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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1355567
審判番号 不服2019-59  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-04 
確定日 2019-10-03 
事件の表示 特願2016-228413「キャリア付金属箔」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 2日出願公開、特開2017- 43105〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年 6月 3日(優先権主張 平成24年 6月 4日 日本国)を国際出願日とする特願2014-519988号(以下「原出願」という。)の一部を平成28年11月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 1月15日付け:拒絶理由の通知
同年 5月18日 :意見書の提出、手続補正
同年 9月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成31年 1月 4日 :本件拒絶査定不服審判の請求
及び同時に手続補正
なお、本願は、原出願と同じ優先権主張がされたものとみなし、その優先日を以下「本願優先日」という。

第2 平成31年 1月 4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年 1月 4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりに補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「樹脂製の板状キャリアと、該キャリアの少なくとも一方の面に、剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリア付金属箔であって、当該金属箔と当該板状キャリアについてJIS C6481に規定される90度剥離強度測定方法に準拠して測定される剥離強度が、10gf/cm以上67gf/cm以下であり、
前記板状キャリアの厚みが50μm以上であり、
前記金属箔の前記板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)が0.4μm以上10.0μm以下であるキャリア付金属箔。
(金属層/純炭素層からなる接合界面層を有するキャリア付金属箔を除く)」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成30年 5月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「樹脂製の板状キャリアと、該キャリアの少なくとも一方の面に、剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリア付金属箔であって、当該金属箔と当該板状キャリアについてJIS C6481に規定される90度剥離強度測定方法に準拠して測定される剥離強度が、10gf/cm以上80gf/cm以下であり、
前記板状キャリアの厚みが50μm以上であり、
前記金属箔の前記板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)が0.4μm以上10.0μm以下であるキャリア付金属箔。
(金属層/純炭素層からなる接合界面層を有するキャリア付金属箔を除く)」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「金属箔と板状キャリアについてJIS C6481に規定される90度剥離強度測定方法に準拠して測定される剥離強度」について、「10gf/cm以上80gf/cm以下」を「10gf/cm以上67gf/cm以下」に数値範囲を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された引用文献である特開2009-272589号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、特に着目した箇所を示すために当審で付したものである。引用文献の摘記について以下同じ。)
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の板状キャリヤーと、該キャリヤーの少なくとも一方の面に、機械的に剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリヤー付金属箔。
・・・
【請求項7】
板状キャリヤーと金属箔との剥離強度が1g/cm以上、1kg/cm以下であり、剥離面が板状キャリヤーと金属との境界であることを特徴とする請求項1?6のいずかに記載のキャリヤー付金属箔。
・・・」
b 「【0001】
本発明は、プリント配線板に使用される片面若しくは2層以上の多層積層板又は極薄のコアレス基板の製造において用いられるキャリヤー付銅箔に関する。」
c 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの事象に鑑みてなされたものであり、プリント配線板に使用される片面若しくは2層以上の多層積層板又は極薄のコアレス基板の製造の際に用いられるキャリヤー付銅箔に関する。
詳しくは、積層板の製造時に使用するキャリヤー付き銅箔に係り、その目的とするのは樹脂を支持体とし、その片面または表裏両面に、易剥離性銅箔を配置することを特徴とし、プリント基板製造工程の簡素化及び歩留りアップによるコスト削減を実現することを課題とする。」
d 「【発明の効果】
【0010】
本発明は、板状の合成樹脂(Resin)製の少なくとも一方の面に、金属箔を密着させてキャリヤー付金属箔とするものであり、合成樹脂で銅箔を全面に亘って支持するので、積層中に銅箔に皺の発生を防止できる。また、このキャリヤー付金属箔は、金属箔と合成樹脂が隙間なく密着しているので、金属箔表面を鍍金又はエッチングする際に、これを鍍金又はエッチング用の薬液に投入することが可能となる。
・・・」
e 「【0012】
本願発明のキャリヤー付金属箔を図2に示す。キャリヤー付金属箔は、合成樹脂製の板状キャリヤーと該キャリヤーの少なくとも一方の面に機械的に剥離可能に密着した金属箔からなる。図2では、合成樹脂製の板状キャリヤーの両側に、金属箔が密着させたキャリヤー付金属箔が示されている。
構造的には、前記図1に示すCCL材と類似しているが、本願発明のキャリヤー付金属箔は、金属箔と樹脂は最終的に分離されるもので、機械的に容易に剥離できる構造を有する。この点、CCL材は剥離させるものではないので、構造と機能は、全く異なるものである。
【0013】
金属箔としては、銅又は銅合金箔が代表的なものであるが、アルミニウム、ニッケル、亜鉛などの箔を使用することもできる。銅又は銅合金箔の場合、5?120μmの厚みを有する電解箔又は圧延箔を使用することができる。
板状キャリヤーとなる合成樹脂としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。また、前記プリプレグを使用することもできる。特に、合成樹脂が、樹脂の重合によりBステージ(モノマー)からCステージ(ポリマー)へ変化した樹脂を使用することができる。上記の通り、本願発明は、従来のCACに替えて、銅(Cu)-樹脂(Regin)-銅(Cu)の構造を有する(CRC)ものである。
なお、前記プリプレグについては、キャリヤー付銅箔に使用する剥離可能なプリプレグ及び回路基板を構成するプリプレグに、同じ物を使用しても良いし、また異なるプリプレグを使用しても良い。プリプレグと銅箔との剥離性と密着性は、銅箔との界面の状態や処理により任意に調節可能である。」
f 「【0014】
・・・
板状キャリヤーと金属箔とは、めっき又はエッチング等の工程において、適度の密着性が必要であるが、いずれ機械的に剥がすことになるので、両者の剥離強度は、1g/cm以上、1kg/cm以下であることが望ましい。さらに、剥離面は板状キャリヤーと金属との境界であることが望ましく、両者の間で、相手材料の残渣が残ることは、除去工程が必要となり、工程の複雑化になるので、避けなければならない。」
g 「【0016】
(実施例1)
樹脂材料として、エポキシ樹脂から作製したプリプレグを用いた。このプリプレグの表裏に銅箔を接着させてキャリヤー付銅箔とした。このキャリヤー付銅箔上に、所望枚数のプリプレグ、次に内層コアと称する2層プリント回路基板、次にプリプレグ、さらにキャリヤー付銅箔を順に重ねることで1組の4層基板の材料組み立てユニットが完成させた。
次に、このユニット(通称「ページ」と言う)を10回程度繰り返し、プレス組み立て物(通称「ブック」と言う)を構成した。
【0017】
その後、このブックをホットプレス機にセットし、所定の温度及び圧力で加圧成型することにより4層基板を製造した。・・・
【0018】
このようにして作製された、プリプレグを有する多層構造のプリント回路基板は、めっき工程及び又はエッチング工程経て回路を形成し、さらにキャリヤー樹脂と銅箔の間で、剥離分離させて完成品となるが、合成樹脂製のキャリヤーで銅箔を全面に亘って支持しているので、前記積層中に、銅箔に皺の発生は全く認められなかった。」
h 図2「



