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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1355359
審判番号 不服2018-6001  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-01 
確定日 2019-09-19 
事件の表示 特願2017-537634「メソゲン基を有する化合物及びそれを含む組成物、並びに重合性組成物を重合することにより得られる重合体、光学異方体、並びに位相差膜」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日国際公開、WO2017/038267〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)7月14日(優先権主張平成27年9月3日)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月2日に手続補正がなされ、同月29日付けで拒絶理由が通知され、同年12月19日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成30年1月24日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年5月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
その後、平成31年3月28日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和元年6月3日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。


2 本件発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 少なくとも1つのメソゲン基と、重合性基とを有する逆波長分散性又は低波長分散性化合物と、前記化合物の重合体を含有する混合物であって、かつ、該混合物が、下記の式(式1)
0.5≦YI/Δn≦500 (式1)
(式中、YIは混合物の黄色度を表し、Δnは、下記の式(a)で表される化合物(25質量%)、式(b)で表される化合物(25質量%)、式(c)で表される化合物(25重量%)、式(d)で表される化合物(25重量%)
【化1】

からなる母体液晶に逆波長分散性又は低波長分散性化合物(10質量%、20質量%又は30質量%)を混合し液晶組成物とし、ポリイミド配向膜付きガラス基板を使用し、ポリイミド配向膜のラビング方向が平行になるように、2つのガラス基板を組み合わせ、ガラスセルを作成し、そのガラスセルに、前記液晶組成物を注入した後に、紫外線(波長550nm、照度800mJ/cm^(2))を照射して硬化させた後、ガラスセルからフィルムを剥がし取り、その後、アッベ屈折率計で、フィルムのne、noを測定し、メソゲン基を有する化合物が100質量%となるよう外挿した値である。)を満たし、
前記逆波長分散性又は低波長分散性化合物が、下記一般式(I)
一般式(I)
【化1】

(式中、R^(1)及びR^(2)は各々独立して、式(I-0-R)
一般式(I-0-R)
【化2】

(式中、P^(0)は重合性基を表し、Sp^(0)はスペーサー基又は単結合を表すが、Sp^(0)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、X^(0)は-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH_(2)CH_(2)-、-OCO-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-COO-、-CH_(2)CH_(2)-OCO-、-COO-CH_(2)-、-OCO-CH_(2)-、-CH_(2)-COO-、-CH_(2)-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、X^(0)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く(ただし、P^(0)-(Sp^(0)-X^(0))_(k0)-には-O-O-結合を含まない。)、k0は1から10の整数を表す。)
で表される基、水素原子、炭素原子数1から80の炭化水素基を表すが、当該炭化水素基は置換基を有していても良く、任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていても良く、但し、R^(1)及びR^(2)の少なくとも一つは式(I-0-R)で表される基であり、
A^(1)及びA^(2)は各々独立して1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すが、これらの基は無置換であるか又は1つ以上の上述の置換基Lによって置換されても良く、
Lはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH_(2)-又は隣接していない2個以上の-CH_(2)-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-によって置換されても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されても良く、若しくは、LはP^(L)-(Sp^(L)-X^(L))_(kL)-で表される基を表しても良く、ここでP^(L)は重合性基を表し、Sp^(L)はスペーサー基又は単結合を表すが、Sp^(L)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、X^(L)は-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH_(2)CH_(2)-、-OCO-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-COO-、-CH_(2)CH_(2)-OCO-、-COO-CH_(2)-、-OCO-CH_(2)-、-CH_(2)-COO-、-CH_(2)-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、X^(L)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く(ただし、P^(L)-(Sp^(L)-X^(L))_(kL)-には-O-O-結合を含まない。)、kLは0から10の整数を表すが、化合物内にLが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z^(1)及びZ^(2)は各々独立して-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CH_(2)CH_(2)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH_(2)CH_(2)-、-OCO-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-COO-、-CH_(2)CH_(2)-OCO-、-COO-CH_(2)-、-OCO-CH_(2)-、-CH_(2)-COO-、-CH_(2)-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、又は単結合で表される基を表すが、Z^(1)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z^(2)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良いが、複数存在する場合は各々独立して、存在するZ^(1)及びZ^(2)のうち少なくとも1つは-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CH_(2)CH_(2)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合から選ばれる基を表し、
G^(1)は芳香族炭化水素環又は芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表すが、G^(1)で表される基中の芳香環に含まれるπ電子の数は12以上であり、G^(1)で表される基は無置換であるか又は1つ以上の置換基L^(G)によって置換されても良く、
L^(G)はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH_(2)-又は隣接していない2個以上の-CH_(2)-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-によって置換されても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されても良く、若しくは、L^(G)はP^(LG)-(Sp^(LG)-X^(LG))_(kLG)-で表される基を表しても良く、ここでP^(LG)は重合性基を表し、Sp^(LG)はスペーサー基又は単結合を表すが、Sp^(LG)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、X^(LG)は-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH_(2)CH_(2)-、-OCO-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-COO-、-CH_(2)CH_(2)-OCO-、-COO-CH_(2)-、-OCO-CH_(2)-、-CH_(2)-COO-、-CH_(2)-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、X^(LG)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く(ただし、P^(LG)-(Sp^(LG)-X^(LG))_(kLG)-には-O-O-結合を含まない。)、kLGは0から10の整数を表すが、化合物内にLGが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m1及びm2は各々独立して0から6の整数を表すが、m1+m2は0から6の整数を表す。)で表されるものである混合物。」

また、本件補正により補正された特許請求の範囲には、請求項3?13として、以下の記載がある。
「 【請求項3】
請求項1又は2に記載の混合物と、
有機溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、光重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、チキソ剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤及び表面処理剤から選ばれる少なくとも一種からなる組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の混合物の総含有量が5.0質量%?90.0質量%である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の混合物を含有する組成物が液晶組成物である請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項3?5のいずれか一項に記載の組成物を重合することにより得られる重合体。
【請求項7】
請求項3?5のいずれか一項に記載の組成物を重合することにより得られる光学異方体。
【請求項8】
請求項3?5のいずれか一項に記載の組成物を重合することにより得られる位相差膜。
【請求項9】
請求項7に記載の光学異方体を有する表示装置。
【請求項10】
請求項7に記載の光学異方体を有する光学素子。
【請求項11】
請求項7に記載の光学異方体を有する発光装置。
【請求項12】
請求項7に記載の光学異方体を有する印刷物。
【請求項13】
請求項7に記載の光学異方体を有する光情報記録装置。」


3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

理由1(明確性)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由2(サポート要件)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由3(実施可能要件)
本件出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由4(新規性)
本件出願の請求項1?9に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1又は引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由5(進歩性)
本件出願の請求項1?14に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1?3に記載された発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2011-207765号公報
引用文献2:特開2010-31223号公報
引用文献3:特開2011-57635号公報


4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願優先権主張の日前の平成23年10月20日に頒布された刊行物である引用文献1(特開2011-207765号公報)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。以下の文献についても同様である。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法に関する。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広い波長域において一様の偏光変換を行う光学フィルムを与える重合性化合物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明である。
1. 式(1-1)又は式(1-2)で表される2価の基を含む化合物。
【0006】

【0007】
[式(1-1)及び式(1-2)中、Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1?6のアルキルスルフィニル基、炭素数1?6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1?6のフルオロアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基、炭素数1?6のアルキルスルファニル基、炭素数1?6のN-アルキルアミノ基、炭素数2?12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1?6のN-アルキルスルファモイル基又は炭素数2?12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。
Q^(1)及びQ^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(1)R^(2)-、-S-、-NR^(2)-、-CO-又は-O-を表す。
R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
Y^(1)は、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基を表す。
D^(1)及びD^(2)は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4のフルオロアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH_(2)-基は、-O-、-S-又は-NH-で置換されていてもよい。]

(中略)

【0017】
11. 1.?10.のいずれか記載の化合物と、式(20)で表される化合物とを含有する組成物。
P^(11)-E^(11)-(B^(11)-A^(11))_(t)-B^(12)-G (20)
[式(20)中、A^(11)は、2価の芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又は複素環基を表し、該芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び複素環基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基、炭素数1?6のN-アルキルアミノ基、炭素数2?12のN,N-ジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基又はスルファニル基で置換されていてもよい。
B^(11)及びB^(12)は、それぞれ独立に、-CR^(14)R^(15)-、-C≡C-、-CH=CH-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=S)-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR^(16)-、-NR^(16)-C(=O)-、-OCH_(2)-、-OCF_(2)-、-NR^(16)-、-CH_(2)O-、-CF_(2)O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-又は単結合を表す。R^(14)及びR^(15)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表し、R^(14)及びR^(15)が連結して炭素数4?7のアルカンジイル基を構成してもよい。R^(16)は、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
E^(11)は、炭素数1?12のアルカンジイル基を表す。該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
P^(11)は、重合性基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?13のアルキル基、炭素数1?13のアルコキシ基、炭素数1?13のフルオロアルキル基、炭素数1?13のN-アルキルアミノ基、炭素数2?26のN,N-ジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基であるか、炭素数1?12のアルカンジイル基を介して結合する重合性基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
tは、1?5の整数を表す。tが2以上の整数である場合、複数のA^(11)及びB^(11)は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0018】
12. さらに重合開始剤を含有する11.記載の組成物。

