• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61G
管理番号 1355528
審判番号 不服2017-9655  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-30 
確定日 2019-10-02 
事件の表示 特願2013- 90543号「ギャッチベッド用マットレス」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-212849号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成25年4月23日の出願であって、平成28年5月20日付けで拒絶理由が通知され、同年7月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月30日付けで拒絶理由が通知され、同年11月1日に意見書が提出され、平成29年3月28日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明及び明細書の記載事項
本願請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成28年7月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
クッション性を有し、ベッド使用者の体重を支えるマットレス本体と、
このマットレス本体を被包するカバーと、
を有し、
前記マットレス本体は、前記ベッド使用者の大腿部に対応する位置に、腰部及び背部に対応する位置の素材よりも硬い素材が配置されていることを特徴とするギャッチベッド用マットレス。
【請求項2】
前記カバーの下面における前記硬い素材の位置に対応する位置に、マットレスの滑動を抑制する滑り止めが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のギャッチベッド用マットレス。
【請求項3】
前記マットレス本体は、ベッドの長手方向の一部又は全域に延びる基材と、前記大腿部に対応する位置に配置された補助材と、を有し、前記補助材により、前記大腿部に対応する位置の素材硬さが前記腰部及び前記背部に対応する位置の素材硬さよりも硬くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のギャッチベッド用マットレス。」

また、上記手続補正書により補正された本願明細書における発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。また、以下「A」?「B」の記載事項は、それぞれ「記載事項A」?「記載事項B」という。以下同様。)。

A「【0002】
ギャッチベッドのボトム上には、マットレスが載置されており、患者等のベッド使用者は、マットレス上に横臥する。そして、ギャッチベッドにおいては、ボトムが、使用者の背の部分に対応する背ボトムと、腰の部分に対応する腰ボトムと、大腿部の部分に対応する膝ボトムと、足の部分に対応する足ボトムとに分割されており、通常、腰ボトムは固定されているが、背ボトムは、腰ボトム側の端部を回動中心として、揺動するようになっている。この背ボトムが上昇し、背上げ動作がなされると、マットレス上の使用者の上半身が起こされ、使用者は、読書又はテレビジョン鑑賞等がしやすい体勢になる。
【0003】
しかしながら、このようなギャッチベッドの場合、背上げ動作がなされると、マットレス上の使用者の身体が、ベッドの長手方向(足元方向)にずれを生じやすくなり、寝心地が悪くなると共に、余分な力が使用者にかかるという問題点がある。
【0004】
また、この背上げ時に、身体に対して印加される応力は、背ボトム上のマットレスも、ベッド長手方向(足元方向)にずらす方向に作用する。このため、マットレスのずれも問題になる。
【0005】
そこで、特許文献1においては、マットレスの裏面とベッド(ボトム)の上面との間に、高摩擦係数のシート部材を敷設し、マットレスの滑りに対して滑り抵抗力を付加したマットレスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-207543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この特許文献1に開示されたマットレスは、マットレスのベッド長手方向への滑動を防止することはできても、ベッドのマットレス上に横臥するベッド使用者のベッド長手方向へのずれを防止できるものではないという問題点がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ギャッチベッドのマットレス上に横臥するベッド使用者の背上げ動作時のベッド長手方向へのずれを防止することができるギャッチベッド用マットレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るギャッチベッド用マットレスは、
クッション性を有し、ベッド使用者の体重を支えるマットレス本体と、
このマットレス本体を被包するカバーと、
を有し、
前記マットレス本体は、前記ベッド使用者の大腿部に対応する位置に、腰部及び背部に対応する位置の素材よりも硬い素材が配置されていることを特徴とする。
【0010】
このギャッチベッド用マットレスにおいて、
前記マットレス本体は、ベッドの長手方向の一部又は全域に延びる基材と、前記大腿部に対応する位置に配置された補助材と、を有し、前記補助材により、前記大腿部に対応する位置の素材硬さが前記腰部及び前記背部に対応する位置の素材硬さよりも硬くなっているように構成することができる。
【0011】
また、前記カバーの下面における前記硬い素材の位置に対応する位置に、マットレスの滑動を抑制する滑り止めが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、マットレス本体が、腰部の位置が軟らかく、大腿部の位置が硬くなるように構成されているので、マットレス上に横臥するベッド使用者は、相対的に、その腰が若干沈むものの、大腿部は硬い素材に支持されて沈みにくい。このため、背ボトムが上昇して、背上げ動作が行われても、使用者の身体が、マットレスに対してベッド長手方向(足元方向)にずれてしまうことはない。また、マットレス本体を被包するカバーの下面には、脚部ボトムとの間でマットレスが滑動してしまわないように、滑り止めが設けられているので、マットレスもベッド長手方向にずれることはない。よって、ベッド使用者の身体は、背上げ動作時も、ベッド上の当初の位置からずれてしまうことがない。」