(イ)上記記載事項(ア)a?hから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「合成樹脂製の板状キャリヤーと、該キャリヤーの少なくとも一方の面に、機械的に剥離可能に密着させた金属箔からなり、板状キャリヤーと金属箔との剥離強度が1g/cm以上、1kg/cm以下であり、剥離面が板状キャリヤーと金属との境界である、キャリヤー付金属箔。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された引用文献である国際公開第2007/135972号(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 「[0001] 本件発明は、キャリアシート付銅箔、当該キャリアシート付銅箔の製造方法、当該キャリアシート付銅箔に表面処理を施したキャリアシート付表面処理銅箔、当該キャリアシート付表面処理銅箔を用いた銅張積層板に関する。これらは全てプリント配線板の製造材料として好適なものである。」
b 「[0005] これらのことから、キャリア箔付電解銅箔が用いられてきた。キャリア箔付電解銅箔は、一般にピーラブルタイプとエッチャブルタイプに大別することが可能である。違いを一言で言えば、ピーラブルタイプは銅張積層板とした後にキャリア箔を物理的に引き剥がして除去するものであり、エッチャブルタイプは銅張積層板とした後にキャリア箔をエッチングにて除去するものである。そして、近年では、エッチングプロセスが不要で製造コストの上昇を招かないピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔に対する要求が顕著となってきた。特許文献3、特許文献4等にピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔が開示されている。
[0006] このピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔は、キャリア箔層と銅箔層との間に、剥離層を設けた層構成を備える。そして、プレス加工の熱履歴を受けた以降も、キャリア箔を20gf/cm?100gf/cmの引き剥がし強さで剥離可能な特性が求められる。そして、この引き剥がし強さは、プレス加工の温度が高温になるほど、大きな値となる。ところが、300℃を超えるプレス加工温度が採用される液晶ポリマ基材、フッ素樹脂基材又はキャスティング法によるポリイミド樹脂脂層の形成でも300℃を超える温度での加熱を受ける。係る場合、キャリア箔層と銅箔層との間の剥離層が耐熱性に乏しい場合、キャリア箔層と銅箔層との間、キャリア箔層/剥離層/銅箔層の3層の間での相互拡散が起き、キャリア箔の一部がちぎれて銅箔層の表面に残留したり、キャリア箔層と銅箔層とが引き剥がせないという現象が生じる。」

