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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1355661
審判番号 不服2018-16255  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-06 
確定日 2019-10-23 
事件の表示 特願2014- 77164「測定器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 9日出願公開、特開2015-197427、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月3日の出願であって、平成30年1月16日付けで拒絶理由が通知され、同年3月13日に手続補正がされ、同年8月20日付けで拒絶理由が通知され、同年9月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ、同年10月2日付けで査定の謄本が送達された。これに対し、同年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和元年7月22日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月29日に手続補正がされたものである。


第2 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、令和元年7月29日に補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-4は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
本体筐体と、
前記本体筐体に設けられ、測定子の変位量を検出する検出部と、
前記本体筐体の外表面に設けられた表示部と、
前記外表面に設けられた複数のキースイッチと、
前記外表面における前記表示部の近傍に設けられたメニュー表記部と、
前記表示部の表示を制御する表示制御部と、
を備え、
前記複数のキースイッチの少なくとも1つには操作が割り当てられ、
前記表示部は、
主表示部分と、
前記メニュー表記部と隣り合う位置に配置され、前記メニュー表記部を指し示すカーソルを表示するカーソル表示部分と、
前記複数のキースイッチのそれぞれの近傍に配置される操作ガイド表示部分であって、近傍のキースイッチに割り当てられた操作に対応するガイド表示を表示する操作ガイド表示部分と、
を有し、
前記表示制御部は、
前記検出部によって前記変位量を検出する測定モードの場合、前記カーソル表示部分に前記カーソルを表示させず、かつ、前記操作ガイド表示部分にガイド表示を表示させないように、前記変位量に基づく測定値を前記主表示部分に表示させる制御を行い、
測定条件の設定を行う設定モードの場合、選択されたメニューに対応した前記メニュー表記部を指し示すように前記カーソルを表示させる制御を行い、かつ、選択されたメニューにおいて前記近傍のキースイッチに割り当てられた操作に対応するガイド表示を前記操作ガイド表示部分に表示させる制御を行うことを特徴とする測定器。」

なお、本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。


第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2000-205852号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は被測定物の寸法・形状等を測定するデジタルアナログ併用表示型測定器に関し、特に、被測定アナログ量の測定・表示方法に関する。」

「【0006】本発明の目的は、以上に述べたような従来のデジタルアナログ併用表示型測定器の問題に鑑み、表示器が比較的小型でよく、アナログ目量の切替えやアナログ表示の基準点の設定を行うスイッチを用いずに、常に現在値、設定された上下限値や最小値(最大値)との関係をアナログ目盛範囲内に表示できる測定・表示方法を得るにある。」

「【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面について本発明の実施例の詳細を説明する。図1は本発明を施したシリンダゲージを示し、シリンダボア径の測定に用いる同シリンダゲージは一端に測定子1を有するスピンドル2はゲージ本体3に対して摺動自在に保持されるが、測定子1の変位量はゲージ本体3の液晶表示器10のデジタル表示部11とアナログ表示部12の双方で表示される。
【0010】即ち、デジタル表示部11は、例えば+または-の符号と5桁の7セグメント状電極で構成され、測定子1の変位量は数値表示により直読可能に表示される。アナログ表示部12は左右方向に整列した多数のアナログバーから構成されるバーグラフ13を備え、測定子1の変位量は右側からのアナログバーの反転点灯により表示される。なお、後述から明らかになるが、最小値はひとつのアナログバーの点滅で、公差設定時の下限値及び上限値は現在変位量を示すアナログバーの状態とは逆の点灯状態で表示されることになる。なお、前記ゲージ本体3の表面には、測定開始用のスタートスイッチ14、公差設定を行える公差設定スイッチ15、プリセットスイッチ16、ホールドされた値を固定するホールドスイッチ17その他M/Wボタン、ON/OFFボタン等が設けられる。なお、以下の説明において、スイッチとボタンは同じ意味で使用する。
【0011】図2に示すように、前記ゲージ本体3の内部には、測定子1の変位に従動するスピンドル2の変位を電気値に変換する測長センサ50が内蔵され、同測長センサ50の出力パルス信号は測長回路(カウンタ)51により計数され、例えば2進化10進信号として出力される。測長回路51の出力は演算・制御部52に入力され、同演算・制御部52は操作スイッチ群20の操作に基づき、前記測長回路51、液晶駆動部56を制御するが、ROM54にはこの制御のための演算・制御プログラムが格納されている。また、RAM55は演算・制御プログラムに基づいて演算・制御部52が動作する時に必要となる各種データが格納してある。液晶駆動部56はデジタル用ドライバ57とアナログ用ドライバ58から構成され、これらは液晶表示器10のデジタル表示器11及びアナログ表示器12をそれぞれ駆動する。」

