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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1355181
審判番号 不服2018-13323  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-04 
確定日 2019-09-13 
事件の表示 特願2014-553113「多環芳香族ビニル化合物を含む自己組織化膜の下層膜形成組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月26日国際公開、WO2014/097993〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月13日(パリ条約による優先権主張 平成24年12月18日(以下「本件優先日」という。) 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月28日付の拒絶理由通知がされ、平成30年3月30日に意見書の提出と共に手続補正がされ、同年6月27日付で拒絶査定がされ(謄本送付は同年7月4日)、それに対して、同年10月4日に本件審判請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成30年10月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定]
平成30年10月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容について
(1)本件補正1
ア 本件補正は、請求項1の補正(以下「本件補正1」という。)を含むものである。
イ 本件補正後の請求項1の記載
「ポリマーの全単位構造あたり芳香族ビニル化合物の単位構造を60?95モル%有し、ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基又は保護されたカルボキシル基を含む架橋形成基を有する単位構造を5?40モル%有し、且つ該芳香族ビニル化合物の全単位構造あたり多環芳香族ビニル化合物の単位構造を1モル%以上有するポリマーを含み、前記芳香族ビニル化合物が、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールを含む自己組織化膜の下層膜形成組成物であって、
前記自己組織化膜が、有機モノマー(a)を単位構造として含む有機ポリマー鎖(A)と、有機モノマー(a)とは異なるモノマー(b)を単位構造として含み且つ該有機ポリマー鎖(A)に結合してなるポリマー鎖(B)とを含むブロックポリマーより成る膜である、自己組織化膜の下層膜形成組成物。」
ウ 本件補正前の請求項1の記載
「ポリマーの全単位構造あたり芳香族ビニル化合物の単位構造を60?95モル%有し、且つ該芳香族ビニル化合物の全単位構造あたり多環芳香族ビニル化合物の単位構造を1モル%以上有するポリマーを含む、自己組織化膜の下層膜形成組成物であって、
前記自己組織化膜が、有機モノマー(a)を単位構造として含む有機ポリマー鎖(A)と、有機モノマー(a)とは異なるモノマー(b)を単位構造として含み且つ該有機ポリマー鎖(A)に結合してなるポリマー鎖(B)とを含むブロックポリマーより成る膜である、自己組織化膜の下層膜形成組成物。」
(2)本件補正2
ア 本件補正は、本件補正前に存在しなかった次の請求項2を新たに追加する補正(以下「本件補正2」という。)を含むものである。
イ 本件補正後の請求項2
「ポリマーの全単位構造あたり前記芳香族ビニル化合物の単位構造を90?95モル%有し、前記ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基又は保護されたカルボキシル基を含む架橋形成基を有する単位構造を5?10モル%有する、請求項1に記載の自己組織化膜の下層膜形成組成物。」
(3)本件補正3
ア 本件補正は、請求項4を次のように補正する補正(以下「本件補正3」という。)を含むものである。
イ 本件補正後の請求項4
「前記芳香族ビニル化合物が、置換されていてもよいスチレンと、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールとからなり、前記多環芳香族ビニル化合物が、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールである、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の自己組織化膜の下層膜形成組成物。」
ウ 本件補正前の請求項4
