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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B29C
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 B29C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B29C
管理番号 1355785
審判番号 不服2018-16054  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-03 
確定日 2019-10-29 
事件の表示 特願2013-137101「ブロー成形方法および複合プリフォーム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月19日出願公開、特開2015- 9487、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年 6月28日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 4月18日付け:拒絶理由通知書
平成29年 6月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年11月28日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成30年 3月29日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 8月29日付け:平成30年 3月29日付けの手続補正
についての補正の却下の決定、拒絶査定
平成30年12月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 1年 8月29日付け:当審による拒絶理由(最後の拒絶理由)
通知書
令和 1年 9月17日 :意見書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要

原査定の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-14に係る発明は、以下の引用文献1-8に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開昭64-30729号公報
2.実願平1-150622号(実開平3-88728号)の
マイクロフィルム
3.特開2009-210781号公報
4.特公昭56-16051号公報
5.特開平7-149332号公報
6.特開昭56-24132号公報
7.特公昭46-29980号公報
8.特開2003-170941号公報

2.本願は、請求項8-14の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)補正により、請求項8等の外側収縮部材について、「収縮性をもつ材料からなる」という発明特定事項が付加された。
材料は、通常、加熱するか又は冷却するか等によって、その程度は別として、少なくとも、収縮するといえ、「収縮性をもつ材料」の範囲が不明であり、その結果、発明の範囲が不明確である。
請求項9-14についても同じである。

(2)補正により、請求項8等に、外側収縮部材のプリフォームの外側への密着に関して、「プリフォームに対して移動又は回転しないように」という発明特定事項が付加された。
外側収縮部材が、プリフォームに対して移動又は回転するか否かは、複合プリフォームの周囲の状況及び条件(例えば、外力の程度等)にも依存して変化し、複合プリフォームがどのような状況、条件である場合において、プリフォームに対して移動又は回転しないようにプリフォームの外側に密着されているのかが、特定されておらず、その結果、請求項8に係る発明の範囲が不明確である。
請求項9-14についても同じである。


第3 当審拒絶理由

当審拒絶理由は次のとおりである。

平成30年12月3日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「複合容器を成形するためのブロー成形方法において、
ポリエチレンテレフタレート製の射出成形品であるプリフォームを準備する工程と、
プリフォームとは別部材から構成され、少なくとも長手方向の一端が開口した筒状の熱収縮性材料であってポリエチレンテレフタレートよりもガスバリア性の低い熱可塑性樹脂からなるからなる外側収縮部材を準備する工程と、
プリフォームが筒状の内側ラベル部材および前記筒状の外側収縮部材の内部に嵌め込まれるように、プリフォームの外側に前記筒状の内側ラベル部材を設けるとともに、内側ラベル部材の外側に、外側収縮部材を装着する工程と、
プリフォーム、内側ラベル部材および外側収縮部材を第1の加熱装置によって加熱することにより、外側収縮部材を熱収縮させ、プリフォームと、プリフォームの外側に密着された内側ラベル部材と、内側ラベル部材の外側に密着して設けられた外側収縮部材とを有する複合プリフォームを作製する工程と、
複合プリフォームを第2の加熱装置によって加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
ブロー成形金型内で複合プリフォームに対してブロー成形を施すことにより、複合プリフォームのプリフォーム、内側ラベル部材および外側収縮部材を一体として膨張させる工程とを備えたことを特徴とするブロー成形方法。」

