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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1355551
審判番号 不服2018-5113  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-13 
確定日 2019-09-26 
事件の表示 特願2017- 61953「ゲームシステム、ゲーム制御装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月18日出願公開、特開2018-161446〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月27日の出願であって、平成29年8月18日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月23日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年12月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年4月13日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成30年4月13日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものとなった。
「方向指示操作を受け付ける受付領域をタッチパネルに設定する受付領域設定手段と、
前記タッチパネルのタッチ位置に応じた操作位置を取得する操作位置取得手段と、
前記受付領域に対応する基準位置から前記操作位置への方向に基づいて指示方向を取得する指示方向取得手段と、
前記指示方向に基づいてゲーム処理を実行するゲーム処理実行手段と、
前記受付領域内から前記受付領域外に前記操作位置が移動することに伴って、前記受付領域を移動させる受付領域移動手段と、
を含み、
前記ゲーム処理実行手段は、前記指示方向と、前記基準位置と前記操作位置との間の距離とに基づいて、前記ゲーム処理を実行し、
前記受付領域移動手段は、前記操作位置が前記受付領域内の第1位置から前記受付領域外の第2位置に向けて移動することに伴って、前記操作位置が前記第1位置であった時点での前記基準位置である第3位置から前記第2位置への方向に対応する方向に前記受付領域を移動させるものであり、前記第2位置から、前記第3位置への方向に対応する方向に、前記第1位置と前記第3位置との間の距離離れた位置が前記基準位置となるようにして、前記受付領域を移動させ、
前記受付領域設定手段は、前記タッチパネルの第1領域内がタッチされた場合に、前記タッチ位置に基づいて、前記第1領域内に前記受付領域を設定し、前記タッチパネルの第1領域以外の第2領域内がタッチされた場合に、前記受付領域を前記第1領域内及び前記第2領域内のいずれにも設定しない、
ゲームシステム。」

本件補正は、補正前の特許請求の範囲に記載の請求項1を削除すると共に、請求項2を請求項1に繰り上げたものであって、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項の規定に適合する。


第3 引用刊行物
1 刊行物1
本願の出願前の平成28年1月18日に頒布された特開2016-9473号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部に表示された疑似操作キーを、タッチパネルを介して操作することが可能な端末装置に関する。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の端末装置においては、疑似操作キーの表示位置が一旦決められると、その操作の間、疑似操作キーの表示位置は固定されており、必ずしも使い勝手の良いものではなかった。例えば、端末装置上でゲームプログラムを実行していると、ユーザが継続的にその疑似的に表示された十字キー上に左手親指を接触させていたとしても、キャラクタの移動などのゲームの進行に集中するがために、いつの間にか十字キー上から指が移動してしまいキャラクタの移動が意図せず停止してしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明の様々な実施形態により、より使い勝手の良い疑似操作キーによる操作が可能な端末装置を提供する。」
(3)「【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る端末装置100のユーザの使用状態を示す図である。図1を参照すると、ユーザは端末装置100を横長方向に用い、その両端を左手及び右手でそれぞれ把持する。そして、本実施形態に係るプログラムが制御部110によって実行されると、表示部113に、いわゆるジョイスティックを疑似的に模した疑似ジョイスティック131や、可動オブジェクト132が表示される。そして、タッチパネルを介し、例えば左手の親指で疑似ジョイスティック131を操作して、表示された可動オブジェクト132の移動を制御する。また、タッチパネルを介し、右手の親指で疑似操作ボタンA133及び/又は疑似操作ボタンB134を操作して、可動オブジェクト132が保持する武器の表示を制御する。なお、可動オブジェクト132は、人物や動物、モンスターなどのキャラクタに加えて、武器や岩など、プログラムの実行中に仮想空間上を動くあらゆるものを含みうる。

