焼体」は、どのような状態であるのか明確でない。

(2) 請求項4?19、21
「・・・・・ ジルコニア仮焼体を1400℃?1600℃で焼結した状態である ・・・・・ ジルコニア焼結体」と記載されているから、「ジルコニア焼結体」は、どのような状態であるのか明確でない。

(3)請求項20
請求項1?3を引用するものであるから、請求項1?3と同様に明確でない。

(4)請求項21
請求項5?19を引用するものであるから、請求項5?19と同様に明確でない。

(5)請求項23
「CAD/CAMシステム」を用いたことにより、「歯科用補綴物」の何が特定されているのか明確でない。


第5 当審の判断
1 取消理由に対する判断
(1)取消理由1(特許法第36条第6項第1号)について
本件発明1は、「顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程」、及び「前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程」が記載され、実施例に沿った工程によりジルコニア仮焼体を製造することが特定されたものである。
そして、発明の詳細な説明には、顔料の添加率を調整することによりジルコニア粉末を作製する工程(本件明細書 段落【0101】?【0106】)、及び積層体の各層の境界に混合層を形成する工程(本件明細書 【0061】、【0062】、【0108】?【0111】)が具体的に説明されており、当業者であれば、これらの工程を採用することによって、上下層の境界に、上下層の各粉末が適度に混合した混合層を有する積層体を形成することによって、これを焼成して製造したジルコニア仮焼体は焼成時にジルコニア焼結体の変形量が小さくなることが理解でき、本件発明1によって、寸法精度の高いジルコニア焼結体が得られることは明らかであるから、本件発明1及びこれを引用する本件発明2?23は、本件発明の上記課題を解決できるといえる。
よって、取消理由1は、理由がない。

(2)取消理由2(特許法第36条第6項第2号)について
本件訂正請求による訂正によって、請求項1、20、21の組成物の記載は削除され、組成が異なる複数のジルコニア粉末を積層させることにより「積層体」を形成することが特定された。
また、訂正前の請求項1?23は、製造条件である焼成温度やCAD/CAMを用いる製造工程によって、「ジルコニア仮焼体」、「ジルコニア焼結体」又は「歯科用補綴物」などの物の発明を特定していたことから明確でなかったところ、本件訂正請求による訂正によって、本件発明1?23は、上記製造条件及び製造工程を有する製造方法の発明とされたから、発明が明確になった。
よって、取消理由2は、理由がない。

2 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由に対する判断
(1)申立理由1(特許法第36条第4項第1号)について
実施可能要件
申立人は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、訂正前の請求項1?23に係る発明は、本件明細書の記載では、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない旨主張している(申立書28?31ページ)。
しかし、本件発明は、本件訂正請求により製造方法の発明に訂正されたものであって、本件発明の製造工程において、混合層を形成するためにジルコニア粉末を積層する際に振動を与えるという具体的手段を採用すること(本件明細書 段落【0101】?【0111】)及びその実施例(本件明細書 特に 段落【0117】?【0140】)により、本件発明で規定する仮焼体が得られたことが本件明細書に記載されているから、本件発明を当業者が実施をできないとはいえない。

イ 委任省令要件
申立人は、申立書において、実施例は、仮焼体の試験結果が実際の製品に与える影響について記載されていないから、本件明細書には、本件発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえないと主張している(申立書31?33ページ)。
しかし、本件明細書には、仮焼体を焼結することで変形しやすくなるところ、本件発明において、仮焼体の焼成試験による変形量の上限の特定をした理由について説明されているから(本件明細書 段落【0061】、【0062】)、発明の詳細な説明に本件発明の技術上の意義が記載されていないとはいえない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1には、理由がない。

(2)申立理由4(特許法第29条第1項第3号)及び申立理由5(特許法第29条第2項)について

申立人は、甲第1号証?甲第6号証(以下、それぞれ「甲1」?「甲6」という。)を提出して、申立書において、以下のように主張している(申立書38?60ページ)。

申立理由4(特許法第29条第1項第3号)
訂正前の請求項1?3、20に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

申立理由5(特許法第29条第2項)
訂正前の請求項1?23に係る発明は、甲1?甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に規定に違反してされたものである。

証拠方法
甲1:特開2004-35332号公報
甲2:特開平6-39820号公報
甲3:特開2004-284840号公報
甲4:特開2003-260596号公報
甲5:特開2003-73708号公報
甲6:特開2010-220779号公報

