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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05D
管理番号 1354737
審判番号 不服2018-13869  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-18 
確定日 2019-09-24 
事件の表示 特願2015-532030「流体レギュレータのためのシールディスク・アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年3月20日国際公開、WO2014/043293、平成27年11月26日国内公表、特表2015-534176、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)9月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年9月14日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 4月18日付け:拒絶理由通知書
平成29年 7月28日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年10月 5日付け:拒絶理由通知書
平成30年 1月16日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 6月21日付け:拒絶査定
平成30年10月18日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年6月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献1-7に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の技術を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.実願平05-015679号(実開平06-075012号)のCD-ROM
2.独国実用新案第9416196号明細書
3.米国特許第3314448号明細書
4.実願昭47-080298号(実開昭49-037830号)のマイクロフィルム
5.米国特許第7909057号明細書
6.特開2006-107039号公報
7.中国実用新案第200982448号明細書

第3 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成30年10月18日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1、3及び7は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
入口から出口に延在する流路を画定するレギュレータ本体と、
前記流路内に配置された開口部であって、前記開口部は弁座を画定する、開口部と、
流体流れが前記開口部を通ることができる開位置と、流体流れが前記開口部を通ることを防ぐ前記弁座に対する閉位置との間を移動するように配置された制御要素と、
前記制御要素によって担われるディスク筐体であって、前記ディスク筐体は座部を有し、該座部は前記制御要素の端面内に配置された溝を備え、該溝は凹弓形輪郭を有する、ディスク筐体と、
前記ディスク筐体に装着するようにサイズ化されたシールディスクであって、前記シールディスクは装着部およびシール面を有する、シールディスクとを備え、
前記シールディスクの前記シール面は、前記制御要素が前記閉位置にあるときに前記弁座をシール係合するように配置され、
前記シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部の前記凹弓形輪郭に補完する輪郭を有し、
前記溝の凹弓形輪郭は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含む逆V形輪郭である、流体レギュレータ。」

「【請求項3】
流れ制御弁の制御要素のためのシールディスク・アセンブリであって、
前記制御要素によって担われるディスク筐体であって、前記ディスク筐体は座部を有し、該座部は前記制御要素の端面内に配置された溝を備え、該溝は凹弓形輪郭を有する、ディスク筐体と、
前記ディスク筐体に装着するようにサイズ化されたシールディスクであって、前記シールディスクは装着部およびシール面を有する、シールディスクとを備え、
前記シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部の前記凹弓形輪郭に補完する輪郭を有し、
前記溝の凹弓形輪郭は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含む逆V形輪郭である、シールディスク・アセンブリ。」

「【請求項7】
弁体および流れ制御部材を含む流れ制御弁内のシールディスク・アセンブリであって、
座部を有し、該座部は前記流れ制御部材である制御要素の端面内に配置された溝を備えたディスク筐体と、
前記ディスク筐体に装着されたシールディスクであって、前記シールディスクは装着部およびシール面を有する、シールディスクと、
前記流れ制御部材の閉位置において前記シールディスクを圧縮するように配置された弁座とを備え、
前記ディスク筐体の前記座部は凹弓形輪郭を有し、前記凹弓形輪郭は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含む逆V形輪郭であり、前記シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部内に配置された輪郭を有し、前記弁座は前記シールディスクを前記装着部の前記輪郭に亘って均一に圧縮する、シールディスク・アセンブリ。」

また、本願発明2、4-6、8-10の概要は以下のとおりである。

本願発明2は、本願発明1の構成全てを引用した発明である。

本願発明4-6は、本願発明3の構成全てを引用した発明である。

本願発明8-10は、本願発明7の構成全てを引用した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。以下同じ)。

ア 段落【0001】-【0005】
「 【0001】
【産業上の利用分野】
この考案はガス燃焼器具などへ供給するガス圧などの流体の圧力を自動調整するガバナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は公知のガスなどの流体圧力調整用ガバナーで弁箱1の前部に流体の入口2、後部に流体の出口3を設け、弁箱1上にはダイヤフラムケース4を固定してある。
上記弁箱1内には入口2と出口3を仕切る仕切5を設け、その中央のねじ孔に弁座6を固定し、この弁座6に対向する弁体7を弁棒9の下端に連結し、この弁棒9の上端を、前記ケース4内のレバー11に連結する。
【0003】
ダイヤフラムケース4の開放側にはダイヤフラム14を介してカバー13を一体に固定し、このカバー13には大気に通じる通気孔12を設け、前記ダイヤフラムケース4には弁箱1の出口側に通じる連通孔15を設ける。
【0004】
また、前記レバー11は軸10により前記ダイヤフラムケース4内に回動自在に取付けてあり、前記ダイヤフラム14の中心部に連結した連動子17の前端は前記レバー11の上端に連結され、連動子17の中間部に一体に設けた受座16とダイヤフラム14のカバー側に当てたばね受け19によりダイヤフラム14を挟んでダイヤフラム14と連動子17とがともに進退する機構とする。
【0005】
また、上記カバー13に設けた筒状部22内の雌ねじには調整ねじ23の外周の雄ねじをねじ込んで、この調整ねじ23とばね受け19の間に調整ばね24を介在させている。」

