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審決分類 審判 延長登録無効(一部) 延長登録 無効としない A61K
管理番号 1354835
審判番号 無効2018-800106  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-08-27 
確定日 2019-08-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第2803908号「低コレステロール血症薬剤として有用なヒドロキシ置換アゼチジノン化合物」の特許権存続期間延長登録出願2007-700057号に基づく特許権の存続期間の延長登録に対する延長登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第2803908号は、平成6年9月14日に特許出願され、平成10年7月17日にその特許権(以下、「本件特許権」という。)の設定登録がなされた。その後、平成19年5月25日に当該特許権の存続期間の延長登録の出願(特許権存続期間延長登録願2007-700057号。以下、「本件延長登録出願」という。)がなされ、平成19年11月14日に当該特許権の存続期間の延長が登録された(以下、「本件延長登録」という。)。
これに対して、請求人テバ・ホールディングス合同会社は、平成30年8月27日に本件延長登録に対する無効審判を請求した。本件延長登録無効審判の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成30年 8月27日付け 審判請求書
平成31年 2月12日付け 審判事件答弁書
平成31年 3月 1日付け 審理事項通知書(請求人)
平成31年 3月 1日付け 審理事項通知書(被請求人)
平成31年 3月22日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成31年 3月22日付け 上申書(被請求人)
平成31年 3月29日付け 手続補正書(被請求人。対象は、平成31 年3月22日付け口頭審理陳述要領書)
平成31年 4月 5日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成31年 4月 5日付け 上申書(請求人)
平成31年 4月12日付け 手続補正書(請求人。対象は、平成31年 4月5日付け口頭審理陳述要領書)
平成31年 4月19日 口頭審理
令和 元年 5月15日付け 上申書(請求人)
令和 元年 5月24日付け 上申書(被請求人)
令和 元年 6月 5日付け 上申書(請求人)

第2 本件特許権及び本件延長登録
1 本件特許権
本件特許権の特許権者及び特許権に係る発明は、次のとおりのものである。

(1)特許権者
本件特許権の特許権者は、平成25年5月27日にメルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーションに名義変更するまで、シェーリング コーポレイション(以下、「本件特許権者」という。)であった。

(2)特許権に係る発明
本件特許権に係る発明は、「低コレステロール血症薬剤として有用なヒドロキシ置換アゼチジノン化合物」という名称の発明であって、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものと認める。(以下、これらをまとめて「本件特許発明」という。)

2 本件延長登録
本件延長登録に係る延長の期間及び特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容は、次のとおりのものである。

(1)延長の期間
5年

(2)特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容
ア 特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同法第23条において準用する同法第14条第1項の承認
イ 処分を特定する番号
承認番号 21900AMY00021000号
ウ 処分の対象となった物
一般的名称:エゼチミブ
エ 処分の対象となった物について特定された用途
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合体性シトステロール血症
(以下、当該処分の対象となった医薬品(販売名は「ゼチーア錠10mg」(後記甲第2号証の4及び5))を「本件医薬品」という。また、当該処分を「本件処分」もしくは「本件医薬品の承認」という。)

第3 当事者の主張及び証拠方法
1 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第2803908号の特許権存続期間延長登録願2007-700057号に基づく平成19年11月14日付け存続期間延長登録は、その特許発明を実施することができなかった期間である1年9月9日を超える期間の延長登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の(1)の無効理由を主張し、証拠方法として以下の(2)に記載の書証を提出した。

(1)請求人が主張する無効理由の概要
本件特許権の設定登録日(平成10年7月17日)から通常実施権の設定日(平成17年7月8日)より前の期間は、特許権者には本件特許発明を実施する意思及び能力が認められないから、特許法第125条の2第1項第3号でいう「その特許発明の実施をすることができなかつた期間」には当たらない。したがって、当該期間は、通常実施権の設定日(平成17年7月8日)から本件処分を受けた日(平成19年4月18日)の前日までの1年9月9日であって、本件延長登録は、延長された期間が本件特許発明の実施をすることができなかった期間を超えているから、特許法第125条の2第1項第3号の規定に該当し、本件特許発明の実施をすることができなかった期間である1年9月9日を超える期間の延長登録は無効とされるべきである。