(中略)

【0021】
15. 11.?13.のいずれか記載の組成物を重合してなる光学フィルム。
【0022】
16. 波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113?163nmのλ/4板用である14.又は15.記載の光学フィルム。
【0023】
17. 波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250?300nmのλ/2板用である14.又は15.記載の光学フィルム。
【0024】
18. 14.?17.のいずれか記載の光学フィルム及び偏光フィルムを含む偏光板。

(中略)

【0027】
21. 18.記載の偏光板を含む液晶パネルを備えるフラットパネル表示装置。
【0028】
22. 18.記載の偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機EL表示装置。

(中略)

【発明の効果】
【0032】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換を行う光学フィルムを製造することができる。」

イ 「【0307】
本発明の組成物は、本発明の化合物と、本発明の化合物とは異なる液晶化合物(以下「液晶化合物」という場合がある)とを含有する。

(中略)

【0351】
本発明の組成物は、さらに重合開始剤を含有する組成物であることが好ましい。重合開始剤は、光重合開始剤を含むことが好ましく、光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。

(中略)

【0363】
さらに本発明の組成物は、レベリング剤を含有してもよい。レベリング剤としては、例えば放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK-352,BYK-353,BYK-361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング株式会社製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、塗料添加剤(信越化学工業株式会社製:KP321、KP323、X22-161A、KF6001)又はフッ素系添加剤(DIC株式会社製:F-445、F-470、F-479)等を挙げることができる。

(中略)

【0365】
本発明の組成物は、その流動性の点で、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶媒としては、本発明の化合物、液晶化合物等を溶解し得る有機溶剤であって、重合反応に不活性な溶剤であればよく、具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非塩素化脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン、フェノール等の非塩素化芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;フェノール;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。特に、本発明の化合物及び本発明の組成物は、相溶性に優れ、アルコール溶剤、エステル溶剤、ケトン溶剤、非塩素化脂肪族炭化水素溶剤及び非塩素化芳香族炭化水素溶剤に溶解し得るため、クロロホルム等の塩素化炭化水素溶剤を用いることなく、成膜することができる。」

ウ 「【0367】
本発明の光学フィルムとは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折等を意味する。光学フィルムの一種である位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられる。
【0368】
本発明の光学フィルムの波長分散特性は、光学フィルムにおける本発明の化合物に由来する構造単位を有するが、その構造単位の含有量を調節することにより、光学フィルムの波長分散特性を調整することができる。光学フィルムにおける構造単位の中で本発明の化合物に由来する構造単位の含有量が多くなれば、よりフラットな波長分散特性、さらには逆波長分散特性を示す。」

エ 「【0370】
本発明の光学フィルムは、本発明の化合物を重合することにより得られる。一種類の本発明の化合物を重合してもよいし、二種類以上の本発明の化合物を重合してもよい。また、本発明の組成物を重合させることによっても、本発明の光学フィルムを製造することができる。
【0371】
成膜のしやすさという点で、本発明の化合物が有機溶剤に溶解した溶液を用いることが好ましく、該溶液を支持基材上に塗布し、乾燥、重合させることにより、光学フィルムが得られる。かかる溶液中の固形分濃度は、例えば2?50質量%であり、5?50質量%が好ましい。
支持基材上に、本発明の化合物の溶液を塗布し、乾燥することにより、未重合フィルムが得られる。未重合フィルムがネマチック相等の液晶相を示す場合、得られる光学フィルムは、モノドメイン配向による複屈折性を示す。

(中略)

【0387】
得られた未重合フィルムを重合し、硬化させることにより、本発明の化合物の配向性が固定化されたフィルム、すなわち重合フィルムが得られる。したがって、熱による複屈折への影響を受けにくいフィルムが得られる。
【0388】
未重合フィルムを重合させる方法は、液晶化合物及び本発明の化合物の種類に応じて、適宜決定すればよい。本発明の化合物及び液晶化合物中の重合性基が光重合性であれば光重合法が用いられ、該重合性基が熱重合性であれば熱重合法が用いられる。光重合法によれば低温で未重合フィルムを重合させることができ、支持基材の耐熱性の選択幅が広がるという点及び工業的に製造が容易であるという点で、光重合性の重合性基を有する本発明の化合物及び液晶化合物を用いることが好ましい。また成膜性の観点からも光重合が好ましい。光重合反応は、未重合フィルムに可視光、紫外光又はレーザー光を照射することにより行われる。取り扱いやすいという点で、紫外光が特に好ましい。光照射は、本発明の化合物が液晶相をとる温度で行ってもよい。この際、マスキング等によって重合フィルムをパターニングすることもできる。
複屈折率Δn(λ)は、重合時の露光量、加熱温度、加熱時間適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように調製することができる。」

オ 「【0422】
(実施例1)
<化合物(A1-1)の合成例>
化合物(A1-1)は下記のスキームに従って合成した。
【0423】

【0424】
[化合物(1-a)の合成例]
2,5-ジメトキシアニリン21.5g(140mmol)、ベンゾチオフェン-2-カルボン酸25.0g(140mmol)及び脱水クロロホルム125.3gを混合し反応させた。得られた混合液にN、N-ジメチルアミノピリジン1.71g(14mmol)を加えた。得られた混合液を氷浴で冷却して、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド31.8g(154mmol)を加えて一時間反応させた。その後、混合液を室温まで戻し、得られた混合液をシリカゲルを通すことによって濾過して沈殿を除去後、減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル-ヘプタンの1/2(v/v)溶液を加えて結晶化させた。析出した結晶を濾過、真空乾燥して、淡黄色粉末として化合物(1-a)を33.4g得た。収率は2,5-ジメトキシアニリン基準で76%であった。
【0425】
[化合物(1-b)の合成例]
化合物(1-a)33.35g(106mmol)、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン-2,4-ジスルフィド(ローソン試薬)22.4g(55.0mmol)及びトルエン200gを混合し、得られた混合液を80℃に昇温して反応させた。冷却後濃縮し、化合物(1-b)とローソン試薬の分解物とを主成分とする赤色粘稠固体を得た。
【0426】
[化合物(1-c)の合成例]
前項で得られた化合物(1-b)を含む混合物、水酸化ナトリウム25.5g(639mmol)及び水580gを混合し、得られた混合液を氷冷下で反応させた。続いてフェリシアン化カリウム95.6g(290mmol)を含む水溶液を、氷冷下で混合液に加え、室温で12時間反応させた。析出した黄色沈殿を濾取した。濾取した沈殿を、水、次いでヘキサンで洗浄し、エタノールで洗浄して、真空乾燥して、化合物(1-c)を主成分とする淡黄色固体19.5gを得た。収率は化合物(1-a)基準で56%であった。
【0427】
[化合物(1-d)の合成例]
化合物(1-c)19.5g(59.6mmol)及び塩化ピリジニウム97.5g(5倍質量)を混合し、180℃に昇温して2時間反応させた。得られた混合液を冷却後、水を加え、得られた沈殿を濾取し、水、次いでヘキサンで洗浄して、化合物(1-d)を主成分とする固体18gを得た。収率は化合物(1-c)基準で95%であった。
【0428】
[化合物(A1-1)の合成例]
化合物(1-d)5.00g(16.7mmol)、化合物(A)14.68g(35.1mmol)、ジメチルアミノピリジン0.20g(1.67mmol)及びクロロホルム60mLを混合した。得られた混合液に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩7.68g(40.1mmol)を氷冷下で加えた。得られた反応溶液を攪拌し、シリカゲルで濾過したのち、減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させた。得られた溶液を攪拌しながらメタノールを加えて、生成した白色沈殿を濾取し、真空乾燥して化合物(A1-1)を白色粉末として10.9g得た。収率は化合物(1-d)基準で59%であった。

(中略)

【0430】
得られた化合物(A1-1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A1-1)は、昇温時において、147℃から155℃までスメクチック相を呈し、155℃から180℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、93℃までネマチック相を呈し結晶化した。」

