• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B25J
管理番号 1355515
審判番号 不服2018-13094  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-02 
確定日 2019-10-09 
事件の表示 特願2013-247029「水平多関節ロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月23日出願公開、特開2015-36186、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成25年11月29日(パリ条約による優先権主張2013年8月9日(US)アメリカ合衆国)の出願であって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成29年10月 2日付け:拒絶理由通知
同 年11月14日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 2月28日付け:拒絶理由通知
同 年 5月 8日 :意見書及び手続補正書の提出
同 年 6月28日付け:拒絶査定
同 年10月 2日 :審判請求と同時に手続補正書の提出
同 年11月16日 :前置報告

第2.原査定の概要
原査定(平成30年6月28日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

理由.(進歩性)平成30年5月8日の手続補正書により補正された請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献1ないし8に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平8-90463号公報
2.特開2005-39047号公報
3.特開2001-235036号公報
4.特開2011-230256号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2013-49128号公報(周知技術を示す文献)
6.特開平8-281580号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2002-326174号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2001-292586号公報(周知技術を示す文献)

第3.本願発明
本願請求項1及び請求項2に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成30年10月2日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
水平方向にアームが動作する水平多関節ロボットにおいて、
搬送対象物が搭載されるとともに上下方向で重なるように配置される第1ハンドおよび第2ハンドと、互いに相対回動可能に連結される第2アーム部および第3アーム部の少なくとも2個のアーム部を有し前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結される前記アームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、前記第2アーム部に対して前記第3アーム部を回動させる回動機構と、前記アームに対して前記第1ハンドを回動させる第1ハンド回動機構と、前記アームに対して前記第2ハンドを回動させる第2ハンド回動機構とを備え、
前記アームは、前記アーム部として、その基端側が前記本体部に回動可能に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部の先端側にその基端側が回動可能に連結される前記第2アーム部と、前記第2アーム部の先端側にその基端側が回動可能に連結される前記第3アーム部とを備え、
前記第3アーム部は、前記第2アーム部よりも上側に配置され、
前記第3アーム部の先端側に前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが回動可能に連結され、
前記第1ハンド回動機構は、前記第3アーム部に対して前記第1ハンドを回動させ、
前記第2ハンド回動機構は、前記第3アーム部に対して前記第2ハンドを回動させ、
前記回動機構は、前記第2アーム部の内部に出力軸の軸方向が水平方向となるように配置されるモータと、前記第2アーム部と前記第3アーム部との連結部分となる関節部を構成するとともに前記モータの動力を減速して前記第3アーム部に伝達するハーモニックドライブ(登録商標)と、前記モータの前記出力軸に連結される第1のかさ歯車と、前記ハーモニックドライブ(登録商標)のウェーブジェネレータに連結され前記第1のかさ歯車と噛み合う第2のかさ歯車と、前記ハーモニックドライブ(登録商標)の中心を通過するように配置される中空軸とを備え、
前記中空軸は、前記中空軸の軸方向と上下方向とが一致するように配置され、
前記中空軸の内周側を利用して、所定の配線が引き回され、
前記ウェーブジェネレータおよび前記第2のかさ歯車は、前記中空軸の外周側に回転可能に配置され、
前記第2のかさ歯車の外径は、前記第1のかさ歯車の外径よりも大きくなっており、
前記第1のかさ歯車の外径は、前記モータの外径よりも小さくなっており、
前記第2のかさ歯車は、前記モータの前記出力軸の軸心よりも上側に配置され、
前記中空軸の下端は、前記モータの前記出力軸の軸心よりも下側に配置され、
前記第1ハンド回動機構は、前記第3アーム部の内部に配置される第1ハンド用モータを備え、
前記第2ハンド回動機構は、前記第3アーム部の内部に配置される第2ハンド用モータを備え、
前記第1ハンドは、前記第3アーム部に連結される連結部と、前記搬送対象物が搭載される平板状の搭載部とを備えるとともに、前記第2ハンドよりも下側に配置され、
前記搭載部は、前記連結部の上端側から水平方向へ伸びるように形成され、
前記第3アーム部には、上側へ突出する突出部が形成され、
前記突出部は、前記第3アーム部と前記第1ハンドとが上下方向で重なっている状態で、前記第3アーム部の長手方向において前記連結部とずれた位置に形成されるとともに、前記搭載部に接触しない高さまで上側へ突出しており、
前記第1ハンド用モータおよび前記第2ハンド用モータは、その出力軸が下側を向くように、かつ、その一部が前記突出部の中に配置されるように、前記第3アーム部の内部に配置されていることを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項2】
前記回動機構は、前記ハーモニックドライブ(登録商標)の外周側に配置される磁性流体シールを備えることを特徴とする請求項1記載の水平多関節ロボット。」

第4.引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面(【図1】ないし【図5】を参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付したものである。以下、同じ。)
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水平多関節形ロボットに関する。」

