• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C07D
管理番号 1355790
審判番号 不服2018-16962  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-20 
確定日 2019-11-05 
事件の表示 特願2017-527993「1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールジメシレート一水和物の活性代謝産物及びその活性代謝産物のジメシレート二水和物の塩」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月25日国際公開、WO2016/027276、平成29年9月7日国内公表、特表2017-525762、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2014年10月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2014年8月16日(IN)インド)を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。
平成29年 4月17日 手続補正
平成30年 3月 9日付け 拒絶理由通知
平成30年 6月19日 意見書提出
平成30年 8月13日付け 拒絶査定
平成30年12月20日 審判請求
平成30年12月21日 手続補足書提出

第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由は、平成30年3月9日付け拒絶理由通知における理由1であり、その概要は、本願請求項1、3及び5?10に係る発明は、その優先日前に頒布された引用文献1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1 特許第4559230号公報
引用文献2 加藤隆一等編、「薬物代謝学(第2版)-医療薬学・毒性額の基礎として-」、株式会社東京化学同人発行、(2000)、第63?74頁
引用文献3 田中千賀子等編、「NEW薬理学(改訂第4版)」、株式会社南江堂発行、(2005)、第16?19頁

第3 本願発明
この出願の発明は、平成29年4月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、請求項1?10に係る発明をそれぞれ「本願発明1」?「本願発明10」といい、まとめて「本願発明」ということがある。)
「 【請求項1】
1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールジメシレート一水和物の活性代謝産物である、式(I)【化1】

を有する、1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドール。
【請求項2】
ステップ(i):式1のN-Bocピペラジン
【化2】

を酢酸及び式2
【化3】

のホルムアルデヒド水溶液の存在下で反応させて、マンニッヒ付加物を得る工程
ステップ(ii):前記マンニッヒ付加物を、メタノール存在下で式3
【化4】

の5-メトキシインドールと反応させ、式4
【化5】

の3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-5-メトキシ-1H-インドールを得る工程、
ステップ(iii):式4の3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-5-メトキシ-1H-インドールを、n-ヘキサンを用いて精製する工程、
ステップ(iv):上記で得られた式4の3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-5-メトキシ-1H-インドールを、水酸化カリウムの存在下、テトラヒドロフラン中で式5
【化6】

の2-ブロモフェニルスルフォニルクロリドと反応させ、式6
【化7】

の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-1H-インドールを得る工程、
ステップ(v):式6の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-1H-インドールを、イソプロパノール及びメタノールを用いて精製する工程、
ステップ(vi):上記で得られた式6の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-1H-インドールを、無水エタノール及び塩酸水溶液の存在下で転換させ、式8
【化8】

の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールジヒドロクロリドを得る工程、及び
ステップ(vii):上記で得られた式8の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(ピペラジン-1-イル)メチル]-1H-インドールジヒドロクロリドを水に溶解させ、40%(w/w)苛性アルカリ水溶液を添加することによりpH10.5?11に塩基性化し、式(I)の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールを得る工程、
を含む、請求項1に記載の式(I)の化合物の調製方法。
【請求項3】
一般式(II)
【化9】

の化合物。
【請求項4】
ステップ(i):式1のN-Bocピペラジン
【化10】

を酢酸及び式2
【化11】

のホルムアルデヒド水溶液の存在下で反応させて、マンニッヒ付加物を得る工程、
ステップ(ii):前記マンニッヒ付加物を、メタノール存在下で式3
【化12】

の5-メトキシインドールと反応させ、式4
【化13】

の3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-5-メトキシ-1H-インドールを得る工程、
ステップ(iii):前記式4の3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-5-メトキシ-1H-インドールを、n-ヘキサンを用いて精製する工程、
ステップ(iv):上記で得られた式4の3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-5-メトキシ-1H-インドールを、水酸化カリウムの存在下テトラヒドロフラン中で式5
【化14】

の2-ブロモフェニルスルフォニルクロリドと反応させ、式6
【化15】

の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-1H-インドールを得る工程、
ステップ(v):式6の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-1H-インドールを、イソプロパノール及びメタノールを用いて精製する工程、
ステップ(vi):上記で得られた式6の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジン-4-イル)メチル]-1H-インドールを、アセトン及び式7
【化16】

