ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K |
---|---|
管理番号 | 1355770 |
審判番号 | 不服2018-9796 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-18 |
確定日 | 2019-11-05 |
事件の表示 | 特願2014-175253「直動装置および電子部品実装装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 51760、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年8月29日の出願であって、平成29年11月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年1月25日付けで手続補正がされ、平成30年5月1日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年7月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和1年6月28日付けで拒絶理由通知がされ、令和1年8月8日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願請求項1ないし2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明2」という。)は、令和1年8月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし2は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 水平な一方向に細長いビームと、前記ビームに前記一方向に延伸して設けられたガイド部材と、前記ガイド部材に沿って移動自在に設けられた移動部材と、前記移動部材を移動させる移動手段を有する直動機構を備え、 前記ビームは、前記一方向に貫通する複数の開口部が形成された金属製の筒状体と、炭素繊維強化樹脂シートが前記複数の開口部の内面に密着した複数の炭素繊維強化樹脂製の筒状補強部を備え、 前記筒状体は前記一方向に延伸して形成された厚肉部と薄肉部を有し、 前記厚肉部には少なくともネジ部材によって前記ガイド部材を前記筒状体に固定するためのネジ穴が形成されていることを特徴とする直動装置。 【請求項2】 水平な一方向に細長いビームと、前記ビームに前記一方向に延伸して設けられたガイド部材と、前記ガイド部材に沿って移動自在に設けられた移動部材と、前記移動部材を移動させる移動手段を有する第1の直動機構と、前記第1の直動機構を前記一方向に直交する水平な方向に移動させる第2の直動機構によって構成されたXY移動機構と、前記移動部材に装着された実装ヘッドを備え、 電子部品を保持した前記実装ヘッドを前記XY移動機構によって基板に位置決めし、位置決めされた前記実装ヘッドによって前記電子部品を前記基板に搭載する電子部品実装装置であって、 前記ビームは、前記一方向に貫通する複数の開口部が形成された金属製の筒状体と、炭素繊維強化樹脂シートが前記複数の開口部の内面に密着した複数の炭素繊維強化樹脂製の筒状補強部を備え、 前記筒状体は前記一方向に延伸して形成された厚肉部と薄肉部を有し、 前記厚肉部には少なくともネジ部材によって前記ガイド部材を前記筒状体に固定するためのネジ穴が形成されていることを特徴とする電子部品実装装置。」 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(韓国登録特許第10-1109766号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「 (当審仮訳: 上記した通りの構成を有する本発明による移送装置及びこれを具備される移送ユニットビームは次のような効果を有する。 第一、本発明による移送ユニットビーム及びこれを具備する移送装置は、高強性低下の構造をとるが、複数個の移送ユニットビームインサイドブロックによる組合せ構造ができるようにして製造上の容易性を増大させて、多様な形状の移送ユニットビーム生成を可能として製造汎用性を向上させて、組合せ構造による移送ユニットビームの内部支持構造を形成することでストレス分散による特定部位への応力集中を防止して疲労による曲げ変形可能性を防止ないし最小化させることができる移送ユニットビーム及びこれを具備する移送装置を提供することができる。 第二、本発明による移送ユニットビーム及びこれを具備する移送装置は、八角断面形状ないし四角断面形状構造の移送ユニットビームインサイド部構造による剛性増大ないしデバイス凸部装着面積増大のような設計要求仕様によって多様な構成をとることもできる。 