(2)証拠方法
甲第1号証:特許第2803908号登録原簿
甲第2号証の1:特許権存続期間延長登録願2007-700057号
甲第2号証の2:延長の理由を記載した資料
甲第2号証の3:特許第2803908号公報
甲第2号証の4:医薬品輸入承認書.承認番号21900AMY00021000.平成19年4月18日
甲第2号証の5:医薬品輸入承認申請書.販売名「ゼチーア錠10mg」
甲第2号証の6:治験計画届書.SCH58235.平成9年3月27日・第1回.平成9年3月27日届出
甲第2号証の7:通常実施権設定登録申請書.特許番号第2803908号.平成19年9月7日
甲第2号証の8:契約証書.特許第2803908号
甲第3号証:判例時報2115号.第32?34頁(最高裁平成21年(行ヒ)第326号.平成23年4月28日判決)
甲第4号証:判例時報2309号.第127?131頁(最高裁平成26年(行ヒ)第356号.平成27年11月17日判決)
甲第5号証:判例時報2361号.第73?91頁(知財高裁平成28年(ネ)第10046号.平成29年1月20日判決)
甲第6号証:判例時報第1693号.第133?138頁(最高裁平成10年(行ヒ)第43号.平成11年10月22日判決)
甲第7号証:判例時報2058号.第101?114頁(知財高裁平成20年(行ケ)第10486号.平成21年10月28日判決)
甲第8号証:判例時報第2232号.第3?18頁(知財高裁平成25年(行ケ)第10195号.平成26年5月30日判決)
甲第9号証:意見書.井関涼子.平成31年3月28日
甲第9号証の2:経歴書.井関涼子.2019年4月10日現在
甲第9号証の3:業績書.井関涼子.2019年4月10日現在
甲第10号証の1:松村明編「大辞林」(1988年11月3日 株式会社三省堂発行)第1646頁及び奥付
甲第10号証の2:山岸徳平編「清水国語辞典 修訂版」(昭和50年1月15日 株式会社清水書院発行)第558頁及び奥付
甲第11号証:秋山幹男ら著「コンメンタール民事訴訟法VI」(2014年9月20日 株式会社日本評論社発行)第368?372頁及び奥付
甲第12号証:中野次雄編「判例とその読み方 三訂版」(2009年3月30日 株式会社有斐閣発行)第107?108頁及び奥付
甲第13号証:品川皓亮著「日本一やさしい条文・判例の教科書」(2015年2月1日 株式会社日本実業出版社発行)第136?137頁及び奥付
甲第14号証:意見書.長沢幸男.令和元年5月15日
甲第15号証:意見書(2).井関涼子.令和元年5月31日
甲第16号証:意見書(3).井関涼子.令和元年6月3日
甲第17号証:意見書.大須賀滋、幸谷泰造.令和元年6月5日
甲第18号証:意見書.田中泰久.令和元年6月5日
(以下、それぞれ「甲1」等という。)

2 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人の主張する上記無効理由は理由がない旨主張し、証拠方法として以下の書証を提出した。
乙第1号証:中山信弘ら編「新・注解特許法(第2版)」(中巻)(2017年10月5日 青林書院発行)第1118?1130頁
乙第2号証:意見書.小林浩.平成31年2月5日
乙第3号証:旧シェリング・プラウの沿革(http://www.msd.co.jp/about/msd-history/spkk-history-archive/index.xhtml)
乙第4号証:●(省略)●
乙第5号証:閉鎖事項全部証明書.大阪市中央区平野町二丁目3番7号 MSD株式会社
乙第6号証:●(省略)●
乙第7号証:「特許権の存続期間の延長」に関するQ&A.調整課審査基準室.平成28年3月23日
乙第8号証:医薬品開発の期間と費用.JPMA News Letter No.136, pp.33-35 (2010/03)
乙第9号証:●(省略)●
乙第10号証:ニュージャージー州歳入局.吸収合併/新設合併証明書(営利法人).7954401000.2012年4月30日提出
乙第11号証の1:ニュージャージー州歳入局.事業組織変更登記.7954401000.2012年5月2日提出.
乙第11号証の2:ニュージャージー州財務省.登記証明書.7954401000.2012年6月12日
乙第12号証:証券取引委員会.10-K年次報告アニュアルレポート.第1頁及び「シェリング・プラウ・コーポレイション及び子会社」.1997年12月31日で終了する会計年度
乙第13号証:住居表示変更証明願.エツセクス日本株式会社.平成31年3月5日
乙第14号証:●(省略)●
乙第15号証:●(省略)●
乙第16号証:●(省略)●
乙第17号証:●(省略)●
乙第18号証:●(省略)●
乙第19号証:●(省略)●
乙第20号証:●(省略)●
乙第21号証:ゼチーア錠10mgに関する資料.シェリング・プラウ株式会社
乙第22号証:審査報告書.[販売名]ゼチア錠10mg.独立行政法人医薬品医療機器総合機構.平成19年1月19日
乙第23号証:医薬品インタビューフォーム「ゼチーア^((R))錠10mg」2018年4月改訂(改訂第7版)(合議体注:「^((R))」は、丸囲いのRである。以下同じ。)
乙第24号証:Gagne'C et al : Circulation, vol.105(21), 2469 (2002)
乙第25号証:添付文書「ゼチーア錠10mg」.2018年4月改訂(第7版)
乙第26号証:新原浩朗編著「改正特許法解説」(昭和62年9月30日 有斐閣発行)第i?iv頁、第79?117頁及び奥付
乙第27号証:高部眞規子(合議体注:高の字は、はしごだかである。).最高裁判例解説.平成10年(行ヒ)第43号.平成11年10月22日判決
乙第28号証:意見書.設楽隆一.2019年5月23日
乙第29号証:法律意見書.清水節.2019年5月23日
乙第30号証の1:「医薬品企業総覧’98」(株式会社薬業時報社 平成10年12月10日発行)第271、272、1126、1127頁及び奥付
乙第30号証の2:「医薬品企業総覧2001」(株式会社じほう 平成13年11月30日発行)第1156頁及び奥付
乙第30号証の3:J-Plat-Pat(特許情報プラットフォーム)の検索結果
乙第30号証の4:USPTO PATENT FULL-TEXT AND IMAGE DATABASEの検索結果
乙第30号証の5:Steve C.Rivaのメール「Schering Corporation-MACT Applicability Determination」, Nov.2,1998
乙第30号証の6:CENTER FOR DRUG EVALUATION AND RESEARCH, APPROVAL PACKAGE FOR:APPLICATION NUMBER20-641/SE5-007, Administrative Documents
乙第30号証の7:Topical Treatment of Onychomycosis of the Toenail version 22 April 08
乙第30号証の8:Thomas Koestler, Ph.D.-Melinta Therapeutica(http://melinta.com/Thomas-koestler-ph-d/)
乙第30号証の9:Business Wire. Schering-Plough Research Institute Enters Hurel Corporation's Joint Scientific Collaboration to Develop "Human-on-a-Chip" Alternative to Animal Testing, July 24,2006
乙第31号証:特許庁「特許・実用新案審査基準」第VI部特許権の存続期間の延長(2000年12月)
乙第32号証の1:閉鎖登録原簿(特許第1501778号)
乙第32号証の2:サンド アクチェンゲゼルシャフト/サンド薬品株式会社.「契約書」(訳文).1992年3月10日
乙第32号証の3:サンド薬品株式会社.「通常実施権設定登録申請書」.特許番号第1501887号.平成4年4月16日
(以下、それぞれ「乙1」等という。)