【0016】
また、本実施形態に係るプログラムは、一例としては、ゲームプログラムが挙げられるが、それに限定はされない。図1に記載するような疑似操作キーによる操作が必要とするプログラムであれば、いずれでもよい。このようなプログラムは、あらかじめ端末装置100のメモリ部114に記憶されているが、通信処理部111を介して外部のサーバー装置(図示しない)から受信することも可能である。また、当該プログラムを所定のカートリッジに記憶しておき、そのカートリッジとコネクタ124を介して端末装置100を接続し、制御部110は、そのカートリッジから当該プログラムを読みだすことも可能である。また、いわゆるネイティブアプリと呼ばれるプログラムのように、当該プログラムがサーバー装置に記憶され、端末装置100にダウンロードして実行することも可能である。」
(4)「【0020】
図2においては、ユーザが疑似ジョイスティック131上の任意の位置に指で接触した後、任意の方向に指をドラッグさせて接触位置C1の位置まで移動させた状態を示している。そして、基準位置C0の座標値と接触位置C1の座標値とから基準位置C0から見た接触位置C1の方向A0と両位置間の距離D0を決定する。そして、決定された方向A0と距離D0に基づいて、可動オブジェクト132の表示位置の移動方向Ax及び移動距離Dxを決定する。その結果、可動オブジェクト132は、当初表示されていた位置(図中、破線で示した可動オブジェクト132の位置)から決定された方向Axに距離Dxだけ移動して表示される。
【0021】
なお、本実施形態では、上記のとおり疑似ジョイスティック131及び操作オブジェクト135は半透明に表示するようにしているが、必ずしも、疑似ジョイスティック131及び操作オブジェクト135は常に表示されている必要はない。特に図示はしないが、一例としてはタッチパネル116に指示体が接触した時に初めてそれらが表示されるようにしてもよい。また、疑似ジョイスティック131及び操作オブジェクト135に対応する領域をタッチパネルの対応する位置に仮想的に設け、表示部113にはこれらを明示的に表示しないようにすることも可能である。」
(5)「【0031】
タッチパネル116は、表示部113を被覆するように配置され、表示部113の表示する画像データに対応する位置座標のデータを制御部110に出力するものである。タッチパネル方式としては、抵抗膜方式、静電容量結合方式、超音波表面弾性波方式など、公知の方式を利用することができる。また、その利用する方式に応じて、指やスタイラスペンなど公知の指示体によるタッチパネルへの接触を検出する。」
(6)「【0037】
<疑似ジョイスティックへの操作の概要>
図4は、疑似ジョイスティック131における基準位置からみた接触位置の方向及び距離の決定方法を説明する図である。
【0038】
図4は、表示部113に表示された疑似ジョイスティック131と指示体の接触位置との関係が示されている。まず、疑似ジョイスティック131は、地点C0を中心とした円で形成されている。この疑似ジョイスティック131の最初の表示位置は、予め表示部113上の任意の座標位置に決められており、当該プログラムの実行と共にその座標位置に疑似ジョイスティック131を示す円が表示される。なお、この表示部座標系は、タッチパネル座標系と一致するように対応付けられている。
【0039】
本実施形態においては、基準位置とは、指示体によるタッチパネル上の接触位置の方向及び距離を決定する際の基準となるものであって、疑似ジョイスティック131を形成する円の中心(地点C0)である。なお、この基準位置は、上記のとおり接触位置の方向及び距離を決定する際の基準となればよく、例えば疑似操作キーが円で形成されていないような場合には必ずしもその操作キーの中心(重心)である必要はない。基準となればよいので、予め決められた任意の位置であってよい。
【0040】
ユーザが、表示部113上に予め表示された疑似ジョイスティック131内の任意の位置に自身の指を接触させて、疑似ジョイスティック131内を任意の方向にドラッグし、接触位置を移動させる。すると、タッチパネル116がその移動中又は移動後の接触位置の位置座標を検出して、その位置座標を制御部110にレポートする。図4においては、接触位置C2の位置座標(X2,Y2)、又は接触位置C3の位置座標(X3,Y3)が、ドラッグ操作途中又はドラッグ操作後の指の接触位置として制御部110にレポートされる。
【0041】
制御部110は、あらかじめ決められた基準位置C0の位置座標(X0,Y0)と、入手した接触位置C2の位置座標(X2,Y2)、又は接触位置C3の位置座標(X3,Y3)とで形成される線分A2及びA3のなす角度及び長さを決定する。なお、上記角度は基準位置C0から見た各接触位置C2及びC3の方向を意味する。また、長さは、基準位置C0と各接触位置C2及びC3との間の距離を意味する。」
(6)「【0053】
