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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16D |
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管理番号 | 1355468 |
審判番号 | 不服2018-14824 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-07 |
確定日 | 2019-10-08 |
事件の表示 | 特願2015- 82579「セレクタブルワンウエイクラッチ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-200262、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年4月14日の出願であって、平成29年12月20日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月26日付け(発送日:同年8月7日)で拒絶査定され、これに対し、同年11月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年7月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1に係る発明は、下記の引用文献1、3-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特表2002-514292号公報 引用文献2:特開2000-240691号公報 引用文献3:特開昭51-85066号公報 引用文献4:特開2001-140935号公報(周知例を示す文献) 引用文献5:特開2005-164028号公報(周知例を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年2月22日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 互いに同一軸線上に配置された第1内側プレート及び第2内側プレートと、 前記第1内側プレートから前記第2内側プレートに向かって突出可能な状態で前記第1内側プレートに設けられ、前記第1内側プレートから突出した場合に前記第2内側プレートがいずれか一方向に回転する時に限って前記第2内側プレートに形成された内側凹部に噛み合う内側爪部材と、 前記第1内側プレートと前記第2内側プレートとの間に配置され、前記内側爪部材の通過を許容できる内側貫通孔が形成され、かつ前記内側爪部材が前記内側貫通孔を通過することにより前記内側爪部材が前記第2内側プレートの前記内側凹部に噛み合うことが可能なロック位置と、前記内側爪部材が前記第1内側プレート側に収納されたままに維持される解放位置との間で前記第1内側プレートに対して相対回転可能な内側セレクタプレートと、 前記第1内側プレートの外周側に位置し、前記第1内側プレート及び第2内側プレートと同一軸線上に配置され、前記第1内側プレートと一体に設けられた第1外側プレートと、 前記第2内側プレートの外周側に配置され、前記第1外側プレートと同一軸線上に配置された中空状の第2外側プレートと、 前記第1外側プレートから前記第2外側プレートに向かって突出可能な状態で前記第1外側プレートに設けられ、前記第1外側プレートから突出した場合に前記第2外側プレートがいずれか一方向に回転する時に限って前記第2外側プレートに形成された外側凹部に噛み合う外側爪部材と、 前記内側セレクタプレートの外周側に配置されるとともに前記第1外側プレートと前記第2外側プレートとの間に配置され、前記外側爪部材の通過を許容できる外側貫通孔が形成され、かつ前記外側爪部材が前記外側貫通孔を通過することにより前記外側爪部材が前記第2外側プレートの前記外側凹部に噛み合うことが可能なロック位置と、前記外側爪部材が前記第1外側プレート側に収納されたままに維持される解放位置との間で前記第1外側プレートに対して相対回転可能な中空状の外側セレクタプレートと、 を備えたセレクタブルワンウエイクラッチ。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。) (1)「【発明の詳細な説明】 制御可能なオーバーランニング継手」(第4ページ第1?2行) (2)「図4には、クラッチアセンブリーが分解図で示されている。駆動継手プレート20は、被駆動クラッチプレート10の中に収容されるように構成されている。継手プレート20および継手プレート10の近接して並列配置される面の中間には、ストラット保持プレート22が配置される。 駆動継手プレートにはスプライン24が設けられており、これはシャフト12の外部スプライン14と駆動可能に係合している。駆動継手プレート20は、第1の角度位置に配置された第1の対の隣接凹部26,28、第1の角度位置から120°ずれた第2の角度位置に配置された第2の対の隣接凹部30,32、および、第2の角度位置から120°ずれた第3の角度位置にある第3の対の凹部34,36を有している。 これら6つの凹部26,28,30,32,34,36に6つのストラット38が収容されている。各ストラット38は、平坦な実質的に矩形の部分40および一対の耳部42を有し、後者はストラットの一方の縁部に配置されている。