B「【0015】
マットレス本体1は、ベッドの全面に対応する幅及び長さを有する第1部材2と、この第1部材2の頭部側及び足部側の部分の下面に接合された第2部材3,4と、第1部材2の腰部の部分の上面に接合された第3部材6と、平面視で第1部材2における第3部材6と足部側第2部材4との間の部分における下面に接合された第4部材5とから構成される。第1部材2と第3部材6の上面はほぼ面一であり、第2部材3,4及び第4部材5の下面と、第1部材2における腰部の部分の下面とは、ほぼ面一である。従って、マットレス本体1は全体で板状をなす。第1部材2は、例えば、硬さが200N(40%圧縮)以上のポリエステル硬綿製であり、第2部材3,4及び第3部材6は、例えば、硬さが50乃至130N(40%圧縮)のウレタン製である。第4部材5は、同様に、ウレタン製であるが、硬さが150乃至500N(40%圧縮)であり、第2部材3,4及び第3部材6より高硬度である。ポリエステル硬綿製の第1部材2は、マットレス本体1の基本的な構造材となり、ベッドの長手方向の全域に延びる基材である。また、腰部に相当する第3部材6は若干軟らかい素材で形成されている。一方、大腿部に相当する第4部材5は硬い素材で形成されており、基材又は腰部の第3部材6よりも硬い素材で形成された補助材である。なお、この補助材、即ち第4部材5の断面形状は、図2に示すように、腰部側の部分がくさび形になっており、足部側の部分は均一な厚さの平板状をなす。この補助材は、ベッド長手方向に100mm以上の長さを有し、幅は150mm以上であることが好ましい。
【0016】
図3は、本実施形態のカバー40を示す下面図である。この図3に示すように、カバー40は、袋状をなし、マットレス本体1を内部に収納して、マットレス本体1を被包する。カバー40のベッド長手方向の端部の辺と、それに続く両側の辺の一部に、ファスナー41が設けられていて、このファスナー41を開閉することにより、マットレス本体1を内部に収納する。このカバー40の両側部には、取っ手42が2対設けられていて、マットレスを運搬する際の便宜に供するようになっている。例えば、カバー40は、その上半部がニット製であり、下半部が織物製であって、これらの上半部及び下半部をカバー40の側部で接合することにより、袋状にしている。なお、カバー40の上面には、製品ロゴ等をシルク印刷により表示することができる。
【0017】
このカバー40の下面には、硬い第4部材5に対応する部分、即ち、マットレス上に横臥したベッド使用者の大腿部に対応する部分に、滑り止め加工することにより、滑り止め部43が設けられている。この滑り止め部43の滑り止め加工は、平面状にゴム素材を被着することにより行うことができるが、この手段は、その他の種々の手段を講じることができる。この滑り止め部43は、ベッド長手方向に100mm以上の長さを有し、幅が150mm以上であることが好ましい。
【0018】
上述のごとく構成された本実施形態のマットレスにおいては、補助材(第4部材5)が150乃至500Nと硬い素材で形成されており、腰部を支持する第3部材6が50乃至130Nと軟らかい素材で形成されているので、ベッド使用者の腰部は第3部材6で相対的に沈みやすく、大腿部を支持する補助材(第4部材5)は150乃至500Nと硬い素材で形成されているので、ベッド使用者の大腿部は補助材(第4部材5)により支持されて、相対的に沈まない。このため、使用者の臀部(腰部)は、補助材(第4部材5)に係止されて、ベッド長手方向(足元方向)にずれることがない。また、カバー40には滑り止め加工部43が設けられているので、マットレス自体も、膝ボトム(脚部ボトム)との間に、大きな摩擦力が作用して、ベッド長手方向にずれが生じることはない。更に、ベッド使用者がマットレス上に座した場合、臀部が補助材(第4部材5)からの反力を受けて、骨盤が立った座位姿勢をとりやすくなる。
【0019】
マットレス本体1は、第1部材2が硬さが200N以上のポリエステル硬綿で成形されており、この第1部材2が、ベッド長手方向の全域に配置されているが、ベッド上に横臥した使用者の腰部の部分は、第1部材2上に、硬さが50乃至130Nの軟らかいウレタン製の第3部材6が配置されているので、ベッド使用者の背部及び脚部は、硬い素材に支持され、腰部は、柔らかい素材に支持されることになる。このため、本実施形態の下層マットレス部材1は、腰部が沈み込みやすく、背部及び脚部が沈み込みにくいという特性をもつものとなる。
・・・
【0025】
なお、マットレス本体1は、それだけで、ベッド上のマットレスとして必要な機能をもつ。従って、マットレス本体1は、種々の患者等にとって、共通に必要な機能を備えており、最低限の寝心地を有していて、それだけでも、患者が横臥するマットレスとしての機能を有する。マットレス本体1は、前述のごとく、その上に横臥した患者は、動きやすいと共に、臀部の体圧分散性がすぐれている。図1及び図2に示すマットレス本体1は、例えば、厚さが7cmであり、薄型タイプのマットレスといえる。図4に示すマットレス本体1と上層マットレス部材10との組み合わせのスタンダードタイプのプラットホーム化マットレスは、上層マットレス部材10の厚さが例えば9cmであり、図5に示すマットレス本体1と上層マットレス部材20との組み合わせの床ずれ防止タイプのプラットホーム化マットレスは、上層マットレス部材20の厚さが例えば12.5cmである。このように、上層マットレス部材の厚さが異なるので、カバー40は、各厚さに対応したものを用意することが好ましい。即ち、患者等のベッド使用者の特性に応じて付加すべき機能、即ち、個々のベッド使用者にとって必要な機能は、上層マットレス部材がもつが、マットレス全体の厚さは、この上層マットレス部材の厚さにより変化するので、それに応じて適切なカバーを用意することが好ましい。」

C さらに、本願には、以下の図が添付されている。


第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、本願発明1は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。

引用文献1:特表2001-519186号公報

第4 引用文献1に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として示され、本願の出願日前に頒布された特表2001-519186号公報(以下、原査定と同様に「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。また、以下「1a」?「1b」の記載事項は、それぞれ「記載事項(1a)」?「記載事項(1b)」という。以下同様。)。

