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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1354659
審判番号 不服2018-17188  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-25 
確定日 2019-09-11 
事件の表示 特願2014- 82175「プラスチックボトル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月16日出願公開、特開2015-202880、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月11日の出願であって、平成29年12月21日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年8月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年12月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
1.補正の却下の決定の結論
平成30年12月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

2.補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を変更する補正事項(以下、「補正事項」という。)を含むものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「断面円形の胴部を備えた耐圧用のプラスチックボトルにおいて、
前記胴部は、
全周が径方向に凹んだリセス部と、
前記リセス部に高さ方向に互いに離間して配置され、周溝状に形成された複数の第1の補強リブと、
前記リセス部の下側に形成されたくびれ部と、
前記くびれ部に周溝状に形成された少なくとも1つの第2の補強リブと、
前記リセス部の上側及び前記くびれ部の下側にそれぞれ形成され、当該プラスチックボトルの最大径を構成する上側最大径部及び下側最大径部と、を備え、
当該プラスチックボトル内が陽圧となった場合に、前記複数の第1の補強リブ及び前記少なくとも1つの第2の補強リブは、その溝深さが浅くなるように塑性変形すると共に、
前記リセス部及び前記くびれ部の径方向の膨張を許容する、プラスチックボトル。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「断面円形の胴部を備えた耐圧用のプラスチックボトルにおいて、
当該プラスチックボトルは24g以下であり、
前記胴部は、
全周が径方向に凹んだリセス部と、
前記リセス部に高さ方向に互いに離間して配置され、周溝状に形成された複数の第1の補強リブと、
前記リセス部の下側に形成されたくびれ部と、
前記くびれ部に周溝状に形成された少なくとも1つの第2の補強リブと、
前記リセス部の上側及び前記くびれ部の下側にそれぞれ形成され、当該プラスチックボトルの最大径を構成する上側最大径部及び下側最大径部と、を備え、
炭酸飲料が充填されて当該プラスチックボトル内が陽圧となった場合に、前記複数の第1の補強リブ及び前記少なくとも1つの第2の補強リブは、その溝深さが浅くなるように
塑性変形すると共に、前記リセス部及び前記くびれ部の径方向の膨張を許容し、
前記炭酸飲料が充填された後では、前記炭酸飲料が充填される前に比べて、前記リセス部及び前記くびれ部が上下方向に伸び且つ径方向に膨張した、プラスチックボトル。」(下線部は補正箇所に付している)

(2)本件補正の適否の判断
新規事項の追加について
本件補正の補正事項は、特許請求の範囲の請求項1に「当該プラスチックボトルは24g以下であり、」という事項を追加する補正を含むものである。
そこで、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書、図面(以下、「当初明細書等」という。)の記載をみると、明細書の段落0005に「事実、日本国内の500mlのPETボトルの事例では、非炭酸飲料用の無菌充填ボトルでは、樹脂の使用量が通常18g?24gで、軽量化されたもので10g?15gとなっているのに対し、炭酸飲料用のボトルでは、通常30g前後であり、軽量化されたものでも24gである。」と記載されており、樹脂の使用量である24gについては、「500mlのPETボトル」を前提としている。しかし、PETボトルには、500ml以外にも多種多様な内容量のPETボトル、例えば内容量を1?2lとするPETボトル、が多数流通しているところ、PETボトルの内容量を限定せず、多種多様な内容量のPETボトルのすべてを包含した場合に、PETボトルの樹脂の使用量を24g以下とすることまでは記載も示唆もされていない。
また、当初明細書等には、明細書の段落0037に「実験では、実施形態及び比較例に係るボトルとして、内容量を515mlとするPETボトルで、その樹脂量を20.5gとし、・・・」とPETボトルの樹脂量について24g以下のものが一例記載されているが、これが24gを上限とする範囲の一例であるのかは記載も示唆もされていないし、前記明細書の段落0005の記載を総合したとしても、前提とするPETボトルの内容量に差があるため、樹脂量を直接比較・参照することもできない。
よって、「当該プラスチックボトルは24g以下であり、」という事項は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、上記のとおり本件補正を却下する。