耳部42が形成されているストラットの縁部は、その相方の凹部における一方の縁部に合致した旋回縁を形成する。 図4から分かるように、凹部26中のストラットの旋回縁は、第1の角度位置にある凹部28における隣接するストラットのための旋回縁44に対して最も近く配置されている。同様に、第2の角度位置に配置されたストラットのための旋回縁は、他方に対して最も近接して配置されている。これは、第3の角度位置にある凹部34,36についても当てはまる。 ストラット保持プレート22には、六つの孔46が設けられている。これらは、Aで示されるクラッチの軸線を中心に角度をおいて配置されている。この六つの孔46は対となって配置されており、夫々の対は他の凹部対に対して120°離れた位置に配置されている。 保持プレート22が、一方向でのトルク伝達のための第1の角度位置に適切に配置されると、一つの孔46は凹部26の真上に配置され、もう一つの孔は凹部30の真上に配置され、更にもう一つの孔は凹部34の真上に配置されることになる。従って、一つの凹部が、プレート20の各凹部対の一方の凹部上に配置されることになる。又、保持プレートが、第2の角度位置へと逆方向に角度的に調節されるときは、保持プレート22の孔46は、凹部28,32および36と直接合致することになる。 被駆動継手プレート10には、その内側平面に、角度的に離間した複数の凹部48が設けられている。これらの凹部48は軸線48の回りで均一に離間しており、また、駆動継手プレート20の凹部46の半径方向位置に対応した半径方向位置に配置されている。 孔46および凹部48は、ストラット38の縁部50が被駆動継手プレート10の凹部48に進入でき、凹部48の一方の縁に係合して、ストラットと被駆動継手プレート10との間のロッキング動作を確立できるような寸法になっており、これにより駆動継手プレート20と被駆動継手プレート10との間のトルク伝達が可能になる。 保持プレート22が軸線Aを中心としてその第1の角度位置に調節され、孔46が凹部26に完全に合致すると、凹部28は隣接する孔46と合致しなくなり、少なくとも部分的に保持プレート22で覆われることになる。従って、凹部28に位置するストラットは凹部28の中にそのまま保持され、旋回縁44の回りの旋回運動を妨げることになる。これは、クラッチプレート10の凹部48の中へのストラットの進入を妨げる。同様に、保持プレート22がその第1の角度位置にある場合は、孔46が完全に凹部30に一致する一方、凹部32は少なくとも部分的にプレート22によって覆われることになる。また、孔46が凹部34と完全に一致する一方、凹部36は少なくとも部分的に保持プレート22で覆われることになる。これにより、第1の方向で、駆動継手プレート20から被駆動継手プレート10へのトルク伝達が可能になる。 プレート22が軸線Aを中心として、その第2の角度位置に調節されて、孔46が凹部28,32および36に合致すると、これら凹部内のストラットは、孔46を通って、被駆動継手プレート10における凹部48の反対側の縁部に係合することができる。同時に、凹部26,30および34は少なくとも部分的に保持プレート22で覆われ、これら凹部内に位置するストラットが旋回して被駆動継手プレート10の凹部48に係合するのを妨げるであろう。これにより、第1の方向とは逆の第2の方向で、駆動継手プレート20から被駆動継手プレート10へのトルク伝達が可能になる。 保持プレート22が、上記の二つのトルク伝達位置の中間にある第3の角度位置に調節されると、凹部対26,28の中にある両方のストラットは、少なくとも部分的に保持プレート22で覆われ、従って、夫々の旋回縁回りで旋回して被駆動継手プレート10と係合する運動は妨げられるであろう。同様に、第2および第3の凹部対32,34,36,38の中に夫々位置するストラット38は、駆動継手プレート10と係合する旋回運動を妨げられるであろう。従って、保持プレート22が第3の角度位置にあるとき、駆動継手プレート20および被駆動継手プレート10は、何れの方向にも、互いにフリーホイール運動することができる。」(第9ページ第27行?第12ページ第7行) (3)【図4】からは、駆動継手プレート20及び被駆動クラッチプレート10が、互いに同一の軸線A上に配置された構成が見て取れる。 上記記載事項及び図示内容からみて、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「互いに軸線A上に配置された駆動継手プレート20及び被駆動クラッチプレート10と、 前記駆動継手プレート20から前記被駆動クラッチプレート10に進入できる状態で前記駆動継手プレート20に設けられ、前記駆動継手プレート20から前記被駆動クラッチプレート10に進入した場合に前記被駆動クラッチプレート10が第1または第2の方向に回転する時に前記被駆動クラッチプレート10に設けられた凹部48に係合するストラット38と、 前記駆動継手プレート20と前記被駆動クラッチプレート10の中間に配置され、前記ストラット38が通ることができる孔46が設けられ、かつ前記ストラット38が前記孔46を通ることにより前記ストラット38が前記被駆動クラッチプレート10の前記凹部48に係合することが可能な第1及び第2の角度位置と、前記ストラット38が前記駆動継手プレート20の凹部の中にそのまま保持される第3の角度位置との間で前記駆動継手プレート20に対して角度位置が調節できるストラット保持プレート22と、 を備えた制御可能なオーバーランニング継手」 2 引用文献2について 原査定に記載された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0041】図1で示したように、上記した第2の2方向クラッチ18は、第1の2方向クラッチ15の径方向の外側に位置し、第2の電磁クラッチBは、第1の電磁クラッチAの径方向の外側に位置するよう配置され、この二段配置により動力断続装置11の軸方向の長さを短尺化することができる。