ここで、「熱収縮性材料であってポリエチレンテレフタレートよりもガスバリア性の低い熱可塑性樹脂からなるからなる」との補正事項について検討するに、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等)という。)には、実施例において、外側収縮部材についてはポリオレフィンを用いたとするにとどまるものであり、また、段落【0066】?【0070】には、外側収縮部材の機能に応じた材質が記載されているものの、ガスバリア性に関しては段落【0068】に、
「【0068】
また外側収縮部材40は、酸素バリア性又は水蒸気バリア性等のガスバリア性を有する材料からなっていても良い。この場合、プリフォーム10aとして多層プリフォームやブレンド材料を含むプリフォーム等を用いることなく、複合容器10Aのガスバリア性を高め、酸素や水蒸気によって内容液が劣化することを防止することができる。例えば、容器本体10のうち、肩部12、首部13、胴部20および底部30の全域に外側収縮部材40を設け、この部分のガスバリア性を高めても良い。このような材料としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、MXD-6(ナイロン)、またはこれらの材料に脂肪酸塩などの酸素吸収材を混ぜることも考えられる。」
と、好適な材料を列記するにとどまる。そして、当初明細書等の他の記載を見ても、外側収縮部材として「熱収縮性材料であってポリエチレンテレフタレートよりもガスバリア性の低い熱可塑性樹脂からなる」ものを用いることについて記載されておらず、また、出願時の技術常識を加味しても、自明であったということができない。
してみると、上記補正により追加された「熱収縮性材料であってポリエチレンテレフタレートよりもガスバリア性の低い熱可塑性樹脂からなるからなる」との事項は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

同じことが、請求項1の従属項である、請求項2?7においてもいえる。
また、請求項8及びその従属項である請求項9?14も同じ補正事項を含むものであるから、請求項1で検討したことと同じことがいえる。


第4 本願発明

本願請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、令和1年9月17日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、請求項1、8に係る発明については以下のとおりである。

「【請求項1】
複合容器を成形するためのブロー成形方法において、
ポリエチレンテレフタレート製の射出成形品であるプリフォームを準備する工程と、
プリフォームとは別部材から構成され、少なくとも長手方向の一端が開口した筒状の熱収縮性材料からなる外側収縮部材を準備する工程と、
プリフォームが筒状の内側ラベル部材および前記筒状の外側収縮部材の内部に嵌め込まれるように、プリフォームの外側に前記筒状の内側ラベル部材を設けるとともに、内側ラベル部材の外側に、外側収縮部材を装着する工程と、
プリフォーム、内側ラベル部材および外側収縮部材を第1の加熱装置によって加熱することにより、外側収縮部材を熱収縮させ、プリフォームと、プリフォームの外側に密着された内側ラベル部材と、内側ラベル部材の外側に密着して設けられた外側収縮部材とを有する複合プリフォームを作製する工程と、
複合プリフォームを第2の加熱装置によって加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
ブロー成形金型内で複合プリフォームに対してブロー成形を施すことにより、複合プリフォームのプリフォーム、内側ラベル部材および外側収縮部材を一体として膨張させる工程とを備えたことを特徴とするブロー成形方法。」

なお、本願発明2ないし7は、何れも本願発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本願発明1の発明特定事項を全て有するものである。

「【請求項8】
複合プリフォームにおいて、
ポリエチレンテレフタレート製の射出成形品であるプリフォームと、
プリフォームの外側に密着して設けられた内側ラベル部材と、
内側ラベル部材の外側に密着して設けられた、熱収縮性をもつ材料からなる外側収縮部材とを備え、
外側収縮部材は、少なくとも長手方向の一端が開口した筒状の部分を有し、
外側収縮部材は、プリフォームの外面および内側ラベル部材の外面に接着されることなく取付けられており、プリフォームに対して熱収縮された状態でプリフォームの外側に密着されていることを特徴とする複合プリフォーム。」

なお、本願発明9ないし14は、何れも本願発明8を直接又は間接的に引用するものであり、本願発明8の発明特定事項を全て有するものである。


第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は合議体が付したものである)。)

「筒状パリソンの外側に該筒状パリソンと同心状に筒状熱収縮性フィルムを配設し、
該フィルムを加熱して上記筒状パリソンの外周面に密着させ、
しかる後その筒状パリソンをブロー成形することを特徴とするプラスチック中空成形品の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)

