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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C09K
管理番号 1355346
審判番号 無効2018-800051  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-01 
確定日 2019-09-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第5863667号発明「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの共沸混合物様の組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯等

1 本件無効審判に係る特許
本件無効審判に係る特許第5863667号は、被請求人(特許権者)であるハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッドが保有するものであり、その出願は、2010年(平成22年)12月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、第一優先日:2009年12月16日、第二優先日:2010年12月14日、ともに米国(US))を国際出願日として出願され、特願2012-544731号として審査され、平成28年1月8日に、発明の名称を「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの共沸混合物様の組成物」、請求項の数を「17」として特許権の設定登録を受けたものである(以下、各請求項に係る特許を「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。また、各請求項に係る発明を「本件特許発明1」などといい、まとめて「本件特許発明」という。)。
2 本件無効審判における手続の経緯
本件無効審判は、請求人であるザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニーより請求されたものであって、手続の経緯(提出書類)は、以下のとおりである。
平成30年 5月 1日 審判請求書(請求人)
同年 8月24日 審判事件答弁書(被請求人)
同年11月14日付 審理事項通知
平成31年 1月30日 (第1回)口頭審理陳述要領書(請求人)
第1口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 2月27日 第2回口頭審理陳述要領書(請求人)
第2口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 3月13日 第3回口頭審理陳述要領書(請求人)
口頭審理
同年 3月20日 手続補正書(方式)(請求人)
同年 4月 5日 上申書(被請求人)
同年 4月 9日 上申書(請求人)

第2 両当事者の主張の概要と証拠方法

1 両当事者の主張
(1) 請求の趣旨
特許第5863667号発明の特許請求の範囲の請求項1?17に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
(2) 答弁の趣旨
本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

2 証拠方法
両当事者から提出された証拠方法は、以下のとおりである(以下、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」などと略して記載する。)。
(1) 請求人から提出された書証
甲1:国際公開第2010/141527号、2010年12月9日公開
甲2:特表2010-522819号公報、2010年7月8日公開
甲3:国際公開第2009/048826号、2009年4月16日公開 甲4:国際公開第2010/062572号、2010年6月3日公開
甲5:特開平5-179043号公報、1993年7月20日公開
甲6:田中勝之、“HCFO-1233zd(E)とHCFO-1233 xfの飽和蒸気圧力および飽和液体密度の測定”、日本冷凍空調学 会論文集、公益社団法人日本冷凍空調学会、2016年、第33巻 、第2号、p.105-111
甲7:吉村壽次編集代表、「化学辞典」、第2版、森北出版株式会社、2 009年12月16日第1刷発行、p.1358(「ポリウレタン フォーム」の項目)
甲8:塩川二朗監修、「カーク・オスマー化学大辞典」、丸善株式会社、 昭和63年9月20日、p.1057-1059(「発泡プラスチ ック」の項目)
甲9:二村隆夫監修、「丸善 単位の辞典」、丸善株式会社、平成17年 4月25日第4刷発行、p.114(「ケルビン温度」の項目)、 p.297(「プサイ」、「プサイア」の項目)、p.428(「 圧力」の表)、p.429(「密度」の表)
甲10:吉村壽次編集代表、「化学辞典」、第2版、森北出版株式会社、 2009年12月16日第1刷発行、p.101(「E,Z命名法 」の項目)、p.323(「幾何異性」の項目)、p.658(「 順位則」の項目)
甲11:平成10年法律第117号「地球温暖化対策の推進に関する法律 」(平成10年10月9日公布)の第2条第5項が掲載された衆議 院ウェブサイトを、2018年4月12日に印刷したもの
甲12:本件特許の第一優先日に係る優先権書類(米国仮出願第61/2 87,041号の明細書)
(以上、審判請求書に添付して提出)
甲13:Munkhbayar Baasandorj、外2名、“At mospheric Chemistry of (Z)-CF_(3) CH=CHCF_(3): OH Radical Reaction Rate Coefficient and Global Wa rming Potential”、THE JOURNAL O F PHYSICAL CHEMISTRY A、2011年9月 1日、Vol.115、No.38、p.10539-10549
甲14:Federal Register、2012年8月10日、V ol.77、No.155、p.47768-47779
甲15:Safety Data Sheet、CENTRAL GLA SS、2018年改訂、p.1-6
(以上、第1回口頭審理陳述要領書に添付して提出)
甲16:ハネウェル社のホームページに掲載された技術資料「Solst ice(ソルスティス)噴射剤・エンハンス溶剤-化粧品用途向け パンフレット」(2018)を、2019年3月12日に印刷した もの
(以上、第3回口頭審理陳述要領書に添付して提出)
甲17:特表2018-517789号公報、2018年7月5日公開
(以上、上申書に添付して提出)
また、甲1、3、4、12?15については、その訳文又は抄訳が提出されている。
(2) 被請求人から提出された書証
乙1:報告書が添付された宣誓供述書
(以上、第1口頭審理陳述要領書に添付して提出。審判事件答弁書に添付して提出された乙1を差し替えたもの)
乙2:甲2に係る出願の審査過程における平成25年6月21日付け拒絶 理由通知書
乙3:甲2に係る出願の審査過程における平成25年9月25日付け意見 書
(以上、審判事件答弁書に添付して提出)
また、乙1については、その訳文が提出されている。

第3 請求人が主張する無効理由(無効理由1、2)

請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである(第1回口頭審理陳述要領書の第10頁を参酌した。)。

1 無効理由1(進歩性:甲1を主引例とする特許法第29条第2項所定の規定違反)
本件特許発明について、第一優先日に係る優先権主張の効果は認められず、本件特許発明は、その第二優先日である2010年(平成22年)12月14日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明にあたる甲1に記載された発明、及び周知技術(甲2など)、又は、甲1に記載された発明、並びに、甲2の記載、及び周知技術(甲2など)に基いて、その第二優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当するため、無効とすべきものである。

2 無効理由2(進歩性:甲2を主引例とする特許法第29条第2項所定の規定違反)
本件特許発明について、第一優先日に係る優先権主張の効果は認められず、本件特許発明は、その第二優先日である2010年(平成22年)12月14日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明にあたる甲2に記載された発明、並びに、甲1の記載及び周知技術(甲3など)に基いて、その第二優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当するため、無効とすべきものである。

第4 無効理由1についての当審の判断

1 本件特許発明
本件特許発明(本件特許発明1?17)は、本件特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるものと認められる。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立気泡の熱硬化性フォームの製造における、34.34?74.20重量%のシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)及び25.80?65.66重量%のトランス-1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(E-HCFO-1233zd)を含む共沸混合物様組成物を含む発泡剤組成物の使用であって、前記発泡剤が150以下の地球温暖化係数(GWP)及び0.1以下のオゾン層破壊係数(ODP)を有する、使用。
【請求項2】
前記共沸混合物様組成物が40.01?57.07重量%のZ-HFO-1336mzzm及び42.93?59.99重量%のE-HCFO-1233zdを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記共沸混合物様組成物が34.34?74.20重量%のZ-HFO-1336mzzm及び25.80?65.66重量%のE-HCFO-1233zdからなる、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記共沸混合物様組成物が40.01?57.07重量%のZ-HFO-1336mzzm及び42.93?59.99重量%のE-HCFO-1233zdからなる、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記発泡剤が50以下のGWPを有する、請求項1?4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記フォームが硬質フォームである、請求項1?5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記フォームがポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームである、請求項1?6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記フォームが断熱フォームである、請求項1?7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記フォームが低温用途における使用のためのフォームである、請求項1?8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記フォームがブロック、スラブ、積層体、現場注入パネル、噴霧適用フォームまたは泡の形態である、請求項1?9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記フォームが噴霧適用フォームである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記フォームが0.5lb/ft^(3)?40lb/ft^(3)の密度を有する、請求項1?11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記フォームが電気器具用フォームである、請求項1?12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記電気器具用フォームが冷蔵庫用フォーム、冷凍庫用フォームまたは冷蔵庫/冷凍庫用フォームである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
少なくとも1種のフォーム形成成分及び請求項1?5のいずれかに記載の共沸混合物様組成物を含む発泡剤を含むフォームを形成するために発泡性である発泡性組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種のフォーム形成成分がポリオールまたはポリオールの混合物を含む、請求項15に記載の発泡性組成物。
【請求項17】
請求項1?5のいずれかに記載の共沸混合物様組成物を含む発泡剤を発泡性組成物に加えることを含むフォームを形成する方法。」

2 本件特許に係る優先権主張の効果について
本件特許の第一優先日に係る優先権主張は、米国仮出願(出願番号:61/287,041、出願日:2009年(平成21年)12月16日)に基づくものであるところ、当該米国仮出願の明細書(甲12)には、本件特許明細書の【0061】【表4】に対応する表をはじめ、本件特許発明に係る「34.34?74.20重量%のシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)及び25.80?65.66重量%のトランス-1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(E-HCFO-1233zd)を含む共沸混合物様組成物を含む発泡剤組成物」に関係する記載は見当たらない。
したがって、本件特許に対して、当該第一優先日に係る優先権主張の効果を認めることはできない。
よって、本件特許発明の特許性(進歩性)の判断は、第二優先日である2010年(平成22年)12月14日を基準として行うこととする(無効理由2においても同様)。
なお、当該第二優先日を基準とすることについて、当事者間に争いはない。

