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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1354849
審判番号 不服2018-9586  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-12 
確定日 2019-09-04 
事件の表示 特願2016-119934「ナノ粒子と、アルキレンオキシド繰り返し単位を有するモノマーとを含むミクロ構造化フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-191931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2016-119934号(以下「本件出願」という。)は、2013年(平成25年)8月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年(平成24年)9月20日 米国)を国際出願日とする特願2015-533074号の一部を、平成28年6月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年 8月16日付け:手続補正書
平成29年 8月16日付け:拒絶理由通知書
平成30年 2月19日付け:意見書、手続補正書
平成30年 3月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年 7月12日付け:審判請求書
平成30年 8月 3日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)
平成31年 2月 7日付け:意見書、手続補正書

第2 当審拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由の概要
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1-11に係る発明は、その優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内において、頒布された刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特表2008-530346号公報
引用文献2:特開2011-221492号公報
引用文献3:特開2011-186208号公報
引用文献4:特開平7-125449号公報
引用文献5:特開2011-207047号公報
引用文献6:特開2003-147033号公報
引用文献7:特表2009-541808号公報
引用文献8:国際公開第2010/113600号
引用文献9:特表2008-533525号公報
(当合議体注:
1)引用文献1及び9は、請求項1-11に係る発明を当業者が容易に発明をすることができたことの論理付けにおける主引用発明が記載されたものである。
2)引用文献2は、請求項1-11に係る発明を当業者が容易に発明をすることができたことの論理付けにおける副引用発明が記載されたものである。
3)引用文献8は、請求項7及び8に係る発明を当業者が容易に発明をすることができたことの論理付けにおける副引用発明が記載されたものである。
4)引用文献3-7は、周知技術を示すものである。)

第3 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成31年2月7日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
複数のプリズムを含むミクロ構造化表面を有する輝度向上フィルムであって、前記ミクロ構造化表面が、
少なくとも20重量%の屈折率が少なくとも1.68である無機ナノ粒子と、
少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
ビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤と
を含む重合性組成物の反応生成物を含む、輝度向上フィルム。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献1として引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である特表2008-530346号公報 (以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。
(1)「【特許請求の範囲】
・・・(中略)・・・
【請求項22】
有機相および少なくとも10wt%無機ナノ粒子の反応生成物を含み、前記有機相が、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオリゴマーまたはモノマー、少なくとも1種の単官能性(メタ)アクリルモノマーを含み、および前記有機相の反応生成物が35℃未満のガラス転移温度を有する、微細構造化物品。」

イ 「【背景技術】
【0001】
米国特許第5,175,030号明細書および同5,183,597号明細書などに記載の特定の微細複製化光学製品は、通例、「輝度向上フィルム」として称される。輝度向上フィルムは、多くの電子製品中において、エレクトロルミネッセンスパネル、ラップトップコンピュータディスプレイ、ワードプロセッサ、デスクトップモニタ、テレビ、ビデオカメラに用いられるものを含む液晶ディスプレイ(LCD)、ならびに自動車用および航空用ディスプレイなどのバックライト式フラットパネルディスプレイの輝度を向上させるために利用される。
・・・(中略)・・・
【課題を解決するための手段】
【0005】
有機相および少なくとも10wt%無機ナノ粒子の反応生成物を含む(例えば輝度向上)重合構造体を含み、ここで、有機相が、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオリゴマーまたはモノマーおよび少なくとも1種の単官能性(メタ)アクリルモノマーを含み、ここで、硬化有機相が35℃未満のガラス転移温度を有する、輝度向上フィルムおよび方向変換フィルム(turning film)などの微細構造化物品が記載されている。
【0006】
他の実施形態において、発光面を有する照明デバイスと、前記発光面に対して実質的に平行に配置された上記微細構造化物品(例えば輝度向上および/または方向変換フィルム)とを含む、照射デバイスが記載されている。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
輝度向上フィルムは、一般に、照明デバイスの軸上輝度(本願明細書において、「輝度」として称される)を向上させる。輝度向上フィルムは、透光性、微細構造化フィルムであることができる。微細構造化トポグラフィは、反射および屈折を介して光を再指向させるためにフィルムを用いることができるような、フィルム表面上の複数のプリズムであることができる。ラップトップコンピュータ、時計等において見出されるものなどの光学ディスプレイにおいて用いられる場合、微細構造化光学フィルムは、ディスプレイから漏れる光を、光学ディスプレイを通る法線軸から所望の角度で配置された一対の面内に制限することにより、光学ディスプレイの輝度を増加させることができる。その結果、許容可能な範囲外にディスプレイから出射しようとする光はディスプレイ中に反射して戻されて、その一部分が「再利用」されることができ、および微細構造化フィルムに、ディスプレイから脱することが許容される角度で戻される。ディスプレイに所望のレベルの輝度を提供するに必要な消費電力を低減させることができるため、再利用は有用である。
・・・(中略)・・・
【0027】
ここに、微細構造化物品が記載されている。微細構造化層の微細構造体は、少なくとも1種の(メタ)アクリレートオリゴマーおよび少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーを主構成要素として有する有機相を含む重合性組成物の反応生成物から形成される。重合性組成物は、任意により、さらに無機ナノ粒子を含み得る。重合性組成物は、好ましくは、実質的に溶剤フリー放射線硬化性であり、任意により無機充填された、有機複合体である。有機相は、典型的には、いくつかの最終用途については少なくとも1.50の屈折率、および他の最終用途については少なくとも1.56の屈折率を有する。可視光スペクトルにおける高透過率はまた典型的には好ましい。重合性組成物の有機相は、約50℃未満の融点を有することができる。有機相は、室温で液体であることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0030】
重合性組成物は、少なくとも二官能性である少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーと、少なくとも1種の(メタ)アクリレート単官能性モノマー希釈剤とを組み合わせたブレンド含む。少なくとも1つの成分のホモポリマーは、前述のとおり、重合有機相が35℃未満のTgを有するために、35℃未満のTgを有する。いくつかの実施形態において、二官能性モノマーまたはオリゴマーは35℃未満のTgを有する一方、希釈剤のホモポリマーのTgは35℃を超えていてもよい。他の実施形態において、(メタ)アクリレート単官能性モノマー希釈剤は35℃未満のTgを有する一方、二官能性モノマーまたはオリゴマーのホモポリマーのTgは35℃を超えている。さらに他の実施形態において、有機相は、各々35℃未満のTgを有する二官能性モノマーまたはオリゴマーおよび単官能性希釈剤の両方を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリレートオリゴマーは、それぞれ、約-80℃?約0℃ガラス転移温度(Tg)を有し、これは、それらのホモポリマーはこのようなガラス転移温度を有することを意味する。約-80℃?約0℃のガラス転移温度を有し、および微細構造化層の形成に好適である(メタ)アクリルモノマーの例としては、例えばポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリル酸エステル等が挙げられる。約-80℃?約0℃のガラス転移温度を有し、および微細構造化層の形成に好適な(メタ)アクリルオリゴマーとしては、例えばウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0032】
種々のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、コグニス(Cognis)から商品名「フォトマー(PHOTOMER)6000シリーズ」で市販されている。一つの例証的なウレタンアクリレート(32℃のTgおよび40%の伸度を有するとコグニス(Cognis)によって報告されている)が、コグニスコーポレーション(Cognis Corporation)から、商品名「フォトマー(PHOTOMER)6210」で市販されている。他の例証的なウレタンアクリレート(-33℃のTgおよび238%の伸度を有するとサルトマー(Sartomer)によって報告されている)が、ペンシルバニア州エクストンのサルトマー(Sartomer Co.,Exton,PA)から、商品名「CN966J75」で市販されている。他の(例えば脂肪族)ウレタンジアクリレートが、コグニス(Cognis)から、商品名「フォトマー(PHOTOMER)6010」(60℃で5,900mPa.sの粘度、45%の伸度および-7℃のTgを有すると報告されている);「フォトマー(PHOTOMER)6217」および「フォトマー(PHOTOMER)6230」(共に、コグニス(Cognis)によって、60℃で3,500mPa.sの粘度、それぞれ27%および69%の伸度、およびそれぞれ35℃および2℃のTgを有すると報告されている);「フォトマー(PHOTOMER)6891」(コグニス(Cognis)によって、60℃で8,000mPa.sの粘度、60%の伸度および28℃のTgを有すると報告されている);および「フォトマー(PHOTOMER)6893?20R」(60℃の2,500mPa.sの粘度、42%の伸度、および41℃のTgを有すると報告されている)で市販されている。他のウレタンジアクリレートは、サルトマー(Sartomer)ならびにUCBから市販されている。
・・・(中略)・・・
【0037】
(メタ)アクリルモノマーは、好ましくは、(メタ)アクリレートなどのモノ-エチレン不飽和モノマー、または単量体N-置換あるいはN,N-二置換(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドである。これらとしては、N-アルキルアクリルアミドおよびN,N-ジアルキルアクリルアミドが挙げられ、特にC_(1~4)アルキル基を含有するものが挙げられる。例は、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドンおよびN-ビニルカプロラクタムである。
・・・(中略)・・・
【0039】
好適な単官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート;フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート;フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、4-(1-メチル-1-フェネチル)フェノキシエチル(メタ)アクリレート;フェニルチオエチルアクリレート;2-ナフチルチオエチルアクリレート;1-ナフチルチオエチルアクリレート;2,4,6-トリブロモフェノキシエチルアクリレート;2,4-ジブロモフェノキシエチルアクリレート;2-ブロモフェノキシエチルアクリレート;1-ナフチルオキシエチルアクリレート;2-ナフチルオキシエチルアクリレート;フェノキシ2-メチルエチルアクリレート;フェノキシエトキシエチルアクリレート;3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート;2-フェニルフェノキシエチルアクリレート;4-フェニルフェノキシエチルアクリレート;2,4-ジブロモ-6-セック-ブチルフェニルアクリレート;2,4-ジブロモ-6-イソプロピルフェニルアクリレート;ベンジルアクリレート;フェニルアクリレート;2,4,6-トリブロモフェニルアクリレートが挙げられる。ペンタブロモベンジルアクリレートおよびペンタブロモフェニルアクリレートなどの他の高屈折率モノマーもまた用いることができる。
【0040】
フェノキシエチルアクリレートは、2つ以上の供給業者から市販されており、サルトマー(Sartomer)から、商品名「SR339」で;エターナルケミカル(Eternal Chemical Co.Ltd.)から、商品名「エテルマー(Etermer)210」で;および東亜合成株式会社から、商品名「TO-1166」で市販されている。ベンジルアクリレートは、マサチューセッツ州ワードヒルのアルファイーザー(AlfaAeser Corp,Ward Hill,MA)から市販されている。一つの例証的な高指数任意選択のモノマーは、第一工業製薬(日本国京都)から、商品名「BR-31」で市販されている、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレートである。
・・・(中略)・・・
【0050】
いくつかの実施形態において、輝度向上フィルムおよび重合性組成物は、好ましくは表面変性された、複数の(例えばコロイド状)無機ナノ粒子を含む。無機ナノ粒子の包含により耐久性を向上させることができる。好ましくは、重合微細構造化表面は、2005年7月14日公開の米国特許出願公開第2005/0151119-A1号明細書および2004年9月10日出願の米国特許出願第10/938006号明細書に記載の試験法に準拠して測定した、1.0?1.15、または1.0?1.12、または1.0?1.10、または1.0?1.05の範囲内の引掻コントラスト比値を有する。丸められたプリズム頂点の場合には、引掻コントラスト比値は、1.0?1.65、または1.0?1.4、または1.0?1.10の範囲であることができる。
【0051】
(例えば表面変性コロイド状)ナノ粒子は、1nmを超え、および100nm未満の一次粒径を有する酸化粒子であることができる。全体を通して用いるところ、粒径とは平均粒径を指す。これらのサイズ計測値は、透過電子顕微鏡法(TEM)に基づいていることができる。ナノ粒子としては、例えば、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン、シリカ、ジルコニア、チタニア、これらの混合物、またはこれらの混合酸化物などの金属酸化物を挙げることができる。表面変性コロイド状ナノ粒子は、実質的に完全に凝集していることができる。表面変性されたナノ粒子は、好ましくは非結合である。
【0052】
シリカナノ粒子は、5?100nmまたは10?30の粒径を有することができる。シリカナノ粒子は、重合性組成物の10?60wt%、または10?40wt%の量で輝度向上フィルム中に存在することができる。本発明の材料に用いられるシリカは、イリノイ州ネイパービルのナルコケミカル社(Nalco Chemical Co.,Naperville,IL)から、製品1040、1042、1050、1060、2327および2329などの、商品名「ナルココロイダルシリカ(Nalco Collodial Silicas)」で市販されている。好適なヒュームドシリカとしては、例えば、独国ハナウのデグッサ(DeGussa AG(Hanau,Germany)から、商品名、「エアロシル(Aerosil)シリーズOX-50」、ならびに製品番号-130、-150、および-200で市販されている製品が挙げられる。ヒュームドシリカはまた、イリノイ州タスコーラのキャボット社(Cabot Corp.,Tuscola,IL)から、商品名CAB-O-SPERSE2095」、「CAB-O-SPERSE A105」、および「CAB-O-SIL M5」で市販されている。
【0053】
ジルコニアナノ粒子は、5?50nm、または5?25nmの粒径を有することができる。ジルコニアナノ粒子は、重合性組成物の10?70wt%、または30?60wt%の量で輝度向上フィルム中に存在することができる。本発明の組成物および物品中に用いられるジルコニアは、ナルコケミカル社(Nalco Chemical Co.)から、商品名「ナルコ(Nalco)OOSSOO8」で入手可能である。
・・・(中略)・・・
【0071】
光学層は、直接的にベース層に接触することができ、または光学的にベース層に対して位置あわせされることができ、および光学層が光の流れを指向しまたは集光することを許容するサイズ、形状および厚さであることができる。光学層は、図に記載しおよび示されたものなどの多数の有用なパターンのいずれかを有することができる、構造化または微細構造化表面を有することができる。微細構造化表面は、フィルムの長さまたは幅に沿って延びる複数の平行な長手方向の稜であることができる。これらの稜は、複数のプリズム頂点から形成されることができる。これらの頂点は、鋭角、丸められたまたは平坦化されたまたは平頭であることができる。例えば、稜は、4?7マイクロメートルの範囲の半径に丸められていることができる。
・・・(中略)・・・
【0085】
図1において全体が10で示されているバックライト式液晶ディスプレイは、拡散体12および液晶ディスプレイパネル14の間に位置されることができる本発明の輝度向上フィルム11を含む。バックライト式液晶ディスプレイはまた、蛍光ランプなどの光源16、液晶ディスプレイパネル14に向かう反射のための光を伝達するためのライトガイド18、およびさらに液晶ディスプレイパネルに向かう光を反射するための白色反射材20を含むことができる。輝度向上フィルム11は、ライトガイド18から放射される光をコリメートし、これにより液晶ディスプレイパネル14の輝度を高める。高められた輝度は、液晶ディスプレイパネルによるより鮮明なイメージの形成を可能とさせ、および選択された輝度を形成するための光源16の電力を低減させることを許容する。バックライト式液晶ディスプレイにおける輝度向上フィルム11は、コンピュータディスプレイ(ラップトップディスプレイおよびコンピュータモニタ)、テレビ、ビデオレコーダ、モバイル通信デバイス、可搬式デバイス(すなわち携帯電話、PDA)、自動車用および航空用機器ディスプレイ等などの、符号21によって示される機器において有用である。
【0086】
輝度向上フィルム11は、図2に示されるとおり、プリズム22、24、26、および28によって表されるプリズムアレイを含む。例えば、プリズム22などの各プリズムは、第1のファセット30および第2のファセット32を有する。プリズム22、24、26、および28は、プリズムがその上に形成された第1の表面36および実質的に平坦または平面であると共に第1の表面の逆側の第2の表面38を有するボディ部分34上に形成されることができる。」
(当合議体注:【0037】における「_(1-4)」との記載は、「1?4」を下付文字にしたものである。)

