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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B65G 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B65G |
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管理番号 | 1354971 |
異議申立番号 | 異議2019-700477 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-06-12 |
確定日 | 2019-09-13 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6435463号発明「保管設備からの運搬ユニットを提供するための方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6435463号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6435463号の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、2013年7月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年8月6日 (DE)ドイツ国)に国際出願され、平成30年11月22日にその特許権の設定登録がされ、平成30年12月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和元年6月12日に特許異議申立人大隅庸平(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 2 本件発明 特許第6435463号の請求項1ないし17の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明17」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも1つの出庫供給ライン(6)で保管設備(1)からの運搬ユニット(T)を提供するための方法であって、 前記運搬ユニット(T)は、保管ラック階層(3)を有する複数の保管ラック(R)において保管され、外側に配置されていない前記保管ラックは、互いに隣り合うペアで各々配置され、一方の側に保管ラッキング通路(2)を有し、 少なくとも1つの入庫供給ライン(4)が提供され、 前記運搬ユニット(T)は、各保管ラッキング通路(2)のための入庫および出庫装置(5)を介して、前記保管ラックに入庫され、および前記保管ラックから出庫され、 少なくとも1つの出庫供給ライン(6)が提供され、 各保管ラッキング通路(2)のために入庫および出庫装置(5)が提供され、 少なくとも1つの出庫リフト(8)が、前記運搬ユニット(T)を下流に接続された出庫供給ライン(6)に移送するために使用され、 隣り合う2つの保管ラック(R)間で、前記保管ラックにおける横断搬送場所(Q)を介して、1つの保管ラッキング通路(2)から隣の保管ラッキング通路(2’)へ、運搬ユニット(T)の交換が行われ、前記入庫および出庫装置(5)は、前記横断搬送場所(Q)において前記運搬ユニット(T)を移動させ、 注文処理の対象となる製品を収容した1又は複数の前記運搬ユニット(T)である製品ユニット(D)を、すべての製品ユニット(D)を詰め込むために選択された製品ユニット詰め込み用保管ラッキング通路(2)へ移動させる際に、前記製品ユニット詰め込み用保管ラッキング通路から前記注文処理のためのピッキングステーション(P)への前記製品ユニット(D)の移動が最小となるように、前記製品ユニット詰め込み用保管ラッキング通路(2)を選択することを特徴とする、 方法。 【請求項2】 前記横断搬送場所(Q)が、前記保管ラックの各階層(3)または選択された階層に提供されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記横断搬送場所(Q)が、中央に配置されるか、前記出庫リフト(8)のより近くに配置されるか、前記ラックの縦方向の選択された位置に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 前記横断搬送場所(Q)が、中間搬送位置または一時保管エリアとしての役割を果たすことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。 【請求項5】 前記横断搬送場所(Q)が、双方向または一方向の運搬ユニット(T)の交換のために構成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。 