イ 段落【0016】-【0020】
「 【0016】
【実施例】
図1、図2はこの考案の実施例を示すもので、図3の従来例と同じ構成と機能を有する部分は同一の符号を付けて説明を省略する。
この実施例の場合、仕切5の上下に弁座25、26を設ける。すなわち、仕切5に設けたねじ孔に、下端に小径の第一弁座25を設け、上端に大径の第二弁座26を設けた筒体27の上端外周の雄ねじをねじ込んで固定する。
【0017】
そして、弁座25上に小径の第一弁体30、弁座26上に大径の第二弁体31を配置する。第二弁体31は弁棒9の下端にねじ止めにより固定し、第一弁体30は、第二弁体の下端にねじ止めした小径の弁棒32に摺動自在で、かつOリングにより気密を保って装着する。
【0018】
上記弁体30、31の間には押ばね33を介在させて、図1のように第一弁体30が第一弁座25を閉止しているとき、第二弁体31は第二弁座26から離れているようにする。
【0019】
その他図中35は筒体27と弁箱1の底部間に設けた金網などからなる筒状ストレーナである。
【0020】
上記の実施例の場合、通常の閉止状態では図1のように第一弁体30が弁座25を閉止し、第二弁体31は弁座26から離れて、この弁座26を開放している。」

(2)上記(1)の記載及び図面から、引用文献1の図面には、次の技術的事項が開示されていると認められる。

ア 図1には、弁箱1に、入口2から出口3に延在する流路が画定された構成が図示されている。

イ 図2には、第一弁体30の下方が板状になっており、当該板状の部材の下面に溝が備えられ、該溝に断面矩形の部材が設けられることが図示されており、弁の構造の技術常識からみて、上記第一弁体30の下方の板状の部分は「ディスク状」であり、上記溝の部分は断面矩形の部材を介して第一弁座25と当接する座部であり、上記溝に設けられる断面矩形の部材はリング状の「シール部材」であると解される。

ウ 図2には、第一弁体30のディスク状の部材の下面の溝が矩形輪郭を有しており、断面矩形の部材が溝に隙間なく装着されることが図示されており、該断面矩形の部材は上記イのとおりリング状の「シール部材」であると解されるところ、該「シール部材」の溝に装着される部分は「装着部」であり、第一弁座25と当接する部分は「シール面」であり、該「シール部材」の「装着部」は、溝の矩形輪郭に補完する輪郭を有していると認められる。

(3)上記(1)の記載事項及び上記(2)の認定事項から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「入口2から出口3に延在する流路を画定する弁箱1と、
前記流路内に配置された筒体27であって、前記筒体27は第一弁座25を画定する、筒体27と、
流体流れが前記筒体27を通ることができる開位置と、流体流れが前記筒体27を通ることを防ぐ前記第一弁座25に対する閉位置との間を移動するように配置された第一弁体30と、
前記第一弁体30によって担われるディスク状の部材であって、前記ディスク状の部材は座部を有し、該座部は前記第一弁体30の下面内に配置された溝を備え、該溝は矩形輪郭を有する、ディスク状の部材と、
前記ディスク状の部材に装着するようにサイズ化されたシール部材であって、前記シール部材は装着部およびシール面を有する、シール部材とを備え、
前記シール部材の前記シール面は、前記第一弁体30が前記閉位置にあるときに前記第一弁座25をシール係合するように配置され、
前記シール部材の前記装着部は、前記ディスク状の部材の前記座部の前記矩形輪郭に補完する輪郭を有する、流体圧力調整用ガバナー。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の図2cには、シール部材40が装着される溝が略円弧形(凹弓形)輪郭を有するという技術的事項が開示されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の図1-4には、シール部材7が装着される溝が円弧形(凹弓形)輪郭を有するという技術的事項が開示されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の第4図には、弁体3’bが装着されるOリング溝3’eが円弧形(凹弓形)輪郭を有するという技術的事項が開示されていると認められる。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5の図8には、インサート10が装着される凹部184が略円弧形(凹弓形)輪郭を有するという技術的事項が開示されていると認められる。