エ 「【実施例】
【0114】
本発明を、以下の実施例を参照して具体的に説明する。なお、当業者は、本発明がこれらの実施例に限定されないことは容易に理解することができる。
【0115】
微細構造化物品の製造
代表的な微細構造化物品は、格子状パターンのリブを有するPDPバックプレートの製造に好適な可撓性成形型である。9つの可撓性成形型を、以下に記載のとおりの異なる有機相組成物で製造した。
【0116】
先ず、各PDPバックプレートの格子状リブパターンに対応する格子状リブパターンを有する矩形のマスター成形型が用意される。マスター成形型のサイズは、長さ125mm×幅250mmである。マスター成形型のリブ交差点の各々は、各々二等辺台形断面形状を有する縦方向リブおよび横方向リブを有する。これらの縦方向および横方向リブは、実質的に平行に配置される一方、それらの間に予め定められた間隙をもって相互に交差する。各リブは、210μmの高さ(縦方向および横方向リブの両方について)、60μmの頂部幅、120μmの底部幅、300μmの縦方向リブのピッチ(隣接する縦方向リブの中心間距離)および510μmの横方向リブのピッチを有する。
【0117】
成形型の微細構造化層を形成するために、以下に列挙した、ウレタンアクリレートオリゴマー、アクリルモノマーおよび光重合開始剤が、表1に表示された異なる量(wt%)でブレンドされて、UV-硬化性組成物1?9が得られる。
【0118】
ウレタンアクリレートオリゴマーA:
脂肪族二官能性ウレタンアクリレートオリゴマー(分子量:4,000、ダイセル-UBC(Daicel-UBC Co.)の製品)、Tg:15℃
ウレタンアクリレートオリゴマーB:
脂肪族二官能性ウレタンアクリレートオリゴマー(分子量:13,000、ダイセル-UBC(Daicel-UBC Co.)の製品)、Tg:-55℃
アクリルモノマーC:
イソボルニルアクリレート単官能性モノマー(分子量:208)、Tg:94℃
アクリルモノマーD:
フェノキシエチルアクリレート単官能性モノマー(分子量:193)、Tg:10℃
アクリルモノマーE:
ブトキシエチルアクリレート(分子量:172)、Tg:-50℃
アクリルモノマーF:
エチルカルビトールアクリレート(分子量:188)、Tg:-67℃
アクリルモノマーG:
2-エチルヘキシル-ジグリコールアクリレート(分子量:272)、Tg:-65℃
アクリルモノマーH:
2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールアクリレート(分子量:268)、Tg:108℃
光重合開始剤:
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(チバスペシャリティケミカルズ(Chiba Specialty Chemicals Co.)の製品、製品名「ダロキュア(Darocure)1173」)
【0119】
さらに、成形型の支持体として用いるために、長さ400mm、幅300mmおよび厚さ188μm(テイジン(Teijin Co.)の製品、商品名「HPE18」、Tg:約80℃)のサイズを有するPETフィルムが調製される。
【0120】
次に、そのように準備されたマスター成形型の上流端に、各UV-硬化性組成物が線形態で適用される。上述のPETフィルムは、次いで、マスター成形型の表面を被覆するような方法で積層される。縦方向PETフィルムは、マスター成形型の縦方向リブと平行であり、およびPETフィルムおよびマスター成形型の間に挟まれたUV-硬化性組成物の厚さは、約250μmに設定される。積層体ロールの使用によってPETフィルムが十分に押圧されるとき、UV-硬化性組成物は、マスター成形型の凹部に完全に満たされており、および気泡の閉じ込めは観察されない。
【0121】
蛍光ランプ(ミツビシデンキオスラム(Mitsubishi Denki-Oslam Co.)の製品)からの、300?400nm(ピーク波長:352nm)の波長を有する紫外光線が、この状態下で、PETフィルムを介してUV-硬化性組成物に60秒間照射される。紫外光線の照射量は、200?300mJ/cm^(2)である。UV-硬化性組成物が硬化されて、微細構造化層が得られる。続いて、PETフィルムおよび微細構造化層が、マスター成形型から剥離されて、マスター成形型のリブの形状およびサイズに対応する形状およびサイズを有する多数の溝部を備えた可撓性成形型が得られる。
・・・(中略)・・・
【0123】
表1に結果が表示されている。
・・・(中略)・・・
【0129】
【表1】