のメタンスルホン酸の存在下で転換させ、式9
【化17】

の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールジメシレートを得る工程、及び
ステップ(vii):上記で得られた式9の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールジメシレートを水及びアセトンに溶解し、55℃?60℃に加熱し、式(II)の1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールジメシレート二水和物を得る工程、
を含む、請求項3に記載の式(II)の化合物の調製方法。
【請求項5】
請求項1または3に記載の化合物及び医薬として許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項6】
5-HT_(6)受容体アンタゴニスト関連疾患の治療のための、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
5-HT_(6)受容体アンタゴニスト関連疾患がアルツハイマー病、注意欠陥/多動障害、パーキンソン病及び統合失調症から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
アルツハイマー病、注意欠陥/多動障害、パーキンソン病及び統合失調症の治療のため
の医薬の製造のための、請求項1又は3に記載の化合物の使用。
【請求項9】
5-HT_(6)受容体に関連する又は影響を受ける中枢神経系障害の治療のための医薬の製造のための、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項10】
受容体に関連する又は影響を受ける中枢神経系障害の治療のための医薬の製造のための、請求項3に記載の式(II)の化合物の使用。」

第4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明

1 引用文献の記載事項

(1)引用文献1
1a「【発明の名称】セロトニン受容体に対する親和性を有する新規N-アリールスルホニル-3-置換されたインドール、その調製方法、それを含有する医薬組成物」

1b「【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、
R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、及びR_(9)は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C_(1)-C_(6))アルキル、又は(C_(2)-C_(6))アルコキシを表し;
R_(10)は、水素、アリール又は(C_(1)-C_(6))アルキルを表し;
R_(14)及びR_(16)は、それぞれ独立に、水素又は(C_(1)-C_(6))アルキルを表し;
“n”は1又は2の整数である)
で表される化合物、その互変異性体、その立体異性体、その幾何異性体、そのN酸化物、その多形体、その医薬として許容される塩、又はその医薬として許容される溶媒和物。」

1c「【0139】
説明例151 (D151):3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0140】
均圧漏斗を備えた三つ首丸底フラスコに、インドール(1.17g、0.01モル)とジクロロメタン(8ml)を入れた。1-メチルピペラジン(1.01g、0.011モル)とホルムアルデヒド(9ml、0.012モル)を室温にてゆっくりと添加し、この反応混合物を1時間にわたってよく撹拌した。反応が終了した後(TLC)、生成物を減圧蒸留によって単離した。残留物を酢酸エチルで抽出した(2×25ml)。組合わせた有機抽出液を水で洗浄し、次いで食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を真空下で蒸発させた。残留物は、油状の液体又は固体の塊になることができた。得られた固形物をn-ヘキサンで研和すると、固形材料が得られた。その固形材料をIR、NMR、質量スペクトルのデータを分析することによって同定した。
【0141】
説明例152-173(D152-D173)
【0142】
説明例151に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、適切に置換されたインドールと、置換されたアルキルピペラジン、置換されたアリールピペラジン、N,N,N’-トリメチルエチレン-1,2-ジアミン、又はホモピペラジンのいずれかとを用いることにより、リスト4に示した化合物を調製した。このようにして得られた化合物の構造は、IR、NMR、質量スペクトルのデータを分析することによって確認した。
【0143】
同様に、置換されていないピペラジンを調製することができる。このピペラジンは、の後のスルホニル化を優先させて保護する必要がある。
【0144】
リスト4
説明例 質量イオン
(M+H)^(+)
・・・・・
D156 3-(4H-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール 216
・・・・・
【0153】
説明例184:3-(4-(ベンジルオキシカルボニル)ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0154】
当業界において公知の方法に従い、化合物(D156)中のピペラジニルの窒素をBOCを用いて選択的に保護した。
【0155】
リスト7
説明例 質量イオン
(M+H)^(+)
D184:3-(4-(ベンジルオキシカルボニル)ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール 350 」