イ 独立特許要件違反について
前記(2)のアで説示したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないが、前記(2)のアで説示した点が新規事項の追加でなく、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとした場合、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
本件補正の補正事項は、特許請求の範囲の請求項1に「前記炭酸飲料が充填された後では、前記炭酸飲料が充填される前に比べて、前記リセス部及び前記くびれ部が上下方向に伸び且つ径方向に膨張した、」(下線は理解の便宜のために当審が付した。)という事項を追加する補正を含むものである。
前記補正事項の下線を付した部分からみて、本願補正発明は、プラスチックボトルとして膨張したもの、換言すれば陽圧で塑性変形した後のものを意図しているかのようにも解されるが、炭酸飲料が充填された後の状態にも、当初明細書等の明細書の段落0032に記載された「充填後ボトル」及び「使用後ボトル」があって、本願補正発明がどのようなプラスチックボトルを意図しているのかが不明である。
また、プラスチックボトルとして膨張したものが、前記「充填後ボトル」を意図したものであるならば、プラスチックボトルの質量はプラスチックボトルの樹脂量及びプラスチックボトルに充填された炭酸飲料の質量の合計になるが、本願補正発明は「当該プラスチックボトルは24g以下であり、」というものであって、この24gがプラスチックボトルの樹脂量のことを意図しているのか否かも不明になっている。
よって、本願補正発明は明確でなく、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、上記のとおり本件補正を却下する。

第3 原査定の概要
原査定(平成30年8月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1乃至5に係る発明は、引用文献1(実願昭54-114277号(実開昭56-032016号)のマイクロフィルム)に記載された発明及び引用文献2(特開平08-253220号公報)に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 本願発明
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願請求項1乃至5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明5」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりの発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
断面円形の胴部を備えた耐圧用のプラスチックボトルにおいて、
前記胴部は、
全周が径方向に凹んだリセス部と、
前記リセス部に高さ方向に互いに離間して配置され、周溝状に形成された複数の第1の補強リブと、
前記リセス部の下側に形成されたくびれ部と、
前記くびれ部に周溝状に形成された少なくとも1つの第2の補強リブと、
前記リセス部の上側及び前記くびれ部の下側にそれぞれ形成され、当該プラスチックボトルの最大径を構成する上側最大径部及び下側最大径部と、を備え、
当該プラスチックボトル内が陽圧となった場合に、前記複数の第1の補強リブ及び前記少なくとも1つの第2の補強リブは、その溝深さが浅くなるように塑性変形すると共に、前記リセス部及び前記くびれ部の径方向の膨張を許容する、プラスチックボトル。」

本願発明2乃至本願発明5は、本願発明1を引用した発明である。

第5 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「第1図は、本考案の一実施例を示すプラスチツクボトルの正面図であって、プラスチツクボトルAの胴部は、口頸部を有する上半部1、中央部2、及び下半部3の3部分から構成されており、上半部1には、補強用の環状凹溝11が等間隔に3本設けられ、中央部2には、握りを良くすると共に、ボトル全体に剛性を付与するためのくびれが形成されている。」(明細書3ページ9-16行)
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「胴部を備えたプラスチツクボトルにおいて、前記胴部は、上半部と、上半部に等間隔に3本設けられた補強用の環状凹溝と、中央部に形成されたくびれと、を備えたプラスチツクボトル。」