「(発明が解決しようとする問題点)
しかしながら、上記の方法でパリソン3の外側に多孔性のフィルムを配置してブロー成形すると、パリソンとフィルムとの間に部分的に空気溜りが生じたりフィルムにしわが出来たりするという問題発生する。
なぜならば、パリソンは空気で膨張しながらフィルムに接触して成形型内面に押し付けられ、その場合成形型の内面は当然平面状ではなく凹面状になっておりさらには種々の複雑な形状となっているのでパリソンとフィルムとの接着は必ずしも全面同時に行なわれず場所的に接着される時間が前後し、その結果空気の逃げ場がなくなってしまったりあるいはフィルムが局部的に引っ張られたり弛んだりして該フィルムのしわが出来るからである。
なお、上記空気溜りの問題はフィルムの開口の数や面積を大きくすれば解決できるが、たとえば対象製品が上記燃料タンクの場合それらをあまり大きくするとフィルムによるガソリン透過防止効果が減少するので好ましくない等種々の事情によりその様な解決策を採用し得ない場合も多い。
本発明の目的は、上記事情に鑑み、外周面にフィルムを有するプラスチック成形品をブロー成形により製造する方法および装置であって、上記フィルムの内側における空気溜りやフィルムのしわ発生を防止することのできる製造方法および装置を提供することにある。
(問題点を解決するための手段)
本発明に係るプラスチック中空成形品の製造方法は、筒状パリソンの外側に該パリソンと同心状に熱収縮性のフィルムを配設し、ブロー成形する前に上記フィルムを加熱して予め該フィルムをパリソンの外周面に密着させておき、しかる後ブロー成形することを特徴とする。」(第2頁右上欄第15行-同頁右下欄第9行)

「上記パリソン12の原料としては高密度ポリエチレン等の各種熱可塑性プラスチックを使用することができる。」(第3頁左下欄第19行-同頁右下欄第1行)