第三、本発明による移送ユニットビーム及びこれを具備する移送装置は、移送ユニットビームインサイド部の外側面に配置される移送ユニットビームアウトサイド部をさらに具備することで、移送ユニットビームの剛性をさらに強化させることもできる。)」(段落[0013]-[0016]) ・「 (当審仮訳: 図1には本発明の一実施例による移送ユニットビーム(310)を具備する移送装置(10)の概略的な斜視図が示されて、図2及び図3には本発明の一実施例による移送ユニットビーム(310)の装着状態を示す概略的な部分断面図が示されて、図4には本発明の一実施例による移送ユニットビーム(310)の概略的な部分斜視断面図が示されて、図5には本発明による移送ユニットビーム(310)の概略的な部分断面図が図示される。 本発明の一実施例による移送ユニットビーム(310)は移送装置(10)に配置されるが、移送装置(10)はベース部(100)、移送ガイド部(200)と、移送ユニット部(300)を具備して、移送ユニットビーム(310)は移送ユニット(300)に含まれる。 移送ガイド部(200)はベース部(100)に配置されて移送ユニット部(300)を移送可能にさせる構造をとる。)」(段落[0020]-[0021]) ・「 (当審仮訳: 移送ユニット部(300)は移送ガイド部(200)の上部に配置される。移送ユニット部(300)は移送ユニットビーム(310)と移送ユニット可動部(350)と移送ユニット駆動部(360)を含むが、移送ユニット可動部(350)は移送ユニット駆動部(360)によって生成される駆動力によって移送ユニットビーム(310)の長さ方向に沿って稼動されることができる。移送ユニットビーム(310)は移送ガイド可動ブロック(221)上に配置されるが、移送ガイド可動ブロック(221)にはユニットビーム安着部(222)が具備される。ユニットビーム安着部(222)の外周面は移送ユニットビーム(310)の下段部の形状に対応するように構成されるが、移送ユニットビーム(310)はユニットビーム安着部(222)に安着及び位置固定されて移送ガイド可動ブロック(221)と一緒にベース(110)、より具体的には移送ガイド固定部(210)上からX軸方向に稼動されることができる。移送ユニットビーム(310)はお互いにY軸方向に離隔されて配置される移送ガイド可動ブロック(211)上に装着されることで、移送ユニットビーム(310)の長さ方向はY軸を向く。 移送ユニット可動部(350)は移送ユニットビーム(310)に配置されて移送ユニットビーム(310)の長さ方向に沿って稼動されることができる。移送ユニット可動部(350)は移送ユニット可動ブロック(351)が具備されるが、移送ユニット可動ブロック(351)で移送ユニットビーム(310)に向いた面には移送ユニットビームリニアモーションブロック(353)が配置される。移送ユニットビーム(310)には移送ユニットビーム(310)の長さ方向に沿って移送ユニットビームリニアレール(319)が配置されるが、移送ユニットビームリニアレール(319)は移送ユニットビームリニアモーションブロック(353)とお互いに相対運動可能にかみ合わされる構造をとる。本実施例で移送ユニットビームリニアレール/移送ユニットビームリニアモーションブロックはそれぞれ二つの面にそれぞれ二個ずつ計4個がお互いに対応されるように配置される構造をとるが、これは本発明の一実施例であって、本発明をこれのみに限ることではない。 移送ユニットビーム(310)と移送ユニット可動部(350)の間の相対運動ができるようにする駆動力は移送ユニット駆動部(360)によって生成及び提供される。移送ユニット駆動部(360)は移送ユニット駆動ヨーク(361)と移送ユニット駆動コイル部(365,367)を具備するが、移送ユニット駆動ヨーク(361)は一つ以上の移送ユニット駆動ヨークウイング(362)を具備して移送ユニット駆動ヨークウイング(362)には移送ユニット駆動マグネット(363)が配置される。移送ユニット駆動ヨークウイング(362)は複数個が具備されてお互いに離隔されて配置される構造をとる。移送ユニット駆動ヨークウイング(362)の間の空間には移送ユニット駆動コイル部(365,367)が可動可能に配置されるが、移送ユニット駆動コイル部(365,367)は移送ユニット駆動コイル支持台(365)と移送ユニット駆動コイル(367)を含む。移送ユニット駆動コイル(367)は移送ユニット駆動コイル部(365)に配置されるが、制御部(不図示)の制御信号によって印加される電気的信号の変化による移送ユニット駆動コイル(367)と移送ユニット駆動マグネット(363)の相互作用によって駆動力が発生して、これによって移送ユニットビームリニアモーションブロックと移送ユニットビームリニアレールのかみ合い案内移動によって、移送ユニット可動ブロック(351)は移送ユニットビーム(310)の長さ方向に沿って移動運動することができる。 移送ユニット可動ブロック(351)の片側には延長部が形成されて移送ユニット可動ブロック(351)の延長部の内側面と移送ユニットビーム(310)の対応する側面には移送ユニット可動部(350)の移動を感知するためのユニット位置感知部(370)が具備される。