【請求項6】 前記横断搬送場所(Q)が、使用可能な保管ラック場所として構成されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。 【請求項7】 前記横断搬送場所(Q)が、摩擦低減表面を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。 【請求項8】 前記横断搬送場所(Q)が、構造的に補強されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。 【請求項9】 前記入庫および出庫装置(5)が、交換の目的のために前記横断搬送場所(Q)において2倍の奥行または複数倍の奥行で前記搬送ユニット(T)を入庫することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項10】 前記入庫および出庫装置(5)が、特定のシャトルまたはサテライト輸送手段(5)における、ラッキング任務ユニットまたは単一階層ラッキング任務ユニットであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 出庫供給ライン(6)が、各保管ラッキング通路(2)のために、または選択された保管ラッキング通路(2)において、提供されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。 【請求項12】 入庫供給ライン(6)が、各保管ラッキング通路(2)のために、または選択された保管ラッキング通路(2)において、提供されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。 【請求項13】 出庫リフト(8)が、各保管ラッキング通路(2)のために、または選択された保管ラッキング通路(2)において、提供されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。 【請求項14】 入庫リフトが、各保管ラッキング通路(2)のために、または選択された保管ラッキング通路(2)において、提供されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。 【請求項15】 前記入庫および出庫装置(5)は、シャトルを含み、 前記運搬ユニット(T)は、前記シャトルにより前記複数の保管ラック(R)へ入庫されるとともに、前記シャトルにより前記複数の保管ラック(R)から出庫される、 請求項1に記載の方法。 【請求項16】 前記製品ユニット(D)と、前記注文処理の対象となる1又は複数の製品が詰め込まれる注文ユニット(O)とが、可動リソースの最適化に基づいて、前記保管設備(1)中を移送され、前記可動リソースは、前記シャトル及び前記出庫リフト(8)を含む、請求項15に記載の方法。 【請求項17】 請求項1に記載の方法であって,前記少なくとも1つの入庫供給ライン(4)から入庫される前記製品ユニット(D)は、前記横断搬送場所(Q)における横方向の移動が最小化を考慮して、入庫時に利用可能な情報に基づいて、複数の保管ラック(R)へ入庫され、前記入庫時に利用可能な情報は、製品カテゴリを含む、方法。」 3 申立理由の概要 (1)サポート要件について 異議申立人は、本件発明1ないし17の構成要件のうち「前記製品ユニット詰め込み用保管ラッキング通路から前記注文処理のためのピッキングステーション(P)への前記製品ユニット(D)の移動が最小となるように」の点は本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されていないので、請求項1ないし17に係る特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、請求項1ないし17に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 (2)進歩性について 異議申立人は、主たる証拠として再公表特許第2010/026633号公報(以下「引用文献1」という。)並びに従たる証拠として特開平7-206111号公報(以下「引用文献2」という。)、特開昭50-138578号公報(以下「引用文献3」という。)及び特開2005-206316号公報(以下「引用文献4」という。)を提出し、請求項1ないし17に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし17に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 4 引用文献の記載等 (1)引用文献1の記載事項・図示内容・引用発明 引用文献1には、立体自動倉庫に関し、図面(特に【図1】及び【図2】参照)とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。