「次に、上記製造装置の実施例について第2図?第11図を参照しながらさらに詳しく説明する。
第2図は正面図、第3図は右側面図であって、これらに図示する様に、それぞれ型キャビティを形成すべき凹面22a を有する2つの分割された成形型22をその合わせ面22b を対向させかつバリヤフィルム加熱手段18が間に位置し得るだけの間隔を置いて配設され、この両成形型22間の上方には筒状パリソンを押し出す押し出し機10が配設されると共に該押し出し機10によって押し出されるパリソンと同心状に筒状バリヤフィルムを配置保持するバリヤフィルム保持手段16が配設されている。
バリヤフィルム保持手段16は押し出し機10から押し出されるパリソンと同心状に配設された円環状の保持部16a と該保持部16a を支持するラック状支持部16b と該支持部に噛合させたピニオン16c とから成り、該ピニオン16c によって保持部16a を上下動可能に構成されている。
成形型22の後方には台車24が位置し、該台車24上にはバリヤフィルム加熱手段18とバリヤフィルム供給手段26とが載置されている。台車24はモータ(図示せず)等によって回転される駆動スプロケット28a と従動スプロケット28b とに架け渡されたチェーン28c の一部に固定片24a を介して固定され、このチェーン28c の動きによって前後動可能に構成されている。
上記バリヤフィルム加熱手段18はバリヤフィルムの全面を取り囲んで均一に加熱すべく筒状に形成され、かつその内径はバリヤフィルム保持手段の保持部16a がその中を上下動可能であるように該保持部16a の外径よりも大きく設定されている。
上記フィルム供給手段26はラッパ状の内部空洞フィルムガイド26a を有し、該フィルムガイド26a に図示の如く筒状のバリヤフィルムをかぶせかつ該フィルムをたくし上げた状態で貯留して成る。また、このフィルムガイド26a はその平面図である第7図に示す様にその先端部26b は上方に向けて開口した円環状になっており、バリヤフィルム14の先端部14a もこのフィルムガイド先端部26b に沿って上方に向けて円環状に開口すると共にフィルムガイド先端部26b により多少上方に突出している。さらに、このフィルム供給手段26は上記フィルムガイド26a の上方に向けて開口した円環状先端部26b の中心がフィルム加熱手段の加熱部18a の中心と一致するように配設されている。
また、成形型22の下方には押し出し機10によって押し出されるパリソンの中心軸上に位置せしめられ上下動可能なブローピン30が配設されている。
本装置においては、まず第2,3図に示す状態から台車24をチェーン28c によって前進(図中左方向)させ、第4図に示す様に筒状のバリヤフィルム加熱手段18を両成形型22の間であって押し出し機10から押し出されるパリソンと同心状となる位置に位置させる。するとバリヤフィルム保持部16a もバリヤフィルムガイド26a の環状先端部ひいては該ガイド26によってガイドされている筒状バリヤフィルム14の先端部と同心状になっている。
この状態から第4図に示す如くバリヤフィルム保持部16a を下降させ、該保持部16a にフィルムガイド26a によってガイドされているバリヤフィルム14の先端部を保持させる。保持部16a は平面図である第8図および側面図である第9図に示す様に、リング部16f とリング部16f の外側に配設された挾持片16g とリング部16f に突設したブラケット16h 上に設けられ挾持片16g をリング部16f に対して前後動せしめるエアシリンダ161 とから成り、リング部16f を下降させてフィルムガイドの先端部26b の開口内に嵌合させ、その状態でリング部16f と4個の挾持片16g との間に位置するバリヤフィルムの先端部14a をシリンダ16i を作動させて挾持片16g とリング部16f とで挾持する。
この様にしてバリヤフィルム14を挾持したら該バリヤフィルム保持部16a を上昇させると共に押し出し機10からパリソンを押し出して第5図に示すように筒状パリソン12の外側に同心状に筒状バリヤフィルム14を位置せしめ、しかる後加熱手段18を作動させてバリヤフィルム14を加熱し収縮させ、該フィルム14をパリソン12の外周面上に接着させる。
バリヤフィルム14の収縮接着が終了したら第6図に示す様に台車24を後退(図中右方向)させてバリヤフィルム加熱手段18を加熱位置から退避させ、ブローピン30を上昇させ、両分割成形型22を型合せしてパリソン12の上下をシールし、そのシールされたパリソン12内にブローピン30から空気を吹き込み、成形型内面22a に沿ってパリソン12を膨張させてブロー成形を行なう。
なお、上記加熱手段18は平面図である第10図および第10図における矢印XI方向から見た矢視図である第11図に示す様に、その前部(図中上方部)は2枚の扉状加熱部18a から成っており、この扉状加熱部18a はエアシリンダ18b によって矢印B方向に回動可能に構成されているので、上記台車24の後退時にはこの扉状加熱部18a を開いて後退させれば良い。また、台車24の後退時にはエアシリンダを備えて成るフィルム押え32によりバリヤフィルム14をフィルムガイド26a に向けて押圧しておく。そうすることにより、フィルム14には適当な位置にミシン目が入れられているので台車24の後退によってフィルム14は適宜にカットされ、図示の状態となる。さらに、図示されていないが形成型22には型合せ時におけるブローピン挿通路を形成すべく凹部が設けられている。」(第3頁右下欄第14行-第5頁左上欄第17行)

「上述の様に、本発明に係る方法および装置はストレートに延びる筒状パリソンに対して同じくストレートに延びる筒状フィルムを配設し、この状態でフィルムを加熱収縮させて両者を接着させて成るものであるので、両者の接着は同時かつ一様に行なわれ、両者間の空気溜りやフィルムのしわは発生せず、良好な成形品を得ることができる。」(第5頁左上欄第18行-同頁右上欄第4行)



」(第1図)

上記の記載から、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「筒状パリソンの外側に該筒状パリソンと同心状に、端部が開口した筒状熱収縮性フィルムを配設し、
該フィルムを加熱して上記筒状パリソンの外周面に密着させ、
しかる後、成形型でパリソンの上下をシールし、そのシールされたパリソン内に空気を吹き込み、成形型内面に沿ってパリソンを膨張させてブロー成形を行なうプラスチック中空成形品の製造方法。」(以下、「引用例1製法発明」という。)

「筒状パリソンの外側に該筒状パリソンと同心状に、端部が開口した筒状熱収縮性フィルムを配設し、
該フィルムを加熱して上記筒状パリソンの外周面に密着させているパリソン。」(以下、「引用例1パリソン発明」という。また、「引用例1製法発明」および「引用例1パリソン発明」をあわせて、「引用発明」という。)