イ.「【0008】
【実施例】以下、図示の実施例を参照して本発明を詳細に説明する。図1及至図5において、2は、例えば、固定の基台1に対して鉛直軸;O_(1)のまわりで旋回自在に支持された第1のアーム、3は第1のアーム2に対して鉛直軸;O_(2)のまわりで旋回自在に支持された第1の旋回部材、4は第1の旋回部材3に対して水平軸;O_(3)のまわりで旋回自在に支持されて、水平軸;O_(3)と直交する方向に延びる第2のアームである。図示の場合、第2のアーム4は、基部4Aと先端部4Bとが第2のアーム4の長軸と直交する方向に分割されていて、かつ先端部4Bが基部4Aに対して第2のアーム4の長軸を中心として旋回自在に支持されている。さらに、5は第2アーム4の旋回軸;O_(3)と平行な水平軸;O_(4)のまわりで旋回自在に支持された第2の旋回部材、6は第2の旋回部材5の長軸のまわりで旋回する、例えば、図示の場合、鉛直線と平行な旋回軸;O_(5)のまわりで旋回自在な手首部材である。なお、手首部材6には、溶接用トーチ、切削工具、つかみ工具、組立工具などの操作要素が適宜に取付けられる。」

ウ.「【0011】第1の旋回部材3は、適宜の減速機19、例えば上記したと同様のハーモニック減速機19を介して第2のモータ20により、鉛直軸;O_(2)のまわりに水平方向に旋回される。さらに、図4に示されるごとく、第1の旋回部材3の水平軸;O_(3)の両端には第3および第4のモータ21、23が支持されている。この第3のモータ21の回転は適宜の減速機22、例えばハーモニック減速機22を介して第2のアーム4の基部4Aに伝達され、これにより、第2のアーム4の基部4Aが第3のモータ21により水平軸;O_(3)を中心として回動される。
【0012】第4のモータ23の回転は傘歯車24A、24Bを介して適宜の減速機25、例えばハーモニック減速機25の入力軸251に伝達され、この減速機25の出力軸252が第2のアームの先端部4Bに連結される。このため、第2のアームの先端部4Bは、基部4Aに対して第2のアームの長軸;O_(31)-O_(31)を中心として第3のモータ23により回動される。」

(2)引用文献1に記載された技術的事項
これらの記載事項及び図示事項から、引用文献1には,以下のア.ないしエ.の技術的事項が記載されているということができる。
ア.段落【0008】の「2は、例えば、固定の基台1に対して鉛直軸;O_(1)のまわりで旋回自在に支持された第1のアーム、3は第1のアーム2に対して鉛直軸;O_(2)のまわりで旋回自在に支持された第1の旋回部材、4は第1の旋回部材3に対して水平軸;O_(3)のまわりで旋回自在に支持されて、水平軸;O_(3)と直交する方向に延びる第2のアームである。」との記載によれば、第1の旋回部材3は、第1のアーム2と、第2のアーム4の先端部4Bの間に介在し、全体としてアームを構成しているから、アーム部の1つであることが理解できる。

イ.段落【0011】の「第1の旋回部材3の水平軸;O_(3)の両端には第3および第4のモータ21、23が支持されている。」との記載、及び、段落【0012】の「第4のモータ23の回転は傘歯車24A、24Bを介して適宜の減速機25、例えばハーモニック減速機25の入力軸251に伝達され、この減速機25の出力軸252が第2のアームの先端部4Bに連結される。このため、第2のアームの先端部4Bは、基部4Aに対して第2のアームの長軸;O_(31)-O_(31)を中心として第3のモータ23により回動される。」との記載によれば、第4のモータ23、傘歯車24A、傘歯車24B、ハーモニック減速機25が、第1の旋回部材3に対して前記第2のアーム4の先端部4Bを第2のアームの長軸;O_(31)-O_(31)まわりに回動させるための回動機構を構成することが理解できる。

ウ.段落【0011】の「この第3のモータ21の回転は適宜の減速機22、例えばハーモニック減速機22を介して第2のアーム4の基部4Aに伝達され、これにより、第2のアーム4の基部4Aが第3のモータ21により水平軸;O_(3)を中心として回動される。」との記載、及び【図2】によれば、第2のアーム4は水平軸;O_(3) を中心として、垂直方向に回動することが理解できる。

エ.【図4】の図示事項から、傘歯車24Bの外径は、傘歯車24Aの外径よりも大きくなっていること、及び、傘歯車24Aの外径は、第4のモータ24の外径よりも小さくなっていることが見て取れる。

