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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1355690
審判番号 不服2018-9434  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-09 
確定日 2019-10-29 
事件の表示 特願2017- 71957「発注処理装置および発注処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018- 92568、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月31日の出願であって、平成29年12月8日付で拒絶理由が通知され、平成30年3月1日に意見書及び手続補正書が提出されたものの、同年4月9日付で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、その謄本が送達された。
これに対し、同年7月9日に拒絶査定不服審判の請求がされ、当審より、令和元年7月8日付で拒絶理由(「以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年4月9日付拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献A及びBに記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献A:特開2004-94944号公報
引用文献B:特開2005-18453号公報

第3 当審拒絶理由の理由
当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2007-18304号公報

第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、令和元年9月2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、それぞれ、以下のとおりの発明である。

【請求項1】(本願発明1)
タクシーチケットを発行するチケット発行会社が有し、複数の通信端末を有するチケット利用会社からのタクシーチケットの発注を処理する発注処理装置であって、
前記チケット利用会社の通信端末からタクシーチケットの発注を受け付ける発注受付部と、
前記発注受付部が受け付けた発注の履歴を記録する発注履歴データベースと、
前記チケット利用会社からの発注履歴の照会要求に応じて、前記発注履歴データベースを参照して、前記チケット利用会社の前記複数の通信端末からの全ての発注の一覧である履歴データを取得し、当該履歴データを前記チケット利用会社に送信する照会処理部と、を備えた発注処理装置。
【請求項2】(本願発明2)
前記履歴データは、所定の期間における前記チケット利用会社の前記複数の通信端末からの全ての発注の一覧である、請求項1に記載の発注処理装置。
【請求項3】(本願発明3)
前記照会処理部は、前記複数の通信端末のうち、少なくとも特定の端末からの照会要求を受け付ける、請求項1または2に記載の発注処理装置。
【請求項4】(本願発明4)
前記特定の端末は、前記チケット利用会社のタクシーチケットの発注状況を管理する発注責任者が使用する端末である、請求項3に記載の発注処理装置。
【請求項5】(本願発明5)
前記照会処理部が前記発注履歴データベースを参照するための参照条件を受け付ける参照条件受付部をさらに備え、
前記照会処理部は、前記参照条件受付部が受け付けた前記参照条件に従って取得した履歴データを前記チケット利用会社に送信する、請求項1?4のいずれかに記載の発注処理装置。
【請求項6】(本願発明6)
タクシーチケットを発行するチケット発行会社が有する発注処理装置によって、複数の通信端末を有するチケット利用会社からのタクシーチケットの発注を処理する発注処理方法であって、
前記チケット利用会社の通信端末からタクシーチケットの発注を受け付ける発注受付ステップと、
前記発注受付ステップにおいて受け付けた発注の履歴を発注履歴データベースに記録する発注履歴記録ステップと、
前記チケット利用会社からの発注履歴の照会要求に応じて、前記発注履歴データベースを参照して、前記チケット利用会社の前記複数の通信端末からの全ての発注の一覧である履歴データを取得し、当該履歴データを前記チケット利用会社に送信する照会処理ステップと、
を備えた発注処理方法。