ユニット位置感知部(370)は移送ユニット可動ブロック(351)の延長部内側面に配置されるユニット位置感知センサー(371)と、ユニット位置感知センサー(371)に対応する位置に移送ユニットビーム(310)に配置されるユニット位置感知スケール(373)が配置されるが、移送ユニット可動ブロック(351)が稼動される場合、ユニット位置感知センサー(371)はユニット位置感知スケール(373)との相互作用によって発生する電気的信号の変化を制御部(不図示)に伝達して、制御部は変化した電気的信号から移送ユニット可動ブロック(351)の移送ユニットビームの長さ方向に沿った位置、速度及び加速度などを感知及び/または演算導出することができる。 移送ユニット可動ブロック(351)にはデバイス凸部(400,500)が配置される。デバイス凸部(400,500)は移送ユニット可動ブロック(351)に付着するデバイスブロックボディー(400)と、デバイスブロックボディー(400)に装着されるデバイスブロック(500)を含むが、デバイスブロックボディー(400)は移送ユニット可動ブロック(351)に安定的に装着されて移送ユニット可動ブロック(351)と一緒に移送ユニットビーム(310)の長さ方向に沿って移動可能である。デバイスブロック(500)はTFT LCDパネル、OLED及び/またはPDPパネルなどのようなディスプレイパネルの対象体に対する光学レンズ及びCCDカメラなどのような検査装備に具現されうる。デバイス凸部(400,500)は移送ユニット可動ブロック(351)上に固定されて制御部からの制御信号による移送ガイド可動部及び移送ユニット可動部の可動によって選択される位置で制御部(不図示)からの他の制御信号によって、検査作業のような所定の事前に設定された作業を実行することができる。 本発明による移送ユニット部(300)の移送ユニットビーム(310)は移送ユニットビームの移動方向に直交した平面、すなわちY-Z平面上での移送ユニットビーム(310)の長さ方向(Y軸)での剛性を増大させるが、移送ユニットビーム(310)の重量を最小化させて移送ユニットビーム(310)の負荷最小化状態での迅速な移動ができるように、急激な移送による移送ユニットビーム(310)の曲げモーメントによる変形を最小化させることで移送ユニットビーム(310)の変形疲労を最小化させて、デバイスブロックなどによる作業時の誤差生起率を最小化させることができる。図4には本発明の一実施例による移送ユニットビーム(310)の概略的な部分斜視図が示されて、図5には図4の線I-Iに沿ってみた概略的な断面図が示されて、図6には図4の移送ユニットビーム(310)の組み立て状態に対する概略的な部分分解斜視図が示される。 移送ユニットビーム(310)は移送ユニットビームインサイド部(311)を含み、移送ユニットビームインサイド部(311)は複数個の移送ユニットビームインサイドブロック(311a、311b)を具備し、移送ユニットビームインサイドブロック(311a、311b)は長さ方向が移送ユニットビームの長さ方向と等しい方向、すなわちY軸(図1参照)に平行な方向を有する。 本実施例による移送ユニットビームインサイド部(311)の移送ユニットビームインサイドブロック(311a、311b)は、第1インサイドブロック(311a)と第2インサイドブロック(311b)を含む。第1インサイドブロック(311a)と第2インサイドブロック(311b)は、それぞれ第1インサイドブロックボディー(313a)及び第2インサイドブロックボディー(313b)を具備する。第1インサイドブロックボディー(313a)と第2インサイドブロックボディー(313b)の内部にはそれぞれ第1インサイドブロック中空(315a)及び第2インサイドブロック中空(315b)が形成される。第1インサイドブロック(311a)は移送ユニットビーム(310)の長さ方向に直交した断面、すなわちX-Z平面上での断面形状は六角形構造をとって、第2インサイドブロック(311b)は第1インサイドブロック(311a)の外面と接して、第2インサイドブロック(311b)の移送ユニットビーム(310)長さ方向に直交した断面は三角形構造をとる。よって、図4及び図5に示されたように、X-Z平面上で六角形断面形状を有する第1インサイドブロック(311a)は二つがお互いに触れ合うように配置されて、これらによって形成される上端及び下端の空間に第2インサイドブロック(311b)が配置されることで、図4及び図5に示されたように、八角形断面構造の移送ユニットビーム(310)を構成することができる。第1インサイドブロック(311a)の外面である第1インサイドブロック外側面(317a)と、第2インサイドブロック(311b)の外面である第2インサイドブロック外側面(317b)は、お互いに触れ合って接触状態をなすが、これら外側面(317a、317b)の間には接着剤などが配置されて結合力を強化する構造をとることもできる。