2.引用文献2の記載事項について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

「少なくとも2枚の収縮性フィルムをラミネートして構成されている包装用フィルムにおいて、包装時にフィルムを加熱して収縮させる場合、常に、前記フィルムが被包装体側に巻込まれ得るように異なる性質のフィルムで構成したことを特徴とする修飾包装用部材。」(実用新案登録請求の範囲第1項)

「請求項1記載の包装用フィルムに於て、収縮フィルムを3枚以上ラミネートしたことを特徴とする修飾包装用部材。」(実用新案登録請求の範囲第4項)

「本考案は修飾包装用部材に関するもので、特に収縮性フィルムをラミネートして構成した包装用部材に関するものである。」(第2頁第3-5行)

「上記の収縮性フィルム1,2の材質は同材質でもよく、また異質の材質でもよい。又上記の実施例では2枚のラミネートした包装フィルムを説明したが、ラミネートされる枚数には限定はなく、また夫々の被包装体に応じた構成のものが使用されるものである。」(第6頁第1-6行)

「本考案は以上のような構成であるから、包装時において、加熱して包装する場合、被包装体側のフィルムが先に、或はラミネートされたフィルムが同時に収縮を始めるため、外側のフィルムが外側に反ろうとする恐れがなくなり、剥離の心配はいらない。更に貼合せの反りと剥離現象によってフィルムの縁部で手先を傷付けたり、表示したラベルを容易に剥されたり出来なくなるとの効果を有し、且つ、通気性の良いフィルムと耐候性の良いフィルムとの組合わせやその他の組合わせ等も考えられ、被包装体に合わせた包装が出来る等極めて著しい効果を有するものである。」(第7頁第1-12行)

3.引用文献3の記載事項について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】
第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが積層される積層フィルムと、第一樹脂フィルムの表面に形成される第一デザイン印刷層と、第二樹脂フィルムの表面に形成される第二デザイン印刷層とを有し、第二デザイン印刷層は、第一デザイン印刷層又は第一樹脂フィルムによって隠蔽されている多層ラベルにおいて、
第一及び第二樹脂フィルムは、それぞれ熱収縮率が異なる熱収縮性フィルムから構成され、
加熱処理を行うことによって、
積層フィルムの層間の接着強度が低下し、第一樹脂フィルムを剥離して第二デザイン印刷層を表示できることを特徴とする多層ラベル。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデザイン印刷層を有する多層ラベルに係り、特に二つのデザイン印刷層を有し、上層のデザイン印刷層を含む樹脂フィルムを剥離して下層のデザイン印刷層を表示できる二層ラベルに関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の多層ラベルによっても、接着剤や離型剤の塗布量のばらつきや経時変化を解決することはできず、接着性と剥離性とを調整することは容易ではない。上記のように、接着剤に依存した方法では、ラベル製造時、搬送時及びラベルを装着した商品の流通・販売時等には、ラベル層間の接着強度を維持し、下層のデザイン印刷層を見たいときには、上層のデザイン印刷層を含むラベル等が容易に剥離できるという要求を満足することはできない。
【0008】
本発明の目的は、接着剤に依存しない、新たな接着性及び剥離性の調整機構を採用することにより、容易に接着性と剥離性とを調整することができる多層ラベルを提供することである。」