(イ)上記記載事項(ア)a、bから、引用文献2には、次の技術的事項が記載されている。
「キャリア箔付電解銅箔は、一般にピーラブルタイプとエッチャブルタイプに大別することが可能であり、ピーラブルタイプは銅張積層板とした後にキャリア箔を物理的に引き剥がして除去するものであり、ピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔は、キャリア箔層と銅箔層との間に、剥離層を設けた層構成を備え、プレス加工の熱履歴を受けた以降も、キャリア箔を20gf/cm?100gf/cmの引き剥がし強さで剥離可能な特性が求められること。」

ウ 引用文献3
(ア)同じく原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された引用文献である特開2009-166404号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面側の表面粗さRzが、0.01μm以上、5μm以下である支持基材と、前記支持基材の他方の面側に剥離層と、金属箔と、絶縁層とをこの順に積層成形したことを特徴とする積層板。
【請求項2】
前記金属箔の絶縁層面側の表面粗さRzが、0.01μm以上、3μm以下である請求項1に記載の積層板。
・・・」
b 「【0001】
本発明は、積層板、積層板の製造方法、多層プリント配線板および半導体装置に関する。」
c 「【0013】
図1に示すように、本発明の積層板500は、一方の面側の表面粗さRzが、0.01μm以上、5μm以下である支持基材101と、支持基材101の他方の面側に剥離層201と、金属箔301と、絶縁層401とをこの順に積層成形した積層板500である。
【0014】
支持基材101の一方の面側の表面粗さRzは、0.01以上、5μm以下であり、好ましくは0.05μm以上、2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上、1μm以下である。表面粗さが、この範囲内にあれば、積層板製造時に、絶縁層401と支持基材付き金属箔150とを積層し、加熱・加圧後、支持基材101を剥離しても金属箔301面の凹凸は小さく、表面平滑性に優れるものとなる。従来、表面粗さは、金属箔301と絶縁層401との密着性を考慮して、支持基材付き金属箔150の絶縁層401面側の粗さをコントロールしてきた。しかしながら、微細線化が進につれ回路歩留の低下が顕著となり、その要因が金属箔301表面に発生している凹凸であることが判明した。また、その金属箔301表面の凹凸の原因について研究者が鋭意検討した結果、金属箔301を支持している支持基材101の表面の粗さが起因していることが判明した。すなわち、支持基材付き金属箔150と絶縁層401とを対向配置し、加熱加圧積層成形する際、支持基材101と接する積層用当て板の圧力により、支持基材101表面の凹凸が金属箔301表面に転写し、凹凸が形成されることが分った。このように、支持基材101の当て板面側の表面粗さをコントロールすることにより微細線化が可能な積層板500とすることができる。
なお、表面粗さRzとは、JIS B0601で規定する10点平均粗さのことである。
【0015】
支持基材101の一方の面側の表面粗さRzを0.01μm以上、5μm以下にする方法としては、例えば、機械的研磨、化学的研磨、電気化学的溶解、或いは電解めっき法などの方法を単独で、或いは2つ以上を組み合わせて表面粗さRzを0.01μm以上、5μm以下に平滑化できる。
また、研磨加工は、支持基材付き金属箔150にしてから、支持基材101の一方の面側を研磨して表面粗さRzを0.01μm以上、5μm以下にしてもよいし、または、予め支持基材101の一方の面側を研磨して表面粗さRzを0.01μm以上、5μm以下にしたのち、支持基材101の他方の面側に剥離層201と、金属箔301とをこの順に積層して支持基材付き金属箔を得てもよい。
【0016】
絶縁層401と接する面側の金属箔301の表面粗さRzは、0.01μm以上、3μm以下が好ましく、0.1μm以上、2.5μm以下がより好ましく、さらには0.5μm以上、2μm以下が好ましい。表面粗さがこの範囲にあると、微細な凹凸のアンカー効果が生じ絶縁層401との密着が強くなる。」
d 図1「