第4 証拠の記載事項
甲1、甲2の4、甲2の5、甲2の6、甲2の8、乙8、乙12、乙18、乙19、乙21?25、乙30の1、及び乙30の5には、それぞれ次の事項が記載されている。なお、甲2の8、乙12、乙24、及び乙30の5は、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。

1 甲1(特許第2803908号登録原簿)
(記載事項1)


」(第1頁)
(記載事項2)


」(第2頁)

2 甲2の4(医薬品輸入承認書.承認番号21900AMY00021000.平成19年4月18日)
(記載事項1) 「承認番号 21900AMY00021000 医薬品輸入承認書 氏名又は名称 シェリング・プラウ株式会社」(第1?3行)
(記載事項2) 「平成15年10月31日付けで申請のあった医薬品の輸入を薬事法(昭和35年法律第145号)第23条において準用する同法第14条第1項の規定により、申請のとおり承認する。」(第4?7行)
(記載事項3) 「平成19年4月18日 厚生労働大臣 柳澤伯夫」(第15?16行)

3 甲2の5(医薬品輸入承認申請書.販売名「ゼチーア錠10mg」)
(記載事項1) 「ゼチーア錠10mg」(表紙の表中「名称 販売名」の欄)
(記載事項2) 「上記により、医薬品の輸入の承認を申請します。
平成15年10月31日
住所 大阪市中央区平野町2丁目3番7号
氏名 ・・・ 代表取締役社長 鳥居正男
厚生労働大臣 坂口力殿」(表紙の表の下)
(記載事項3) 「【提出者】
業者コード:17005000(シェリング・プラウ株式会社)
管理番号:001
住所:大阪市中央区平野町2丁目3番7号
氏名:シェリング・プラウ株式会社」(第1頁)
(記載事項4) 「【名称】
販売名:ゼチーア錠10mg」(第1頁)
(記載事項5) 「【(成分)】
配合目的:000(有効成分)
規格:99(別紙規格)
成分コード:999999(未登録成分)
成分名:エゼチミブ
分量(又は分量上限):10
単位:02(mg)」(第1頁)

4 甲2の6(治験計画届書.SCH58235.平成9年3月27日・第1回.平成9年3月27日届出)
(記載事項1) 「シェリング・プラウ株式会社
大阪府大阪市中央区平野町2丁目3番7号」(表中「製造所又は営業所の名称及び所在地」の欄)
(記載事項2) 「[成分]
1-(4-Fluorophenyl-3-[3-(4-fluorophenyl)-3-hydroxypropyl]-4-(4-hydroxyphenyl)-2-azetidinone
[分量]
1mg製剤(カプセル) :1カプセル中SCH58235として1mg含有
5mg製剤(カプセル) :1カプセル中SCH58235として5mg含有
20mg製剤(カプセル):1カプセル中SCH58235として20mg含有」(表中「成分及び分量」の欄)
(記載事項3) 「高脂血症(薬剤分類:218)」(表中「予定される効能又は効果」の欄)
(記載事項4) 「上記により治験の計画を届出ます。
平成9年3月27日
大阪市中央区平野町2丁目3番7号 ・・・
代表取締役社長 鳥居正男 ・・・
厚生大臣 小泉純一郎殿」(表の下)

5 甲2の8(契約証書.特許第2803908号)
(記載事項1) 「契約証書
特許番号: 第2803908号
発明の名称: 低コレステロール血症薬剤として有用なヒドロキシ置換アゼチジノン化合物
署名した
(a)シェーリング・コーポレイション
(b)2000 ギャロッピング ヒル ロード
ケニルワース, ニュージャージー 07033
アメリカ合衆国
は、特許権者として、次者に、
(c)シェリング・プラウ株式会社
(d)日本国 郵便番号541-0046
大阪市中央区平野町2-3-7
上記特許発明の実施をする権利を含む、非独占的な許諾を受けた者としての全ての権利を、下記のとおりの通常実施権として2005年7月8日に許諾する。
地域: 日本
期間: 存続期間の延長の期間を含む本特許権の存続期間満了まで」(第1頁)

6 乙8(医薬品開発の期間と費用.JPMA News Letter No.136, pp.33-35 (2010/03))
(記載事項1)


」(第33頁)
(記載事項2)


」(第34頁)
(記載事項3)


」(第34頁)
(記載事項4)


」(第35頁)