引用文献1には以下の図が示されている。

【図1】

【図2】


また、上記記載事項及び図示内容によれば、以下の事項が認められる。

「ゲージ本体3の表面が筐体で構成されていること」(【図1】参照)

「ゲージ本体3と、前記ゲージ本体3の表面に設けられた液晶表示器10と、前記表面に設けられた測定開始用のスタートスイッチ14、公差設定を行える公差設定スイッチ15、プリセットスイッチ16、ホールドスイッチ17、M/Wボタン、ON/OFFボタンとを備えたシリンダゲージ」(【0010】、【図1】参照)

「ゲージ本体3の表面における液晶表示器10の近傍にM1、M2、M3という表示があること」(【図1】参照)

「液晶表示器10は、測定子1の変位量が数値表示により直読可能に表示されるデジタル表示部11と、M1、M2、M3という表示に隣接して左向きの三角形が表示される部分を有していること」(【0009】、【図1】参照)

「ゲージ本体3には、測長センサ50及び測長回路(カウンタ)51と、演算・制御部52が設けられていること」(【0011】参照)

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「表面が筐体で構成されているゲージ本体3と、
前記ゲージ本体3の表面に設けられた液晶表示器10と、
前記表面に設けられた測定開始用のスタートスイッチ14、公差設定を行える公差設定スイッチ15、プリセットスイッチ16、ホールドスイッチ17、M/Wボタン、ON/OFFボタンと、
を備えたシリンダゲージにおいて(【0010】、【図1】)、
ゲージ本体3には、測長センサ50及び測長回路(カウンタ)51と、演算・制御部52が設けられており(【0011】)、
ゲージ本体3の表面における液晶表示器10の近傍にM1、M2、M3という表示があり(【図1】)、
液晶表示器10は、測定子1の変位量が数値表示により直読可能に表示されるデジタル表示部11と、M1、M2、M3という表示に隣接して左向きの三角形が表示される部分を有しており(【0009】、【図1】)、
測長センサ50が測定子1の変位に従動するスピンドル2の変位を電気値に変換し、測長回路(カウンタ)51が同測長センサ50の出力パルス信号を計数し(【0011】)、
演算・制御部52は操作スイッチ群20の操作に基づき、液晶表示器10のデジタル表示器11及びアナログ表示器12をそれぞれ駆動する液晶駆動部56を制御する(【0011】)、
シリンダゲージ」

2.その他の文献について
原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された引用文献2(実願昭55-126326号(実開昭57-50006号)のマイクロフィルム)の第2頁第17-19行、第10頁第11行-第11頁第6行、第9図には、測定値を電気的に検出してこれをデジタル表示する電子マイクロメータにおいて、INCH、MM、HOLD、5というモードの表記部を有し、該表記部と隣り合う位置に配置されたドット38、39、40を表示するデジタル表示部14という技術的事項が記載されている。