(3)引用発明
上記(1)の記載事項及び上記(2)の技術的事項、並びに技術常識を参酌して整理すると,引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「水平方向及び垂直方向にアームが動作する水平多関節形ロボットにおいて、
操作要素が取り付けられる手首部材6と、互いに相対回動可能に連結される第1のアーム2、第1の旋回部材3および第2のアーム4の先端部4Bのアーム部を有し、手首部材6が先端側に回動可能に連結される前記アームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される基台1と、前記第1の旋回部材3に対して前記第2のアーム4の先端部4Bを回動させる回動機構と、前記アームに対して手首部材6を回動させる第2の旋回部材5とを備え、
前記アームは、前記アーム部として、その基端側が前記基台1に水平方向に回動可能に連結される第1のアーム2と、前記第1のアーム2の先端側にその基端側が垂直軸まわりに回動可能に連結される第1の旋回部材3と、前記第1の旋回部材3の先端側にその基端側が第2のアーム4の長軸まわりまたは水平軸;O_(3)を中心として垂直方向に回動可能に連結される前記第2のアーム4とを備え、
前記第2のアーム4の先端部4Bに前記手首部材6が第2の旋回部材5を介して回動可能に連結され、
前記第1の旋回部材3に対して第2のアーム4の先端部4Bを回動させる前記回動機構は、前記第1の旋回部材3の内部に出力軸の軸方向が水平方向となるように配置される第4のモータ24と、前記第1の旋回部材3と前記第2のアーム4の先端部4Bとの連結部分となる関節部を構成するとともに前記第4のモータ24の動力を減速して前記第2のアーム4の先端部4Bに伝達するハーモニック減速機22と、前記第4のモータ24の前記出力軸に連結される傘歯車24Aと、前記ハーモニック減速機22の入力軸235に連結される前記傘歯車24Aと噛み合う傘歯車24Bとを備え、
前記傘歯車24Bの外径は、前記傘歯車24Aの外径よりも大きくなっており、
前記傘歯車24Aの外径は、前記第4のモータ24の外径よりも小さくなっている水平多関節形ロボット。」 (以下、「引用発明」という。)

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面(【図1】、【図2】、【図5】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
(1)引用文献2の記載事項
ア.「【0033】
多関節ロボット20は、基台22と、ベース部23と、3つのアーム24?26と、ハンド部27とを含む。基台22は、多関節ロボット20が収容されるハウジングに一体に固定される。基台22は、第1角変位軸線L1を有する。ベース部23は、基台22に連結され、基台22に対して第1角変位軸線L1まわりに角変位自在に設けられる。第1角変位軸線L1は、本実施の形態では、鉛直方向に延びる。またベース部23は、基準線19を有する。基準線19は、第1角変位軸線L1に垂直に延び、ベース部23の角変位にともなって第1角変位軸線L1まわりを角変位する。
【0034】
3つのアーム24?26の外形形状は、それぞれ長尺状に形成される。3つのアーム24?26のうちの第1アーム24は、ベース部23に着脱自在に一体に連結される。具体的には、第1アーム24は、基準線19に沿って延び、第1アーム24の長手方向一端部28がベース部23に連結される。第1アーム24は、その長手方向他端部29に第2角変位軸線L2を有する。第2角変位軸線L2は、第1角変位軸線L1と平行に延び、基準線19に対して垂直に延びる。
【0035】
3つのアーム24?26のうちの第2アーム25は、その長手方向一端部30が第1アーム24の長手方向他端部29に連結される。第2アーム25は、第1アーム24に対して第2角変位軸線L1まわりに角変位自在に設けられる。第2アーム25は、その長手方向他端部31に第3角変位軸線L3を有する。第3角変位軸線L3は、第1角変位軸線L1と平行に延びる。
【0036】
3つのアーム24?26のうちの第3アーム26は、その一端部32が第2アームの長手方向他端部31に連結される。第3アーム26は、第2アーム25に対して第3角変位軸線L3まわりに角変位自在に設けられる。第3アーム26は、その長手方向他端部33に第4角変位軸線L4を有する。第4角変位軸線L4は、第1角変位軸線L1と平行に延び、基準線19に対して垂直に延びる。
【0037】ハンド部27は、ウェハ21を下方から支持して乗載する。ハンド部27は、ロボットアームの先端に設けられるエンドエフェクタとなる。ハンド部27は、ウェハ21を保持する保持部分34と、第3アーム26に連結される連結部分35とを有する。また本実施の形態では、ハンド部27は、上下方向に並んで2つ設けられる。」

イ.「【0071】
第3アーム26の内部空間には、第3サーボモータ110と、第3サーボモータからハンド部に動力を伝達する歯車群71,74が設けられる。歯車群71,74は、第3サーボモータ150の出力軸に噛合する歯車71と、その歯車71に噛合する第3連結軸74とを含む。この歯車71は、第3アーム26に軸支される。
【0072】
第3連結軸201は、第3アーム26の内部空間に配置され、第4角変位軸線L4に同軸な円筒状に形成される。第3連結軸201は、第3アーム26の内部空間とハンド部27の内部空間とを連通する。第3連結軸301は、第3アーム26に対して第4角変位軸線L4まわりに角変位自在に設けられる。第3連結軸201は、軸線方向一端部が第3サーボモータ150の動力を伝達する歯車71に噛合し、他端部がハンド部27と一体に連結される。また第3連結軸201に形成される内部空間は、第3アーム26の内部空間と、ハンド部27の内部空間を連通する。
【0073】
第3サーボモータ150の出力軸が角変位すると、その回転力が、歯車群200,201を伝達し、その動力をハンド部27に動力を伝達する。これによってハンド部27は、第3アーム26に対して第4角変位軸線L4まわりに角変位する。」