ア 甲1?甲6の記載事項
(ア)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
(ア-1)甲1の記載事項
1a「【0005】
【課題を解決する為の手段】
即ち本発明は、着色材の配合を調整して連続的又は階層的なグラデーションを施した着色ブロックを提案することにより、加工後に着色等の作業が無く、しかも審美性に優れた着色歯科補綴物を実現する。
本発明は、ハイドロキシアパタイト、αリン酸三カルシウム、βリン酸三カルシウム等のリン酸カルシウム化合物、粘土鉱物、長石、石英等の各種ポーセレン、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化マグネシウムの酸化金属等、様々なもののいずれかあるいは2種以上の組み合わせからなる材料で、無着色あるいはZr、Pr、V、Sn、Fe、Cr、Mn、Ti、W、Sb、Co、Ni、Se等の金属酸化物を用いて着色し、非加熱あるいは少なくとも1回以上加熱処理された材料を用いて配合したセラミックスに関するものである。」

1b「【0007】
一般にセラミックスブロックは、プレス法、泥漿鋳込み法、ドクターブレード法、押出成形法などにより材料を成形し焼成させて成る。このいかなる方法においても、加工物の色調に合わせ材料の種類、色、量等を調整して充填することで、あらゆる色調の加工物を作成することが可能である。
例えば圧縮成形する場合、各部位に必要な材料を型に入れそれぞれの層に適した形のパンチ等で圧縮及び/又は成形し、次の材料の充填と圧縮をしそれを繰り返した後、全体を圧縮する方法や、全ての粉を充填してから圧縮する方法などがある。材料の充填方法を変えることで様々な加工物に対応するブロックを作成することが出来る。1つの材料を充填するたびに精度の高い成形を行えば、同じく精度の高い切削等の加工を経ることで細かい色調の加工物を作成することが可能である。層の境界をはっきりさせずにぼやかした色合いの加工物を望む場合は、各層の材料でそれぞれしっかりとした成形を行わず、すべての材料を入れてから全体を圧縮することで可能である。また、2種以上の材料を割合を変化させながら常時攪拌、充填し、最後に成形することで、境界の無い連続な色調のブロック及び加工物の作成も可能である。」

1c「【0010】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明に関して具体的に説明する。
この実施例で使用した材料の組成を以下に示す。
無着色材料
ネフェリンサイヤナイト65%、大平長石35%、
バインダー:ポリビニルアルコール1.5%
着色材料
ネフェリンサイヤナイト65%、大平長石35%、A3色粉(Zr-V、Al-Mn-Si、ハイドロキシアパタイト)0.1?0.5%、
バインダー:ポリビニルアルコール1.5%
はじめに、無着色材料、着色材料それぞれの材料のみで成形、焼成、加工した結果、加工物はグラデーションのない単色となった為、色のグラデーションのついた加工物を期待し以下の実施例にてセラミックスブロックの成形を行った。実施例に記載された無着色材料、着色材料は、上述の材料名の個々に対応している。
いずれの例も15×15×30mm^(3)の型を使用した。数字の若い順に充填、成形を行った。各層をパンチを用いて手で軽く圧縮成形し、すべての材料を充填後に一軸圧縮を1MPa、1min、等方向加圧成形を100MPa、5min行った。」

1d「【0014】
実施例4 連続のグラデーション
1、無着色材料6g
2,着色材料6g
無着色材料と着色材料を所定の割合で所定量だけ混合し、この混合材を型に充填する。次にこの割合を変えた所定量の混合材を型に充填するといった手順を繰り返し行う。
無着色材料と着色材料の割合は最初、無着色材料を100%とし、混合材を形成する毎に無着色材料の割合を一次的(比例的に)に減らしていき、同時に着色材料の割合を一次的に増やし、最後の充填は、着色材料が100%になるようにした。材料の全て充填した後、一軸圧縮を1MPa、1min間行った後、等方向加圧成形を100MPa、5min間行った。図4にその一例を概略的に示した。図4は、境界が明確に示されているが、実際は、境界が特定できないほど、連続した色調の濃淡が得られる。
・・・・・
【0016】
実施例4は、加工物に境界の無い連続なグラデーションを持たせるために、無着色材料と着色材料の割合を変化させながら混ぜ合わせ、充填した。断面の図4では、境界がわからないほどの勾配がついている。この実施例では配合を一時的な増減で行ったが、成分の割合を制御しながら混合、充填することで複雑なグラデーションも可能だと考えられる。
上記4例で作成したセラミックスブロックを真空で1100度?1150度で1時間?4時間焼成した後、歯科材料として切削加工した。
いずれも切削加工のみで色のグラデーションが付き、従来の歯科材料のようにさらに切削、盛り付けが必要なく使用可能であった。」