図6は、疑似ジョイスティック131の表示制御の方法を説明する図である。本実施形態においては、表示部113の右側に疑似操作ボタンA133及び/又は疑似操作ボタンB134が表示されている。指示体によるドラッグ操作が擬似ジョイスティック131(審決注:「疑似ジョイスティック131」に統一して表記する。)の表示領域又は操作検出領域136を越えてなされることにより疑似ジョイスティック131を指示体の接触位置に追従して表示させたとき、疑似操作キー131の表示位置が所定の領域を越えるような場合は、その追従表示を一旦とどまるような表示を制御部110は表示部にさせる。
【0054】
具体的には、表示部113の中心(線A-A’)を軸として表示部113を左領域と右領域として分けた場合に、疑似ジョイスティック131が表示されていた方の領域(図6では左側の領域)を、移動可能領域137として設定する。すなわち、図6においては、疑似ジョイスティック131に対する操作を開始する前に疑似ジョイスティック131を表示していた位置であって、あらかじめ決められた定位置が存在する側の領域が移動可能領域137として設定されている。この移動可能領域137とは、疑似ジョイスティック131の表示位置が当該領域内にある場合には疑似ジョイスティック131の表示位置の移動(追従表示)を行い、領域を越えるような場合には表示部113の移動可能領域と他の領域との境界上に疑似ジョイスティック131がとどまるように表示するために、あらかじめ決められた領域である。すなわち、必ずしも表示部113の中心で半分に分けた領域を移動可能領域137とする必要はなく、疑似ジョイスティック131の表示領域及び操作検出領域136よりも広い領域であればよい。たとえば、他の疑似キーの配置や表示される可動オブジェクトの配置に応じて適宜変更することが可能である。また、指示体としてユーザの指を用いる場合には、移動可能領域137は、端末装置を把持した状態で指示体である指が相対的に接触可能な範囲が設定されることも可能である。
【0055】
図6を参照すると、疑似ジョイスティック131の追従表示制御の結果、疑似ジョイスティック131の表示位置(例えば、疑似ジョイスティック131内の基準位置C0)が移動可能領域137を越えるような場合には、移動可能領域137と表示部の他の領域138との境界139上にとどまるよう疑似ジョイスティック131を表示する。なお、図6の例においては、疑似ジョイスティック131は、指示体による接触位置C1を通る表示部113の外縁に平行な線140と境界139が交わる位置でとどまるように表示されている。したがって、他の領域138内で指示体を上下にドラッグ操作すると、疑似ジョイスティック131は境界線上を上下に動くように表示される。
【0056】
なお、図6においては、疑似ジョイスティック131の追従表示制御の結果疑似ジョイスティック131の表示位置が移動可能領域137を越えるような場合には、境界139上にとどまるよう疑似ジョイスティック131を表示する例を示すが、これに限られない。例えば、上記のような場合、もともと疑似ジョイスティック131が表示されていた所定の定位置に疑似ジョイスティックの表示位置が戻るよう、制御部110は表示を制御することも可能である。」
(7)「【0069】
<画面遷移>
図8は、本実施形態に係るプログラムの実行による画面例を示す模式図である。図8(a)を参照すると、端末装置100の制御部110は、本実施形態に係るプログラムの実行を開始すると、表示部113の所定の定位置に疑似ジョイスティック131及び所定の可動オブジェクト132を表示する。なお、可動オブジェクト132は、人物や動物、モンスターなどのキャラクタに加えて、武器や岩など、プログラムの実行中に仮想空間上を動くあらゆるものを含みうる。
【0070】
さらに図8(a)を参照すると、表示部113には、ユーザが指示体を接触したタッチパネル116上の位置を明示的に把握するための操作オブジェクト135を表示している。この操作オブジェクト135は指示体によるタッチ位置が操作オブジェクト135の中心になるように指示体の移動と共に表示位置を移動する。
【0071】
なお、図8(a)においては、まだユーザが指示体を使ってタッチパネル116上の接触操作を行っていないので、疑似ジョイスティック131及び可動オブジェクト132は、ともにあらかじめ決められた定位置に表示されている。具体的には、疑似ジョイスティック131の中心C0と接触位置を示す操作オブジェクト135の中心とが重なるように表示されている。
【0072】
図8(b)は、図8(a)に示す表示がなされているときにユーザが指示体で疑似ジョイスティック131上をドラッグ操作しているときの画面例を示す模式図である。図8(b)を参照すると、指示体で接触位置C1の位置に接触することによって操作オブジェクト135も一緒に表示位置が移動されている。また、基準位置C0と接触位置C1に基づいて接触位置C1の方向と接触位置C1までの距離を決定し、その決定された方向と距離に基づいて決定された方向及び距離で可動オブジェクト132の表示位置が移動されている。なお、このとき指示体の接触位置は疑似オブジェクト131の表示領域を越えてはいないので、制御部110は疑似オブジェクト131の表示位置の追従表示制御は行わず、定位置に表示するように制御する。
【0073】