1d「【実施例16】
【0197】
1-ベンゼンスルホニル-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0198】
5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール(2.59g、0.01モル)を含むDMF(30ml)を、水素化ナトリウム(0.26g、0.011モル)を含むDMF(10ml)懸濁液にゆっくりと添加し、温度を10℃未満に維持した。この混合物を25℃にて1時間にわたって撹拌し、この反応混合物にベンゼンスルホニルクロリド(1.76g、0.01モル)を10℃にて滴下付加した。この反応混合物を25℃にてさらに1時間にわたって撹拌した。反応が終了した後(TLC)、反応混合物を氷と水の混合物の上に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(20ml×2)。組合わせた有機抽出液を水と食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。揮発性不純物を減圧蒸留によって除去すると、粗残留物が得られた。得られた残留物をフラッシュ・クロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/TEA=9.9/0.1)で精製すると化合物が得られた。IR、NMR、及び質量スペクトルのデータを分析することにより、その化合物は表題の化合物であることを同定した。融点の範囲(℃):120-123;IRスペクトル(cm^(-1)):1145、1162、1366、1344;質量(m/z):400 (M+H)^(+);^(1)H-NMR(δppm):2.25(3H,s)、2.41 (8H,bs)、3.53 (2H,s)、3.80 (3H,s)、6.85-6.90(1H,dd,J=2.6Hz,9Hz)、7.07-7.08 (1H,d,J=2.2Hz)、7.36-7.50(4H,m)、7.79-7.85 (2H, m)。
【実施例17】
【0199】
1-(4-メチルベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0200】
実施例16に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記の誘導体を調製した。融点の範囲(℃):111-117;IRスペクトル(cm^(-1)):1146、1172、1369、1450;質量(m/z):414 (M+H)^(+);^(1)H-NMR(δppm):2.27(3H,s)、2.22(3H,s)、2.44(8H,bs)、3.60-3.60(2H,d,J=0.6(Gemカップリング))、3.78(3H,s)、6.84-6.88(2H,m)、7.21-7.46(2H,m)、7.46(1H,s)、7.65-7.69(1H,m)、7.78-7.98(2H,m)。
【実施例18】
【0201】
1-(4-ブロモベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0202】
実施例16に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記の誘導体を調製した。IRスペクトル(cm^(-1)):1147、1162、1365、1451;質量(m/z):479,481(M+H)^(+);^(1)H-NMR(δppm):2.28(3H,s)、2.44(8H,bs)、3.55-3.56(2H,d,J=1.0Hz(Gemカップリング))、3.82(3H,s)、6.89-6.95(1H,dd,J=2.8Hz,9.0Hz)、7.13-7.15(1H,d,J=2.6Hz)、7.37(1H,s)、7.51-7.70(4H,m)、7.81-7.85(1H,d,J=9.1Hz)。
【実施例19】
【0203】
1-(4-イソプロピルベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0204】
実施例16に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記の誘導体を調製した。融点の範囲(℃):115-120;IRスペクトル(cm^(-1)):1146、1174、1370、1387、1476;質量(m/z):442(M+H)^(+);^(1)H-NMR(δppm):1.18-1.22(6H,d,J=6.6Hz)、2.29(3H,s)、2.45(8H,bs)、2.82-2.92(1H,h)、3.58(2H,s)、3.84(3H,s)、6.91-6.97(1H,dd,J=2.6Hz,9.0Hz)、7.15-7.16(1H,d,J=2.4Hz)、7.24-7.28(2H,m)、7.44(1H,s)、7.74-7.78(2H,m)、7.86-7.91(1H,d,J=8.8Hz)。
【実施例20】
【0205】
1-(2-ブロモベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0206】
実施例16に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記の誘導体を調製した。融点の範囲(℃):110-116;IRスペクトル(cm^(-1)):1147、1178、1371、1386、1449;質量(m/z):479, 481(M+H)^(+);^(1)H-NMR(δppm):2.28 (3H,s)、2.45 (8H,bs)、3.62-3.625(2H,d,J=0.8Hz)、3.82(3H,s)、6.81-6.87(1H,dd,J=2.6Hz,8.4Hz)、7.19-7.20(1H,d,J=2.6Hz)、7.34-7.68(6H,m)、8.01-8.06(1H,dd,J=1.8Hz,7.8Hz)。
【実施例21】
【0207】
1-(2-ブロモ-4-メトキシベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0208】
実施例16に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記の誘導体を調製した。質量(m/z):510,512(M+H)^(+)。
【実施例22】
【0209】
1-(2-ブロモ-4-メトキシベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール塩酸塩
【0210】
実施例5に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、実施例21の塩酸塩を調製した。IRスペクトル(cm^(-1)):1147、1174、1368、1471;質量(m/z):510,512(M+H)^(+)。
【実施例23】
【0211】
1-(4-メトキシベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0212】
実施例16に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記の誘導体を調製した。融点の範囲(℃):108-110;IRスペクトル(cm^(-1)):1120、1165、1368、1454;質量(m/z):330(M+H)^(+);^(1)H-NMR(δppm):2.27(3H,s)、2.44(8H,bs)、3.55-3.56(2H,d,J=0.6Hz)、3.78(3H,s)、3.82(3H,s)、6.83-6.94(3H,m)、7.12-7.13(1H,d,J=2.4Hz)、7.40(1H,s)、7.74-7.87(3H,m)。
【実施例24】
【0213】
1-(4-フルオロベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0214】
実施例16に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記の誘導体を調製した。融点の範囲(℃):96-98;IRスペクトル(cm^(-1)):1177、1163、1366、1448;質量(m/z):418(M+H)^(+);^(1)H-NMR(δppm):2.22(3H,s)、2.41(8H,bs)、3.54(2H,s)、3.81(3H,s)、6.88-7.13(4H,m)、7.37(1H,s)、7.80-7.87(3H,m)。」