1e「【0017】
【発明の効果】
以上詳述のごとく本発明は、CAD/CAMを用いた歯科用加工装置を用いて研削などの加工を施して歯科用の補綴物を得るためのブロックを、複数の色彩を有する材料を積層させて得られるブロック又はグラデーションを持つ色彩を施したブロックとすることにより、着色行程を省きしかも審美性の優れた歯科用の補綴物を得ることができる等の効果を有する。」

(ア-2) 甲1に記載された発明
記載事項1a?1cによると、セラミックスブロックの材料として、無着色材料と着色材料との配合を調整することで複数の色のセラミックス粉を得ているといえる。
そして、記載事項1b?1eによると、実施例4において、上記複数の色のセラミックス粉を、型に充填するという手順を繰り返し行うことで、各セラミックス粉を積層させて成形体を作成し、これを、1100度?1150度で焼成することにより、セラミックスブロックを製造している。

以上のことから、本件発明1の記載にしたがって整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という)が記載されていると認められる。
「無着色材料を含有し、着色材料の配合を調整することで複数の色のセラミックス粉を得る工程と、
前記複数の色のセラミックス粉を積層させ、成形体を得る工程と、
前記成形体を、1100度?1150度で焼成してセラミックスブロックを製造する工程と、
を含む、セラミックスブロックの製造方法。」

(イ)甲2の記載事項及び甲2に記載された技術的事項
(イ-1)甲2の記載事項
2a「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、容器状のゴム型内にネットを配置して複数層の充填空間を形成し、該各充填空間の夫々に組成の異なる複数種の粉体を充填し、次いで、前記ゴム型を加振することにより前記各ネットの網目を通して各充填空間相互の境界部の粉体同士を混合せしめ、前記境界部を一方の粉体の組成から他方の粉体の組成に徐々に変化していくような連続した組成層として形成し、然る後、前記ゴム型を耐圧容器中で高圧流体により等方的に加圧して前記ゴム型内の粉体を圧密成形することを特徴とする多層粉体成形法に係るものである。」

2b「【0010】
【作用】従って本発明では、ゴム型を加振することにより各ネットの網目を通して各充填空間相互の境界部の粉体同士が混合され、前記境界部が一方の粉体の組成から他方の粉体の組成に徐々に変化していくような連続した組成層として形成されるので、前記ゴム型を耐圧容器中で高圧流体により等方的に加圧して前記ゴム型内の粉体を圧密成形すると、ゴム型から取り出される成形体は各層間が連続的に組成変化する多層粉体の成形体として成形される。」

2c「【0014】本実施例では、組成の異なる三種類の粉体の一例として、マンドレル2に隣接する内側の充填空間5に充填される粉体8を多孔質セラミック粉体、ゴム型1の内周に隣接する外側の充填空間7に充填される粉体10を緻密質セラミック粉体、中間の充填空間6に充填される粉体9を前記緻密質セラミック粉体と多孔性セラミック粉体との中間的組成のセラミック粉体とする。
【0015】ここで、前記多孔質セラミック粉体と緻密質セラミック粉体の違いはバインダ11量の違いである。
【0016】次いで、前記ゴム型1を図示しないバイブレータ等で加振することにより、前記各ネット3,4の網目を通して各充填空間5,6,7相互の境界部12,13における粉体8,9,10同士を混合せしめ、前記境界部12,13を一方の粉体の組成から他方の粉体の組成に徐々に変化していくような連続した(傾斜した)組成層として形成する。
【0017】然る後、前記ゴム型1の上部を図2中二点鎖線で示すゴム型1の蓋体1aで閉塞し、その閉塞部を確実にシールした上でゴム型1内の各粉体8,9,10中に混入している空気を吸引してゴム型1内を負圧状態とし、次いで、図3に示す如く、前記ゴム型1を耐圧容器14に入れ、該耐圧容器14内で高圧の水或いは油等の高圧流体15により等方的に加圧する、即ちCIP(冷間静水圧プレス)を行うことによって前記ゴム型1内の粉体8,9,10を圧密成形する。
【0018】而して、前記CIP後にゴム型1から取り出され且つマンドレル2を除去された粉体8,9,10は、三層の境界部12,13が連続的に組成変化する多層粉体の成形体16(図4参照)として成形される。
【0019】更に、前記成形体16を加熱することによって粉体8,9,10中に含まれるバインダ11類を気化分解する脱脂処理を行った後に、前記成形体16を更に高い温度で焼成すれば、外側を緻密質セラミックとし且つ内側を多孔質セラミックとした多層セラミックが得られる。
・・・・・
【0021】以上の如くして得られた多層セラミックは、外側で構造的強度が高く且つ内側で耐熱衝撃性が高いという異なる機能を合わせ持つ高温構造部材となり、しかも、組成の異なる三層の粉体8,9,10の境界部12,13が連続的に組成変化するようになっているので、熱膨張差により層間が緩んだり割れが生じたりすることがなく、機械的に強固な結合が得られる。」