3 両当事者から提出された各書証の記載事項
(1) 甲1の記載事項
甲1には、日本語訳にして、以下の記載がある(日本語訳は請求人によるもの。以下同じ。)。
ア 第1頁下から14?7行
「HFCは、成層圏オゾンの破壊に関与しないが、それらが「温室効果」に関与するために、すなわち、それらが地球温暖化に関与するために懸念されている。それらが地球温暖化に関与するため、HFCは監視下に置かれ、それらの広範囲に及ぶ使用もまた将来制限される可能性がある。このように、成層圏オゾンの破壊に関与せず、かつ、低い地球温暖化係数(GWP)もまた有する組成物が必要とされている。1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(CF_(3)CH=CHCF_(3)、FC-1336mzz、FO-1336mzz)などの、特定のハイドロフルオロオレフィンは両方の目標を達成すると考えられる。」
イ 第1頁下から3行?第2頁第3行
「本開示は、(a)Z-FO-1336mzzと、(b)エタノール、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、メタノール、E-1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、酢酸メチル、アセトン、クロロホルム、n-ヘキサンおよび1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される成分とから本質的になる組成物であって、前記成分がZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと共沸混合物様組み合わせを形成するのに有効な量で存在する組成物を提供する。」
ウ 第3頁第4?6行
「図10-図10は、Z-FO-1336mzzと1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとから本質的になる共沸混合物様組成物の約24.7℃の温度でのグラフ図である。」
エ 第3頁第8?13行
「多くの用途で、純粋な単一成分または共沸もしくは共沸混合物様混合物の使用が望ましい。例えば、発泡剤組成物(発泡体膨張剤または発泡体膨張組成物としても知られる)が純粋な単一成分または共沸もしくは共沸混合物様混合物でないとき、組成が発泡体形成プロセスでのその適用の間に変わる可能性がある。かかる組成の変化は、加工にひどい悪影響を及ぼすかまたはその適用で不十分な性能をもたらし得る。」
オ 第3頁第21?24行
「従って、これらのおよび他の用途において共沸もしくは共沸混合物様混合物、例えば、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-CF_(3)CH=CHCF_(3)、Z-FO-1336mzz、Z-FC-1336mzz、Z-HFO-1336mzz)を含有する共沸もしくは共沸混合物様混合物を使用することが必要とされている。」
カ 第3頁第27?29行
「FO-1336mzzは、2つの立体配置異性体、EまたはZの1つとして存在してもよい。FO-1336mzzは、本明細書で用いるところでは、異性体、Z-FO-1336mzzまたはE-FO-1336mzz、ならびにかかる異性体の任意の組み合わせまたは混合物を意味する。」
キ 第4頁第14?25行
「Z-FO-1336mzzは公知の化合物であり、その製造方法は、例えば、全体を参照により本明細書によって援用される、米国特許出願公開第2008-0269532 A1号明細書にSwearingenによって開示されている。
本出願には、Z-FO-1336mzzを含む共沸もしくは共沸混合物様組成物が含まれる。
本発明の幾つかの実施形態では、組成物は、(a)Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、(b)エタノール、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、メタノール、E-1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、酢酸メチル、アセトン、クロロホルム、n-ヘキサンおよび1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される成分とから本質的になり、ここで、前記成分は、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと共沸混合物様組み合わせを形成するのに有効な量で存在する。」
ク 第5頁下から11行?第6頁第2行
「本発明の幾つかの実施形態では、この成分は1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであり、組成物は、(a)Z-FO-1336mzzと、(b)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとから本質的になり、ここで、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、Z-FO-1336mzzと共沸混合物様混合物を形成するのに有効な量で存在する。
有効な量とは、Z-FO-1336mzzと組み合わせられたときに、共沸もしくは共沸混合物様混合物の形成をもたらす量を意味する。この定義には、共沸もしくは共沸混合物様組成物が異なる圧力で、しかし可能性がある異なる沸点で存在し続ける限り、その量が組成物に加えられる圧力に依存して変わってもよい、各成分の量が含まれる。それ故、有効な量には、重量またはモル百分率で表され得る、本明細書に記載されるもの以外の温度または圧力で共沸もしくは共沸混合物様組成物を形成する本発明の組成物の各成分の量が含まれる。」
ケ 第6頁第3?33行
「当該技術分野で認められているように、共沸組成物は、2つ以上の異なる成分の混合剤であり、それは、所与の圧力下で液体形態にあるとき、実質的に一定温度で沸騰し、その温度は、個々の成分の沸騰温度より高いかまたは低くてもよく、かつ、それは沸騰中の全体液体組成と本質的に同一である蒸気組成を提供するであろう(例えば、M.F.Doherty and M.F.Malone、Conceptual Design of Distillation Systems、McGraw-Hill(New York)、2001年、185?186、351?359頁を参照されたい)。
従って、共沸組成物の本質的な特徴は、所与の圧力で、液体組成物の沸点が固定されていること、かつ、沸騰中の組成物の上方の蒸気の組成が本質的に、沸騰中の全体液体組成物の組成である(すなわち、液体組成物の成分の分留が全く起こらない)ことである。共沸組成物が異なる圧力で沸騰にかけられるときに、共沸組成物の各成分の沸点および重量百分率の両方が変わる場合があることもまた当該技術分野で認められている。従って、共沸組成物は、成分間に存在する特有の関係の観点からまたは成分の組成範囲の観点から、または指定圧力での固定沸点によって特徴付けられる組成物の各成分の正確な重量百分率の観点から定義されてもよい。
本発明の目的のためには、共沸混合物様組成物は、共沸組成物のように挙動する(すなわち、定沸点特性または沸騰もしくは蒸発時に分留しない傾向を有する)組成物を意味する。それ故に、沸騰もしくは蒸発中に、気液組成は、それらが仮に変化する場合でも、最小限の程度または無視できる程度しか変化しない。これは、沸騰もしくは蒸発中に、気液組成がかなりの程度変化する非共沸混合物様組成物と対比されるべきである。」
コ 第6頁下から7行?第7頁第17行
「あるシステムの相対揮発度が1.0に近づくときに、そのシステムが共沸もしくは共沸混合物様組成物を形成すると定義されることはこの分野で認められている。相対揮発度は、成分1の揮発度の成分2の揮発度に対する比である。蒸気中のある成分のモル分率の液体中のそれに対する比がその成分の揮発度である。
任意の2つの化合物の相対揮発度を測定するために、PTx法として知られる方法を用いることができる。この手順では、既知容量のセルにおける全絶対圧力が2つの化合物の様々な組成について一定温度で測定される。PTx法の使用は、参照により本明細書によって援用される、Harold R.Null著、「Phase Equilibrium in Process Design」、Wiley-Interscience Publisher、1970年、124?126頁に詳細に記載されている。
これらの測定値は、液相非理想を表すための、非ランダム2液体(Non-Random、Two-Liquid)(NRTL)方程式などの、活量係数方程式モデルを用いることによってPTxセルにおける平衡気液組成へ換算することができる。NRTL方程式などの、活量係数方程式の使用は、Reid、Prausnitz 及び Poling著、「The Properties of Gases and Liquids」、第4版、McGraw Hill、241?387頁に、ならびにStanley M.Walas著、「Phase Equilibria in Chemical Engineering」、Butterworth Publishers、1985年、165?244頁に詳細に記載されている。前述の両参考文献は参照により本明細書によって援用される。いかなる理論または説明にも制約されることなく、PTxセルデータと一緒に、NRTL方程式は本発明のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン含有組成物の相対揮発度を十分に予測することができ、かつ、蒸留塔などの多段階分離設備におけるこれらの混合物の挙動をそれ故に予測することができると考えられる。」
サ 第21頁第3行?第22頁のTable26(表26)
「Z-FO-1336mzzと1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(CF_(3)CH=CHCl,HCFO-1233zd)とは共沸混合物様組成物を形成することが実験によって見いだされた。この2成分ペアの相対揮発度を測定するために、上記のPTx法が用いられた。既知容量のPTxセルにおける全絶対圧力が様々な2成分組成について一定温度で測定された。これらの測定値は次に、NRTL方程式を用いてセルにおける平衡気液組成に変換された。
Z-FO-1336mzz/HCFO-1233zd混合物についてPTxセルにおける測定蒸気圧対組成が図10に示され、図10は、約24.7℃および約17.5psia(121kPa)で約1?約35モル%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと約99?約65モル%のHCFO-1233zdとから本質的になる共沸混合物様組成物の形成をグラフで例示する。図10はまた、約24.7℃および約11psia(76kPa)で約94?約99モル%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと約6?約1モル%のHCFO-1233zdとから本質的になる共沸混合物様組成物の形成をグラフで例示する。
共沸混合物様組成物の幾つかの実施形態を表25に示す。共沸混合物様組成物の追加の実施形態を表26に示す。


シ 第22頁下から17?4行
「本発明の共沸もしくは共沸混合物様組成物は、エアゾール噴射剤、冷媒、溶媒、クリーニング剤、熱可塑性および熱硬化性発泡体用の発泡剤(発泡体膨張剤)、熱媒、ガス状誘電体、消火剤および鎮火剤、動力サイクル作動流体、重合媒体、微粒子除去流体、キャリア流体、バフ研磨剤、および置換乾燥剤としてのそれらの使用をはじめとする、広範囲の用途に使用することができる。
本発明の一実施形態は、熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造方法を提供する。本方法は、共沸もしくは共沸混合物様組成物を発泡剤として使用する工程を含み、ここで、前記共沸もしくは共沸混合物様組成物は、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと;エタノール、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、メタノール、E-1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、酢酸メチル、アセトン、クロロホルム、n-ヘキサンおよび1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される成分とから本質的になる。」
ス 第24頁、請求項1
「1.
(a)Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、
(b)エタノール、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、メタノール、E-1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、酢酸メチル、アセトン、クロロホルム、n-ヘキサンおよび1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される成分とから本質的になる組成物であって、前記成分が前記Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと共沸混合物様組み合わせを形成するのに有効な量で存在する組成物。」
セ 第24頁、請求項3
「3.
請求項1の前記共沸混合物様組成物を発泡剤として使用する工程を含む熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造方法。」
ソ FIG.10(図10)



(2) 甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。
ア 第2頁、請求項1
「ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体を約70重量%以上含む、熱硬化性発泡体用のポリマー発泡剤組成物。」
イ 第2頁、請求項2
「前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdが、トランス立体異性体を約90重量%以上含む、請求項1に記載のポリマー発泡剤組成物。」
ウ 第2頁、請求項3
「前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdが、トランス立体異性体を約97重量%以上含む、請求項1に記載のポリマー発泡剤組成物。」
エ 第2頁、請求項6
「ヒドロフルオロオレフィンをさらに含む、請求項1に記載のポリマー発泡剤組成物。」
オ 第2頁、請求項7
「前記ヒドロフルオロオレフィンが、テトラフルオロプロペン(HFO1234);トリフルオロプロペン(HFO1243);テトラフルオロブテン異性体(HFO1354);ペンタフルオロブテン異性体(HFO1345);ヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336);ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327);ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447);オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438);およびノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)からなる群から選択される、請求項6に記載のポリマー発泡剤組成物。」
カ 第2頁、請求項11
「ポリマー発泡体成分と、ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体を約70重量%以上含む発泡体用発泡剤とを混合することを含む、ポリウレタン発泡体を発泡する方法。」
キ 第2頁、請求項12
「前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdが、トランス立体異性体を約90重量%以上含む、請求項11に記載の方法。」
ク 第2?3頁、請求項13
「前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdが、トランス立体異性体を約97重量%以上含む、請求項11に記載の方法。」
ケ 第3頁、請求項16
「前記発泡体用発泡剤が、ヒドロフルオロオレフィンをさらに含む、請求項11に記載の方法。」
コ 第3頁、請求項17
「前記ヒドロフルオロオレフィンが、テトラフルオロプロペン(HFO1234);トリフルオロプロペン(HFO1243);テトラフルオロブテン異性体(HFO1354);ペンタフルオロブテン異性体(HFO1345);ヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336);ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327);ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447);オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438);およびノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。」
サ 段落0001
「本発明は、熱硬化性発泡体用の発泡剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、熱硬化性発泡体の製造におけるヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)HCFO-1233zdの単独での、または組み合わせての、発泡剤としての使用に関する。本発明のHCFO-1233zdは主にトランス異性体である。」
シ 段落0004
「本発明の目的は、低いまたはゼロのオゾン層破壊係数、より低い地球温暖化係数の要求を満たし、かつ低い毒性を有する固有の特徴を提供する熱硬化性発泡体用の発泡剤としての役割を果たすことができる新規な組成物を提供することである。」
ス 段落0005?0006
「本発明は、オゾン層破壊がごくわずか(低いまたはゼロ)であり、かつGWPが低い、不飽和ハロゲン化ヒドロオレフィンをベースとする発泡剤の使用に関する。この発泡剤は、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を単独で、またはヒドロフルオロオレフィン(HFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル/ジエーテルまたは二酸化炭素などの組み合わせで、含む。本発明のHCFO-1233zdは主に、HCFO-1233zdのトランス異性体である。
トランス(E)およびシス(Z)異性体を示す:
【化1】