カ 「【0462】
(実施例5)
<化合物(A11-1)の合成例>
化合物(A11-1)は下記のスキームに従って合成した。
【0463】

【0464】
[4,6-ジメチルベンゾフランの合成例]
3,5-ジメチルフェノール25g(205mmol)をN,N’-ジメチルアセトアミド150.0gに溶解させた。溶液を氷浴により冷却した後に、水酸化ナトリウム9.82(246mmol)を加えた。室温で1時間攪拌し、クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール25.49g(266mmol)を滴下した。100℃で15時間攪拌し、反応液を水1000mL、メチルイソブチルケトン400mLに加えて分液した。有機層を回収し、2回500mLの1N-水酸化ナトリウム水溶液で、さらに2回800mLの純水で有機層を洗浄した。有機層を回収後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレータにて減圧濃縮させ淡赤色粘稠液体を得た。一方で、400gのトルエンと、オルトリン酸3.01gを混合し110℃に加熱した。該溶液に淡赤色粘稠液体をトルエン100mLに溶解させた溶液を滴下した。3時間110℃で攪拌した後、室温まで冷却した。反応液を1N-炭酸水素ナトリウム水溶液で二回洗浄し、最後に純水500mLで洗浄した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて減圧濃縮、真空乾燥させて、4,6-ジメチルベンゾフランを16.5g淡赤色粘稠液体として得た。収率は3,5-ジメチルフェノール基準で55%であった。
【0465】
[2-ホルミル-4,6-ジメチルベンゾフランの合成例]
4,6-ジメチルベンゾフラン21.62g(148mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド28.4g(389mmol)に溶解させた。溶液を水浴により冷却した後に、オキシ塩化リン25g(163mmol)を滴下した。ピンク色溶液を室温で1時間攪拌した後、100℃で10時間攪拌した。反応液を室温まで放冷し、純水100mLを加えて一時間攪拌後、1N炭酸水素ナトリウムで中和した。pHを8に調節後、トルエンと分液した。有機層を回収し、活性炭を2.6g加えて濾過した。エバポレータにて減圧濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、ヘプタンにて結晶化させた。結晶を濾取、真空乾燥して、2-ホルミル-4,6-ジメチルベンゾフランを19.5g淡黄色粉末として得た。収率は4,6-ジメチルベンゾフラン基準で76%であった。
【0466】
[4,6-ジメチルベンゾフラン-2-カルボン酸の合成例-1]
2-ホルミル-4,6-ジメチルベンゾフラン19.50g(112mmol)、アミド硫酸13.04g(134mmol)を100mLの純水と混合した。氷浴で冷却し、亜塩素酸ナトリウム12.15g(134mmol)の水100mL溶液を滴下した。水浴で36時間反応させた。反応溶液にトルエン100mL、水酸化カリウム25gを加えてpHを12に調整した。分液し、水層を回収し水層をさらに200mLのトルエンで洗浄した。水層を回収し、2N-塩酸にてpHを2にした後、トルエン400mLを加えて分液した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて減圧濃縮、真空乾燥して、4,6-ジメチルベンゾフラン-2-カルボン酸を14.27g黄色粉末として得た。収率は2-ホルミル-4,6-ジメチルベンゾフラン基準で67%であった。

(中略)

【0471】
[化合物(11-a)の合成例]
2,5-ジメトキシアニリン11.49g(75.0mmol)、4,6-ジメチルベンゾフラン-2-カルボン酸14.27g(75.7mmol)、トリエチルアミン7.59g(75.0mmol)、N,N’-ジメチルアミノピリジン1.83g(15.0mmol)及び脱水N,N’-ジメチルアセトアミド100.0gを混合した。得られた溶液を氷浴にて冷却した後、BOP試薬34.85g(82.5mmol)を加えて室温で24時間反応させた。得られた混合液に水、メタノールの混合溶液(水2体積部、メタノール1体積部)を加えて晶析させた。得られた沈殿を濾取し水?メタノールの混合溶液(水3体積部、メタノール2体積部)で洗浄、真空乾燥して、淡黄色粉末として化合物(11-a)を16.2g得た。収率は2,5-ジメトキシアニリン基準で66%であった。
【0472】
[化合物(11-b)の合成例]
化合物(11-a)16.0g(49mmol)、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン-2,4-ジスルフィド(ローソン試薬)9.2g(30.0mmol)及びトルエン100gを混合し、得られた混合液を80℃に昇温して12時間反応させた。冷却後濃縮し、化合物(11-b)とローソン試薬の分解物とを主成分とする赤色粘稠固体を得た。
【0473】
[化合物(11-c)の合成例]
前項で得られた化合物(11-b)を含む混合物、水酸化ナトリウム11.8g(262mmol)及び水250gを混合し、得られた混合液を氷冷下で反応させた。続いてフェリシアン化カリウム44.17g(134mmol)を含む水溶液を、氷冷下で加え、反応させた。60℃で12時間反応させて、析出した黄色沈殿を濾取した。濾取した沈殿を水、次いでヘキサンで洗浄し、トルエンで結晶化させた。得られた黄色を真空乾燥して、化合物(11-c)を主成分とする黄土色固体4.1gを得た。収率は化合物(11-a)基準で25%であった。
【0474】
[化合物(11-d)の合成例]
化合物(11-c)4.0g(12.0mmol)及び塩化ピリジニウム40.0g(10倍質量)を混合し、180℃に昇温して3時間反応させた。得られた混合液を氷に加え、得られた沈殿を濾取した。水で懸洗後、トルエンで洗浄、真空乾燥させて、化合物(11-d)を主成分とする黄土色固体3.4gを得た。収率は化合物(11-c)基準で93%であった。
【0475】
[化合物(A11-1)の合成例]
化合物(11-d)3.00g(9.64mmol)、化合物(A)8.47g(20.23mmol)、ジメチルアミノピリジン0.12g(0.96mmol)及びクロロホルム40mLを混合した。得られた混合液にN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド2.92g(23.12mmol)を氷冷下で加えた。得られた反応溶液を室温で終夜反応させ、シリカゲル濾過したのち、減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させ0.3gの活性炭を加えて、室温で一時間攪拌した。溶液を濾過して濾液をエバポレータにて1/3まで減圧濃縮後、攪拌しながらメタノールを加えて、生成した白色沈殿を濾取し、ヘプタンで洗浄、真空乾燥して化合物(A11-1)を白色粉末として7.60g得た。収率は化合物(11-d)基準で71%であった。

(中略)

【0477】
得られた化合物(A11-1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A11-1)は、昇温時において、105℃から137℃まで粘性の高い中間相を示した。液晶相の判別は困難であったが、137℃以上で明確なネマチック液晶相を呈した。ネマチック液晶相は180℃以上まであり、降温時においては、61℃までネマチック相を呈し結晶化した。」

キ 「【0498】
(実施例8)
<化合物(A25-1)の合成例>
化合物(A25-1)は下記のスキームに従って合成した。
【0499】

【0500】
[化合物(25-a)の合成例]
2,5-ジメトキシアニリン15.8g(103mmol)、チエノ[3,2-b]チオフェン-2-カルボン酸19.0g(113mmol)トリエチルアミン10.4g(199mmol)、N,N’-ジメチルアミノピリジン4.85g(3.97mmol)及び脱水N,N’-ジメチルアセトアミド95.0gを混合した。得られた溶液を氷浴にて冷却した後、BOP試薬47.9g(113mmol)を加えて室温で24時間反応させた。得られた混合液に水、メタノールの混合溶液(水2体積部、メタノール1体積部)を加えて晶析させた。得られた沈殿を濾取し水?メタノールの混合溶液(水1体積部、メタノール1体積部)で洗浄、真空乾燥して、黄色粉末として化合物(25-a)を21.0g得た。収率は2,5-ジメトキシアニリン基準で64%であった。
【0501】
[化合物(25-b)の合成例]
化合物(25-a)27.0g(85mmol)、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン-2,4-ジスルフィド(ローソン試薬)17.8g(44.0mmol)及びトルエン122gを混合し、得られた混合液を80℃に昇温して5時間反応させた。冷却後析出した沈殿を濾取し、化合物(25-b)とローソン試薬の分解物とを主成分とする褐色固体を得た。
【0502】
[化合物(25-c)の合成例]
前項で得られた化合物(25-b)を含む混合物26.4g、水酸化ナトリウム18.9g(472mmol)及び水450gを混合し、得られた混合液を氷冷下で反応させた。続いてフェリシアン化カリウム70.7g(215mmol)を含む水溶液を、氷冷下で加え、反応させた。室温で12時間反応させて、析出した黄色沈殿を濾取した。濾取した沈殿を水、次いでヘキサンで洗浄し、エタノールで洗浄して、真空乾燥して、化合物(25-c)を主成分とする黄色固体15gを得た。収率は化合物(25-a)基準で58%であった。
【0503】
[化合物(25-d)の合成例]
化合物(25-c)15.0g(48.2mmol)及び塩化ピリジニウム75.0g(5倍質量)を混合し、180℃に昇温して3時間反応させた。得られた混合液を冷却後、水を加え、得られた沈殿を濾取し、水、熱トルエン、ヘキサンで洗浄して、化合物(25-d)を主成分とする固体6.6gを得た。収率は化合物(25-c)基準で45%であった。
【0504】
[化合物(A25-1)の合成例]
化合物(25-d)2.0g(6.6mmol)、化合物(A)5.76g(13.8mmol)、ジメチルアミノピリジン0.08g(0.65mmol)及びクロロホルム30mLを混合した。得られた混合液にN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド1.98g(15.7mmol)を氷冷下で加えた。得られた反応溶液を室温で終夜反応させ、0.8gの活性炭を加え終夜静置後、シリカゲル濾過したのち、減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させた。得られた溶液を攪拌しながらメタノールを加えて、生成した褐色沈殿を濾取し、エタノールで洗浄、真空乾燥して化合物(A25-1)を淡褐色粉末として4.30g得た。収率は化合物(25-d)基準で60%であった。

