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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1354524
審判番号 不服2018-7722  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-05 
確定日 2019-08-14 
事件の表示 特願2016-552709「CアームX線環境において、画像を最小限にしか遮蔽せず、寸法上最小限にしか影響を及ぼさない磁場発生器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月14日国際公開、WO2015/068069、平成28年11月17日国内公表、特表2016-535658〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)10月21日(パリ条約による優先権主張 2013年11月6日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月26日付けで拒絶理由が通知され、同年9月5日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月1日付けで拒絶査定されたところ、同年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年6月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年6月5日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「身体を支持するテーブルに装着できるように構成された磁場発生器アセンブリであって、
第1の平面内に配置された複数の細長い導電性要素であって、各導電性要素が、前記第1の平面に対して垂直に延在する中心軸の周りに、前記中心軸から前記導電性要素の外周まで連続して増加する距離で巻かれている、複数の細長い導電性要素
を備え、
前記複数の導電性要素が前記アセンブリの第1の層を形成し、
前記第1の層が前記第1の平面内に存在し、
前記複数の導電性要素は、さらに、前記アセンブリの第2の層を備え、前記第2の層は、第2の平面内に存在し、前記第1の層は、前記第2の層の上に積層されており、
前記複数の導電性要素のそれぞれが備える前記第1の層及び前記第2の層は、単一の導電線が巻かれて前記第1の層が前記第2の層の上に積層されるように形成されている、アセンブリ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年9月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「身体を支持するテーブルに装着できるように構成された磁場発生器アセンブリであって、
第1の平面内に配置された複数の細長い導電性要素であって、各導電性要素が、前記第1の平面に対して垂直に延在する中心軸の周りに、前記中心軸から前記導電性要素の外周まで連続して増加する距離で巻かれている、複数の細長い導電性要素
を備え、
前記複数の導電性要素が前記アセンブリの第1の層を形成し、
前記第1の層が前記第1の平面内に存在し、
前記複数の導電性要素は、さらに、前記アセンブリの第2の層を備え、前記第2の層は、第2の平面内に存在し、前記第1の層は、前記第2の層の上に積層されている、
アセンブリ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の層」と「第2の層」との関係について、「前記複数の導電性要素のそれぞれが備える前記第1の層及び前記第2の層は、単一の導電線が巻かれて前記第1の層が前記第2の層の上に積層されるように形成されている、」との限定を加えるものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献

ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2010/0305427号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審において付した。以下同じ。)

(引1ア)
「[0024] Referring now to the drawings, FIG. 1 illustrates a schematic diagram of an exemplary embodiment of a surgical navigation system 10 . The surgical navigation system 10 includes at least one magnetoresistance sensor 12 attached to at least one device 14 , at least one magnetoresistance reference sensor 16 rigidly attached to an anatomical reference of a patient 18 undergoing a medical procedure, a planar sensor array 24 positioned on a table 26 supporting the patient 18 , and a portable workstation 28 .」
(当審訳)
「[0024] ここで図面を参照すると、図1は、手術ナビゲーションシステム10の実施形態の概略図を示す。手術ナビゲーションシステム10は、少なくとも1つの装置14に取り付けられた少なくとも1つの磁気抵抗センサ12、医療処置中の患者18の解剖学的基準に強固に取り付けられた少なくとも1つの磁気抵抗基準センサ16、患者18を支持するテーブル26上に配置された平面状センサアレイ24、及び、可搬式ワークステーション28を含む。」