以下同様。) ア 「【0020】 図1は、本発明の第1実施形態に係る立体自動倉庫10を示す斜視図である。図示するように、立体自動倉庫10は少なくとも左右1対の積層ラック12L,12Rを備えている。各積層ラック12L,12Rは、同一水平方向(図1に示す前後方向)に延びる棚14を複数段(具体的には5?20段程度)有している。対となる2基の積層ラック12L,12Rは、所定の間隔を置いて、互いに平行に対向配置されている。なお、左側の積層ラック12Lは、請求の範囲にいう第1の積層ラック、右側の積層ラック12Rは、請求の範囲にいう第2の積層ラックに相当するものである。 【0021】 これらの積層ラック12L,12R間には、段毎に、棚14が延びる水平方向に走行可能な移載シャトル16が設けられている。移載シャトル16は、詳細には図示しないが、中央部に荷Pを載置することのできる走行台車と、この走行台車の前後に設けられ、走行方向に対して直角の水平方向(図1に示す左右方向)において左右いずれの側にも伸縮可能な1対のアームと、それぞれのアームの先端に開閉可能に取り付けられたフィンガとを備えている。フィンガを閉じたままでアームを左右いずれかの側に伸ばすと、走行台車の中央部に載置された荷Pを押し出すことができ、それによって荷Pを、移載シャトル16における走行台車の中央部の面と同じ高さレベルに位置する棚14に収納することが可能となる。逆に、フィンガを開放した状態でアームを棚14の中に伸ばし、アーム先端のフィンガを閉じ荷Pに引っ掛けてアームを収縮させることで、荷Pを走行台車上に回収することができる。」 イ「【0027】 積層ラック12L,12Rとは反対側となる各入出庫ステーション18L,18Rの隣接位置には、昇降装置22が配置されている。昇降装置22は、左右の入庫ステーション18L,18R間の間隙に隣接する位置に配置されたマスト24と、このマスト24の左右の側面にそれぞれ昇降可能に設けられた昇降台26L,26Rとから構成されている。なお、左側の昇降台26Lは、請求の範囲でいう第1の昇降台、右側の昇降台26Rは、請求の範囲でいう第2の昇降台に相当する。 【0028】 昇降台26L,26Rは、待機コンベヤ20と同様のコンベヤを搭載しており、その搬送方向は、入出庫ステーション18L,18Rに接近する方向と、その反対方向とに切り換えることが可能となっている。また、昇降台26L,26Rの搬送面は、昇降台26L,26Rの昇降により、入出庫ステーション18L,18Rの最下段から最上段までの任意の待機コンベヤ20の搬送面に整列させることができ、よって、昇降台26L,26Rと入出庫ステーション18L,18Rの待機コンベヤ20との間での荷Pの受渡しが可能となっている。 【0029】 なお、昇降台26L,26Rの搬送面には、荷Pを2個以上載置できることが好ましく、本第1実施形態では、2個の荷Pを搬送方向に沿って並べて同時に載置することができるようになっている。 【0030】 更に、昇降装置22に対して、外部の搬送システム28が接続されている。外部搬送システム28は、昇降装置22における各昇降台26L,26Rに対して荷Pの受渡しを行うことができるよう、左右各側について、上下2段の搬送コンベヤ30L,30R;32L,32Rを備えている。本第1実施形態を示す図1、2の例では、各側の下段の搬送コンベヤ30L,30Rは入庫コンベヤであり、上段の搬送コンベヤ32L,32Rは出庫コンベヤであり、それぞれ同側の昇降台26L,26Rを昇降させることによって、昇降台26L,26Rの搬送面を、入庫コンベヤ30L,30Rの出口端又は出庫コンベヤ32L,32Rの入口端と整列させることが可能となっている。その逆に下段の搬送コンベヤ30L,30Rを出庫コンベヤ、上段の搬送コンベヤ32L,32Rを入庫コンベヤとすることも可能である。或いは、搬送コンベヤ30Lを出庫コンベヤ、搬送コンベヤ30Rを入庫とし、搬送コンベヤ32Lを入庫コンベヤ、搬送コンベヤ32Rを出庫コンベヤとすることも、その逆に搬送コンベヤ30Lを入庫コンベヤ、搬送コンベヤ30Rを出庫コンベヤとし、搬送コンベヤ32Lを出庫コンベヤ、搬送コンベヤ32Rを入庫コンベヤとすることも可能である。なお、左側の入庫コンベヤ30L及び出庫コンベヤ32Lはそれぞれ、請求の範囲にいう第1の入庫コンベヤ及び出庫コンベヤ、右側の入庫コンベヤ30R及び出庫コンベヤ32Lはそれぞれ、請求の範囲にいう第2の入庫コンベヤ及び出庫コンベヤに相当するものである。 【0031】 以上述べた構成の立体自動倉庫10は、図示しない制御装置によって、その全体の動作が制御される。 【0032】 次に、上記構成の立体自動倉庫10の動作について説明する。 【0033】 まず、積層ラック12L,12Rには複数の荷Pが既に収納されているものとする。