(2)引用文献2に記載された技術的事項
ア.段落【0033】の「多関節ロボット20は、基台22と、ベース部23と、3つのアーム24?26と、ハンド部27とを含む。」との記載、段落【0034】の「第1アーム24は、基準線19に沿って延び、第1アーム24の長手方向一端部28がベース部23に連結される。」との記載、段落【0035】の「第2アーム25は、その長手方向一端部30が第1アーム24の長手方向他端部29に連結される。」との記載、段落【0036】の「第3アーム26は、その一端部32が第2アームの長手方向他端部31に連結される。」との記載、及び段落【0037】の「ハンド部27は、ウェハ21を保持する保持部分34と、第3アーム26に連結される連結部分35とを有する。また本実施の形態では、ハンド部27は、上下方向に並んで2つ設けられる。」との記載、並びに【図1】及び【図2】によれば、多関節ロボット20は、第1アーム24、第2アーム25、第3アーム26、及び2つのハンド部27を有することが理解できる。

イ.段落【0071】の「第3アーム26の内部空間には、第3サーボモータ110と、第3サーボモータからハンド部に動力を伝達する歯車群71,74が設けられる。」との記載、及び【図5】によれば、第3アーム26には、ハンド部27を回動する第3サーボモータ150が配置されていることが理解できる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面(【図3】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
(1)引用文献3の記載事項
ア.「【0007】このような磁性流体シール装置は、例えば、磁気ディスク装置や光ディスク装置や光磁気ディスク装置等のディスク装置においてディスクを回転させるためのディスク駆動用モータや、レーザプリンタ、VTR等の情報・映像機器等においてポリゴンや磁気ヘッドを回転駆動させるためのモータのラジアル型軸受装置に使用され、ラジアル型軸受装置が動圧型軸受の場合には作動流体の外部への流出や飛散を防止し、またベアリング式軸受の場合にはベアリングに注油された油の外部への飛散を防止している。なお、磁性流体シール装置はモータ以外にも、ポンプや減速機等にも使用されている。」

(2)引用文献3に記載された技術的事項
ア.段落【0007】の「磁性流体シール装置はモータ以外にも、ポンプや減速機等にも使用されている。」との記載、及び【図3】によれば、減速機の近傍に磁性流体シール装置が設けられることが理解できる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面(【図1】、【図7】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
(1)引用文献4の記載事項
ア.「【0024】
本形態の産業用ロボット1は、半導体ウエハ2(図3参照)を搬送するための多関節型のロボットである。この産業用ロボット1は、図1に示すように、本体部3と、本体部3に回動可能に取り付けられる第1アーム4と、第1アーム4に回動可能に取り付けられる第2アーム5と、第2アーム5に回転可能に取り付けられる第3アーム6と、第3アーム6に回転可能に取り付けられるハンド7、8とを備えている。なお、以下の説明では、産業用ロボット1を「ロボット1」とし、半導体ウエハ2を「ウエハ2」とする。」

イ.「【0047】
ハンド駆動機構13は、駆動源となるハンド駆動用モータ52と、ハンド駆動用モータ52の動力を減速してハンド7に伝達するためのハンド用減速機53と、ハンド用減速機53に取り付けられるプーリ54と、ハンド7に取り付けられるプーリ55と、プーリ54、55に架け渡されるベルト56とを備えている。図7に示すように、ハンド駆動用モータ52、ハンド用減速機53、プーリ54、55およびベルト56は、第3アーム6の内部に配置されている。」

(2)引用文献4に記載された技術的事項
ア.【図1】及び【図7】の図示事項から、ハンド駆動用モータ52が第3アーム6の下側に形成された突出部の中に配置されることが見て取れる。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面(【図4B】、【図4C】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
(1)引用文献5の記載事項
ア.「【0018】
アームユニット20は、昇降フランジ部15を介して胴体部10と連結するユニットである。具体的には、アームユニット20は、固定ベース部21と、第1アーム部22と、第2アーム部23と、可動ベース部24と、補助アーム部25とを備える。なお、本実施形態において、固定ベース部21、第1アーム部22、第2アーム部23および可動ベース部24は、それぞれ第1部材、第2部材、第3部材および第4部材に対応する。」

イ.「【0056】
モータ53は、モータ本体部532と、モータ本体部532から鉛直下向きに突出する出力軸533と、出力軸533の先端に固定された第3プーリ531と、モータ本体部532および出力軸533間に設けられた取り付けフランジ535とを備える。」