「【0047】
積層フィルム16は、共押出し法やラミネート法によって製造することができる。ラミネート法は、予め作成した第一及び第二樹脂フィルム14、15を、貼り合わせる方法である。一方、共押し出し法は、第一及び第二樹脂フィルム14、15を構成する樹脂を、平行に配置した二つのスリットから共に押出し、フィルム化すると同時にラミネートまで行う方法である。基本的に溶融状態で接着性を持つ樹脂同士であれば層間の接着強度が優れた積層フィルム16を得ることができる。所望の層間の接着強度が得られない場合には、両フィルムを構成する樹脂を変更する、或いは両フィルムを構成する樹脂に対して接着性を有する樹脂を層間に挿入する等により接着強度を調整することもできる。層間に挿入される樹脂としては、一般的には、エチレン?酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン?アクリル酸共重合樹脂(EAA)、エチレン?メタクリル酸共重合樹脂(EMAA)などが使用される。なお、層間に挿入される樹脂層の厚みは、0.5?5μm程度である。積層フィルム16の製造方法としては、生産性向上等の観点から、共押出し法が好ましい。
【0048】
共押出し法による積層フィルム16の製造について説明する。所定の温度に設定した二つの押し出し機に、それぞれ第一及び第二樹脂フィルム14、15を構成する樹脂をそれぞれ投入し、溶融した樹脂を随時送り出す。この送り出し速度を調整することによりそれぞれのフィルム層の厚みをコントロールすることができる。次いで、マニホールド等を用いて、それぞれの樹脂を合流させた後、Tダイ等から押し出し、冷却ドラム等を用いて急冷し、フィルム巻き取り装置により巻き取られて積層フィルム16のロールを得る。積層フィルム16が三層以上の樹脂フィルムから構成される場合にも、共押出し法を適用することが好ましく、その場合には、三箇所以上のスリットを有するマニホールド及びTダイ等を使用して積層フィルム16が製造される。
【0049】
共押出し法により得られた積層フィルム16は、未延伸状態であるので、巻き取られる前に第一及び第二樹脂フィルム14、15を同時に、一軸延伸又は二軸延伸を行うことが好ましい。三層以上の時も第一、第二及び第三樹脂フィルム14、15、19を同時に延伸することが好ましい。延伸方式としては、ロール方式、テンター方式及びチューブ方式等を使用することができる。延伸倍率としては、上記のように、一方向に2?6倍程度、一方向に直交する方向に1.01?2倍程度であることが好ましい。次いで、積層フィルム16のロールを送り出して第一樹脂フィルム14側に第一デザイン印刷層17を、第二樹脂フィルム15側に第二デザイン印刷層18を、前述の印刷法により形成して、巻き取ることにより多層ラベル10のロールを製造することができる。」

「【0050】
多層ラベル10のロールは、容器11に装着される幅にスリットされた後、一方の側縁部にテトラヒドロフランなどの有機溶剤が塗布され、その塗布部に他方の側縁部を重ね合わせてセンターシールし、筒状の多層ラベル10の連続体となる。この連続体を上下方向に所定のサイズを有する一枚のラベルとなるように切断し、容器11に巻きつけた後、加熱処理を行うことによりラベルを収縮させ、容器11に装着することができる。」

「【0054】
多層フィルム10は、接着剤を使用して容器11に巻きつけて装着させることもできる。この場合には、多層ラベル10の装着工程のための加熱処理は必要とされず、多層ラベル10の容器11に対する装着性を考慮しなくてもよい。従って、積層フィルム16層間の接着強度のみを考慮して、第一及び第二樹脂フィルム14、15の樹脂組成を調整することができるので、さらに層間の接着性及び剥離性の調整が容易となる。」


第6 対比・判断

1.本願発明1について

本願発明1と引用例1製法発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用例1製法発明の「筒状パリソン」、「端部が開口した筒状熱収縮フィルム」はそれぞれ、本願発明1の「プリフォーム」、「少なくとも長手方向の一端が開口した熱収縮性材料」に相当する。また、引用例1製法発明の「プラスチック中空成形品」は、筒状熱収縮性フィルムを伴うものであって、燃料タンクなどの用途を前提とするものであるから、本願発明1の「複合容器」に相当するものといえる。
さらに、引用例1製法発明は、筒状熱収縮性フィルムを筒状パリソンの外周面に密着させた後、成形型でパリソンの上下をシールし、そのシールされたパリソン内に空気を吹き込み、成形型内面に沿ってパリソンを膨張させてブロー成形を行なうものであるから、当然、「ブロー成形金型内に挿入する工程」を有するとともに、本願発明1と「ブロー成形金型内でプリフォームおよび外側収縮部材に対してブロー成形を施すことにより、プリフォームおよび外側収縮部材を一体として膨張させる工程」という限りにおいて一致する。また、引用例1製法発明のブロー成形にあたり、筒状パリソンや筒状熱収縮性フィルムを準備する工程を有することは自明である。