(イ-2)甲2に記載された技術的事項
記載事項2a?2cによると、甲2には、組成の異なる粉体を充填し型を加振して層の境界部の粉体同士を混合させた後、成形し焼成することで、機械的に強固な結合をした多層セラミックの成形体を得ることが記載されている。

(ウ)甲3の記載事項及び甲3に記載された技術的事項
(ウ-1)甲3の記載事項
3a「【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の多孔質セラミックスの製造方法の第一は、
(1)粘性を2000?6000mPa・sに調整したセラミックススラリーを準備する工程、(2)起泡剤および溶媒を含む混合液を発泡させた発泡液を準備する工程、(3)セラミックススラリーと発泡液を混合し、含気泡スラリーを作製する工程、(4)含気泡スラリーを成形手段を用いて成形した後、該成形手段より脱型または排出することにより未硬化成形体を作製する工程、(5)未硬化成形体を乾燥硬化する工程、(6)焼成する工程、を含むことを特徴とする。
・・・・・ 」

3b「【0017】
ところで、流動性の低い含気泡スラリーを作製した場合、図1に示すように先に供給された含気泡スラリーと後から供給された含気泡スラリーが混ざり合わずに層状に堆積してその境目に境界線3ができたり、空隙4ができてしまう。これら境界線3や空隙4は、成形体2の中に残るため焼成後の多孔質セラミックスの欠陥となってしまい、亀裂発生や強度低下の原因となりやすい。
【0018】
そこで、本発明における多孔質セラミックスを製造するための成形装置としては、(1)セラミックススラリーを連続的に供給する供給手段、(2)起泡剤および溶媒を含む混合液から発泡液を作製して連続的に供給する手段、(3)供給された該セラミックススラリーと該発泡液を混合して連続的に含気泡スラリーを作製する混合手段、(4)作製した該含気泡スラリーに振動を与えて均一化する均一化手段、(5)均一化した該含気泡スラリーを成形する成形手段、(6)成形手段から脱型または排出した未硬化成形体を搬送する搬送手段、(7)該未硬化成形体を乾燥硬化する乾燥手段、を少なくとも備えていることを特徴とする。本発明における成形装置では、成形装置に含気泡スラリーを導入する際に、振動を与えることにより境界線3や空隙4を取り除き、均一化させるので気泡が均一に分散した良好な成形体を得ることが可能となる。」

(ウ-2)甲3に記載された技術的事項
記載事項3a、3bによると、甲3には、セラミックスラリーを連続的に供給し、先に供給したスラリーと後から供給されたスラリーとの境界線や空隙を振動を与えることによって取り除いて均一化させた後、成形、乾燥硬化し、焼成して多孔質セラミックスを製造することが記載されている。

(エ)甲4の記載事項及び甲4に記載された技術的事項
(エ-1)甲4の記載事項
4a「【0008】
【課題を解決するための手段】前記した課題を解決するため、本発明の請求項1では、粉末冶金による成形体の製造方法において、成形体を成形するダイの内部に仕切板を配置することにより前記ダイの内部を複数の成形部に仕切り、前記仕切板の一側に形成された第一成形部に第一粉末材料を供給し、前記仕切板の他側に形成された第二成形部に第二粉末材料を供給し、前記仕切板を取り除いた後、パンチにより前記第一、第二粉末材料を圧縮成形して圧粉体を得、この圧粉体を焼結して成形体を得ることを特徴とする。」

4b「【0014】さらに、前記した粉末冶金による成形体の製造方法においては、前記仕切板を取り除いた後、前記パンチにより前記第一、第二粉末材料を圧縮成形する前に、前記第一、第二粉末材料に振動を与える工程を行うのが望ましい。このように振動を与えることで、第一、第二粉末材料間で粉末材料が入り混じり、確実に第一、第二粉末材料を噛み合わせることができるので、第一、第二粉末材料が互いに強固に接合される。」

(エ-2)甲4に記載された技術的事項
記載事項4a、4bによると、ダイの内部に仕切板を配置して複数の成形部に仕切り、第一成形部に第一粉末材料を供給し、第二成形部に第二粉末材料を供給し、仕切板を取り除いて各粉末材料が入り混じるように振動を与えた後、圧縮成形して圧粉体を得、これを焼結し第一、第二粉末材料が強固に接合された成形体を製造することが記載されている。