図8(c)は、図8(a)に示す表示がなされているときにユーザが指示体で疑似ジョイスティック131上をドラッグ操作して、その接触位置が疑似ジョイスティック131の表示領域を越えた場合の画面例を示す模式図である。なお、この例においては、疑似ジョイスティック131の追従表示制御をするか否かをその表示領域を基準にしたが、操作検出領域136を用いることも可能である。図8(c)を参照すると、疑似ジョイスティック131の追従表示制御がなされているので、接触位置の移動に伴って疑似ジョイスティック131の表示領域も一緒に移動している。また、基準位置C0と接触位置C1に基づいて接触位置C1の方向と接触位置C1までの距離を決定し、その決定された方向と距離に基づいて決定された方向及び距離で可動オブジェクト132の表示位置が移動されている。
【0074】
図8(d)は、図8(c)と同様に、図8(a)に示す表示がなされているときにユーザが指示体で疑似ジョイスティック131上をドラッグ操作して、その接触位置が疑似ジョイスティック131の表示領域を越えた場合の画面例を示す模式図である。図8(c)において説明したとおり、疑似ジョイスティック131の追従表示制御がなされている。また、可動オブジェクト132は、定位置にあった疑似操作オブジェクト131への操作時間の経過とともに、図8(c)の場合と比べて、より長い距離移動している。
【0075】
図8(e)は、図8(c)、(d)と同様に、図8(a)に示す表示がなされているときにユーザが指示体で疑似ジョイスティック131上をドラッグ操作して、その接触位置が疑似ジョイスティック131の表示領域を越えた場合の画面例を示す模式図である。ここで、図8(e)の例においては、表示部113の中心(線A-A’)を軸として表示部113を左領域と右領域として分け疑似ジョイスティック131が表示されていた方の領域(図6では左側の領域)を、移動可能領域137として設定している。そして、指示体の接触位置を示す接触位置C1が移動可能領域137を越え、疑似ジョイスティック131の表示位置(具体的には、基準位置C0)が移動可能領域137を越えようとしている。したがって、疑似操作オブジェクト131は、移動可能領域137と他の領域138との境界139上に、その基準位置C0が来るように表示されている。なお、ここでは、基準位置C0が越えると境界線上にとどまるようにしたが、当然、基準位置ではなく、境界139にもっとも近い疑似ジョイスティック131の表示領域の外縁が移動可能領域137を越えたときに、境界線上にとどまるように表示するようにしても良い。
【0076】
以上の通り、本実施形態においては、指示体の接触位置が疑似ジョイスティック131又は操作検出領域136を越えて移動した場合には、その接触位置に基づいて疑似ジョイスティック131の表示位置も移動する、すなわち追従表示制御をするので、例えば移動するキャラクタ等の可動オブジェクトの移動に集中するがために指の指示体の位置がいつの間にか疑似ジョイスティック131から外れてしまうという不都合を防止することができる。また、移動可能領域137を越えると疑似操作オブジェクト131の表示位置を移動可能領域137と他の領域138の境界上にとどまるように表示するので、指示体である指の位置から相対的に入力可能な範囲での追従表示制御が行われ、ユーザにとって違和感のない操作が可能となる。」

上記記載事項(1)乃至(7)から、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明1」という。)
「サーバー装置に記憶されたゲームプログラムを、ダウンロードして実行する端末装置であって、
端末装置の表示部を被覆するように配置されたタッチパネルの対応する位置に、疑似ジョイスティックに対応する領域を仮想的に設け、表示部にはこれらを明示的に表示しないようにし、可動オブジェクトが表示され、タッチパネルを介し、左手の親指で疑似ジョイスティックを操作して、表示された可動オブジェクトの移動を制御し、また、タッチパネルを介し、右手の親指で疑似操作ボタンを操作して、可動オブジェクトが保持する武器の表示を制御し、
ユーザが疑似ジョイスティック上の任意の位置に指で接触した後、任意の方向に指をドラッグさせて接触位置の位置まで移動させ、基準位置の座標値と接触位置の座標値とから基準位置から見た接触位置の方向と両位置間の距離を決定し、決定された方向と距離に基づいて、可動オブジェクトの表示位置の移動方向及び移動距離を決定し、
ユーザが指示体で疑似ジョイスティック上をドラッグ操作して、その接触位置が疑似ジョイスティックの表示領域を越えた場合、接触位置の移動に伴って疑似ジョイスティックの表示領域も一緒に移動し、基準位置と接触位置に基づいて接触位置の方向と接触位置までの距離を決定し、その決定された方向と距離に基づいて決定された方向及び距離で可動オブジェクトの表示位置が移動され、
その結果、可動オブジェクトは、当初表示されていた位置から決定された方向に距離だけ移動して表示され、
表示部の中心を軸として表示部を左領域と右領域として分けた場合に、疑似ジョイスティックが表示されていた方の領域(左側の領域)を、移動可能領域として設定し、表示部の右側に疑似操作ボタンを表示し、
疑似ジョイスティックの追従表示制御の結果、疑似ジョイスティックの表示位置が移動可能領域を越えるような場合には、もともと疑似ジョイスティックが表示されていた移動可能領域の所定の定位置に、疑似ジョイスティックの表示位置が戻るようにする、端末装置。」

2 刊行物2