「前記芳香族ビニル化合物が、置換されていてもよいスチレンと、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールであり、前記多環芳香族ビニル化合物が、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールである、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の自己組織化膜の下層膜形成組成物。」
2 本件補正1についての検討
(1)補正の目的
ア 補正の目的について
(ア)下層膜形成のためのポリマーについて
本件補正1によって、本件補正前の下層膜形成のためのポリマーに含まれるモノマーの特定が「ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基又は保護されたカルボキシル基を含む架橋形成基を有する単位構造を5?40モル%有」するものと特定された。この補正事項は、「下層膜形成のためのポリマー」を限定的に減縮するものといえる。
(イ)芳香族ビニル化合物について
本件補正1によって、本件補正前には、芳香族ビニル化合物の特定がなかったところ、本件補正後は「芳香族ビニル化合物が、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールを含む」と特定されているから、この補正事項は、「芳香族ビニル化合物」を限定的に減縮するものといえる。
イ 小括
以上より、本件補正1は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「下層膜形成のためのポリマー」及び「芳香族ビニル化合物」について、上記のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)独立特許要件について
特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正1については、特許法17条の2第6項の規定により、特許法126条7項の規定が準用されるため、本件補正後の請求項1の記載により特定される発明(以下「補正後発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるという要件を満たす必要がある。以下、検討する。
(3)引用刊行物の記載
ア 引用文献3
原査定において引用された文献3(国際公開第2012/036121号)には、次の記載がある。
(ア)「[請求項1]基板上に形成した複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を相分離させるために用いられる下地剤であって、
樹脂成分を含有し、該樹脂成分全体の構成単位のうち20モル%?80モル%が芳香族環含有モノマー由来の構成単位であることを特徴とする下地剤。」
(イ)「[0002] 近年、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、より繊細な構造体を加工する技術が求められている。このような要望に対して、互いに非相溶性のポリマー同士を結合させたブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して、より微細なパターンを形成する試みが始まっている。
[0003] ブロックコポリマーの相分離を利用するためには、ミクロ相分離により形成された自己組織化ナノ構造を特定の領域のみに形成し、かつ所望の方向へ配列させることが必須となる。これらの位置制御及び配向制御を実現するために、ガイドパターンによって、相分離パターンを制御するグラフォエピタキシーと、基板の化学状態の違いによって相分離パターンを制御するケミカルエピタキシーといった方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
[0004] これらに好適に用いられる方法として、基板の上に2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた中性層を形成することで、基板の上のブロック共重合体が接触する面が、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされている状態とする方法が開示されている・・・」
(ウ)「[0028] <基板> 本発明において用いられる基板としては、下地剤およびブロックコポリマーを塗布する際に溶解あるいは混和するものでなければ特に限定されず、例えば、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板、ガラス基板などの金属酸化物からなる基板、ポリマーフィルム(ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリイミド、ベンゾシクロブテン等)等が挙げられる。また、前記基板の大きさや形状は、特に限定されるものではなく、平板状であること以外は、適宜選択することができる。」
(エ)「[0030] <中性化処理>