(オ)甲5の記載事項及び甲5に記載された技術的事項
(オ-1)甲5の記載事項
5a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、焼結体、複合材料、圧粉成形体、予備焼結体(プリフォーム)等を製作する場合に有効な粉末充填方法とその装置に関するものである。また、その方法または装置を用いた複合材料の製造方法に関するものである。」

5b「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、粉末の入ったキャビティ内で揺動体を揺動させることを思い付き、本発明を完成させるに至った。
(粉末充填方法)すなわち、本発明の粉末充填方法は、コンテナのキャビティに粉末を投入する投入工程と、該投入工程後に該キャビティ内の粉末上で揺動体を揺動させて該粉末を高充填する加振工程とを備えることを特徴とする。」

5c「【0019】そこで、本発明者は、キャビティの形状に応じて、粉末を適当に分割して充填することを考えた。つまり、前記投入工程と前記加振工程とを順に複数回繰返して、粉末をキャビティへ分割充填する方法である。つまり、一回の投入工程と一回の加振工程で充填する粉末量は、均一で嵩密度の高い状態を達成できる範囲とする。そして、小分けにした投入工程と加振工程とを繰返すことで、キャビティの形状に拘らず、全体としても均一で、嵩密度の高い充填が可能となる。なお、分割回数は、キャビティの形状、生産性等を考慮して適宜決定される。また、分割した各層の境界面に、層間の連結性を向上させるための溝等を形成しておいても良い。」

(オ-2)甲5に記載された技術的事項
記載事項5a?5cによると、焼結体等を製造する場合に、コンテナのキャビティに粉末を投入する工程と、該投入工程後に粉末上で揺動体を揺動させて粉末を高充填する加振工程とを複数回繰り返すことにより、均一で嵩密度の高い充填を行うことが記載されている。

(カ)甲6の記載事項及び甲6に記載された技術的事項
(カ-1)甲6の記載事項
6a「【0013】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、収縮率の安定した歯科用セラミック仮焼体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
斯かる目的を達成するため、第1発明の歯科用セラミック仮焼体の要旨とするところは、酸化ジルコニウムを主成分とする成形体に脱脂処理および仮焼処理が施されて成り、本焼成時の線収縮率が19.0(%)以上且つ22.0(%)以下であることにある。」

6b「【0019】
また、好適には、前記仮焼体は、仮焼温度が800(℃)以上且つ950(℃)以下の範囲内である。前記線収縮率、前記密度、前記曲げ強度は、上記範囲内の温度で仮焼を施すことによって容易に得られる。ジルコニアセラミックスは、例えば1000(℃)程度から急激に収縮が進む傾向を有するため、仮焼温度は950(℃)以下が好ましい。また、原料粒子の結合がある程度進まないと強度が得られないので、800(℃)以上が好ましい。
【0020】
また、好適には、前記仮焼体は、91.00?98.45(wt%)の酸化ジルコニウムと、1.5?6.0(wt%)の酸化イットリウムと、0.05?0.50(wt%)のアルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、インジウムの少なくとも一つの酸化物とを含むものである。本発明の仮焼体を構成するジルコニアの組成は特に限定されず、例えば、安定化材としては、酸化イットリウムの他に酸化セリウムや酸化カルシウム、酸化マグネシウム等も用いられるが、強度や色調等の面から上記のような組成が好ましい。
【0021】
また、好適には、前記仮焼体は着色剤を含むものである。このようにすれば、酸化ジルコニウムの本来の色調のままでは困難な場合にも自然歯に近い色調の人工歯が得ることができる。着色剤としては、4?6族の遷移金属酸化物、アルミニウム化合物、珪素化合物、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、硫化鉄、硫化マグネシウム、硫化ニッケル、酢酸ニッケル、酢酸鉄、酢酸マグネシウム等を用い得る。これら着色剤は、例えばジルコニア原料に有機結合剤を添加して造粒するに際して同時に添加することができる。また、その造粒の際には、必要に応じて焼結助剤を添加することもできる。」