(1a)「【0035】
マットレス52を、図3に図示する如く、ボックススプリング、ベッドの固定デッキ、ベッドの連接結合デッキ等の土台120の上に載置する。マットレスはまた床またはその他の任意の全体として平らな上を向いた表面上に載置され、これは現在考えられ得る本発明の範囲を逸脱するものではない。
・・・
【0038】
上記に説明した如く、マットレス52は、固定された全体として平らな上方を向いたユーザの使用中にマットレス52が載置される表面上、または、図4に図示する如き連接結合デッキ138を有するその他の装置(図示なし)上の双方で使用できるように構成される。例示した連接結合デッキ138はヘッド部分144、シート部分146、大腿部分148及び足部分150を含む。ライト(図示なし)またはその他の照明装置を設けることが可能であり、斯かる照明装置はアーム(図示なし)または伸長するブラケットをヘッド部分144に取り付けてライトがマットレス52を照明する位置まで届くようにすることができる。アームをヘッド部分に取り付けることで、ユーザの頭とライトとの相対位置は全体として固定される。
【0039】
デッキ138のシート部分146はマットレス52を載せる全体として水平で上方を向いた表面を有するベッドに対して固定され、ヘッド部分144、大腿部分148及び足部分150はマットレス52を移動するようにベッド(図示なし)に対して及び互いに対して移動自在にされて、マットレス52の位置及びマットレス52上のユーザの位置が変化するようにする。ヘッド部分144、大腿部分148及び足部分150を移動する駆動装置を図4に矢印152により図示する。好適な連接結合デッキ138では、足部分150は該足部分150が全体としてシート部分146に対して平行となる位置にのみ移動可能となる。更に、好適な大腿部分148の動きは全体として水平な睡眠位置と睡眠位置から上方に向いてユーザ(図示なし)の足がユーザの胴と水平または胴より高くされた全体として垂直方向にされたままとなる位置の間に限定される。
【0040】
様々な機械的及び電気機械的アクチュエータ及び駆動装置を使用して図4乃至図6に図示する如くベッドに対して個々のデッキ部分144、146、148、150を昇降させることが可能であるのは理解できることである。リードスクリュー駆動を含んだ様々なタイプの伝達要素及び様々なタイプの機械的リンケージを備えた電気駆動モータを使用して病院用ベッドの各部を相対移動させることは病院用ベッド技術では公知である。また、加圧空気を動力源とする様々なタイプの空気袋体を含んだ空気アクチュエータを使用して病院用ベッドの個々の部分を起動及び/または移動することも公知である。本明細書及び特許請求の範囲においては「上昇または下降させる手段」なる用語は本発明の椅子式ベッド即ちチェアベッド50の各部を昇降させるための全てのタイプの手動クランク機構を含めた全てのタイプの機械式、電気機械式、油圧式及び空気式機構を網羅する意味で使用されるものである。
・・・
【0053】
上記に説明した如く、連接結合デッキ138のヘッド、大腿及び足部分144、148、150の各々は、図5及び図6に図示する如く、シート部分146に対して、互いに対してそしてベッドに対して相対移動するのが典型的である。前記部分144、148、150の各部分に隣接した刻目付き発泡体コア94の各部は斯かる部分144、148、150の各々と一緒に移動するように構成される。スリット140は、例えば、図6に図示する如く、スリット140から離間する内側方向へ刻目付き発泡体コア94を折り曲げるのを可能にし、開口部142は、刻目付き発泡体コア94が折り曲げられた時に不用意に破断するのを防止する。
【0054】
図5及び図6に図示する如く、カット134は少なくともカット134の1つが全体としてヘッド及びシート部分144、146の間に置かれるように、少なくともカット134の1つが全体としてシート及び大腿部分146、148の間に置かれるように、そして、少なくともカット134の1つが全体として大腿及び足部分148、150の間に置かれるように位置決めされる。刻目付き発泡体コア94には複数のカット134が図5及び図6に最も良く図示されているように各位置に設けられて、ベッドに応じてヘッド、シート、大腿、及び足部分144、146、148、150の長手方向の長さが異なり得る、連接結合デッキを有した様々なベッドと一緒に使用された時に、上記に記載したことが事実となるようにされる。
【0055】
上記に述べた如く、刻目付き発泡体コア94には、また、図5及び図6に最も良く図示されている如く、頂部表面132上に横断方向に延在する溝130が設けられる。該溝130は、図6 に図示する如く、カット134の反対の表面132、136が該表面上に押し付けられるのを可能にするスペースを追加して設けることにより刻目付き発泡体コア94の折り曲げが容易になるように位置決めすることができる。しかしながら、刻目付き発泡体コア94のヘッド、シート、大腿及び足部分144、146、148、150または連接結合デッキ138と一体となって移動する部分には溝130は必要ない。
【0056】
各溝130は図5及び図6に最良に図示されている如く、一定の深さ160及び一定の幅162を有しており、深さ160及び幅162の双方は溝130に隣接した刻目付き発泡体コア94の示す支持及び堅さ特性を変更するために変更することができる。例えば、溝130の深さ160を深くすれば、溝130に隣接した刻目付き発泡体コア94が、該刻目付き発泡体コア94を備えた発泡体より柔らかい発泡体を有する非刻目付き発泡体マットレスから予測される支持及び堅さ特性をユーザ(図示なし)に提供することができる。同様に、溝130の幅162を広くすることで、溝130に隣接する刻目付き発泡体コア94は該刻目付き発泡体コア94を備えた発泡体より柔らかい発泡体を有する非刻目付き発泡体マットレスから予測される支持及び堅さ特性をユーザ(図示なし)に提供することができる。このように、溝130の深さ160及び幅162を変更することで、刻目付き発泡体コア94の当該部分の支持及び堅さ特性を変更することができる。
【0057】
溝130は刻目付き発泡体コア94の頂部表面132に形成される。しかしながら、刻目付き発泡体コア94のベッドに係合する表面に溝130を形成して刻目付き発泡体コア94の頂部表面132が全体として平らになるようにすれば、刻目付き発泡体コア94を備えるマットレス52の堅さ及び支持特性は低下するが、斯かる低下は刻目付き表面を上方に向けた時に起きる低下ほど大きな低下ではない。従って、刻目付き発泡体コア94のベッドに係合する下向きの表面上に刻目を付ける、即ち彫り出すことによりマットレス52の堅さ及び支持特性をさらに調整することが可能となる。刻目付き発泡体コア94の頂部表面132のみに、ベッドに係合する下向き表面のみに及び上記双方の表面に溝130を含むように刻目付き発泡体コアを彫り出すことは本発明の現在考えられ得る範囲内のことである。
【0058】
フレーム74の側部発泡体部分80及び発泡体仕切りレール114に刻目をつけてそれぞれの部材80、114が、図7に図示する如く、連接結合デッキ138のヘッド、シート、大腿及び足部分144、146、148、150に沿って移動するようにすることも可能である。発泡体仕切りレール114は、一般的には、刻目付き発泡体コア94に関して上記に説明したのと同じ溝130及びカット134のパターンを有するように彫り出される。
【0059】
フレーム74をコア88より堅さが著しく大きな発泡体から形成してマットレス52の側部及び端部に沿って支持を更に強くすることができる。斯かる追加の支持は、ユーザがベッドに乗り降りする時に特に役に立つ。しかしながら、斯かる堅さを増強した側部発泡体部分80を使用するには斯かる側部発泡体部分80がデッキ138のヘッド、シート、大腿及び足部分144、146、148、150と確実に一緒に動くように該側部発泡体部分80を彫り出す必要がある。
【0060】
刻目付き発泡体コア94の場合には、フレーム74の側部発泡体部分80に、図7に図示する如く、スリット140及び円筒状開口部142を有する横断方向のカット134を設ける。側部発泡体部分80に、更に、溝130を設けて、刻目付き発泡体コア94について上記に説明した如く、側部発泡体部分80の堅さ及び支持特性を変更することが可能である。」