第5 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

【0014】・・・タクシーチケット処理システム1は、チケット申請端末10、チケット申請サーバ20、チケット生成システム30、携帯電話機40、タクシー装置50、データ管理サーバ60、チケット決済サーバ70などを備え、申請に応じて、タクシーの利用料金の精算に用いられるタクシーチケットとなるチケットデータを生成し、その利用について処理を行うシステムである。
【0015】 チケット申請端末10は、チケット申請要求に応じてチケット申請サーバ20から送信されるチケット発券申請入力フォームを受信して表示し、この入力フォームに従って申請者が入力するチケット申請情報をチケット申請サーバ20へ送信する装置であって、チケット申請サーバ20と通信が可能なパーソナルコンピュータ、携帯電話機などで実現することが可能である。・・・
【0016】・・・
【0017】チケット申請サーバ20は、チケット生成システム30と電話回線、光ケーブルその他の有線の通信回線、赤外線その他の無線の通信回線などの通信回線(図示しない。以下同じ。)を介して接続され、チケット発券申請を管理するサーバであって、申請者が属する企業が管理している。・・・チケット申請サーバ20は、発券を許可した場合には、そのチケット申請情報をチケット生成システム30へ送信し、チケットデータの生成(タクシーチケットの発券)を依頼する。
【0018】
チケット生成システム30は、チケットデータを生成し、管理するコンピュータシステムであって、チケットの申請者が属する企業又はこの企業から委託された他の企業が管理している。チケット生成システム30は、通信部31、チケット生成部32、タクシー会社選択部33、チケット提供部34、発券履歴DB35、タクシー会社情報DB36などを備えている。・・・通信部31は、通信回線を介した通信を制御し、チケット申請サーバ20、携帯電話機40、データ管理サーバ60、チケット決済サーバ70などとの通信を可能とする。
【0019】
チケット生成部32は、通信部31がチケット申請サーバ20から申請情報を受信し、チケット発券の依頼を受けた場合に、このチケット申請情報に基づいてチケットデータを生成する。チケットデータは、チケットID、利用制限情報、電子署名などを含んでいる。チケットIDは、各チケットデータに割り当てられ、各チケットデータを一意に識別するための識別情報であり、電子署名は、チケットデータのダイジェストを秘密鍵で暗号化したデータなど、このチケットデータを認証するため、また、完全性(改竄防止)を確保するためのデータである。チケット生成部32は、チケット申請情報及びチケットデータをタクシー会社選択部33へ送るとともに、発券履歴DB35へ登録する(後述する図2参照。)。また、チケット生成部32は、チケット申請情報及びチケットIDをチケット提供部34へ送る。
【0020】タクシー会社選択部33は、タクシー会社情報DB36に格納されているタクシー会社情報と(後述する図3参照。)、チケット生成部32から受け取ったチケット申請情報に含まれる利用内容情報とに基づいてタクシー会社を選択する。例えば、乗車エリアが運行エリア内にあり、車種や利用目的、希望サービスにあったサービスを提供するタクシー会社や、料金の低額なタクシー会社を選択する。タクシー会社選択部33は、選択したタクシー会社の識別情報を、発券履歴DB35へ登録する(後述する図2参照。)。
【0021】チケット提供部34は、チケット生成部32から受け取ったチケット申請情報に含まれる配信先情報のメールアドレス宛(携帯電話機40のメールアドレス宛)に、利用者識別情報、申請者識別情報、チケットID、URL(Uniform Resource Locator)、生成した認証情報などを含む電子メールを送信する。URLは、タクシーチケットアプリケーションのダウンロード用サイトのインターネット上の位置を示している。認証情報は、PINなどであって、チケットデータの提供を要求する者を、チケットデータを受け取るべき者(電子メールの宛先の利用者)と認証するための情報である。チケット提供部34は、認証情報を生成し、利用者へ配信するとともに、チケットIDに関連づけて記憶する。チケット提供部34は、携帯電話機40からチケットデータ提供要求を受信し、携帯電話機40の利用者の認証ができた場合に、チケットデータ及びタクシー会社情報とを含むタクシーチケットアプリケーションを携帯電話機40へ送信する。」

「【0022】
図2は、発券履歴DB35に格納されている発券履歴情報を説明するための図である。
図2に示すように、発券履歴DB35には、チケットIDと、対応する申請情報と、チケットデータと、タクシー会社選択部33が選択したタクシー会社を示すタクシー会社識別情報と、配信フラグとを含む発券履歴情報が格納されている。配信フラグは、このチケットIDに対応するチケットデータを既に利用者に配信したか否かを示すフラグであって、チケット提供部34によるチケットデータの配信が終了した場合に、配信されたチケットデータに対応するフラグがオン(配信済み。)に書き換えられる。」