中性化処理とは、基板表面を、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有するように改変する処理をいう。中性化処理を行うことにより、相分離によって特定のポリマーからなる相のみが基板表面に接することを抑制することができる。本発明においては、ブロックコポリマーを含む層を形成する前に、基板表面に、用いるブロックコポリマーの種類に応じた中性化処理を行っておく。該処理工程は、相分離によって基板表面に対して自在に配向されたシリンダー構造、ドット構造、ジャイロイド構造等を形成させるに必要な工程である。
[0031] 具体的には、中性化処理としては、基板表面に、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する下地剤を含む薄膜(中性化膜)を形成する処理を行う。
このような中性化膜としては、樹脂組成物からなる膜を用いることができる。下地剤として用いられる樹脂組成物は、ブロックコポリマーを構成するポリマーの種類に応じて、薄膜形成に用いられる従来公知の樹脂組成物の中から適宜選択することができるが、本発明においては、樹脂成分全体の構成単位のうち20モル%?80モル%が芳香族環含有モノマー由来の構成単位である。すなわち、本発明の下地剤は、芳香族環含有モノマー由来の構成単位と非芳香族環含有モノマー由来の構成単位とを上記割合で含有することでブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する。
[0032] 下地剤に用いられる樹脂組成物としては、(1)非感光性、非熱重合性樹脂組成物、(2)感光性樹脂組成物、(3)熱重合性樹脂組成物、(4)化学増幅ポジ型レジスト組成物、(5)ノボラック系レジスト組成物が挙げられる。
[0033] 本発明においては、樹脂成分全体の構成単位のうち20モル%?80モル%が芳香族環含有モノマー由来の構成単位であるれば特に限定されないが、このような下地剤としては、例えば、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーの構成単位をいずれも含む樹脂組成物や、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーと親和性の高い構成単位をいずれも含む樹脂等が挙げられる。 例えば、PS-PMMAブロックコポリマーを用いる場合には、下地剤として、PSとPMMAの両方を構成単位として含む樹脂組成物や、芳香環のPSと親和性が高い部位と、極性の高い官能基等のPMMAと親和性の高い部位の両方を含む化合物又は組成物を用いることが好ましい。
PSとPMMAの両方を構成単位として含む樹脂組成物としては、例えば、PSとPMMAのランダムコポリマー、PSとPMMAの交互ポリマー(各モノマーが交互に共重合しているもの)等が挙げられる。 以下、下地剤として用いられる樹脂組成物について詳細に説明する。」
(オ)実施例
a [0293]
「[ネガ型感光性樹脂組成物-No.1]
表6、7にポリマー20?38の合成に用いたモノマー及びその構成比(単位はモル%)、合成したポリマーの分子量を示す。表8?12の成分表に従って、実施例20?45、比較例6?10の樹脂組成物を調製した(単位は質量部)。尚、表8?12中、用いた組成物の詳細を表28?30に示す。」
b [0294][表6]



c [0295][表7]



d [0296][表8]



e [0297][表9]



f [0298][表10]



g [0299][表11]



h [0300][表12]



i [0301]
「[垂直ラメラ形成能の評価]
0.5?2%濃度に調製した実施例20?45、比較例6?10の樹脂組成物を膜厚70nmになるように回転数を調整し、8インチシリコン基板上にスピンコートとし、90℃で60秒間のベーク処理を行った。
次いで、HMW-532D(ORC社製)を用いて、ghi線(2000mJ/cm^(2)の露光量)を照射した。露光後、光酸発生剤を使用したサンプルでは120℃で90秒間露光後加熱(PEB)処理を行った。
この基板に、PS-PMMAブロックコポリマー1(Polymer Source社製、PSの分子量:53000、PMMAの分子量:54000、分散度(Poly dispersity index:PDI):1.16)のトルエン溶液(17.5mg/ml)をスピンコート(回転数:1000rpm、60秒間)した後、110℃で60秒間加熱乾燥した。
次いで、当該基板を、窒素気流下、200℃で6時間加熱し、相分離構造を形成させた。その後、TCA-3822(東京応化工業製)を用いて、当該基板を酸素プラズマ処理(200sccm、40Pa、200W、30秒間)を行ってPMMAからなる相を選択的に除去し、得られた基板の表面を走査型電子顕微鏡SEMS4700(日立製作所)で観察した。垂直ラメラが観察された樹脂組成物をA、垂直ラメラが観察されない樹脂組成物をBと評価した。結果を表8?12に示す。