7 乙12(証券取引委員会.10-K年次報告アニュアルレポート.第1頁及び「シェリング・プラウ・コーポレイション及び子会社」.1997年12月31日で終了する会計年度)
(記載事項1) 「シェリング・プラウ・コーポレイション(Schering-Plough Corporation)及び子会社 1997年12月31日時点の子会社登録者」(第2頁標題)
(記載事項2) 「シェーリング コーポレイション(Schering Corporation) ニュージャージー」(第3頁第22行)
(記載事項3) 「シェリング-プラウ株式会社(Schering-Plough Kabushiki Kaisha) 日本」(第3頁第68行)
(記載事項4) 「シェリング-プラウ・リサーチ研究所(Schering-Plough Research Institute) デラウェア」(第4頁第15行)

8 乙18 ●(省略)●

9 乙19 ●(省略)●

10 乙21(ゼチーア錠10mgに関する資料.シェリング・プラウ株式会社)
(記載事項1) 「エゼチミブ{(3R,4S)-1-(4-Fluorophenyl-3-[(3S)-3-(4-fluorophenyl)-3-hydroxypropyl]-4-(4-hydroxyphenyl)azetidin-2-one}は、1994年に米国シェリング・プラウ社で発見されたコレステロール吸収阻害作用を有する新規高コレステロール血症治療薬である。」(第1頁第35?37行)
(記載事項2) 「これらの成績に基づき、エゼチミブは、2001年12月から世界各国で承認申請がなされ、2002年10月にドイツに次いで米国で承認されて以降、2006年9月現在、世界89カ国以上でSchering CorporationとMerck & Co.,Inc.の合弁会社であるMSP Singapore Companyが販売承認を取得している。なお、本邦ではシェリング・プラウ株式会社が単独で承認申請を行う。」(第2頁第8?12行)
(記載事項3) 「2.開発の経緯
・・・シェリング・プラウ株式会社は、米国シェリング・プラウ社が既に実施していた非臨床及び臨床試験成績を検討した結果、19・・年・月にエゼチミブの本邦での開発を決定した。臨床試験を19・・年・月から開始し、非臨床試験を以下のとおり実施した。」(第2頁第13?17行)

11 乙22(審査報告書.[販売名]ゼチア錠10mg.独立行政法人医薬品医療機器総合機構.平成19年1月19日)
(記載事項1) 「承認申請のあった下記の医薬品にかかる医薬品医療機器総合機構での審査結果は、以下のとおりである。

[販売名]ゼチア錠10mg
[一般名]エゼチミブ
[申請者]シェリング・プラウ株式会社
[申請年月日]平成15年10月31日
[剤型・含量]錠剤:1錠中エゼチミブとして10mg含有」(第1頁第4?11行)
(記載事項2) 「II.提出された資料の概略及び医薬品医療機器総合機構における審査の概要
・・・本申請において、申請者が提出した資料及び機構からの照会事項に対する申請者の回答の概略は、下記のようなものであった。
1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料
エゼチミブ(以下、本薬)は、米国シェリング・プラウ社で発見された、食事性及び胆汁性コレステロールの小腸からの吸収阻害作用を示す高コレステロール血症治療薬である。・・・本邦において、シェリング・プラウ株式会社により開発され、承認申請がなされた。」(第3頁第14?25行)
(記載事項3) 「2)薬物動態における性差(海外C98-107試験) ・・・」(第31頁第24?28行)
(記載事項4) 「3)健康未成年者における薬物動態(海外P00774試験) ・・・」(第31頁第29?35行)
(記載事項5) 「4)肝機能障害患者における薬物動態(海外P00251試験、海外P01912試験) ・・・」(第31頁第36行?第32頁第18行)
(記載事項6) 「5)腎機能障害患者における薬物動態(海外P00749試験) ・・・」(第32頁第19?27行)
(記載事項7) 「2)外国人における高脂肪食の影響(海外P00751試験) ・・・」(第32頁第37行?第33頁第7行)
(記載事項8) 「1)シメチジンとの相互作用(海外P00746試験) ・・・」(第33頁第14?21行)
(記載事項9) 「2)制酸剤との相互作用(海外P00748試験) ・・・」(第33頁第22?30行)
(記載事項10) 「3)各種スタチンとの相互作用(海外P00447試験;プラバスタチン、海外I98-311試験;シンバスタチン、海外P00755試験;フルバスタチン、海外P00460試験;アトルバスタチン、海外P03317試験;ロスバスタチン、・・・、海外P01382試験;ロバスタチン、海外P00250試験;ロバスタチン、海外P00754試験;セリバスタチン) ・・・」(第33頁第31行?第34頁第22行)
(記載事項11) 「4)フェノフィブラートとの相互作用(海外P00753試験) ・・・」(第34頁第23?32行)
(記載事項12) 「5)コレスチラミンとの相互作用(海外P00776試験) ・・・」(第34頁第33行?第35頁第2行)
(記載事項13) 「6)シクロスポリンとの相互作用(海外027試験、海外057試験) ・・・」(第35頁第3?12行)
(記載事項14) 「(2)海外における試験 ・・・」(第49頁第30行?第55頁表)

12 乙23(医薬品インタビューフォーム「ゼチーア^((R))錠10mg」
.2018年4月改訂(改訂第7版))
(記載事項1) 「(2)(合議体注:丸囲いの2である。)ホモ接合体性家族性高コレステロール血症患者に対する臨床試験
・・・また、海外臨床試験でも、HMG-CoA還元酵素阻害剤を服用しているホモ接合体性家族性高コレステロール血症患者にゼチーア^((R))錠1
0mgを追加投与した結果、LDLコレステロール及び総コレステロールはさらに低下した(外国人データ)^(11))」(第12頁第19?25行)
(記載事項2) 「11)Gagne'C et al : Circulation, 105(21), 2469 (2002)」(第66頁「XI.文献」の「1.引用文献」の欄)