原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された引用文献3(米国特許第5969718号明細書)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
「The display has an area 12 wherein is displayed the primary variable (PV) using large characters each of which has seven segments. ・・・The display further has an area 16 wherein the fault/hold icons 16a, the units icons 16b and the mode indicators 16c are displayed. Finally, the display has an area 18 wherein the icons for the softkey prompts of the present invention are displayed.
As is shown in FIG. 1, the softkey prompt icons area 18 is comprised of four groups, 18a to 18d, of icons. Group 18a has the icons "exit to MEASURE" and "FAULT info"; 18b has the icons "SELECT" and "ENTER"; 18c has the icons "YES", "NO" and the up arrow; and 18d has the icons "NO", "MENU", and the right arrow.
The instrument in which display 10 is used includes keypad 20 which has four keys 20a to 20d. Each of the icon groups is physically located close to an associated one of the four keys 20a, 20b, 20c, and 20d. Group 18a is close to and associated with key 20a, group 18b is close to and associated with key 20b, group 18c is close to and associated with key 20c, and group 18d is close to and associated with key 20d.」(第5欄第22-42行)
(当審仮訳:
ディスプレイは、7個のセグメントをそれぞれ有する大きな文字を使用する主要変数(PV)が表示される領域12を有する。・・・ディスプレイはさらに、フォールト/ホールドアイコン16a、ユニットアイコン16b、モードインジケータ16cが表示された領域16を有している。最後に、ディスプレイは、本発明のソフトキープロンプトアイコンが表示される領域18を有している。
図1に示すように、ソフトキープロンプトアイコンエリア18は、4つのグループ18a?18dから構成されている。グループ18aは、アイコン「exit to MEASURE」および「FAULT info」を有しており、グループ18bは、アイコン「SELECT」および「ENTER」であり、グループ18cは、アイコン「YES」、「NO」、および、上向きの矢印を有し、グループ18dは、アイコン「NO」、「MENU」、および、右向きの矢印を有している。
ディスプレイ10が使用される機器は、4個のキー20a?20dを有するキーパッド20を含む。アイコンのグループの各々は、物理的に4個のキー20a、20b、20c、20dのうちの関連する1つの近くに配置されている。グループ18aはキー20aと関連して近くにあり、グループ18bはキー20bと関連して近くにあり、グループ18cはキー20cと関連して近くにあり、グループ18dはキー20dと関連して近くにある。)
「As was described above, the MEASURE mode is the normal mode of operation of the instrument and FIG. 2a shows the display in that mode. In this embodiment the instrument is being used to measure the pH of a solution as the primary PV and that measurement appears in area 12 on the display.」(第6欄第45-50行)
(当審仮訳:
上述したように、測定モードは装置の通常の動作モードであり、図2aは、そのモードにおける表示を示している。この実施形態では、装置は主要なPVとして溶液のpHを測定するために使用されており、その測定結果は、ディスプレイの領域12に表示される。)
「That icon is the "MENU" icon and since it was decided in designing the instrument that key 20d should be associated with the scrolling function, the MENU icon was assigned to group 18d. Thus, the MENU icon is lit as is shown in FIG. 2a when the instrument is in the MEASURE mode.」(第6欄第58-63行)
(当審仮訳:
そのアイコンは「メニュー」アイコンであり、キー20dはスクロール機能に関連付けられるように機器を設計する際に決められているので、メニューアイコンはグループ18dに割り当てられている。従って、この装置は測定モードにあるとき、そのメニューアイコンはFig.2aに示すように点灯する。)
引用文献3のFig.1には、ディスプレイ10が、主要変数(PV)が表示される領域12と、「MEASURE」、「CALIBRATE」などの表示と隣り合う位置に配置され、前記表示を指し示すモードインジケータ16cを表示する表示部分と、キー20a?20dのそれぞれの近傍に配置されるグループ18a?18dのアイコンを表示する表示部分とを有することが図示されている。
引用文献3のFig.2Aには、ディスプレイ10において、pHの値が表示され、「MEASURE」の表示に隣接する位置でモードインジケータ16cが点灯しており、また、グループ18dのアイコン「MENU」が表示されていることが図示されている。
それゆえ、引用文献3には、測定モードにあるときに、ディスプレイ10において、pHの値が表示され、「MEASURE」の表示に隣接する位置でモードインジケータ16cが点灯しており、また、キー20dに関連して近くにあるグループ18dのアイコン「MENU」が表示されているという技術的事項が記載されている。