(1b)「【0128】
図24に示された本発明の代替実施例において、マットレス装置452 は少なくとも4個の異なる堅さ感触の組合せを含むべく提供される。該マットレス装置452 によれば小売業者は、購入前にユーザに対して少なくとも4通りの異なる堅さ感触を呈示する単一のテスト装置を使用し得る。故に該マットレス装置452 に依れば、小売業者は店舗内のテスト用マットレスの台数を減ずることで床面積を節約し得ると共に、ユーザは小売業者から購入しようとするマットレスの感触を適合調整し得ることになる。種々の堅さ感触は、マットレス装置452 によりユーザに対して垂直区分け(vertical zoning)(以下、“制御式圧縮”と称する) および頭部/足部間区分け(head-to-toe zoning)を提供することで達成される。この概略的に2次元の区分けは、ユーザの体重負荷をマットレス装置452 上に分散させてユーザと該装置452 との間の界面圧力を最小化する。
【0129】
図24を参照すると、マットレス装置452 は頂部キルティングパネル454 および底部キルティングパネル460 を含んでいる。頂部キルティングパネル454 は、上向きの頂部459 、( 不図示の) 逆側の底部、および、周縁部456 を有している。例示的に、頂部キルティングパネル454 の頂部459 はキルティングパターンを含むべく縫い綴じられている。頂部キルティングパネル454 は幾分か弾性的な材料から作成されることにより、ユーザはマットレス装置452 内に“沈下”し得る。故にマットレス装置452 はユーザの体型に適合して界面圧力を緩和する。
【0130】
図24および図25に示された如く、マットレス装置452 の底部キルティングパネル460 は頂部キルティングパネル454 と協働してマットレス内部472 を画成する。而して、底部キルティングパネル460 は、内向きの頂部462 、反対側の外側底部464 、および、上方に延在する側部466 を含んでいる。側部466 は、底部464 の近傍の底縁部468 と、頂部キルティングパネル454 の周縁部456 への取付けの為の頂縁部470 とを含んでいる。但し図1(a) に示された如く頂部キルティングパネル454 は、下方に延在してマットレス側部を画成する側部67を有すべく提供され得る。頂縁部470 および周縁部456 は、シーム(seam)などの縫製構造により取付けられる。但し、頂部および底部キルティングパネル454 、460 を相互に連結すべくジッパ、ならびに、フック、ボタン、タブなどの他の取付機構が使用され得ることは理解される。頂部459 と同様に、底部キルティングパネル460 の底部464 は貝殻状キルティングパターンを含むべく縫い綴じられると共に、或る程度まで弾性的な材料から製造される。図24を参照。貝殻状キルティングパターンが例示されているが、本発明に依れば頂部および底部459 、464 に対して多様なキルティングパターンが企図されることは理解される。これに加え、頂部および底部キルティングパネル454 、460 の頂部および底部459 、464 は、種々の弾性を有する多様な材料から構成されて装置454 に種々の堅さ感触を備え得る。
【0131】
マットレス装置454 (審決注:「452」の誤記)はまた、コア458 と、該コア458 を囲繞すると共に頭部端部分476 、足部端部分478 、および、頭部端および足部端部分476 、478 に接合すべく長手方向に延在する側部部分480 を有するフレーム474 と、上側トッパ発泡体479 と、下側トッパ発泡体481 とを含んでいる。尚、以下においては“頭部端部分(head end section)”および“足部端部分(foot end section)”という語句が使用されるが、ユーザの頭部および足部を支持すべくいずれの部分が使用されても良いことは理解される。フレーム474 はコア458 よりも堅い発泡体により構成されて、ユーザがマットレス装置454 に進入もしくは退出するときにユーザに対して付加的な支持を提供する。但し、フレーム474 を構成すべく種々の堅さを有する多様な材料が使用され得ることは理解される。図24に示された如く、フレーム474 はマットレス内部472 に受容される。頭部端および足部端部分476 、478 は、接合部483 にて側部部分480 に連結される。フレーム474 の頭部端部分476 、足部端部分478 および側部部分480 は協働して、ユーザが横臥する中央開口482 を画成する。フレーム474 は、上側および下側トッパ発泡体479 、481 の間に挟持される。
【0132】
図24を参照すると、鉛直方向における上側トッパ発泡体479 は事前選択された第1 発泡体堅さを有すると共に、下側トッパ発泡体481 は事前選択された第2 発泡体堅さを有している。本発明に依れば、上記上側トッパ堅さは下側トッパ堅さとは異なっている。上側および下側のトッパ堅さの間の差は、変更され得る。但し、上側および下側のトッパ堅さの差が増大するにつれ、制御式圧縮における差に依るユーザへのマットレス感触の差が増大することは理解される。
【0133】
コア458 はフレーム474 の中央開口482 内に受容されると共に、上側および下側トッパ発泡体479 、481 間に存すべく位置せしめられる。マットレス装置454 において、トッパ発泡体479 、481 は鉛直方向制御式圧縮(vertical controlled compression) を提供すると共にコア458 は頭部/足部間区分けを提供する。
【0134】
コア458 は、頭部端ブロック490 と、足部端ブロック492 と、頭部端および足部端ブロック490 、492 間に存すべく位置せしめられたシートブロック494 と、区分ブロック410 、412 とを含んでいる。図25に示された如く各ブロック490 、492 、494 は、頂部キルティングパネル454 に面する頂部側496 と、底部キルティングパネル460 に面する底部側498 と、頂部および底部側496 、498 間に延在する両側縁部500 とを含んでいる。
【0135】
コア488 (審決注:「458」の誤記)の各ブロック490 、492 、494 は、個々の事前選択ブロック堅さを有している。例示的に、コア488 (審決注:「458」の誤記)の各ブロック490 、492 、494 はフォームラバー(foam rubber) で構成されるが、各ブロック490 、492 、494 が多様な圧縮可能材料から構成され得ると共に膨張可能な袋体として形成され得ることは理解される。フォームラバーの堅さおよび支持特性が小売業者により事前選択されることにより、ユーザが特定のマットレス感触に適合調整するのを助けるテスト用マットレス装置をユーザに提供し得る。各ブロック490 、492 、494 の堅さは約15乃至約98のILD の範囲に亙るが、各ブロック490 、492 、494 の堅さは本発明に従って変更され得る。コア488 (審決注:「458」の誤記)の各ブロック490 、492 、494 は、個々の事前選択ブロック堅さを有するが、所望であれば各ブロック490 、492 、494 が同一の堅さを有し得ることは理解される。
【0136】
図24に示された如く、コア488 (審決注:「458」の誤記)の区分ブロック410 、412 はユーザの腰部領域および大腿領域と略々整列して存すべく位置せしめられる。ブロック410 、412 はフォームラバーで構成されるが、ブロック410 、412 が多様な圧縮可能材料で構成され得るか又は空気袋体として形成され得ることは理解される。フォームラバーの堅さおよび支持特性が小売業者により事前選択されることにより、ユーザが特定のマットレス感触に適合調整するのを助けるテスト用マットレス装置をユーザに提供し得る。ブロック410 、412 の堅さは約15乃至約98のILD の範囲に亙る。ブロック410 、412 の堅さは本発明に従い変更され得ることは理解される。
【0137】
第1 ブロック410 は頭部端ブロック490 およびシートブロック494 の間に存すると共に長手方向にてそれらに対して当接すべく位置せしめられる。故に第1 ブロック410 は、ユーザの頭部が頂部キルティングパネル454 上の頭部端ブロック490 の近傍に位置せしめられたときにユーザの( 不図示の) 腰部(lumber)と略々整列される。これに加え、第1 ブロック410 は事前選択された堅さを有している。好適には、第1 ブロック410 の堅さは頭部端ブロック490 およびシートブロック494 の堅さよりも大きくしてユーザの腰部に対して付加的な支持を提供する。第2 ブロック412 は、足部端ブロック492 およびシートブロック494 の間に存すると共に長手方向にてそれらに対して当接すべく位置せしめられる。故に第2 ブロック412 は、ユーザの( 不図示の) 頭部が頂部キルティングパネル454 上の頭部端ブロック490 の近傍に位置せしめられたときにユーザの( 不図示の) 上腿と略々整列される。第2 ブロック412 は事前選択された堅さを有している。好適には、第2 ブロック412 の堅さは足部端ブロック492 およびシートブロック494 の堅さよりも大きくしてユーザの大腿に対して付加的な支持を提供する。本発明に依れば第2 ブロック412 の堅さは第1 ブロック410 の堅さよりも大きく、小さく、又は、等しくされ得ることは理解される。
・・・
【0140】
上記マットレス装置452 は、ボックススプリング、ベッドの固定デッキ、ベッドの連接結合デッキなどの土台上でユーザに複数の堅さ設定を提供すべく使用され得る。マットレス装置452 はまた、現在において権利請求された本発明の範囲を越えること無く、床、テーブルまたは略々平坦で上向きの任意の表面上に配置し得る。」