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「前記環状伸長部は、例えば、周壁を環状に窪ませた環状凹部(瓶体の内部からみれば環状凸部)とすることや、その縦断面(瓶体の軸線方向に平行な断面)がほぼ波形状であるものとすることができるが、このうち縦断面がほぼ波形状であるものが好ましい。波形状というのは、ほぼ対称形状の凹部と凸部が交互に1度以上連続する形状であり、例えば、正弦波の1周期以上の波形に類似する形状を挙げることができる。」(明細書段落0016)
「このようにして水溶液22を密封収容した瓶10に対し、シャワー殺菌法により80℃で30分間加熱殺菌を施したところ、瓶10の熱可塑性により、両環状伸長部16が全周にわたり瓶の高さ方向に伸長して瓶10の高さが1.2cm程度高くなったが、瓶10の直径にはほとんど変化がなかった。」(段落0028)、「次いでこの瓶10を常温に冷却したところ、両環状伸長部16は、全周にわたり瓶の高さ方向に伸長した状態で硬化状態となっており、瓶10の高さ及び直径は、加熱時とほぼ同じであった。すなわち、瓶の高さは加熱前よりも1.2cm程度高くなったが、瓶10の直径にはほとんど変化がなかった。・・・」(明細書段落0029)
「本発明の水溶液収容合成樹脂製瓶体では、加熱殺菌により瓶体の温度が上昇すると共に瓶体内圧力が上昇した場合に、環状伸長部の塑性的な軸線方向伸長により、いびつな変形が防止されて瓶体全体の変形が抑えられ、自立性等の、瓶体の形状に基づく機能が失われることが防がれる。」(明細書段落0030)
したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「瓶体の温度が上昇すると共に瓶体内圧力が上昇した場合に、複数の周壁を環状に窪ませた環状凹部が塑性的に軸線方向伸長し、瓶の直径にはほとんど変化がない水溶液収容合成樹脂製瓶体。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明1における「胴部」、「プラスチツクボトル」、「等間隔に3本設けられた補強用の環状凹溝」及び「くびれ」は、それぞれ本願発明1における「胴部」、「プラスチックボトル」、「高さ方向に互いに離間して配置され、周溝状に形成された複数の第1の補強リブ」及び「くびれ部」に相当する。
また、本願明細書の段落0027の「リセス部32は、上側最大径部30と一緒に実質的に胴部4の上半部を構成している。」という記載を参酌すれば、本願発明1の「上側最大径部」及び「リセス部」は共に胴部の上半部といえるから、引用発明1の「上半部」及び「中央部」は、それぞれ「胴部の上半部」及び「胴部の上半部の下側」という限りで、本願発明1における「リセス部」及び「リセス部の下側」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「胴部を備えたプラスチックボトルにおいて、前記胴部は、胴部の上半部に高さ方向に互いに離間して配置され、周溝状に形成された複数の第1の補強リブと、胴部の上半部の下側に形成されたくびれ部と、を備えた、プラスチックボトル。」

(相違点)
(相違点1)「胴部」について、本願発明1は「断面円形」という構成を備えるのに対し、引用発明1はその点不明である点。
(相違点2)「プラスチックボトル」について、本願発明1は「耐圧用」であるのに対し、引用発明1はそのような特定がなされていない点。
(相違点3)「胴部の上半部」について、本願発明1は「リセス部」を備えているのに対し、引用発明1の「上半部」はリセスの有無が不明である点。
(相違点4)「くびれ部」について、本願発明1は「リセス部の下側に形成された」ものであり、「周溝状に形成された少なくとも1つの第2の補強リブ」を備えているものであるのに対し、引用発明1はリセスの有無が不明であるため、「リセス部の下側に形成された」ものになるのか否かも不明であり、かつ「周溝状に形成された少なくとも1つの第2の補強リブ」を備えていない点。
(相違点5)本願発明1は「前記リセス部の上側及び前記くびれ部の下側にそれぞれ形成され、当該プラスチックボトルの最大径を構成する上側最大径部及び下側最大径部」を備えているのに対し、引用発明1はその点不明である点。
(相違点6)本願発明1は「当該プラスチックボトル内が陽圧となった場合に、前記複数の第1の補強リブ及び前記少なくとも1つの第2の補強リブは、その溝深さが浅くなるように塑性変形すると共に、前記リセス部及び前記くびれ部の径方向の膨張を許容する」ものであるのに対し、そもそも引用発明1は「リセス部」の有無が不明であと共に「第2の補強リブ」相当する部分がなく、かつ「プラスチツクボトル」内が陽圧になった場合に、「環状凹溝」の溝深さが浅くなるように塑性変形すると共に、くびれ部の膨張が許容されるか否かが不明である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点6から検討する。相違点6に係る本願発明1の「当該プラスチックボトル内が陽圧となった場合に、前記複数の第1の補強リブ及び前記少なくとも1つの第2の補強リブは、その溝深さが浅くなるように塑性変形すると共に、前記リセス部及び前記くびれ部の径方向の膨張を許容する」という構成は、以下に示すように引用発明1及び引用発明2に基いたとしても当業者が容易に想到できるものではない。
引用発明1の「くびれ」には、環状凹溝、すなわち本願発明1の「第2の補強リブ」に相当するものは形成されていない。
そして、引用発明2は、径方向の寸法にほとんど変化がない、すなわち膨張を許容することを目的としたものではなく、他に本願発明1の「リセス部」や「くびれ部」に相当する部位の径の変化に関する構成も備えていないから、仮に、引用発明1に引用発明2を適用したとしても、相違点6に係る本願発明1の「当該プラスチックボトル内が陽圧となった場合に、前記複数の第1の補強リブ及び前記少なくとも1つの第2の補強リブは、その溝深さが浅くなるように塑性変形すると共に、前記リセス部及び前記くびれ部の径方向の膨張を許容する」ように構成することは、当業者が容易に想到できることではない。
さらに、本願発明1は、相違点6に係る構成によって、特に「本発明によれば、ボトル内が陽圧となった場合(例えば炭酸飲料をボトルに充填した場合)、第1及び第2の補強リブが浅くなるように塑性変形し、この変形した分だけ、胴部は高さ方向に伸びる。また、陽圧によってリセス部及びくびれ部が径方向に膨張するが、その膨張は、これらがもともと胴部の他の部位よりも径方向に凹んでいて、かつ、浅くなった各補強リブによる補強効果の影響を受けるため、上側及び下側の最大径部よりも径方向内側に抑えられる。」(明細書段落0011)及び「さらに、本発明によれば、陽圧がかからなくなった使用後(例えば炭酸飲料の飲用後)のボトルでは、陽圧前の空ボトルと比べてリセス部及びくびれ部の強度が下がる。これは、陽圧下で第1及び第2の補強リブが浅くなるように塑性変形しているためである。したがって、使用後のボトルでは、空ボトルよりもつぶし易さを向上することができる。」(明細書段落0014)という相乗効果を期待できるものであり、このような効果を、引用発明1及び引用発明2に触れた当業者が予測できたともいえない。
したがって、本願発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