オ 「【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】バックライト式液晶ディスプレイにおける本発明の例示的微細構造化物品の概略図である。
【図2】微細構造化表面を備える例示的重合構造体の斜視図である。」

カ 「【図1】

【図2】



(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の【0005】及び【0006】の記載に接した本件優先日前の当業者ならば、引用文献1の【請求項22】に記載された「微細構造下物品」として、「輝度向上フィルムとして用いられる微細構造化物品」の発明を把握することができる。
そうしてみると、引用文献1には、請求項22に係る発明に関連して、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「 有機相および少なくとも10wt%無機ナノ粒子の反応生成物を含み、前記有機相が、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオリゴマーまたはモノマー、少なくとも1種の単官能性(メタ)アクリルモノマーを含み、および前記有機相の反応生成物が35℃未満のガラス転移温度を有し、
輝度向上フィルムとして用いられる微細構造化物品。」

2 引用文献2の記載事項
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献2として引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である特開2011-221492号公報 (以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用バックライトのプリズムシート等として用いられる光学シート、光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物並びに当該光学シートを備える面光源装置及び液晶表示装置に関する。
・・・(中略)・・・
【0006】
上記光学シートが備えるプリズム部と、面光源装置が有する導光板、(光)拡散フィルム又は液晶セル等の隣接する他部材とが接触した場合、工程内等で加わる熱と圧力とにより単位プリズムの頂部が潰れてしまうといういわゆる「山潰れ」の問題や、プリズム部と導光板とが接触して単位プリズムの頂部に欠けが生じてしまうという問題がある。
こうした単位プリズムの頂部の変形及び欠けの問題は、表示装置の表示面に白点(白模様)等の表示ムラを生じさせて表示性能を低下させる一因となる。
特に、凹凸形状がプリズムの様な尖った凸部を持つ場合に、上述した凹凸形状の磨耗、欠け又は山潰れの発生が顕著となる。その他の凹凸形状の光学シートの場合も、同様の傾向がある。
【0007】
上記問題点を改善するために、従来、プリズム部に用いられる材料としては、弾性率が高く、形成された単位プリズムの形状が変形しにくいものが用いられてきた(例えば特許文献1)。
特許文献1に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物からなる光学物品(光学シート)は、その硬化物が応力-歪曲線で降伏点を持たないものであり、加わる応力が弾性限度内であるときは、応力から開放されると、弾性復元力により元の形状に復元し、永久歪み(変形)が生じることが無い。
しかしながら、上記光学物品に加わる応力が弾性限度を超えると、当該光学物品に亀裂が生じるという問題があった。
【0008】
一方、特許文献2に記載のレンズ部(プリズム部)は、特定の物性を有することにより、外的要因によって上記プリズム部の表面に付された単位プリズムが変形した場合でも、これを元の形状に復元させることができる復元性が付与されており、所望の形状を維持することが可能となっている。
しかしながら、上記プリズム部の有する復元性は、当該プリズム部に加わる外力による変形の問題を解消するのには十分なものではなかった。また、復元性を付与した分、プリズム部の欠けが生じ易くなり、復元性と耐傷付き性とが両立し無いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9-61601号公報
【特許文献2】特開2009-37204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い凹凸形状を備えた光学シート、当該凹凸形状を形成するのに好適な光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物並びに当該光学シートを備える面光源装置及び液晶表示装置を提供することを目的とする。」

(2)「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、光学シートの複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部の微小硬さを特定の値以上とすることにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る第一の態様の光学シートは、透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、
当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該単位凹凸構造の頂部における、ISO14577-1に準拠して押し込み荷重0.5mNで測定される押し込み深さが、0.6μm以上であることを特徴とする。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る光学シートは、上記単位凹凸構造の頂部における特定の押し込み荷重時の押し込み深さが特定の値以上であることにより、当該凹凸形状が優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い。
当該光学シートを備える面光源装置は、光学シートの光学機能発現部が導光板等の部材と接触しても、単位凹凸構造の頂部に欠け、山潰れ及び変形が生じ難い。
当該光学シートを備える液晶表示装置は、光学シートの単位凹凸構造の頂部に欠け、山潰れ及び変形が生じ難いため、白点(白模様)等の表示ムラを生じ難く、外観に優れる。
本発明に係る光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、容易に上記光学機能発現部を形成することができる。
・・・(中略)・・・
【0065】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある。)は、(メタ)アクリル樹脂を含み、活性エネルギー線の照射により硬化して光学機能発現部を形成する。
なお、本発明において「活性エネルギー線」とは、可視光線並びに紫外線及びX線等の非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線及びα線のような粒子線を総称する、活性エネルギー線硬化性基を有する分子に架橋反応乃至重合反応を生じせしめるに足るエネルギー量子を持った放射線が含まれる。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0066】
この(メタ)アクリル樹脂としては、従来公知の光学シート形成用の(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能若しくは多官能のモノマー、オリゴマー又はプレポリマー等を用いることができる。
単官能のモノマーとしては、例えば、特許文献2に記載のビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。
多官能のモノマーとしては、例えば、特許文献2に記載のエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジオールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
反応性プレポリマーとしては、例えば、特許文献2に記載のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
本発明に係る光学シートの好適な態様では、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、(A)活性エネルギー線硬化性基を1個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂(以下、単に「(A)成分」ということがある。)、及び/又は(B)活性エネルギー線硬化性基を2個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂(以下、単に「(B)成分」ということがある。)、(C)ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(以下、単に「(C)成分」ということがある。)及び(D)一般式(1)で表わされる化合物(以下、単に「(D)成分」ということがある。)を含み、かつ、当該(A)及び(B)の合計質量が当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全固形分質量に対して50質量%以上であることが、光学機能発現部が上述した特定範囲の押し込み深さ及び上記特定の復元性を発現し易い点から好ましい。
以下、これら(A)?(D)成分について順に説明する。
・・・(中略)・・・
【0074】
((B)活性エネルギー線硬化性基を2個有する(メタ)アクリル樹脂)
(B)成分は、活性エネルギー線硬化性基を2個有する(メタ)アクリル樹脂であり、ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子等のヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族又は環状の脂環式若しくは芳香族の(メタ)アクリル樹脂であっても良く、例えば、上述した特許文献2に記載の2官能の(メタ)アクリル樹脂を用いることができる。
(B)成分は好ましくは、下記一般式(3)で表わされる化合物及び下記一般式(5)で表わされる化合物(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート)が挙げられる。
【0075】
【化8】

(一般式(3)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2?20を満たす正の整数である。)
【0076】
【化9】

(一般式(5)中、R^(4)は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、nは、正の整数である。)
・・・(中略)・・・
【0080】
一般式(5)において、R^(4)は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であるが、二つのR^(4)が水素原子であることが好ましい。
一般式(5)で表わされる化合物の重量平均分子量は、上記特定の復元性を発現する観点から、400以上が好ましく、600以上がより好ましい。また、一般式(5)で表わされる化合物の入手の容易さの観点から、当該重量平均分子量は、800以下が好ましく、600以下がより好ましい。
一般式(5)で表わされる化合物の含有量は、上記特定の復元性を十分に発現する観点から、組成物の全固形分質量に対して、1?15質量%であることが好ましく、さらに5?10質量%であることが好ましい。
一般式(5)で表わされる化合物は、単一の構造及び重量平均分子量のものを用いても良いし、構造及び重量平均分子量が異なるものを2種以上組み合わせて用いても良い。」

(4)「【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0107】
以下の組成物1?5をそれぞれ調製した。各組成物の組成をまとめたものを表1に示す。
・・・(中略)・・・
【0111】
(組成物4の調製)
フェノキシエチルアクリレート(サートマー社製の商品名SR339A):9質量部
オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート(別名アクリル酸2-(2-ビフェニリルオキシ)エチル):36質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=2、かつ、R^(1)及びR^(3)が全て水素原子、共栄社化学(株)製の商品名ライトアクリレート BP-4EA):8質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=5、かつ、R^(1)及びR^(3)が全て水素原子、MIWON社製の商品名MIRAMER M2100):42質量部
ポリエチレングリコールジアクリレート(一般式(5)においてR^(4)が全て水素原子、重量平均分子量600):10質量部
ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名BYK-377)、一般式(4)において、a=5、b=5、c=30、d=10、R^(1)及びR^(2)がメチル基、重量平均分子量10800):0.5質量部
グリセリンエポキシアクリレート(上記一般式(1)、ナガセケムテックス(株)製の商品名DA-314):5質量部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製の商品名イルガキュア184):3質量部
リン酸エステル系離型剤(SC有機化学(株)製の商品名Chelex H-18D):0.1質量部
・・・(中略)・・・
【0113】
【表1】