(1c)引用文献1には以下の図が示されている。





また、上記記載事項及び図示内容によれば、以下の事項が認められる。
(1d)段落【0134】の「コア458 は、頭部端ブロック490 と、足部端ブロック492 と、頭部端および足部端ブロック490 、492 間に存すべく位置せしめられたシートブロック494 と、区分ブロック410 、412 とを含んでいる。」という記載、段落【0135】の「コア488 (審決注:「458」の誤記)の各ブロック490 、492 、494 はフォームラバー(foam rubber) で構成され・・・各ブロック490 、492 、494 が同一の堅さを有し得る」という記載、段落【0136】の「コア488 (審決注:「458」の誤記)の区分ブロック410 、412 はユーザの腰部領域および大腿領域と略々整列して存すべく位置せしめられる。ブロック410 、412 はフォームラバーで構成される」という記載、段落【0137】の「第1 ブロック410 は頭部端ブロック490 およびシートブロック494 の間に存すると共に長手方向にてそれらに対して当接すべく位置せしめられる。・・・第2 ブロック412 の堅さは足部端ブロック492 およびシートブロック494 の堅さよりも大きくしてユーザの大腿に対して付加的な支持を提供する。」という記載(いずれも記載事項(1b))によれば、「区分ブロック410」及び「ブロック410」は「第1ブロック410」と、「区分ブロック412」及び「ブロック412」は「第2ブロック412」と、「ブロック490」は「頭部端ブロック490」と、「ブロック492」は「足部端ブロック492」と、「ブロック494」は「シートブロック494」とそれぞれ同一のものを意味する。

以上の記載事項(1a)?(1d)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「マットレス装置452は頂部キルティングパネル454および底部キルティングパネル460を含み、
頂部キルティングパネル454は、上向きの頂部459、逆側の底部、および、周縁部456を有し、
マットレス装置452の底部キルティングパネル460は頂部キルティングパネル454と協働してマットレス内部472を画成し、底部キルティングパネル460は、内向きの頂部462、反対側の外側底部464、および、上方に延在する側部466を含み、側部466は、底部464の近傍の底縁部468と、頂部キルティングパネル454の周縁部456への取付けの為の頂縁部470とを含み、
頂縁部470および周縁部456は、シーム(seam)などの縫製構造により取付けられ、
マットレス装置452はまた、コア458と、該コア458を囲繞すると共に頭部端部分476、足部端部分478、および、頭部端および足部端部分476、478に接合すべく長手方向に延在する側部部分480を有するフレーム474と、上側トッパ発泡体479と、下側トッパ発泡体481とを含んでおり、
フレーム474はマットレス内部472に受容され、
フレーム474の頭部端部分476、足部端部分478および側部部分480は協働して、ユーザが横臥する中央開口482を画成し、
コア458はフレーム474の中央開口482内に受容されると共に、上側および下側トッパ発泡体479、481間に存すべく位置せしめられ、
コア458は、頭部端ブロック490と、足部端ブロック492と、頭部端および足部端ブロック490、492間に存すべく位置せしめられたシートブロック494と、第1ブロック410、第2ブロック412とを含み、
コア458の頭部端ブロック490、足部端ブロック492、シートブロック494はフォームラバー(foam rubber)で構成され、
頭部端ブロック490、足部端ブロック492、シートブロック494が同一の堅さを有し、
コア458の第1ブロック410、第2ブロック412はユーザの腰部領域および大腿領域と略々整列して存すべく位置せしめられ、
第1ブロック410、第2ブロック412はフォームラバーで構成され、
第1ブロック410は頭部端ブロック490およびシートブロック494の間に存すると共に長手方向にてそれらに対して当接すべく位置せしめられ、第1ブロック410は、ユーザの頭部が頂部キルティングパネル454上の頭部端ブロック490の近傍に位置せしめられたときにユーザの腰部(lumber)と略々整列され、
第1ブロック410の堅さは頭部端ブロック490およびシートブロック494の堅さよりも大きくしてユーザの腰部に対して付加的な支持を提供し、
第2ブロック412は、足部端ブロック492およびシートブロック494の間に存すると共に長手方向にてそれらに対して当接すべく位置せしめられ、第2ブロック412は、ユーザの頭部が頂部キルティングパネル454上の頭部端ブロック490の近傍に位置せしめられたときにユーザの上腿と略々整列され、
第2ブロック412の堅さは足部端ブロック492およびシートブロック494の堅さよりも大きくしてユーザの大腿に対して付加的な支持を提供し、
第2ブロック412の堅さは第1ブロック410の堅さよりも大きく、小さく、又は、等しくされ、
マットレス装置452は、ベッドの連接結合デッキの土台上で使用されるマットレス装置452。」

第5 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

1 引用発明の「ユーザ」は、その意味、機能または構造からみて、本願発明1の「ベッド使用者」に相当する。

2 引用発明の「コア458」は、「頭部端ブロック490と、足部端ブロック492と、頭部端および足部端ブロック490、492間に存すべく位置せしめられたシートブロック494と、第1ブロック410、第2ブロック412とを含」むものであるが、「頭部端ブロック490、足部端ブロック492、シートブロック494」及び「第1ブロック410、第2ブロック412」は「フォームラバー」「で構成され」ているから、クッション性を有することは明らかである。
また、引用発明の「コア458」は、「マットレス装置452」の「ユーザが横臥する」「フレーム474の中央開口482内に受容されると共に、上側および下側トッパ発泡体479、481間に存すべく位置せしめられ」ているから、ユーザの体重を支えることは明らかである。
そうすると、引用発明の「頭部端ブロック490と、足部端ブロック492と、頭部端および足部端ブロック490、492間に存すべく位置せしめられたシートブロック494と、第1ブロック410、第2ブロック412とを含」むものであって、「頭部端ブロック490、足部端ブロック492、シートブロック494」及び「第1ブロック410、第2ブロック412」は「フォームラバー」「で構成され」、「ユーザが横臥する」「フレーム474の中央開口482内に受容されると共に、上側および下側トッパ発泡体479、481間に存すべく位置せしめられ」る「コア458」は、本願発明1の「クッション性を有し、ベッド使用者の体重を支えるマットレス本体」に相当する。

3 本願発明1の「被包する」の意味について、本願明細書の段落【0016】の「図3に示すように、カバー40は、袋状をなし、マットレス本体1を内部に収納して、マットレス本体1を被包する。」(記載事項B)という記載及び図3の図示内容(記載事項C)を参照すると、対象を内部に収納して、被い包むことであると理解できる。
また、本願発明1の「カバー」が「このマットレス本体を被包する」ことの意味について、本願明細書の段落【0025】の「図4に示すマットレス本体1と上層マットレス部材10との組み合わせのスタンダードタイプのプラットホーム化マットレスは、上層マットレス部材10の厚さが例えば9cmであり、図5に示すマットレス本体1と上層マットレス部材20との組み合わせの床ずれ防止タイプのプラットホーム化マットレスは、上層マットレス部材20の厚さが例えば12.5cmである。このように、上層マットレス部材の厚さが異なるので、カバー40は、各厚さに対応したものを用意することが好ましい。・・・マットレス全体の厚さは、この上層マットレス部材の厚さにより変化するので、それに応じて適切なカバーを用意することが好ましい。」(記載事項B)という記載及び図4?5の図示内容(記載事項C)をも参照すると、「カバー」が「被包する」対象に少なくとも「マットレス本体」が含まれていることであると理解できる。
ここで、引用発明の「頂部キルティングパネル454」は、「上向きの頂部459、逆側の底部、および、周縁部456を有」し、「底部キルティングパネル460」は「内向きの頂部462、反対側の外側底部464、および、上方に延在する側部466を含み、側部466は、底部464の近傍の底縁部468と、頂部キルティングパネル454の周縁部456への取付けの為の頂縁部470とを含」み、「頂縁部470および周縁部456は、シーム(seam)などの縫製構造により取付けられ」ているものであって、引用発明においては、「コア458」(本願発明1の「マットレス本体」に相当。)が「フレーム474」の「中央開口482内に受容」され、さらに、「フレーム474」が、「頂部キルティングパネル454」及び「底部キルティングパネル460」が「協働して」「画成」する「マットレス内部472」に「受容」されているから、「頂部キルティングパネル454」及び「底部キルティングパネル460」が「コア458」を内部に収納して、被い包んでいることは明らかである。
そうすると、引用発明の、「コア458」が「受容」される「フレーム474」をさらに「マットレス内部472」に「受容」している「頂部キルティングパネル454」及び「底部キルティングパネル460」は、本願発明1の「このマットレス本体を被包するカバー」に相当する。