「【0026】タクシー装置50は、携帯電話機40と通信を行い、電子署名に基づいてチケットデータの正当性(認証及び完全性)の検証、利用料金の算出、利用料金及びチケットデータに基づいて利用料金の後日決済のための支払処理などを行う。タクシー装置50は、運行中に、乗車時からの運行距離及び時間に基づいて利用料金を算出し、現在地検出装置によって検出される位置を記録し、運行ルートとして記憶する。タクシー装置50は、利用実績情報を生成し、データ管理サーバ60、チケット決済サーバ70などに送信し、支払処理を行う。利用実績情報は、使用されたチケットデータのチケットID、タクシーID、利用料金額、乗車及び降車の日時、運行ルート(乗車場所及び降車場所を含む)など、タクシーの利用内容(実績)を示す情報である。
【0027】データ管理サーバ60は、通信回線を介して、タクシー装置50、チケット決済サーバ70などと通信を行うことが可能であって、タクシー会社におけるデータ処理を管理するサーバである。また、データ管理サーバ60は、タクシー装置50へ指示などを送信し、タクシー装置50から現在地を示す情報を受信するなど、各タクシーを管理する。データ管理サーバ60は、タクシー装置50から利用実績情報を受信し、タクシーIDごとに記憶し、管理する。データ管理サーバ60は、記憶している利用実績情報におけるチケットデータによって支払処理が行われた利用料金を定期的に集計し、集計結果を決済代行会社のチケット決済サーバ70へ送信し、この料金の支払を要求する。
【0028】チケット決済サーバ70は、通信回線を介して、チケット生成システム30、タクシー装置50、データ管理サーバ60などと通信を行うことが可能であって、チケットデータによるタクシー料金支払いの決済を行うサーバであって、企業に代わって決済を行う決済代行会社によって管理されている。チケット決済サーバ70は、チケット生成システム30から受信する発券履歴情報を記憶し、タクシー装置50から利用実績情報を受信した場合に、チケットIDで対応する発券履歴情報と照らし合わせ、正当にチケットデータが使用されたかを確認する。また、チケット決済サーバ70は、データ管理サーバ60から利用料金の集計結果を受信し、記憶している利用実績情報と照らし合わせ、支払額の正当性を確認し、タクシー会社へ利用料金を支払い、利用料金の決済を行う。更に、チケット決済サーバ70は、利用内容、タクシー会社に支払った利用料金、支払代行サービス料金をチケット申請サーバ20に通知し、これらの料金の支払いを要求する。企業は、この要求に対してチケット生成システム30の発券履歴DB35内の情報を参照し、支払額の正当性を確認し、決済代行会社へ料金を支払う。」

「【0035】(変形例)以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。例えば、タクシー装置50は、携帯電話機40に格納されているチケットデータの正当性を電子署名で認証しているが、タクシー装置50がチケット生成システム30と通信を行い、発券履歴DB35の内容を参照することによって、チケットデータの正当性を確認してもよい。この場合には、例えば、利用者が携帯電話機40を紛失したときに、チケット生成システム30へ紛失した携帯電話機40に格納されているチケットデータのチケットIDなどを通知することによって、チケットデータの無効を発券履歴DB35へ登録し、チケットデータの不正利用を防止することが可能となる。また、利用者が携帯電話機40を紛失したときに、チケット生成システム30、データ管理サーバ60などを介して紛失した携帯電話機40に格納されているチケットデータのチケットIDをタクシー装置50へ通知することによって、チケットデータの不正利用を防止してもよい。更に、チケット生成システム30がチケットデータを生成した場合に、この旨をタクシー会社のデータ管理サーバ60を介してタクシー装置50へ送信してもよい。チケットデータの正当性をより確実に確認することが可能となる。
【0036】タクシーチケット処理システム1は、携帯端末として携帯電話機40を備えているがこれに限定されず、PDAなど他の携帯型の通信端末であってもよい。
また、チケット生成システム30は、配車依頼先情報として、配車依頼先の電話番号をタクシー会社DB36に記憶しているが、これに限定されず、配車依頼を行うことができるサイトのURLなど、他の配車依頼先情報を記憶していてもよい。
タクシーチケット処理システム1において、チケット申請サーバ20を企業が管理し、チケット決済サーバ70を決済代行会社が管理しているが、いずれのものがいずれのシステムを管理するかは限定されない。
・・・
【0040】タクシーチケット処理システム1において、タクシー装置50から、又は、データ管理サーバ60を介して利用実績情報をチケット生成システム30へ送信し、チケット生成システム30がこれをデータベース化して記憶していてもよい。チケット生成システム30において、発券履歴情報と、利用実績情報を照合して不正利用を検出することが可能となるとともに、企業のチケット申請サーバ20などからの利用についての問い合わせに対して適当な利用実績情報を提供するなど、企業側の利便性を向上することが可能となる。」