ウ.「【0067】
また、図4Bに示すように、第1減速機51および第2減速機52は、モータ53と略同一の高さに配置される。具体的には、第1減速機51および第2減速機52は、第1減速機51のケーシング512と第2減速機52のケーシング522とが鉛直方向(すなわち、高さ方向)において互いに重複するように配置される。
【0068】
したがって、第1減速機51の第1プーリ511と、第2減速機52の第2プーリ521とは、異なる高さに配置される。
【0069】
異なる高さに配置された第1プーリ511および第2プーリ521のうち、第2プーリ521は、モータ53の第3プーリ531と同一の高さに配置される。そして、モータ53の駆動力を第2減速機52の入力軸523へ伝達する第2伝達ベルト56が、第2プーリ521、第3プーリ531およびこれらと同一の高さに配置された中継部材54の第4プーリ543(図4C参照)に掛け渡される。
【0070】
モータ53の第3プーリ531と異なる高さに配置された第1減速機51の第1プーリ511に対してモータ53の駆動力を伝達するために、中継部材54が用いられる。
【0071】
具体的には、図4Cに示すように、モータ53の駆動力を第1減速機51の入力軸513へ伝達する第1伝達ベルト55が、第1減速機51の第1プーリ511と同一の高さに配置された中継部材54の第5プーリ544に掛け渡される。」

(2)引用文献5に記載された技術的事項
ア.【図4B】の図示事項から、第2アーム部23を駆動するモータ53の出力軸533が、第1アーム部22の下側に形成された突出部の中に配置されることが見て取れる。

6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面(【図1】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
(1)引用文献6の記載事項
ア.「【0013】ロボット基体12の内部には、支柱14を鉛直方向に上下動作させるための第1の駆動モータM_(1 )が配設されている。第1の副腕16aの基端側内部には、第1の副腕16aを鉛直旋回軸線a_(1 )を中心として旋回駆動するための第2の駆動モータM_(2)が配設されており、先端側内部には第2の副腕16bを鉛直旋回軸線a_(2)を中心として旋回駆動するための第3の駆動モータM_(3)が配設されている。第2の副腕16bの内部おいて概ね中心部にロボット手首16dおよびエンドエフェクタを鉛直旋回軸線a_(4)を中心として旋回駆動するための第4の駆動モータM_(4)が配設されている。」

(2)引用文献6に記載された技術的事項
ア.【図1】の図示事項から、第2の副腕16bを駆動する第3の駆動モータM_(3)が、第1の副腕16aの中に配置されることが見て取れる。

7.引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には、図面(【図2】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
(1)引用文献7の記載事項
ア.「【0017】ステータハウジング20は、傾斜開口部となっている駆動側アーム先端部6bに固定され、中央部に貫通孔22が形成された円筒軸21をベアリング23を介して回転自在に軸受している。該円筒軸21の先端部はベアリング26を介してロータハウジング30にも回転自在に軸受されている。従って、該円筒軸21は駆動側アーム軸線に対して、オフセット角γだけ傾斜していることになる。円筒軸21の基端側には、前記モータ軸に取り付けられた外歯傘歯車17と噛み合う内歯傘歯車24が固定されている。
【0018】また、円筒軸21の上部には外周面が楕円形状のカムを構成する軸受フランジ31が形成され、該軸受フランジ外周面と、前記ステータハウジング20に固定された入力ギア部材32の上端部内周面との間にベアリング27が設けられている。入力ギア部材32は、図2に示すように、下端部が取付フランジ部33となっている円筒状に形成され、円筒胴部34は弾性変形可能な金属材で形成され、その上端部外周面には外歯35が形成されている。
【0019】一方、ロータハウジング30には、内周面に前記外歯35と噛み合う内歯36が形成されている出力ギア部材37が固定され、該出力ギア部材は、リング部材38及びベアリングを介してステータハウジング20に回転自在に軸受されていると共に、その上端部はロータハウジングを介して従動側アームに固定されている。出力ギア部材37の内歯36は弾性変形する入力ギア部材32の外歯35より歯数が多く(例えば2枚)形成されており、円筒軸21、入力ギア部材32、出力ギア部材7とで、大減速比で回転力を伝達するハーモニックドライブ機構を構成している。
【0020】円筒軸21の頂部とロータハウジング30(出力ギア部材37)との間にもスリップリング40を設け、回転方向を考慮しない自在回転制御ができるようにした。また、関節回転伝動機構部9には、前記アーム間の関節部に取り付けた際に、回転接触部を介してアーム内部の空間部に外部からガスや水その他の異物が侵入しないように、回転接触部には適宜のシール手段が取り付けられ、ロボットアーム内部の密封を図っている。なお、図中43は、内歯傘歯車24を貫通する信号線等を破損しないように保護するために内歯傘歯車24の貫通孔に嵌合して設けたラッパ状の保護筒である。また、図示していないが、ハーモニックドライブ機構には、入力/出力軸間に回転原点位置検出センサが設けられている。」

(2)引用文献7に記載された技術的事項
ア.段落【0017】の「中央部に貫通孔22が形成された円筒軸21」との記載、段落【0019】の「円筒軸21、入力ギア部材32、出力ギア部材7とで、大減速比で回転力を伝達するハーモニックドライブ機構を構成している。」との記載、及び段落【0020】の「関節回転伝動機構部9には、前記アーム間の関節部に取り付けた際に、回転接触部を介してアーム内部の空間部に外部からガスや水その他の異物が侵入しないように、回転接触部には適宜のシール手段が取り付けられ、ロボットアーム内部の密封を図っている。なお、図中43は、内歯傘歯車24を貫通する信号線等を破損しないように保護するために内歯傘歯車24の貫通孔に嵌合して設けたラッパ状の保護筒」との記載、並びに【図2】によれば、ロボットアームの関節を駆動するハーモニックドライブ機構の中心を通過するように、中央部に貫通孔22が形成された円筒軸21を配置し、該貫通孔22に所定の信号線等を引き回すことが理解できる。