4 引用発明の「マットレス装置452」は、「ベッドの連接結合デッキの土台上で使用される」ものであるが、「連接結合デッキ」に関し、引用文献1の段落【0038】?【0039】の「連接結合デッキ138はヘッド部分144、シート部分146、大腿部分148及び足部分150を含む。・・・デッキ138のシート部分146はマットレス52を載せる全体として水平で上方を向いた表面を有するベッドに対して固定され、ヘッド部分144、大腿部分148及び足部分150はマットレス52を移動するようにベッド・・・に対して及び互いに対して移動自在にされて、マットレス52の位置及びマットレス52上のユーザの位置が変化するようにする。」(記載事項(1a))という記載を参照すると、少なくとも、シート部分がベッドに対して固定され、ヘッド部分、大腿部分及び足部分は移動できると理解できる。
そうすると、引用発明の「ベッドの連接結合デッキの土台上で使用されるマットレス装置452」は、その意味、機能または構造からみて、本願発明1の「ギャッチベッド用マットレス」に相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

<一致点>
「クッション性を有し、ベッド使用者の体重を支えるマットレス本体と、
このマットレス本体を被包するカバーと、
を有するギャッチベッド用マットレス。」

<相違点>
「マットレス本体」に関し、
本願発明1は、「前記ベッド使用者の大腿部に対応する位置に、腰部及び背部に対応する位置の素材よりも硬い素材が配置されている」のに対し、
引用発明は、「頭部端ブロック490、足部端ブロック492、シートブロック494が同一の堅さを有し」、「第1ブロック410は頭部端ブロック490およびシートブロック494の間に存し、第1ブロック410は、ユーザの頭部が頂部キルティングパネル454上の頭部端ブロック490の近傍に位置せしめられたときにユーザの腰部(lumber)と略々整列され、第1ブロック410の堅さは頭部端ブロック490およびシートブロック494の堅さよりも大きくしてユーザの腰部に対して付加的な支持を提供し、第2ブロック412は、足部端ブロック492およびシートブロック494の間に存し、第2ブロック412は、ユーザの頭部が頂部キルティングパネル454上の頭部端ブロック490の近傍に位置せしめられたときにユーザの上腿と略々整列され、第2ブロック412の堅さは足部端ブロック492およびシートブロック494の堅さよりも大きくしてユーザの大腿に対して付加的な支持を提供し、第2ブロック412の堅さは第1ブロック410の堅さよりも大きく、小さく、又は、等しくされ」るものである点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。

<相違点について>
1
(1)本願発明1の「腰部に対応する位置」について、本願明細書の段落【0015】の「マットレス本体1は、ベッドの全面に対応する幅及び長さを有する第1部材2と、この第1部材2の頭部側及び足部側の部分の下面に接合された第2部材3,4と、第1部材2の腰部の部分の上面に接合された第3部材6と、平面視で第1部材2における第3部材6と足部側第2部材4との間の部分における下面に接合された第4部材5とから構成される。・・・腰部に相当する第3部材6は若干軟らかい素材で形成されている。一方、大腿部に相当する第4部材5は硬い素材で形成されており、基材又は腰部の第3部材6よりも硬い素材で形成された補助材である。」という記載及び段落【0018】の「腰部を支持する第3部材6が50乃至130Nと軟らかい素材で形成されているので、ベッド使用者の腰部は第3部材6で相対的に沈みやすく、大腿部を支持する補助材(第4部材5)は150乃至500Nと硬い素材で形成されているので、ベッド使用者の大腿部は補助材(第4部材5)により支持されて、相対的に沈まない。このため、使用者の臀部(腰部)は、補助材(第4部材5)に係止されて、ベッド長手方向(足元方向)にずれることがない。」という記載(いずれも記載事項B)を参照すると、本願発明1の「腰部に対応する位置」の意味は、ベッド使用者の腰部及び臀部を支える位置であると理解できる。
ここで、引用発明では「第1ブロック410は頭部端ブロック490およびシートブロック494の間に存すると共に長手方向にてそれらに対して当接すべく位置せしめられ」「ユーザの 腰部(lumber)と略々整列され」、「第2ブロック412は、足部端ブロック492およびシートブロック494の間に存すると共に長手方向にてそれらに対して当接すべく位置せしめられ」「ユーザの上腿と略々整列され」ているので、「シートブロック494」は、ユーザの腰部と上腿との間、要するにユーザの臀部を支える位置であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「ユーザの腰部領域」「と略々整列して存すべく位置せしめられ」る「第1ブロック410」を構成する「フォームラバー(foam rubber)」及び「シートブロック494」を構成する「フォームラバー(foam rubber)」は、それぞれユーザの腰部及び臀部を支える、すなわち本願発明1の「腰部に対応する位置」に相当する位置に配置された素材といえる。
(2)また、本願発明1の「背部に対応する位置」について、本願明細書の上記記載(上記(1)を参照)を参照すると、本願発明1の「背部に対応する位置」の意味は、「腰部に対応する位置」、すなわち腰部及び臀部を支える位置、からみて頭部側に位置するベッド使用者の身体を支える位置であると理解できる。
ここで、引用発明の「コア458」は、「頭部端ブロック490」、「足部端ブロック492」、頭部端ブロック490及び足部端ブロック492間に存すべく位置せしめられた「シートブロック494」、「第1ブロック410」及び「第2ブロック412」を含むものである。
引用発明の「頭部端ブロック490」は、ユーザの腰部領域と略々整列して存すべく位置せしめられる「第1ブロック410」の頭部側に位置するものであるところ、引用発明の「頭部端ブロック490」が、ユーザの腰部領域からみて頭部側に位置する領域、すなわち本願発明1の「背部に対応する位置」に相当する位置を支えることは明らかである。
そうすると、引用発明の「頭部端ブロック490」を構成する「フォームラバー(foam rubber)」は、ユーザの腰部領域からみて頭部側に位置する領域を支える、すなわち本願発明1の「背部」「に対応する位置」に相当する位置に配置された素材といえる。
(3)さらにまた、引用発明の「第2ブロック412」は「ユーザの」「大腿領域と略々整列して存すべく位置せしめられ」ているから、引用発明の「第2ブロック412」を構成する「フォームラバー(foam rubber)」は、ユーザの大腿部を支える、すなわち本願発明1の「大腿部に対応する位置」に相当する位置に配置された素材といえる。