2 引用発明の認定
以上の記載からみて、引用文献1には、「チケットの申請者が属する企業」と「この企業から委託された他の企業」(【0018】)のうち後者の企業が管理する「チケット生成システム」の変形例として、「タクシー装置」から「データ管理サーバ」を介して送信された「利用実績情報」を「チケット生成システム」が「データベース化して記憶」するもの(【0040】)について、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「チケット申請端末、チケット申請サーバ、チケット生成システム、携帯電話機、タクシー装置、データ管理サーバ、チケット決済サーバなどを備え、申請に応じてタクシーチケットとなるチケットデータを生成し、その利用について処理を行うシステム(【0014】、図1)であって、
チケット申請サーバは、企業により管理されるものであり(【0017】、【0036】)、チケット申請端末からのチケット申請情報をチケット生成システムへ送信してチケットデータの生成であるタクシーチケットの発券を依頼するものであり(【0017】)、
チケット生成システムは、チケットの申請者が属する企業から委託された他の企業が管理するものであって(【0018】)、通信部、チケット生成部、タクシー会社選択部、チケット提供部、発券履歴DB、タクシー会社情報DBなどを備えたものであり(【0018】)、
通信部は、チケット通信サーバからチケット申請情報を受信し(【0019】【0020】)、このチケット生成部は、通信部が申請情報を受信してチケット発券の依頼を受けた場合に、受信したチケット申請情報に基づいてチケットデータを生成して、チケット申請情報及びチケットデータをタクシー会社選択部へ送るとともに発券履歴DBへ登録し、チケット申請情報及びチケットIDをチケット提供部へ送り(【0019】)、
タクシー会社選択部は、タクシー会社情報DBとチケット申請情報に含まれる利用内容情報とに基づいてタクシー会社を選択し、選択したタクシー会社の識別情報を発券履歴DBへ登録し(【0020】)、
チケット提供部は、チケット申請情報に含まれる配信先情報のメールアドレスである携帯電話機のメールアドレス宛に、利用者識別情報、申請者識別情報、チケットID、URL、生成した認証情報などを含む電子メールを送信し、携帯電話からチケットデータ提供要求を受信し、携帯電話機の利用者認証ができた場合に、チケットデータ及びタクシー会社情報を含むタクシーチケットアプリケションを携帯電話機に送信し(【0021】)、
タクシー装置は、携帯電話機と通信を行い、運行中に利用料金を算出し、現在地検出装置によって検出される位置を記録し、利用実績情報を生成し、データ管理サーバやチケット決済サーバなどに送信して支払い処理を行い(【0026】)、
データ管理サーバは、タクシー装置から利用実績情報を受信し、タクシーID毎に記録し、管理し、記憶している利用実績情報におけるチケットデータによって利用料金を定期的に集計して、チケット決済サーバへ送信して料金の支払いを要求し、(【0027】)
チケット決済サーバは、企業に代わって決済を行う決済代行会社によって管理されており、チケット生成システムから受信する発券履歴情報を記憶し、タクシー装置から利用実績情報を受信した場合に、対応する発券履歴情報と照らし合わせ、正当にチケットデータが使用されたかを確認し、データ管理サーバから利用料金の集計結果を受信し、記憶している利用実績情報と照らし合わせ、支払額の正当性を確認し、タクシー会社へ利用料金を支払い、利用料金の決済を行い、更に、利用内容、タクシー会社に支払った利用料金、支払い代行サービス料金をチケット申請サーバに通知し、これらの料金の支払いを要求し(【0028】)、
企業は、この要求に対してチケット生成システムの発券履歴DB内の情報を参照し、支払額の正当性を確認し、決済代行会社へ料金を支払うものであり(【0028】)、
タクシー装置からデータ管理サーバを介して利用実績情報をチケット生成システムへ送信し、チケット生成システムがこれをデータベース化して記憶することで、チケット生成システムにおいて、不正利用の検出が可能となるとともに、企業のチケット申請サーバなどからの利用についての問い合わせに対して適当な利用実績情報を提供するなど、企業側の利便性を向上することが可能となるものである、(【0040】)
タクシーチケット処理システム。」