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「図面はこの発明の一実施例であるコイル静止形の乾式電磁摩擦式クラツチを示すものであつて、全体として駆動部1と従動部2とからなり、駆動部1は次のように構成されている。 中空の内部円筒3とこの内部円筒の外側に同心的に位置する外部円筒4とがフランジ5によつて一体に連結されると共に、このフランジ5の表面に全体として円環状の摩擦板6,6′を同心円状に固着してかつこの摩擦板6,6′の間に円筒状の磁気遮へい層17を突設してなる回転子7と、前記内部円筒3の外側に玉軸受を介して支承される固定子8を備え、この固定子8の内部にはリード線9,9′により励磁されるコイル10,10′がそれぞれ前記摩擦板6,6′に対向して同心的に配置されかつ両者の間には円筒状の磁気遮へい層18が一体に内蔵されている。 さらに従動部2は次のように構成される。 全体としてほぼ中空円筒状の第1出力軸11およびこの第1出力軸の外径より大きな値の内径を有し、かつ第1出力軸よりもいく分短かい第2出力軸12が共に前記回転子7の中心線に対して同心円状にかつ両者の間に玉軸受を介して相互に回転自在に配置されている。」(第1ページ右下欄第14行?第2ページ左上欄第16行) 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0028】図示された実施例の場合のように外側プレート担持体62及び70の半径方向に延在する部分がダブルクラッチ12の軸心Aに対して垂直に広がる半径方向平面(放射方向平面)の軸方向の一方の側に配置されており且つ両方のマルチプレートクラッチ手段の内側プレート担持体82及び86の半径方向に延在する部分がこの半径方向平面の軸方向のもう一方の側に配置されているときに大きな利点が生じる。これによって、とりわけコンパクトな構造が可能になる。特に(図示された実施例の場合のように)一方の種類のプレート担持体(外側プレート担持体あるいは内側プレート担持体、実施例の場合には外側プレート担持体)が互いに回転固定に結合されており且つパワーユニットからトランスミッションへの力の流れに関してそれぞれ該当するマルチプレートクラッチ手段の入力側部として用いられるときにとりわけコンパクトな構造が可能になる。」 5 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0046】 図3は、マルチクラッチシステムの一例を示しており、この態様は、本発明に使用するのに適しているデュアルクラッチシステム110である。このシステムでは、クラッチ組合せの係合は、クラッチアクチュエータ48へのクラッチ制御システム30の信号に従って増減する。更に、デュアルクラッチ110は、半径方向に配置された複数のクラッチ組合せを有している。マルチクラッチシステムは、平行な複数のクラッチ組合せでも、別の型式のマルチクラッチ配置でもよい。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「軸線A上に配置され」ることは、本願発明の「同一軸線上に配置され」ることに相当し、以下同様に、「駆動継手プレート20」は「第1内側プレート」に、「被駆動クラッチプレート10」は「第2内側プレート」に、「進入」することは「突出」することに、「設けられ」ることは「形成され」ることに、「凹部48」は「内側凹部」に、「係合する」ことは「噛み合う」ことに、「ストラット38」は「内側爪部材」に、「中間に配置され」ることは「間に配置され」ることに、「通ることができる孔46」は「通過を許容できる内側貫通孔」に、「通ること」は「通過すること」に、「係合することが可能な第1及び第2の角度位置」は「噛み合うことが可能なロック位置」に、「前記駆動継手プレート20の凹部の中にそのまま保持される第3の角度位置」は「前記第1内側プレート側に収納されたままに維持される解放位置」に、「角度位置が調節できるストラット保持プレート22」は「相対回転可能な内側セレクタプレート」に、「制御可能なオーバーランニング継手」は「セレクタブルワンウエイクラッチ」に、それぞれ相当する。 また、本願発明の「前記第2内側プレートがいずれか一方向に回転する時に限って前記第2内側プレートに形成された内側凹部に噛み合う」ことと、引用発明の「前記被駆動クラッチプレート10が第1または第2の方向に回転する時に前記被駆動クラッチプレート10に設けられた凹部48に係合する」こととは、「前記第2内側プレートがいずれか一方向に回転する時に前記第2内側プレートに形成された内側凹部に噛み合う」ことの限りで共通する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「互いに同一軸線上に配置された第1内側プレート及び第2内側プレートと、 前記第1内側プレートから前記第2内側プレートに向かって突出可能な状態で前記第1内側プレートに設けられ、前記第1内側プレートから突出した場合に前記第2内側プレートがいずれか一方向に回転する時に前記第2内側プレートに形成された内側凹部に噛み合う内側爪部材と、 前記第1内側プレートと前記第2内側プレートとの間に配置され、前記内側爪部材の通過を許容できる内側貫通孔が形成され、かつ前記内側爪部材が前記内側貫通孔を通過することにより前記内側爪部材が前記第2内側プレートの前記内側凹部に噛み合うことが可能なロック位置と、前記内側爪部材が前記第1内側プレート側に収納されたままに維持される解放位置との間で前記第1内側プレートに対して相対回転可能な内側セレクタプレートと、 を備えたセレクタブルワンウエイクラッチ。」 