そして、これらの荷Pの情報(荷P自体の識別番号やその荷Pの収納位置等)は、立体自動倉庫10の全体の動作を制御する制御装置(図示しない)のメモリに記憶されている。 【0034】 この状態で、制御装置に出庫命令が入力されると、制御装置は、その出庫命令に従って、出庫すべき荷Pの順番を適宜決定し、出庫情報データとして記憶する。一方、立体自動倉庫10に外部搬送経路に沿って入庫すべき荷Pが送られてくると、その荷Pの情報をバーコードリーダやRFIDリーダ等により読み取り、その情報を制御装置は入庫情報データとして記憶する。 【0035】 今、図2の構成において、第1番に出庫すべき荷Pが、右側の積層ラック12Rにおける4段目の棚14にあるとする。この場合、制御装置は、4段目にある移載シャトル16を動作させ、出庫すべき第1の荷Pの正面に移動し、この荷Pを引き取る。続いて、第1の荷Pを載せた移載シャトル16を左右の入出庫ステーション18L,18R間に移動し、そこで荷Pを右側の入庫ステーション18Rにおける4段目の待機コンベヤ20上に移載する。 【0036】 昇降台26Rが4段目の待機コンベヤ20と整列されたならば、この待機コンベヤ20上で待機している荷Pを昇降台26Rに移載する。そして、昇降台26Rを下降させ、外部搬送システム28における右側の出庫コンベヤ32Rに整列したならば、昇降台26R上の荷Pを右側の出庫コンベヤ32Rに送り出し、荷Pは出庫される。 【0037】 次に、制御装置は、入庫情報データから最初に入庫すべき荷Pを認識し、その荷Pを、外部搬送システム28における右側の入庫コンベヤ30Rに導く。その後、先の右側の昇降台26Rを下降させ、これを入庫コンベヤ30Rと整列させる。そして、入庫すべき第1の荷Pを入庫コンベヤ30Rから昇降台26Rに移載し、続いて、昇降台26Rを上昇させて、この荷Pを収容する段の、入出庫ステーション18Rの待機コンベヤ20と整列させ、昇降台26Rから荷Pをこの待機コンベヤ20に移載し、その状態で待機する。この後は適時、4段目の移載シャトル16を駆動して、所望の保管箇所に荷Pを収容するのである。」 ウ 【図1】からは、複数の積層ラック12L、12Rのうち、外側に配置されていない積層ラック12L、12Rは、互いに隣り合うペアで各々配置され、一方の側に移載シャトル16が水平方向に走行可能な所定の間隔を有することが見て取れる。 上記記載事項及び図示内容を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「複数の出庫コンベア32L、32Rで立体自動倉庫10からの荷Pを出庫するための方法であって、 前記荷Pは、棚14を有する複数の積層ラック12L、12Rにおいて収容され、外側に配置されていない前記積層ラック12L、12Rは、互いに隣り合うペアで各々配置され、一方の側に移載シャトル16が水平方向に走行可能な所定の間隔を有し、 複数の入庫コンベア30L、30Rを備え、 前記荷Pは、前記所定の間隔のための移載シャトル16を介して、前記積層ラック12L、12Rに入庫され、および前記積層ラック12L、12Rから出庫され、 複数の出庫コンベア32L、32Rを備え、 前記走行可能な空間のための移載シャトル16を備え、 複数の昇降台26L、26Rが、荷Pを出庫コンベア32L、32Rに移載するために使用される方法。」 (2)引用文献2の記載 引用文献2には、立体自動倉庫および在庫物品移動方法に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア「【0014】自動倉庫装置の機械的な構成は図2?図4に示してあり、各レーン1、レーン2、…ごとに向かい合わせに多数の棚14,14,…が列になるように並べられ、その棚列間に従来から用いられているスタッカークレーン15-1,15-2,…が設備されている。またレーン1とレーン2とのレーン間、レーン3とレーン4とのレーン間、…のように隣合うレーン間それぞれにおいて、特定の位置で背中合わせになっている棚14,14間にレーン間移動装置16-1,16-2,…が設備されている。 【0015】このレーン間移動装置16-1,16-2,…は図3および図4に詳しく示されているように、背中合わせになった棚14,14間でそれらの棚板14a,14a上にレーン間移動用コンベア17を渡し、レーン間移動制御装置13-1,13-2,…によってこれらのレーン間移動用コンベア17をレーン間でいずれの方向にも駆動できるようにした構成である。なお、各棚14はスタッカークレーン15-1,15-2,…のフォーク15aが挿入できる空間を中央に開けて対向するように両側に棚板14a,14aが配置されている。そして各棚板14aは構造物である柱18によって支持されており、物品2の移動をセンシングするためのセンサ19が各柱18に取り付けられている。」 