第6 対比、判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明における「タクシーチケット(タクシーチケットアプリケション)」は、タクシーチケットとして「発券」されるものであって、本願発明1の「タクシーチケット」に相当するといえる。そして、引用発明におけるタクシーチケットの「発券」と「発券」のための「申請」は、それぞれ、本願発明1におけるタクシーチケットの「発行」と発行のための「発注」に相当する。(「タクシーチケット」の文言は、もともとは「チケット」という用語で有体物を示していたとしても、本願出願時においては有体物(本願明細書段落【0021】)に限定して用いられる用語ではない。この点、引用文献1のみならず、引用文献1で引用する「特開2003-296767号においても、有体物でないものについて「タクシーチケット」の用語が用いられている。)

イ 引用発明の「チケットの申請者が属する企業」、「チケット申請端末」は、本願発明1の「チケット利用会社」、「チケット利用会社の通信端末」に相当する。また、引用発明の「チケットの申請者が属する企業から委託された他の企業」は、チケット生成システムを管理しており、本願発明1の「チケット発行会社」に相当する。

ウ 引用発明の「チケット生成システム」の「通信部」は、チケット利用会社の通信端末からのチケット申請情報の受信によってタクシーチケットの発注を受け付けるものであり、本願発明1の「発注受付部」に相当する。
引用発明の「発券履歴DB」は、受信したチケット申請情報が登録されて受け付けた発注の履歴が記録されるものであるから、本願発明1の「発注履歴データベース」に相当する。

エ 引用発明の「チケット生成システム」は、発注受付部と発注履歴データベースを備えるとともに、発注されたチケットを提供するチケット提供部を備えてこれを発行するものであり、チケットの発注を処理する「発注処理装置」であるといえる。
さらに、引用発明では、この発注処理装置において、決済代行会社への料金の支払いにあたって支払額の正当性を確認するために「発券履歴DB」の情報を企業に参照させるとともに、「企業のチケット申請サーバなど」からの「利用についての問い合わせ」に対して「データベース化」された「利用実績情報」によって「適当な利用実績情報」を提供するものであるため、この「利用についての問い合わせ」は、本願発明1の「チケット利用会社からの発注履歴の照会要求」に相当するものである。
このことから、引用発明は、チケット利用会社からの発注履歴の照会要求によって取得される履歴データが「全ての発注の一覧」であるとはされていないものの、「チケット利用会社からの発注履歴の照会要求」に応じて「発注」の「履歴データ」を「取得し」、これを「チケット利用会社に送信する」ものであるということができ、この点において、本願発明1の「照会処理部」に対応する機能手段を備えたものであるといえる。

オ してみると、本願発明1と引用発明との一致点は、次のとおりである。

<一致点>
タクシーチケットを発行するチケット発行会社が有し、複数の通信端末を有するチケット利用会社からのタクシーチケットの発注を処理する発注処理装置であって、
前記チケット利用会社の通信端末からタクシーチケットの発注を受け付ける発注受付部と、
前記発注受付部が受け付けた発注の履歴を記録する発注履歴データベースと、
前記チケット利用会社からの発注履歴の照会要求に応じて、前記発注履歴データベースを参照して、前記チケット利用会社の前記複数の通信端末からの発注の履歴データを取得し、当該履歴データを前記チケット利用会社に送信する照会処理部と、
を備えた発注処理装置