1e「【実施例114】
【0394】
1-(ベンゼンスルホニル)-3-(4-(ベンジルオキシカルボニル)-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0395】
説明例183の化合物を実施例16に記載した手順に従ってベンゼンスルホニルクロリドで処理した。さらに、保護基を当業界における公知の手段によって除去した。質量(m/z):490(M+H)^(+)。
【実施例115】
【0396】
1-(ベンゼンスルホニル)-3-(4H-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0397】
実施例114の保護基を当業界における公知の手段によって除去した。質量(m/z):356(M+H)^(+)。
【実施例116】
【0398】
1-(4-メトキシベンゼンスルホニル)-3-(4H-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0399】
1-(4-メトキシベンゼンスルホニル)-3-クロロメチル-1H-インドール(0.01モル)をジクロロメタン(25ml)に溶かした溶液を、よく撹拌し、5℃に冷やしたピペラジン(0.021モル)溶液に20-30分間かけてゆっくりと添加した。この反応混合物をさらに30分間にわたって撹拌した後、徐々に205℃にした。反応が終了した後(3-4時間、TLC)、反応混合物をジクロロメタンでさらに希釈し、水と食塩水で繰り返して洗浄した。ジクロロメタン抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、揮発性物質を減圧下で除去すると、粗中間体が得られた。得られた残留物をフラッシュ・クロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/MeOHの後、MeOH/トリエチルアミン)で精製すると、化合物が得られた。IR、NMR、及び質量スペクトルのデータを分析することにより、その化合物は表題の化合物であることが同定された。この実施例は、実施例40に記載した手順により調整することもでき、及び実施例53に記載するような還元によっても調製できる。質量(m/z):386(M+H)^(+)。
【実施例117】
【0400】
1-(4-イソプロピルベンゼンスルホニル)-3-(4H-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0401】
実施例116に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記誘導体を得るため、1-(4-イソプロピルベンゼンスルホニル)-3-クロロメチル-1H-インドールをピペラジンと反応させた。質量(m/z):398(M+H)^(+)。
【実施例118】
【0402】
1-(2-ブロモ-4-メトキシベンゼンスルホニル)-3-(4H-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0403】
実施例116に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記誘導体を得るため、1-(2-ブロモ-4-メトキシベンゼンスルホニル)-3-クロロメチル-1H-インドールをピペラジンと反応させた。質量(m/z):464 (M+H)^(+)、466 (M+3)^(+)。
【実施例119】
【0404】
5-ブロモ-1-(ベンゼンスルホニル)-3-(4H-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0405】
実施例116に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記誘導体を得るため、5-ブロモ-1-(ベンゼンスルホニル)-3-クロロメチル-1H-インドールをピペラジンと反応させた。質量(m/z):434(M+H)^(+)、436(M+3)^(+)。
【実施例120】
【0406】
5-ブロモ-1-(4-メトキシベンゼンスルホニル)-3-(4H-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0407】
実施例116に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記誘導体を得るため、5-ブロモ-1-(4-メトキシベンゼンスルホニル)-3-クロロメチル-1H-インドールをピペラジンと反応させた。質量(m/z):464 (M+H)^(+)、466 (M+3)^(+)。
【実施例121】
【0408】
5-ブロモ-1-(4-イソプロピルベンゼンスルホニル)-3-(4H-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0409】
実施例116に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、5-ブロモ-1-(4-イソプロピルベンゼンスルホニル)-3-クロロメチル-1H-インドールをピペラジンと反応させて上記の誘導体を得た。質量(m/z):576(M+H)^(+)、578(M+3)^(+)。
【実施例122】
【0410】
5-ブロモ-1-(2-ブロモ-4-メトキシベンゼンスルホニル)-3-(4H-ピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール
【0411】
実施例116に記載したのと本質的に同一の手順を利用し、上記誘導体を得るため、5-ブロモ-1-(2-ブロモ-4-メトキシベンゼンスルホニル)-3-クロロメチル-1H-インドールをピペラジンと反応させた。質量(m/z):542(M+H)^(+)、543(M+3)^(+)。」