の点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 [相違点1] 本願発明の「内側爪部材」は「前記第2内側プレートがいずれか一方向に回転する時に限って前記第2内側プレートに形成された内側凹部に噛み合う」のに対し、引用発明の「ストラット38」は「前記被駆動クラッチプレート10が第1または第2の方向に回転する時に前記被駆動クラッチプレート10に設けられた凹部48に係合する」点。 [相違点2] 本願発明は、 「前記第1内側プレートの外周側に位置し、前記第1内側プレート及び第2内側プレートと同一軸線上に配置され、前記第1内側プレートと一体に設けられた第1外側プレートと、 前記第2内側プレートの外周側に配置され、前記第1外側プレートと同一軸線上に配置された中空状の第2外側プレートと、 前記第1外側プレートから前記第2外側プレートに向かって突出可能な状態で前記第1外側プレートに設けられ、前記第1外側プレートから突出した場合に前記第2外側プレートがいずれか一方向に回転する時に限って前記第2外側プレートに形成された外側凹部に噛み合う外側爪部材と、 前記内側セレクタプレートの外周側に配置されるとともに前記第1外側プレートと前記第2外側プレートとの間に配置され、前記外側爪部材の通過を許容できる外側貫通孔が形成され、かつ前記外側爪部材が前記外側貫通孔を通過することにより前記外側爪部材が前記第2外側プレートの前記外側凹部に噛み合うことが可能なロック位置と、前記外側爪部材が前記第1外側プレート側に収納されたままに維持される解放位置との間で前記第1外側プレートに対して相対回転可能な中空状の外側セレクタプレートと、」 を有するのに対し、引用発明はこのような構成を有さない点。 2 相違点についての判断 事案に鑑み、上記相違点2について検討する。 本願の明細書の記載を参照すると、本願発明は、「同一軸線上に配置された複数の軸のトルク伝達の形態を変更するために複数の軸のそれぞれに対してセレクタブルワンウエイクラッチを一つずつ配置すると軸方向に配置せざるを得ない。そのため、複数のセレクタブルワンウエイクラッチを軸方向に配置するためのスペースを確保しなければならず軸方向の配置の自由度が高いとはいえない状況であった。」(段落【0004】)ことを課題とし、「軸方向の配置の自由度を向上できるセレクタブルワンウエイクラッチを提供すること」(段落【0005】)を目的としたものと理解でき、そして、相違点2に係る本願発明の構成により、「同心状に配置された内側クラッチ要素及び外側クラッチ要素のそれぞれによって、同軸上に配置された少なくとも2つの軸のトルク伝達の形態を別々に変更できる」、「2つのクラッチ要素を軸方向に並べた場合に生じる軸方向の寸法増大を伴わないので軸方向の配置の自由度が向上する」(段落【0007】)との作用効果を奏するものと認められる。 引用文献3には、2つの円環状の摩擦板6,6′を同心円状に固着した、駆動部1の回転子7を一体とするコイル静止形の乾式電磁摩擦クラッチの構成が記載されているものの(上記第4 3参照。)、引用発明は静止する制御用の構成要素を有さない、技術的に類似しないクラッチであるし、そもそも引用発明は駆動軸の力を2つの従動軸に振り分けるものではないから、引用発明に引用文献3に記載された構成を適用する動機付けはない。 動力伝達経路においてクラッチを複数配置する必要がある場合、半径方向に複数のクラッチを同軸上に配置して軸方向の寸法を小さくすることは従来から慣用されている技術手段(上記第4 2、4及び5参照。)といえるが、半径方向に複数のクラッチを同軸上に配置するにあたって、内外の各クラッチの係合面を構成しているプレート同士を一体とする点については、引用文献2、4及び5のいずれにも記載も示唆もされていないので、引用発明に引用文献2、4及び5に記載された技術的事項を適用しても、相違点2に係る本願発明の構成とすることはできない。 したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明は、当業者であっても、引用発明及び引用文献3?5に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献3ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-09-24 |
出願番号 | 特願2015-82579(P2015-82579) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F16D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 増岡 亘 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
内田 博之 藤田 和英 |
発明の名称 | セレクタブルワンウエイクラッチ |
代理人 | 山本 晃司 |