(イ)上記記載事項(ア)a?dから、引用文献3には、次の技術的事項が記載されている。
「剥離層201と接する面と反対側の、絶縁層401と接する面側の金属箔301の表面粗さRzは、0.01μm以上、3μm以下が好ましく、0.1μm以上、2.5μm以下がより好ましく、さらには0.5μm以上、2μm以下が好ましく、表面粗さがこの範囲にあると、微細な凹凸のアンカー効果が生じ絶縁層401との密着が強くなること。」

エ 引用文献4
(ア)同じく原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された引用文献である国際公開第2011/090174号(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
a 「[0014] 本発明の目的は、表面処理した銅箔とポリイミドなどの絶縁樹脂との初期及び熱履歴を受けた後での密着性(以下、耐熱密着性ということがある)、耐薬品性に優れ、ブラインドビアホールを形成後のソフトエッチング処理におけるエッチング性を満足し、工業的に優れた表面処理銅箔を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記表面処理銅箔と絶縁樹脂、特にポリイミドとの接着強度が強く、回路形成にあたっては耐薬品性を有し、ソフトエッチング性を満足する銅張積層板を提供することにある。」
b 「[0023] 本発明の実施の形態では、ステップ2として、母材銅箔(未処理銅箔)の表面に、先ず、表面粗さRzが0.05?0.30μm増加する粗化処理を銅又は銅合金で施し、粗化処理後のRzが1.1μm以下とした表面処理銅箔とする。
ここで、表面粗さRaで表される粗化処理を0.02?0.05μm増加する範囲で行い、粗化処理後のRaを0.35μm以下とすることが好ましい。粗化処理後の表面粗さが上記範囲に満たないと、絶縁樹脂との密着性が悪くなる一方、上記範囲を超え表面が粗くなると後述するソフトエッチング性が悪くなる。
本発明の実施の形態において特に、表面粗さRzが1.1μm以下とするのは、これ以上表面粗さが粗くなると後述するソフトエッチング性を悪くするためである。すなわち、表面処理銅箔の粗化処理後の表面粗さRzを1.1μm以下とすることで、ポリイミドとの密着性に優れ、ソフトエッチング性に優れた表面処理銅箔とすることができる。
なお、表面粗さRa、RzはJIS-B-0601の規定に準じて測定される値である。」
c 「[請求項1] 母材銅箔(未処理銅箔)の少なくとも片面に対して、表面粗さRzが1.1μm以下となる粗化処理が施され、該粗化処理表面にNi-Zn合金層が施された
前記粗化処理は、粗化処理面における幅が0.3?0.8μm、高さが0.6?1.8μmで、アスペクト比[高さ/幅]が1.2?3.5で、先端が尖った凸部形状となる粗化処理で、前記母材銅箔の表面粗さRzが0.05?0.3μm増加する範囲で施され、
前記Ni-Zn合金層は、下記式で表される含有率(wt%)でZnが6?30%含有し、Zn付着量が0.08mg/dm^(2)以上である
表面処理銅箔。
Zn含有率(wt%)=Zn付着量/(Ni付着量+Zn付着量)×100」

(イ)上記記載事項(ア)a?cから、引用文献4には、次の技術的事項が記載されている。
「表面処理銅箔の絶縁樹脂と接着する面について、粗化処理後の表面粗さRz(JIS-B-0601の規定に準じて測定される値)を1.1μm以下とすることで、絶縁樹脂との密着性に優れ、ソフトエッチング性に優れた表面処理銅箔とすること。」