この結果から、ネガ型感光性樹脂組成物においても、樹脂成分を含有し、該樹脂成分全体の構成単位のうち20モル%?80モル%が芳香族環含有モノマー由来の構成単位である下地剤を用いることにより、基板上に垂直ラメラを形成できることが明らかである。」
イ 引用文献1
原査定において引用された引用文献1(国際公開第2007/023710号)には次の記載がある。
(ア)請求の範囲[1]
「式(1):
[化1]

(式中、R_(1)は水素原子又はメチル基を示し、Xはナフタレン環に置換したハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、チオール基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、又はチオアルキル基を示し、nは0ないし7の整数を示し、nが7以外の場合は残部が水素原子である。)
で表される単位構造と、
式(2):
[化2]

(式中、R_(1)は前記式(1)における定義と同意義であり、Αは芳香族性水酸基又は水酸基含有エステルを含む有機基である。)で表される単位構造とを、ポリマーを構成する単位構造のすべてに基いて、それぞれモル比で0.02以上含有するポリマーを含む多層膜によるリソグラフィープロセスに用いる塗布型下層膜形成組成物。」
(イ)「[0004] 本発明は、半導体装置製造のリソグラフィープロセスに用いるための塗布型下層膜形成組成物を提供することである。また本発明は、フォトレジスト層とのインターミキシングが起こらず、優れたフォトレジストパターンが得られ、フォトレジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用塗布型下層膜、フォトレジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用塗布型下層膜や半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用塗布型下層膜を提供することにある。また本発明は、248nm、193nm、157nm等の波長の照射光を微細加工に使用する際に基板からの反射光を効果的に吸収する性能を付与することもできる。さらに、本発明は該塗布型下層膜形成組成物を用いたフォトレジストパターンの形成法を提供することにある。」
(ウ)実施例について
a [0029]
「合成例1
2-ビニルナフタレン35g(0.227モル)、2-ヒドロキシエチルアクリレート2.9g(0.025モル)をシクロへキサノン112gに溶解させた後、フラスコ内を窒素にて置換し60℃まで昇温した。昇温後、シクロへキサノン47gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル1.9gを窒素加圧下添加し、24時間60℃で反応させた。反応溶液を冷却後、メタノールに投入し、ポリマーを再沈殿、加熱乾燥して式[5-1]のポリマーを得た。得られたポリマー重量平均分子量Mwは12000(ポリスチレン換算)であった。
[化11]


b [0032]
「実施例1
上記合成例1で得たポリマー6gにテトラブトキシメチルグリコールウリル0.5gとピリジニウムp-トルエンスルホン酸0.05gを混合し、シクロヘキサノン126g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル54gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いる塗布型下層膜溶液を調製した。」
c [0034]
「・・・
(ドライエッチング速度の測定)
ドライエッチング速度の測定に用いたエッチャー及びエッチングガスは以下のものを用いた。
ES401(日本サイエンティフィック製):CF_(4)
RIE-10NR(サムコ製):C_(4)F_(8)/Ar、CHF_(3)/Ar
TCP9400(ラムリサーチ製):Cl_(2)」
d [0035]
「実施例1ないし4で調製した塗布型下層膜溶液及び比較例1、2で調製した塗布型下層膜溶液をスピナーを用い、シリコンウェハー上に塗布し、ホットプレート上で205℃1分間加熱し、塗布型下層膜(膜厚0.10μm)を形成し、エッチングガスとしてCF_(4)ガスを使用してドライエッチング速度を測定した。
また、同様にフォトレジスト溶液(シプレー社製・商品名UV113)をスピナ一を用い、シリコンウェハー上に塗膜を形成した。エッチングガスとしてCF_(4)ガスを使用してドライエッチング速度を測定し、実施例1ないし5及び比較例1、2の塗布型下層膜及び反射防止膜のドライエッチング速度との比較を行った。結果を表2に示す。
また、半導体基板上の被加工膜としてSiO_(2)膜、SiN膜、Poly-Si膜を用いた。半導体基板上のSiO_(2)膜にはエッチングガスとしてC_(4)F_(8)/Arガスを用いドライエッチング速度を測定し、一方で、シリコンウェハー上に作成した塗布型下層膜を同様にエッチングガスとしてC_(4)F_(8)/Arガスを用いドライエッチング速度を測定し、その速度比を表2に示す。