6c「【0023】
また、本発明の仮焼体およびこれを用いた人工歯は、例えば以下のようなプロセスで製造される。すなわち、まず、ジルコニア原料顆粒を用意し、これをプレス成形する。次いで、必要に応じてその成形体にCIP成形を施す。この際の加圧力は、例えば100?500(MPa)である。次いで、これに仮焼処理を施す。仮焼は、室温から緩やかに800?950(℃)まで昇温し、1?6時間程度係留するもので、成形体からの線収縮率は例えば0.2?1.0(%)程度、仮焼後の曲げ強度は3?6(MPa)程度である。これにより、前述したような収縮ばらつきの小さい歯科用セラミック仮焼体が得られる。
【0024】
また、人工歯は、上記仮焼体を用いて歯科技工士や技工所において、例えば以下のようにして製造される。すなわち、まず、歯科医から供給された模型に基づき、仮焼体毎に予め定められた割掛けでCADを用いてフレーム図面を作成する。なお、「割掛け」とは、仮焼体固有の線収縮率から算出された拡大率で、模型寸法に割掛けを乗ずることで各部の寸法が与えられる。次いで、CAMを用いて仮焼体からフレーム仮焼体を切削加工により得る。次いで、得られたフレーム仮焼体に本焼成処理を施す。これは、例えば1300?1600(℃)程度の範囲内の温度で30分?2時間程度係留することにより行われる。次いで、焼結したフレームの表面に陶材を築盛する。これにより、模型と同一形状の人工歯が得られる。」

(カ-2)甲6に記載された技術的事項
記載事項6a?6cによると、酸化ジルコニウムと、安定化材として酸化イットリウム及び着色剤を含むジルコニアセラミックスの成形体を、800(℃)以上且つ950(℃)以下の温度で仮焼して仮焼体を得る工程、前記仮焼体を切り出してフレーム仮焼体を得る工程、及びフレーム仮焼体を1300?1600(℃)で焼成処理を施す工程を含む、人工歯のフレームの製造方法が記載されている。

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
(ア-1) 発明の対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「セラミックス粉」は、本件発明1の「粉末」に相当する。
甲1発明の「着色材料の配合を調整する」ことは、本件発明1の「顔料の添加率を調整する」ことに相当する。
甲1発明の「複数の色」は、本件発明1の「組成が異なる複数」であることに相当する。
甲1発明の「成形体」は、セラミック粉を積層することで得られるから、本件発明1の「積層体」に相当する。

以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、
「顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数の粉末を形成する工程と、
前記複数の粉末を積層させ、積層体を形成する工程と、
前記積層体を800℃?1200℃で焼成する工程と、
を含む、製造方法。」
の点で一致し、以下の点で両者は相違している。

( 相違点 )
相違点1:本件発明1は、上記複数の粉末は、ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有するジルコニア粉末であるのに対して、甲1発明は、上記複数の粉末は、無着色材料を含有するセラミック粉である点。

相違点2:本件発明1は、上記積層体を形成する工程において、積層体の上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成するものであるのに対して、甲1発明は、成形体の上下層の境界に混合層を形成するものであるのかは明らかではない点。

相違点3:本件発明1は、焼成により仮焼体を得るものであって、当該仮焼体について焼成試験による変形量を規定したものであるのに対して、甲1発明は、焼成により、仮焼体ではなく、本焼結されたセラミックスブロックを得るものである点。

(ア-2) 相違点の判断
まず、相違点1及び相違点3について検討する。
甲1の記載事項1aには、ジルコニアを材料とすることは記載されているが、具体例としては、記載事項1cに、Zr-Vの色粉として、Zrを着色材料として用いることが記載されているにすぎない。
ここで、甲6を参照すると、酸化ジルコニウム粉末を材料とした仮焼体を加工した後、さらに1300?1600℃で高温焼成して製品とすることが記載されているが、記載事項1d及び記載事項1eによると、甲1発明に係るセラミックスブロックは、1100℃?1150℃で焼成し、これを歯科材料として切削のみで加工して歯科用の補綴物として用いるものであるから、甲1発明は、セラミック粉として、本件発明1のように仮焼工程を要するジルコニア粉末を使用することを想定しているとはいえない。
また、甲2?甲5には、セラミックスブロックの材料としてジルコニア粉末を用いることは記載も示唆もされていない。

したがって、甲1?甲6の記載事項を検討しても、甲1発明においてジルコニア粉を採用して、ジルコニア仮焼体を形成することは、当業者が容易になし得るものとはいえない。

次に、相違点2について検討する。
甲1の記載事項1bによると、層の境界をはっきりさせずにぼやかした色合いの加工物を望む場合は、各層の材料でそれぞれしっかりとした成形を行わず、すべての材料を入れてから全体を圧縮することが記載されているが、各層の粉を単に充填する操作を行っているにすぎず、また、2種以上の材料を割合を変化させながら常時撹拌し、充填し、最後に成形することで、境界の無い連続な色調のブロックを作成することも記載されているが、これは層の境界を形成するものではない。
そうすると、甲1発明は、積層する際にセラミックスブロックの色調を調整するものであるが、本件発明1のように、積層体の上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成することを想定しているとはいえない。