本願の出願前の平成17年10月28日に頒布された特許第3734819号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームプログラム、ゲーム装置、および入力装置に関し、より特定的には、タッチパネル等のポインティングデバイスを用いたコンピュータゲームで用いられるゲームプログラム、ゲーム装置、および入力装置に関する。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された発明は、タッチパネルを押圧している点と原点との差を情報処理に利用したものであるが、特許文献1に開示された発明の入力方式をそのままジョイスティックを模した操作に適用すると種々の問題点がある。図13および図14を参照して、特許文献1で開示された入力装置における課題を説明する。なお、紙面において左右方向をタッチパネル座標のX軸方向(右方向がプラス方向)とし、上下方向をY軸方向(上方がプラス方向)とする。また、Oがタッチパネル座標の原点である。
【0007】
図13は、プレイヤがタッチパネルを用いて真上へのスティック入力(ジョイスティックを真上に倒すことに相当する入力;スティック座標値がsx=0かつsy>0になるような入力)から右方向へのスティック入力(ジョイスティックを真右に倒すことに相当する入力;スティック座標値がsx>0かつsy=0になるような入力)に移行する際の操作例を示している。図14は、プレイヤがタッチパネルを用いて右方向へのスティック入力から左方向へのスティック入力(ジョイスティックを真左に倒すことに相当する入力;スティック座標値がsx<0かつsy=0になるような入力)に移行する際の操作例を示している。なお、図13および図14において、手を表すマークが記されているが、これは、タッチパネルを押圧するプレイヤの手を模式的に表したものである。

【0015】
特に、タッチパネルの所定領域(例えば原点Oを中心とした円領域)を各スティック座標値に割り当て、当該所定領域外をタッチ操作したときは最大のスティック入力量が入力されたとみなして処理するようにすれば、よりジョイスティックに近い操作を実現することができるが、この場合、所定領域外をタッチ操作しているときにスティックの入力量を変更したいときには所定領域内まで押圧点を移動する必要があり、また、スティック入力の方向を変更したいときには、押圧点を長い距離移動させる必要が生じることになる。また、実際のジョイスティックの場合、レバーの傾倒状態は指や手の感覚で感じ取ることができるため、ジョイスティックの原点を目で確認する必要がないが、タッチパネルを用いてジョイスティックを模した操作を実現する場合、指の感覚で原点を感じることができないため、原点の位置を目で確認する必要が生じてしまうのである。
【0016】
なお、特許文献1には、プレイヤの指の移動軌跡にあわせ相対的にカーソルを移動させる方式も開示されている。また、特許文献2では、プレイヤがタッチパネルをタッチした指の動きのベクトルに応じた動きで、タッチして選択された対象をゲーム画面上で移動させる方式が開示されている。しかしながら、これらの方式では、プレイヤの指が移動しない限り入力がされないため、ジョイスティックを模した入力を実現することができない。なぜなら、実際のジョイスティックはレバーを所定位置で保持しているときに一定の入力が継続して出力されるものであるからである。より具体的に言えば、特許文献2で開示された方式を用いてタッチした指の動きのベクトルに応じた動きでゲームオブジェクトを移動させる場合、ゲームオブジェクトを移動させるためには指を動かし続けなければならない。
【0017】
それ故に、本発明の目的は、ポインティングデバイスを用いてジョイスティックを模した操作を行い、プレイヤの操作感覚に一致させることによって操作の混乱を防ぎ、操作のレスポンスも向上させたゲームプログラム、ゲーム装置、および入力装置を提供することである。」
(3)「【0052】
図1において、本実施形態のゲーム装置1は、2つの液晶表示器(LCD)11および12を所定の配置位置となるように、ハウジング18に収納して構成される。具体的には、第1液晶表示器(以下、「LCD」という)11および第2LCD12を互いに上下に配置して収納する場合は、ハウジング18が下部ハウジング18aおよび上部ハウジング18bから構成され、上部ハウジング18bが下部ハウジング18aの上辺の一部で回動自在に支持される。上部ハウジング18bは、第1LCD11の平面形状よりも少し大きな平面形状を有し、一方主面から第1LCD11の表示画面を露出するように開口部が形成される。下部ハウジング18aは、その平面形状が上部ハウジング18bよりも横長に選ばれ、横方向の略中央部に第2LCD12の表示画面を露出する開口部が形成され、第2LCD12を挟む何れか一方にスピーカ15の音抜き孔が形成されるとともに、第2LCD12を挟む左右に操作スイッチ部14が装着される。
【0054】
また、第2LCD12の上面には、本発明の入力装置の一例としてタッチパネル13(図1における破線領域)が装着される。タッチパネル13は、例えば、抵抗膜方式、光学式(赤外線方式)、静電容量結合式の何れの種類でもよく、その上面をスタイラス16(または指でも可)で押圧操作、移動操作、または撫でる操作をしたとき、スタイラス16の座標位置を検出して座標データを出力するポインティングデバイスである。
【0055】