半導体基板上のSiN膜にはエッチングガスとしてCHF_(3)/Arガスを用いドライエツチング速度を測定し、一方で、シリコンウェハー上に作成した塗布型下層膜を同様にエッチングガスとしてCHF_(3)/Arガスを用いドライエッチング速度を測定し、その速度比を表2に示す。
半導体基板上のPoly-Si膜にはエッチングガスとしてCl_(2)ガスを用いドライエッチング速度を測定し、一方で、シリコンウェハー上に作成した塗布型下層膜を同様にエッチングガスとしてCl_(2)ガスを用いドライエッチング速度を測定し、その速度比を表2に示す。」
e [表2]



(4)引用発明の認定
以下、引用文献3から引用発明を認定する。
ア ポリマー26
前記(3)ア(オ)bに摘記した表6によると、ポリマー26は、モノマーとして、1-ビニルナフタレンを50モル%及びメタクリル酸グリシジルを50モル%を共重合させたポリマーである。
イ 実施例28
前記(3)ア(オ)eに摘記した表9によると、実施例28は、ポリマー26を100質量部、光酸発生剤を2質量部それぞれ含有する樹脂組成物であって、前記(3)ア(ア)の記載から、その樹脂組成物は下地剤でもある。
ウ 前記(3)ア(オ)iに摘記したように、前記イの樹脂組成物は、シリコン基板上にスピンコートされ、ghi線を照射され、加熱処理される。
エ その後、ポリスチレンとポリメタクリル酸メチルとのブロックポリマー溶液がスピンコートされ、ブロックポリマーが相分離構造をとるような加熱処理がされるということになる。
オ そうすると、引用文献3から次の発明(以下「引用発明」という。)が認定できる。
カ 引用発明
「ポリマーの全単位構造あたり1-ビニルナフタレンを50モル%有し、メタクリル酸グリシジルを50モル%有するポリマーを含む
相分離構造膜の下地剤であって、
前記相分離構造膜が、ポリスチレンとポリメタクリル酸メチルとのブロックポリマーより成る膜である、相分離構造膜の下地剤。」
(5)対比・判断
ア 本件補正発明
本件補正後の請求項1は、前記1(1)イに摘記したが再掲し、以下、この記載により特定される発明を「本件補正発明」という。
「ポリマーの全単位構造あたり芳香族ビニル化合物の単位構造を60?95モル%有し、ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基又は保護されたカルボキシル基を含む架橋形成基を有する単位構造を5?40モル%有し、且つ該芳香族ビニル化合物の全単位構造あたり多環芳香族ビニル化合物の単位構造を1モル%以上有するポリマーを含み、前記芳香族ビニル化合物が、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールを含む自己組織化膜の下層膜形成組成物であって、
前記自己組織化膜が、有機モノマー(a)を単位構造として含む有機ポリマー鎖(A)と、有機モノマー(a)とは異なるモノマー(b)を単位構造として含み且つ該有機ポリマー鎖(A)に結合してなるポリマー鎖(B)とを含むブロックポリマーより成る膜である、自己組織化膜の下層膜形成組成物。」
イ 対比
(ア)引用発明における「1?ビニルナフタレン」は、本件補正発明における「ビニルナフタレン」に相当する。
(イ)引用発明における「メタクリル酸グリシジル」は、グリシジル基はエポキシ基を含むから、本件補正発明における「ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基又は保護されたカルボキシル基を含む架橋形成基を有する単位構造」に相当する。
(ウ)引用発明においては、芳香族ビニル化合物として、多環芳香族ビニル化合物である1?ビニルナフタレンのみを用いているから、多環芳香族ビニル化合物の構成単位を100モル%有していることになり、本件補正発明における「該芳香族ビニル化合物の全単位構造あたり多環芳香族ビニル化合物の単位構造を1モル%以上有するポリマー」と、一致している。
(エ)引用発明における「下地剤」は、本件補正発明における「下層膜形成組成物」に相当する。
(オ)引用発明における「相分離構造膜」は、前記(3)ア(オ)iに摘記したように垂直ラメラ形成能を有するものであるから、本件補正発明における「自己構造化膜」に相当する。また、引用発明の「ポリスチレンとメタクリル酸メチルのブロックポリマーよりなる膜」は、「有機モノマー(a)を単位構造として含む有機ポリマー鎖(A)と、有機モノマー(a)とは異なるモノマー(b)を単位構造として含み且つ該有機ポリマー鎖(A)に結合してなるポリマー鎖(B)とを含むブロックポリマーより成る膜」と一致する。
(カ)一致点
そうすると、本件補正発明と引用発明とは次の点で一致する。