(2)引用文献2
2a「3 薬物代謝の反応様式と薬効・毒性の変化
・・・・・
3・2 薬物の酸化的代謝と薬効・毒性の変化
酸化による代謝を受ける薬物が最も多い(表3・2).・・・・・

」(63頁標題、66頁下から10?9行、67頁表3・2)

2b「3・2・3 O-脱アルキル化反応
O-エーテル結合を有する化合物のアルキル鎖がメチル,エチルなどの短鎖であれば,P450によってα位の炭素が水素化される.・・・

・・・・・

3・2・4 N-脱アルキル化反応
多くのアミノ基あるいは環状のアミンに結合したアルキル基をもつ化合物は,第一級アミンあるいは第二級アミンとアルデヒドに変化する(図3・8).この反応は二段階反応で,最初に窒素原子に隣接するアルキル基の炭素の水酸化体が形成され,つぎにそのカルビノールアミン不安定中間体が非酵素的に分解される.また,一部のN-脱アルキル化反応には,N-オキシドを経由する経路もあると考えられている.」(71頁22?24行及び図3・6、73頁図3・8及び下から3行?74頁4行)

(3)引用文献3
3a「



2 引用文献に記載された発明
引用文献1は、請求項1に記載の一般式(I)(1a)の新規なN-アリールスルホニル-3-置換されたインドール、その誘導体等に関し記載するものであり(1a、1b)、その誘導体の具体例として、実施例20には、実施例16に記載した手順と本質的に同一の手順を利用し、1-(2-ブロモベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドールを調製し、その物性値(融点の範囲、IRスペクトル、質量(m/z)、^(1)H-NMR測定値)が示されており(1d)、当該化合物は実施例16の化合物と同様に精製、単離されたものであるということができる。

そうすると、引用文献1には、
「1-(2-ブロモベンゼンスルホニル)-5-メトキシ-3-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-1H-インドール」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、本願発明1及び引用発明は、インドール骨格を有し、インドール骨格の1位、3位及び5位に置換基がある点で共通しており、引用発明におけるインドール骨格の1位の「2-ブロモベンゼンスルホニル」、5位の「メトキシ」、3位の「(1-ピペラジニル)メチル」の各置換基は、本願発明1の「式(I)【化1】

を有する1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドール」における、インドール骨格の1位の「(2-ブロモフェニル)スルフォニル」、5位の「メトキシ」、3位の「(1-ピペラジニル)メチル」の各置換基に相当している。
そうすると、本願発明1と引用発明は、1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドール」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:本願発明1は、1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールジメシレート一水和物の活性代謝産物である」と特定されているのに対し、引用発明には、そのような特定がない点

相違点2:インドール骨格の3位に置換している「(1-ピペラジニル)メチル」の4位に結合している置換基について、本願発明1は「水素」であるのに対し、引用発明は「メチル基」である点

(2)判断

ア 相違点について

(ア)相違点1について
本願発明1は、「式(I)【化1】

を有する1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドール」、すなわち、化合物そのものの発明であり、「1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールジメシレート一水和物の活性代謝産物である」という、当該化合物の由来が特定されていたとしても、化合物そのものの特定には何ら影響を与えるものではない。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはならない。