8.引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8には、図面(【図4】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
(1)引用文献8の記載事項
ア.「【0016】即ち、前記フレーム3aの右側壁上部には、円形の組付開口部3cが設けられ、その内部に後述するように減速機23が設けられる。この減速機23は、例えば中空状のハーモニックドライブからなり、周知のように、楕円状のカムとその外周のボールベアリングとからなる中空状のウエーブジェネレータ24、その外周に配置されるカップ状のフレクスプライン(弾性歯車)25、その外周に噛合うサーキュラスプライン(内歯車)26から構成される。一方、前記第2アーム4のフレーム4aの下部左側壁部には、中空軸27が左方に突出して設けられている。中空軸27の軸心は、軸J2に一致している。
【0017】前記フレーム3aの組付開口部3cの内周部には、例えばクロスローラベアリングからなる軸受28が設けられ、この軸受28により前記第2アーム4のフレーム4aが軸J2を中心に回転可能に支持されている。このとき、軸受28の外輪28aと、前記フレクスプライン25と、支持部材29とがフレーム3aにいわゆる共締め状態に固定されている。一方、軸受28の内輪28bと、前記サーキュラスプライン26と、閉塞部材30とがフレーム4aにいわゆる共締め状態に固定されている。さらには、軸受28の右側面部には、外輪28aと内輪28bとの間に位置してオイルシール31が設けられている。
【0018】また、前記ウエーブジェネレータ24は、前記中空軸27の外周部に僅かな隙間をもって配置され、その外周の軸方向左右両端部が、夫々前記支持部材29の内周部との間に設けられた軸受32及び前記閉塞部材30の内周部との間に設けられた軸受33により回転可能に支持されている。また、このとき、軸受32の左側にはオイルシール34が設けられ、軸受33の右側にはオイルシール35が設けられている。
【0019】そして、前記中空軸27の先端(左端)側外周部には、従動プーリ36が回転自在に設けられ、この従動プーリ36が前記ウエーブジェネレータ24と連結されている。さらには、前記駆動プーリ22と従動プーリ36との間にタイミングベルト37が掛渡されている。これにて、サーボモータ10の回転が、タイミングベルト37を介して従動プーリ36に伝達されてウエーブジェネレータ24が高速で回転し、その回転が減速機23により減速されて第2アーム4に伝達されるようになっているのである。
【0020】尚、このとき、前記オイルシール31により、減速機23内部への塵埃や水滴等の侵入が防止されると共に、該オイルシール31並びにオイルシール34及び34により内部の潤滑油(図示せず)が外部に漏れ出すことが防止されるのである。また、前記中空軸27内には、配線38(想像線で一部示す)が通されるようになっている。さらには、詳しい図示及び説明は省略するが、他のアーム4?8の関節部分についても同様の減速機が設けられ、サーボモータ9?14の回転が減速されて伝達されるようになっている。」

(2)引用文献8に記載された技術的事項
ア.段落【0016】の「この減速機23は、例えば中空状のハーモニックドライブからなり、周知のように、楕円状のカムとその外周のボールベアリングとからなる中空状のウエーブジェネレータ24、その外周に配置されるカップ状のフレクスプライン(弾性歯車)25、その外周に噛合うサーキュラスプライン(内歯車)26から構成される。」との記載、及び段落【0020】の「前記中空軸27内には、配線38(想像線で一部示す)が通されるようになっている。さらには、詳しい図示及び説明は省略するが、他のアーム4?8の関節部分についても同様の減速機が設けられ、」との記載、並びに【図4】によれば、各々のアームの間の関節を駆動するハーモニックドライブの中心を通過するように中空状のウエーブジェネレータ24を配置して該ウエーブジェネレータ24に所定の配線38を引き回すことが理解できる。

9.その他の文献について
(1)引用文献9について
前置報告書において引用された特開2011-161629号公報(以下、「引用文献9」という。)には、図面(【図12】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア.引用文献9の記載事項
(ア)「【0048】
第2アーム部37の延在方向一端部37a寄りの部分には、第2アーム部37の内部空間54に連通する円筒状の一端側連通孔55が形成され、また外方に突出する円筒状の突出部56が形成される。一端側連通孔55の軸線は、第2アーム部37の延在方向に垂直な方向に延びる。突出部56の内孔57は、一端側連通孔55と同軸であり、一端側連通孔55を介して、第2アーム部37の内部空間54に連通する。第2アーム部37の延在方向他端部37b寄りの部分には、第2アーム部37の内部空間54に連通する円筒状の他端側連通孔58が形成される。他端側連通孔58の軸線は、一端側連通孔55の軸線と平行である。他端側連通孔58は、一端側連通孔55とは反対側に臨んで開放される。」