(中略)

【0506】
得られた化合物(A25-1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A25-1)は、昇温時において、175℃から180℃までスメクチック相を呈し、180℃から238℃以上までネマチック相を呈し、238℃で透明点を示す。降温時において、168℃までネマチック相を呈し結晶化した。」

ク 「【0528】
(実施例12?24、比較例1)
<光学フィルムの製造例>
ガラス基板に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液を塗布し、乾燥後、厚さ89nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施し、ラビング処理を施した面に、表1に記載の組成の組成物をスピンコート法により塗布し、表2に記載の乾燥温度で1分間乾燥した。次いで表2に記載の光照射時の温度まで加温しながら、表2に記載の積算光量の紫外線を照射して、表3に記載の膜厚の光学フィルムを形成させた。
表1は、組成物全体に対する各構成成分の含有率(質量%)を表す。
【0529】
【表1】

【0530】
LC242:BASF社より市販されている下記式の液晶化合物
重合開始剤:イルガキュア819(チバ・ジャパン株式会社製)
レベリング剤:BYK361N(ビックケミージャパン製)
溶剤:シクロペンタノン
【0531】

【0532】
【表2】

【0533】
<光学特性の測定>
光学フィルムの正面位相差値を測定機(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。尚、基材に使用したガラス基板には、複屈折性が無いため、ガラス基板付きフィルムを測定機で計測することにより、ガラス基板上に作製した光学フィルムの正面位相差値を得ることができる。得られた光学測定正面位相差値は、波長447.3nm、546.9nm、及び627.8nmにおいて、それぞれ測定し、[Re(447.3)/Re(546.9)](αとする)及び[Re(627.8)/Re(546.9)](βとする)を算出した。また、光学フィルムの膜厚d(μm)をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス社製)を用いて測定した。結果を表3に示す。Δnは、Re(546.9)の値を膜厚で割って算出した(Δn=Re(546.9)/d)。
【0534】
【表3】


(中略)

【0616】
実施例12?24、実施例30?33、及び実施例42?43の光学フィルムは、[Re(447.3)/Re(546.9)](表中α)の値が1以下であった。また、[Re(627.8)/Re(546.9)](表中β)の値が1以上であった。つまり、屈折率の波長依存性がいわゆる逆波長分散性を示すため、広い波長域において一様の偏光変換が可能である。」

(2)引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1の上記記載事項カに基づけば、引用文献1には、実施例5として、次の発明(以下、「引用発明a」という。)が記載されていると認められる。
「以下の化合物(11-d)3.00g(9.64mmol)、以下の化合物(A)8.47g(20.23mmol)、ジメチルアミノピリジン0.12g(0.96mmol)及びクロロホルム40mLを混合し、得られた混合液にN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド2.92g(23.12mmol)を氷冷下で加え、得られた反応溶液を室温で終夜反応させ、シリカゲル濾過したのち、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加えて結晶化させ、結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させ0.3gの活性炭を加えて、室温で一時間攪拌し、溶液を濾過して濾液をエバポレータにて1/3まで減圧濃縮後、攪拌しながらメタノールを加えて、生成した白色沈殿を濾取し、ヘプタンで洗浄、真空乾燥して得た、以下の化合物(A11-1)の白色粉末。



イ 引用文献1の上記記載事項オに基づけば、引用文献1には、実施例1として、次の発明(以下、「引用発明b」という。)が記載されていると認められる。
「以下の化合物(1-d)5.00g(16.7mmol)、以下の化合物(A)14.68g(35.1mmol)、ジメチルアミノピリジン0.20g(1.67mmol)及びクロロホルム60mLを混合し、得られた混合液に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩7.68g(40.1mmol)を氷冷下で加え、得られた反応溶液を攪拌し、シリカゲルで濾過したのち、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加えて結晶化させ、結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させ、得られた溶液を攪拌しながらメタノールを加えて、生成した白色沈殿を濾取し、真空乾燥して得た、以下の化合物(A1-1)の白色粉末。



ウ 引用文献1の上記記載事項キに基づけば、引用文献1には、実施例8として、次の発明(以下、「引用発明c」という。)が記載されていると認められる。
「以下の化合物(25-d)2.0g(6.6mmol)、以下の化合物(A)5.76g(13.8mmol)、ジメチルアミノピリジン0.08g(0.65mmol)及びクロロホルム30mLを混合し、得られた混合液にN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド1.98g(15.7mmol)を氷冷下で加え、得られた反応溶液を室温で終夜反応させ、0.8gの活性炭を加え終夜静置後、シリカゲル濾過したのち、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加えて結晶化させ、結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させ、得られた溶液を攪拌しながらメタノールを加えて、生成した褐色沈殿を濾取し、エタノールで洗浄、真空乾燥して得た、以下の化合物(A25-1)の淡褐色粉末。



(3)引用文献2の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願優先権主張の日前の平成22年2月12日に頒布された刊行物である引用文献2(特開2010-31223号公報)には、以下の記載事項がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板などの光学フィルムを用いた部材が含まれている。光学フィルムには、たとえば、重合性化合物を溶剤に溶かして得られる溶液を、支持基材に塗布後、重合して得られる光学フィルムなどが挙げられる。そして、波長λnmの光が与える光学フィルムの位相差(Re(λ))は、複屈折率Δnとフィルムの厚みdとの積で決定されることが知られている(Re(λ)=Δn×d)。また波長分散特性は、通常、ある波長λにおける位相差値Re(λ)を550nmにおける位相差値Re(550)で除した値(Re(λ)/Re(550))で表され、(Re(λ)/Re(550))が1に近い波長域や、[Re(450)/Re(550)]<1かつ[Re(650)/Re(550)]>1の逆波長分散性を示す波長域では、一様の偏光変換が可能であることが知られている。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える新しい化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(1)で表される化合物である。
P^(1)-F^(1)-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(1)-D^(1)-Ar-D^(2)-G^(2)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)-F^(2)-P^(2) (1)
[式(1)中、Arは芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基を表し、Ar基中の芳香環に含まれるπ電子の数N_(π)は、12以上である。
D^(1)及びD^(2)は、それぞれ独立に、*-O-CO-(*は、Arに結合する位置を表す)、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-R^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(2)R^(3)-NR^(1)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4のフルオロアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E^(1)、E^(2)、B^(1)及びB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。該炭素数1?4のアルキル基及び該炭素数1?4アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0?3の整数を表す。
F^(1)及びF^(2)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1?5のアルキル基、炭素数1?5のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、-O-又は-CO-に置換されていてもよい。
P^(1)及びP^(2)は、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基(ただし、P^(1)及びP^(2)のうち少なくとも1つは、重合性基を表す)を表す。]
【発明の効果】
【0006】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与えることができる。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の化合物(以下「化合物(1)」という場合がある)は、式(1)で表される。
P^(1)-F^(1)-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(1)-D^(1)-Ar-D^(2)-G^(2)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)-F^(2)-P^(2) (1)

(中略)

【0111】
さらに化合物(1)としては、化合物(i)?化合物(xxxiv)が挙げられる。

(中略)

【0114】
さらに表1の化合物(i)、化合物(ii)、化合物(iv)、化合物(v)、化合物(vi)、化合物(ix)、化合物(x)、化合物(xi)、化合物(xvi)、化合物(xviii)、化合物(xix)、化合物(xx)、化合物(xxi)、化合物(xxiii)、化合物(xxiv)、化合物(xxv)、化合物(xxvi)、化合物(xxvii)、、化合物(xxviii)、及び、化合物(xxix)の代表的な構造式を式(ii-1)、式(iv-1)、式(v-1)、式(v-2)、式(v-3)、式(v-4)、式(v-5)、式(vi-1)、式(ix-1)、式(x-1)、式(xi-1)、式(xvi-1)、式(xix-1)、式(xx-1)、式(xxi-1)、式(xxiii-1)、式(xxiv-1)、式(xxv-1)、式(xxvi-1)、式(xxvii-1)、式(xxviii-1)、式(xxix-1)、式(xxxii-1)、及び、式(xxxiv-1)に例示する。本発明の光学フィルムにおいて、異なる複数の種類の化合物(1)を用いてもよい。

(中略)

【0116】


(中略)

【0117】

(中略)



ウ 「【0244】
(化合物(e)の合成例2)
化合物(e)は以下に示す経路でも合成できる。


(中略)

【0270】
<化合物(v-1)の第一経路での合成例>
化合物(v-a)2.88g(10mmol)、化合物(e)8.37g(20mmol)、ジメチルアミノピリジン0.24g(2mmol)及びクロロホルム75mLを混合した。得られた混合液にジシクロヘキシルカルボジイミド4.95g(24mmol)のクロロホルム溶液40mLを氷冷下で滴下した。得られた反応溶液を攪拌し、濾過したのち、分離した有機層を回収した。有機層を乾燥後、減圧濃縮した。残渣に酢酸エチルを加えて溶解し、減圧濃縮後、メタノール200mLを加えて氷冷下で再沈殿させた。沈殿を濾取し、さらにメタノールで洗浄、濾過後、得られた固体を真空乾燥して化合物(v-1)を10.3g得た。収率は化合物(v-a)基準で94%であった。