(イ)相違点2について
引用文献1には、上記(1b)より、「一般式(I):
【化1】

(式中、
R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、及びR_(9)は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C_(1)-C_(6))アルキル、又は(C_(2)-C_(6))アルコキシを表し;
R_(10)は、水素、アリール又は(C_(1)-C_(6))アルキルを表し;
R_(14)及びR_(16)は、それぞれ独立に、水素又は(C_(1)-C_(6))アルキルを表し;
“n”は1又は2の整数である)
で表される化合物、その互変異性体、その立体異性体、その幾何異性体、そのN酸化物、その多形体、その医薬として許容される塩、又はその医薬として許容される溶媒和物」が記載され、一般式(I)で表される化合物において、インドール骨格には、1位に置換されていてもよいベンゼンスルホニル基、3位に2つの窒素原子を含む6員環及び7員環においてメチレン基が結合していない窒素原子にR_(16)(R_(16)は、それぞれ独立に、水素又は(C_(1)-C_(6))アルキル)が結合した置換基、残りの2位、4位?7位に水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C_(1)-C_(6))アルキル、又は(C_(2)-C_(6))アルコキシの置換基を有する数多くの化合物を含むことが記載されている。
また、一般式(I)で表される化合物の具体的態様として、上記(1d)には、一般式(I)で表される化合物において、インドール骨格の1位に置換されていてもよいベンゼンスルホニル基、3位に(1-ピペラジニル)メチル基であって、ピペラジン環の4位にメチル基で置換されたもの、5位にメトキシ基、残りの2位、4位、6位?7位に水素の化合物が記載されている(実施例16?24)。これら具体的な化合物は、いずれも本願発明1の化合物における3位の(1-ピペラジニル)メチル基におけるピペラジン環の4位がメチル基で置換されたものに過ぎない。
確かに、引用文献1の一般式(I)で表される化合物において、3位のピペラジン環の一方の窒素原子の置換基R_(16)として水素が結合する場合も形式的に記載されている。
しかしながら、これは、インドール骨格に置換する他の置換基も含めた多くの組み合わせの中で示されているに過ぎず、本願発明1のようにインドール骨格の1位に(2-ブロモフェニル)スルフォニル基、5位にメトキシ基、2位、4位、6位?7位がいずれも水素の場合に、インドール骨格の3位における(1-ピペラジニル)メチル基のピペラジン環の4位の置換基として水素を必然的に選択することは、記載も示唆もされていないといえる。

一方、引用文献2及び3には、薬物代謝の一般的な反応様式として、N-脱アルキル化反応、すなわち、多くのアミノ基あるいは環状のアミンに結合したアルキル基をもつ化合物は、第一級アミンあるいは第二級アミンとアルデヒドに変化することが記載されている(2a、2b、3a)。
しかしながら、これらの記載は、あくまでも薬物代謝の一般的な反応様式の一つが示されているにすぎず、環状のアミンに結合したアルキル基をもつ化合物は第二級アミンとアルデヒドに変化する可能性があることは理解されるものの、環状のアミンに結合したアルキル基をもつ種々の化合物において、上記薬物代謝の一般的な反応様式であるN-脱アルキル化反応が必然的におこるかどうかは不明である。

さらに、引用文献2及び3には、薬物代謝の一般的な反応様式として、N-脱アルキル化反応のみならず、O-脱アルキル化反応、すなわち、O-エーテル結合を有する化合物のアルキル鎖がメチル、エチルなどの短鎖であればP450によってα位の炭素が水酸化される反応も記載されている(2a、2b、3a)。
引用発明はインドール骨格の5位にメトキシ基がある化合物であり、O-エーテル結合を有する化合物のアルキル鎖がメチル等の短鎖の種々の化合物に該当するから、引用発明のインドール骨格の5位のメトキシル基も脱メチル化されることが当然予測される。

そうすると、具体的な化学構造を有する引用発明のピペラジンの4位の窒素おいて、N-脱アルキル化反応が必然的に行われるとは当業者といえども予測することは困難であると認められる。

イ 本願発明1の効果について
本願発明1の効果は、本願明細書等の発明の概要の記載(【0008】?【0010】)、実施例3及び4の記載(【0084】?【0091】)、【図1】及び【図2】より、5-HT_(6)受容体アンタゴニストとして、医薬的有効性の高い活性代謝化合物を提供することであると認められる。
そして、本願発明1の化合物が医薬的有効性の高い活性代謝化合物であることについては、平成30年12月20日付けの審判請求書において、本願発明1の化合物と引用発明との薬物動態学的実験の比較結果より、本願発明1の化合物は、引用発明より、優れた代謝安定性、高い暴露量、長い半減期、低いクリアランス及び高い生物学的利用能を有することが示されており、当該効果は引用文献1?3の記載より当業者が予測し得ない効果を奏するものである。

ウ したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2?10について
本願発明2は、本願発明1の化合物の調製方法の発明であり、本願発明3は、本願発明1の化合物のジメシレート二水和物の発明であり、本願発明4は、本願発明1の化合物のジメシレート二水和物の調製方法の発明であり、本願発明5?7は、本願発明1の化合物を含む医薬組成物の発明であり、及び、本願発明8?10は、医薬の製造のための本願発明1の化合物の使用方法の発明であるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 原査定について
前記第5で検討したとおりであり、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-21 
出願番号 特願2017-527993(P2017-527993)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C07D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松澤 優子  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 村上 騎見高
齊藤 真由美
発明の名称 1-[(2-ブロモフェニル)スルフォニル]-5-メトキシ-3-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]-1H-インドールジメシレート一水和物の活性代謝産物及びその活性代謝産物のジメシレート二水和物の塩  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