原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された引用文献4(特開2002-13901号公報)の【0016】、【図1】(a)には、巻尺において、巻尺の各種の機能の作動を開始し、あるいは作動停止するためのON/OFFキーとモード選択キーを兼ねた第1キー7を有しており、第1キー7を3秒以上押すとON/OFFの作動が行われ、また、ONの状態でこの第1キー7を短時間押すとモードの切換選択が行われるという技術的事項が記載されている。

原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開2013-56151号公報)の【0080】-【0083】、【図7】には、測定された生体情報が表示部120で順に表示されるときに、表示部120で生体情報の測定値とともに生体情報を指し示すカーソルを表示し、被測定者の体成分を測定する間に、表示部120で測定進行率を表示し、前記カーソルは表示しないという技術的事項が記載されている。

原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された引用文献6(特開2009-55995号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
「また、「測定中」の項目が指示表示41dによって示されている場合(図6参照)には、被測定者の体重及び生体インピーダンス(第1生体情報)の測定処理中であることを示し、「体重 kg」の項目が指示表示41eによって示されている場合(図5?図7参照)には、被測定者の体重が表示されている状態であることを示し、「身長 cm」の項目が指示表示41fによって示されている場合(図8?図10参照)には、身長が表示されている状態、身長の入力をすることができる状態であることを示すものである。」(【0036】)
「測定中においては、図6に示すように、表示部7では、指示表示41a、41bを消灯し、指示表示41d、41eを点灯させ、測定中の体重を中央部に大きく表示させる。」(【0039】)
「本実施形態では、図8に示すような身長-脂肪率のグラフを表示する際に、表示部7の下中央に「男性」及び「女性」を表示するとともに、第3キー操作部37及び第4キー操作部38をそれぞれに対応させて、男性用のグラフと女性用のグラフの選択に関連づけられている。」(【0046】)
引用文献6の【図8】には、表示部7において、第3キー操作部37及び第4キー操作部38のぞれぞれの近傍に「男性」及び「女性」という表示部分が表示されていることが図示されており、また、【図6】には、測定中において、「測定中」の項目が指示表示41dによって示され、「体重 kg」の項目が指示表示41eによって示され、第1?第4キー操作部35?38のそれぞれの近傍に「男性」、「女性」等という表示部分が表示されずに、測定中の体重が中央部に表示されることが図示されている。
それゆえ、引用文献6には、測定中において、「測定中」の項目が指示表示41dによって示され、「体重 kg」の項目が指示表示41eによって示され、第1?第4キー操作部35?38のそれぞれの近傍に「男性」、「女性」等という表示部分が表示されずに、測定中の体重が中央部に表示されるという技術的事項が記載されている。