原査定においては、相違点6に係る本願発明1の「当該プラスチックボトル内が陽圧となった場合に、前記複数の第1の補強リブ及び前記少なくとも1つの第2の補強リブは、その溝深さが浅くなるように塑性変形すると共に、前記リセス部及び前記くびれ部の径方向の膨張を許容する」という構成について、「しかし、引用文献1のプラスチックボトルがその内部に陽圧を受けた場合に、その程度はともかく、複数の第1の補強リブ及び少なくとも1つの第2の補強リブは、その溝深さが浅くなり、リセス部及びくびれ部の径方向の膨張を許容することは、自明である。補強リブが塑性変形することについては、先に通知した引用文献2には、環状伸長部16の塑性的な軸線方向伸長について開示されている(段落[0030],第1,2図を参照 )。よって、引用文献2に記載された前記事項を、引用文献1の溝に適用し、本願の発明をすることは、当業者が容易になし得ることである。」との判断がなされている。
まず、この判断の前提として、原査定においては、「・・・中央部2のくびれ(くびれ部)の底部分に1本の凹溝(第2の補強リブ)が配され、・・・」と認定しているが、「くびれ」とは「中ほどが細くせばまっていること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)であり、原査定で「底」と称している部位は、「くびれ」そのものを構成する部位であって、この「くびれ」そのものを構成する部位に凹溝を形成したことは記載されているとはいえない。
次に、前記判断について検討する。
プラスチックボトル内が陽圧になり、ある程度の圧力に達すると、胴部や底部が膨出状に変形し、この変形の度合いが大きくなると、いずれ塑性変形に至ることは技術常識であるから、引用発明1についても、プラスチックボトル内が陽圧になり、ある圧力を超えた時点で、胴部や底部が膨出状に変形し始め、場合によっては塑性変形に至ることまでは自明であるといえる。
しかし、引用発明1において、プラスチツクボトルの材質やプラスチツクボトルの各部分の肉厚や環状凹溝の具体的な形状や寸法、底部の形状等の諸元は特定されていないため、引用発明1のプラスチツクボトル内が陽圧となった場合にどのような変形をするのかは不明であるし、一般的には、プラスチックボトル内が陽圧となった場合でも、ある程度の圧力までであれば、降圧した時点で元の形状に戻る、すなわち、塑性変形をしない場合もあるから、引用発明1のプラスチツクボトル内が陽圧となった場合に必ず塑性変形するともいえない。
そのため、引用発明1のプラスチツクボトル内が陽圧となった場合に、「等間隔に3本設けられた補強用の環状凹溝」が浅くなるように塑性変形すると共に、「くびれ」の径方向の膨張を許容するように構成されたものであることが自明であるとまではいえない。

2.本願発明2乃至5について
本願発明2乃至5も、本願発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに技術的限定を加える事項を発明特定事項とするものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1乃至5は、当業者が引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-08-30 
出願番号 特願2014-82175(P2014-82175)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新田 亮二  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 石井 孝明
西尾 元宏
発明の名称 プラスチックボトル  
代理人 大貫 敏史  
代理人 内藤 和彦  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
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