2
(1)次に、引用発明の「コア458」は、「頭部端ブロック490」、「足部端ブロック492」、「シートブロック494」、「第1ブロック410」及び「第2ブロック412」を含むところ、これをらを構成する「フォームラバー(foam rubber)」の硬さの関係について検討する。
引用発明は「頭部端ブロック490、足部端ブロック492、シートブロック494が同一の堅さを有し」「第1ブロック410の堅さは頭部端ブロック490およびシートブロック494の堅さよりも大きくしてユーザの腰部に対して付加的な支持を提供し」「第2ブロック412の堅さは足部端ブロック492およびシートブロック494の堅さよりも大きくしてユーザの大腿に対して付加的な支持を提供し」「第2ブロック412の堅さは第1ブロック410の堅さよりも大きく、小さく、又は、等しくされ」るものであるから、引用発明における「頭部端ブロック490」、「足部端ブロック492」、「シートブロック494」、「第1ブロック410」及び「第2ブロック412」を構成する「フォームラバー(foam rubber)」の硬さの関係は、
a 「第2ブロック412」>「第1ブロック410」>「頭部端ブロック490」=「足部端ブロック492」=「シートブロック494」
b 「第1ブロック410」>「第2ブロック412」>「頭部端ブロック490」=「足部端ブロック492」=「シートブロック494」
c 「第2ブロック412」=「第1ブロック410」>「頭部端ブロック490」=「足部端ブロック492」=「シートブロック494」
の3つの選択肢があると理解することが合理的である。
(2)引用発明の構成を具体化するために、こうした選択肢の一を採用することは当業者が適宜なし得るというべきであるから、引用発明の構成における上記3つの選択肢のうち、その1つである選択肢aを選択することは当業者が適宜なし得ることといえる。あるいは、引用文献1の段落【0136】の「ユーザが特定のマットレス感触に適合調整するのを助ける」(記載事項(1b))と記載されているところ、引用発明の意義を踏まえ、ユーザの好みに応じ、引用発明の構成における上記3つの選択肢のうち、その1つである選択肢aを選択することは当業者が適宜なし得ることといえる。
ここで、上記3つの選択肢のうち、選択肢aを採用すれば、
「第2ブロック412」(本願発明1の「大腿部に対応する位置」に相当する位置に配置された素材)>「第1ブロック410」及び「シートブロック494」(本願発明1の「腰部」「に対応する位置」に相当する位置に配置された素材)
という硬さの関係及び
「第2ブロック412」(本願発明1の「大腿部に対応する位置」に相当する位置に配置された素材)>「頭部端ブロック490」(本願発明1の「背部」「に対応する位置」に相当する位置に配置された素材)
という硬さの関係が成立する、すなわち、本願発明1でいう「前記ベッド使用者の大腿部に対応する位置に、腰部及び背部に対応する位置の素材よりも硬い素材が配置されている」構成となるといえる。
(3)そうすると、引用発明における3つの選択肢の一(上記選択肢a)を選択することで、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。

<請求人の主張について>
3
(1)請求人は、審判請求書(【請求の理由】3.(b)(b-1))において、「引用例1の段落0128?0131及び図24には、マットレス本体(コア458)と、頂部キルティングパネル454と、底部キルティングパネル460とを有するマットレス装置452が記載されているが、拒絶査定にて認定された事項、即ち、頂部キルティングパネル454及び底部キルティングパネル460がマットレス本体を被包するカバーであることは開示されておらず、頂部キルティングパネル454及び底部キルティングパネル460は、マットレス本体458の最上層及び最下層を構成するシートに過ぎない。」とした上で、審判請求書(【請求の理由】3.(c)(c-1))において、「先ず、本発明と引用例1(審決注:上記第4の「引用文献1」)とは、課題が相違する。本発明は、ギャッチベッドのマットレス上に横臥するベッド使用者の背上げ動作時のベッド長手方向へのずれを防止することを目的とするのに対し、引用例1は、個々のユーザの特別の注文に応じて作ることのできるマットレス構造を提供することを目的とし、ユーザの筋骨格に対応したキットから組み立てられる様々な形態でユーザに提供することができるマットレスを得ることを目的とする(引用例1の段落0001)。この点で、本発明と引用例1とは目的が相違する。拒絶査定において、引用例1には、マットレス本体を被包するカバーとして、頂部キルティングパネル454及び底部キルティングパネル460が記載されていると認定している。しかし、前述の如く、引用例1の図24に記載されているように、頂部キルティングパネル454は、上側リトッパ発泡体479(審決注:「上側トッパ発泡体479」の誤記)を介して、マットレス本体(コア)458上に載置されるものであり、底部キルティングパネル460は、マットレス装置452の最下層として、その上に下側リトッパ発泡体481(審決注:「下側トッパ発泡体481」の誤記)、フレーム474、マットレス本体(コア)458等が載置されるものである。つまり、この頂部キルティングパネル454及び底部キルティングパネル460は、マットレス本体を被包するものではなく、またマットレス本体のカバーでもない。本発明は、カバーはマットレス本体を被包するものであり、マットレス本体と一体となって、背上げ動作時にベッド使用者がベッド長手方向にずれてしまうことを防止する機能をもち、・・・これに対し、引用例1の頂部キルティングパネル454は、マットレス本体(コア)458を被包するものではなく、単に上側リトッパ発泡体479を介してマットレス本体(コア)458の上に載置されているだけであるから、この頂部キルティングパネル454自体が背上げ動作時にベッド長手方向にずれてしまうものである。これは、底部キルティングパネル460も同様である。即ち、底部キルティングパネル460は、背上げ時等に、マットレス本体(コア)458にベッド長手方向に移動してしまう力が作用したときに、何らこのマットレス本体(コア)458のずれ移動を抑制することはできない。このような本発明と引用例1との構成上の相違点は、前述の如く、本発明の目的と引用例1の目的とが全く異なることに起因する。」と主張する(以下「主張A」という。)。
(2)また、審判請求書(【請求の理由】3.(c)(c-1))において、「引用例1には、前述の如く、第1ブロック410がユーザの腰部領域に対応し、第2ブロック412がユーザの大腿領域に対応することが記載され、第1ブロック410の硬さ(引用例1には堅さと記載されているが、これは硬さを意味すると考える)は、頭部端ブロック490及びシートブロック494の硬さより大きくしてユーザの腰部を付加的に支持し、第2ブロック412の硬さは足部端ブロック492及びシートブロック494の硬さより大きくしてユーザの大腿を付加的に支持することが開示されている。つまり、引用例1は、腰部及び大腿部を他の部分より硬くしてそれらの重い身体の部分が沈み込まないようにすることを開示している。・・・引用例1には、第2ブロック412の硬さは、第1ブロック410の硬さよりも大きく、小さく、又は等しくすることができると記載されている。これは、第1ブロック410の硬さと第2ブロック412の硬さとの関係は、いずれの形態でもよいことを意味している。拒絶査定においては、上記引用例1の記載を根拠にして、第2ブロック412の硬さが第1ブロック410の硬さよりも硬くすることが示唆されていると認定しているが、このような事実は存在しない。引用例1において、示唆又は開示されていることは、第2ブロック412と第1ブロック410との硬さの大小関係は、全ての形態が存在することを開示している。つまり、引用例1が開示する内容は、第1ブロック410の硬さを、第2ブロック412の硬さと同一にしても良いし、大きくしても良いし、更には小さくしても良いということである。決して、拒絶査定が認定するように第2ブロック412の硬さを第1ブロック410の硬さよりも大きくすることが示唆されているわけではない。この理解は、引用例1の目的が、前述の如く、個々のユーザの特別の注文に応じて作ることのできるマットレス構造を提供することにあり、またユーザの筋骨格に対応したキットから組み立てられる様々な形態でユーザに提供することができるマットレスを得ることにあるからである。つまり、引用例1の目的は、ユーザの身体的・生理的状態に応じて、ユーザが好む最適の状態のマットレスを提供することにあり、この目的のために、引用例1は、図24に示すように、マットレス本体(コア)458を、複数のブロック490,410,494,412,492を並べた構造とし、それらのブロックの硬さを調整することにより、上記目的、即ち、ユーザの身体的・生理的状態に応じて、ユーザが好む最適の状態のマットレスを提供せんとするものである。引用例1には、このような引用例1の目的達成のために、第2ブロック412だけを、他の第1ブロック410及び頭部端ブロック490よりも硬くすることは、何ら示唆されているものではない。本発明は、大腿部に対応する位置の素材として、腰部及び背部に対応する位置の素材よりも硬い素材を使用することにより、背上げ時に、ベッド使用者にベッド長手方向にずれようとする力が印加されても、この硬い素材の部分で、身体を支え、身体がベッド長手方向にずれないようにすることに特徴がある。このような本発明の特徴は、引用例1の記載から示唆されるものではない。」と主張する(以下「主張B」という。)。