6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6の図9には、Oリング41gが装着される溝が円弧形(凹弓形)輪郭を有するという技術的事項が開示されていると認められる。

7.引用文献7について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている(当審訳)。

ア 明細書第1ページ第3-4行
「本実用新案は弁の技術分野に属し、逆止弁、特に逆止弁の密封構造に関する。」

イ 明細書第1ページ第10-13行
「既存技術において、密封リングは弁箱上に設置され、いかなる固定構造もなく、これにより高温の流体媒質により浸食されやすくなり、さらには脱落する現象に至り、従って弁体内に漏れが生じやすくなるという問題があり、使用寿命への影響、メンテナンスの工数増加により、使用が不便となっている。」

ウ 明細書第2ページ第3行-第3ページ第9行
「本実用新案の目的は次の技術的解決手段を通じて実現できる。逆止弁の弁箱内の弁体と、弁箱内で側面が弁体と嵌合される密閉面とが含まれ、この密閉面と弁体の間に密封リングが設けられる逆止弁の密封構造であって、上記密封面上に弁座が設けられ、弁座が弁箱内に固定され、上記密封リングが弁座上に配置されることを特徴とする。
逆止弁の弁箱内に弁体を取り付けることで、弁体は弁箱内で前後移動でき、弁体の密封端と弁座上の密封リングが離れる時流体が流通することができ、逆止弁が導通される。弁体の密封端と弁座上の密封リングが閉合する時流体は通過を阻止され、逆止弁は締め切られる。弁体の密封端と弁箱の密閉面の間に弁座が設置され、当該弁座は弁箱上に固定され、これにより密封リングは固定可能な位置を有し、密封リングは簡単に脱落することがない。
上記逆止弁の密封構造において、前記弁座は円筒状であり、その外側面は肩部を有する。
上記逆止弁の密封構造において、前記肩部上には凹溝が開かれ、前記密封リングは弁座上に環装されるとともに凹溝内に嵌め込まれる。
密封リングは弁座上に環装されるものであり、密封リングの直径方向につき位置決めがなされる。かつ、凹溝内に嵌め込まれる密封リングは左右に移動することがなく、たとえ温度が高い流体内においても、密封リングは変形、脱落することはなく、逆に、長期にわたる押圧の後も、密封リングはより堅固に凹溝内に嵌め込まれる。
上記逆止弁の密封構造において、前記凹溝はV形溝である。V形溝は密封リングに対して良好に位置決めを行うことができるので、密封リングが移動、脱落して密封効果に影響することがなくなる。
上記逆止弁の密封構造において、逆止弁内にはさらにスタンドを有し、その一端は弁箱上に固定され、他方の端は弁座上に押し付けられる。弁座はスタンドを通じて弁箱に固定接続される。
上記逆止弁の密封構造において、前記弁座と弁箱の内側面の間にライナリングが設けられている。弁座は弁箱の密閉面と弁体の密封端の間に設置され、弁座の中間はスルーホールで、流体はスルーホール内から流過し、密封効果は弁座上の密封リングと逆止する密封端により実現されるが、弁座と弁箱の内側面に間隙があれば、流体はこの間隙から流過することができるようになり、密封効果に影響する。そこでライナリングを設置することで、流体は弁座の外側面と弁箱の内側面から流過できなくなる。
上記逆止弁の密封構造において、前記スタンドは密封リングとライナリングを押止する。スタンドが密封リング端面の辺縁を押止することで、弁体が密封リングに粘着したとしても、密封リングが軸方向に移動し、さらには密封リングが脱落するという状況が出現することはない。」