次に、甲2、甲4及び甲5の記載事項によると、振動により粉体の層の境界部に混合層を形成している工程が開示されているといえるが、甲2は、焼成した多層セラミックスを、甲4は、粉末冶金による成形体を、それぞれ強固に結合するためのものであり、また、甲5は、均一性の向上した成形体を得るためものである。
そうすると、甲2、甲4及び甲5の混合層を、強固な結合や均一性の向上ではなく、色調を調整することを目的とする甲1発明に適用する動機付けはない。

さらに、甲3の記載事項によると、セラミックスラリーの境界を混合して、境界線や空隙を取り除き、多孔質セラミックスの均一化を図ることが記載されているにすぎないから、甲3は、粉末の積層体の境界において粉末が混合した混合層を形成することを示唆するものではない。

以上のことから、上記相違点1?3は、本件発明1と甲1発明との実質的な相違点であって、さらに甲1?甲6の記載を検討しても、甲1発明において、相違点1?3を解消することはできない。

よって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1?甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件発明2?23について
本件発明2?23は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、3、20は、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明2?23は、甲1?甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由4及び申立理由5には、理由がない。


3 申立人の意見について
申立人は、平成30年 8月17日付け意見書において、訂正後の本件特許は、依然として特許法第36条第6項第1号(サポート要件)及び特許法第29条第2項(進歩性)の規定に違反すると主張している。
しかし、前者については、取消理由1及び取消理由2に関する主張であり、また、後者は、申立理由4と同じく、甲1、さらには甲2?甲6を証拠とするものであって、上記1、2の判断のとおりであるから、いずれも採用できない。


第6 むすび
以上のとおり、請求項1?23に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載した申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1?23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、
前記積層体を800℃?1200℃で焼成してジルコニア仮焼体を製造する工程と、
を含み、
前記ジルコニア仮焼体を幅50mm×高さ10mm×奥行き5mmの寸法の直方体形状に成形したものを試験片とし、前記試験片において、幅50mm×奥行き5mmとなる面を底面としたとき、前記ジルコニア粉末の積層によって形成される境界面が前記底面と平行になっており、
前記試験片を1500℃で2時間焼成し、
2つの前記底面のうち、凹面に変形した底面を下にして載置したとき、
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.15以下であることを特徴とするジルコニア仮焼体の製造方法。
【請求項2】
(凹面に変形した前記底面と接地面との最大間隔)/(前記幅方向における接地部分間の距離)×100が0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア仮焼体の製造方法。
【請求項3】
前記複数のジルコニア粉末は、顔料を含有し、顔料の含有率がそれぞれ異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア仮焼体の製造方法。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法により前記ジルコニア仮焼体を製造し、さらに、1400℃?1600℃で焼結してジルコニア焼結体を製造する工程を含むことを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記ジルコニア焼結体は、
一端から他端に向かう第1方向に延在する直線上において、
前記一端から全長の25%までの区間にある第1点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L1,a1,b1)とし、
前記他端から全長の25%までの区間にある第2点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L2,a2,b2)としたとき、
L1が58.0以上76.0以下であり、
a1が-1.6以上7.6以下であり、
b1が5.5以上26.7以下であり、
L2が71.8以上84.2以下であり、
a2が-2.1以上1.8以下であり、
b2が1.9以上16.0以下であり、
L1<L2であり、
a1>a2であり、
b1>b2であり、
前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度の増減傾向が変化しないことを特徴とする請求項4に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項6】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点と前記第2点とを結ぶ直線上において、
前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)値が1以上減少する区間が存在せず、
前記第1点から前記第2点に向かってa^(*)値が1以上増加する区間が存在せず、
前記第1点から前記第2点に向かってb^(*)値が1以上増加する区間が存在しない
ことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項7】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第1点と前記第2点の間にある第3点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L3,a3,b3)としたとき、
L3が62.5以上80.5以下であり、
a3が-1.8以上5.5以下であり、
b3が4.8以上21.8以下であり、
L1<L3<L2であり、
a1>a3>a2であり、
b1>b3>b2である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項8】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第3点と前記第2点の間にある第4点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L4,a4,b4)としたとき、
L4が69.1以上82.3以下であり、
a4が-2.1以上1.8以下であり、
b4が3.5以上16.2以下であり、
L1<L3<L4<L2であり、
a1>a3>a4>a2であり、
b1>b3>b4>b2である、
ことを特徴とする請求項7に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項9】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第3点は前記一端から全長の45%の距離にあり、
前記第4点は前記一端から全長の55%の距離にある、
ことを特徴とする請求項8に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項10】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点、前記第3点、前記第4点及び前記第2点において、
隣接する2点におけるL^(*)値の差をΔL^(*)とし、
隣接する2点におけるa^(*)値の差をΔa^(*)とし、
隣接する2点におけるb^(*)値の差をΔb^(*)とし、
以下の式1よりΔE^(*)abを算出した場合、
前記第1点と前記第3点間のΔE^(*)abは3.7以上14.3以下であり、
前記第3点と前記第4点間のΔE^(*)abは1.8以上10.5以下であり、
前記第4点と前記第2点間のΔE^(*)abは1.0以上9.0以下である、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
[式1]