【0114】
(実施例1)
図1に示すような単位プリズムの線状配列の凹凸形状が形成されたプリズム型に上記調製した組成物1を滴下した後、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(東洋紡績(株)製の商品名A4300)を重ね、ラミネーターで当該PET基材全面を組成物1に圧着した。
次いで、水銀灯を用い、780mJ/cm^(2)でその組成物1に対して紫外線照射を行い、多数の単位プリズムを有するプリズム部を硬化させ、PET基材と一体化させた。その後、上記プリズム型を剥離することによって、光学シートを得た。
ここで、単位プリズムの形状は、厚さ方向の断面における形状が高さ25μm、底辺50μm、頂角90℃となる二等辺三角形の三角柱形状とした。そして、光学機能発現部は、各単位プリズムの稜線が互いに平衡になるように複数の単位プリズムを配列周期50μmで当該稜線と直交する方向に多数隣接して配列しているものであった。
【0115】
(実施例2?4及び比較例1)
実施例1において、組成物1をそれぞれ、表1に示すように組成物2?5に代えた以外は実施例1と同様に行い、光学シートを得た。
【0116】
(押し込み深さの測定)
ISO 14577-1に準拠して(株)フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名PICODENTOR HM500、圧子はダイヤモンド製の四角錐型、対面角90°)を用いて、押し込み荷重0.5mN時及び300mN時の押し込み深さを測定した。その測定結果を表2に示す。
【0117】
(マルテンス硬度及び塑性変形硬さの測定)
ISO 14577-1に準拠して(株)フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名PICODENTOR HM500、圧子はダイヤモンド製の四角錐型、対面角90°)を用いて、押し込み荷重300mN時のマルテンス硬度及び塑性変形硬さを測定した。その測定結果を表2に合わせて示す。
【0118】
(復元率の測定)
単位プリズムの頂部における、JIS Z2244(2003)に規定されるビッカース硬さ試験に準拠して、荷重を0mNから200mNまで一定の割合で変化させ、荷重200mNに到達後60秒間保持し、次いで、荷重を0.4mNまで抜重して4秒間保持した時(R1時)の当該頂部の荷重前の頂部(高さ25μm)に対する復元率を測定した。また、当該4秒間保持した後、さらに60秒間保持した時(R2時)の当該頂部の荷重前の頂部(高さ25μm)に対する復元率を測定した。R1時及びR2時における復元率の測定結果を表2に合わせて示す。
なお、復元率は、フィッシャー社製の商品名HP100XYp(圧子形状:半球状φ0.4mmボール、圧子本体材質:ステンレス、圧子の試料との接触部材質:タングステンカーバイト、圧子と測定機との接続部材質:フェライト)を用いて測定した。
【0119】
作製した実施例及び比較例の光学シートの光学機能発現部の復元性及び耐傷付き性を、下記の方法及び評価基準により評価した。その結果を合わせて表2に示す。
【0120】
(評価方法)
図6は、本発明における復元性及び耐傷付き性の評価方法を模式的に示した概略図であり、図6に示すように、耐摩耗試験機の可動盤110上に試験
片である光学シート1を透明基材側が可動盤側に位置するように設定し、当該試験片上に面積12cm^(2)の偏光フィルム120を介して荷重部130に2.45N(250gf)の荷重をかけた。そして、可動盤110を速度5mm/sで20秒間、図6の矢印140方向に移動させた時の光学機能発現部の頂部の状態を目視及び顕微鏡観察により評価した。
【0121】
試験片は、得られた光学シートを長さ150mm、幅40mmに切断したものを用いた。
測定装置は、テスター産業(株)製の商品名AB-301 学振型摩擦堅牢度試験機を用いた。
偏光フィルムは、面積12cm^(2)の大日本印刷(株)製の商品名H25を用い、マット層側を試験片に向けて配置した。
顕微鏡は、(株)キーエンス社製の商品名デジタルマイクロスコープ VHX-200Nを用いた。
なお、荷重部の底面は外径20mm、内径10mmのドーナツ状であり、底面積は2.36cm^(2)である。
【0122】
(復元性評価)
・評価5:顕微鏡観察で形状の変形が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察で形状の変形が確認されたが、バックライト上で目視では確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視で形状の変形が確認されたが、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元した。
・評価2:バックライト上で目視で形状の変形が確認され、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元しなかったが、35℃に加熱した場合、5分以内に元の形状に復元した。
・評価1:バックライト上で目視で形状の変形が確認され、35℃で加熱しても5分以内に元の形状に復元しなかったが、80℃で1分加熱した場合、元の形状に復元した。
【0123】
(耐傷付き性評価)
・評価5:顕微鏡観察で傷が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察で傷が1本確認されたが、バックライト上で目視では傷が確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視により傷が2?3本確認された。
・評価2:バックライト上で目視により傷(スジ)が多数確認された。
・評価1:バックライト上で目視によりプリズム表面全面に削れた後が確認された。
なお、復元性評価及び耐傷付き性評価において、顕微鏡観察は、顕微鏡の倍率を100?1000倍の範囲内で適宜調節して行った。
【0124】
図7は、本発明における復元性及び耐傷付き性の評価方法を模式的に示した概略図であり、復元性評価3及び耐傷付き性評価5とは、例えば、図7の(a)に示すように光学機能発現部20の単位凹凸構造30の頂部に、偏光フィルム120の幅Lの凹み(変形)が形成された後、室温(25℃)で10分以内に、図7の(b)に示すように凹凸形状が元の形状に復元し、かつ、顕微鏡観察で傷が確認されなかった場合をいう。
復元性評価3及び耐傷付き性評価3とは、例えば、図7の(c)に示すように光学機能発現部20の単位凹凸構造30の頂部に、偏光フィルム120の幅Lの凹み(変形)と、偏光フィルム120の幅Lよりも小さい幅lが形成された後、室温(25℃)で10分以内に、図7の(d)に示すように凹凸形状が元の形状に復元するが、凹凸構造の頂部近傍の表面に復元せずに残った傷が2?3本形成され、当該傷がバックライト上で目視により確認された場合をいう。
【0125】
【表2】

【0126】
(結果のまとめ)
表2より、実施例1?4では、押し込み荷重0.5mN時の押し込み深さが2.8μm、押し込み荷重300mN時の押し込み深さが20.8?22.2μmと大きかった。
また、実施例1?4では、押し込み荷重300mN時のマルテンス硬度が26.2?37.3N/mm^(2)と、50N/mm^(2)以下であった。
実施例1?4では、押し込み荷重300mN時の塑性変形硬さが29.5?46.5N/mm^(2)と、50N/mm^(2)以下であった。
そして実施例1?4では、復元性及び耐傷付き性がともに良好であった。
特に、復元率の評価について、実施例1?3では、R1時の復元率は68.7?68.9%、R2時の復元率は78.2?78.5%と良好であった。さらに実施例4では、R1時の復元率は77.8%、R2時の復元率は98.6%となり、実施例1?3の場合よりも短時間での復元性及び一定時間経過時の復元性の両方においてさらに優れた結果が得られた。
しかし、比較例1では、押し込み荷重0.5mN時及び押し込み荷重300mN時の押し込み深さがともに小さく、マルテンス硬度及び塑性変形硬さは大きかった。
そして、比較例1では、R1時及びR2時の復元率が低く、復元性及び耐傷付き性の評価がともに低かった。
【符号の説明】
【0127】
1 光学シート
10 透明基材
20 光学機能発現部
30 単位凹凸構造
40 光拡散層
50 面光源装置
60 導光板
61 光放出面
62 側端面
70 光源
80 光反射板
90 液晶表示装置
100 液晶セル
110 可動盤
120 偏光フィルム
130 荷重部
140 移動方法
150 傷」

(5)「【図6】

【図7】



3 引用文献8の記載事項
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献8として引用され、本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2010/113600号(以下「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「技術分野
[0001]本発明は、光学材料として利用が可能な新規(メタ)アクリル酸エステル誘導体に関する。
背景技術
[0002]現在、液晶テレビ、ノートパソコン、カーナビ、携帯電話、携帯ゲーム機などの液晶表示パネルの輝度向上を目的とした集光フィルム(プリズムシート)においては、液晶表示素子の小型化、高輝度化、高耐光性が要求されている。特に高輝度化のためには、プリズムシートの高屈折率化が不可欠である。
・・・(中略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0006]本発明の課題は、その硬化物が高屈折率であって、光学材料として利用が可能な低粘性の新規(メタ)アクリル酸エステル誘導体を提供することである。
・・・(中略)・・・
発明の効果
[0015]本発明によれば、その硬化物が高屈折率であって、光学材料として利用が可能な低粘性の(メタ)アクリル酸エステル誘導体を提供することができる。」

(2)「発明を実施するための形態
[0016]本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エステル誘導体は、一般式(1)

[0017]で表され、
1)X?で表される基が、下記式(2)?(5)で表される何れかの基である場合には、
[0018][化4]

[0019]R_(1)及びR_(2)で表される基は各々独立に置換基を有してもよいベンゼン環を有する基、nは1?4の整数を表し、
2)X?で表される基が、下記式(6)又は(7)で表される何れかの基である場合には、
[0020][化5]

[0021]R_(1)及びR_(2)は、各々独立に炭素数1?4の低級アルキル基又は置換基を有してもよいベンゼン環を有する基から任意に選ばれる基であって、R_(1)又はR_(2)のうち少なくとも一つは置換基を有してもよいベンゼン環を有する基、R_(3)は炭素数1?4の低級アルキル基、nは1?4の整数であることに特徴を有する。
また、本発明の(メタ)アクリル酸エステル誘導体には、メタクリル酸エステル誘導体も含まれる。
[0022]ここで、
1)X?で表される基が、下記式(2)?(5)で表される何れかの基である場合には、
[0023][化6]

[0024]好ましい例として、
[0025][化7]

[0026]等の部分構造を挙げることができる。
[0027]また、R_(1)及びR_(2)で表される基であって、置換基を有してもよいベンゼン環を有する基の好ましい例として、例えば、フェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルメチル基、(2-フェニルエチル)フェニル基、ベンジルオキシフェニル基等の基を挙げることができる。
更に、本発明の具体的な(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、例えば、
2,2-ジフェニルエチルアクリレート、3,3-ジフェニルプロピルアクリレート、4,4-ジフェニルブチルアクリレート、2-(ジフェニルメトキシ)エチルアクリレート、2-ベンジルフェニルアクリレート、3-ベンジルフェニルアクリレート、4-ベンジルフェニルアクリレート、2-フェノキシフェニルアクリレート、3-フェノキシフェニルアクリレート、4-フェノキシフェニルアクリレート、2-ベンジルベンジルアクリレート、3-ベンジルベンジルアクリレート、4-ベンジルベンジルアクリレート、2-フェノキシベンジルアクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート、4-フェノキシベンジルアクリレート、2-(2-フェノキシフェノキシ)エチルアクリレート、2-フェネチルフェニルアクリレート、3-フェネチルフェニルアクリレート、4-フェネチルフェニルアクリレート、2-(ベンジルオキシ)フェニルアクリレート、3-(ベンジルオキシ)フェニルアクリレート、4-(ベンジルオキシ)フェニルアクリレート、(2-フェノキシメチル)フェニルアクリレート、(3-フェノキシメチル)フェニルアクリレート、(4-フェノキシメチル)フェニルアクリレート、2-フェネチルベンジルアクリレート、3-フェネチルベンジルアクリレート、4-フェネチルベンジルアクリレート、2-(ベンジルオキシ)ベンジルアクリレート、3-(ベンジルオキシ)ベンジルアクリレート、4-(ベンジルオキシ)ベンジルアクリレート、2-(フェノキシメチル)ベンジルアクリレート、3-(フェノキシメチル)ベンジルアクリレート、4-(フェノキシメチル)ベンジルアクリレート、1,2-ジフェニルエチルアクリレート、2,3-ジフェニルエチルアクリレート、2-フェノキシ-2-フェニルエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体を挙げることができる。」