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「筐体」は、本願発明1における「本体筐体」に相当する。
引用発明において、「ゲージ本体3の表面に設けられた」部材は、「ゲージ本体3」を構成する「筐体」の外表面に設けられた部材を意味するから、引用発明における、「前記ゲージ本体3の表面に設けられた液晶表示器10」、「前記表面に設けられた測定開始用のスタートスイッチ14、公差設定を行える公差設定スイッチ15、プリセットスイッチ16、ホールドスイッチ17、M/Wボタン、ON/OFFボタン」は、それぞれ、本願発明1における「前記本体筐体の外表面に設けられた表示部」、「前記外表面に設けられた複数のキースイッチ」に相当する。
引用発明においては、「測長センサ50が測定子1の変位に従動するスピンドル2の変位を電気値に変換し、測長回路(カウンタ)51が同測長センサ50の出力パルス信号を計数」するから、引用発明における「測長センサ50及び測長回路(カウンタ)51」は、本願発明1における「測定子の変位量を検出する検出部」に相当する。そして、「ゲージ本体3」に「設けられ」た「測長センサ50及び測長回路(カウンタ)51」は、「ゲージ本体3」の「筐体」に「設けられ」た「測長センサ50及び測長回路(カウンタ)51」を意味するから、本願発明1における「前記本体筐体に設けられ、測定子の変位量を検出する検出部」に相当する。
引用発明において、「演算・制御部52は操作スイッチ群20の操作に基づき、液晶表示器10のデジタル表示器11及びアナログ表示器12をそれぞれ駆動する液晶駆動部56を制御する」から、引用発明における「演算・制御部52」は、本願発明1における「前記表示部の表示を制御する表示制御部」に相当する。
引用発明における、「測定開始用のスタートスイッチ14、公差設定を行える公差設定スイッチ15、プリセットスイッチ16、ホールドスイッチ17、M/Wボタン、ON/OFFボタン」は、測定開始、公差設定などを行うための操作手段であるから、操作が割り当てられているものと認められる。それゆえ、引用発明において、「測定開始用のスタートスイッチ14、公差設定を行える公差設定スイッチ15、プリセットスイッチ16、ホールドスイッチ17、M/Wボタン、ON/OFFボタン」に操作が割り当てられていることは、本願発明1における、「前記複数のキースイッチの少なくとも1つには操作が割り当てられ」ていることに相当する。
引用発明における、「液晶表示器10は、測定子1の変位量は数値表示により直読可能に表示されるデジタル表示部11」を「有して」いる構成は、本願発明1における、「前記表示部は、主表示部分」「を有し」ている構成に相当する。
当該対比で述べた事項を踏まえると、引用発明において、「筐体で構成されているゲージ本体3と、・・・液晶表示器10と、・・・測定開始用のスタートスイッチ14、公差設定を行える公差設定スイッチ15、プリセットスイッチ16、ホールドスイッチ17、M/Wボタン、ON/OFFボタンと、を備えたシリンダゲージにおいて、ゲージ本体3には、測長センサ50及び測長回路(カウンタ)51と、演算・制御部52が設けられて」いる「ことを特徴とするシリンダゲージ」は、本願発明1における、「本体筐体と、前記本体筐体に設けられ、測定子の変位量を検出する検出部と、前記本体筐体の外表面に設けられた表示部と、前記外表面に設けられた複数のキースイッチと、前記表示部の表示を制御する表示制御部と、を備え」る「測定器」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「本体筐体と、
前記本体筐体に設けられ、測定子の変位量を検出する検出部と、
前記本体筐体の外表面に設けられた表示部と、
前記外表面に設けられた複数のキースイッチと、
前記表示部の表示を制御する表示制御部と、
を備え、
前記複数のキースイッチの少なくとも1つには操作が割り当てられ、
前記表示部は、
主表示部分を有している測定器。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「前記外表面における前記表示部の近傍に設けられたメニュー表記部」を備える構成を有しているのに対して、引用発明は、「ゲージ本体3の表面における液晶表示器10の近傍にM1、M2、M3という表示」を有しているものの、該表示が「前記外表面における前記表示部の近傍に設けられたメニュー表記部」に相当するものかどうかが不明であり、引用発明が上記構成を有していることが明らかではない点。

(相違点2) 本願発明1と引用発明は共に「前記表示部は、主表示部分を有している」点で共通しているが、本願発明1は、「前記表示部」が「主表示部分」だけでなく、「前記メニュー表記部と隣り合う位置に配置され、前記メニュー表記部を指し示すカーソルを表示するカーソル表示部分と、前記複数のキースイッチのそれぞれの近傍に配置される操作ガイド表示部分であって、近傍のキースイッチに割り当てられた操作に対応するガイド表示を表示する操作ガイド表示部分」の構成を有しているのに対して、引用発明は該構成を有していない点。

(相違点3)本願発明1は、「前記表示制御部は、前記検出部によって前記変位量を検出する測定モードの場合、前記カーソル表示部分に前記カーソルを表示させず、かつ、前記操作ガイド表示部分にガイド表示を表示させないように、前記変位量に基づく測定値を前記主表示部分に表示させる制御を行い」という構成を有しているのに対し、引用発明はそのような構成を有していない点。