13 乙24(Gagne'C et al : Circulation, 105(21), 2469 (2002))
(記載事項1) 「ホモ接合型家族性高コレステロール血症患者にアトルバスタチン又はシンバスタチンと共に投与されたエゼチミブの効果及び安全性」(第2469頁標題)
(記載事項2) 「謝辞
この研究は、シェリング・プラウ・リサーチ研究所及びメルク/シェリング・プラウ製薬会社からの助成金によって支援された。」(第2474頁右欄第5?7行)

14 乙25(添付文書「ゼチーア^((R))錠10mg」.2018年4月改訂(改訂第7版))
(記載事項1) 「(2)ホモ接合体性家族性高コレステロール血症患者に対する臨床試験
・・・また、海外臨床試験でもHMG?CoA還元酵素阻害剤を服用しているホモ接合体性家族性高コレステロール血症患者に本剤を投与した結果、LDLコレステロール及び総コレステロールはさらに低下した^(25))」(第4頁左欄第43?55行)
(記載事項2) 「25)Gagne'C et al : Circulation, 105(21), 2469 (2002)」(第5頁「主要文献」の欄)

15 乙30の1(「医薬品企業総覧’98」(株式会社薬業時報社 平成10年12月10日発行))
(記載事項1) 「シェリング・プラウ株式会社 SCHERING-PLOUGH K.K.
【本社】
〒541-0046 大阪市中央区平野町2-3-7」(第271頁左欄第1?4行)
(記載事項2) 「【沿革】1959年、アメリカの医薬品会社シェリング・プラウ・コーポレーションの日本法人として設立され、当初は主として医薬品情報提供活動を行っていたが、1983年に自社販売体制へ移行した。製造は1971年に滋賀県に工場建設用地を取得し、1976年より自社生産を開始した。・・・研究開発は滋賀工場内で前臨床?フェーズIIIの開発業務を行っている。」(第271頁左欄下から第3行?右欄第5行)
(記載事項3) 「【大株主】
シェリング・プラウ・コーポレーション 100%」(第271頁右欄第12?13行)
(記載事項4) 「【海外資本提携会社】
シェリング・プラウ・コーポレーション(米国)」(第271頁右欄第16?17行)
(記載事項5) 「【製剤原料仕入先・成分名】
シェリング・プラウ・コーポレイション関連会社(アイルランド、オーストラリア、プエルトリコ、ベルギー等)」(第272頁右欄第29?31行)
(記載事項6) 「シェリング・プラウ・コーポレイション(Schering-Plough Corporation)」(第1126頁右欄第1行)
(記載事項7) 「【沿革】
ドイツ系製薬会社の米国子会社として1929年に設立され、第二次世界大戦中は米政府の管理下に置かれたが、1952年にシェリング・コーポレーションとして独立した。1971年には一般薬・ヘルスケア製品を扱うプラウ社と合併し、社名をシェリング・プラウ・コーポレーションとした。現在では多国籍・研究開発立脚型企業として世界125カ国で2万人以上の社員が医薬品およびヘルスケア事業に従事している。」(第1126頁右欄【沿革】の項)
(記載事項8) 「【主要販売拠点】
シェリング・カナダ(カナダ)
シェリング・プラウ(フランス)
・・・
シェリング・プラウ(株)(日本)
・・・」(第1126頁右欄【主要販売拠点】の項)
(記載事項9) 「【主要生産拠点】
シェリング・プラウ(米国・ニュージャージー州)
シェリング・プラウ(プエルトリコ)
・・・
シェリング・プラウ(株)(日本)
・・・」(第1126頁右欄?第1127頁左欄【主要生産拠点】の項)
(記載事項10) 「【主要研究施設】
シェリング・プラウ・リサーチ・インスティテュート(米国・ニュージャージー州)
DNAXリサーチ・インスティテュート(米国・カリフォルニア州)
・・・」(第1127頁左欄【主要研究施設】の項)

16 乙30の5(Steve C.Rivaのメール「Schering Corporation-MACT Applicability Determination」, Nov.2,1998)
(記載事項1) 「本書は、シェーリング・コーポレイション及びシェリング・プラウ・リサーチ研究所(SPRI)のACT適用可能性に関する1998年9月30日付貴信を受けて返信するものである。提供された情報に基づくと、シェリング・プラウ・コーポレイションは、シェーリング・コーポレイションの株式の100%を、SPRIの株式の84%を保有し、2つの施設は共にケニルワースの敷地にあるとのことである。・・・シェリング・プラウ・コーポレイションは、2つの事業体を十分に支配しており、2つの事業体は同じ敷地内にあるため、SPRIとシェーリング・コーポレイションは、MACT適用可能性における主要汚染源の1つと判断する。」(第1頁第9?14行)