セ 段落0007
「ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)HCFO-1233が、低地球温暖化係数および低オゾン層破壊値を示す発泡剤として提案されている。低地球温暖化係数および低オゾン層破壊値は、ヒドロハロオレフィンが大気中で分解した結果である。」
ソ 段落0008
「単独での、またはHFOと組み合わせての、ヒドロクロロフルオロオレフィンHCFO-1233zdの主にトランス異性体は、ポリオール混合物中で混合されることによって熱硬化性発泡体用の発泡剤として使用することができる。得られた生成物は、低下した密度および向上したKファクターなどの優れた品質を示す。この発泡剤は容易に熱硬化性ポリマーに溶解し、許容可能な発泡体を製造するのに十分な可塑化度を提供する。HCFO1233zdは、周囲温度で液体であり、そのため、特にポリウレタン発泡体に対して様々な産業によって望まれているように、容易に取り扱うことが可能となる。好ましいHFO成分は一般に、炭素3または4個を含有し、限定されないが、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)などのペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)などのテトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン(1243zf)などのトリフルオロプロペンが挙げられる。本発明の好ましい実施形態は、標準沸点約60℃未満を有する不飽和ハロゲン化ヒドロオレフィンの発泡剤組成物である。」
タ 段落0009
「本発明の好ましい発泡剤組成物、単独での、または組み合わせての、HCFO-1233zd、主にトランス異性体は、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレート発泡体の製造で使用されるポリオール混合物への優れた溶解性を示す。本発明のHCFO-1233zd成分の大部分はトランス異性体である。このトランス異性体は、AMES試験においてシス異性体よりも遺伝毒性が極めて低いことが発見された。HCFO-1233zdのトランスおよびシス異性体の好ましい割合は、組み合わせの中でシス異性体約30重量%未満、好ましくはシス異性体約10%未満である。最も好ましい割合は、シス異性体約3%未満である。好ましい発泡剤の組み合わせによって、望ましいレベルの断熱値を有する発泡体が生成される。」
チ 段落0010
「本発明のHCFO-1233zdは、限定されないが:(a)限定されないが、ジフルオロメタン(HFC32);1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC125);1,1,1-トリフルオロエタン(HFC143a);1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134);1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a);1,1-ジフルオロエタン(HFC152a);1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea);1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa);1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)および1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC4310mee)などのヒドロフルオロカーボン、(b)限定されないが、テトラフルオロプロペン(HFO1234)、トリフルオロプロペン(HFO1243)、すべてのテトラフルオロブテン異性体(HFO1354)、すべてのペンタフルオロブテン異性体(HFO1345)、すべてのヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)、すべてのヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327)、すべてのヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)、すべてのオクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)、すべてのノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)などのヒドロフルオロオレフィン、(c)限定されないが、ペンタン異性体、ブタン異性体などの炭化水素、(d)C1?C5アルコール、C1?C4アルデヒド、C1?C4ケトン、C1?C4エーテルおよびジエーテルおよび二酸化炭素、(e)2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)およびジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)などのHCFOなど、他の発泡剤と組み合わせて使用してもよい。」
ツ 段落0011
「本発明の発泡性組成物は一般に、気泡構造を一般に有する発泡体を形成することができる1種または複数種の成分と、発泡剤とを、本発明に従って通常併せて含有する。特定の実施形態において、その1種または複数種の成分は、発泡体を形成することができる熱硬化性組成物および/または発泡性組成物を含む。熱硬化性組成物の例としては、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレート発泡体組成物、さらにフェノール樹脂発泡体組成物が挙げられる。かかる熱硬化性発泡体の実施形態において、本発明の組成物のうちの1種または複数種は、発泡性組成物において発泡剤として、または発泡剤の一部として、あるいは適切な条件下で反応かつ/または発泡して発泡体または気泡構造を形成することができる成分のうちの1種または複数種を含有することが好ましい2成分以上の発泡性組成物の1成分として含まれる。」
テ 段落0012
「本発明は、本発明の組成物を含む発泡剤を含有するポリマー発泡体配合物から製造される発泡体、好ましくは独立気泡発泡体にも関する。さらに他の実施形態において、本発明は、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレート発泡体、好ましくは低密度発泡体、軟質または硬質発泡体などの熱硬化性発泡体を含む発泡性組成物を提供する。」
ト 段落0013
「本発明の発泡剤の組み合わせが形成される、かつ/または発泡性組成物に添加される順序または方法は一般に、本発明の操作性に影響しないことは当業者によって理解されよう。例えば、ポリウレタン発泡体の場合には、発泡剤の組み合わせの種々の成分、さらには本発明の組成物の成分が、発泡装置に導入する前に混合されないことが可能であり、または発泡装置の同一位置に成分が添加されないことがさらに可能である。したがって、特定の実施形態において、成分が発泡装置内で互いに合わさることを見越して、発泡剤の組み合わせの1つまたは複数の成分をブレンダーに導入し、かつ/またはこの方法でより有効に操作することが望ましい。しかしながら、特定の実施形態では、発泡剤の組み合わせの2種類以上の成分が予め合わせられ、直接、または次いで発泡性組成物の他の成分にさらに添加されるプレミックスの一部として、発泡性組成物に共に導入される。」
ナ 段落0014?0017
「実施例1
試験した配合物(すべて、ROHに関してISO指数114を有した)はそれぞれ、ルビネート(Rubinate)M(Huntsmanから市販のポリマーメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI));ジェフォール(Jeffol)R-425-X(Huntsmanから市販のポリオール);ボラノール(Voranol)490(Dow Chemicalから市販のポリオール)、テレート(Terate)2541(Invistaから市販のポリオール)を含有した。アンチブレイズ(Antiblaze)80は、Rhodiaから市販の難燃剤であり;テゴスターブ(Tegostab)B8404は、Goldschmidt Chemical Corporationから市販の界面活性剤である。ポリキャット(Polycat)8および5(ペンタメチルジエチレントリアミン、PMDETA)はAir Productsから市販されている。総発泡レベルは24.5mls/gである。表1に試験した配合物の特性をまとめる。

A側(MDI)およびB側(ポリオール、界面活性剤、触媒、発泡剤、および添加剤の混合物)をハンドミキサーで混合し、容器に分配して、フリーライズ(free rise)発泡体を形成した。フリーライズ発泡体を製造する場合、分配された材料を開放容器内で発泡させた。得られた発泡体は、ゲル化時間26秒、指触乾燥時間41秒、フリーライズ密度1.69lb(s)/ft^(3)(lb/ft^(3))を有した。成形発泡体を製造する場合、分配された材料を密閉金型内で発泡させた。発泡体を取り出す前の数分間、金型を密閉しておいた。得られた発泡体のKファクター測定(ASTM C518)を10?130°Fで行った。帯鋸で発泡体スキンを除去して24時間以内に初期Kファクターが測定される。Kファクターが低くなると、断熱値が良くなることが示されている。その結果を表2にまとめる。