(引1イ)
「[0044] FIG. 3 illustrates a top view of an exemplary embodiment of a planar sensor array 60 . The planar sensor array 60 may be implemented as the planar sensor array 24 shown in FIG. 1 . The planar sensor array 60 may be an electromagnetic planar transmitter or receiver coil array. It is well known by the electromagnetic principle of reciprocity, that a description of a coil's properties as a transmitter may also be used to understand the coil's properties as a receiver. Therefore, the planar sensor array 60 may be used as a transmitter or a receiver.
[0045] The planar sensor array 60 includes a plurality of planar sensor coils 62 formed on or within at least one substrate 64 and arranged in a specific configuration to eliminate dead zones. The plurality of planar sensor coils 62 may be made of a conductive material forming a plurality of conductor traces 66 with spaces 68 in-between. The at least one substrate 64 may be made of an insulating material that is rigid or flexible. In an exemplary embodiment, the planar sensor array 60 includes at least two layers 70 , 72 of a plurality of planar sensor coils 62 formed on or within at least one substrate 64 . A first layer 70 of a plurality of planar sensor coils 62 is arranged on or within a first layer 74 of the at least one substrate 64 . A second layer 72 of a plurality of planar sensor coils 62 is arranged on or within a second layer 76 of the at least one substrate 64 . The second layer 72 of the plurality of planar sensor coils 62 is positioned above the first layer 70 of the plurality of planar sensor coils 62 , and overlaps a center portion 78 of the first layer 70 of the plurality of planar sensor coils 62 .
[0046] In the exemplary embodiment shown in FIG. 3 , the planar sensor array 60 includes the first layer 70 of at least six rectangular-shaped spiral coils 62 , arranged on or within the first layer 74 of the at least one substrate 64 in a 3×2 pattern, and the second layer 72 of at least two rectangular-shaped spiral coils 62 arranged on or within the second layer 76 of the at least one substrate 64 .」
(当審訳)
「[0044] 図3は、平面状センサアレイ60の実施形態の上面図を示している。平面状センサアレイ60は、図1に示した平面状センサアレイ24として実装されてもよい。平面状センサアレイ60は、平面状電磁トランスミッターコイルアレイ、又は、平面状電磁レシーバーコイルアレイであってもよい。これは、トランスミッターとしてのコイル特性の説明が、レシーバーとしてのコイル特性を理解するためにも使用することができるという、電磁の相互原理としてよく知られている。したがって、平面状センサアレイ60は、トランスミッター又はレシーバーとして使用することができる。
[0045] 平面状センサアレイ60は、少なくとも1つの基板64の上又は中に形成された、そしてデッドゾーンを除くために特定の構成に配置された、複数の平面状センサコイル62を含む。複数の平面状センサコイル62は、間にスペース68をもつ複数の導体トレース66を形成する導電材料で作られてもよい。少なくとも1つの基板64は、剛性又は可撓性を有する絶縁材料で作られてもよい。実施形態では、平面状センサアレイ60は、少なくとも1つの基板64の上又は中に形成された複数の平面状センサコイル62の、少なくとも2つの層70、72を含む。複数の平面状センサコイル62の第1層70は、少なくとも1つの基板64の第1層74の上又は中に配置されている。複数の平面状センサコイル62の第2層72は、少なくとも1つの基板64の第2層76の上又は中に配置されている。複数の平面状センサコイル62の第2層72は、複数の平面状センサコイル62の第1層70の上に配置され、そして、複数の平面状センサコイル62の第1層70の中央部78に重なる。
[0046] 図3に示した実施形態では、平面状センサアレイ60は、少なくとも1つの基板64の第1層74の上又は中に3×2のパターンで配置された、少なくとも6個の矩形状のスパイラルコイル62の第1層70と、少なくとも1つの基板64の第2層76の上又は中に配置された、少なくとも2つ矩形状のスパイラルコイル62の第2層72とを含む。」

(引1ウ)FIG.1には、以下の図面が示されている。


(引1エ)FIG.3には、以下の図面が示されている。


(引1オ)FIG.4には、以下の図面が示されている。


(イ)引用文献1に記載された発明

上記(引1イ)の[0044]に「平面状センサアレイ60は、図1に示した平面状センサアレイ24として実装されてもよい。」と記載されていることを含め、上記(ア)の記載事項及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「手術ナビゲーションシステム10に含まれる、患者18を支持するテーブル26上に配置された平面状センサアレイ60であって、
平面状センサアレイ60は、平面状電磁トランスミッターコイルアレイであり、
平面状センサアレイ60は、1つの基板64の中に形成された複数の平面状センサコイル62を含み、複数の平面状センサコイル62は、間にスペース68をもつ複数の導体トレース66を形成する導電材料で作られており、
平面状センサアレイ60は、1つの基板64の中に形成された複数の平面状センサコイル62の2つの層70、72を含み、複数の平面状センサコイル62の第1層70は、1つの基板64の第1層74の中に配置され、複数の平面状センサコイル62の第2層72は、1つの基板64の第2層76の中に配置され、複数の平面状センサコイル62の第2層72は、複数の平面状センサコイル62の第1層70の上に配置されており、
平面状センサアレイ60は、1つの基板64の第1層74の中に3×2のパターンで配置された6個の矩形状のスパイラルコイル62の第1層70と、1つの基板64の第2層76の中に配置された2つ矩形状のスパイラルコイル62の第2層72とを含む、
平面状センサアレイ60。」

イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2003/0233042号明細書(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(引2ア)
「[0001] The present invention relates to a spiral magnetic transmitter for position measurement system.」
(当審訳)
「[0001] 本発明は、位置測定システムのためのスパイラル磁気トランスミッターに関するものである。」

「[0032] With reference now to FIG. 3, a first embodiment of antenna in accordance with the teachings of the present invention is generally designated by the reference numeral 10 and is seen to include a substrate 11 that may comprise a PC board, and a transmitter generally designated by the reference numeral 13 including a spiral shape 15 mounted on the top surface 14 of the PC board, and a corresponding spiral shape 17 shown in phantom mounted on the bottom surface of the PC board. The shapes 15 and 17 are connected by a feed through 19 at the center thereof.」
(当審訳)
「[0032] 図3をいま参照すると、本発明の教示に従った第1の実施形態のアンテナは、参照番号10によって概示され、そして、PC基板を含む基板11、及び、PC基板の上面14に取り付けられたスパイラル形状15と仮想線で示すPC基板の下面に取付けられた対応するスパイラル形状17とを含む参照番号13によって概示されたトランスミッター、を含むことが示されている。スパイラル形状15及び17は、それぞれの中心でフィードスルー(貫通接続)19によって接続されている。」

(引2イ)
「 [0033] With reference to FIGS. 4 - 6 , a second embodiment of transmitter is generally designated by the reference numeral 20 and is seen to include three spiral transmitter coils 21, 23 and 25 associated with one another in overlapping configuration as shown in FIG. 4 .
[0034] As seen in FIG. 5 , the transmitter 20 may be mounted on a substrate 27 such as, for example, a PC board. If desired, in keeping with the teachings of FIG. 3 , each of the spiral coils 21, 23 and 25 may also be coupled to an additional coil mounted beneath the substrate 27 and electrically connected to each respective one of the coils 21, 23 or 25 by respective feed throughs (not shown).
[0035] FIG. 6 shows a top view of the configuration shown in FIG. 5 . 」
(当審訳)
「[0033] 図4-6を参照すると、第2の実施形態のトランスミッターは、参照番号20によって概示され、そして、図4に示されるように、互いにオーバーラップした構成で関連付けられた3個のスパイラルトランスミッターコイル21、23、25を含むことが示されている。
[0034] 図5に示されるように、トランスミッター20は、例えば、PC基板のような基板27に取り付けられてもよい。必要に応じて、図3の教示するを踏まえて、各スパイラルコイル21、23、25は、基板27の下に取り付けられた補助コイルに結合され、各コイル21、23、25のそれぞれ一つに、それぞれのフィードスルーによって電気的に接続されてもよい(図示せず)。
[0035] 図6は、図5に示された構成の上面図を示している。

(引2ウ)
「[0036] In one preferred configuration, the transmitters 10, 21, 23 and 25 may be constructed of a radius of 5 inches each consisting of two layers of conductor with 67 turns per layer and a pitch of 0.075 inches. Such a transmitter has an inductive of about 1.53 mH and a DC resistance of approximately 5.2 Ohms. 」
(当審訳)
「[0036] 1つの好ましい構成では、トランスミッター10、21、23、及び25は、各層67回転、0.075インチのピッチをもつ導体の2層からなる、各5インチの半径で構成されてもよい。そのようなトランスミッターは、約1.53mHのインダクタンス、及び約5.2Ωの直流抵抗を有している。」

(引2エ)FIG.3には、以下の図面が示されている。


(引2オ)FIG.4には、以下の図面が示されている。


(引2カ)FIG.5には、以下の図面が示されている。


(イ)引用文献2に記載された技術的事項
上記(ア)の記載事項及び図面を総合すると、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「位置測定システムのためのスパイラル磁気トランスミッターであって、
PC基板の上面14に取り付けられたスパイラル形状15とPC基板の下面に取付けられた対応するスパイラル形状17とを含み、スパイラル形状15及び17は、それぞれの中心でフィードスルー(貫通接続)19によって接続されており、
各層67回転、0.075インチのピッチをもつ導体の2層からなる、各5インチの半径で構成されている、
スパイラル磁気トランスミッター。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「患者18」、「テーブル26」、「平面状センサアレイ60」及び「平面状センサコイル62」は、それぞれ、本件補正発明の「身体」、「テーブル」、「磁場発生器アセンブリ」及び「細長い導電性要素」に相当する。