(3)「実施例
[0070]次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
・・・(中略)・・・
[0075](実施例3)2-ベンジルベンジルアクリレート(C)の合成
実施例1と同様の方法で、3,3-ジフェニルプロピルアルコールの代わりに(2-ベンジルフェニル)メタノールを用いて、2-ベンジルベンジルアクリレートを合成した(収量70g、収率85%)。得られた生成物の屈折率(nD,25℃)は1.564、粘度(25℃)は20mPa・sであった。
[0076]^(1)H-NMR(300MHz):δ(CDCl_(3)、内部標準TMS) 3.90(s、2H)、5.25(s、2H)、5.80(d、1H),6.06(q、1H)、6.29(d、1H)、7.20-7.30(m、9H)
GC-MS(CI):m/z=253[M+H]^(+)
[0077][化12]

[0078](実施例4)2-フェノキシベンジルアクリレート(D)の合成
実施例1と同様の方法で、3,3-ジフェニルプロピルアルコールの代わりに(2-フェノキシフェニル)メタノールを用いて、2-フェノキシベンジルアクリレートを合成した(収量69g、収率82%)。得られた生成物の屈折率(nD,25℃)は1.564、粘度(25℃)は17mPa・sであった。
[0079]^(1)H-NMR(300MHz):δ(CDCl_(3)、内部標準TMS) 5.30(s、2H)、5.79(d、1H),6.09(q、1H),6.37(d,1H)、6.90-7.48(m、9H)
GC-MS(CI):m/z=255[M+H]^(+)
[0080][化13]

・・・(中略)・・・
[0089][表1]



4 引用文献9
(1)引用文献9の記載事項
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献9として引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である特表2008-533525号公報 (以下「引用文献9」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造化表面を有する光学層を含む調光フィルムであって、前記光学層が、
(a)ポリマー材料と、
(b)複数の表面改質ジルコニア粒子とを含有し、前記ジルコニア粒子は、前記ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.1?8重量パーセントのイットリウムを含み、前記ジルコニア粒子は、平均一次粒度が30ナノメートル以下であり、分散指数が1?3であり、強度平均粒度の体積平均粒度に対する比が3.0以下であり、少なくとも70パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有する、調光フィルム。
・・・(中略)・・・
【請求項3】
前記調光フィルムが輝度向上フィルムである、請求項1に記載の調光フィルム。
・・・(中略)・・・
【請求項6】
前記ポリマー材料が、高屈折率を有するオリゴマー材料と、反応性希釈剤と、多官能性架橋性モノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載の調光フィルム。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、調光フィルムと、ジルコニア粒子を含有する調光フィルムの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
・・・(中略)・・
【0005】
現行の一部の調光フィルムの欠点の1つは、微細構造の先端に機械的な損傷が起こりやすいことである。たとえば、指の爪、または硬く比較的鋭い端部で軽くこすると、微細構造の先端の破壊または破損が起こる場合がある。先端を破壊するのに十分な条件は、調光フィルムの通常の取扱中に発生しうる。たとえば、輝度向上フィルムの先端は、このようなフィルムを含む液晶ディスプレイの製造プロセス中に破壊される場合がある。
【0006】
微細構造の先端が破壊されると、影響を受けた先端反射性および屈折性が低下し、透過光は実質的にすべてが前方角度に散乱する。調光フィルムがディスプレイ上の輝度向上フィルムであり、そのディスプレイをまっすぐ観察する場合、調光フィルム内の擦り傷を有する領域は、その周囲にある輝度向上フィルムの損傷していない領域よりも暗くなる。しかし、カットオフ角(すなわち、ディスプレイ上の画像を見ることができなくなる角度)付近またはそれを超える角度でディスプレイを観察すると、擦り傷を有する領域は、その周囲にあるフィルムの損傷していない領域よりも実質的に明るく見える。両方の状況において、外見上の観点から擦り傷は好ましくない。多数の擦り傷を有する輝度向上フィルムは、液晶ディスプレイなどの一部のディスプレイにおける使用に容認されない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、微細構造化物品、および微細構造化物品の製造方法を提供する。より詳細には、本発明の微細構造化物品はジルコニア粒子を含有する。このジルコニア粒子は、コロイド状(たとえば100ナノメートル未満)で、結晶質であり、実質的に会合していない。微細構造化物品は、たとえば、輝度向上フィルム、反射フィルム、回転フィルムなどの調光フィルムであってよい。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
ジルコニア粒子を含有する、調光フィルムなどの微細構造化物品を提供する。このジルコニア粒子は、コロイド状(たとえば100ナノメートル未満)で、結晶質であり、実質的に会合していない。このジルコニア粒子は、調光フィルムの屈折率を増加させることができる、調光フィルムの耐久性を増加させることができる、またはそれらの組み合わせを実現することができる。通常、調光フィルムは、輝度向上フィルム、反射フィルム、回転フィルムなどの形態である。
【0032】
第1の態様においては、微細構造化表面を有する光学層を含む調光フィルムを提供する。この光学層は、ポリマー材料と、複数の表面改質ジルコニア粒子とを含有する。これらのジルコニア粒子は、ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.1?8重量パーセントのイットリウムを含有する。さらに、これらのジルコニア粒子は、平均一次粒度が50ナノメートル以下であり、分散指数が1?3であり、強度平均粒度の体積平均粒度に対する比が3.0以下であり、少なくとも70パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有する。
【0033】
通常、ジルコニア粒子を有する調光フィルムは、ポリマー材料のみを含有する調光フィルムよりも屈折率が高い。ある実施形態においては、調光フィルムは輝度向上フィルムである。別の実施形態においては、調光フィルムは反射フィルムまたは回転フィルムである。
・・・(中略)・・・
【0037】
本発明のジルコニア粒子は、通常、平均一次粒度が50ナノメートル以下、40ナノメートル以下、30ナノメートル以下、25ナノメートル以下、または20ナノメートル以下である。ジルコニア粒子の非会合粒度を意味する一次粒度は、実施例の項に記載されるようにX線回折によって求めることができる。
・・・(中略)・・・
【0054】
調光フィルムの光学層は、表面改質ジルコニア粒子以外にポリマー材料も含有する。本発明の光学層は、通常、80重量パーセントまでの表面改質ジルコニア粒子を含む。ある実施形態においては、本発明の光学層は、75重量パーセントまで、70重量パーセントまで、65重量パーセントまで、60重量パーセントまで、55重量パーセントまで、50重量パーセントまで、45重量パーセントまで、または40重量パーセントまでの表面改質ジルコニアを含む。本発明の光学層は、通常、少なくとも1重量パーセント、少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも15重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、少なくとも25重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも35重量パーセント、または少なくとも40重量パーセントの表面改質ジルコニア粒子を含む。ある実施形態においては、本発明の光学層は、1?80重量パーセント、1?70重量パーセント、1?60重量パーセント、5?60重量パーセント、10?60重量パーセント、20?60重量パーセント、30?60重量パーセント、または40?60重量パーセントの表面改質ジルコニア粒子を含有する。
・・・(中略)・・・
【0056】
ある代表的なポリマー材料は、ハードセグメントおよびソフトセグメントの両方を有するオリゴマー材料を含む重合性組成物から調製される。ハードセグメントは、ポリウレタンであることが多く、ソフトセグメントはポリエステルであることが多い。さらに、重合性組成物は、微細構造化物品を製造するのに適した粘度(たとえば、1,000?5,000cp)を得るためにモノマーを含むことが多い。たとえば、オリゴマー樹脂は、アクリレート系であることが多く、モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、またはそれらの組み合わせなどのエチレン系不飽和モノマーである。この重合性組成物は、多くの場合、溶媒を含有せず、光開始剤の存在下で紫外線を使用した場合に架橋性および硬化性である。このような重合性組成物は、たとえば、米国特許第5,183,597号明細書(ルー(Lu))および同第5,175,030号明細書(ルー(Lu)ら)に、より詳細に記載されている。
【0057】
別の代表的なポリマー材料は、高屈折率を有するオリゴマー材料と、反応性希釈剤と、架橋剤(すなわち、架橋剤または架橋性モノマー)とを含む重合性組成物から調製される。この重合性組成物は開始剤を含むことが多い。オリゴマー材料は、ポリマー材料の全体的な光学的性質および抵抗性に寄与する。反応性希釈剤は、重合性組成物の粘度を調整するために加えることができるモノマーである。通常この粘度は、組成物中への気泡の取り込みを最小限にし、完全な微細構造形状を形成できるのに十分な流動性となるように調整される。多官能性架橋剤は、光学層の耐久性を高めるために加えられ、ポリマーのガラス転移温度を上昇させることができる(たとえば、ポリマー材料のガラス転移温度は多くの場合45℃を超える)。これらの代表的なポリマー材料は、2003年9月12日に出願された米国特許出願第10/662085号明細書、2004年9月10日に出願された米国特許出願第10/939184号明細書、および2004年9月10日に出願された米国特許出願第10/938006号明細書に、より詳細に記載されている。
【0058】
これらの代表的なポリマー材料用のオリゴマー材料は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、またはそれらの組み合わせであることが多い。典型的なオリゴマー材料としては、芳香族ウレタンアクリレート(たとえば、ジョージア州スマーナのサーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties,Smyrna,GA)よりエベクリル(EBECRYL)6700-20Tとして市販されている)、芳香族ウレタンジアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)4849およびエベクリル(EBECRYL)4827として市販されている)、芳香族ウレタントリアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)6602として市販されている)、ウレタンアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりCN972として市販されている)、ウレタンアクリレートブレンド(たとえば、トリプロピレングリコールジアクリレートとブレンドされてサートマー(Sartomer)よりCN970A60およびCN973A80として市販されている)、六官能性ウレタンアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりCN975として市販されており、さらにサーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)220として市販されている)、ビスフェノールAエポキシジアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)608、エベクリル(EBECRYL)1608、およびエベクリル(EBECRYL)3700として市販されている)、改質ビスフェノールAエポキシジアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)のエベクリル(EBECRYL)3701)、部分アクリル化ビスフェノールAエポキシジアクリレート(たとえば、エベクリル(EBECRYL)3605として市販されている)、エポキシアクリレート(たとえば、ペンシルバニア州エクストンのサートマー(Sartomer,Exton,PA)よりCN120およびCN104として、ならびにサーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)3200として市販されている)、改質エポキシアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりCN115、CN116、CN117、CN118、およびCN119として市販されている)、脂肪族/芳香族エポキシアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)3201として市販されている)、およびゴム改質エポキシジアクリレート(たとえば、サーフェス・スペシャルティーズ(Surface Specialties)よりエベクリル(EBECRYL)3302として市販されている)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
これらの代表的なポリマー材料用の典型的な反応性希釈剤モノマーとしては、モノアクリレート、たとえば(メタ)アクリル酸フェニルチオエチル、アクリル酸イソオクチル(たとえば、ペンシルバニア州エクストンのサートマー(Sartomer,Exton,PA)よりSR-440として市販されている)、アクリル酸イソデシル(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR-395として市販されている)、アクリル酸イソボルニル(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR-506として市販されている)、アクリル酸2-フェノキシエチル(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR-339として市販されている)、アルコキシル化アクリル酸テトラヒドロフルフリル(たとえば、サートマー(Sartomer)よりCD-611として市販されている)、および2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR-256として市販されている);ジアクリレート、たとえば、1,3-ブチレングリコールジアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR-212として市販されている)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR-238として市販されている)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR-247として市販されている)、およびジエチレングリコールジアクリレート(たとえば、サートマー(Sartomer)よりSR-230として市販されている)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の反応性希釈剤モノマーとしては、たとえば、メチルスチレン、スチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0158】
調光フィルム11は、図3に示されるように、プリズム22、24、26、および28で代表されるプリズムの配列を含む。たとえば、プリズム22などの各プリズムは、第1の小面30および第2の小面32を有する。プリズム22、24、26、および28は、プリズムが上に形成される第1の表面36と、実質的に平坦または平面であり第1の表面の反対側にある第2の表面38とを有する本体部分34の上に形成することができる。」