「ポリマーの全単位構造あたり芳香族ビニル化合物の単位構造を有し、ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基又は保護されたカルボキシル基を含む架橋形成基を有する単位構造を有し、且つ該芳香族ビニル化合物の全単位構造あたり多環芳香族ビニル化合物の単位構造を1モル%以上有するポリマーを含み、前記芳香族ビニル化合物が、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールを含む自己組織化膜の下層膜形成組成物であって、
前記自己組織化膜が、有機モノマー(a)を単位構造として含む有機ポリマー鎖(A)と、有機モノマー(a)とは異なるモノマー(b)を単位構造として含み且つ該有機ポリマー鎖(A)に結合してなるポリマー鎖(B)とを含むブロックポリマーより成る膜である、自己組織化膜の下層膜形成組成物。
ウ 相違点及び判断
(ア)相違点1
本件補正発明と引用発明とは次の点で相違する。
<<相違点>>
下層膜を形成するポリマーについて、本件補正発明においては、芳香族ビニル化合物の単位構造を60?95モル%有し、ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基又は保護されたカルボキシル基を含む架橋形成基を有する単位構造を5?40モル%有するのに対し、引用発明においては、1-ビニルナフタレンの単位構造を50モル%有し、メタクリル酸グリシジルの単位構造を50モル%有する点。(以下、相違点1という。)
(イ)相違点1についての検討
a 前記(3)ア(ア)に摘記したように、引用文献3の請求項1には、下地剤の樹脂成分について、「該樹脂成分全体の構成単位のうち20モル%?80モル%が芳香族環含有モノマー由来の構成単位」と記載されている。
b そして、その数値範囲の下限と上限は、前記(3)ア(オ)bで摘記した表6のポリマー20及びポリマー21を用いた、前記(3)ア(オ)dで摘記した表8の実施例20及び実施例21によって、芳香族環含有モノマー由来の構成単位としてスチレンを用いて実証されていることが読み取れる。
c そうすると、引用発明において、A)メタクリル酸グリシジルを50モル%から20モル%に減少させ、1-ビニルナフタレンを50モル%から80モル%に増加するか、または、B)メタクリル酸グリシジルを50モル%から20モル%に減少させ、スチレンを30モル%加える、のAかBのいずれかの変更により本件補正発明に到達することに動機づけは十分にあって、当業者が容易になし得ることといえる。
d また、前記bにおける実施例21の記載から、引用文献3には、スチレン80モル%、メタクリル酸グリシジル20モル%の実施例が記載されている以上、前記cのAまたはBのいずれの変更にも阻害事由があるといえない。
エ 請求人の主張について
(ア)請求人は、審判請求書において、本件補正発明と引用文献3とを対比して、「引用文献3にはドライエッチング速度を向上させる点については記載も示唆もない。従って、本発明の構成と効果が記載も示唆もない引用文献3を読んでも当業者は、本願請求項1に係る発明を容易に想到することはできない。」と主張する。
(イ)この主張は、本件補正発明は、相違点1により予測できない効果を奏する旨の主張と解される。しかし、本願明細書に、相違点1による作用効果上の差異についての記載はないから、この主張は斟酌されるべきものではない。
ただし、念のため、本願明細書のどこから「ドライエッチング速度を向上」が読み取れるかを、以下検討する。
(ウ)本願明細書の記載
a 段落【0093】
「(ドライエッチング速度の測定)
ドライエッチング速度の測定に用いたエッチャー及びエッチングガスは以下のものを用いた。
RIE-10NR(サムコ製):CF_(4)
実施例1?実施例9、比較例1で調製した自己組織化膜の下層膜形成組成物の溶液を、スピンコーターを用いてシリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上で240℃1分間焼成し、自己組織化膜の下層膜形成組成物(膜厚0.20μm)を形成した。エッチングガスとしてCF_(4)ガスを使用してドライエッチング速度を測定した。
また、クレゾールノボラック樹脂(市販品、重量平均分子量は4,000)の溶液を、スピンコーターを用いてシリコンウェハ上に205℃1分間焼成し、有機ハードマスク層(膜厚0.20μm)を形成した。エッチングガスとしてCF_(4)ガスを使用して実施例1?実施例9、比較例1と同様にドライエッチング速度を測定し、実施例1?実施例9、比較例1と、有機ハードマスク層のドライエッチング速度との比較を行った。結果を表2に示した。速度比(1)は(実施例1?実施例9及び比較例1で用いた自己組織化膜の下層膜、240℃1分間焼成膜)/(クレゾールノボラック樹脂、205℃1分間焼成膜)のドライエッチング速度比である。」
b 段落【0094】
「【表2】


(エ)検討