(イ)「【0117】
本実施の形態では、第2歯車92と、各中間歯車93のうち第2歯車92に噛合する中間歯車93bとが、かさ歯車によって実現される。このような本実施の形態でも、前述の第1形態と同様に、第2モータ76の動力を、第2モータ76の回転部79から第2アーム部37の突出部56に伝達することができる。」

イ.引用文献9に記載された技術的事項
(ア)【図12】の図示事項から、第2歯車92を、内孔57を有する突出部56の外周側であって、第2モータ76の出力軸の軸心よりも上側に配置することが見て取れる。

(2)引用文献10について
前置報告書において引用された特開2003-266344号公報(以下、「引用文献10」という。)には、図面(【図1】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア.引用文献10の記載事項
(ア)「【0028】 一方、第二アーム6の基台25には第二軸19が突出して設けられている。この第二軸19の下端には第二連結部材である第二減速機20がたとえばボルト捩子などの固定手段21によって同軸的に固定されている。これら第二軸19と第二減速機20とには、その軸方向であるZ軸方向において貫通した第二貫通穴22が設けられている。
【0029】第二軸19は、第一アーム4の上面に開口した軸穴23に嵌め込まれ、かつこの別の軸穴23にベアリング24を介して回動自在に連結されている。第一アーム4内の第二アーム駆動モータ13の出力軸15には第二傘歯車25が同軸的に固定され、この第二傘歯車25は第二減速機20において第二軸19に対して同軸的に設けられた第二歯車部20a(当審注:「第二歯車部20a」は「第一歯車部20a」の誤記であると解される。)と噛合連結されている。」

イ.引用文献10に記載された技術的事項
(ア)【図1】の図示事項から、第一歯車部20aを、第二貫通穴22を有する第二軸19の外周側であって、第二アーム駆動モータ13の出力軸15の軸心よりも上側に配置することが見て取れる。

第5.対比及び判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「水平多関節形ロボット」は、本願発明1の「水平多関節ロボット」に相当し、以下、同様に、「第1のアーム2」は「第1アーム部」に、「第2のアーム4の先端部4B」は「前記第3アーム部」に、「基台1」は「本体部」に、「第4のモータ24」は「モータ」に、「ハーモニック減速機22」は「ハーモニックドライブ(登録商標)」に、「傘歯車24A」は「第1のかさ歯車」に、「入力軸235」は「ウェーブジェネレータ」に、「傘歯車24B」は「第2のかさ歯車」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「操作要素が取り付けられる手首部材6」は、「ハンド」であることを限度として、本願発明1の「搬送対象物が搭載されるとともに上下方向で重なるように配置される第1ハンドおよび第2ハンド」と共通し、また、引用発明の「第2の旋回部材5」は、「ハンド回動機構」であることを限度として、本願発明1の「第1ハンドを回動させる第1ハンド回動機構」及び「第2ハンドを回動させる第2ハンド回動機構」と共通する。
さらに、引用発明の「第1の旋回部材3」は、「アーム構成部材」であることを限度として、本願発明1の「第2アーム部」と共通する。

よって、本願発明1と引用発明は、次の点で一致及び相違する。

<一致点>
「アームが動作する水平多関節ロボットにおいて、
ハンドと、互いに相対回動可能に連結されるアーム構成部材および第3アーム部の少なくとも2個のアーム部を有しハンドが先端側に回動可能に連結される前記アームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、前記アーム構成部材に対して前記第3アーム部を回動させる回動機構と、前記アームに対してハンドを回動させるハンド回動機構とを備え、
前記アームは、前記アーム部として、その基端側が前記本体部に回動可能に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部の先端側にその基端側が回動可能に連結されるアーム構成部材と、前記アーム構成部材の先端側にその基端側が回動可能に連結される前記第3アーム部とを備え、
前記第3アーム部の先端に前記ハンドが回動可能に連結され、
前記回動機構は、前記アーム構成部材の内部に出力軸の軸方向が水平方向となるように配置されるモータと、前記アーム構成部材と前記第3アーム部との連結部分となる関節部を構成するとともに前記モータの動力を減速して前記第3アーム部に伝達するハーモニックドライブ(登録商標)と、前記モータの前記出力軸に連結される第1のかさ歯車と、前記ハーモニックドライブ(登録商標)のウェーブジェネレータに連結される前記第1のかさ歯車と噛み合う第2のかさ歯車と、
前記第2のかさ歯車の外径は、前記第1のかさ歯車の外径よりも大きくなっており、
前記第1のかさ歯車の外径は、前記モータの外径よりも小さくなっている水平多関節ロボット。」