オ 引用文献5
(ア)同じく原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された引用文献である特開2005-44988号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
a 「【0001】
本発明は回路基板の製造方法に関するものである。」
b 「【0013】
上記課題を解決するために本発明は、厚みが0.06mm以下である織布または不織布に熱硬化性樹脂を含浸させて半硬化状態にしたプリプレグシートの両面にフィルムを張り合わせる工程と、前記プリプレグシートに貫通孔を設ける工程と、前記貫通孔に導電性ペーストを充填する工程と、前記プリプレグシートからフィルムを剥離する工程と、前記フィルムを剥離した面に金属箔を張り合わせる工程と、前記金属箔を張り合わせたプリプレグシートを加圧加熱する工程と、前記金属箔をパターンニングする工程とを有する回路基板の製造方法であることを特徴とし、この方法により、回路基板の基材としてプリプレグシートを使用しながら、貫通孔であるインナービアホール間の絶縁信頼性が高く、歩留まり向上に優れた回路基板を実現することができる。」
c 「【0033】
このような工程で下記のスペックの回路基板9を各60セット作製した。・・・
【0034】
・・・また、以下に述べるように、7種類の絶縁評価用の回路基板25を作製して、絶縁評価試験を行った。
【0035】
第1の回路基板25は、ガラス織布の厚みが100μmのプリプレグシート7にPETフィルム1を張り合わせ、貫通孔3のピッチは700μm、600μm、500μm、400μm、350μmとした。
【0036】
第2の回路基板25は、ガラス織布の厚みが80μmのプリプレグシート7にPETフィルム1を張り合わせ、貫通孔3のピッチは700μm、600μm、500μm、400μm、350μmとした。
【0037】
第3の回路基板25は、ガラス織布の厚みが60μmのプリプレグシート7にPETフィルム1を張り合わせ、貫通孔3のピッチは700μm、600μm、500μm、400μm、350μmとした。
【0038】
第4の回路基板25は、ガラス織布の厚みが30μmのプリプレグシート7にPETフィルム1を張り合わせ、貫通孔3のピッチは700μm、600μm、500μm、400μm、350μmとした。
【0039】
第5の回路基板25は、ガラス織布の厚みが30μmのプリプレグシート7を2枚重ね合わせPETフィルム1を張り合わせる工程と同時に一体化させ、貫通孔3のピッチは700μm、600μm、500μm、400μm、350μmとした。
【0040】
第6の回路基板25は、ガラス織布の厚みが30μmのプリプレグシート7を3枚重ね合わせ、PETフィルム1を張り合わせる工程と同時に一体化させ、貫通孔3のピッチは700μm、600μm、500μm、400μm、350μmとした。
【0041】
第7の回路基板25は、ガラス織布の厚みが30μmと60μmのプリプレグシート7a,7bを2枚重ね合わせ、PETフィルム1を張り合わせる工程と同時に一体化させ、貫通孔3のピッチは700μm、600μm、500μm、400μm、350μmとした。」

(イ)上記記載事項(ア)a?cから、引用文献5には、次の技術的事項が記載されている。
「ガラス織布の厚みが30μm?100μmのプリプレグを基材として回路基板を構成すること。」

(3)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する、
ア 引用発明の「合成樹脂製の板状キャリヤー」、「金属箔」、「キャリヤー付金属箔」は、その構造及び機能からみて、本件補正発明の「樹脂製の板状キャリア」、「金属箔」、「キャリア付金属箔」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「機械的に剥離可能に密着させた」ことは、本願補正発明の「剥離可能に密着させた」ことに相当する。
また、引用発明は、「金属層/純炭素層からなる接合界面層を有するキャリア付金属箔」に該当しない。

イ してみると、本件補正発明と引用発明との一致点・相違点は以下のとおりである。
【一致点】
「樹脂製の板状キャリアと、該キャリアの少なくとも一方の面に、剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリア付金属箔。(金属層/純炭素層からなる接合界面層を有するキャリア付金属箔を除く)」である点。
【相違点1】
金属箔と板状キャリアの剥離強度について、本件補正発明はJIS C6481に規定される90度剥離強度測定方法に準拠して測定される剥離強度が10gf/cm以上67gf/cm以下であるのに対して、引用発明は剥離強度が1g/cm以上、1kg/cm以下であり、その具体的な測定方法は明らかでない点。
【相違点2】
本件補正発明は、板状キャリアの厚みが50μm以上であるのに対し、引用発明は、板状キャリヤーの厚みが明らかでない点。
【相違点3】
本件補正発明は、金属箔の板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)が0.4μm以上10.0μm以下であるのに対して、引用発明は、金属箔の板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さは明らかでない点。