ところで、前記実施例1?9及び比較例1との対比に用いられているクレゾールノボラック樹脂は、フォトレジストとして一般的なものであるから、前記(ウ)bの速度比は、フォトレジストのエッチング速度に対する比が、実施例1?9において1.00以下であることを表していると解される。そして、フォトレジストは、基板と比較してドライエッチング速度が低いことは技術常識である。
(オ)そうすると、前記(ア)の「ドライエッチング速度を向上させる」という効果を読み取ることは困難であるから、「ドライエッチング速度を低下させる」という効果の主張と善解して以下検討する。なお、このように解することは、前記(ウ)bにおいて、比較例1(芳香族ビニル化合物としてスチレンのみを用いた例)のドライエッチング速度がレジスト比で最も高いこととも整合する。
(カ)前記(ウ)bの実施例5
a 前記実施例5は、本願明細書【0082】に記載されたように、本願明細書【0070】の合成例5で合成された高分子を唯一の樹脂成分とする樹脂組成物である。
b そして、合成例5を参照すると、多環芳香族ビニル化合物としてビニルナフタレンの構成単位を50モル%、4-tertブトキシスチレンの構成単位を50モル%とした高分子であり、このようなものでも、レジストに対する速度比が0.83となっている。
c そうすると、多環芳香族ビニル化合物の構成単位が50モル%であっても、「ドライエッチング速度を低下させる」効果は認められるから、多環芳香族ビニル化合物の構成単位が50モル%の場合と60?95モル%の場合とで作用効果の差異がないことが推測される。
(キ)予備的検討
a 仮に「ドライエッチング速度を低下させる」効果について、多環芳香族ビニル化合物の構成単位が50モル%の場合と60?95モル%の場合とで、差異があるとして検討する。
b 前記(3)イ(ウ)に摘記したように、引用文献1の実施例1において、多環芳香族ビニル化合物(2-ビニルナフタレン)の構成単位が90モル%の場合に、エッチング速度がレジスト比で0.8であることが記載されている。
c そうすると、前記aの効果があるとしても、本件優先日前に頒布された引用文献1の記載から当業者であれば予測可能なものであり、当業者が予測できない格別の作用効果があるということはできない。
(6)小括
ア 以上のように、本件補正発明は、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が本件優先日前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
イ よって、本件補正1は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
3 本件補正2についての検討
(1)補正の目的について検討する
ア 本件補正は、特許法17条の2第1項4号の規定された時期にされたものであるから、本件補正2は、特許法17条の2第5項に規定する要件を満たす必要がある。
イ 本件補正2の内容は、前記1(2)のとおりであるが、本件補正前の請求項2?15には、「芳香族ビニル化合物の単位構造」及び「ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基又は保護されたカルボキシル基を含む架橋形成基を有する単位構造」の組成比を発明特定事項とする請求項はないから、前記アに記載したように、本件補正後の請求項2は新たに追加されたものといえる。
ウ また、本件補正後の請求項2に係る発明は、本件補正後の請求項1に係る発明に包含される発明となっている。
エ 前記イのとおり、本件補正2は、請求項を追加する補正であるから、請求項の削除、限定的減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれにもあたらない。
オ そうすると、本件補正2は、前記アの特許法17条の2第5項に規定する要件を満たさない補正であるから、不適法な補正である。
(2)小括
本件補正2は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たさないため、特許法159条の規定により読み替えて準用する特許法53条の規定により却下すべきものである。
4 本件補正3についての検討
(1)補正の目的について検討する
ア 前記3(1)アと同様に、本件補正3は、特許法17条の2第5項に規定する要件を満たす必要がある。
イ 本件補正3は、「前記芳香族ビニル化合物が、置換されていてもよいスチレンと、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールであり、」を「前記芳香族ビニル化合物が、置換されていてもよいスチレンと、各々置換されていてもよいビニルナフタレン、アセナフチレン又はビニルカルバゾールとからなり」と補正するものである。(以下、置換されていてもよいスチレンを「スチレン類」などという。)
ウ 本件補正3は、請求項の削除には明らかに該当しないので、他の目的について順次検討する。