(3) 甲3の記載事項
甲3には、日本語訳にして、以下の記載がある。
ア 第1頁第24行?第2頁第16行
「低密度硬質ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体として知られる種類の発泡体は、屋根用システム、建築用パネル、建築用囲い断熱材、冷蔵庫及び冷凍庫を含む様々な断熱用途に有用である。硬質ポリウレタン発泡体の大規模な商業的用途において重要なファクターは、諸性質をバランスよく提供する能力であった。硬質ポリウレタン及びポリイソシアヌレート発泡体は、顕著な耐熱性、すぐれた耐火性、及び適度に低い密度ですぐれた構造的性質をもたらすことが知られている。発泡体業界は、加工条件での使用が容易であることから、液体フルオロカーボン発泡剤を歴史的に使用してきた。フルオロカーボン類は、それらの揮発性により発泡剤として作用するばかりでなく、硬質発泡体の独立気泡構造に封入され、あるいは取り込まれて、硬質ウレタン発泡体の低い熱伝導性に大いに貢献する。フルオロカーボンを好ましい商業的な膨張剤又は発泡剤として断熱発泡体用に使用することは、製造される発泡体に伴って得られるk-係数にある程度基づいている。k-係数は、材料の2つの表面を垂直に横切って1℃の差がある場合の1時間で1インチ厚さの均質材料1平方フィートを伝導することによる熱エネルギー伝達速度として定義される。独立気泡ポリウレタン型発泡体の有用性は、それらの断熱性にある程度基づくので、より低いk-係数発泡体をもたらす材料を特定するのが好都合である。」
イ 第3頁第10?21行
「ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体用成分を予備ブレンド配合物の形で提供することは多くの用途において好都合である。最も一般的には、発泡体配合物は2つの成分に予備ブレンドされる。ポリイソシアネート、及び、任意成分であるイソシアネート適合性原料は、一般に「A」成分と呼ばれる第1成分を構成する。ポリオール又はポリオール混合物、界面活性剤、触媒、発泡剤、及び他のイソシアネート反応性及び非反応性成分は、一般に「B」成分と呼ばれる第2成分を構成する。従って、ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体は、A及びB副成分を、少量調製のためのハンドミックス、及び好ましくは機械混合方法のいずれかによって混合して、ブロック(blocks)、スラブ(slabs)、積層体(laminates)、現場注入パネル(pir-in-place panels)等、噴霧適用フォーム(spray applied foams),泡(froths)等を形成することにより容易に製造される。」
ウ 第6頁第1?13行
「好ましいヒドロハロオレフィンは、好ましくは150以下、より好ましくは100以下、さらにより好ましくは75以下の地球温暖化係数(GWP)を有する。本明細書中に使用される「GWP」は「オゾン破壊の科学的評価、2002年、世界気象協会の世界的オゾン調査及び監視プロジェクトの報告」(参照することによってここに記載されたものとする)中に規定されているように、二酸化炭素の地球温暖化係数に対して、100年の対象期間にわたって測定される。好ましいヒドロハロオレフィンのオゾン削減ポテンシャル(ODP)は、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下、さらにより好ましくはほぼゼロである。本明細書中に使用される「ODP」は「オゾン破壊の科学的評価、2002年、世界気象協会の世界的オゾン調査及び監視プロジェクトの報告」(参照することによって本明細書中に援用されるものとする)中に規定されているとおりである。」
エ 第16頁第17?20行
「製造されるポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体の密度は、約0.5?約60ポンド/立方フィート、好ましくは約1.0?約20.0ポンド/立方フィート、最も好ましくは約1.5?約6.0ポンド/立方フィートの範囲を変動することが可能である。」
(4) 甲4の記載事項
甲4には、日本語訳にして、以下の記載がある。
ア 第1頁第27行?第2頁第4行
「本出願人らは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(「HFO-1233zd」)を、C1?C3アルコール;C5?C6炭化水素;シクロペンテン;1-クロロプロパン、2-クロロプロパンおよび1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンから選択されるハロゲン化炭化水素;水;ならびに場合によって、ニトロメタンからなる群から選択される第2の成分と混合すると、共沸混合物様組成物が形成されることを発見した。本発明の好ましい共沸混合物様混合物は、冷媒としての用途、断熱フォームの製造における発泡剤としての用途、ならびにエアゾール剤および他の噴霧可能な組成物におけるものを含め、多くの洗浄および他の用途の溶媒としての用途を含む、多くの用途にとって特に望ましい特徴を示す。特に、本出願人らは、これらの組成物が、相対的に低い地球温暖化係数(「GWPs」)、好ましくは約1000未満、より好ましくは約500未満、さらに好ましくは約150未満の地球温暖化係数を示す傾向があることを認識した。」
イ 第5頁第17?32行
「同様に参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第0 974 571 A2号公報は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)を、高温で気相中、クロム系触媒と接触させることによって、または液相中でKOH、NaOH、Ca(OH)2またはMg(OH)2のアルコール溶液と接触させることによって、1,1,1,3-クロロトリフルオロプロペンを調製することを開示している。最終生成物はおよそトランス異性体90重量%およびシス異性体10重量%である。好ましくは、シス異性体はトランス体から実質的に分離され、その結果として得られる好ましい1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの形態はよりシス異性体に富む。トランス異性体の沸点が約20℃であるのとは対照的に、シス異性体は約40℃の沸点を有するので、この2種は、当業界で公知の蒸留法のいずれによっても容易に分離することができる。しかしながら、好ましい方法はバッチ蒸留である。この方法によると、シスおよびトランスの1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの混合物は再沸騰器(リボイラー)に装填される。トランス異性体は、再沸騰器にシス異性体を残して、塔頂留出物中に除去される。蒸留は連続蒸留においても運転することができ、ここではトランス異性体が塔頂留出物中に除去され、シス異性体は底部に除去される。この蒸留工程は、約99.9+%の純粋なトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび99.9+%の純粋なシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを与えることができる。」
ウ 第19頁第3?16行
「熱硬化性発泡体に関して、一般に、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、およびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない、いかなる熱硬化性ポリマーを使用することができる。一般に、これらの発泡体(フォーム)は、本発明の共沸混合物様組成物を含む1種または複数の発泡剤、および場合によって、気泡安定剤、溶解性強化剤、触媒、難燃剤、補助発泡剤、不活性充填剤、染料などを含むがこれらに限定されない他の添加剤の存在下で、化学的に反応性である成分と一緒にすることによって製造される。
本発明に記載される組成物のような共沸混合物を使用するポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの調製に関して、当業界で周知の方法のいずれかを使用することができ、SaundersおよびFrisch,Volumes I and II Polyurethanes Chemistry and Technology(ポリウレタンの化学と技術)(1962)John Wiley and Sons,New York,N.Y.を参照されたい。一般に、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームは、イソシアネート、ポリオールまたはポリオールの混合物、発泡剤または発泡剤の混合物、ならびに触媒、界面活性剤、および場合によって、難燃剤、着色剤、または他の添加剤などの他の物質を組み合わせることによって調製される。」
エ 第19頁第17?26行
「多くの用途で、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの成分を予備ブレンドした配合物の形態で提供することが好都合である。最も一般的には、フォーム(発泡体)配合物は、2つの成分に予備ブレンドされる。第1の成分は、イソシアネート、ならびに場合によって、ある種の界面活性剤および発泡剤を含み、一般に「A」成分と称される。第2の成分は、ポリオールまたはポリオール混合物、界面活性剤、触媒、発泡剤、難燃剤および他のイソシアネートと反応する成分を含み、一般に「B」成分と称される。したがって、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームは、小規模の調製用においては手混合によって、または好ましくは機械混合技法によって、A側およびB側成分を一緒にすることによって容易に調製され、ブロック(blocks)、スラブ(slabs)、積層体(laminates)、現場注入パネル(pour-in-place panels)および他の品目、噴霧適用フォーム(spray applied foams)、泡(froths)、などを形成する。」
オ 第21頁第32行?第22頁第20行
「製造されるポリウレタンフォームの密度は、約0.5ポンド/立方フィートから約40ポンド/立方フィートまで、好ましくは約1.0ポンド/立方フィートから約20.0ポンド/立方フィートまで、最も好ましくは約1.5ポンド/立方フィートから約6.0ポンド/立方フィートまでの間で変化し得る。得られる密度は、A成分および/またはB成分中に存在する、あるいはフォームの製造時に加えられる、本発明において開示される発泡剤または発泡剤混合物の量の関数である。
発泡体(フォーム)および発泡性組成物:
本発明のある特定の実施形態は、ポリウレタン系、ポリイソシアヌレート系またはフェノール樹脂系の気泡壁と、少なくとも一部の気泡内に配置される気泡ガスとを含む発泡体(フォーム)を含み、ここで、当該気泡ガスは本明細書に記載される共沸混合物様混合物を含む。ある特定の実施形態において、フォームは押出し加工した熱可塑性発泡体である。好ましい発泡体(フォーム)は、約0.5ポンド/立方フィートから約60ポンド/立方フィート、好ましくは約1.0から20.0ポンド/立方フィート、最も好ましくは約1.5から6.0ポンド/立方フィートの範囲の密度を有する。フォーム(発泡体)密度は、発泡剤または発泡剤混合物(すなわち共沸混合物様混合物と、二酸化炭素、化学発泡剤または他の共発泡剤などの補助発泡剤)の、溶融ポリマー中に存在する量の関数である。これらのフォーム(発泡体)は一般に硬質であるが、末端使用の要件に合わせて様々な等級の柔軟性に製造することができる。フォーム(発泡体)には独立気泡構造(closed cell structure)、連続(連通)気泡構造(open cell structure)、または連続および独立気泡構造の混合物があり得るが、独立気泡構造が好ましい。これらのフォームは、断熱、浮遊(flotation)、包装、空隙充填、工芸および装飾、ならびに衝撃吸収を含む様々な周知の用途に使用されるが、これらに限定されない。」
カ 第28頁のTABLE6(表6)?第39頁のTABLE16(表16)
同表には、「トランス-HFO-1233zd」の常圧(周囲圧力)における沸点が、17.3?18.1℃の範囲にあるデータ(表6?16のトランス-HFO-1233zd100重量%での沸点)が具体的に示されている。
キ 第39頁のTABLE17(表17)?第43頁のTABLE21(表21)
同表には、「シス-HFO-1233zd」の常圧(周囲圧力)における沸点が、37.5?38.1℃の範囲にあるデータ(表17?21のシス-HFO-1233zd100重量%での沸点)が具体的に示されている。
(5) 甲5の記載事項
甲5には、以下の記載がある。
ア 請求項1
「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなるプラスチック発泡体製造用発泡剤。」
イ 段落0008
「本発明は、オゾン層を破壊する危険性がなく、不燃性であり、発泡体原料との相溶性に優れ、しかも得られる発泡体に優れた断熱性、機械的強度などを付与し得るプラスチック発泡体製造用発泡剤、および該発泡剤を用いたプラスチック発泡体の製造方法を提供することを主な目的とする。」
ウ 段落0009?0011
「発明者は、従来技術における上記の如き問題点に鑑みて研究を重ねた結果、シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを発泡剤として用いることにより、上記目的を達成し得るを見出した。
即ち、本発明は、シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなるプラスチック発泡体製造用発泡剤を提供するものである。
また、本発明は、発泡剤としてシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(cis-CF_(3) CH=CHCF_(3) ;以下、単にHFC-1336と記載するが、この名称は、この命名法において本来含まれ得る他の異性体を含まないものとする。)を用いることを特徴とするプラスチック発泡体の製造方法を提供するものである。」
エ 段落0013?0014
「HFC-1336の主な物性を第1表に示す。
第 1 表
分子量 164
沸点 33℃
オゾン破壊係数 0
本発明の発泡剤は、単独で使用しても良く、或いは他の発泡剤または水と併用しても良い。併用し得る他の発泡剤としては、例えば、CFC-11、CFC-12およびその他の低沸点ハロゲン化炭化水素;n-ペンタン,イソペンタンなどの低沸点炭化水素;不活性ガスなどが挙げられる。」
オ 段落0035?0040
「本発明によれば、以下のような効果が達成される。
(1)本発明で使用するHFC-1336は、オゾン破壊係数が0であり、オゾン層を破壊する危険性はない。
(2)本発明の発泡剤は、不燃性且つ低毒性であるため、作業上安全である。
(3)本発明の発泡剤は、ポリオールとの相溶性が良好であるため、ウレタン発泡体を製造するのに極めて適している。
(4)本発明の発泡剤は、貯蔵安定性が良好である。
(5)本発明発泡剤を用いて得られるプラスチック発泡体は、独立気泡からなっているため、断熱性、寸法安定性、圧縮強度、外観、均一性などに優れている。」
カ 段落0047?0052
「【実施例2】
*発泡体の製造
(1)ポリオールBを用いた発泡体の製造ポリオールB 100g、シリコーン系整泡剤2g、水2g、触媒としてのN,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン2gおよび本発明による発泡剤としてのHFC-1336 16gを混合し、激しく攪拌した。この攪拌混合物と粗製ポリメチレンポリフェニルイソシアネート148gとを混合して発泡させ、硬質ポリウレタン発泡体を得た。
発泡時および発泡体の物理的データを、以下の第3-A表に示す。
第3-A表
物理的性質 HFC-1336
クリーム時間(秒) 8
ゲル時間(秒) 60
自由総密度(kg/m^(3) ) 26
圧縮強度(kg/cm^(2) ) 1.38
寸法安定性(-20℃、24時間(Δ%)) -0.20
熱伝導率(kcal/m・hr・℃) 0.0185
(2)ポリオールCを用いた発泡体の製造
ポリオールC 100g、シリコーン系整泡剤2g、水0.2g、触媒としてのジエチルエタノールアミン1.5g、ジブチル錫ジラウレート0.15gおよび本発明のHFC-1336 16gを混合し、激しく攪拌した。この攪拌混合物と粗製トリレンジイソシアネート96gと混合、発泡し、硬質ポリウレタン発泡体を得た。
得られた発泡体の物理的データを、以下の第3-B表に示す。
第3-B表
物理的性質 HFC-1336
密度(kg/m^(3) ) 34
圧縮強度(kg/cm^(2) )
平行 3.15
垂直 1.15
寸法安定性(Δ%)
110℃、7日間 +1.4
70℃、95%RH、7日間 +7.5
-20℃、7日間 -0.3
なお、本発明発泡剤の評価は、JIS A 9514に規定された方法に準じて行なった。
第3-A表および第3-B表に示す結果から、本発明による発泡剤を用いることにより、断熱性、圧縮強度および寸法安定性に優れたプラスチック発泡体が得られることが確認された。」
(6) 甲6の記載事項
甲6には、以下の記載がある。
ア 第105頁右欄第3?6行
「本研究では,沸点が約15℃であるHFC-245faと沸点が近いHCFO-1233zd(E)[沸点約18℃,CAS:No.102687-65-0,trans-1-Chloro-3,3,3-trifluoro-propene]」
イ 第107頁右欄、Table3(表3)