このような移送ユニットビームインサイドブロックは炭素繊維強化プラスチック(CFRP、Carbon Fiber Reinforced Plastic)に具現されるが、移送ユニットビームインサイドブロック(311)はフィラメントワインディング、オープンモールド成形、SMC成形、BMC成形などのような多様な複合材料製造方法によって形成されうる。 一方、複数個の六角形構造の第1インサイドブロック(311a)と三角形構造の第2インサイドブロック(311b)がお互いに組合されて外周形状が八角形断面構造をとるように配列されることで、デバイス凸部(400,500)の安定的な配置位置を確保するが、六角形断面と三角形断面の第1及び第2インサイドブロックの配置組合せによってX-Z平面上での曲げ剛性を向上させて、急激な移送によって発生するX軸方向の曲げモーメント発生の時に、お互いに触れ合う複数個の第1及び第2インサイドブロック(311a、311b)のそれぞれのインサイドブロックボディー(313a、313b)についてストレスを分散させることで、X軸方向での曲げ発生を防止あるいは最小化させることができる。また、二つの六角形断面構造の第1インサイドブロック(311a)のお互いに触れ合う領域と、上部及び下部に配置される第2インサイドブロック(311b)によってY-Z平面上でのY軸方向の曲げ剛性が増大することで、Z軸の移送ユニットビーム(310)及びデバイス凸部(400,500)の自重によるたるみ発生を防止ないし最小化させることができる。 また、場合によって、図4及び図5に示されたように、移送ユニットビーム(310)は移送ユニットビームアウトサイド部(320)をさらに具備する構造をとることもできる。複数個の移送ユニットビームインサイドブロックを具備する移送ユニットビームインサイドブロックそれぞれの移送ユニットビームインサイドブロックの組み立て結合のために多様な方法が展開されうるが、移送ユニットビームの剛性を増大させるために複数個のブロックタイプで構成される移送ユニットビームの外周に別個の構成要素がさらに具備される構成をとることもできる。すなわち、移送ユニットビームアウトサイド部(320)は、お互いに接触して配列される第1インサイドブロック(311a)と第2インサイドブロック(311b)によって形成される移送ユニットビームインサイド部(311)の外周を覆うように移送ユニットビームインサイド部(311)の外周に配置される。移送ユニットビームアウトサイド部(320)の内部には移送ユニットビームインサイド部(311)が配置されるが、移送ユニットビームインサイド部(311)の外側面は移送ユニットビームアウトサイド部の内側面(321)と接するように配置される。このような移送ユニットビームアウトサイド部(320)は複数個の移送ユニットビームインサイド部(311)が組み立てされた後、フィラメントワインディングのような方法を通じて複数個のブロックを形成される移送ユニットビームインサイド部(311)の外周を覆うように、ケブラーのような炭素繊維がワインディングされて形成される構造をとることもできる。このように移送ユニットビームインサイド部の外周を覆う方式で移送ユニットビームアウトサイド部が付加配置されることで、デバイス凸部及び/または移送ユニットビーム自らの荷重あるいは移送の時に発生するモーメントによるストレスを効率的に分散させることで、移送ユニットビームの変形を防止あるいは最小化させ、デバイス凸部によってベース(110)上に配置される平板ディスプレイパネルのような対象体に対する所定の作業時に発生しうる誤差生起率を最小化させることができる。 一方、移送ユニットビームアウトサイド部と移送ユニットビームインサイド部の間の構成は、このようなフィラメントワインディング方式に限定されることではない。すなわち、ブロック単位に形成された移送ユニットビームアウトサイド部に複数個の移送ユニットビームインサイドブロックが挿入装着される構造をとることもできるなど、移送ユニットビームインサイドブロックが内部に配置される範囲で、移送ユニットビームアウトサイド部は多様な変形構造を有することができる。)」(段落[0030]-[0040]) ・図1の記載内容から、移送ユニットビーム(310)は、長さ方向である水平な一方向に細長いといえる。 したがって、上記引用文献1には、特に、図4ないし6に係る一実施例に注目すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「長さ方向である水平な一方向に細長い移送ユニットビームと、前記移送ユニットビームに前記長さ方向に沿って配置された移送ユニットビームリニアレールと、前記移送ユニットビームリニアレールに案内され移動運動できる移送ユニット可動部と、前記移送ユニット可動部を移動させる移送ユニット駆動部を含む、移送ユニット可動部が移送ユニットビームの長さ方向に沿って稼動される移送ユニット部を含み、 前記移送ユニットビームは、インサイドブロック中空が形成され炭素繊維強化プラスチックで形成された複数個の移送ユニットビームインサイドブロックを具備する移送ユニットビームインサイド部を含み、移送ユニットビームの剛性を増大させるためにケブラーのような炭素繊維がワインディングされて形成される構造で移送ユニットビームインサイド部の外周を覆う移送ユニットビームアウトサイド部が付加配置される、移送装置。」 