イ「【0022】続いて、主制御装置11はレーン間移動制御装置13-1に対してレーン間移動用コンベア17を起動させる指令を与え、レーン間移動用コンベア17がレーン1からレーン2に向かう駆動を開始し、物品2をレーン1側の棚から背中合わせになったレーン2の棚へ移動させる。そして物品2が完全にレーン2側の棚に移動すればセンサ19がそれをセンシングし、レーン間移動制御装置13-1はレーン間移動用コンベア17の動作を停止させる(ii→iii)。 【0023】続いて主制御装置11はレーン2スタッカークレーン制御装置12-2に対してレーン間移動用コンベア17が設置されている棚に移動してきた物品2を所定の空いている移動先棚14-2に搬入する指令を与え、レーン2スタッカークレーン制御装置12-2がレーン2のスタッカークレーン15-2を駆動して物品2をレーン間移動用コンベア17の設置されている棚から所定の移動先棚14-2まで搬送し、そこに入庫することによってレーン1,2間での物品2の移動を終了する(iii→iv)。」 ウ「【0025】なお、この発明は上記実施例に限定されることはなく、レーン間移動装置は背中合わせの棚板間に板を渡し、その上で物品をスタッカークレーンによってすべらせて奥側になる隣のレーンの棚に移動させるだけの簡単な構造であってもよく、背中合わせの棚間で物品を直接移動させることができれば特に機構が限定されることはない。またレーンの数、レーン間移動装置の設置位置も限定されることはない。」 (3)引用文献3の記載 引用文献3には、自動倉庫装置に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア「上記の目的を達成するために、本発明の自動倉庫は、各棚からのパレツトの出し入れを、その棚の両側のスタツカクレーンで行なうことができるラツクとスタツカクレーンで構成する。このようにすると、各棚のパレツトに対して、それを出し入れできるスタツカクレーンが2台存在することになる。第2図はその様子を示したものである。」(第2ページ右上欄第7?13行) イ「すなわち、スタツカクレーン32は、フオーク34をパレツト33の底まで伸ばし、パレツト33をすくい上げる。そして、フオーク34を引き込むことにより、パレツト33を棚35からスタツカクレーン32の上に取り込む。ここで、ラツク11は、棚34と棚35との境界面をパレツトが通過できるように、すじかい36を図のようにもうける。また、スタツカクレーンのフオーク34は、奥の棚と手前の棚の両方のパレツトが取り出せるようにするため、ダブルリーチ式のものとする。」(第2ページ右下欄第11?第3ページ左上欄第1行) (4)引用文献4の記載 引用文献4には、物品収納設備に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア「【0018】 本発明にかかる物品収納設備の実施形態について図面に基づいて説明する。 この物品収納設備は、図1?図3に示すように、複数種の物品3を種類別に複数個収納する収納体としてのパレット1を保管する保管棚2、パレット1から物品3の取り出しを行うピッキング用間口4を複数備えて、各ピッキング用間口4にパレット1を収納可能なピッキング棚5、保管棚2とピッキング棚5との間でパレット1を搬送する搬送手段6、保管棚2におけるパレット1の保管状態を管理するとともに、出庫する物品3の種類およびその出庫個数を含む出庫情報に基づいて、搬送手段6の作動を管理する管理手段としての管理装置Hなどが設けられて構成されている。」 イ「【0022】 前記複数の保管棚2の横側方には、保管棚2とは別に、間口を相対向させた上下方向に3段および横方向に複数並ぶ収納部を備えた一対の棚が配設され、その棚の下から1段目がピッキング棚5として構成されている。 前記ピッキング棚5は、間口を対向させた状態で一対配設され、その一対のピッキング棚5の夫々が、上下方向に1段で横方向に並ぶ状態で複数のピッキング用収納部10を備え、各ピッキング用収納部10は、複数の物品3が収納されているパレット1ごと収納可能に構成されている。」 ウ「【0025】 下から1段目がピッキング棚5として構成されている棚において、下から2段目および3段目が、複数の物品3が収納されているパレット1を収納可能な仮置き棚12として構成され、その仮置き棚12が、ピッキング棚5よりも上方側でかつピッキング棚5に隣接するように配設されている。 前記仮置き棚12は、ピッキング棚5と同様に、間口を対向させた状態で一対配設され、一対の仮置き棚12の夫々は、上下2段で横方向に並列する状態で複数の仮置き用収納部13を備え、各仮置き用収納部13は、複数の物品3が収納されているパレット1ごと収納可能に構成されている。」 エ「【0028】 そして、相対向するピッキング棚5および仮置き棚12の外側に沿う搬送通路を移動可能なピッキング棚用のスタッカークレーン11が設けられている。 