上部ハウジング18bの側面近傍には、必要に応じてタッチパネル13を操作するスタイラス16を収納するための収納孔(図1における二点破線領域)が形成される。この収納孔には、スタイラス16が収納される。下部ハウジング18aの側面の一部には、ゲームプログラムを記憶したメモリ(例えば、ROM)を内蔵したゲームカートリッジ17(以下、単にカートリッジ17と記載する)を着脱自在に装着するためのカートリッジ挿入部(図1における一点破線領域)が形成される。」
(4)「【0078】
次に、CPUコア21は、指示点が原点に設けられた制限範囲を逸脱しているか否かを判断する(ステップ45)。図8に示すように、原点(ox、oy)を中心とした所定領域は、制限範囲として設定される。例えば、制限範囲は、原点(ox、oy)を中心とした所定半径を有する円領域で設定される。そして、CPUコア21は、上記ステップ44で求めた距離L1と制限範囲の半径Rとを比較して、距離L1が大きい場合に指示点が制限範囲を逸脱していると判断する。」
(5)「【0087】
例えば、図9(a)に示すように、タッチパネル13に対して、プレイヤが制限範囲内の原点(ox、oy)の真上位置をタッチ操作することによって、指示点(ux1、uy1)が設定されているとする。この場合、指示点(ux1、uy1)が制限範囲内であるため、原点の引き寄せ処理は実行されない。その後、タッチパネル13に対して、プレイヤが指示点(ux1、uy1)の右方向で制限範囲を逸脱した位置をタッチ操作することによって、指示点(ux3、uy3)が設定される。そして、上記ステップ71によって、m=0の場合、原点(ox、oy)から指示点(ux3、uy3)を結ぶ方向が原点を引き寄せる方向(px、py)に設定される。
【0088】
次に、CPUコア21は、原点の移動先目標座標を算出する(ステップ72)。具体的には、CPUコア21は、まずステップ71で設定した引き寄せ方向(px、py)に基づいた長さL3を、
【数3】
で算出する。そして、CPUコア21は、タッチパネル座標系に基づいた原点の移動先目標座標(ox2、oy2)を、
ox2=ux+px*R/L3
oy2=uy+py*R/L3
で算出する。

ox=ox+(ox2-ox)*n
oy=oy+(oy2-oy)*n
で算出する。ここで、nは、原点を移動先目標座標に近づける割合を示すパラメータである。パラメータnの設定値によって、移動前の原点がステップ72で算出された移動先目標座標(ox2、oy2)への足りない差分に対してどれくらいの割合(パラメータn)を加算するかを調整することができる。
【0090】
例えば、図9(b)は、パラメータmおよびnをそれぞれm=0、n=1に設定して、指示点(ux3、uy3)に引き寄せられる原点(ox、oy)の一例を示している。図9(b)に示すように、指示点(ux3、uy3)が制限範囲(図示破線領域)を逸脱した位置に設定された場合、原点(ox、oy)が指示点(ux3、uy3)に引き寄せられ、その制限範囲も指示点(ux3、uy3)に引き寄せられる。m=0の場合、原点(ox、oy)が引き寄せられる方向は、移動前の原点から指示点(ux3、uy3)に向かう方向となる。そして、n=1の場合、原点(ox、oy)が移動することによって、当該原点の制限範囲の外縁に指示点(ux3、uy3)が配置され、移動後の原点と指示点との距離L1=制限範囲の半径Rとなる。このように、原点の引き寄せ処理によって、指示点が制限範囲外であるとき、原点を当該指示点に近づけるように変更される。」

上記記載事項(1)乃至(5)から、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明2」という。)
「上面に、タッチパネルが装着される液晶表示器(LCD)を所定の配置位置となるように、ハウジングに収納して構成されるゲーム装置であって、
タッチパネルに対して、プレイヤが原点(ox、oy)を中心とした半径Rの円領域の制限範囲内の真上位置をタッチ操作することによって、指示点(ux1、uy1)が設定され、その後、タッチパネルに対して、プレイヤが指示点(ux1、uy1)の右方向で制限範囲を逸脱した位置をタッチ操作することによって、指示点(ux3、uy3)が設定され、原点(ox、oy)から指示点(ux3、uy3)を結ぶ方向が原点を引き寄せる方向(px、py)に設定され、原点(ox、oy)が指示点(ux3、uy3)に引き寄せられ、その制限範囲も指示点(ux3、uy3)に引き寄せられ、原点(ox、oy)が引き寄せられる方向は、移動前の原点から指示点(ux3、uy3)に向かう方向となり、原点(ox、oy)が移動することによって、当該原点の制限範囲の外縁に指示点(ux3、uy3)が配置され、移動後の原点と指示点(ux3、uy3)との距離L1=制限範囲の半径Rとなる、ゲーム装置。」


第4 対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比する。
後者の「疑似ジョイスティック」、「タッチパネル」、「『指で接触した』『任意の位置』」、「接触位置」、「基準位置」、「基準位置から見た接触位置の方向」、「疑似ジョイスティックが表示されていた方の移動可能領域(左側の領域)」及び「表示部の疑似操作ボタンが表示された右領域」は、それぞれ、前者の「受付領域」、「タッチパネル」、「タッチ位置」、「操作位置」、「基準位置」、「指示方向」、「第1領域」及び「第2領域」に相当する。