(中略)

【0254】
(化合物(v-a)の合成例)
化合物(vi-a)と同様の手法でベンゾチアゾールを合成後、塩化ピリジニウム或いは三臭化ホウ素による脱メチル化反応によって化合物(v-a)を合成した。エタノール洗浄、トルエン洗浄により化合物(v-a)を主成分とする橙色固体を得た。反応スキームを以下に示す。
【0255】


(中略)

【0272】
得られた化合物(v-1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行った。化合物(v-1)は、昇温時において、160℃から169℃までスメクチック相を呈し、169℃から224℃までネマチック相を呈し、降温時において、224℃から154℃までネマチック相を呈した。」

エ 「【0291】
(化合物(x-a)の製造例)
化合物(x-a)は以下のスキームで合成した。


(中略)

【0330】
<化合物(x-1)の第一経路での合成例>
化合物(v-1)の合成例における、原料の化合物(v-a)を化合物(x-a)に変える以外は同様の方法にて、化合物(x-1)を得た。収率は化合物(x-a)基準で84%であった。

(中略)

【0332】
得られた化合物(x-1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行った。化合物(x-1)は、昇温時において、101℃から106℃までスメクチック相を呈し、106℃から180℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、81℃までネマチック相を呈し結晶化した。」

オ 「【0461】
<光学フィルムの製造例>
(実施例1)
ガラス基板にポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2重量%水溶液を塗布したのち、加熱乾燥後、厚さ89nm膜を得た。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施したのち、ラビング処理を施した面に、表2の組成の塗布液をスピンコート法により塗布した。100℃ホットプレート上で1分間乾燥した後、100℃で加熱しながら1200mJ/cm^(2)の紫外線を照射して、膜厚1.04μmの光学フィルムを作製した。
表2中、溶剤以外の表中の重量%は、塗布液を100重量%とした固形分の重量%を意味する。
【0462】
【表2】

【0463】
A:LC242(BASF社より市販されている液晶化合物)
光重合性開始剤:イルガキュア907、イルガキュア819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
レベリング剤:BYK361N(ビックケミージャパン製)

(中略)

【0465】
(実施例3)
実施例1に記載したラビング処理を施したポリビニルアルコール基板上に、表2の組成の塗布液(混合溶液)をスピンコート法により塗布した。80℃ホットプレート上で1分間乾燥した後、さらに210℃で1分間乾燥させた。得られた未重合フィルムを190℃まで冷却して、同温度で保温しながら1200mJ/cm^(2)の紫外線を照射して、膜厚2.43μmの光学フィルムを作製した。

(中略)

【0468】
(実施例6)
実施例1に記載したラビング処理を施したポリビニルアルコール基板上に、表2の組成の塗布液(混合溶液)をスピンコート法により塗布した。80℃ホットプレート上で1分間乾燥した後、さらに140℃まで昇温し乾燥させた。得られた未重合フィルムを同温度で保温しながら1200mJ/cm^(2)の紫外線を照射して、膜厚1.59μmの光学フィルムを作製した。

(中略)

【0474】
<光学特性の測定>
450nmから700nmの波長範囲において、作製した光学フィルムの位相差値を測定機(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定し、装置付属プログラムで波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)、波長650nmの位相差値Re(650)を算出した。結果を表3に示す。
【0475】
【表3】



(4)引用文献2に記載された発明
ア 引用文献2の上記記載事項イ及びウに基づけば、引用文献2には、化合物(v-1)の第一経路での合成例として、次の発明(以下、「引用発明d」という。)が記載されていると認められる。
「下記化合物(v-a)2.88g(10mmol)、下記化合物(e)8.37g(20mmol)、ジメチルアミノピリジン0.24g(2mmol)及びクロロホルム75mLを混合し、得られた混合液にジシクロヘキシルカルボジイミド4.95g(24mmol)のクロロホルム溶液40mLを氷冷下で滴下し、得られた反応溶液を攪拌し、濾過したのち、分離した有機層を回収し、有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えて溶解し、減圧濃縮後、メタノール200mLを加えて氷冷下で再沈殿させ、沈殿を濾取し、さらにメタノールで洗浄、濾過後、真空乾燥して得た化合物(v-1)を含む固体。



イ 引用文献2の上記記載事項イ?エに基づけば、引用文献2には、化合物(x-1)の第一経路での合成例として、次の発明(以下、「引用発明e」という。)が記載されていると認められる。
「下記化合物(x-a)2.88g(10mmol)、下記化合物(e)8.37g(20mmol)、ジメチルアミノピリジン0.24g(2mmol)及びクロロホルム75mLを混合し、得られた混合液にジシクロヘキシルカルボジイミド4.95g(24mmol)のクロロホルム溶液40mLを氷冷下で滴下し、得られた反応溶液を攪拌し、濾過したのち、分離した有機層を回収し、有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えて溶解し、減圧濃縮後、メタノール200mLを加えて氷冷下で再沈殿させ、沈殿を濾取し、さらにメタノールで洗浄、濾過後、真空乾燥して得た化合物(x-1)を含む固体。



(5)引用文献3の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願優先権主張の日前の平成23年3月24日に頒布された刊行物である引用文献3(特開2011-57635号公報)には、以下の記載事項がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体とのエステル化反応を行う液晶化合物の製造方法であって、目的とする液晶化合物の結晶を高純度で効率よく単離することができる液晶化合物の製造方法に関する。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体とのエステル化反応を行う液晶化合物の製造方法であって、エステル化反応後において、効率よく有機塩類が除去でき、また、目的とする液晶化合物の結晶を高純度で効率よく単離することができる液晶化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体とのエステル化反応を行って得られた反応液から、目的とする液晶化合物の結晶を高純度で効率よく単離する方法について鋭意研究した。その結果、エステル化反応により得られた反応液に少量のアルコールを添加して全容を攪拌した後、水及び所望により水に混和しない有機溶媒を添加して分液操作を行うと、有機塩類を水層側に効率よく除去することができ、更にその後、分離した有機層にアルコールを添加することで、目的とする液晶化合物の結晶を高純度で効率よく単離することができることを見出し、本発明を完成するに至った。

(中略)

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体とのエステル化反応を行う液晶化合物の製造方法であって、エステル化反応後において、効率よく有機塩類が除去でき、その処理液にアルコールを添加することで、目的とする液晶化合物を高純度で効率よく単離することができる液晶化合物の製造方法が提供される。」

イ 「【0059】
(工程(II))
次いで、工程(I)で得られた反応液に、第1のアルコールの所定量を添加して全容を攪拌した後、反応液に、水及び所望により水に混和しない有機溶媒を添加して分液操作を行う。
【0060】
すなわち、工程(I)で得られた反応液に、第1のアルコールの所定量を添加し、全容を攪拌することにより、その後における分液操作において、有機塩類を水層側へ効率よく除去することができ、目的とする液晶化合物を高純度な結晶として単離することができる。」

ウ 「【0066】
(工程(III))
次いで、工程(II)で得た有機層(処理液)に、第2のアルコールの所定量を添加して、目的とする液晶化合物を結晶化させることで、目的とする液晶化合物を単離することができる。」

エ 「【0082】
(実施例1)式(1a)で表される液晶化合物(1a)の合成
【0083】
【化13】

【0084】
窒素気流下、下記式(3a)
【0085】
【化14】

【0086】
に示される側鎖部前駆体(日本シイベルへグナー社製)73.1g(0.25mol)をテトラヒドロフラン208.8gに溶解させ、メタンスルホニルクロライド28.7g(0.25mol)を添加して0℃に冷却し、その溶液にトリエチルアミン26.3g(0.26mol)を滴下した。0℃で1時間撹拌後、4-ジメチルアミノピリジン1.5g(0.013mol)、中心部前駆体(A)29.8g(0.10mol)を添加し、さらに、トリエチルアミン27.3g(0.27mol)を滴下し、全容を20℃で2時間撹拌した。
反応液にメタノールを29.8g加え1時間撹拌した後、得られた処理液に酢酸エチル104.4g、及び10重量%食塩水149.2gを加えて分液し、有機層を分取した。得られた有機層を5重量%食塩水149.2gで洗浄した後、メタノール250.6gを加えて結晶化を行い、式(1a)で示される液晶化合物(1a)の粗結晶72.0gを得た。得られた粗結晶にトリエチルアミン0.4g、酢酸エチル372.9g、及びろ過助剤2.2gを添加し、全容を40℃で1時間撹拌後、30℃に冷却し、ろ過助剤及び不溶分をろ過により除去した。次に、得られたろ液にメタノール447.5gを加えて結晶化を行い、粗結晶67.8gを得た。更に、得られた粗結晶にトリエチルアミン0.3g、酢酸エチル335.6g、ろ過助剤2.0gを添加し、全容を40℃で1時間撹拌後、30℃に冷却し、ろ過助剤及び不溶分をろ過により除去した。次いで、得られたろ液にメタノール402.7gを加えて結晶化を行い、液晶化合物(1a)を61.8g得た。」