ウ 上記各相違点について検討する。
(ア)相違点1
引用文献1の「詳しくは、積層板の製造時に使用するキャリヤー付き銅箔に係り、その目的とするのは樹脂を支持体とし、その片面または表裏両面に、易剥離性銅箔を配置することを特徴とし、プリント基板製造工程の簡素化及び歩留りアップによるコスト削減を実現することを課題とする。」(【0001】)、「本発明は、板状の合成樹脂(Resin)製の少なくとも一方の面に、金属箔を密着させてキャリヤー付金属箔とするものであり、合成樹脂で銅箔を全面に亘って支持するので、積層中に銅箔に皺の発生を防止できる。」(【0011】)、「本願発明のキャリヤー付金属箔は、金属箔と樹脂は最終的に分離されるもので、機械的に容易に剥離できる構造を有する。」(【0012】)、「板状キャリヤーと金属箔とは、めっき又はエッチング等の工程において、適度の密着性が必要であるが、いずれ機械的に剥がすことになるので、両者の剥離強度は、1g/cm以上、1kg/cm以下であることが望ましい。さらに、剥離面は板状キャリヤーと金属との境界であることが望ましく、両者の間で、相手材料の残渣が残ることは、除去工程が必要となり、工程の複雑化になるので、避けなければならない。」(【0014】)などの記載によれば、引用発明はプリント基板製造工程における積層中やめっき又はエッチング等の工程での必要性から、銅箔を合成樹脂の板状キャリアーで全面に亘って支持し、両者が適度の密着性を有する一方で、最終的には両者の間で相手材料の残渣が残らず容易に分離できる易剥離性を有するものである。このことから、両者の間の剥離強度は、最終的には機械的に剥離しやすいと同時に、積層、めっき、エッチング等の各工程中では剥離せず密着して適切に支持されるという相反する要請がある、いわゆるトレードオフの関係にあることが理解される。
してみると、引用文献1には両者の剥離強度として1g/cm以上、1kg/cmの範囲が示されているが、製品設計の技術常識を考慮すれば、上記の範囲に収まればどのような値でもいいというわけではなく、その範囲の中でも上記トレードオフのバランスを考慮しつつ適切な値が決定されるものであるから、その結果として上記相違点1に係る本件補正発明の剥離強度の範囲とすることも十分に考えられる。また、本件補正発明の範囲としたことの効果も、上記のトレードオフの内容から予測し得た程度のものであって引用発明と異質の効果とはいえず、本願明細書の【0082】?【0091】に示される【表1】?【表10】の内容に照らしても、当該数値範囲内のものがその他の数値範囲のものと比べて格別な効果を奏する(すなわち臨界的意義を有する)と認めることもできない。
審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】において、本件補正発明の効果が引用発明と比べて顕著である、あるいは新規の課題に基づく異質の効果であることを主張しているが、いずれも上記トレードオフの内容をより具体的な例に沿って述べているだけのことであり、引用文献1の記載から当業者が予測し得ない異質又は顕著な効果と認められるものではないから、当該主張は当を得たものではなく採用できない。
なお、上記判断の参考として、引用文献2には、「キャリア箔付電解銅箔は、一般にピーラブルタイプとエッチャブルタイプに大別することが可能であり、ピーラブルタイプは銅張積層板とした後にキャリア箔を物理的に引き剥がして除去するものであり、ピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔は、キャリア箔層と銅箔層との間に、剥離層を設けた層構成を備え、プレス加工の熱履歴を受けた以降も、キャリア箔を20gf/cm?100gf/cmの引き剥がし強さで剥離可能な特性が求められること。」という技術的事項が記載されており(上記2(2)イ参照)、本願優先日前に周知の事項であったと認められる。当該周知の事項は、引用発明や本件補正発明と共通するピーラブルタイプのキャリア箔付電解銅箔において引き剥がし強さを本件補正発明の剥離強度と略同等の範囲とするものであるから、引用発明の剥離強度を本件補正発明の数値範囲とすることに特段の困難性がないことを裏付けるものである。
よって、引用発明において上記相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2
引用文献1には引用発明の板状キャリヤーの厚みについて明確に記載されていないが、プリント基板製造工程における積層時に銅箔に皺が発生しないように支持するという機能が求められることを考慮すれば、板状キャリヤーが過度に大きく撓まないこと、すなわちある程度の厚みが必要であることは当業者にとって自明である。
また、引用文献1には、「板状キャリヤーとなる合成樹脂としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。また、前記プリプレグを使用することもできる。」「なお、前記プリプレグについては、キャリヤー付銅箔に使用する剥離可能なプリプレグ及び回路基板を構成するプリプレグに、同じ物を使用しても良いし、また異なるプリプレグを使用しても良い。」(いずれも【0013】)と記載されている。そして、引用文献5に「ガラス織布の厚みが30μm?100μmのプリプレグを基材として回路基板を構成すること。」との技術的事項が記載されている(上記2(2)オ参照)ことから、引用発明の板状キャリヤーに同程度の厚みのプリプレグを採用することに、特段の困難はない。また、この厚みを本件補正発明の範囲としたことで、引用文献1の記載から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものとも認められない。
よって、引用発明において上記相違点2に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(ウ)相違点3