第5 当審の判断
1 本件延長登録に係る延長の期間の適否
(1)本件延長登録に至る経緯
提出された証拠から、次の事実が認められる。なお、当該事実について当事者間に争いはない。
平成 9年 3月27日 シェリング・プラウ株式会社(以下、「本件治
験実施者」という。)が本件医薬品に係る治験
計画届書(第1回)を厚生大臣に提出した。
(甲2の6)
平成10年 7月17日 本件特許権の設定登録がなされた。(甲1)
平成15年10月31日 本件治験実施者が本件医薬品について医薬品輸
入承認申請書を厚生労働大臣に提出した。(甲
2の5)
平成17年 7月 8日 本件特許権者が本件治験実施者に本件特許権の
通常実施権を許諾した。(甲2の8)
平成19年 4月18日 本件治験実施者が本件医薬品について、厚生労
働大臣より医薬品輸入承認を受けた。(甲2の
4、甲2の5)
平成19年 5月25日 本件特許権者が本件延長登録の出願を行った。
(甲2の1)
平成19年 9月25日 本件特許権者が本件治験実施者に許諾した本件
特許権の通常実施権の登録がなされた。
(甲1)
平成19年10月15日 本件延長の登録がなされた。(甲1)

(2)本件延長登録に係る延長の期間の適否についての判断
特許法第67条の3第1項第3号ないし特許法第125条の2第1項第3号にいう「その特許発明の実施をすることができなかつた期間」は、医薬品に関しては、承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間であると解すべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第43号(平成11年10月22日第二小法廷判決)(甲6)。以下、「最高裁判決」という。)。
これを本件にあてはめると、「その特許発明の実施をすることができなかつた期間」は、本件医薬品に係る治験計画届書(第1回)の厚生大臣への提出日よりも遅い、本件特許権の設定登録の日である平成10年7月17日から、本件特許権の登録した通常実施権を有する者である本件治験実施者が医薬品輸入承認を受けた日の前日である平成19年4月17日までの8年9月である。そして、上記第2の2(1)のとおり、本件延長登録の延長の期間は、この8年9月のうちの特許法第67条第2項で定められた上限に当たる5年としたものであるから、期間の算出に誤りは認められない。

2 請求人の主張について
これに対して、請求人は、上記第3の1(1)のとおり本件延長登録は特許法第125条の2第1項第3号に該当する旨主張するところ、その具体的な内容及びそれらに対する当合議体の判断は次のとおりである。

(1)請求人の主張
ア 特許権の存続期間の延長登録制度は、特許権を有しているにもかかわらず、特許発明の実施から得られるはずの利益を受けられない特許権者の救済制度であり、知財高裁平成25年(行ケ)第10195号(平成26年5月30日特別部判決)(甲8)も「特許発明を実施する意思及び能力があってもなお、特許発明を実施することができなかった期間」に限って存続期間延長の対象とする旨述べるとおりである。したがって、特許法第125条の2第1項第3号の「その特許発明の実施をすることができなかつた期間」とは、特許権者が特許発明を実施する意思及び能力があってもなおその特許発明を実施することができなかった期間を意味すると解するべきである。
イ 本件延長登録のように、処分を受けたのが通常実施権者である場合、特許権者自らは特許発明を実施しないから、通常実施権者が特許発明を実施して初めて特許権者の特許発明を実施する意思及び能力が認められる。後に通常実施権者になった者の行為であっても、通常実施権設定前は無権利者による実施にあたり、特許権者は無権利者の実施から利益は得られないのだから、特許権者の受ける不利益の解消という延長登録制度の趣旨に照らしても、特許法は無権利者による実施期間を延長登録の対象とすることを予定していない。
ウ 知財高裁平成20年(行ケ)第10486号(平成21年10月28日第三部判決)(甲7)も判示するとおり、特許権の存続期間の延長による不利益が及ぶ第三者の予測可能性・衡平性を確保するために、その判断基準には客観性及び明確性が必要である。「特許発明の実施をすることができなかつた期間」は、契約書等、第三者にとって予測可能な方式で客観的かつ明確に確定されるべきである。
エ 最高裁判決は、「特許発明の実施をすることができなかつた期間」は、医薬品に関しては、承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間であると解するべき旨判示するが、この事件の争点は期間の終期であって、始期は傍論にすぎないから、本件の判断を拘束するものではない。また、「改正特許法解説」(乙26)や「審査基準」(乙31)は、上記最高裁判決が判示した期間について、始期の設定も含めて、事案の具体的事情に応じて修正されるものとしている。