ウ 第108頁左欄、Fig.2(図2)



(7) 甲7の記載事項
甲7には、以下の記載がある。
ア 第1358頁、「ポリウレタンフォーム」の項目
「ポリエステルまたはポリエーテル型の多価アルコールとジイソシアン酸エステルに水などの触媒の存在下で反応させると,発熱して樹脂化する.・・・見掛けの密度が0.016?0.56g・cm^(-3)程度であり,・・・その硬さによって可撓(どう)性,半硬質,硬質の3種類に分けられる.・・・硬質は,とくに軽く弾性が小さく,荷重負担能力が大きく,断熱性にもすぐれており,・・・工業用・家庭用断熱材料・・・などに広く用いられている.」
(8) 甲8の記載事項
甲8には、以下の記載がある。
ア 第1057頁右欄下から2行?第1059頁左欄第1行
「用途
省エネルギーおよび安全性の点からプラスチックフォームが断熱材および輸送時の緩衝材として急速に成長してきた.」
イ 第1058頁、表2
同表には、市販硬質プラスチックフォームの物理的性質が掲載され、市販硬質プラスチックフォームとしてフェノール樹脂が挙げられている。
(9) 甲9の記載事項
甲9には、以下の記載がある。
ア 第114頁右欄、「ケルビン温度」の項目
同項目には、ケルビン温度(K)が、セ氏温度と同じ目盛り間隔をもち、ケルビン温度から273.15を引けばセ氏温度が得られることが記載されている。
イ 第297頁左欄、「プサイ(psi)」及び「プサイア(psia)」の項目
同項目には、プサイアが絶対圧力で表したプサイであること、及び、プサイが重量ポンド毎平方インチ[lb/in^(2)]を意味することが記載されている。
ウ 第428頁、圧力換算表(一番上の表)
同表には、1重量ポンド毎平方インチ(プサイ)が、6895パスカル(Pa)[=6.895kPa]であり、0.0517mHg[=51.7mmHg]であることが表示されている。
エ 第429頁、密度換算表(一番上の表)
同表には、1ポンド毎立方フート(Lb/ft^(3))が、0.01602グラム毎立方センチメートル(g/cm^(3))であることが表示されている。
(10) 甲10の記載事項
甲10には、以下の記載がある。
ア 第101頁左欄、「E,Z命名法」の項目
「1,2-二置換オレフィンの幾何異性の表記法として,従来cis,transが用いられてきたが,これにかわる立体化学命名法.一般に,二重結合は平面構造を有しており,その平面内で,二重結合をつくる原子に結合した基のうち,順位則上位のものが二重結合をはさんで反対側に出ているとき,ドイツ語のentgegenからとってEを,同じ側に出ているものにzusammenからとってZをつける.」
イ 第323頁左欄、「幾何異性」の項目
「右の化合物(図省略)は平面分子であるが,同じ原子あるいは原子団aが,二重結合に対して同じ側に結合しているシス形と,反対側に結合しているトランス形の2種類の異性体が存在する.・・・
異なる原子あるいは原子団が二重結合に結合した場合でも,E-Z表示によれば一義的に区別できる(→E,Z命名法).」
ウ 第658頁、「順位則」の項目
「置換基の順位づけをするための規則.以下に,主な要点を記す.(1)原子番号の大きい原子は小さいものより上位である.(2)同位元素の質量数の大きいものが,小さいものより上位である.」
(11) 甲11の記載事項
甲11には、以下の記載がある。
第2条第5項
「この法律において、「温室効果ガスの総排出量」とは、温室効果ガスたる物質ごとに政令で定める方法により算出される当該物質の排出量に当該物質の地球温暖化係数(温室効果ガスたる物質ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素に係る当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき政令で定める係数をいう。)を乗じて得た量の合計量をいう。」
(12) 甲12の記載事項
甲12には、本件特許の第一優先日に係る優先権書類である米国仮出願第61/287,041号の明細書の内容が記載されている。
(13) 甲13の記載事項
甲13には、日本語訳にして、以下の記載がある。
ア 第10539頁、要約(ABSTRACT)の下から3?2行
「この研究で測定された(Z)-CF_(3)CH=CHCF_(3)の赤外吸収スペクトルは、100年の期間についての(Z)-CF_(3)CH=CHCF_(3)の地球温暖化係数(GWP)が、?9であること決定するために使用された。」
(14) 甲14の記載事項
甲14には、日本語訳にして、以下の記載がある。
ア 第47777頁、下表の右端欄第2?4行
「トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパ-1-エンのODPは、およそ0.00024?0.00034である。トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパ-1-エンのGWP(100年)は、4.7?7である。」
(15) 甲15の記載事項
甲15には、Z-HCFO-1233zdについて、日本語訳にして、以下の記載がある。
ア 第5/6頁、第28?29行
「・GWP(100年)<1
・オゾン層破壊係数=0」
(16) 甲16の記載事項
甲16には、以下の記載がある。
ア パンフレット2頁目、第1?13行
「より斬新で、独自性の高いパーソナルケア(化粧品・日用品)の開発にあたっては、汎用性の高い材料を選ぶことでその可能性を拡げることができます。ハネウェルの、画期的な次世代の革新技術であるHFO(ハイドロフルオロオレフィン)をベースとするSolstice^((R))(ソルスティス)エンハンス溶剤およびSolstice^((R))(ソルスティス)噴射剤は、不燃性(ASTM E-681による)を特徴とし、環境負荷の低減にも寄与するパーソナルケア用途向けの新しいソリューションです。」(当審注:ワープロの都合上、丸囲みのRを「(R)」と表記した。以下同じ。)
イ パンフレット4頁目、「物性・ソルスティスエンハンス(HFO-1233ZD(E))」と題した表



(17) 甲17の記載事項
甲17には、以下の記載がある。
ア 段落0161?0163
「実施例4:Z-1233zd/E-1233zd
Z-1233zd/E-1233zdの2成分系を、潜在的な共沸及び近共沸挙動について調べた。この2成分系の相対揮発度を判定するため、上記に述べたPTx法を用いた。既知の体積のPTxセル内の圧力を、異なる2成分の組成について30℃の一定温度で測定した。収集した実験データを下記表20に示す。

X_(2)=Z-1233zdの液体モル分率
Y_(2)=Z-1233zdの蒸気モル分率
P_(exp)=実験的に測定された圧力
上記の蒸気圧対Z-1233zdの液体モル分率のデータが図5にプロットされている。実験データの点は、図5では中黒の点として示されている。実線は、NRTL式を用いた泡点の予測を示す(下記参照)。破線は、予測された露点を示す。」
イ 図5



(18) 乙1の記載事項
乙1には、4種の異なる発泡剤組成物(E-HCFO-1233zd単独、Z-HFO-1336mzzm単独、Z-HFO-1336mzzm/E-HCFO-1233zd=30/70モル%の混合物、およびZ-HFO-1336mzzm/E-HCFO-1233zd=70/30モル%の混合物)から得られる熱硬化性フォームのk因子の比較データが記載されている。
(19) 乙2の記載事項
乙2には、甲2の審査過程において通知された拒絶理由通知の内容(トランス立体異性体の重量%の規定が、発泡剤組成物中の重量割合なのか、それともシス-トランス混合物中の重量割合なのか、どちらか判然としなくなっている点についての指摘)が記載されている。
(20) 乙3の記載事項
乙3には、乙2の拒絶理由通知に対して提出された意見書の内容(甲2の実施例1及び2において使用したHCFO-1233zdは、トランス異性体がいずれも75.1重量%のものであることなど)が記載されている。