エ 明細書第4ページ第6-22行
「図1と図2が示すように、本逆止弁の密封構造において、弁体4は逆止弁の弁箱1内に設置され、弁体4の一方の端は線形であり、スタンド2上のブッシュ7に挿入されることで、弁体4が弁箱1内で左右に移動できるようになり、他方の端は円筒状で、その端面は密閉面である。弁体4の密閉面と密封リング5が分離した時流体は逆止弁を通過することができる。弁体4の密閉面と密封リング5が閉合した時流体は逆止弁を通過できず、逆止弁は締め切られる。
図3が示すように、弁座3は円筒状であり、その上に肩部31があり、この肩部31上に凹溝32が開かれており、密封リング5は弁座3上に環装されるとともに凹溝32内に嵌め込まれる。当該凹溝32はV形溝であり、密封リング5の肩部31の上にさらにフランジ33を有する。当該弁座3はスタンド2の一方の端を通じて弁箱1上に押し付けられることで、弁座3は弁箱1上に堅固に固定され、スタンド2の他方の端は弁箱1上に固定接続される。
弁座3と弁箱1の内側面の間にライナリング6が設けられ、上記フランジ33はライナリング6を拘止する。スタンド2も同時に密封リング5とライナリング6を押止して、スタンド2の一方の端は肩部21を備え、この肩部21も同時に密封リング5を拘止する。
密封リング5は複合グラファイトを使用して製作され、かつ円環形であり、密封リング5の一つの端面の形状が凹溝の形状と相互にマッチする場合、他方の端は平面であり、側面にフランジを有し、スタンド2上の肩部21とマッチする。」

(2)上記(1)の記載及び図面から、引用文献7には、次の技術的事項が開示されていると認められる。

ア 上記(1)エの「弁体4が弁箱1内で左右に移動できるようになり」及び「弁体4の密閉面と密封リング5が分離した時流体は逆止弁を通過することができる。弁体4の密閉面と密封リング5が閉合した時流体は逆止弁を通過できず、逆止弁は締め切られる。」の記載から、「弁体4」は「密閉面」を有し、流体が通過することができる開位置と、流体が通過できない閉位置との間を移動するように配置されていると認められる。

イ 上記(1)エの「弁座3はスタンド2の一方の端を通じて弁箱1上に押し付けられることで、弁座3は弁箱1上に堅固に固定され」及び「弁座3は円筒状であり、その上に肩部31があり、この肩部31上に凹溝32が開かれており」の記載から、「弁座3」は、スタンド2によって弁箱1に固定され、凹溝32を有するものと認められる。

ウ 上記(1)エの記載及び図2から、「密封リング5」は、一つの端面の形状が凹溝32の形状と一致し、他方の端は平面であり、側面にフランジを有し、当該フランジはスタンド2上の肩部21と係合すると認められる。

エ 上記(1)エの記載及び図2-3から、凹溝32は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含むV形溝であると認められる。

(3)上記(1)の記載事項及び上記(2)の認定事項から、引用文献7には、次の技術的事項(以下、「引用文献7の記載事項」という。)が開示されていると認められる。

「密閉面を有し、流体が通過することができる開位置と、流体が通過できない閉位置との間を移動するように配置された弁体4と、スタンド2によって弁箱1に固定され、凹溝32を有する弁座3と、弁座3に嵌められる密封リング5とを備え、密封リング5は、一つの端面の形状が凹溝32の形状と一致し、他方の端は平面であり、側面にフランジを有し、当該フランジはスタンド2の肩部21と係合し、前記凹溝32は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含むV形溝である、逆止弁の密封構造。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「入口2」は、本願発明1における「入口」に相当し、以下同様に、「出口3」は「出口」に、「弁箱1」は「レギュレータ本体」に、「筒体27」は、弁座を有するとともに孔を包囲するものであるから「開口部」に、「第一弁座25」は「弁座」に、「第一弁体30」は「制御要素」に、「ディスク状の部材」は「ディスク筐体」に、「下面」は「端面」に、「シール部材」は「シールディスク」に、「流体圧力調整用ガバナー」は「流体レギュレータ」に、それぞれ相当する。

イ 引用発明の「前記シール部材の前記装着部は、前記ディスク状の部材の前記座部の前記矩形輪郭に補完する輪郭を有」すると、本願発明1の「前記シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部の前記凹弓形輪郭に補完する輪郭を有」しとは、「前記シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部の輪郭に補完する輪郭を有」するという点で一致する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「入口から出口に延在する流路を画定するレギュレータ本体と、
前記流路内に配置された開口部であって、前記開口部は弁座を画定する、開口部と、
流体流れが前記開口部を通ることができる開位置と、流体流れが前記開口部を通ることを防ぐ前記弁座に対する閉位置との間を移動するように配置された制御要素と、
前記制御要素によって担われるディスク筐体であって、前記ディスク筐体は座部を有し、該座部は前記制御要素の端面内に配置された溝を備える、ディスク筐体と、
前記ディスク筐体に装着するようにサイズ化されたシールディスクであって、前記シールディスクは装着部およびシール面を有する、シールディスクとを備え、
前記シールディスクの前記シール面は、前記制御要素が前記閉位置にあるときに前記弁座をシール係合するように配置され、
前記シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部の輪郭に補完する輪郭を有する、流体レギュレータ。」