エ 本件補正3が、特許法第17条の2第5項4号の明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)と解することはできない。なぜなら、平成29年11月28日付の拒絶理由通知及び平成30年6月27日付拒絶査定においては、請求項の記載不備が指摘されていないからである。
オ 本件補正3が、特許法第17条の2第5項3号の「誤記の訂正」に該当するか検討する。補正前の芳香族ビニル化合物は、スチレン類(a)及びビニルナフタレン類(b)、アセナフチレン類(c)、ビニルカルバゾール類(d)とすると、(a+b)、(a+c)、(a+d)のいずれかを指すことは読み取れることであるから、本件補正前の請求項4に誤記があるともいえないから、本件補正3は、特許法第17条の2第5項3号の「誤記の訂正」を目的とするものとはいえない。
カ 本件補正3が、特許法第17条の2第5項2号の「限定的減縮」に該当するか検討する。
(ア)本件補正前の本願請求項4は、前記オに示したとおりであるが、発明特定事項としては、上記a?d以外の芳香族ビニル化合物を用いることも許容されるものである。
(イ)一方、仮に本件補正後の本願請求項4における「からなる」が、「consist of」を指し、いわゆるクローズクレームを意味するとすると、上記a?d以外の芳香族ビニル化合物を用いることが許容されないから、本件補正3が「限定的減縮」に該当するとも解する余地がある。
(ウ)しかしながら、本件補正3における「からなる」が、前記クローズクレームの意味で用いられているか、「comprise of」を意味し、いわゆるオープンクレームを示すものとして用いられているかは、本願特許請求の範囲及び明細書の記載から判然としない。
(エ)したがって、本件補正3が、限定的減縮を目的としていると認めることができない。
(2)小括
本件補正3は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たさないため、特許法159条の規定により読み替えて準用する特許法53条の規定により却下すべきものである。
5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正1は、特許法17条の2第6項において準用する特許法126条7項に規定する要件を満たさず、本件補正2及び3は、いずれも特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たさない。したがって、本件補正1?3を含む本件補正は、特許法159条の規定により読み替えて準用する特許法53条の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年10月4日にされた手続補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年3月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由](1)ウに記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献3に記載された発明に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献3:国際公開第2012/036121号
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3の記載事項は、前記第2の[理由]2(3)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「下層膜形成のためのポリマー」及び「芳香族ビニル化合物」についての限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(5)に記載したとおり、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-11 
結審通知日 2019-07-17 
審決日 2019-07-31 
出願番号 特願2014-553113(P2014-553113)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09D)
P 1 8・ 575- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南 宏樹上條 のぶよ  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 門前 浩一
牟田 博一
発明の名称 多環芳香族ビニル化合物を含む自己組織化膜の下層膜形成組成物  
代理人 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所  
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