4 甲1に記載された発明(甲1発明)の認定
請求人が主張する無効理由1は、甲1を主引例とするものであるから、まず、甲1に記載された発明について検討をする。
(1) 前記3(1)ス、セ(以下、「摘記事項ス」などという。他の書証の摘記事項についても同様)のとおり、甲1の特許請求の範囲1.及び3.(請求項1、3)には、次の記載がある。
・「1.
(a)Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、
(b)エタノール、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、メタノール、E-1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、酢酸メチル、アセトン、クロロホルム、n-ヘキサンおよび1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される成分とから本質的になる組成物であって、前記成分が前記Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと共沸混合物様組み合わせを形成するのに有効な量で存在する組成物。」
・「3.
請求項1の前記共沸混合物様組成物を発泡剤として使用する工程を含む熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造方法。」
したがって、甲1には、上記請求項1の共沸混合物様組成物により構成される発泡剤(発泡剤組成物)、及び、これを熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造に使用することについて記載されていることが分かる。
(2) また、甲1の摘記事項イには、次の記載がある。
・「HFCは、成層圏オゾンの破壊に関与しないが、それらが「温室効果」に関与するために、すなわち、それらが地球温暖化に関与するために懸念されている。それらが地球温暖化に関与するため、HFCは監視下に置かれ、それらの広範囲に及ぶ使用もまた将来制限される可能性がある。このように、成層圏オゾンの破壊に関与せず、かつ、低い地球温暖化係数(GWP)もまた有する組成物が必要とされている。1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(CF_(3)CH=CHCF_(3)、FC-1336mzz、FO-1336mzz)などの、特定のハイドロフルオロオレフィンは両方の目標を達成すると考えられる。」
当該記載は、前記(1)の請求項1の共沸混合物様組成物について直接記載したものではないが、当該共沸混合物様組成物においても課題とされる事項と解するのが相当である。
(3) さらに、前記請求項3に記載されたように、請求項1の共沸混合物様組成物を、発泡剤として使用し、熱可塑性または熱硬化性発泡体を製造するにあたっては、当然のことながら、発泡剤のほかに、熱可塑性または熱硬化性発泡体のベース(骨格)を形成するための発泡体形成成分が不可欠であり、当該発泡体形成成分は、発泡剤を加えて、発泡性である発泡性組成物として発泡工程に供されることになることは明らかである。
(4) そうすると、前記(1)?(3)からみて、甲1に記載された発明として、次のア?エの発明を認定することができる。
ア 発泡剤に関する発明(甲1発泡剤)
前記(1)、(2)からみて、甲1には、発泡剤に関する次の発明が記載されているといえる。
「(a)Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-FO-1336mzz)と、
(b)エタノール、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、メタノール、E-1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、酢酸メチル、アセトン、クロロホルム、n-ヘキサンおよび1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)からなる群から選択される成分とから本質的になる発泡剤組成物であって、
前記成分が前記Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-FO-1336mzz)と共沸混合物様組み合わせを形成するのに有効な量で存在し、
低い地球温暖化係数(GWP)を有し、かつ成層圏オゾンの破壊に関与しない、発泡剤組成物。」(以下、「甲1発泡剤」という。)
イ 発泡剤の使用方法に関する発明(甲1発泡剤の使用方法)
前記(1)からみて、甲1には、発泡剤の使用方法に関する次の発明が記載されているといえる。
「熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造における「甲1発泡剤」の使用。」(以下、「甲1発泡剤の使用方法」という。)
ウ 発泡体を形成するための組成物に関する発明(甲1発泡性組成物)
前記(3)からみて、甲1には、発泡体を形成するための組成物に関する次の発明が記載されているといえる。
「発泡体形成成分及び「甲1発泡剤」を含む、熱可塑性または熱硬化性発泡体を形成するために発泡性である発泡性組成物。」(以下、「甲1発泡性組成物」という。)
エ 発泡体を形成する方法に関する発明(甲1発泡体形成方法)
前記(3)からみて、甲1には、発泡体を形成する方法に関する次の発明が記載されているといえる。
「「甲1発泡剤」を発泡体形成成分に加えることを含む、熱可塑性または熱硬化性発泡体を形成する方法。」(以下、「甲1発泡体形成方法」という。)
(5) 以下では、これらの発明をまとめて「甲1発明」ということがある。また、本件特許発明の進歩性の検討においては、前記「甲1発泡剤の使用方法」、「甲1発泡性組成物」及び「甲1発泡体形成方法」を、それぞれ「本件特許発明1?14」、「本件特許発明15、16」及び「本件特許発明17」と比較することとなる。
(6) 甲1発泡剤についての請求人の主張
ア 請求人は、甲1の図10、表25及び表26に記載された共沸混合物様組成物に基づく発泡剤について、次のように認定されるべきである、と主張している(第1回口頭審理陳述要領書第42頁第3?12行)。
「(a)1?71重量%のシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)と、
(b)29?99重量%のトランス-1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(E-HCFO-1233zd)
とから本質的になる共沸混合物様組成物を含む、熱硬化性発泡体用の発泡剤組成物であって、
低い地球温暖化係数(GWP)を有し、かつ
成層圏オゾンの破壊に関与しない、発泡剤組成物。」(以下、「請求人主張の甲1発泡剤」という。)
イ そこで、甲1の図10、表25及び表26に「1?71重量%のシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)と、29?99重量%のトランス-1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(E-HCFO-1233zd)とから本質的になる共沸混合物様組成物」が記載されているか否かについて検討する(以下、「1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(HCFO-1233zd)」及び「トランス-1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(E-HCFO-1233zd)」を、単に、「HCFO-1233zd」及び「E-HCFO-1233zd」とそれぞれ記載する。)。
ウ 「E-HCFO-1233zd」は、「HCFO-1233zd」のトランス体(E体)を意味することは明らかなところ、甲1には、その図10、表25及び表26に記載された共沸混合物様組成物に含まれる「HCFO-1233zd」がトランス体(E体)であることは記載されていない。また、当該「HCFO-1233zd」にトランス体(E体)が存在することも記載されていない。
しかも、本件第二優先日当時、甲1に記載された「HCFO-1233zd」は「E-HCFO-1233zd」であると、直ちに当業者が把握するに足りる技術常識は存在しない。
したがって、甲1の記載からは、上記共沸混合物様組成物に含まれる「HCFO-1233zd」が「E-HCFO-1233zd」であるかどうかは不明というほかない。
エ この点に関し、請求人は、前記図10、表25及び表26記載の共沸混合物様組成物の「HCFO-1233zd」は、図10の「Z-HFO-1336mzzm」のモル分率がゼロに対応する蒸気圧(すなわち、当該「HCFO-1233zd」単独の蒸気圧)から判断して、純粋な「E-HCFO-1233zd」である旨主張し、その証拠として、甲6、甲16及び甲17を提出している。
オ しかしながら、「E-HCFO-1233zd」であるかどうかが、その蒸気圧を知ることにより特定でき、甲1の図10から、甲1に記載された「HCFO-1233zd」の「24.7℃における蒸気圧が約18.6psia」であることがいえたとしても、請求人の提出したいずれの証拠にも、「E-HCFO-1233zd」について、「24.7℃における蒸気圧が約18.6psia」であることを認めるに足りる的確な証拠は見当たらない。
すなわち、甲6には、「E-HCFO-1233zd」の飽和蒸気圧について、300K(26.85℃)における蒸気圧が136.2±0.4kPa(約19.75psia)であることが記載されているものの(甲6の摘記事項イ)、「26.85℃における蒸気圧」と「24.7℃における蒸気圧」とが異なる値となることは明らかであるから、甲6の記載からは、「E-HCFO-1233zd」の「24.7℃における蒸気圧が18.6psia」であるということはできない。
また、甲16には、「ソルスティスエンハンス(HCFO-1233ZD(E))」の物性について、「25℃における蒸気圧が18.6psia」(甲16の摘記事項イ)であることが記載されているが、甲16は、「Solstice^((R))(ソルスティス)エンハンス溶剤およびSolstice^((R))(ソルスティス)噴射剤」に関する製品パンフレットであり、その「ハネウェルの、画期的な次世代の核心技術であるHFO(ハイドロフルオロオレフィン)をベースとするSolstice^((R))(ソルスティス)エンハンス溶剤およびSolstice^((R))(ソルスティス)噴射剤」(甲16の摘記事項ア)という記載からみて、該「ソルスティスエンハンス」は、特定のHFOである「E-HCFO-1233zd」をベースとした溶剤ないし噴射剤の製品名であり、「E-HCFO-1233zd」自体を指すものではないというべきであるから、甲16に記載された当該物性値に基づき、「E-HCFO-1233zd」の「24.7℃における蒸気圧が約18.6psia」であるということはできない。
さらに、甲17には、図5(甲17の摘記事項イ)に、Z-1233zd/E-1233zdの2成分系の30.04℃における蒸気圧曲線が示されているが、同図は、「E-HCFO-1233zd」の「24.7℃における蒸気圧が約18.6psia」であることを示すものではないし、24.7℃におけるZ-1233zd/E-1233zdの2成分系の蒸気圧曲線が、同図と同形態となる確証もない。
カ 加えて、請求人は、甲1の摘記事項サには、「Z-FO-1336mzzと1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(CF_(3)CH=CHCl,HCFO-1233zd)とは共沸混合物様組成物を形成することが実験によって見いだされた。この2成分ペアの相対揮発度を測定するために、上記のPTx法が用いられた。既知容量のPTxセルにおける全絶対圧力が様々な2成分組成について一定温度で測定された。」と記載されていることから、甲1記載の「HCFO-1233zd」がトランス体(E体)とシス体(Z体)の混合物であるとすると、この共沸混合物様組成物は3成分となるため、当該記載中の「2成分ペア」ないし「2成分組成」という記載と齟齬することになってしまう旨主張する(第3回口頭審理陳述要領書)。
キ しかしながら、前記ウで述べたように、甲1の記載からは、前記共沸混合物様組成物に含まれる「HCFO-1233zd」が「E-HCFO-1233zd」であるかどうかは不明というほかないのであるから、前記「2成分ペア」ないし「2成分組成」の2成分とは、「Z-FO-1336mzz」と「HCFO-1233zd」であると理解することが合理的であって、「E-HCFO-1233zd」を該2成分の一つを構成するものとして捉えることはできない。
ク したがって、前記図10、表25及び表26記載の共沸混合物様組成物の「HCFO-1233zd」が純粋な「E-HCFO-1233zd」であることは、甲1に記載された事項であるとも、甲1に記載された事項から本件第二優先日当時における技術常識を参酌することにより導き出せる、甲1に記載されているに等しい事項であるともいえない。
ケ 以上のとおりであるから、「請求人主張の甲1発泡剤」に関する主張は採用できない。