このピッキング棚用のスタッカークレーン11は、保管棚用のスタッカークレーン8と同様に、水平移動、昇降移動、および、フォークなどによる出退作動によって、受け渡し部14とピッキング用収納部10と仮置き用収納部13との間でパレット1の移載を行うように構成されている。」 オ「【0032】 前記管理装置Hは、保管棚2のどの収納部7にどのパレット1を収納しているかのパレット1の保管状態を管理するとともに、図3に示すように、出庫情報として、組ごとに異なる複数種の物品3を出庫する形態で設定された複数の組別出庫情報を管理するように構成され、組は、複数の店舗を有する顧客ごとで区分けされている。」 カ「【0045】 前記管理装置Hは、上述の出庫処理、入替処理および表示処理に加えて、仮置き処理や補充処理を行うように構成されているので、仮置き処理および補充処理について説明を加える。 まず、仮置き処理について説明すると、管理装置Hは、複数の組別出庫情報から選択された一つの組別出庫情報に基づいて、その組別出庫情報に対応する物品3を収納したパレット1の複数を物品3の種類別に区分けする状態で保管棚2から仮置き棚12に搬送すべく、搬送手段6を作動させるように構成されている。」 5 当審の判断 (1)サポート要件について 本件特許の明細書の段落【0055】には「図4には、いわゆる『空港出発』ストラテジーが説明されている。」及び「注文は、個々の1つの通路または単一のピッキングステーションPで完了されることができ、」との記載があり、図4の記載が、発明の詳細な説明の「空港出発」ストラテジーに関する説明(段落【0055】等参照。)の一部として引用されていることが理解できる。 そして、図4には、左端から4番目の保管ラッキング通路2と、右端から4番目の保管ラッキング通路2とに、複数の製品ユニットDが詰め込まれる様子が矢印で記載されており、これら、左端から4番目の保管ラッキング通路2と右端から4番目の保管ラッキング通路2とが、製品ユニット詰め込み用保管ラッキング通路に相当することが理解できる。 また、図4には、詰め込まれた製品ユニットDが、左端から4番目の保管ラッキング通路2の真下又は右端から4番目の保管ラッキング通路2の真下に位置するピッキングステーションPに移動される様子が、矢印で記載されている。 ここで、図4において、各保管ラッキング通路2からピッキングステーションPまでの距離は、保管ラッキング通路2の真下にピッキングステーションPがある場合の距離が最小であることは自明であるから、詰め込まれた製品ユニットDを保管ラッキング通路2からピッキングステーションPへの移動する場合、左端から4番目の保管ラッキング通路2あるいは右端から4番目の保管ラッキング通路2から、真下のピッキングステーションPへの移動が最小であることが理解できる。 そうすると、「前記製品ユニット詰め込み用保管ラッキング通路から前記注文処理のためのピッキングステーション(P)への前記製品ユニット(D)の移動が最小となるように」の点は、明細書の段落【0055】等の「空港出発」ストラテジーに関する説明文及び当該説明文で引用される図4に記載されていると認められる。 したがって、異議申立人の上記3(1)のサポート要件についての主張は採用できず、この点において、請求項1ないし17に係る特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反しているとはいえない。 (2)進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「複数の出庫コンベア32L、32R」は本件発明1の「少なくとも1つの出庫供給ライン(6)」に相当し、以下同様に、「立体自動倉庫10」は「保管設備(1)」に、「荷P」は「運搬ユニット(T)」に、「出庫する」ことは「提供する」ことに、「棚14」は「保管ラック階層(3)」に、「積層ラック12L、12R」は「保管ラック(R)」に、「収容され」ることは「保管され」ることに、「移載シャトル16が水平方向に走行可能な所定の間隔」は「保管ラッキング通路(2)」に、「複数の入庫コンベア30L、30R」は「少なくとも1つの入庫供給ライン(4)」に、「備え」ることは「提供され」ることに、「移載シャトル16」は「入庫および出庫装置(5)」に、「複数の昇降台26L、26R」は「少なくとも1つの出庫リフト(8)」に、「出庫コンベア32L、32Rに移載する」ことは「下流に接続された出庫供給ライン(6)に移送する」ことに、それぞれ相当する。 