<相違点1>
本願発明1は、水平方向に「アーム」が動作する水平多関節ロボットであって、「搬送対象物が搭載されるとともに上下方向で重なるように配置される第1ハンドおよび第2ハンド」を有し、「アーム」に「前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結され」、「前記アームに対して前記第1ハンドを回動させる第1ハンド回動機構と、前記アームに対して前記第2ハンドを回動させる第2ハンド回動機構とを備え、前記第3アーム部の先端側に前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが回動可能に連結され、前記第1ハンド回動機構は、前記第3アーム部に対して前記第1ハンドを回動させ、前記第2ハンド回動機構は、前記第3アーム部に対して前記第2ハンドを回動させ」、「前記第1ハンド回動機構は、前記第3アーム部の内部に配置される第1ハンド用モータを備え、前記第2ハンド回動機構は、前記第3アーム部の内部に配置される第2ハンド用モータを備え、前記第1ハンドは、前記第3アーム部に連結される連結部と、前記搬送対象物が搭載される平板状の搭載部とを備えるとともに、前記第2ハンドよりも下側に配置され、前記搭載部は、前記連結部の上端側から水平方向へ伸びるように形成され」ているのにのに対し、引用発明は、アームが水平方向及び垂直方向に動作する水平多関節形ロボットであって、水平方向のみにアームが動作する水平多関節ロボットではなく、「アーム」の先端側に回動可能に連結されるハンドが一つの「手首部材」であって、上下方向に重なるように配置される第1ハンドおよび第2ハンドではない点。

<相違点2>
本願発明1は、「回動機構」が、「前記ハーモニックドライブ(登録商標)の中心を通過するように配置される中空軸とを備え、前記中空軸は、前記中空軸の軸方向と上下方向とが一致するように配置され、前記中空軸の内周側を利用して、所定の配線が引き回され、前記ウェーブジェネレータおよび前記第2のかさ歯車は、前記中空軸の外周側に回転可能に配置され、前記第2のかさ歯車は、前記モータの前記出力軸の軸心よりも上側に配置され、前記中空軸の下端は、前記モータの前記出力軸の軸心よりも下側に配置され」るのに対し、引用発明は、「回動機構」が「前記ハーモニックドライブ(登録商標)の中心を通過するように配置される中空軸とを備え」るものではない点。

<相違点3>
本願発明1は、「前記第3アーム部は、前記第2アーム部よりも上側に配置され」、「前記第3アーム部には、上側へ突出する突出部が形成され、前記突出部は、前記第3アーム部と前記第1ハンドとが上下方向で重なっている状態で、前記第3アーム部の長手方向において前記連結部とずれた位置に形成されるとともに、前記搭載部に接触しない高さまで上側へ突出しており、前記第1ハンド用モータおよび前記第2ハンド用モータは、その出力軸が下側を向くように、かつ、その一部が前記突出部の中に配置されるように、前記第3アーム部の内部に配置されている」のに対し、引用発明は、第2のアーム4の先端部4B」(本願発明1の「第3アーム部」に相当。)は、「第1の旋回部材3」(本願発明1の「第2アーム部」に「アーム構成部材」であることを限度として共通。)前記第2アーム部よりも上側に配置されるものではなく、また、第2のアーム4の先端部4Bには上側へ突出する突出部が形成されるものではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
「前記第3アーム部は、前記第2アーム部よりも上側に配置され」、「前記第3アーム部には、上側へ突出する突出部が形成され、前記突出部は、前記第3アーム部と前記第1ハンドとが上下方向で重なっている状態で、前記第3アーム部の長手方向において前記連結部とずれた位置に形成されるとともに、前記搭載部に接触しない高さまで上側へ突出しており、前記第1ハンド用モータおよび前記第2ハンド用モータは、その出力軸が下側を向くように、かつ、その一部が前記突出部の中に配置されるように、前記第3アーム部の内部に配置されている」点については、引用文献2ないし10には、記載も示唆もない。
そして、本願発明は、相違点3に係る発明特定事項を具備することに関し、本願明細書の段落【0037】に「そのため、本形態では、上下方向において、ハンド5の搭載部20と第3アーム部18との間に形成されるデッドスペースに突出する突出部18aを利用して、モータ35、37の一部を配置することが可能になる。したがって、本形態では、ハンド4、5および第3アーム部18の全体の上下方向における厚みを薄くすることが可能になる。」と記載されるように、技術的な意味を有するものであるから、相違点3に係る発明特定事項が、当業者が困難なく想到することのできる単なる設計変更であるということはできない。

したがって、相違点3に係る発明特定事項を具備する本願発明1は、相違点1及び相違点2を検討するまでもなく、上記引用発明及び引用文献2ないし10に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を直接的に引用するものであって、本願発明1の発明特定事項を全て有するから、上記1.(2)に示す理由と同様の理由により、本願発明2は、引用発明及び引用文献2ないし10に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6.原査定について
平成30年10月2日の手続補正により補正された請求項1及び2に係る発明は、上記第5.で検討した相違点3に係る発明特定事項を備えるものであって、これらの発明特定事項を備えるものは、上記のとおり、原査定において引用された引用文献1ないし8には記載も示唆もされていない。
よって、平成30年10月2日の手続補正により補正された請求項1及び2に係る発明は、引用文献1ないし3に記載された発明、周知技術を示す文献として提示された引用文献4ないし8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7.むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-26 
出願番号 特願2013-247029(P2013-247029)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B25J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 牧 初  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 栗田 雅弘
中川 隆司
発明の名称 水平多関節ロボット  
代理人 小平 晋  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