(相違点4)本願発明1は、「前記表示制御部は、」「測定条件の設定を行う設定モードの場合、選択されたメニューに対応した前記メニュー表記部を指し示すように前記カーソルを表示させる制御を行い、かつ、選択されたメニューにおいて前記近傍のキースイッチに割り当てられた操作に対応するガイド表示を前記操作ガイド表示部分に表示させる制御を行う」という構成を有しているのに対し、引用発明はそのような構成を有していない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
引用文献3には、測定モードにあるときに、ディスプレイ10において、pHの値が表示され、「MEASURE」の表示に隣接する位置でモードインジケータ16cが点灯しており、また、キー20dに関連して近くにあるグループ18dのアイコン「MENU」が表示されているという技術的事項が記載されている。それゆえ、本願発明1と引用文献3に記載された技術的事項とは、「測定モードの場合、」「測定値を前記主表示部分に表示させる制御を行」うという点で共通するものの、引用文献3に記載された技術的事項は、上記相違点3に係る構成のように、「測定モード」が「前記検出部によって前記変位量を検出する」モードであり、「主表示部分に表示させる」「測定値」が「前記変位量に基づく」値である点や、「前記表示制御部は、」「測定モードの場合、前記カーソル表示部分に前記カーソルを表示させず、かつ、前記操作ガイド表示部分にガイド表示を表示させない」「制御を行」う点を含んでいない。
また、引用文献6には、測定中において、「測定中」の項目が指示表示41dによって示され、「体重 kg」の項目が指示表示41eによって示され、第1?第4キー操作部35?38のそれぞれの近傍に「男性」、「女性」等という表示部分が表示されずに、測定中の体重が中央部に表示されるという技術的事項が記載されている。それゆえ、本願発明と引用文献6に記載された技術的事項とは、「測定モードの場合、」「前記操作ガイド表示部分にガイド表示を表示させないように、」「測定値を前記主表示部分に表示させる制御を行」うという点で共通するものの、引用文献6に記載された技術的事項は、上記相違点3に係る構成のように、「測定モード」が「前記検出部によって前記変位量を検出する」モードであり、「主表示部分に表示させる」「測定値」が「前記変位量に基づく」値である点や、「前記表示制御部は、」「測定モードの場合、前記カーソル表示部分に前記カーソルを表示させ」ず、かつ、前記操作ガイド表示部分にガイド表示を表示させない」「制御を行」う点を含んでいない。
また、引用文献2、4-5に記載された技術的事項においても、上記相違点3に係る構成を含んでいない。

したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1の上記相違点3に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-2に係る発明は、上記引用文献1-3、5-6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、また、請求項3-4に係る発明は、引用文献1-6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、令和元年7月29日の手続補正により補正された請求項1-4は、上記相違点3に係る構成を有するものとなっており、この構成は、原査定における引用文献1-6には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-4は、当業者であっても、原査定における引用文献1-6に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1の「前記複数のキースイッチの少なくとも1つに割り当てられた操作に対応するガイド表示」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、令和元年7月29日の手続補正において、「前記複数のキースイッチの少なくとも1つには操作が割り当てられ、・・・前記複数のキースイッチのそれぞれの近傍に配置される操作ガイド表示部分であって、近傍のキースイッチに割り当てられた操作に対応するガイド表示を表示する操作ガイド表示部分と、・・・選択されたメニューにおいて前記近傍のキースイッチに割り当てられた操作に対応するガイド表示を前記操作ガイド表示部分に表示させる制御を行うこと」(下線は補正箇所を示す。)と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-09 
出願番号 特願2014-77164(P2014-77164)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01B)
P 1 8・ 537- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 祐三好 貴大  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 小林 紀史
梶田 真也
発明の名称 測定器  
代理人 折坂 茂樹  

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