エ 「【実施例】
【0185】
・・・(中略)・・・
【0218】
「SR-351」または「TMPA」は、ペンシルバニア州エクストンのサートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Co.,Inc.,Exton,PA)より入手したトリメチロールプロパントリアクリレートを意味し;
・・・(中略)・・・
【0226】
「NSEA」は、本願と同一の譲受人に譲渡された同時係属中の米国特許出願第11/026573号明細書に記載されるように調製したアクリル酸2-ナフタルチオエチルを意味し;
・・・(中略)・・・
【0228】
「MEEAA」は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)より入手したメトキシエトキシ酢酸を意味し;
・・・(中略)・・・
【0231】
「TPO-L」は、商品名「ルシリン(LUCIRIN)TPO-L」でニュージャージー州フローハムパークのBASFコーポレーション(BASF Corp.,Florham Park,NJ)より入手可能な2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン酸エチルを意味し;
・・・(中略)・・・
【0239】
調製例1:ジルコニアゾル1の調製
酢酸イットリウム水和物(38.58g;ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)より入手した)を、酢酸ジルコニウム溶液(1500.0g;マサチューセッツ州アッシュランドのナイアコール・ナノテクノロジーズ・インコーポレイテッド(Nyacol Nano Technologies,Inc.,Ashland,MA)より入手可能)中に溶解させた。この混合物を室温で終夜乾燥させ、次に強制空気オーブン中90℃で4時間さらに乾燥させた。この結果得られた固体を、12.5重量パーセント溶液を得るのに十分な脱イオン水中に溶解させた。この溶液(すなわち、第1の供給材料)を、206℃に加熱した油浴中に浸漬した100フィートの外径0.25インチのステンレス鋼管に、80ミリリットル/分の速度で圧送した。次に、この流れを氷水浴中に浸漬した別の40フィートの長さの管に通した。背圧調整器を管の末端に配置して、260?290psigの出口圧力を維持した。このステップにおける生成物は、白色固体の微粒子の懸濁液であった。ロータリーエバポレーターを使用して、この液体懸濁液を14.5重量パーセント固形分まで濃縮した。この濃縮懸濁液(すなわち、第2の供給材料)を、206℃に加熱した油浴中に浸漬した100フィートの外径0.25インチのステンレス鋼管に、10ミリリットル/分の速度で圧送した。次に、この流れを氷水浴中に浸漬した別の40フィートの長さの管に通した。背圧調整器を管の末端に配置して、260?270psigの出口圧力を維持した。このステップの生成物は、10.5重量パーセント固形分と測定されたゾル(すなわち、ジルコニアゾル)であった。この調製例の特性決定データを表2および3に示す。
・・・(中略)・・・
【0242】
実施例1
12,000を超えるMWCOを有する透析膜(ミズーリ州セントルイスのシグマ-アルドリッチ・コーポレーション(Sigma-Aldrich Corp.,St.Louis,MO)より入手可能)を使用して、調製例1のジルコニアゾルを約12時間透析することで、10.93重量パーセント固形分の安定なゾルを得た。この透析したジルコニアゾル(435.01g)およびMEEAA(9.85g)を1リットルの丸底フラスコに投入し、その混合物を回転蒸発によって濃縮した。次に、濃縮したゾルにイソプロパノール(30g)およびNSEA(35.00g)を加えることで、分散液を形成した。次に、ロータリーエバポレーターを使用してこの分散液を濃縮することで、48.83重量パーセントのジルコニアを含有し、1.674の屈折率を有する硬化性樹脂を得た。40.09gのこの硬化性樹脂に0.39gのTPO-Lを加えることによって混合物を調製した。次に、10.03gのこの混合物に0.98gのSR-351を加えた。
・・・(中略)・・・
【0251】
実施例9?19
実施例1?8の樹脂を使用して作製した各輝度向上フィルムの利得を測定し、表1に示している。表1中、記号「---」は、その試料を作製しなかったことを意味する。これらのフィルムの製造に使用した手順は前述のものである。
【0252】
【表1】



オ 「【図面の簡単な説明】
【0255】
・・・(中略)・・・
【図3】説明的な微細構造化調光フィルムの斜視図である。」

カ 「【図3】



(2)引用文献9に記載された発明
引用文献9の【請求項3】及び【0007】の記載に接した当業者ならば、引用文献9の【請求項1】に記載された「調光フィルムとして」、「輝度向上フィルムとして用いられる調光フィルム」の発明を把握することができる。
そうしてみると、引用文献9には、請求項1に係る発明に関連して、次の発明(以下「引用発明9」という。)が記載されている。
「 微細構造化表面を有する光学層を含む調光フィルムであって、前記光学層が、
(a)ポリマー材料と、
(b)複数の表面改質ジルコニア粒子とを含有し、前記ジルコニア粒子は、前記ジルコニア粒子中の無機酸化物の重量を基準にして0.1?8重量パーセントのイットリウムを含み、前記ジルコニア粒子は、平均一次粒度が30ナノメートル以下であり、分散指数が1?3であり、強度平均粒度の体積平均粒度に対する比が3.0以下であり、少なくとも70パーセントが立方晶、正方晶、またはそれらの組み合わせである結晶構造を有し、
輝度向上フィルムとして用いられる、
調光フィルム。」

第5 対比及び判断
1 引用発明1との対比及び判断
(1)対比
本願発明1と引用発明1を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 輝度向上フィルム
引用発明1の「微細構造化物品」は、「輝度向上フィルムとして用いられる」ものである。そうしてみると、引用発明1の「微細構造化物品」は、本願発明1の「輝度向上フィルム」に相当するといえる。
また、引用発明1の「微細構造化物品」は、物品であるから、「表面を有する」ものである。そうしてみると、引用発明1の「微細構造化物品」は、本願発明1の「輝度向上フィルム」における、「表面を有する」という要件を満たすものである。

イ 無機ナノ粒子、反応生成物
引用発明1の「反応生成物」は、「少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオリゴマーまたはモノマー、少なくとも1種の単官能性(メタ)アクリルモノマーを含」む「有機相」と、「無機ナノ粒子」を含むものである。ここで、引用発明1の「無機ナノ粒子」は、その文言どおり、本願発明1の「無機ナノ粒子」に相当する。また、引用発明1の「反応生成物」は、技術的にみて、「重合性組成物」であるといえる。
他方、本願発明1の「反応生成物」は、「少なくとも20重量%の屈折率が少なくとも1.68である無機ナノ粒子」を含むものである。
ここで、引用発明1の「反応生成物」は、その文言どおり、本願発明1の「反応生成物」に相当するといえる。
そうしてみると、引用発明1の「反応生成物」と本願発明1の「反応生成物」は、「無機ナノ粒子を含む重合性組成物の反応生成物」である点で共通する。
さらに、引用発明1の「微細構造化物品」は、「反応生成物」を含むものである。そうしてみると、技術的にみて、引用発明1の「微細構造化物品」の表面も、「微細構造化物品」と同様、「反応生成物」を含むものであるといえる。
他方、本願発明1の「輝度向上フィルム」における「ミクロ構造化表面」は、「反応生成物」を含むものである。
そうしてみると、引用発明1の「微細構造化物品」と本願発明1の「輝度向上フィルム」は、「表面」が「無機ナノ粒子を含む重合性組成物の反応生成物を含む」点で共通する。