【請求項11】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第1点から前記第2点を結ぶ直線上において、前記第1点と前記第2点の間にある第3点のL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度(L^(*),a^(*),b^(*))を(L3,a3,b3)としたとき、
L3が69.1以上82.3以下であり、
a3が-2.1以上1.8以下であり、
b3が3.5以上16.2以下であり、
L1<L3<L2であり、
a1>a3>a2であり、
b1>b3>b2である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項12】
前記ジルコニア焼結体は、
一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、
前記一端から前記他端に向かう直線上においてL^(*)a^(*)b^(*)表色系による色度の増減傾向が変化しないことを特徴とする請求項5に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項13】
前記ジルコニア焼結体は、前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記第1点から前記第2点に向かってL^(*)値は増加傾向にあり、a^(*)値及びb^(*)値は減少傾向にあることを特徴とする請求項12に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項14】
前記ジルコニア焼結体は、前記一端から前記他端までの距離は5mm?18mmであることを特徴とする請求項5?13のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項15】
前記ジルコニア焼結体は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って色が変化しないことを特徴とする請求項5?14のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項16】
前記ジルコニア焼結体は、
前記第2方向に延在する直線上の2点において、
前記2点間のL^(*)値の差をΔL^(*)とし、
前記2点間のa^(*)値の差をΔa^(*)とし、
前記2点間のb^(*)値の差をΔb^(*)とし、
以下の式2よりΔE^(*)abを算出した場合、
ΔE^(*)abが1未満であることを特徴とする請求項15に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
[式2]

【請求項17】
前記ジルコニア焼結体は、JISR1601に準拠して測定した曲げ強度が1000MPa以上であることを特徴とする請求項5?16のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項18】
前記ジルコニア焼結体は、JISR1607に準拠して測定した破壊靭性が3.5MPa・m^(1/2)以上であることを特徴とする請求項5?17のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項19】
前記ジルコニア焼結体は、180℃、1MPaで5時間水熱処理試験を施した後のジルコニア焼結体のX線回折パターンにおいて、2θが30°付近の正方晶由来の[111]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さに対する、2θが28°付近の単斜晶由来の[11-1]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さの比が1以下であることを特徴とする請求項5?18のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
【請求項20】
ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、
を含み、
請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法に用いることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項21】
ジルコニア及びジルコニアの相転移を抑制する安定化剤を含有し、顔料の添加率を調整することで組成が異なる複数のジルコニア粉末を形成する工程と、
前記複数のジルコニア粉末を積層させ、上下層の境界において各粉末が部分的に混合した混合層を形成した積層体を形成する工程と、
を含み、
請求項5?19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法に用いることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項22】
請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法によりジルコニア仮焼体を製造し、さらに、切削加工した後に焼結することを特徴とする歯科用補綴物の製造方法。
【請求項23】
請求項1?3のいずれか一項に記載のジルコニア仮焼体の製造方法によりジルコニア仮焼体を製造し、さらに、CAD/CAMシステムを用いて切削加工した後に焼結することを特徴とする請求項22に記載の歯科用補綴物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-27 
出願番号 特願2013-100618(P2013-100618)
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (C04B)
P 1 651・ 853- YAA (C04B)
P 1 651・ 537- YAA (C04B)
P 1 651・ 113- YAA (C04B)
P 1 651・ 536- YAA (C04B)
P 1 651・ 121- YAA (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増山 淳子末松 佳記宮崎 大輔  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 小川 進
後藤 政博
登録日 2017-08-10 
登録番号 特許第6189627号(P6189627)
権利者 クラレノリタケデンタル株式会社
発明の名称 ジルコニア焼結体、ジルコニア組成物及びジルコニア仮焼体、並びに歯科用補綴物  
代理人 加藤 朝道  
代理人 加藤 朝道  
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