5 当審の判断
(1)理由1(明確性)
本件発明は、「少なくとも1つのメソゲン基と、重合性基とを有する逆波長分散性又は低波長分散性化合物と、前記化合物の重合体を含有する混合物」であるから、本件発明の「混合物」には、「少なくとも1つのメソゲン基と、重合性基とを有する逆波長分散性又は低波長分散性化合物」及び「前記化合物の重合体」以外の物質(以下、「本件発明の不純物」という。)が含まれていてもよいものである。
これに対して、本願の請求項3は、本件発明の混合物と、有機溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、光重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、チキソ剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤及び表面処理剤から選ばれる少なくとも一種からなる組成物に関する。また、本願の請求項6は、請求項3に記載の組成物を重合することにより得られる重合体に関する。
ここで、本願の請求項3は、「(式1)」によって、混合物の黄色度YI及び逆波長分散性又は低波長分散性化合物のΔnによって定められるYI/Δnの範囲を特定するものである。しかしながら、請求項3に記載の組成物や請求項6に記載の重合体から、本件発明の「組成物」の構成を特定することはできないと解される(本件発明の不純物の中には、請求項3に記載の「有機溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、光重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、チキソ剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤及び表面処理剤」や、これらの物質に含まれた不可避不純物と、区別が付かない物質も含まれると解され、また、請求項6に記載の重合体においては、重合の結果、区別が付かなくなったり、失われる物質もあると解される。)。そうすると、請求項3に記載の組成物や請求項6に記載の重合体において、「混合物の黄色度YI」の値を特定することができないといえる。請求項4及び5に記載された組成物についても同様であり、また、請求項7?13に記載の物については、なおさらである。
したがって、本件出願の請求項3?13は、YI/Δnの構成との関係において、どのような組成物や重合体等が請求項3?13に係る発明の範囲に入るか否かを、本件出願時の当業者が理解することができるように記載されているとはいえないから、請求項3?13に係る発明は明確であるということができない。

(2)理由2(サポート要件)
ア 本件発明は、混合物が、「0.5≦YI/Δn≦500」(式1)を満たすことを要件としている。

イ 本件発明が解決しようとする課題は、本願の明細書段落[0005]の記載に基づけば、「重合性組成物に添加しフィルム状の重合物を作製した場合にはじきが生じにくく、得られたフィルム状の重合物に対し紫外光を照射した場合に、配向欠陥が生じにくい重合性組成物を提供すること」であるといえる。

ウ そして、本件出願の明細書段落[0015]には、「上記(式1)を満たすものであれば、精製の度合いが適度な範囲であるため、高い収率を得ることができる。また、上記(式1)を満たすものであれば、はじきが少なく、紫外光を照射した場合に配向欠陥が少ない光学異方体を得ることができる。はじきの原因として、組成物中のポリマー成分量や、化合物の分子構造等が影響を及ぼす可能性があげられるが、上記範囲内の混合物は、適度なポリマー成分及び化合物の剛直性を有することが考えられる。また、配向性に影響を及ぼす原因として、化合物が一部重合してできた、化合物同様のメソゲン骨格を持つポリマーの働きがあげられるが、上記範囲内の混合物は、ポリマー成分が均一に分散しており、また、メソゲン骨格の構造として剛直性が高すぎず、且つ、ポリマー成分中のメソゲン部位と化合物のメソゲン部位の分子間相互作用が働くことから、ポリマー成分による配向効果が効果的に得られることが考えられる。」と記載されている。
しかしながら、「化合物同様のメソゲン骨格を持つポリマー」は、「化合物」と同様の化学構造を有するものである。そして、モノマーは比較的可撓性の高いスペーサー基を介して重合性基を有しており、モノマー成分の液晶性によって配向した状態で重合するポリマーの共役系が、モノマーの共役系に比べて大きくなるとは考えがたい。そうすると、両者の色調が大きく異なるものとは考えがたく、「混合物の黄色度」である「YI」が「組成物中のポリマー成分量」を反映した値であるとはいえない。
また、仮に、請求人が令和元年6月3日に提出した意見書において主張するように、メソゲン基を有する一般式(I)で表される化合物が、液晶性を有するにも関わらず、「メソゲン骨格を有する比較的剛直な部分と、スペーサー部分の比較的可撓性の高い部分を有」する重合体を形成するとしても、「組成物中のポリマー成分量」と、化合物またはポリマーの化学構造に起因する「メソゲン骨格の構造として剛直性」との間に、何ら関係性を見いだすことができない。そして、そのような重合体が、混合物中に均一に分散するとする根拠も見いだせない。このため、「上記範囲内の混合物は、ポリマー成分が均一に分散しており、また、メソゲン骨格の構造として剛直性が高すぎず」という特性を備えると理解することができない。
さらに、一般にメソゲン(液晶)成分の配向は、ラビング処理等によりもたらされるものであり、メソゲン(液晶)成分の棒状分子形状及び分子間力の影響を受けるものである。仮に化合物の重合体と化合物とが相分離するとしても、膜となるとは考えがたく、液晶性化合物に対して一様の配向性を与えるように配向するとも考えられない。そうすると、請求人が主張するように、相分離した重合体が配向膜のような役割を果たすとは理解できない。したがって、棒状分子形状が大きく異なる「ポリマー成分」が剛直性を有する部分と可撓性を有する重合体であったとしても、配向性に寄与するとはいえない。以上より、「ポリマー成分中のメソゲン部位と化合物のメソゲン部位の分子間相互作用が働くことから、ポリマー成分による配向効果が効果的に得られる」とする根拠を見いだせない。
あるいは、「混合物の黄色度」が「はじきが少なく、紫外光を照射した場合に配向欠陥が少ない光学異方体を得ること」(段落[0015])の尺度となるためには、例えば、「混合物の黄色度」を左右する化合物と、「はじきの発生」を左右する化合物と、「配向欠陥」を左右する化合物とが、同一の化合物であることが必要と考えられる。請求人は、令和元年6月3日に提出した意見書において「化合物の重合体は、化合物よりも極性が高いことから、有機溶剤への溶解性が高まります。本願発明の混合物を基材に塗布する際は、混合物を有機溶剤に溶解して用いることから、化合物の重合体を適度に含有することから溶解性が高まることにより、基材への塗布性が向上して密着性が高まるため、「はじき」の発生を抑制すると考えられます。」と主張しているが、単量体構造が共通する重合体の極性が、単量体と比べて高くなるとする根拠、重合体を含む混合物の有機溶媒への溶解性が高まるとする根拠を何ら示していない。
そして、本件発明の「Δn」は、本件出願の明細書段落[0014]の「Δnはメソゲン基を有する化合物の屈折率異方性を表す。」との記載に基づけば、メソゲン基を有する化合物の屈折率異方性を表す指標であると認められるところ、「Δn」と、精製の度合い、収率、はじきや、配向欠陥との関係について何ら説明されていない。また、「Δn」とメソゲン基を有する化合物やポリマーを含む混合物の黄色度「YI」との関係も不明であり、「YI」を「Δn」で除した物理量にどのような技術的意味があるのか、その物理量が、はじきや配向欠陥とどのような関係があるのかについて、理解することができない。

エ 本願の明細書段落[0315]?[0397]には、実施例として、式(I-A-1)から式(I-A-5)、式(I-B-1)から式(I-B-4)、式(I-C-1)から式(I-C-9)で表される化合物を評価対象の化合物とし、製造したこと、(精製法1)?(精製法13)から選ばれる1つ又は任意の複数の工程を1回又は複数回行い、また、精製剤や溶媒の使用量を適宜調節して、YIの値がそれぞれ異なる混合物を得たこと、配向膜用ポリイミド溶液を厚さ0.7mmのガラス基材にスピンコート法を用いて塗布し、100℃で10分乾燥した後、200℃で60分焼成することにより得られた塗膜をラビング処理したこと、評価対象の化合物を含有する各混合物に対し、光重合開始剤Irgacure907(BASF社製)を1%又は3%、4-メトキシフェノールを0.1%及びクロロホルムを80%添加し塗布液を調製し、この塗布液をラビングしたガラス基材にスピンコート法により塗布し、2分間乾燥させた後、さらに高圧水銀ランプを用いて、紫外線を40mW/cm^(2)の強度で25秒間照射することにより、評価対象のフィルムを作製したこと、が記載されている。
しかし、本件出願の明細書において開示された実験例は、いずれも、同じ「配向膜用ポリイミド溶液」をガラス基材にスピンコート法を用いて塗布し、乾燥した後、焼成することにより得られた塗膜を「ラビング処理」したとされる「ガラス基材」を用いている。一般に、「はじき」は、基材表面及び基材表面に塗布される溶液の表面張力の大きさに依存するものであり、配向性は、ラビング処理の影響を受けることが技術常識であるところ、特定の配向膜、特定の溶媒、特定の配向処理がなされた実験例に基づいて、「YI/Δnの値が0.5以上、500以下の範囲の混合物」であれば、「はじきの発生が抑制され、光照射後の配向性が良好である」という効果を奏するとは考えられない。