イ 上記アを踏まえると、引用発明の「患者18を支持するテーブル26上に配置された」、「平面状電磁トランスミッターコイルアレイであ」る「平面状センサアレイ60」は、本件補正発明の「身体を支持するテーブルに装着できるように構成された磁場発生器アセンブリ」に相当する。

ウ 上記アを踏まえると、「1つの基板64の第1層74」又は「1つの基板64の第2層76」は、それぞれ、「1つの基板64」の異なる位置での平面の層であるから、引用発明の「1つの基板64の第1層74」又は「1つの基板64の第2層76の中に配置され」る「複数の平面状センサコイル62」は、本件補正発明の「平面内に配置された複数の細長い導電性要素」に相当する。
また、引用発明の、各「平面状センサコイル62」が、「スパイラルコイル62」であり、「間にスペース68をもつ」「導体トレース66を形成する」ことは、本件補正発明の「各導電性要素が、前記」「平面に対して垂直に延在する中心軸の周りに、前記中心軸から前記導電性要素の外周まで連続して増加する距離で巻かれている」ことに相当する。
よって、引用発明の「1つの基板64の第1層74」又は「1つの基板64の第2層76の中に配置され」る「複数の平面状センサコイル62」であって、各「平面状センサコイル62」が、「スパイラルコイル62」であり、「間にスペース68をもつ」「導体トレース66を形成する」、「複数の平面状センサコイル62」と、本件補正発明の「第1の平面内に配置された複数の細長い導電性要素であって、各導電性要素が、前記第1の平面に対して垂直に延在する中心軸の周りに、前記中心軸から前記導電性要素の外周まで連続して増加する距離で巻かれている、複数の細長い導電性要素」とは、「平面内に配置された複数の細長い導電性要素であって、各導電性要素が、前記平面に対して垂直に延在する中心軸の周りに、前記中心軸から前記導電性要素の外周まで連続して増加する距離で巻かれている、複数の細長い導電性要素」である点で共通する。

エ 上記アを踏まえると、引用発明の「複数の平面状センサコイル62」が「平面状センサアレイ60」の「2つの層70、72を」「形成」することと、本件補正発明の「前記複数の導電性要素が前記アセンブリの第1の層を形成」することとは、「前記複数の導電性要素が前記アセンブリの層を形成」する点で共通する。

オ 上記ウ及びエを踏まえると、引用発明の「複数の平面状センサコイル62の第1層70は、1つの基板64の第1層74の中に配置され、複数の平面状センサコイル62の第2層72は、1つの基板64の第2層76の中に配置され」ることと、本件補正発明の「前記第1の層が前記第1の平面内に存在」することとは、「前記層が前記平面内に存在」する点で共通する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「身体を支持するテーブルに装着できるように構成された磁場発生器アセンブリであって、
平面内に配置された複数の細長い導電性要素であって、各導電性要素が、前記平面に対して垂直に延在する中心軸の周りに、前記中心軸から前記導電性要素の外周まで連続して増加する距離で巻かれている、複数の細長い導電性要素
を備え、
前記複数の導電性要素が前記アセンブリの層を形成し、
前記層が前記平面内に存在する、
アセンブリ。」

(相違点)
本件補正発明では、細長い導電性要素が「第1の」平面内に配置され、前記複数の導電性要素が前記アセンブリの「第1の」層を形成し、前記「第1の」層が前記「第1の」平面内に存在し、
「前記複数の導電性要素は、さらに、前記アセンブリの第2の層を備え、前記第2の層は、第2の平面内に存在し、前記第1の層は、前記第2の層の上に積層されており、
前記複数の導電性要素のそれぞれが備える前記第1の層及び前記第2の層は、単一の導電線が巻かれて前記第1の層が前記第2の層の上に積層されるように形成されている」のに対し、引用発明では、このような構成を備えていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