(2)請求人の主張に対する判断
ア 上記主張アについて
(ア)特許法第125条の2第1項は特許権の存続期間の延長登録の無効理由を列挙するところ、その第3号は「その延長登録により延長された期間がその特許発明の実施をすることができなかつた期間を超えているとき。」というものであって、「特許発明の実施をすることができかつた期間」において特許権者の特許発明を実施する意思及び能力が必要であるとは明文化されていない。しかしながら、仮に、請求人が主張するように、「特許発明の実施をすることができなかつた期間」に特許権者の特許発明を実施する意思及び能力が必要であるとして、以下に検討する。
(イ)医薬品を製造又は輸入するためには、厚生(労働)大臣の承認が必要であって(治験計画届書(第1回)(甲2の6)提出時の薬事法(以下、「薬事法」という。)第14条第1項及び第23条。医薬品、医療用機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「薬機法」という。)第14条第1項)、そのためには厚生(労働)省令で定めるところにより、申請書に臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならない(薬事法第14条第3項、薬機法第14条第3項)。この提出すべき資料のうち臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施を治験といい(薬事法第2条第7項、薬機法第2条第17項)、治験の計画は厚生(労働)大臣に届け出なければならないものである(薬事法第80条の2第2項、薬機法第80条の2第2項)。したがって、治験計画を厚生(労働)大臣に届け出たのであれば、対象となる医薬品の承認を受けて、製造又は輸入することを予定していることが明らかである。そして、一般に、医薬品の開発には膨大な費用、時間及び労力が必要であるため(乙8の記載事項2?4)、医薬品業界においては特許権に対する関心が非常に高く、治験を行うような新しい医薬品について特許権が存在しないことはまずないこと、及び、治験にも相当な費用、時間及び労力が必要であること(乙8の記載事項2及び3)に照らすと、新しい医薬品に関する特許権を有する者と無関係な者が、特許権について何らの注意も払うことなく治験計画を届け出ることは常識的に考え難い。したがって、ある医薬品について、特許権者と無関係な者が独立に治験を行うことは通常想定し難い状態であって、後であれ特許権者から通常実施権を許諾された者が治験を行ったという事実は、特許権者の特許発明を実施する意思及び能力を反映したものであると考えるのが自然である。
(ウ)次に、本件延長登録について検討すると、提出された証拠から次の事実が認められる。
a シェリング・プラウ企業グループ
米国のシェリング・プラウ・コーポレイションは、1971年にシェリング・コーポレーションがプラウ社と合併して、社名をシェリング・プラウ・コーポレイションとした多国籍・研究開発立脚型企業であって、本件医薬品の治験当時、販売拠点、生産拠点及び研究施設のように役割分担をした子会社を世界各国に保有していた(乙30の1の記載事項6?10)。当時、このシェリング・プラウ・コーポレイションを親会社とする企業グループには、本件特許権者、本件治験実施者、その他にシェリング・プラウ・リサーチ研究所などが属していた(乙12の記載事項1?4)。(以下、当該企業グループを「シェリング・プラウ企業グループ」、シェリング・プラウ・コーポレイションを「親会社」という。)
b シェリング・プラウ企業グループにおける本件治験実施者
本件医薬品の治験当時、本件治験実施者は、親会社が100%出資する日本法人であって、日本における医薬品の製造、販売、研究開発や臨床試験を主な業務としており、製剤原料をアイルランド、オーストラリア、プエルトリコ、ベルギー等のシェリング・プラウ・コーポレイション関連会社から仕入れていた(乙30の1の記載事項1?5)。
c シェリング・プラウ企業グループにおける本件特許権者
本件医薬品の治験当時、本件特許権者は、親会社が100%出資しており、その支配下におかれていた(乙30の5の記載事項1)。
本件特許権者は、本件特許に係る出願をし(PCT/US94/10099。国際公開第95/08532号参照)、本件特許権を取得したが(甲1)、当該出願は2つの米国特許出願に基づく優先権主張を伴うものであった。当時の米国特許制度においては、出願人は発明者でなくてはならないところ(米国特許法施行規則第1.41条(a)項)、当該2つの米国特許出願のそれぞれには、発明者による委任状が添付されており、第1優先明細書(米国特許出願US08/102,440)の委任状には、代理人としてSchering-Plough Corporationすなわち親会社に所属するAnita W.Magattiが記載されている。一方、第2優先明細書(米国特許出願US08/257,593)の委任状には、代理人としてSCHERING CORPORATIONすなわち本件特許権者に所属するANITA W.MAGATTIが記載されている。さらに、本件特許の国際公開公報(国際公開第95/08532号)の表紙には、出願人欄に本件特許権者が、代理人欄に所属が親会社であるMAGATTI,Anita,W.が記載されている。このとおり、第1優先日及び国際出願時には親会社に、第2優先日には本件特許権者に所属していた担当者Anita W.Magattiが本件医薬品に係る発明の米国特許出願及び国際出願の代理人であったことは、本件医薬品の研究開発や特許化に、特許権者のみならず親会社も関与したことを示しており、このことは、乙20及び乙21に本件医薬品が「米国シェリング・プラウ社で発見された」と記載されていることとも矛盾しない。
d 本件治験実施者による、日本での本件医薬品の開発
乙21(ゼチーア錠10mgに関する資料.シェリング・プラウ株式会社)は、本件医薬品の承認を受けるための申請用資料であって(承認後、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページで公開されている。http://www.pmda.go.jp/drugs/2007/P200700023/index.html)、これを受けた内容が本件医薬品の審査報告書にも記載されている(乙22の記載事項2)。その乙21には、本件医薬品は「米国シェリング・プラウ社で発見された」ものであること、本件治験実施者の本邦における本件医薬品の開発の決定は、「米国シェリング・プラウ社が既に実施していた非臨床及び臨床試験成績を検討した結果」を受けたものであること(乙21の記載事項3)、及び本邦では本件治験実施者が単独で承認申請を行うこと(乙21の記載事項2)が、記載されている。また、乙22にも同様に「本邦において、シェリング・プラウ株式会社(合議体注:本件治験実施者)により開発され、承認申請がなされた。」と記載されるとともに(乙22の記載事項2)、多数の海外の試験結果が記載されている(乙22の記載事項3?14)。