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2012-129317号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0032】 図1は、本実施の形態にかかる部品実装装置を模式的に示す斜示図である。 【0033】 同図に示すように、部品実装装置100は、部品供給部(図示せず)から部品300を基板200の上方にまで搬送し、搬送した部品300を基板200に取り付ける装置であり、ヘッド101と、レール102と、Xビーム103と、Yビーム104と、補強部材105とを備えている。 【0034】 ヘッド101は、部品300を着脱自在に保持する保持手段111(図2など参照)を有する装置であり、X軸方向に往復動自在にレール102に取り付けられている。」 ・「【0043】 また、レール102は、Xビーム103に対し締結具122によりX軸方向に並ぶ3箇所以上でXビーム103のY軸方向の一端部に締結されている。具体的には、締結具122は六角穴付きボルトであり、Xビームに設けられたねじ穴に締結具122を螺着することでレール102がXビーム103に取り付けられる。本実施の形態の場合、締結具122は、60mmのピッチでX軸方向に並べて等間隔に配置されている。」 ・「【0047】 Xビーム103は、レール102及び固定側駆動部108がY軸方向のヘッド101側の一端部に取り付けられ、X軸方向に延びて配置される棒形状の部材である。本実施の形態の場合、Xビーム103のYZ断面の形状(図2参照)は、Y軸方向の他端部に至るまで徐々にZ軸方向の間隔がY軸対称で狭くなる形状を有している。 【0048】 また、Xビーム103は、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金の引き抜き材で構成されている。また、Xビーム103は中空形状となっており、構造的な強度を確保するため多数のリブが設けられている。」 ・「【0050】 補強部材105は、ヘッド101の重みによって発生するXビーム103の撓みに抗するとともに、Xビーム103のX軸方向の熱膨張とレール102のX軸方向の熱膨張との差によって発生するXビーム103のY軸方向の反りに抗して、Xビーム103を真っ直ぐに維持する部材である。 【0051】 ここで、補強部材105の材料については、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics、またはCFK:炭素繊維強化プラスチック)またはアラミド繊維強化樹脂(AFRP)が採用されている。炭素繊維強化樹脂及びアラミド繊維強化樹脂は、軽量で強度的にも優れており、線膨張係数が小さい材料である。 【0052】 また、補強部材105は、第一補強部105a、第二補強部105b及び第三補強部105cを有している。ここで、第一補強部105aと第二補強部105bと第三補強部105cとは、一体に形成されている。なお、補強部材105は、Xビーム103と同じ長さであり、接着剤などでXビーム103に接合されているが、六角ボルトなどの締結具によりXビーム103に締結されていてもよい。 【0053】 第一補強部105aは、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなり、Xビーム103のY軸方向の他端部に取り付けられている部位である。第二補強部105bは、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなり、第一補強部105aの上方に、Xビーム103に取り付けられて配置されている部位である。第三補強部105cは、炭素繊維強化樹脂またはアラミド繊維強化樹脂からなり、第一補強部105aの下方に、Xビーム103に取り付けられて配置されている部位である。 【0054】 ここで、補強部材105は、2本のレール102と等距離となるようにXビーム103に取り付けられている。つまり、第一補強部105aは、2本のレール102と等距離となるようにXビーム103に取り付けられている。また、第二補強部105bと上側のレール102との距離と、第三補強部105cと下側のレール102との距離とが、等距離となるように、第二補強部105b及び第三補強部105cがXビーム103に取り付けられている。」 ・「【0079】 図6A及び図6Bは、本実施の形態の第3の変形例にかかるXビーム及び補強部材の断面を側方から示す平面図である。 