5 本件特許発明1について
(1) 本件特許発明1と「甲1発泡剤の使用方法」との対比
ア 発泡剤(発泡剤組成物)の成分組成について
本件特許発明1は、発泡体(発泡剤組成物)自体と、その使用用途に特徴を有するものであるから、はじめに、両者において用いられている発泡剤(発泡剤組成物)、特にそれらの成分組成について精査する。
(ア) 本件特許発明1の発泡剤
本件特許発明1における発泡剤(組成物)は、「34.34?74.20重量%のシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)及び25.80?65.66重量%のトランス-1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(E-HCFO-1233zd)を含む共沸混合物様組成物を含む発泡剤組成物」であり、かつ、「前記発泡剤が150以下の地球温暖化係数(GWP)及び0.1以下のオゾン層破壊係数(ODP)を有する」ものである(以下、本件特許発明1において特定された共沸混合物様組成物の成分組成を「特定成分組成1」といい、当該共沸混合物様組成物を含む本件特許発明1の発泡剤組成物あるいは当該共沸混合物様組成物自体を「本件特許発明1の発泡剤」という。)。
(イ) 甲1発泡剤
一方、「甲1発泡剤」は、前記4(4)アで述べたとおりのものである。
(ウ) 両発泡剤の対比(成分組成について)
「甲1発泡剤」における「Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-FO-1336mzz)」及び「1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)」は、それぞれ「本件特許発明1の発泡剤」の「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)」及び「1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(HCFO-1233zd)」(ただし、幾何異性体の種類を特定していないもの)に対応する化合物であると認められる。
そうすると、両発泡剤は、成分組成において、「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)及び1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(HCFO-1233zd)を含む共沸混合物様組成物を含む発泡剤組成物」である点で外形上共通し、次のような相違点を有するものと認められる。
・相違点1(発泡剤の成分組成に関するもの)
発泡剤の共沸混合物様組成物の成分とその配合割合について、「本件特許発明1の発泡剤」の共沸混合物様組成物は、「Z-HFO-1336mzzm」を34.34?74.20重量%及び「E-HCFO-1233zd」を25.80?65.66重量%含むのに対し、「甲1発泡剤」の共沸混合物様組成物は、「Z-HFO-1336mzzm」の配合割合が不明であり、その上、「E-HCFO-1233zd」を含むかどうかは不明な点。
イ 発泡剤(発泡剤組成物)のGWP及びODPの数値について
次に、両発泡剤のGWP及びODPの数値について対比してみると、両者は、GWP及びODPに配慮したものである点で一致するといえるものの、次の点で相違するといえる。
・相違点2(発泡剤のGWP及びODPの数値に関するもの)
「本件特許発明1の発泡剤」は、GWP及びODPの数値に関して、「前記発泡剤が150以下の地球温暖化係数(GWP)及び0.1以下のオゾン層破壊係数(ODP)を有する」と規定しているのに対して、「甲1発泡剤」は、「低い地球温暖化係数(GWP)を有し、かつ成層圏オゾンの破壊に関与しない」と特定するにとどまり、それらの数値の規定を有しない点。
ウ 発泡剤の使用用途について
さらに、両発泡剤の使用用途について精査する。
(ア) 「本件特許発明1の発泡剤」の使用用途
本件特許発明1における「本件特許発明1の発泡剤」の使用用途は、「独立気泡の熱硬化性フォームの製造」におけるものである。
(イ) 「甲1発泡剤」の使用用途
一方、「甲1発泡剤の使用方法」における「甲1発泡剤」の使用用途は、「熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造」におけるものであり、当該「熱硬化性発泡体の製造」は、本件特許発明1における「熱硬化性フォームの製造」に相当するものといえる。
(ウ) 両使用用途の対比
そうすると、本件特許発明1と「甲1発泡剤の使用方法」とは、発泡剤の使用用途が「熱硬化性フォームの製造」である点で一致するものの、次のような相違点を有するものと認められる。
・相違点3(発泡剤の使用用途に関するもの)
本件特許発明1は、「本件特許発明1の発泡剤」を「独立気泡の熱硬化性フォームの製造」において使用しているのに対して、「甲1発泡剤の使用方法」は、「甲1発泡剤」を「熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造」において使用している点。
エ 小括
以上の検討のとおり、本件特許発明1と「甲1発泡剤の使用方法」とは、
発泡剤の成分組成において、「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)及び1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(HCFO-1233zd)を含む共沸混合物様組成物を含む発泡剤組成物」である点で外形上共通し、また、GWP及びODPに配慮し、発泡剤を熱硬化性フォームの製造において使用している点で一致するものの、前記相違点1?3において相違するものと認められる。
(2) 相違点についての検討
事案に鑑み、まず、相違点1(発泡剤の成分組成に関するもの)について検討する。
ア 前記4(6)ウにおいて述べたとおり、甲1の図10、表25及び表26に記載された共沸混合物様組成物に含まれる「HCFO-1233zd」が「E-HCFO-1233zd」であるかどうかは不明というほかないことに照らすと、「甲1発泡剤」の共沸混合物様組成物において、「E-HCFO-1233zd」が想定されているとは認められない。
また、仮に、「甲1発泡剤」の共沸混合物様組成物において、「E-HCFO-1233zd」が想定されているとしても、当該「E-HCFO-1233zd」は、「Z-HFO-1336mzzm」と共沸混合物様組み合わせを形成するのに有効な量において存在する成分である必要がある。そして、その場合、「甲1発泡剤」において、「Z-HFO-1336mzzm」の配合割合を34.34?74.20重量%と仮定しても、当該「Z-HFO-1336mzzm」と共沸混合物様組み合わせを形成するのに有効な「E-HCFO-1233zd」の量は不明であるから、当業者といえども、「甲1発泡剤」に、25.80?65.66重量%の範囲内の「E-HCFO-1233zd」を配合させることまでは到底想到し得ない。
なお、上記のとおり、甲1の図10、表25及び表26に記載された共沸混合物様組成物に含まれる「HCFO-1233zd」が「E-HCFO-1233zd」であるかどうかは不明であるから、当該図10、表25及び表26に、特定の配合割合の共沸混合物様組成物が記載されているからといって、当該組成物が、「E-HCFO-1233zd」の配合割合について教示するわけではない。
したがって、前記相違点1に係る本件特許発明1の構成は、当業者が容易に想到し得ることということはできない。
イ また、甲2の摘記事項タには、「E-HCFO-1233zd」に関して、次の記載がある。
・「本発明の好ましい発泡剤組成物、単独での、または組み合わせての、HCFO-1233zd、主にトランス異性体は、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレート発泡体の製造で使用されるポリオール混合物への優れた溶解性を示す。本発明のHCFO-1233zd成分の大部分はトランス異性体である。このトランス異性体は、AMES試験においてシス異性体よりも遺伝毒性が極めて低いことが発見された。HCFO-1233zdのトランスおよびシス異性体の好ましい割合は、組み合わせの中でシス異性体約30重量%未満、好ましくはシス異性体約10%未満である。最も好ましい割合は、シス異性体約3%未満である。好ましい発泡剤の組み合わせによって、望ましいレベルの断熱値を有する発泡体が生成される。」
当該記載は、確かに、「E-HCFO-1233zd」が、「Z-HCFO-1233zd」よりも遺伝毒性が極めて低いことなどを教示するものである。
しかしながら、甲2には、「Z-HFO-1336mzzm」と「E-HCFO-1233zd」とが共沸混合物様組成物を形成することについては何ら記載されていないのであるから、遺伝毒性等の観点から優先的に「E-HCFO-1233zd」を用いるとしても、共沸混合物様組成物とするための「E-HCFO-1233zd」の配合割合までは分からない。
また、甲2の実施例などにおいては、少なからず「Z-HCFO-1233zd」が使用されていることからみて、甲2には、諸特性よりも遺伝毒性等を優先してまで純粋な「E-HCFO-1233zd」を用いなければならないことが記載されているわけではない。
そうである以上、上記甲2の教示は、「甲1発泡剤」の「HCFO-1233zd」について、その特定の割合を「E-HCFO-1233zd」とすることや、これを純粋な「E-HCFO-1233zd」とすることの動機付けとはならない。
以上のとおり、甲2の記載は、「甲1発泡剤」において、「E-HCFO-1233zd」の配合割合を、本件特許発明1の「特定成分組成1」のように調整し、「Z-HFO-1336mzzm」との共沸混合物様組成物を形成することの動機付けになるとはいえないから、甲2の記載に照らしても、前記相違点1に係る本件特許発明1の構成が容易想到の事項であるということはできない。さらに他の証拠の記載に照らしても同様である。
ウ 効果について
そして、本件特許発明1は、前記「特定成分組成1」の共沸混合物様組成物を含む「本件特許発明1の発泡剤」を使用することにより、「前記発泡剤が150以下の地球温暖化係数(GWP)及び0.1以下のオゾン層破壊係数(ODP)を有する」という環境問題に配慮したものとした上で、「独立気泡の熱硬化性フォームの製造」を可能ならしめ、さらに、発泡剤の組成変化に起因する発泡体形成プロセスにおける一般的な不具合(甲1の摘記事項エを参照した。)を解消し得たものである。
このように、「本件特許発明1の発泡剤」は、前記相違点2及び相違点3に係る構成と相まって、独立気泡の熱硬化性フォームの製造において待ち望まれていたオゾン層破壊と地球温暖化の二大問題を解決する新しい共沸混合物様の発泡剤を提供するものであるから、環境問題に対処した発泡剤の探索が困難である状況に鑑みると、そのこと自体、その断熱性能の顕著さを問う以前に、本件特許発明1の有利な効果であるということができる。
(3) 小括
以上のとおりであるから、相違点2、3について判断するまでもなく、本件特許発明1は、「甲1発泡剤の使用方法」に対して進歩性を有するものである。

6 本件特許発明2?14について
本件特許発明2?14は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、これらの発明も、本件特許発明1と同様の理由により、「甲1発泡剤の使用方法」に対して進歩性を有するものである。

7 本件特許発明15、16について
本件特許発明15、16は、本件特許発明1に係る、前記「特定成分組成1」の共沸混合物様組成物を含む「本件特許発明1の発泡剤」を有するものであるから、本件特許発明15、16と、前記「甲1発泡性組成物」との間にも、前記相違点1(成分組成についての相違点)が存在するところ、当該相違点1に係る構成が容易想到の事項ではないことは、前記5(2)のとおりであるから、本件特許発明15、16は、「甲1発泡性組成物」に対して進歩性を有するものである。

8 本件特許発明17について
本件特許発明17は、本件特許発明1に係る、前記「特定成分組成1」の共沸混合物様組成物を含む「本件特許発明1の発泡剤」を用いるものであるから、本件特許発明17と、前記「甲1発泡体形成方法」との間にも、前記相違点1(成分組成についての相違点)が存在するところ、当該相違点1に係る構成が容易想到の事項ではないことは、前記5(2)のとおりであるから、本件特許発明17は、「甲1発泡体形成方法」に対して進歩性を有するものである。

9 無効理由1についてのまとめ
(1) 以上のとおり、本件特許発明は、甲1発明に対して進歩性を有するものであるから、無効理由1には、理由がない。
(2) さらにいうと、前記4(6)において説示したとおり、請求人が無効理由1の前提としている「請求人主張の甲1発泡剤」には誤認があるから、当該無効理由1は、前提を欠くものであり、その時点で既に理由がない。