オ 以上より、本件発明は、解決しようとする課題を解決できるものとはいえない。したがって、出願時の技術常識に照らしても、本件発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(3)理由3(実施可能要件)
本件発明は、混合物が、「0.5≦YI/Δn≦500」(式1)を満たすことを要件としている。
しかし、本願の明細書の記載は、どのような物質が黄色度「YI」に寄与しているのかや、黄色度「YI」と「精製工程」との関係を明らかにしていない。精製工程として、ろ過や再結晶化、溶媒抽出等様々な精製方法によるものが知られており、その方法の原理や条件によって除去されるものは異なるところ、本件出願の明細書の記載は、どのような精製方法により精製を行うと、「より精製された化合物であるほど、黄色度の値が小さくなる傾向がある」といえるのかを明らかにしていない。
そして、どのような物質について、その量を調整するかにより、採用するべき精製工程が異なることは明らかである。本願の明細書段落[0360]には、実施例の「精製度の異なる混合物」を準備する方法について、(精製法1)?(精製法13)及び「下記の精製方法から選ばれる1つ又は任意の複数の工程を1回又は複数回行い、また、精製剤や溶媒の使用量を適宜調節して、YIの値がそれぞれ異なる化合物を得た。」との記載があるが、例えば、(精製法11)については、「精製対象の混合物をメタノールに分散させ室温で1時間攪拌させた。濾過し乾燥させることにより化合物を得た。」とのみ記載されており、濾過条件について何ら明らかにしていない。そうすると、黄色度「YI」を所定の範囲に調節するにあたり、どのような物質を調製の対象とし、どのような原理、条件の精製方法を採用すべきであるか、各精製方法の最適化も含めて、膨大な試行錯誤を必要とすることは明らかである。
請求人は、令和元年6月3日に提出した意見書において、「上記の方法により、必ずしも再現性よく一定のYI値が得られるとは限りませんが(精製前の混合物の品質によっても変動するため)、本願明細書の段落[0360]に記載された(精製法1)?(精製法13)の方法を採用することで、YI値を所望の範囲に調整することは、決して、膨大な試行錯誤を伴うものではありません。」と主張している。しかしながら、上記のとおり、段落[0360]の記載は、各精製法について、その条件を明らかにしておらず、それぞれの精製法を特定する時点で既に試行錯誤を必要とするものである。また、請求人は、「化合物の精製において、例えば本願請求項1に記載のような混合物を生成するにあたり、特定の精製方法を採用しなければ化合物の重合体を除去できない、ということはありません。」とも主張している。しかし、本件発明を実施するには、「YI/Δn」を特定の範囲となるように混合物を調整することが必要とされるのであって、化合物の重合体を除去することではない。本願の明細書は、「YI/Δn」を特定の範囲となるように混合物を調整することについて、具体的な手段を何ら開示していない。
したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

(4)理由4(新規性)及び理由5(進歩性)
ア 対比
本件発明と引用発明a?eとを対比する。

(ア)引用発明aの「化合物(A11-1)」、引用発明bの「化合物(A1-1)」、引用発明cの「化合物(A25-1)」、引用発明dの「化合物(v-1)」及び引用発明eの「化合物(x-1)」は、その化学構造からみて、「メソゲン基」と「重合性基」とを有する化合物であるといえる。したがって、引用発明aの「化合物(A11-1)」、引用発明bの「化合物(A1-1)」、引用発明cの「化合物(A25-1)」、引用発明dの「化合物(v-1)」及び引用発明eの「化合物(x-1)」と、本件発明の「少なくとも1つのメソゲン基と、重合性基とを有する逆波長分散性又は低波長分散性化合物」とは、「少なくとも1つのメソゲン基と、重合性基とを有する化合物」である点で共通する。

(イ)引用発明aの「化合物(A11-1)」は、その化学構造からみて、本件発明の一般式(I)における、G^(1)が「芳香族複素環」を有する「2価の基」であって、「G^(1)で表される基中の芳香環に含まれるπ電子の数は12以上」であり、A^(1)及びA^(2)が「1,4-シクロヘキシレン基」であり、Z^(1)及びZ^(2)が「-COO-」であり、m1及びm2が「1」であり、R^(1)及びR^(2)が式(I-0-R)であって、重合性基とスペーサー基を有し、X^(0)が「-OCO-」であり、k0が「1」である化合物に該当する。また、引用発明bの「化合物(A1-1)」、引用発明cの「化合物(A25-1)」、引用発明dの「化合物(v-1)」、引用発明eの「化合物(x-1)」についても、同様のことがいえる。したがって、引用発明aの「化合物(A11-1)」、引用発明bの「化合物(A1-1)」、引用発明cの「化合物(A25-1)」、引用発明dの「化合物(v-1)」及び引用発明eの「化合物(x-1)」は、本件発明の「一般式(I)」で表されるとする要件を満たしている。

(ウ)以上より、本件発明と引用発明a?eとは、
「 少なくとも1つのメソゲン基と、重合性基とを有する化合物であって、 前記化合物が、下記一般式(I)
一般式(I)
【化1】

(式中、R^(1)及びR^(2)は各々独立して、式(I-0-R)
一般式(I-0-R)
【化2】

(式中、P^(0)は重合性基を表し、Sp^(0)はスペーサー基又は単結合を表すが、Sp^(0)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、X^(0)は-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH_(2)CH_(2)-、-OCO-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-COO-、-CH_(2)CH_(2)-OCO-、-COO-CH_(2)-、-OCO-CH_(2)-、-CH_(2)-COO-、-CH_(2)-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、X^(0)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く(ただし、P^(0)-(Sp^(0)-X^(0))_(k0)-には-O-O-結合を含まない。)、k0は1から10の整数を表す。)
で表される基、水素原子、炭素原子数1から80の炭化水素基を表すが、当該炭化水素基は置換基を有していても良く、任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていても良く、但し、R^(1)及びR^(2)の少なくとも一つは式(I-0-R)で表される基であり、
A^(1)及びA^(2)は各々独立して1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すが、これらの基は無置換であるか又は1つ以上の上述の置換基Lによって置換されても良く、
Lはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH_(2)-又は隣接していない2個以上の-CH_(2)-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-によって置換されても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されても良く、若しくは、LはP^(L)-(Sp^(L)-X^(L))_(kL)-で表される基を表しても良く、ここでP^(L)は重合性基を表し、Sp^(L)はスペーサー基又は単結合を表すが、Sp^(L)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、X^(L)は-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH_(2)CH_(2)-、-OCO-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-COO-、-CH_(2)CH_(2)-OCO-、-COO-CH_(2)-、-OCO-CH_(2)-、-CH_(2)-COO-、-CH_(2)-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、X^(L)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く(ただし、P^(L)-(Sp^(L)-X^(L))_(kL)-には-O-O-結合を含まない。)、kLは0から10の整数を表すが、化合物内にLが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z^(1)及びZ^(2)は各々独立して-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CH_(2)CH_(2)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH_(2)CH_(2)-、-OCO-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-COO-、-CH_(2)CH_(2)-OCO-、-COO-CH_(2)-、-OCO-CH_(2)-、-CH_(2)-COO-、-CH_(2)-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、又は単結合で表される基を表すが、Z^(1)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z^(2)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良いが、複数存在する場合は各々独立して、存在するZ^(1)及びZ^(2)のうち少なくとも1つは-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CH_(2)CH_(2)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合から選ばれる基を表し、
G^(1)は芳香族炭化水素環又は芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表すが、G^(1)で表される基中の芳香環に含まれるπ電子の数は12以上であり、G^(1)で表される基は無置換であるか又は1つ以上の置換基L^(G)によって置換されても良く、
L^(G)はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH_(2)-又は隣接していない2個以上の-CH_(2)-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-によって置換されても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されても良く、若しくは、L^(G)はP^(LG)-(Sp^(LG)-X^(LG))_(kLG)-で表される基を表しても良く、ここでP^(LG)は重合性基を表し、Sp^(LG)はスペーサー基又は単結合を表すが、Sp^(LG)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、X^(LG)は-O-、-S-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH_(2)CH_(2)-、-OCO-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-COO-、-CH_(2)CH_(2)-OCO-、-COO-CH_(2)-、-OCO-CH_(2)-、-CH_(2)-COO-、-CH_(2)-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、X^(LG)が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く(ただし、P^(LG)-(Sp^(LG)-X^(LG))_(kLG)-には-O-O-結合を含まない。)、kLGは0から10の整数を表すが、化合物内にLGが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m1及びm2は各々独立して0から6の整数を表すが、m1+m2は0から6の整数を表す。)で表されるものである化合物。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
[相違点1]本件発明の化合物は、「逆波長分散性又は低波長分散性」であるのに対し、引用発明aの「化合物(A11-1)」、引用発明bの「化合物(A1-1)」、引用発明cの「化合物(A25-1)」、引用発明dの「化合物(v-1)」及び引用発明eの「化合物(x-1)」は、逆波長分散性又は低波長分散性であるか明らかではない点。
[相違点2]本件発明は、「化合物の重合体を含有する混合物」であるのに対し、引用発明a?eは、化合物の重合体を含有する混合物であるか明らかではない点。
[相違点3]本件発明は、混合物が、0.5≦YI/Δn≦500(式1)
を満たすのに対し、引用発明a?eは、(式1)を満たすものであるか明らかとされていない点。