してみると、本願発明1と引用例1製法発明との間の一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「複合容器を成形するためのブロー成形方法において、
プリフォームを準備する工程と、
プリフォームとは別部材から構成され、少なくとも長手方向の一端が開口した熱収縮性材料からなる筒状の外側収縮部材を準備する工程と、
プリフォームおよび外側収縮部材を加熱することにより、外側収縮部材を熱収縮させ、外側収縮部材をプリフォームの外側に密着させる工程と、
プリフォームおよび外側収縮部材をブロー成形金型内に挿入する工程と、
ブロー成形金型内でプリフォームおよび外側収縮部材に対してブロー成形を施すことにより、プリフォームおよび外側収縮部材を一体として膨張させる工程とを備えたブロー成形方法。」

<相違点>
・相違点1
プリフォームに関して、本願発明1は、「ポリエチレンテレフタレート製の射出成形品」であると特定されているのに対し、引用例1製法発明は、そのような特定がない点。

・相違点2
本願発明1は、「内側ラベル部材」を有するものであって、
「プリフォームが筒状の内側ラベル部材および前記筒状の外側収縮部材の内部に嵌め込まれるように、プリフォームの外側に前記筒状の内側ラベル部材を設けるとともに、内側ラベル部材の外側に、外側収縮部材を装着する工程と、
プリフォーム、内側ラベル部材および外側収縮部材を第1の加熱装置によって加熱することにより、外側収縮部材を熱収縮させ、プリフォームと、プリフォームの外側に密着された内側ラベル部材と、内側ラベル部材の外側に密着して設けられた外側収縮部材とを有する複合プリフォームを作製する工程と、
複合プリフォームを第2の加熱装置によって加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
ブロー成形金型内で複合プリフォームに対してブロー成形を施すことにより、複合プリフォームのプリフォーム、内側ラベル部材および外側収縮部材を一体として膨張させる工程」と「内側ラベル部材」も含めた一連の工程をを有するものであるのに対し、引用例1製法発明は、一連の工程において「内側ラベル部材」を有するものではない点。

・相違点3
本願発明1は、内側ラベル部材および外側収縮部材をプリフォームの外側に密着させる際に、「第1の加熱装置」を、複合プリフォームをブロー成形金型に挿入するにあたり、「第2の加熱装置」を用いるものであるのに対し、引用例1製法発明は、そのような特定がない点。

先ず相違点2について検討する。

引用例2には「少なくとも2枚の収縮性フイルムをラミネートして構成されている包装用フイルム」、引用例3には「共押出し法やラミネート法によって製造された、第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが積層される多層ラベル」が記載されている。
しかしながら、引用例2、3にそれぞれ記載されているものは、2枚のフィルムが共押出やラミネートで接着されているものである。
そうすると、引用例1製法発明において、引用例2、3の記載に基づいて、本願発明1の「内側ラベル部材」に相当する部材を導入しようとしたとき、外側収縮部材の内側に内側ラベル部材が接着したものを導入することとなるところ、そのような構成は、「プリフォームが筒状の内側ラベル部材および前記筒状の外側収縮部材の内部に嵌め込まれるように、プリフォームの外側に前記筒状の内側ラベル部材を設けるとともに、内側ラベル部材の外側に、外側収縮部材を装着する工程」を有するものではない。さらに、外側収縮部材と内側ラベル部材とが接着することなく、「プリフォームが筒状の内側ラベル部材および前記筒状の外側収縮部材の内部に嵌め込まれるように、プリフォームの外側に前記筒状の内側ラベル部材を設けるとともに、内側ラベル部材の外側に、外側収縮部材を装着する工程」との構成を想到することが、当業者にとって容易であるともいえない。
また、引用文献4-8の何れにおいても、プリフォームの外側に、外側収縮部材と内側ラベル部材にあたる部材をともに設けることを示唆する記載を認めることはできない。
してみれば、上記相違点1、3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用例1製法発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2-7について
本願発明2-7も、本願発明1の「プリフォームが筒状の内側ラベル部材および前記筒状の外側収縮部材の内部に嵌め込まれるように、プリフォームの外側に前記筒状の内側ラベル部材を設けるとともに、内側ラベル部材の外側に、外側収縮部材を装着する工程」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用例1製法発明及び拒絶査定において引用された引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明8について