後者の「疑似ジョイスティック上の任意の位置に指で接触した後、任意の方向に指をドラッグさせ」ることにより、可動オブジェクトの移動方向が決定されるから、後者の「疑似ジョイスティック上の任意の位置に指で接触した後、任意の方向に指をドラッグさせ」ることは、前者の「方向指示操作」に相当し、後者の「端末装置」は、「受付領域設定手段」を備えているものと認められる。
後者の「端末装置」は、「接触位置」及び「指示方向」を検出していることは明らかであるから、後者の「端末装置」は、「操作位置取得手段」及び「指示方向取得手段」を備えているものと認められる。
後者の「端末装置」は、決定された方向と距離に基づいて、可動オブジェクトの表示位置の移動方向及び移動距離を決定し、その結果、可動オブジェクトを、当初表示されていた位置から決定された方向に距離だけ移動して表示するものであって、可動オブジェクトの移動は、ゲーム処理の一環であることは明らかであるから、後者の「端末装置」は、前者の「指示方向に基づいてゲーム処理を実行するゲーム処理実行手段」を有し、「ゲーム処理実行手段は、前記指示方向と、前記基準位置と前記操作位置との間の距離とに基づいて、前記ゲーム処理を実行」しているものと認められる。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
「方向指示操作を受け付ける受付領域をタッチパネルに設定する受付領域設定手段と、
前記タッチパネルのタッチ位置に応じた操作位置を取得する操作位置取得手段と、
前記受付領域に対応する基準位置から前記操作位置への方向に基づいて指示方向を取得する指示方向取得手段と、
前記指示方向に基づいてゲーム処理を実行するゲーム処理実行手段と、
を含み、
前記ゲーム処理実行手段は、前記指示方向と、前記基準位置と前記操作位置との間の距離とに基づいて、前記ゲーム処理を実行する、
ゲームシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、「前記受付領域内から前記受付領域外に前記操作位置が移動することに伴って、前記受付領域を移動させる受付領域移動手段」を含み、「前記受付領域移動手段は、前記操作位置が前記受付領域内の第1位置から前記受付領域外の第2位置に向けて移動することに伴って、前記操作位置が前記第1位置であった時点での前記基準位置である第3位置から前記第2位置への方向に対応する方向に前記受付領域を移動させるものであり、前記第2位置から、前記第3位置への方向に対応する方向に、前記第1位置と前記第3位置との間の距離離れた位置が前記基準位置となるようにして、前記受付領域を移動させ」るものであるのに対し、引用発明1は、ユーザが指示体で疑似ジョイスティック上をドラッグ操作して、その接触位置が疑似ジョイスティックの表示領域を越えた場合、接触位置の移動に伴って疑似ジョイスティックの表示領域も一緒に移動し、基準位置と接触位置に基づいて接触位置の方向と接触位置までの距離を決定し、その決定された方向と距離に基づいて決定された方向及び距離で可動オブジェクトの表示位置が移動されるものである点。

[相違点2]
本願発明は、「前記受付領域設定手段は、前記タッチパネルの第1領域内がタッチされた場合に、前記タッチ位置に基づいて、前記第1領域内に前記受付領域を設定し、前記タッチパネルの第1領域以外の第2領域内がタッチされた場合に、前記受付領域を前記第1領域内及び前記第2領域内のいずれにも設定しない」ものであるのに対し、引用発明1は、表示部の中心を軸として表示部を左領域と右領域として分けた場合に、疑似ジョイスティックが表示されていた方の領域を、移動可能領域として設定し、表示部の右側に疑似操作ボタンを表示し、疑似ジョイスティックの追従表示制御の結果、疑似ジョイスティックの表示位置が移動可能領域を越えるような場合には、もともと疑似ジョイスティックが表示されていた移動可能領域の所定の定位置に、疑似ジョイスティックの表示位置が戻るようにするものである点。


第5 判断
上記相違点1及び相違点2について、以下に検討する。
1 相違点1について
引用発明2の「制限範囲内」、「制限範囲を逸脱した位置」、「『タッチ操作する』『位置』」、「指示点(ux1、uy1)」、「指示点(ux3、uy3)」、「原点(ox、oy)」及び「原点(ox、oy)から指示点(ux3、uy3)を結ぶ方向」は、それぞれ、本願発明の「受付領域内」、「受付領域外」、「操作位置」、「受付領域内の第1位置」、「受付領域外の第2位置」、「基準位置である第3位置」及び「基準位置である第3位置から第2位置への方向に対応する方向」に相当する。
引用発明2の「制限範囲」は、指示点(ux3、uy3)に引き寄せられるものであることからみて、引用発明2の「ゲーム装置」が、そのための手段を備えていることは明らかであるから、本願発明の「ゲームシステム」と引用発明2の「ゲーム装置」とは、「受付領域を移動させる受付領域移動手段」を有している点で共通する。
引用発明2の「ゲーム装置」は、制限範囲を逸脱した位置をタッチ操作することによって、指示点(ux3、uy3)が設定され、原点(ox、oy)から指示点(ux3、uy3)を結ぶ方向が原点を引き寄せる方向(px、py)に設定され、「原点(ox、oy)が指示点(ux3、uy3)に引き寄せられ、その制限範囲も指示点(ux3、uy3)に引き寄せられ」るものであるから、本願発明の「ゲームシステム」と引用発明2の「ゲーム装置」とは、「操作位置が受付領域内の第1位置から受付領域外の第2位置に向けて移動することに伴って、操作位置が第1位置であった時点での基準位置である第3位置から第2位置への方向に対応する方向に受付領域を移動させる」「受付領域移動手段」を有する点で共通する。