(相違点)
座部の溝の輪郭形状について、本願発明1は、「溝は凹弓形輪郭を有」し、「シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部の前記凹弓形輪郭に補完する輪郭を有し」、「前記溝の凹弓形輪郭は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含む逆V形輪郭である」のに対し、引用発明は、「溝は矩形輪郭を有」し、「シール部材の前記装着部は、前記ディスク状の部材の前記座部の前記矩形輪郭に補完する輪郭を有する」点。

(2)相違点についての判断

ア 引用文献7には、前記相違点に係る構成である、「密封リング5は、一つの端面の形状が凹溝32の形状と一致し」、「凹溝32は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含むV形溝である」構成が記載されている。

イ 引用文献7には、上記アに加え、「密封リング5」が高温の流体媒質により浸食され、脱落することがないように、「密封リング5」を「弁座3」に嵌め込み、当該「密封リング5」及び「弁座3」を「スタンド2」により「弁箱1」に押さえつけて固定することが記載されている。
一方、引用発明の「シール部材」は、軸線方向に移動する「第一弁体30」に設けられており、当該「シール部材」は、「筒体27」等の「弁箱1」側に固定されるものではない。
そうすると、引用発明の「シール部材」と引用文献7の記載事項の「密封リング5」とは、作用・機能が共通しているとはいえない。
また、引用文献7には更に、「V形溝は密封リングに対して良好に位置決めを行うことができるので、密封リングが移動、脱落して密封効果に影響することがなくなる。」と記載されており、「密封リング」を良好に位置決めすることを目的として、溝をV形にしたことが記載されている。一方、引用発明には、そもそもシール部材について特段の説明はなく、「シール部材」の位置決めという課題が記載も示唆もされていないことから、両者の課題が共通しているともいえない。
そうすると、引用発明に引用文献7の記載事項を適用する積極的な動機はないというべきである。

ウ 仮に、引用発明に引用文献7の記載事項を適用しても本願発明1の構成にはならない。
引用文献7には、「凹溝32」(本願発明1の「溝」に相当。)が、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含むV形溝であることが開示されている。一方、「密封リング5」(本願発明1の「シールディスク」に相当。)は、一つの端面の形状が「凹溝32」の形状と一致するが、側面には「スタンド2」の「肩部21」と係合する「フランジ」を備えている。
そして、引用発明に当該引用文献7の記載事項を適用すると、そのV形溝の構成のみを適用する合理的な理由はないことから、「溝」の形状はV字にはならず、また、「シール部材」の装着部の構成も、「溝」の輪郭に補完するV字形状だけではなく、側面に「フランジ」を備えた構成となる。さらに、「シール部材」が脱落しないように「シール部材」を固定するための「スタンド2」に相当する部材も付加されることになる。
そうすると、「シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部の前記凹弓形輪郭に補完する輪郭を有し」、「前記溝の凹弓形輪郭は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含む逆V形輪郭である」という相違点の構成には至らない。

エ また、引用文献2-6のいずれにも、溝の凹弓形輪郭は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含む逆V形輪郭であることは記載も示唆もされていない。

オ 以上から、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の構成全てを引用した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明3について
本願発明3は、「溝は凹弓形輪郭を有」し、「シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部の前記凹弓形輪郭に補完する輪郭を有し」、「前記溝の凹弓形輪郭は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含む逆V形輪郭である」ものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明3は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明4-6について
本願発明4-6は、本願発明3の構成全てを引用した発明であるから、本願発明3と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

5.本願発明7について
本願発明7は、「座部は凹弓形輪郭を有し」、「シールディスクの前記装着部は、前記ディスク筐体の前記座部内に配置された輪郭を有し」、「前記凹弓形輪郭は、第1の傾斜壁および第2の傾斜壁を含む逆V形輪郭であ」るものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明7は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

6.本願発明8-10について
本願発明8-10は、本願発明7の構成全てを引用した発明であるから、本願発明7と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-10は、当業者が引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-09 
出願番号 特願2015-532030(P2015-532030)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G05D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 黒田 暁子永田 和彦  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 青木 良憲
見目 省二
発明の名称 流体レギュレータのためのシールディスク・アセンブリ  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

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