(2)一致点及び相違点
ア 本願発明1と引用発明1は、次の構成で一致する。
(一致点)
「表面を有する輝度向上フィルムであって、前記表面が、
無機ナノ粒子
を含む重合性組成物の反応生成物を含む、輝度向上フィルム。」

イ 本願発明1と引用発明1は、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明1における、「輝度向上フィルム」は、「複数のプリズムを含むミクロ構造化表面を有し」、「ミクロ構造化表面」は、「少なくとも20重量%の屈折率が少なくとも1.68である無機ナノ粒子」と、「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」と、「ビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤」とを含む「重合性組成物の反応生成物」を含むのに対して、引用発明1は、このように特定されたものではない点。

(3)判断
上記相違点についての判断は、以下のとおりである。
第1に、引用文献1の【0071】には、微細構造化表面は、フィルムの長さ又は幅に沿って伸びる複数の平行な長手方向の稜であって、当該稜が複数のプリズム頂点から形成されることができることが記載されている。また、引用文献1の【0086】及び【図2】には、輝度向上フィルムは、複数のプリズムアレイを含むことが開示されている。加えて、本件優先日前の技術常識を心得た当業者ならば、「輝度向上フィルム」として、「複数のプリズムを含むミクロ構造を有する」ものを直ちに想起することができる。
そうしてみると、上記相違点に係る本願発明1の構成のうち、「複数のプリズムを含むミクロ構造を有する」との構成については、引用文献1の上記記載に接した当業者が、引用発明1が実質的に具備するものと理解する構成であるから、実質的な相違点でない。
仮にそうでないとしても、引用文献1の上記記載に接した当業者が、引用発明1の「微細構造化物品」を「複数のプリズムを含むミクロ構造を有する」構成のものとすることは、引用文献1の記載が示唆する事項にすぎない。
第2に、引用文献1の【0051】には、無機ナノ粒子としてジルコニアが挙げられており、【0053】には、ジルコニアナノ粒子は、重合性組成物の30?60wt%の量で用いることができることが記載されている。ここで、ジルコニアの屈折率は2.1-2.2程度である。また、本願明細書の【0003】及び【0066】の記載を考慮すると、本願発明1の「無機ナノ粒子」は、表面改質されたものであるとも解されるが、ジルコニアの屈折率は、上述のとおり十分高いものであるから、表面改質による屈折率の変化を考慮しても、その屈折率が、本願発明1の「屈折率が少なくとも1.68である」という要件を満たすものであることは明らかである。
そうしてみると、引用発明1において、「反応生成物」に含有させる「無機ナノ粒子」として、含有量が30?60wt%のジルコニアナノ粒子を用い、相違点に係る本願発明1の「少なくとも20重量%の屈折率が少なくとも1.68である無機ナノ粒子」を含む構成とすることは、当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。
第3に、引用文献1の【0030】、【0038】-【0040】には、二官能性である(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマー(引用発明1の「少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオリゴマーまたはモノマー」)とともに、好適な単官能性(メタ)アクリレート希釈剤(引用発明1の「単官能性(メタ)アクリルモノマー」)として、ベンジルアクリレートを用いることが記載されている。
そうしてみると、引用発明1において、「ビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤」を含む「重合組成物の反応生成物」を用いることは、引用文献1の記載が示唆する事項にすぎない。あるいは、光学時材料樹脂を低粘度かつ高屈折率のものとするために、モノ(メタ)アクリレート希釈剤としてビフェニル(メタ)アクリレートモノマー又はベンジル(メタ)アクリレートモノマーを用いることは周知技術であり、引用発明1において当業者が容易に想到するものである(当合議体注:前記第5の3によれば、引用文献8にも、プリズムレンズシートの樹脂組成物にビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤を用いることが記載されているといえる。)。
また、引用文献1の【0030】、【0031】には、約-80℃?0℃のガラス転移温度を有し、微細構造化層の形成に好適な二官能性である(メタ)アクリレートモノマー(引用発明1の「少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオリゴマーまたはモノマー」)として、ポリエーテルアクリレートを用いることが記載されている。ここで、ポリエーテルアクリレートは、その化学構造からみて、アルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマーに該当するといえる。また、一般にポリエーテルアクリレートは、少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有するといえる。そうしてみると、引用文献1には、本願発明1の「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」を用いることが記載ないし示唆されているといえる。
そして、引用文献2の【0111】、【0113】の【表1】及び【0115】には、実施例4として、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量600)をモノマー成分とする組成物4を用いたプリズム部を有する光学シートが記載されている。ここで、上記ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量600)は、その重量平均分子量からみて、3個以上連続するエチレンオキシド繰り返し単位を有しており、本願発明1の「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」に相当し、また、そのガラス転移温度は、-80℃?0℃の範囲にあるといえる(当合議体注;特開2013-141967号公報の【0033】には、エチレンオキシドの繰り返し単位が9及び13?14であるポリエチレングリコールジアクリレートのガラス転移温度が、それぞれ-20℃及び-34℃であることが記載されている)。また、さらに、引用文献2の【0125】の【表2】及び【0126】には、実施例4の光学機能発現部は、押し込み深さが大きく、マルテンス硬度及び塑性変形硬さが小さく、復元性及び耐傷付き性に優れるという結果が記載されており、こうした結果は、光学機能発現部が柔軟性を有することによるものといえる。
そうしてみると、引用文献2には、引用文献1において、引用発明1の「少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオリゴマーまたはモノマー」として好適に用いられるものとして記載されている、ポリエーテルアクリレートの一種であって、本願発明1の「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」に相当し、ガラス転移温度が-80℃?0℃の範囲にある、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量600)をプリズム部を構成する組成物に用いることによって、プリズム部の復元性及び耐傷付き性を向上させる技術が記載されているといえる。
さらに、ポリエチレングリコールジアクリレート等のポリアルキレンオキシド単位を複数有するアクリルモノマーを構成成分とする樹脂は、一般に柔軟性や耐衝撃性に優れることは周知技術である(例えば、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献3として引用された、特開2011-186208号公報の【0057】には、「ポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート化合物が解像性、柔軟性、耐めっき性の観点から好ましい」ことが記載されている。また、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献4として引用された、特開平7-125449号公報の【0015】及び【0016】には、テトラエチレングリコールジアクリレートは柔軟性があって強度的にも優れ、一般的なポリエチレングリコールジアクリレートは、エチレングリコールの数が増えるにつれて分子量が増大し、Tgが低下するとともに柔軟性を増すことが記載されている。さらに、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献5として引用された、特開2011-207047号公報 の【0041】には、ポリアルキレンオキサイドを有するアクリルモノマー成分は柔軟性が高いことが記載されている。加えて、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献6として引用された、特開2003-147033号公報 の【0011】には、ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジメタクリレートは、耐衝撃性、透明性の観点から好ましいことが記載されている。さらに加えて、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献7として引用された、特表2009-541808号公報の【0104】、【0105】及び【0107】には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートをベースとした組成物が好適な(メタ)アクリレートをベースとした耐衝撃プライマー被覆組成物であることが記載されている。)。
ここで、引用発明1と引用文献2に記載された技術は、表面に微小構造を有する光学部材に関する技術分野に属するものである点で共通する。そうしてみると、引用発明1においても、引用文献2の【0006】に記載の山潰れや頂部の欠けといった問題が解決されることが望ましいことは、技術的にみて明らかである。(当合議体注:引用文献9の【0005】及び【0006】には、背景技術として、輝度向上フィルムにおける微細構造の先端は、破壊又は破損が起こる場合があり、これにより、先端反射性及び屈折率が低下することが記載されている。)。
そうしてみると、引用発明1において、上記引用文献1の記載事項、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて、ベンジルアクリレートを「単官能性(メタ)アクリルモノマー」として用いるともに、微細構造化物品の柔軟性や耐衝撃性を高めるために、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量600)を「少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオリゴマーまたはモノマー」として、単独で、あるいは、ウレタンアクリレート(引用文献1の実施例において用いられているもの)等と併用して用いた構成(以下「引用発明1特定モノマー適用構成」という。)とすることによって、上記相違点に係る本願発明1の構成のうち、「ミクロ構造化表面」が「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤」を含む「重合性組成物の反応生成物」を含む構成とすることは当業者が容易に想到するものである。

(4)本願発明1の効果について
本願発明1が有する、ボール落下損傷コントラストに優れるという効果は、技術的にみて、本願発明1における、「ミクロ構造化表面」が「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」を含む「重合性組成物の反応生成物」を含むことから、柔軟性や耐衝撃性を有するために奏されるものであるといえる。
他方、引用文献1の【0056】には、表面処理されたナノ粒子は重合性樹脂中に良好に分散され、実質的に均質な組成物をもたらすことが記載されており、引用発明1特定モノマー適用構成とすることによって、上記引用文献2の記載事項及び周知技術から期待される柔軟性や耐衝撃性を損なうことなく、微細構造化物品が得られるといえる。
そうしてみると、引用発明1特定モノマー適用構成が、本願発明1が有する、ボール落下損傷コントラストに優れるという効果を備えるものであることは、当業者が予測し得るものといえる。
したがって、本願発明1が有する、ボール落下損傷コントラストに優れるという効果が、引用発明1、引用文献1の記載事項、引用文献2に記載された技術及び周知技術から当業者が予測し得る範囲を超えた格別なものであるとはいえない。

(5)小括
以上より、本願発明1は、引用発明1、引用文献1、2の記載事項及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明9との対比及び判断
(1)対比
本願発明1と引用発明9を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 輝度向上フィルム
引用発明9の「調光フィルム」は、「輝度向上フィルムとして用いられる」ものである。そうしてみると、引用発明9の「調光フィルム」は、本願発明1の「輝度向上フィルム」に相当するといえる。