引用発明2において、「制限範囲」は、半径Rの円領域であって、プレイヤが制限範囲を逸脱した位置(指示点(ux3、uy3))をタッチ操作し、制限範囲が、指示点(ux3、uy3)に引き寄せられるのは、制限範囲内に設定されていた指示点(ux1、uy1)が、制限範囲の外縁を逸脱してタッチ操作された場合であって、指示点(ux1、uy1)が、制限範囲の外縁に設定されていた場合、すなわち、原点(ox、oy)との間の距離が半径Rの場合を包含するものである。
そして、引用発明2の移動後の原点(ox、oy)と指示点(ux3、uy3)との距離は制限範囲の半径Rであるから、本願発明の「移動した」「基準位置」と引用発明2の「移動後の原点(ox、oy)」とは、「第1位置と第3位置との間の距離離れた位置が基準位置となる」との概念で共通する。
そうすると、本願発明の「ゲームシステム」と引用発明2の「ゲーム装置」とは、「第2位置から、第3位置への方向に対応する方向に、第1位置と第3位置との間の距離離れた位置が基準位置となるようにして、受付領域を移動させ」る「受付領域移動手段」を有する点で共通する。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明2に示されている。
そして、引用発明1と引用発明2とは、ゲーム装置という技術分野に属し、操作性の良いゲーム装置を提供するという課題が共通するものであるから、引用発明1のユーザが指示体で疑似ジョイスティック上をドラッグ操作して、その接触位置が疑似ジョイスティックの表示領域を越えた場合の処理に、引用発明2の、原点(ox、oy)が指示点(ux3、uy3)に引き寄せられ、その制限範囲も指示点(ux3、uy3)に引き寄せられ、原点(ox、oy)が引き寄せられる方向は、移動前の原点から指示点(ux3、uy3)に向かう方向となり、原点(ox、oy)が移動することによって、当該原点の制限範囲の外縁に指示点(ux3、uy3)が配置され、移動後の原点と指示点(ux3、uy3)との距離L1=制限範囲の半径Rとなる点を適用し、相違点1に係る本願発明とすることは、当業者が容易になし得ることである。

2 相違点2について
本願発明の「受付領域」を「設定しない」とは、本願明細書等に「タッチパネルの第1領域以外の第2領域内がタッチされた場合に、受付領域を設定しないため、タッチパネルの第1領域を方向指示操作のために用い、タッチパネルの第2領域を方向指示操作以外の操作のために用いることができる。すなわち、方向指示操作を行う領域と、方向指示操作以外の操作を行う領域とを分けることができ、その結果、ユーザが操作を行い易くなる。」(【0231】参照。)と記載されていることからすれば、第2領域内をタッチした場合には、第2領域内での受付領域設定手段の機能は働かないものと解し得る。
ここで、引用発明1は、「疑似ジョイスティックの追従表示制御の結果、疑似ジョイスティックの表示位置が移動可能領域を越えるような場合には、もともと疑似ジョイスティックが表示されていた移動可能領域の所定の定位置に、疑似ジョイスティックの表示位置が戻るようにする」ものであるのだから、疑似ジョイスティックの表示位置が移動可能領域を越え、表示部の右側領域をドラッグ操作しても、可動オブジェクトの移動の制御を行えないこと、すなわち、追従表示制御は機能していないことは明らかである。
したがって、引用発明1の「追従表示制御」は、本願発明の「前記タッチパネルの第1領域内がタッチされた場合に、前記タッチ位置に基づいて、前記第1領域内に前記受付領域を設定し、前記タッチパネルの第1領域以外の第2領域内がタッチされた場合に、前記受付領域を前記第1領域内及び前記第2領域内のいずれにも設定しない」機能を有しているものと認められる。
してみると、上記第4のとおり、引用発明1の「端末装置」は、本願発明の「受付領域設定手段」を備えるものであるから、上記相違点2に係る本願発明は、引用発明1に実質的に記載されているか、少なくとも、引用発明1より、当業者が適宜なし得ることといえる。

そして、本願発明によって奏される効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る範囲内のものといえる。

したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2より、当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-19 
結審通知日 2019-07-23 
審決日 2019-08-13 
出願番号 特願2017-61953(P2017-61953)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前地 純一郎  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 後藤 亮治
藤本 義仁
発明の名称 ゲームシステム、ゲーム制御装置、及びプログラム  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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