ここで、「米国シェリング・プラウ社」が親会社のことであるかは必ずしも明らかではないが、その社名からみて、少なくともシェリング・プラウ企業グループに属する米国の会社であると認めることができるから、乙21及び乙22の上記記載内容から、本件治験実施者は、シェリング・プラウ企業グループに属する米国の会社で発見された本件医薬品について、当該会社が既に得ていた非臨床及び臨床試験成績を検討して、本件治験実施者である日本のシェリング・プラウ株式会社が日本での開発を決定し、治験ないし承認申請を行ったという事実が認められる。
そして、●(省略)●
e 本件医薬品開発におけるシェリング・プラウ企業グループ会社の協力
本件医薬品のインタビューフォーム及び添付文書において引用された、本件医薬品の効果及び安全性に関する学術論文(乙23の記載事項1及び2、乙25の記載事項1及び2)の研究は、シェリング・プラウ企業グループのメンバーであるシェリング・プラウ・リサーチ研究所(乙12の記載事項4)からの助成金を受けて行われたものであった(乙24の記載事項2)。
(エ)上記a、b及びcのとおり、本件治験実施者と本件特許権者とは、共に、シェリング・プラウ企業グループに属し、親会社の支配下にあったところ、本件医薬品の治験は、当該企業グループに属する米国の会社が既に得ていた非臨床及び臨床試験成績に基づいて、日本法人である本件治験実施者が、●(省略)●行ったものである(上記d)。これらの事実から、本件医薬品の治験は、親会社の指揮の下で、本件治験実施者を中心にグループメンバー各社が協力し合って進めたものであることが見て取れる。
また、本件特許の第1優先米国出願、第2優先米国出願及び国際出願の代理人は一貫してAnita W.Magattiであったところ、その所属が第1優先日及び国際出願時には親会社、第2優先日には本件特許権者であったこと(上記c)、本件医薬品の承認を受けるための申請用資料において本件医薬品は「米国シェリング・プラウ社で発見された」と説明されていること(上記d)、及び本件医薬品の安全性に関する研究に対して当該企業グループに属するさらなる別のメンバー会社が助成金を拠出したこと(上記e)に照らすと、本件医薬品の研究開発や特許化も治験と同様に、親会社の管理下でグループメンバー各社が役割分担をして進めていたことが認められる。
そうであるならば、本件医薬品の治験は、親会社の指揮の下で、本件特許権者の本件特許発明を実施する意思及び能力を反映して、本件治験実施者により行われたものであると考えるのが自然である。そして、本件特許権者は、本件治験実施者に通常実施権を許諾し、自ら特許権の存続期間延長登録を出願した(甲1の記載事項1)のだから、遅くとも治験計画(第1回)(甲2の6)を届け出た時点からそれ以降、本件特許発明を実施する意思及び能力を維持していたと認められる。これらのことは、上記(イ)にも沿うものである。
(オ)以上のとおりであるから、本件延長登録においては、遅くとも治験計画届書(第1回)(甲2の6)の提出以降、本件特許権者には本件特許発明を実施する意思及び能力が存在していたと優に認めることができる。
イ 上記主張イについて
通常実施権の許諾は当事者間の契約であって、それがないからといって特許権者の特許発明を実施する意思及び能力が否定されるわけではない。本件延長登録においては、上記アにおいて判断したとおり、遅くとも治験計画届書(第1回)(甲2の6)の提出以降、本件特許権者には本件特許発明を実施する意思及び能力が存在していたと優に認められ、通常実施権の許諾の時期がいつであるかはこれを左右するものではない。
また、治験を行った医薬品の全てが薬事法上の承認を受けて上市に至るわけではないという医薬品業界の実情(乙8の記載事項2)に照らせば、治験の結果を得て、承認ないし上市の見込みが立ってから通常実施権を許諾することが不合理であるとまではいえない。
ウ 上記主張ウについて
「特許発明の実施をすることができなかつた期間」は、医薬品に関しては、承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間であると解すべきものであって(最高裁判決)、客観的かつ明確に確定できるものである。
エ 上記主張エについて
上述のとおり、請求人の主張を検討しても、本件延長登録の「特許発明の実施をすることができなかつた期間」の始期の認定に誤りは認められず、仮に最高裁判決において始期が傍論であるとしても、この判断に影響を与えるものではない。
また、最高裁判決が判示した「特許発明の実施をすることができなかつた期間」の始期は事案に応じて修正し得る旨の請求人主張の根拠は、いずれも、「政令で定める処分を受けるのに必要」であるとは認められない試験を行った期間や、何らの試験も行っていなかった期間は算入されないことを述べるものにとどまり、最高裁判決が判示した始期である「承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日」を、それよりも後の「承認を受けるのに必要な試験を行った者に対し、通常実施権が許諾された日」とすべきことを立証するものではない。
オ 以上のとおりであるから、請求人の主張は、いずれも採用の限りでない。

第6 むすび
上記第5の1のとおり、本件延長登録に係る延長の期間に誤りはなく、上記第5の2のとおり、仮に特許法第125条の2第1項第3号でいう「その特許発明の実施をすることができなかつた期間」に請求人が主張する「特許発明を実施する意思及び能力」を参酌したとしても、その結論に誤りはないから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件延長登録のうち1年9月9日を超える期間の延長登録を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2019-06-26 
結審通知日 2019-06-27 
審決日 2019-07-10 
出願番号 特願2007-700057(P2007-700057)
審決分類 P 1 16・ 7- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒木 英則  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 長井 啓子
滝口 尚良
登録日 2007-11-14 
登録番号 特許第2803908号(P2803908)
発明の名称 低コレステロール血症薬剤として有用なヒドロキシ置換アゼチジノン化合物  
代理人 向 多美子  
代理人 長沢 幸男  
復代理人 黒田 薫  
代理人 加藤 志麻子  
代理人 西澤 恵美子  
代理人 片山 英二  
代理人 笹本 摂  
代理人 小林 浩  
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