ア 本件補正発明の「第1の層」と「第2の層」との関係について、本願明細書には、次の記載がある。
「【図面の簡単な説明】
・・・
【0012】
【図4】多層磁場トランスミッタの概略図である。
・・・
【発明を実施するための形態】
・・・
【0028】
図4は、コイルが2つの別々の層を有する、トランスミッタ57Cの例を示す。各層は、別々の平面内に存在する。本教示による一実施形態では、これらの層は、エミッタ26と検出器28が図1に示すように向けられている(すなわちエミッタ6が身体16の直接下にあり、検出器28が身体16の直接上にある)ときのエミッタ26と検出器28との間の経路に対して、順に重ねて「積層」される。トランスミッタは、複数の(例えば2つ以上の)層を有することができるが、それでもなお比較的薄く、したがって、エミッタ26から検出器28まで通過するX線に比較的透過性であり得る。図4に示すコイルの2つの層はどちらも、磁場を単一方向に送出するように、同じ方向に回転する。さらに、コイル端部58Aおよび58Bは、同じ、またはほぼ同じ周辺位置58にある。したがって、単一の「線(thread)」が、端部58Aから開始して、第1の層を形成し、次いで、中心で第2の層を開始し、第1の層の経路を辿り直して、最後に端部58Bで終了する。コイル端部58Aおよび58Bが同じ周辺位置にあると、磁場と干渉するおそれのある、電源からの寄生電気伝達(parasitical electrical transmission)を減少させる助けとなる。」

また、図4には、以下の図面が示されている。


上記本願明細書及び図4によれば、多層磁場トランスミッタにおいて、スパイラルコイルが2つの別々の層を有し、各層は、別々の平面内に存在し、順に重ねて積層され、単一の導電線が、第1の層及び第2の層を形成すること、すなわち、スパイラルコイルを単一の導電線からなる2層にすることが開示されているが、「各層は、別々の平面内に存在し、順に重ねて積層され」るための、多層磁場トランスミッタの当該スパイラルコイルコイルに対する具体的な構造については何ら開示されていない。

イ また、引用文献2の技術的事項(上記(2)イ(イ)を参照。)によれば、「スパイラル磁気トランスミッター」において、「スパイラル形状15及び17」を「フィードスルー(貫通接続)19によって接続」し「2層」にすることが開示されているから、上記アを踏まえ本件補正発明の記載の仕方に倣うと、引用文献2の「スパイラル磁気トランスミッター」は、「スパイラル形状15」が有する「スパイラル磁気トランスミッター」の第1の「層」を形成し、前記第1の「層」は第1の平面内に存在し、「スパイラル形状17」が有する「スパイラル磁気トランスミッター」の第2の「層」を形成し、前記第2の「層」は第2の平面内に存在し、第1の「層」は前記第2の「層」の上に積層されており、
前記「スパイラル形状15及び17」が備える前記第1の「層」及び前記第2の「層」は、「フィードスルー(貫通接続)19によって接続され」、前記第1の「層」が前記第2の「層」の上に積層されるように形成されているといえる。

ウ そして、上記イに係る引用文献2の技術的事項において、「前記「スパイラル形状15及び17」が備える前記第1の「層」及び前記第2の「層」は、「フィードスルー(貫通接続)19によって接続され」」ることは、「スパイラル形状15及び17」が1本の導電性の線を形成しているといえることから、上記相違点に係る本件補正発明の「導電性要素のそれぞれが備える前記第1の層及び前記第2の層は、単一の導電線が巻かれて」いることに相当するところ、両者は、細長い導電性要素が「第1の」平面内に配置され、前記導電性要素が前記アセンブリの「第1の」層を形成し、前記「第1の」層が前記「第1の」平面内に存在し、
「前記」「導電性要素は、さらに、前記アセンブリの第2の層を備え、前記第2の層は、第2の平面内に存在し、前記第1の層は、前記第2の層の上に積層されており、
前記」「導電性要素のそれぞれが備える前記第1の層及び前記第2の層は、単一の導電線が巻かれて前記第1の層が前記第2の層の上に積層されるように形成されている」点で一致する。

エ また、引用文献1には、各「平面状センサコイル62」を流れる電流がつくる磁界の強さを、具体的にどのように調整するかの設計が記載されておらず、引用発明を実際に製造する際の上記設計上の課題が内在しているといえる。

オ そうすると、「複数の平面状センサコイル62」が「平面状センサアレイ60」の「2つの層70、72を」「形成」する引用発明において、各「平面状センサコイル62」に対して、上記課題のもと上記引用文献2の技術的事項を適用し、上記相違点に係る本件補正発明の「細長い導電性要素が「第1の」平面内に配置され、前記複数の導電性要素が前記アセンブリの「第1の」層を形成し、前記「第1の」層が前記「第1の」平面内に存在し、
「前記複数の導電性要素は、さらに、前記アセンブリの第2の層を備え、前記第2の層は、第2の平面内に存在し、前記第1の層は、前記第2の層の上に積層されており、
前記複数の導電性要素のそれぞれが備える前記第1の層及び前記第2の層は、単一の導電線が巻かれて前記第1の層が前記第2の層の上に積層されるように形成されている」という構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