本願発明8と引用例1パリソン発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用例1パリソン発明の「端部が開口した筒状熱収縮フィルム」は、本願発明8の「少なくとも長手方向の一端が開口した筒状の部分」を有する「熱収縮性材料」に相当する。また、引用例1パリソン発明の「パリソン」は、筒状熱収縮性フィルムを伴うものであるから、本願発明8の「複合プリフォーム」に相当するものといえる。

してみると、本願発明8と引用例1パリソン発明との間の一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「複合プリフォームにおいて、
プリフォームと、
熱収縮性をもつ材料からなる外側収縮部材とを備え、
外側収縮部材は、少なくとも長手方向の一端が開口した筒状の部分を有し、
外側収縮部材は、プリフォームに対して密着されていることを特徴とする複合プリフォーム。」

<相違点>
・相違点4
容器本体に関して、本願発明8は、「ポリエチレンテレフタレート製」であると特定されているのに対し、引用例1パリソン発明は、そのような特定がない点。

・相違点5
本願発明8は、「プリフォームの外側に密着して設けられた内側ラベル部材」を有するものであって、「外側収縮部材は、プリフォームの外面および内側ラベル部材の外面に接着されることなく取付けられており、プリフォームに対して熱収縮された状態で密着されている」ものであるのに対し、引用例1パリソン発明は、そのような特定を有さない点。

先ず相違点5について検討する。

引用例2には「少なくとも2枚の収縮性フイルムをラミネートして構成されている包装用フイルム」、引用例3には「共押出し法やラミネート法によって製造された、第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが積層される多層ラベル」が記載されている。
しかしながら、引用例2、3にそれぞれ記載されているものは、2枚のフィルムが共押出やラミネートで接着されているものである。
そうすると、引用例1パリソン発明において、引用例2、3の記載に基づいて、本願発明8の「内側ラベル部材」に相当する部材を導入しようとすれば、外側収縮部材の内側に内側ラベル部材が接着したものを導入することとなるところ、そのような構成は、「外側収縮部材は、プリフォームの外面および内側ラベル部材の外面に接着されることなく取付けられており、プリフォームに対して密着されている」ものとはならない。さらに、外側収縮部材と内側ラベル部材が接着されることなく、「外側収縮部材は、プリフォームの外面および内側ラベル部材の外面に接着されることなく取付けられており、プリフォームに対して密着されている」との構成を想到することが、当業者にとって容易であるともいえない。
また、引用文献4-8の何れにおいても、プリフォームの外側に、外側収縮部材と内側ラベル部材にあたる部材をともに設けることを示唆する記載を認めることはできない。
してみると、上記相違点4について判断するまでもなく、本願発明8は、当業者であっても引用例1パリソン発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明9-14について

本願発明9-14も、本願発明8の「外側収縮部材は、プリフォームの外面および内側ラベル部材の外面に接着されることなく取付けられており、プリフォームに対して密着されている」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明8と同じ理由により、当業者であっても、引用例1パリソン発明及び拒絶査定において引用された引用文献2-8に記載された技術的事項に

基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 当審拒絶理由についての判断

当審では、平成30年12月 3日の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1、8に係る発明における「熱収縮性材料であってポリエチレンテレフタレートよりもガスバリア性の低い熱可塑性樹脂からなるからなる」との事項が新規事項の追加にあたる旨の拒絶の理由を通知しているが、令和1年9月17日に提出された手続補正書による補正において、「熱収縮性材料であってポリエチレンテレフタレートよりもガスバリア性の低い熱可塑性樹脂からなるからなる」との事項は削除された結果、この拒絶理由は解消した。


第8 むすび

以上のとおり、本願発明1-14は、当業者が引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-15 
出願番号 特願2013-137101(P2013-137101)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B29C)
P 1 8・ 121- WY (B29C)
P 1 8・ 55- WY (B29C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 祢屋 健太郎  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 植前 充司
須藤 康洋
発明の名称 ブロー成形方法および複合プリフォーム  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
代理人 村田 卓久  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
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