カ そして、両者の相違点は、次のとおりである。

<相違点>
本願発明1では、発注履歴の照会要求に応じて「発注履歴データベースを参照」し、発注の履歴データとして「全ての発注の一覧」を取得するのに対し、引用発明では、「データベース化」された「利用実績情報」によって発注の履歴データとして「適当な利用実績情報」を取得しており、「全ての発注の一覧」であるとされていない点

(2) 判断
引用文献1において、「利用実績情報」が「発券履歴DB」の「発券履歴情報」と同様に「チケットID」を含み(引用文献1の段落【0022】【0026】)、この「チケットID」によって「発券履歴情報」と照らし合わせられる(引用文献1の段落【0028】)ものである旨が記載されており、これらの記載からみて、「利用実績情報」が「発券履歴情報」と同様に「チケットID」をキーとして格納することが可能な情報であって、「利用実績情報」の「データベース化」にあたって「発券履歴DB」に「利用実績情報」を格納することによってデータベース化する、つまり発券履歴DBとしてデータベース化することは、適宜なし得ることであるといえる。
しかしながら、引用文献1における照会は、「企業側の利便性を向上することが可能となる」ように「適当な利用実績情報」を提供(引用文献1の段落【0040】)するためのものであって、あくまで「利用に対する問い合わせ」であるから、利用されていない分を含めた「全ての発注の一覧」を取得するようにこれを変更することが動機付けられることはない。この点、本願における発注履歴の照会要求は、「発注責任者」において「タクシーチケットが漏れなく発注されているか否か」の確認のためにも行われるものであるところ(本願明細書【0076】)、引用文献1における照会は、このような確認のために用いることが想定されておらず、このような確認のために用いることができるように照会の内容を変更することが動機付けられることもない。
してみると、上記の相違点について容易想到であるとすることはできないから、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであえるとはいえない。

2 本願発明2-本願発明5について
本願発明2-本願発明5も、本願発明1と同様に上記相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明6について
本願発明6は、本願発明1に対応する方法発明であり、上記相違点に係る構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
本願発明1-本願発明5は、「タクシーチケットを発行するチケット発行会社が有し、複数の通信端末を有するチケット利用会社からのタクシーチケットの発注を処理する発注処理装置」であり、本願発明6は、「タクシーチケットを発行するチケット発行会社が有する発注処理装置によって、複数の通信端末を有するチケット利用会社からのタクシーチケットの発注を処理する発注処理方法」であるところ、原査定が引用する引用文献A及び引用文献Bは、いずれも、「タクシーチケットを発行するチケット発行会社が有するものである「発注処理装置」における「複数の通信端末を有するチケット利用会社からのタクシーチケットの発注」の「処理」に係る技術的事項を記載するものといえない。
本願発明1-本願発明6は、「チケット利用会社のタクシーチケットの発注状況を管理するための事務作業の負担」の「軽減」のため(本願明細書段落【0007】【0008】)に、チケット利用会社からチケット発行会社へのタクシーチケットの発注履歴の照会要求を可能とするものであり、本願発明1-本願発明6の課題は、タクシーチケット以外のチケットにおける課題とは異質のものであるところ、引用文献Aは、旅行代理店等が発券する交通機関やホテル等のチケットについての予約や購入についてのものであってタクシーチケットを取り扱うものでなく、本願発明1-本願発明6の課題の前提を欠くものである。このことを踏まえれば、引用文献Bに「チケット」に「タクシーチケット」が含まれる旨の記載があっても、引用文献Aを主引用発明として本願発明1-本願発明6の進歩性を否定することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-15 
出願番号 特願2017-71957(P2017-71957)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田川 泰宏  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 相崎 裕恒
石川 正二
発明の名称 発注処理装置および発注処理方法  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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