第5 無効理由2についての当審の判断

1 甲2に記載された発明(甲2発明)の認定
請求人が主張する無効理由2は、甲2を主引例とするものであるから、甲2に記載された発明について、ここで検討をする。
(1) 甲2の摘記事項ア、ウ、エ、オのとおり、請求項1、3、6、7には、ポリマー発泡剤組成物について、次の記載がある。
・「ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体を約70重量%以上含む、熱硬化性発泡体用のポリマー発泡剤組成物。」
・「前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdが、トランス立体異性体を約97重量%以上含む、請求項1に記載のポリマー発泡剤組成物。」
・「ヒドロフルオロオレフィンをさらに含む、請求項1に記載のポリマー発泡剤組成物。」
・「前記ヒドロフルオロオレフィンが、テトラフルオロプロペン(HFO1234);トリフルオロプロペン(HFO1243);テトラフルオロブテン異性体(HFO1354);ペンタフルオロブテン異性体(HFO1345);ヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336);ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327);ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447);オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438);およびノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)からなる群から選択される、請求項6に記載のポリマー発泡剤組成物。」
(2) また、甲2の摘記事項カ、ケ、コのとおり、請求項11、16、17には、ポリウレタンを発泡する方法について、次の記載がある。
・「ポリマー発泡体成分と、ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体を約70重量%以上含む発泡体用発泡剤とを混合することを含む、ポリウレタン発泡体を発泡する方法。」
・「前記発泡体用発泡剤が、ヒドロフルオロオレフィンをさらに含む、請求項11に記載の方法。」
・「前記ヒドロフルオロオレフィンが、テトラフルオロプロペン(HFO1234);トリフルオロプロペン(HFO1243);テトラフルオロブテン異性体(HFO1354);ペンタフルオロブテン異性体(HFO1345);ヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336);ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327);ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447);オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438);およびノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。」
(3) さらに、甲2の摘記事項シ、スには、発泡剤組成物のODP及びGWPについて、次の記載がある。
・「本発明の目的は、低いまたはゼロのオゾン層破壊係数、より低い地球温暖化係数の要求を満たし、かつ低い毒性を有する固有の特徴を提供する熱硬化性発泡体用の発泡剤としての役割を果たすことができる新規な組成物を提供することである。」
・「本発明は、オゾン層破壊がごくわずか(低いまたはゼロ)であり、かつGWPが低い、不飽和ハロゲン化ヒドロオレフィンをベースとする発泡剤の使用に関する。」
(4) 加えて、甲2の摘記事項テには、発泡体の形態について、次の記載がある。
・「本発明は、本発明の組成物を含む発泡剤を含有するポリマー発泡体配合物から製造される発泡体、好ましくは独立気泡発泡体にも関する。さらに他の実施形態において、本発明は、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレート発泡体、好ましくは低密度発泡体、軟質または硬質発泡体などの熱硬化性発泡体を含む発泡性組成物を提供する。」
(5) そして、前記請求項1、3、6、7に記載されたポリマー発泡剤組成物を使用して、前記請求項11、16、17に記載されたように、ポリウレタン発泡体を発泡するにあたっては、当該ポリマー発泡剤組成物と、ポリウレタン発泡体のベース(骨格)を形成するためのポリマー発泡体成分とを混合して、発泡性である発泡性組成物としてから発泡工程に供されることになることは明らかである。
(6) そうすると、前記(1)?(5)からみて、甲2に記載された発明として、次のア?エの発明を認定することができる。
ア 発泡剤に関する発明(甲2発泡剤)
前記(1)、(3)、(4)からみて、甲2には、発泡剤に関する次の発明が記載されているといえる。
「ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体を約70重量%以上ないし97重量%以上含み、
ヒドロフルオロオレフィンをさらに含み、
前記ヒドロフルオロオレフィンが、テトラフルオロプロペン(HFO1234);トリフルオロプロペン(HFO1243);テトラフルオロブテン異性体(HFO1354);ペンタフルオロブテン異性体(HFO1345);ヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336);ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327);ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447);オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438);およびノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)からなる群から選択される、
独立気泡の熱硬化性発泡体(ポリウレタン発泡体)用のポリマー発泡剤組成物であって、
オゾン層破壊がごくわずか(低いまたはゼロ)であり、かつGWPが低い、不飽和ハロゲン化ヒドロオレフィンをベースとする発泡剤組成物。」(以下、「甲2発泡剤」という。)
イ 発泡剤の使用方法に関する発明(甲2発泡剤の使用方法)
さらに前記(2)からみて、甲2には、発泡剤の使用方法に関する次の発明が記載されているといえる。
「独立気泡の熱硬化性発泡体(ポリウレタン発泡体)の製造における「甲2発泡剤」の使用。」(以下、「甲2発泡剤の使用方法」という。)
ウ 発泡体を形成するための組成物に関する発明(甲2発泡性組成物)
前記(5)からみて、甲2には、発泡体を形成するための組成物に関する次の発明が記載されているといえる。
「ポリマー発泡体成分及び「甲2発泡剤」を含む、独立気泡の熱硬化性発泡体(ポリウレタン発泡体)を形成するために発泡性である発泡性組成物。」(以下、「甲2発泡性組成物」という。)
エ 発泡体を形成する方法に関する発明(甲2発泡体形成方法)
前記(5)からみて、甲2には、発泡剤の使用方法に関する次の発明が記載されているといえる。
「「甲2発泡剤」をポリマー発泡体成分に加えることを含む、独立気泡の熱硬化性発泡体(ポリウレタン発泡体)を形成する方法。」(以下、「甲2発泡体形成方法」という。)
(7) 以下では、これらの発明をまとめて「甲2発明」ということがある。また、本件特許発明の進歩性の検討においては、上記「甲2発泡剤の使用方法」、「甲2発泡性組成物」及び「甲2発泡体形成方法。」を、それぞれ「本件特許発明1?14」、「本件特許発明15、16」及び「本件特許発明17」と比較することとなる。

2 本件特許発明1について
(1) 本件特許発明1と「甲2発泡剤の使用方法」との対比
ア 「甲2発泡剤の使用方法」における「ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体」は、本件特許発明1における「トランス-1,1,1-トリフルオロ-3-クロロプロペン(E-HCFO-1233zd)」に相当するものである。
また、「甲2発泡剤の使用方法」における「独立気泡の熱硬化性発泡体(ポリウレタン発泡体)の製造」は、本件特許発明1における「独立気泡の熱硬化性フォームの製造」に相当するものである。
イ そうすると、両者は、E-HCFO-1233zdを含む、GWP及びODPに配慮した発泡剤組成物を、独立気泡の熱硬化性フォームの製造において使用している点で一致し、次の点で相違するといえる。
・相違点4(発泡剤の成分組成に関するもの)
本件特許発明1における「本件特許発明1の発泡剤」は、成分組成に関して、「Z-HFO-1336mzzm」を34.34?74.20重量%及び「E-HCFO-1233zd」を25.80?65.66重量%含む共沸混合物様組成物(前記「特定成分組成1」の共沸混合物様組成物)を含む旨特定しているのに対して、「甲2発泡剤の使用方法」における「甲2発泡剤」は、「特定成分組成1」のような成分組成についての特定や共沸混合物様組成物についての特定を有していない点。
・相違点5(発泡剤のODP及びGWPの数値に関するもの)
本件特許発明1における「本件特許発明1の発泡剤」は、ODP及びGWPの数値に関して、「前記発泡剤が150以下の地球温暖化係数(GWP)及び0.1以下のオゾン層破壊係数(ODP)を有する」と規定しているのに対して、「甲2発泡剤の使用方法」における「甲2発泡剤」は、「オゾン層破壊がごくわずか(低いまたはゼロ)であり、かつGWPが低い、不飽和ハロゲン化ヒドロオレフィンをベースとする発泡剤組成物」ではあるものの、「本件特許発明1の発泡剤」のような数値の規定までは有していない点。
(2) 相違点4(発泡剤の成分組成に関するもの)についての検討
ア 「甲2発泡剤」は、ヒドロフルオロオレフィンの多数の選択肢の中に、「ヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)」を含むものであるが、これが「Z-HFO-1336mzzm」であることまでは明示されておらず、また、当該「甲2発泡剤」が、本件特許発明1のように「特定成分組成1」を構成しており、共沸混合物様組成物を含むことについても特定されていない。そして、甲2を仔細にみても、これらの点について記載ないし示唆する箇所は見当たらない。
他方、甲1には、摘記事項サ、ソのとおり、図10、表25及び表26において、「Z-HFO-1336mzzm」と「HCFO-1233zd」とから構成される共沸混合物様組成物が例示されているが、前記4(6)ウにおいて述べたとおり、当該図10、表25及び表26記載の共沸混合物様組成物の「HCFO-1233zd」は、幾何異性体について特定するものではなく、これが「E-HCFO-1233zd」であるということはできないから、当該図10、表25及び表26記載の共沸混合物様組成物は、「E-HCFO-1233zd」の配合割合について教示するものではない。そのため、当該組成物は、「甲2発泡剤」の広範な選択肢(成分組成)の中から(あるいは、当該成分組成に代えて)、本件特許発明1が規定する「特定成分組成1」、すなわち、「E-HCFO-1233zd」の配合割合について特定したものを選択する動機付けにはなり得ない。また、甲1を仔細にみても、ほかに当該動機付けとなり得る記載は見当たらない。
したがって、甲1の記載に基づいて、「甲2発泡剤の使用方法」の「甲2発泡剤」において、前記相違点4に係る本件特許発明1の「特定成分組成1」を備えることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
イ 効果について
そして、本件特許発明1は、前記相違点4に係る構成、さらには、前記相違点5に係る構成などを具備することにより、前記第4の5(2)ウにおいて述べたとおりの、有利な効果を奏するものである。
(3) 小括
以上のとおりであるから、相違点5について判断するまでもなく、本件特許発明1は、「甲2発泡剤の使用方法」に対して進歩性を有するものである。
3 本件特許発明2?14について
本件特許発明2?14は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、これらの発明についても、本件特許発明1と同様の理由により、「甲2発泡剤の使用方法」に対して進歩性を有するものである。

4 本件特許発明15、16について
本件特許発明15、16は、本件特許発明1に係る、前記「特定成分組成1」の共沸混合物様組成物を含む「本件特許発明1の発泡剤」を有するものであるから、本件特許発明15、16と、前記「甲2発泡性組成物」との間にも、前記相違点4(成分組成についての相違点)が存在するところ、当該相違点4に係る構成が容易想到の事項ではないことは、前記2(2)のとおりであるから、本件特許発明15、16は、「甲2発泡性組成物」に対して進歩性を有するものである。

5 本件特許発明17について
本件特許発明17は、本件特許発明1に係る、前記「特定成分組成1」の共沸混合物様組成物を含む「本件特許発明1の発泡剤」を用いるものであるから、本件特許発明17と、前記「甲2発泡体形成方法」との間にも、前記相違点4(成分組成についての相違点)が存在するところ、当該相違点4に係る構成が容易想到の事項ではないことは、前記2(2)のとおりであるから、本件特許発明17は、「甲2発泡体形成方法」に対して進歩性を有するものである。

6 無効理由2についてのまとめ
(1) 以上のとおり、本件特許発明は、甲2発明に対して進歩性を有するものであるから、無効理由2には、理由がない。
(2) さらにいうと、当該無効理由2は、無効理由1と同様、実質的に、甲1の図10、表25及び表26に記載された共沸混合物様組成物の「HCFO-1233zd」が「E-HCFO-1233zd」であることを前提とするところ(特に、第1回口頭審理陳述要領書第38頁の「ウ」の項目を参照した。)、当該前提に誤りがあることは、前記第4の4(6)において既に説示したとおりであるから、当該無効理由2は、前提を欠くものであり、理由がない。

第6 むすび
以上の検討のとおり、請求人が主張する無効理由1、2には、いずれも理由がない。
したがって、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許発明1?17に係る特許を無効とすることはできない。
そして、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-18 
結審通知日 2019-04-24 
審決日 2019-05-10 
出願番号 特願2012-544731(P2012-544731)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 恵理  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 木村 敏康
日比野 隆治
登録日 2016-01-08 
登録番号 特許第5863667号(P5863667)
発明の名称 シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの共沸混合物様の組成物  
代理人 小野 新次郎  
代理人 梅田 幸秀  
代理人 鈴木 雄太  
代理人 伊藤 勝久  
代理人 内田 淳子  
復代理人 松本 克  
代理人 松田 豊治  
代理人 末吉 剛  
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