イ ミクロ構造化表面
本願明細書の【0119】には、PETフィルムに塗布した重合性組成物の表面を90/24パターンを有する微細複製された成形型に接して成形処理することによってプリズム上のミクロ構造化表面を有する輝度向上フィルムを作製することが記載されている。そうしてみると、本願発明1における「ミクロ」という用語と、「微細」という用語は、実質的に同義であるといえる。
そうしてみると、引用発明9における、「調光フィルム」の「微細構造化表面」は、「ミクロ構造化表面」を意味するといえる。
したがって、引用発明9における、「調光フィルム」は、本願発明1における「ミクロ構造化表面を有する」という要件を満たすものである。

ウ 無機ナノ粒子、重合性組成物の反応生成物
引用発明9の「表面改質ジルコニア粒子」は、「平均一次粒度が30ナノメートル以下」である。ここで、ジルコニアの屈折率は2.1-2.2程度である。また、本願明細書の【0003】及び【0066】の記載を考慮すると、本願発明1の「無機ナノ粒子」は、表面改質されたものであるとも解されるが、ジルコニアの屈折率は、上述のとおり十分高いものであるから、表面改質による屈折率の変化を考慮しても、その屈折率が、本願発明1の「屈折率が少なくとも1.68である」という要件を満たすものであることは明らかである。
また、引用発明9の「光学層」は、「(a)ポリマー材料」と、「(b)複数の表面改質ジルコニア粒子」を含むものである。そうしてみると、引用発明9における、「光学層」の「微細構造化表面」も、技術的にみて、「(a)ポリマー材料」と、「(b)複数の表面改質ジルコニア粒子」を含むものであるといえる。
ここで、一般にポリマーは、重合性モノマーが重合反応してなる反応生成物である。そうしてみると、引用発明9の「(a)ポリマー材料」と「(b)複数の表面改質ジルコニア粒子」を併せたものは、技術的にみて、本願発明1の「重合性組成物の反応生成物」に相当するといえる。
したがって、引用発明9における、「光学層」の「微細構造化表面」と、本願発明1の「ミクロ構造化表面」は、「屈折率が少なくとも1.68である無機ナノ粒子」を含む「重合性組成物の反応生成物」を含む点で共通する。

(2)一致点及び相違点
ア 本願発明1と引用発明9は、次の構成で一致する。
(一致点)
「ミクロ構造化表面を有する輝度向上フィルムであって、
ミクロ構造化表面が、屈折率が少なくとも1.68である無機ナノ粒子を含む重合性組成物の反応生成物を含む、輝度向上フィルム。」

イ 本願発明1と引用発明9は、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明1の「ミクロ構造化表面」は、「複数のプリズムを含」み、「少なくとも20重量%」の「無機ナノ粒子」と、「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマーと」、「ビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤」を含む「重合性組成物の反応生成物」を含むのに対して、引用発明9の「微細構造化表面」は、このように特定されたものではない点。

(3)判断
上記相違点についての判断は、以下のとおりである。
(ア)第1に、引用文献9の【0158】及び【図3】には、調光フィルムは、複数のプリズムの配列を含むことが開示されている。
そうしてみると、引用発明9において、調光フィルムの表面を複数のプリズム頂点から形成されるものとし、上記相違点に係る本願発明1の構成のうち、「ミクロ構造化表面」が「複数のプリズムを含」む構成とすることは、引用文献9の記載が示唆する事項にすぎない。
(イ)第2に、引用文献9の【0054】には、「光学層」は、少なくとも20重量%の表面改質ジルコニア粒子を含むことが記載されており、【0242】には、実施例1として、ジルコニア粒子の含有量を48.83%とした硬化性樹脂が開示されている。
そうしてみると、引用発明9において、「光学層」における表面改質ジルコニアナノ粒子の含有量を、少なくとも20重量%とし、上記相違点に係る本願発明1の構成のうち、「ミクロ構造化表面」が「少なくとも20重量%」の「無機ナノ粒子」を含む「重合性組成物の反応生成物」を含む構成とすることは、引用文献9の記載が示唆する事項にすぎない。
(ウ)第3に、プリズムレンズシートの樹脂組成物にビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤を用いることは、周知技術である。(例えば、引用文献1の【0030】、【0038】-【0040】には、ベンジルアクリレートを好適な単官能性(メタ)アクリレート希釈剤として用いることが記載されている。また、前記第5の3によれば、引用文献8には、プリズムレンズシートの樹脂組成物にビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤を用いることが記載されているといえる。)。
(エ)また、引用文献9には、【0056】及び【0058】の記載に基づけば、「ポリマー材料」はオリゴマー材料を含む重合性組成物から調製され、オリゴマー材料として、「ウレタンアクリレートブレンド(たとえば、トリプロピレングリコールジアクリレートとブレンドされてサートマー(Sartomer)よりCN970A60およびCN973A80として市販されている)」を用いることが記載されている。ここで、トリプロピレングリコールジアクリレートは、その化学構造からみて、本願発明1の「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」に相当する。そうしてみると、「(a)ポリマー材料」を構成するモノマー成分として、「CN970A60」又は「CN973A80」を用い、上記相違点に係る本願発明1の構成のうち、「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」を含む構成とすることは、引用文献9の記載が示唆する事項にすぎない。
(オ)そうしてみると、上記(ウ)及び(エ)より、引用発明9において、上記引用文献9の記載事項及び周知技術に基づいて、ビフェニル(メタ)アクリレートモノマー又はベンジルアクリレートをモノ(メタ)アクリレート希釈剤として用いるともに、「CN970A60」又は「CN973A80」を用いた構成とすることによって、上記相違点に係る本願発明1の構成のうち、「ミクロ構造化表面」が、「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマーと」、「ビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤」を含む「重合性組成物の反応生成物」を含む構成とすることは当業者が容易に想到するものである。
(カ)あるいは、引用文献2の【0111】、【0113】の【表1】及び【0115】には、実施例4として、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量600)をモノマー成分とする組成物4を用いたプリズム部を有する光学シートが記載されている。ここで、上記ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量600)は、その重量平均分子量からみて、3個以上連続するエチレンオキシド繰り返し単位を有しており、本願発明1の「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」に相当する。また、引用文献2の【0125】の【表2】及び【0126】には、実施例4の光学機能発現部は、押し込み深さが大きく、マルテンス硬度及び塑性変形硬さが小さく、復元性及び耐傷付き性に優れるという結果が記載されており、こうした結果は、光学機能発現部が柔軟性を有することによるものといえる。
そうしてみると、引用文献2には、本願発明1の「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」に相当する、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量600)をプリズム部を構成する組成物に用いることによって、プリズム部の復元性及び耐傷付き性を向上させる技術が記載されているといえる。
さらに、ポリエチレングリコールジアクリレート等のポリアルキレンオキシド単位を複数有するアクリルモノマーを構成成分とする樹脂は、一般に柔軟性や耐衝撃性に優れることは周知技術である(例えば、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献3として引用された、特開2011-186208号公報の【0057】には、「ポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート化合物が解像性、柔軟性、耐めっき性の観点から好ましい」ことが記載されている。また、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献4として引用された、特開平7-125449号公報の【0015】及び【0016】には、テトラエチレングリコールジアクリレートは柔軟性があって強度的にも優れ、一般的なポリエチレングリコールジアクリレートは、エチレングリコールの数が増えるにつれて分子量が増大し、Tgが低下するとともに柔軟性を増すことが記載されている。さらに、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献5として引用された、特開2011-207047号公報 の【0041】には、ポリアルキレンオキサイドを有するアクリルモノマー成分は柔軟性が高いことが記載されている。加えて、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献6として引用された、特開2003-147033号公報 の【0011】には、ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジメタクリレートは、耐衝撃性、透明性の観点から好ましいことが記載されている。さらに加えて、当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献7として引用された、特表2009-541808号公報の【0104】、【0105】及び【0107】には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートをベースとした組成物が好適な(メタ)アクリレートをベースとした耐衝撃プライマー被覆組成物であることが記載されている。)。
ここで、引用発明9と引用文献2に記載された技術は、表面に微小構造を有する光学部材に関する技術分野に属するものである点で共通する。そうしてみると、引用発明9においても、引用文献2の【0006】に記載の山潰れや頂部の欠けといった問題が解決されることが望ましいことは、技術的にみて明らかである(当合議体注:引用文献9の【0005】及び【0006】には、背景技術として、輝度向上フィルムにおける微細構造の先端は、破壊又は破損が起こる場合があり、これにより、先端反射性及び屈折率が低下することが記載されている。)。
(キ)そうしてみると、上記(ウ)及び(カ)より、引用発明9において、上記引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて、ビフェニル(メタ)アクリレートモノマー又はベンジルアクリレートをモノ(メタ)アクリレート希釈剤として用いるともに、微細構造化物品の柔軟性や耐衝撃性を高めるために、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量600)を「少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオリゴマーまたはモノマー」を用いた構成とすることによって、上記相違点に係る本願発明1の構成のうち、上記相違点に係る本願発明1の構成のうち、「ミクロ構造化表面」が、「少なくとも3個の連続するアルキレンオキシド繰り返し単位を有する非芳香族多官能性(メタ)アクリレートモノマー」と、「ビフェニル(メタ)アクリレートモノマー及びベンジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される、モノ(メタ)アクリレート希釈剤」を含む「重合性組成物の反応生成物」を含む構成とすることは当業者が容易に想到するものである。
(ク)さらに、上記(カ)に記載したとおり、引用発明9は、山潰れや頂部の欠けといった問題が解決されることが望ましいことを考慮すると、本願発明1が有する、ボール落下損傷コントラストに優れるという効果が、引用発明9、引用文献9の記載事項、引用文献2に記載された技術及び周知技術から当業者が予測し得る範囲を超えた格別なものであるとはいえない。

第6 むすび
本願発明1は、引用文献2及び8に記載された事項、並びに、周知技術を心得た当業者が、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。また、本願発明1は、引用文献2及び8に記載された事項、並びに、周知技術を心得た当業者が、引用文献9に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると、本願発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-29 
結審通知日 2019-04-02 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2016-119934(P2016-119934)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 川村 大輔
宮澤 浩
発明の名称 ナノ粒子と、アルキレンオキシド繰り返し単位を有するモノマーとを含むミクロ構造化フィルム  
代理人 吉野 亮平  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 野村 和歌子  
代理人 佃 誠玄  

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