引用文献3には、「剥離層201と接する面と反対側の、絶縁層401と接する面側の金属箔301の表面粗さRzは、0.01μm以上、3μm以下が好ましく、0.1μm以上、2.5μm以下がより好ましく、さらには0.5μm以上、2μm以下が好ましく、表面粗さがこの範囲にあると、微細な凹凸のアンカー効果が生じ絶縁層401との密着が強くなること。」という技術的事項が記載されている(上記2(2)ウ参照)。
また、引用発明のキャリア付金属箔の金属箔も、キャリアと接する面と反対側の面で絶縁層(プリプレグ)と積層することが予定されている(引用文献1【0016】?【0018】)から、金属箔の板状キャリアと接しない側の表面は、絶縁層の密着が課題となることは自明である。そうすると、引用文献3に記載された技術的事項と引用発明とは技術分野及び課題が共通するから、引用文献3に記載された技術的事項を引用発明の金属箔の板状キャリアと接する面の反対側の面、すなわち板状キャリアと接しない側の表面に適用することは、当業者が容易になし得る事項である。そして、その適用にあたって、表面の十点平均粗さ(Rz jis)の範囲を「0.5μm以上、2μm以下」の範囲を含む「0.4μm以上10.0μm以下」に変更して、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計上の変更にすぎない。
また、引用文献4にも、「表面処理銅箔の絶縁樹脂と接着する面について、粗化処理後の表面粗さRz(JIS-B-0601の規定に準じて測定される値)を1.1μm以下とすることで、絶縁樹脂との密着性に優れ、ソフトエッチング性に優れた表面処理銅箔とすること。」という技術的事項が記載されている(上記2(2)エ参照)。上記のとおり引用発明のキャリア付金属箔の板状キャリアと接しない側の表面は、絶縁層の密着が課題となることは自明であるから、引用文献4に記載された技術的事項を引用発明の金属箔の板状キャリアと接しない側の表面に適用することは、当業者にとって容易であり、その際に表面粗さの範囲を本件補正発明の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計上の変更にすぎない。
なお、審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】において、引用発明と引用文献3及び4に記載された技術的事項とは、回路形成の方法が異なるため、組み合わせが困難である点を主張しているが、以下の理由により当該主張は当を得たものではなく採用できない。すなわち、請求人が主張する引用発明の回路形成方法とは引用文献1に記載された製造方法の実施例2を指すと認められるところ、引用文献1の記載(特に【0016】?【0018】の実施例1についての記載を参照。)からみて、引用発明は専ら実施例2の製造方法のみを対象としているわけではないから主張の前提に誤りがある。
よって、引用発明において上記相違点3に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(エ)相違点1?3
上記相違点1?3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1、3?5に記載された事項から予測される範囲のものにすぎず、格別なものとはいうことはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1、3?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1、3?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年 5月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2[理由]1(2)参照。)により特定されるとおりのものである。

第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

・請求項 1 に対し、引用文献等 1、3-5
・請求項 2、8 に対し、引用文献等 1-5
・請求項 4-7、10-27に対し、引用文献等 1-5

第5 引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1?5及びその記載事項並びに引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

第6 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「金属箔と板状キャリアについてJIS C6481に規定される90度剥離強度測定方法に準拠して測定される剥離強度」が「10gf/cm以上67gf/cm以下」であるところ、これを「10gf/cm以上80gf/cm以下」としてその数値範囲を拡張したものに等しい。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定された本件補正発明が、上記第2理由2(3)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1、3?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明及び引用文献1、3?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1、3?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-24 
結審通知日 2019-07-30 
審決日 2019-08-16 
出願番号 特願2016-228413(P2016-228413)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 行剛  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 石井 孝明
西尾 元宏
発明の名称 キャリア付金属箔  
代理人 アクシス国際特許業務法人  
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