カ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用文献1及び2の記載から予測される範囲内のものにすぎない。

キ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成30年6月5日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?20に係る発明は、平成29年9月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

(理由1)この出願の請求項1?3、6?20に係る発明は、引用文献1(米国特許出願公開第2010/0305427号明細書)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(理由2)この出願の請求項4?13に係る発明は、引用文献1及び引用文献2(米国特許出願公開第2003/0233042号明細書)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「患者18」、「テーブル26」、「平面状センサアレイ60」、「平面状センサコイル62」、「1つの基板64の第2層76」、「複数の平面状センサコイル62の第2層72」、「1つの基板64の第1層74」及び「複数の平面状センサコイル62の第1層70」は、それぞれ、本願発明の「身体」、「テーブル」、「磁場発生器アセンブリ」、「細長い導電性要素」、「第1の平面」、「第1の層」、「第2の平面」及び「第2の層」に相当する。

(2)上記(1)を踏まえると、引用発明の「患者18を支持するテーブル26上に配置された」、「平面状電磁トランスミッターコイルアレイであ」る「平面状センサアレイ60」は、本願発明の「身体を支持するテーブルに装着できるように構成された磁場発生器アセンブリ」に相当する。

(3)上記(1)を踏まえると、引用発明の「1つの基板64の第2層76の中に配置され」る「複数の平面状センサコイル62」は、本願発明の「第1の平面内に配置された複数の細長い導電性要素」に相当する。
また、引用発明の、各「平面状センサコイル62」が、「スパイラルコイル62」であり、「間にスペース68をもつ」「導体トレース66を形成する」ことは、本願発明の「各導電性要素が、」「平面に対して垂直に延在する中心軸の周りに、前記中心軸から前記導電性要素の外周まで連続して増加する距離で巻かれている」ことに相当する。
よって、引用発明の「1つの基板64の第2層76の中に配置され」る「複数の平面状センサコイル62」であって、各「平面状センサコイル62」が、「スパイラルコイル62」であり、「間にスペース68をもつ」「導体トレース66を形成する」、「複数の平面状センサコイル62」は、本願発明の「第1の平面内に配置された複数の細長い導電性要素であって、各導電性要素が、前記第1の平面に対して垂直に延在する中心軸の周りに、前記中心軸から前記導電性要素の外周まで連続して増加する距離で巻かれている、複数の細長い導電性要素」に相当する。

(4)上記(1)を踏まえると、引用発明の「複数の平面状センサコイル62」が「平面状センサアレイ60」の「第2層72」を「形成」することは、本願発明の「前記複数の導電性要素が前記アセンブリの第1の層を形成」することに相当する。

(5)上記(1)を踏まえると、引用発明の「複数の平面状センサコイル62の第2層72」が「1つの基板64の第2層76の中に配置され」ることは、本願発明の「前記第1の層が前記第1の平面内に存在」することに相当する。

(6)上記(1)を踏まえると、引用発明の「複数の平面状センサコイル62」が「平面状センサアレイ60」の「第1層70」を「形成」することは、本願発明の「前記複数の導電性要素は、さらに、前記アセンブリの第2の層を備え」ることに相当する。

(7)上記(1)を踏まえると、引用発明の「複数の平面状センサコイル62の第1層70」が「1つの基板64の第1層74の中に配置され」ることは、本願発明の「前記第2の層は、第2の平面内に存在」することに相当する。

(8)引用発明の「複数の平面状センサコイル62の第2層72は、複数の平面状センサコイル62の第1層70の上に配置されて」いることは、本願発明の「前記第1の層は、前記第2の層の上に積層されている」ことに相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明とに相違するところはなく、両者は同一であるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-28 
結審通知日 2019-03-05 
審決日 2019-04-01 
出願番号 特願2016-552709(P2016-552709)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 113- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 明央  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
三木 隆
発明の名称 CアームX線環境において、画像を最小限にしか遮蔽せず、寸法上最小限にしか影響を及ぼさない磁場発生器  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  

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