なお、(式1)中、YIは混合物の黄色度を表し、Δnは、下記の式(a)で表される化合物(25質量%)、式(b)で表される化合物(25質量%)、式(c)で表される化合物(25重量%)、式(d)で表される化合物(25重量%)
【化1】

からなる母体液晶に逆波長分散性又は低波長分散性化合物(10質量%、20質量%又は30質量%)を混合し液晶組成物とし、ポリイミド配向膜付きガラス基板を使用し、ポリイミド配向膜のラビング方向が平行になるように、2つのガラス基板を組み合わせ、ガラスセルを作成し、そのガラスセルに、前記液晶組成物を注入した後に、紫外線(波長550nm、照度800mJ/cm^(2))を照射して硬化させた後、ガラスセルからフィルムを剥がし取り、その後、アッベ屈折率計で、フィルムのne、noを測定し、メソゲン基を有する化合物が100質量%となるよう外挿した値である。

イ 判断
(ア)[相違点1]について
引用文献1には、「本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換を行う光学フィルムを製造することができる。」(記載事項アの段落【0032】)と記載されている。さらに、「実施例12?24、実施例30?33、及び実施例42?43の光学フィルムは、[Re(447.3)/Re(546.9)](表中α)の値が1以下であった。また、[Re(627.8)/Re(546.9)](表中β)の値が1以上であった。つまり、屈折率の波長依存性がいわゆる逆波長分散性を示すため、広い波長域において一様の偏光変換が可能である。」(記載事項キの段落【0616】)と記載されており、引用発明aの「化合物(A11-1)」を用いて光学フィルムとした実施例16、引用発明bの「化合物(A1-1)」を用いて光学フィルムとした実施例12、引用発明cの「化合物(A25-1)」を用いて光学フィルムとした実施例19が、何れも逆波長分散性を示すことが記載されている。
また、引用文献2にも、「本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与えることができる。」(記載事項アの段落【0006】)と記載されている。そして、引用文献2の記載事項オの表3には、引用発明dの「化合物(v-1)」を用いて光学フィルムとした実施例3のRe(450)/Re(550)の値が<1であり、Re(650)/Re(550)の値が>1であること、引用発明eの「化合物(x-1)」を用いて光学フィルムとした実施例6のRe(450)/Re(550)の値が<1であり、Re(650)/Re(550)の値が>1であることが示されている。そうすると、引用発明dの「化合物(v-1)」及び引用発明eの「化合物(x-1)」も、光学フィルムとした場合に逆波長分散性を示すといえる。
そうすると、引用発明aの「化合物(A11-1)」、引用発明bの「化合物(A1-1)」、引用発明cの「化合物(A25-1)」、引用発明dの「化合物(v-1)」及び引用発明eの「化合物(x-1)」は、いずれも逆波長分散性又は低波長分散性といえるものであるから、上記[相違点1]は実質的な相違点ではない。

(イ)[相違点2]について
引用発明a?eは、何れも、重合性基を有する「化合物(A11-1)」、「化合物(A1-1)」、「化合物(A25-1)」、「化合物(v-1)」及び「化合物(x-1)」を含む反応溶液について、様々な精製工程を経て得られたものである。そして、「一般的に、メソゲン基を有する化合物は、精製工程を経て製造されているが、精製工程を経たとしても不純物を完全にゼロにすることは困難であることから、実際には、精製の程度等により不純物を少なからず含有している」(本願明細書段落[0009])こと、「混合物が重合性基を有する化合物を含有する場合、混合物中に微量に含まれる不純物のポリマー成分同士が集合してしまい、濾過が煩雑になる」(本願明細書段落[0012])ことが、引用発明a?eにも当てはまることは、引用発明a?eの製造工程からみて明らかであるから、引用発明a?eも、重合性基を有する「化合物(A11-1)」、「化合物(A1-1)」、「化合物(A25-1)」、「化合物(v-1)」及び「化合物(x-1)」の重合体を含有する混合物であるといえる。
したがって、上記[相違点2]も、実質的な相違点ではない。

(ウ)[相違点3]について
引用発明a?eは、いずれも、複数種の精製工程を組み合わせて精製がなされており、不純物が少ないものといえる。そして、得られた「混合物」は、偏光変換を行う光学フィルムの製造に用いられるものであるから、何れも、着色が少ないものといえる。そうすると、混合物の色調は、x、y、z共に0.33近傍の値を示すものと考えられるから、YIの値が極めて小さな値となると考えられる。そして、引用発明aの「化合物(A11-1)」のΔnが0.059であり、引用発明bの「化合物(A1-1)」のΔnが0.059であり、引用発明cの「化合物(A25-1)」のΔnが0.067であること(引用文献1の記載事項キの表3実施例16、実施例12及び実施例19を参照。)、引用発明dの「化合物(v-1)」のΔnが0.056であり、引用発明eの「化合物(x-1)」のΔnが0.087であること(引用文献2の記載事項オ表3の実施例3及び実施例6を参照。)を考慮すると、引用発明a?eの「YI/Δn」の値が、0.5以上500以下である蓋然性が高い。
そうすると、上記[相違点3]も、実質的な相違点ではない。

仮に、上記[相違点3]が実質的な相違点であったとすると、引用文献1の記載事項アの段落【0004】等や引用文献2の記載事項アの段落【0004】等の記載に基づけば、引用発明a?eは、何れも、表示装置に用いられる一様の偏光変換が可能な光学フィルムを得ようとするものである。そして、そのような光学フィルムとして、色相を有さない透明なものが求められることは自明である。また、引用文献3の記載事項ア?ウに記載されるように、液晶化合物に含まれる不純物を除去し、高純度の液晶化合物を単離することは、従来より行われており、引用文献3の実施例及び比較例から理解できるように、高純度の液晶化合物とすることで、配向性に優れた液晶硬化膜を形成できることも知られている。
そうすると、引用発明a?eにおいて、精製を重ねてより高純度の液晶化合物とし、本件出願の請求項1に係る発明における(式1)を満たすものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
あるいは、以下のとおり考えることもできる。すなわち、YIが1を下回れば、通常は光学的に透明であると考えることができ、また、YIが20を超えれば、通常は黄色であると視認できる。また、Δnについては、上述のとおりである。そうしてみると、黄色と視認できない程度にまで液晶化合物を精製することによって、その「YI/Δn」の値を、0.5以上500以下のものとすることは、当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項に過ぎない。
したがって、本件発明は、引用文献1?3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

審判請求人は、令和元年6月3日に提出した意見書において、「『混合物の色調は、x、y、z共に0.33近傍の値を示すものと考えられるから、YIの値が極めて小さな値となると考えられる。』とありますが、0.33近傍の値というご判断に根拠はありませんし、また、YIの値が極めて小さいと直ちにいうこともできません。更に、YIの値が極めて小さいという点に関しても、具体的な値がいっさいわからないことから、引用発明a?eが、「YI/Δn」の値が、0.5以上500以下」を満たすとはいえません。」と主張している。しかし、色相を有さない透明なものの色座標(CIExy色度図のx座標及びy座標)は、0.33とされており、また、z=1-x-yであるから、着色が少ないもののx、y、zの値は、共に、0.33近傍の値になる。そして、上述のとおり、引用発明a?eは、何れも着色が少ないものであり、また、色相を有さない透明なものが求められることも自明である。そうすると、引用発明a?eは、YIの値が小さいということができ、また、YIの値を、黄色と視認できない程度までに精製することは当業者が通常行うことに過ぎない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、[相違点1]?[相違点3]は実質的な相違点ではないから、本件発明と引用発明a?eとの間に差異は見いだせない。したがって、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
または、[相違点3]が実質的な相違点であったとしても、引用発明a?eにおいて、混合物が、0.5≦YI/Δn≦500(式1)を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6 むすび
以上のとおり、本件出願は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。また、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、そうでないとしても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-24 
結審通知日 2019-07-25 
審決日 2019-08-06 
出願番号 特願2017-537634(P2017-537634)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G02B)
P 1 8・ 113- WZ (G02B)
P 1 8・ 536- WZ (G02B)
P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣田 健介  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
高松 大
発明の名称 メソゲン基を有する化合物及びそれを含む組成物、並びに重合性組成物を重合することにより得られる重合体、光学異方体、並びに位相差膜  
代理人 小川 眞治  
代理人 大野 孝幸  
代理人 岩本 明洋  
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