4 まず主張Aについて検討する。
上記「第5 3」で述べたとおり、引用発明の「頂部キルティングパネル454」は、「上向きの頂部459、逆側の底部、および、周縁部456を有」し、「底部キルティングパネル460」は「内向きの頂部462、反対側の外側底部464、および、上方に延在する側部466を含み、側部466は、底部464の近傍の底縁部468と、頂部キルティングパネル454の周縁部456への取付けの為の頂縁部470とを含」み、「頂縁部470および周縁部456は、シーム(seam)などの縫製構造により取付けられ」ているものであるから、これらがシートにすぎないとはいえないし、引用発明においては、「コア458」(本願発明1の「マットレス本体」に相当。)が「フレーム474」の「中央開口482内に受容」され、さらに、「フレーム474」が、「頂部キルティングパネル454」及び「底部キルティングパネル460」が「協働して」「画成」する「マットレス内部472」に「受容」されているから、「頂部キルティングパネル454」及び「底部キルティングパネル460」が協働して「コア458」を内部に収納し、被い包んでいる、すなわち被包していることは明らかである。
また、仮に、本願発明1の「カバー」に関し、本願明細書の段落【0016】の「図3に示すように、カバー40は、袋状をなし、マットレス本体1を内部に収納して、マットレス本体1を被包する。」(記載事項B)を参照し、本願発明1の「カバー」が「袋状」であると解したとしても、上述のとおり、引用発明の「頂部キルティングパネル454」は、「上向きの頂部459、逆側の底部、および、周縁部456を有」し、「底部キルティングパネル460」は「内向きの頂部462、反対側の外側底部464、および、上方に延在する側部466を含み、側部466は、底部464の近傍の底縁部468と、頂部キルティングパネル454の周縁部456への取付けの為の頂縁部470とを含」み、「頂縁部470および周縁部456は、シーム(seam)などの縫製構造により取付けられ」ているから、「頂部キルティングパネル454」及び「底部キルティングパネル460」も協働して「袋状」をなしているといえる。
したがって、引用発明の「頂部キルティングパネル454」及び「底部キルティングパネル460」は、本願発明1の「マットレス本体を被包するカバー」と構成が相違するとはいえない。
以上から、上記主張Aは採用できない。

5 次に上記主張Bについて検討する。
上記「2(1)」で述べたとおり、引用発明における「頭部端ブロック490」、「足部端ブロック492」、「シートブロック494」、「第1ブロック410」及び「第2ブロック412」を構成する「フォームラバー(foam rubber)」の硬さの関係は、
a 「第2ブロック412」>「第1ブロック410」>「頭部端ブロック490」=「足部端ブロック492」=「シートブロック494」
b 「第1ブロック410」>「第2ブロック412」>「頭部端ブロック490」=「足部端ブロック492」=「シートブロック494」
c 「第2ブロック412」=「第1ブロック410」>「頭部端ブロック490」=「足部端ブロック492」=「シートブロック494」
の3つの選択肢があると理解することが合理的である。
そうすると、上記「2(2)」で述べたとおり、引用発明の構成を具体化するために、こうした選択肢の一を採用することは当業者が適宜なし得るというべきであるから、引用発明の構成における上記3つの選択肢のうち、その1つである選択肢aを選択することは当業者が適宜なし得ることといえる。あるいは、引用発明の意義を踏まえ、ユーザの好みに応じ、引用発明の構成における上記3つの選択肢のうち、その1つである選択肢aを選択することは当業者が適宜なし得ることといえ、上記3つの選択肢のうち、選択肢aを採用すれば、本願発明1でいう「前記ベッド使用者の大腿部に対応する位置に、腰部及び背部に対応する位置の素材よりも硬い素材が配置されている」構成となるといえるのであるから、引用発明における3つの選択肢の一(上記選択肢a)を選択することで、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
また、本願明細書の段落【0018】の「ベッド使用者の腰部は第3部材6で相対的に沈みやすく、大腿部を支持する補助材(第4部材5)は150乃至500Nと硬い素材で形成されているので、ベッド使用者の大腿部は補助材(第4部材5)により支持されて、相対的に沈まない。このため、使用者の臀部(腰部)は、補助材(第4部材5)に係止されて、ベッド長手方向(足元方向)にずれることがない。・・・ベッド使用者がマットレス上に座した場合、臀部が補助材(第4部材5)からの反力を受けて、骨盤が立った座位姿勢をとりやすくなる。」(記載事項B)という記載を参照し、本願発明1の作用効果について検討すると、引用発明において上記選択肢aを採用した場合にも、「フォームラバー(foam rubber)」の硬さの関係が、「第2ブロック412」>「第1ブロック410」>「シートブロック494」となるので、ベッド使用者の腰部は相対的に沈みやすく、大腿部は相対的に沈みにくいことが明らかであるから、背上げ時に、ベッド使用者にベッド長手方向にずれようとする力が印加されても、大腿部の硬い素材(第2ブロック412)の部分で身体を支え、身体がベッド長手方向にずれない、ベッド使用者がマットレス上に座した時に、臀部が第2ブロック412からの反力を受けて、骨盤が立った座位姿勢をとりやすくなるという作用効果を奏するものといえる。そうすると、その作用効果を引用発明から当業者が予測できる範囲のものでないとはいえない。
したがって、上記主張Bは採用できない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明(引用発明)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-24 
結審通知日 2018-08-28 
審決日 2018-09-11 
出願番号 特願2013-90543(P2013-90543)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 角田 貴章  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
中田 善邦
発明の名称 ギャッチベッド用マットレス  
代理人 藤巻 正憲  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