【0080】 図6AのXビーム103aに示すように、XビームのYZ断面の形状は、三角形状ではなく、矩形形状であることにしてもよい。この場合、補強部材134は、一体に形成された第一補強部134aと第二補強部134bと第三補強部134cとを有している。 【0081】 また、図6Bに示すように、補強部材135は、第一補強部135a、第二補強部135b及び第三補強部135cの3つの板状部材に分割して構成されていてもよい。 【0082】 以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る部品実装装置100について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。 【0083】 例えば、本実施の形態及びその変形例では、補強部材は、第一補強部、第二補強部及び第三補強部を有していることとしたが、補強部材は、第一補強部のみを有していることにしてもよい。Xビームに取り付ける補強部材が第一補強部のみであっても、Xビームの撓みを抑制することができ、また軽量化を図ることができる。 【0084】 また、本実施の形態及びその変形例では、補強部材のX軸方向の中央位置には、空間が形成されていることとしたが、補強部材には空間は形成されていなくともよい。これによりXビームの撓みを抑制することができ、また、補強部材の肉厚を低減することで、軽量化も図ることができる。 【0085】 また、本実施の形態及びその変形例では、補強部材は、ヘッド101の重みによって発生するXビームの撓みに抗する部材であることとした。ここで、部品300が実装される基板200のサイズに対応してXビームが大きくなった場合、Xビームの重みが増大するため、当該Xビームの重みによってもXビームに撓みが生じる。このため、補強部材は、Xビームの重みによって発生するXビームの撓みに抗する部材でもあり、Xビームの重みによって発生するXビームの撓みを抑制することができる。 【0086】 また、本実施の形態及びその変形例では、Xビーム103は、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする材料で形成されていることとしたが、Xビーム103は、アルミニウムに限定されず、マグネシウムなど軽量な非鉄金属で形成されていればよい。」 ・図6A及び6Bの図示内容と段落【0043】の記載内容とを合わせると、X軸方向に並ぶ3箇所以上でXビーム103aに設けられたねじ穴にネジ部材といえる締結具122を螺着することでガイド部材といえるレール102がXビーム103aに取り付けられ、ねじ穴はXビーム103aの一方向に延伸して形成された肉厚部に設けられていることが理解できる。 ・図2、5Aないし6Bの図示内容と段落【0047】及び【0048】の記載内容とを合わせると、Xビーム103は、一方向に貫通する複数の開口部が形成された金属製の筒状体であることが理解できる。 したがって、上記引用文献2には、一方向に貫通する複数の開口部が形成された金属製の筒状体は前記一方向に延伸して形成された厚肉部と薄肉部を有し、前記厚肉部には少なくともネジ部材によってガイド部材を前記筒状体に固定するためのネジ穴が形成されており、筒状体にはガイド部材が一端部に取り付けられ、炭素繊維強化樹脂の補強部材が他端部に取り付けられる、部品実装装置のXビームに係る技術的事項が記載されていると認められる。 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 その機能・構造等からして、引用発明の「移送ユニットビーム」は本願発明1の「ビーム」に相当し、同様に、「長さ方向に沿って配置された」は「一方向に延伸して設けられた」に、「移送ユニットビームリニアレール」は「ガイド部材」に、「移送ユニットビームリニアレールに案内され移動運動できる」は「ガイド部材に沿って移動自在に設けられた」に、「移送ユニット可動部」は「移動部材」に、「移送ユニット駆動部」は「移動手段」に、「含む」は「有する」に、「移送ユニット可動部が移送ユニットビームの長さ方向に沿って稼動される移送ユニット部」は「直動機構」に、「含み」は「備え」に、「移送装置」は「直動装置」に、それぞれ相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「水平な一方向に細長いビームと、前記ビームに前記一方向に延伸して設けられたガイド部材と、前記ガイド部材に沿って移動自在に設けられた移動部材と、前記移動部材を移動させる移動手段を有する直動機構を備える、 直動装置。」 (相違点) 「ビーム」に関し、本願発明1は「一方向に貫通する複数の開口部が形成された金属製の筒状体と、炭素繊維強化樹脂シートが前記複数の開口部の内面に密着した複数の炭素繊維強化樹脂製の筒状補強部を備え、前記筒状体は前記一方向に延伸して形成された厚肉部と薄肉部を有し、前記厚肉部には少なくともネジ部材によって前記ガイド部材を前記筒状体に固定するためのネジ穴が形成されている」のに対し、引用発明では、「インサイドブロック中空が形成され炭素繊維強化プラスチックで形成された複数個の移送ユニットビームインサイドブロックを具備する移送ユニットビームインサイド部を含み、移送ユニットビームの剛性を増大させるためにケブラーのような炭素繊維がワインディングされて形成される構造で移送ユニットビームインサイド部の外周を覆う移送ユニットビームアウトサイド部が付加配置される」点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると、引用発明は、その「移送ユニットビーム」が上記相違点に係る構成を備えることにより、引用文献1の段落[0014]に記載された「複数個の移送ユニットビームインサイドブロックによる組合せ構造ができるようにして製造上の容易性を増大させて、多様な形状の移送ユニットビームを生成ができるようにして製造汎用性を向上させて、組合せ構造による移送ユニットビームの内部支持構造を形成することでストレス分散による特定部位への応力集中を防止して疲労による曲げ変形可能性を防止ないし最小化させることができる」といえるので、当該構成は引用発明の主要な構成といえるから、当該構成を上記相違点に係る本願発明1の構成とする動機づけがあるとはいえず、むしろ阻害するといえる。 また、直動装置において、金属製のビームを採用することは、文献を例示するまでも無く周知技術であるといえるとしても、さらに、先のとおり上記引用文献2には、一方向に貫通する複数の開口部が形成された金属製の筒状体は前記一方向に延伸して形成された厚肉部と薄肉部を有し、前記厚肉部には少なくともネジ部材によって前記ガイド部材を前記筒状体に固定するためのネジ穴が形成されており、筒状体にはガイド部材が一端部に取り付けられ、炭素繊維強化樹脂の補強部材が他端部に取り付けられる、部品実装装置のXビームに係る技術的事項が記載されているとしても、「炭素繊維強化樹脂シートが前記複数の開口部の内面に密着した複数の炭素繊維強化樹脂製の筒状補強部を備え」ることまでは記載されておらず、「筒状体にはガイド部材が一端部に取り付けられ、炭素繊維強化樹脂の補強部材が他端部に取り付けられる」ことが記載されているから、金属製の筒状体の開口部の内面に炭素繊維強化樹脂シートが密着した複数の炭素繊維強化樹脂製の筒状補強部を備えることを示唆するものではない。そうすると、引用発明に引用文献2に記載された上記技術的事項を適用しても、本願発明1の構成とすることはできない。 そして、本願明細書の段落【0003】に記載されているように、ビームの剛性強化と軽量化を実現する本願発明1は、上記相違点に係る構成により、本願明細書の段落【0009】に記載された「炭素繊維強化樹脂を用いつつネジ穴等を形成するための加工を容易に行うことができるビームを実現することができる」ものである。 したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2も、本願発明1の「ビームは、前記一方向に貫通する複数の開口部が形成された金属製の筒状体と、炭素繊維強化樹脂シートが前記複数の開口部の内面に密着した複数の炭素繊維強化樹脂製の筒状補強部を備え」「前記筒状体は前記一方向に延伸して形成された厚肉部と薄肉部を有し、前記厚肉部には少なくともネジ部材によって前記ガイド部材を前記筒状体に固定するためのネジ穴が形成されている」という上記相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1ないし2に係る発明について、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、上記のとおり、本願発明1ないし2は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 当審では、請求項1及び2の「炭素繊維強化樹脂シートが前記複数の開口部の内面に内圧成型方法により密着した状態で形成された複数の炭素繊維強化樹脂製の筒状補強部」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和1年8月8日付けの補正において、「炭素繊維強化樹脂シートが前記複数の開口部の内面に密着した複数の炭素繊維強化樹脂製の筒状補強部」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし2は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-10-23 |
出願番号 | 特願2014-175253(P2014-175253) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 川上 佳、小金井 匠 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
内田 博之 田村 嘉章 |
発明の名称 | 直動装置および電子部品実装装置 |
代理人 | 野村 幸一 |
代理人 | 鎌田 健司 |