したがって、本件発明1と引用発明とは、 「少なくとも1つの出庫供給ラインで保管設備からの運搬ユニットを提供するための方法であって、 前記運搬ユニットは、保管ラック階層を有する複数の保管ラックにおいて保管され、外側に配置されていない前記保管ラックは、互いに隣り合うペアで各々配置され、一方の側に保管ラッキング通路を有し、 少なくとも1つの入庫供給ラインが提供され、 前記運搬ユニットは、各保管ラッキング通路のための入庫および出庫装置を介して、前記保管ラックに入庫され、および前記保管ラックから出庫され、 少なくとも1つの出庫供給ラインが提供され、 各保管ラッキング通路のために入庫および出庫装置が提供され、 少なくとも1つの出庫リフトが、前記運搬ユニットを下流に接続された出庫供給ラインに移送するために使用される方法」 の点で一致し、以下の相違点1及び相違点2で相違する。 [相違点1] 本件発明1は「隣り合う2つの保管ラック(R)間で、前記保管ラックにおける横断搬送場所(Q)を介して、1つの保管ラッキング通路(2)から隣の保管ラッキング通路(2’)へ、運搬ユニット(T)の交換が行われ、前記入庫および出庫装置(5)は、前記横断搬送場所(Q)において前記運搬ユニット(T)を移動させ」る構成を有するのに対し、引用発明はこのような構成を有しない点。 [相違点2] 本件発明1は「注文処理の対象となる製品を収容した1又は複数の前記運搬ユニット(T)である製品ユニット(D)を、すべての製品ユニット(D)を詰め込むために選択された製品ユニット詰め込み用保管ラッキング通路(2)へ移動させる際に、前記製品ユニット詰め込み用保管ラッキング通路から前記注文処理のためのピッキングステーション(P)への前記製品ユニット(D)の移動が最小となるように、前記製品ユニット詰め込み用保管ラッキング通路(2)を選択する」のに対し、引用発明はこのような構成を有しない点。 (イ)相違点の検討 上記相違点1について検討する。 引用文献2には、レーン間移動用コンベア17によって、物品2をレーン1側の棚から背中合わせになったレーン2の棚へ移動させることが記載されているが、レーン間移動用コンベア17は、明らかに本件発明1の入庫および出庫装置(5)とは異なると認められる。 そうすると、引用発明に引用文献2に記載されたレーン間移動用コンベア17を適用しても、上記相違点1に係る本件発明1の「前記入庫および出庫装置(5)は、前記横断搬送場所(Q)において前記運搬ユニット(T)を移動させ」る構成にならない。 また、引用文献2及び3には、スタッカークレーンによって、本件発明1の「前記横断搬送場所(Q)において前記運搬ユニット(T)を移動させ」る構成が記載されているものの、スッタッカークレーンが存在する自動倉庫においては、スタッカークレーンにて上下方向への物品の移動が可能であるため、引用発明の「複数の昇降台26L、26R」に相当する構成は不要となる。そうであれば、引用発明の「移載シャトル16」を引用文献2及び3に記載されたスタッカークレーンに置き換えたうえ、さらに引用発明の「複数の昇降台26L、26R」を残存させることは、当業者が通常行うこととは認められない。 そうであれば、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2ないし17について 本件発明2ないし17は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えた発明であるので、上記アに示した理由と同様の理由により、上記引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1ないし17は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反しておらず、異議申立人の上記3(2)の進歩性についての主張は採用できない。 6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし17に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-09-04 |
出願番号 | 特願2015-525802(P2015-525802) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(B65G)
P 1 651・ 121- Y (B65G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 八板 直人 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
内田 博之 小関 峰夫 |
登録日 | 2018-11-22 |
登録番号 | 特許第6435463号(P6435463) |
権利者 | デマティック ゲーエムベーハー |
発明の名称 | 保管設備からの運搬ユニットを提供するための方法 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 廣瀬 隆行 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 田巻 文孝 |